以下に本発明を詳細に説明する。
(1.ゴム組成物)
本発明のゴム組成物は、下記成分(a)、(b)、(c)及び(d)を含む。
成分(a)ゴム成分
成分(b)式(1)~(3)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物
成分(c)式(4)及び(5)で表される化合物、並びに該化合物の塩から選ばれる少なくとも一種の化合物
成分(d)カーボンブラック及び/又は無機充填材
(式中、Zは芳香族環、置換されているか、置換されていないヒダントイン環、炭素原子数0~18の飽和又は不飽和直鎖状炭化水素からなる群より選んだ1種であり、Qは芳香族基であり、Qの置換基Xはヒドロキシ基、アミノ基より選んだ少なくとも1種であり、Yはピリジル基、ヒドラジノ基より選んだ1種である。R
a~R
dは水素及び炭素数1~18からなるアルキル基、シクロアルキル基、芳香族環であり、それぞれ同じでも異なっていてもよい。)
(式(4)中、R
1、R
2、R
3及びR
4は同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。R
3とR
4とは互いに結合してアルキリデン基を形成してもよく、R
2、R
3及びR
4のいずれか2つが互いに結合してアルキレン基を形成してもよい。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。)
(式(5)中、R
5、R
7及びR
8は同一又は異なって、水素原子、アミノ基、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示し、R
6はアルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。)
前記成分(b)及び(c)を成分(a)に添加することで、特殊な混練り方法を行わずに、前記成分(a)に優れた低発熱性、靱性及び加工性を付与することができる。
(1.1.成分(a):ゴム成分)
本発明のゴム組成物のゴム成分としては、特に制限はなく、例えば、天然ゴム(NR)、合成ジエン系ゴム、及び天然ゴムと合成ジエン系ゴムとの混合物、並びにこれら以外の非ジエン系ゴムが挙げられる。
天然ゴムとしては天然ゴムラテックス、技術的格付けゴム(TSR)、スモークドシート(RSS)、ガタパーチャ、杜仲由来天然ゴム、グアユール由来天然ゴム、ロシアンタンポポ由来天然ゴムなどが挙げられ、さらにこれら天然ゴムを変性した、エポキシ化天然ゴム、メタクリル酸変性天然ゴム、ハロゲン変性天然ゴム、脱蛋白天然ゴム、スチレン変性天然ゴムなどの変性天然ゴムなども、本発明の天然ゴムに含まれる。
合成ジエン系ゴムとしては、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)、スチレン-イソプレン-スチレン三元ブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体(SBS)等、及びこれらの変性合成ジエン系ゴムが挙げられる。変性合成ジエン系ゴムには、主鎖変性、片末端変性、両末端変性などの変性手法によるジエン系ゴムが包含される。ここで、変性合成ジエン系ゴムの変性官能基としては、エポキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基、水酸基などの各種官能基が挙げられ、これら官能基は1種又は2種以上が変性合成ジエン系ゴムに含まれていてもよい。
合成ジエン系ゴムの製造方法は、特に制限はなく、乳化重合、溶液重合、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などが挙げられる。また、合成ジエン系ゴムのガラス転移点においても、特に制限はない。
また、天然ゴム及び合成ジエン系ゴムの二重結合部のシス/トランス/ビニルの比率については、特に制限はなく、いずれの比率においても好適に用いることができる。また、ジエン系ゴムの数平均分子量および分子量分布は、特に制限はないが、数平均分子量500~3000000、分子量分布1.5~15が好ましい。非ジエン系ゴムとしては、公知のものを広く使用することができる。
ゴム成分は、1種単独で、又は2種以上を混合(ブレンド)して用いることができる。中でも、好ましいゴム成分としては、天然ゴム、IR、SBR、BR又はこれらから選ばれる2種以上の混合物であり、より好ましくは天然ゴム、SBR、BR又はこれらから選ばれる2種以上の混合物である。
(1.2.成分(b):式(1)~(3)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物)
本発明のゴム組成物は、下記式(1)~(3)で表される化合物(化合物(1)、
(2)及び(3))から選ばれる少なくとも一種の化合物を含む。
(式中、Zは芳香族環、置換されているか、置換されていないヒダントイン環、炭素原子数0~18の飽和又は不飽和直鎖状炭化水素からなる群より選んだ1種であり、Qは芳香族基であり、Qの置換基Xはヒドロキシ基、アミノ基より選んだ少なくとも1種であり、Yはピリジル基、ヒドラジノ基より選んだ1種である。R
a~R
dは水素及び炭素数1~18からなるアルキル基、シクロアルキル基、芳香族環であり、それぞれ同じでも異なっていてもよい。)
本明細書において、「アリール基」としては、特に限定はなく、例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、ジヒドロインデニル、9H-フルオレニル基等が挙げられる。
本明細書において、「アルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、1-エチルプロピル等の炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、更に、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、3-メチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、5-プロピルノニル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル等を加えた炭素数1~18の直鎖状又は分岐状アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等の炭素数3~8の環状アルキル基等が挙げられる。
これらアルキル基、及びアリール基は、置換可能な任意の位置にそれぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。該「置換基」としては、特に限定はなく、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、アミノアルキル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、ホルミル基、ニトリル基、ニトロ基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、水酸基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基等が挙げられる。該置換基は、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個有していてもよい。
本明細書において、「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子である。
本明細書において、「アミノ基」としては、-NH2で表されるアミノ基だけでなく、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、n-プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、n-ブチルアミノ、イソブチルアミノ、s-ブチルアミノ、t-ブチルアミノ、1-エチルプロピルアミノ、n-ペンチルアミノ、ネオペンチルアミノ、n-ヘキシルアミノ、イソヘキシルアミノ、3-メチルペンチルアミノ基等の直鎖状又は分岐状のモノアルキルアミノ基;ジメチルアミノ、エチルメチルアミノ、ジエチルアミノ基等の直鎖状又は分岐状のアルキル基を2つ有するジアルキルアミノ基等の置換アミノ基も含まれる。
本明細書において、「アミノアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、アミノメチル、メチルアミノメチル、エチルアミノメチル、ジメチルアミノメチル、エチルメチルアミノメチル、ジエチルアミノメチル、2-アミノエチル、2-(メチルアミノ)エチル、2-(エチルアミノ)エチル、2-(ジメチルアミノ)エチル、2-(エチルメチルアミノ)エチル、2-(ジエチルアミノ)エチル、3-アミノプロピル、3-(メチルアミノ)プロピル、3-(エチルアミノ)プロピル、3-(ジメチルアミノ)プロピル、3-(エチルメチルアミノ)プロピル、3-(ジエチルアミノ)プロピル基等のアミノアルキル基、モノアルキル置換アミノアルキル基又はジアルキル置換アミノアルキル基等が挙げられる。
本明細書において、「アルコキシカルボニル基」としては、特に限定はなく、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
本明細書において、「アシル基」としては、特に限定はなく、例えば、アセチル、プロピオニル、ピバロイル基等の炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状アルキルカルボニル基が挙げられる。
本明細書において、「アシルオキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、n-ブチリルオキシ基等が挙げられる。
本明細書において、「アミド基」としては、特に限定はなく、例えば、アセトアミド、ベンズアミド基等のカルボン酸アミド基;チオアセトアミド、チオベンズアミド基等のチオアミド基;N-メチルアセトアミド、N-ベンジルアセトアミド基等のN-置換アミド基;等が挙げられる。
本明細書において、「カルボキシアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、カルボキシメチル、カルボキシエチル、カルボキシ-n-プロピル、カルボキシ-n-ブチル、カルボキシ-n-ペンチル、カルボキシ-n-ヘキシル基等のカルボキシアルキル基が挙げられる。
本明細書において、「ヒドロキシアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシ-n-プロピル、ヒドロキシ-n-ブチル基等のヒドロキシアルキル基が挙げられる。
本明細書において、「アルコキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシ基の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基;シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘプチルオキシ、シクロオクチルオキシ基等の環状アルコキシ基等が挙げられる。
本明細書において、「アリールオキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、フェノキシ、ビフェニルオキシ、ナフトキシ基等が挙げられる。
本明細書において、「複素環基」としては、特に限定はなく、例えば、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピラジニル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ピリミジル、3-ピリダジル、4-ピリダジル、4-(1,2,3-トリアジル)、5-(1,2,3-トリアジル)、2-(1,3,5-トリアジル)、3-(1,2,4-トリアジル)、5-(1,2,4-トリアジル)、6-(1,2,4-トリアジル)、2-キノリル、3-キノリル、4-キノリル、5-キノリル、6-キノリル、7-キノリル、8-キノリル、1-イソキノリル、3-イソキノリル、4-イソキノリル、5-イソキノリル、6-イソキノリル、7-イソキノリル、8-イソキノリル、2-キノキサリル、3-キノキサリル、5-キノキサリル、6-キノキサリル、7-キノキサリル、8-キノキサリル、3-シンノリル、4-シンノリル、5-シンノリル、6-シンノリル、7-シンノリル、8-シンノリル、2-キナゾリル、4-キナゾリル、5-キナゾリル、6-キナゾリル、7-キナゾリル、8-キナゾリル、1-フタラジル、4-フタラジル、5-フタラジル、6-フタラジル、7-フタラジル、8-フタラジル、1-テトラヒドロキノリル、2-テトラヒドロキノリル、3-テトラヒドロキノリル、4-テトラヒドロキノリル、5-テトラヒドロキノリル、6-テトラヒドロキノリル、7-テトラヒドロキノリル、8-テトラヒドロキノリル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、1-イミダゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、5-イミダゾリル、1-ピラゾリル、3-ピラゾリル、4-ピラゾリル、5-ピラゾリル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、3-イソチアゾリル、4-イソチアゾリル、5-イソチアゾリル、4-(1,2,3-チアジアゾリル)、5-(1,2,3-チアジアゾリル)、3-(1,2,5-チアジアゾリル)、2-(1,3,4-チアジアゾリル)、4-(1,2,3-オキサジアゾリル)、5-(1,2,3-オキサジアゾリル)、3-(1,2,4-オキサジアゾリル)、5-(1,2,4-オキサジアゾリル)、3-(1,2,5-オキサジアゾリル)、2-(1,3,4-オキサジアゾリル)、1-(1,2,3-トリアゾリル)、4-(1,2,3-トリアゾリル)、5-(1,2,3-トリアゾリル)、1-(1,2,4-トリアゾリル)、3-(1,2,4-トリアゾリル)、5-(1,2,4-トリアゾリル)、1-テトラゾリル、5-テトラゾリル、1-インドリル、2-インドリル、3-インドリル、4-インドリル、5-インドリル、6-インドリル、7-インドリル、1-イソインドリル、2-イソインドリル、3-イソインドリル、4-イソインドリル、5-イソインドリル、6-イソインドリル、7-イソインドリル、1-ベンゾイミダゾリル、2-ベンゾイミダゾリル、4-ベンゾイミダゾリル、5-ベンゾイミダゾリル、6-ベンゾイミダゾリル、7-ベンゾイミダゾリル、2-ベンゾフラニル、3-ベンゾフラニル、4-ベンゾフラニル、5-ベンゾフラニル、6-ベンゾフラニル、7-ベンゾフラニル、1-イソベンゾフラニル、3-イソベンゾフラニル、4-イソベンゾフラニル、5-イソベンゾフラニル、6-イソベンゾフラニル、7-イソベンゾフニル、2-ベンゾチエニル、3-ベンゾチエニル、4-ベンゾチエニル、5-ベンゾチエニル、6-ベンゾチエニル、7-ベンゾチエニル、2-ベンゾオキサゾリル、4-ベンゾオキサゾリル、5-ベンゾオキサゾリル、6-ベンゾオキサゾリル、7-ベンゾオキサゾリル、2-ベンゾチアゾリル、4-ベンゾチアゾリル、5-ベンゾチアゾリル、6-ベンゾチアゾリル、7-ベンゾチアゾリル、1-インダゾリル、3-インダゾリル、4-インダゾリル、5-インダゾリル、6-インダゾリル、7-インダゾリル、2-モルホリル、3-モルホリル、4-モルホリル、1-ピペラジル、2-ピペラジル、1-ピペリジル、2-ピペリジル、3-ピペリジル、4-ピペリジル、2-テトラヒドロピラニル、3-テトラヒドロピラニル、4-テトラヒドロピラニル、2-テトラヒドロチオピラニル、3-テトラヒドロチオピラニル、4-テトラヒドロチオピラニル、1-ピロリジル、2-ピロリジル、3-ピロリジル、フラニル、2-テトラヒドロフラニル、3-テトラヒドロフラニル、2-テトラヒドロチエニル、3-テトラヒドロチエニル、5-メチル-3-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾール-4-イル基等が挙げられる。
本明細書において、「アルキルチオ基」としては、特に限定はなく、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、及びn-プロピルチオ基等が挙げられる。
本明細書において、「アリールチオ基」としては、特に限定はなく、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ビフェニルチオ基等が挙げられる。
本発明において使用する化合物(1)のZとしては、芳香族環(オルト、メタ、パラ位置にて置換)、置換されているか、置換されていないヒダントイン環、炭素数0~18の飽和又は不飽和直鎖状炭化水素としては、エチレン基、テトラメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、オクタデカメチレン基、7,11-オクタデカジエニレン基等が挙げられる。また、Ra~Rdは水素及び炭素数1~18からなるアルキル基、シクロアルキル基、芳香族環(オルト、メタ、パラ位置にて置換)であり、それぞれ同じでも異なってもよい(以下のヒドラジド化合物(2)、(3)においても同様)。
化合物(1)の中でも、以下の化学式(1-1)で示される化合物が好ましい。
(式(1-1)中、Zは、アリール基、アルキル基、及び又はヒダントイン基であり、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。R
a~R
dは同一又は異なって、水素原子、アルキル基、又はアリール基でありを示し、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。)
化合物(1-1)の中でも、Zがアルキル基、又はアリール基である化合物が好ましい。
化合物(1-1)の中でも、Ra及びRbが同一又は異なって、炭素数1~18の直鎖状又は分岐状アルキル基である化合物が好ましく、炭素数1~4の直鎖状又は分岐状アルキル基である化合物がより好ましい。
化合物(1-1)の中でも、Zがアリール基であり、Ra及びRbが同一又は異なって、炭素数1~18の直鎖状又は分岐状アルキル基である化合物が好ましく、Zがフェニル基又はナフチル基であり、Ra及びRbが同一又は異なって、炭素数1~4の直鎖状又は分岐状アルキル基である化合物がより好ましく、Zがフェニル基であり、Ra及びRbが同一又は異なって、炭素数1~4の直鎖状又は分岐状アルキル基である化合物が特に好ましい。
具体的に、化合物(1-1)としては、例えば、イソフタル酸ジ(1-メチルエチリデン)ヒドラジド、アジピン酸ジ(1-メチルエチリデン)ヒドラジド、イソフタル酸ジ(1-メチルプロピリデン)ヒドラジド、アジピン酸ジ(1-メチルプロピリデン)ヒドラジド、イソフタル酸ジ(1,3-ジメチルプロピリデン)ヒドラジド、アジピン酸ジ(1,3-ジメチルプロピリデン)ヒドラジド、イソフタル酸ジ(1-フェニルエチリデン)ヒドラジド、アジピン酸ジ(1-フェニルエチリデン)ヒドラジド等が挙げられる。
本発明において使用する化合物(2)のQとしては、フェニル基、ナフチル基などの芳香族基であり、Qの置換基Xはヒドロキシ基、アミノ基である。
化合物(2)の中でも、以下の化学式(2-1)で示される化合物が好ましい。
(式(2-1)中、Qはアリール基であり、XはQの置換基である。R
a及びR
bは同一又は異なって、水素原子、アルキル基、又はアリール基でありを示し、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。)
化合物(2-1)の中でも、Ra及びRbは同一又は異なって、炭素数1~18の直鎖状又は分岐状アルキル基である化合物が好ましく、炭素数1~4の直鎖状又は分岐状アルキル基である化合物がより好ましい。
化合物(2-1)の中でも、Qがアリール基であり、Ra及びRbが同一又は異なって、炭素数1~18の直鎖状又は分岐状アルキル基である化合物が好ましく、Qがフェニル基又はナフチル基であり、Ra及びRbが同一又は異なって、炭素数1~4の直鎖状又は分岐状アルキル基である化合物がより好ましく、Qがナフチル基であり、Ra及びRbが同一又は異なって、炭素数1~4の直鎖状又は分岐状アルキル基である化合物が特に好ましい。
具体的に、化合物(2-1)としては、例えば、N’-(1,3-ジメチルブチリデン)サリチル酸ヒドラジド、3-ヒドロキシ-N’-(1,3-ジメチルブチリデン)-2-ナフトエ酸ヒドラジド、1-ヒドロキシ-N’-(1,3-ジメチルブチリデン)-2-ナフトエ酸ヒドラジド等が挙げられる。
化合物(3)の中でも、以下の化学式(3-1)で示される化合物が好ましい。
(式(3-1)中、Yは、ピリジル基、及び又はヒドラジノ基であり、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。R
a及びR
bは同一又は異なって、水素原子、アルキル基、又はアリール基でありを示し、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。)
化合物(3-1)の中でも、Ra及びRbが同一又は異なって、炭素数1~18の直鎖状又は分岐状アルキル基である化合物が好ましく、炭素数1~4の直鎖状又は分岐状アルキル基である化合物がより好ましい。
化合物(3-1)の中でも、Yがヒドラジノ基であり、Ra及びRbが同一又は異なって、炭素数1~18の直鎖状又は分岐状アルキル基である化合物が好ましく、Yがヒドラジノ基であり、Ra及びRbが同一又は異なって、炭素数1~4の直鎖状又は分岐状アルキル基である化合物がより好ましい。
具体的に、化合物(3-1)としては、例えば、イソニコチン酸(1-メチルエチリデン)ヒドラジド、イソニコチン酸(1-メチルプロピリデン)ヒドラジド、イソニコチン酸(1,3-ジメチルプロピリデン)ヒドラジド、イソニコチン酸(1-フェニルエチリデン)ヒドラジド等が挙げられる。
化合物(1-1)~(3-1)中でも、化合物(2-1)が好ましく、具体的には、N’-(1,3-ジメチルブチリデン)サリチル酸ヒドラジド、3-ヒドロキシ-N’-(1,3-ジメチルブチリデン)-2-ナフトエ酸ヒドラジド、1-ヒドロキシ-N’-(1,3-ジメチルブチリデン)-2-ナフトエ酸ヒドラジドが好ましく、3-ヒドロキシ-N’-(1,3-ジメチルブチリデン)-2-ナフトエ酸ヒドラジドが特に好ましい。
本発明のゴム組成物における成分(b)としては、これら化合物を一種のみを単独で含んでもよいし、二種以上を混合して含んでもよい。
(1.3.成分(c):式(4)又は(5)で表される化合物あるいは該化合物の塩)
本発明のゴム組成物は、下記式(4)で表される化合物もしくはその塩(化合物(4))又は下記式(5)で表される化合物もしくはその塩(化合物(5))を含む。
(式(4)中、R
1、R
2、R
3及びR
4は同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。R
3とR
4とは互いに結合してアルキリデン基を形成してもよく、R
2、R
3及びR
4のいずれか2つが互いに結合してアルキレン基を形成してもよい。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。)
(式(5)中、R
5、R
7及びR
8は同一又は異なって、水素原子、アミノ基、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示し、R
6はアルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。)
本明細書において、「アラルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、ベンジル、フェネチル、トリチル、1-ナフチルメチル、2-(1-ナフチル)エチル、2-(2-ナフチル)エチル基等が挙げられる。
本明細書において、「アルキリデン基」としては、特に限定はなく、例えば、メチリデン、エチリデン、プロピリデン、イソプロピリデン、ブチリデン基等が挙げられる。
本明細書において、「アルキレン基」としては、特に限定はなく、例えば、 エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基等を挙げることができる。これらアルキレン基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含んでいてもよく、フェニレン基を介していてもよい。このようなアルキレン基としては、例えば、-CH2NHCH2-、-CH2NHCH2CH2-、-CH2NHNHCH2-、-CH2CH2NHCH2CH2-、-CH2NHNHCH2CH2-、-CH2NHCH2NHCH2-、-CH2CH2CH2NHCH2CH2CH2-、-CH2OCH2CH2-、-CH2CH2OCH2CH2-、-CH2SCH2CH2-、-CH2CH2SCH2CH2-、
これらアルキル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、アルキリデン基、及びアルキレン基の各基は、置換可能な任意の位置にそれぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。該「置換基」としては、特に限定はなく、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、アミノアルキル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、ホルミル基、ニトリル基、ニトロ基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、水酸基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基等が挙げられる。該置換基は、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個有していてもよい。
化合物(4)の中でも、R1、R3及びR4が、同一又は異なって、水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基である化合物が好ましい。
化合物(4)の中でも、R1が水素原子である化合物が好ましい。
化合物(4)の中でも、R2が、水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基である化合物が好ましく、水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、ベンジル基、フェニル基、ナフチル基、又はフリル基である化合物がより好ましく、水素原子、又は炭素数1~4の直鎖状アルキル基である化合物が特に好ましい。
化合物(4)の中でも、R3及びR4の少なくとも一方が水素原子である化合物が好ましく、R3及びR4が共に水素原子である化合物がより好ましい。
化合物(4)の中でも、R1が水素原子であり、R2が水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基であり、R3及びR4が共に水素原子である化合物、及び、R1が水素原子であり、R2が水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基であり、R3とR4とが一緒になってアルキリデン基を形成している化合物がさらに好ましく、R1が水素原子であり、R2が水素原子若しくは炭素数1~4の直鎖状アルキル基であり、R3及びR4が共に水素原子である化合物が特に好ましい。
化合物(5)の中でも、R5は水素原子であり、R6は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、アラルキル基、又はアリール基であり、R7及びR8は同一又は異なって、水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、アラルキル基、アリール基、アミノ基又は複素環基である化合物が好ましい。
化合物(5)の中でも、R6が炭素数1~4の直鎖状アルキル基、アラルキル基、又はアリール基である化合物が好ましく、炭素数1~4の直鎖状アルキル基、又はアリール基である化合物がより好ましい。
化合物(5)の中でも、R7及びR8が同一又は異なって、水素原子、炭素数1~4の直鎖状アルキル基、又はアミノ基である化合物が好ましい。
化合物(5)の中でも、R5は水素原子であり、R6が炭素数1~4の直鎖状アルキル基、又はアリール基であり、R7及びR8が同一又は異なって、水素原子、炭素数1~4の直鎖状アルキル基、又はアミノ基である化合物が好ましい。
化合物(4)及び化合物(5)の中でも、化合物(4)が特に好ましい。
具体的に、化合物(4)又は(5)としては、例えば、5-ピラゾロン、3-メチル-5-ピラゾロン、3-(ナフタレン-2-イル)-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、3-(フラン-2-イル)-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、3-フェニル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、3-プロピル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、3-ウンデシル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、4-(2-ヒドロキシエチル)-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、4-ベンジル-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)オン、4,4’-(フェニルメチレン)ビス(5-メチル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン)、4-[(ジメチルアミノ)メチリデン]-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、4-メチル-2,3-ジアゾスピロ[4.4]ノン-3エン-1-オン、5-メチル-2-(4-ニトロフェニル)-1H-ピラゾール-3(2H)-オン、5-メチル-2-フェニル-2,4-ジヒドロ-3H-ピラゾール-3-オン、1,5-ジメチル-2-フェニル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン、4,5,6,7-テトラヒドロ-2H-インダゾール-3(3aH)-オン、4-{[4-ジメチルアミノ]フェニル}メチリデン}-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、1-フェニル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン、4,4’-(4-ヒドロキシフェニルメチレン)ビス(5-メチル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン)、1,3-ジフェニル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、4,4’-(4-ニトロフェニルメチレン)ビス(5-メチル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン)、及び、4-アミノ-1,5-ジメチル-2-フェニル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン等が挙げられる。
中でも、好ましい化合物は、化合物(4)であり、その中でも、5-ピラゾロン、3-メチル-5-ピラゾロン、3-(ナフタレン-2-イル)-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、3-(フラン-2-イル)-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、3-フェニル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、及び3-プロピル-1H-ピラゾール-5(4H)-オンがより好ましい。
本発明のゴム組成物における成分(c)としては、これら化合物(4)及び(5)として上記した化合物を一種のみ単独で含んでもよいし、二種以上を混合して含んでもよい。
化合物(4)又は(5)の中には、互変異性体を生じるものがある。互変異性化が可能である(例えば、溶液中である)場合に、互変異性体の化学平衡に達し得る。化合物(4)又は(5)は、例えば、式(6)~(12)で表されるような互変異性体として存在することができる。
前記式(4)において、R1及びR3が水素原子である化合物(化合物(4)-A)には、以下の式(6)~(8)で表される互変異性体が存在する。
前記式(4)において、R3が水素原子である化合物(化合物(4)-B)には、以下の式(9)~(10)で表される互変異性体が存在する。
前記式(4)において、R1が水素原子である化合物(化合物(4)-C)には、以下の式(11)で表される互変異性体が存在する。
前記式(5)において、R5が水素原子である合物(化合物(5)-A)には、以下の式(12)で表される互変異性体が存在する。
上記式(6)~(12)で表されるような互変異性体と、化合物(4)又は(5)とは、どちらの異性体も共存する平衡状態に達している。よって、別段の記載がない限り、本明細書において、化合物(4)又は(5)のすべての互変異性体の形態は、本発明の範囲内である。
また、式(4)又は(5)で表される化合物の塩としては、特に限定はなく、あらゆる種類の塩が含まれる。このような塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;ジメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム等のアンモニウム塩等が挙げられる。
本発明のゴム組成物における成分(c)としては、化合物(4)又は化合物(5)が任意の割合で含まれる混合物を含んでもよい。
(1.4.成分(d):カーボンブラック及び/又は無機充填材)
本発明のゴム組成物は、カーボンブラック及び/又は無機充填材を含む。
カーボンブラックは、通常ゴムの靱性を向上させるために用いられる。なお、本明細書
においては、無機充填材にカーボンブラックは含まれない。
カーボンブラックとしては、特に制限はなく、例えば、市販品のカーボンブラック、Carbon-Silica Dual phase filler等が挙げられる。ゴム成分にカーボンブラックを含有することにより、ゴムの電気抵抗を下げて、帯電を抑止する効果、さらにゴムの強度を向上させる効果を享受できる。
具体的に、カーボンブラックとしては、例えば、高、中又は低ストラクチャーのSAF、ISAF、IISAF、N110、N134、N220、N234、N330、N339、N375、N550、HAF、FEF、GPF、SRFグレードのカーボンブラック等が挙げられる。中でも、好ましいカーボンブラックとしては、SAF、ISAF、IISAF、N134、N234、N330、N339、N375、HAF、又はFEFグレードのカーボンブラックである。
カーボンブラックのDBP吸収量としては、特に制限はなく、好ましくは60~200cm3/100g、より好ましくは70~180cm3/100g以上、特に好ましくは80~160cm3/100gである。
また、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA、JISK6217-2:2001に準拠して測定する)は、好ましくは30~200m2/g、より好ましくは40~180m2/g、特に好ましくは50~160m2/gである。
カーボンブラックが配合されたゴム組成物では、化合物(1)が、又はゴム成分と化合物(1)との反応物が、カーボンブラックと強く相互作用をすることが考えられる。したがって、本発明のゴム組成物によれば、特にカーボンブラックの分散性が大幅に向上し、ゴム組成物の低発熱性が著しく改良できる。
無機充填材としては、ゴム工業界において、通常使用される無機化合物であれば、特に制限はない。使用できる無機化合物としては、例えば、シリカ;γ-アルミナ、α-アルミナ等のアルミナ(Al2O3);ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al2O3・H2O);ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3];炭酸アルミニウム[Al2(CO3)3]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイ(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al2O3)、クレー(Al2O3・2SiO2)、カオリン(Al2O3・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al2O3・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al2O3・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2・SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al2O3・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO3)2]、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等が挙げられる。これらの無機充填材は、ゴム成分との親和性を向上させるために、該無機充填材の表面が有機処理されていてもよい。
無機充填材としては、ゴム強度を付与する観点からシリカが好ましく、より好ましくはシリカ単独で、又はシリカとゴム工業界で通常使用される無機化合物の1種以上とを併用することができる。無機充填材として、シリカ及びシリカ以外の上記無機化合物を併用する場合には、無機充填材の全成分の合計量が上記範囲となるように適宜調整すればよい。
シリカは、ゴム強度を付与することができるため添加することが好ましい。
シリカとしては、市販のあらゆるものが使用できる。中でも、好ましいシリカとしては、湿式シリカ、乾式シリカ、又はコロイダルシリカであり、より好ましくは湿式シリカである。これらのシリカは、ゴム成分との親和性を向上させるために、シリカの表面が有機処理されていてもよい。
シリカのBET比表面積としては、特に制限はなく、例えば、40~350m2/gの範囲が挙げられる。BET比表面積がこの範囲であるシリカは、ゴム靱性及びゴム成分中への分散性を両立できるという利点がある。該BET比表面積は、ISO5794/1に準拠して測定される。
この観点から、好ましいシリカとしては、BET比表面積が80~300m2/gの範囲にあるシリカであり、より好ましくは、BET比表面積100~270m2/gであるシリカであり、特に好ましくは、BET比表面積110~270m2/gの範囲にあるシリカである。
このようなシリカの市販品としては、Quechen Silicon Chemical Co.,Ltd.製の商品名「HD165MP」(BET比表面積=165m2/g)、「HD115MP」(BET比表面積=115m2/g)、「HD200MP」(BET比表面積=200m2/g)、「HD250MP」(BET比表面積=250m2/g)、東ソー・シリカ株式会社製の商品名「ニップシールAQ」(BET比表面積=205m2/g)、「ニップシールKQ」(BET比表面積=240m2/g)、デグッサ社製の商品名「ウルトラジルVN3」(BET比表面積=175m2/g)等が挙げられる。
無機充填材、特にシリカを配合するゴム組成物において、化合物(1)又は化合物(2)を配合することにより、シリカの分散性が大幅に向上し、ゴム組成物の低発熱性が著しく改良できる。つまり、前記化合物(1)又は化合物(2)は、カーボンブラック及び/又は無機充填材の分散剤、低発熱化剤、発熱防止材、又は発熱抑制剤として利用でき、好ましくは、ゴム用分散剤、ゴム用低発熱化剤、ゴム用発熱防止材、又はゴム用発熱抑制剤として利用できる。
上記成分(b)の配合量は、ゴム組成物中の上記成分(a)100質量部に対して、通常0.01~50質量部であり、好ましくは0.1~30質量部であり、より好ましくは0.5~10質量部である。
上記成分(c)の配合量は、ゴム組成物中の上記成分(a)100質量部に対して、通常0.01~50質量部であり、好ましくは0.1~30質量部であり、より好ましくは0.5~10質量部である。
上記成分(d)の配合量は、ゴム組成物中の上記成分(a)100質量部に対して、通常0.5~300質量部であり、好ましくは1~200質量部であり、より好ましくは5~150質量部である。
上記成分(d)において、カーボンブラック及び無機充填材の両方を配合する場合には、両成分の合計量が上記範囲になるように適宜調整すれば良い。
上記成分(d)において、カーボンブラック及び/又は無機充填材の配合量が、2質量部以上であれば、ゴム組成物の靱性向上の観点から好ましく、200質量部以下であれば、転がり抵抗低減の観点から好ましい。
上記成分(d)において、カーボンブラックの配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、通常20~200質量部であり、好ましくは30~130質量部であり、より好ましくは35~100質量部である。
上記成分(d)において、カーボンブラックの配合量が2質量部以上であれば、静電気防止性能及びゴム強度性能を確保する観点から好ましく、200質量部以下であれば、転がり抵抗低減の観点から好ましい。
上記成分(d)において、無機充填材の配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、通常10~200質量部である。
上記成分(d)において、シリカの配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、通常2~1200質量部であり、好ましくは30~130質量部であり、より好ましくは35~130質量部である。
上記成分(d)において、特に運動性能と低燃費性能との両立を図る場合のシリカの配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、通常20~200質量部であり、好ましくは30~130質量部であり、より好ましくは35~130質量部である。
上記成分(b)と成分(c)の合計100質量%中に、上記成分(b)の配合割合は、0.01~90質量%とすることが好ましく、0.1~50質量%とすることがより好ましく、0.5~30質量%とすることが特に好ましい。
(1.5.その他配合剤)
本発明のゴム組成物には、上記成分(a)、(b)、(c)及び(d)以外にも、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、老化防止剤、オゾン防止剤、軟化剤、加工助剤、ワックス、樹脂、発泡剤、オイル、ステアリン酸等の炭素数8~30の脂肪酸、酸化亜鉛(ZnO)、加硫促進剤、加硫遅延剤、加硫剤(硫黄)等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
また、上記成分(d)が配合されたゴム組成物においては、カーボンブラック及び/又はシリカによるゴム組成物の靱性を高める目的、又はゴム組成物の引裂き強度と共に耐摩耗性を高める目的で、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、ジルコネートカップリング剤を配合してもよい。
上記成分(d)と併用可能なシランカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなシランカップリング剤として、例えばスルフィド系、ポリスルフィド系、チオエステル系、チオール系、オレフィン系、エポキシ系、アミノ系、アルキル系のシランカップリング剤が挙げられる。
スルフィド系のシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(3-モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-モノエトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-モノエトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-モノメトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-モノメトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-モノメトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-モノエトキシジメチルシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-モノエトキシジメチルシリルエチル)トリスルフィド、ビス(2-モノエトキシジメチルシリルエチル)ジスルフィド等が挙げられる。これらの内、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが特に好ましい。
チオエステル系のシランカップリング剤としては、例えば、3-ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
チオール系のシランカップリング剤としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-[エトキシビス(3,6,9,12,15-ペンタオキサオクタコサン-1-イルオキシ)シリル]-1-プロパンチオール等を挙げることができる。
オレフィン系のシランカップリング剤としては、例えば、ジメトキシメチルビニルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルエトキシビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-(メトキシジメトキシジメチルシリル)プロピルアクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート、3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3-(トリエトキシシリル)プロピルメタクリレート、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート等を挙げることができる。
エポキシ系のシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、トリエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
アミノ系のシランカップリング剤としては、例えば、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-エトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、3-アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。
アルキル系のシランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、メチルトリエトキシシランが好ましい。
これらシランカップリング剤の中でも、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドを特に好ましく使用することができる。
カーボンブラック及び/又は無機充填剤と併用可能なチタネートカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなチタネートカップリング剤として、例えばアルコキシド系、キレート系、アシレート系のチタネートカップリング剤が挙げられる。
アルコキシド系のチタネートカップリング剤としては、例えば、テトライソプロピルチネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラオクチルチタネート、テトラターシャリーブチルチタネート、テトラステアリルチタネート等を挙げることができる。これらの内、テトライソプロピルチタネートが好ましい。
キレート系のチタネートカップリング剤としては、例えば、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、ドデシルベンゼンスルホン酸チタン化合物、リン酸チタン化合物、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンエタノールアミネート、チタンオクチレングリコレート、チタンアミノエチルアミノエタノレート等を挙げることができる。これらの内、チタンアセチルアセトネートが好ましい。
アシレート系のチタネートカップリング剤としては、例えば、チタンイソステアレート等を挙げることができる。
カーボンブラック及び/又は無機充填剤と併用可能なアルミネートカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなアルミネートカップリング剤として、9-オクタデセニルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムセカンダリーブトキシド、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート等が挙げることができる。これらの内、9-オクタデセニルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートが好ましい。カーボンブラック及び/又は無機充填剤と併用可能なジルコネートカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなジルコネートカップリング剤として、例えばアルコキシド系、キレート系、アシレート系のジルコネートカップリング剤が挙げられる。
アルコキシド系のジルコニウム系カップリング剤としては、例えば、ノルマルプロピルジルコネート、ノルマルブチルジルコネート等を挙げることができる。この内、ノルマルブチルジルコネートが好ましい。
キレート系のジルコネートカップリング剤としては、例えば、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテート、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩等を挙げることができる。この内、ジルコニウムテトラアセチルアセトネートが好ましい。
アシレート系のジルコネートカップリング剤としては、例えば、ステアリン酸ジルコニウム、オクチル酸ジルコニウム等を挙げることができる。この内、ステアリン酸ジルコニウムが好ましい。
本発明においては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、ジルコネートカップリング剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のゴム組成物のシランカップリング剤の配合量は、上記成分(d)100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、3~15質量部が特に好ましい。0.1質量部以上であれば、ゴム組成物の引裂き強度向上の効果をより好適に発現することができ、20質量部以下であれば、ゴム組成物のコストが低減し、経済性が向上するからである。
(1.6.マスターバッチ)
本発明のゴム組成物を製造するに際しては、あらかじめ上記成分(a)、(b)及び(c)を任意の割合で混合されたマスターバッチを用いてもよい。
本発明のゴム組成物のマスターバッチの成分(b)の配合量は、上記成分(a)100質量部に対して、0.01~200質量部が好ましく、0.1~100質量部が特に好ましい。
本発明のゴム組成物のマスターバッチの成分(c)の配合量は、上記成分(a)100質量部に対して、0.01~200質量部が好ましく、0.1~100質量部が特に好ましい。
(2.ゴム組成物の製造方法)
本発明はゴム組成物の製造方法としては、上記成分(a)、(b)、(c)、(d)、加硫剤、及びその他配合剤を混合すればよく、配合する順序は適宜設定されれば良い。例えば、上記成分(a)、(b)、(c)及び(d)を含む原料成分を混合する工程(A)、並びに、工程(A)で得られる混合物及び加硫剤を混合する工程(B)を含む方法、上記成分(a)、(b)及び(c)を含む原料成分を混合する工程(A)、並びに、工程(A)で得られる混合物、成分(d)及び加硫剤を混合する工程(B)を含む方法、上記成分(a)、(b)及び(d)を含む原料成分を混合する工程(A)、並びに、工程(A)で得られる混合物、成分(c)及び加硫剤を混合する工程(B)を含む方法、上記成分(a)、(c)及び(d)を含む原料成分を混合する工程(A)、並びに、工程(A)で得られる混合物、成分(b)及び加硫剤を混合する工程(B)を含む方法、上記成分(a)及び(b)を含む原料成分を混合する工程(A)、並びに、工程(A)で得られる混合物、成分(c)、(d)及び加硫剤を混合する工程(B)を含む方法、上記成分(a)及び(c)を含む原料成分を混合する工程(A)、並びに、工程(A)で得られる混合物、成分(b)、(d)及び加硫剤を混合する工程(B)を含む方法、上記成分(a)及び(d)を含む原料成分を混合する工程(A)、並びに、工程(A)で得られる混合物、成分(b)、(c)及び加硫剤を混合する工程(B)を含む方法等が挙げられる。その中でも好ましい製造方法としては、上記成分(a)、(b)、(c)及び(d)を含む原料成分を混練する工程(A)、並びに、工程(A)で得られる混合物及び加硫剤を混合する工程(B)を含む方法である。
(2.1.工程(A))
工程(A)は、上記成分(a)、(b)、(c)及び(d)を含む原料成分を混合する工程である。
工程(A)では、さらに必要に応じて、上記のその他の配合剤等を配合することができる。本明細書において、「混合」には、単に混ぜ合わせるという態様のみならず、いわゆる「混練」という態様も含まれるものとする。
工程(A)においては、上記成分(a)、(b)、(c)及び(d)を含む原料成分を混合する。この混合方法においては、各成分の全量を一度に混合してもよく、粘度調整等の目的に応じて、各成分を分割投入して混合してもよい。また、上記成分(a)と(d)とを混合した後、上記成分(b)及び(c)を投入して混合するか、上記成分(a)、(b)及び(c)を混合した後、上記成分(d)を投入して混合してもよい。各成分を均一に分散させるために、混合操作を繰り返し行ってもよい。また、充填剤を予め湿式方法および又は乾式混合方法によりゴムに添加した充填剤マスターバッチゴムを使用しても良い。
また、工程(A)における別の混合方法としては、上記成分(a)、(b)及び(c)を混合する工程(A-1)、並びに工程(A-1)で得られた混合物と上記成分(d)を含む原料成分とを混合する工程(A-2)を含む二段階の混合方法を挙げることができる。
工程(A)におけるゴム組成物を混合する際の温度としては、特に制限はなく、例えば、ゴム組成物の温度の上限が100~190℃であることが好ましく、110~175℃であることがより好ましく、120~170℃であることがさらに好ましい。
工程(A)における混合時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、1分間から8分間であることがさらに好ましい。
工程(A-1)における上記成分(a)、(b)及び(c)を混合する際の温度としては、60~190℃であることが好ましく、70~160℃であることがより好ましく、80~150℃であることがさらに好ましい。該混合温度が60℃より低いと反応が進行せず、また、190℃以上になると、ゴムの劣化が進行するためである。
工程(A-1)における混合時間としては、10秒間~20分間が望ましく、30秒間~10分間であることがより好ましく、60秒間~7分間であることがさらに好ましい。該混合時間を10秒以上とすることにより反応を充分に進行させることが可能である。一方、混合時間を20分間以内とすることにより、生産性の面で優れる。
工程(A-2)における工程(A-1)で得られた混合物と上記成分(d)とを混合する際の温度としては、特に制限はなく、例えば、混合物の温度の上限が100~190℃であることが好ましく、110~175℃であることがより好ましく、130~170℃であることがさらに好ましい。
工程(A-2)における混合時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、1分間から8分間であることがさらに好ましい。
工程(A)において、上記成分(b)及び(c)の合計配合量としては、特に制限はなく、例えば、上記成分(a)100質量部に対して、0.01~50質量部であり、好ましくは0.1~30質量部であり、より好ましくは0.5~20質量部である。
(2.2.工程(B))
工程(B)は、工程(A)で得られる混合物及び加硫剤を混合する工程である。
工程(B)では、さらに必要に応じて、加硫促進剤等を配合することができる。
工程(B)は、加熱条件下で行うことができる。該工程の加熱温度としては、特に制限はなく、例えば、60~140℃であることが好ましく、80~120℃であることがより好ましく、90~120℃であることがさらに好ましい。
混合時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、60秒間から5分間であることがさらに好ましい。
工程(A)から工程(B)に進む際には、前段階の工程終了後の温度より、30℃以上低下させてから次の工程(B)へ進むことが好ましい。
工程(A)においては、バンバリーミキサー、ロール、インテンシブミキサー、ニーダー、単軸押出機、二軸押出機等を用いて混合される。その後、押出工程において押出して加工され、例えば、トレッド用部材、又はサイドウォール用部材として成形される。続いて、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤが得られる。
本発明のゴム組成物の製造方法において、通常、ゴム組成物に配合されるステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤等の各種配合剤を、必要に応じて、工程(A)又は工程(B)において添加することができる。
上記した配合剤は、工程(A)又は工程(B)のどちらか一方で添加してもよいし、あるいは工程(A)及び工程(B)に分けて添加してもよい。
(2.3.ゴム組成物の成形方法)
本発明におけるゴム組成物は、バンバリーミキサー、ロール、インテンシブミキサー、ニーダー、単軸押出機、二軸押出機等を用いて混合される。その後、押出工程において押出して加工され、例えば、トレッド用部材、又はサイドウォール用部材として成形される。続いて、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤが得られる。
(3.タイヤ)
本発明のタイヤは、上記本発明のゴム組成物を用いて作製されたタイヤである。
本発明のタイヤとしては、例えば、空気入りタイヤ(ラジアルタイヤ、バイアスタイヤ等)、ソリッドタイヤ等が挙げられる。
タイヤの用途としては、特に制限はなく、例えば、乗用車用タイヤ、高荷重用タイヤ、モーターサイクル(自動二輪車)用タイヤ、スタッドレスタイヤ等が挙げられ、中でも、乗用車用タイヤに好適に使用できる。
本発明のタイヤの形状、構造、大きさ及び材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明のタイヤにおいて、上記ゴム組成物は、特にトレッド部、サイドウォール部、ビードエリア部、ベルト部、カーカス部及びショルダー部から選ばれる少なくとも一つの部材に用いられる。
中でも、空気入りタイヤのタイヤトレッド部、又はサイドウォール部を当該ゴム組成物で形成するのが好ましく、タイヤトレッド部を当該ゴム組成物で形成するのが特に好ましい態様の1つとして挙げられる。
トレッド部とは、トレッドパターンを有し、路面と直接接する部分で、カーカスを保護するとともに摩耗及び外傷を防ぐタイヤの外皮部分であり、タイヤの接地部を構成するキャップトレッド及び/又はキャップトレッドの内側に配設されるベーストレッドをいう。
サイドウォール部とは、例えば、空気入りラジアルタイヤにおけるショルダー部の下側からビード部に至るまでの部分であり、カーカスを保護するとともに、走行する際に最も屈曲の激しい部分である。
ビードエリア部とは、カーカスコードの両端を固定し、同時にタイヤをリムに固定させる役目を負っている部分である。ビードとは高炭素鋼を束ねた構造である。
ベルト部とは、ラジアル構造のトレッドとカーカスとの間に円周方向に張られた補強帯である。カーカスを桶のたがの様に強く締付けトレッドの剛性を高めている。
カーカス部とは、タイヤの骨格を形成するコード層の部分であり、タイヤの受ける荷重、衝撃、及び充填空気圧に耐える役割を果たしている。
ショルダー部とは、タイヤの肩の部分で、カーカスを保護する役目を果たす。
本発明のタイヤは、タイヤの分野において、これまでに知られている方法に従って製造することができる。また、タイヤに充填する気体としては、通常の又は酸素分圧を調整した空気;窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
本発明のタイヤは、優れた低発熱性、靱性及び加工性を有し、タイヤの転がり抵抗が小さくなることから、自動車の低燃費化を図ることができる。また、カーボンブラック及び/又は無機充填材が高充填されたゴム組成物においても高い低発熱性を示すことから、高い運動性能を有する低燃費タイヤを提供することができる。
(4.タイヤ以外の用途)
本発明のゴム組成物は、上記タイヤ用途以外にも、ベルト(コンベアベルト)、防振ゴム、免震ゴム等にも使用することができる。
(5.添加剤)
本発明の添加剤は、ゴム用添加剤であり、更に詳しくは、タイヤ用ゴム組成物用添加剤 であり、上記成分(b)及び(c)を含む。
なお、本発明の添加剤に含まれる上記成分(c)には、上記化合物(2)又は(3)の互変異性体も包含される。
本発明の添加剤の配合量は、ゴム組成物中の上記成分(a)100質量部に対して、通常0.01~50質量部であり、好ましくは0.1~30質量部であり、より好ましくは0.5~20質量部である。本発明の添加剤の配合量が、成分(a)100質量部に対して0.01質量部以上であることにより、低発熱性、靱性、加工性向上が十分に発揮することが見込め、一方、添加剤の配合量が成分(a)100質量部に対して50質量部以下であることにより、経済的に好ましい。
本発明の添加剤 は、上記成分(b)及び(c)をそれぞれ分けて使用してもよいし、上記成分(b)及び(c)を混合された状態で使用してもよい。混合された状態で使用する場合、上記成分(b)及び(c)を所定量又は適量秤量して、公知の方法で混合すればよい。混合は、例えば、回転ボールミル、振動ボールミル、遊星ミル、ペイントシェイカー、ロッキングミル、ロッキングミキサー、ビーズミル、流動式混合機、撹拌機等を用いて、湿式及び乾式のどちらでも行うことができる。
本発明の添加剤をゴム成分に添加することで、特殊な混練り方法を行わず、ゴム成分に優れた低発熱性、靱性、及び加工性を付与できる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
製造例1:3-ヒドロキシ-N’-(1,3-ジメチルブチリデン)-2-ナフトエ酸ヒドラジド(化合物(b)-1)の製造
ディーンスターク型還流冷却器及び撹拌機を備えた反応器に、メチルイソブチルケトン500ml及び3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド50.5g(0.25mol)を仕込んだ後、加温し、留出する水を除去しながら5時間加熱還流した。反応液を20℃まで冷却した後、析出した結晶を濾別し、減圧乾燥して、微黄色結晶の3-ヒドロキシ-N’-(1,3-ジメチルブチリデン)-2-ナフトエ酸ヒドラジド67.6gを得た。
融点:146℃
1H-NMR(300MHz,d6-DMSO,δppm):
0.90(m,6H)、1.93(s,3H)、2.00(m,1H)、2.17(m,2H)、7.38(m,2H)、7.46(m,1H)、7.75(m,1H)、7.95(m,1H)、8.58(m,1H)、11.15(b,1H)、11.65(b,1H)
IR(KBR): 3400~2400、1650、1550、1510、1470、1360、1230、1170、1140、1120、1050、950、900、880、770、740、670、600、550、480cm-1
製造例2:3-(ナフタレン-2-イル)-1H-ピラゾール-5(4H)-オン(化合物(c)-2)の製造
100mLナスフラスコにカルボニルジイミダゾール8.5g(52.1mmol)、及び脱水テトラヒドロフラン60mLを加え、室温で撹拌した。次いでこの混合物に、2-ナフトエ酸7.5g(43.6mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。以下、この得られた反応液を「反応液1」とする。
500mL四つ口フラスコにモノエチルマロン酸カリウム14.8g(87.0mmol)、脱水アセトニトリル210mL、及びトリエチルアミン18.3mL(132.4mmol)を加え、氷冷下で撹拌した。次いでこの混合物に、塩化マグネシウム10.4g(109.2mmol)を加え、室温で4時間撹拌した。この得られた反応液に上記反応液1を滴下し、室温で一晩撹拌した。
この反応液を濃縮し、得られた残渣にトルエン125mLを加え、4M塩酸70mL、及び水70mLで洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥した後、減圧濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=4:1(体積比))にて精製し、無色透明の液体を得た。
この液体にヒドラジン一水和物2.2mL(44.8mmol)を加え、酢酸2.0mL(35.0mmol)を滴下し、4時間還流した。この反応液を室温に戻し、ジイソプロピルエーテル30mLを加え、析出した結晶を濾過して、白色固体の3-(ナフタレン-2-イル)-1H-ピラゾール-5(4H)-オン8.22gを得た。
融点:204℃
1H-NMR(300MHz,d6-DMSO,δppm):
11.94(1H,br),8.20~8.21(1H,J=1.2Hz,d),7.82~7.96(4H,m),7.47~7.56(2H,m),6.02(1H,s)
13C-NMR(500MHz,d6-DMSO,δppm):
168.13,160.95,143.83,133.06,132.39,128.30,127.90,127.62,126.55,126.06,123.28,123.14,87.10
製造例3:3-(フラン-2-イル)-1H-ピラゾール-5(4H)-オン(化合物(c)-3)の製造
100mLナスフラスコにカルボニルジイミダゾール8.7g(53.5mmol)、及び脱水テトラヒドロフラン60mLを加え、室温で撹拌した。次いでこの混合物に、2-フランカルボン酸5.0g(45.0mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。以下、この得られた反応液を「反応液2」とする。
500mL四つ口フラスコにモノエチルマロン酸カリウム14.8g(87.0mmol)、脱水アセトニトリル200mL、及びトリエチルアミン18.3mL(132.4mmol)を加え、氷冷下で撹拌した。次いでこの混合物に、塩化マグネシウム10.4g(109.2mmol)を加え、室温で4時間撹拌した。この反応液に上記反応液2を滴下し、室温で一晩撹拌した。
得られた反応液を濃縮し、クロロホルム120mLを加え、4M塩酸70mL、及び水70mLで洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥した後、減圧濃縮し、無色透明の液体を得た。
この得られた液体にヒドラジン一水和物2.5mL(50.7mmol)を加え、酢酸2.0mL(35.0mmol)を滴下し、4時間還流した。この得られた反応液を室温に戻し、ジイソプロピルエーテル30mLを加え、析出した結晶を濾過して、白色固体の3-(フラン-2-イル)-1H-ピラゾール-5(4H)-オン5.47gを得た。
融点:231℃
1H-NMR(300MHz,d6-DMSO,δppm):
11.79(2H,br),7.68~7.69(1H,m),6.69(1H,J=3.3Hz,d),6.55(1H,J=1.8,1.5,1.8Hz,dd),5.69(1H,s)
13C-NMR(500MHz,d6-DMSO,δppm):
160.23,146.16,142.24,135.84,111.50,105.77,85.88
製造例4:3-フェニル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン(化合物(c)-4)の製造
100mL四つ口フラスコにベンゾイル酢酸エチル25g(0.13mol)及びエタノール25mLを加えて撹拌した。これを水浴で冷却しながら、ヒドラジン一水和物6.5mL(0.13mol)を滴下した。室温で4時間撹拌した後、生成した白色固体をろ別し、水:メタノール=1:1(体積比)の混合液50mLで洗浄、乾燥することで、白色固体の3-フェニル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン18.8gを得た。
融点:236℃
1H-NMR(500MHz,d6-DMSO,δppm):
12.03(1H,br)、9.69(1H,br)、7.66(2H,m)、7.39(2H,m)、7.30(1H,m)、5.88(1H,s)
13C-NMR(500MHz,d6-DMSO,δppm):
161.00、143.48、130.48、128.73、127.71、124.73、86.87
製造例5:3-プロピル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン(化合物(c)-5)の製造
500mL四つ口フラスコに3-オキソヘキサン酸メチル24.8g(0.16mol)、及びエタノール260mLを加えて撹拌した。これを氷浴で冷却しながらヒドラジン一水和物8.6mL(0.18mol)を滴下し、氷冷下で2時間撹拌した後、2時間加熱還流し、反応液を室温まで冷却した。生成した白色固体をろ別し、水:メタノール=1:1(体積比)の混合液50mLで洗浄し、乾燥することで、白色固体の3-プロピル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン13.2gを得た。
融点:205-206℃
1H-NMR(500MHz,d6-DMSO,δppm):
11.11(1H,br)、9.42(1H,br)、5.23(1H,s)、2.41(2H,J=7.5Hz,t)、1.54(2H,m)、0.88(3H,J=7.3Hz,t)
13C-NMR(500MHz,d6-DMSO,δppm):
160.87、144.04、87.93、27.67、21.93、13.57
製造例6:4,4’-(フェニルメチレン)ビス(5-メチル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン)(化合物(c)-6)の製造
2L四つ口フラスコに、水1L、3-メチル-5-ピラゾロン10g(0.10mol)、ベンズアルデヒド5.4g(0.05mol)、及びドデシル硫酸ナトリウム0.73g(2.5mmol)を加えて室温で30分間撹拌した後、1時間還流した。この反応液を氷浴で冷却しながら、30分間撹拌した後、ろ別し、水500mLで洗浄し、乾燥することで淡黄色固体の4,4’-(フェニルメチレン)ビス(5-メチル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン)12.1gを得た。
融点:230-232℃
1H-NMR(500MHz,d6-DMSO,δppm):
11.31(4H,br)、7.20(2H,m)、7.12(3H,m)、4.81(1H,s)、2.07(6H,s)
13C-NMR(500MHz,d6-DMSO,δppm):
161.24、143.33、139.73、127.67、127.47、125.35、104.21、32.72、10.34
製造例7:4,4’-(4-ヒドロキシフェニルメチレン)ビス(5-メチル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン)(化合物(c)-7)の製造
3L四つ口フラスコに、水2.5L、3-メチル-5-ピラゾロン25.0g(0.26mol)、4-ヒドロキシベンズアルデヒド15.6g(0.13mol)、及びドデシル硫酸ナトリウム1.84g(6.4mmol)を加えて室温で30分間撹拌した後、1時間還流した。この反応液を氷浴で冷却しながら、30分間撹拌した後、ろ別し、水2.5Lで洗浄し、乾燥することで淡黄色固体の4,4’-(4-ヒドロキシフェニルメチレン)ビス(5-メチル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン)33.5gを得た。
融点:262-264℃
1H-NMR(500MHz,d6-DMSO,δppm):
11.22(4H,br)、9.03(1H,s)、6.91(2H,J=8.5Hz,d)、6.59(2H,J=8.5Hz,d)、4.71(1H,s)、2.06(6H,s)
13C-NMR(500MHz,d6-DMSO,δppm):
161.12、155.03、139.67、133.44、128.27、114.42、104.84、31.91、10.35
製造例8:4,4’-(4-ニトロフェニルメチレン)ビス(5-メチル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン)(化合物(c)-8)の製造
3L四つ口フラスコに、水2.5L、3-メチル-5-ピラゾロン25.0g(0.26mol)、4-ニトロベンズアルデヒド19.3g(0.13mol)、及びドデシル硫酸ナトリウム1.84g(6.4mmol)を加えて室温で30分間撹拌した後、1時間還流した。この反応液を氷浴で冷却しながら、30分間撹拌した後、ろ別し、メタノール500mLで洗浄し、乾燥することで淡黄色固体の4,4’-(4-ニトロフェニルメチレン)ビス(5-メチル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン)37.8gを得た。
融点:300-302℃
1H-NMR(500MHz,d6-DMSO,δppm):
11.40(4H,br)、8.12(2H,J=8.8Hz,d)、7.38(2H,J=8.8Hz,d)、4.98(1H,s)、2.10(6H,s)
13C-NMR(500MHz,d6-DMSO,δppm):
160.82、151.71、145.56、139.71、128.76、122.94、103.24、32.95、10.28
製造例9:4-[(ジメチルアミノ)メチリデン]-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン(化合物(c)-9)の製造
500mL四つ口フラスコに、キシレン300mL、3-メチル-5-ピラゾロン14.7g(0.15mol)、及びN,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール21.6g(0.18mol)を加えて110℃で一晩撹拌した。反応液を室温まで冷却した後、生じた固体をろ別し、トルエン300mLで洗浄し、乾燥することで黄色固体の4-[(ジメチルアミノ)メチリデン]-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン 20.3gを得た。
融点:158-159℃
1H-NMR(500MHz,d6-DMSO,δppm):
10.30(1H,br)、7.27(1H,s)、3.75(3H,s)、3.26(3H,s)、1.97(3H,s)
13C-NMR(500MHz,d6-DMSO,δppm):
164.77、152.66、149.66、97.13、46.74、42.44、13.35
製造例10:4-{[4-ジメチルアミノ]フェニル}メチリデン}-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン(化合物(c)-10)の製造
3L四つ口フラスコに、エタノール2.7L、3-メチル-5-ピラゾロン27.0g(0.28mol)、4-ジメチルアミノベンズアルデヒド44.4g(0.30mol)、及びピペリジン4.7g(55mmol)を加えて、3時間還流した。この反応液を一晩室温で撹拌した後、ろ別し、乾燥することで淡黄色固体の4-{[4-ジメチルアミノ]フェニル}メチリデン}-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン46.3gを得た。
融点:164℃
1H-NMR(500MHz,d7-DMF,δppm):
10.91(1H,br)、8.70(2H,J=9.3Hz,d)、7.45(1H,s)、6.83(2H,J=9.3Hz,d)、3.15(6H,s)、2.18(3H,s)
13C-NMR(500MHz,d7-DMF,δppm):
166.74、153.84、150.55、146.23、136.92、122.49、120.74、111.43、39.58、12.98
製造例11:3-ウンデシル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン(化合物(c)-11)の製造
50mLナスフラスコに、カルボニルジイミダゾール2.8g(17.4mmol)、及びクロロホルム20mLを加え、室温で撹拌した。次いでこの混合物に、ラウリン酸2.9g(14.5mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。以下、この得られた反応液を「反応液3」とする。
200mL四つ口フラスコに、モノエチルマロン酸カリウム4.9g(30.0mmol)、脱水アセトニトリル70mL、及びトリエチルアミン6.1mL(44.1mmol)を加え、氷冷下で撹拌した。次いでこの得られた混合物に、塩化マグネシウム3.5g(36.4mmol)を加え、室温で4時間撹拌した。この反応液に上記反応液3を滴下し、室温で一晩撹拌した。この得られた反応液を濃縮し、クロロホルム42mLを加え、2M塩酸48mL、及び水48mLで洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥した後、減圧濃縮した。
これにエタノール20mL、ヒドラジン一水和物0.7mL(14.9mmol)を加え、酢酸0.7mL(11.7mmol)を滴下し、4時間還流した。この反応液を室温まで戻し、ジイソプロピルエーテル10mLを加え、析出した結晶をろ別することで、白色固体の3-ウンデシル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン2.83gを得た。
融点:188℃
1H-NMR(300MHz,d6-DMSO,δppm):
11.05(1H,br),9.45(1H,br),5.21(1H,s),2.39~2.44(2H,J=7.5Hz,t),1.48~1.53(2H,m),1.30(16H,s),0.83~0.88(3H,m)
13C-NMR(500MHz,d6-DMSO,δppm):
160.85,144.20,87.84,31.27,29.01,28.98,28.95,28.71,28.68,28.62,28.57,25.60,22.06,13.90
製造例12:4-(2-ヒドロキシエチル)-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン(化合物(c)-12)の製造
100mL四つ口フラスコに、α-アセチル-γ-ブチロラクトン24.3g(0.19mol)、及びエタノール24mLを加えて撹拌した。これを氷浴で冷却しながらヒドラジン一水和物9.7mL(0.20mol)を滴下し、室温で3時間撹拌した。析出した固体をろ別し、イソプロパノール50mLで洗浄し、乾燥することで、白色固体の4-(2-ヒドロキシエチル)-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン23.8gを得た。
融点:182 ℃
1H-NMR(500MHz,d7-DMF,δppm):
10.62(2H,br)、3.78(2H,J=7.0Hz,t)、3.66(1H,br)、2.69(2H,J=7.0Hz,t)、2.31(3H,s)
13C-NMR(500MHz,d7-DMF,δppm):
160.88、137.87、98.61、62.29、26.18、9.66
製造例13:4-ベンジル-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)オン(化合物(c)-13)の製造
100mL四つ口フラスコに、2-ベンジルアセト酢酸エチル24.5g(0.11mol)、及びエタノール25mLを加え、撹拌した。これを氷浴で冷却しながらヒドラジン一水和物5.7mL(0.12mol)を滴下した後、室温で3時間撹拌した。析出した固体をろ別し、水:メタノール=1:1(体積比)の混合液50mLで洗浄し、乾燥することで、白色固体の4-ベンジル-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)オン15.6gを得た。
融点:228-229℃
1H-NMR(500MHz,d6-DMSO,δppm):
11.08(1H,br)、9.46(1H,br)、7.24(2H,m)、7.14(3H,m)、3.55(2H,s)、2.01(3H,s)
13C-NMR(500MHz,d6-DMSO,δppm):
159.58、141.90、136.82、128.06、127.96、125.37、99.94、27.28、9.94
製造例14:1-フェニル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン (化合物(c)-14)の製造
1L四つ口フラスコに、1-フェニル-3-ピラゾリドン10g(62mmol)、及びN,N-ジメチルホルムアミド150mLを加えて撹拌した。これに塩化銅(I)317mg(3.2mmol)を加えて開放系で一晩撹拌した。反応液に水750mLを加え、氷浴で冷却しながら30分撹拌した後、ろ別し、水750mLで洗浄し、乾燥することで淡茶色固体の1-フェニル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン6.1gを得た。
融点:152℃
1H-NMR(500MHz,d6-DMSO,δppm):
10.22(1H,br)、8.22(1H,s)、7.68(2H,m)、7.42(2H,m)、7.18(1H,m)、5.80(1H,s)
13C-NMR(500MHz,d6-DMSO,δppm):
162.64、139.79、129.29、128.37、124.59、116.76、94.47
製造例15:4-メチル-2,3-ジアゾスピロ[4.4]ノン-3エン-1-オン(化合物(c)-15)の製造
500mL四つ口フラスコにアセト酢酸メチル7.2g(62.0mmol)、1,4-ジヨードブタン23.1g(75mmol)、炭酸カリウム42.9g(310mmol)、及びジメチルスルホキシド220mLを加え、室温で一晩撹拌した。反応液に水220mLを加え、10分間撹拌した後に、イソプロピルエーテル300mLで抽出して得た有機層を水200mLで二回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮してカラム精製(ヘキサン:酢酸エチル=50:1(体積比))することで中間体6.5g(36mmol)を得た。
得られた中間体とエタノール6mLとを混合し、氷浴上で冷やしながらヒドラジン一水和物1.8mL(39mmol)を加え、60℃で一晩撹拌した。反応液を濃縮して得られた固体をヘキサン:酢酸エチル=5:1(体積比)の混合液40mLで洗浄することで、白色固体の4-メチル-2,3-ジアゾスピロ[4.4]ノン-3エン-1-オン3.8gを得た。
融点:83-84℃
1H-NMR(500MHz,d6-DMSO,δppm):
10.77(1H,s)、1.92(3H,s)、1.86-1.66(8H,m)
13C-NMR(500MHz,d6-DMSO,δppm):
181.64、163.37、55.78、33.53、26.48、13.34
製造例16:4,5,6,7-テトラヒドロ-2H-インダゾール-3(3aH)-オン(化合物(c)-16)の製造
100mLの四つ口フラスコに2-オキソシクロヘキサンカルボン酸エチル 24.5g(0.14mol)、及びエタノール24mLを加え、混合した。これに氷浴で冷却しながらヒドラジン一水和物7.3mL(0.15mol)を滴下し、80℃で3時間撹拌した後、氷浴で冷却しながら30分間撹拌した。その後、反応液をろ別し、水:メタノール=1:1(体積比)の混合液50mLで洗浄し、乾燥することで白色固体の4,5,6,7-テトラヒドロ-2H-インダゾール-3(3aH)-オン17.3gを得た。
融点:286-288℃
1H-NMR(500MHz,d6-DMSO,δppm):
10.50(1H,br)、9.66(1H,br)、2.43(2H,J=5.7Hz,t)、2.22(2H,J=5.7Hz,t)、1.67-1.62(4H,m)
13C-NMR(500MHz,d6-DMSO,δppm):
158.30、139.62、98.41、22.86、22.27、21.26、18.88
製造例17:1,3-ジフェニル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン(化合物(c)-17)の製造
1Lの四つ口フラスコにベンゾイル酢酸エチル 50.0g(0.26mol)、フェニルヒドラジン28.1g(0.26mol)、酢酸4.5mL(0.08mol)、及び水500mLを加えて混合した。これを100℃で1時間撹拌した後、氷浴で冷却しながら30分間撹拌してろ別し、水:メタノール=1:1(体積比)の混合液1Lで洗浄し、乾燥することで淡橙色固体の1,3-ジフェニル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン58.0gを得た。
融点:137-138℃
1H-NMR(500MHz,d6-DMSO,δppm):
11.81(1H,br)、7.83(4H,m)、7.49(2H,m)、7.42(2H,m)、7.35-7.28(2H,m)、6.02(1H,s)
13C-NMR(500MHz,d6-DMSO,δppm):
153.73、149.52、138.85、133.41、128.87、128.51、127.78、125.65、125.04、121.11、85.05
実施例1~12及び比較例1~9:ゴム組成物の製造
下記表1~4の工程(A)に記載の各成分をその割合(質量部)で混合し、バンバリーミキサーで混合した。混合物の温度が60℃以下になるまで養生させた後、表1~4の工程(B)に記載の各成分をその割合(質量部)で投入し、混合物の最高温度が70℃以下になるよう調整しながら混合して、ゴム組成物を製造した。
尚、表1~3における各成分の詳細は、下記の通りである。
※1:成分(a):NR(天然ゴム);GUANGKEN RUBBER社製、TSR-20
※2:成分(b):化合物(b-1);製造例1で製造した3-ヒドロキシ-N’-(1,3-ジメチルブチリデン)-2-ナフトエ酸ヒドラジド
※3:成分(c):化合物(c-1);大塚化学株式会社製、3-メチル-5-ピラゾロン
※4:成分(d):カーボンブラック;Cabot社製、N234
※5:酸化亜鉛;Dalian Zinc Oxide Co.,Ltd社製
※6:ステアリン酸;Sichuan Tianyu Grease社製
※7:老化防止剤(N-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン);Kemai Chemical Co.,Ltd社製
※8:ワックス;Rhein Chemie Rheinau社製、Antilux 111
※9:加硫促進剤N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド;三新化学工業株式会社製、サンセラーNS-G
※10:硫黄 ;Shanghai Jinghai Chemical Co.,Ltd社製
※11:成分(a):SBR(スチレンブタジエンゴム);旭化成製、タフデン2000R
実施例1~12及び比較例1~9:低発熱性(Tanδ値)試験
下記実施例1~12及び比較例1~9のゴム組成物について、粘弾性測定装置(Metravib社製)を使用し、温度40℃、動歪5%、周波数15HzでTanδ値測定した。比較するために、上記成分(b)及び(c)を添加しない以外は、各実施例と同じ配合内容及び同じ製法でゴム組成物(比較例1,3,5,7~9)を作製し、そのTanδ値を100とした。下記式に基づいて、低発熱性指数を算出した。なお、低発熱性指数の値が小さい程、低発熱性であり、ヒステリシスロスが小さいことを示す。
式:低発熱性指数
= (各実施例1~3のゴム組成物のTanδ値)/(比較例1のTanδ値)×100
式:低発熱性指数
= (各実施例4~6のゴム組成物のTanδ値)/(比較例3のTanδ値)×100
式:低発熱性指数
= (各実施例7~9のゴム組成物のTanδ値)/(比較例5のTanδ値)×100
式:低発熱性指数
= (各実施例10のゴム組成物のTanδ値)/(比較例7のTanδ値)×100
式:低発熱性指数
= (各実施例11のゴム組成物のTanδ値)/(比較例8のTanδ値)×100
式:低発熱性指数
= (各実施例12のゴム組成物のTanδ値)/(比較例9のTanδ値)×100
実施例1~12及び比較例1~9:靱性(断裂時伸長率)試験
下記実施例1~12及び比較例1~9で得られたゴム組成物の各断裂時伸長率指数は、ASTM-D412に準拠して、破断時の伸び率を測定した。比較するために、上記成分(b)及び(c)を添加しない以外は、各実施例と同じ配合内容及び同じ製法でゴム組成物(比較例1,3,5,7~9)を作製し、その伸び率を100とした。下記式に基づいて、断裂時伸長率指数を算出した。なお、断裂時伸長率指数の値が大きい程、断裂時の伸長率が高く、靱性に優れていることを示す。
式:断裂時伸長率指数
=(各実施例1~3のゴム組成物の断裂時伸長率)/(比較例1の断裂時伸長率)×100
式:断裂時伸長率指数
=(各実施例4~6のゴム組成物の断裂時伸長率)/(比較例3の断裂時伸長率)×100
式:断裂時伸長率指数
=(各実施例7~9のゴム組成物の断裂時伸長率)/(比較例5の断裂時伸長率)×100
式:断裂時伸長率指数
=(各実施例10のゴム組成物の断裂時伸長率)/(比較例7の断裂時伸長率)×100
式:断裂時伸長率指数
=(各実施例11のゴム組成物の断裂時伸長率)/(比較例8の断裂時伸長率)×100
式:断裂時伸長率指数
=(各実施例12のゴム組成物の断裂時伸長率)/(比較例9の断裂時伸長率)×100
実施例1~12及び比較例1~9:加工性(スコーチタイム)試験
下記実施例1~12及び比較例1~9で得られた未加硫のゴム組成物の各スコーチタイム指数は、JIS K 6300に準拠して、スコーチタイムを測定した。比較するために、上記成分(b)及び(c)を添加しない以外は、各実施例と同じ配合内容及び同じ製法でゴム組成物(比較例1,3,5,7~9)を作製し、そのスコーチタイムを100とした。下記式に基づいて、スコーチタイム指数を算出した。なお、スコーチタイム指数の値が大きい程、スコーチタイムが長く、加工性に優れていることを示す。
式:スコーチタイム指数
=(各実施例1~3のゴム組成物のスコーチタイム値)/(比較例1のスコーチタイム値)×100
式:スコーチタイム指数
=(各実施例4~6のゴム組成物のスコーチタイム値)/(比較例3のスコーチタイム値)×100
式:スコーチタイム指数
=(各実施例7~9のゴム組成物のスコーチタイム値)/(比較例5のスコーチタイム値)×100
式:スコーチタイム指数
=(各実施例10のゴム組成物のスコーチタイム値)/(比較例7のスコーチタイム値)×100
式:スコーチタイム指数
=(各実施例11のゴム組成物のスコーチタイム値)/(比較例8のスコーチタイム値)×100
式:スコーチタイム指数
=(各実施例12のゴム組成物のスコーチタイム値)/(比較例9のスコーチタイム値)×100