以下、本発明の回転電機のステータの一実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態の回転電機のステータ10は、略円環形状のステータコア20と、ステータコア20に組付けられたコイル30と、を備える。
なお、本明細書等では、説明を簡単かつ明確にするために、軸方向、径方向、周方向というときは、ステータ10及びステータコア20の中心軸線CLを基準にした方向をいう。また、軸方向内側とは、軸方向におけるステータ10の中央側をいい、軸方向外側とは、軸方向におけるステータ10の中央から離れる側をいう。
ステータコア20は、略円環形状を有し、周方向に沿って所定の間隔で径方向内側に突出する複数のティース21と、周方向で隣り合うティース21間の空間である複数のスロット22と、を備える。本実施形態では、ステータコア20は、48個のティース21を有しており、48個のスロット22が形成されている。ステータコア20は、所定厚さの電磁鋼鈑を軸方向に複数積層して形成された積層コアとして形成されている。ステータコア20は、軸方向において、第1端面201と、第2端面202と、を有する。
コイル30は、ステータコア20に組付けられ、ステータコア20の第1端面201から軸方向外側に突出する第1コイルエンド部31と、ステータコア20の第2端面202から軸方向外側に突出する第2コイルエンド部32と、が形成されている。
コイル30は、48個のスロット22の各々に挿入される複数のセグメント導体40を有する。
図3に示すように、セグメント導体40は、断面が略矩形状の導体部401に絶縁被膜部402が設けられている。セグメント導体40は、互いに平行に延び、第1端部41a及び第2端部41bを有する一対の脚部41と、一対の脚部41の第2端部41b同士を接続する湾曲部42と、を備え、略U字状となっている。セグメント導体40は、一対の脚部41が、ステータコア20の異なるスロット22にそれぞれ挿入され、湾曲部42が、ステータコア20の第2端面202から軸方向外側に突出し、一対の脚部41の第1端部41aが、ステータコア20の第1端面201から軸方向外側に突出するように配置される。
そして、ステータコア20の第1端面201から軸方向外側に突出した、一対の脚部41の突出部分は、不図示の治具が第1端部41aの先端部分を保持し、ステータコア20に対して軸方向で近づきながら周方向に相対回転することによって、ステータコア20の周方向に屈曲される。これにより、一対の脚部41の第1端部41aの突出部分は、ステータコア20の周方向において、互いに近づく方向、または互いに遠ざかる方向に屈曲して延びる斜行部43と、治具によって保持された第1端部41aの先端部分であり、斜行部43の先端からステータコア20の軸方向外側に延びる先端部44と、が形成される。
このようにして形成されたセグメント導体40は、斜行部43が、ステータコア20の周方向において互いに近づく方向に屈曲して延びる重ね巻セグメント導体40Aと、斜行部43が、ステータコア20の互いに遠ざかる方向に屈曲して延びる波巻セグメント導体40Bと、を有する。
図4及び図5に示すように、ステータコア20の各スロット22には、セグメント導体40の脚部41が、径方向に一列に並んで8層挿入されている。すなわち、ステータコア20の各スロット22には、径方向内側から数えて、1層目に配置された第1脚部411、2層目に配置された第2脚部412、3層目に配置された第3脚部413、4層目に配置された第4脚部414、5層目に配置された第5脚部415、6層目に配置された第6脚部416、7層目に配置された第7脚部417、及び8層目に配置された第8脚部418、が挿入されている。
ステータコア20の第1端面201側から見て、ステータコア20の各スロット22に挿入された8層の脚部41のうち、第1脚部411及び第2脚部412の斜行部43は、周方向において、反時計回りに斜行している。第3脚部413及び第4脚部414の斜行部43は、周方向において、時計回りに斜行している。第5脚部415及び第6脚部416の斜行部43は、周方向において、時計回りに斜行している。第7脚部417及び第8脚部418の斜行部43は、周方向において、反時計回りに斜行している。
このように、第1脚部411~第8脚部418の斜行部43は、2層ごとに周方向の斜行方向が同一である。したがって、第1脚部411の第1端部41aの先端部分を保持する第1治具と、第2脚部412の第1端部41aの先端部分を保持する第2治具とを、1つの駆動源でステータコア20に対して軸方向で近づきながら周方向で反時計回りとなるように相対回転させることができる。同様に、第3脚部413の第1端部41aの先端部分を保持する第3治具と、第4脚部414の第1端部41aの先端部分を保持する第4治具とを、1つの駆動源でステータコア20に対して軸方向で近づきながら周方向で時計回りとなるように相対回転させることができる。第5脚部415の第1端部41aの先端部分を保持する第5治具と第6脚部416の第1端部41aの先端部分を保持する第6治具とを、1つの駆動源でステータコア20に対して軸方向で近づきながら周方向で時計回りとなるように相対回転させることができる。第7脚部417の第1端部41aの先端部分を保持する第7治具と第8脚部418の第1端部41aの先端部分を保持する第8治具とを、1つの駆動源でステータコア20に対して軸方向で近づきながら周方向で反時計回りとなるように相対回転させることができる。
これにより、各スロット22に挿入されたセグメント導体40の脚部41の数(本実施形態では8つ)の半分の数(本実施形態では4つ)の駆動源で、第1脚部411~第8脚部418の斜行部43を形成できるので、第1脚部411~第8脚部418の斜行部43を形成する製造装置を簡素化でき、ステータ10の製造コストを低減できる。なお、本実施形態では、第3治具及び第4治具と、第5治具及び第6治具とは、いずれもステータコア20に対して周方向で時計回りとなるように相対回転するので、1つの駆動源で第3治具~第6治具を駆動してもよい。この場合、3つの駆動源で第1脚部411~第8脚部418の斜行部43を形成できるので、ステータ10の製造コストをさらに低減できる。
ステータコア20の第1端面201側から見て、スロット22に挿入された第1脚部411及び第2脚部412の斜行部43の先端から軸方向外側に延びる先端部44、並びに第7脚部417及び第8脚部418の斜行部43の先端から軸方向外側に延びる先端部44と、反時計回りに6つ目のスロット22に挿入された第3脚部413及び第4脚部414の斜行部43の先端から軸方向外側に延びる先端部44、並びに第5脚部415及び第6脚部416の斜行部43の先端から軸方向外側に延びる先端部44とが、径方向内側から、第1脚部411の先端部44、第2脚部412の先端部44、第3脚部413の先端部44、及び第4脚部414の先端部44、第5脚部415の先端部44、第6脚部416の先端部44、第7脚部417の先端部44、及び第8脚部418の先端部44の順で、径方向に一列に並んでいる。
次に、図6に示すように、径方向に一列に並んだ第1脚部411~第8脚部418の先端部44は、ステータコア20の第1端面201側から見て、周方向において反時計回り側に配置された第1クランパ91と、周方向において時計回り側に配置された第2クランパ92とによって挟み込まれる。
第1クランパ91は、ステータコア20の第1端面201側から見て、径方向に延びる第1側面911と、第1側面911の径方向外側に位置し、第1側面911と略同一直線上で径方向に延びる第2側面912と、第1脚部411の先端部44の径方向内側の側面と対向するように周方向に延びる第3側面913と、第8脚部418の先端部44の径方向外側の側面と対向するように周方向に延びる第4側面914と、第1側面911の径方向外側端部911aと第2側面912の径方向内側端部912bとの間に形成された楔部915と、を有する。
楔部915は、第1側面911及び第2側面912から周方向で時計回り側に突出している。楔部915は、第1側面911の径方向外側端部911aから径方向外側に傾斜して周方向で時計回り側に延びる第1傾斜面915aと、第2側面912の径方向内側端部912bから径方向内側に傾斜して周方向で時計回り側に延びる第2傾斜面915bと、を備える。
第2クランパ92は、ステータコア20の第1端面201側から見て、径方向に延びる第1側面921と、第1側面921の径方向外側に位置し、第1側面921と略同一直線上で径方向に延びる第2側面922と、第1脚部411の先端部44の径方向内側の側面と対向するように周方向に延びる第3側面923と、第8脚部418の先端部44の径方向外側の側面と対向するように周方向に延びる第4側面924と、第1側面921の径方向外側端部921aと第2側面922の径方向内側端部922bとの間に形成された楔部925と、を有する。
楔部925は、第1側面921及び第2側面922から周方向で反時計回り側に突出している。楔部925は、第1側面921の径方向外側端部921aから径方向外側に傾斜して周方向で時計回り側に延びる第1傾斜面925aと、第2側面922の径方向内側端部922bから径方向内側に傾斜して周方向で時計回り側に延びる第2傾斜面925bと、を備える。
第1クランパ91と第2クランパ92は、ステータコア20の第1端面201側から見て、周方向で対称、すなわち径方向を軸として線対称な形状となっている。
この第1クランパ91及び第2クランパ92を、径方向に一列に並んだ第1脚部411~第8脚部418の先端部44に挟み込む。
このとき、ステータコア20の第1端面201側から見て、第1クランパ91の第1側面911は、径方向に一列に並んだ第1脚部411~第4脚部414の先端部44の周方向で反時計回り側の側面と対向し、第2クランパ92の第1側面921は、径方向に一列に並んだ第1脚部411~第4脚部414の先端部44の周方向で時計回り側の側面と対向する。第1クランパ91の第2側面912は、径方向に一列に並んだ第5脚部415~第8脚部418の先端部44の周方向で反時計回り側の側面と対向し、第2クランパ92の第2側面922は、径方向に一列に並んだ第5脚部415~第8脚部418の先端部44の周方向で時計回り側の側面と対向する。第1クランパ91の楔部915と第2クランパ92の楔部925とは、径方向において第4脚部414の先端部44と第5脚部415の先端部44との間に位置し、周方向で対向している。第1クランパ91の第3側面913及び第2クランパ92の第3側面923は、略同一直線上で周方向に延び、第1脚部411の先端部44の径方向で内側の側面と当接または近接している。第1クランパ91の第4側面914及び第2クランパ92の第4側面924は、略同一直線上で周方向に延び、第8脚部418の先端部44の径方向で外側の側面と当接または近接している。
そして、第1クランパ91及び第2クランパ92を周方向で互いに近づくように移動させる。
すると、第4脚部414の先端部44が、第1クランパ91の楔部915の第1傾斜面915a及び第2クランパ92の楔部925の第1傾斜面925aに当接する。また、第5脚部415の先端部44が、第1クランパ91の楔部915の第2傾斜面915b及び第2クランパ92の楔部925の第2傾斜面925bに当接する。
そして、第1クランパ91及び第2クランパ92を、周方向で互いにさらに近づくように移動させる。
すると、第1クランパ91の楔部915の第1傾斜面915a及び第2クランパ92の楔部925の第1傾斜面925aが、第4脚部414の先端部44を径方向内側に押圧する。これにより、第1クランパ91及び第2クランパ92が互いに近づくにしたがって、第4脚部414の先端部44は、第1クランパ91の楔部915の第1傾斜面915a及び第2クランパ92の楔部925の第1傾斜面925aに沿って、径方向内側に傾斜するように屈曲変形する。そして、第4脚部414の先端部44が、径方向内側に傾斜するように屈曲変形するのに伴って第3脚部413の先端部44を径方向内側に押圧し、第3脚部413の先端部44は、径方向内側に傾斜するように屈曲変形する。さらに、第3脚部413の先端部44が、径方向内側に傾斜するように屈曲変形するのに伴って第2脚部412の先端部44を径方向内側に押圧し、第2脚部412の先端部44は、径方向内側に傾斜するように屈曲変形する。第1脚部411の先端部44は、第1クランパ91の第3側面913及び第2クランパ92の第3側面923と当接または近接しているので、第2脚部412の先端部44が径方向内側に傾斜するように屈曲変形して第1脚部411の先端部44を押圧しても、第1脚部411の先端部44は、ほぼ屈曲変形せず軸方向と略平行に延びている(図7参照)。そして、第1脚部411~第4脚部414の先端部44は、隣接する先端部44が当接した状態で、第1クランパ91及び第2クランパ92によって保持される。
同時に、第1クランパ91の楔部915の第2傾斜面915b及び第2クランパ92の楔部925の第2傾斜面925bが、第5脚部415の先端部44を径方向外側に押圧する。これにより、第1クランパ91及び第2クランパ92が互いに近づくにしたがって、第5脚部415の先端部44は、第1クランパ91の楔部915の第2傾斜面915b及び第2クランパ92の楔部925の第2傾斜面925bに沿って、径方向外側に傾斜するように屈曲変形する。そして、第5脚部415の先端部44が、径方向外側に傾斜するように屈曲変形するのに伴って第6脚部416の先端部44を径方向外側に押圧し、第6脚部416の先端部44は、径方向外側に傾斜するように屈曲変形する。さらに、第6脚部416の先端部44が、径方向外側に傾斜するように屈曲変形するのに伴って第7脚部417の先端部44を径方向外側に押圧し、第7脚部417の先端部44は、径方向外側に傾斜するように屈曲変形する。第8脚部418の先端部44は、第1クランパ91の第4側面914及び第2クランパ92の第4側面924と当接または近接しているので、第7脚部417の先端部44が径方向外側に傾斜するように屈曲変形して第8脚部418の先端部44を押圧しても、第8脚部418の先端部44は、ほぼ屈曲変形せず軸方向と略平行に延びている(図7参照)。そして、第5脚部415~第8脚部418の先端部44は、隣接する先端部44が当接した状態で、第1クランパ91及び第2クランパ92によって保持される。
そして、第1クランパ91及び第2クランパ92によって、第1脚部411~第4脚部414の先端部44の隣接する先端部44が当接し、第5脚部415~第8脚部418の先端部44の隣接する先端部44が当接した状態で、例えばレーザ溶接により、第1脚部411の先端部44と第2脚部412の先端部44、第2脚部412の先端部44と第3脚部413の先端部44、及び第3脚部413の先端部44と第4脚部414の先端部44が接合され、第5脚部415の先端部44と第6脚部416の先端部44、第6脚部416の先端部44と第7脚部417の先端部44、及び第7脚部417の先端部44と第8脚部418の先端部44が接合される。これにより、第1脚部411~第4脚部414の先端部44が4つ一体に接合されて導通する第1接合部451が形成され、第5脚部415~第8脚部418の先端部44が4つ一体に接合されて導通する第2接合部452が形成される。
このように、ステータコア20の第1端面201側から見て、スロット22に挿入された第1脚部411及び第2脚部412の先端部44と、反時計回りに6つ目のスロット22に挿入された第3脚部413及び第4脚部414の先端部44とが径方向に一列に並んでおり、スロット22に挿入された第7脚部417及び第8脚部418の先端部44と、反時計回りに6つ目のスロット22に挿入された第3脚部413及び第4脚部414の先端部44とが径方向に一列に並んでいるので、簡素な形状の第1クランパ91及び第2クランパ92を用いて、スロット22に挿入された第1脚部411及び第2脚部412の先端部44と、反時計回りに6つ目のスロット22に挿入された第3脚部413及び第4脚部414の先端部44とを容易に接合することができ、スロット22に挿入された第7脚部417及び第8脚部418の先端部44と、反時計回りに6つ目のスロット22に挿入された第3脚部413及び第4脚部414の先端部44とを容易に接合することができる。これにより、第1接合部451及び第2接合部452を容易に形成することができる。
なお、一部のスロット22に挿入された第1脚部411及び第2脚部412の先端部44は、互いに接合しているが、異なるスロット22に挿入された第3脚部413及び第4脚部414の先端部44とは、接合していない。同様に、一部のスロット22に挿入された第3脚部413及び第4脚部414の先端部44は、互いに接合しているが、異なるスロット22に挿入された第1脚部411及び第2脚部412の先端部44とは、接合していない。また、一部のスロット22に挿入された第5脚部415及び第6脚部416の先端部44は、互いに接合しているが、異なるスロット22に挿入された第7脚部417及び第8脚部418の先端部44とは、接合していない。同様に、一部のスロット22に挿入された第7脚部417及び第8脚部418の先端部44は、互いに接合しているが、異なるスロット22に挿入された第5脚部415及び第6脚部416の先端部44とは、接合していない。この詳細については後述する。
このようにして、48個のスロット22の各々に挿入される複数のセグメント導体40によって、コイル30が構成される。そして、各セグメント導体40の斜行部43及び先端部44が、コイル30の第1コイルエンド部31を構成し、各セグメント導体40の湾曲部42が、コイル30の第2コイルエンド部32を構成する。
したがって、本実施形態のステータ10は、スロット22に挿入された第1脚部411及び第2脚部412の先端部44と、異なるスロット22に挿入された第3脚部413及び第4脚部414の先端部44とが接合された第1接合部451、並びに、スロット22に挿入された第5脚部415及び第6脚部416の先端部44と、異なるスロット22に挿入された第7脚部417及び第8脚部418の先端部44とが接合された第2接合部452、を有する。すなわち、本実施形態のステータ10は、ステータコア20の各スロット22に一列に8層挿入された脚部41の先端部44が4つずつ接合されて、1つのスロット22に挿入された8つの脚部41に対して2つの接合部(第1接合部451、第2接合部452)を有する。
従来のステータは、ステータコアの各スロットにセグメント導体の脚部を径方向に一列に8層並べて挿入してコイルを構成する場合、第1脚部の先端部と、異なるスロットに挿入された第2脚部の先端部とが接合された第1接合部、第3脚部の先端部と、異なるスロットに挿入された第4脚部の先端部とが接合された第2接合部、第5脚部の先端部と、異なるスロットに挿入された第6脚部の先端部とが接合された第3接合部、第7脚部の先端部と、異なるスロットに挿入された第8脚部の先端部とが接合された第4接合部を有していた。したがって、従来のステータは、ステータコアの各スロットに一列に8層挿入された脚部の先端部が2つずつ接合されて、1つのスロットに挿入された8つの脚部に対して4つの接合部を有していた。
したがって、従来のステータは、径方向に4つの接合部が配置されるため、4つの接合部間の径方向の間隔を大きくすることが難しく、コイルの部分放電開始電圧を高くするのが困難であった。
これに対し、本実施形態では、径方向に配置される接合部は第1接合部451と第2接合部452の2つであるので、接合部間の径方向の間隔を大きくすることが可能となり、コイル30の部分放電開始電圧を高くすることが可能である。
また、従来のステータを製造するためには、第1クランパ91及び第2クランパ92には、径方向において、第2脚部の先端部と第3脚部の先端部との間、第4脚部の先端部と第5脚部の先端部との間、及び第6脚部の先端部と第7脚部の先端部との間に楔部を設ける必要があるため、第1クランパ91及び第2クランパ92それぞれ3つ、計6つの楔部を設ける必要があった。さらに、第1クランパ91及び第2クランパ92それぞれに3つの楔部を設けるためには、1つの楔部の大きさを小さくする必要があった。
これに対し、本実施形態では、第1脚部411~第4脚部414の先端部44が4つ一体に接合され、第5脚部415~第8脚部418の先端部44が4つ一体に接合されるので、第1クランパ91及び第2クランパ92は、径方向において、第4脚部の先端部と第5脚部の先端部との間のみに楔部915、925を設ければよく、第1クランパ91及び第2クランパ92それぞれ1つ、計2つの楔部915、925を設ければよい。これにより、第1クランパ91及び第2クランパ92の形状を簡素化できるので、ステータ10の製造コストを低減することができる。さらに、第1クランパ91及び第2クランパ92それぞれ1つの楔部915、925を形成すればよいので、楔部915、925を大型化できる。これにより、第1クランパ91及び第2クランパ92の剛性を高めることができるので、ステータ10の製造コストを低減することができる。
また、図7に示すように、第2脚部412~第4脚部414の先端部44が径方向内側に傾斜するように屈曲し、第5脚部415~第7脚部417の先端部44が径方向外側に傾斜するように屈曲しているので、第4脚部414の先端部44と第5脚部415の先端部44の径方向の間隔が大きくなる。これにより、コイル30の部分放電開始電圧が高くなり、コイル30での部分放電の発生を抑制することができるので、コイル30をより大きな電力で駆動することができ、回転電機の出力性能が向上する。
さらに、第1クランパ91及び第2クランパ92によって、第2脚部412~第4脚部414の先端部44を径方向内側に屈曲変形させると、軸方向に対する第3脚部413の先端部44の径方向内側への傾斜角θ3は、軸方向に対する第2脚部412の先端部44の径方向内側への傾斜角θ2よりも大きくなり、第4脚部414の先端部44の径方向内側への傾斜角θ4は、傾斜角θ3よりも大きくなる。また、このように第1クランパ91及び第2クランパ92によって、第5脚部415~第7脚部417の先端部44を径方向外側に屈曲変形させると、軸方向に対する第6脚部416の先端部44の径方向外側への傾斜角θ6は、軸方向に対する第7脚部417の先端部44の径方向外側への傾斜角θ7よりも大きくなり、第5脚部415の先端部44の径方向外側への傾斜角θ5は、傾斜角θ6よりも大きくなる。
これにより、第2脚部412~第4脚部414の先端部44のうち、第4脚部414の先端部44が径方向内側に最も傾斜するように屈曲し、第5脚部415~第7脚部417の先端部44のうち、第5脚部415の先端部44が径方向外側に最も傾斜するように屈曲しているので、第4セグメント導体の先端部と第5セグメント導体の先端部との径方向の間隔、すなわち、第1接合部451と第2接合部452との径方向の間隔をより大きくすることができ、コイル30の部分放電開始電圧をより高くすることができる。
また、第1脚部411の先端部44及び第8脚部418の先端部44は、径方向内側及び径方向外側には屈曲しておらず、軸方向と平行に延びているので、第1コイルエンド部31の径方向長さを大きくすることなく、第4セグメント導体の先端部と第5セグメント導体の先端部との径方向の間隔を大きくすることができる。
<セグメント導体によるコイルの構成>
次に、ステータコア20の各スロット22に挿入されたセグメント導体40(重ね巻セグメント導体40A及び波巻セグメント導体40B)によるコイル30の構成について説明する。
図8に示すように、コイル30には、U相引出線50U、V相引出線50V、W相引出線50Wが接続されている。不図示の電力変換装置等と電気的に接続されている。回転電機が電動機として駆動する際には、U相引出線50U、V相引出線50V、W相引出線50Wは、不図示の電力変換装置等から供給される3相交流電力のうち、それぞれU相交流電力、V相交流電力、W相交流電力をコイル30に供給する。回転電機が発電機として駆動する際には、U相引出線50U、V相引出線50V、W相引出線50Wは、回転電機によって生成される3相交流電力のうち、それぞれU相交流電力、V相交流電力、W相交流電力を不図示の電力変換装置等に供給する。
本実施形態では、U相引出線50Uは、第1U相引出線51U及び第2U相引出線52Uの2本の引出線を有する。V相引出線50Vは、第1V相引出線51V及び第2V相引出線52Vの2本の引出線を有する。W相引出線50Wは、第1W相引出線51W及び第2W相引出線52Wの2本の引出線を有する。第1U相引出線51U及び第2U相引出線52Uと、第1V相引出線51V及び第2V相引出線52Vと、第1W相引出線51W及び第2W相引出線52Wとは、それぞれ所定のセグメント導体40の先端部44と電気的に接続されている。第1U相引出線51U及び第2U相引出線52Uと、第1V相引出線51V及び第2V相引出線52Vと、第1W相引出線51W及び第2W相引出線52Wとが、それぞれどのセグメント導体40の先端部44と電気的に接続されているかの詳細については、後述する。
コイル30には、第1U相ブリッジ61U及び第2U相ブリッジ62Uと、第1V相ブリッジ61V及び第2V相ブリッジ62Vと、第1W相ブリッジ61W及び第2W相ブリッジ62Wとが接続されている。第1U相ブリッジ61U及び第2U相ブリッジ62Uと、第1V相ブリッジ61V及び第2V相ブリッジ62Vと、第1W相ブリッジ61W及び第2W相ブリッジ62Wとは、いずれも導体であり、絶縁被覆されていても、絶縁被覆されていなくてもよい。第1U相ブリッジ61U及び第2U相ブリッジ62Uと、第1V相ブリッジ61V及び第2V相ブリッジ62Vと、第1W相ブリッジ61W及び第2W相ブリッジ62Wとは、いずれもコイル30の軸方向外側で周方向に延び、両端部がそれぞれ異なるセグメント導体40の先端部44と電気的に接続している。第1U相ブリッジ61U及び第2U相ブリッジ62Uと、第1V相ブリッジ61V及び第2V相ブリッジ62Vと、第1W相ブリッジ61W及び第2W相ブリッジ62Wとが、それぞれどのセグメント導体40の先端部44と電気的に接続されているかの詳細については、後述する。
コイル30には、中性点70が接続されている。中性点70は、導体であり、絶縁被覆されていても、絶縁被覆されていなくてもよい。本実施形態では、中性点70は、コイル30の径方向外側で周方向に延び、複数のセグメント導体40の先端部44と電気的に接続している。中性点70が、どのセグメント導体40の先端部44と電気的に接続されているかの詳細については、後述する。
図9に示すように、コイル30は、U相コイル30U、V相コイル30V、W相コイル30Wの3相のコイルから構成される。U相コイル30Uは、U相引出線50Uと電気的に接続する。V相コイル30Vは、V相引出線50Vと電気的に接続する。W相コイル30Wは、W相引出線50Wと電気的に接続する。
U相コイル30Uは、巻線U1、U2、U3、U4の4つの巻線が並列に接続されて構成される。それぞれの巻線U1、U2、U3、U4はそれぞれ、ステータコア20の中心軸線CLから径方向外側に向かって見て、時計回りに巻回する巻線U1-1、U2-1、U3-1、U4-1と、反時計回りに巻回する巻線U1-2、U2-2、U3-2、U4-2と、を有する。巻線U1-1、U2-1の一端部は、第1U相引出線51Uと電気的に接続している。巻線U3-1、U4-1の一端部は、第2U相引出線52Uと電気的に接続している。巻線U1-1、U2-1の他端部と巻線U1-2、U2-2の一端部とは、第1U相ブリッジ61Uを介して電気的に接続している。巻線U3-1、U4-1の他端部と巻線U3-2、U4-2一端部とは、第2U相ブリッジ62Uを介して電気的に接続している。巻線U1-2、U2-2の他端部及び巻線U3-2、U4-2の他端部は、中性点70と電気的に接続している。
V相コイル30Vは、巻線V1、V2、V3、V4の4つの巻線が並列に接続されて構成される。それぞれの巻線V1、V2、V3、V4はそれぞれ、ステータコア20の中心軸線CLから径方向外側に向かって見て、時計回りに巻回する巻線V1-1、V2-1、V3-1、V4-1と、反時計回りに巻回する巻線V1-2、V2-2、V3-2、V4-2と、を有する。巻線V1-1、V2-1の一端部は、第1V相引出線51Vと電気的に接続している。巻線V3-1、V4-1の一端部は、第2V相引出線52Vと電気的に接続している。巻線V1-1、V2-1の他端部と巻線V1-2、V2-2の一端部とは、第1V相ブリッジ61Vを介して電気的に接続している。巻線V3-1、V4-1の他端部と巻線V3-2、V4-2一端部とは、第2V相ブリッジ62Vを介して電気的に接続している。巻線V1-2、V2-2の他端部及び巻線V3-2、V4-2の他端部は、中性点70と電気的に接続している。
W相コイル30Wは、巻線W1、W2、W3、W4の4つの巻線が並列に接続されて構成される。それぞれの巻線W1、W2、W3、W4はそれぞれ、ステータコア20の中心軸線CLから径方向外側に向かって見て、時計回りに巻回する巻線W1-1、W2-1、W3-1、W4-1と、反時計回りに巻回する巻線W1-2、W2-2、W3-2、W4-2と、を有する。巻線W1-1、W2-1の一端部は、第1W相引出線51Wと電気的に接続している。巻線W3-1、W4-1の一端部は、第2W相引出線52Wと電気的に接続している。巻線W1-1、W2-1の他端部と巻線W1-2、W2-2の一端部とは、第1W相ブリッジ61Wを介して電気的に接続している。巻線W3-1、W4-1の他端部と巻線W3-2、W4-2一端部とは、第2W相ブリッジ62Wを介して電気的に接続している。巻線W1-2、W2-2の他端部及び巻線W3-2、W4-2の他端部は、中性点70と電気的に接続している。
ステータコア20の48個のスロット22について、説明を簡単かつ明確にするために、便宜上、ステータコア20の第1端面201側から見て、図2に示すように、時計回りに第1スロット2201~第48スロット2248とする。
ここでは、コイル30を構成するU相コイル30U、V相コイル30V、W相コイル30Wの3相のコイルのうち、V相コイル30Vの構成について、図10を参照して説明する。なお、図10において、巻線V1、V2を構成する脚部41は濃色(細かいドットの網掛け)で示し、巻線V3、V4を構成する脚部41は薄色(粗いドットの網掛け)で示している。
図10に示すように、ステータコア20の第1端面201側から見て、第1脚部411の第2端部41bと、周方向において反時計回りに5つ目のスロット22に挿入された第5脚部415の第2端部41bとが、湾曲部42によって接続されており、重ね巻セグメント導体40Aの一対の脚部41となっている。第2脚部412の第2端部41bと、周方向において反時計回りに5つ目のスロット22に挿入された第6脚部416の第2端部41bとが、湾曲部42によって接続されており、重ね巻セグメント導体40Aの一対の脚部41となっている。第3脚部413の第2端部41bと、周方向において時計回りに5つ目のスロット22に挿入された第7脚部417の第2端部41bとが、湾曲部42によって接続されており、波巻セグメント導体40Bの一対の脚部41となっている。第4脚部414の第2端部41bと、周方向において反時計回りに5つ目のスロット22に挿入された第8脚部418の第2端部41bとが、湾曲部42によって接続されており、波巻セグメント導体40Bの一対の脚部41となっている。
したがって、ステータコア20の第1端面201側から見て、第5脚部415の第2端部41bと、周方向において時計回りに5つ目のスロット22に挿入された第1脚部411の第2端部41bとが、湾曲部42によって接続されており、重ね巻セグメント導体40Aの一対の脚部41となっている。第6脚部416の第2端部41bと、周方向において時計回りに5つ目のスロット22に挿入された第2脚部412の第2端部41bとが、湾曲部42によって接続されており、重ね巻セグメント導体40Aの一対の脚部41となっている。第7脚部417の第2端部41bと、周方向において時計回りに5つ目のスロット22に挿入された第3脚部413の第2端部41bとが、湾曲部42によって接続されており、波巻セグメント導体40Bの一対の脚部41となっている。第8脚部418の第2端部41bと、周方向において時計回りに5つ目のスロット22に挿入された第4脚部414の第2端部41bとが、湾曲部42によって接続されており、波巻セグメント導体40Bの一対の脚部41となっている。
なお、第28スロット2228に挿入された第7脚部417の先端部44と第8脚部418の先端部44とは、例えばレーザ溶接により、接合されて導通している。また、第22スロット2222に挿入された第5脚部415の先端部44と第6脚部416の先端部44とは、例えばレーザ溶接により、接合されて導通している。一方で、第28スロット2228に挿入された第7脚部417及び第8脚部418の接合された先端部44と、第22スロット2222に挿入された第5脚部415及び第6脚部416の接合された先端部44とは、径方向に略直線状に並んで配置されているが、接合されておらず導通していない。
同様に、第27スロット2227に挿入された第7脚部417の先端部44と第8脚部418の先端部44とは、例えばレーザ溶接により、接合されて導通している。また、第21スロット2221に挿入された第5脚部415の先端部44と第6脚部416の先端部44とは、例えばレーザ溶接により、接合されて導通している。一方で、第27スロット2227に挿入された第7脚部417及び第8脚部418の接合された先端部44と、第21スロット2221に挿入された第5脚部415及び第6脚部416の接合された先端部44とは、径方向に略直線状に並んで配置されているが、接合されておらず導通していない。
また、第21スロット2221に挿入された第7脚部417の先端部44と第8脚部418の先端部44とは、例えばレーザ溶接により、接合されて導通している。また、第15スロット2215に挿入された第5脚部415の先端部44と第6脚部416の先端部44とは、例えばレーザ溶接により、接合されて導通している。一方で、第21スロット2221に挿入された第7脚部417及び第8脚部418の接合された先端部44と、第15スロット2215に挿入された第5脚部415及び第6脚部416の接合された先端部44とは、径方向に略直線状に並んで配置されているが、接合されておらず導通していない。
同様に、第22スロット2222に挿入された第7脚部417の先端部44と第8脚部418の先端部44とは、例えばレーザ溶接により、接合されて導通している。また、第16スロット2216に挿入された第5脚部415の先端部44と第6脚部416の先端部44とは、例えばレーザ溶接により、接合されて導通している。一方で、第22スロット2222に挿入された第7脚部417及び第8脚部418の接合された先端部44と、第16スロット2216に挿入された第5脚部415及び第6脚部416の接合された先端部44とは、径方向に略直線状に並んで配置されているが、接合されておらず導通していない。
そして、V相引出線50Vの第1V相引出線51Vの先端部と、第28スロット2228に挿入された第7脚部417及び第8脚部418の接合された先端部44とは、例えばレーザ溶接により、接合されて導通している。そして、第28スロット2228に挿入された第8脚部418の先端部44が巻線V1-1の始点となり、第28スロット2228に挿入された第7脚部417の先端部44が巻線V2-1の始点となる。
V相引出線50Vの第2V相引出線52Vの先端部と、第27スロット2227に挿入された第7脚部417及び第8脚部418の接合された先端部44とは、例えばレーザ溶接により、接合されて導通している。そして、第27スロット2227に挿入された第8脚部418の先端部44が巻線V3-1の始点となり、第27スロット2227に挿入された第7脚部417の先端部44が巻線V4-1の始点となる。
従来、巻線V1、V2、V3、V4の4つの巻線を並列に接続してV相コイル30Vを構成する場合、V相引出線50Vは並列数と同じ4つの引出線が必要であった。本実施形態では、第28スロット2228に挿入された第7脚部417及び第8脚部418の接合された先端部44にV相引出線50Vの第1V相引出線51Vの先端部を接合し、第27スロット2227に挿入された第7脚部417及び第8脚部418の接合された先端部44に第2V相引出線52Vの先端部を接合する。これにより、2つの引出線で、V相引出線50Vと巻線V1、V2、V3、V4とを導通することができるので、各相の引出線の数を増加させることなく、各相の巻線の並列数を2から4に増やすことができる。
次に、巻線V1(V1-1、V1-2)及び巻線V2(V2-1、V2-2)について説明する。
巻線V1-1は、第28スロット2228に挿入された第8脚部418の先端部44が始点となり、第28スロット2228に挿入された第8脚部418が湾曲部42によって第33スロット2233に挿入された第4脚部414に接続し、第33スロット2233に挿入された第4脚部414が第1接合部451によって第39スロット2239に挿入された第2脚部412に接続し、第39スロット2239に挿入された第2脚部412が湾曲部42によって第34スロット2234に挿入された第6脚部416に接続し、第34スロット2234に挿入された第6脚部416が第2接合部452によって第40スロット2240に挿入された第8脚部418に接続し、第40スロット2240に挿入された第8脚部418が湾曲部42によって第45スロット2245に挿入された第4脚部414に接続し、第45スロット2245に挿入された第4脚部414が第1接合部451によって第3スロット2203に挿入された第2脚部412に接続し、第3スロット2203に挿入された第2脚部412が湾曲部42によって第46スロット2246に挿入された第6脚部416に接続し、第46スロット2246に挿入された第6脚部416が第2接合部452によって第4スロット2204に挿入された第8脚部418に接続し、第4スロット2204に挿入された第8脚部418が湾曲部42によって第9スロット2209に挿入された第4脚部414に接続し、第9スロット2209に挿入された第4脚部414が第1接合部451によって第15スロット2215に挿入された第2脚部412に接続し、第15スロット2215に挿入された第2脚部412が湾曲部42によって第10スロット2210に挿入された第6脚部416に接続し、第10スロット2210に挿入された第6脚部416が第2接合部452によって第16スロット2216に挿入された第8脚部418に接続し、第16スロット2216に挿入された第8脚部418が湾曲部42によって第21スロット2221に挿入された第4脚部414に接続し、第21スロット2221に挿入された第4脚部414が第1接合部451によって第27スロットに挿入された第2脚部412に接続し、第27スロットに挿入された第2脚部412が湾曲部42によって第22スロット2222に挿入された第6脚部416に接続し、第22スロット2222に挿入された第6脚部416の先端部44が終点となるように形成される。これにより、巻線V1-1は、ステータコア20の中心軸線CLから径方向外側に向かって見て、始点である第28スロット2228に挿入された第8脚部418の先端部44から、終点である第22スロット2222に挿入された第6脚部416の先端部44までの間に、時計回りに4周巻回する。
巻線V2-1は、第28スロット2228に挿入された第7脚部417の先端部44が始点となり、第28スロット2228に挿入された第7脚部417が湾曲部42によって第33スロット2233に挿入された第3脚部413に接続し、第33スロット2233に挿入された第3脚部413が第1接合部451によって第39スロット2239に挿入された第1脚部411に接続し、第39スロット2239に挿入された第1脚部411が湾曲部42によって第34スロット2234に挿入された第5脚部415に接続し、第34スロット2234に挿入された第5脚部415が第2接合部452によって第40スロット2240に挿入された第7脚部417に接続し、第40スロット2240に挿入された第7脚部417が湾曲部42によって第45スロット2245に挿入された第3脚部413に接続し、第45スロット2245に挿入された第3脚部413が第1接合部451によって第3スロット2203に挿入された第1脚部411に接続し、第3スロット2203に挿入された第1脚部411が湾曲部42によって第46スロット2246に挿入された第5脚部415に接続し、第46スロット2246に挿入された第5脚部415が第2接合部452によって第4スロット2204に挿入された第7脚部417に接続し、第4スロット2204に挿入された第7脚部417が湾曲部42によって第9スロット2209に挿入された第3脚部413に接続し、第9スロット2209に挿入された第3脚部413が第1接合部451によって第15スロット2215に挿入された第1脚部411に接続し、第15スロット2215に挿入された第1脚部411が湾曲部42によって第10スロット2210に挿入された第5脚部415に接続し、第10スロット2210に挿入された第5脚部415が第2接合部452によって第16スロット2216に挿入された第7脚部417に接続し、第16スロット2216に挿入された第7脚部417が湾曲部42によって第21スロット2221に挿入された第3脚部413に接続し、第21スロット2221に挿入された第3脚部413が第1接合部451によって第27スロットに挿入された第1脚部411に接続し、第27スロットに挿入された第1脚部411が湾曲部42によって第22スロット2222に挿入された第5脚部415に接続し、第22スロット2222に挿入された第5脚部415の先端部44が終点となるように形成される。これにより、巻線V2-1は、ステータコア20の中心軸線CLから径方向外側に向かって見て、始点である第1V相引出線51Vと接合する第28スロット2228に挿入された第7脚部417の先端部44から、終点である第22スロット2222に挿入された第5脚部415の先端部44までの間に、時計回りに4周巻回する。
第1V相ブリッジ61Vは、一端部が第22スロット2222に挿入された第5脚部415及び第6脚部416の接合された先端部44と接合して導通しており、他端部が第15スロット2215に挿入された第5脚部415及び第6脚部416の接合された先端部44と接合して導通している。したがって、第22スロット2222に挿入された第5脚部415及び第6脚部416の接合された先端部44と、第15スロット2215に挿入された第5脚部415及び第6脚部416の接合された先端部44とが、第1V相ブリッジ61Vを介して導通している。
そして、第1V相ブリッジ61Vの他端部と接合する第15スロット2215に挿入された第6脚部416の先端部44が巻線V1-2の始点となり、第1V相ブリッジ61Vの他端部と接合する第15スロット2215に挿入された第5脚部415の先端部44が巻線V2-2の始点となる。
巻線V1-2は、第15スロット2215に挿入された第6脚部416の先端部44が始点となり、第15スロット2215に挿入された第6脚部416が湾曲部42によって第20スロット2220に挿入された第2脚部412に接続し、第20スロット2220に挿入された第2脚部412が第1接合部451によって第14スロット2214に挿入された第4脚部414に接続し、第14スロット2214に挿入された第4脚部414が湾曲部42によって第9スロット2209に挿入された第8脚部418に接続し、第9スロット2209に挿入された第8脚部418に接続が第2接合部452によって第3スロット2203に挿入された第6脚部416に接続し、第3スロット2203に挿入された第6脚部416が湾曲部42によって第8スロット2208に挿入された第2脚部412に接続し、第8スロット2208に挿入された第2脚部412が第1接合部451によって第2スロット2202に挿入された第4脚部414に接続し、第2スロット2202に挿入された第4脚部414が湾曲部42によって第45スロット2245に挿入された第8脚部418に接続し、第45スロット2245に挿入された第8脚部418が第2接合部452によって第39スロット2239に挿入された第6脚部416に接続し、第39スロット2239に挿入された第6脚部416が湾曲部42によって第44スロット2244に挿入された第2脚部412に接続し、第44スロット2244に挿入された第2脚部412が第1接合部451によって第38スロット2238に挿入された第4脚部414に接続し、第38スロット2238に挿入された第4脚部414が湾曲部42によって第33スロット2233に挿入された第8脚部418に接続し、第33スロット2233に挿入された第8脚部418が第2接合部452によって第27スロット2227に挿入された第6脚部416に接続し、第27スロット2227に挿入された第6脚部416が湾曲部42によって第32スロット2232に挿入された第2脚部412に接続し、第32スロット2232に挿入された第2脚部412が第1接合部451によって第26スロットに挿入された第4脚部414に接続し、第26スロットに挿入された第4脚部414が湾曲部42によって第21スロット2221に挿入された第8脚部418に接続し、第21スロット2221に挿入された第8脚部418の先端部44が終点となるように形成される。これにより、巻線V1-2は、ステータコア20の中心軸線CLから径方向外側に向かって見て、第2V相ブリッジ62Vと接合する第15スロット2215に挿入された第6脚部416の先端部44を始点として、第21スロット2221の第8脚部418の先端部44までの間に、反時計回りに4周巻回する。
巻線V2-2は、第15スロット2215に挿入された第5脚部415の先端部44が始点となり、第15スロット2215に挿入された第5脚部415が湾曲部42によって第20スロット2220に挿入された第1脚部411に接続し、第20スロット2220に挿入された第1脚部411が第1接合部451によって第14スロット2214に挿入された第3脚部413に接続し、第14スロット2214に挿入された第3脚部413が湾曲部42によって第9スロット2209に挿入された第7脚部417に接続し、第9スロット2209に挿入された第7脚部417に接続が第2接合部452によって第3スロット2203に挿入された第5脚部415に接続し、第3スロット2203に挿入された第5脚部415が湾曲部42によって第8スロット2208に挿入された第1脚部411に接続し、第8スロット2208に挿入された第1脚部411が第1接合部451によって第2スロット2202に挿入された第3脚部413に接続し、第2スロット2202に挿入された第3脚部413が湾曲部42によって第45スロット2245に挿入された第7脚部417に接続し、第45スロット2245に挿入された第7脚部417が第2接合部452によって第39スロット2239に挿入された第5脚部415に接続し、第39スロット2239に挿入された第5脚部415が湾曲部42によって第44スロット2244に挿入された第1脚部411に接続し、第44スロット2244に挿入された第1脚部411が第1接合部451によって第38スロット2238に挿入された第3脚部413に接続し、第38スロット2238に挿入された第3脚部413が湾曲部42によって第33スロット2233に挿入された第7脚部417に接続し、第33スロット2233に挿入された第7脚部417が第2接合部452によって第27スロット2227に挿入された第5脚部415に接続し、第27スロット2227に挿入された第5脚部415が湾曲部42によって第32スロット2232に挿入された第1脚部411に接続し、第32スロット2232に挿入された第1脚部411が第1接合部451によって第26スロットに挿入された第3脚部413に接続し、第26スロットに挿入された第3脚部413が湾曲部42によって第21スロット2221に挿入された第7脚部417に接続し、第21スロット2221に挿入された第7脚部417の先端部44が終点となるように形成される。これにより、巻線V2-2は、ステータコア20の中心軸線CLから径方向外側に向かって見て、始点である第2V相ブリッジ62Vと接合する第15スロット2215に挿入された第5脚部415の先端部44から、終点である第21スロット2221の第7脚部417の先端部44までの間に、反時計回りに4周巻回する。
そして、第21スロット2221に挿入された第7脚部417及び第8脚部418の接合された先端部44は、中性点70と接合されて導通している。
次に、巻線V3(V3-1、V3-2)及び巻線V4(V4-1、V4-2)について説明する。
巻線V3-1は、ステータコア20の第1端面201側から見て、巻線V1-1に対して反時計回りにスロット22が1つずれた位置で、巻線V1-1と同様に巻回するように形成される。したがって、巻線V3-1は、第27スロット2227に挿入された第8脚部418の先端部44が始点となり、第21スロット2221に挿入された第6脚部416の先端部44が終点となる。そして、巻線V3-1は、ステータコア20の中心軸線CLから径方向外側に向かって見て、始点である第27スロット2227に挿入された第8脚部418の先端部44から、終点である第21スロット2221に挿入された第6脚部416の先端部44までに間に、時計回りに4周巻回する。
巻線V4-1は、ステータコア20の第1端面201側から見て、巻線V2-1に対して反時計回りにスロット22が1つずれた位置で、巻線V2-1と同様に巻回するように形成される。したがって、巻線V4-1は、第27スロット2227に挿入された第7脚部417の先端部44が始点となり、第21スロット2221に挿入された第5脚部415の先端部44が終点となる。そして、巻線V4-1は、ステータコア20の中心軸線CLから径方向外側に向かって見て、始点である第27スロット2227に挿入された第7脚部417の先端部44から、終点である第21スロット2221に挿入された第5脚部415の先端部44までに間に、時計回りに4周巻回する。
第2V相ブリッジ62Vは、一端部が第21スロット2221に挿入された第5脚部415及び第6脚部416の接合された先端部44と接合して導通しており、他端部が第16スロット2216に挿入された第5脚部415及び第6脚部416の接合された先端部44と接合して導通している。したがって、第21スロット2221に挿入された第5脚部415及び第6脚部416の接合された先端部44と、第16スロット2216に挿入された第5脚部415及び第6脚部416の接合された先端部44とが、第2V相ブリッジ62Vを介して導通している。
そして、第2V相ブリッジ62Vの他端部と接合する第16スロット2216に挿入された第6脚部416の先端部44が巻線V3-2の始点となり、第2V相ブリッジ62Vの他端部と接合する第16スロット2216に挿入された第5脚部415の先端部44が巻線V4-2の始点となる。
巻線V3-2は、ステータコア20の第1端面201側から見て、巻線V1-2に対して時計回りにスロット22が1つずれた位置で、巻線V1-2と同様に巻回するように形成である。したがって、巻線V3-2は、第16スロット2216に挿入された第6脚部416の先端部44が始点となり、第22スロット2222に挿入された第8脚部418の先端部44が終点となる。そして、巻線V3-2は、ステータコア20の中心軸線CLから径方向外側に向かって見て、始点である第16スロット2216に挿入された第6脚部416の先端部44から、終点である第22スロット2222に挿入された第8脚部418の先端部44までに間に、反時計回りに4周巻回する。
巻線V4-2は、ステータコア20の第1端面201側から見て、巻線V2-2に対して時計回りにスロット22が1つずれた位置で、巻線V2-2と同様に巻回するように形成される。したがって、巻線V4-2は、第16スロット2216に挿入された第5脚部415の先端部44が始点となり、第22スロット2222に挿入された第7脚部417の先端部44が終点となる。そして、巻線V4-2は、ステータコア20の中心軸線CLから径方向外側に向かって見て、始点である第16スロット2216に挿入された第5脚部415の先端部44から、終点である第22スロット2222に挿入された第7脚部417の先端部44までに間に、反時計回りに4周巻回する。
そして、第22スロット2222に挿入された第7脚部417及び第8脚部418の接合された先端部44は、中性点70と接合されて導通している。
このように、第1脚部411及び第2脚部412の斜行部43は、周方向において反時計回りの方向に斜行しており、第3脚部413及び第4脚部414の斜行部43は、周方向において時計回りの方向に斜行しており、第5脚部415及び第6脚部416の斜行部43は、周方向において時計回りの方向に斜行しており、第7脚部417及び第8脚部418の斜行部43は、周方向において反時計回りの方向に斜行していることによって、第1脚部411と第2脚部412、第3脚部413と第4脚部414、第5脚部415と第6脚部416、及び第7脚部417と第8脚部418によって、並列に接続した巻線V1及び巻線V2を容易に構成することができる。これにより、各スロット22にセグメント導体40の脚部41が径方向に一列に8層挿入され、4つの巻線V1、V2、V3、V4が並列に接続された、8層4並列の回転電機を容易に構成できるので、V相コイル30Vに、より大きな電流を流すことができ、高出力高トルク化が可能となる。
また従来は、巻線V1、V2、V3、V4の4つの巻線を並列に接続してV相コイル30Vを構成する場合、並列数と同じ4つのブリッジが必要であった。本実施形態では、第1V相ブリッジ61V及び第2V相ブリッジ62Vの2つのブリッジで、巻線V1、V2、V3、V4の4つの巻線を並列に接続することができる。これにより、2つのブリッジで、4つの巻線を並列に接続することができるので、各相のブリッジの数を増加させることなく、各相の巻線の並列数を2から4に増やすことができる。
U相コイル30U及びW相コイル30Wの構成についての詳細な説明は省略するが、図11に示すように、U相コイル30Uは、ステータコア20の第1端面201側から見て、V相コイル30Vに対して、反時計回りにスロット22が4つずれている以外は、V相コイル30Vと同様の構成となっている。W相コイル30Wは、ステータコア20の第1端面201側から見て、V相コイル30Vに対して、時計回りにスロット22が4つずれている以外は、V相コイル30Vと同様の構成となっている。
図11において、第1スロット2201~第48スロット2248のそれぞれに挿入された第1脚部411~第8脚部418に付記した符号(18u、25v、31w等)におけるu、v、wは、U相、V相、W相のいずれの相の巻線を構成しているかを示すものであり、数字部分は、U相引出線50U、V相引出線50V、W相引出線50Wから何番目に接続する脚部41であるか、すなわち脚部41の接続順番を示すものである。
これにより、ステータコア20の各スロット22に挿入されたセグメント導体40によって、巻線U1~U4、V1~V4、W1~W4を形成することで、各スロット22に脚部41が径方向に一列に8層挿入され、各相4つの巻線が並列に接続された、8層4並列の回転電機を構成できる。
<コイルにおける損失>
一般に、回転電機のコイルに電流が流れると、コイルを構成する巻線の巻線抵抗によって、下記の式(1)で示す銅損Wcが生じる。
Wc=R×i2 ・・・(1)
Wc:銅損[W]
R:巻線抵抗[Ω]
i:巻線に流れる電流[A]
よって、コイルを構成する巻線の断面積が大きいほど巻線抵抗が小さくなり、銅損Wcは、巻線抵抗に比例して小さくなる。また、巻線に流れる電流が小さいほど、銅損Wcは、巻線に流れる電流に比例して小さくなる。
回転電機の高出力高トルク化を図る場合、その手法の1つとして、コイルに流れる電流を大きくする手法がある。このとき、コイルの巻線の並列数を増やせば、巻線に流れる電流を等分できるので、コイルに流れる電流を大きくしても、巻線に流れる電流は大きくならずに済む。
また、回転電機は、ロータが回転すると、ロータ側からステータコア側に周方向の漏れ磁束が流れてくる。この漏れ磁束が、コイルを構成する巻線の導体部を流れると、巻線の導体部に渦電流が発生し、下記の式(2)で示す渦電流損Weが生じる。
We∝f2Bm2t2 ・・・(2)
We:渦電流損[W]
f:周波数[Hz]
Bm:磁束密度[T]
t:巻線の導体部の径方向厚さ[m]
よって、巻線の導体部の径方向厚さが小さいほど、渦電流損Weは、巻線の導体部の径方向厚さの2乗に比例して小さくなる。
同一のステータコア20を用いて、各スロット22に、径方向厚さが本実施形態の約2倍のセグメント導体の脚部が径方向に一列に4層挿入され、各相2つの巻線が並列に接続された、4層2並列の回転電機と、本実施形態の8層4並列の回転電機とで、銅損Wc及び渦電流損Weを比較する。
4層2並列の回転電機に対して、本実施形態の8層4並列の回転電機は、脚部41の径方向の厚さが半分のため巻線抵抗Rが2倍となるが、巻線の並列数が2倍のため巻線に流れる電流iが1/2となる。したがって、式(1)より、本実施形態の8層4並列の回転電機の銅損Wcは、理論上4層2並列の回転電機の約1/2となる。
一方、4層2並列の回転電機に対して、本実施形態の8層4並列の回転電機は、脚部41の径方向の厚さが半分のため、式(2)より、本実施形態の8層4並列の回転電機の渦電流損Weは、理論上4層2並列の回転電機の約1/4となる。
さらに、渦電流損Weは、周波数の2乗に比例して大きくなる。したがって、回転電機が高回転で駆動するほど、周波数が高くなり、渦電流損Weは、周波数の2乗に比例して大きくなる。そのため、各スロット22に、径方向厚さが本実施形態の約2倍のセグメント導体の脚部が径方向に一列に4層挿入され、各相2つの巻線が並列に接続された、4層2並列の回転電機で生じる損失と、本実施形態の8層4並列の回転電機で生じる損失とを比較すると、特に、回転電機が高回転で駆動するほど、本実施形態の8層4並列の回転電機は、4層2並列の回転電機よりも生じる損失を大幅に低減できる。
なお、各巻線は、流れる電流の電流密度に比例して発熱量が増大するため、回転電機の発熱及び冷却の観点から、各巻線に流す電流は、電流密度が所定値以下となる電流の上限値以下とすることが望ましい。4層2並列の回転電機のコイルを構成する巻線は、径方向厚さが本実施形態の約2倍であるので、本実施形態の8層4並列の回転電機のコイルを構成する1つの巻線の電流密度が所定値以下となる電流の上限値は、4層2並列の回転電機のコイルを構成する1つの巻線の電流密度が所定値以下となる電流の上限値の1/2である。一方で、4層2並列の回転電機は、2並列であるので、2つの巻線に電流を2等分して流すことができるが、本実施形態の8層4並列の回転電機は、4並列であるので、4つの巻線に電流を4等分して流すことができる。すなわち、4層2並列の回転電機に対して、本実施形態の8層4並列の回転電機は、1本の巻線の電流密度が所定値以下となる電流の上限値は1/2となるが、並列に電流を流すことができる巻線の数が2倍となる。したがって、本実施形態の8層4並列の回転電機のコイルには、4層2並列の回転電機のコイルに流すことができる電流の上限値とほぼ変わらない値まで電流を流すことができる。
次に、同一のステータコア20を用いて、各スロット22に、本実施形態と同一の断面を有するセグメント導体の脚部が径方向に一列に8層挿入され、各相2つの巻線が並列に接続された、8層2並列の回転電機と、本実施形態の8層4並列の回転電機とを比較する。
8層2並列の回転電機と本実施形態の8層4並列の回転電機とは、各スロット22に、同一のセグメント導体の脚部が径方向に一列に8層挿入されているので、渦電流損Weは理論上ほぼ同一である。
しかしながら、8層2並列の回転電機のコイルと本実施形態の8層4並列の回転電機のコイルとに、同一の電流を流すと、8層2並列の回転電機のコイルを構成する巻線には、本実施形態の8層4並列の回転電機のコイルを構成する巻線に流れる電流の約2倍の電流が流れる。すなわち、本実施形態の8層4並列の回転電機のコイルを構成する巻線に流れる電流は、8層2並列の回転電機のコイルを構成する巻線に流れる電流の約1/2であるので、本実施形態の8層4並列の回転電機で生じる銅損Wcは、8層2並列の回転電機の約1/2となる。
さらに、各巻線は、流れる電流の電流密度に比例して発熱量が増大するため、回転電機の発熱及び冷却の観点から、各巻線に流す電流は、電流密度が所定値以下となる電流の上限値以下とすることが望ましいが、8層2並列の回転電機と本実施形態の8層4並列の回転電機とは、同一の断面を有するセグメント導体を有するので、1つの巻線の電流密度が所定値以下となる電流の上限値は同一である。一方、8層2並列の回転電機は、2並列であるので、2つの巻線に電流を2等分して流すことができるため、電流密度が所定値以下となるようにコイルに流すことができる電流の上限値は、1つの巻線の電流密度が所定値以下となる電流の上限値の約2倍である。これに対し、本実施形態の8層4並列の回転電機は、4並列であるので、4つの巻線に電流を4等分して流すことができるため、電流密度が所定値以下となるようにコイルに流すことができる電流の上限値は、1つの巻線の電流密度が所定値以下となる電流の上限値の約4倍である。したがって、本実施形態の8層4並列の回転電機のコイルに電流密度が所定値以下となるように流すことができる電流の上限値は、8層2並列の回転電機のコイルに電流密度が所定値以下となるように流すことができる電流の上限値の約2倍である。このように、本実施形態の8層4並列の回転電機は、8層2並列の回転電機よりも、コイルに大きな電流を流すことができるので、高出力高トルク化を図ることができる。
このように、本実施形態の8層4並列の回転電機のステータ10は、回転電機の高出力高トルク化を図りつつ、回転電機で生じる損失を低減できる。
<アスペクト比とコイル損失との関係>
セグメント導体40は、断面が略矩形状の導体部401に絶縁被膜部402が設けられている。導体部401の径方向厚さLtと導体部401の周方向幅Lwとにおいて、アスペクト比は、径方向厚さLt/周方向幅Lwで表される。本実施形態における、アスペクト比とコイル損失との関係について、図12を用いて説明する。
図12に示すように、銅損Wcは、アスペクト比が小さいほど大きくなる。一方、渦電流損Weは、アスペクト比が大きいほど大きくなる。そして、アスペクト比が0.5以上0.7以下の範囲のとき、銅損Wcと渦電流損Weの和は小さくなる。特に、アスペクト比が0.55以上0.65以下の範囲のとき、銅損Wcと渦電流損Weの和はより小さくなり、アスペクト比が約0.6のとき、銅損Wcと渦電流損Weの和は最も小さくなる。
本実施形態のセグメント導体40は、導体部401の径方向厚さLt/周方向幅Lwで表されるアスペクト比が、0.5以上0.7以下である。好ましくは、セグメント導体40は、導体部401の径方向厚さLt/周方向幅Lwで表されるアスペクト比が、0.55以上0.65以下である。より好ましくは、セグメント導体40は、導体部401の径方向厚さLt/周方向幅Lwで表されるアスペクト比が、0.6である。これにより、コイル30における損失をより低減できる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
例えば、本実施形態では、セグメント導体40は、互いに平行に延び、第1端部41a及び第2端部41bを有する一対の脚部41と、一対の脚部41の第2端部41b同士を接続する湾曲部42と、を備え、略U字状となっているものとしたが、セグメント導体40は、脚部41の第2端部41bが湾曲部42によって接続されているのではなく、溶接等によって接合されるものとしてもよい。
また、本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
(1) 周方向に沿って所定の間隔で径方向内側に突出する複数のティース(ティース21)と、周方向で隣り合う前記ティース間の空間である複数のスロット(スロット22)と、を有する略円環形状のステータコア(ステータコア20)と、
複数の前記スロットの各々に挿入される複数のセグメント導体(セグメント導体40)を有するコイル(コイル30)と、を備え、
各々の前記セグメント導体は、
前記スロットの内部に配置され、軸方向に略直線状に延びる脚部(脚部41)を有し、
前記脚部の軸方向の一端部(第1端部41a)は、前記ステータコアの軸方向の一端面(第1端面201)から外側に突出しており、周方向において第1方向(時計回り)または第2方向(反時計回り)に斜行して延びる斜行部(斜行部43)と、前記斜行部の先端から軸方向外側に延びる先端部(先端部44)と、が形成されており、
複数の前記スロットの各々には、8つの前記セグメント導体の前記脚部が径方向に一列に挿入されている、回転電機のステータ(ステータ10)であって、
前記ステータコアの軸方向の前記一端面側から見て、
前記スロットに径方向に一列に挿入された8つの前記セグメント導体の前記脚部は、径方向内側から数えて、1層目に配置された第1脚部(第1脚部411)、2層目に配置された第2脚部(第2脚部412)、3層目に配置された第3脚部(第3脚部413)、4層目に配置された第4脚部(第4脚部414)、5層目に配置された第5脚部(第5脚部415)、6層目に配置された第6脚部(第6脚部416)、7層目に配置された第7脚部(第7脚部417)及び8層目に配置された第8脚部(第8脚部418)を有し、
前記第1脚部及び前記第2脚部の前記斜行部は、周方向において、前記第1方向及び前記第2方向のうち、いずれか一方の同一方向に斜行しており、
前記第3脚部及び前記第4脚部の前記斜行部は、周方向において、前記第1方向及び前記第2方向のうち、前記第1脚部及び前記第2脚部の前記斜行部と反対方向に斜行しており、
前記第5脚部及び前記第6脚部の前記斜行部は、周方向において、前記第1方向及び前記第2方向のうち、いずれか一方の同一方向に斜行しており、
前記第7脚部及び前記第8脚部の前記斜行部は、周方向において前記第5脚部及び前記第6脚部の前記斜行部と反対側に斜行している、回転電機のステータ。
(1)によれば、ステータコアの軸方向の一端面側から見て、8つのセグメント導体がスロットに径方向に一列に挿入されているので、セグメント導体に生じる渦電流損が小さくすることができ、コイルにおける損失を低減できる。また、第1脚部及び第2脚部の斜行部は、周方向において、第1方向及び第2方向のうち、いずれか一方の同一方向に斜行しており、第3脚部及び第4脚部の斜行部は、周方向において、第1方向及び第2方向のうち、第1脚部及び第2脚部の斜行部と反対方向に斜行しており、第5脚部及び第6脚部の斜行部は、周方向において、第1方向及び第2方向のうち、いずれか一方の同一方向に斜行しており、第7脚部及び第8脚部の斜行部は、周方向において第5脚部及び第6脚部の斜行部と反対側に斜行していることによって、第1脚部と第2脚部、第3脚部と第4脚部、第5脚部と第6脚部、及び第7脚部と第8脚部によって、並列に接続した巻線を容易に構成することができる。これにより、各スロットにセグメント導体の脚部が径方向に一列に8層挿入され、U相、V相、W相の各相それぞれ4つの巻線が並列に接続された、8層4並列の回転電機を容易に構成できるので、各相のコイルにより大きな電流を流すことができ、高出力高トルク化が可能となる。
(2) (1)に記載の回転電機のステータであって、
前記セグメント導体は、断面が略矩形状の導体部(導体部401)を有し、前記導体部の径方向厚さ(径方向厚さLt)/周方向幅(周方向幅Lw)で表されるアスペクト比が0.5以上0.7以下である、回転電機のステータ。
(2)によれば、セグメント導体は、断面が略矩形状の導体部を有し、導体部の径方向厚さ/周方向幅で表されるアスペクト比が0.5以上0.7以下であるので、コイルにおける損失をより低減できる。
(3) (1)または(2)に記載の回転電機のステータであって、
前記コイルは、U相コイル(U相コイル30U)、V相コイル(V相コイル30V)、及びW相コイル(W相コイル30W)を有し、
前記U相コイルは、U相引出線(U相引出線50U)と電気的に接続し、前記V相コイルは、V相引出線(V相引出線50V)と電気的に接続し、前記W相コイルは、W相引出線(W相引出線50W)と電気的に接続しており、
前記U相引出線は、所定の前記スロットに挿入された前記第7脚部及び前記第8脚部の前記先端部と接続する第1U相引出線(第1U相引出線51U)と、該所定の前記スロットと異なる前記スロットに挿入された前記第7脚部及び前記第8脚部の前記先端部と接続する第2U相引出線(第2U相引出線52U)と、を有し、
前記V相引出線は、前記U相引出線とは異なる所定の前記スロットに挿入された前記第7脚部及び前記第8脚部の前記先端部と接続する第1V相引出線(第1V相引出線51V)と、該所定の前記スロットと異なる前記スロットに挿入された前記第7脚部及び前記第8脚部の前記先端部と接続する第2V相引出線(第2V相引出線52V)と、を有し、
前記W相引出線は、前記U相引出線及び前記V相引出線とは異なる所定の前記スロットに挿入された前記第7脚部及び前記第8脚部の前記先端部と接続する第1W相引出線(第1W相引出線51W)と、該所定の前記スロットと異なる前記スロットに挿入された前記第7脚部及び前記第8脚部の前記先端部と接続する第2W相引出線(第2W相引出線52W)と、を有する、回転電機のステータ。
(3)によれば、U相、V相、W相の各相のコイルは、それぞれU相引出線、V相引出線、W相引出線と電気的に接続しており、各相の引出線は、所定のスロットに挿入された第7脚部及び第8脚部の先端部と接続する第1引出線と、該所定のスロットと異なるスロットに挿入された第7脚部及び第8脚部の先端部と接続する第2引出線と、を有する。これにより、各相の引出線は、第1引出線及び第2引出線の2つの引出線で4並列の各相のコイルの巻線と接続できるので、各相の引出線の数を増加させることなく、各相のコイルの巻線の並列数を2から4に増やすことができる。
(4) (1)~(3)のいずれかに記載の回転電機のステータであって、
前記コイルは、
前記第1脚部及び前記第2脚部の前記先端部、並びに周方向の前記第1方向または前記第2方向に所定数離れた前記スロットに挿入された前記第3脚部及び前記第4脚部の前記先端部、の4つの前記先端部が一体に接合されて導通する第1接合部(第1接合部451)と、
前記第5脚部及び前記第6脚部の前記先端部、並びに周方向の前記第1方向または前記第2方向に前記所定数離れた前記スロットに挿入された前記第7脚部及び前記第8脚部の前記先端部、の4つの前記先端部が一体に接合されて導通する第2接合部(第2接合部452)と、を有する、回転電機のステータ。
(4)によれば、コイルは、第1脚部~第4脚部の先端部が一体に接合されて導通する第1接合部と、第5脚部~第8脚部の先端部が一体に接合されて導通する第2接合部と、を有するので、各スロットに挿入された8つのセグメント導体に対して接合部を2つにすることができる。これにより接合部間の径方向の間隔を大きくすることが可能となり、コイルの部分放電開始電圧を高くすることが可能となる。
(5) (4)に記載の回転電機のステータであって、
前記第2脚部、前記第3脚部、及び前記第4脚部の前記先端部は、径方向内側に傾斜するように屈曲しており、
前記第5脚部、前記第6脚部、及び前記第7脚部の前記先端部は、径方向外側に傾斜するように屈曲している、回転電機のステータ。
(5)によれば、第2脚部、第3脚部、及び第4脚部の先端部は、径方向内側に傾斜するように屈曲しており、第5脚部、第6脚部、及び第7脚部の先端部は、径方向外側に傾斜するように屈曲しているので、第4脚部の先端部と第5脚部の先端部との径方向の間隔、すなわち第1接合部と第2接合部との径方向の間隔が大きくなる。これにより、コイルの部分放電開始電圧をより高くすることができる。
(6) (1)~(5)のいずれか一項に記載の回転電機のステータであって、
前記コイルは、U相コイル(U相コイル30U)、V相コイル(V相コイル30V)、及びW相コイル(W相コイル30W)を有し、
前記U相コイル、前記V相コイル、及び前記W相コイルは、それぞれ、一端部が所定の前記スロットに挿入された前記第5脚部及び前記第6脚部の前記先端部と接合して導通し、他端部が該所定の前記スロットとは異なる前記スロットに挿入された前記第5脚部及び前記第6脚部の前記先端部と接合して導通する第1ブリッジ(第1U相ブリッジ61U、第1V相ブリッジ61V、第1W相ブリッジ61W)と、一端部が前記第1ブリッジとは異なる所定の前記スロットに挿入された前記第5脚部及び前記第6脚部の前記先端部と接合して導通し、他端部が該所定の前記スロットとは異なる前記スロットに挿入された前記第5脚部及び前記第6脚部の前記先端部と接合して導通する第2ブリッジ(第2U相ブリッジ62U、第2V相ブリッジ62V、第2W相ブリッジ62W)と、を有する、回転電機のステータ。
(6)によれば、U相、V相、W相の各相のコイルは、それぞれ、一端部が所定のスロットに挿入された第5脚部及び第6脚部の先端部と接合して導通し、他端部が該所定のスロットとは異なるスロットに挿入された第5脚部及び第6脚部の先端部と接合して導通する第1ブリッジと、一端部が第1ブリッジとは異なる所定のスロットに挿入された第5脚部及び第6脚部の先端部と接合して導通し、他端部が該所定のスロットとは異なるスロットに挿入された第5脚部及び第6脚部の先端部と接合して導通する第2ブリッジと、を有する。これにより、各相のコイルは、第1ブリッジ及び第2ブリッジの2つのブリッジで4並列の各相のコイルの巻線を形成できるので、各相のブリッジの数を増加させることなく、各相のコイルの巻線の並列数を2から4に増やすことができる。