JP7111136B2 - 鋼管ねじ継手 - Google Patents
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Description
上述したような従来のAGF工法で用いられる杭用鋼管としては、施工し易さの観点から、鋼管端部の接合部にねじ継手が加工されたものが使用されている(例えば、特許文献1、2参照)。
図24(a)に示す(1)第1ねじ継手100Aは、厚肉鋼管に雄ねじ101と雌ねじ102を加工したものをそれぞれ杭本体103に溶接、摩擦圧接、拡散接合等で一体化した形態のものである。図24(b)に示す(2)第2ねじ継手100Bは、杭本体103に雄ねじ101が形成されたピン104に対して両端に雌ねじ102を形成したカップリング105で螺合する形態のものである。図24(c)に示す(3)第3ねじ継手100Cは、杭本体103に雌ねじ102が形成されたボックス106に対して両端に雄ねじ101を形成したニップル107で螺合する形態のものである。
すなわち従来の鋼管ねじ継手のうち前述した図24(a)に示す(1)第1ねじ継手100Aでは、製造コストの観点から予め加工したねじ部を溶接などで一体化するには継手素管を供給し、溶接にかかる費用が増大するという問題があった。図24(b)に示す(2)第2ねじ継手100Bや図24(c)に示す(3)第3ねじ継手100Cの場合には、カップリング105やニップル107などの接合部品を用いるには継手素管を供給し、杭1箇所の接合に対して2組の雄ねじ、雌ねじを加工する必要があることから、コストが増大することになる。しかも、加工時に拡管、縮管を行ってねじを加工するには管端加工にかかるコストが増えるうえ、専用の加工装置が必要となっていた。
また、本発明では、鋼管の曲げ強度を向上させることができるので、従来と同等の曲げ強度で薄肉化、軽量化を図ることができ、加工が容易で、加工コストが増大することを抑えられる。しかも、鋼管が薄肉で軽量化されているので、鋼管を手で持って締め込む作業を軽減することができ、作業の効率化を図ることができる。
図1(a)、(b)に示すように、本実施形態による鋼管ねじ継手10は、管端に対して直接、ねじを加工したテーパーねじ継手であり、2本の鋼管1A、1B同士をねじ込むことによって管軸O方向に締結するためのものである。
また、本実施形態の鋼管ねじ継手10を用いて連結される鋼管1A、1Bは、建造物の基礎杭など、他の用途の鋼管杭として用いられてもよい。鋼管1A、1Bとして、例えば、一般構造用炭素鋼鋼管、建築構造用炭素鋼鋼管などを用いることができる。
ボックス3のねじ列は、第2鋼管1Bの一方の端部側の内面において、管軸O方向で基端側から先端側に向かうに従い漸次、管軸Oから離れるテーパーが形成された雌ねじ3Aを形成している。
鋼管1A、1Bがピン2とボックス3とのねじ2A、3A同士の螺合によって締結した状態で、ピン2のノーズ部21とボックス3の連設部32とが対向するとともに、ピン2の連設部22とボックス3のノーズ部31とが対向する。
ボックス3の第2ショルダー部33は、管軸Oにほぼ垂直な環状面33aと、本体部11のボックス3側の内周面11bと、から構成されている。環状面33aとボックス3の連設部32とが交差する角部は曲面で形成されている。第2ショルダー部33の環状面33aとピン先端2aとの間には、鋼管1A、1B同士が締結された状態で隙間Sが形成された状態となっている。
なお、ショルダー部23、33に前記隙間Sを設けておくことで、鋼管の削孔時の振動により鋼管同士がさらに締め込み可能な許容領域となり、鋼管同士をより強固に締結することができる。
雄ねじ2Aのねじ山頂面20aと雌ねじ3Aのねじ山頂面30aとが管軸O(図4に示す符号LHの線)に対して平行になっている。ここで、図4に示すHL線は、管軸Oに平行な線を示している。
なお、ここでいうフランク角とは、管軸Oに直角な面とフランク面20c、20d、30c、30dとのなす角度のことである。図4に示す鋼管ねじ継手10の場合、引張フランク面20d、30dの引張側フランク角θ2は時計回りを正とし、圧縮フランク面20c、30cの圧縮側フランク角θ1は反時計回りを正とする。
一方、引張フランク面20d、30dは、相互に嵌合したピン2とボックス3に管軸O方向の引張荷重が負荷されたときに、雄ねじ2Aと雌ねじ3Aが係止されるが、このとき、引張フランク面20d、30d同士は当接し、ピン2のテーパーねじが抜けないように引張荷重を受け持つ。
本実施形態による鋼管ねじ継手10では、図4に示すように、圧縮荷重を受け持つ圧縮フランク面20c、30cがフック形状となるので、曲げ強度に優れたねじ継手を構成することができ、鋼管杭の曲げ強度を従来品と同等以上に保つことができる。すなわち、鋼管1A、1Bに曲げが作用したときに、鋼管1A、1Bの圧縮側でボックス3がピン2に乗り上げるいわゆるジャンプイン現象が生じることを防止することができる。また、引張荷重を受け持つ引張フランク面20d、30dが台形形状となるので、ねじ部同士が嵌合し易くなる。
このように、強度を向上させることができるので、薄肉化、軽量化を図ることができ、加工が容易で、加工コストの増大を抑制できる。しかも、薄肉で軽量化された鋼管を手で持って締め込む作業の効率化を図ることができる。
これにより、AGF工法のように締結する鋼管の軸方向を略水平方向に向け、かつやや上方に向けてねじ継手を嵌合させていく場合であっても、ねじのトルク抵抗が上昇したり、再度の軸調心を行う必要がなく、容易に施工を行うことができる。ねじ継手が異常な状態で嵌合することを防止でき、締め込みが開始されるまでの時間を短縮できる。
このように、本発明では、施工性と嵌合性を向上することができる。
次に、図5に示す第2実施形態による鋼管ねじ継手10Aは、蟻溝型に適用したものである。すなわち、上述した第1実施形態による逆フック型の鋼管ねじ継手10と異なる点は引張側フランク角θ2が0°未満の負角になって傾斜している構成となっている。
第2実施形態では、例えば圧縮側フランク角θ1が-3°、引張側フランク角θ2が-3°に設定されている。第2実施形態の場合も、圧縮フランク面20c、30cの角度(圧縮側フランク角θ1)の絶対値は、引張フランク面20d、30dの角度(引張側フランク角θ2)の絶対値と一致している。
第1実施例では、上述した実施形態の鋼管ねじ継手を使用した実施例1、2の鋼管と、従来の鋼管ねじ継手を使用した比較例1~3の鋼管と、に対して、それぞれの鋼管ねじ継手の変形と相当応力状態を確認するため、弾塑性有限要素法(FEA)によるFEAモデルを作成し、最大荷重時に対して数値シミュレーション解析を行い、その効果を確認した。
表1に示すように、実施例1、2及び比較例1~3で使用する鋼管は、いずれも外径114.3mm、肉厚3.5mmの素管を採用している。また、実施例1、2及び比較例1~3の鋼管における鋼管ねじ継手のねじ山高さは、すべて0.5mmである。実施例1、2及び比較例1~3のねじ要素やテーパーについては、下記にも示す通りであり、表1の備考には各鋼管の特徴を示している。
ここで、実施例1、2及び比較例1~3で設定した圧縮側フランク角θ1は、予め従来の比較例1(BU1)と同形状の試験体において曲げ強度試験を実施した結果に基づいている。つまり、試験体による曲げ強度試験の結果、圧縮側フランク角θ1が+20°と大きかったため、この角度に起因し、曲げ圧縮側でねじが乗り上げたものと推定し、圧縮側フランク角θ1を+20°~-3°に設定している。
実施例2は、上述した第1実施形態の鋼管ねじ継手10と同様の図4に示すバットレス型のねじ継手であり、記号YA1で示している。実施例2(YA1)は、引張側フランク角θ2が+3°であり、圧縮側フランク角θ1が-3°である逆フック形状をなしている。実施例2(YA1)のねじ列のテーパーは1/16である。
図9は、横軸に各ケース、縦軸に最大曲げモーメント(kNm)を示している。この結果、圧縮側フランク角が+20°である比較例1(BU1)の最大曲げモーメントが略18kNmとなった。一方、圧縮側フランク角が-3°の実施例1(WE1)及び実施例2(YA1)は、いずれも最大曲げモーメントが略23kNmを超え、比較例1のバットレス型の継手に対して曲げ強度が大幅に改善されていることが確認された。
試験の結果、第1試験体(YA11)ではピンの危険断面から破断(ピン破断)し、第2試験体(YA12)ではボックスの危険断面から破断(ボックス破断)し、第3試験体(YA13)ではボックスの危険断面近傍から座屈(ボックス座屈)が発生した。そして、従来のバットレス型のねじ継手で見られたボックスのピンへの乗り上げは発生しないことが確認できた。このように、破断形態が同一の設計でも異なる理由として、高強度薄肉鋼管では真円度や偏肉度が低強度厚肉鋼管に比べて悪く、これが破断形態のばらつきや、図11で示されたように低値側への強度ばらつきになったものと考えられる。しかし、圧縮側フランク角を-3°にすることで高強度薄肉鋼管に適用できることを確認した。
ここで、本ねじ継手に必要な性能は曲げ強度ではあるが、施工中に地震等の想定外の曲げ荷重がかかった際に、ねじ継手の変形性能が良いほうが安全性が高く、ねじ継手の破壊形態を変形性能の良いボックス座屈で制御できればより好ましいとされる。そこで、一般的に鉄鋼材料の変形性能を代表する降伏比YR(降伏強度/引張強度)をパラメータとして構造解析を行った。
図16のグラフより、(1)式、(2)式が求められる。
次に、第2実施例について、具体的に説明する。
第2実施例は、上述した第1実施形態の鋼管ねじ継手10が形成された鋼管同士を締結する際の施工性について、模擬試験を行うことにより確認した。ここで、施工性を評価することの目的としては、AGF工法では仰角4~6°の角度で先行して打設された鋼管に対して後行で打設する鋼管のねじ継手を挿入し、人力で鋼管を回転させて締め込んでいくため、施工上はねじ継手の嵌合性が重要視されていることに基づき、トンネル現場で施工性を評価する前に施工現場を同様な条件を模擬して嵌合性の評価を行った。
図17は、先行鋼管9Aに対して後行鋼管9Bを横向きでねじ継手を嵌合させた状態を模式的に示している。図17に示すように、自重により後行鋼管9Bは下方に傾き、この傾いた後行鋼管9Bを作業員が双方の鋼管9A、9Bの軸心O1、O2を合わせながら締め込むことになる。
継手締結後に12mとなる鋼管杭のたわみ量は、好ましくは0.1m以下であることが設計上好ましい。図19の結果からΔC=1mm当たりの許容振れ幅量であるΔDは26mmであり、長さ3mの鋼管杭4本を3箇所で連結して杭長12mになった後のたわみ量を0.1m以下にするにはΔC<1.25mmが好ましい。地山圧力によるたわみを考慮し、尚且つ、良好な嵌合性を維持するには0.3mm≦ΔC≦0.8mmがより好適な範囲となる。
表3に示すように、試験を行った3ケースの鋼管は、上述した第1実施例で使用した図20(a)に示す比較例1(BT)、図20(b)に示す実施例1(WG)、及び図20(c)に示す実施例2(YA)であり、本第2実施例ではそれぞれ記号BT、WG、YAで示している。フランク面のクリアランス幅ΔC(mm)は、BTで0.1mm、WGで0.1mm、YAで0.5mmである。なお、各ケースの鋼管ねじ継手におけるねじ山頂面はすべて軸心に平行である。
この結果、実施例2のYAのねじ継手のみが1回目、2回目ともに「◎」の評価であり、軸心調整を繰り返すことなく最後まで素手による回転で嵌合することができた。これよりフランク面のクリアランス幅ΔCが大きいことがねじ嵌合性の向上に効果があることを確認することができた。
次に、第3実施例について、具体的に説明する。
第3実施例では、上述した第1実施形態による鋼管ねじ継手10と、従来の鋼管ねじ継手を加工した鋼管(試験サンプル)を使用し、4点曲げ試験方法によりねじ継手の曲げ強度を評価した。
表5および表6は、各試験サンプルの仕様と試験結果を示している。表5に示すように、試験サンプルは、表5に示す比較例1~22の22ケース、表6に示す実施例1~35の35ケースを使用した。
各試験サンプルの素管強度(MPa)、圧縮側フランク角、引張側フランク角、ショルダー部(ピン先端、ボックス先端)の有無による仕様は、表4に記載している。試験は、4点曲げ強度試験を行うことで曲げ強度を測定し、この曲げ強度より換算最大曲げモーメントを求めた。なお、曲げ強度は最大曲げモーメントで表記し、母材強度の影響を平準化するために母管1000MPaに換算した。評価方法としては、目標値(目標強度)以上のものには合格「〇」とし、目標強度に満たないものは不合格「×」として評価した。ここで、目標強度は、従来使用されていたAGF鋼管で外径Dが114.3mm、肉厚tが6mm、材質STK400(引張強度400MPa)の鋼管の曲げ耐力である12.3kNmを目標値とした。
これに対して実施形態による圧縮側のフランク角が-3°である継手ではすべての試験体で目標を大幅に上回った。また、ボックスがピンを乗り上げる破断形態「A」は発生せず、ピン又はボックスの危険断面から破断が発生するか、ボックスの危険断面近傍が座屈していることを確認できた。
例えば、図22に示す第1変形例による鋼管ねじ継手10Bは、一方の鋼管1Bの管端を拡径した拡径部34に直接加工した雌ねじ3Aが形成されたボックス3と、管端に雄ねじ2Aが形成されたピン2と、を有している。この場合、ピン2が形成される他方の鋼管1Aの管端は縮径も拡径されていない。そのため、鋼管1A、1B同士が締結された状態でボックス3がピン2の鋼管1Aよりも外周側に張り出して双方のねじが螺合されることになる。
2 ピン
2A 雄ねじ
3 ボックス
3A 雌ねじ
10、10A、10B、10C 鋼管ねじ継手
11 本体部
23、33 ショルダー部
20a、30a ねじ山頂面(ねじ頭頂面)
20c、30c 圧縮フランク面
20d、30d 引張フランク面
θ1 圧縮側フランク角
θ2 引張側フランク角
ΔC クリアランス幅(間隙)
O 鋼管の管軸
Claims (7)
- 地盤に打ち込む鋼管同士をねじ込むことによって締結するための鋼管ねじ継手であって、
一方の前記鋼管の外面に雄ねじが形成されたピンと、
他方の前記鋼管の内面に前記ピンの前記雄ねじに螺合可能な雌ねじが形成されたボックスと、を有し、
前記ピンと前記ボックスのねじ列は、管軸に対してテーパーが形成され、
前記ピン及び前記ボックスに管軸方向の圧縮がかかる方向を左側に向けた断面視で、前記管軸に直角な面に対するフランク角において、前記直角な面に対して時計回りをプラス側、反時計回りをマイナス側とし、
前記ボックス及び前記ピンのねじは、前記ピンと前記ボックスの締結時において圧縮荷重を負担する圧縮フランク面と、引張荷重を負担する引張フランク面とのうち、少なくとも前記圧縮フランク面の前記管軸に直角な面に対するフランク角がマイナス側に傾斜する負角で設定され、
前記雄ねじと前記雌ねじのそれぞれのフランク面同士の間に管軸方向に可動可能な間隙が形成されていることを特徴とする鋼管ねじ継手。 - 前記フランク面同士の間の前記間隙は、管軸方向の長さで0.3~0.8mmであることを特徴とする請求項1に記載の鋼管ねじ継手。
- 前記雄ねじ及び前記雌ねじのそれぞれの雌ねじ頭頂面は、管軸に対して平行に形成され、又は前記ねじ列の前記テーパーの傾斜方向と逆方向に傾斜して形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼管ねじ継手。
- 前記引張フランク面のフランク角は、プラス側に傾斜する正角で設定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の鋼管ねじ継手。
- 前記圧縮フランク面のフランク角の絶対値は、前記引張フランク面のフランク角の絶対値以下であることを特徴とする請求項4に記載の鋼管ねじ継手。
- 前記ボックスにおける前記雌ねじの基端部、及び前記ピンにおける前記雄ねじの基端部には、それぞれ前記ピンの先端部および前記ボックスの先端部を向く環状面を有するショルダー部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の鋼管ねじ継手。
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