JP7120738B2 - 高酸味ソフトキャンディ及びその製法 - Google Patents

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本発明は、強い酸味を呈する砂糖主体のソフトキャンディにおいて、個包装しなくとも、長期保存時の耐久性に優れ、変形、べたつきがなく、ソフトキャンディ粒同士の結着を生じない、旨味のある自然な甘味を有する風味良好な高酸味ソフトキャンディに関する。
従来、強い酸味を呈するソフトキャンディを提供するために、特に砂糖主体のソフトキャンディに有機酸や酸味料を増量すると、長期保存による耐久性(保形性やべたつき)に問題があることが知られている。そのため、砂糖を含有せずに特定の糖アルコールを用いたシュガーレスソフトキャンディとする、又は砂糖以外の糖類主体のソフトキャンディとする等の砂糖含有量の調整による解決策が提案されている。
例えば、砂糖を含有せずに特定の糖アルコールを含有するシュガーレスソフトキャンディとしては、還元パラチノースを用いる、特許文献1のシュガーレスソフトキャンディ、特許文献2のシュガーレスグミキャンディが提案されている。
特許文献1のシュガーレスソフトキャンディは、2~23重量%のクエン酸、アスコルビン酸及びそれらの混合物からなる酸味料と、25~70重量%の還元パラチノースとを含む。特許文献2のシュガーレスグミキャンディは、有機酸を15~30重量%、還元パラチノースを55~75重量%含むグミキャンディである。両者とも強い酸味を呈するものの、還元パラチノース由来の清涼感のある風味が特徴であり、砂糖由来の旨味のある自然な風味という点では満足できるものはなかった。
他に、砂糖以外の糖類としてパラチノースおよび/または還元パラチノースをグミの全固形分中10~50重量%、前記糖類以外の砂糖、水飴等の糖類を20~60重量%、さらに有機酸を5~30重量%含むグミと、ソフトキャンディ生地とを組み合わせることで製造されるソフトキャンディが知られている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、該グミに砂糖を使用する場合は、実施例12の記載のように、結晶パラチノースを所定量含有した上で、10重量%程度の砂糖含有量が限度であり、旨味のある自然な風味に乏しいという点で改良の余地があった。
さらに特許文献3では、該グミを単独で提供するのではなく、ソフトキャンディ生地と組み合わせる複合ソフトキャンディの形態をとっており、該グミを取り巻くソフトキャンディ生地の存在が、該グミの長期保存時の耐久性不良を緩和すると共に酸味も緩和されることから、高酸味ソフトキャンディとしては物足りないものであった。
上記のように、長期保存時の耐久性が良好で、強い酸味を呈しながら砂糖の自然な旨味のある良好な風味のソフトキャンディは存在していなかった。
特開2011-72295号公報 特開2011-244775号公報 特開2014-90682号公報
本発明は、以上のような事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、強い酸味を呈する砂糖主体のソフトキャンディにおいて、個包装しなくとも、長期保存時の耐久性に優れ、変形、べたつきがなく、ソフトキャンディ粒同士の結着を生じない、旨味のある自然な甘味を有する風味良好な高酸味ソフトキャンディを提供するにある。
本発明は、ソフトキャンディに含まれる糖質甘味料全体重量中、砂糖を47重量%以上含有し、該ソフトキャンディの100倍希釈溶液のpHが3.2以下である高酸味ソフトキャンディであって、30℃において水100g又は100cmに対する溶解度が22g以下の有機酸を含有することを特徴とする高酸味ソフトキャンディにより上記目的を達成する。
好ましくは、前記糖質甘味料が非溶解で分散された高酸味ソフトキャンディである。より好ましくは、複数個収容包装された高酸味ソフトキャンディである。
さらに好ましくは、下記工程を順次行う高酸味ソフトキャンディの製法により、上記目的を達成する。
(1)砂糖を加温後、予め膨潤させた増粘安定剤を投入し混練して混練物を得る工程
(2)上記混練物に、30℃において水100g又は100cmに対する溶解度が22g以下の有機酸を混合し、糖質甘味料が非溶解の状態で分散された高酸味ソフトキャンディ生地を調製後成形し、高酸味ソフトキャンディを得る工程
(3)上記高酸味ソフトキャンディを、個包装することなく、複数個収容包装する工程
上述の通り、従来からある高酸味ソフトキャンディでは風味の点で十分に満足できるものがなかった。そこで、本発明者らは、風味向上に好適な砂糖を主成分とした上で、長期保存時の耐久性のある高酸味ソフトキャンディを提供するために、従来技術の着眼点である糖類ではなく、酸味成分に注目し、一般的に用いられるリンゴ酸やクエン酸以外の有機酸によって解決できないかと考え、鋭意検討を行った。
その結果、驚くべきことに、安息香酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸、L-アスコルビン酸のような比較的溶解度の低い有機酸を用いてソフトキャンディの高酸味を設計すると、従来の砂糖主体の高酸味ソフトキャンディの課題となっていた長期保存時の保形性やべたつき等の耐久性不良を防止しつつ、強い酸味を呈していても自然な旨味のある良好な風味とできることを見出し、本発明に到達した。
更にソフトキャンディの構造に注目し検討したところ、ソフトキャンディ成分を煮詰めることなく非加熱で混合、混練すると、大半の糖質甘味料がソフトキャンディ中で非溶解の状態で分散し、一部溶解した糖質甘味料に対して再結晶化の際の核となり、糖質甘味料全てが溶解する煮詰めソフトキャンディに比べ、一部溶解した糖質甘味料が効率よく完全に結晶化され、より保形力のある物性となることを見出し、本発明に到達した。
本発明の高酸味ソフトキャンディは、強い酸味を呈する砂糖主体のソフトキャンディであっても、長時間経過後も変形、べたつきがなく、ソフトキャンディ粒同士の結着を生じないため、長期保存時の耐久性を有する。
また、ソフトキャンディ生地全体に特定の有機酸を含有することにより強い酸味を呈するため良好な酸味風味を有する。さらに、ソフトキャンディの表面を糖衣する等の保護層形成工程、個包装工程のような工程を設ける必要がないので製造効率もよい。
また、長期保存時の耐久性を有することから、1粒ずつの個包装による製品としなくともよく、子どもでも連食し易く、経済的で、廃棄物削減に有効である。
さらに、本発明の高酸味ソフトキャンディは、砂糖を主体として含有するので、強い酸味を呈していても自然な旨味のある良好な風味を有する。
また、本発明の高酸味ソフトキャンディは、砂糖非含有、パラチノース及び/又は還元パラチノースを必須成分としなくとも、長期保存時の耐久性を有する。
次に、本発明を詳しく説明する。
本発明の高酸味ソフトキャンディは、糖質甘味料を含有し、糖質甘味料の中でも砂糖を主体に含有する。すなわち、ソフトキャンディに含まれる糖質甘味料全体重量中、砂糖を47重量%以上含有することが重要であり、好ましくは47~96重量%、より好ましくは57~96重量%含有することが、自然な旨味のある良好な風味を付与できる点で好適である。ここで、自然な旨味とは、素朴ながらもまろやかで深い味わいのある甘味を有する風味を意味する。
また、好ましくは、砂糖をソフトキャンディ全体重量中30~80重量%、より好ましくは30~72重量%含有することが、自然な旨味のある良好な風味を付与できる点で好適である。
上記砂糖としては、含みつ糖(黒糖、加工黒糖、赤糖、和三盆等)、分みつ糖(粗糖、耕地白糖、精製糖(白ざらめ糖、中ざらめ糖、グラニュー糖、上白糖、中白糖、三温糖等))が挙げられ、精製糖をさらに加工した加工糖(角砂糖、氷砂糖、粉糖、顆粒状糖、液糖)等も挙げられる。
また、本発明の高酸味ソフトキャンディは、砂糖以外の糖質甘味料を含有してもよく、例えば、ブドウ糖、果糖等の単糖類、麦芽糖、乳糖等の二糖類、マルトトリオース、パノース、ラフィノース等の三糖類、マルトテトラオース、キシロテトラオース、スタキオース等の四糖類、ソルビトール、キシリトール、マルチトール等の四糖類以下の糖アルコール等の糖質甘味料が挙げられる。これらの中でも、ソルビトールはソフトキャンディの硬さを適度に調整し得る保湿性の点で好適に用いられる。なお、本発明では、パラチノース、還元パラチノースを用いてもよいが、用いない場合であっても長期保存時の耐久性の良好な高酸味ソフトキャンディとすることができる。
また、本発明の高酸味ソフトキャンディは、該高酸味ソフトキャンディの100倍希釈溶液のpHが3.2以下であるものを指す。該pHを3.2以下とすることで、喫食すると官能的に強い酸味を感じる高酸味ソフトキャンディを得ることができる。該pHは、高酸味ソフトキャンディ1gに98℃の水99gを加えて得られる100倍希釈溶液を冷却し、常温(25±2℃)で測定すればよい。
さらに、本発明の高酸味ソフトキャンディは、30℃において水100g又は100cmに対する溶解度が22g以下の有機酸を含有することが、高酸味かつ長期保存時の耐久性の点で重要である。該溶解度とは、飽和水溶液100g又は飽和水溶液100cm中に含まれる溶質の最大質量(g)を意味する。なお、丸善株式会社発行の「化学便覧 基礎編」の改定4版及び改定3版から抜粋した、30℃の水に対する有機酸(溶質)の溶解度を表1に示す。
Figure 0007120738000001
表1に示すように、30℃において水100g又は100cmに対する溶解度が22g以下の有機酸としては、安息香酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸、L-アスコルビン酸等が挙げられる。
これらの中でも、安息香酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸は、長期保存時の耐久性の点で好ましい。中でもフマル酸は、爽快な酸味が得られ、少量で強力な酸味が得られる点で好ましく、高酸味ソフトキャンディ全体重量中3~40重量%が好適に用いられる。安息香酸、アジピン酸の場合は高酸味ソフトキャンディ全体重量中10~40重量%、コハク酸の場合はが高酸味ソフトキャンディ全体重量中15~40重量%が好適に用いられる。
また、L-アスコルビン酸は、良好な酸味風味を呈する、加えて機能性強化の点で好ましく、高酸味ソフトキャンディ全体重量中25~40重量%が好適に用いられる。
さらに、本発明の高酸味ソフトキャンディは、上記30℃において水100g又は100cmに対する溶解度が22g以下の有機酸のほかに、長期保存時の耐久性に影響しない程度、すなわち、ソフトキャンディ全体重量中5重量%以下であれば、30℃において水100g又は100cmに対する溶解度が22gを越える有機酸を併用してもよい。特に、DL-リンゴ酸、クエン酸、L-酒石酸は、良好な酸味風味を呈する点で好適に用いられる。
また、本発明の高酸味ソフトキャンディには、上記糖質甘味料、有機酸以外に、本発明の目的を損なわない範囲であれば、適宜副原料を用いてもよい。例えば、高甘味度甘味料、水飴、還元水飴、デキストリン等の澱粉分解物、澱粉、増粘安定剤(ゼラチン、プルラン、カラギーナン、ペクチン、ジェランガム、アルギン酸ナトリウム、グルコマンナン、キサンタンガム、トラントガム、グアガム、カラヤガム、タマリンドシードガム等)、油脂、安定剤、乳化剤、着色料、香料、乾燥果実、種実類、各種風味原料(醤油、みりん、味噌等の発酵食品、脱脂粉乳や加糖練乳等の乳製品、アミノ酸、茶類、コーヒー、ココア、ハーブ類、蜂蜜、果汁等)、ビタミン類、ミネラル類、食物繊維、美肌成分(コラーゲ
ン、ヒアルロン酸等)等が挙げられ、単独でも複数組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、ゼラチンは、保形性、及びソフトキャンディとしての良好な食感を付与する点で好ましい。他に、油脂は、歯への付着を軽減する点で好適に用いられる。
さらに、本発明の高酸味ソフトキャンディは、製造後の水分含有量が、ソフトキャンディ全体重量中4~15重量%であることが好ましく、より好ましくは4~7重量%である。また、ソフトキャンディの種類としては、チューイングキャンディ、グミ等の粘弾性を有するキャンディが挙げられる。
本発明の高酸味ソフトキャンディは、例えば、以下のようにして製造される。すなわち、まず、砂糖と、必要に応じて砂糖以外の糖質甘味料をニーダーに投入し、加温後、予め水で膨潤させた増粘安定剤、好ましくは予め水で膨潤させたゼラチンを投入し混練して混練物を得る。上記混練物に、30℃において水100g又は100cmに対する溶解度が22g以下の有機酸と、必要に応じて前記以外の有機酸及び副原料を添加して混合し、好ましくは非加熱(煮詰め工程なし、100℃未満)で糖質甘味料が非溶解の状態で分散された高酸味ソフトキャンディ生地を調製後、公知の成形方法を用いて、適宜形状に成形することにより、本発明の高酸味ソフトキャンディが得られる。
また、本発明の高酸味ソフトキャンディを製品化する際には、適宜包装体で包装すればよい。好ましくは、包装体の材質が、アルミ、アルミ蒸着、ガラス蒸着等の防湿性があり、密封可能な材質であることが、包装後、高酸味ソフトキャンディが吸湿や乾燥しない点で好適である。また、長期保存時の耐久性を有することから、1粒ずつを個包装せずに、複数個を収容包装することができる。
次に、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。
<実施例1~14>
表2に示す組成で、本発明の高酸味ソフトキャンディを以下のようにして製造した。すなわち、砂糖及び砂糖以外の糖質甘味料をニーダーに投入し、45℃になるまで加温し(非加熱)混合した。次いで、予め水で膨潤させたゼラチンを投入し混練して混練物を得た。該混練物に、表2記載の有機酸と、副原料とを添加して混合し、糖質甘味料が非溶解の状態で分散された高酸味ソフトキャンディ生地を調製後、公知の成形方法を用いて、立方体(縦10mm×横10mm×厚み10mm)形状の、高酸味ソフトキャンディを製造した。
次に、上記高酸味ソフトキャンディ10個を、個包装することなく、まとめて収容包装した。
<比較例1~2>
表2に示す組成で、実施例1と同様の製法で、ソフトキャンディを製造後、該ソフトキャンディ10個を、個包装することなく、まとめて収容包装した。
Figure 0007120738000002
Figure 0007120738000003

以上のようにして得られた実施例及び比較例の、長期保存後の耐久性(保形性、べたつき)、及び製造直後の風味について専門パネラー8名で評価した結果を合わせて表2に示す。なお、長期保存は、35℃湿度70%で4週間保存(常温25±2℃で1年間保存に相当)させた。保形性は製造直後の形状に対し目視比較した結果を示した。また、べたつきは、ソフトキャンディ粒同士の結着性を目視確認した。風味は官能評価の評点結果を示し、表3に評点表を示した。
評価の結果、実施例は、全体的に良好な評価であった。特に実施例3、12、14は、全ての項目で最良の結果が得られ大変良好であった。また、フマル酸を用いた実施例では、実施例2は爽やかな酸味を有しており、実施例3及び12は爽快感があり高酸味と深い味わいのある甘味とのバランスが絶妙で大変良好な風味であり、実施例4はインパクトのある刺激的で爽快な酸味を有しており、何れも、総じて高酸味を呈しつつ良好な風味であった。
これに対し、比較例1、2は、形状の変形やソフトキャンディ粒同士の結着が見られ、保存時の保形性、べたつき共に不良であった。すなわち、DL-リンゴ酸やクエン酸のように、30℃において水100g又は100cmに対する溶解度が22gを超える有機酸のみをソフトキャンディ全体重量中6重量%以上含有してpH3.2以下の高酸味を設計する場合、長期保存時の耐久性に問題があった。

Claims (5)

  1. ソフトキャンディに含まれる糖質甘味料全体重量中、砂糖を47重量%以上含有し、該ソフトキャンディの100倍希釈溶液のpHが3.2以下である高酸味ソフトキャンディであって、30℃において水100g又は100cmに対する溶解度が22g以下の有機酸を含有し、前記糖質甘味料が非溶解で分散されたことを特徴とする高酸味ソフトキャンディ。
  2. 前記有機酸を高酸味ソフトキャンディ全体重量中3~40重量%含有する請求項1記載の高酸味ソフトキャンディ。
  3. 前記有機酸が30℃において水100g又は100cmに対する溶解度が9.57g以下である請求項1又は2に記載の高酸味ソフトキャンディ。
  4. 請求項1乃至の何れか1項に記載の高酸味ソフトキャンディが複数個収容包装された高酸味ソフトキャンディ。
  5. 下記工程を順次行う請求項1乃至の何れか1項に記載の高酸味ソフトキャンディの製法。
    (1)砂糖を100℃未満で加温後、予め膨潤させた増粘安定剤を投入し混練して混練物を得る工程
    (2)上記混練物に、30℃において水100g又は100cmに対する溶解度が22g以下の有機酸を混合し、糖質甘味料が非溶解の状態で分散された高酸味ソフトキャンディ生地を調製後成形し、高酸味ソフトキャンディを得る工程
    (3)上記高酸味ソフトキャンディを、個包装することなく、複数個収容包装する工程
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