以下に添付図面を参照して、本発明に係る液体吐出装置、制御方法及び制御プログラムの実施の形態を説明する。以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、各実施の形態は、内容を矛盾させない範囲で、適宜組み合わせることができる。
(実施の形態1)
図1を用いて、実施の形態1に係る液体吐出装置100のハードウェア構成を説明する。図1は、実施の形態1に係る液体吐出装置100のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、液体吐出装置100は、制御部101を備える。また、液体吐出装置100は、装置全体の制御を司るCPU(Central Processing Unit)102を備える。液体吐出装置100は、CPU102に対して、ROM(Read Only Memory)103と、RAM(Random Access Memory)104と、不揮発性メモリ(NVRAM:Non‐Volatile RAM)105と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)106とを接続する。また、液体吐出装置100は、CPU102に対して操作部112を接続する。
ROM103は、CPU102が実行するプログラム、その他の固定データ等を格納する。RAM104は、画像データ等を一時格納する。不揮発性メモリ105は、液体吐出装置100の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能なメモリである。ASIC106は、画像データに対する各種信号処理、並び替え処理等を行なう画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理する。操作部112は、各種情報の入力及び表示を行なうための入力装置や出力装置を備える。
また、液体吐出装置100は、I/F107と、印刷制御部108と、主走査モータ駆動部109と、副走査モータ駆動部110と、I/O111とを備える。
I/F107は、ホスト側との間で、データや信号を送受する。具体的には、I/F107は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナ等の画像読取装置、デジタルカメラ等の撮像装置等のホストのプリンタドライバが生成した印刷データ等を、ケーブルやネットワーク等を介して受信する。つまり、制御部101に対する印刷データの生成出力は、ホスト側のプリンタドライバによって行なわれても良い。CPU102は、I/F107に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析する。そして、ASIC106にて画像処理やデータの並び替え処理等が行なわれ、画像データが印刷制御部108やヘッドドライバ114に転送される。
印刷制御部108は、液体吐出ヘッド119を駆動するための駆動波形を生成するとともに、液体吐出ヘッド119が液体を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段を選択駆動させる画像データ及びそれに伴う各種データを、ヘッドドライバ114に出力する。
印刷制御部108は、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータ構成となっていても良い。印刷制御部108は、CPUがROM等に記憶されたプログラムを実行することによって所望の機能を発揮する。
印刷制御部108のCPUが実行するプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成しても良い。
さらに、印刷制御部108のCPUが実行するプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることで提供するように構成しても良い。また、印刷制御部108のCPUが実行するプログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供又は配布するように構成しても良い。
主走査モータ駆動部109は、主走査モータ115を駆動する。主走査モータ115は、駆動によりキャリッジ118を主走査方向に移動させる。副走査モータ駆動部110は、副走査モータ116を駆動する。副走査モータ116は、駆動によりキャリッジ支持部117を副走査方向に移動させる。I/O111は、環境センサ113からの情報を取得し、液体吐出装置100の各部の制御に要する情報を抽出する。例えば、環境センサ113は、環境温度や環境湿度等を検出する。なお、I/O111は、環境センサ113以外の各種センサからの検知信号も入力する。
また、液体吐出装置100は、キャリッジ支持部117を備える。キャリッジ支持部117は、液体吐出ヘッド119を有するキャリッジ118と、イオンを生成するイオナイザ120とを備える。なお、後述するように、キャリッジ118には、UVランプ122も搭載される。
ここで、液体吐出装置100における印刷制御処理の概略について説明する。
液体吐出装置100のCPU102は、I/F107の受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC106にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行なって印刷制御部108に転送する。
印刷制御部108は、所要のタイミングでヘッドドライバ114に画像データや駆動波形を出力する。詳細には、印刷制御部108は、ROM103に格納されてCPU102で読み出される駆動パルスのパターンデータをD/A変換して増幅することにより、1つの駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動波形を生成する。
なお、画像出力するための画像データ(ドットパターンデータ)の生成は、例えばROM103にフォントデータを格納して行なっても良いし、ホスト側のプリンタドライバで画像データをビットマップに展開して液体吐出装置100に転送するようにしても良い。
ヘッドドライバ114は、入力される画像データ(ドットパターンデータ)に基づいて、印刷制御部108から与えられる駆動波形を構成する駆動パルスを、選択的に液体吐出ヘッド119の圧力発生手段に対して印加することにより、液体吐出ヘッド119を駆動する。
図2は、実施の形態1に係る液体吐出装置100の外観の例を示す図である。図3は、実施の形態1に係る液体吐出装置100を正面視した例を示す図である。
図2に示すように、液体吐出装置100は、媒体を載置するためのステージ121と、液体吐出ヘッド119を搭載したキャリッジ118と、キャリッジ118を支持するキャリッジ支持部117とを有する。液体吐出装置100は、キャリッジ118を主走査方向に移動させながら、液体吐出ヘッド119を駆動することにより、停止している媒体に液体を吐出して1行分の液体塗布面を形成する。次に、液体吐出装置100は、キャリッジ支持部117を副走査方向に所定量移動させた後、次の行の液体塗布面を形成する。これらを繰り返すことにより、媒体全体に液体塗布面を形成する。
図3に示すように、キャリッジ118の内部に搭載された液体吐出ヘッド119は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)、W(ホワイト)、CL(クリア)等のUV硬化型インク(電磁波硬化型インクの一例)を吐出するノズルを備える。各ヘッドはピエゾを備え、ピエゾに駆動信号が印加されると、ピエゾは、収縮運動を起こし、収縮運動による圧力変化が生じることにより、UV硬化型インクを媒体上に吐出する。これにより、媒体上には、液体塗布面である画像が形成される。なお、液体吐出ヘッド119のヘッド数や色の組み合わせは、上記のものに限られない。
また、キャリッジ118の主走査方向の側面には、UVランプ122(UV光等の電磁波を照射する照射部の一例)が搭載される。UVランプ122は、液体吐出ヘッド119からのUV硬化型インクの吐出によって媒体上に形成された液体塗布面に、UV光を照射することにより、媒体上のUV硬化型インクを硬化させて乾燥させる。
イオナイザ120(イオン生成部の一例)は、イオンを生成する。イオナイザ120によるイオンの生成は、後述する生成制御部12の制御に従って、キャリッジ118が維持機構123の位置で待機しているときに実施される。イオナイザ120は、液体吐出ヘッド119を備えたキャリッジ118を支持するキャリッジ支持部117に配置される。イオナイザ120は、液体吐出ヘッド119によるUV硬化型インクの吐出のためにキャリッジ118が移動する主走査方向に直交する副走査方向に、キャリッジ支持部117の移動に応じて移動する。
媒体は、UV硬化型インクの硬化により、負又は正の電荷を帯びた帯電状態になる。媒体が帯電状態である場合は、UV硬化型インクの吐出によって発生するミストを引き付けることがあり、液体塗布面の品質が低下する可能性がある。このため、イオナイザ120は、イオンを生成することで、媒体の帯電状態を解消する除電処理を実施する。なお、イオナイザ120による除電処理の実施タイミングについては後述する。
図4は、実施の形態1に係る液体吐出装置100の機能構成例を示す図である。
図4に示すように、液体吐出装置100は、計量部11と、生成制御部12と、照射制御部13とを有する。
照射制御部13は、UVランプ122によるUV光の照射を制御する。より具体的には、照射制御部13は、液体吐出ヘッド119からUV硬化型インクが吐出されながら、キャリッジ118が主走査方向に移動する間、UVランプ122に、媒体上に形成された液体塗布面にUV光を照射させる制御を行なう。上述したように、媒体上のUV硬化型インクをUV光の照射によって硬化させる場合は、UV硬化型インクの液体から個体への状態変化が静電気を引き起こし、媒体が帯電状態になる可能性がある。
計量部11は、UV硬化型インク等の液体の吐出に応じて増加する特徴量を計量する。より具体的には、計量部11は、キャリッジ118の主走査方向への移動に応じて、液体吐出ヘッド119によって吐出されたUV硬化型インクの吐出量を計量する。
生成制御部12は、計量された特徴量に応じて、イオナイザ120によるイオンの生成を制御する。より具体的には、生成制御部12は、計量部11によって計量されたUV硬化型インクの吐出量が所定閾値以上であるかを判定する。所定閾値は、媒体に吸着するミストの量が許容できる程度の吐出量に対応する。つまり、UV硬化型インクの吐出量が所定閾値以上である場合は、媒体にミストが吸着することにより画像品質が低下し、許容できない画像品質になる可能性がある。
そして、生成制御部12は、UV硬化型インクの吐出量が所定閾値以上である場合に、イオナイザ120によるイオンの生成を制御する。これにより、イオナイザ120によってイオンが生成され、キャリッジ支持部117が副走査方向に移動することで、除電処理が実施されることになる。ここで、イオナイザ120によるイオンの生成は、キャリッジ118の主走査方向への移動中ではなく、維持機構123にキャリッジ118が到達したときに実施される。つまり、生成制御部12によるイオナイザ120に対する制御は、ある1行分の液体塗布面の形成後、次の行の液体塗布面の形成前の待機中に実施される。
ここで、図5A及び図5Bを用いて、UV硬化型インクの吐出量と、媒体の表面電位との関係を説明する。図5Aは、従来技術に係るUV硬化型インクの吐出量と、媒体の表面電位との関係の例を説明する図である。図5Bは、実施の形態1に係るUV硬化型インクの吐出量と、媒体の表面電位との関係の例を説明する図である。図5A及び図5Bにおいて、縦軸は「媒体の表面電位」を表し、横軸は「UV硬化型インクの吐出量(硬化量)」を表す。なお、従来技術は、次の行の液体塗布面の形成前の待機中に除電処理が実施されない場合を例に挙げる。
図5Aに示すように、従来技術に係る液体吐出装置では、次の行の液体塗布面の形成前の待機中に除電処理が実施されないため、UV硬化型インクの吐出量の増加に伴い、媒体の表面電位も増加する。媒体は、表面電位が一定量を超えると、より多くのミストが吸着する状態になる。なお、UV硬化型インクの吐出量は、詳細には、吐出されたUV硬化型インクにUV光が照射されるため、硬化したUV硬化型インクの量となる。
本実施の形態に係る液体吐出装置100では、UV硬化型インクの吐出量が所定閾値以上となった場合に、次の行の液体塗布面の形成前の待機中に除電処理が実施される。これにより、図5Bに示すように、媒体は、表面電位が一定量を超えることはなく、より多くのミストが吸着する状態になりにくい。
ところで、所定閾値については、媒体に吸着するミストの量が許容できる程度の吐出量に対応して設定された値ではなく、液体塗布面の品質(画像品質)に応じて設定されても良い。例えば、所定閾値は、画像品質を優先する場合、媒体にミストが吸着することをより削減するために、より低い値に設定されれば良い。
図6は、実施の形態1に係る品質を重視する場合の閾値の設定例を説明する図である。図6に示すように、液体塗布面の品質を重視する場合は、媒体の表面電位がより小さくなるように所定閾値を設定する。図6では、品質を重視しない場合の閾値を破線で表し、品質を重視する場合の閾値を実線で表している。つまり、UV硬化型インクの吐出量が図5Bで説明した吐出量よりも少ない状況で(図5Bよりも早いタイミングで)、除電処理が繰り返し実施されることになる。具体的には、生成制御部12は、媒体に形成される液体塗布面の品質に応じて設定された閾値(所定閾値)と、UV硬化型インクの吐出量とに応じて、イオナイザ120によるイオンの生成を制御する。例えば、生成制御部12は、品質を重視する場合、媒体の表面電位がより小さくなるように設定された所定閾値を用いて、UV硬化型インクの吐出量が所定閾値以上となった場合に、イオナイザ120によるイオンの生成を制御する。
次に、図7を用いて、実施の形態1に係る除電処理の流れを説明する。図7は、実施の形態1に係る除電処理の流れの例を示すフローチャートである。
図7に示すように、液体吐出装置100は、キャリッジ118の主走査方向への移動に伴い、液体吐出ヘッド119からのUV硬化型インクの吐出が開始された場合に(ステップS101:Yes)、UV硬化型インクの吐出量を計量する(ステップS102)。一方、液体吐出装置100は、液体吐出ヘッド119からのUV硬化型インクの吐出が開始されていない場合に(ステップS101:No)、吐出の開始待ちの状態となる。
そして、液体吐出装置100は、UV硬化型インクの吐出量が所定閾値以上であるかを判定する(ステップS103)。このとき、液体吐出装置100は、UV硬化型インクの吐出量が所定閾値未満である場合に(ステップS103:No)、ステップS102の処理を実行し、吐出量の計量を継続する。一方、液体吐出装置100は、UV硬化型インクの吐出量が所定閾値以上である場合に(ステップS103:Yes)、維持機構123にキャリッジ118が到達した際に、イオナイザ120にイオンを生成させて、除電処理を実施する(ステップS104)。
液体吐出装置100は、除電処理を実施した後は、吐出量をリセットしたうえで次の行の吐出に移行し、計量を再度開始する。液体吐出装置100は、このような処理を、全ての行に対する吐出が完了するまで継続して実施する。
上述したように、液体吐出装置100は、液体吐出ヘッド119からのUV硬化型インクの吐出に応じて吐出量を計量し、計量された吐出量が所定閾値以上である場合に、イオンの生成を制御するので、適切なタイミングで除電処理を実施することができる。また、液体吐出装置100は、UV硬化型インクの吐出量が所定閾値以上となった場合に、キャリッジ118が維持機構123の位置で待機しているときに、イオナイザ120にイオンを生成させ、除電処理を実施する。この結果、液体吐出装置100は、UV硬化型インクの吐出による媒体の帯電に対して、液体塗布面の形成の待機中に除電処理を実施するので、次の行の液体塗布面の形成において、ミストが媒体に吸着することを抑制することができる。また、液体吐出装置100は、液体塗布面の品質を重視する場合に、より小さくした所定閾値を用いて、計量された吐出量の閾値判定を行なうので、媒体へのミストの吸着をより削減することができる。
(実施の形態2)
上記実施の形態1では、UV硬化型インクの吐出量に応じてイオンを生成し、媒体の帯電に対して除電処理を実施する場合を説明した。かかる除電処理は、UV硬化型インクの吐出量をもとに実施されることに限定されない。例えば、除電処理は、液体塗布面に照射されるUV光の積算量をもとに実施されても良い。そこで、実施の形態2では、液体塗布面に照射されるUV光の積算量をもとに除電処理を実施する場合を説明する。なお、実施の形態2では、実施の形態1に係る液体吐出装置100と同様の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する場合がある。例えば、実施の形態2に係る液体吐出装置100aのハードウェア構成は、実施の形態1に係る液体吐出装置100のハードウェア構成と同様である。
図8は、実施の形態2に係る液体吐出装置100aの機能構成例を示す図である。
図8に示すように、液体吐出装置100aは、計量部11aと、生成制御部12と、照射制御部13とを有する。
照射制御部13は、実施の形態1と同様に、UVランプ122によるUV光の照射を制御する。また、実施の形態2において、照射制御部13は、UVランプ122にUV光を照射させている状況を計量部11aに通知する。
計量部11aは、UV硬化型インク等の液体の吐出に応じて増加するUV光の積算量を計量する。より具体的には、計量部11aは、キャリッジ118の主走査方向への移動に応じて、UVランプ122によって照射されたUV光の積算量を計量する。詳細には、計量部11aは、照射制御部13によってUVランプ122にUV光を照射させている状況であることを受け付け、これによりUV光の照射時間を導出する。そして、計量部11aは、UV光の照射時間と、予め設定されたUVランプ122の照度とを乗算し、積算量を求める。つまり、計量部11aは、液体吐出ヘッド119からUV硬化型インクが吐出されると、媒体上に形成されたUV硬化型インクの硬化のためにUV光が照射されるため、吐出ごとに増加するUV光の積算量を求める。
生成制御部12は、計量されたUV光の積算量に応じて、イオナイザ120によるイオンの生成を制御する。より具体的には、生成制御部12は、計量部11aによって計量されたUV光の積算量が所定閾値以上であるかを判定する。実施の形態2に係る所定閾値は、媒体に吸着するミストの量が許容できる程度のUV光の積算量に対応する。つまり、UV光が照射されている状況は、液体吐出ヘッド119からUV硬化型インクが吐出されている可能性がある状況である。このため、UV光の積算量が所定閾値以上である場合は、媒体にミストが吸着することにより画像品質が低下し、許容できない画像品質になる可能性がある。
従って、生成制御部12は、UV光の積算量が所定閾値以上である場合に、イオナイザ120によるイオンの生成を制御する。これにより、イオナイザ120によってイオンが生成され、キャリッジ支持部117が副走査方向に移動することで、除電処理が実施されることになる。イオナイザ120によるイオンの生成は、実施の形態1と同様に、キャリッジ118の主走査方向への移動中ではなく、維持機構123にキャリッジ118が到達したときに実施される。
ここで、図9A及び図9Bを用いて、UV光の積算量と、媒体の表面電位との関係を説明する。図9Aは、従来技術に係るUV光の積算量と、媒体の表面電位との関係の例を説明する図である。図9Bは、実施の形態2に係るUV光の積算量と、媒体の表面電位との関係の例を説明する図である。図9A及び図9Bにおいて、縦軸は「媒体の表面電位」を表し、横軸は「UV光の積算量」を表す。なお、従来技術は、次の行の液体塗布面の形成前の待機中に除電処理が実施されない場合を例に挙げる。
図9Aに示すように、従来技術に係る液体吐出装置では、次の行の液体塗布面の形成前の待機中に除電処理が実施されないため、UV光の積算量の増加に伴い、媒体の表面電位も増加する。媒体は、表面電位が一定量を超えると、より多くのミストが吸着する状態になる。
本実施の形態に係る液体吐出装置100aでは、UV光の積算量が所定閾値以上となった場合に、次の行の液体塗布面の形成前の待機中に除電処理が実施される。これにより、図9Bに示すように、媒体は、表面電位が一定量を超えることはなく、より多くのミストが吸着する状態になりにくい。
ところで、所定閾値については、媒体に吸着するミストの量が許容できる程度のUV光の積算量に対応して設定された値ではなく、液体塗布面の品質(画像品質)に応じて設定されても良い。例えば、所定閾値は、画像品質を優先する場合、媒体にミストが吸着することをより削減するために、より低い値に設定されれば良い。
図10は、実施の形態2に係る品質を重視する場合の閾値の設定例を説明する図である。図10に示すように、液体塗布面の品質を重視する場合は、媒体の表面電位がより小さくなるように所定閾値を設定する。図10では、品質を重視しない場合の閾値を破線で表し、品質を重視する場合の閾値を実線で表している。つまり、UV光の積算量が図9Bで説明した積算量よりも少ない状況で(図9Bよりも早いタイミングで)、除電処理が繰り返し実施されることになる。具体的には、生成制御部12は、媒体に形成される液体塗布面の品質に応じて設定された閾値(所定閾値)と、UV光の積算量とに応じて、イオナイザ120によるイオンの生成を制御する。例えば、生成制御部12は、品質を重視する場合、媒体の表面電位がより小さくなるように設定された所定閾値を用いて、UV光の積算量が所定閾値以上となった場合に、イオナイザ120によるイオンの生成を制御する。
次に、図11を用いて、実施の形態2に係る除電処理の流れを説明する。図11は、実施の形態2に係る除電処理の流れの例を示すフローチャートである。
図11に示すように、液体吐出装置100aは、キャリッジ118の主走査方向の移動に伴い、UVランプ122からのUV光の照射が開始された場合に(ステップS201:Yes)、UV光の積算量を計量する(ステップS202)。一方、液体吐出装置100aは、UVランプ122からのUV光の照射が開始されていない場合に(ステップS201:No)、UV光の照射待ちの状態となる。
そして、液体吐出装置100aは、UV光の積算量が所定閾値以上であるかを判定する(ステップS203)。このとき、液体吐出装置100aは、UV光の積算量が所定閾値未満である場合に(ステップS203:No)、ステップS202の処理を実行し、UV光の積算量の計量を継続する。一方、液体吐出装置100aは、UV光の積算量が所定閾値以上である場合に(ステップS203:Yes)、維持機構123にキャリッジ118が到達した際に、イオナイザ120にイオンを生成させて、除電処理を実施する(ステップS204)。
液体吐出装置100aは、除電処理を実施した後は、UV光の積算量をリセットしたうえで次の行の吐出に移行し、計量を再度開始する。液体吐出装置100aは、このような処理を、全ての行に対する吐出が完了するまで継続して実施する。
上述したように、液体吐出装置100aは、UVランプ122からの照射によるUV光の積算量を計量し、計量されたUV光の積算量が所定閾値以上である場合に、イオンの生成を制御するので、適切なタイミングで除電処理を実施することができる。また、液体吐出装置100aは、UV光の積算量が所定閾値以上となった場合に、キャリッジ118が維持機構123の位置で待機しているときに、イオナイザ120にイオンを生成させ、除電処理を実施する。この結果、液体吐出装置100aは、UV硬化型インクの吐出による媒体の帯電に対して、液体塗布面の形成の待機中に除電処理を実施するので、次の行の液体塗布面の形成において、ミストが媒体に吸着することを抑制することができる。また、液体吐出装置100aは、液体塗布面の品質を重視する場合に、より小さくした所定閾値を用いて、計量されたUV光の積算量の閾値判定を行なうので、媒体へのミストの吸着をより削減することができる。
また、上記文書中や図面中等で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータ等を含む情報は、特記する場合を除いて任意に変更することができる。また、図示した装置の各構成要素は、機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、装置の分散又は統合の具体的形態は、図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負担や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に、分散又は統合することができる。
また、実施の形態1と実施の形態2とは、内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることができる。例えば、液体吐出装置100は、UV硬化型インクの吐出量に対する閾値判定と、UV光の積算量に対する閾値判定とを順次行ない、何れかの閾値判定によって除電処理が実施された場合に、双方の特徴量をリセットし、再度閾値判定の処理を継続する。これにより、液体吐出装置100は、より適切なタイミングで除電処理を実施することができる。
また、液体吐出装置100で実行される制御プログラムは、一つの様態として、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。また、液体吐出装置100で実行される制御プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、液体吐出装置100で実行される制御プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供又は配布するように構成しても良い。また、制御プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成しても良い。
液体吐出装置100で実行される制御プログラムは、上述した各部(計量部11、生成制御部12、照射制御部13)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が記憶媒体から制御プログラムを読み出して実行することにより、上記各部が主記憶装置上にロードされ、計量部11、生成制御部12、照射制御部13が主記憶装置上に生成されるようになっている。
また、上記実施の形態で説明した液体吐出装置100は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけではなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
このような液体吐出装置100は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙にかかわる手段、その他、前処理装置、後処理装置等も含むことができる。
例えば、液体吐出装置100として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、紛体を層状に形成した紛体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
また、液体吐出装置100は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
上記の「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するもの等を意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布等の被記録媒体、電子基板、圧電素子等の電子部品、紛体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セル等の媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着する全てのものが含まれる。
上記の「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等、液体が一時的にでも付着可能であれば良い。
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであれば良く、特に限定されないが、常温、常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、等を含む溶液、懸濁液、エマルジョン等であり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
また、液体吐出装置100は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置等が含まれる。
また、液体吐出装置100としては他にも、用紙の表面を改質する等の目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置等がある。