以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
<実施の形態1>
図1および図2を参照しながら実施の形態1にかかる移乗支援装置の構成について説明する。まず、図1を参照しながら説明する。図1は、実施の形態1にかかる移乗支援装置の構成を示した斜視図である。移乗支援装置10は車椅子の形態を成している。以降の説明において、利用者が移乗支援装置10に座った場合に利用者の正面となる面を移乗支援装置10の正面と称する。すなわち、図1に示す斜視図は、移乗支援装置10の正面側から見た斜視図である。なお、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものとして、図1には、右手系の直交座標系が付されている。直交座標系のXY平面は地面に平行であり、XZ平面は移乗支援装置10の正面および背面に平行であり、YZ平面は移乗支援装置10の側面に平行である。また、図2以降において直交座標系が付されている場合に、図1のx軸、y軸、およびz軸方向と、これらの直交座標系のx軸、y軸、およびz軸方向はそれぞれ一致している。
移乗支援装置10は、自律歩行が困難な被介護者が座った状態のまま移動する機能および被介護者が移乗支援装置10から移乗先であるベッド等へ乗り移る場合に、乗り移る動作である移乗動作を支援する機能を主に有している。また移乗支援装置10は主な構成として、背板部11、支持台部12、架橋板13、情報処理部14、操作部15、高さ調整部16、走行部17を有している。
背板部11は、被介護者の背中を支持する背もたれの役目を担っており、支持台部12の一端から立設されている。背板部11は、上端の背面側にハンドル111を有している。ハンドル111は、被介護者を介助する介助者が移乗支援装置10を移動させる際に把持するために設けられている。
支持台部12は、上面視において略矩形を呈しており、上面に座面121を有している。座面121は、被介護者を下方から指示する支持面であって、被介護者の臀部を支持する。支持台部12は、背面側において背板部11に連結している。また、支持台部12は、第1肘掛122R、第2肘掛122L、および足台123を有している。
第1肘掛122Rは、支持台部12上面の右側部から立設しているレール部材である。また、第2肘掛122Lは、支持台部12上面の左側部から立設しているレール部材である。第1肘掛122Rおよび第2肘掛122Lは肘掛けであり、被介護者の上肢を支持するとともに、被介護者の身体が側方に転倒することを防止するために被介護者の姿勢を制限する。なお、第1肘掛122Rおよび第2肘掛122Lは、支持台部12に着脱可能に固定されている。第1肘掛122Rが取り外された場合に、被介護者は支持台部12の右側から支持台部12に乗り込むことができる。換言すると、移乗支援装置10に乗り込んでいる被介護者は、第1肘掛122Rを取り外した状態で、移乗支援装置10の右側(X軸プラス側)に身体を移動させて移乗支援装置10から降りることができる。同様に、第2肘掛122Lが取り外された場合に、被介護者は移乗支援装置10の左側(X軸マイナス側)から移乗支援装置10に乗り込み、また、移乗支援装置10から降りることができる。
足台123は、支持台部12の正面側の下部から下方に立設された連結部材124を介して設けられた板状の部材である。足台123は、被介護者が着座した際に被介護者の足を支持する。
支持台部12は、座面121の下方に架橋板13を収納している。架橋板13は、支持台部12から移乗先であるベッド等へ繰り出され、繰り出された架橋板13は、被介護者が移乗支援装置10から移乗先へ移乗する際に、移乗する被介護者の身体を支持する。
図2は、実施の形態1にかかる移乗支援装置が架橋板を繰り出した状態を示した斜視図である。図2において、移乗支援装置10は、支持台部12の右側面(X軸プラス側の側面)から側方(X軸プラス方向)であって座面121に平行な方向に架橋板13を繰り出している。架橋板13は、先端部13E近傍の下面(Z軸マイナス側の面)が移乗先によって支持されると、被介護者の身体を支持可能な構成となっている。すなわち、架橋板13は、被介護者の体重を支持することができるだけの剛性を有している。また、被介護者が架橋板13を利用して移乗先へ移乗する場合、被介護者は架橋板の上に身体を滑らせながら移動する。そのため、架橋板13は被介護者が容易に身体を滑らせることができるように滑らかな表面を有していることが好ましい。
支持台部12の背面側には、情報処理部14が連結されている。情報処理部14は、支持台部12に連結するケースを有し、ケースは制御部140および障害物センサ141等を有している。
障害物センサ141は、架橋部材が繰り出される領域の周囲の障害物を検出する。障害物センサ141は反射式の距離センサである。障害物センサ141は、支持台部12の右側面(X軸プラス側)に設けられており、架橋板13が繰り出される領域の上方(Z軸プラス側)に隣接する領域の物体を障害物として検出する。図2に障害物センサ141の検出領域141Aを示している。図2に示すように、検出領域141Aを架橋板13が繰り出される領域の上方に設定することにより、障害物センサ141は、被介護者の上肢と架橋板13の先端部13Eとが接触するのを防止することができる。障害物センサは、例えばTOF方式(Time Of Flight 方式)や三角測距方式のレーザ変位センサ等を採用することができる。障害物センサ141は、物体検出センサと称することもできる。
図3を参照して、検出領域141Aの特徴について説明する。図3は、実施の形態1にかかる移乗支援装置の上面図である。図において、一点鎖線により示した線L1は、座面121の中心線である。座面121の中心線とは、上面視において被介護者の中心線と一致する線である。また、図において、太線の矢印により示した線L2は、障害物センサ141の検知軸である。障害物センサ141は、光を発射する発光部と、反射光を検出する受光部とをそれぞれ有している。障害物センサ141は、線L2に平行な方向に光を発射し、障害物に反射した光を受光することにより障害物の距離を検出する。ここで、図に示すように、線L1と線L2とは平行である。つまり、障害物センサ141は座面121の中心線に平行な方向に沿って物体を検出する指向性を有する。障害物センサ141は、架橋板13が繰り出される方向に対して垂直かつ地面に対して平行な方向に沿って物体を検出する指向性を有するということもできる。このような構成により、移乗支援装置10は、被介護者の上肢が下垂している場合に好適に被介護者の上肢を検出できる。
次に、障害物センサ141の配置について説明する。図3に示すように、障害物センサ141は、被介護者の前後方向(Y軸方向)において、支持台部12の背面側(Y軸マイナス側)であって、背板と並列に配置されている。また、障害物センサ141は、被介護者の左右方向(X軸方向)において、支持台部12の右側部に突出するように配置されている。この位置に配置されることにより、障害物センサ141は、上述の検出領域141Aを採用し、且つ、被介護者が移乗先へ移乗動作をする場合に被介護者の動作を妨げることがない。
図1および図2に戻り、操作部15について説明する。操作部15は、移乗支援装置10の各駆動部を利用者(被介護者又は介助者)が操作するためのインタフェースである。図1および図2に示すように、操作部15は利用者が把持しやすい大きさの筐体に操作ボタンを有している。操作部15はケーブル151を介して情報処理部14と通信可能に接続されている。すなわち、操作部15の操作ボタンを利用者が操作することにより、操作信号は、ケーブル151を介して情報処理部14に伝達される。操作部15は、上述の架橋板13を繰り出し又は引き込むための操作ボタンと、後述するように支持台部12の高さを変更するための操作ボタンとを有している。なお、操作信号を受け取る情報処理部14の構成については後述する。また、操作部15はフックを有している。図1および図2において、操作部15はフックによりハンドル111に係止されている。なお、操作部15は、ケーブル151ではなく無線通信により情報処理部14に通信可能に接続してもよい。また操作部15は、移乗支援装置10の任意の位置に固定されていてもよい。
高さ調整部16は、円柱状の部材により支持台部12の下部を支持する。また、高さ調整部16は、円柱状の部材の長さを変化させることにより支持台部12の高さを調整する機能を有している。高さ調整部16は、支持台部12の下部において鉛直方向に係合する内筒と、内筒の下部に係合し内筒を上下動させる機構を有する外筒とを有している。例えば、図1において、地面と座面121との距離すなわち座面121の高さはD1である。一方、図2において、座面121の高さは、D1よりも高いD1´である。利用者は、操作部15を操作することにより、支持台部12の高さをこのように変更させることができる。
走行部17は、高さ調整部16を支持するとともに、移乗支援装置10を移動する機能を有している。より具体的には、走行部17は、地面に接する複数の車輪171と、車輪171を駆動する車輪駆動部を有している。車輪駆動部は例えば複数の車輪171それぞれを独立して駆動するモータである。移乗支援装置10は、被介護者が着座した状態で車輪171を駆動することにより、被介護者を運搬することができる。
次に、図4および図5を参照しながら架橋板13の動作原理について説明する。図4は、実施の形態1にかかる移乗支援装置の背面図である。図に示すように、移乗支援装置10は、架橋板13を繰り出し又は引き込むための構成として、連結部131、ボールねじ132、およびモータ133を有している。
連結部131は、架橋板13に連結している。また、連結部131は、ボールねじ132が回転すると、ボールねじ132の回転に連動してボールねじ132の軸方向(X軸方向)に進退するように構成されている。
ボールねじ132は、モータ133の回転軸に連結し、モータ133に従って回転する。ボールねじ132は、架橋板13が繰り出される方向と同じ方向に延在している。また、ボールねじ132は、架橋板13に連結する連結部131を予め設定された寸法繰り出すために充分な長さを有している。
モータ133は、ボールねじ132に連結し、ボールねじを回転させる。モータ133がボールねじ132を回転させることにより、ボールねじ132に係合する連結部131が直動運動をする。これにより、連結部131に連結している架橋板13は、繰り出し又は引き込み動作を行う。
図5は、実施の形態1にかかる移乗支援装置の背面図である。図5において、連結部131は図4と比較してX軸プラス方向へ移動している。これに伴い、架橋板13は予め設定された寸法繰り出されている。利用者は、操作部15の操作ボタンを押下することにより、このような架橋板13の繰り出し動作を行うことができる。
次に、図6を参照しながら移乗支援装置10の機能について更に説明する。図6は、実施の形態1にかかる移乗支援装置の機能ブロック図である。図に示すように、移乗支援装置10は、制御部140、障害物センサ141、架橋板駆動部142、架橋板位置センサ143、操作受付部144、支持台駆動部145、および車輪駆動部146を有している。
制御部140は、移乗支援装置10の各機能構成に通信可能に接続し、移乗支援装置10の全体の制御を担っている。例えば、制御部140は、操作受付部144から架橋板13を繰り出す指示を受け取ると、受け取った指示に基づいて、架橋板駆動部142、支持台駆動部145、又は車輪駆動部146を駆動する。また、制御部140は、障害物センサ141が検出する障害物センサ141と物体との距離に関する信号を監視し、任意の物体が上述した検出領域141A内に位置するか否かを判定する。そして、物体が検出領域141A内に位置する場合に、制御部140は、架橋板駆動部142に架橋板13を繰り出す動きを制限する指示を送る。また、制御部140は、架橋板位置センサ143を監視し、架橋板位置センサ143の出力に応じて架橋板駆動部142を駆動あるいは停止させる。制御部140はCPU(Central Processing Unit)と呼ばれる演算装置を含む半導体装置と電気回路との組み合わせにより構成される。
障害物センサ141は、既に説明したように、光学式の距離センサである。障害物センサ141は検出した物体との距離に関する信号を制御部140に出力する。
架橋板駆動部142は、制御部140からの指示に基づきモータ133を駆動するモータドライバである。架橋板駆動部142がモータ133を駆動することにより、架橋板13が繰り出され、又は引き込まれる。
架橋板位置センサ143は、架橋板13の位置を検出し、検出した信号を制御部140に供給する。架橋板位置センサ143は、例えば連結部131の位置を検出するためのポジションセンサである。架橋板位置センサ143は、架橋板13が収納された位置と、完全に繰り出された位置とを検出するスイッチであってもよい。
操作受付部144は、利用者が行う操作部15の操作を受け付けるインタフェースである。すなわち、操作受付部144は、利用者が行った所定の操作を受け付けると、受け付けた操作に応じた信号を制御部140に供給する。
支持台駆動部145は、高さ調整部16に含まれるモータを駆動するためのモータドライバである。支持台駆動部145は、制御部140からの指示に応じて、高さ調整部16のモータを駆動する。
車輪駆動部146は、走行部17が有する車輪171を回転させるモータを駆動するためのモータドライバである。車輪駆動部146は、制御部140からの指示に応じて、車輪171を回転させるモータを駆動する。
次に、図7~図13を参照しながら移乗支援装置10の動作について説明する。図7は、実施の形態1にかかる移乗支援装置により被介護者をベッドに移乗させる場合のフローチャートである。図7に示すフローチャートは、介助者が行う動作を示したものである。
まず、ステップS10において、介助者は、被介護者を乗せた移乗支援装置10をベッドの横に設置する。図9を参照しながら具体的に説明する。図9は、移乗支援装置をベッドの横に設置する状態を示す図である。介助者H2は、被介護者H1が着座した移乗支援装置10を操作してベッド900の傍らに静止させる。このとき移乗支援装置10は、架橋板13が繰り出される側の側面とベッド900とが対向するように静止される。移乗支援装置10が静止した位置において、移乗支援装置10とベッド900との距離はD1である。D1は、繰り出された架橋板13の先端部がベッド900の上面に届くように、架橋板13が繰り出される量よりも短くなるように調整される。
次に、ステップS11において、介助者は、支持台部12の高さを調整する。すなわち、架橋板13をベッドに繰り出すに際して、架橋板13がベッドより少し高いか否かを判断する。ここで、少し高いとは架橋板13がベッドに衝突することなくベッドの数センチメートル程度の上方に繰り出される高さをいう。架橋板13がベッドの上面より低い位置に繰り出された場合、架橋板13はベッドの側面に衝突し、衝突の反動により移乗支援装置10が傾いてしまうなどの不具合を生じる。一方、架橋板13がベッドの上面より高すぎる場合、被介護者が架橋板13に乗り移った際に移乗支援装置10が傾いてしまう。この場合、架橋板13に乗り移った被介護者がバランスを崩し転倒する虞がある。
図9を参照しながら具体的に説明する。図9において、地面から架橋板13の下面までの高さはD2である。また、図9において、地面からベッド900の上面までの高さはD3である。すなわち、図9の例において、D2はD3より少しだけ高くなるように調整される。
ステップS11において、架橋板13がベッドより少し高い状態ではない場合(ステップS11:No)、介助者は支持台部12の高さを調整する(ステップS12)。この場合、図9に示すように、介助者H2は、操作部15を使って支持台部12の高さを調整する操作を行う。介助者H2は、架橋板13がベッドより少し高い状態になるまでこの操作を繰り返す。
一方、架橋板13がベッドより少し高い状態である場合(ステップS11:Yes)、介助者は架橋板を繰り出す(ステップS13)。図10は、移乗支援装置の架橋板をベッドに繰り出した状態を示す図である。図に示すように、架橋板13の先端部はベッド900の上面に接触するか、数センチメートル上方に配置されている。なお、架橋板13を繰り出す動作の詳細については後述する。
次に、ステップS14において、介助者は、第1肘掛を外す。図10において、被介護者H1の右側には第1肘掛122Rが設けられている。この状態では、被介護者H1は、ベッド900に移乗することは難しい。図11は、移乗支援装置の第1肘掛122Rを取り外した状態を示す図である。図11において第1肘掛122Rが取り外れたため、被介護者H1は、ベッド900へ移動することが可能な状態となっている。
次に、ステップS15において、介助者は、被介護者をベッドにスライドさせる。図12は、被介護者が移乗支援装置からベッドへ移乗を開始した状態を示す図である。図12には介助者H2を示していないが、被介護者H1は、介助者H2の助けを受けながら、支持台部12から架橋板13に移乗し、更に架橋板13からベッド900に移乗する。
次に、ステップS16において、介助者は、被介護者の移乗が完了した後に、架橋板13を支持台部12に収納する操作を行う。図13は、移乗支援装置の架橋板を引き込む状態を示す図である。図において、被介護者H1は、ベッド900に移乗が完了している。介助者H2は、操作部15を操作して、架橋板13を引き込む操作を行っている。ステップS16において架橋板13が支持台部12に収納されると、架橋板13の引き込み操作が完了する。
次に、図8を参照しながら、架橋板を繰り出す動作について説明する。図8は、実施の形態1にかかる移乗支援装置が架橋板を繰り出す動作のフローチャートである。図8に示すフローチャートは、図7のステップS13のサブルーチンである。なお、図7に示したフローチャートは、介助者が行う動作を示したものであったが、図8に示すフローチャートは、移乗支援装置10の制御部140が行う処理を示すものである。すなわち、図8は、介助者が操作部15を操作(架橋板を繰り出すためのボタンを押下)している間の処理である。
まず、ステップS131において、制御部140は、架橋板13の繰出操作を受け付ける。すなわち、操作受付部144は、介助者H2が操作部15を操作することにより、架橋板を繰り出す指示を受付、受け付けた指示に関する信号を制御部140に供給する。制御部140は、操作受付部144から架橋板13を繰り出す指示を受け取る。
次に、ステップS132において、制御部140は、図2において示した検出領域141Aに障害物がないことを判定する。検出領域141Aに障害物がある場合、制御部140は、障害物がないと判定しない(ステップS132:No)。この場合、制御部140は、操作受付部144の信号に関わらず、架橋板13を繰り出す動作を停止させ(ステップS136)、処理を終了させる。
図14を参照しながら具体例と共に説明する。図14は、障害物センサが被介護者の手を検出している状態を示す図である。図に示すように、被介護者H1の右腕は第1肘掛122Rから外れ、支持台部12の側部に下垂している。この状態で架橋板13を繰り出すと、架橋板13の先端部が被介護者H1の手に衝突し、被介護者H1は不快な思いをする。また、繰り出された架橋板13とベッド900との間に被介護者H1の手が挟まれてしまう虞もある。
一方、検出領域141Aに障害物がない場合、制御部140は、障害物がないと判定する(ステップS132:Yes)。この場合、制御部140は、ステップS133に進む。
ステップS133において、制御部140は、架橋板13の繰出し量が規定範囲内か否かを判定する。具体的には、制御部140は、架橋板位置センサ143の信号に基づいて、かかる判定を行う。ここで、規定範囲とは、図2に示した架橋板13が支持台部12に収納された位置から、図3に示した架橋板13が予め設定された位置まで繰り出された位置の間を指している。つまり、ステップS133において、架橋板13が既に予め設定された位置まで繰り出された状態の場合、制御部140は、架橋板の繰出し量は規定範囲内と判定しない(ステップS133:No)。この場合、制御部140は、架橋板13を繰り出す動作を停止し(ステップS136)、処理を終了させる。一方、ステップS133において、架橋板13が既に予め設定された位置まで繰り出された状態ではない場合、制御部140は、架橋板の繰出し量は規定範囲内と判定する(ステップS133:Yes)。この場合、制御部140は、ステップS134に進む。
次に、ステップS134において、制御部140は、架橋板13を繰り出す処理を行う。具体的には、制御部140は、架橋板駆動部142に対して架橋板13を繰り出す方向にモータを駆動するための指示を行う。
次に、ステップS135において、制御部140は、繰り出し操作を停止するか否かを判定する。すなわち、制御部140は、操作受付部144から引き続き架橋板13を繰り出す指示を受けているか否かを判定する。操作受付部144から引き続き架橋板13を繰り出す指示を受けている場合(あるいは操作部15の繰出操作が継続している場合)、制御部140は、繰り出し操作を停止すると判定しない(ステップS135:No)。この場合、制御部140はステップS132に戻り処理を継続する。一方、操作受付部144から引き続き架橋板13を繰り出す指示を受けなくなった場合(あるいは操作部15の繰出操作が停止した場合)、制御部140は、繰り出し操作を停止すると判定する(ステップS135:Yes)。この場合、制御部140はステップS136において、架橋板13を繰り出す動作を停止する。
以上、実施の形態1に係る移乗支援装置10について詳述した。なお、ステップS133において説明した規定範囲は、予め設定されたものであってもよいし、利用者によって設定できるものであってもよい。また、繰り出された架橋板13の先端部は、Z軸方向に数センチメートル程度の自由度(ガタツキ)を有していてもよい。架橋板13の先端部がZ軸方向に自由度を有することにより、繰り出された架橋板13の先端部が移乗先のベッド等に当接しやすくなる。これにより、被介護者が架橋板に移乗した場合に移乗支援装置10の姿勢が不安定になるのを抑制することができる。
また、架橋板13は、平板に代えて、支持台部12と移乗先とを架橋するレール状の部材であってもよい。この場合、レール上の架橋板が移乗先に架橋されると、被介護者の臀部を支持する座がレール上をスライドしながら移乗先に移動してもよい。このような構成にすることで、被介護者は、臀部を浮かせて座面を移動することなく移乗先に接近することができる。
また、障害物センサ141は、上述した光学センサに代えて、超音波を利用したセンサや、ミリ波を利用したセンサであってもよい。また、架橋板13は、移乗支援装置10の右側に代えて、左側に繰り出されてもよいし、右側および左側の両側に繰り出されてもよい。
また、移乗支援装置10は、走行部17が車輪駆動部146を有さず、回転自在に固定された複数の車輪を持っているものであってもよい。また、移乗支援装置10は、車輪を有していなくてもよい。また、移乗支援装置10は、上述したような椅子形状ではなく、寝台であってもよい。
以上に説明した実施の形態1によれば、移乗支援装置は、架橋部材が繰り出される領域に被介護者の上肢などが存在する場合に、被介護者の上肢を押すことなく、架橋部材の動作を制限する。一方で、移乗支援装置は、架橋板が繰り出されて移乗先に近づいた場合に誤って障害物センサによって架橋板の動作を制限することがない。したがって、実施の形態1によれば、利便性を低下させることなく被介護者の不快感を低減する移動支援装置を提供することができる。
<実施の形態2>
次に、図15および図16を参照して実施の形態2について説明する。実施の形態2は、架橋板13の動作に関して抵抗を検出する点において、実施の形態1と異なる。以下の説明において、実施の形態1において説明した事項については適宜省略する。
図15は、実施の形態2にかかる移乗支援装置の機能ブロック図である。図15に示す移乗支援装置20は、実施の形態1における障害物センサ141に代えて、抵抗検出センサ241を有している。抵抗検出センサ241は、架橋板13を繰り出す動作において、架橋板13の動きに対して抵抗があることを検出する。抵抗検出センサ241は、例えば力学的な押圧力を検出することにより実現される。より具体的には、架橋板13と連結部131とを摺動可能に固定しておき、架橋板13と連結部131との間に歪みセンサを設ける。このような構成により、架橋板13と連結部131との間に予め設定された値より大きい力が印加されたか否かを検出することができる。つまり、抵抗検出センサ241は、架橋板13が繰り出されている場合に、架橋板13に対して障害物が接触していることを検出することができる。抵抗検出センサ241は、物体検出センサと称することもできる。
次に、図16を参照しながら、実施の形態2にかかる移乗支援装置における制御部140の処理について説明する。図16は、実施の形態2にかかる移乗支援装置が架橋板を繰り出す動作のフローチャートである。図16に示す処理は、図8において説明した実施の形態1にかかる制御部140の処理におけるステップS132に代えてステップS200を有している点において図8のフローチャートと異なる。
ステップS200において、制御部140は、抵抗検出センサ241の検出する抵抗値Rsが予め設定された閾値Rthを超えないことを判定する。架橋板13に障害物が接触していない場合、抵抗値Rsは閾値Rthを超えない(ステップS200:Yes)。この場合、制御部140は、ステップS133に進む。一方、架橋板13に障害物が接触している場合、抵抗値Rsは閾値Rth以上となる(ステップS200:No)。この場合、制御部140は、ステップS136に進み、架橋板13を繰り出す動作を停止するとともに、架橋板13を繰り出す処理を終了させる。
以上、実施の形態2について説明した。なお、抵抗検出センサ241の構成は上述のものに限られない。例えば、抵抗検出センサ241は、架橋板13の先端部の面圧を検出する圧力センサにより構成されてもよい。また、モータ133に係る負荷を電気的に検出してもよい。すなわち、抵抗検出センサ241は、モータ133を駆動するドライバの電流値の変化を検出してもよい。あるいは、抵抗検出センサ241は、モータ133が有する回転軸の角速度の変化を検出してもよい。
このような構成により、実施の形態2にかかる移乗支援装置20は、被介護者の上肢が架橋板13により強い力で押し出されることを防ぐことができる。また、移乗支援装置20は、被介護者の上肢が架橋板13とベッド等の移乗先との間に強く挟まれるのを防止することができる。
<実施の形態2の第1変形例>
次に、実施の形態2の第1変形例について説明する。図17は、実施の形態2の第1変形例にかかる移乗支援装置のブロック図である。図に示すように、実施の形態2の第1変形例にかかる移乗支援装置21は、実施の形態1において説明した障害物センサ141と、実施の形態2において説明した抵抗検出センサ241とをいずれも有している。すなわち、実施の形態2の第1変形例にかかる移乗支援装置21は、架橋板13が繰り出される領域の周囲の障害物を検出する物体検出センサとして、第1センサとして障害物センサ141を有し、第2センサとして抵抗検出センサ241を有する。
図18は、実施の形態2の第1変形例にかかる移乗支援装置21の動作を示すフローチャートである。図18に示すフローチャートは、ステップS200に代えてステップS201を有している点において、図16に示すフローチャートと異なる。
ステップS201において、制御部140は、抵抗検出センサ241が検出する抵抗値Rsが予め設定された閾値Rthを超えないこと、且つ、障害物センサ141が障害物を検出していないことを判定する。架橋板13に障害物が接触せず、且つ、検出領域141Aに障害物が存在していない場合、制御部140は、抵抗検出センサ241が検出する抵抗値Rsが予め設定された閾値Rthを超えず、且つ、障害物センサ141が障害物を検出していないことを判定する(ステップS201:Yes)。この場合、制御部140は、ステップS133に進み処理を続ける。
一方、架橋板13に障害物が接触しているか、又は、検出領域141Aに障害物が存在している場合、制御部140は、抵抗検出センサ241が検出する抵抗値Rsが予め設定された閾値Rthを超えず、且つ、障害物センサ141が障害物を検出していないことを判定しない(ステップS201:No)。この場合、制御部140は、ステップS136に進み、架橋板13を繰り出す動作を停止するとともに、架橋板13を繰り出す処理を終了させる。
このような構成により、実施の形態2の第1変形例にかかる移乗支援装置21は、被介護者の上肢が架橋板13に接触することを適切に防ぐことができる。更に、実施の形態2の第1変形例にかかる移乗支援装置20は、架橋板13が移乗先等と不用意に接触あるいは衝突した場合に、架橋板13を繰り出す動作によって移乗支援装置20のバランスが崩れることを抑制することができる。
<実施の形態2の第2変形例>
次に、実施の形態2の第2変形例について説明する。実施の形態2の第1変形例にかかる移乗支援装置20は、図15に示した実施の形態2にかかる移乗支援装置20と同じである。ただし、実施の形態2の第2変形例にかかる移乗支援装置20は、架橋板13の動作が実施の形態2と異なる。
図19は、実施の形態2の第2変形例にかかる移乗支援装置のフローチャートである。図19に示すフローチャートは、ステップS202を有する点において、図16に示すフローチャートと異なる。
ステップS200において障害物との接触を検出し、抵抗値Rsが閾値Rthより小さいと判定しない場合(ステップS200:No)、制御部140は、ステップS202に進む。ステップS202において、制御部140は、架橋板13を引き込む処理を行う。制御部140は、架橋板13を引き込む処理を行った後に、処理を終了させる。
このような構成により、実施の形態2の第2変形例にかかる移乗支援装置20は、被介護者の上肢が架橋板13により強い力で押し出されることを防ぐとともに、被介護者の不快感を払拭させることができる。また、移乗支援装置20は、被介護者の上肢が架橋板13とベッド等の移乗先との間に強く挟まれるのを防止するとともに、被介護者の上肢を即座に解放することができる。
<実施の形態3>
次に、図20および図21を参照して実施の形態3について説明する。実施の形態3は、座面の圧力を検出する圧力センサを更に有する点において、実施の形態2の第1変形例と異なる。図20は、実施の形態3にかかる移乗支援装置の機能ブロック図である。図に示すように、実施の形態3にかかる移乗支援装置30は、圧力センサ341を有している。
圧力センサ341は、座面121に印加される圧力を検出する。圧力センサ341は、座面に敷設されたシート状の静電容量式圧力センサである。圧力センサ341は、座面121に被介護者が着座することにより静電容量が変化する。これにより座面121に被介護者が着座していることを検出する。圧力センサ341は、検出した信号を制御部140に出力する。
図21は、実施の形態3にかかる移乗支援装置が架橋板を繰り出す動作のフローチャートである。図21に示すフローチャートは、ステップS300およびステップS301を更に有する点において、図18に示す実施の形態2の第1変形例と異なる。
実施の形態3にかかる移乗支援装置30にかかる制御部140は、ステップS300において、圧力センサ341が検出する圧力Psが、予め設定された閾値Pth以上か否かを判定する。
座面121に被介護者が着座している場合、圧力Psは閾値Pth以上となる(ステップS300:Yes)。この場合、制御部140は、ステップS201へ進む。ステップS201以降は、図18に示すフローチャートと同様であるため、ここでの説明は省略する。
一方、座面121に被介護者が着座していない場合、圧力Psは閾値Pthより小さい。そのため、制御部140は、圧力Psが閾値Pth以上と判定しない(ステップS300:No)。この場合、制御部140は、ステップS301に進む。
ステップS301において、制御部140は、抵抗検出センサ241の検出する抵抗値Rsが予め設定された閾値Rthを超えないことを判定する。すなわち、この場合、制御部140は、障害物センサ141が障害物を検出したか否かを判定しない。制御部140が障害物センサ141の出力を判定条件として利用しないのは、ステップS300において被介護者が着座していないことを検出したためである。したがって、例えば、座面121に座布団が設置されており、設置された座布団の端部がはみ出して障害物センサ141の検出領域141Aに侵入していたような場合、制御部140は、架橋板13を繰り出す処理を継続することができる。
ステップS301において、架橋板13に障害物が接触していない場合、抵抗値Rsは閾値Rthを超えない(ステップS301:Yes)。この場合、制御部140は、ステップS133に進む。一方、架橋板13に障害物が接触している場合、抵抗値Rsは閾値Rth以上となる(ステップS301:No)。この場合、制御部140は、ステップS136に進み、架橋板13を繰り出す動作を停止するとともに、架橋板13を繰り出す処理を終了させる。
以上、実施の形態3について説明した。なお、圧力センサ341は、シート状の静電容量式圧力センサに限らず、被介護者が着座しているか否かを検出可能なセンサであればよい。例えば、圧力センサ341は、ロードセルであってもよい。この場合、圧力センサ341は、支持台部12と高さ調整部16との間に設けられ、支持台部全体に印加される圧力を検出する。
このような構成により、実施の形態3にかかる移乗支援装置30は、被介護者が着座しているか否かにより架橋板13を繰り出す条件を変更することができる。これにより、被介護者が着座していない場合に、より好適に架橋板13を繰り出すことができる。
<実施の形態4>
次に、図22および図23を参照して実施の形態4について説明する。実施の形態4は、実施の形態3の構成に加えて、肘掛検出センサを更に有する点において、実施の形態3と異なる。
図22は、実施の形態4にかかる移乗支援装置の機能ブロック図である。図に示すように、実施の形態4にかかる移乗支援装置40は、肘掛検出センサ441を有している。肘掛検出センサ441は、肘掛が装着されているか否かを検出するスイッチである。肘掛検出センサ441は、移乗支援装置40に肘掛が装着されている場合はオン信号を、肘掛が装着されていない場合はオフ信号を制御部140に供給する。
図23は、実施の形態4にかかる移乗支援装置が架橋板を繰り出す動作のフローチャートである。図23に示すフローチャートは、ステップS201に代えてステップS400を有する点において、図21に示した実施例3にかかるフローチャートと異なる。
ステップS400において、制御部140は、抵抗検出センサ241が検出する抵抗値Rsが予め設定された閾値Rthを超えないこと、且つ、障害物センサ141が障害物を検出していないこと、且つ、肘掛検出センサがオン(肘掛がある状態)であることを判定する。
架橋板13に障害物が接触せず、且つ、検出領域141Aに障害物が存在せず、且つ、肘掛がある場合(ステップS400:Yes)、制御部140は、ステップS133に進み処理を続ける。
一方、架橋板13に障害物が接触しているか、又は、検出領域141Aに障害物が存在するか、又は、肘掛がない場合(ステップS400:No)、制御部140は、ステップS136に進み、架橋板13を繰り出す動作を停止するとともに、架橋板13を繰り出す処理を終了させる。
このような構成により、実施の形態4にかかる移乗支援装置40は、肘掛が装着されている状態で架橋板13を繰り出す。したがって、被介護者の上肢が下垂しやすい状況で架橋板を繰り出すことを防止することができる。そのため、実施の形態4は、より安全に動作する移乗支援装置を提供することができる。
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。