以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
図1および図2に示されるように、排水処理装置1は、たとえば下水等の排水を処理するための装置である。排水処理装置1は、排水中に含まれる処理対象物(たとえば、有機物、窒素化合物など)を分解する。排水処理装置1は、反応槽2内において、微生物の凝集体である活性汚泥を保持する。排水処理装置1は、活性汚泥と排水とが混合されてなる混合液10を反応槽2内に滞留させ、上記の処理対象物を生物学的に処理する。すなわち、排水処理装置1では、一種の活性汚泥法が用いられる。処理対象物は、有機物のみであってもよいし、有機物に加えて、窒素化合物であってもよい。排水処理装置1は、下水に限られず、有機性排水であればどのような排水であっても適用可能である。
排水処理装置1は、いわゆる標準活性汚泥法ではなく、MLSS濃度を高めることを可能にした処理方法を実現する。標準活性汚泥法における反応槽内でのMLSS濃度は、一般的に、2000~4000mg/L程度とされている。一方、排水処理装置1における反応槽2内のMLSS濃度は、たとえば膜分離活性汚泥法におけるMLSS濃度に等しいレベルであり、たとえば6000mg/L以上である。排水処理装置1におけるMLSS濃度は、たとえば10000mg/L以上とすることもできる。
排水処理装置1は、混合液を収容して活性汚泥により排水を処理する反応槽2と、反応槽2で処理された処理液(ろ過液)を収容して更に処理する後処理槽15とを備える。反応槽2は、たとえば、上面が開放された矩形の水槽であり、この反応槽2内に、微生物の凝集体である活性汚泥が投入され、あるいは育成されている。
反応槽2は、処理すべき排水を導入する流入口3を有する。流入口3は反応槽2の一方の側に設けられ、反応槽2の他方の側に隣接するようにして、後処理槽15が設けられる。反応槽2の底部には、複数の散気管4が配列されている。これらの散気管4に対して、反応槽外のブロワ等の送気手段から送気管14を経由して空気が送られ、その空気によって反応槽内の混合液が撹拌される。活性汚泥は、この曝気によって撹拌され、懸濁状態となる。図2および図3に示されるように、散気管4は、反応槽2の他方の側(流入口3から遠い側)にのみ並べられており、曝気によって反応槽2内に旋回流を発生させる。
反応槽2には、槽内の混合液をろ過してろ過液を得るための複数のフィルタモジュール9が設けられている。反応槽2には、フィルタモジュール9に接続されてフィルタモジュール9からの流出水(ろ過液)を槽外に排出する流出路11が取り付けられている。流出路11は、反応槽2内を水平方向に延びる配管であり、その基端部は反応槽2内にあって閉じられており、その先端部である接続部11aが、反応槽2の側壁2aを貫通して槽外に突出している。
流出路11の接続部11aは、後処理槽15の上部に接続されている。後処理槽15は、たとえば上面が開放された竪型の水槽である。後処理槽15には、スポンジキューブ17などの多数のプラスチック製の充填材が揺動可能な状態で充填されている。後処理槽15は、ろ過液20とスポンジキューブ17とを収容する。後処理槽15の底部には、小型散気管16が設けられており、小型散気管16から曝気が行われている。このように、後処理槽15では、ろ過液を直接、反応槽2外に導き、スポンジキューブ17等のプラスチック製の充填材を流動可能な状態で充填し、小型散気管16により曝気がなされている槽の上部に吐出させる。後処理槽15の下部には処理水流出配管18が接続されている。処理水流出配管18は、鉛直方向に延びており、後処理槽15の水位の位置でオーバーフローする開口部を有する。このように、後処理槽15の底部から配管を出して立ち上げ、後処理槽15の水位の位置でオーバーフローさせる処理水流出配管18を設ける。この後処理槽15で、フィルタ7を通過した小さい活性汚泥フロックが、スポンジキューブ17(充填材)の層に捕捉される。後処理槽15のスペースは従来の沈殿池より小さい。後処理槽15を設置することで、沈殿池を省略できる。
排水処理装置1では、反応槽2に設けられたフィルタモジュール9のフィルタ7によって、槽内の混合液がろ過され、ろ過液がフィルタモジュール9から排出される。排水処理装置1では、反応槽2に流入した原水のすべてがフィルタを通過して流出路11から反応槽2外に出る構造になっている。すなわち、フィルタモジュール9は、混合液の全量を通過させる。ここで、「全量」とは、排水処理装置1に流入した排水の量を基準として、そのすべて、およびほぼすべてを含む意味である。たとえば、排水処理装置1に流入した排水の量を100%とした場合に、99%の量の排水(または混合液)は、「全量」といえる範囲内である。
フィルタモジュール9は、その広い面(後述する枠部30の側面31)が互いに対面するように、所定の間隔をもって並べられている。これらのフィルタモジュール9の下方には、上記した散気管4が設置されている。曝気によって生じる旋回流により、フィルタモジュール9に対する上昇流が発生する。これにより、反応槽2内の攪拌、活性汚泥への酸素供給、およびフィルタ7を揺動させての洗浄の機能が発揮される。
一方、反応槽2の流入口3側には、網入り充填材6が設けられている。網入り充填材6は、目開きが好ましくは10~50mmである網袋21に、その目開きより大きいスポンジキューブ等のプラスチック製の多数の充填材22が収納されたものである。網入り充填材6は、フィルタモジュール9とは別の箇所で、反応槽2に吊るすなどして設置される。網入り充填材6は、散気管4から散気された空気による上昇流が水面に達して横向きに流れ下向きに変わるあたりに設置されるとよい。
曝気で作られる反応槽2内の液の流れは、網入り充填材6内では弱まり、即ち液中や充填材表面の微生物へと拡散する酸素の量が減るため、酸素で阻害される脱窒反応が進行しやすくなる。脱窒反応が進めば、pHが上昇するので、硝化によるpH低下を、曝気量を弱めることなく緩和できる。また、充填材22を網に入れることにより、流れやpHの状態を見ながら充填材22の量や位置を調整しやすくなる。
続いて、図1および図4を参照して、反応槽2におけるろ過部について詳細に説明する。
フィルタモジュール9は、フィルタ7と流出管8とが組み合わされたものである。フィルタ7は、たとえば剛性プラスチック製の枠部30と、枠部30に接合された織布(ろ材)38とを有する。枠部30は、薄型箱状の型枠であり、相対する2つの側面31と、側面31の下辺部を連結する底面34と、側面31の側辺部を連結する端面32とを含む。側面31はもっとも広い面であり、鉛直に配置される。端面32は側面31よりも狭い面である。枠部30の上面33は、反応槽2の水面より高い位置にあり、開放されている。底面34は閉鎖されている。なお、枠部30は金属製であってもよいが、織布38の接着性の観点で、プラスチック製の方が好ましい。
図4(a)および図4(b)に示されるように、枠部30の各側面31には、混合液を通過させるための矩形の開口部31aがそれぞれ形成されている。この開口部31aの周縁31bに、織布38が接着されている。そして、一対の端面32の片方の下部の1箇所に、接続管36が設けられている。この接続管36に、流出管8の第1接続端(第1端)41aが接続される。接続管36の接続口36aはフィルタ7の内部空間Aに連通しており、接続口36aを介してろ過液がフィルタ7から流出する。混合液の液面下では、流出管8の第1接続端41aに向かう接続口36aと開口部31aとを除き開口されておらず、閉鎖されている。
織布38の目開きは、たとえば10μm以上200μm以下の範囲内である。より好ましくは、織布38の目開きは、たとえば20μm以上50μm以下の範囲内であってもよい。織布38は、樹脂製であってもよい。より詳細には、織布38は、たとえばポリエステル製、ポリエチレン製、またはナイロン製であってもよい。織布38の目開きは、精密ろ過膜の孔径よりも大きい。織布38の目開きは、部位に関わらず、ほぼ一定である。すなわち、織布38は、均一な目開きを有する。織布38の繊維は一層であり、不織布のように複雑に入り組んだ隙間は無い。
続いて、図1および図5(a)を参照して、流出管8について詳細に説明する。剛性の流出管8は、鉛直方向に延びてフィルタ7に接続された第1縦管部41と、第1縦管部41と平行に設けられた第2縦管部(直管部)43と、これらの第1縦管部41および第2縦管部43の中間部を連結する横連結管部42とを有する。流出管8は、全体としてH字状をなしている。流出管8は、たとえば2個のT字の継手(チーズ等と呼ばれる)を溶接等により接合したものであってもよい。第1縦管部41の下端である第1接続端41aが、フィルタ7の接続管36に接続されている。第1縦管部41の上端41bは、たとえば開放されているが、閉じられていてもよい。第2縦管部43の下端である第2接続端(第2端)43aは、流出路11の受け管12に嵌め込まれている。流出管8は、流出路11に第2接続端43aが接続され、フィルタ7を通過したろ過液を通す。
流出管8について別の観点から説明すると、流出管8は、フィルタ7(枠部30)の反対側に向かって一旦上方に立ち上がり、次いで180°曲がって下方に向けて延び、流出路11の受け管12に嵌め込まれている。流出管8の180°の曲がりのうち、少なくとも流出路11の受け管12の直上は鉛直上方に管が延び、その上端である上開放部43bは水面上の位置で開口部(後述する栓挿入口)となっている。その途中には、ティー字の継ぎ手があり、フィルタ7側からの管が横側に接続する形になっている。このように、流出管8が、枠部30の外で一旦上方に立ち上がり、次いで180°曲がって下方に向けて延びるので、一体化された枠部30と織布38と流出管8のセット(フィルタモジュール9)の重みで、流出路11の受け管12に対する流出管8の嵌め込み部は外れにくくなっている。なお、反応槽2の側壁2aに対してフィルタ7を支持する支持部材が設けられてもよい。
続いて、フィルタモジュール9の流出管8と、流出路11の接続構造について詳細に説明する。反応槽2の流出路11は、流出管8の第2接続端43aに接続されてろ過液を受ける受け管12を有する。受け管12は、鉛直方向に延びる。受け管12の下端は流出路11のヘッダ管に接続されており、受け管12の上端は流出管8の第2接続端43aに嵌め込まれている。第2接続端43aに嵌め込まれた受け管12の上端は、流出管8に対する接続部12aである。受け管12の中心軸線は、流出管8の第2接続端43aの中心軸線に一致する。
流出管8は、上記したように、下側に位置する第2接続端43aと、上側に位置して混合液の液面上に突出し大気に開放された上開放部43bと、を含む第2縦管部43を有する。流出管8の第2接続端43aは、受け管12の真上に位置している。流出管8の第2接続端43aの管径は、受け管12の管径より大きくなっている。より詳しくは、第2接続端43aの内径と、受け管12の外径とはほぼ等しくなっている。このように、流出管8の第2接続端43aの管径と、受け管12の管径とが異なっており、受け管12に対して、流出管8の第2接続端43aが着脱可能に嵌め込まれている。
排水処理装置1において、フィルタモジュール9は、フィルタ7が破損したり透過流束が低下したりしたとき等に、取り外すことができるようになっている。流出路11の受け管12の外径が、流出管8の第2接続端43a(流出路の受け管12の直上に位置する部分)の内径とほぼ等しくなっているので、流出管8を流出路11の受け管12から外すことなく、水面下の受け管12の口に後述の栓51を嵌め込んで受け管12を塞ぐことができる。すなわち、水面下の配管の着脱操作をすることなく、受け管12が栓51で塞がれる。受け管12が塞がれると、その後に流出管8を受け管12から外しても、受け管12から活性汚泥が漏れない。よって、活性汚泥を流出させることなくフィルタモジュール9を取り外すことができる。またフィルタモジュール9の取付け時には、栓51が受け管12に嵌まったまま流出管8を流出路11の受け管12に嵌め込み、活性汚泥が漏れないようにすることができる。
より詳細に説明すると、図5(b)に示されるように、フィルタモジュール9の取外し時には、受け管閉鎖具50が用意される。受け管閉鎖具50は、たとえばゴム製の栓51と、栓51に連結された長尺かつ剛性の棒52とを有する。栓51は、棒52側の基端部よりも先端部の方が縮径されるように円錐台状をなしており、その先端部が受け管12の内径よりも僅かに小さくなっている。栓51は、第2接続端43a内に配置された受け管12の接続部12aの内部に挿入されて、受け管12を閉鎖する。
流出管8は、第2縦管部43の上開放部43bを通して、栓51を差し込んだり引き抜いたりすることができるように構成されている。これにより、流出路11側の受け管12を塞ぐことのできる栓51を剛性の棒52などに固定して、栓挿入口である上開放部43bから下ろして、嵌め込むことができる。なお、棒52は、栓51が受け管12に嵌め込まれた状態で、上開放部43bを通って水面上に突出するような長さを有する。その後、フィルタモジュール9を上方に向けて取り外せば、活性汚泥が流出することなく、フィルタ7の取り外しができる(図5(c)参照)。フィルタモジュール9の復旧後は、フィルタモジュール9を流出路11側の受け管12にセットした後、受け管閉鎖具50を引き上げて栓51を受け管12から引き抜けばよい。
排水処理装置1では、有機物等の被処理物質を含む排水(原水)が反応槽2に流入すると、反応槽2内の活性汚泥と混合し、混合液中で活性汚泥中の微生物により被処理物質が分解され、被処理物質が分解された原水と活性汚泥との混合液はフィルタ7の織布38を経由してフィルタモジュール9に入る。そこで織布38の目開きより大きい活性汚泥粒子が織布38で捕捉され、その後の液(ろ過液)は流出管8、次いで流出路11を経て、後処理槽15に流入する。反応槽2では、フィルタモジュール9の下方からの曝気によって織布38が揺動して、ろ過された活性汚泥粒子を剥離させながら、ろ過を行う。一方、後処理槽15では、フィルタ7を通過してきた細かい活性汚泥粒子が曝気によりスポンジキューブ17に接触してスポンジキューブ17の孔や間隙に捕捉され、さらに浄化された処理水となって、処理水流出配管18から流出する。
原水中のアンモニウムイオンが硝化細菌により酸化され反応槽内のpHが低下した場合には、網入り充填材6を設置する。すると、混合液10の流れが網入り充填材6を通過するときに充填材22の抵抗により流速が低下し、この部分では混合液10が長く滞留し、混合液10中や充填材22に付着した微生物による酸素消費によって混合液10中の溶存酸素が低下ないし無くなり、硝酸塩から窒素ガスへの脱窒が起きてpHが上昇して、反応槽2内のpH低下を緩和する。
排水処理装置1によれば、反応槽2に設けられたフィルタ7により、混合液10がろ過され、反応槽2内のMLSS濃度が高められる。フィルタ7に接続された流出管8は、流出路11の受け管12にろ過液を流す。ここで、受け管12に対して、流出管8の第2接続端43aは異径とされており着脱可能に嵌め込まれている。よって、フィルタ7および流出管8を流出路11の受け管12から容易に取り外すことができる。流出管8が外されるとき、受け管12を別の部材等によって閉鎖しておくことにより、反応槽2の水位を下げる必要もない。したがって、この排水処理装置1では、フィルタ7の容易な取外しが可能になっている。
上記した特許文献1に記載の技術では、フィルタ目詰まり時の洗浄や破損時の交換のためのフィルタ取り外しの際、活性汚泥が流出路から流れ出さないよう、あらかじめ反応槽の水位を流出路より下げなければならなかった。本実施形態の排水処理装置1によれば、このような煩わしさがない。
また、特許文献1に記載の技術では、フィルタは仕切板の一部をU字状に切り欠いて作った流出路の内面(切り欠きの縁部)に固定用具(押さえ板)で押さえつける取り付け方法となっているので、押さえつけ部分からの活性汚泥のリークを防止する手段が複雑になる。なお、フィルタと流出路の内面とを接着剤で付着させるとフィルタに孔が開いた場合、補修のため仕切り板を含めて引き上げるか反応槽の汚泥を完全に抜くかしなければならないので非現実的である。本実施形態の排水処理装置1では、活性汚泥のリーク対策が容易になっており、したがってろ過液を容易に得ることができる。
また、特許文献1に記載の技術では、通常運転時にフィルタの透過流束を高く保つためフィルタ目開きを通常数十μmにしており、小さな活性汚泥フロックはフィルタを透過する恐れがあるので、それらを沈降分離するための沈殿池は依然として必要であった。本実施形態の排水処理装置1によれば、フィルタモジュール9が設けられた反応槽2と後処理槽15とにより、沈殿池が不要になっている。
また、特許文献1に記載の技術では、MLSS高濃度化により硝化細菌も高濃度化し、硝化が進行してpHが低下する可能性があった。その場合、硝化を抑えようとDOを下げようとすると、曝気によるフィルタの洗浄が不十分となって透過流束が低下することになり、結局アルカリを添加するpH制御装置が必要になってしまう。本実施形態の排水処理装置1によれば、網入り充填材6の設置により、そのようなpHの低下が抑えられる。
流出管8の第2接続端43aが受け管12の真上に位置するので、流出管8を上方に引き抜くだけで、受け管12から流出管8を取り外すことができる。よって、フィルタ7の取外しが更に容易になる。
流出管8の第2接続端43aの管径は受け管12の管径より大きく、第2接続端43aの内径と受け管12の外径とがほぼ等しい。この場合、受け管12は、流出管8の第2接続端43aの内部に嵌まり込む。よって、受け管12に流出管8の第2接続端43aが接続された状態でも、受け管12の閉鎖が可能である。
流出管8の第2縦管部43を通して栓51を差し込み、受け管12を閉鎖することができる。この状態で流出管8を取り外せば、活性汚泥の流出を防ぎつつ、フィルタ7を容易に取り外すことができる。受け管12に栓51を挿入する際、活性汚泥は反応槽2内の視界を妨げ得るが、第2縦管部43が栓51のガイドとなり、栓51を受け管12に容易に挿入できる。
フィルタ7は、混合液10の液面下では、流出管8の第1接続端41aに向かう接続口36aと開口部31aとを除き開口していない。このような構成のフィルタ7によれば、簡易な構成で、混合液10のろ過を容易に行うことができる。混合液10は開口部31aに接合された織布38を必ず通過することになる。すなわち、混合液10の全量を確実に通過させることができる。
排水処理装置1は、網入り充填材6を備える。混合液を網袋に通すと、充填材の抵抗により、混合液の流速が低下する。よって、網袋内に混合液が長く滞留し、無酸素状態を作り出しやすい。その結果、脱窒反応が促進され、pHの上昇をもたらす。反応槽内での硝化の進行等によってpHが低下しそうな場合でも、pHの低下が緩和される。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。たとえば、流出路の構成が次のように変更されてもよい。上記実施形態の流出路11が反応槽2の側壁2aを貫通する箇所よりも上流側(たとえば反応槽2の流入口3側)に、混合液10が流通しない仕切り部を設け、反応槽2を上流側区画と下流側区画とに区切ってもよい。フィルタモジュール9および受け管12を上流側区画に取り付け、たとえば、仕切り部を貫通するように流出路を設ける。上流側区画の混合液はフィルタモジュール9によってろ過され、流出路を通ったろ過液は下流側区画に流入する。その後、ろ過液は、元の反応槽2の水位と同じ位置で反応槽外に流出する。このような流出路の構成によれば、下流側区画内に後処理槽と同様の構造を設置することができる。既存の反応槽2を改造して用いる場合でも、大きな改造をすることなく、フィルタ7を備えたメンテナンス性の高い排水処理装置が実現される。
流出管8の構造は適宜変更可能である。流出管8は、T字状の管部材を組み合わせたものでなくてもよい。受け管12に対する流出管8(第2縦管部43)の位置関係は、真上でなくてもよい。受け管12よりも流出管8の方が高い位置にあれば、他の位置関係であってもよい。たとえば、流出管8が受け管12の斜め上方に位置してもよい。
フィルタ7の構造は、上記実施形態(図4に示される構造)以外の公知のフィルタ構造が採用されてもよい。
栓51はゴム栓に限られず、他の材質からなる栓であってもよい。フィルタ7および流出管8が取り外された際の受け管12からの活性汚泥の流出防止のために、栓51とは異なる他の部材が用いられてもよい。たとえば板状部材が受け管12に被せられてもよい。
網入り充填材6の設置が省略されてもよい。反応槽2内における散気管4やフィルタモジュール9(フィルタ7および流出管8)の配置は、適宜変更されてもよい。
受け管12の管径が流出管8の第2接続端43a(第2端)の管径より大きくてもよい。
図6~図9を参照して、他の実施形態に係るフィルタの形状および構造について説明する。図6および図7(a)に示されるように、フィルタ7A(図8参照)は、矩形枠状の支持材60と、その支持材60の大きさよりも大きな容量を有する袋状のろ材63とを備える。支持材60は、たとえば、混合液10を通過させることができるプラスチック製または金属製の板で作製された網の箱(土台)である。支持材60の目開きは、たとえば数cmである。この支持材60の下部に、数十cmの長さを有する管部材61が固定されている。管部材61は、たとえば塩化ビニル管である。管部材61の内端部61aは支持材60の内部に配置され、管部材61の外端部61bは支持材60の外部に配置される。管部材61の胴部61cが、たとえば接着剤などによって支持材60に固定されている。管部材61の外端部61bが支持材60から突出する長さは、後述のソケット66に取り付けられることができる程度の長さである。
ろ材63は、上記一実施形態の織布と同様のものであってもよい。ろ材63の目開きは、たとえば数十μm程度である。図6に示されるように、袋状のろ材63は、矩形の第1面63aをなす1枚のろ材と、矩形の第2面63bをなす1枚のろ材とが重ね合わされた構造を有し、これらの第1面63aおよび第2面63bの3辺が縫合ライン64において糸等を用いて縫合されている。フィルタ7Aの組立て時において、第1面63aおよび第2面63bは一体化されており、ろ材63の上部には、縫合されない上辺の部分に相当する上部開口63eが形成されている。第1面63aおよび第2面63bの3辺の端縁から縫合ライン64までの幅(縫い代)は、ろ材63の内部に支持材60が納まる程度の大きさに調整される。なお、縫合ライン64から水漏れが発生しないよう、2重の縫合が行われてもよい。
続いて、図7(a)および図7(b)を参照して、フィルタ7Aの組立て方法を説明する。図7(a)および図7(b)に示されるように、ろ材63の上部開口63eを通じて支持材60をろ材63内に収納する。ろ材63の上辺が、上部縫合ライン65において糸等を用いて縫合される。この場合も、上部縫合ライン65から水漏れが発生しないよう、2重の縫合が行われてもよい。
図7(b)に示されるように、支持材60から突出する管部材61の外端部61bにろ材63が被さるように、ろ材63内に支持材60を配置する。管部材61の外端部61bとろ材63を挟むようにして、外側から、ソケット66を管部材61に取り付ける。このとき、接着剤等は用いられず、ソケット66は、管部材61に対して着脱可能に取り付けられる。管部材61とソケット66に挟み込まれた部分のろ材63に、キリ等を用いて孔63fを形成する。すなわち、管部材61の外端部61bの先端に重なる位置において、ろ材63に孔63fを形成する。この孔63fは、たとえば1cm程度の直径を有し、通水口の役割を果たす。このようにして、支持材60、ろ材63、管部材61およびソケット66を有するフィルタ組立体68が組み立てられる。
その後、図8に示されるように、3mm程度の線径を有する金属網で作製したスペーサ70内にフィルタ組立体68を入れ、ソケット66を外部の配管(上記実施形態における流出管8等)に接続する。このように、フィルタ7Aでは、ろ材63の内部に定形性を有する支持材60が配置されており、フィルタ組立体68がスペーサ70の内部に配置される。スペーサ70には、たとえば、流出管8を支持するための金属製の支持金具が取り付けられてもよい。
フィルタ7Aおよび流出管8からなるフィルタモジュールは、活性汚泥槽に設置される。ろ材63の外側から水圧で処理水が流入する。活性汚泥はろ材63によって分離される。ろ材63の内側にはプラスチック製か金属製の網の箱が入っているため、ろ材63が水圧に押されてつぶれることは無い。ろ材63は常に散気管4からの曝気空気によって洗浄されるが、長期間使用するとバイオフィルムが発生し、取り外しての洗浄が必要になる場合がある。その際は、ソケット66から外部の配管を取り外したのち、ろ材63の袋の1辺の糸(たとえば上部縫合ライン65)を取り外し、中から支持材60と管部材61を取り出す。ろ材63に対して、薬剤洗浄または超音波洗浄を行い、ろ材63の目詰まりを解消する。その後、ろ材63を再度セットして使用することが出来る。ろ材63に孔が空いた場合も、小さい孔であれば、小さく切り取った別のフィルタを接着剤で固定することで、孔を塞ぐことができる。
このようなフィルタ7Aによれば、ろ材63が目詰まりした際に、管部材61とソケット66を取り外すことによって、フィルタを切らずに交換できる。支持材60と管部材61、およびソケット66は再利用可能である。取り外したろ材63は薬剤に浸漬するか、または超音波洗浄機で洗浄することによって再生され、再度支持材60に取り付けることが出来る。
上述の一実施形態では、プラスチック製の枠部30が高価になりがちであり、また、モジュールの重さが重くなり、配管への着脱が困難な場合がある。織布38が接着剤で固定されている場合には、織布38の再利用は難しい。フィルタ7Aによれば、安価な製作が可能であり、また、接着剤の使用が最小限に抑えられていることによって、フィルタ7Aの分解やろ材63の再利用も容易である。
なお、この実施形態のようにろ材63の4辺すべてを糸で縫合するのではなく、図9に示されるように、上辺のみ上部固定具69によって閉じた構成が採用されてもよい。このようなフィルタ組立体68Bによれば、ろ材63の交換時に糸の取り外しを行うことなく、ろ材63を交換できる。上部固定具69は、たとえば、一対の長尺の板材と、ネジ等の締結手段とを有する固定手段である。
続いて、図10および図11を参照して、変形形態に係る排水処理装置1Cについて説明する。図10に示されるように、排水処理装置1Cは、フィルタ7Cと、流出管8Cと、流出管8Cに設けられた逆洗機構とを備える。フィルタ7Cは、上記一実施形態に係るフィルタ7と同様の構造である。ただし、フィルタ7Cは、混合液10内に完全に水没した状態で設置されている。フィルタ7Cは、たとえば反応槽2に設置された支持台71上に取り付けられる。なお、フィルタ7Cに変えて、上記変形形態に係るフィルタ7Aが設置されてもよい。
流出管8Cは、フィルタ7Cの接続管36に接続端72aが接続された立ち上がり部72と、立ち下がり部74と、立ち下がり部74の下端のソケット79に接続された受け管73とを有する。立ち下がり部74の上端には、ソケット80を介して大気開放管76が接続されている。大気開放管76に設けられた逆洗時電磁弁78は、通常運転時には開いて大気開放管76が大気開放されている。逆洗運転時には、逆洗時電磁弁78は閉じられる。
フィルタモジュール9Cの配管の上部が通常時は大気解放されていることで、フィルタ7Cでは、水位差により活性汚泥がろ過される。そのため、単純に逆洗水を流すと配管の上部から逆洗水が流出してしまうが、受け管73には、流出側電磁弁77が設けられている。この流出側電磁弁77は、通常運転時には開かれている。流出側電磁弁77が、逆洗運転時には閉鎖される。逆洗時電磁弁78によって、逆洗水が大気開放管76から流出(漏出)することが防止される。また、流出側電磁弁77によって、処理水側に逆洗水が流出することが防止される。電磁弁は、大気側へ逆洗水が流出しにくい逆止弁でもよい。
フィルタモジュール9Cの交換時には、大気開放管76およびソケット80を取り外す。上述の一実施形態では、ろ過能力低下時のバッファとしてフィルタモジュール9の上方を水面から1mほど突出させていたが、本実施形態では、フィルタは全て水没しているため、逆洗時に水面上に出ていて目詰まりしていない部分から逆洗水が染み出すことが防止されている。逆洗は、たとえば1時間に1回、5分間実施する。タイミングと回数は変更可能である。なお、逆洗時には、原水の流入は停止する。
また、図11に示されるように、複数の配管およびフィルタ7C(図では3つ)に対して1個の逆洗時電磁弁78および流出側電磁弁77が取り付けられてもよい。1モジュールにつき電磁弁を1個取り付けると、電磁弁の費用が嵩んでしまうため、図11に示されるような複数の配管をまとめた構成を採用することにより、低コスト化を図ることができる。
なお、フィルタ7Cおよび流出管8Cを備えたフィルタモジュール9Cにおいても、フィルタモジュール9Cの取り外し方は上述の一実施形態と同様である。すなわち、立ち下がり部74の下端に固定されたソケット79を受け管73から取り外す。その際に、ゴム栓付の金属棒で受け管73の端部に蓋(栓)をすることで、活性汚泥の抜出を行わずにフィルタモジュール9Cの取り外しを行うことができる。この場合、図10に示される範囲Xに相当する部品群(ソケット79を含む)が、取り外される。なお、フィルタモジュール9Cは支持台71の上に設置される。支持台71は金属枠で出来ており、散気管4からの気泡がフィルタモジュール9Cのフィルタ7Cに当たるようになっている。
排水処理装置1Cによれば、排水処理装置1と同様の作用効果が奏される。また、電磁弁を用いた逆洗機構により、定期的に自動でフィルタ7Cが逆洗されるようになっている。これにより、フィルタ7Cの目詰まりが予防され、フィルタモジュール9Cを取り外してのフィルタ交換や超音波洗浄の頻度を減らすことができる。電磁弁は、大気側へ逆洗水が流出しにくい逆止弁でもよい。