以下では、本発明の実施の形態に係る水廻り部材及び浴室部材について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
また、本明細書において、平行又は直交などの要素間の関係性を示す用語、及び、正方形又は長方形などの要素の形状を示す用語、並びに、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
(実施の形態1)
[構成]
まず、実施の形態1に係る水廻り部材の構成について、図1~図3を用いて説明する。
図1は、本実施の形態に係る水廻り部材1の一例を示す斜視図である。図2は、本実施の形態に係る水廻り部材の表面に設けられた微細凹凸構造の一部を拡大して示す断面図である。具体的には、図2は、図1に示すII-II線に沿った断面を示している。図3は、図2の領域IIIを拡大して示す断面図である。
図1に示される水廻り部材1は、互いに交差する2つの第1面10aおよび第2面12aを有する。具体的には、水廻り部材1は、第1面10aを有する第1部材10と、第2面12aを有する第2部材12とを備える。水廻り部材1は、例えば、浴室の床及び壁に用いられる内装部材である。なお、水廻り部材1は、浴室の複数の壁、又は、浴室の壁と天井とに用いられる内装部材であってもよい。
第1部材10及び第2部材12はそれぞれ、薄膜又は薄板状のフィルム部材である。第1部材10及び第2部材12は、一体化された一枚のフィルム部材であってもよい。例えば、第1部材10及び第2部材12は、L字状に折り曲げられたフィルム部材であってもよい。折り曲げの角度は、鋭角でもよく、鈍角でもよい。
第1面10aは、第1部材10の厚み方向における最表面(又は最上面)である。第2面12aは、第2部材12の厚み方向における最表面(又は最上面)である。本実施の形態では、第1面10aと第2面12aとは、直交している。つまり、第1面10aと第2面12aとがなす角度(以下、交差角)は、90°である。なお、第1面10aと第2面12aとは、斜めに交差していてもよい。第1面10aと第2面12aとの交差角は、鋭角でもよく、鈍角でもよい。
第1面10aと第2面12aとの交差部11は、例えば直線である。つまり、交差部11は、第1面10aと第2面12aとが交差することで形成される直線状の交差線である。なお、第1面10aと第2面12aとは、交差部11において滑らかに接続されていてもよい。つまり、交差部11は、交差線に沿って延びる円柱側面の一部又は楕円柱側面の一部などであってもよい。
第1部材10及び第2部材12は、互いに同じ構造を有する。例えば、図2に示されるように、第1部材10及び第2部材12はそれぞれ、基材16と、樹脂層18とを備える。
基材16は、樹脂層18を支持する部材である。基材16は、例えば、樹脂フィルム、金属箔又は不織布などである。樹脂フィルムの材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)などを用いることができる。基材16の大きさ及び形状は、特に限定されない。基材16は、使用目的及び使用環境などに応じて適切な大きさ及び形状を有する。
樹脂層18は、基材16上に設けられている。樹脂層18は、例えば、紫外線硬化樹脂などの光硬化性樹脂材料を用いて形成される。紫外線硬化樹脂としては、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂などを用いることができる。樹脂層18の厚さは、例えば、1μm以上50μm以下であるが、これに限定されない。
樹脂層18は、図2に示されるように、マイクロメートルオーダの複数の溝状の凹部20を有する。溝状の凹部20は、樹脂層18の上面に設けられており、水廻り部材1の最表面に設けられている。樹脂層18の上面が第1面10a又は第2面12aである。なお、図1では、凹部20をストライプ状の実線で模式的に表している。後述する図5及び図6においても同様である。
複数の溝状の凹部20を構成する材料、すなわち、樹脂層18の材料の、水に対する接触角θは、90°未満である。すなわち、樹脂層18は、親水性材料を用いて形成されている。水廻り部材1の第1面10a及び第2面12aは、いずれも親水性を有する。
複数の溝状の凹部20は、幅方向に並んで設けられている。すなわち、複数の溝状の凹部20は、平面視形状がストライプ形状である微細凹凸構造を形成している。ストライプ形状は、互いに平行に延びる複数の溝状の凹部20が所定の間隔で幅方向に並んだ形状である。
なお、ストライプ形状は、ラインとスペースとが交互に並んで設けられ、かつ、同一方向に沿って延びたラインアンドスペース形状ともいう。溝状の凹部20がスペースに相当し、隣り合う凹部20間の凸部がラインに相当する。複数の溝状の凹部20は、互いに交差していない。
複数の凹部20の形状は、互いに同じであるが、互いに異なっていてもよい。また、凹部20の並び間隔は等間隔であるが、異なっていてもよい。
図3に示されるように、凹部20の幅方向に平行な断面において、凹部20の形状は、逆台形であるが、これに限らない。例えば、凹部20の断面形状は、V字状、U字状、正方形、長方形、又は、半円形などでもよい。複数の凹部20には、断面形状が異なる複数の凹部が含まれてもよい。
以下では、凹部20の形状の詳細について、図3を用いて説明する。
図3に示されるように、凹部20は、第1側面21aと、第2側面21bと、底面22と、第1端部23aと、第2端部23bとを有する。本実施の形態では、第1側面21a、第2側面21b及び底面22はそれぞれ、平面である。第1側面21a及び第2側面21bは、底面22に対して斜めに傾斜している。底面22に対する第1側面21aの傾斜角は、底面22に対する第2側面21bの傾斜角に等しいが、異なっていてもよい。本実施の形態では、凹部20は、断面視において、線対称な形状を有する。すなわち、凹部20の断面形状は、逆さまの等脚台形である。
なお、凹部20の断面形状が矩形の場合、第1側面21a及び第2側面21bはそれぞれ、底面22に対して垂直である。また、凹部20の断面形状がU字状である場合、底面22は湾曲面である。また、凹部20の断面形状がV字状又は半円形である場合、凹部20は、底面22を有しない。また、凹部20の断面形状が半円形である場合、第1側面21a及び第2側面21bはそれぞれ、湾曲面であり、具体的には、凹部20が延びる方向(図3における紙面の奥行き方向)を軸とする円柱側面の一部である。
第1端部23a及び第2端部23bは、図3に示される断面において、凹部20の開口の端部であり、互いに向かい合う部分である。第1端部23a及び第2端部23bはそれぞれ、滑らかである。
具体的には、第1端部23a及び第2端部23bはそれぞれ、所定の曲率の湾曲面を有する。例えば、図3に示される断面において、第1端部23aは、半径Rの円の一部を描く。第1端部23aは、凹部20が延びる方向を軸とする円柱側面の一部である。第2端部23bも同様である。第1端部23a及び第2端部23bの各々において、角が含まれておらず、すなわち、平面(断面視における直線)が含まれていない。また、第1端部23aは、例えば、第1側面21aに滑らかに接続されている。第2端部23bは、例えば、第2側面21bに滑らかに接続されている。
第1端部23a及び第2端部23bの各々の半径Rは、例えば100nm以上である。これにより、金型を用いたインプリント法により凹部20を成型した場合に、金型に樹脂材料が残留するのを抑制することができる。また、半径Rは、例えば2mm以下である。これにより、例えば水の接触角が10°程度の高い親水性を示す材料を用い、凹部20に汚れが溜まるのを抑制するために凹部20の深さHを100μm以下とした場合であっても、凹部20内での水をスムーズに濡れ広がらせることができる。
図3に示される断面において、第1端部23a上の第1点P1と第2端部23b上の第2点P2との間の凹部20の壁面に沿った長さをA、第1点P1と第2点P2との直線距離をBとする。具体的には、長さAは、長さA1と、長さA2と、長さA3との和で表される。直線距離Bは、凹部20の開口幅に相当する。
長さA1は、第1端部23aにおける第1点P1から第1側面21aに至るまでの湾曲部分の長さと、第1側面21aの直線部分の長さとの和である。長さA2は、第2端部23bにおける第2点P2から第2側面21bに至るまでの湾曲部分の長さと、第2側面2
1bの直線部分の長さとの和である。長さA3は、底面22の幅である。
本実施の形態では、凹部20の深さH、及び、直線距離Bは、マイクロメートルオーダである。すなわち、H及びBはそれぞれ、1μm以上であり、1mmより短い長さである。例えば、深さHは、5μm以上150μm以下であってもよい。また、直線距離Bは、10μm以上300μm以下であってもよい。なお、凹部20の深さHは、第1点P1及び第2点P2を結ぶ直線から底面22までの距離である。
なお、凹部20の幅は、直線距離Bとみなすことができる。あるいは、凹部20の幅は、底面22の幅、すなわち、長さA3とみなしてもよい。あるいは、凹部20の幅は、直線距離Bと長さA3との平均値とみなしてもよい。
図3に示される断面において、第1点P1を通る、第1端部23aに対する接線L2と、水平面L1とがなす角度θは、凹部20を有する部材、すなわち、樹脂層18の水に対する接触角θに等しい。言い換えると、第1端部23a上の任意の点のうち、第1端部23aに対する接線L2と水平面L1とがなす角度θが、樹脂層18の水に対する接触角θに等しくなる点が、第1点P1である。
第2点P2についても同様である。すなわち、第2点P2を通る、第2端部23bに対する接線と、水平面L1とがなす角度も同様に、接触角θに等しい。このように、第1点P1及び第2点P2はそれぞれ、接触角θに基づいて定められる。したがって、第1点P1及び第2点P2に基づいて定められる長さA及び直線距離Bも、接触角θに基づいて定まる。
なお、ここでは、第1端部23a及び第2端部23bが湾曲面を有する例について示したが、これに限らない。第1端部23a及び第2端部23bは、断面視において一点で表されてもよい。つまり、第1端部23a及び第2端部23bはそれぞれ、凹部20の上面24の縁であってもよい。凹部20の上面24の縁に直接、第1側面21aと第2側面21bとがそれぞれ接続されていてもよい。この場合、第1点P1及び第2点P2はそれぞれ、凹部20の上面24の縁、すなわち、断面視において一点で表される第1端部23a及び第2端部23bそのものに相当する。
本実施の形態では、長さA[単位:m]及び直線距離B[単位:m]、並びに、接触角θは、式(1)を満たす。
これは、凹部20が延びる方向に沿って、凹部20が毛細管現象を起こす条件に相当する。
凹部20では、直線距離Bに相当する上面が開放されているので、上面は、完全に撥水性の面とみなすことができる。言い換えると、上面に対する接触角は、180°であるとみなすことができる。
これにより、毛細管現象によって発生する毛細管力(キャピラリ力)Pc[単位:N]は、以下の式(2)で表される。
なお、σは、水の表面張力[単位:N/m]であり、Sは、凹部20の断面積[単位:m2]である。凹部20の断面積は、図3に示される断面において、第1点P1と第2点P2とを結ぶ直線と、凹部20の壁面とで囲まれた範囲の面積に相当する。
毛細管力Pcが0より大きい場合、凹部20は、凹部20の延びる方向に対して毛細管現象が発生する。このように、毛細管現象が発生するためには、式(2)においてPc>0が成り立つので、上述した式(1)の関係が導かれる。
凹部20に毛細管現象が発生することで、凹部20内に入った水は、凹部20の延びる方向に沿って凹部20内を延びるように進む。つまり、水は、毛細管現象によって、水廻り部材1の表面で広範囲に広がりやすくなる。水が広範囲に広がることにより、空気に触れる水の表面積が大きくなって、乾燥に要する時間が短くなる。
本実施の形態では、図1に示されるように、溝状の凹部20は、直線状の交差部11、すなわち、交差線に対して交差する方向に延びている。具体的には、凹部20の延びる方向と交差線とが直交している。図1に示される水廻り部材1では、第1面10aに設けられた凹部20は、交差線に直交している。第2面12aに設けられた凹部20は、交差線に直交している。なお、凹部20の延びる方向と交差線とは、斜めに交差していてもよい。
交差部11は、水が溜まりやすい部分である。図4は、比較例に係る水廻り部材1xに水滴50xを付着させた場合に水滴50xが広がる様子を示す斜視図である。図4に示される水廻り部材1xは、水廻り部材1と比較して、第1面10xa及び第2面12xaの両方に溝状の凹部20が設けられていない点が相違する。つまり、水廻り部材1xは、平坦な第1面10xaを有する第1部材10xと、平坦な第2面12xaを有する第2部材12xとを有する。
図4に示すように、第1面10xaと第2面12xaとの交差部11xに水滴50xを滴下した場合、水滴50xは、交差部11xに沿って延びるように広がる。交差部11xでは、第1面10xaと第2面12xaとの2つの面による表面張力を受けるので、水滴50xが溜まりやすい。つまり、水滴50xは、第1面10xaの面内及び第2面12xaの面内には広がりにくい。
これに対して、本実施の形態に係る水廻り部材1では、図5に示されるように、水滴50は、複数の凹部20の表面張力によって毛細管現象が発生し、第1面10aの面内及び第2面12aの面内の各々に濡れ広がる。なお、図5は、本実施の形態に係る水廻り部材1に水滴50を付着させた場合に水滴50が広がる様子を示す斜視図である。
例えば、凹部20は、5μLの水滴50を交差部11に滴下した場合に、交差部11から20mm以上離れた位置まで濡れ広がる構造を有する。水滴50が濡れ広がることにより、空気と接触する面積が大きくなるので、蒸発が促進される。例えば、比較例に係る水廻り部材1xと比較して、同量の水滴を滴下したときに乾燥に要する時間は、約5分の1に短縮される。このように、本実施の形態に係る水廻り部材1によれば、極めて優れた速乾性を実現することができる。
[効果など]
以上のように、本実施の形態に係る水廻り部材1は、第1面10aと、第1面10aに交差する第2面12aと、第1面10a及び第2面12aの少なくとも一方の表面に幅方向に並んで設けられ、幅及び深さの少なくとも一方がマイクロメートルオーダの複数の溝状の凹部20とを備える。複数の溝状の凹部20は、第1面10aと第2面12aとの交差線に対して交差する方向に延びる。
これにより、水が溜まりやすい交差部11に溜まる水を凹部20の毛細管現象によって面内に広げることができる。水が広がることにより、空気と接触する面積が大きくなって水の蒸発が促進される。これにより、本実施の形態に係る水廻り部材1によれば、極めて優れた速乾性を実現することができる。
また、例えば、複数の溝状の凹部20はそれぞれ、幅が10μm以上300μm以下であり、かつ、深さが5μm以上150μm以下である。
これにより、効果的に毛細管現象を発生させることができる。例えば、凹部20の幅が10μm以上又は深さが5μm以上であることで、凹部20の断面積を確保することができ、凹部20内を水が進行しやすくすることができる。また、例えば、凹部20の幅が300μm以下又は深さが150μm以下であることで、優れた速乾性を実現することができる。
また、例えば、複数の溝状の凹部20は、交差線に5μLの水滴を付着させた場合に、水滴50が複数の溝状の凹部20の少なくとも1つを交差線から20mm以上離れた位置まで濡れ広がる構造を有する。
これにより、乾燥に要する時間を約5分の1程度に短くすることができ、極めて高い速乾性を実現することができる。
また、例えば、第1面10a及び第2面12aはいずれも、親水性を有する。
これにより、水が濡れ広がりやすくなるので、水の蒸発が促進され、高い速乾性を実現することができる。
[変形例]
ここで、本実施の形態の変形例について説明する。
図6は、本変形例に係る水廻り部材2を示す斜視図である。図6に示されるように、水廻り部材2は、図1に示される水廻り部材1と比較して、さらに、第3面14aを有する第3部材14を備える点が相違する。また、第1面10a及び第2面12aの各々に設けられた凹部20の延びる方向が、実施の形態1に係る水廻り部材1とは相違する。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
図6に示されるように、水廻り部材2では、第1面10aと第2面12aと第3面14aとが互いに交差している。第1面10aと第2面12aとの交差角、第2面12aと第3面14aとの交差角、及び、第1面10aと第3面14aとの交差角はいずれも、例えば90°である。なお、3つの交差角は、互いに異なっていてもよく、少なくとも1つが鋭角又は鈍角であってもよい。
第1面10aに設けられた凹部20が延びる方向は、第1面10aと第2面12aとの交差部11と、第1面10aと第3面14aとの交差部13との両方に交差している。第2面12aに設けられた凹部20が延びる方向は、第1面10aと第2面12aとの交差部11と、第2面12aと第3面14aとの交差部15との両方に交差している。第3面14aに設けられた凹部20が延びる方向は、第1面10aと第3面14aとの交差部13と、第2面12aと第3面14aとの交差部15との両方に交差している。つまり、各面に設けられた凹部20は、3つの交差部11、交差部13及び交差部15の交差点17を中心に延びるように設けられている。交差点17は、3つの面が集まる部分であるので、水が最も溜まりやすい部分である。交差点17を中心に凹部20が延びていることにより、交差点17に溜まる水を毛細管現象によって効率良く3つの面に広げることができる。
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2では、実施の形態1に係る水廻り部材1又は2を備える浴室部材を説明する。
図7は、本実施の形態に係る浴室部材60が設けられた浴室70を示す図である。浴室部材60は、浴室70の床71、壁72及び天井73の少なくとも2つに設けられる。例えば、浴室部材60は、水廻り部材1と、目地61とを備える。浴室部材60は、床71に設けられた排水口74に向かって水を速やかに流すことができる。
目地61は、水廻り部材1の第1部材10の表面に設けられた網目状の溝である。目地61は、図8に示されるように、複数の溝62を有する。図8は、本実施の形態に係る浴室部材60の目地61に存在する水80の濡れ広がりを説明するための平面図である。具体的には、図8は、第1部材10の表面の一部を拡大して示している。
複数の溝62は、異なる2つの方向の各々において、互いに平行で、かつ、等間隔に並んでいる。例えば、複数の溝62には、縦方向に延びる複数の縦溝と、横方向に延びる複数の横溝とが含まれる。縦溝と横溝とは、例えば互いに直交している。
縦方向に延びる隣り合う2本の溝62と、横方向に延びる隣り合う2本の溝62とで囲まれた部分が面状部63である。つまり、面状部63は、目地61によって区分された部分である。面状部63は、床71の表面の平坦な面である。なお、面状部63は、完全に平坦な面でなくてもよく、緩やかな曲面状の面であってもよく、緩やかに傾斜(例えば傾斜角が1.2°以下)した面であってもよい。
複数の面状部63が縦方向及び横方向の各々に行列状に並んでいる。複数の面状部63の形状及び大きさは、互いに同じであるが、異なっていてもよい。つまり、複数の溝62の配置間隔、すなわち、目地61のピッチは、均一であってもよく、異なっていてもよい。
凹部20が延びる方向における、面状部63の最大の長さは、例えば、10mm以上100mm以下であるが、これに限らない。本実施の形態では、面状部63の平面視形状が矩形であり、その一辺に対して直交する方向に凹部20が延びているので、面状部63の最大の長さは、面状部63の幅、すなわち、目地61のピッチである。
複数の溝62の各々の幅は、ミリメートルオーダである。例えば、複数の溝62の各々の幅は、1mm以上4mm以下であるが、これに限らない。複数の溝62の各々の幅は、1mmより短くてもよく、4mmより長くてもよい。溝62の断面形状は、逆台形であるが、これに限らない。溝62の断面形状は、V字形状でもよく、U字形状でもよい。なお、溝62の断面形状は、テーパーを有しない長方形又は正方形でもよい。
床71の全体は、排水口74に向かって下方に傾斜していてもよい。床71は、人が上に立つことが前提とされる。このため、人が立ったときの床が斜めになっていることによる違和感を減らすため、傾斜角φは、例えば1.2°以下であり、一例として1.1°である。
本実施の形態では、第1部材10は、基材16及び樹脂層18と、基材16を支持する硬質の板材を備えてもよい。当該板材の上面に目地61が形成されている。基材16及び樹脂層18は、板材の上面を目地61の凹凸に沿って覆っている。これにより、複数の溝状の凹部20が目地61及び面状部63の全体に設けられる。
なお、硬質の板材は、例えば、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂などから形成される。具体的には、板材は、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)、又は、ガラス繊維を含有するSMC(Sheet Molding Compound)材料から形成される。あるいは、板材は、アクリル又はポリエステルなどを主成分として含む人工大理石から形成されてもよい。板材は、例えば、SMC材料を用いたプレス成型により形成される。
図8の(a)は、1つの溝62に水80を流した状態を示している。水80の大部分は、浴室部材60の表面の傾斜に基づいて、溝62を流れ落ち、一部が溝62内に残存する。図8では、残存した水80の範囲に模式的にドットの網掛けを付して示している。
図8の(b)は、毛細管現象によって濡れ広がった水80の範囲に模式的にドットの網掛けを付して示している。ここでは、説明を分かりやすくするため、溝62の両側に均一に水80が濡れ広がった様子を示している。凹部20内を水80が広がった距離を濡れ長さW[単位:m]とする。濡れ長さWは、水80の濡れ広がりの定常状態に基づいて決定される。図8の(a)及び(b)では、水80の濡れ広がり方向を白抜きの矢印で示している。
定常状態では、毛細管力(キャピラリ力)Pcと、凹部20内を水80が速度v[単位:m/s]で移動するときの圧力損失Pd[単位:N]とが釣り合っている。圧力損失Pdは、以下の式(3)で表される。
式(3)において、ηは、水の粘性[単位:Pa・s]である。
さらに、定常状態では、凹部20内に流入する水量と、凹部20内の水80の水面からの乾燥量とが釣り合っている。流入する水量は、凹部20の断面積Sin(=S)と速度vとの積で表される。水面からの乾燥量は、水80の凹部20内の表面積Soutと水の蒸発速度定数e[単位:m/s]との積で表される。したがって、定常状態では、以下の式(4)が成立する。
凹部20内の表面積Soutは、実質的に、凹部20の幅の長さbと濡れ長さWとの積で表される。したがって、式(4)に、Sout=bWを代入して整理することで、速度vは、以下の式(5)で表される。
式(2)、(3)及び(5)と、Pc=Pdが成り立つことから、濡れ長さWは、以下の式(6)で表される。
さらに、本実施の形態では、濡れ長さWが、凹部20が延びる方向における面状部63の最大の長さX[単位:m]の半分以上の長さになるように、長さA及び直線距離Bが定められている。なお、面状部63は、床部材の表面のうち目地61以外の実質的に平坦な部分である。
つまり、長さA及び直線距離Bは、以下の式(7)を満たす。
本実施の形態では、目地61は正方格子状であり、溝62に対して直交する方向に凹部20が延びているので、Xは、面状部63の幅、すなわち、目地61のピッチである。
図8の(b)に示されるように、濡れ長さWが溝62間の距離の最大の長さXの半分以上であるで、濡れ広がった水80が面状部63の半分以上を覆う。図8の(b)では、中央の溝62からの広がりのみを図示しているが、実際の使用状況では、面状部63を挟んだ両側の溝62から面状部63の全体を覆うように水80が濡れ広がる。つまり、面状部63の全体から水80の蒸発が行われるので、速乾性を充分に高めることができる。
以上のように、本実施の形態に係る浴室部材60は、水廻り部材1を備える。
これにより、水が溜まりやすい交差部11に溜まる水を凹部20の毛細管現象によって面内に広げることができる。水が広がることにより、空気と接触する面積が大きくなって水の蒸発が促進される。これにより、本実施の形態に係る浴室部材60によれば、極めて優れた速乾性を実現することができる。
(その他)
以上、本発明に係る水廻り部材及び浴室部材について、上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
例えば、上記の実施の形態では、第1面10a及び第2面12aの両方に複数の凹部20が設けられている例を示したが、これに限らない。第1面10aのみに複数の凹部20が設けられ、第2面12aには複数の凹部20が設けられていなくてもよい。あるいは、第2面12aのみに複数の凹部20が設けられ、第1面10aには複数の凹部20が設けられていてもよい。交差部11に滴下された水滴50は、第1面10a及び第2面12aの少なくとも一方に設けられた複数の凹部20に沿った方向に濡れ広がる。
水廻り部材1又は2は、浴室に限らず、洗面台若しくはキッチンなどの流し台(シンク)の内面、排水口、又は、水気のある部屋若しくは通路の床、壁及び天井などに用いられてもよい。また、水廻り部材1又は2は、建材に限定されない。
水廻り部材1は、例えば、家具又は家電の内壁又は外壁の表面部材として利用されてもよい。例えば、水廻り部材1は、洗濯機の洗濯槽の内部に設けられてもよい。この場合、第1部材10の第1面10aは、洗濯槽の底面であり、第2部材12の第2面12aは、洗濯槽の内側の側面である。また、例えば、水廻り部材1は、食洗機の内部に設けられてもよい。
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。