JP7115459B2 - 厚鋼板の圧延方法及び圧延装置 - Google Patents
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Description
即ち、特許文献1及び2に示す圧延方法にあっては、実験室レベルでの実験回帰式や材料速度一定則に基づいてモデルが構築され、その構築されたモデルに基づいて制御量が決定されているため、非定常なメタルフローが生じた場合の予測精度に劣るという問題があった。
また、特許文献3に示す圧延方法の場合、調整圧延及び幅出圧延の最終パス前に走間幅長さ計によって厚鋼板の幅方向と長さ方向に走間で走査しているが、厚鋼板の圧延では圧延時にロールバイトに供給される冷却水がヒュームとなって飛散している。このため、飛散した冷却水によって走間幅長さ計が汚れ、劣化し、その汚れ・劣化に伴う測定誤差の上昇が経時的に発生し、定期的なメンテナンスを要する問題があった。
先ず、過去の厚鋼板の圧延条件実績と当該過去の厚鋼板の圧延条件実績に対応する過去の厚鋼板の平面形状実績とを結び付ける機械学習手法による予測モデルを作成する。そして、作成された予測モデルに基づいて、仕上圧延後の厚鋼板の平面形状を予測し、その予測された仕上圧延後の厚鋼板の平面形状が、要求される製品形状である目標形状に漸近するように、圧延条件を逐次変更することで圧延後に形成されるロスを最小化して製品歩留まりを高くすることができる圧延方法及び圧延装置を見出した。
図1に示す厚鋼板の圧延工程において、被圧延材としてのスラブSを所定の板厚まで調整する調整圧延工程と、調整圧延工程から平面上で圧延方向を90度回転してスラブSを所定の製品幅にする幅出圧延工程とを備えている。また、厚鋼板の圧延工程は、幅出圧延工程から再び圧延方向を90度回転して元の方向に戻してスラブSを所定の製品板厚にする仕上圧延工程を備えている。そして、厚鋼板の圧延は、図2に示す1機の圧延機3にてリバース圧延で行われており、スラブSに対してこれら調整圧延工程、幅出圧延工程及び仕上圧延工程で所定のパス回数繰り返して行うことにより、所望の板厚、板幅、板長を有する矩形形状の厚鋼板が得られる。
そして、調整圧延及び幅出圧延のそれぞれの最終パスで圧延長手方向の両端部に厚肉部を付与する。これにより、仕上圧延後の厚鋼板における矩形形状にならない部分のロス(圧延長手方向両端部のクロップロスや幅異形ロス、図1において、タイコ形状やツヅミ形状となった厚鋼板のうち製品採取可能領域からはみ出した領域)を軽減する。
そして、圧延機3には、圧下装置4が設けられ、圧下装置4にはその圧下装置4を制御する圧下制御装置5が設けられている。圧下制御装置5は、上位計算機6から送信される圧延スケジュールの圧下条件に従って圧下装置4による圧延機3の圧下量を制御する。
また、圧下制御装置5及び上位計算機6には、調整圧延及び幅出圧延のそれぞれの最終パスで圧延長手方向の両端部に付与される厚肉部の形状を含む最適化された圧延条件を決定するための演算装置7が接続されている。
記憶装置89は、例えばハードディスクドライブ、半導体ドライブ、光学ドライブ等であり、本システムにおいて必要な情報を記憶する装置である。記憶装置89は、例えば、過去の厚鋼板の圧延条件実績に関する情報、過去の厚鋼板の圧延条件実績に対応する過去の厚鋼板の仕上圧延後の平面形状実績に関する情報、上位計算機6から入力される圧延対象の厚鋼板の圧延条件に関する情報、上位計算機6から入力される、要求される製品形状である目標形状に関する情報、及び後述する予測モデル作成部77によって作成された予測モデルとしてのニューラルネットワークモデル等が記憶される。
演算装置本体71は、RAM72と、ROM73と、演算処理部76とを備えている。ROM73は、予測モデル作成プログラム74と、最適化圧延条件決定プログラム75とを記憶している。また、演算処理部76は、演算処理機能を有し、RAM72及びROM73とバス87により接続されている。また、RAM72、ROM73、及び演算処理部76は、バス87を介して入力装置88、記憶装置89、及び出力装置90に接続されている。
演算処理部76の予測モデル作成部77は、過去の厚鋼板の圧延条件実績と当該過去の厚鋼板の圧延条件実績に対応する過去の厚鋼板の仕上圧延後の平面形状実績とを結び付ける機械学習手法による予測モデルを作成するものであり、情報読込部78、前処理部79、モデル作成部80、及び結果保存部81を備えている。機械学習手法による予測モデルとして、本実施形態では、ニューラルネットワークモデルを用いる。この予測モデル作成部77は、入力装置88から予測モデルの作成の指示を受けた際に、ROM73に記憶されている予測モデル作成プログラム74を実行し、情報読込部78、前処理部79、モデル作成部80、及び結果保存部81の各機能を実行する。
先ず、図4に示すように、演算処理部76の予測モデル作成部77は、ステップS1において、入力装置88から予測モデルの作成の指示があるかないかを判定する。判定結果がYESのときはステップS2に移行し、判定結果がNoのときはステップS1を繰り返す。本システムの管理者は、圧延装置1による厚鋼板の圧延を行う前に、入力装置88から予測モデルの作成の指示を出す。
そして、予測モデル作成部77は、ステップS2において、過去の厚鋼板の圧延条件実績と当該過去の厚鋼板の圧延条件実績に対応する過去の厚鋼板の仕上圧延後の平面形状実績とを結び付ける機械学習手法による予測モデルとしてニューラルネットワークモデルを作成する(予測モデル作成ステップ)。
先ず、予測モデル作成部77の情報読込部78は、ステップS21において、記憶装置89に記憶されている過去の厚鋼板の圧延条件実績を読み込む。ここで、「圧延条件」は、スラブSの寸法、圧延後の製品寸法、目標の幅出し量、調整圧延及び幅出圧延の最終パスで圧延長手方向の両端部に付与する厚肉部のための圧下量、圧延方向、ワークロール3aの寸法、摩耗、及びサーマルクラウンについての情報等を意味する。
次いで、予測モデル作成部77の前処理部79は、ステップS23において、ステップS21で読み込まれた過去の厚鋼板の圧延条件実績情報を、予測モデル作成用に加工する。具体的には、前処理部79はステップS21で読み込まれた圧延条件実績情報をニューラルネットワークモデルに読み込ませるために0~1の間で標準化する。
ハイパーパラメータとして通常、隠れ層の数、各々の隠れ層におけるニューロン数、各々の隠れ層におけるドロップアウト率(ニューロンの伝達をある一定の確率で遮断する)、各々の隠れ層における活性化関数が設定されるがこれに限定されない。
ハイパーパラメータの最適化手法は特に限定されないが、パラメータを段階的に変更するグリッドサーチや、パラメータをランダムに選択するランダムサーチ、あるいはベイズ最適化による探索を用いることができる。
ハイパーパラメータを用いたニューラルネットワークモデルによる学習に際し、入力層101には、ステップS23で加工され過去の厚鋼板の圧延条件実績情報、即ち、0~1の間で標準化された過去の厚鋼板の圧延条件実績情報が格納される。格納される圧延条件実績情報の説明変数は厚鋼板の変形に関わる変数が選択されることが望ましいが、その数及び変形との相関の高さには限定されない。
中間層102において、あるニューロンから続く隠れ層へのニューロンの伝達は、重み係数による変数の重み付けとともに、活性化関数を介して行われる。活性化関数にはシグモイト関数やハイパボリックタンジェント関数、あるいはランプ関数を用いることができる。
ニューラルネットワークモデルの重み係数が学習された後、モデル作成部80は、ステップS23で作成した評価用データを、この重み係数が学習されたニューラルネットワークモデルに入力して、評価用データに対する推定結果を得る。
これにより、予測モデル作成部77によるステップS2(予測モデル作成ステップ)が終了する。
先ず、厚肉部形状決定部82の情報読込部83は、ステップS41において、ステップS2で作成された予測モデルとしてのニューラルネットワークモデルを記憶装置89から読み込む。
次いで、情報読込部83は、ステップS42において、上位計算機6から入力装置88を介して記憶装置89に記憶されている要求される製品形状である目標形状を読み込む。
その後、最適化圧延条件決定部82の平面形状予測部84は、ステップS44において、ステップS41で読み込まれた予測モデルとしてのニューラルネットワークモデルにより、ステップS43で読み込まれた圧延対象の厚鋼板の圧延条件に対応する仕上圧延後の厚鋼板の平面形状を予測する。ニューラルネットワークモデルによる予測結果は、出力層103に出力され、出力層103に出力される仕上圧延後の厚鋼板の平面形状は、矩形形状をよく判定できるように、仕上圧延後の厚鋼板の平面形状のうち、周囲四辺の内2辺以上を含んでいることが好ましい。
そして、ステップS45における判定結果がYESのときはステップS46に移行し、判定結果がNoのときはステップS48に移行する。
一方、ステップS48で圧延条件の一部が変更されているときは、ステップS46では、圧延条件決定部85は、ステップS48で圧延条件の一部が変更された圧延対象の厚鋼板の圧延条件を、厚鋼板の調整圧延の最終パスで圧延長手方向の両端部に付与する厚肉部の形状を含む最適化された厚鋼板の圧延条件として決定する。
これにより、最適化圧延条件決定部82によるステップS4(最適化圧延条件決定ステップ)が終了する。
そして、圧下制御装置5は、結果出力部86から伝送された最適化された圧延条件に基づき、圧下装置4によるワークロール3aの圧下位置を制御し、以降の圧延を実施する。
先ず、最適化圧延条件決定部82の情報読込部83は、ステップS61において、ステップS2で作成された予測モデルとしてのニューラルネットワークモデルを記憶装置89から読み込む。
次いで、情報読込部83は、ステップS62において、上位計算機6から入力装置88を介して記憶装置89に記憶されている要求される製品形状である目標形状を読み込む。
その後、最適化圧延条件決定部82の平面形状予測部84は、ステップS64において、ステップS61で読み込まれた予測モデルとしてのニューラルネットワークモデルにより、ステップS63で読み込まれた圧延対象の厚鋼板の圧延条件に対応する仕上圧延後の厚鋼板の平面形状を予測する。ニューラルネットワークモデルによる予測結果は、出力層103に出力され、出力層103に出力される仕上圧延後の厚鋼板の平面形状は、矩形形状をよく判定できるように、仕上圧延後の厚鋼板の平面形状のうち、周囲四辺の内2辺以上を含んでいることが好ましい。
そして、ステップS65における判定結果がYESのときはステップS66に移行し、判定結果がNoのときはステップS68に移行する。
一方、ステップS68で圧延条件の一部が変更されているときは、ステップS66では、圧延条件決定部85は、ステップS68で圧延条件の一部が変更された圧延対象の厚鋼板の圧延条件を、厚鋼板の幅出圧延の最終パスで圧延長手方向の両端部に付与する厚肉部の形状を含む最適化された厚鋼板の圧延条件として決定する。
これにより、最適化圧延条件決定部82によるステップS6(最適化圧延条件決定ステップ)が終了する。
そして、圧下制御装置5は、結果出力部86から伝送された最適化された圧延条件に基づき、圧下装置4によるワークロール3aの圧下位置を制御し、以降の圧延を実施する。
また、本実施形態に係る厚鋼板の圧延方法及び圧延装置1によれば、機械学習手法による予測モデルを、ニューラルネットワークモデルとしてあるので、厚鋼板の圧延後の平面形状をより的確に予測することができる。
更に、本実施形態に係る厚鋼片の圧延方法及び圧延装置1によれば、仕上圧延後の厚鋼板の平面形状の予測は、仕上圧延後の厚鋼板の平面形状の周囲4辺のうち2辺以上の予測である。これにより、仕上圧延後の厚鋼板の平面矩形形状を的確に予測することができる。
例えば、機械学習手法による予測モデルとしてニューラルネットワークモデル以外の決定木などを用いても良い。
また、仕上圧延後の厚鋼板の平面形状の予測及び最適化された圧延条件の決定を行う最適化された圧延条件の決定プログラムの実行は、本実施形態では、調整圧延及び幅出圧延のそれぞれの最終パス前に行っているが、厚鋼板の調整圧延及び幅出圧延のそれぞれの少なくとも最終パスの前に行えばよく、調整圧延及び幅出圧延のそれぞれの最終パス以前の全てのスケジュール計算時に実行するようにしてもよい。
また、比較例2でも実施例と同様に、厚みが約250mmのスラブを、製品板厚12mm、製品板幅4000mmの製品にまで圧延する圧延する厚鋼板の圧延を行った。そして、比較例2では、ニューラルネットワークモデルを用いずに過去の類似圧延実績から線形回帰でワークロールの圧下位置を設定した以外は実施例と同様にして圧延を行った。
図9に示すように、実施例の場合、クロップ長(先端部及び尾端部のクロップ長の合計)が比較例1、2と比較して減少しており、歩留まりを悪化させることなく圧延を行うことができた。
これに対して、比較例1の場合、実験回帰式と材料速度一定則から構成される従来の平面形状予測に基づいてワークロールの圧下位置を設定しているため、非定常なメタルフローが考慮できず、クロップ長を低減することが困難であった。
また、比較例2の場合、過去の類似圧延実績から線形回帰でワークロールの圧下位置を設定しているものの、クロップ長を最小化する最適化処理が行われていないためにクロップ長の低減量はわずかに留まっている。
2 搬送ロール
3 圧延機
3a ワークロール
3b バックアップロール
4 圧下装置
5 圧下制御装置
6 上位計算機
7 演算装置
71 演算装置本体
72 RAM
73 ROM
74 予測モデル作成プログラム
75 最適化圧延条件決定プログラム
76 演算処理部
77 予測モデル作成部
78 情報読込部
79 前処理部
80 モデル作成部
81 結果保存部
82 最適化圧延条件決定部
83 情報読込部
84 平面形状予測部
85 圧延条件決定部
86 結果出力部
87 バス
88 入力装置
89 記憶装置
90 出力装置
S スラブ
Claims (6)
- 厚鋼板の調整圧延及び幅出圧延で圧延長手方向の両端部に厚肉部を付与し、その後、仕上圧延する厚鋼板の圧延方法であって、
前記厚鋼板の調整圧延及び幅出圧延のそれぞれの少なくとも最終パスの前に、過去の厚鋼板の圧延条件実績と当該過去の厚鋼板の圧延条件実績に対応する過去の厚鋼板の仕上圧延後の平面形状実績とを結び付ける機械学習手法による予測モデルに対し、圧延対象の厚鋼板の圧延条件を入力して仕上圧延後の厚鋼板の平面形状を予測するとともに、予測された前記仕上圧延後の厚鋼板の平面形状が、要求される製品形状である目標形状に漸近するように、前記圧延対象の厚鋼板の圧延条件を逐次変更して前記厚鋼板の調整圧延及び幅出圧延のそれぞれの最終パスで圧延長手方向の両端部に付与する厚肉部の形状を含む最適化された圧延条件を決定し、
最適化された圧延条件で以降の圧延を実施するものであり、
前記過去の厚鋼板の圧延条件実績における圧延条件及び前記圧延対象の厚鋼板の圧延条件における圧延条件は、スラブの寸法、圧延後の製品寸法、目標の幅だし量、調整圧延及び幅出圧延の最終パスで圧延長手方向の両端部に付与する厚肉部のための圧下量、圧延方向、ワークロールの寸法、摩耗、及びサーマルクラウンについての情報であることを特徴とする厚鋼板の圧延方法。 - 前記機械学習手法による予測モデルは、ニューラルネットワークモデルであることを特徴とする請求項1に記載の厚鋼板の圧延方法。
- 前記仕上圧延後の厚鋼板の平面形状の予測は、仕上圧延後の厚鋼板の平面形状の周囲4辺のうち2辺以上の予測であることを特徴とする請求項1又は2に記載の厚鋼板の圧延方法。
- 厚鋼板の調整圧延及び幅出圧延で圧延長手方向の両端部に厚肉部を付与し、その後、仕上圧延する厚鋼板の圧延装置であって、
前記厚鋼板の調整圧延及び幅出圧延のそれぞれの少なくとも最終パスの前に、過去の厚鋼板の圧延条件実績と当該過去の厚鋼板の圧延条件実績に対応する過去の厚鋼板の仕上圧延後の平面形状実績とを結び付ける機械学習手法による予測モデルに対し、圧延対象の厚鋼板の圧延条件を入力して仕上圧延後の厚鋼板の平面形状を予測するとともに、予測された前記仕上圧延後の厚鋼板の平面形状が、要求される製品形状である目標形状に漸近するように、前記圧延対象の厚鋼板の圧延条件を逐次変更して前記厚鋼板の調整圧延及び幅出圧延のそれぞれの最終パスで圧延長手方向の両端部に付与する厚肉部の形状を含む最適化された圧延条件を決定する最適化圧延条件決定部を備え、
最適化された圧延条件で以降の圧延を実施するものであり、
前記過去の厚鋼板の圧延条件実績における圧延条件及び前記圧延対象の厚鋼板の圧延条件における圧延条件は、スラブの寸法、圧延後の製品寸法、目標の幅だし量、調整圧延及び幅出圧延の最終パスで圧延長手方向の両端部に付与する厚肉部のための圧下量、圧延方向、ワークロールの寸法、摩耗、及びサーマルクラウンについての情報であることを特徴とする厚鋼板の圧延装置。 - 前記機械学習手法による予測モデルは、ニューラルネットワークモデルであることを特徴とする請求項4に記載の厚鋼板の圧延装置。
- 前記最適化圧延条件決定部による仕上圧延後の厚鋼板の平面形状の予測は、仕上圧延後の厚鋼板の平面形状の周囲4辺のうち2辺以上の予測であることを特徴とする請求項4又は5に記載の厚鋼板の圧延装置。
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