JP7116961B2 - 植物用抵抗性誘導剤 - Google Patents

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Description

本技術は、PR1遺伝子発現誘導活性剤、植物用抵抗性誘導剤、及び植物病害予防剤に関する。
農作物及び園芸用植物等の農業関連分野において、病原菌による病害を低減し、生育又は収穫を向上させるために、農薬が多用されている。しかし、農薬使用による被爆、環境負荷及び残留の懸念から、農薬の使用量の低減が求められている。
また、近年では、遺伝子組換えによる害虫抵抗性(Bt)と除草剤耐性の品種も普及しつつあるが、このような品種は限定的な品種に限られている。また、遺伝子組換えでない農作物や園芸用植物等が好まれる傾向にある。
このような要請に応える農薬を得るために植物用抵抗性誘導剤の開発が進められている。植物用抵抗性誘導作用は、病原体を死滅させる作用ではなく、植物が本来有する防御機構を活性化させる作用である。この活性化により植物自体が病原体を退けることができる。この植物用抵抗性誘導作用を有する化合物は、殺虫・殺菌活性に頼らないため、耐性菌の出現率が低い、使用量が少量でよい、効果が持続する、防除目的以外の生物に対する影響がない等の利点があると一般的に云われている。また、この植物用抵抗性誘導化合物は、品種改良や遺伝子組換え作物とは異なり、必要なときに必要な場所で必要な植物(例えば、農作物、園芸用植物等)に使用でき、汎用性も高いという利点があると一般的に云われている。
植物用抵抗性誘導化合物として、サリチル酸、プロベナゾール、バリダマイシンA等が知られており、これら化合物は既に実用化され、植物用抵抗性誘導剤として市場で流通されている。この植物用抵抗性誘導剤を使用した植物は、植物の全身獲得抵抗病原体の攻撃を感知すると、植物体中のサリチル酸濃度を高め、次いで転写制御因子であるNPR1を介してPR遺伝子群を発現し、病原体に対する抵抗性が高まると一般的に云われている。すなわち、植物用抵抗性誘導剤が、植物体のPR遺伝子群のスイッチをオンにし、病原体に対する抵抗性を植物体全体に獲得させている。
また、新たな植物用抵抗性誘導剤を探索するために、SARモデルに基づいて、PR-1α遺伝子の発現モニタリング系を利用したスクリーニング方法の開発が進められている。
例えば、特許文献1には、ハロゲン及びオキソ基を有する複素環系化合物等にPR-1α遺伝子の発現増強作用があることを見出したこと、この発現増強作用により広い抗菌スペクトルを有するPRタンパク質の発現が誘導又は促進できること及び植物用抵抗性誘導ができることが開示されている。
特開2013-124241号公報 特開2017-197456号公報
Evaluation of the Use of the Tobacco PR-1α Promoter to Monitor Defense Gene Expression by the Luciferase Bioluminescence Reporter System, Biosci. Biotechnol. Biochem., 75(9), 1796-1800 (2011).
しかしながら、植物用抵抗性誘導剤の研究開発の知見はいまだ十分とは云えない。このため、植物用抵抗性誘導作用を有する成分について種々検討がなされている。このような成分は、植物の抵抗性を高める方向に誘導するための成分であるので、植物の生育阻害等を引き起こすデメリットが少ないと本発明者らは考えた。
そこで、本技術は、植物用抵抗性誘導作用を有する成分を提供することを主な目的とする。
そして、本発明者らは、PR-1α遺伝子発現誘導活性試験を用いて、植物用抵抗性誘導に関与するPR1遺伝子発現誘導活性作用を有する化合物を見出した。
本発明者らは、鋭意検討した結果、緑色の光合成色素を有する単細胞藻類の培養物であり、当該培養物には細胞外多糖体が含まれていること、当該培養物が、PR-1α遺伝子発現誘導活性作用及び植物用抵抗性誘導作用を有することを見出し、本発明を完成させた。本発明は以下のとおりである。
(1) 緑色の光合成色素を有する単細胞藻類の培養物を有効成分とする、PR1遺伝子発現誘導活性剤。
(2) 前記藻類が、Trebouxiophyceae(トレボキシア藻綱)藻類及び/又はChlorophyceae(緑藻綱)藻類である、前記〔1〕記載のPR1遺伝子活性化剤。
(3) 前記藻類が、ジェミネラ、ウロネマ、クロロコッカム及びクロロイディウムから選択される1種又は2種以上である、前記(1)又は(2)記載のPR1遺伝子活性化剤。
(4) 前記培養物中の細胞外多糖体が、ウロン酸を少なくとも含むものである、前記(1)~(3)のいずれか記載のPR1遺伝子活性化剤。
(5) 前記培養物中の細胞外多糖体が、ウロン酸5~40質量%と中性単糖とを少なくとも含み、当該中性単糖がマンノース、ガラクトース及びラムノースから選択される1種又は2種以上のものである、前記(1)~(4)のいずれか記載のPR1遺伝子活性化剤。
(6) 前記藻体が、[1]Chlorophyceae Uronema sp. (NBRC 113204)藻株;[2]Trebouxiophyceae Geminella sp. (NBRC 113205)藻株;[3]Chlorophyceae Chlorococcum sp. (NBRC 113206)藻株;[4]Trebouxiophyceae Chloroidium saccharophilum YAMA (NBRC 113207)藻株;[5]Trebouxiophyceae Chloroidium saccharophilum KAMI (NBRC 113807)藻株から選択される1種又は2種以上のものである、前記(1)~(5)のいずれか記載のPR1遺伝子活性化剤。
(7) 緑色の光合成色素を有する単細胞藻類の培養物を有効成分とする、植物用抵抗性誘導剤。
(8) 緑色の光合成色素を有する単細胞藻類の培養物を有効成分とする、植物病害予防・改善剤。
(9) 緑色の光合成色素を有する単細胞藻類を、好気的条件下で培養をし、細胞外多糖体を含む培養物を得る、植物用抵抗性誘導成分の製造方法。
(10) 植物用抵抗性誘導成分を製造するための、緑色の光合成色素を有する単細胞藻類の使用。
本技術によれば、植物用抵抗性誘導作用を有する成分を提供することができる。なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
各藻類の培養物、ラミナリン(ポジティブコントロール)、コントロール(HO)の活性強度の経時変化を示す。
次に、本技術の好ましい実施形態について説明する。ただし、本技術は以下の好ましい実施形態に限定されず、本技術の範囲内で自由に変更することができるものである。尚、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である。
1.緑色藻類の培養物及びこの製造方法
本技術は、緑色の光合成色素を有する単細胞藻類の培養物を有効成分とする、PR1遺伝子発現誘導活性剤、植物用抵抗性誘導剤、又は植物病害予防剤である。
本技術の培養物は、後述するように、PR1遺伝子発現誘導活性作用、植物用抵抗性誘導作用、又は植物病害予防作用を有するものである。当該培養物には、細胞外産生の多糖体が含まれることが好適である。
本技術の緑色の光合成色素を有する単細胞藻類(以下、「緑色単細胞藻類」ともいう)の培養物は、当該緑色藻類を用いて以下のようにして製造することができるが、この製造方法に限定されることはない。
本明細書における「緑色の光合成色素を有する藻類」は、外観上緑色を有する藻類という広義の意味であり、光合成色素として、クロロフィルa及びbを含むものであるが、これ以外のクロロフィルや色素を有していてもよい。また、当該単細胞藻類は、単細胞の状態に限定されず、培養中に群生体の状態になってもよい。
本技術で使用される緑色単細胞藻類は、特に限定されず、例えば、Chlorophyceae(緑藻綱)藻類及び/又はTrebouxiophyceae(トレボキシア藻綱)藻類等が挙げられる。
また、本技術で使用される緑色単細胞藻類は、特に限定されず、例えば、ユーグレナ、クロレラ、ウロネマ、クロロコッカム、ジェミネラ及びクロロイディウムから選択される1種又は2種以上である。このうち、ジェミネラ、ウロネマ、クロロコッカム及びクロロイディウムから選択される1種又は2種以上のものが好ましい。また、これら各種藻株は、市販の製品に含まれる藻株、微生物保存機関でカルチャー・コレクション(例えば、NBRC(NITE Biological Resource Center) Culture Collection、ATCC(American Type Culture Collection)等)として保存されている藻株、ブダペスト条約に基づく国際寄託機関(例えば、NITE (National Institute of Technology and Evaluation)等)で受託株として保存されている藻株、将来見出される藻株等が挙げられ、本技術の目的とする効果であるPR1遺伝子活性化作用を奏する培養物を産生する藻株を選択することができる。
例えば、NBRC(NITE Biological Resource Center)のカルチャー・コレクションより、以下の~[1]~[5]の藻株を入手でき、これらから1種又は2種以上のものを使用できる。
[1]Chlorophyceae Uronema sp. (NBRC 113204)藻株は、NBRC 113204 Uronema sp.(http://www.nbrc.nite.go.jp/NBRC2/NBRCCatalogueDetailServlet?ID=NBRC&CAT=00113204)/公開2018/03/29;
[2]Trebouxiophyceae Geminella sp. (NBRC 113205)藻株は、NBRC 113205 Geminella sp.(http://www.nbrc.nite.go.jp/NBRC2/NBRCCatalogueDetailServlet?ID=NBRC&CAT=00113205)/公開2018/03/29;
[3]Chlorophyceae Chlorococcum sp. (NBRC 113206)藻株は、NBRC 113206 Chlorococcum sp.(http://www.nbrc.nite.go.jp/NBRC2/NBRCCatalogueDetailServlet?ID=NBRC&CAT=00113206)/公開2018/03/29;
[4]Trebouxiophyceae Chloroidium saccharophilum YAMA (NBRC 113207) (YAMA-Mizu-03-3)藻株は、NBRC 113207 Chloroidium saccharophilum(http://www.nbrc.nite.go.jp/NBRC2/NBRCCatalogueDetailServlet?ID=NBRC&CAT=00113207)/公開2018/03/29;
[5]Trebouxiophyceae Chloroidium saccharophilum KAMI (NBRC 113807)(KAMI-04(3))藻株は、NBRC 113807 Chloroidium saccharophilum(http://www.nbrc.nite.go.jp/NBRC2/NBRCCatalogueDetailServlet?ID=NBRC&CAT=00113807)/公開2019/02/25。
なお、NBRC(NITE Biological Resource Center)のホームページアドレスは、2019年3月に、「http://www.nbrc.nite.go.jp/NBRC2/NBRCCatalogueDetailServlet?ID=NBRC&CAT==00******(*はNBRC No.です)から、「https://www.nite.go.jp/nbrc/catalogue/NBRCCatalogueDetailServlet?ID=NBRC&CAT=00******」に変更される。
前記Chlorophyceae(緑藻綱)藻類として、例えば、Chlorophyceae Uronema(ウロネマ)藻類、Chlorophyceae Chlorococcum(クロロコッカム)藻類等が挙げられる。
前記Trebouxiophyceae(トレボキシア藻綱)藻類として、例えば、Trebouxiophyceae Geminella(ジェミネラ)藻類、Trebouxiophyceae Chloroidium(クロロイディウム)藻類等が挙げられる。
クロロイディウムとして、本技術の効能を良好に発揮し得る観点から、クロロイディウム属(Chloroidium)藻が好ましい。クロロイディウムとして、Trebouxiophyceae Chloroidium saccharophilum (NBRC 113207)等が好ましい。
ユーグレナとして、本技術の効能を良好に発揮し得る観点から、ユーグレナ属(Euglena)藻が好ましい。ユーグレナとして、例えばユーグレナ・グラシリス等が好ましい。
クロレラとして、本技術の効能を良好に発揮し得る観点から、クロレラ属(Chlorella)藻が好ましい。クロレラとして、例えば、クロレラ・ブルガリス等が挙げられ、さらに、Chlorella vulgaris Chikugo株(チクゴ株:クロレラ工業)等が好ましい。
ウロネマとして、本技術の効能を良好に発揮し得る観点から、ウロネマ属(Uronema)藻が好ましい。ウロネマとして、Chlorophyceae Uronema sp.(NBRC 113204)等が好ましい。
クロロコッカムとして、本技術の効能を良好に発揮し得る観点から、クロロコッカム(Chlorococcum)藻が好ましい。クロロコッカムとして、Chlorophyceae Chlorococcum sp.(NBRC 113206)等が好ましい。
ジェミネラとして、本技術の効能を良好に発揮し得る観点から、ジェミネラ属(Geminella)藻が好ましい。ジェミネラとして、Trebouxiophyceae Geminella sp. (NBRC 113205)等が好ましい。
クロロイディウムとして、本技術の効能を良好に発揮し得る観点から、クロロイディウム属(Chloroidium)藻が好ましい。クロロイディウムとして、Trebouxiophyceae Chloroidium saccharophilum YAMA (NBRC 113207)(YAMA-Mizu-03-3)(以下、YAMAともいう)及び/又はTrebouxiophyceae Chloroidium saccharophilum KAMI (NBRC 113807)(KAMI-04-(3))(以下、KAMIともいう)等が好ましく、より好ましくは、生産性の観点から、Trebouxiophyceae Chloroidium saccharophilum KAMI (NBRC 113807)である。
本技術において、上述した藻株と実質的に同質の藻株であればよい。実質的に同質の藻株とは、その18SrRNA遺伝子の塩基配列(例えば、配列番号1~5)が、それぞれ99.5%以上(好適には99.8%以上、さらに好適には100%)一致し、、かつ好ましくは上述した藻株と同一の藻類学的性質(形態観察及び細胞外多糖体産生)を有する。さらに本技術の藻株は、本技術の効果(特にPR1遺伝子活性化作用成分の産生能)が損なわれない限り、上述した藻株又はそれと実質的に同質の藻株から、変異処理、遺伝子組換え、自然変異株の選択等によって育種された藻株であってもよい。
本技術の緑色単細胞藻類を培養して培養物を製造させる際に用いる培地として、一般的な単細胞藻類が培養可能な基礎培地が好適である。
一般的な単細胞藻類が培養可能な基礎培地中には、例えば、無機塩としてKHPO、MgSO等の微量無機成分が挙げられ、窒素源として硫酸アンモニウム、尿素等が含まれている。当該基礎培地中の各成分の含有量は±10%の範囲であることが好ましい。
前記基礎培地として、より具体的には、例えば、後記〔実施例〕に示すような、AF6培地、BG11培地、KO2培地等が挙げられる。このうち、AF6培地を使用する場合、クロレラ、クロロコッカム、ジェミネラ、クロロイディウム、ユーグレナ等が好適である。BG11培地を使用する場合、ウロネマ、クロロイディウム等が好適である。KO2培地の場合、ユーグレナ等が好適である。
本技術の培養物を製造するための培養に際し、好気的な条件下で培養することが、上記多糖体を含む培養物を安定的に生産させることができるので好適である。通気培養することが、多糖体の生産性を向上させる点で、好ましい。通気手段として、例えば、撹拌、振盪、通気及びバブリング等が挙げられる。これらを単独で又は2種以上組み合わせて行うことが可能である。これにより、培養培地中に適度な気体が混合されるようになる。
培養温度は、特に限定されないが、5~40℃の常温程度であればよい。
また、培養培地中のpH(20℃)は、使用する培地組成のpHの±2が好ましく、より好ましくはpH±1である。また、培養培地中のpHは、好ましくは1.5~9.5である。培養培地中のpHは、ウロネマ、クロロコッカム、ジェミネラ、クロロイディウム及びクロレラの場合、より好ましくは6~9である。
培養期間は、特に限定されないが、4日~3週間程度を1サイクルとするのが、多糖体を産出させるのに好適である。より好ましくは、7日~2週間程度であればよい。
培養の照度は、特に限定されないが、多糖体を含む培養物を得やすい観点から、1500~10000luxが好適である。
また、独立栄養培養条件下にて藻体数を多くする場合、太陽光;植物栽培用ランプ、LED等の人工光源等の光を用いることが可能であり、炭酸ガスの補給と撹拌をすることが好ましい。
なお、本技術の緑色単細胞藻類(好適には、クロレラ、クロロコッカム、ジェミネラ、ユーグレナ、ウロネマ、クロロイディウム)を用いて多糖体を含む培養物を産生させる場合、独立栄養培養が可能であり、このことは本技術の利点でもある。
また、本技術は独立栄養培養での培養物の生産方法に限定されず、一般的な単細胞藻類が培養可能な基礎培地に、グルコース等の炭素源を含有させて、多糖体を含む培養物を産生させもよい。また、培地は炭素源、窒素源、リンが含まれていればよく、本技術に用いる培地として下水やメタン発酵槽で生じる消化液(液肥)を用いてもよい。
また、本技術の培養物の生産方法は、バッチ式、連続式の何れでもよいが、連続式が生産性向上のため好ましい。また、開放系培養及び閉鎖系培養の何れでもよく、例えば、培養タンク内の密閉培養及び開放系の露天培養等が挙げられる。培養条件管理の点で、閉鎖系培養が好ましい。
本技術の培養物を前記単細胞緑藻類に産生させた後に、水溶液洗浄、超音波、遠心分離、ろ過等の物理的手段及び化学的手段にて、藻体から多糖体を含む培養物を分離し、多糖体が含まれる上清液を得るのが好適である。
本技術では、藻体外の代謝産物が、本技術の効果に何らか寄与していると推測されるため、当該培養物には、多糖体以外に、種々の藻類の代謝産物(例えば、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、核酸、有機酸、脂質等)が種々含まれていてもよい。
また、本技術の培養物として、藻体外の代謝産物を使用することができるので、培養後の藻体表面から多糖体を分離しながら、連続的に培養物を得ることが可能であり、連続培養できる観点で本技術の藻類は優れているといえる。連続的に培養物を得る方法として、例えば、遠心分離(好適には、5000~9000rpm、5分間程度)及びろ過(例えば、濾過助剤及びろ過フィルター等)を単独で又は組み合わせて用いることができる。
得られた培養物は、希釈液、濃縮液又は乾燥物等の状態に適宜調整してもよい。乾燥手段として凍結乾燥が好ましい。
本技術の培養物には、少なくとも多糖体が含まれることが好適であり、当該多糖体に、糖質以外の物質(例えば、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、核酸、有機酸、脂質等)が本技術の効果を損なわない範囲において結合していてもよく、このような多糖体として、例えば、糖タンパク質、ペプチドグリカン、糖脂質等が挙げられる。
本技術の多糖体の収量は、培養液中に、20mg/L以上得ることができ、より好適には50mg/L以上、さらに好適には100mg/L以上である。本技術は300~500mg/Lまで収量を高めることが可能である。
多糖体の生産性が高い藻類として、クロロコッカム及びクロロイディウムが好適である。また、効能の高い多糖体を生産する藻類として、クロロコッカム及びウロネマが好適である。
本技術において、藻類の培養物中に多糖体が、乾燥物換算で20質量%以上含まれることが好ましく、中性単糖が20質量%以上含まれることがより好ましい。
また、藻類の培養物中の多糖体は、ウロン酸が好適には5質量%以上、より好適には10質量%以上含まれることが好ましく、その上限値として好適には40質量%以下、より好適には35質量%以下、さらに好適には30質量%以下、よりさらに好適には25質量%以下含まれることが好ましく、当該数値範囲として5~30質量%含まれることがより好ましい。当該多糖体は、細胞外多糖体が、回収容易等の高い生産効率及び高い収量が望めるので、より好ましい。
本技術の緑色単細胞藻類(好適には、Chlorophyceae藻類及び/又はTrebouxiophyceae藻類)が産生する多糖体は、特に限定されないが、本技術の多糖体の構成単糖として少なくともウロン酸を含むことが望ましく、当該ウロン酸はグルクロン酸が好ましいがこれに限定されない。これにより、後述するPR1遺伝子活性化等の本技術の効能を期待できる。
また、本技術の多糖体に含まれる中性単糖として六単糖(好適にはアルドヘキソース)を含むことが好適である。当該中性単糖として、より具体的には、マンノース、ガラクトース及びラムノースのいずれか1又は2以上を少なくとも主な構成単糖とすることが、本技術の効能の観点から、望ましい。さらに、当該中性単糖のうち、少なくともマンノース又はラムノースを含むことが、本技術の効能の観点から望ましい。
本技術の培養物中の細胞外多糖体は、ウロン酸を少なくとも含むことが好適であり、さらに、ウロン酸及び中性単糖を本技術の多糖体の構成単糖として本技術の多糖体に含まれることがより望ましい。これにより、後述するPR1遺伝子活性化等の本技術の効能を期待できる。このときの中性単糖は、マンノース、ガラクトース及びラムノースから選択される1種又は2種以上のものがよりさらに好適である。
さらに、上述した、ウロネマ、クロロコッカム、ジェミネラ及びクロロイディウムから選択される1種又は2種以上である藻類が生産する培養物に含まれる多糖体が、本技術の良好な効能を奏する観点から、好ましい。
前記ウロネマの産生する多糖体の収量として、培養液中に、20mg/L以上が好ましい。
ウロネマ産生物中の細胞外多糖体(以下、「ウロネマ多糖体」ともいう)は、ウロン酸が含まれることが好適であり、その下限値として好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、また、その上限値として好ましくは35質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、当該数値範囲として、より好ましくは10~30質量%である。当該ウロネマ多糖体に、グルクロン酸が含まれることがより好適であり、下限値として好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また、上限値として好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下であり、当該数値範囲として、より好ましくは5~15質量%、さらに好ましくは10~15質量%含まれることが好適である。
ウロネマ産生物中の多糖体は、中性単糖として好適には20質量%以上含まれ、その他成分として好適には70質量%以下が含まれるものである。
さらに好ましくは、ウロネマの培養物中に、マンノース0~4質量%、アラビノース0~1.5質量%、ガラクトース0~1.5質量%、キシロース0~2質量%、グルコース0~6質量%、ラムノース5~20質量%(より好適には5~15質量%)、リボース0~1質量%、フコース0~1質量%であり、またウロン酸が15~30質量%である。これらからいずれか又は複数を組み合わせでもよい。
ウロネマ産生物中の細胞外多糖体は、中性糖のうちで、マンノース及び/又はラムノースを少なくとも含むことが好適であり、さらにラムノースを主な成分とすることが好ましい。
ウロネマ多糖体中の中性糖の主な構成単糖比は、マンノース(Man):ラムノース(Rha):グルコース(Glc)=1~10:5~20:1~10が好ましく、Man:Rha:Glc=0~1:1~3:0~1がより好ましい。また、ウロネマ多糖体中の中性糖の主な構成単糖比は、Man:Rha=1~1/3:1がより好ましい。
また、ウロネマ多糖体中の主な構成単糖比は、ラムノース(Rha):ウロン酸(UA)=1~4:1~6が好ましく、Rha:UA=1~2:1~3がより好ましい。
前記クロロコッカムの産生する多糖体の収量として、培養液中に、50mg/L以上が好ましい。
クロロコッカム産生物中の細胞外多糖体(以下、「クロロコッカム多糖体」ともいう)は、ウロン酸が含まれることが好適であり、その下限値として好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また、その上限値として好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下であり、当該数値範囲として、より好ましくは10~20質量%である。当該クロロコッカム多糖体に、グルクロン酸が含まれることがより好適であり、下限値として好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また、上限値として好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下であり、当該数値範囲として、より好ましくは10~20質量%含まれることが好適である。
クロロコッカム産生物中の多糖体は、中性単糖として好適には60質量%(より好適には70質量%)以上含まれ、その他成分として好適には30質量%以下が含まれるものである。
さらに好ましくは、クロロコッカムの培養物中に、マンノース10~30質量%(より好適には14~25質量%)、アラビノース10~30質量%(より好適には20~30質量%)、ガラクトース10~30質量%(より好適には17~30質量%)、キシロース0~5質量%、グルコース0~1質量%、ラムノース0~2質量%、リボース0~1質量%、フコース0~1質量%であり、またウロン酸は、10~20質量%である。これらからいずれか又は複数を組み合わせでもよい。
クロロコッカム産生物中の細胞外多糖体は、中性糖のうちで、マンノース、アラビノース、及びガラクトースを含むことが好適であり、さらにマンノース、アラビノース、及びガラクトースを主な成分とすることが好ましい。
クロロコッカム多糖体中の中性糖の主な構成単糖比は、マンノース(Man):アラビノース(Ara):ガラクトース(Gal)=1~3:1~3:1~3が好ましく、Man:Ara:Gal=1~2:1~2:1~2がより好ましい。また、クロロコッカム多糖体中の中性糖の主な構成単糖比は、Man:Ara:Gal=1:1~2:1~2がより好ましい。
また、クロロコッカム多糖体中の主な構成単糖比は、マンノース(Man):アラビノース(Ara):ガラクトース(Gal):ウロン酸(UA)=1~3:1~3:1~3:1~3が好ましく、Man:Ara:Gal:UA=1~2:1~2:1~2:1~2がより好ましい。
前記ジェミネラの産生する多糖体の収量として、培養液中に、20mg/L以上が好ましい。
ジェミネラ産生物中の細胞外多糖体(以下、「ジェミネラ多糖体」ともいう)は、ウロン酸が含まれることが好適であり、その下限値として好ましくは5質量%以上であり、その上限値として好ましくは20質量%以下であり、当該数値範囲として、より好ましくは5~15質量%である。当該ジェミネラ多糖体に、グルクロン酸が含まれることがより好適であり、下限値として好ましくは5質量%以上であり、また、上限値として好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下であり、当該数値範囲として、より好ましくは5~15質量%含まれることが好適である。
ジェミネラ産生物中の多糖体は、中性単糖として好適には35質量%(より好適には40質量%)以上含まれ、その他成分として好適には60質量%以下が含まれるものである。
さらに好ましくは、ジェミネラの培養物中に、マンノース0~30質量%(好適には9~25質量%)、アラビノース0~8質量%、ガラクトース3~20質量%、キシロース0~3量%、グルコース0~1質量%、ラムノース2~20質量%、リボース0~1質量%、フコース0~4質量%であり、また、ウロン酸は5~15質量%である。これらからいずれか又は複数を組み合わせでもよい。
ジェミネラ産生物中の細胞外多糖体は、中性糖のうちでマンノース、ガラクトース及びラムノースを主な成分とすることが好ましい。
ジェミネラ多糖体中の中性糖の主な構成単糖比は、マンノース(Man):アラビノース(Ara):ガラクトース(Gal):ラムノース(Rha)=1~6:0~1:1~3:1~3が好ましく、Man:Gal:Rha=1~6:1~2:1~2がより好ましい。また、ジェミネラ多糖体中の中性糖の主な構成単糖比は、Man:Gal:Rha=1:0~2/5:0~3/10が好ましく、実質的にManからなることがより好ましい。
ジェミネラ多糖体中の主な構成単糖比は、マンノース(Man):ガラクトース(Gal):ラムノース(Rha):ウロン酸(UA)=1~6:0~1:1~3:1~3:1~4が好ましく、Man:UA=1~2:1~2がより好ましい。
前記クロロイディウムの産生する多糖体の収量として、培養液中に、250mg/L以上が好ましい。
クロロイディウム産生物中の細胞外多糖体(以下、「クロロイディウム多糖体」ともいう)は、ウロン酸が含まれることが好適であり、その下限値として好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また、その上限値として、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下であり、当該数値範囲として、より好ましくは10~25質量%である。当該クロロイディウム多糖体にグルクロン酸が含まれることがより好適であり、下限値として好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また上限値として好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下であり、当該数値範囲として、より好ましくは5~15質量%、さらに好ましくは10~15質量%含まれることが好適である。
クロロイディウム産生多糖体は、中性単糖として好適には30質量%(より好適には34質量%)以上含まれ、その他成分として好適には70質量%以下が含まれるものである。
さらに好ましくは、クロロイディウムの培養物中に、マンノース3~18質量%、アラビノース3~12質量%、ガラクトース0~20質量%(より好適には5~15質量%)、キシロース0~9質量%、グルコース0~5質量%、ラムノース0~5質量%、リボース0~1質量%、フコース0~1質量%であり、ウロン酸10~30質量%(より好適には15~25質量%)である。これらからいずれか又は複数を組み合わせでもよい。
クロロイディウム産生物中の細胞外多糖体は、中性糖のうちでマンノース、アラビノース、ガラクトース、グルコース及びキシロースを主な成分とすることが好ましい。
クロロイディウム多糖体の中性糖の主な構成単糖比は、マンノース(Man):アラビノース(Ara):ガラクトース(Gal):グルコース(Glc):キシロース(Xyl)=1~2:1~2:1~3:0~1:0~1が好ましい。
クロロイディウム多糖体の主な構成単糖比は、マンノース(Man):アラビノース(Ara):ガラクトース(Gal):キシロース(Xyl):グルコース(Glc):ウロン酸(UA)=1~2:0~2:1~3:0~1:0~1:1~4が好ましい。さらに、クロロイディウム多糖体の主な構成単糖比は、Man:Ara:Gal:Xyl:UA=1~2:0~1:1~2:0~1:1~3がより好ましい。
クロロイディウムKAMI藻体の多糖体(以下、「クロロイディウムKAMI多糖体」ともいう)の中性糖の主な構成単糖比は、Man:Ara:Gal:Xyl:Rha=1~2:1~2:1~2:1~2:0~1が、さらにより好ましい。
また、クロロイディウムKAMI多糖体中のウロン酸は好ましくは5~30質量%、10~30質量%であることがより好ましく、また、グルクロン酸は5~15質量%であることがより好ましい。
また、クロロイディウムKAMI多糖体の主な構成単糖比は、Man:Ara:Gal:Xyl:Rha:UA=1~4:1~2:1~2:1~2:0~1:1~5がより好ましい。
クロロイディウムYAMA藻体の多糖体(以下、「クロロイディウムYAMA多糖体」ともいう)の中性糖の主な構成単糖比は、Man:Gal:Glc=1~2:1~2:1が、さらにより好ましい。
また、クロロイディウムYAMA多糖体の多糖体中のウロン酸は10~20質量%であることが好ましい。
また、クロロイディウムYAMA多糖体の主な構成単糖比は、Man:Gal:Glc:UA=1~2:1~2:0~1:1~3がより好ましく、Man:Gal:UA=1~2:1~2:1~3がより好ましい。
本技術の培養物は、適宜公知の分離・精製技術、例えば液々分液、固液分液、濾過膜、活性炭、吸着樹脂、イオン交換樹脂等の方法によって不活性な不純物を除去し、更に精製してもよい。
本技術の培養物から多糖体をさらに回収してもよい。多糖体を回収する方法として、公知の多糖体の分離方法を用いればよい。水溶性多糖体を得る場合には、例えば、培養物を水溶液に溶解後、不溶性画分を除去し、水溶性画分を回収することが好適である。水に溶解の際に混合することが好ましい。処理する際の水温は、5~40℃であるのが好ましい。溶解後、低温(例えば1~10℃)に放置(例えば5~15時間)することが好ましい。不溶性画分の除去は、遠心分離及び限界ろ過膜等の物理的手段にて行うことが好ましい。これにより、より水溶性の高く、純度の高い多糖体を得ることができるので、種々の用途にも利用可能である。
2.本技術の培養物の用途
本技術の培養物は、後記〔実施例〕に示すように、PR1遺伝子発現誘導活性作用を有するので、PRタンパク質(pathogenesis-related proteins)等の発現を誘導又は促進することができる。ここで、PRタンパク質は、それ自体が抗菌活性を有するタンパク質、及び他の抗菌性物質を生成し得るタンパク質の総称である。一般に、植物が生成するPRタンパク質は非常に広い抗菌スペクトラムを有するので、本技術の培養物は、病原性の微生物(例えば、糸状菌(例えば、Colletotrichum属等)、細菌(例えば、Pseudomonas属等)、ウイルス)等に対しても有効であると考えられる。
本技術の培養物は、ストレス耐性遺伝子の1種であるPR-1a遺伝子を人為的にONにすることで植物用抵抗性誘導を起こす。これにより、本技術の培養物は、植物が本来持っているストレス耐性を引き出すことができる。当該ストレスの原因として、病気(炎症、感染等)、環境(寒暖、干ばつ、光、栄養成分、塩濃度、薬物等)等が挙げられる。当該ストレス耐性として、より具体的には、例えば、(1)過敏感細胞死の促進、抗菌物質生成の促進、細胞壁の効果の向上といった病気に対する耐性、(2)気孔開閉の制御、根伸長の促進等といった環境に対する耐久性等が挙げられる。
PR-1a遺伝子プロモーター発現誘導において、サリチル酸等の二次刺激を加えた場合に迅速で強い誘導活性が見られることがある。これは、PR-1α遺伝子発現を誘導するサリチル酸(SA)シグナル伝達経路等が二次刺激により誘導されることに起因するものとされている。本技術の培養物は、二次刺激がなくとも発現していることから、あらかじめ防御応答遺伝子を強く発現誘導し、植物の抵抗性を高めておくことができると考える。このようにして植物の抵抗性を高めることができるので、本技術の培養物は病原体感染又は発症を防ぐといった病気又はその発症の予防にも使用できると考えられる。
また、本技術の培養物はPR-1a遺伝子発現誘導作用を有することから、用法用量(例えば、添加時期や添加濃度等)を適宜調整することによって、本技術は植物が感染を受けた場合でも迅速に応答できる準備状態を作り出すことも可能であり、また病気又は発症後の治療にも使用できると考える。
従って、本技術の培養物は、上述のようにPR1遺伝子発現誘導活性作用を有するので、植物用抵抗性誘導作用及び植物病害予防作用を発揮することができる。
そして、本技術の培養物は、当該培養物を含有するPR1遺伝子発現誘導活性剤、植物用抵抗性誘導剤又は植物病害予防剤等の有効成分として使用することができる。また、本技術の培養物は、上述したこれら作用を発揮させる目的で使用することができる。また、本技術の培養物は、これら製剤又は組成物に用いるための成分として使用することができ、またこれら製剤又は組成物を製造するために使用することができる。
さらに、本技術の培養物は、目的に応じて任意成分を併用することも可能であり、この任意成分として、本技術の効能を増強させる成分が好ましい。
本技術の増強成分として、例えば、海藻由来抽出物、微生物由来抽出物等が挙げられ、抽出物として多糖体を含むものが好適である。これらを得る際の培養方法や採取方法、抽出方法等は、特に限定されず、公知の方法を適宜用いることができる。
海藻として、褐藻類(例えば、ウミトラノオ、コンブ、ヒジキ、ヒバマタ、ホンダワラ、モズク、ラッパモク、ワカメ等)、紅藻類(例えば、アサクサノリ、テングサ等)、緑藻類(例えば、アオサ、アオノリ、カサノリ、サボテングサ、フサイワヅタ、ミル等)が挙げられる。
微生物として、例えば、キノコ等の菌、細菌、麹等のカビ等が挙げられる。
これらから1種又は2種以上を選択して使用してもよい。
このうち、コンブ由来の抽出物が好適であり、このなかでさらにラミナリンが、遅効性のPR1遺伝子発現誘導活性作用を有するので、好適である。後記実施例に示すように、ラミナリンは遅効作用があるため、本技術の緑色単細胞藻類培養物と併用することで、効能の発現時期や持続性等を調整することができ、本技術の効能をより良好なものにすることができる。
なお、ラミナリンは、コンブ等の褐藻類に含まれており、β1-3結合とβ1-6結合のグルコース主鎖からなる直鎖の多糖であり、通常β1-3結合とβ1-6結合の比は約3:1である。また、ラミナリンは、ラミナン、β-グルカン、β1,3-グルカンとも呼ばれており、当該ラミナリンは市販品を用いてもよい。
また、ジェミネラ抽出物、ウロネマ抽出物、クロロコッカム抽出物及びクロロイディウム抽出物から選択される1種又は2種以上のものを、ラミナリンと比較して速効性を有する観点から、これらに、ラミナリンを含む褐藻類抽出物又はラミナリンを配合することが好適である。
本技術の培養物が対象とする病害の種類及び病原菌の種類は、特に制限されない。後述する実施例ではアブラナ科植物であるシロイヌナズナにおいて、植物の抵抗性獲得の指標となるPR-1α遺伝子の発現が向上していた。よって、本技術にかかる植物病害の予防又は改善方法は、病原性糸状菌の感染による病害を予防又は改善する目的で行われることが好ましい。
前記病原性の糸状菌としては、例えば、青かび病、赤枯病、溝腐病、糸状菌性やさび病菌による赤衣病、赤星病、灰色かび病、赤焼病、イエローパッチ、萎黄病、萎凋病、うどんこ病、紫かび病、輪紋病、灰斑病、角斑病、糸状菌性による褐色腐敗病、褐色円斑病、褐色円星病、褐点病、褐斑病、せん孔褐斑病、褐変病、褐紋病、株腐病などを引き起こす糸状菌が好ましく、Colletotrichum属の糸状菌がより好ましく、Colletotrichum higginsianum(以下、C. higginsianumという。)がさらに好ましい。細菌病としては黒腐病、軟腐病、斑点細菌病などを引き起こす細菌が好ましい。
本技術の使用対象となる植物の種類は、特に制限されず、陸上植物であっても水生植物であってもよい。陸上植物としては、被子植物、裸子植物が好適であり、キク科、ラン科、ユリ科、マメ科、イネ科、アカネ科、トウダイグサ科、カヤツリグサ科、セリ科、シソ科、ウリ科、ナス科、及びアブラナ科がより好適であり、ナス科及びアブラナ科が更に好適である。このうち、上述したSARモデル(例えば、非特許文献1参照)により抵抗性を獲得できる植物が好適である。
前記ユリ科(広義)の植物としては、タマネギ(ネギ属)が例示できる。前記マメ科の植物としては、大豆が例示できる。
前記セリ科の植物としては、ニンジンが例示できる。前記イネ科の植物としては、例えば、イネ、トウモロコシ、ムギ等が挙げられる。
前記ウリ科の植物としては、例えばメロン、スイカ、冬瓜、キュウリ、カボチャなどが挙げられる。前記ナス科の植物としては、例えばタバコ、トマト、ジャガイモ、ナス、ピーマンなどが挙げられる。
前記アブラナ科の植物としては、例えばナズナ、アブラナ、キャベツ、ケール、ハクサイ、カブ、ダイコン、ワサビ、カラシなどが挙げられる。
このうち、後記〔実施例〕に示すように、アブラナ科植物であるシロイヌナズナにおいて、病害に対する抵抗性の指標となるPR-1α遺伝子の発現が向上していたので、アブラナ科植物に対して使用されることが好ましいと考える。
本技術における植物又は当該植物の病害及びこの原因となる病原菌に対する使用方法は、特に制限されない。
本技術は、植物に対して使用する部位は特に限定されず、例えば、地上部(葉や幹等)及び地下部(根、根茎等)に対して、使用することができる。。
本技術において、培養物中に多糖体を含むために堆肥利用及び効果維持の観点から、地下部への使用が好ましい。また、本技術において、使用量のコスト面の観点から地上部への使用が好ましい。
本技術の使用は、一般的な農薬使用で行えばよく、例えば、散布、注入、塗布又は埋設等が挙げられる。また、前記製剤又は組成物は、植物のための農薬用であってもよく、或いは農薬や堆肥等農業資材に配合して使用される素材又は製剤であってもよい。
本技術の使用方法として、例えば、対象となる植物に曝露させる方法等が挙げられる。当該方法によって、対象となる植物に対して、病害に対する抵抗性を誘導することができる。
本技術において対象となる植物に暴露する具体的な操作や手段は特に制限されない。例えば、有効成分となりうる濃度で溶解させた薬液を調製し、該薬液を霧吹き等で植物体に噴霧したり、該薬液を浸みこませたガーゼを植物体に密着させたり、該薬液を注射器によって植物体の茎に注入したり、点滴器具を用いて該薬液を植物体の根に点滴したりする操作が例示できる。
なお、本技術を使用する際の製剤又は組成物の調製(調剤)は、従来の植物抵抗性誘導剤等と同様に公知の方法で行うことができる。
当該調製に用いる溶媒は、本技術の培養物を有効成分となりうる濃度で溶解できるものであれば特に制限されず、公知の溶媒を用いることができる。前記溶媒は植物に対して害が無い又は害が少ないものが好ましい。本技術の培養物は水に懸濁又は溶解できると共に、水は容易に取得できかつ安全性も高いので、水を使用することがより好ましい。
本技術を有効成分となりうる濃度範囲として、特に限定されない。また、本技術の使用期間は、特に限定されない。本技術の培養物は、多糖体の炭水化物が主体であるので、大量に使用しても植物自身、環境、散布者及び動物に対しても影響が少なくまた自然に分解されて肥料として再利用される。
本技術の使用期間は、長期間継続的に使用することができ、また使用後効能発揮のピークが5~8日程度であることから、好ましくは3日以上、より好ましくは5日以上継続的に使用することが望ましい。
本技術の濃度範囲は、例えば後述の実施例で説明する植物用抵抗性誘導方法により検討して決定することができる。当該濃度の下限値として、効能発揮の観点から、好ましくは0.01mg/L以上、より好ましくは0.1mg/L以上、さらに好ましくは1mg/L以上である。また、当該濃度の上限値として、コストの観点から、好ましくは10g/L以下、より好ましくは5g/L以下、さらに好ましくは1g/L以下である。当該濃度範囲として、より好ましくは0.02mg/L~10g/L、さらに好ましくは0.2mg/L~5g/Lである。
本技術は、以下の構成を採用することができる。
〔1〕
緑色の光合成色素を有する単細胞藻類の培養物を有効成分とする、PR1遺伝子発現誘導活性剤、植物用抵抗性誘導剤、又は植物病害予防・改善剤。
〔2〕
PR1遺伝子発現誘導活性のための、植物用抵抗性誘導のための、又は植物病害予防・改善のための、緑色の光合成色素を有する単細胞藻類の培養物又はその使用。
〔3〕
緑色の光合成色素を有する単細胞藻類の培養物を有効成分とする、PR1遺伝子発現誘導活性方法、植物用抵抗性誘導方法、又は植物病害予防・改善方法。
〔4〕
PR1遺伝子発現誘導活性剤、植物用抵抗性誘導剤、又は植物病害予防・改善剤を製造するための、緑色の光合成色素を有する単細胞藻類の培養物の使用。
〔5〕 前記〔1〕~〔4〕のいずれか1つにおいて、好適には、緑色の光合成色素を有する単細胞藻類の培養物と、海藻類抽出物又はラミナリンとを、併用することである。
〔6〕 前記〔1〕~〔5〕のいずれか1つにおいて、好適には、前記培養物中の藻類多糖体が、ウロン酸を少なくとも含むものである。より好適には、当該培養物中の多糖体が、少なくともウロン酸を5~40質量%含むものである。
〔7〕 前記〔1〕~〔6〕のいずれか1つにおいて、好適には、前記培養物中の藻類多糖体が、ウロン酸と中性糖とを少なくとも含むことである。さらに好適には、当該中性糖が、マンノース、ガラクトース及びラムノースから選択される1種又は2種以上のものである。
〔8〕 前記〔1〕~〔7〕のいずれか1つにおいて、好適には、前記藻体が、Trebouxiophyceae(トレボキシア藻綱)藻類及び/又はChlorophyceae(緑藻綱)藻類である。
〔9〕 前記〔1〕~〔8〕のいずれか1つにおいて、好適には、前記藻類が、ユーグレナ、ウロネマ、クロロコッカム、ジェミネラ、クロロイディウム及びクロレラから選択される1種又は2種以上である。より好適には、ジェミネラ、ウロネマ、クロロコッカム及びクロロイディウムから選択される1種又は2種以上である。
また、ジェミネラ抽出物、ウロネマ抽出物、クロロコッカム抽出物及びクロロイディウム抽出物から選択される1種又は2種以上のものを、ラミナリンと比較して速効性を有する観点から、速効用として用いることが好適である。
〔10〕 前記〔1〕~〔9〕のいずれか1つにおいて、好適には、以下の(a)~(d)から選択される1種又は2種以上である。
(a)ウロネマが、Chlorophyceae Uronema sp. (NBRC 113204)である。
(b)クロロコッカムが、Chlorophyceae Chlorococcum sp. (NBRC 113206)である。
(c)ジェミネラが、Trebouxiophyceae Geminella sp. (NBRC 113205)である。
(d)クロロイディウムが、Trebouxiophyceae Chloroidium saccharophilum YAMA(NBRC 113207)及び/又はTrebouxiophyceae Chloroidium saccharophilum KAMI (NBRC 113807)である。
〔11〕 前記〔1〕~〔10〕のいずれか1つにおいて、好適には、前記藻体が、[1]Chlorophyceae Uronema sp. (NBRC 113204)藻株;[2]Trebouxiophyceae Geminella sp. (NBRC 113205)藻株;[3]Chlorophyceae Chlorococcum sp. (NBRC 113206)藻株;[4]Trebouxiophyceae Chloroidium saccharophilum YAMA (NBRC 113207)藻株;[5]Trebouxiophyceae Chloroidium saccharophilum KAMI (NBRC 113807)藻株から選択される1種又は2種以上のものである。
〔12〕
緑色の光合成色素を有する単細胞藻類を、好気的条件下で培養をし、細胞外多糖体を含む培養物を得る、植物用抵抗性誘導成分、PR1遺伝子発現誘導活性成分、又は植物病害予防・改善成分の製造方法。好適には、独立栄養培養培地である。
〔13〕
植物用抵抗性誘導成分、PR1遺伝子発現誘導活性成分、又は植物病害予防・改善成分を製造するための、緑色の光合成色素を有する単細胞藻類又はその使用。
〔14〕 前記〔12〕又は〔13〕において、好適には、前記藻体が、Chlorophyceae(緑藻綱)藻類及び/又はTrebouxiophyceae(トレボキシア藻綱)藻類である。
〔15〕 前記〔12〕~〔14〕のいずれか1つにおいて、好適には、前記藻類が、ユーグレナ、ウロネマ、クロロコッカム、ジェミネラ、クロロイディウム及びクロレラから選択される1種又は2種以上である。より好適には、ウロネマ、クロロコッカム、ジェミネラ及びクロロイディウムから選択される1種又は2種以上である。
〔16〕 前記〔12〕~〔15〕のいずれか1つにおいて、好適には、以下の(a)~(d)から選択される1種又は2種以上である。
(a)ウロネマが、Chlorophyceae Uronema sp. (NBRC 113204)である。
(b)クロロコッカムが、Chlorophyceae Chlorococcum sp. (NBRC 113206)である。
(c)ジェミネラが、Trebouxiophyceae Geminella sp. (NBRC 113205)である。
(d)クロロイディウムが、Trebouxiophyceae Chloroidium saccharophilum YAMA(NBRC 113207)及び/又はTrebouxiophyceae Chloroidium saccharophilum KAMI (NBRC 113807)である。
〔17〕 前記〔12〕~〔15〕のいずれか1つにおいて、好適には、前記藻体が、(1)Chlorophyceae Uronema sp. (NBRC 113204)藻株;(2)Trebouxiophyceae Geminella sp. (NBRC 113205)藻株;(3)Chlorophyceae Chlorococcum sp. (NBRC 113206)藻株;(4)Trebouxiophyceae Chloroidium saccharophilum YAMA (NBRC 113207)藻株;(5)Trebouxiophyceae Chloroidium saccharophilum KAMI (NBRC 113807)藻株から選択される1種又は2種以上のものである。
〔18〕 前記〔12〕~〔17〕のいずれか1つにおいて、好適には、前記培養の温度が、5~40℃である。
〔19〕 前記〔12〕~〔18〕のいずれか1つにおいて、好適には、前記培養のpHが、1.5~10である。
〔20〕 前記〔12〕~〔19〕のいずれか1つにおいて、好適には、前記培養後、遠心分離及びろ過を単独で又は2種組み合わせて藻体を除去することである。
〔21〕 前記〔12〕~〔20〕のいずれか1つにおいて、好適には、前記藻体を除去した後に凍結乾燥し、さらに水溶液に溶解後、水溶性画分を回収することである。
〔22〕 前記〔12〕~〔21〕のいずれか1つにおいて、好適には、藻類培養物(好適には多糖体)の製造方法又は藻類の使用にて得られた藻類培養物(好適には多糖体)。
以下に実施例等を用いて本技術をさらに詳しく説明するが、本技術はこれら実施例に限定されるものではない。
<使用藻株>
使用するウロネマ藻株、クロロコッカム藻株、ジェミネラ藻株、クロロイディウムYAMA藻株、クロロイディウムKAMI藻株の各藻株は、NBRC Culture Collectionから入手した(表1参照)。また、それぞれの18srRNAについて、表2~5(配列番号1~4)及び表12(配列番号5)に開示する。
1)Chlorophyceae Uronema sp. (NBRC 113204):(公開日2018年3月29日/ウェブサイトURL:http://www.nbrc.nite.go.jp/NBRC2/NBRCCatalogueDetailServlet?ID=NBRC&CAT=00113204、ウェブサイト印刷日2018年3月29日)
2)Chlorophyceae Chlorococcum sp. (NBRC 113206):(公開日2018年3月29日/ウェブサイトURL:http://www.nbrc.nite.go.jp/NBRC2/NBRCCatalogueDetailServlet?ID=NBRC&CAT=00113206、ウェブサイト印刷日2018年3月29日)
3)Trebouxiophyceae Geminella sp. (NBRC 113205):(公開日2018年3月29日/ウェブサイトURL:http://www.nbrc.nite.go.jp/NBRC2/NBRCCatalogueDetailServlet?ID=NBRC&CAT=00113205、ウェブサイト印刷日2018年3月29日)
4)Trebouxiophyceae Chloroidium saccharophilum YAMA (NBRC 113207):(公開日2018年3月29日/ウェブサイトURL:http://www.nbrc.nite.go.jp/NBRC2/NBRCCatalogueDetailServlet?ID=NBRC&CAT=00113207、ウェブサイト印刷日2018年3月29日)
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Figure 0007116961000003
Figure 0007116961000004
Figure 0007116961000005
<製造例1~4:藻類由来の培養物(多糖体を含む培養物)の製造方法及び当該培養物の分析>
<藻類由来の培養物(多糖体を含む培養物)の製造方法>
<製造例1>
表1及び6に示す「ウロネマ藻株」を含むスラント状培地(50mL)を、表7又は8に示す基礎培地100mL(300mL容三角フラスコ)に添加し、独立栄養培養条件下で、照度1500~10000lux、23℃で、120rpmにて12日間前培養した。なお、前培養前に、予備的に藻体数を増やしてもよい。
さらに、予備的培養後の培養液1Lを10L容のジャーファメンターに移して12日間本培養を行い、これを本培養後の培養液1とした。このときの培養条件は、照度1500~10000lux、23℃、200rpm、通気0.56vvmの好気的な条件にし、独立栄養培養条件下で行った。
<製造例2~4>
表1及び6に示す、「クロロコッカム藻株」、「ジェミネラ藻株」、「クロロイディウム藻株」の各藻株(表1参照)について、上記「ウロネマ藻株」の多糖体の製造方法と同様にして、それぞれ培養を行い、本培養後の培養液2~4を得た。
クロロコッカム藻株、ジェミネラ藻株、クロレラ藻株、ユーグレナ藻株には、AF6培地を使用した(表7)。ウロネマ藻株、クロロイディウム藻株には、BG11培地を使用した(表8)。
<製造例1~4の藻類由来の培養物1~4の回収>
前記ウロネマ由来の培養液1を、遠心分離(7000rpm(6500G)、25℃)し、細胞外多糖体を含有する上清液と、藻体とに分離した。
さらに分画分子量5000のUF膜を用いて、培養液を400mLまで濃縮し、凍結乾燥して、ウロネマ由来の多糖体を含む培養物1を得た。
また、ウロネマ由来の培養物1の方法と同様にして、各藻株由来(クロロコッカム藻株、ジェミネラ藻株、クロロイディウム藻株由来)の培養液2~4から、表6に示す各藻株由来の多糖体を含む培養物2~4を得た。
また、各藻株における多糖体の生産量(mg/培養上清1L)は、藻体分離後の上清液についてフェノール硫酸発色法(標品:グルコース)にて行い、その結果を表6に示す。
Figure 0007116961000006
Figure 0007116961000007
Figure 0007116961000008
<製造例1~4の各藻株由来の各培養物分析>
各藻株由来の各培養物1~4を凍結乾燥して粉末を得た。各培養物1~4は、ウロネマ由来培養物1、クロロコッカム由来培養物2、ジェミネラ由来培養物3、クロロイディウム由来培養物4である。
各粉末を、酸加水分解法(例えば、加水分解条件:72%硫酸水溶液、室温で1時間攪拌後、4%硫酸水溶液に調整した後、4%硫酸水溶液でオートクレーブ処理(121℃、1時間))HPLC分析、各種糖分析等にて、各培養物中の構成単糖(中性単糖:マンノース、アラビノース、ガラクトース、キシロース、グルコース、ラムノース、リボース、フコース)の測定を行った。その結果、各藻株の培養物に含まれる多糖体の中性糖構成は表9のとおりであった。
1)Chlorophyceae Uronema sp. (NBRC 113204)藻株:ウロネマ培養物中に測定された中性単糖が25質量%含まれ、この培養物中の中性糖において主な構成糖はラムノース13質量%、グルコース5.5質量%であった。
2)Chlorophyceae Chlorococcum sp. (NBRC 113206)藻株:クロロコッカム培養物中に測定された中性単糖が71質量%含まれ、この培養物中の中性糖において主な構成糖はマンノース20質量%、アラビノース23質量%、ガラクトース24質量%であった。
3)Trebouxiophyceae Geminella sp. (NBRC 113205)藻株:ジェミネラ培養物(第1回目)中に測定された中性単糖が41質量%含まれ、この培養物中の中性糖において主な構成糖はアラビノース7質量%、ガラクトース13質量%、ラムノース15質量%であった。
ジェミネラ培養物(第2回目)中で測定された中性単糖が25質量%含まれ、この培養物中の中性糖において主な構成糖はマンノース10質量%、ガラクトース4質量%、ラムノース3質量%、フコース3質量%であった。
4)Trebouxiophyceae Chloroidium saccharophilum (NBRC 113207)藻株:クロロイディウム培養物中に測定された中性単糖が34質量%含まれ、この培養物中の中性糖において主な構成糖はマンノース8質量%、アラビノース7質量%、ガラクトース11質量%であった。
Figure 0007116961000009
<実施例1~2:PR-1a遺伝子プロモーター発現誘導試験>
PR-1a遺伝子プロモーターの下流にホタルルシフェラーゼ遺伝子を連結したプラスミドコンストラクト(PR-1a::Fluc+)を導入したシロイヌナズナ種子を100μLの滅菌水とともに96Wellプレートに播種し、5日間の春化処理をした後に終濃度0.1mMのルシフェリンを添加し、バイオトロン(明条件12時間、暗条件12時間、相対湿度100%)に置いた。
なお、本実施例は、特許文献1及び2、非特許文献1を参照にして行うことが可能である。また、非特許文献1に示された内容に沿って、タバコ由来のPathogenesis-related gene 1a(PR-1a)遺伝子プロモーターの下流に、ホタルルシフェラーゼ遺伝子(Firefly luciferase; F-luc)を連結させた融合遺伝子(PR-1a::F-luc)を有するプラスミドを得ることができる。当該プラスミドをアグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens LBA4404)を介してシロイヌナズナに導入し、PR-1a::F-lucを有する形質転換シロイヌナズナ種子(PR-1a::F-luc)を得ることができる。
PR-1a遺伝子プロモーター発現誘導試験の試料として、上述した各藻体から得られた培養物1~4を用いた。各培養物1~4は、上述したウロネマ由来培養物1、クロロコッカム由来培養物2、ジェミネラ由来培養物3、クロロイディウム由来培養物4である。
発芽後に滅菌水で調整した各培養物1~4の試料を、各Wellに1/10量添加し、最終濃度とした。各プレートにおける最終濃度は、プレート1(実施例1):0.02wt%(200μg/mL)、プレート2(実施例2):0.002wt%(20μg/mL)とした。なお、試料は、培養物粉末を滅菌水にて1%(10mg/mL)溶液に調整し、-20℃にて保管したものである。
各試料の各処理区につき、12反復行い、PR-1aプロモーター発現誘導はFluc発光活性を指標として評価した。処理による植物体の発光量を遺伝子発現誘導活性として、その強度を経時的にモニタリングした。
フォトカウンティング装置GaAsP IMAGE INTENSIFIER UNIT C8600(浜松フォトニクス株式会社)及び解析ソフトWasabiを使用して、各ウェル内の発光強度を測定してレポーターであるF-lucの発現量を測定することで、各試料のPR-1a遺伝子発現誘導活性についてそれぞれ評価した。
経時的モニタリングの解析タイムポイントは、0.24、48、72、96、120、144、168、192、216時間に設定した。0時間の発光量を1とした相対値を、相対発光量とし、120時間の結果を表10及び11に示した。
表10及び11に示すように、各藻類の藻体外に生産された多糖体を含む培養物に、顕著なPR-1a遺伝子発現誘導活性を有することが示唆された。当該多糖体を含む培養物は、ウロネマ、クロロコッカム、ジェミネラ、クロロイディウム由来の産生物である。またこれらは、Chlorophyceae(緑藻綱)藻類及び/又はTrebouxiophyceae(トレボキシア藻綱)藻類でもある。
このことから、緑色の光合成色素を有する単細胞藻類が藻体外に生産する多糖体を主な起因として、PR-1a遺伝子発現誘導を活性化させていると考える。これら培養物には、中性糖としてマンノース、ラムノース及び/又はガラクトースのいずれか1又は2以上を構成単糖とすることで共通するので、これらが何らかの効能に関与していると考える。
また、ウロネマ由来の多糖体は、中性糖において、ラムノース、グルコースを主な構成単糖としている。この主な構成単糖を含む多糖体がPR-1a遺伝子発現誘導を活性化に関与していると考える。
また、クロロコッカム由来の多糖体は、中性糖において、ガラクトース、アラビノース、マンノースを主な構成単糖としている。この主な構成単糖を含む多糖体がPR-1a遺伝子発現誘導を活性化に関与していると考える。
ジェミネラ由来の多糖体は、中性糖において、マンノース、ラムノース、ガラクトースを主な構成単糖としている。この主な構成単糖を含む多糖体がPR-1a遺伝子発現誘導を活性化に関与していると考える。
クロロイディウム由来の多糖体は、中性糖において、ガラクトース、マンノース、アラビノース、キシロースを主な構成単糖としている。この主な構成単糖を含む多糖体がPR-1a遺伝子発現誘導を活性化に関与していると考える。
Figure 0007116961000010
Figure 0007116961000011
<実施例3~4:生理活性試験>
<実施例3~4で使用する藻株>
実施例3では、Chlorophyceae Uronema sp. (NBRC 113204)藻株を、ウロネマ藻株として使用した。
実施例3では、Chlorophyceae Chlorococcum sp. (NBRC 113206)藻株を、クロロコッカム藻株として使用した。
実施例3では、Trebouxiophyceae Geminella sp. (NBRC 113205)藻株を、ジェミネラ藻株として使用した。
実施例3では、NBRC Culture Collectionから、Trebouxiophyceae Chloroidium saccharophilum KAMI (NBRC 113807)藻株を入手し(表1参照)、この18srRNAについて、表12(配列番号5)に開示し、クロロコッカムKAMI藻株として使用した。

実施例3では、2005年5月に、現在の日本国宮城県大崎市鳴子の潟沼(Katanuma)にて採取したユーグレナ藻株を使用した。
実施例3では、ポジティブコントロールとして、ラミナリン(SIGMA社製)を使用した。
実施例4では、Chlorophyceae Chlorococcum sp. (NBRC 113206)藻株を、クロロコッカム藻株として使用した。
実施例4では、Chlorella vulgaris Chikugo株(チクゴ株:クロレラ工業)を、クロレラ藻株として、使用した。
5)Trebouxiophyceae Chloroidium saccharophilum KAMI (NBRC 113807):(公開日2019年2月25日/ウェブサイトURL:http://www.nbrc.nite.go.jp/NBRC2/NBRCCatalogueDetailServlet?ID=NBRC&CAT=00113807、ウェブサイト印刷日2019年2月25日)
採取地(株の由来) 北海道斜里郡清里町神の子池)Kaminoko Pond, Shari-gun, Kiyosato-cho, Hokkaido)採集日:2012/5/7。
Figure 0007116961000012
<実施例3~4で使用する試料>
上述した<製造例1~4:藻類由来の培養物(多糖体を含む培養物)の製造方法及び当該培養物の分析><藻類由来の培養物(多糖体を含む培養物)の製造方法>と同様にして、<実施例3~4で使用する藻株>記載の各藻株から各培養物を得、これを各試料とした。
具体的には、クロロコッカム藻株、ジェミネラ藻株、クロロイディウムYAMA藻株、クロレラ藻株には、AF6培地を使用し(表7)、ウロネマ藻株、クロロイディウムKAMI藻株には、BG11培地を使用し(表8)、ユーグレナ藻株には、KO2培地を使用し上記製造例1~4を参考にして各藻株に適した培養を行い、多糖体を含む培養物をそれぞれ得た。
このようにして、実施例3の試料として、ウロネマ由来培養物5、クロロコッカム由来培養物6、ジェミネラ由来培養物7、クロロイディウムKAMI由来培養物8、ユーグレナ由来培養物9を得た。また、実施例4の試料として、クロロイディウムYAMA由来培養物10、クロレラ由来培養物11を得た。
このときクロロイディウムKAMI藻株における多糖体の生産量(mg/培養上清1L)は、藻体分離後の上清液についてフェノール硫酸発色法(標品:グルコース)にて行い、300mg/Lであった。
〔KO2培地組成〕
硝酸ナトリウム 85mg:硫酸アンモニウム 66mg:リン酸二水素カリウム 27mg:リン酸マグネシウム七水和物 25mg:塩化カルシウム二水和物 11mg:硫酸鉄七水和物 2mg:EDTA-2Na 3mg:N1 Metals solution ※1 0.1mL:蒸留水 99mL:pH 2:調製量 100mL。
※1[N1 Metals solution組成]
ホウ酸 2.86g:塩化マンガン四水和物 1.81g:硫酸亜鉛七水和物 0.22g:硫酸銅五水和物 0.08g:三酸化モリブデン 15mg:蒸留水 1000mL:調製量 1000mL。
<実施例3~4:PR-1a遺伝子プロモーター発現誘導試験>
実施例3~4のPR-1a遺伝子プロモーター発現誘導試験は、<実施例1~2:PR-1a遺伝子プロモーター発現誘導試験>と同様にして、各試料についての発現誘導を確認した。このときの使用した濃度は、0.02mg/mLであった。
経時的モニタリングの解析タイムポイントは、0.24、48、72、96、120、144、168、192、216、240、264時間に設定した。0時間の発光量を1とした相対値を、相対発光量とした。
PR-1a遺伝子プロモーター発現誘導試験における、実施例3の各試料の結果を表13及び図1に示し、実施例4の各試料の結果を表14に示した。
表13及び14に示すように、各藻類の藻体外に生産された多糖体を含む培養物に、顕著なPR-1a遺伝子発現誘導活性を有することが示唆された。当該多糖体を含む培養物は、ウロネマ由来、クロロコッカム由来、ジェミネラ由来、クロロイディウム(好適にはKAMI)由来、ユーグレナ由来、クロレラ由来の産生物である。これら産生物は、PR-1a遺伝子プロモーター発現誘導を活性化させる作用があることが示された。
このうち、ウロネマ由来(1.35倍)、クロロコッカム由来(1.11倍)、ジェミネラ由来(1.37倍)、クロロイディウムKAMI由来(1.12倍)、ユーグレナ由来(1.10倍)の産生物は、ラミナリンよりも、Maxピーク(活性)値が高かった。また、これら産生物のMaxピーク値は、ラミナリンのMaxピーク値よりも前にシフトしており、この時間の差は、ラミナリンのMaxピーク時間の0.67~0.78になっており、ラミナリンと比較して速効型といえる。これら藻類由来の培養物中の活性物質について検討中であるが、通常多糖体は高分子であるため遅効的であることが多い。しかし、これら藻類由来の培養物は、ラミナリンと同じ高分子の多糖体でありながら、速効的であることは、これらの優れた利点といえる。また、各産生物とラミナリンとの両者を併用することで、作用時期を調整することが容易である。
Figure 0007116961000013
Figure 0007116961000014
<実施例3~4の各藻株由来の各培養物分析>
実施例3~4の各藻株由来の各培養物分析を行った。具体的には、実施例3の試料として、ウロネマ由来培養物5、クロロコッカム由来培養物6、ジェミネラ由来培養物7、クロロイディウムKAMI由来培養物8、また、実施例4の試料として、クロロイディウムYAMA由来培養物10を使用した。
これら藻株由来の各培養物について、以下のように、ABEE標識化法を用いて、各培養物中の構成単糖の分析を行った(Yasuno, S., et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 61, 1944(1997)、Yasuno, S., et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 63, 1353(1999))。
Man:マンノース、Ara:アラビノース、Gal:ガラクトース、Xyl:キシロース、Glc:グルコース、Rha:ラムノース、Rib:リボース、Fuc:フコース、NAc-GlcN:Nアセチルグルコサミン、NAc-GalN:Nアセチルガラクトサミン、NAc-ManN:Nアセチルマンノサミン、GalUA:ガラクツロン酸、GlcUA:グルクロン酸。
1)HPLC装置
ACQUITY UPLC H Classシステム(製造元Waters) ACQUITY UPLC BEH C18 Column,1.7 μm, 2.1 x 100 mm(製造元:J-オイルミルズ)、カラム温度:50℃、移動相:A/B=0.2MPotassium borate(pH 8.9)/ACN、流速:0.7mL/min、検出:蛍光(Ex.305nm,Em.360nm)。
試料にMilliQ水(MQW)を添加して10mg/mL溶液を調製し、当該溶液10μLを加水分解試料とした。具体的には、各試料を10μLずつチューブに分取し、分取した各チューブへTFA(トリフルオロ酢酸)を加え、撹拌、遠心した後、100℃で3時間加熱した。空冷した後、遠心処理し、SpeedVacにて乾固させた。2-プロパノールを加え、撹拌した後、SpeedVacにより乾固させた試料にピリジン/メタノール及び、無水酢酸を加え、室温で30分反応させた。溶液をSpeedVacにより乾固させ、ABEE標識化へと進めた。ABEE標識化試薬(ABEE、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、酢酸、メタノール)を加え、80℃、1時間反応させた。MQW 200μL、クロロホルム200μLにて後処理を実施し、水層を回収し、HPLCにインジェクトした。ピーク面積から各単糖の検量線を作成するとともに、サンプル中に含まれる単糖を定量した。
さらに、カルバゾール硫酸発色法(GalUA換算)を用いて、乾燥培養物100μg/mLに調整して各培養物中のウロン酸の分析を行った。各試料中のウロン酸含有量(GalUA換算)の結果を、表16に示す。
Figure 0007116961000015
Figure 0007116961000016
表15にABEE標識化法による糖分析の結果、表16にウロン酸の結果を示す。
ジェミネラ、ウロネマ、クロロコッカム及びクロロイディウムの各藻株の培養物に含まれる各多糖体における単糖構成は表15のとおりであった。
ウロネマ由来の多糖体は、ラムノース、マンノース、グルクロン酸を主な構成単糖としている。
クロロコッカム由来の多糖体は、マンノース、アラビノース、ガラクトース、グルクロン酸を主な構成単糖としている。
ジェミネラ由来の多糖体は、マンノース、グルクロン酸を主な構成単糖としている。
クロロイディウムKAMI由来の多糖体は、マンノース、アラビノース、ガラクトース、キシロース、ラムノース及びグルクロン酸を主な構成単糖としている。
クロロイディウムYAMA由来の多糖体は、マンノース、ガラクトース、及びグルコースを主な構成単糖としている。
ジェミネラ、ウロネマ、クロロコッカム及びクロロイディウムの各藻株の培養物に含まれる各多糖体中には、ウロン酸が含まれており、当該ウロン酸(GalUA換算)含有率は、表16のとおりであった。このことから、緑色の光合成色素を有する単細胞藻類が藻体外に生産する多糖体にはウロン酸が含まれていることで、ウロン酸を含まないラミナリンとは違うPR-1a遺伝子発現誘導作用(例えば、効能速度等)を有すると考える。
上述のように、上記各多糖体は、構成単糖として上述のようなウロン酸及び中性単糖を有することで、PR-1a遺伝子発現誘導を活性化に関与していると考える。
本技術の培養物は、緑色の光合成色素を有する単細胞藻類の培養物であるため、直接的な殺虫・殺菌性を示さないと考える。そして、本技術の培養物は、直接的な殺虫・殺菌性を示さないことから、耐性菌出現率が低く、施用量も少量で抑えることができ、効果も持続的であり、防除目的外の生物に対する影響も少ないと考える。
また、本技術の培養物は、多糖体の炭素源を豊富に含み、また、当該培養物中に種々の成分を含むことも可能であることから、植物の施肥的な効能も期待することができる。
本技術の培養物は、液体培養によって得られるものであるため、水溶性が高く農場等の灌漑水と混合させて簡便に使用することができる。また、本技術の培養物は、不溶性成分が含まれている場合でも散布等の施用後に次第に分解していくと考えるので、長期的な効能発揮が期待でき、一方で環境負荷が低いと考える。また、施用時に、化学農薬のような体内被爆のおそれも少ない利点がある。
また、本技術の培養物は、必要なときに必要な場所で必要な作物に使用でき、汎用性が高いと考える。

Claims (14)

  1. 緑色の光合成色素を有する単細胞藻類の培養物を有効成分とする、植物に用いるためのPR1遺伝子発現誘導活性剤。
  2. 前記藻類が、Trebouxiophyceae(トレボキシア藻綱)藻類及び/又Chlorophyceae(緑藻綱)藻類である、請求項1記載の前記PR1遺伝子発現誘導活性剤。
  3. 前記藻類が、ジェミネラ、ウロネマ、クロロコッカム及びクロロイディウムから選択される1種又は2種以上である、請求項1又は2記載の前記PR1遺伝子発現誘導活性剤。
  4. 前記培養物中の細胞外多糖体が、ウロン酸を少なくとも含むものである、請求項1~3のいずれか1項記載の前記PR1遺伝子発現誘導活性剤。
  5. 前記培養物中の細胞外多糖体が、ウロン酸5~40質量%と中性単糖とを少なくとも含み、当該中性単糖がマンノース、ガラクトース及びラムノースから選択される1種又は2種以上のものである、請求項1~4のいずれか1項記載の前記PR1遺伝子発現誘導活性剤。
  6. 前記藻体が、[1]Chlorophyceae Uronema sp. (NBRC 113204)藻株;[2]Trebouxiophyceae Geminella sp. (NBRC 113205)藻株;[3]Chlorophyceae Chlorococcum sp. (NBRC 113206)藻株;[4]Trebouxiophyceae Chloroidium saccharophilum YAMA (NBRC 113207)藻株;[5]Trebouxiophyceae Chloroidium saccharophilum KAMI (NBRC 113807)藻株から選択される1種又は2種以上のものである、請求項1~5のいずれか1項記載の前記PR1遺伝子発現誘導活性剤。
  7. 緑色の光合成色素を有する単細胞藻類の細胞外多糖体を含む培養物を有効成分とする、植物用抵抗性誘導剤であり、
    前記藻類は、ジェミネラ、ウロネマ、クロロコッカム、及びクロロイディウムから選択される1種又は2種以上である、前記植物用抵抗性誘導剤。
  8. 緑色の光合成色素を有する単細胞藻類の細胞外多糖体を含む培養物を有効成分とする、植物病害予防・改善剤であり、
    前記藻類は、ジェミネラ、ウロネマ、クロロコッカム、及びクロロイディウムから選択される1種又は2種以上である、前記植物病害予防・改善剤。
  9. 緑色の光合成色素を有する単細胞藻類を、好気的条件下で培養をし、細胞外多糖体を含む培養物を得る、植物用抵抗性誘導成分の製造方法であり、
    前記藻類は、ジェミネラ、ウロネマ、クロロコッカム、及びクロロイディウムから選択される1種又は2種以上である、前記製造方法。
  10. 植物用抵抗性誘導成分である細胞外多糖体を含む培養物を製造するための、緑色の光合成色素を有する単細胞藻類の使用であり、
    前記藻類は、ジェミネラ、ウロネマ、クロロコッカム、及びクロロイディウムから選択される1種又は2種以上である、前記使用。
  11. 前記培養物中の細胞外多糖体が、ウロン酸を少なくとも含むものである、請求項7記載の前記植物用抵抗性誘導剤
  12. 前記培養物中の細胞外多糖体が、ウロン酸を少なくとも含むものである、請求項8記載の前記植物病害予防・改善剤。
  13. 前記培養物中の細胞外多糖体が、ウロン酸を少なくとも含むものである、請求項9記載の前記製造方法。
  14. 前記培養物中の細胞外多糖体が、ウロン酸を少なくとも含むものである、請求項10記載の前記使用。
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