JP7119339B2 - 塗装工法 - Google Patents

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Description

本発明は、塗料組成物を用いた塗装工法に関し、建築及び土木、電気部品、並びに自動車等の幅広い産業分野の様々な工業用製品分野において使用することができ、特に、建築及び土木分野に好ましく使用可能であり、これら技術分野に属する。
樹脂を主成分とする材料は、建築及び土木、電気部品、並びに自動車等の幅広い産業分野で使用されている。前記材料は、柔軟性や加工性を付与する目的で、可塑剤が配合された樹脂(以下、「可塑剤含有樹脂」という。)を主成分とすることがある。このため、例えば、可塑剤含有樹脂を主成分とする材料の上に、汎用の塗料等を直接塗装すると、当該塗料により形成された塗膜中に可塑剤成分が移行する。これにより、塗膜表面がべたついたり、汚染物質が付着したり、塗膜がシワのように変形したりするといった問題が生じることがある。
建築及び土木分野では、可塑剤含有樹脂として、シーリング材が使用される。シーリング材は、建築物の外壁等において、主に線防水を目的としてコンクリートの伸縮目地及び誘発目地、並びに成型材の板間目地等に充填される。さらに、シーリング材の表面に塗料、仕上塗材、防水材等を塗布することで、目地部分の保護を図ることができ、全体的な意匠性が統一され美観性を高めることができる。しかしながら、シーリング材に含まれる可塑剤が、シーリング材上に形成された塗膜に移行することによって、空気中の汚染物質が塗膜に付着したり、塗膜がシワのように変形したりすることで、外観を損なうという問題があった。
また、建築物の屋根は、塩化ビニル樹脂を主成分とする防水シート(以下、「塩化ビニル系防水材)という。)を使用して防水される。塩化ビニル系防水材が経年で劣化した場合には、塗膜防水により改修することがある。しかし、前記シーリング材の場合と同様に、塩化ビニル系防水材に含まれる可塑剤が、塩化ビニル系防水材上に形成された塗膜に移行することによって、空気中の汚染物質が塗膜に付着したり、塗膜防水の付着性が低下してフクレが発生することで、外観を損なうという問題があった。
さらに、建築物の内装においても、塩化ビニル樹脂を主成分とする壁紙及び床材等(以下、「塩化ビニル系内装材)という。)がよく用いられている。塩化ビニル樹脂が経年で劣化した場合には、古い塩化ビニル系内装材を新品に取り替える方法が一般的であるが、廃棄物処理に伴うダイオキシン発生を回避する観点から、これに替わる方法として、近年塗装による改装が注目されつつある。しかしながら、このような塩化ビニル系内装材の表面に、直接塗料などを施した場合には、前記シーリング材及び塩化ビニル系防水材の場合と同様に、塩化ビニル系内装材に含まれる可塑剤が、塩化ビニル系内装材上に形成された塗膜に移行することによって、空気中の汚染物質が塗膜に付着したり、塗膜がシワのように変形したりすることで、外観を損なうという問題があった。
このため、可塑剤含有樹脂であるシーリング材、塩化ビニル系防水材及び塩化ビニル系内装材の上に、塗料、仕上塗材、防水材等を塗布する場合は、可塑剤の移行を防止したり、塗料、仕上塗材、防水材等との付着性を向上させる目的で、逆プライマーと呼ばれるプライマーを可塑剤含有樹脂の上に塗布した後に、塗料、仕上塗材、防水材等を塗布することがある。前記逆プライマーはシーリング材、塩化ビニル系防水材及び塩化ビニル系内装材の種類によって専用のものを使い分ける必要がある。しかしながら、シーリング材、塩化ビニル系防水材及び塩化ビニル系内装材を施工して長期間経過後に、塗料、仕上塗材、防水材等を用いて改修を行う場合、シーリング材、塩化ビニル系防水材及び塩化ビニル系内装材の種類を見分けることは非常に困難である。このため、専用の逆プライマーを使用することができず、塗料、仕上塗材、防水材等に可塑剤が移行するなどして汚染したり、塗膜がシワ状に変形したりするという問題がある。また、逆プライマーの主成分はウレタン樹脂及び/又はエポキシ樹脂であるため、紫外線や熱による劣化に伴う変色が著しく、逆プライマーの上に透明塗料を塗布した場合には、前記変色が目立ち外観を損なうという問題がある。さらに、逆プライマーは高硬度の塗膜を形成するため、温冷繰返しによるシーリング材の動きに追従することが難しく、塗膜にひび割れが発生するなどの問題がある。
このような背景の下、シーリング材、塩化ビニル系防水材及び塩化ビニル系内装材等に含まれる可塑剤による、塗料、仕上塗材、防水材等の汚染を防止することを目的とした塗料組成物(以下、「可塑剤移行防止用塗料組成物」という。)を、あらかじめ塗布してから塗料、仕上塗材、防水材等を塗布する方法が提案されている。
特許文献1及び2には、シーリング材の汚染防止方法として、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂を含む塗料組成物によってシーリング材を被覆する方法が開示されている。
特許文献3には、シーリング材及び塩化ビニル系内装材の汚染防止方法として、親水性基を含有し特定の吸湿率を有する吸湿性粉体と合成樹脂を含む塗料組成物によってシーリング材又は塩化ビニル系内装材を被覆する方法が開示されている。
特許文献4には、シーリング材の汚染防止方法として、エポキシ樹脂を含む塗料組成物によってシーリング材を被覆する方法が開示されている。
特開平9-262539号公報 特開2006-341224号公報 特開2004-143431号公報 特開平11-92711号公報
しかしながら、特許文献1~4に記載された可塑剤移行防止用塗料組成物は、シーリング材、塩化ビニル系防水材及び塩化ビニル系内装材と塗料、仕上塗材、防水材等との初期付着性は良好であり、フタル酸ジオクチル(以下、「DOP」という、溶解度パラメータ値(以下、「SP値」という。)8.9)等のSP値が比較的低い可塑剤による汚染は防止できているものの、フタル酸ブチルベンジル(以下、「BBP」という、SP値9.9)等のSP値が比較的高い可塑剤による汚染を防止できていなかった。そのため、SP値が比較的高い可塑剤を含有する可塑剤含有樹脂においては、汚染防止を目的とした塗料組成物を使用したにも関わらず、塗料、仕上塗材、防水材等に可塑剤が移行するなどして汚染が見られるという問題がある。また、可塑剤の移行により塗料、仕上塗材、防水材等にシワ状の変形などが発生するという問題もある。
また、特許文献4に記載された可塑剤移行防止用塗料組成物は、エポキシ樹脂を主成分としているため、紫外線による変色やひび割れが著しく、その上にクリア塗料を塗布した場合には変色が目立つため、その上に塗布される塗料としては着色塗料に限られるという問題がある。
前記した通り、可塑剤含有樹脂に塗布した塗料、仕上塗材、防水材等に経年で空気中の汚染物質の付着がないこと(以下、「耐汚染性」という。)以外にも、シワ及びフクレ等の変形がないこと(以下、「変形防止性」という。)、剥がれがないこと(以下、「付着性」という。)、及び変色がないこと(以下、「変色防止性」という。)も求められ、既存の塗料組成物ではこれら全てを満足することは困難であった。
ここで、前記の耐汚染性、変形防止性、付着性及び変色防止性をまとめて、「可塑剤移行防止性」と呼ぶ。
さらに、特許文献1~4に記載された塗料組成物では、前記可塑剤移行防止性と、紫外線の影響による、可塑剤移行防止用塗料組成物の塗膜の変色及びひび割れがないこと(以下、「耐候性」という。)、及び、温冷繰返しによっても、可塑剤含有樹脂の動きに追従することで、可塑剤移行防止用塗料組成物の塗膜のひび割れがないこと(以下、「耐温冷繰返し性」という。)を同時に満足する事は困難であった。
加えて、可塑剤含有樹脂の上に直接塗布される塗料組成物の付着性が充分に発揮されず、防水性等の機能を有効に付与できないことが問題であった。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、専用の逆プライマーを使用しなくても、可塑剤含有樹脂に含まれる可塑剤のSP値にかかわらず、可塑剤移行防止性に優れ、さらに、耐候性及び耐温冷繰返し性を同時に満足する塗装工法を提供することである。また、本発明は、前記塗料組成物と共に、防水性等の機能を有効に付与することができる塗料組成物を用いた塗装工法、並びに、上記塗装工法を実施して得られる塗装被膜及び塗装物品を提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、可塑剤含有樹脂の上に、特定の塗料組成物(A)を塗布し、当該塗料組成物(A)の塗膜を形成する工程を含む塗装工法を見出し、本発明を完成した。
本発明は以下の通りである。
[1]可塑剤含有樹脂の上に、塗料組成物(A)を塗布し、当該塗料組成物(A)の塗膜を形成する工程を含む塗装工法であって、
前記塗料組成物(A)がアルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂を含み、当該塗料組成物(A)の塗膜のガラス転移温度(Tg)が30~100℃であることを特徴とする塗装工法。
[2]前記アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂の溶解度パラメータ値が9.6以上である、[1]に記載の塗装工法。
[3]前記アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂の構成単量体単位としてポリオキシアルキレン基含有エチレン性不飽和単量体を1~50質量%含む、[1]又は[2]に記載の塗装工法。
[4]前記アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂の構成単量体単位として水酸基含有エチレン性不飽和単量体を1~25質量%含む、[1]~[3]のいずれか一に記載の塗装工法。
[5]前記アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂の数平均分子量がポリメチルメタクリレート換算した値として4,000~30,000である、[1]~[4]のいずれか一に記載の塗装工法。
[6]前記可塑剤含有樹脂が、シーリング材、塩化ビニル系防水材又は塩化ビニル系内装材のいずれかである、[1]~[5]のいずれか一に記載の塗装工法。
[7]前記塗料組成物(A)の塗膜の上に、塗料組成物(B)を塗布し、当該塗料組成物(B)の塗膜を形成する工程を含み、
当該塗料組成物(B)が、アクリルゴム又はアクリル樹脂が水性媒体中に分散されてなるエマルション組成物と、無機充填材とを含む、塗料組成物(B1)である、[1]~[6]のいずれか一に記載の塗装工法。
[8]前記アクリルゴム又はアクリル樹脂が、炭素数4~14の炭化水素基を有する、エチレン性不飽和単量体単位(a)を40~98質量%、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体単位(b)を0.1~5質量%、シアノ基含有エチレン性不飽和単量体単位(c)を1~35質量%、(メタ)アクリル酸と単官能エポキシ化合物との反応生成物からなる単量体単位(d)を0~20質量%、及び前記単量体のうちの少なくとも1種と共重合可能な他の単量体単位(e)を0~60質量%を構成単位として含有する、[7]に記載の塗装工法(但し、前記構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(c)、構成単位(d)、及び構成単位(e)の合計を100質量%とする。)。
[9]前記アクリルゴム又はアクリル樹脂が、炭素数4~14の炭化水素基を有する、エチレン性不飽和単量体単位(a)を30~98質量%、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体単位(b)を0.1~5質量%、グリシジル基含有エチレン性不飽和単量体単位(f)を0.1~5質量%、及び前記単量体のうちの少なくとも1種と共重合可能な他の単量体単位(e)を0~60質量%を構成単位として含有する、[7]に記載の塗装工法(但し、前記構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(f)、及び構成単位(e)の合計を100質量%とする。)。
[10]前記塗料組成物(B1)が、さらに、無機質水硬性物質を含む、[7]~[9]のいずれか一に記載の塗装工法。
[11]前記塗料組成物(A)の塗膜の上に、塗料組成物(B)を塗布し、当該塗料組成物(B)の塗膜を形成する工程を含み、
当該塗料組成物(B)が、バインダー樹脂を含む第一剤、及び、イソシアネート基を有する有機ポリイソシアネートを含む第二剤とを備える、塗料組成物(B2)である、[1]~[6]のいずれか一に記載の塗装工法。
[12]前記バインダー樹脂の水酸基価が10~1,200mgKOH/gであり、ポリスチレン換算した値として数平均分子量が2,000~30,000である、[11]に記載の塗装工法。
[13]前記塗料組成物(B2)が、さらに、水酸基価の異なる多価アルコールを少なくとも2種含む、[11]又は[12]に記載の塗装工法。
[14]塗膜のTgが-40℃~20℃である、第一の塗料組成物(B2)を塗布し、当該第一の塗料組成物(B2)の塗膜を形成する工程と、
前記工程で得られた塗膜の上に、塗膜のTgが-30℃~30℃である、第二の塗料組成物(B2)を塗布し、当該第二の塗料組成物(B2)の塗膜を形成する工程と、
を含む、[11]~[13]のいずれか一に記載の塗装工法。
[15] [1]~[14]のいずれか一に記載の塗装工法を実施して得られる塗装被膜。
[16] [1]~[14]のいずれか一に記載の塗装工法を実施して得られる塗装物品。
本発明の塗装工法によれば、可塑剤含有樹脂に含まれる可塑剤のSP値にかかわらず、可塑剤移行防止性に優れ、さらに、耐候性及び耐温冷繰返し性を同時に満足する塗料組成物の塗膜を形成することができる。また、前記塗膜の上に、付着性及び防水性に優れる塗料組成物の塗膜を形成することができる。
本発明の実施例における試験体用基材である。
以下、本明細書に開示される技術の各種実施形態を詳しく説明する。尚、本明細書においては、アクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂を(メタ)アクリル樹脂と表し、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を(メタ)アクリロイル基と表し、アクリロキシ及び/又はメタクリロキシを(メタ)アクリロキシと表し、アクリレート及び/又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと表し、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表す。
本発明は、可塑剤含有樹脂の上に、塗料組成物(A)を塗布し、当該塗料組成物(A)の塗膜を形成する工程を含む塗装工法に関する。
本発明の塗装工法に係る塗料組成物が適用される可塑剤含有樹脂は、特に限定はなく、シーリング材、塩化ビニル系防水材及び塩化ビニル系内装材等を挙げることができ、シーリング材が特に好ましい。
前記シーリング材としては、一成分形または二成分形のシリコーン系、ポリイソブチレン系、変成シリコーン系、ポリサルファイド系、変成ポリサルファイド系、アクリル系、ポリウレタン系、アクリルウレタン系及びブチルゴム系等を挙げることができる。
前記可塑剤の具体例としては、DOP,BBP、ジブチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、及びジブトキシエチルフタレート等のフタル酸エステル類、ジエチレングリコールジベンゾエート等の安息香酸エステル類、ジブチルアジペート、ビス(2-エチルヘキシル)アジペート、ジブチルセバケート及びビス(2-エチルヘキシル)セバケート等の脂肪族二塩基酸エステル類、オレイン酸ブチル及びアセチルリシリノール酸メチル等の脂肪族エステル類、トリクレジルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェート及びトリブトキシエチルホスフェート等のリン酸エステル類、塩素化パラフィン類、エポキシ化大豆油等のエポキシ系可塑剤類等を挙げることができる。
以下、塗料組成物(A)、塗料組成物(B)、塗料組成物の製造方法、塗装工法及び用途について説明する。
1.塗料組成物(A)
塗料組成物(A)は、可塑剤含有樹脂の上に塗布される、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂を含む塗料組成物であって、当該塗料組成物(A)の塗膜の動的粘弾性測定によるガラス転移温度(Tg)が30~100℃である。前記アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂中のアルコキシシリル基が湿気硬化し、架橋することで、可塑剤移行防止性、耐候性及び耐温冷繰返し性に優れた塗膜を得ることができる。
また、塗料組成物(A)には、その他成分を含有させることもできる。
以下、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂及びその他成分について、説明する。
1.1.アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂
アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂を含む塗料組成物(A)の塗膜のTgとしては、可塑剤移行防止性及び耐候性を向上できる点で、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。また、可塑剤移行防止性、耐候性及び耐温冷繰返し性を同時に満足できる点で、95℃以下が好ましく、85℃以下がより好ましい。
アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂のSP値としては、可塑剤含有樹脂に含まれる可塑剤のSP値に関わらず、可塑剤移行防止性を向上できる点で、9.6以上が好ましく、9.8以上がより好ましく、10.0以上であることが特に好ましい。また、幅広い種類の溶剤や添加剤との溶解性の観点から、11.0以下であることが好ましい。
本発明において、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂のSP値は、簡便な実測法である濁点滴定法により測定することができる。
濁点滴定法によるSP値は、高分子溶液に貧溶媒を滴下し、濁りを生じるまでに要した貧溶媒の滴定量を求め、下記のK.W.SUH、J.M.CORBETTの式(Journal of Applied Polymer Science,12,2359,1968の記載参照)に従い算出される値である。
この際、貧溶媒として、SP値の低い貧溶媒(例えば、イソオクタンなど)とSP値の高い貧溶媒(例えば、水など)を用いる。
式(1) SP値=(Vml 1/2・δml+Vmh 1/2・δmh)/(Vml 1/2+Vmh 1/2
ここで、上記計算式中の各記号は、以下を意味する。
ml=v×v/((1-V)×v+V×v
mh=v×v/((1-V)×v+V×v
T:高分子を溶解させるのに要した溶媒の量(ml)
L:SP値の低い貧溶媒の滴定量(ml)
H:SP値の高い貧溶媒の滴定量(ml)
=L/(T+L)
=H/(T+H)
:高分子を溶解させるのに用いた溶媒のモル分子容(cm/mol)
:SP値の低い貧溶媒のモル分子容(cm/mol)
:SP値の高い貧溶媒のモル分子容(cm/mol)
δml=δ×T/(T+L)+δ×L/(T+L)
δmh=δ×T/(T+H)+δ×H/(T+H)
δ:高分子を溶解させるのに用いた溶媒のSP値
δ:SP値の低い貧溶媒のSP値
δ:SP値の高い貧溶媒のSP値
本発明の濁点滴定では、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂0.03gをテトラヒドロフラン(以下、「THF」という。)10mlに溶解した中に、イソオクタンを加えていき、濁点での滴定量L(ml)を読み、同様にTHF溶液中に脱イオン水を加えたときの濁点における滴定量H(ml)を読み、以下の計算式により得られたVml、Vmh、δml及びδmhを用いて、上記式(1)により、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂のSP値を算出した。
尚、各溶剤のモル分子容(cm/mol)は、THF:81.1、イソオクタン:165.6、脱イオン水:18であり、各溶剤のSP値は、THF:9.1、イソオクタン:6.9、脱イオン水:23.4である。
ml=81.1×165.6/((1-V)×165.6+V×81.1)
mh=81.1×18/((1-V)×18+V×81.1)
=L/(10+L)
=H/(10+H)
δml=9.1×10/(10+L)+6.9×L/(10+L)
δmh=9.1×10/(10+H)+23.4×H/(10+H)
アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂としては、1個以上のアルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和単量体(以下「アルコキシシリル基含有エチレン性不飽和単量体」という。)を重合して得られる重合体が好ましく、アルコキシシリル基含有単量体と共重合可能なエチレン性不飽和単量体(以下「共重合性不飽和単量体」という。)との共重合体がさらに好ましい。
アルコキシシリル基含有エチレン性不飽和単量体は、1個以上のアルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和単量体である。
アルコキシシリル基含有エチレン性不飽和単量体のエチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基及び(メタ)アリル基等が挙げられ、これらの中でも、原料の入手の容易さや反応性の観点から、(メタ)アクリロイル基及びビニル基が好ましい。
アルコキシシリル基含有エチレン性不飽和単量体の具体例としては、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジブトキシシランγ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルプロポキシシラン及びγ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルブトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基を有する単量体、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン及びビニルジメチルエトキシシラン等のビニル基を有する単量体等が挙げられる。
上記アルコキシシリル基含有エチレン性不飽和単量体は、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
共重合性不飽和単量体のエチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、(メタ)アクリルアミド基及び(メタ)アリル基等が挙げられ、これらの中でも、原料の入手の容易さや反応性の観点から、(メタ)アクリロイル基及びビニル基が好ましい。
共重合性不飽和単量体としては、炭化水素基含有エチレン性不飽和単量体、ポリオキシアルキレン基含有エチレン性不飽和単量体、水酸基含有エチレン性不飽和単量体、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体及び芳香族ビニル単量体、不飽和イミド化合物及び末端にモノ(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー類、並びにその他エチレン性不飽和単量体等が挙げられる。
炭化水素基含有エチレン性不飽和単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート及びt-ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート及びトリシクロ[5.2.1.02、6]デカン-8-イル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレートが挙げられる。
水酸基含有エチレン性不飽和単量体の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコールーポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート;グリセロールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂の構成単量体単位として水酸基含有エチレン性不飽和単量体を1~25質量%含む事が好ましい。可塑剤移行防止性を向上できる点で、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましい。また、貯蔵安定性を損なわない点で、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
ポリオキシアルキレン基含有エチレン性不飽和単量体の具体例としては、前記水酸基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートの他、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルキル基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
ポリオキシアルキレン基含有エチレン性不飽和単量体のオキシアルキレン基の繰り返し単位のアルキレン部分の炭素数は、可塑剤移行防止性及び耐候性を発現できる点で2~4が好ましく、2~3がより好ましい。オキシアルキレン基の平均繰り返し数は、可塑剤移行防止性、耐候性及び耐温冷繰返し性を同時に満足できる点で、2~20が好ましく、2~15がより好ましい。
アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂の構成単量体単位としてポリオキシアルキレン鎖含有エチレン性不飽和単量体を1~50質量%含む事が好ましい。可塑剤移行防止性を向上できる点で、1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。また、塗膜の物性を損なわない点で、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましい。
カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α-クロルアクリル酸及びけい皮酸等の不飽和モノカルボン酸類又はその無水物類;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸及びメサコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物類;3価以上の不飽和多価カルボン酸又はその無水物類;コハク酸モノ(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)及びフタル酸モノ(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)等の2価以上の多価カルボン酸のモノ〔(メタ)アクリロイロキシアルキル〕エステル類;並びにω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等の両末端にカルボキシ基と水酸基とを有するポリマーのモノ(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。これらのカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体のうち、コハク酸モノ(2-アクリロイロキシエチル)及びフタル酸モノ(2-アクリロイロキシエチル)は、それぞれアロニックスM-5300及びM-5400〔東亞合成(株)製〕の商品名で市販されている。
芳香族ビニル単量体の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-ビニルトルエン、m-ビニルトルエン、p-ビニルトルエン、p-クロルスチレン、o-メトキシスチレン、m-メトキシスチレン、p-メトキシスチレン、2-ビニルベンジルメチルエーテル、3-ビニルベンジルメチルエーテル、4-ビニルベンジルメチルエーテル、2-ビニルベンジルグリシジルエーテル、3-ビニルベンジルグリシジルエーテル及び4-ビニルベンジルグリシジルエーテル等が挙げられる。
不飽和イミド化合物の具体例としては、N-フェニルマレイミド及びN-シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
末端にモノ(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー類の具体例としては、ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ-n-ブチル(メタ)アクリレート及びポリシロキサン等の高分子鎖を有するもの等を挙げることができる。
その他エチレン性不飽和単量体の具体例としては、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート;2-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミド)エチル(メタ)アクリレート、2-(2,3-ジメチルマレイミド)エチル(メタ)アクリレート等のイミド(メタ)アクリレート;2-アミノエチル(メタ)アクリレート、2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-アミノプロピル(メタ)アクリレート、2-ジメチルアミノプロピルアクリレート、3-アミノプロピル(メタ)アクリレート及び3-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド及びN-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド及びその誘導体;グリシジル(メタ)アクリレート;アリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記共重合性不飽和単量体は、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂の数平均分子量(以下、「Mn」という。)としては、ポリメチルメタクリレート換算した値として4,000~30,000である事が好ましい。可塑剤移行防止性、耐候性及び温冷繰返し性のいずれにも優れる点で、4,000以上が好ましく、6,000以上がより好ましい。また、貯蔵安定性及び作業性を損なわない点で、30,000以下が好ましく、25,000以下がより好ましい。
本発明のアルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂において、Mnとは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」)という。)により測定した分子量をポリメチルメタクリレート換算した値である。
尚、本発明において、GPCにより測定したアルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂のMnは、以下の条件で測定した値を意味する。
・装置:東ソー(株)製GPC HLC-8020
・検出器:RI検出器
・カラム:東ソー製TSKgel SuperMultiporeHZ-M 4本
・カラムの温度:40℃
・溶離液組成:THF(内部標準として硫黄を0.03%含むもの)、流量0.60mL/分
・分子量標準物質:ポリメチルメタクリレ―ト
アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂の共重合形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体又はグラフト共重合体のいずれでも良い。
本発明の塗装工法に係る塗料組成物(A)に含有されるアルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂の含有量としては、可塑剤移行防止性、耐候性及び温冷繰返し性のいずれにも優れるという点で、塗料組成物(A)の固形分100質量%に、50~100質量%であることが好ましく、より好ましくは60~100質量%であり、特に好ましくは70~100質量%である。
アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂の製造方法としては、特に制限は無く、前記したエチレン性不飽和単量体を使用して、溶液重合、塊状重合、懸濁重合及び乳化重合等の公知の方法を用いることができる。
これらの中でも、重合体の製造が容易、かつ乳化剤等の余計な不純物を含まない点で溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で製造する場合は、使用するエチレン性不飽和単量体を有機溶剤に溶解し、熱重合開始剤を添加し、加熱攪拌することにより得られる。溶液重合法でラジカル重合により合成する場合は、使用するエチレン性不飽和単量体を有機溶剤に溶解し、熱ラジカル重合開始剤を添加し、加熱攪拌することにより得られる。又、必要に応じて、重合体の分子量を調節するために連鎖移動剤を使用することができる。
溶液重合法に用いられる有機溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;並びにヘキサン、ヘプタン及びミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
熱重合開始剤の具体例としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル及びアゾビスシアノバレリックアシッド等のアゾ系開始剤;t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジt-ブチルパーオキシド及びジクミルパーオキシド等の有機過酸化物;並びに過酸化水素-鉄(II)塩、ペルオキソ二硫酸塩-亜硫酸水素ナトリウム、クメンヒドロペルオキシド-鉄(II)塩等が挙げられる。
熱重合開始剤の使用割合は、目標とする分子量に応じて適宜設定すれば良い。熱重合開始剤の使用割合は、使用する全エチレン性不飽和単量体の合計100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましい。
1.2.その他成分
本発明の塗装工法に係る塗料組成物(A)は、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂を含有するものであるが、目的に応じて種々の成分を配合することができる。
その他成分としては、具体的には、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂以外の樹脂、硬化触媒、脱水剤、顔料、造膜助剤、増粘剤、消泡剤、分散剤、ポリイソシアネート硬化剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、密着性付与剤、レベリング剤、染料、防腐剤、防藻剤、沈降防止剤、つや消し剤、可塑剤、無機粉体及び有機溶剤等が挙げられる。
以下、これらの成分について説明する。
尚、後記するその他成分は、例示した化合物の1種のみを使用しても良く、2種以上を併用しても良い。尚、後記するその他成分の内、液体のものは、可塑剤移行防止用塗料組成物と相溶するものであればいずれのものも使用できるが、その他成分によりSP値が大きく変化する可能性がある場合は、SP値が8.5~11.0であることが好ましい。
1.2.1.硬化触媒
硬化触媒は、塗料組成物(A)の湿気硬化性を向上する目的で配合することができる。
硬化触媒の具体例としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジマレート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジマレート及びオクチル酸スズ等の有機スズ化合物;ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトナート)、チタンテトラ(アセチルアセトナート)、ジオクタノキシチタンジオクタネート及びジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)等の有機チタン化合物が挙げられ、触媒効果が高い点で有機スズ化合物が好ましい。
硬化触媒の含有割合は、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂を含む全固形分100質量部に対して0.01~20質量部が好ましい。硬化触媒の割合を0.01質量部以上にすることで触媒効果が充分に得られやすく、硬化触媒の割合を20質量部以下とすることで塗料組成物(A)の貯蔵安定性を確保できる。
1.2.2.脱水剤
脱水剤は、塗料組成物(A)の貯蔵安定性を向上する目的で配合することができる。
脱水剤の具体例としては、五酸化リン、炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム(無水芒硝)及びモレキュラーシーブス等の無機固体、オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、オルト酢酸エチル、メチルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン及びビニルトリメトキシシラン等の加水分解性エステル化合物等が挙げられる。
脱水剤の含有割合は、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂を含む全固形分100質量部に対して0.1~20質量部が好ましい。脱水剤の割合を0.1質量部以上にすることで塗料組成物(A)の貯蔵安定性を向上でき、脱水剤の割合を20質量部以下とすることで塗膜の物性を維持できる。
2.塗料組成物(B)
本発明の塗装工法に係る塗料組成物(A)の塗膜の上に塗布される塗料組成物(B)は、可塑剤含有樹脂の保護、防水、美観付与等を目的に塗布される。
塗料組成物(B)は、上塗材、中塗材及び下塗材のいずれに用いても良く、塗料組成物(A)の塗膜の上に少なくとも1層からなる塗膜を形成するように塗装される。すなわち、上塗材、下塗材及び上塗材、中塗材及び上塗材、並びに、下塗材、中塗材及び上塗材等の組み合わせにより塗装される。また、防水性等の機能を有効に付与できる点で、少なくとも2層からなる塗膜を形成することがより好ましい。
塗料組成物(B)としては、アクリルゴム、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、ゴムアスファルト及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の成分を含むことが好ましい。
尚、本発明において、アクリルゴムとは、伸び率が300%以上かつ引張強さが1.3N/mm以上のアクリル樹脂を意味する。また、アクリル樹脂とは、前記アクリルゴム、アクリルウレタン樹脂及びアクリルシリコン樹脂以外のアクリル樹脂を意味する。
前記した中でも、アクリルゴム、アクリル樹脂又はアクリルウレタン樹脂が好ましい。アクリルゴム又はアクリル樹脂としては、アクリルゴム又はアクリル樹脂が水性媒体中に分散されてなるエマルション組成物と、無機充填材とを含む塗料組成物(以下、「塗料組成物(B1)」という。)が好ましい。
また、アクリルウレタン樹脂としては、バインダー樹脂を含む第一剤と、イソシアネート基を有する有機ポリイソシアネートを含む第二剤とを備える二液型塗料組成物(以下、「塗料組成物(B2)」という。)が好ましい。
2.1.塗料組成物(B1)
塗材組成物(B1)に含有されるアクリルゴム又はアクリル樹脂としては、例えば、以下のものが好ましく挙げられる。これらは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
〔x1〕炭素数4~14の炭化水素基を有する、エチレン性不飽和単量体に由来する構成単位(a)を40~98質量%、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体に由来する構成単位(b)を0.1~5質量%、シアノ基含有エチレン性不飽和単量体に由来する構成単位(c)を1~35質量%、(メタ)アクリル酸と単官能エポキシ化合物との反応生成物からなる単量体に由来する構成単位(d)を0~20質量%、及び前記単量体の少なくとも1つと共重合可能な他の単量体に由来する構成単位(e)を0~60質量%含有するアクリルゴム又はアクリル樹脂。
但し、前記構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(c)、構成単位(d)、及び構成単位(e)の合計を100質量%とする。
〔x2〕炭素数4~14の炭化水素基を有する、エチレン性不飽和単量体(a)を30~98質量%、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体に由来する構成単位(b)を0.1~5質量%、グリシジル基含有エチレン性不飽和単量体に由来する構成単位(f)を0.1~5質量%、及び前記単量体の少なくとも1つと共重合可能な他の単量体に由来する構成単位(e)を0~60質量%含有するアクリルゴム又はアクリル樹脂。
但し、前記構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(f)、及び構成単位(e)の合計を100質量%とする。
前記エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基及び(メタ)アリル基等が挙げられ、これらの中でも、原料の入手の容易さや反応性の観点から、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
態様〔x1〕及び態様〔x2〕において、前記構成単位(a)を形成するための炭素数4~14の炭化水素基を有する、エチレン性不飽和単量体(以下、「単量体(a)」という。)の具体例としては、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記単量体(a)は、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
態様〔x1〕における構成単位(a)の含有量は、40~98質量%であることが好ましく、50~95質量%であることがより好ましい。構成単位(a)の含有量が40質量%以上であると、優れた柔軟性及びゴム弾性を有する塗膜が形成される。また、構成単位(a)の含有量が98質量%以下であると、耐水性に優れるので好ましい。
態様〔x2〕における構成単位(a)の含有量は、30~98質量%であることが好ましく、40~95質量%であることがより好ましい。構成単位(a)の含有量が30質量%以上であると、優れた柔軟性及びゴム弾性を有する塗膜が形成される。また、構成単位(a)の含有量が98質量%以下であると、耐水性に優れるので好ましい。
態様〔x1〕及び態様〔x2〕において、前記構成単位(b)を形成するためのカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(以下、「単量体(b)」という。)の具体例としては、
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α-クロルアクリル酸及びけい皮酸等の不飽和モノカルボン酸類又はその無水物類;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸及びメサコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物類;3価以上の不飽和多価カルボン酸又はその無水物類;コハク酸モノ(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)及びフタル酸モノ(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)等の2価以上の多価カルボン酸のモノ〔(メタ)アクリロイロキシアルキル〕エステル類;並びにω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等の両末端にカルボキシ基と水酸基とを有するポリマーのモノ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。これらのカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体のうち、コハク酸モノ(2-アクリロイロキシエチル)及びフタル酸モノ(2-アクリロイロキシエチル)は、それぞれアロニックスM-5300及びM-5400〔東亞合成(株)製〕の商品名で市販されている。上記単量体(b)は、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
態様〔x1〕及び態様〔x2〕における構成単位(b)の含有量は、0.1~5質量%であることが好ましく、0.1~3質量%であることがより好ましい。構成単位(b)の含有量が0.1質量%以上であると、優れた柔軟性及びゴム弾性を有する塗膜が形成される。また、構成単位(b)の含有量が5質量%以下であると、耐水性に優れるので好ましい。
態様〔x1〕において、前記構成単位(c)を形成するための「シアノ基含有エチレン性不飽和単量体(以下、「単量体(c)」という。)の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-エチルアクリロニトリル、α-イソプロピルアクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、α-フルオロアクリロニトリル等が挙げられる。上記単量体(c)は、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
態様〔x1〕における構成単位(c)の含有量は、1~35質量%であることが好ましく、1~15質量%であることがより好ましい。構成単位(c)の含有量が1質量%以上であると、優れた柔軟性及びゴム弾性を有する塗膜が形成される。また、構成単位(c)の含有量が35質量%以下であると、耐水性に優れるので好ましい。
態様〔x1〕において、前記構成単位(d)を形成するための「(メタ)アクリル酸と単官能エポキシ化合物との反応生成物からなる単量体」(以下、「単量体(d)」という。)は、好ましくは(メタ)アクリル酸と単官能エポキシ化合物とを反応させてなる、(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。
単官能エポキシ化合物の具体例としては、フェニルグリシジルエーテル、フェノールポリエチレングリコールグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、p-メチルフェニルグリシジルエーテル、p-エチルフェニルグリシジルエーテル、p-sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル等のフェニル基を有する単官能エポキシ化合物、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、ブトキシポリエチレングリコールグリシジルエーテル等のフェニル基を有しない単官能エポキシ化合物が挙げられ、フェニル基を有する単官能エポキシ化合物が好ましい。上記単官能エポキシ化合物は、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
単量体(d)の具体例としては、例えば、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-p-メチルフェノキシプロピルアクリレート、及び2-ヒドロキシ-3-2-エチルヘキシロキシプロピルアクリレート等が挙げられる。上記単量体(d)は、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
態様〔x1〕における構成単位(d)の含有量は、0~20質量%であることが好ましく、0~15質量%であることがより好ましい。構成単位(d)を含むことにより、被塗装面や上塗材に対する付着性が向上する。また、構成単位(d)の含有量が20質量%以下であると、塗膜の柔軟性に優れ、また、エマルション組成物を製造する際の重合安定性に優れるので好ましい。
態様〔x2〕において、前記構成単位(f)を形成するための「グリシジル基含有エチレン性不飽和単量体」(以下、「単量体(f)」という。)の具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの単量体(f)は、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
態様〔x1〕における構成単位(f)の含有量は、0.1~5質量%であることが好ましく、0.5~3質量%であることがより好ましい。構成単位(f)を含むことにより、被塗装面や上塗材に対する付着性が向上する。また、構成単位(f)の含有量が5質量%以下であると、塗膜の柔軟性に優れ、また、エマルション組成物を製造する際の重合安定性に優れるので好ましい。
態様〔x1〕及び〔x2〕において、前記単量体の少なくとも1つと共重合可能な他の単量体に由来する構成単位(e)を形成するための単量体(以下、「単量体(e)」という。)の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート及びプロピル(メタ)アクリレート等の炭素数1~3の炭化水素基を有する、(メタ)アクリレート、スチレン及びα-メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体等が挙げられる。これらの単量体(f)は、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
アクリルゴム又はアクリル樹脂の示差走査熱量計によるTgは特に限定されないが、-80~40℃であることが好ましく、-65~0℃であることがより好ましく、-65~-20℃であることが特に好ましい。Tgが-80~10℃であれば、優れた付着性及び耐低温性を有する塗膜が形成される塗料組成物とすることができる。
塗料組成物(B1)におけるアクリルゴム又はアクリル樹脂の含有量は、塗料組成物(B1)の固形分100質量%に、10~70質量%であることが好ましく、20~70質量%であることがより好ましい。アクリルゴム又はアクリル樹脂の含有量が10~70質量%であれば、上塗材の塗工性が良く、十分な引張特性を有する塗膜を形成することができる。
アクリルゴム又はアクリル樹脂の製造方法としては、原料単量体を公知の方法でラジカル重合させて得ることができる。ラジカル重合の中でもエマルション重合が好ましく、得られるエマルション組成物の固形分濃度は、30~70質量%が好ましい。また、アンモニア、水溶性アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を用いて、エマルションのpH値を調整しても良い。
塗料組成物(B1)は、アクリルゴム又はアクリル樹脂と、無機充填剤とを含むことが好ましい。無機充填剤は、被塗装面に塗布する際の作業性や、塗膜の機械的特性を向上させるための成分である。無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化チタン、タルク、マイカ、カオリン、クレー、フェライト、珪砂等の無機粉末や無機質の中空バルーンなどの塗料などに一般的に用いられる無機充填剤が挙げられる。上記無機充填剤は、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
無機充填剤の形状は、特に限定されず、球状、扁平状、不定形等のいずれであっても良く、形状が均一であっても、不均一であっても良い。さらに、無機充填剤の平均一次粒径も特に限定されないが、レーザー回折法(湿式法)により測定される平均一次粒径が、0.01~1,000μmであることが好ましく、0.01~200μmであることがより好ましい。
塗料組成物(B1)における無機充填剤の含有量は、エマルション組成物の固形分を100質量部とした場合に、10~500質量部であることが好ましく、20~400質量部であることがより好ましい。無機充填剤の含有量が10~500質量部であれば、上塗材の塗工性が良く、十分な引張特性を有する塗膜を形成することができる。
塗料組成物(B1)には前記成分に加えて、無機質水硬性物質を含有させても良い。無機質水硬性物質は、塗膜を強靭にし、被塗装面との剥離、又は膨れの発生を抑制するための成分である。また、塗膜の耐水性、湿潤面に対する接着性及び成膜性の向上に効果がある。
無機質水硬性物質としては、各種のセメント、無水及び半水石膏、生石灰並びに亜鉛華等が挙げられる。これらの中でもセメントを使用することが好ましく、例えば、普通ポルトランドセメント、アルミナセメント、早強セメント、フライアッシュセメント、高炉セメント、白色セメント、コロイドセメント及び中庸熱ポルトランドセメント等があり、さらにこれらの中でも、特に入手が容易で、本発明の効果を充分に発揮できる、ポルトランドセメント、白色セメント又はアルミナセメントが好ましい。上記無機質水硬性物質は、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
無機質水硬性物質の含有量は、エマルション組成物の固形分を100質量部とした場合に、10~200質量部であることが好ましく、20~180質量部であることがより好ましい。無機質水硬性物質の含有量が10~200質量部であれば、強靭かつ柔軟な塗膜が得られ、湿潤面に対する接着性も良好である。
塗料組成物(B1)は、前記無機質水硬性物質の他に各種の添加剤を含有しても良い。添加剤としては、着色顔料、湿潤剤、分散剤、消泡剤、粘性調整剤、増粘剤、レベリング剤、垂れ防止剤、pH調整剤、架橋剤、可塑剤、安定剤、防腐剤、防カビ剤、防藻剤、凍結防止剤、成膜助剤、抗菌剤、酸化防止剤、溶剤、フラッシュラスト防止剤、カップリング剤、キレート剤、濡れ向上剤、乾燥剤、モルタルやコンクリートに一般的に使用されている減水剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、収縮低減剤、膨張剤、膨張材、無機や有機繊維材料、及びポゾランなどが挙げられる。
塗料組成物(B1)の粘度は、塗布方法により調整され、特に限定されないが、BM型粘度計により25℃で測定した粘度は、施工性を考慮すると、1,000~200,000mPa・sであることが好ましく、5,000~50,000mPa・sであることがより好ましい。
塗料組成物(B1)の塗膜の伸び率は、5~2,000%であることが好ましく、100~1,000%であることがより好ましく、300~1,000%であることが特に好ましい。また、塗料組成物(B1)の塗膜の引張強さは、0.2~3.0N/mmであることが好ましく、1.0~3.0N/mmであることがより好ましく、1.3~3.0N/mmであることが特に好ましい。塗膜は、前記の数値範囲内で、引張強さは比較的小さく、かつ、伸び率は大きい塗膜、即ち、より柔軟な塗膜とすることができる。また、引張強さは比較的大きく、かつ、伸び率は小さい塗膜、即ち、より剛性の高い塗膜とすることもできる。塗膜の引張強さと伸び率は、塗料組成物(B1)に含まれる樹脂又はゴムの組成、無機充填剤及び添加剤の種類や量により調整することができる。
本発明では、可塑剤含有樹脂、塗料組成物(A)の塗膜、及び塗料組成物(B1)の塗膜が形成された塗装物品の加熱促進試験後の伸びが、25℃におけるゼロスパンテンション伸び量として、1.0mm以上であることが好ましく、5.0mm以上であることがより好ましく、12.0mm以上であることが特に好ましい。
25℃におけるゼロスパンテンション伸び量は、可塑剤含有樹脂のひび割れに対する塗膜の追従性を示すものであり、加熱促進試験により、可塑剤含有樹脂からの可塑剤移行の影響を考慮した上で、塗膜の防水性を評価することができる。
尚、ゼロスパンテンション伸び量は、「ポリマーセメント系塗膜防水工事施工指針(案)・同解説(日本建築学会)参考資料2 ポリマーセメント系塗膜防水材の品質試験方法」のゼロスパンテンション伸び量試験に準拠して測定することができる。
2.2.塗料組成物(B2)
塗料組成物(B2)は、バインダー樹脂(以下、「(B2-1)成分」という。)を含む第一剤と、イソシアネート基を有する有機ポリイソシアネート(以下、「(B2-2)成分」という。)を含む第二剤とを備える、二液型塗料組成物である。第一剤には、前記成分に加えて、その他成分を含有させることもできる。
本発明の塗料組成物(B2)の各構成成分としては、例えば、以下のものが好ましく挙げられる。
2.2.1(B2-1)成分
本発明において、(B2-1)成分とは、水酸基を有する樹脂を意味する。
(B2-1)成分としては、水酸基を有するアクリル樹脂、水酸基を有するポリエステル樹脂、及び不飽和炭素-炭素結合を有するポリオール樹脂等が挙げられ、耐水性、耐薬品性及び耐候性が良好である点から、水酸基を有するアクリル樹脂が好ましい。
前記の水酸基を有するアクリル樹脂としては、例えば、以下のものが好ましく挙げられる。これらは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
〔x3〕水酸基含有エチレン性不飽和単量体よりなる単位と、炭化水素基含有エチレン性不飽和単量体よりなる単位とからなる共重合体。
〔x4〕水酸基含有エチレン性不飽和単量体よりなる単位と、炭化水素基含有エチレン性不飽和単量体よりなる単位と、芳香族ビニル単量体よりなる単位とからなる共重合体。
前記エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基及び(メタ)アリル基等が挙げられ、これらの中でも、原料の入手の容易さや反応性の観点から、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
態様〔x3〕及び態様〔x4〕において、水酸基含有エチレン性不飽和単量体の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコールーポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート;グリセロールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記水酸基含有エチレン性不飽和単量体は、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
態様〔x3〕及び態様〔x4〕において、炭化水素基含有エチレン性不飽和単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート及びトリシクロ[5.2.1.02、6]デカン-8-イル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレートが挙げられる。上記炭化水素基含有エチレン性不飽和単量体は、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
これらの中でも、炭素数6以上の炭化水素基を有する、アクリレートを含むことが好ましく、2-エチルヘキシルアクリレートが特に好ましい。
態様〔x4〕において、芳香族ビニル単量体の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-ビニルトルエン、m-ビニルトルエン、p-ビニルトルエン、p-クロルスチレン、o-メトキシスチレン、m-メトキシスチレン、p-メトキシスチレン、2-ビニルベンジルメチルエーテル、3-ビニルベンジルメチルエーテル、4-ビニルベンジルメチルエーテル、2-ビニルベンジルグリシジルエーテル、3-ビニルベンジルグリシジルエーテル及び4-ビニルベンジルグリシジルエーテル等が挙げられる。上記芳香族ビニル単量体は、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
態様〔x4〕において、他の単量体として、前記の水酸基含有エチレン性不飽和単量体、炭化水素基含有エチレン性不飽和単量体、及び、芳香族ビニル単量体と共重合可能な化合物を含んでいても良い。
他の単量体の具体例としては、例えば、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体、酸無水物基含有エチレン性不飽和単量体、アルコキシ基含有エチレン性不飽和単量体、アミノ基含有エチレン性不飽和単量体、アミド基含有エチレン性不飽和単量体、スルホン酸基含有エチレン性不飽和単量体、シアノ基含有エチレン性不飽和単量体等が挙げられる。
態様〔x3〕において、前記水酸基含有エチレン性不飽和単量体よりなる単位、及び、前記炭化水素基含有エチレン性不飽和単量体よりなる単位の含有量は、この共重合体を構成する全単位量を100質量%としたときに、それぞれ、好ましくは5~50質量%及び50~95質量%、より好ましくは10~40質量%及び60~90質量%である。
また、炭化水素基含有エチレン性不飽和単量体として、炭素数が6以上の炭化水素基を有する、アクリレートを使用する場合、その割合は、炭化水素基含有エチレン性不飽和単量体全量に対し、通常、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。
この構成を有する共重合体を含む塗料組成物(B2)を用いることにより、接着性、柔軟性、防水性、外観等に優れた塗膜を得ることができる。
態様〔x3〕の共重合体としては、水酸基含有(メタ)アクリレートよりなる単位、及び、炭素数が6以上の炭化水素基を有する、アクリレートよりなる単位からなる共重合体が特に好ましい。
態様〔x4〕において、前記水酸基含有エチレン性不飽和単量体よりなる単位、前記炭化水素基含有エチレン性不飽和単量体よりなる単位、前記芳香族ビニル単量体よりなる単位、及び、他の単量体の含有量は、この共重合体を構成する全単位量を100質量%としたときに、それぞれ、好ましくは5~50質量%、30~80質量%、10~40質量%及び0~20質量%、より好ましくは10~45質量%、35~70質量%、10~30質量%及び0~20質量%である。
また、炭化水素基含有エチレン性不飽和単量体として、炭素数が6以上の炭化水素基を有する、アクリレートを使用する場合、その割合は、炭化水素基含有エチレン性不飽和単量体全量に対し、通常、5~70質量%が好ましく、10~60質量%がより好ましい。
この構成を有する共重合体を含む塗料組成物(B2)を用いることにより、接着性、柔軟性、防水性、外観等に優れた塗膜を得ることができる。
態様〔x4〕の共重合体としては、水酸基含有(メタ)アクリレートよりなる単位、炭素数6以上の炭化水素基を有する、アクリレートよりなる単位、炭素数1以上の炭化水素基を有する、メタクリレートよりなる単位、及び、芳香族ビニル単量体よりなる単位からなる共重合体が特に好ましい。
(B2-1)成分の水酸基価は、10~1,200mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは15~600mgKOH/gであり、さらに好ましくは20~300mgKOH/gである。上記範囲の水酸基価を有するバインダー樹脂を用いることにより、第二剤とともに均一な3次元網目構造を形成することができる。前記水酸基価は、JIS K1557(水酸基価の求め方)に準じて測定することができる。
(B2-1)成分の数平均分子量(以下、「Mn」ともいう)は、ポリスチレン換算した値として2,000~30,000であることが好ましく、より好ましくは2,000~15,000であり、さらに好ましくは2,000~10,000である。上記範囲の数平均分子量を有するバインダー樹脂を用いることにより、第一剤を用いる際の作業性に優れ、柔軟性に優れた塗膜を形成することができる。さらに、バインダー樹脂について、ポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう)と、上記Mnとの比である多分散度(Mw/Mn)は、通常、3.0以下であり、好ましくは1.5~2.5である。上記多分散度が、この範囲にあれば、得られる塗膜が安定した3次元網目構造を備え、耐久性に優れる。
本発明の(B2-1)成分において、Mw及びMnとは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」)という。)により測定した分子量をポリスチレン換算した値である。
尚、本発明において、GPCにより測定した(B2-1)成分のMw及びMnは、以下の条件で測定した値を意味する。
・装置:東ソー(株)製GPC HLC-8020
・検出器:RI検出器
・カラム:東ソー製TSKgel SuperMultiporeHZ-M 4本
・カラムの温度:40℃
・溶離液組成:THF(内部標準として硫黄を0.03%含むもの)、流量0.60mL/分
・分子量標準物質:ポリスチレン
塗料組成物(B2)は、いずれも、好ましくは有機溶剤系組成物であることから、(B2-1)成分は、溶液重合、高温連続重合等により製造されたものを用いることが好ましい。
溶液重合を適用する場合には、通常、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の有機過酸化物;過酢酸、過コハク酸;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等のアゾ化合物等の重合開始剤が用いられる。この重合開始剤の使用量は、単量体全量を100質量部とした場合、好ましくは0.01~10質量部である。
重合溶媒は、生成する共重合体を溶解可能なものであれば、特に限定されず、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、メチルプロピレングリコールアセテート、カルビトールアセテート、メチルプロピレングリコールアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート等の酢酸エステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等が挙げられる。重合溶媒の使用量は、得られる共重合体の固形分が10~90質量%となる量であることが好ましい。
溶液重合により(B2-1)成分を製造する場合、単量体の使用方法は、特に限定されないが、好ましくは、予め、一部の単量体を反応系に収容して重合を開始し、重合反応の進行とともに残りの単量体を連続添加又は分割添加しながらさらに重合を行う方法である。この方法によると、多分散度の小さな(B2-1)成分を製造することができる。尚、重合温度は、単量体の種類、重合開始剤の種類及びその分解温度又は半減期、重合溶媒の沸点等により選択されるが、通常、50℃~120℃である。
また、高温連続重合により(B2-1)成分を製造する場合、特開昭57-502171号公報、特開昭59-6207号公報、特開昭60-215007号公報等に開示された方法を適用することができる。この方法の一例としては、加圧可能な反応器を溶媒で満たし、加圧下で所定温度に設定した後、単量体のみ、又は、単量体及び重合溶媒の混合物からなる原料成分を一定の供給速度で反応器へ供給し、該原料成分の供給量に見合う量の反応液を抜き出す方法が挙げられる。
前記原料成分が、単量体及び重合溶媒の混合物である場合、反応開始時に、予め、反応器に収容された溶媒と、前記重合溶媒は同一であっても、異なっていても良い。これら溶媒及び重合溶媒は、前記溶液重合において用いられる有機溶媒として例示した化合物であって良いし、そのほか、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のアルコールを使用又は併用することができる。尚、前記原料成分における重合溶媒の含有割合は、単量体全量100質量部に対して、好ましくは200質量部以下である。
尚、前記原料成分は、重合開始剤を含有して良いし、含有されなくても良い。前記原料成分に、重合開始剤を含有させる場合、その配合量は、単量体全量100質量部に対して、好ましくは0.001~5質量部である。
前記高温連続重合における重合温度は、好ましくは150℃~350℃である。この重合温度が150℃未満であると、得られる共重合体の分子量が大きくなりすぎる場合、反応速度が遅くなってしまう場合等がある。一方、350℃を超えると、生成した重合体の分解反応が発生して重合溶液が着色することがある。
反応系の圧力は、重合温度と、使用する単量体及び重合溶媒の各沸点に依存するものであり、重合反応に影響を及ぼさないが、前記重合温度を維持できる圧力であれば良い。反応系における単量体の滞留時間は、好ましくは2~60分である。この滞留時間が短すぎると、未反応の単量体が残留する場合がある。一方、長すぎると、生産性が低下することがある。
前記高温連続重合によれば、Mnが2,000~30,000の範囲にあり、比較的低粘度の共重合体を得ることができる。また、溶液重合に比べて、多分散度の低い共重合体を得ることができる。さらに、この重合方法は、熱重合開始剤を用いる必要がないか、又は、熱重合開始剤を用いる場合でも少量の使用で目的の分子量の共重合体が得られるため、熱や光によりラジカル種を発生するような不純物をほとんど含有しない純度の高い共重合体を得ることができる。従って、各組成物により形成される塗膜を耐候性に優れたものとすることができる。
2.2.2.(B2-2)成分
(B2-2)成分は、平均2個以上のイソシアネート基を有するものであれば、特に限定されず、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート及び/又はその誘導体のいずれでも良い。また、各組成物に、1種のみ含有されて良いし、2種以上が含有されても良い。
脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレン-1,4-ジイソシアネート、ペンタメチレン-1,5-ジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環族ジジイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、1,4-ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ジジイソシアネートの具体例としては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、3,3-ジメチルフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、3,3’-ジクロロ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族トリイソシアネートの具体例としては、ヘキサメチレントリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート等が挙げられる。
脂環族トリイソシアネートの具体例としては、ビシクロヘプタントリイソシアネート等が挙げられる。
芳香族トリイソシアネートの具体例としては、トリフェニルメタン-4,4’,4"-トリイソシアネート等が挙げられる。
さらに、前記化合物のビウレット体、イソシアヌレート体、カルボジイミド変性物、二量体、三量体等を用いることもできる。
本発明においては、有機溶剤で希釈する必要がなく、常温で液状を示す化合物が好ましく、耐候性に優れることから、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート及び/又はその誘導体を用いることがさらに好ましく、イソシアヌレート体が特に好ましい。
2.2.3.その他成分
前記塗料組成物(B2)は、その他成分として、前記(B2-1)成分、及び(B2-2)成分に加えて、低分子量多価アルコール(以下、「(B2-3)成分」という。)、硬化触媒(以下、「(B2-4)成分」という。)、増粘剤、消泡剤、有機溶剤、色素、顔料、加水分解防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防汚剤、艶消剤、脱水剤、レベリング剤、可塑剤等を含有しても良い。
(B2-3)成分としては、アルコール性水酸基を(平均で)2個以上有し且つ分子量が2,000以下のものであれば、特に限定されず、各組成物に、1種のみ含有されて良いし、2種以上が含有されても良い。
(B2-3)成分は、飽和化合物又は不飽和化合物のいずれでも良く、また、脂肪族化合物、脂環族化合物又は芳香族化合物のいずれでも良い。
2価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノール、2,5-ノルボルナンジオール、アダマンタンジオール、カテコール、ヒドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4-ジヒドロキシアントラキノン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、ポリカーボネートジオール、ポリラクトンジオール等が挙げられる。
3価アルコールの具体例としては、グリセリン、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、2-メチル-1,2,3-プロパントリオール、1,2,3-ペンタントリオール、1,2,4-ペンタントリオール、1,3,5-ペンタントリオール、2,3,4-ペンタントリオール、2-メチル-2,3,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、2,3,4-ヘキサントリオール、2-エチル-1,2,3-ブタントリオール、トリメチロールプロパン、4-プロピル-3,4,5-ヘプタントリオール、2,4-ジメチル-2,3,4-ペンタントリオール等が挙げられる。
4価アルコールの具体例としては、エリスリトール、ペンタエリスリトール、1,2,3,4-ペンタテトロール、2,3,4,5-ヘキサテトロール、1,2,4,5-ペンタンテトロール、1,3,4,5-ヘキサンテトロール、ジグリセリン、ソルビタン等が挙げられる。
5価アルコールの具体例としては、アドニトール、アラビトール、キシリトール、トリグリセリン等が挙げられる。
6価アルコールの具体例としては、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イノシトール等が挙げられる。
その他、ダイマージオール;水添ダイマージオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、グリセリン脂肪酸モノエステルに、アルキレンオキサイドを付加して得られたグリセリン変性ポリオール、2価アルコールに、アルキレンオキサイドを付加させて得られたポリエーテルジオール等のポリエーテルポリオール;ひまし油変性ポリオール等の、多価カルボン酸と、多価アルコールとを反応させて得られた縮合物、環状エステル(ラクトン)の開環重合物、多価カルボン酸と、多価アルコールと、環状エステルとを反応させて得られた生成物等のポリエステルポリオール等を用いることもできる。
尚、前記ダイマージオールとしては、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸や、トール油、綿実油、大豆油等から得られる乾性油脂肪酸又は半乾性油脂肪酸等を2分子加熱重合して製造されたダイマー酸を還元して得られた、通常、炭素数が30~42の不飽和化合物を用いることができる。
また、接着性、低温安定性、柔軟性、塗膜強度、作業性等の観点から、(B2-3)成分は、水酸基価の異なる多価アルコールを少なくとも2種含むことが好ましい。具体的には、水酸基価が110~250mgKOH/gの多価アルコール(以下、「(B2-31)成分」ともいう。)、及び、水酸基価が250mgKOH/gを超えて1,200mgKOH/g以下の多価アルコール(以下、「(B2-32)成分」ともいう。)、特に好ましくは、水酸基価が130~220mgKOH/gの多価アルコール、及び、水酸基価が500~1,000mgKOH/gの多価アルコールである。尚、前記範囲外の水酸基価を有する多価アルコールをさらに用いても良い。前記水酸基価は、JIS K1557(水酸基価の求め方)に準じて測定することができる。
(B2-31)成分の具体例としては、ダイマージオール、水添ダイマージオール、ポリエステルポリオール(ひまし油変性ポリオール)、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。これらは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
(B2-32)成分の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。これらは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
(B2-3)成分が、前記の多価アルコール(B2-31)成分及び(B2-32)成分を含む場合、これらの含有割合(B2-31)/(B2-32)は、両者の合計を100質量%とした場合に、好ましくは5~95質量%/5~95質量%、より好ましくは10~90質量%/10~90質量%である。前記割合であると、接着性、柔軟性、防水性、外観等に優れた塗膜を得ることができる。
(B2-4)成分としては、(B2-1)成分及び(B2-3)成分と、(B2-2)成分との反応による硬化を促進するものであれば、特に限定されない。
(B2-4)成分の具体例としては、トリエチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロパン-1,3-ジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサン-1,6-ジアミン、N,N,N’,N",N"-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N",N"-ペンタメチルジプロピレン-トリアミン、テトラメチルグアニジン、トリエチレンジアミン、N,N’-ジメチルピペラジン、N-メチル-N’-(2-ジメチルアミノ)-エチルピペラジン、N-メチルモルホリン、N-(N’-ジメチルアミノエチル)-モルホリン、1,2-ジメチルイミダゾール、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’-トリメチルアミノエチル-エタノール、N-メチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)-エタノールアミン、N-メチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン、N-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、エチレングリコールビス(3-ジメチル)-アミノプロピルエーテル等のアミン類;オクテン酸鉛、オクチル酸鉛、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫メルカプチド、ジブチル錫チオカルボキシレート、ジブチル錫ジマレート、ジオクチル錫メルカプチド、ジオクチル錫チオカルボキシレート等の有機金属化合物;炭酸カルシウム、重炭酸ソーダ等の無機塩等が挙げられる。
これらの中でも、(B2-1)成分及び(B2-3)成分と、(B2-2)成分との反応性に優れることから、有機金属化合物を用いることが好ましい。
前記硬化触媒の含有量は、前記(B2-1)成分100質量部に対して、好ましくは0.001~5質量部、より好ましくは0.1~2質量部である。
前記増粘剤としては、脂肪酸アミド、ポリアマイド、酸化ポリエチレン、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
前記有機溶剤としては、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
前記消泡剤としては、シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、オキシアルキレン系消泡剤等が挙げられる。
前記色素としては、クルクミン色素等が挙げられる。
前記加水分解防止剤としては、カルボジイミド類、アゾジカルボキシリック酸エステル類、脂肪酸アマイド類等が挙げられる。
前記酸化防止剤としては、立体障害をもったフェノール類、芳香族ジアミン等が挙げられる。
前記紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール類、ベンゾフェノン類、サルチル酸類等が挙げられる。
前記防汚剤としては、アルコキシシリケート及びその縮合体等が挙げられる。
前記艶消剤としては、シリカ粉末等が挙げられる。
本発明の(B2)は、防水層及び/又は保護層として好ましく使用することができる。
防水層として前記(B2)の塗膜の示差走査熱量計によるTgが-40℃~20℃である塗料組成物を用い、かつ、防水層の上に形成される保護層として前記(B2)の塗膜の示差走査熱量計によるTgが-30℃~30℃である塗料組成物を用いることが好ましい。
本発明では、可塑剤含有樹脂、塗料組成物(A)の塗膜、及び塗料組成物(B2)の塗膜が形成された塗装物品の加熱促進試験後の伸びが、-5℃におけるゼロスパンテンション伸び量として、1.0mm以上であることが好ましく、3.0mm以上であることがより好ましく、5.0mm以上であることが特に好ましい。
-5℃におけるゼロスパンテンション伸び量は、冬場を想定した低温下での可塑剤含有樹脂のひび割れに対する塗膜の追従性を示すものであり、加熱促進試験により可塑剤含有樹脂からの可塑剤移行の影響を考慮した上で、低温下での塗膜の防水性を評価することができる。
尚、ゼロスパンテンション伸び量は、「ポリマーセメント系塗膜防水工事施工指針(案)・同解説(日本建築学会)参考資料2 ポリマーセメント系塗膜防水材の品質試験方法」のゼロスパンテンション伸び量試験に準拠して測定することができる。
3.塗料組成物の製造方法
本発明の塗装工法に係る塗料組成物(A)の製造方法としては、常法に従えば良く、前記アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂と、必要に応じてさらにその他成分を、常法に従い攪拌・混合することにより製造することができる。この場合、必要に応じて加熱することができる。
本発明の塗装工法に係る塗料組成物(B)の製造方法としては、常法に従えば良く、例えば、アクリルゴム、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、ゴムアスファルト及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の成分と、必要に応じてさらにその他成分を、常法に従い攪拌・混合することにより製造することができる。この場合、必要に応じて加熱することができる。
4.塗装工法
本発明の塗装工法では、可塑剤含有樹脂に塗料組成物(A)を塗布し、当該塗料組成物(A)の塗膜を形成する工程(以下、「第一工程」という。)を含む。
また、前記塗料組成物(A)の塗膜の表面に、塗料組成物(B)を塗布し、当該塗料組成物(B)の塗膜を形成する工程(以下、「第二工程」という。)を含むことが好ましい。
従って、本発明の塗装工法により形成される塗装被膜及び塗装物品は、塗料組成物(A)が湿気硬化し架橋してなる塗膜を有し、必要に応じて塗料組成物(B)が乾燥又は硬化してなる塗膜とを有する。
本発明の塗装工法が対象とする可塑剤含有樹脂の種類は、特に限定されず、シーリング材、塩化ビニル系防水材、塩化ビニル系内装材等が挙げられる。
本発明の塗装工程で用いられる塗料組成物(A)及び塗料組成物(B)は、通常の方法で塗工することができる。例えば、刷毛、ローラー、こて若しくはヘラ等により塗布したり、又は、スプレーガンで吹き付けたりするなどの一般的な方法により施工することができる。
また、可塑剤含有樹脂に塗料組成物(A)の塗膜を形成させる際、又は、塗料組成物(A)の塗膜の表面に塗料組成物(B)の塗膜を形成させる際には、ポリエステル、ビニロン、アクリル、ガラス等の不織布やクロス又はメッシュなどの織布を用いて補強することも可能である。
[1]第一工程
第一工程は、可塑剤含有樹脂の上に、塗料組成物(A)を塗布し、当該塗料組成物(A)の塗膜を形成する工程である。
可塑剤含有樹脂の上に、直接、塗料組成物(A)を塗工しても良いし、可塑剤含有樹脂の上に形成されたプライマー層等の塗膜の上に、塗料組成物(A)を塗工しても良く、塗工後、自然乾燥又は加熱乾燥して、当該塗料組成物(A)の塗膜を形成する。
塗料組成物(A)の塗布厚さは、20~500μmであり、可塑剤含有樹脂及び用途に応じて選択すれば良いが、好ましくは20~200μmであり、より好ましくは40~150μmである。厚さは、塗料組成物(A)の固形分濃度、粘度、塗工回数等で調整することができる。
塗料組成物(A)は、着色顔料を含まない場合には無色透明であり、その塗膜は耐候性に優れ、経年での黄変等の変色がないため、当該塗料組成物(A)の塗膜の上に塗布される塗料組成物(B)としては、着色塗料のみならずクリア塗料も使用することができる。
[2]第二工程
第二工程は、前記塗料組成物(A)の塗膜の表面に塗料組成物(B)を塗布し、自然乾燥又は加熱乾燥して、当該塗料組成物(B)の塗膜を形成する工程である。塗料組成物(B)としては、アクリルゴム、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、ゴムアスファルト及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の成分を含む組成物が好ましい。本発明の塗装工法により得られた塗装被膜全体が、柔軟性、防水性、外観等の防水層及び/又は保護層として有効に機能することができる。
塗料組成物(B)は、上塗材、中塗材及び下塗材のいずれに用いても良く、塗料組成物(A)の塗膜の上に少なくとも1層からなる塗膜を形成するように塗装される。すなわち、上塗材、下塗材及び上塗材、中塗材及び上塗材、並びに、下塗材、中塗材及び上塗材等の組み合わせにより塗装される。また、防水性等の機能を有効に付与できる点で、少なくとも2層からなる塗膜を形成することがより好ましい。
第二工程において、塗料組成物(B2)を用いて少なくとも2層からなる塗膜を形成する工程としては、塗膜の示差走査熱量計によるTgが-40℃~20℃である、第一の塗料組成物(B2)を塗布し、当該第一の塗料組成物(B2)の塗膜を形成する工程と、
前記工程で得られた塗膜の上に、塗膜の示差走査熱量計によるTgが-30℃~30℃である、第二の塗料組成物(B2)を塗布し、当該第二の塗料組成物(B2)の塗膜を形成する工程と、を含むことが好ましい。
塗料組成物(B)の塗布量は、0.3~10kg/mであることが好ましい。また、塗料組成物(B)の塗布厚さは、50~5,000μmが好ましく、可塑剤含有樹脂及び用途に応じて選択すれば良いが、より好ましくは100~3,000μmである。厚さは、塗料組成物(B)の固形分濃度、粘度、塗工回数等で調整することができる。塗膜の厚さが50~5,000μmであれば、成膜性が低下することなく、貫通孔のない連続した塗膜を形成することができる。塗装の目的に応じて塗膜の厚さは調整することができ、1回塗りで塗膜を形成させることもできるし、2回以上に分けて塗布し、塗膜を形成させることもできる。
塗料組成物(B)が塗料組成物(B1)である場合の塗布厚さは、100~2,000μmがさらに好ましい。
塗料組成物(B)が塗料組成物(B2)である場合の塗布厚さは、防水層として用いる場合は50~500μmがさらに好ましく、保護層として用いる場合は50~300μmがさらに好ましい。
5.用途
本発明の塗装工法は、建築及び土木、電気部品、並びに自動車等の幅広い産業分野の様々な工業用製品分野において使用することができる。
建築及び土木分野における用途の具体例としては、シーリング材、塩化ビニル系防水材及び塩化ビニル系内装材等がある。
電気部品分野における用途の具体例としては、電線コード及びケーブル等がある。
自動車分野における用途の具体例としては、ハンドル及びシート等の内装部品等がある。
これらの中でも、本発明の塗装工法の用途としては、特に、建築及び土木分野に好ましく使用可能であり、可塑剤含有樹脂としては、シーリング材、塩化ビニル系防水材及び塩化ビニル系内装材がより好ましく、シーリング材が特に好ましい。尚、本発明の塗料組成物は、シーリング材等の可塑剤含有樹脂に接するコンクリート、タイル、金属等にも塗装することができる。
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。
1.アルコキシシリル基含有メタクリル樹脂を含む塗料組成物の製造
(1)アルコキシシリル基含有メタクリル樹脂の製造
1)製造例1
まず、メチルメタクリレート(三菱ガス化学(株)製MMA(メタクリル酸メチル)、以下、「MMA」という。)43質量部、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(n≒4)(日油(株)製ブレンマーPME-200、以下、「PME200」という。)42質量部、3-(メチルジメトキシシリル)プロピルメタクリレート(信越化学工業(株)製KBM-502、以下、「SiPMA」という。)10質量部、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート(共栄社化学(株)製ライトエステルHOP(N)、以下、「2HPA」という。)5.0質量部と、溶剤としてキシレン93質量部からなる単量体混合物193質量部を調製した。
次に、内容積2リットルの4つ口フラスコに、前記単量体混合物の30質量%に当たる57.9質量部を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を85℃まで昇温した。次いで、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)製V-65、以下、「V65」という。)0.2質量部と、溶剤としてキシレン6.0質量部からなる初期添加用重合開始剤溶液を加え、重合を開始した。前記単量体混合物の70質量%に当たる135.1質量部を滴下ロートからフラスコ内に1.5時間かけて滴下すると共に、V65 0.8質量部とキシレン24部からなる連続滴下用重合開始剤溶液を別の滴下ロートからフラスコ内に4時間かけて滴下することで重合を行った。滴下終了後、2時間加熱熟成することで、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂(以下、「a1成分」という。)を含むキシレン溶液(固形分45%)を得た。
2)製造例2~7、比較製造例1及び同2
構成単量体及び重合開始剤を表1に記載の部数とした以外は、製造例1と同様の方法に従い、重合を行って、製造例2~7において「a2~a7成分」を、比較製造例1及び同2において「a’1及びa’2成分」を含むキシレン溶液(固形分45%)を得た。
尚、表1における数字は部数を意味する。
又、表1における略号は下記を意味する。
・IBMA:イソブチルメタクリレート(共栄社化学(株)製ライトエステルIB)
3)アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂の評価方法
前記で得られたa1~a7成分、a’1成分及びa’2成分について、後記する方法に従い、塗膜のTg、SP値及びMnを測定した。それらの結果を表1に示す。
◆塗膜のTg
アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂を含むキシレン溶液を、離形紙で作製した型枠に流し込み、23℃1日養生し、さらに80℃3日養生した後の厚さ約300μmの塗膜を用いて、動的粘弾性測定を測定温度0~150℃、周波数1Hzで行い、損失弾性率の極大値となる温度をTgとした。
◆SP値
前記した濁度滴定法にて、低極性貧溶媒としてイソオクタン、高極性貧溶媒として脱イオン水を用いて測定した。
試料は、200mlのポリカップにアルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂を含むキシレン溶液を1g入れ、60℃、1.0Torrにて3時間真空乾燥させて得た。
110mlのガラス製サンプル瓶中において、前記試料0.03gをTHF10mlに溶解させ、次いでイソオクタンを加えていき、目視で溶液が濁った点を濁点として、そのときの滴定量L(ml)を読んだ。
同様に、試料のTHF溶液中に脱イオン水を加えたときの濁点における脱イオン水の滴定量H(ml)を読み、以下の計算式により、Vml、Vmh、δml及びδmhを算出した。
ml=81.1×165.6/((1-V)×165.6+V×81.1)
mh=81.1×18/((1-V)×18+V×81.1)
=L/(10+L)
=H/(10+H)
δml=9.1×10/(10+L)+6.9×L/(10+L)
δmh=9.1×10/(10+H)+23.4×H/(10+H)
次いで、上記で得られたVml、Vmh、δml及びδmhを用いて、次式により、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂のSP値を算出した。
SP値=(Vml 1/2・δml+Vmh 1/2・δmh)/(Vml 1/2+Vmh 1/2
◆Mn(GPC測定条件)
・装置:東ソー(株)製GPC HLC-8020
・検出器:RI検出器
・カラム:東ソー(株)製TSKgel SuperMultiporeHZ-M 4本
・カラムの温度:40℃
・溶離液組成:THF(内部標準として硫黄を0.03%含むもの)、流量0.60mL/分
・分子量標準物質:ポリメチルメタクリレ―ト
Figure 0007119339000001
(2)アルコキシシリル基含有メタクリル樹脂を含む塗料組成物の製造
1)製造例8~14、比較製造例3及び同4
塗料組成物A1~A7、A’1及びA’2の製造
下記表2に示す化合物を表2に示す割合で撹拌・混合し、アルコキシシリル基含有メタクリル樹脂を含む塗料組成物A1~A7、A’1及びA’2を製造した。
得られた表2の塗料組成物を使用し、後記する評価を行った。それらの結果を表2に示す。
ここで、前記と同様の方法で、表2記載の塗料組成物の塗膜のTgを測定した結果、表1記載の対応するアルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂の塗膜のTgと同じであった。
尚、表2における数字は質量部を意味する。
又、表2における略号は下記を意味する。
・DBTDL:ジブチルスズジラウレート(商品名「アデカスタブBT-11」、ADEKA社製)
Figure 0007119339000002
2.塗料組成物(B1)の製造
(1)エマルション組成物及び塗料組成物(α類、β類及びγ類)の製造
後記するエマルション組成物α類及びβ類は、塗料組成物(B1)に含まれるアクリルゴム又はアクリル樹脂の態様〔x1〕であり、エマルション組成物γ類は、塗料組成物(B1)に含まれるアクリルゴム又はアクリル樹脂の態様〔x2〕である。
また、後記する塗料組成物α類及びβ類は、それぞれ、上記エマルション組成物α類及びβ類を含む塗料組成物(B1)であり、塗料組成物γ類は、上記エマルション組成物γ類を含む塗料組成物(B1)である。
1)塗料組成物α類の製造例
エマルション組成物α類の製造
3Lのフラスコに、撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を取付け、その後、イオン交換水30部を投入し、窒素ガスを吹き込みながら内温を80℃に昇温させた。次いで、イオン交換水37部、単量体(2-エチルヘキシルアクリレート(以下、「HA」という。)90部、アクリロニトリル(以下、「AN」という。)8部及びアクリル酸(以下、「AA」という。)2部)、並びに乳化剤(ポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム、有効成分26%、花王社製、商品名「ラテムルE-118B」)10部からなる混合液と、5%濃度の過硫酸アンモニウム水溶液10部とを、撹拌下、別々の滴下ロートから同時に、かつ連続的に5時間かけて滴下し、乳化重合させた。その後、反応液に25%濃度のアンモニア水を添加、混合してpHを5~7に調整し、固形分55%のエマルション組成物α1を製造した。
前記の単量体組成を表3のようにした他は、前記と同様にして乳化重合させ、pHを調整し、固形分55%のエマルション組成物α2及びα3を製造した。
塗料組成物α1の製造
エマルション組成物α1;100部に、無機質水硬性物質として比重3.1の普通ポルトランドセメント10部、無機充填剤として比重2.7の重質炭酸カルシウム粉末50部、分散剤として20%濃度のポリアクリル酸ソーダ水溶液(ポリアクリル酸ソーダの分子量;約20000)5部、消泡剤としてシリコーン系消泡剤(サンノプコ社製、商品名「SNデフォーマー325」)1.2部、及び増粘剤としてヒドロキシエチルメチルセルロース(信越化学工業社製、商品名「HiメトローズSEB-04T」)の5%濃度の含水ゲル1部を配合し、混合して塗料組成物α1を製造した。
塗料組成物α2の製造
エマルション組成物α2;100部に、前記の無機質水硬性物質、無機充填剤、分散剤、消泡剤、及び増粘剤の組成を表3のようにした他は、前記と同様にして配合し、混合して塗料組成物α2を製造した。
塗料組成物α3の製造
エマルション組成物α3;100部に、前記の無機質水硬性物質、無機充填剤、分散剤、消泡剤、及び増粘剤の組成を表3のようにした他は、前記と同様にして配合し、混合して塗料組成物α3を製造した。
2)塗料組成物β類の製造例
エマルション組成物β類の製造
3Lのフラスコに、撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を取付け、その後、イオン交換水30部を投入し、窒素ガスを吹き込みながら内温を80℃に昇温させた。次いで、イオン交換水37部、単量体(HA37部、n-ブチルアクリレート(以下、「BA」という。)37部、AN12部、AA3部及び2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート(以下、「HPPA」という。)11部)、並びに乳化剤(ポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム、有効成分26%、花王社製、商品名「ラテムルE-118B」)10部からなる混合液と、5%濃度の過硫酸アンモニウム水溶液10部とを、撹拌下、別々の滴下ロートから同時に、かつ連続的に5時間かけて滴下し、乳化重合させた。その後、反応液に25%濃度のアンモニア水を添加、混合してpHを5~7に調整し、固形分55%のエマルション組成物β1を製造した。
前記の単量体組成を表3のようにした他は、前記と同様にして乳化重合させ、pHを調整し、固形分55%のエマルション組成物β2及びβ3を製造した。
塗料組成物β1の製造
エマルション組成物β1;100部に、無機充填剤として比重2.7の重質炭酸カルシウム粉末60部、分散剤として20%濃度のポリアクリル酸ソーダ水溶液(ポリアクリル酸ソーダの分子量;約20000)5部、消泡剤としてシリコーン系消泡剤(サンノプコ社製、商品名「SNデフォーマー325」)1.2部、増粘剤としてヒドロキシエチルメチルセルロース(信越化学工業社製、商品名「HiメトローズSEB-04T」)の5%濃度の含水ゲル1部を配合し、混合して塗料組成物β1を製造した。
塗料組成物β2の製造
エマルション組成物β2;100部に、前記の無機充填剤、分散剤、消泡剤及び増粘剤の組成を表3のようにした他は、前記と同様にして配合し、混合して塗料組成物β2を製造した。
塗料組成物β3の製造
エマルション組成物β3;100部に、前記の無機充填剤、分散剤、消泡剤及び増粘剤の組成を表3のようにした他は、前記と同様にして配合し、混合して塗料組成物β3を製造した。
3)塗料組成物γ類の製造例
エマルション組成物γ類の製造
3Lのフラスコに、撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を取付け、その後、イオン交換水48部を投入し、窒素ガスを吹き込みながら内温を80℃に昇温させた。次いで、イオン交換水50部、単量体(HA77部、スチレン(以下、「St」という。)20部、メチルアクリレート(以下、「MA」という。)1部、グリシジルメタクリレート(以下、「GMA」という。)1部及びAA1部)、並びに乳化剤(ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、有効成分60%、HLB18.5)2部からなる混合液と、4%濃度の2、2’-アゾビス-2-アミノプロパン塩酸塩水溶液1部とを、撹拌下、別々の滴下ロートから同時に、かつ連続的に5時間かけて滴下し、乳化重合させ、固形分50%のエマルション組成物γ1を製造した。
前記の単量体組成を表3のようにした他は、前記と同様にして乳化重合させ、固形分50%のエマルション組成物γ2及びγ3を製造した。
塗料組成物γ1の製造
エマルション組成物γ1;100部に、無機質水硬性物質として比重3.1のアルミナセメント40部、無機充填剤として比重2.7の重質炭酸カルシウム粉末40部及び比重2.6の8号珪砂20部、並びに、増粘剤としてヒドロキシエチルメチルセルロース(信越化学工業社製、商品名「HiメトローズSEB-04T」)粉末0.3部を配合し、混合して塗料組成物γ1を製造した。
塗料組成物γ2の製造
エマルション組成物γ2;100部に、前記の無機質水硬性物質、無機充填剤及び増粘剤の組成を表3のようにした他は、前記と同様にして配合し、混合して塗料組成物γ2を製造した。
塗料組成物γ3の製造
エマルション組成物γ3;100部に、前記の無機質水硬性物質、無機充填剤及び増粘剤の組成を表3のようにした他は、前記と同様にして配合し、混合して塗料組成物γ3を製造した。
4)エマルション組成物及び塗料組成物(α類、β類及びγ類)の評価方法
前記で得られたエマルション組成物α1~3、β1~3及びγ1~3の塗膜のTg、並びに、塗料組成物α1~3、β1~3及びγ1~3の塗膜の伸び率及び引張強さについて、後記する方法に従い、測定した。それらの結果を表3に示す。
◆エマルション組成物の塗膜のTg
エマルション組成物の塗膜のTgは、示差走査熱量計を用いて得られた熱流束曲線のベースラインと変曲点での接線の交点から決定した。
熱流束曲線は、エマルション組成物を155℃で1時間乾燥させて得た試料約10mgを-50℃まで冷却し、5分間保持した後、10℃/minで300℃まで昇温し、引き続き-50℃まで冷却し、5分間保持した後、10℃/minで350℃まで昇温する条件で得た。
・測定装置:エスアイアイ・ナノテクノロジー社製示差走査熱量計 DSC6220
・測定雰囲気:窒素雰囲気下
◆塗料組成物の塗膜の伸び率及び引張強さ
塗料組成物の塗膜の伸び率及び引張強さは、JIS A 6021に準拠し、常態(25℃)で測定した。
Figure 0007119339000003
3.塗料組成物(B2)の製造
後記する水酸基含有共重合体b2及びb3は、塗料組成物(B2)に含まれるバインダー樹脂の態様〔x3〕であり、水酸基含有共重合体b1及びb4は、塗料組成物(B2)に含まれるバインダー樹脂の態様〔x4〕である。
また、後記する塗料組成物B2-1~B2-9は、水酸基含有共重合体b1~b4のいずれかを含む塗料組成物(B2)である。
1)水酸基含有共重合体の製造
製造例b1(高温連続重合)
重合体の製造原料は次の通りである。即ち、単量体として2-ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、「HEMA」という。)16部、HA15.5部、IBMA46.5部及びスチレンSt22部と、重合開始剤としてジ-tert-ブチルパーオキシド(以下、「DTBP」という。)1部とからなる単量体混合物を用いた。
電熱式ヒータを備えた容量6,000mlの加圧式攪拌槽型反応器を、ジエチレングリコールモノエチルエーテルで満たし、温度を220℃にして、圧力調節器により圧力をゲージ圧で25~27kg/cmに保った。
次いで、反応器内の圧力を一定に保ちながら、原料タンクに収容した前記単量体混合物を、供給速度500g/分、及び、滞留時間12分で反応器に連続供給するとともに重合を開始し、単量体混合物の供給量に相当する重合溶液を反応器の出口から連続的に抜き出した。反応温度は、反応開始直後に一旦低下し、重合熱による温度上昇が認められたが、ヒータを制御することにより、反応温度を220~223℃に保持した。
単量体混合物の供給を開始した後、反応温度が前記範囲内で安定した時点を、重合溶液の回収開始点とし、これから35分間、重合反応を継続した。その結果、17.5kgの単量体混合液を供給し、17.4kgの重合溶液を回収した。
その後、重合溶液を薄膜蒸発器に導入して、未反応モノマー等の揮発性成分を分離及び除去した。そして、炭化水素溶剤であるLAWSに溶解し、共重合体b1を含む固形分67%の樹脂溶液23.7kgを得た。この樹脂溶液のガスクロマトグラフ測定を行ったところ、未反応モノマーが検出されなかった。
製造例b2(高温連続重合)
重合体の製造原料は次の通りである。即ち、単量体としてHEMA30部及びHA70部と、重合開始剤としてDTBP1部とからなる単量体混合物を用いた。
共重合体b2の製造に際しては、製造例1と同様にして重合反応を開始し、反応温度を228~231℃に保持した。
単量体混合物の供給を開始した後、反応温度が前記範囲内で安定した時点を、重合溶液の回収開始点とし、これから40分間、重合反応を継続した。その結果、20.0kgの単量体混合液を供給し、19.9kgの重合溶液を回収した。
その後、重合溶液を薄膜蒸発器に導入して、未反応モノマー等の揮発性成分を分離及び除去し、共重合体b2を含む固形分99.9%の樹脂溶液17.9kgを得た。この樹脂溶液のガスクロマトグラフ測定を行ったところ、未反応モノマーが検出されなかった。
製造例b3(溶液重合)
重合体の製造原料は次の通りである。即ち、単量体としてHEMA20部、HA5部、IBMA20部及びMMA55部からなる単量体混合物を用いた。
還流冷却器、温度計、滴下ロート、窒素置換用ガラス管及び攪拌器が配設された4つ口フラスコに、前記単量体混合物15部、メチルイソブチルケトン(以下、「MIBK」という。)100部、及び、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」という。)1部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、90℃で重合反応を開始した。1時間後、前記単量体混合物85部、MIBK25部、及び、AIBN6部からなる溶液を6時間に渡って連続滴下して重合反応を行った。
得られた重合溶液を、減圧下、溶剤を留去することにより、共重合体b3を含む固形分45.8%の樹脂溶液を得た。
製造例b4(溶液重合)
重合体の製造原料は次の通りである。即ち、単量体としてHEMA16部、HA5.5部、St32部及びIBMA46.5部からなる単量体混合物を用いた。
還流冷却器、温度計、滴下ロート、窒素置換用ガラス管及び攪拌器が配設された4つ口フラスコに、前記単量体混合物15部、MIBK100部、及び、AIBN1部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、90℃で重合反応を開始した。1時間後、前記単量体混合物85部、MIBK25部、及び、AIBN6部からなる溶液を6時間に渡って連続滴下して重合反応を行った。
得られた重合溶液を、減圧下、溶剤を留去することにより、共重合体b4を含む固形分45.8%の樹脂溶液を得た。
3)水酸基含有共重合体の評価方法
前記で得られたb1~b4成分について、後記する方法に従い、Mw,Mn及び水酸基価値を測定した。それらの結果を表4に示す。
◆Mw,Mn(GPC測定条件)
・装置:東ソー(株)製GPC HLC-8020
・検出器:RI検出器
・カラム:東ソー(株)製TSKgel SuperMultiporeHZ-M 4本
・カラムの温度:40℃
・溶離液組成:THF(内部標準として硫黄を0.03%含むもの)、流量0.60mL/分
・分子量標準物質:ポリスチレン
◆水酸基価
JIS K1557(水酸基価の求め方)に準じて測定した。
Figure 0007119339000004
2)塗料組成物B2-1~B2-9の製造
下記表5及び表6に示す化合物を表5及び6に示す質量部で混合し、塗料組成物B2-1~B2-9を製造した。
尚、表5及び表6における数字は質量部を意味する。
又、表5及び表6における略号は下記を意味する。
〔低分子量多価アルコール〕
・Y403:ひまし油及び脂肪酸系ポリオール(商品名「URIC Y-403」、伊藤製油社製、水酸基価:160mgKOH/g)
・S908:ダイマー酸ジオール(商品名「ソバモール908」、コグニスジャパン社製、水酸基価:200mgKOH/g)
・HGL:2-メチル-2、4ペンタンジオール(商品名「ヘキシレングリコール」、アルケマ社製、水酸基価:949mgKOH/gであり、分子量:118)
〔増粘剤〕
・SYL200:微粉末シリカ(商品名「サイロホービック200」、富士シリシア化学社製)
・PFA231:脂肪酸アミドを主成分とする添加剤(商品名「DISPARLON PFA-231」、楠本化成社製)
〔硬化触媒〕
・DBTDL:ジブチルスズジラウレート(商品名「アデカスタブBT-11」、ADEKA社製)
〔溶剤〕
・LAWS:炭化水素系溶剤(商品名「LAWS」、シェルケミカル社製)
〔消泡剤〕
・AC326F:アクリル系消泡剤(商品名「フローレンAC-326F」、共栄社化学社製)
〔有機ポリイソシアネート〕
・TPA100:イソシアヌレート型ポリイソシアネート(商品名「デュラネートTPA-100」、旭化成ケミカルズ社製、化合物中のイソシアネート基の割合:23.1質量%)
・TSS100:イソシアヌレート型ポリイソシアネート(商品名「デュラネートTSS-100」、旭化成ケミカルズ社製、化合物中のイソシアネート基の割合:17.9質量%)
塗料組成物B2-1
共重合体b1、低分子量多価アルコール、増粘剤、硬化触媒並びに消泡剤を、表5に記載の割合で混合し、均一な塗料組成物用主材を得た。
その後、前記塗料組成物用主材及び有機ポリイソシアネートを、それぞれ、100部及び70部秤量して混合し、均一な塗料組成物B2-1を得た。この防水層形成用組成物B2-1において、前記有機ポリイソシアネートのイソシアネート基のモル数と、前記塗料組成物用主材に含まれる共重合体b1の水酸基のモル数、及び低分子量多価アルコールの水酸基のモル数の和との比NCO/OHは1.0である。
塗料組成物B2-2~B2-5
表5に示す成分及び割合で、塗料組成物B2-1と同様に混合して、塗料組成物B2-2~5を得た。
塗料組成物B2-6
共重合体b4、低分子量多価アルコール、増粘剤、硬化触媒、溶剤及び消泡剤を、表6に記載の割合で混合し、均一な塗料組成物用主材を得た。
その後、前記塗料組成物用主材及び有機ポリイソシアネートを、それぞれ、100部及び18部秤量して混合し、均一な塗料組成物B2-6を得た。
塗料組成物B2-7~B2-9
表6に示す成分及び割合で、塗料組成物B2-6と同様に混合して、塗料組成物B2-2~5を得た。
4)塗料組成物B2-1~B2-9の評価方法
前記で得られた塗料組成物B2-7~9について、後記する方法に従い、塗料組成物の固形分及び塗膜のTgを測定した。それらの結果を表5及び表6に示す。
◆塗料組成物の固形分
塗料組成物を155℃で1時間静置した後の残分を固形分とした。
◆塗料組成物の塗膜のTg
塗料組成物の塗膜のTgは、示差走査熱量計を用いて得られた熱流束曲線のベースラインと変曲点での接線の交点から決定した。
熱流束曲線は、塗料組成物を155℃で1時間乾燥させて得た試料約10mgを-50℃まで冷却し、5分間保持した後、10℃/minで300℃まで昇温し、引き続き-50℃まで冷却し、5分間保持した後、10℃/minで350℃まで昇温する条件で得た。
・測定装置:エスアイアイ・ナノテクノロジー社製示差走査熱量計 DSC6220
・測定雰囲気:窒素雰囲気下
Figure 0007119339000005
Figure 0007119339000006
4.塗料組成物P-1の調製
共重合体b1、低分子量多価アルコールY403及びHGL、増粘剤PFA231、硬化触媒DBTDL、溶剤LAWS、並びに、消泡剤AC326Fを、それぞれ、100部、10部、5部、5部、0.1部、40部及び0.5部秤量して混合し、均一なプライマー層形成用主材とした。
一方、有機ポリイソシアネートTPA100及びシランカップリング剤であるオルガノシラン(東レ・ダウコーニング社製)を、それぞれ、100部及び10部秤量して混合し、均一なプライマー層形成用硬化剤とした。
その後、前記プライマー層形成用主材100部及び前記プライマー層形成用硬化剤25部を混合し、均一なプライマー層形成用の塗料組成物P-1(固形分63.6%)を得た。
5.実施例1~7、比較例1~3
前記表2で得られた塗料組成物A1~A7、A’1及びA’2を使用し、当該塗料組成物の塗膜の上に塗料組成物(B)として、アクリルゴム、アクリルシリコン樹脂及びエポキシ樹脂を使用した試験体を、以下の通り作製し、後記する評価を行った。ただし、比較例3はアルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂を含む塗料組成物を使用せずに試験体を作製し、後記する評価を行った。それらの結果を表7に示す。
(1)試験体の作製
本評価では、シーリング材「ペンギンシールMS2500typeNBホワイト」(サンスター技研(株)製シーリング材、可塑剤非含有)に対し、可塑剤としてDOP又はBBPを13質量%になるよう混合したものをシーリング材として用いた。
まず、試験体用基材(目地幅20mmのアルミ製型枠、図1参照)の目地部分にシーリング材用プライマーとして「UM-2」(サンスター技研(株)製)を刷毛塗りし、気温23℃、湿度50%で2時間養生した。その後、シーリング材を目地部分に充填し、温度23℃、湿度50%で3日間養生することにより、シーリング材層を形成した。
次に、前記シーリング材層の表面に、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂を含む塗料組成物A1~7、A’1又はA’2の塗布量が、塗膜として80g/mとなるように刷毛塗りした。その後、気温23℃、湿度50%で1日養生することにより、塗膜を形成した。
続いて、前記塗膜の表面に、水系エポキシ樹脂塗料(東亞合成(株)製、商品名「アロン水性マルチプライマー」)を塗布量0.1kg/mで刷毛塗りした。その後、温度23℃、湿度50%で1日養生することにより、プライマー層を形成した。
次いで、塗料組成物α1を塗布量2kg/mで刷毛塗りした。その後、温度23℃、湿度50%で1日養生することにより、防水層を形成した。
さらに、仕上塗料として、水系アクリルシリコン樹脂塗料(東亞合成(株)製、商品名「アロン水性スーパーカラーSi」)を塗布量0.3kg/mで刷毛塗りした。その後、温度23℃、湿度50%で7日間養生することにより、保護層を形成し、表7に示す層構成を有する試験体を得た。得られた試験体を用いて、後記する評価を行った。尚、塗膜の外観は白色透明であった。
(2)可塑剤移行防止性試験
1)変形防止性の評価
実施例1(1)で得られた試験体を、乾燥機(80℃)に静置し、14日間加熱した。加熱後の塗膜の外観を目視観察し、以下の4水準で評価を行った。それらの結果を表7に示す。
◎:全くシワ又はフクレ等の変形が発生しなかった。
○:極僅かにシワ又はフクレ等の変形が発生した。
△:僅かにシワ又はフクレ等の変形が発生した。
×:著しくシワ又はフクレ等の変形が発生した。
2)耐汚染性の評価
実施例1(1)で得られた試験体を、乾燥機(80℃)に静置し、14日間加熱した。加熱後の試験体を水平に置いて8号黒色珪砂を散布した後、試験体を垂直に立てて珪砂を自然落下させた。このとき、付着した8号黒色珪砂の程度(ふりかけた面積に対する付着面積の割合)について、目視確認し、以下の4水準で評価を行った。それらの結果を表7に示す。
◎:付着面積が10%未満
○:付着面積が10%以上20%未満
△:付着面積が20%以上50%未満
×:付着面積が50%以上
3)付着性の評価
実施例1(1)で得られた試験体を、乾燥機(80℃)に静置し、14日間加熱した。加熱後の塗膜の付着性を、JIS K5600-5-6(付着性(クロスカット法))に準じて評価し、以下の4水準で評価を行った。それらの結果を表7に示す。
◎:全く剥がれがない
○:剥がれが全面積の5%未満
△:剥がれが全面積の5%以上35%未満
×:剥がれが全面積の35%以上
尚、作製直後の試験体は実施例1~7及び比較例1~2のいずれの評価結果も、◎であった。
4)変色防止性の評価
実施例1(1)で得られた試験体を、乾燥機(80℃)に静置し、14日間加熱した。加熱後の塗膜の外観を目視観察し、以下の4水準で評価を行った。それらの結果を表7に示す。
◎:全く変色が見られなかった。
○:極僅かに変色が見られた。
△:僅かに変色が見られた。
×:著しい変色が見られた。
(3)促進耐候性試験
1)耐候性の評価
実施例1(1)で得られた試験体を、サンシャインスーパーロングライフウェザーメーター(スガ試験機社製)に設置し、JIS A1415 4に規定するWS-A法に準拠して3000時間の促進耐候性試験を行った。
促進耐候性試験後の塗膜の外観を目視観察し、以下の4水準で評価を行った。それらの結果を表7に示す。尚、比較例3については、可塑剤移行防止性試験の結果が悪かったため、評価しなかった。
◎:全く変色が見られず、ひび割れも見られなかった。
○:極僅かに変色が見られるが、ひび割れは見られなかった。
△:僅かに変色が見られるが、ひび割れは見られなかった。
×:著しい変色が見られ、ひび割れも見られた。
(4)温冷繰返し試験
1)耐温冷繰返し性の評価
実施例1(1)で得られた試験体を、水浸漬(23℃)、18時間→低温インキュベーター(-20℃)、3時間→乾燥機(60℃)、3時間を1サイクルとする冷熱サイクル試験を合計10サイクル実施した。
温冷繰返し試験後の塗膜の外観を目視観察し、以下の2水準で評価を行った。それらの結果を表7に示す。尚、比較例3については、可塑剤移行防止性試験の結果が悪かったため、評価しなかった。
◎:ひび割れが見られなかった。
×:ひび割れが見られた。
Figure 0007119339000007
実施例1~7の結果から明らかなように、本発明の塗料組成物(A)を用いる塗装工法は、可塑剤のSP値によらず、可塑剤移行防止性、耐候性及び耐温冷繰返し性のいずれにも優れるものであった。
これに対して、本発明の塗料組成物(A)とは異なる塗料組成物を用いる塗装工法である比較例1は、可塑剤のSP値が比較的高い場合には、可塑剤移行防止性に劣り、比較例2は、耐温冷繰返し性に劣るものであった。また、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂を含む塗料組成物を使用しない塗装工法である比較例3は、可塑剤の移行を全く防止できず、塗膜の変形、汚染、剥離及び変色が発生した。尚、促進耐候性試験及び温冷繰返し試験は実施しなかった。
6.実施例8~14、比較例4~6
前記表2で得られた塗料組成物A1~7、A’1~2を使用し、当該塗料組成物の塗膜の上に塗料組成物(B)として、アクリルウレタン樹脂を使用した試験体を、以下の通り作製し、実施例1~7及び比較例1~2と同様の評価を行った。ただし、比較例6はアルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂を含む塗料組成物を使用せずに、同様の評価を行った。それらの結果を表8に示す。
(1)試験体の作製及び評価方法
実施例1の手順に準じて、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂を含む塗料組成物A1~A7、A’1又はA’2の塗膜を形成したのに続き、当該塗膜の表面に、塗料組成物P-1を塗布量0.1kg/mで刷毛塗りした。その後、気温23℃、湿度50%で1日養生することにより、プライマー層を形成した。
次いで、前記プライマー層の表面に、塗料組成物B2-1を塗布量0.2kg/mで刷毛塗りした。その後、気温23℃、湿度50%で1日養生することにより、防水層を形成した。
さらに、前記防水層の表面に、塗料用組成物B2-6を塗布量0.15kg/mで刷毛塗りし、気温23℃、湿度50%で1日養生することにより、保護層を形成し、表8に示す層構成を有する試験体を得た。得られた試験体を用いて、実施例1~7及び比較例1~3と同様の評価を行った。尚、塗膜の外観は無色透明であった。
Figure 0007119339000008
実施例8~14の結果から明らかなように、本発明の塗料組成物(A)を用いる塗装工法は、可塑剤のSP値によらず、可塑剤移行防止性、耐候性及び耐温冷繰返し性のいずれにも優れるものであった。
これに対して、本発明の塗料組成物(A)とは異なる塗料組成物を用いる塗装工法である比較例4は、可塑剤のSP値が比較的高い場合には、可塑剤移行防止性に劣り、比較例5は、耐温冷繰返し性に劣るものであった。また、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂を含む塗料組成物を使用しない塗装工法である比較例6は、可塑剤の移行を全く防止できず、塗膜の変形、汚染、剥離及び変色が発生した。尚、促進耐候性試験及び温冷繰返し試験は実施しなかった。
7.実施例15~30、比較例7~9
前記塗料組成物A1及びA’1、並びに、塗料組成物α1~γ3及びイ~トを使用し、以下の通り試験体を作製し、各種評価を行った。
塗料組成物イ(アクリル樹脂)
保護層として、JIS A 6909(建築用仕上塗材)に規定される水系アクリル樹脂複層塗材(エスケー化研社製、商品名「レナラック」、塗布量1.5kg/m)及び水系アクリル樹脂塗料(エスケー化研社製、商品名「ブリーズコート」、塗布量0.36kg/m)を用いた。
塗料組成物ロ(アクリルウレタン樹脂)
保護層として、溶剤系アクリルウレタン樹脂塗料(東亞合成社製、商品名「アロンウオールFC(DX)スーパーカラー」、塗布量0.3kg/m)を用いた。
塗料組成物ハ(アクリルシリコン樹脂)
保護層として、弱溶剤系アクリルシリコン樹脂塗料(東亞合成社製、商品名「アロンMDカラーSi」、塗布量0.3kg/m)を用いた。
塗料組成物ニ(フッ素樹脂)
保護層として、溶剤系フッ素樹脂塗料(東亞合成社製、商品名「アロンウオールフッ素FC(DX)カラー」、塗布量0.3kg/m)を用いた。
塗料組成物ホ(エポキシ樹脂)
保護層として、無溶剤系エポキシ樹脂塗料(東亞合成社製、商品名「アロンNE」、塗布量0.6kg/m)を用いた。
塗料組成物ヘ(エチレン酢酸ビニル樹脂)
防水層として、エチレン酢酸ビニル樹脂として、エチレン酢酸ビニル樹脂塗膜防水材(大関化学工業社製、商品名「パラテックスA材」、塗布量1.7kg/m))を用い、保護層として、防水層の上に水系エチレン酢酸ビニル樹脂塗料(大関化学工業社製、商品名「カラーコート」、塗布量0.12kg/m)を用いた。
塗料組成物ト(ウレタンゴム)
防水層として、JIS A 6021(建築用塗膜防水材)の屋根用に規定されるウレタンゴム塗膜防水材(ダイフレックス社製、商品名「US-100」、塗布量2.5kg/m)を用い、保護層として、防水層の上に溶剤系アクリルウレタン樹脂塗料(ダイフレックス社製、商品名「エクセルトップ」、塗布量0.2kg/m)を用いた。
1)付着性の評価
(1)試験体の作製
実施例15~23、比較例7~9
実施例1の手順に準じて、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂を含む塗料組成物A1又はA’2の塗膜を得たのに続き、水系エポキシ樹脂塗料(東亞合成(株)製、商品名「アロン水性マルチプライマー」)を塗布量0.1kg/mで刷毛塗りした。その後、温度23℃、湿度50%で1日養生することにより、プライマー層を形成した。
続いて、表9に示す通り、前記プライマー層の表面に、塗料組成物α1~α3、β1~β3又はγ1~γ3を塗布量2kg/mで刷毛塗りした。その後、温度23℃、湿度50%で1日養生することにより、防水層を形成した。
仕上塗料として、前記防水層の表面に、水系アクリルシリコン樹脂塗料(東亞合成(株)製、商品名「アロン水性スーパーカラーSi」)を塗布量0.3kg/mで刷毛塗りした。その後、7日間養生することにより、保護層を形成し、表9に示す層構成を有する試験体を得た。
実施例24~30
実施例8の手順に準じて、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂を含む塗料組成物A1又はA’2の塗膜を得たのに続き、次いで、前記プライマー層の表面に、水系エポキシ樹脂塗料(東亞合成(株)製、商品名「アロン水性マルチプライマー」)を塗布量0.1kg/mで刷毛塗りした。その後、温温度23℃、湿度50%で1日養生することにより、プライマー層を形成した。
続いて、表9に示す通り、前記プライマー層の表面に、塗料組成物イ~トを塗布量2kg/mで刷毛塗りした。その後、気温23℃、湿度50%で7日間養生することにより、防水層及び/又は保護層を形成し、表9に示す層構成を有する試験体を得た。
(2)試験体の評価方法
7.1)(1)で得られた試験体を、乾燥機(80℃)に静置し、14日間加熱した。その後、JIS K5600-5-6(付着性(クロスカット法))に準じて、可塑剤含有樹脂上の塗膜の付着性を評価し、以下の4水準で評価を行った。それらの結果を表9に示す。
◎:全く剥がれがない
○:剥がれが全面積の5%以下
△:剥がれが全面積の5~35%
×:剥がれが全面積の35%以上
尚、作製直後の試験体は実施例15~27及び比較例7~9の評価結果は、いずれも◎であった。
2)25℃におけるゼロスパンテンション伸び量の評価
25℃におけるゼロスパンテンション伸び量は、「ポリマーセメント系塗膜防水工事施工指針(案)・同解説(日本建築学会)参考資料2 ポリマーセメント系塗膜防水材の品質試験方法」のゼロスパンテンション伸び量試験に準拠して測定され、可塑剤含有樹脂のひび割れに対する塗膜の追従性を示すものであり、塗膜の防水性を評価することができる。
(1)試験体の作製
実施例15~23、比較例7~9
本評価では、シーリング材「ペンギンシールMS2500typeNBホワイト」(サンスター技研(株)製シーリング材、可塑剤非含有)に対し、可塑剤としてBBPを13質量%になるよう混合したものをシーリング材として用いた。
JIS A 5430に規定される裏面中央部幅方向に深さ6mmの切り込みを入れた寸法150×75×8mmのフレキシブル板(スレートボード)に、シーリング材用プライマーとして「UM-2」(サンスター技研(株)製)を刷毛塗りした。その後、気温23℃、湿度50%で2時間養生した。
その後、前記シーリング材を2mmの厚さで充填し、温度23℃、湿度50%で5日間養生することにより、シーリング材層を形成した。
続いて、前記シーリング材の表面に、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂を含む塗料組成物の塗布量が、塗膜として80g/mとなるように刷毛塗りした。その後、気温23℃、湿度50%で1日養生することにより、塗膜を形成した。
次に、前記塗膜の表面に、水系エポキシ樹脂塗料(東亞合成(株)製、商品名「アロン水性マルチプライマー」)を塗布量0.1kg/mで刷毛塗りした。その後、温度23℃、湿度50%で1日養生することにより、プライマー層を形成した。
さらに、表9に示す通り、前記プライマー層の表面に、塗料組成物α1~α3、β1~β3又はγ1~γ3を塗布量2kg/mで刷毛塗りした。その後、温度23℃、湿度50%で1日養生することにより、防水層を形成した。
仕上塗料として、前記防水層の表面に、水系アクリルシリコン樹脂塗料(東亞合成(株)製、商品名「アロン水性スーパーカラーSi」)を塗布量0.3kg/mで刷毛塗りした。その後、温度23℃、湿度50%で7日間養生することにより、保護層を形成し、表9に示す層構成を有する試験体を得た。
実施例24~30
実施例15の手順に準じて、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂塗料組成物の塗膜を得たのに続き、水系エポキシ樹脂塗料(東亞合成(株)製、商品名「アロン水性マルチプライマー」)を塗布量0.1kg/mで刷毛塗りした。その後、温度23℃、湿度50%で1日養生することにより、プライマー層を形成した。
次に、表9に示す通り、前記プライマー層の表面に、塗料組成物イ~トを塗布量2kg/mで刷毛塗りした。その後、温度23℃、湿度50%で7日養生することにより、防水層及び/又は保護層を形成し、表9に示す層構成を有する試験体を得た。
(2)試験体の評価方法
7.2)(1)で得られた試験体を、乾燥機(80℃)に静置し、14日間加熱した。加熱後の試験体を25℃の環境下で常態調整した後、「ポリマーセメント系塗膜防水工事施工指針(案)・同解説(日本建築学会)参考資料2 ポリマーセメント系塗膜防水材の品質試験方法」のゼロスパンテンション伸び量試験に準拠して、5mm/分で引張った時に、塗膜にピンホールや破断が発生した時点のチャック間の距離を測定し、23℃におけるゼロスパンテンション伸び量とした。それらの結果を表9に示す。
Figure 0007119339000009
実施例15~30の結果から明らかなように、塗料組成物(A1)を用いた場合、付着性に優れ、塗料組成物(B)として塗料組成物(B1)を用いた場合、ゼロスパンテンション伸び量が大きく、塗膜の防水性に優れる結果であった。
これらの中でも、防水層として、伸び率が300%以上かつ引張強さが1.3N/mm以上であるアクリルゴム(実施例15、18及び21)、エチレン酢酸ビニル樹脂(実施例29)及びウレタンゴム(実施例30)を用いた場合、ゼロスパンテンション伸び量がより大きく、塗膜の防水性が一層優れる結果であった。
また、防水層として、無機質水硬性物質を含む塗料組成物(B1)を用いた場合(実施例15~17、アクリルゴム又はアクリル樹脂の態様〔x1〕)は、無機質水硬性物質を含まない塗料組成物(B1)を用いた場合(実施例18~20、アクリルゴム又はアクリル樹脂の態様〔x1〕)よりもゼロスパンテンション伸び量が大きく、塗膜の防水性が一層優れる結果であった。
これに対して、塗料組成物(A’1)を用いた比較例7~9においては、可塑剤の移行により、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂を含む塗料組成物とプライマー層の界面で剥がれが発生したため、ゼロスパンテンション伸び量の評価を行えず、実用に耐えないほど、塗膜の防水性が悪い結果であった。
8.実施例31~40、比較例10~12
前記塗料組成物A1及びA’1、並びに、塗料組成物B2-1~9及びP-1を使用し、以下の通り試験体を作製し、各種評価を行った。
1)付着性の評価
(1)試験体の作製
実施例1の手順に準じて、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂塗料組成物を含む塗料組成物A1又はA’1の塗膜を得たのに続き、塗料組成物P-1を塗布量0.1kg/mで刷毛塗りした。その後、気温23℃、湿度50%で1日養生することにより、プライマー層を形成した。
続いて、前記プライマー層の表面に、表10に示す通り、塗料組成物B2-1~B2-5を塗布量0.2kg/mで刷毛塗りした。その後、気温23℃、湿度50%で1日養生することにより、防水層を形成した。
さらに、前記防水層の表面に、表10に示す通り、塗料用組成物B2-6~B2-9を塗布量0.15kg/mで刷毛塗りした。その後、気温23℃、湿度50%で1日養生することにより、保護層を形成し、表10に示す層構成を有する試験体を得た。塗膜の外観は無色透明であった。
(2)試験体の評価方法
8.1)(1)で得られた試験体を、実施例15~30及び比較例7~9と同様の方法で付着性を評価した。それらの結果を、表10に示す。
尚、作製直後の試験体は実施例31~40及び比較例10~12のいずれの評価結果も、◎であった。
2)-5℃におけるゼロスパンテンション伸び量の評価
-5℃におけるゼロスパンテンション伸び量は、「ポリマーセメント系塗膜防水工事施工指針(案)・同解説(日本建築学会)参考資料2 ポリマーセメント系塗膜防水材の品質試験方法」のゼロスパンテンション伸び量試験に準拠して測定され、可塑剤含有樹脂のひび割れに対する塗膜の追従性を示すものであり、低温下での塗膜の防水性を評価することができる。
(1)試験体の作製
JIS A 5430に規定される、裏面中央部幅方向に深さ6mmの切り込みを入れた寸法150×75×8mmのフレキシブル板(スレートボード)を用い、前記と同様にしてその表面に、実施例15~30及び比較例7~9と同様のシーリング材を充填し、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂を含む塗料組成物の塗膜、プライマー層、防水層及び保護層を順次形成して、表10に示す層構成を有する試験体を得た。
(2)試験体の評価方法
8.2)(1)で得られた試験体を、乾燥機(80℃)に静置し、14日間加熱した。加熱後の試験体を-5℃の環境下で常態調整した後、「ポリマーセメント系塗膜防水工事施工指針(案)・同解説(日本建築学会)参考資料2 ポリマーセメント系塗膜防水材の品質試験方法」のゼロスパンテンション伸び量試験に準拠して、5mm/分で引張った時に、塗膜にピンホールや破断が発生した時点のチャック間の距離を測定し、ゼロスパンテンション伸び量とした。それらの結果を表10に示す。
Figure 0007119339000010
実施例31~40の結果から明らかなように、塗料組成物(A)を用いた場合、付着性に優れ、防水層及び/又は保護層として、塗料組成物(B2)を用いた場合、-5℃におけるゼロスパンテンション伸び量が大きく、低温下での塗膜の防水性に優れる結果であった。
これらの中でも、低分子量多価アルコールとして、水酸基価の異なる多価アルコールを2種含む塗料組成物(B2)を用いた実施例31~36は、低分子量多価アルコールを1種のみ含む実施例37(塗料組成物B2-4)よりも、-5℃におけるゼロスパンテンション伸び量がより大きく、低温下での塗膜の防水性が一層優れる結果であった。
また、防水層を形成した実施例31~36は、防水層を形成しなかった実施例38よりも、-5℃におけるゼロスパンテンション伸び量が大きく、低温下での塗膜の防水性が一層優れる結果であった。
さらに、保護層として用いた塗料組成物の塗膜のTgが30℃以下である実施例31~36は、保護層として用いた塗料組成物の塗膜のTgが40℃を超える実施例39(塗料組成物B2-9)よりも、-5℃におけるゼロスパンテンション伸び量が大きく、低温下での塗膜の防水性が一層優れる結果であった。
防水層として用いた塗料組成物の塗膜のTgが20℃以下である実施例31~36は、防水層として用いた塗料組成物の塗膜のTgが40℃を超える実施例40(塗料組成物B2-5)よりも、-5℃におけるゼロスパンテンション伸び量が大きく、低温下での塗膜の防水性が一層優れる結果であった。
これに対して、塗料組成物(A’1)を用いた比較例10~12においては、可塑剤の移行により、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂を含む塗料組成物とプライマー層の界面で剥がれが発生したため、-5℃におけるゼロスパンテンション伸び量の評価を行えず、実用に耐えないほど、低温下での塗膜の防水性が悪い結果であった。
本発明は、塗料組成物を用いた塗装工法に関し、建築及び土木、電気部品、並びに自動車等の幅広い産業分野の様々な工業用製品分野において使用することができる。特に、建築及び土木分野に好ましく使用可能することが可能であり、当該分野の中でも、シーリング材、塩化ビニル系防水材又は塩化ビニル系内装材のいずれかに適用されることがより好ましく、シーリング材が特に好ましい。

Claims (15)

  1. 可塑剤含有樹脂の上に、塗料組成物(A)を塗布し、当該塗料組成物(A)の塗膜を形成する工程を含む塗装工法であって、
    前記塗料組成物(A)がアルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂を含み、当該塗料組成物(A)の塗膜のガラス転移温度(Tg)が30~100℃であり、
    前記アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂の構成単量体単位としてポリオキシアルキレン基含有エチレン性不飽和単量体を1~50質量%含む、塗装工法。
  2. 前記アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂の溶解度パラメータ値が9.6以上である、請求項1に記載の塗装工法。
  3. 前記アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂の構成単量体単位として水酸基含有エチレン性不飽和単量体を1~25質量%含む、請求項1又は2に記載の塗装工法。
  4. 前記アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル樹脂の数平均分子量がポリメチルメタクリレート換算した値として4,000~30,000である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の塗装工法。
  5. 前記可塑剤含有樹脂が、シーリング材、塩化ビニル系防水材又は塩化ビニル系内装材のいずれかである、請求項1~請求項のいずれか1項の塗装工法。
  6. 前記塗料組成物(A)の塗膜の上に、塗料組成物(B)を塗布し、当該塗料組成物(B)の塗膜を形成する工程を含み、
    当該塗料組成物(B)が、アクリルゴム又はアクリル樹脂が水性媒体中に分散されてなるエマルション組成物と、無機充填材とを含む、塗料組成物(B1)である、請求項1~のいずれか1項に記載の塗装工法。
  7. 前記アクリルゴム又はアクリル樹脂が、炭素数4~14の炭化水素基を有する、エチレン性不飽和単量体単位(a)を40~98質量%、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体単位(b)を0.1~5質量%、シアノ基含有エチレン性不飽和単量体単位(c)を1~35質量%、(メタ)アクリル酸と単官能エポキシ化合物との反応生成物からなる単量体単位(d)を0~20質量%、及び前記単量体のうちの少なくとも1種と共重合可能な他の単量体単位(e)を0~60質量%を構成単位として含有する、請求項に記載の塗装工法(但し、前記構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(c)、構成単位(d)、及び構成単位(e)の合計を100質量%とする。)。
  8. 前記アクリルゴム又はアクリル樹脂が、炭素数4~14の炭化水素基を有する、エチレン性不飽和単量体単位(a)を30~98質量%、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(b)を0.1~5質量%、グリシジル基含有エチレン性不飽和単量体単位(f)を0.1~5質量%、及び前記単量体のうちの少なくとも1種と共重合可能な他の単量体単位(e)を0~60質量%を構成単位として含有する、請求項に記載の塗装工法(但し、前記構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(f)、及び構成単位(e)の合計を100質量%とする。)。
  9. 前記塗料組成物(B1)が、さらに、無機質水硬性物質を含む、請求項~請求項のいずれか1項に記載の塗装工法。
  10. 前記塗料組成物(A)の塗膜の上に、塗料組成物(B)を塗布し、当該塗料組成物(B)の塗膜を形成する工程を含み、
    当該塗料組成物(B)が、バインダー樹脂を含む第一剤、及び、イソシアネート基を有する有機ポリイソシアネートを含む第二剤とを備える、塗料組成物(B2)である、請求項1~のいずれか1項に記載の塗装工法。
  11. 前記バインダー樹脂の水酸基価が10~1,200mgKOH/gであり、ポリスチレン換算した値として数平均分子量が2,000~30,000である、請求項10に記載の塗装工法。
  12. 前記塗料組成物(B2)が、さらに、水酸基価の異なる多価アルコールを少なくとも2種含む、請求項10又は請求項11に記載の塗装工法。
  13. 塗膜のTgが-40℃~20℃である、第一の塗料組成物(B2)を塗布し、当該第一の塗料組成物(B2)の塗膜を形成する工程と、
    前記工程で得られた塗膜の上に、塗膜のTgが-30℃~30℃である、第二の塗料組成物(B2)を塗布し、当該第二の塗料組成物(B2)の塗膜を形成する工程と、
    を含む、請求項10~請求項12のいずれか1項に記載の塗装工法。
  14. 請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の塗装工法を実施して得られる塗装被膜。
  15. 請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の塗装工法を実施して得られる塗装物品。
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