特許法第30条第2項適用 2018年2月19日からバリアフリー展(バリアフリー2018)のウェブサイト(https://www.tvoe.co.jp/bmk/outline/search_2018_detail/124/)に掲載した。 2018年3月に発行された調査研究報告書「経営者の想いが事業をイノベートする」(一般社団法人奈良県中小企業診断士会)に掲載した。
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。
この発明の一実施形態の移乗機10は、介護が必要な被介護者の寝床であるベッド194(後述)とは独立して設けられる。移乗機10には、被介護者を支持するための支持部として、被介護者が臥位状態で移乗可能な臥位式の支持部12(後述)と、被介護者が座位状態で移乗可能な座位式の支持部12a(後述)とを選択的に用いることができる。さらに、支持部12aには、被介護者の胴体を支持するための胴体支持部として、移乗の際に被介護者が対面する形をとる対面式の胴体支持部198(後述)と、移乗の際に被介護者が斜めに移乗する形をとる斜面式の胴体支持部198a(後述)とを選択的に用いることができる。なお、この発明の実施の形態における左右、前後、上下とは、被介護者が、背部支持部110(後述)に背中を向けて臀部支持部108(後述)に着座した状態を基準とした左右、前後、上下を意味する(図4参照)。角度調整機構106を分かり易く図示するため、図15においては筒状部材122bおよび板状部材124bの図示を省略し、図16および図17においては筒状部材120b,122bおよび板状部材124bの図示を省略する。また、図18、図19、図36および図37を除いて、ねじ152,154,250(後述)の図示を省略する。
まず、支持部12を用いた移乗機10について説明する。図1~図6を参照して、移乗機10は、移動部11および支持部12を含む。移乗機10は、支持部12が変形することによって、図1~図3に示すベッド状態や図4~図6に示す椅子状態に変形される。
移動部11は、走行部14、高さ調整部16、位置調整部18、一対の足置き20a,20b、および一対の足置き調整部22a,22bを含み、支持部12を交換可能に支持する。
さらに図7~図9を参照して、走行部14は、略直方体状の筐体24と、筐体24内に設けられる一対の電動モータ26a,26bと、筐体24内に設けられかつそれぞれ複数のギアからなる一対の動力伝達部28a,28bと、筐体24を幅方向に貫通する一対の車軸30a,30bと、筐体24を挟んで相互に平行に設けられる一対の駆動輪32a,32bとを含む。筐体24は、前面、後面および上面開口の縦断面略U字状の筐体本体24aと、筐体本体24aの前面に設けられる角板状の板状部材24bと、筐体本体24aの上面に設けられる蓋部材24cとを含む。電動モータ26a,26bの駆動力はそれぞれ、動力伝達部28a,28bおよび車軸30a,30bを介して駆動輪32a,32bに伝達される。したがって、移乗機10は、駆動輪32a,32bによって移動可能である。駆動輪32a,32bをそれぞれ独立に正転/逆転させることによって、前進、後退および回転の3種類の動作を行うことができる。また、筐体24内には、高さ調整部16の電動モータ34が設けられている。
さらに図10および図11を参照して、高さ調整部16は、走行部14と位置調整部18との間に設けられ、走行部14と位置調整部18とを連結する。
高さ調整部16は、パンタグラフ機構36を含む。パンタグラフ機構36は、4つのスライダ38a,38b,40a,40b、および4つのリンク部材42a,42b,44a,44bを含む。
スライダ38aは、走行部14の筐体24(蓋部材24c)の上面の右側に設けられかつ前後方向に延びるレール46aと、レール46aに摺動可能に取り付けられるテーブル48aとを有する。スライダ40aは、位置調整部18の下面右側に設けられかつ前後方向に延びるレール50aと、レール50aに摺動可能に取り付けられるテーブル52aとを有する。スライダ40aは、スライダ38aに対向する位置に設けられる。リンク部材42aの一端部はフランジ部54aを介してテーブル48aに連結され、リンク部材42aの他端部はフランジ部56aを介して位置調整部18の下面における右側前方に連結される。リンク部材44aの一端部はフランジ部58aを介してテーブル52aに連結され、リンク部材44aの他端部はフランジ部60aを介して走行部14の上面における右側前方に連結される。したがって、リンク部材42aと44aとは交差する。
同様に、スライダ38bは、走行部14の筐体24(蓋部材24c)の上面の左側に設けられかつ前後方向に延びるレール46bと、レール46bに摺動可能に取り付けられるテーブル48bとを有する。スライダ40bは、位置調整部18の下面左側に設けられかつ前後方向に延びるレール50bと、レール50bに摺動可能に取り付けられるテーブル52bとを有する。スライダ40bは、スライダ38bに対向する位置に設けられる。リンク部材42bの一端部はフランジ部54bを介してテーブル48bに連結され、リンク部材42bの他端部はフランジ部56bを介して位置調整部18の下面における左側前方に連結される。リンク部材44bの一端部はフランジ部58bを介してテーブル52bに連結され、リンク部材44bの他端部はフランジ部60bを介して走行部14の上面における左側前方に連結される。したがって、リンク部材42bと44bとは交差する。リンク部材42a,42b,44a,44bは、連結棒62によって連結される。
また、走行部14の筐体24(蓋部材24c)の上面の中央部、すなわちスライダ38aと38bとの間には、前後方向に延びかつ回転可能にボールねじ64が設けられ、ボールねじ64にはテーブル66が取り付けられる。テーブル66には、左右のテーブル48a,48bが連結される。ボールねじ64は、複数のギアを含む動力伝達部67を介して電動モータ34に接続される。
したがって、電動モータ34の駆動力が動力伝達部67を介してボールねじ64に与えられると、ボールねじ64が回転し、それによってテーブル66が前後方向に移動する。すると、スライダ38a,38bのテーブル48a,48bおよびスライダ40a,40bのテーブル52a,52bが前後方向に移動し、位置調整部18の高さが変更される。
位置調整部18は、スライダ収容部68と、2つの電動スライダ70a,70bと、2つの補助スライダ72a,72bとを含む。スライダ収容部68は、前面、後面および上面開口の縦断面略U字状に形成され、高さ調整部16上において前後方向に延びるように設けられる。
スライダ収容部68内には、2つの電動スライダ70a,70bが左右方向に並びかつ前後方向に延びるよう配置される。図12~図14を参照して、電動スライダ70aは、スライダ本体74と、スライダ本体74の端部に設けられる電動モータ76と、スライダ本体74内に収容されかつ端部が電動モータ76に接続されるボールねじ78と、ボールねじ78に取り付けられかつボールねじ78の回転によって移動可能なテーブル80とを含む。電動モータ76が回転すると同時にボールねじ78が回転し、ボールねじ78に取り付けられたテーブル80がボールねじ78に沿って移動する。テーブル80の上面の右端部には、支持部12を取り付けるための2つのねじ孔81が形成される(図18参照)。電動スライダ70bについては、テーブル80の上面の左端部に支持部12を取り付けるための2つのねじ孔81が形成される(図18参照)点以外は、電動スライダ70aと同様であるので、その重複する説明は省略する。補助スライダ72aは、スライダ収容部68の右外側面に設けられるレール部82aと、レール部82aに摺動可能に取り付けられるテーブル84aとを含む。同様に、補助スライダ72bは、スライダ収容部68の左外側面に設けられるレール部82bと、レール部82bに摺動可能に取り付けられるテーブル84bとを含む。各テーブル84a,84bの上端部には、支持部12を取り付けるためにテーブル84a,84bを左右方向に貫通する2つの貫通孔85が形成される(図18参照(テーブル84a側は図示せず))。また、スライダ収容部68の前部には、カバー部86が取り付けられ、カバー部86には、高さ調整部16を前方からカバーするようにカバー部88が取り付けられる(図2参照)。
一対の足置き20a,20bは、後述する支持部12aを用いる場合、移乗の際に足場となるものであり、支持部12を用いる場合には使用されない。図1~図6を参照して、一対の足置き20a,20bは、走行部14を左右から挟むように設けられる。言い換えれば、一対の足置き20a,20bは、平面視において位置調整部18を左右から挟むように設けられる。また、一対の足置き調整部22a,22bも、走行部14を左右から挟むように設けられる。すなわち、足置き20aおよび足置き調整部22aは、走行部14の右側に配置され、足置き20bおよび足置き調整部22bは、走行部14の左側に配置される。
走行部14の左右にはそれぞれ、前後方向に延びる板状かつ短冊状の支持部材90a,90bが配置され、支持部材90a,90b上にそれぞれ、足置き調整部22a,22bが配置される。
足置き調整部22aは、支持部材90a上に配置されかつ前後方向に延びるスライダ保持部92aと、スライダ保持部92aと走行部14の筐体24とを連結する連結部94a,96aと、スライダ保持部92a上に設けられかつ前後方向に延びる電動スライダ98aとを含む(図25参照)。電動スライダ98a上に足置き20aが取り付けられ、電動スライダ98aによって足置き20aが前後方向に移動する。電動スライダ98aは、図12~図14に示す電動スライダ70aと同様に構成されるので、その重複する説明は省略する。同様に、足置き調整部22bは、支持部材90b上に配置されかつ前後方向に延びるスライダ保持部92bと、スライダ保持部92bと走行部14の筐体24とを連結する連結部94b,96bと、スライダ保持部92b上に設けられかつ前後方向に延びる電動スライダ98bとを含む。電動スライダ98b上に足置き20bが取り付けられ、電動スライダ98bによって足置き20bが前後方向に移動する。電動スライダ98bは、図12~図14に示す電動スライダ70aと同様に構成されるので、その重複する説明は省略する。
移乗の際、足置き調整部22a,22bは、位置調整部18とリンクして動作する。すなわち、足置き20a,20bと胴体支持部198(後述)とが相互の相対的位置関係を維持した状態で同方向に移動する。なお、足置き20a,20bの上面(足接触面)に滑り止めゴムを設け、足置き20a,20bの外周縁にスポンジカバーを設けるようにしてもよい。これによって、より快適に移乗動作を行うことができる。
支持部材90a,90bの下面後部にはそれぞれ、車輪100a,100bが取り付けられ、支持部材90a,90bの下面前部にはそれぞれ、車輪102a,102bが取り付けられる。また、移乗機10の後部には、コントローラ156(後述)等が格納されるボックス158(後述)が配置される。
さらに図15~図17を参照して、支持部12は、本体部104および角度調整機構106を含む。
本体部104は、被介護者の少なくとも臀部を支持するための臀部支持部108、被介護者の少なくとも背部を支持するための背部支持部110、被介護者の少なくとも脚部を支持するための脚部支持部112、および連結部114を含み、被介護者を下方から支持する。本体部104は、図1~図3に示すベッド状態では前後方向(水平方向)に延びるように設けられる。
図1~図3を参照して、臀部支持部108は、板状部材116、6つの筒状部材118a,118b,120a,120b,122a,122b、および2つの板状部材124a,124bを有する。
板状部材116は、略四角形の板状に形成され、位置調整部18の上方に設けられる。板状部材116には、板状部材116を上下方向に貫通する4つの貫通孔126が形成される。筒状部材118a,118bは、前後方向に延びかつ角筒状に形成され、板状部材116の下面の左右両端部に設けられる。筒状部材118a,118bの後端部は、板状部材116の後端部よりもやや後方に突出する。筒状部材120a,120bは、前後方向に延びかつ角筒状に形成され、左右方向において筒状部材118a,118bよりも内方に位置するように、板状部材116の下面に設けられる。筒状部材120a,120bの後端部は、筒状部材118a,118bの後端部よりも後方に延び、図1~図3に示すベッド状態において第1板状部材132(後述)の下面を支持する。筒状部材122a,122bは、背面視略長方形の角筒状に形成され、左右方向において筒状部材120a,120bよりも内方に位置するように、板状部材116の下面に設けられる。各筒状部材122a,122bの上面には、板状部材116に形成された貫通孔126と連通し、かつ筒状部材122a,122bを上下方向に貫通する2つの貫通孔(図示せず)が形成される。各筒状部材122a,122bの下面には、筒状部材122a,122bを上下方向に貫通する2つの貫通孔128が形成される(図18参照(筒状部材122a側は図示せず))。各貫通孔128は、上下方向において貫通孔126と重なるように形成される。板状部材124a,124bは、上下方向に延びかつ板状に形成され、板状部材124aの上端部は筒状部材120aの側面に接続され、板状部材124bの上端部は筒状部材120bの側面に接続される。各板状部材124a,124bの下端部には、板状部材124a,124bを左右方向に貫通する2つの貫通孔130が形成される。
背部支持部110は、第1板状部材132、第2板状部材134および2つの筒状部材136a,136bを有し、臀部支持部108の一方側(後方側)において臀部支持部108と隣り合うように設けられる。第1板状部材132は、略長方形の板状に形成され、板状部材116の後方において、板状部材116と隣り合うように設けられる。第2板状部材134は、略長方形の板状に形成され、第1板状部材132の後方において、第1板状部材132と隣り合うように設けられる。筒状部材136aは、第1板状部材132および第2板状部材134の右端部同士を連結し、第1板状部材132の右端部および第2板状部材134の右端部に沿って延びかつ角筒状に形成される。筒状部材136bは、第1板状部材132および第2板状部材134の左端部同士を連結し、第1板状部材132の左端部および第2板状部材134の左端部に沿って延びかつ角筒状に形成される。筒状部材136aの前端部は、連結部材137aを介して、筒状部材118aの後端部に上下方向に揺動可能に連結される。筒状部材136bの前端部は、連結部材137bを介して、筒状部材118bの後端部に上下方向に揺動可能に連結される。これによって、背部支持部110は、臀部支持部108に対して上下方向に揺動可能に設けられる(図15の矢印C参照)。
脚部支持部112は、板状部材138および2つの筒状部材140a,140bを有し、臀部支持部108の他方側(前方側)において臀部支持部108と隣り合うように設けられる。板状部材138は、略四角形の板状に形成され、板状部材116の前方において、板状部材116と隣り合うように設けられる。筒状部材140a,140bは、板状部材138の左右両端部に沿って延びかつ角筒状に形成される。
連結部114は、2つの連結部材142a,142bを有し、臀部支持部108と脚部支持部112とを連結する。各連結部材142a,142bは、第1部材144aおよび第2部材144bを有する。各第1部材144aは、ねじ等(図示せず)によって各筒状部材118a,118bの前端部に取り付けられる。各第2部材144bは、ねじ等(図示せず)によって各筒状部材140a,140bの後端部に取り付けられ、第1部材144aに対して上下方向に揺動可能となるように、各第1部材144aに接続される。これによって、脚部支持部112は、臀部支持部108に対して上下方向に揺動可能に設けられる(図15の矢印D参照)。たとえば、連結部114は、0度~90度までの15段階の角度調整可能に揺動される。連結部114としては、たとえば向陽技研株式会社製の「ISギア」を用いることができる。
角度調整機構106は、油圧シリンダ146、揺動部材148、および固定部材150を有し、背部支持部110の揺動角度を微調整可能である。油圧シリンダ146は、板状部材116の下面に前後方向に伸縮可能に設けられる。揺動部材148は、棒状に形成される。揺動部材148の一端部は、揺動部材148が油圧シリンダ146に対して上下方向に揺動可能となるように、油圧シリンダ146の後端部に取り付けられる。固定部材150は、第1板状部材132の下面に設けられ、揺動部材148の他端部を支持する。油圧シリンダ146が後方に延びることによって、揺動部材148および固定部材150が油圧シリンダ146に対して上方に揺動する(図15~図17参照)。これによって、背部支持部110は、臀部支持部108に対して上方に揺動する。油圧シリンダ146が前方に縮むことによって、揺動部材148および固定部材150が下方に揺動する。これによって、背部支持部110は、臀部支持部108に対して下方に揺動する。このように、背部支持部110は油圧シリンダによって上下方向に揺動されるので、介護者が背部支持部110を持ち上げる必要がなく、介護者の身体的負担を軽減できる。
図18および図19を参照して、支持部12は、4つのねじ152および4つのねじ154(2つは図示せず)によって位置調整部18に取り付けられる。各ねじ152は、対応する貫通孔126,128に挿通され、ねじ孔81に螺入される。各ねじ154は、対応する貫通孔130,85に挿通され、ねじ154には図示しないナットが取り付けられる。ねじ152,154を取り外すことによって、支持部12を位置調整部18から取り外すことができ、支持部12aに交換できる。
図20を参照して、移乗機10の後部に位置するボックス158には、コントローラ156と、それぞれコントローラ156に接続されるモータドライバ160~166、スライダドライバ168~174、ポンプ176および油圧弁178が収容される。モータドライバ160,162,164および166にはそれぞれ、電動モータ26a,26b,34および208が接続される。スライダドライバ168,170,172および174にはそれぞれ、電動スライダ70a,70b,98aおよび98bが接続される。より具体的には、スライダドライバ168,170,172および174には、電動スライダ70a,70b,98aおよび98bのそれぞれの電動モータが接続される。ポンプ176は、油圧弁178を介して油圧シリンダ146に接続される。また、ボックス158には、電動モータ26a,26b,34および208、ならびに電動スライダ70a,70b,98aおよび98b等に供給すべき電力を蓄える図示しないバッテリが収容される。
コントローラ156は、移乗機10の動作を制御し、必要な演算を行うCPU、プログラム等を格納するROM、演算に必要なデータを一時的に格納するRAM等を含む。
また、コントローラ156には、コントローラ156に指示を与えるための操作ユニット180が接続される。操作ユニット180は、無線でまたはケーブルを介して有線でコントローラ156に接続される。コントローラ156は、操作ユニット180に含まれるボタンが押されることによって、モータドライバ160~166、スライダドライバ168~174、ポンプ176および油圧弁178を動作させ、電動モータ26a,26b,34および208、電動スライダ70a,70b,98aおよび98b、ならびに油圧シリンダ146を駆動させる。
図21を参照して、操作ユニット180の長方形状の主面には、初期位置ボタン182、前進ボタン184a、後退ボタン184b、右転回ボタン186a、左転回ボタン186b、高さ調整のためのボタン188a,188b、水平方向の位置調整のためのボタン190a,190b、および角度調整のためのボタン192a,192bが設けられる。
初期位置ボタン182を押すことによって、高さ調整部16および位置調整部18が初期位置に戻される。臥位式の支持部12を用いた場合には、背部支持部110も初期位置に戻され、座位式の支持部12aを用いた場合には、角度調整部196(後述)も初期位置に戻される。前進ボタン184aを押すことによって、駆動輪32a,32bが正転し、移乗機10が前進する。後退ボタン184bを押すことによって、駆動輪32a,32bが逆転し、移乗機10が後退する。右転回ボタン186aを押すことによって、駆動輪32aが逆転するとともに駆動輪32bが正転し、移乗機10が右転回する。左転回ボタン186bを押すことによって、駆動輪32aが正転するとともに駆動輪32bが逆転し、移乗機10が左転回する。高さを下げるボタン188aを押すことによって、パンタグラフ機構36が収縮して高さ調整部16の高さが小さくなり、支持部12(12a)の位置が低くなる。高さを上げるボタン188bを押すことによって、パンタグラフ機構36が伸張して高さ調整部16の高さが大きくなり、支持部12(12a)の位置が高くなる。水平方向に引っ込めるボタン190aを押すことによって、位置調整部18の電動スライダ70a,70bのテーブル80が後方(ボックス158側)に移動し、支持部12(12a)が後方に移動する。水平方向に寄せるボタン190bを押すことによって、位置調整部18の電動スライダ70a,70bのテーブル80が前方に移動し、支持部12(12a)が前方に移動する。角度を起こすボタン192aを押すことによって、支持部12を用いた場合には、背部支持部110が上方に揺動する。また、支持部12aを用いた場合には、角度調整部196の取付部214の傾きが小さくなり、胴体支持部198の傾きが小さくなる。角度を傾けるボタン192bを押すことによって、支持部12を用いた場合には、背部支持部110が下方に揺動する。また、支持部12aを用いた場合には、角度調整部196の取付部214の傾きが大きくなり、胴体支持部198の傾きが大きくなる。
ついで、図22~図24を参照して、臥位式の支持部12を用いた移乗機10の移乗動作について説明する。
まず、図22に示すように、ベッド状態の移乗機10を被介護者が寝ているベッド194の横に配置する。そして、高さ調整部16によって、本体部104の上面の高さを、ベッド194の上面の高さに合わせる。最後に、図23に示すように、被介護者を本体部104(移乗機10)に向かってスライドさせることによって被介護者を本体部104上に乗せれば、移乗が完了となる。このとき、スライドシート等を用いれば、被介護者を本体部104(移乗機10)に向かって容易にスライドさせることができる。また、図24に示すように、背部支持部110を臀部支持部108に対して上方に揺動させ、脚部支持部112を臀部支持部108に対して下方に揺動させることによって、被介護者は椅子に座るような姿勢をとることができる。なお、移乗機10からベッド194に移乗する際は、上述の手順を逆に行うことによって、ベッド194に移乗することができる。
ついで、支持部12aを用いた移乗機10について説明する。この場合、位置調整部18は、被介護者が座ることができるとともに角度調整部196(後述)を支持しかつ角度調整部196および胴体支持部198(198a)(後述)の水平方向の位置を調整する。したがって、位置調整部18によって、胴体支持部198(198a)を水平方向に移動させることができ、胴体支持部198(198a)へ抱き付いた被介護者を移乗機10の中心まで移動させることができる。
まず、胴体支持部198を用いた場合について説明する。図25~図30を参照して、支持部12aは、角度調整部196と、胴体支持部198と、顎支持部200と、抱き付き部202と、一対の脇支持部204a,204bとを含む。
図31~図33を参照して、角度調整部196は、筐体206と、電動モータ208と、動力伝達部210と、揺動軸212と、取付部214と、2つの板状部材216a,216bとを含む。筐体206の底面前部の左右両端部にはそれぞれ、筐体206を上下方向に貫通する2つの貫通孔218が形成される。電動モータ208、動力伝達部210および揺動軸212は、筐体206に収容される。動力伝達部210は、ギア220,222、回転軸224、ギア226,228を含み、電動モータ208と揺動軸212とを連結する。揺動軸212は、支持部230a,230bによって揺動可能に支持される。取付部214は、胴体支持部198(198a)が取り付けられる部材であり、揺動軸212の中央部において揺動軸212に対して回転不能に取り付けられる。取付部214には、胴体支持部198を取り付けるための4つの貫通孔232および4つのねじ孔234が形成され、ねじ(図示せず)やナット(図示せず)によって、胴体支持部198が取付部214の前面に交換可能に取り付けられる。板状部材216aは、筐体206の下面後部の右端部から下方に延びかつ板状に形成され、板状部材216bは、筐体206の下面後部の左端部から下方に延びかつ板状に形成される。各板状部材216a,216bの上下方向の中央部近傍にはそれぞれ、各板状部材216a,216bを貫通する2つの貫通孔236が形成される。
電動モータ208の駆動力は、ギア220,222、回転軸224、ギア226,228を介して揺動軸212に伝達され、揺動軸212が揺動すると、それに伴って、取付部214が揺動軸212を中心として揺動する。すなわち、取付部214が傾く。
このように角度調整部196によって、移乗の際、取付部214に取り付けられた胴体支持部198の角度を調整できる。したがって、角度調整部196によって、胴体支持部198に抱き付いた被介護者を傾けることができ、それとともに被介護者に固定された座部252(後述)を同時に傾けることができ、被介護者の臀部を浮かすことができる。取付部214の角度は、任意の角度に調整できる。
したがって、移乗機10では、高さ調整部16、位置調整部18および角度調整部196によって、胴体支持部198の上下方向(図28に示すV方向)および水平方向(図28に示すH方向)の位置ならびに前後方向(図28に示すR方向)の角度を調整でき、おんぶ式移乗動作を実現する。また、高さ調整部16、位置調整部18および角度調整部196はそれぞれ微調整が可能であり、使用者に応じた調整ができる。これによって、様々な体格の被介護者に対して移乗機10を使用することができる。また、人間は、おんぶされることによって安心感を得ることができ、また、目線の方向へ傾くことよって傾き動作時の恐怖感を軽減できる。
胴体支持部198は、上述のように角度調整部196の取付部214に取り付けられ、後述する胴体支持部198aに交換可能に設けられる。胴体支持部198のような対面式胴体支持部は、胸部、腹部の広い面で圧力を分散することができるが、移乗時に脚を開く必要がある。図25~図27等に示すように、対面式胴体支持部である胴体支持部198の形状は、おんぶ式ということから背中をイメージして設計されている。胴体支持部198は、たとえば一枚のABS樹脂板を含み軽量化を図っており、被介護者との接触面は、突出部のない平面状に形成されている。図27を参照して、胴体支持部198の後面(胴体が接触する面とは反対側の面)には、ブラケット199a,199bを介してフック199c,199dが取り付けられる。
顎支持部200は、抱き付き部202の上端部に取り付けられ、移乗した際に顎を支持するための部材である。図25~図30を参照して、顎支持部200の形状は,顎の形をイメージして設計され、台形状に形成されている。図34を参照して、顎支持部200は、抱き付き部202に取り付けられる連結棒238と、連結棒238の外周に相互に間隔をあけてかつ逆向きに取り付けられる2つのワンウェイクラッチ240a,240bとを有する。2つのワンウェイクラッチ240a,240bは、相互に逆向きに取り付けられているので、力を加えない場合では固定状態となる(図34(a)参照)。ワンウェイクラッチ240a,240bに固定荷重以上の荷重を加えるとクラッチが滑り、顎支持部200の角度が変わる(図34(b)参照)。この機構によって顎支持部200の角度が調整される。ワンウェイクラッチ240a,240bとしては、たとえばNTN株式会社製のワンウェイクラッチが用いられる。
抱き付き部202は、胴体支持部198の後面上部に取り付けられ、移乗した際に抱き付くことができる部材である。すなわち、抱き付き部202は、移乗機10に移乗する際に、被介護者が胴体支持部198を挟んで抱き付き部202に抱き付くことができるように構成される。図25、図26、図28~図30、図35を参照して、抱き付き部202は、胴体支持部198から後方に突出するフランジ状の天板242と、天板242より下方において胴体支持部198から後方に突出するフランジ状の底板244と、天板242と底板244間に設けられる角柱部246と、角柱部246の両側に位置する円柱状のグリップ248a,248bとを含む。左腕で角柱部246を抱いてかつグリップ248bを握り、右腕で角柱部246を抱いてかつグリップ248aを握ることによって、抱き付き部202に抱き付くことができ、腕が支持されている。このように、角柱部246に抱き付く動作や、グリップ248a,248bを握る動作によって、安心感を得ることができる。
図25~図30を参照して、脇支持部204a,204bは、胴体支持部198を挟むように胴体支持部198の両側部に設けられる。脇支持部204a,204bは、補助的に脇を支持する部材であり、たとえば12段階の角度調整可能に揺動でき、使用しない場合には下げておくことができる。したがって、被介護者の脇の高さに応じて、脇支持部204a,204bの角度を調整することができる。角度調整のための機構としては、たとえば向陽技研株式会社製の「ISギア」を用いることができる。
図36および図37を参照して、支持部12aは、4つのねじ250(2つは図示せず)および4つのねじ154(2つは図示せず)によって位置調整部18に取り付けられる。各ねじ250は、対応する貫通孔218に挿通され、ねじ孔81(図18参照)に螺入される。各ねじ154は、対応する貫通孔236,85(図18参照)に挿通され、ねじ154には図示しないナットが取り付けられる。ねじ250,154を取り外すことによって、支持部12aを位置調整部18から取り外すことができ、支持部12に交換できる。
図38を参照して、移乗機10はさらに座部252を含む。座部252は、移乗する際に被介護者の臀部および腰部を後方から覆うように胴体支持部198の前方に設けられ臀部と腰部とを支持し、かつ移乗機10に対して着脱可能な部材である。座部252は、展開可能であり、座部本体254を含む。
図39をも参照して、座部本体254は、臀部を支持する略角板状の臀部支持部256と腰部を支持する角板状の腰部支持部258とを含む。臀部支持部256の一側部には、台形状の板状部260a,262aが設けられ、臀部支持部256の他側部には、台形状の板状部260b,262bが設けられる。また、腰部支持部258の両側部にはそれぞれ、板状部264a,264bが設けられる。腰部支持部258は臀部支持部256に対して折り曲げ可能であり、板状部260a,260b,262a,262bは臀部支持部256に対して折り曲げ可能であり、板状部264a,264bは腰部支持部258に対して折り曲げ可能である。
図38に戻って、板状部260a,264aにはそれぞれ、紐266a,268aが取り付けられ、紐266aと268aとは、バックル270aによって連結される。すなわち、バックル270aは、紐266aに取り付けられる雄部272aと、紐268aに取り付けられる雌部274aとを有し、雄部272aを雌部274aに差し込むことによって連結される。同様に、板状部260b,264bにはそれぞれ、紐266b,268bが取り付けられ、紐266bと268bとは、バックル270bによって連結される。すなわち、バックル270bは、紐266bに取り付けられる雄部272bと、紐268bに取り付けられる雌部274bとを有し、雄部272bを雌部274bに差し込むことによって連結される。また、板状部262a,262b,264a,264bにはそれぞれ、移乗機10に係止するための環状の係止部276a,276b,278a,278bが設けられる。
座部252の表面の材質は、低摩擦力を有することが好ましく、たとえばナイロンタフタ等が用いられる。
このような座部252をベッド194上で展開することによって、被介護者をベッド194に寝ている状態からベッドサイドへ座るまでの動作を簡単に行うことができる。したがって、座部252を用いれば、被介護者が座位状態にある場合だけではなく臥位状態にある場合にも対応できる。なお、座部252と同一構造でかつ横幅および縦幅が座部252より大きい座部を用いれば、座位状態および臥位状態のいずれにも一層容易に対応できる。また、座部252の表面に低摩擦力の材質を用いることによって、座部252をベッド194(たとえば、綿からなるベッドシーツ)上で円滑に滑らせることができる。さらに、係止部276a,276b,278a,278bを、移乗機10の胴体支持部198の後面(胴体が接触する面とは反対側の面)に取り付けられる2つのフック199c,199d(図27参照)に係止することによって、座部252を胴体支持部198に簡単に固定できる。
図40(a)および(b)を参照して、移乗機10はさらに頭部支持部280を含む。頭部支持部280は、被介護者が頭部を動かした際、バランスをくずさないように頭部を支持するものである。頭部支持部280は、クッション性を有する支持部本体282と、支持部本体282に取り付けられる紐284と、抱き付き部202の天板242に取り付けられる2つの紐286a,286bと、紐284の一端部と紐286aとを連結するバックル288aと、紐284の他端部と紐286bとを連結するバックル288bとを含む。バックル288aの雄部290aは紐284の一端部に取り付けられ、バックル288aの雌部292aは紐286aに取り付けられる。バックル288bの雄部290bは紐284の他端部に取り付けられ、バックル288bの雌部292bは紐286bに取り付けられる。抱き付き部202の天板242に取り付けられた紐286a,286bと、支持部本体282に取り付けられた紐284とを、バックル288a,288bを介して連結することによって、頭部支持部280が抱き付き部202に取り付けられる。この実施形態では、支持部本体282は、後頭部だけではなく、首の後部および両側部を覆うように形成される。紐284は、その両端部が支持部本体282からはみ出すように、支持部本体282に取り付けられる。したがって、被介護者に頭部支持部280を装着することによって、頭部の左右への動きおよび後方への動きを抑制できる。また、バックル288a,288bによって、頭部支持部280を抱き付き部202ひいては移乗機10に容易に着脱できる。
図41を参照して、移乗機10はさらにアームカバー294を含む。アームカバー294は、抱き付き部202に取り付けられ、移乗の際、角度調整を行ったときに抱き付き部202から手が脱落するのを防ぐものである。アームカバー294は、カバー本体296と、カバー本体296の上端部両側に設けられる環状の係止部298a,298bとを含む。係止部298a,298bを抱き付き部202の天板242の係止部(図示せず)に掛けるだけで、アームカバー294を抱き付き部202に取り付けることができる。これによって、抱き付き部202の天板242と底板244との間の後方を覆うことができる。
ついで、図42~図49を参照して、座位式の支持部12aを用いた移乗機10の移乗動作について説明する。ここでは、胴体支持部として、対面式の胴体支持部198を使用した場合の移乗動作を説明する。
まず、図42に示すように被介護者をベッド194上で横向きに寝かせ、ベッド194上に座部252を展開した状態で配置する。次に、図43に示すように被介護者を座部252上に仰向けに載せる。このとき、足を少しベッドサイドから出しておく。足をベッドサイドから少し出しておくことによって、起こす時に腹部が圧迫されることを防ぐことができる。そして、 図38をも参照して、座部252の紐268a,268bを引いて腰部支持部258を起こし、バックル270aによって紐266a,268aを連結し、バックル270bによって紐266b,268bを連結し、図44に示すように被介護者をベッド194上に座らせる。さらに、座部252を回転させて、図45に示すように被介護者をベッドサイドに座らせた状態にする。そして、移乗機10を被介護者に近づけ、開脚させた両足をそれぞれ足置き20a,20bに載せた状態で、図46に示すように胴体支持部198に被介護者をもたれさせ、抱き付き部202に抱き付かせる。このとき、顎支持部200に被介護者の顎をのせ、被介護者の両脇はそれぞれ、脇支持部204a,204bに支持され、図示しないが、座部252と頭部支持部280とを固定する。座部252は、胴体支持部198に固定され、頭部支持部280は、抱き付き部202の天板242に固定される。次に、角度調整部196を動作させて、胴体支持部198を図47に示すように傾け、被介護者の臀部を浮かせる。その後、位置調整部18を動作させて、図48に示すように被介護者を移乗機10の後方向にスライドさせる。このとき、足置き調整部22a,22bも動作し、胴体支持部198に同期して胴体支持部198と同方向に足置き20a,20bも移動する。そして最後に、図49に示すように、角度調整部196を動作させて、胴体支持部198の角度を戻して移乗が完了する。このとき、被介護者は、移乗機10の位置調整部18上に座っている状態となる。なお、移乗機10からベッド194に移乗する際は、上述の手順を逆に行うことによって、ベッド194に移乗することができる。
ついで、胴体支持部198に代えて図50~図56に示す胴体支持部198aを用いた場合について説明する。胴体支持部198aのような斜面式胴体支持部は、対面式胴体支持部を使用することができない開脚不能な被介護者に用いられる。胴体支持部198aの角度調整可能部302(後述)は、取付部214の4つの貫通孔232と、ねじ(図示せず)およびナット(図示せず)とによって、取付部214の前面に取り付けられる(図32参照)。
図50~図56を参照して、胴体支持部198aは、蝶番機構300を含む。蝶番機構300は、2つの板状の角度調整可能部302,304と、2つの板状の固定部306,308と、組み合わされた角度調整可能部302,304および固定部306,308の全てを通る1本の軸310(図56参照)とを有し、蝶番のように角度調整可能部302,304の角度を変更することができる。角度調整可能部302と304とは、互いの側部で接触しかつ角度調整可能部302より角度調整可能部304の方が低くなるように配置される。また、固定部306は、角度調整可能部302と304とによって形成される上側の角部に設けられ、固定部308は、角度調整可能部302と304とによって形成される下側の角部に設けられる。
角度調整可能部302と固定部306とのそれぞれの上面を連結する角度調節金具312、および角度調整可能部304と固定部308とのそれぞれの下面を連結する角度調節金具314によって、角度調整可能部302,304を一定の角度で固定することができる。図55および図56を参照して、左腕を支持するために、角度調整可能部304の後面(胴体が接触する面とは反対側の面)には、直動ベアリングロック機構316、直動ベアリングロック機構316によって上下方向の位置調整が可能となる左脇支持部318a、および左手グリップ320が設けられる。図54を参照して、胴体支持部198aの後面(胴体が接触する面とは反対側の面)には、フック322a,322bがブラケット322cを介して取り付けられる。座部252の係止部276a,276b,278a,278bを、フック322a,322bに係止することによって、座部252を胴体支持部198aに簡単に固定できる。角度調整可能部302の左側部には、右脇を支持するための右脇支持部318bが設けられ、角度調整可能部302の後部には、抱き付き部202aが設けられる。右脇支持部318bは、脇支持部204bと同様に構成され、抱き付き部202aは、抱き付き部202から左手用のグリップ248bを除いた構成に相当する。また、抱き付き部202aの上部には、抱き付き部202と同様に、顎支持部200が設けられる。角度調節金具312,314としては、たとえば向陽技研株式会社製の「ISギア」が用いられる。直動ベアリングロック機構316としては、たとえば株式会社ハイテック・プレシジョン製の固定機構付き直線ガイドユニット「フィット・オン」が用いられる。
このような胴体支持部198aによれば、移乗の際、身体と胴体支持部198aとが正対せず、角度がついた形となり、斜めに移乗することによって開脚する必要がない。また、身体が斜めの状態で移乗動作を行うことによって、胸部、腹部および脇腹部の一部で圧力を分散することができる。さらに、移乗後、被介護者にとって斜めの体勢は負荷になると考えられるが、移乗後に身体を回転させることで胴体支持部198aを背もたれとして使用することができる。このとき、蝶番機構300の角度調整可能部302,304の角度を元に戻せば、背もたれとして効果的に用いることができる。
ついで、図57~図62を参照して、斜面式の胴体支持部198aを用いた移乗機10の移乗動作について説明する。
被介護者をベッド194上に座らせる状態までは、図42~図44に示す対面式胴体支持部を用いた場合と同様であるので、その重複する説明は省略する。
ついで、座部252を回転させて、図57に示すように被介護者をベッドサイドに座らせ、その状態で、移乗機10を被介護者に対して角度をつけて近づける。次に、図58に示すように胴体支持部198aの角度調整可能部302,304の角度を調整し、被介護者に対して角度調整可能部302が略正対するように、胴体支持部198aを変形させる。被介護者は、右脇支持部318bで右脇を支持されながら右手でグリップ248aを握って抱き付き部202aに抱き付き、左脇支持部318aで左脇を支持されながら左手で左手グリップ320を握る。このとき、座部252を胴体支持部198aに取り付ける。そして、角度調整部196を動作させることによって、被介護者の臀部を浮かす。この状態で位置調整部18の電動スライダ70a,70bを動作させ、図59に示すように身体を移乗機10へ移動させる。このとき、足置き調整部22a,22bも動作し、胴体支持部198aと同期して胴体支持部198aと同方向に足置き20a,20bも移動する。その後、図60に示すように角度調節部196を元の角度に戻し、斜め方向での移乗状態となる。この状態の移乗であれば身体に負荷が働いてしまう可能性がある。そこで、座位を変更するために、図61に示すように胴体支持部198aの角度調整可能部302,304の角度を元に戻し、角度調整可能部302と304とが略面一になるように胴体支持部198aを変形させる。それと同時に、取り付けていた座部252の固定を外す。そして、図62に示すように、座部252と一体的に被介護者を回転させ、胴体支持部198aが背もたれになるように座位を変更する。最後に、座部252を移乗機10に固定して、移乗が完了する。なお、移乗機10からベッド194に移乗する際は、上述の手順を逆に行うことによって、ベッド194に移乗することができる。また、胴体支持部198aを用いる場合においても、必要に応じて、顎支持部200によって顎が支持され、頭部支持部280によって頭部が支持される。
このような移乗機10によれば、支持部12(12a)は移動部11によって交換可能に支持される。したがって、たとえば、座位不可能な被介護者に対しては、臥位式の支持部12を用いることによって、被介護者は臥位状態のまま移乗できる。また、座位可能な被介護者に対しては、座位式の支持部12aを用いることによって、被介護者は、少なくとも座位状態になるために起き上がる必要があるので、体を動かしつつ移乗できる。このように、被介護者の状態(たとえば、寝たきり、座位可能等)に適した支持部12または支持部12aに交換できる。
移乗機10は被介護者のベッド194とは独立して構成されるので、被介護者のベッド194とは独立して移乗機10を使用することができ、たとえば複数のベッド194にいる各被介護者に対して、移乗機10を使用できる。また、移乗機10を使用するにあたって、ベッド194を買い替える必要がなく、コストを削減できる。
被介護者を臥位状態のままスライドさせることによって、被介護者を支持部12上に容易に移乗させることができる。
支持部12(12a)の水平方向の位置を調整することによって、被介護者が移乗しやすい位置に支持部12(12a)を位置させることができる。
被介護者を臥位状態のまま支持部12上に乗せた後、背部支持部110を上方に揺動させることによって、被介護者の上体を起こすことができる。これによって、被介護者の状態に適した姿勢を保つことができる。また、背部支持部110を上方に揺動させた状態で移乗機10を移動させることによって、被介護者の状態に適した電動車椅子として使用できる。
脚部支持部112を下方に揺動させることによって、被介護者の脚部を下方に位置させることができる。これによって、被介護者の状態にさらに適した姿勢を保つことができる。また、脚部支持部112を下方に揺動させた状態で移乗機10を移動させることによって、被介護者の状態にさらに適した電動車椅子として使用できる。
支持部12aを用いた場合には、被介護者はベッド上で起き上がり、座位状態から胴体支持部198(198a)にもたれることができる。また、角度調整部196によって、胴体支持部198(198a)とともに被介護者の体が持ち上げられる。このように、被介護者は、胴体支持部198(198a)および角度調整部196に補助されつつ適度に体を動かしながら移乗できる。
開脚可能な被介護者には対面式の胴体支持部198を用い、開脚不可能な被介護者には斜面式の胴体支持部198aを用いることができる。このように、被介護者の状態(たとえば、股関節開閉可能、股関節開閉不可能等)に適した胴体支持部198または胴体支持部198aに交換できる。
高さ調整部16によって、被介護者が寝ているベッド194の高さに合わせて支持部12(12a)の高さを調整できるので、様々な高さのベッドに対応できる。
なお、移乗機10のベッド状態において、支持部12は少なくとも水平方向に延びている限り多少傾いていてもよい。
この発明は、ベッド上の被介護者に対して使用される場合に限定されず、たとえば、ベッドを用いることなく床や畳の上に敷かれた布団上の被介護者に対して使用されてもよい。