以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
(第1の実施の形態)
図1(a)は本発明の一実施の形態であるトンネル研掃装置が取り付けられたトンネル研掃システムを示す概念図、図1(b)は図1(a)のトンネル研掃システムを構成する高所作業車のデッキ部上昇時の概念図である。なお、図1(a),(b)においては、説明を分かり易くするためにトンネル研掃装置Mの下部も透かして見せている。
本実施の形態のトンネル研掃システムSは、例えば、曲面状に形成されたトンネルの内壁面を研掃可能なシステムであり、高所作業車Vと、トンネル研掃装置Mとを備えている。
高所作業車Vは、トンネル研掃装置Mを所定の場所に移動するとともに、トンネル研掃装置Mの高さを所定の高さに設定することが可能な特殊車両であり、その荷台側には、パンタグラフ部Vpと、その上に設置されたデッキ部Vbとを備えている。パンタグラフ部Vpは、デッキ部Vbを昇降させるための昇降機構部であり、これによりデッキ部Vb上に搭載されたトンネル研掃装置Mを所定の高さに設定することでトンネル研掃装置Mによるトンネルの研掃作業を行うことが可能になっている。
この図1の高所作業車Vにおいては、トンネル研掃装置Mを搭載したときに低振動数の揺れがなく、たわみも15mm程度に抑えることができるので、トンネル研掃装置Mの搭載車両として適用できる。また、図1の高所作業車Vの場合、トンネル研掃装置Mを安定した状態で搭載でき、トンネル研掃装置Mが搭載されたデッキ部Vb上を上昇させたまま走行移動することができるので、研掃作業を効率的に実施することができる。
このような高所作業車Vのデッキ部Vb上に搭載されたトンネル研掃装置Mは、例えば、曲面状に形成されたトンネルの内壁面に対して研削材を吹き付けることで当該内壁面を研掃する研削材噴射型の研掃装置であり、移動手段11と、その上に設置された保持フレーム12と、その保持フレーム12に保持されたロッド15と、そのロッド15の先端に揺動自在の状態で支持された研掃ヘッド17とを備えている。以下、トンネル研掃装置Mについて、図2~図5を参照して詳細に説明する。
図2は本発明の一実施の形態であるトンネル研掃装置を示す正面図、図3は本発明の一実施の形態であるトンネル研掃装置を示す側面図、図4は本発明の一実施の形態であるトンネル研掃装置を構成する移動手段の説明図、図5は本発明の一実施の形態であるトンネル研掃装置に設けられた研掃ヘッドの主面の平面図である。なお、図2および図3においては、トンネル研掃装置を構成する移動手段の一部は図示が省略されている。また、図2および図3においては、トンネル研掃時のトンネルの内壁面WSに対する研掃ヘッド17の向きを分かり易くするためにトンネルの内壁面WSの断面を示している。
図2および図3に詳しく示すように、トンネル研掃装置Mは、ベースプレート10およびベースプレート10を水平方向に移動させる移動手段11を備えている。また、ベースプレート10上には、ロッド15を上下方向に延びるようにして保持する保持フレーム12が設置されている。また、ベースプレート10上には、当該ベースプレート10上に立設されたロッド15を上下動させるためのエアシリンダ13が設置されている。このエアシリンダ13は、中空になったロッド15の内部空間に配置されており、当該ロッド15により起立した状態で保持されている。
エアシリンダ13のシリンダロッド13aは、ロッド15内において径方向に設けられた取付板15-1に取り付けられている。これにより、ロッド15はエアシリンダ13に駆動されて上下動し、研掃時において研掃ヘッド17をトンネルの内壁面WSに押し付ける。なお、保持フレーム12には、ロッド15の両側を支持するローラ対16a,16bが上下2段に設けられている。したがって、ロッド15はローラ対16a,16bに支持された状態で上下動するようになっており、安定的な上下動が可能になっている。
ロッド15を上下動させる駆動手段としては、本実施の形態に示すエアシリンダ13以外に、例えば油圧シリンダやチェーンによる昇降機構などを用いてもよい。また、伸縮可能なロッドを用い、本実施の形態のようにロッド全体ではなく、ロッドの一部を上下動させるようにしてもよい。
また、ベースプレート10とエアシリンダ13との間にはターンテーブル14が介在されている。すなわち、エアシリンダ13は、ベースプレート10に載置されたターンテーブル14上に搭載されている。このターンテーブル14は、回転モータ14mの回転動作によって水平面内において回転可自在の状態になっている。すなわち、回転モータ14mの回転軸と、ターンテーブル14の回転軸との各々にはギア等を介して無端チェーンベルト(図示せず)が機械的に接続されており、回転モータ14mの回転動作がギア等および無端チェーンベルトを通じてターンテーブル14の回転軸に伝達されることでターンテーブル14が水平面内において回転するようになっている。そして、このターンテーブル14の回転により、研掃ヘッド17を水平面内において回転させることが可能になっている。
なお、ターンテーブル14は、トンネルの内壁面WSに対する研掃ヘッド17の水平方向の研掃角度を微調整するために用いられるが、微調整までは必要ない場合も考えられる。そのような場合には、ターンテーブル14を設けることなく、ベースプレート10上に直接保持フレーム12やエアシリンダ13などを搭載するようにしてもよい。
ここで、図4に示すように、移動手段11は、ベースプレート10を第1の方向D1に往復移動させる第1の移動機構部11aと、ベースプレート10および第1の移動機構部11aを第1の方向D1に対して直交する第2の方向D2に往復移動させる第2の移動機構部11bとを備えている。
図2および図3に示すように、ベースプレート10の裏面の四隅には車輪10aが取り付けられており、第1の移動機構部11aは、ベースプレート10が車輪10aを介して走行可能に載置される第1のレール11a-1と、第1のレール11a-1上のベースプレート10を第1の方向D1に往復移動させるモータ11a-2とを備えている。モータ11a-2は、例えば、電動式モータで構成されている。これにより、モータ11a-2を油圧式モータで構成する場合に比べて、トンネル研掃装置Mを軽量化することができる。このモータ11a-2は第1のレール11a-1の一方端に設置されており、モータ11a-2の回転軸に取り付けられたスプロケット11a-3aと第1のレール11a-1の他方端に回転自在に設置されたスプロケット11a-3bとの間には、チェーン11a-4が掛け渡されている。さらに、チェーン11a-4には、ベースプレート10の下面から延びた伝達棒10bの先端が固定されている。したがって、モータ10cの回転によりチェーン11a-4が周方向に回転すると伝達棒10bが第1の方向D1に移動し、これに伴ってベースプレート10が第1のレール11a-1上を走行して第1の方向D1に移動する。
第1のレール11a-1の端部の4箇所には、第1のレール11a-1の延伸方向と直交する方向を回転面とする車輪(図示せず)が取り付けられている。また、図4に示すように、第1のレール11a-1の両端には、第1のレール11a-1とで矩形のフレームを形成するタイロッド11a-5が設置されている。
そして、第2の移動機構部11bは、第1のレール11a-1が車輪を介して走行可能に載置される第2のレール11b-1と、第2のレール11b-1上の第1のレール11a-1を第2の方向D2に往復移動させるモータ11b-2とを備えている。また、第2のレール11b-1の両端にも、第2のレール11b-1とで矩形のフレームを形成するタイロッド11b-3が設置されている。モータ11b-2は、例えば、電動式モータで構成されている。これにより、トンネル研掃装置Mを軽量化することができる。このモータ11b-2は一方のタイロッド11b-3の略中央部分に設置されており、その回転軸上にはシャフト11b-4が取り付けられている。また、他方のタイロッド11b-3におけるモータ11b-2との対向位置には、シャフト11b-4の先端を回転自在に支持する軸受11b-5が設置されている。さらに、第1の移動機構部11aにおけるシャフト11b-4に対応した位置には、一対の第1のレール11a-1を連結するとともに当該シャフト11b-4が貫通する突起片11a-6aが裏面に取り付けられた連結棒11a-6が設けられている。前述したシャフト11b-4には雄ネジが形成され、シャフト11b-4が貫通する突起片11a-6aには、当該雄ネジと螺合する雌ネジが形成されている。したがって、モータ11b-2によりシャフト11b-4が回転すると連結棒11a-6において回転運動が直線運動に変換され、これにより第1のレール11a-1が第2のレール11b-1上を走行して第2の方向D2に移動する。
なお、移動手段11は図4に示すものに限定されるものではなく、ベースプレート10を水平方向に移動させることができる限り、様々な構造を採用することができる。また、移動手段11は、ベースプレート10をトンネルの延伸方向、つまり後述する研掃ヘッド17がトンネルを研掃する方向に移動させることができれば足り、本実施の形態のように、所定範囲内の水平面に対して移動させることができなくてもよい。
さて、本実施の形態においては、図2および図3に示すように、上記したロッド15の先端に、トンネルの内壁面WSを研掃するための研掃ヘッド17が着脱自在の状態で取り付けられている。研掃ヘッド17は、取付台17aと、アーム部(揺動部)17rと、エアシリンダ17pとを備えている。
研掃ヘッド17の取付台17aは、トンネルの内壁面WSに対向する主面と、その裏側の裏面とを有している。この取付台17aの主面には、図2、図3および図5に示すように、研掃機(研掃部)17bと、キャスタ17cと、第1のリングブラシ(第1の遮蔽部材)17s-1と、第2のリングブラシ(第2の遮蔽部材)17s-2とが設置され、取付台17aの裏面側において取付台17aの長手方向の両端には、2枚の回動板17a-1が取付台17aと一体的に立設されている。
研掃機17bは、トンネルの内壁面WSの劣化部分を研削するために、その内壁面WSに研削材を吹き付ける研削材噴射部である。ここでは、図3および図5に示すように、研掃機17bが、例えば、2台設置されている。各研掃機17bには、図5に示すように、内側から外側に向かって、噴射口17b-1と、吸引口17b-2と、第1のリングブラシ17s-1とが同心円状に配置されている。
研掃機17bの噴射口17b-1は、上記した研削材を噴射するための開口部であり、図5に示すように、平面視で、例えば、円形状に形成されている。噴射口17b-1の直径は、例えば、80mm程度である。噴射口17a-1の平面形状は円形状に限定されるものではなく、例えば、楕円形や長円等、種々変更可能である。この噴射口17a-1の後方には、図3に示すように、研削材供給管17b-3が機械的に接続されている。この研削材供給管17b-3を通じて送られた研削材は、噴射口17a-1から噴射されてトンネルの内壁面WSに吹き付けられるようになっている。
研掃機17bの吸引口17b-2は、研掃処理によりトンネルの内壁面WSから剥がれた剥離片や吹き付け後の研削材を負圧吸引する開口部であり、図5に示すように、例えば、噴射口17b-1の外周を取り囲むように平面視で円環状に形成されている。この吸引口17b-2の後方には、吸引口17b-2から吸引された剥離片や研削材を貯蔵する貯蔵装置(図示せず)へ搬送する搬送管(図示せず)が機械的に接続されている。
このような2台の研掃機17bは、図2および図3に示すように、各々の研掃機17bの噴射口17b-1および吸引口17b-2を、トンネルの内壁面WSに対向させることが可能な状態で取付台17aに設置されている。また、2台の研掃機17bは、図5に示すように、研掃方向に沿って並んで配置されている。そして、図5の左側または右側から取付台17aの側面を見たときに、2台の研掃機17b,17bは、その各々の噴射口17b-1,17b-1同士が一部重なり(オーバーラップし)つつも、研掃機17b,17bの並設方向に対して交差(直交)する方向に互いにずれている状態で配置されている。この噴射口17b-1,17b-1の位置ずれにより、研削材の噴射幅が設定されている。本実施の形態では、2台の研掃機17b,17bの噴射口17b-1,17b-1のオーバーラップ寸法が、例えば、40mmとなっているので、トンネルの内壁面WSに対して研削材が120mm(=80mm×2-40mm)の幅で噴射されることになる。但し、これらの数値は例示に過ぎず、本発明がこれらの数値に拘束されるものではない。
なお、研掃機17bの設置台数は自由に設定でき、1台でも3台以上でもよい。また、研掃機17bを3台以上設ける場合、研掃機17bの並設方向に沿って研掃機17bを千鳥状に配置してもよいし、相互にずらして配置しなくてもよい。さらに、研掃機17bは、本実施の形態のような研削材噴射型ではなく、加圧された水流でトンネルの内壁面WSを研掃するウォータージェット型などでもよい。
また、図2、図3および図5に示すように、キャスタ17cは、研掃作業に際して、取付台17aの主面とトンネルの内壁面WSとの間に一定の間隔を確保するとともに、研掃ヘッド17を内壁面WSに沿って移動させる部材であり、図5に示すように、例えば、取付台17aの主面の四隅に配置されている。研掃時には、当該キャスタ17cがトンネルの内壁面WSと接することで取付台17aとトンネルの内壁面WSとが一定の間隔に保たれつつ、研掃ヘッド17の移動に伴って当該キャスタ17cがトンネルの内壁面WSに沿って回転するようになっている。キャスタ17cの車輪部は、例えば、ゴムまたはウレタンやナイロン等のようなプラスチックで構成されている。これにより、キャスタ17cが内壁面WSに接触したときに内壁面WSに傷や損傷を生じさせない上、キャスタ17cを軽量化できるので、研掃ヘッド17を軽量化することができる。また、キャスタ17cは、取付台17aの主面内(すなわち、内壁面WSの研掃面内)において360°回転することが可能な構成になっている。これにより、研掃時に研掃ヘッド17の移動方向の自由度を向上させることができる。なお、キャスタ17cの個数、取付位置または材料等は、上記したものに限定されるものではなく、種々変更可能である。
また、図2、図3および図5に示すように、第1のリングブラシ17s-1は、剥離片や研削材等のような飛散物が、取付台17aの主面より外方に漏れるのを遮蔽するための遮蔽部材であり、図5に示すように、各研掃機17bの外周を取り囲むように平面視で円環状に形成されている。
また、図2、図3および図5に示すように、第2のリングブラシ17s-2は、上記飛散物が取付台17aの主面より外方に漏れるのを遮蔽するための遮蔽部材であり、図5に示すように、2台の研掃機17b,17bの一群を取り囲むように平面視で、例えば、矩形枠状に形成されている。このように第2のリングブラシ17s-2を設けることで、上記飛散物が外部に漏れるのをより一層抑制または防止することができる。
このような第1のリングブラシ17s-1および第2のリングブラシ17s-2は、着脱自在の状態で取付台17aに取り付けられている。したがって、第1のリングブラシ17s-1や第2のリングブラシ17s-2が劣化したら交換すればよいので、第1のリングブラシ17s-1や第2のリングブラシ17s-2の寿命によって研掃ヘッド17の寿命が決められてしまうこともない。なお、図2および図3においては、研掃機17bを見易くするため、第1のリングブラシ17s-1および第2のリングブラシ17s-2を断面図で示した。
次に、図2および図3に示すように、上記したアーム部17rは、取付台17aを揺動自在の状態で支持する揺動部であり、ベース板17r-1を備えている。ベース板17r-1は、取付台17aの裏面に対向する主面と、その裏側のロッド15の先端面に対向する裏面とを有している。ベース板17r-1の主面においてベース板17r-1の長手方向の両端には、ベース板17r-1の主面に対して直交する方向に延びる2枚の第1の支持板17r-2が設けられ、ベース板17r-1の裏面においてベース板17r-1の長手方向の中央には、ベース板17r-1の裏面に対して直交する方向に延びる2枚の第2の支持板17r-3が設けられている。
このアーム部17rの2枚の第1の支持板17r-2は、ロッド15に対して斜め方向に延在し、上記した取付台17aの2枚の回動板17a-1と平面視で重なっている。このアーム部17rの第1の支持板(第1の揺動部)17r-2と、取付台17aの回転板(第1の揺動部)17a-1とは、それらを貫通するように設けられた締結部材(第1の揺動部)17x-1によって互いに回動可能な状態で接続されている。これにより、取付台17aは、第1の揺動方向RR1(図2参照)に揺動自在の状態でアーム部17rに取り付けられている。また、アーム部17rの第1の支持板17r-2をロッド15の延在方向に対して斜め方向に延在させたことで取付台17aがロッド15に対して斜め上方に取り付けられている。これにより、研掃処理に際して曲面形状に形成されたトンネルの内壁面WSに対して研掃機17bの主面側を大きな押し付け力で押し付けることができるようになっている。
一方、アーム部17rの2枚の第2の支持板17r-3の先端面は弧状に形成されている。この2枚の第2の支持板17r-3の間には、ロッド15の先端面に形成された1枚の凸部15-2が介在されている。この凸部15-2の先端面も弧状に形成されている。そして、2枚の第2の支持板(第2の揺動部)17r-3と、凸部(第2の揺動部)15-2とは、それらを貫通するように設けられた締結部材(第2の揺動部)17x-2によって互いに回動可能な状態で接続されている。これにより、研掃ヘッド17(取付台17aおよびアーム部17r)は、第1の揺動方向に交差(直交)する第2の揺動方向RR2(図3参照)に揺動自在の状態でロッド15に取り付けられている。この締結部材17x-2は、取り外しが可能になっており、この締結部材17x-2を取り外すことで研掃ヘッド17を取り外すことが可能になっている。
したがって、本実施の形態によれば、曲面形状に形成されたトンネルの内壁面WSに追従して研掃ヘッド17を第1の揺動方向および第2の揺動方向に揺動させることができるので、当該内壁面WSを良好に研掃することができる。
次に、図2および図3に示すように、上記したエアシリンダ17pは、研掃機17bを上下動可能な状態で支持する部材である。このエアシリンダ17pは、そのシリンダロッド17p-1の先端部を2台の研掃機17bの背面側に設置された背面板17hの裏面側に固定した状態で、支持フレーム17eに取り付けられて反力をとるように設置されている。
また、この支持フレーム17eの長手方向の両端部と背面板17hの裏面との間には、例えば、2本の伸縮ロッド17d,17dが介在されている。この2本の伸縮ロッド17d,17dにより、エアシリンダ17pから2台の研掃機17bに加わる圧力が適切な圧力になるように調整することができるとともに、2台の研掃機17bの主面内に加わる圧力が均一になるように調整することができるようになっている。
また、図5に示すように、2本の伸縮ロッド17d,17dは、取付台17aの裏面内においてエアシリンダ17pを中央にして互いに斜めの位置関係になるように配置されている。このような配置にすることで2本の伸縮ロッド17d,17dでも2台の研掃機17bに加える圧力を充分に調整できる。すなわち、伸縮ロッド17d,17dを2本で済ませることができるので、研掃ヘッド17を軽量化することができる。研掃時には、エアシリンダ17pのシリンダロッド17p-1を伸長させると、取付台17aの主面のキャスタ17cがトンネルの内壁面WSに押し付けられるとともに、取付台17aの主面の第1のリングブラシ17s-1および第2のリングブラシ17s-2が内壁面WSに接触するようになっている。
なお、前述したロッド15内のエアシリンダ13によってロッド15の上下位置を調整することでキャスタ17cをトンネルの内壁面WSに押し付けることもできる。このようにロッド15のみで押し付ける場合には、エアシリンダ17pを省略することができる。但し、ロッド15で研掃ヘッド17の大まかな高さを調節し、エアシリンダ17pでキャスタ17cをトンネルの内壁面WSに押し付けるようにすれば、研掃ヘッド17を適切な圧力で容易に内壁面WSに押し付けることができる。
なお、以上説明した移動手段11、エアシリンダ13およびターンテーブル14等の動作は、図示しないコントローラを用いて、作業者により遠隔操作される。
次に、本実施の形態のトンネル研掃装置Mによるトンネルの内壁面WSの研掃例について図1~図7を用いて説明する。図6は本実施の形態のトンネル研掃装置を用いたトンネルの内壁面の研掃作業を説明するための説明図、図7は研掃作業時における図6の研掃ヘッドの要部拡大側面図である。なお、ここでは、曲面形状に形成されたトンネルの内壁面WSを研掃する場合について説明する。
まず、図1(a)に示した高所作業車Vを研掃エリアへと移動し、高所作業車Vをトンネルの内壁面WSに横付けする。このとき、トンネル研掃装置Mが搭載されたデッキ部Vbは下降状態である。また、図2に示すように、トンネル研掃装置Mは、その研掃ヘッド17の研掃面(トンネルの内壁面WSに対向する面であって研掃機17b、キャスタ17c、第1のリングブラシ17s-1および第2のリングブラシ17s-2が設置された取付台17aの主面)がトンネルの内壁面WSを向くようにする。
続いて、図1(b)に示すように、デッキ部Vbを上昇させてトンネル研掃装置Mを所定の高さ位置に設定する。その後、図2~図4に示した移動手段11によりベースプレート10を水平方向に移動し、研掃ヘッド17を移動手段11の端部(トンネルの内壁面WSに最も近い位置)に配置する。なお、ここでは、図4に示す移動手段11の第1の方向D1(研掃ヘッド17が第1の移動機構部11aによって移動する方向)がトンネルの延伸方向に沿うようにする。
ここで、高所作業車Vをトンネルの内壁面WSに横付けしたときに高所作業車Vが内壁面WSに対して若干斜めに配置されてしまう場合がある。この場合、研掃ヘッド17の研掃面をトンネルの内壁面WSに対して平行に対向させることができなくなり、トンネルの内壁面WSに対して良好な研掃処理を施すことができなくなってしまう場合がある。
そこで、トンネル研掃装置Mの研掃ヘッド17の研掃面が、トンネルの内壁面WSに対して平行になるように、トンネルの内壁面WSに対する研掃ヘッド17の研掃面の向き方(研掃角度)をターンテーブル14によって微調整する。これにより、研掃時に研掃ヘッド17の研掃面をトンネルの内壁面WSに対して平行に対向させることができるので、トンネルの内壁面WSに対して良好な研掃処理を施すことができる。
次いで、図6および図7に示すように、トンネル研掃装置Mのロッド15により研掃ヘッド17を上昇させ、さらにエアシリンダ17pにより2台の研掃機17bを押圧して、研掃ヘッド17の研掃面をトンネルの内壁面WSに押し付ける。
このとき、研掃ヘッド17の研掃面のキャスタ17cがトンネルの内壁面WSに押し付けられるが、上記したように研掃ヘッド17はロッド15の先端に第1、第2の揺動方向RR1,RR2(図2および図3参照)に揺動自在の状態で設置されているので、研掃ヘッド17がトンネルの内壁面WSの曲面形状に追従して揺動することで、その研掃ヘッド17の研掃面がトンネルの内壁面WSに対して最適な状態で向き合うようになる。なお、図6の符号R1は、この研掃段階の研掃ヘッド17の研掃高さ位置を示している。
続いて、研掃ヘッド17をトンネルの内壁面WSに押し付けた後、研掃機17bの噴射口17b-1から噴射した研削材をトンネルの内壁面WSに吹き付けながら、移動手段11の第1の移動機構部11aによりベースプレート10を動かして当該研掃ヘッド17をトンネルの延伸方向に移動させる。これにより、トンネルの劣化部分を研削することで当該内壁面WSを研掃する。
また、このとき同時に剥離片や研削材が外部に漏れないように研掃ヘッド17の吸引口17b-2で剥離片や研削材を吸引する。本実施の形態では、上記したように研掃ヘッド17の第1のリングブラシ17s-1が壁となり剥離片や研削材が外部に漏れないようになっているが、さらにその外周に第2のリングブラシ17s-2を設けたことで剥離片や研削材が外部に漏れるのをより一層抑制または防止することができる。このようにして図6の研掃高さ位置R1の内壁面WS部分をトンネルの延伸方向に沿って研掃する。
次いで、研掃高さ位置R1の研掃処理後、トンネル研掃装置Mにおいて移動手段11の第2の移動機構部11bでベースプレート10を移動することで研掃ヘッド17をトンネルの内壁面WSから遠ざかる第2の方向D2に所定量だけ移動させるとともに、ロッド15により当該研掃ヘッド17を上昇させて当該研掃ヘッド17を図6の符号R2で示す研掃高さ位置(つまり、研掃高さ位置R1よりも上方)に移動させる。このとき、研掃ヘッド17は、トンネルの研掃高さ位置R1とは異なる研掃高さ位置R2での曲面に追随して、揺動角が僅かに水平方向に変化する。
ここで、研掃ヘッド17を下方に移動させる場合には、ロッド15やエアシリンダ17pにより研掃ヘッド17を下降させて当該研掃ヘッド17をトンネルの内壁面WSから一旦離間させておき、移動手段11の第2の移動機構部11bにより研掃ヘッド17をトンネルの内壁面WSに接近する第2の方向D2に移動させる。そして、あらためて研掃ヘッド17を上昇させてトンネルの内壁面WSに押し付けなければならない。
これに対して、本実施の形態のように研掃ヘッド17を上方に移動させる場合には、研掃ヘッド17をトンネルの内壁面WSから離間させることなく、研掃ヘッド17を第2の方向D2に移動させるとともにロッド15により上昇させればよい。よって、研掃ヘッド17を下方に移動させる場合と比較して、研掃ヘッド17の高さ位置の変更を短時間で完了させることができる。但し、研掃ヘッド17を下方に移動させながらトンネルの内壁面WSを研掃してもかまわない。
続いて、研掃ヘッド17を研掃高さ位置R2に設定し、研掃ヘッド17をトンネルの内壁面WSに押し付けた後、研掃機17bの噴射口17b-1から噴射した研削材をトンネルの内壁面WSに吹き付けながら、移動手段11の第1の移動機構部11aによりベースプレート10を動かして当該研掃ヘッド17をトンネルの延伸方向(研掃高さ位置R1での研掃方向とは逆方向)に移動させる。これにより、図6の研掃高さ位置R2の内壁面WS部分をトンネルの延伸方向に沿って研掃する。
このような研掃高さ位置R2での研掃処理後、上記と同様の手順で、研掃高さ位置R3,R4での研掃処理を順に施すことでトンネルの内壁面WSを研掃する。なお、図5に示すように、研掃機17bの噴射口17b-1からの研削材の噴射幅(すなわち、研掃幅)は研掃ヘッド17の幅よりも狭いので、研掃ヘッド17の位置を下から上に移動させる際の移動量は研削材の噴射幅(本実施の形態では120mm)となる。但し、図6では、図面が煩雑になるのを回避するために、研掃幅と研掃ヘッド17の幅とを同一とした前提で図示している。
以上説明したように、本実施の形態によれば、トンネル研掃装置Mのロッド15の先端に、第1の揺動方向およびこれに交差(直交)する第2の揺動方向に揺動自在の状態で研掃ヘッド17を設けたことにより、曲面形状に形成されたトンネルの内壁面WSの研掃処理に際して、内壁面WSの研掃位置での曲面状態に追従して研掃ヘッド17を揺動させながら研掃処理を施すことができるので、曲面形状に形成されたトンネルの内壁面WSを良好に研掃することができる。
また、曲面形状に形成されたトンネルの内壁面WSをトンネル研掃装置Mにより研掃することができるので、トンネルの内壁面WSを手作業で研掃する場合よりも研掃時間および費用を大幅に削減することができる。
(第2の実施の形態)
図8は本実施の形態のトンネル研掃装置が取り付けられたトンネル研掃システムを示す概念図である。
本実施の形態においては、高所作業車Vが前記実施の形態とは異なる。それ以外の構成は前記実施の形態と同じである。
本実施の形態の高所作業車Vは、その荷台側に設けられたブームVaと、ブームVaの先端に、起伏および旋回、さらに直線的に伸縮可能な状態で設けられたデッキ部Vbとを備えている。デッキ部Vb上には上記トンネル研掃装置Mが搭載されている。トンネルの内壁面の研掃処理に際しては、ブームVaを動作させてトンネル研掃装置Mを所定の高さ(上記した研掃高さ位置R1~R4(図6参照))に設定する。
本実施の形態の高所作業車Vにおいては、研掃ヘッド17の研掃角度(研掃ヘッド17の研掃面とトンネルの内壁面との平行度を設定するための角度)をブームVaの動作により調整することができる。
また、トンネル研掃装置Mの移動手段11(図4参照)の構成が、ベースプレート10を第1の方向D1に移動させることができるが、第2の方向D2に移動させることができない構成の場合であっても、ブームVaにより研掃ヘッド17を第2の方向D2に移動させることができる。これ以外の効果は前記実施の形態と同じである。
なお、高所作業車Vは、このような伸縮ブーム型ではなく、ブームが途中で屈折する屈折ブーム型でもよく、デッキ部Vbが垂直に昇降するリフタ型(マストブーム式・シザース式)でもよい。
(第3の実施の形態)
図9は本実施の形態のトンネル研掃装置が取り付けられたトンネル研掃システムを示す概念図である。
本実施の形態においては、油圧ショベルSVのアーム部SVaの先端にショベルに代えてアダプタAdを介して上記研掃ヘッド17が着脱自在の状態で取り付けられている。それ以外の構成は前記実施の形態と同じである。なお、図9では、図面を見易くするため図2および図3等で示した第2のリングブラシ17s-2の図示を省略している。
油圧ショベルSVのアーム部SVaの一端にはアダプタAdの一端が締結部材20x-1によって回動可能な状態で接続されている。また、油圧ショベルSVのバケットシリンダSVbのシリンダロッドSVb-1の一端にはアダプタAdの支持部Ad-1が締結部材20x-2によって回動可能な状態で接続されている。
また、アダプタAdの他端には、1枚の凸部(第2の揺動部)Ad-2が形成されている。この凸部Ad-2は、研掃ヘッド17のアーム部17rの2枚の第2の支持板17r-3に挟まれている。そして、2枚の第2の支持板17r-3と、凸部Ad-2とは、それらを貫通するように設けられた締結部材17x-2によって互いに回動可能な状態で接続されている。これにより、研掃ヘッド17は、第1の揺動方向に交差(直交)する第2の揺動方向RR2に揺動自在の状態で油圧ショベルSVのアーム部SVaに取り付けられている。したがって、本実施の形態においても研掃ヘッド17は、上記した第1の揺動方向および第2の揺動方向に揺動可能な状態で油圧ショベルSVのアーム部SVaに機械的に接続されている。
このように本実施の形態においては、油圧ショベルSVの場合、比較的小型で小回りが利くので、例えば、作業領域が狭い場所での研掃作業等においても柔軟に対応することができる。これ以外の効果は前記実施の形態と同じである。
(第4の実施の形態)
図10(a),(b)は本実施の形態のトンネル研掃装置の研掃ヘッドの研掃面内において外周に設けられた遮蔽部材の要部側面図である。
図10(a)に示すように、本実施の形態の研掃ヘッド17においては、第2のリングブラシ17s-2(図5等参照)に代えて、研掃面の外周に壁状の遮蔽部材17s-3が設けられている。この遮蔽部材17s-3は、例えば、ゴムまたはプラスチックで構成されている。ここで、遮蔽部材17s-3を硬質のプラスチックで形成すると、研掃処理時にトンネルの内壁面WSから加わる圧力によって遮蔽部材17s-3の端部にクラック等が生じる場合がある。
そこでその場合には、遮蔽部材17s-3の材料として、例えば、ウレタンやナイロン等のような可撓性を持つプラスチックを用いる。これにより、研掃処理時にトンネルの内壁面WSから遮蔽部材17s-3の端部に加わる圧力を緩和させることができるので、遮蔽部材17s-3にクラック等が生じるのを抑制できる。このため、遮蔽部材17s-3の寿命を延ばすことができる。
また、図10(b)に示すように、遮蔽部材17s-3の材料としてゴムや上記可撓性を持つプラスチックを用いた場合において、トンネルの内壁面WSに対向する遮蔽部材17s-3の端部に複数の溝SLを設けても良い。溝SLは、遮蔽部材17s-3の端部から取付台17a(図2、図3参照)の主面に向かって延び、比較的浅い位置で終端するように形成されており、遮蔽部材17s-3の外周に沿って所定の間隔毎に形成されている。
これにより、研掃処理時にトンネルの内壁面WSから遮蔽部材17s-3の端部に加わる圧力をより一層緩和させることができるので、遮蔽部材17s-3にクラック等が生じるのをより一層抑制できる。このため、遮蔽部材17s-3の寿命をさらに延ばすことができる。なお、この場合、遮蔽機能が落ちる場合があるので、その場合には、遮蔽部材17s-3の内側面、外側面またはその両方において、各々の溝SLを塞ぐような複数のカバー部を片持ちの状態で設けることもできる。これにより、遮蔽部材17s-3の遮蔽機能を確保することができる。
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
たとえば、前記実施の形態では、ターンテーブル14を回転させて研掃ヘッド17の研掃角度を調整していたが、ターンテーブル14に代えて、ベースプレート10自体を水平方向に回転自在として、ベースプレート10を回転させて調整するようにしてもよい。