JP7112248B2 - 解砕機能を備えた撹拌式乾燥装置の補助翼構造 - Google Patents

解砕機能を備えた撹拌式乾燥装置の補助翼構造 Download PDF

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Description

本発明は、解砕機能を備えた撹拌式乾燥装置の撹拌翼に取り付けられる補助翼構造に関し、さらに詳しくは、銅等を含み、水分含有率が高く、嵩比重が大きく、且つ粒子径の小さなスラッジ状の被処理物の乾燥を行った場合でも撹拌翼に取り付けられた補助翼の脱落を生じることがない解砕機能を備えた撹拌式乾燥装置の補助翼構造に関する。
下水汚泥、し尿汚泥、活性汚泥等は、水分が多く資源化や処分に際して問題となるため、乾燥を施して減量および資源化を図っている。また、森林保全のために間伐された間伐採(=林地残材)等は、そのままでは水分が多くバイオマス燃料等に利用することができない。そこで、木質チップ(木材チップ)にした後、乾燥が施される。このような汚泥や木質チップの乾燥には、例えば、バンド乾燥機、バンド流動乾燥機、箱型乾燥機、タコロータリー乾燥機、ウェッジ型スタイルドライヤー(「撹拌翼付乾燥機」ともいう。)等の乾燥機が用いられている。
各種の乾燥機のうち、ウェッジ型スタイルドライヤーは、複数のクサビ型の回転羽根であるウェッジ型撹拌翼(以下、単に「撹拌翼」という。)を備えており、この撹拌翼の内部に蒸気、温水、オイル等の熱媒体を供給すると共に、乾燥機本体のジャケット内にも蒸気、温水、オイル等の熱媒体を供給することにより乾燥を行う伝導伝熱型の乾燥機(伝導伝熱型乾燥装置)であり、処理物は回転羽根とジャケットからの熱伝導によって乾燥が行われる。このウェッジ型スタイルドライヤーは、1:熱効率が良く伝熱係数が高い、2:伝熱面積が大きいので設置面積が小さくて済む、3:風量が少ないために臭気ガスが少ない、4:連続処理が可能、5:撹拌効率が高く付着物が少ない、6:ランニングコストが低い、などの特徴を備えている。尚、伝導伝熱型乾燥装置に関しては、例えば、特許文献1,2がある。
特許文献1に示す乾燥機は、ケーシングの内部に互いに逆方向に回転する2本の回転軸を長手方向に平行に併設し、各回転軸には複数の撹拌翼を所定間隔で取り付け、且つ、一方の回転軸の撹拌翼の間に他方の回転軸の撹拌翼を入り込ませて各撹拌翼を千鳥状となるように配設し、さらに、各回転軸の撹拌翼の切欠部の外縁部に送り羽根及び戻し羽根となる補助翼を取り付け、送り羽根及び戻し羽根となる補助翼の頂点における出現位置を各回転軸の同一の回転方向の長手方向において隣接相互が鋭角状態で順次位相をずらして配設した構成である。補助翼が取り付けられていることにより、被処理物が細かく解砕されることで乾燥が促進されるというものである。
特開2014-9876号公報
本発明者らは、特許文献1に示された構成を備えたウェッジスタイル型ドライヤーを用い、銅等の金属を含有し、水分含有率が高く、嵩比重が大きなスラッジ状の被処理物の乾燥を試みたところ、短期間のうちに補助翼の取付ボルトが破断して補助翼が脱落するという事態が頻発し、その都度、操業停止を余儀なくされることとなった。具体的には、数日から数週間という頻度で補助翼の脱落が発生した。補助翼の脱落が発生した場合、操業を約24時間停止して乾燥装置を冷却してからバキュームホースを挿入して乾燥装置内に補助翼を吸い込んで回収する必要があり、合計で35時間程度の操業停止となることから時間稼働率が大幅に低下する。かかる機種には補助翼を固定するボルトとして全てSUS316L:M12のボルトが用いられていたが、これまで被処理物が、例えば、汚泥、木質チップ、製紙スラッジ等である場合には補助翼の脱落という問題は確認されていない。しかし、被処理物が高水分、高嵩比重の含銅スラッジの場合、補助翼に対する荷重が大きくなり、上述の問題が発生することとなり、その対策が急務となった。
そこで、本発明はかかる問題点に鑑みなされたもので、銅等の金属を含有し水分含有率が高く、嵩比重の大きく、かつ且つ粒子径の小さなスラッジ状の原料の乾燥を行った場合でも、補助翼の脱落が発生することなく安定した操業を継続することが可能な解砕機能を備えた撹拌式乾燥装置の補助翼構造を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため請求項1に記載の本発明は、互いに平行に配置された少なくとも2本の回転軸を互いに反対方向へ回転可能に配置し、前記回転軸には所定の間隔を有して撹拌翼をそれぞれ複数配置すると共に、一方側の回転軸に取り付けられた撹拌翼と他方側に取り付けられた撹拌翼が交互に位置するように配置され、前記撹拌翼は、軸方向視において略円盤状であり、且つ、対向する位置の一部が略V字状に切り取られた一対のスリット部を有し、前記スリット部の円周側端には被処理物を解砕する補助翼が取り付けられて形成され、ジャケット及び前記撹拌翼に加熱された熱媒体を供給することにより被処理物を加熱乾燥する撹拌式乾燥装置において、少なくとも前記被処理物の排出口側に位置する撹拌翼へ前記補助翼を固定するボルトの引張強度よりも投入口側に位置する所定の撹拌翼へ前記補助翼を固定するボルトの引張強度を相対的に強くしたことを特徴とする。
上記課題を解決するため請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の撹拌式乾燥装置において、一つの回転軸に配置されている撹拌翼のうち、前記投入口側から半数以内の所定の撹拌翼について前記補助翼を固定するボルトの引張強度を相対的に強くしたことを特徴とする。
上記課題を解決するため請求項に記載の本発明は、請求項1または2に記載の撹拌式乾燥装置において、引張強度が強い前記ボルトはCr-Mo鋼製であることを特徴とする。
上記課題を解決するため請求項に記載の本発明は、請求項1からのいずれか1項に記載の撹拌式乾燥装置において、引張強度が強い前記ボルトの太さはM16、材質はSUS316Lあることを特徴とする。
上記課題を解決するため請求項に記載の本発明は、互いに平行に配置された少なくとも2本の回転軸を互いに反対方向へ回転可能に配置し、前記回転軸には所定の間隔を有して撹拌翼をそれぞれ複数配置すると共に、一方側の回転軸に取り付けられた撹拌翼と他方側に取り付けられた撹拌翼が交互に位置するように配置され、前記撹拌翼は、軸方向視において略円盤状であり、且つ、対向する位置の一部が略V字状に切り取られた一対のスリット部を有し、前記スリット部の円周側端には被処理物を解砕する補助翼が取り付けられて形成され、ジャケット及び前記撹拌翼に加熱された熱媒体を供給することにより被処理物を加熱乾燥する撹拌式乾燥装置を利用した被処理物の乾燥方法において、水分含量が30~70質量%、銅品位が5~50質量%、嵩比重1.2~2.0、粒子径が1~100μmである前記被処理物を、少なくとも前記被処理物の排出口側に位置する撹拌翼へ前記補助翼を固定するボルトの引張強度よりも投入口側に位置する所定の撹拌翼へ前記補助翼を固定するボルトの引張強度を相対的に強くて乾燥を行うことを特徴とする。
上記課題を解決するため請求項に記載の本発明は、請求項に記載の被処理物の乾燥方法において、前記撹拌式乾燥装置内で乾燥中の前記被処理物の高さ位置が前記撹拌翼の回転中心から上端までの長さの80%以上が隠れる高さとなるまでは、前記撹拌式乾燥装置に対する前記被処理物の投入速度を、予め決められた上限速度の1/3以下の投入速度に抑える第一の工程と、前記被処理物が、前記撹拌翼が隠れる高さまで当該撹拌乾燥装置内に貯えられたら、前記撹拌式乾燥装置に対する前記被処理物の投入速度前記上限速度の80~100%に設定する第二の工程と、を含み構成されたことを特徴とする。
本発明に係る解砕機能を備えた撹拌式乾燥装置の補助翼構造によれば、銅等の金属を含有し、水分含有率が高く、嵩比重が大きく、かつ且つ粒子径の小さなスラッジ状の被処理物の乾燥を行った場合でも補助翼の脱落が発生せず、継続的な操業が可能となるという効果がある。そのため、従来よりも設備稼働率が向上するという効果がある。
また、本発明に係る被処理物の乾燥方法によれば、水分含量が30~70質量%、銅品位が5~50質量%、嵩比重1.2~2.0、粒子径が1~100μmである被処理物を効率的に、且つ、補助翼の脱落が発生せず、長期間安定的に乾燥することが可能という効果がある。
本発明に係る撹拌式乾燥装置の一実施形態を示す平面図である。 図1に示す乾燥装置のB-B断面図である。 撹拌翼の側面図である。 図1に示すA部の詳細を示す拡大図である。 撹拌翼の翼片の詳細を説明する図である。 二つの回転軸に入り口側から5枚目までの翼片の各取付角度を示す説明図である。 補助翼の詳細構成を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図である。 補助翼を構成する補助翼片の詳細を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図である。 本発明に係る被処理物の乾燥方法の一実施形態を示すフローチャートである。
[撹拌式乾燥装置及び補助翼構造の構成]
以下、本発明に係る解砕機能を備えた撹拌式乾燥装置の補助翼構造について、好ましい一実施形態に基づいて詳細に説明する。最初に、撹拌式乾燥装置の構造について説明する。図1は本発明に係る撹拌式乾燥装置の一実施形態を示す平面図、図2は図1に示す撹拌翼のB-B断面図、図3は撹拌翼の側面図である。
解砕機能を備えた撹拌式乾燥装置(以下、単に「乾燥装置」という。)1は、概略として、水平に配置された横長のジャケット(又はケーシング)2と、このジャケット2の内部を貫通するように並列に配置された回転軸3a,3bと、この回転軸3a,3bのそれぞれに所定間隔に取り付けられた複数の撹拌翼(ウェッジ)4-1~4-45と、回転軸3a,3bの駆動源である駆動機構5a,5bと、ジャケット2の後端(図1では右側端)の内側に配設された堰板6と、ジャケット2を支持する支持部材7を備えて構成されている。
ジャケット2は、例えば金属製であり、図3に示すように、下部側が撹拌翼4-1~4-22及び撹拌翼4-23~4-45の形状に即して断面が円弧状をした略W字形状に形成されると共に、その内部は密封構造とされている。そして、図2に示すように、ジャケット2の一端側(図2では左側)の上部には被処理物の投入口2aが設けられ、他端側(図2では右側)には堰板6が配置されると共に、堰板6の上部に排出口2eが設けられている。そして、堰板6の上部高さ位置は撹拌翼4の高さ位置よりも高い位置とされている。これにより、操業の初めに全ての撹拌翼4-1~4-45の上部が隠れる高さとなるまでジャケット2内に半乾燥状態の被処理物を保持させることで、投入口2aから投入された新たな被処理物が撹拌翼4の表面に直接接触するのを防止して、撹拌翼4の表面で鋳付きが成長するのを防止したものである。尚、堰板6の上部高さ位置は、被処理物を撹拌翼4-1~4-45の回転中心から上端までの長さの80%以上、好ましくは95%以上の高さ、さらに好ましくは上端の高さまで満たすことができる高さを確保できれば撹拌翼4の表面の鋳付きの成長を防止することは可能2である。また、ジャケット2は二重構造とされていると共に、ジャケット2の両側面にはそれぞれ加熱蒸気供給口2f,2fが複数設けられ、加熱蒸気供給口2f,2fから加熱蒸気をジャケット2の空洞内に供給することによりジャケット2内の被処理物の加熱乾燥を促進する。そして、ジャケット2の底部には複数(図2では3つ)のドレン排出口2c,2cが取り付けられており、加熱蒸気供給口2f,2fから供給された加熱蒸気が冷却された後のドレンを排水するようになっている。さらに、排出口2eの近傍には加熱エア供給口2bが設けられると共に、ジャケット2の上部の途中位置にはジャケット2内に導入された加熱エアと被処理物を乾燥させる際に発生する蒸気を図示しない集塵装置へ導くための排気ダクト2d(図2参照)が接続されている。そして、排気ダクト2dと図示しない集塵装置とは図示しない導管によって連結されており、導管の少なくとも集塵装置の手前及び集塵装置にはいわゆるスチームトレースが設けられている。被処理物を乾燥させる際に発生する蒸気によって乾燥装置内部や図示しない集塵装置が結露するのを防止するためである。尚、スチームトレースは導管の少なくとも集塵装置の手前又は集塵装置のいずれか一方に設けることもできる。スチームトレースによって図示しない集塵装置内の温度が露点温度以下に低下するのを防止する。集塵装置内の温度が露点温度以下になると結露によって集塵装置の濾布が濡れてしまい、濾布による圧損が急上昇して操業不可になるからである。
回転軸3a,3bは、内部が中空状とされてその内部に蒸気供給口2g,2gを介して加熱蒸気(例えば、0.5~0.6MPaの加熱蒸気)が導入可能に形成されており、回転軸3a,3b内に導入された加熱蒸気はさらに、後述するように、撹拌翼4-1~4-45の内部に導入されるようになっている。被処理物が加熱蒸気によって加熱された回転軸3a,3b及び撹拌翼4-1~4-45と接触することにより被処理物の乾燥が行われる。尚、蒸気供給口2g,2gは、内部に複数の流路を備えたロータリージョイントによって形成されており、回転軸3a,3b及び撹拌翼4-1~4-45に導入された加熱蒸気が熱交換されることにより生じた水分は再び蒸気供給口2g,2gを介して排水される。乾燥された被処理物は、堰板6の上部に設けられた排出口2eからオーバーフローするようにして排出され、排出シュート2h(図2参照)を介して密閉式の搬送装置、例えば、フローコンベアによって搬出されるように構成されている。その理由は、解砕・乾燥された乾燥品の粒子径が1~100μmと極めて細かい場合にはベルトコンベア等の開放系のコンベアによる搬送では乾燥品が飛散したり、落鉱が極めて多くなって搬送不良が生じるおそれがあるからである。
回転軸3a,3bはそれぞれ両端側が軸受けによって回転可能に軸支されている。そして、図6に示すように、回転軸3aは時計方向に回転し、回転軸3bは反時計方向に回転するようになっている。すなわち、回転軸3a,3bは駆動機構5a,5bによって互いに逆方向で、且つ、同一速度で回転するように駆動されようになっている。そして、図1に示すように、本実施形態では各回転軸3a,3bにそれぞれ取り付けられて2列に配置された撹拌翼4-1~4-45は回転軸3a側が22基(4-1~4-22)で、回転軸3b側が23基(4-23~4-45)となっている。平面方向から見ると、撹拌翼4-1~4-22と撹拌翼4-23~4-45とがジャケット2の中央側で一部が交互に千鳥状に重なるようにして配置されている。
撹拌翼4-1~4-45は、それぞれ同一の形状とされ、円盤状の2箇所の一部に切欠8,8によって扇形に形成された一対の翼片4a,4b及び翼片4c,4dを備えて形成されている。翼片4a~4dは、内部が中空構造とされ、回転軸3a,3bに導入された加熱蒸気が内部に導入されて加熱されるようになっている。また、翼片4a~4dは、図5に示すように、回転方向側端部を厚く、回転方向逆側端部を薄くしたテーパー状とされており被処理物の解砕及び撹拌力を増加できる形状とされている。また、図3に示すように、撹拌翼4-1~4-22は、回転軸3a側においては翼片4a,4bの2枚を同一円周上に対向配置されており、同様に、撹拌翼4-23~4-45は、回転軸3b側においては翼片4c,4dの2枚を同一円周上に対向配置させた構成になっている。そして、撹拌翼4-1~4-45の翼片4a~4dは切欠部8の設けられた位置が軸方向から見て所定枚数(本実施形態では4枚)において重ならないように異なる位置に配置されている。
切欠部8を形成する外縁部には補助翼20が取り付けられている。補助翼20は、被処理物を乾燥した乾燥物が固まらないように解砕すると共に、被処理物を出口側へ送り出したり入口側へ戻したりして被処理物をジャケット2内に所定時間保持して乾燥を促進するために設けられている。尚、補助翼20の詳細については後述する。
翼片4a~4dの回転軸3a,3bへの取り付け角度は、本実施形態の場合、図6に示すようになっている。図6では回転軸3aに撹拌翼4-1~4-5の5枚目まで、そして、回転軸3bに撹拌翼4-23~4-27の5枚目までの各翼片4a~4dの取付角度を示している。そして、回転軸3a側においては、撹拌翼4-1~4-4の翼片4a~4dが水平位置(9時の位置)から半時計方向へ15°、60°、105°、150°というように角度をずらして取り付けられ、撹拌翼4-5~4-22は撹拌翼4-1~4-4の取り付けの繰り返しとなる。また、回転軸3b側においては、撹拌翼4-23~4-26の翼片4c,4dが12時の位置から時計方向へ15°、60°、105°、150°というように角度をずらして取り付けられ、撹拌翼4-27~4-45は撹拌翼4-23~4-26の取り付けの繰り返しとなる。このように、補助翼20の取り付け方向がそれぞれ相違するので被処理物の破砕や撹拌が十分に行われると共に、被処理物を投入口2a側から排出口2eへ送り出すと共に反対側へ戻す動きを与える撹拌翼4の作用がさらに補助される。尚、送り補助翼20は、被乾燥物の粘着性の度合等に応じて適宜、最適な大きさ、形状及び傾斜角等のものを選定することができる。
駆動機構5a,5bは、回転軸3a,3bのそれぞれに対応して同一構成のものが配置されている。ここで、回転軸3a側の駆動機構5aの構成について説明すると、図2に示すように、駆動源であるモータ5a-1と、モータ5a-1の回転数を調整する減速装置5a-2と、減速装置5a-2の回転出力を回転軸3aに伝達する伝達部材5a-3とを備えて構成されている。
堰板6は、ジャケット2内に供給された被処理物をせき止め、被処理物が撹拌翼4-1~4-45の回転中心から上端までの長さの80%以上、好ましくは95%以上の高さ、さらに好ましくは上端の高さ(図2のYレベルを越える高さ)まで満たされるように保持するための部材である。被処理物を撹拌翼4-1~4-45の回転中心から上端までの長さの少なくとも80%以上の高さまで保持できれば、撹拌翼4-1~4-45への鋳付き防止及び駆動機構5a,5bの過負荷の発生を防止することができる。堰板6の寸法・形状は図3に示すジャケット2の内部形状相当であるが、本実施形態では上端の高さは少なくとも撹拌翼4-1~4-45が投入された被処理物によって隠れる高さ以上とされ、撹拌翼4-1~4-45の上部高さよりも上方とされている。尚、堰板6の使用材料は、撹拌翼4-1~4-45によって乾燥品の押し出し圧に耐えられるもの、例えば鉄系等の金属を用いることができる。
支持部材7は、ジャケット2を所定の高さに維持するための構造体であり、所望の強度を有する鋼管、形鋼等を組み合わせて構築されている。
[補助翼の構造]
以上、撹拌式乾燥装置1の概要構成について説明したが、次に、本発明に係る補助翼構造について説明する。図7は補助翼の詳細構成を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図である。さらに、図8は補助翼を構成する補助翼片の詳細を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図である。補助翼20は、図8に示すように、金属製の板部材を90°に折り曲げた略L字形をした補助翼片20aを2個一対として翼片4a,4b(4c,4d)の外周端縁部に設けられた補助翼取付座12にボルト13及びナット14によって固定することによって形成されている。補助翼片20a,20aは、図8の各図に示すように、2カ所にボルト13,13を挿通するためのボルト孔11,11が設けられている。このような構成によって、被処理物に対して破砕・撹拌が施される。尚、補助翼片20a,20aは、被乾燥物の粘着性の度合等に応じて適宜、最適な大きさ、形状及び傾斜角等のものを選定することができる。そして、補助翼片20a,20aは、図5に示すように、翼片4a~4dの端面に対して各々所定の傾斜角度θで取り付けられており、先端の平面状の板面が被乾燥物の破砕や撹拌の他、被処理物の送り出しや引き戻しの動きを付与している。
補助翼片20a,20aを固定するボルト13は、従来は撹拌翼4-1~4-45の全てについて同一のボルトが使用されていた。しかしながら、投入口2a側には乾燥が進んでいない被処理物がより滞留するため補助翼20への負荷が大きくなり、ボルト13に加わる荷重も大きくなる。そのため、投入口20側の補助翼20については排出口2e側の補助翼20に比べて相対的に強度の大きいボルト13を用いることとした、例えば、本実施形態においては、投入口2aから少なくとも10枚目までの撹拌翼4-1~4-10及び撹拌翼4-23~4-32についてはSUS316L:M16を用い、それよりも排出口2e側の撹拌翼4-11~4-22及び撹拌翼4-33~4-45についてはSUS316L:M12を用いている。すなわち、撹拌翼4-1~4-45のうち投入口2a側の約半分(50%)について相対的に強度の大きいボルト13を用いている。これにより、投入口2aから10枚目までの撹拌翼4-1~4-10及び撹拌翼4-23~4-32は少なくとも75,000N以上の引張強度のボルト13を使用している。因みに、SUS316L:M12の引張強度は42,150Nである。尚、SUS316Lは、18%のクロム(Cr)と12%のニッケル(Ni)とを含み、さらに、モリブデン(Mo)を添加して耐食性及び耐熱性を向上させたオーステナイト系ステンレス鋼である。また、SUS316L:M16によるボルト13は、撹拌翼4-1~4-45の全てに対して使用してもかまわない。
このように、投入口2aに近い側の撹拌翼(撹拌翼4-1~4-10及び撹拌翼4-23~4-32)、具体的には、投入口2aから少なくとも10枚目までのボルトの強度を強くすることによって、銅等を含み、水分含有率が高く、嵩比重の大きく、且つ粒子径の小さなスラッジ状の被処理物の乾燥を行ってもボルト13,13の断裂による補助翼20,20の脱落は発生しなくなり、設備の稼働率を著しく向上させることができた。尚、ボルト13の径を大きくすれば引張強度が高くなるため、ボルト13の切断が生じ難くなるのは明らかであるが、ボルトの径を単に大きくすると補助翼20及び補助翼取付座12も大型化し、ジャケット2に接触するなどして翼片4a~4dへの取り付けが難しくなる。そのため、切断防止効果を有効に発揮させるためには、ボルトの強度の特定は重要な要素となる。また、SUS316L:M16に代えてM12:Cr-Mo鋼製ボルトの使用も可能である。ボルト13は上記仕様に限定されるものではなく、少なくとも75,000N以上の引張強度を得ることができればよく、材質やボルト径の組み合わせはこれに限定されない。
[本発明に係る撹拌式乾燥装置及び補助翼構造の動作]
次に、上述した撹拌式乾燥装置の補助翼構造の動作について説明する。図9は本発明に係る被処理物の乾燥方法の一実施形態を示すフローチャートである。本実施形態における被処理物の性状は、水分含量が30~70質量%、銅品位が5~50質量%、嵩比重が1.2~2.0、粒子径が1~100μmのスラッジ状のものである。もちろん、本実施形態における乾燥装置1が対象とする被処理物はこのような性状に限定されるわけではない。
初めに、回転軸3a,3bを介して加熱蒸気を撹拌翼4-1~4-45内に導入すると共に、駆動機構5a,5bを駆動して撹拌翼4-1~4-45を所定速度(例えば、15~30rpm)で回転駆動させ、投入口2aから被処理物をジャケット2内に投入する(ステップS1:投入工程)。このときの被処理物の投入速度は定格(例えば、3.0wt/h)の1/3以下である。定格の1/3の速度より早い投入速度で投入すると、被処理物が撹拌翼4-1~4-45に鋳付いてしまい、撹拌翼4-1~4-45から離れなくなり、乾燥効率が著しく低下すると共に鋳付きの除去のために数日後に長期操業停止が必要となるからである。尚、ジャケット2内には、排ガス中に多量の水分が含まれるため、排ガス処理設備や排気ダクト2dの結露防止のために蒸気圧0.5~0.6MPaの蒸気で熱交換された加熱エアを導入することでジャケット2内部が露点温度以下とならないようにしている。また、排気ダクト2dから図示しない導管を介して連結された図示しない集塵装置にはスチームトレースが設けられ、少なくとも集塵装置内を80℃以上に維持しているので集塵装置の濾布が結露によって濡れて圧損が急上昇して操業不可となるのを防止している。
ジャケット2内に投入された被処理物は、回転している撹拌翼4-1~4-45及び補助翼20によって順次撹拌されながら後段へ移動し、その過程で乾燥処理が行われる。この過程では、乾燥中の被処理物の高さ位置が攪拌翼4-1~4-45の回転中心から上端までの長さの80%以上、好ましくは95%以上の高さとなるまで、さらに好ましくは撹拌翼4-1~4-45の上端が隠れる高さとなるまで半乾燥を行う(ステップS2:半乾燥工程)。この過程において、特に撹拌翼4-1~4-10及び撹拌翼4-23~4-32の補助翼20には大きな負荷がかかり、ボルト13,13にも強い力(剪断力)が加わるが、少なくとも投入口から10枚目までの撹拌翼4-1~4-10及び撹拌翼4-23~4-32の補助翼20にはボルト13,13としてSUS316L:M16を用いたのでボルト13,13は破断せず、補助翼20の脱落も発生することがない。半乾燥工程では被処理物の水分含量が20質量%以上、30質量%未満となるように被処理物の乾燥を行う。半乾燥を行うのは撹拌翼4-1~4-45への鋳付き防止及び駆動機構5a,5bの過負荷の発生を防止するためである。尚、半乾燥状態となった被処理物を半乾燥品という。このような半乾燥工程を継続することによりジャケット2内には半乾燥品が堆積し、最終的に撹拌翼4-1~4-45の上端が隠れるレベルに到達するまで半乾燥を行う(ステップS3:蓄積工程)。
半乾燥品が撹拌翼4-1~4-45が隠れる高さまでジャケット2内に貯えられたら被処理物の投入速度を定格の投入速度(例えば、3.0wt/h)の80~100%の投入速度で定格操業に移行する(ステップS4:乾燥工程)。乾燥工程では、被処理物の水分含量が15質量%以上、20質量%未満となるように乾燥を行う。被処理物の水分含量が15%未満となるような完全乾燥を行うと被処理物の粒度が細かいことから、乾燥品貯留鉱区やその後の運搬などの際に酷い発塵を生じることで作業環境の悪化を招いたり、設備寿命を著しく短くする等の不具合を招くおそれがある。そのため、水分含量が20質量%以上、30質量%未満の半乾燥品の状態で一旦ジャケット2内に保持し、その後乾燥工程によって被処理物の水分含量が15質量%以上、20質量%未満となるように乾燥を行う。尚、乾燥状態となった被処理物を乾燥品という。乾燥工程において撹拌翼4-1~4-45の回転によって解砕されて乾燥された乾燥品は、堰板6をオーバーフローして排出口2eから排出シュート2hへ落下しジャケット2の外へ排出され(ステップS5:排出工程)、さらに密閉式のフローコンベアによって所定の場所へ運ばれる。
次に、実施例について説明する。本発明者らは、水分含量が30~70質量%、銅品位が5~50質量%、嵩比重が1.2~2.0、粒子径が1~100μmのスラッジ状の被処理物の乾燥について上述した実施形態に従って乾燥を行い、変更前後のボルト13と補助翼20の破損状況について検証した。その結果を以下に示す。
(変更前)
ボルト13の仕様:全てSUS316L:M12
結果:30時間/回(1回辺りの停止時間)×2回/月(停止回数)=60時間/月の操業停止(いずれも投入口側より10枚目までの撹拌翼に取り付けた補助翼の脱落)
(変更後)
ボルト13の仕様:投入口側より10枚目までをSUS316L:M16に変更
結果:3ヶ月以上の使用で脱落回数0回
以上の結果から明らかなように、補助翼20の脱落は皆無となり、設備稼働率を著しく向上できることが確認できた。
このように、本発明に係る解砕機能を備えた撹拌式乾燥装置の補助翼構造によれば、少なくとも被処理物の排出口側に位置する撹拌翼へ補助翼20を固定するボルト13の引張強度よりも被処理物の投入口側に位置する翼片4a~4dへ補助翼20を固定するボルト13の引張強度を相対的に強くしたので、負荷の大きい投入口2a側のボルト13に切断が生ぜず、従って、補助翼20の脱落が皆無となり、設備稼働率の向上が可能になるという効果がある。
また、本発明に係る解砕機能を備えた撹拌式乾燥装置の補助翼構造によれば、水分含量が30~70質量%、銅品位が5~50質量%、嵩比重1.2~2.0であるスラッジ状の被処理物の乾燥に対し、少なくとも被処理物の投入口側に位置する一部の撹拌翼、例えば、少なくとも10枚目まで(撹拌翼4-1~4-10,4-23~4-32)の補助翼20を固定するボルト13の引張強度を少なくとも75,000N以上、具体的には、SUS316L:M16又はCr-Mo鋼製:M12とすることにより、ボルト13の破損が回避できるという効果がある。
また、本発明に係る被処理物の乾燥方法によれば、水分含量が30~70質量%、銅品位が5~50質量%、嵩比重1.2~2.0、粒子径が1~100μmであるスラッジ状の被処理物を、上述した撹拌式乾燥装置1で処理するので、当該被処理物を効率的に、且つ、補助翼の脱落が発生せず長期間安定的に乾燥することが可能という効果がある。
また、本発明に係る被処理物の乾燥方法によれば、当該被処理物を撹拌式乾燥装置1の投入口2aから定格の投入速度の1/3以下の投入速度で投入し、乾燥中の被処理物の高さ位置が撹拌翼4-1~4-45の回転中心から上端までの長さの80%以上が隠れる高さとなるまで半乾燥を行い、半乾燥状態の被処理物が、撹拌翼4-1~4-45が隠れる高さまで当該撹拌式乾燥装置1内に貯えられたら、被処理物を定格の80~100%の投入速度で投入して乾燥を行うので、乾燥装置(ジャケット)2内が空の状態から乾燥を開始する段階、及びその後の定格運転の段階に至る間において、撹拌翼4-1~4-45への鋳付きが防止されると共に駆動機構5a,5bの過負荷の発生を防止することができるという効果がある。
以上のように、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る解砕機能を備えた撹拌式乾燥装置の補助翼構造特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能であることはいうまでもない。銅等を含み、水分含有率が高く、嵩比重の大きく、且つ粒子径の小さなスラッジ状の被処理物以外でも幅広く展開可能である。
1 撹拌式乾燥装置
2 ジャケット
2a 原料投入口
2b 加熱エア供給口
2c ドレン排出口
2d 排気ダクト
2e 排出口
2f 加熱蒸気供給口
2g 蒸気供給口
2h 排出シュート
3a,3b 回転軸
-1~4-45 撹拌翼
4a~4d 翼片
5a,5b 駆動機構
5a-1 モータ
5a-2 減速装置
5a-3 伝達部材
6 堰板
7 支持部材
8 スリット部
11 ボルト孔
12 補助翼取付座
13 ボルト
14 ナット
20 補助翼
20a 補助翼片

Claims (6)

  1. 互いに平行に配置された少なくとも2本の回転軸を互いに反対方向へ回転可能に配置し、前記回転軸には所定の間隔を有して撹拌翼をそれぞれ複数配置すると共に、一方側の回転軸に取り付けられた撹拌翼と他方側に取り付けられた撹拌翼が交互に位置するように配置され、前記撹拌翼は、軸方向視において略円盤状であり、且つ、対向する位置の一部が略V字状に切り取られた一対のスリット部を有し、前記スリット部の円周側端には被処理物を解砕する補助翼が取り付けられて形成され、ジャケット及び前記撹拌翼に加熱された熱媒体を供給することにより被処理物を加熱乾燥する撹拌式乾燥装置において、
    少なくとも前記被処理物の排出口側に位置する撹拌翼へ前記補助翼を固定するボルトの引張強度よりも投入口側に位置する所定の撹拌翼へ前記補助翼を固定するボルトの引張強度を相対的に強くしたことを特徴とする撹拌式乾燥装置。
  2. 請求項1に記載の撹拌式乾燥装置において、
    一つの回転軸に配置されている撹拌翼のうち、前記投入口側から半数以内の所定の撹拌翼について前記補助翼を固定するボルトの引張強度を相対的に強くしたことを特徴とする撹拌式乾燥装置。
  3. 請求項1または2に記載の撹拌式乾燥装置において、
    引張強度が強い前記ボルトはCr-Mo鋼製であることを特徴とする撹拌式乾燥装置。
  4. 請求項1からのいずれか1項に記載の撹拌式乾燥装置において、
    引張強度が強い前記ボルトの太さはM16、材質はSUS316Lあることを特徴とする撹拌式乾燥装置。
  5. 互いに平行に配置された少なくとも2本の回転軸を互いに反対方向へ回転可能に配置し、前記回転軸には所定の間隔を有して撹拌翼をそれぞれ複数配置すると共に、一方側の回転軸に取り付けられた撹拌翼と他方側に取り付けられた撹拌翼が交互に位置するように配置され、前記撹拌翼は、軸方向視において略円盤状であり、且つ、対向する位置の一部が略V字状に切り取られた一対のスリット部を有し、前記スリット部の円周側端には被処理物を解砕する補助翼が取り付けられて形成され、ジャケット及び前記撹拌翼に加熱された熱媒体を供給することにより被処理物を加熱乾燥する撹拌式乾燥装置を利用した被処理物の乾燥方法において、
    水分含量が30~70質量%、銅品位が5~50質量%、嵩比重1.2~2.0、粒子径が1~100μmである前記被処理物を、少なくとも前記被処理物の排出口側に位置する撹拌翼へ前記補助翼を固定するボルトの引張強度よりも投入口側に位置する所定の撹拌翼へ前記補助翼を固定するボルトの引張強度を相対的に強くして乾燥を行うことを特徴とする被処理物の乾燥方法。
  6. 請求項に記載の被処理物の乾燥方法において、
    前記撹拌式乾燥装置内で乾燥中の前記被処理物の高さ位置が前記撹拌翼の回転中心から上端までの長さの80%以上が隠れる高さとなるまでは、前記撹拌式乾燥装置に対する前記被処理物の投入速度を、予め決められた上限速度の1/3以下の投入速度に抑える第一の工程と、
    前記被処理物が、前記撹拌翼が隠れる高さまで当該撹拌乾燥装置内に貯えられたら、前記撹拌式乾燥装置に対する前記被処理物の投入速度前記上限速度の80~100%に設定する第二の工程と、
    を含み構成されたことを特徴とする被処理物の乾燥方法。
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