JP7116882B2 - 親水性塗料と親水性皮膜及び親水性に優れた熱交換器用アルミニウムフィン材と熱交換器 - Google Patents
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本発明の親水性塗料において、前記アルカリ珪酸化合物が、珪酸カリウム、珪酸リチウム、珪酸ナトリウムのうち、少なくとも1種または2種以上であることが好ましい。
本発明の親水性皮膜において、前記アルカリ珪酸化合物が、珪酸カリウム、珪酸リチウム、珪酸ナトリウムのうち、少なくとも1種または2種以上であることが好ましい。
本発明の熱交換器用アルミニウムフィン材において、前記親水性皮膜上に潤滑性皮膜が形成されたことが好ましい。
本発明に係る熱交換器は、先のいずれかに記載のアルミニウムフィン材を備えたことが好ましい。
本発明は、上述の親水性塗料からなる親水性皮膜を備えたアルミニウムフィン材であるので、フィン材表面の良好な親水性を長期間維持することができ、加工性と耐食性に優れた親水性皮膜を備えたアルミニウムフィン材を提供できる。
本発明は、上述のアルミニウムフィン材を備えた熱交換器であるので、長期間使用してもフィン表面において親水性の低下を起こすことが無く、フィン間に水滴が留まることがなく、熱交換効率の低下が生じ難い熱交換器を提供できる。このため、通年エネルギー消費効率の良好な熱交換器を提供できる。
無機化合物微粒子5bは親水性皮膜5(アルカリ珪酸化合物)の表面の粗面化に寄与する。無機化合物微粒子5bの含有量を15質量%以上70質量%以下とすることは、親水性皮膜5(アルカリ珪酸化合物)の初期接触角並びに経時後(乾湿サイクル後)の接触角をいずれも10°以下に維持するために有効である。ここで、乾湿サイクルとは、親水性皮膜5(アルカリ珪酸化合物)の表面に水道水などの水を所定時間(数時間~10数時間)流して通水後、80℃程度の高温で親水性皮膜表面を所定時間(10数時間)乾燥する操作を必要回数(例えば10数回)繰り返す処理を意味する。
無機化合物微粒子5bの含有量が15質量%未満の場合、親水性皮膜5(アルカリ珪酸化合物)の表面を十分に粗面化することができず、十分な親水性能が得られなくなる。無機化合物微粒子5bの含有量が70質量%を超えた場合、フィン材を金型で加工してフィン形状を作成する場合、金型が摩耗し易くなり、金型摩耗が原因となって加工性に問題を生じ易くなる。
無機化合物微粒子5bの平均粒子径を0.01μm以上10μm以下に調整することは、親水性皮膜5(アルカリ珪酸化合物)の初期接触角並びに経時後(乾湿サイクル後)の接触角をいずれも10°以下に維持するために有効である。
無機化合物微粒子5bの平均粒子径が0.01μm未満では、親水性皮膜5(アルカリ珪酸化合物)の表面を十分に粗面化することができず、十分な親水性能が得られなくなる。無機化合物微粒子5bの平均粒子径が10μmを超えた場合、フィン材を金型で加工してフィン形状を作成する場合、金型が摩耗し易くなり、金型摩耗が原因となって加工性に問題を生じ易くなる。
この後、基板2の下地処理層3の上にロールコート装置あるいはバーコート装置などの塗布装置を用いて必要な厚さに親水性塗料を塗布し、180℃~260℃程度で15秒~1分程度加熱することで親水性塗料を加熱乾燥させ、図1に示す構造の親水性皮膜5(アルカリ珪酸化合物)を得ることができる。
また、親水性皮膜5(アルカリ珪酸化合物)の上に必要に応じて潤滑剤を塗布することで図1に示す潤滑層6を得ることができる。潤滑層6は例えば(水溶性ポリエーテル、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン・アルキル・エーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油エーテルなど)から形成されている。
潤滑層6はフィン材1を金型等で目的の形状のフィンに加工する場合、金型の摩耗を抑制する目的で形成する。
溶媒は水を用いることができる。
親水性塗料において、アルカリ珪酸化合物中のSiO2と無機化合物粒子の合計量が塗料全体に対し1質量%未満では形成した膜厚が薄すぎて親水性、耐食性が劣り、合計量が塗料全体に対し60質量%を超えると形成した膜厚が厚すぎて塗装不良となるなどの問題を生じる。
望ましくはアルカリ珪酸化合物中のSiO2と無機化合物粒子の合計量(塗料固形分)は塗料全体に対し2~30質量%含有していることが好ましい。
また、親水性皮膜5(アルカリ珪酸化合物)には好適な範囲の平均粒子径の無機化合物粒子5bであって、好適な含有量の無機化合物微粒子5bを含んでいるので、プレス加工において使用する金型の過度な損耗を抑制することができ、金型によりフィンを大量に加工する場合であっても、良好な加工性を得ることができる。
上述の乾湿サイクルを施すと、親水性皮膜5(アルカリ珪酸化合物)に含まれていた無機化合物粒子5bは一部洗い流され、基層5aには無機化合物粒子5bを洗い流した後の複数の脱粒痕5cに伴う微細凹凸構造が形成されている。
基層5aを構成するアルカリ珪酸化合物は、本来優れた親水性を有するが、アルカリ珪酸化合物が本来有する親水性に加え、前述の複数の脱粒痕5cの存在に起因する微細凹凸の生成により、乾湿サイクル後であっても親水性皮膜5(アルカリ珪酸化合物)は優れた親水性を発現する。
また、基板2の表面に下地処理層3として、リン酸クロメート皮膜を有しているので、アルミニウムフィン材1は優れた耐食性を発揮する。
図2は、本実施形態の熱交換器20を示す斜視図である。
本実施形態の熱交換器20は、ルームエアコンディショナーの室内・室外機用の熱交換器、あるいは、HVAC(Heating Ventilating Air Conditioning)用の室内・室外機、自動車用の熱交換器などの用途に使用されるアルミニウム熱交換器である。
アルミニウムフィン材1は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる板状の基板2と、基板2の片面または両面に設けられた親水性皮膜5(アルカリ珪酸化合物)を有している。
<基板>
基板2は、この形態では例えばJIS1050系のアルミニウム合金を主体とした合金からなる。また、基板2は、JIS1050系のアルミニウム合金に必要な合金元素を添加したアルミニウム合金からなるものであっても良い。さらに、基板2は、その表面と裏面に先の形態で説明した下地処理皮膜3を施したものであっても良い。
基板2は、アルミニウム合金を常法により溶製し、熱間圧延工程、冷間圧延工程、プレス工程などを経て加工される。なお、基板2の製造方法は、本発明としては特に限定されるものではなく、既知の製法を適宜採用することができる。
アルミニウムフィン材1は、親水性皮膜5(アルカリ珪酸化合物)を形成しているので、優れた親水性を得ることができる。
即ち、アルミニウムフィン材1に水分が付着しても水滴になることなく水が濡れ広がり、隣接するアルミニウムフィン材1間に水のブリッジを形成することがなく、アルミニウムフィン材1の通風抵抗を上昇させないため、熱交換効率が低下しない熱交換器20を提供できる効果を有する。
この優れた親水効果については、熱交換器20の製造直後は勿論のこと、熱交換器20を長期間使用した場合であっても低下することがない。また、水の付着と乾燥を長期間繰り返したとしても、フィン表面の親水性低下を引き起こすことがない。
このため、図2、図3、図4に示す構造の熱交換器20であるならば、長期間使用しても熱交換効率が低下することのない、通年エネルギー消費効率に優れた熱交換器を提供できる。
JIS1050系の純アルミニウム合金からなる基板(縦300mm、横200mm)に対し、リン酸クロメート処理を施して被着量20mg/m2のリン酸クロメート皮膜を形成した。
このリン酸クロメート皮膜付きの基板に対し、以下の表1に示す比率(質量%)でアルカリ珪酸化合物と無機化合物微粒子を配合した親水性塗料を塗布量0.5g/m2で塗布し、220℃で30秒間乾燥して親水性皮膜を形成し、複数のアルミニウムフィン材試料を得た。なお、各親水性塗料においては、塗料全体の質量に対し、アルカリ珪酸化合物中のSiO2と無機化合物粒子の合計量(塗料固形分)が5質量%となるように配合している。
また、アルカリ珪酸化合物に対して配合する無機化合物微粒子は、以下の表1に示す平均粒子径(μm)のものを用いた。
各試料に対し、水道水の流水に8時間浸漬し、その後、各試料を80℃で16時間乾燥させるというサイクルを1サイクルとして、このサイクルを14サイクル付加後の接触角を測定した。この14サイクル付加後の接触角の測定値が10°以下の試料は優れた親水持続性を有している試料と判断して表1の親水持続性の欄に◎を記載し、接触角が10~20°の試料は親水持続性合格の試料と判断して表1に○を記載し、接触角が20°を超えた試料は親水性に劣る試料と判断して表1に×を記載した。
各試料に対し、バウデン式動摩擦係数試験により表面の動摩擦係数を測定し、動摩擦係数が0.2以下の試料は合格として表1の欄に○を記載し、0.2を超える試料は動摩擦係数が大きい試料と判断して表1に×を記載した。
各アルミニウムフィン材試料に対し、塩水噴霧試験240時間、湿潤試験240時間後のR.N(レイティングナンバー)が9.8以上の試料は耐食性に優れていると判断して表1の耐食性の欄に○を記載し、R.Nが9.8未満の試料あるいは著しい変色が見られた試料は耐食性に劣ると判断して表1に×を記載した。
各試料に対し、塗装後の外観を目視評価し良好な塗膜が形成された試料は合格と判断して表1の塗装性の欄に○を記載し、塗装不良が生じた試料は塗装性が劣るとして表1に×を記載した。
比較例1の試料は、無機化合物微粒子の含有量を10質量%に設定した試料であるが、親水持続性に問題を生じた。比較例2の試料は、無機化合物微粒子の含有量を90質量%に設定した試料であるが、親水持続性に劣り、加工性に劣り、耐食性にも劣る結果となった。
比較例3の試料は、無機化合物微粒子として炭酸カルシウムを用いて含有量を10質量%に設定した試料であるが、親水持続性に問題を生じた。比較例4の試料は、無機化合物微粒子として炭酸カルシウムを用いて含有量を90質量%に設定した試料であるが、親水持続性に劣り、加工性に劣り、耐食性にも劣る結果となった。
比較例7の試料は、無機化合物微粒子として炭酸カルシウムを用いて平均粒子径を0.005μmに設定した試料であるが、親水持続性に問題を生じた。比較例8の試料は、無機化合物微粒子として炭酸カルシウムを用いて平均粒子径を25.0μmに設定した試料であるが、親水持続性と加工性に問題を生じた。比較例9は無機化合物微粒子として硫酸カルシウム微粒子を用いたが、親水持続性に劣り、加工性に劣り、耐食性にも劣る結果となった。
接触角の測定は、前記親水持続性評価の際に用いたサイクルを用い、初期、14サイクル(14C)のそれぞれの場合の接触角を測定した。
即ち、アルカリ珪酸化合物を主剤とし、無機化合物微粒子を添加物として親水性塗料および親水性皮膜を作製する場合、アルカリ珪酸化合物中のSiO2:無機化合物粒子の質量比率で85:15~30:70の範囲とするならば、親水性に優れた親水性皮膜を得られることがわかる。
初期状態において親水性皮膜の表面に無機化合物微粒子が分散されているが、乾湿14サイクル試験後に無機化合物微粒子が一部脱落して脱粒痕が生成されていることがわかる。
図6(A)に示す親水性皮膜と図6(B)に示す親水性皮膜の両方が優れた親水性を示す。このことから、初期状態では無機化合物微粒子が生成する凹凸により優れた親水性が発現され、乾湿サイクル後は無機化合物粒子の脱粒痕の存在により優れた親水性が発現されたと推定できる。
従って本発明に係る親水性皮膜であれば、初期状態において優れた親水性を得ることができることは勿論、設置環境などにより、雨水等に晒された経時後であっても優れた親水性を維持することができる優れた特徴を有する。
Claims (8)
- アルカリ珪酸化合物と無機化合物微粒子と溶媒からなり、前記無機化合物微粒子が、水酸化マグネシウム粒子、炭酸マグネシウム粒子、炭酸カルシウム粒子のうち、1種または2種以上の無機化合物微粒子であり、
アルカリ珪酸化合物中のSiO2と前記無機化合物微粒子の合計を全体に対し1~60質量%含有し、前記SiO2:無機化合物微粒子の質量比率が85:15~30:70の範囲であり、前記無機化合物微粒子の平均粒径が0.15μm以上10.0μm以下であることを特徴とする親水性塗料。 - 前記アルカリ珪酸化合物が、珪酸カリウム、珪酸リチウム、珪酸ナトリウムのうち、少なくとも1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の親水性塗料。
- アルカリ珪酸化合物と無機化合物微粒子からなり、前記無機化合物微粒子が、水酸化マグネシウム粒子、炭酸マグネシウム粒子、炭酸カルシウム粒子のうち、1種または2種以上の無機化合物微粒子であり、
アルカリ珪酸化合物中のSiO2:無機化合物微粒子の質量比率が85:15~30:70の範囲であり、前記無機化合物微粒子の平均粒径が0.15μm以上10.0μm以下であることを特徴とする親水性皮膜。 - 前記アルカリ珪酸化合物が、珪酸カリウム、珪酸リチウム、珪酸ナトリウムのうち、少なくとも1種または2種以上であることを特徴とする請求項3に記載の親水性皮膜。
- アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基板と、前記基板上に形成された下地処理皮膜と、前記下地処理皮膜上に形成された親水性皮膜を具備してなり、
前記親水性皮膜は、アルカリ珪酸化合物と無機化合物微粒子からなり、前記無機化合物微粒子が、水酸化マグネシウム粒子、炭酸マグネシウム粒子、炭酸カルシウム粒子のうち、1種または2種以上の無機化合物微粒子であり、
アルカリ珪酸化合物中のSiO2:無機化合物微粒子の質量比率が85:15~30:70の範囲であり、前記無機化合物微粒子の平均粒径が0.15μm以上10.0μm以下であることを特徴とする熱交換器用アルミニウムフィン材。 - 前記アルカリ珪酸化合物が、珪酸カリウム、珪酸リチウム、珪酸ナトリウムのうち、少なくとも1種または2種以上である請求項5に記載の熱交換器用アルミニウムフィン材。
- 前記親水性皮膜上に潤滑性皮膜が形成された請求項5または請求項6に記載の熱交換器用アルミニウムフィン材。
- 請求項5~請求項7のいずれか一項に記載のアルミニウムフィン材を備えたことを特徴とする熱交換器。
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