JPH0782738A - 地すべり抑止用鋼管杭 - Google Patents

地すべり抑止用鋼管杭

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JPH0782738A
JPH0782738A JP25260193A JP25260193A JPH0782738A JP H0782738 A JPH0782738 A JP H0782738A JP 25260193 A JP25260193 A JP 25260193A JP 25260193 A JP25260193 A JP 25260193A JP H0782738 A JPH0782738 A JP H0782738A
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pipe pile
screw joint
pile
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Toshio Shinohara
敏雄 篠原
Hisatoshi Shimaoka
久壽 島岡
Kimihisa Takano
公寿 高野
Shingo Mizutani
慎吾 水谷
Hiroyuki Maeno
博之 前野
Hiroo Asakawa
弘夫 浅川
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 地すべり抑止用鋼管杭の継手部をネジ継手構
造とする。前記ネジ継手部を、鋼管杭本体と同等の曲げ
強度とする。 【構成】 端部に雌ネジ継手部2を有する鋼管杭本体1
と、端部に雄ネジ継手部3を有する鋼管杭本体1とをネ
ジ込み結合してなる地すべり抑止用鋼管杭である。雌ネ
ジ継手部2および雄ネジ継手部3の外径は鋼管杭本体1
の外径と実質的に同一である。雌ネジ継手部2および雄
ネジ継手部3は、数回転でネジ込みが完了するように設
定された傾斜およびネジ山間隔を有するテーパ状のネジ
継手からなっている。雌ネジ継手部2および雄ネジ継手
部3の材料強度は、鋼管杭本体1の材料強度よりも大で
ある。雄ネジ継手部3には、ネジ込み完了時に雌ネジ継
手部2の先端面が当接する位置にショルダー部8が設け
られている

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、ネジ継手部により継
杭される地すべり抑止用鋼管杭に関するものである。
【0002】
【従来の技術】地すべり抑止用鋼管杭は、地すべり地帯
に設置されるので、その施工場所は重機等の搬入が困難
な急斜地であることが多く、打撃により杭を打ち込むこ
とが不可能なため、オーガーなどによりプレボーリング
した孔に杭を建て込んでいる。ところで、地すべり抑止
用鋼管杭の全長は、現地の状況によって相違するが、一
般に20〜30mに達する場合が多いが、輸送等の制限があ
るため現場で継杭しながら施工するのが通常である。こ
の継杭作業は、不安定な環境下で行なわれるため、迅速
且つ確実な作業が強く要求される。また、地すべりの崩
壊面は、どの面で起こるかを予測することが難しいた
め、地すべり抑止用鋼管杭は継杭継手部を含むほぼ全長
にわたって、どの部分でも設計上必要な強度以上の断面
諸性能を有していなければならないことが多い。
【0003】従来、地すべり抑止用鋼管杭の継杭は現場
での溶接作業によって実施されている。しかしながら、
このような現場溶接は作業環境が悪いうえ、下記に示す
問題点を有している。 現在の慣用サイズの原管は外径が小さく厚さが大き
いため、1箇所の溶接に時間が長くかかる。 検査に合格しない箇所が多く品質が落ちやすい。 労働条件が悪いため、優れた溶接技能工を確保しに
くい。 高張力鋼を使用しにくい。
【0004】以上述べたことから、継杭作業を前提とす
る地すべり抑止用鋼管杭の施工においては、下記に示す
ような特性を全て満たすことが求められている。 継杭作業が容易で、且つ、作業時間が短いこと。 鋼管杭同士の継手部の品質が作業環境および技量に
影響されることなく良好に確保されること。 継手部の強度が鋼管杭本体(以下、「杭本体」とい
う)と同等以上であること。 継手部の外径が杭本体よりも大きくならないこと。 杭本体が高張力鋼の場合でも適用できること。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】地すべり抑止用鋼管杭
では、以上述べたように、溶接による継杭方法が従来使
用されていたが、これに代わって継杭にネジ継手を使用
する方法が検討されている。これについては、必ずしも
地すべり抑止を目的としたものでないが、既に、以下に
示す技術が開示されている。
【0006】(1) 特開昭59-98923号公報:(以下、「先
行技術1」という) 先行技術1のテーパネジ付継手管は、強度上は問題なく
設計することができるが、ネジ継手部の外径が杭本体よ
りも大きくなり地盤の削孔径を大きくせざるを得ず、施
工費が増大する。このため、全体工事費が従来の溶接方
法よりも大きくなり、現実的でない。
【0007】(2) 特開平2-112728号公報:(以下、「先
行技術2」という) 先行技術2は建造物等の基礎杭を対象としたネジ継手鋼
管杭に関し、先行技術1と同様にネジ継手部の外径が杭
本体よりも大きくなるため、地すべり抑止用鋼管杭とし
ては適用できない。また、ネジ継手部は杭本体をそのま
ま、または、拡径してからネジ加工するため継手部強度
は杭本体より弱くならざるを得ない。即ち、雄ネジ終点
部はネジの谷部で断面積と断面係数が小さくなるため、
継手部の引張耐力および曲げ耐力は、杭本体より小さく
ならざるを得ない。また、雌ネジ終点部も断面積が減少
し、引張耐力が減る。
【0008】(3) 実開昭56-130034 号公報、実開昭57-
133645 号公報:(以下、「先行技術3」という) 先行技術3ではネジ継手部の外径は杭本体と同じであ
る。杭本体に設けられた雌ネジ継手部は、鋼管杭端部を
増肉してからネジ切り加工を施しているように判断でき
る。従って、雌ネジ継手部での断面積および断面係数
は、杭本体と同等に確保されている。一方、雄ネジ継手
部の内側継手管の中央付近においては、杭本体と同じ曲
げ耐力を確保するのは困難である。または、可能であっ
ても、厚さが著しく大きくなって不経済になる。
【0009】図4は先行技術3の杭の継手部を示す断面
図である。図4において、14は雄ネジ継手部3を有する
内側継手管、そして、14は雌ネジ継手部2を有する杭本
体である。内側継手管14の部分13は、杭本体15と同じ曲
げ耐力が要求される。しかし、この部分13の外径は、杭
本体15より大幅に小さくなるので著しく厚くならざるを
得ない。例えば、杭本体15を、外径φ300mm ×厚さt30
mmとすると、その断面係数zは、“z=1570m3”にな
る。今、ネジ山高さを図4のように5mmとすると、内側
継手管14のネジ谷部における外径は、“300 −2×(30
+5)=230mm ”となる。内側継手管14の材料強度が杭
本体15と同じ場合、内側継手管14の断面係数は杭本体15
と同じ値が必要になる。しかし、内側継手管14の外径が
230mm では、内側継手管14の厚さTを最大限の115mm に
しても、“z=1570m3”を確保することができない。即
ち、設計不可能ということになる。また、内側継手管14
の材料強度が杭本体15の1.4 倍とすると、内側継手管14
の必要断面係数は、“z=1570÷1.4 =1121cm3 ”とな
る。このときの内側継手管14の厚さTは58mmになる。材
料強度が高くこのように厚さが大きい鋼管を製造するこ
とは可能ではあるが、製造コストが著しく高くならざる
を得ず、経済的に不利である。
【0010】(4) 特開平4-70414 号公報:(以下、
「先行技術4」という) 先行技術4では、外側雌ネジ継手部を若干外側に増肉す
ることにより曲げ耐力を確保しようとしている。しか
し、内側雄ネジ継手部は、先行技術3と同じ問題点を有
しており、実現性は著しく低い。
【0011】以上述べた先行技術1から4は、地すべり
抑止用以外の鋼管杭を対象としたものであり、これらを
外径が小さく厚さが大きいという特徴を有する地すべり
抑止用鋼管杭に適用しても、継手部において杭本体と同
じ曲げ耐力を確保することが困難または著しく不経済に
なり、実現性が低い。
【0012】(5) 次に、コンクリート杭について比較
説明する。コンクリート杭においては、次に示すよう
な、ネジ継手により継杭する技術が開示されている。 実開昭60-195328 号公報、実開昭61-84734号公報、実開
昭62-190730 公報、特開昭62-258017 号公報、特開昭64
-21116号公報:(以下、「先行技術5」という) 上記のコンクリート杭用ネジ継手に関する先行技術5
は、建造物の基礎杭を対象としたものであり、地すべり
抑止用としての用途は配慮されていないと思われる。実
開昭62-190730 公報を除いて、継手部の外径は杭本体と
同じであるが、鋼管杭の場合のように、継手部の曲げ耐
力は大きな問題とならない。その理由は、コンクリート
杭と鋼管杭との材料強度の違いにある。ちなみに、材料
強度は、コンクリート杭が300 〜1000kg/cm2で、鋼管杭
は4000〜8000kg/cm2である。コンクリート杭の場合、継
手部は鋼材で形成されるため、継手部の断面係数が杭本
体よりも著しく小さくても強度が本体強度の数倍から数
十倍高いため、杭本体と同じ曲げ耐力が確保されやす
い。(曲げ強度=断面係数×材料強度)。
【0013】一方、鋼管杭においては、継手部の材料強
度は杭本体と同じか、または、高くても2倍程度までの
違いであるため、継手部の断面係数が杭本体より著しく
小さいと曲げ体力の確保が難しくなる。
【0014】このようなことから、基礎杭に比べて、外
径が小さく厚さが大きいという特徴を有する地すべり抑
止用鋼管杭の場合、ネジ継手部の外径が杭本体より大き
くならないという制限のもとでは、雄ネジ継手部におけ
る断面係数を大きくとることは容易でない。また、ネジ
が杭体の軸心と平行になるようなネジ継手では、先行技
術1から5の例にみられるように特に難しい。
【0015】従って、この発明の目的は、継手部をネジ
継手構造とすることにより継杭作業から溶接の使用を排
除して現場での作業効率を大幅に省力化し、継手部の外
径を杭本体の外径と同径としても継手部が杭本体と同等
以上の曲げ強度を確保することができる、地すべり抑止
用鋼管杭を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】この発明は、端部に雌ネ
ジ継手部を有する鋼管杭本体と、端部に雄ネジ継手部を
有する鋼管杭本体とをネジ込み結合してなる地すべり抑
止用鋼管杭であって、前記雌ネジ継手部および前記雄ネ
ジ継手部の外径は前記鋼管杭本体の外径と実質的に同一
であり、前記雌ネジ継手部および前記雄ネジ継手部は、
数回転でネジ込みが完了するように設定された傾斜およ
びネジ山間隔を有するテーパ状のネジ継手からなり、且
つ、前記雌ネジ継手部および前記雄ネジ継手部のうちの
両方または前記雄ネジ継手部は、その材料強度が前記鋼
管杭本体の材料強度よりも大であるか、または、そのネ
ジ終点部の厚さが前記鋼管杭本体の厚さよりも大である
ことに特徴を有するものである。前記雄ネジ継手部に
は、ネジ込み完了時に前記雌ネジ継手部の先端面が当接
する位置にショルダー部が設けられていることが好まし
い。前記雌ネジ継手部および前記雄ネジ継手部は、前記
鋼管杭本体の端部をアップセット加工によりまたは遠心
力鋳造法により増肉して形成することが好ましい。前記
雌ネジ継手部および前記雄ネジ継手部は、前記鋼管杭本
体よりも材料強度が高い鋼管にネジ加工を施したもの
を、前記鋼管杭本体に溶接してなることが好ましい。前
記雌ネジ継手部および前記雄ネジ継手部は、前記鋼管杭
本体よりも厚さが大きい鋼管にネジ加工を施したもの
を、前記鋼管杭本体に溶接してなることが好ましい。更
に、前記雄ネジ継手部は、その先端部に非ネジ部を有す
ることが好ましい。
【0017】
【作用】次に、この発明を、上述のように構成した理由
を、図面を参照しながら説明する。
【0018】(1) 鋼管杭同士は、ネジ継手により継杭さ
れる。図1はこの発明の地すべり抑止用鋼管杭の継手部
を示す断面図である。この発明の地すべり抑止用鋼管杭
は、管端に雌ネジ継手部2を有する鋼管杭本体1aと、管
端に雄ネジ継手部3を有する鋼管杭本体1bとを継杭する
ことにより形成される。継杭作業は、先行鋼管杭1aの雌
ネジ継手部2に、後行鋼管杭1bの雄ネジ継手部3を当接
し、後行鋼管杭1aを回転させネジ込んで結合することに
より実施される。このように、雄ネジ継手部3と雌ネジ
継手部2とによるネジ継手構造とすることにより、継杭
に溶接が不要となり、作業環境または作業員の技量に左
右されずに、所定の強度の継手を有する地すべり抑止用
鋼管杭を得ることができる。
【0019】(2) 雌ネジ継手部および雄ネジ継手部の外
径は、杭本体の外径と同一、または、ほぼ同一とする。
雌ネジ継手部および雄ネジ継手部の外径を杭本体の外径
より大きくすれば、雌ネジ継手部および雄ネジ継手部か
らなる継手部の曲げ強度を容易に大きくすることができ
る。しかしながら、地すべり抑止用鋼管杭の場合、杭の
外径は地盤を先行削孔する孔の内径(以下、「削孔径」
という)よりも小でなければならないので、継手部外径
を大きくすれば削孔径も大きくする必要がある。継手部
の構造上の都合で削孔径を大きくすることは、削孔量お
よび費用も増大し、著しく不経済な工法になり、実用上
実現不可能である。従って、雌ネジ継手部および雄ネジ
継手部の外径は、杭本体の外径と実質的に同一とする。
【0020】(3) 雌ネジ継手部および雄ネジ継手部は、
数回転でネジ込みが完了するように設定された傾斜およ
びネジ山間隔を有するテーパ状に形成する。 現場での継杭作業は、孔の中に雌ネジ継手部を上端
に位置させて先行杭を設置した後、雄ネジ継手部を下端
に位置させて後行杭をクレーン等で吊り下げて上下杭の
ネジ継手部を当接して噛み合わせネジ込むことにより行
なわれる。しかしながら、長尺重量物である後行杭がブ
ラブラ揺れて両者を合わせにくいため、雌ネジ継手部2
および雄ネジ継手部3が、図2に示すような一般に用い
られる平行状の平行ネジの場合、上下杭の芯が1mmでも
合わないと、ネジ同士を噛み合わせることができない。
一方、図1、図3に示すように、テーパ状のテーパネジ
にすれば、容易に噛み合わせることができる。多少のず
れがあっても噛み合わせ可能である。図1において、16
はテーパを示す。
【0021】 必要なネジ山の数は、そのピッチ等に
より異なるが、我々の試設計によれば、15〜30山程度に
なる。図2に示すような平行ネジの場合、噛み合わせて
からネジ込み完了までにネジ山の数だけ後行杭を回転さ
せる必要がある。地すべり抑止用鋼管杭の施工現場は、
一般に山腹の狭い斜面上であるため、作業環境が極めて
悪く、特殊なあるいは大型の機械を使用しにくい。一
方、図3に示すようなテーパネジは、テーパの傾斜とネ
ジ山の間隔を適当に調整することにより、人力により数
回転でネジ込みを完了させることができる作用を有して
いる。実用上、回転数は2〜5回転程度に設定するのが
好ましい。
【0022】(4) 雌ネジ継手部および雄ネジ継手部は、
下記(a) および(b) の条件のうち、何れか1つを満足す
る。 (a) 雌ネジ継手部および雄ネジ継手部のうちの両方また
は雄ネジ継手部は、その材料強度が、杭本体の材料強度
よりも大であること。 (b) 雌ネジ継手部および雄ネジ継手部のうちの両方また
は雄ネジ継手部は、そのネジ終点部の厚さが、杭本体の
厚さよりも大であること。
【0023】図5は継手部における力の伝達機構を説明
する断面図であり、端部に雌ネジ継手部2を有する杭本
体1同士が、雄ネジ継手部3を有する内側継手管14を介
して継杭されている。図5に示すように、雌ネジ継手部
2と雄ネジ継手部3とが結合する継手部9付近にMoとい
う曲げモーメントが作用しているとき、断面A,B,G,K,M
部には、Moの曲げモーメントが作用し、断面D,E,I,J 部
には約1/2Mo の曲げモーメントが作用する。また、C,F,
H,L 部の曲げモーメントは殆ど零である。従って、雄ネ
ジ継手部3においては、G 部断面の耐荷力が問題となる
が、G 部の外径は杭本体1より相当小さくなるため、必
要断面係数の確保が容易でない。一方、C,F,H,L 部は、
余裕が十分ある。この特性を生かした継手が、本発明鋼
管杭に係る継手構造である。
【0024】図6は継手部における力の伝達機構を説明
する断面図であり、端部に雌ネジ継手部2を有する杭本
体1と、端部に雄ネジ継手部3を有する杭本体1とが、
雌ネジ継手部2と雄ネジ継手部3とを介して継杭されて
いる。図6に示すように、継手部9付近にMoという曲げ
モーメントが作用しているとき、断面A,B,G,H 部には、
Moの曲げモーメントが作用し、断面D,E 部には約1/2Mo
の曲げモーメントが作用する。また、C,F 部の曲げモー
メントは殆ど零であり、G 部はその外径が小さいため、
必要断面係数を確保するのが容易でない。
【0025】図7は本発明鋼管杭の継手部における力の
伝達機構を説明する断面図であり、端部に雌ネジ継手2
を有する杭本体1と、端部に雄ネジ継手3を有する杭本
体1とが、雌ネジ継手部2と雄ネジ継手部3とを介して
継杭されている。断面G 部は、本体のA,H 部と同じ曲げ
耐荷力を要求されるが、殆ど耐荷力を必要としないF部
を薄くすることにより、G 部の外径を大きくとることが
できる。その結果、G部の厚さを本体より若干大きくす
るか、雄ネジ継手3(または雄ネジ継手3および雌ネジ
継手2)の材料強度を上げることにより容易に杭本体と
同じ曲げ強度を確保できる。
【0026】図8は上記(a) および(b) のいずれの条件
も満足しないこの発明範囲外の雄ネジ継手部と雌ネジ継
手部との継手部構造を示す断面図である。図8におい
て、雄ネジ継手部3および雌ネジ継手部2は、杭本体1
と同じ強度である(杭本体1にそのままネジ継手部2、
3が形成されている)。雄ネジ継手部3のネジ終点部3
a、雌ネジ継手部2のネジ終点部2aの厚さは、杭本体1
の厚さよりもやや小さくなっている。図8のような継手
部構造では、ネジ終点部2a,3a の双方とも、断面積およ
び断面係数が杭本体1よりも小さくならざるを得ない。
このため、ネジ継手部2、3の剪断耐荷力、引張耐荷力
および曲げ耐荷力は杭本体1よりも小さくなる。この場
合には、杭の設計強度は継手部で決まり、不経済な設計
となる。
【0027】図9は上記(a) の条件を満足するこの発明
の雄ネジ継手部と雌ネジ継手部との継手部構造を示す断
面図である。図9は、雌ネジ継手部2および雄ネジ継手
部3の材料強度が杭本体1よりも大となっている。
【0028】図10および図11は上記(b) の条件を満
足するこの発明の雄ネジ継手部と雌ネジ継手部との継手
部構造を示す断面図である。図10は、雄ネジ継手部3
のネジ終点部3aの厚さが杭本体1の厚さよりも大であ
る。また、図11は、雌ネジ継手部2および雄ネジ継手
部3のネジ終点部2aおよび3aの厚さが杭本体1の厚さよ
りも大である。
【0029】上記(a) および(b) の条件のうちのどちら
を用いるかは、継手部のテーパの傾斜、ネジの間隔、ネ
ジの高さ、ネジのピッチ、ネジ部の長さ、継手部の材料
強度等、ネジの設計条件、加工性および製作コスト等か
ら適宜選ぶことができる。
【0030】(5) 雄ネジ継手部の、ネジ込み完了時に
雌ネジ継手部の先端面が当接する位置にショルダー部を
設ける。図9から図11に示すように、雄ネジ継手部3
の付け根の、ネジ込み完了時に雌ネジ継手部2の先端面
が当接する位置には、ショルダー部8が設けられてい
る。図12は曲げモーメントを受けた継手部を示す断面
図、図13はショルダー部がない場合の継手部の圧縮側
を示す断面図、図14はショルダー部がある場合の継手
部の圧縮側を示す断面図である。図12に示すように、
ネジ継手部2、3に鋼材の降伏応力度を超えるような大
きな曲げモーメントが作用すると、ネジ継手部2、3の
円環状断面は変形を生じ、図13に示すように、圧縮側
では、雌ネジ継手部2のネジ山が矢印Cの方向に動き、
雄ネジ継手部3のネジ山は矢印Dの方向に動き、互いに
ネジ山を乗り越えて外れようとし、ついには急激に曲げ
耐荷力が低下する。鋼管杭の設計においては、鋼材の降
伏応力度を超えない範囲で設計されるが、地すべり抑止
用杭においては、杭に実際に作用する地すべり力を正確
に推定することは極めて難しいために、設計上設定した
値よりも大きな曲げモーメントが杭に発生することがし
ばしば生じる。従って、地すべり抑止用鋼管杭の継手部
には、鋼材が降伏した後も杭本体と同程度の耐荷性能が
要求される。そこで、図14に示すように、雌ネジ継手
部2の先端面が雄ネジ継手部3のショルダー部8に当接
していると、ネジ山を乗り越えようとする動きが拘束さ
れ、継手部も杭本体と同程度の曲げ耐荷性能を有するこ
とができる。また、雌ネジ継手部の先端面がショルダー
部に突き当たることで、所定の長さまでネジ込んだこと
を確認できるという施工管理上の重要な役割も果たす。
【0031】(6) 雌ネジ継手部および雄ネジ継手部は、
下記(a) 、(b) および(c) のうち、何れか1つにより製
造されることが好ましい。 (a) 雌ネジ継手部および雄ネジ継手部は、杭本体の端部
をアップセット加工または遠心力鋳造法により増肉して
形成する。 (b) 雌ネジ継手部および雄ネジ継手部は、杭本体よりも
材料強度が高い鋼管にネジ加工を施したものを、杭本体
に溶接して形成する。 (c) 雌ネジ継手部および雄ネジ継手部は、杭本体よりも
厚さが大きい鋼管にネジ加工を施したものを、杭本体に
溶接して形成する。
【0032】図15から図17は、上記(a) のアップセ
ット加工によるネジ継手部形成工程を示す断面図であ
る。図15に示す杭本体1の端部に、図16に示すよう
に増肉加工(アップセット加工)を施こし、次いで、図
17に示すようにネジ加工を施す。
【0033】図18は、上記(b) 、(c) の溶接によるネ
ジ継手部形成を示す断面図である。図18中の4が溶接
部である。溶接は工場において実施することができ、現
場溶接と異なり、良好な溶接品質が得られる。また、高
張力鋼でも良好に溶接ができる。
【0034】(7) 雄ネジ継手部の先端部に非ネジ部を設
ける。図19は雄ネジ継手部の先端部を示す断面図であ
る。図19に示すように、雄ネジ継手部3の先端部にネ
ジの損傷を防止するため、および、雌ネジ継手部に雄ネ
ジ継手部3を装入し易くするガイドにするため、突起状
の非ネジ部7を設ける。鋼管杭を孔中にクレーン6ある
いはウインチで建て込む場合、図20に示すように、そ
の上端をワイヤ5で結んで吊り上げるため、杭下端は地
面上を引きずられる。ネジ継手部を有する杭の場合、継
手の噛み合わせの都合から、雄ネジ継手部3が下端側に
なるのが一般的であるため、そのネジ下端が損傷する恐
れがある。非ネジ部7は、その損傷を防止する作用を有
している。
【0035】
【実施例】次に、この発明を図面に示す実施例に基づい
て、更に詳細に説明する。地すべり抑止杭には、曲げモ
ーメント、剪断力、引張力が作用し、継手部はこれらの
力に対して、杭本体部と同等またはそれ以上の耐荷力を
有する必要がある。この発明の鋼管杭のように、継手部
の外径が杭本体の外径と実質的に同じ場合には、曲げモ
ーメントに対する耐荷力が最大の問題となる。そこで、
継手部の強度について調べた。
【0036】内径φ318.5mm ×厚さt25mmの寸法を有す
る鋼管を杭本体として使用した。前記杭本体を2本用意
し、1本の端部にテーパ状の雌ネジ継手部2を、もう1
本の端部にテーパ状の雄ネジ継手部3を、それぞれ接続
した。テーパは1/6 であった。そして、この2本を雌ネ
ジ継手部2と雄ネジ継手部3とによりネジ結合し(10は
ネジ螺合部)、この発明の範囲内の地すべり抑止用鋼管
杭(以下、「本発明鋼管杭」という)を調製した。調製
した本発明鋼管杭の継手部の軸方向の断面形状を図21
に示す。本発明鋼管杭は、杭本体1が65kg鋼、雌ネジ継
手部2および雄ネジ継手部3が杭本体1より材料強度が
高い80kg鋼からなっており、杭本体1と雌ネジ継手部
2、雄ネジ継手部3とは工場において溶接によって接続
を実施した。4はその溶接部である。
【0037】次いで、図22に示すように継手部9を中
心にして両端を支点11の上に載置した。次いで、継手部
9の両側上面の載荷点12から下方に荷重Pをかけること
により、4点載荷純曲げ試験を実施し、曲げ耐荷力を調
べた。その結果を図23に示す。なお、試験において
は、図22に示すように、支点11,11間の距離は5400m
m、荷重をかける載荷点12, 12間の距離は1500mmであっ
た。比較のため、本発明鋼管杭に使用した鋼管杭1と同
寸法、同材質の鋼管(以下、「比較用鋼管」という)を
使用し、同条件の4点載荷純曲げ試験を実施した。その
結果を図23に合わせて示す。なお、図23において、
Aは本発明鋼管杭、そして、Bは比較用鋼管を示し、全
断面降伏荷重(118.45tf)、縁降伏荷重(86.15tf )
は、鋼材の理論上の耐荷力を示す。
【0038】図23に示すように、本発明鋼管杭はその
継手部において、比較用鋼管と同等以上の曲げ耐荷力を
有していた。この結果、本発明鋼管杭は、継手部を含む
ほぼ全長にわたってどの部分でも継手部なしの鋼管杭の
曲げ耐力と同等の耐荷力を均一に有していることがわか
る。
【0039】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれ
ば、以下に示す工業上有用な効果がもたらされる。 継手部の外径が杭本体の外径と同じでありながら、
継手部は杭本体と同等以上の強度を確保することがで
き、継手部を含むほぼ全長にわたって継手部なしの鋼管
杭と同等の耐荷力を得られる。 雌ネジ継手部および雄ネジ継手部からなる継手部の
外径が杭本体の外径と同じため、地盤の削孔径が大きく
ならず、工事費が増大しない。 継手部はテーパネジで結合するため、数回転でネジ
込みが完了し、継杭に要する施工時間が大幅に短縮され
る。即ち、外径φ318.5mm 、厚さ25mmの鋼管杭の場合で
示すと、従来の溶接工法では、継杭1回に1時間40分程
度の時間を消費したのに対し、本発明では、5分で終了
する。 特殊な機械および高度な技量を必要とせず、天候に
も左右されずに作業ができ、且つ、信頼性が高い継手構
造が得られる。ネジ込み作業は、一般的な作業員が、1
人で人力によって実施することができる。 杭本体が高張力鋼(例えば、65kg鋼)の場合でも、
容易に継手部を設計、製造できる。 ショルダー部により、ネジ山が互いに相手のネジ山
を乗り越えようとする動きが拘束され、継手部も杭本体
と同程度の曲げ耐荷性能を有することができ、また、雌
ネジ継手部の先端面がショルダー部に突き当たること
で、所定の長さまでネジ込んだことを確認でき、施工管
理上有利である。 雄ネジ継手部の先端部に非ネジ部を設けることによ
り、雄ネジ継手部のネジ下端の損傷が防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の地すべり抑止用鋼管杭の1実施態様
を示す断面図である。
【図2】平行状の雄ネジ継手部と雌ネジ継手部との継手
部構造を示す断面図である。
【図3】テーパ状の雄ネジ継手部と雌ネジ継手部との継
手部構造を示す断面図である。
【図4】先行技術3の杭の継手部を示す断面図である。
【図5】端部に雌ネジ継手部を有する杭本体同士を雄ネ
ジ継手を有する内側継手管を使用して継杭する継手部に
おける力の伝達機構を説明する断面図である。
【図6】端部に雌ネジ継手を有する杭本体と、端部に雄
ネジ継手を有する杭本体とを継杭する継手部における力
の伝達機構を説明する断面図である。
【図7】端部に雌ネジ継手を有する杭本体と、端部に雄
ネジ継手を有する杭本体とを継杭する本発明鋼管杭の継
手部における力の伝達機構を説明する断面図である。
【図8】この発明範囲外の雄ネジ継手部と雌ネジ継手部
との継手部構造を示す断面図である。
【図9】この発明の雄ネジ継手部と雌ネジ継手部との継
手部構造を示す断面図である。
【図10】この発明の雄ネジ継手部と雌ネジ継手部との
継手部構造を示す断面図である。
【図11】この発明の雄ネジ継手部と雌ネジ継手部との
継手部構造を示す断面図である。
【図12】曲げモーメントを受けた継手部を示す断面図
である。
【図13】ショルダー部がない場合の継手の圧縮側を示
す断面図である。
【図14】ショルダー部がある場合の継手の圧縮側を示
す断面図である。
【図15】アップセット加工によるネジ継手部形成工程
を示す断面図である。
【図16】アップセット加工によるネジ継手部形成工程
を示す断面図である。
【図17】アップセット加工によるネジ継手部形成工程
を示す断面図である。
【図18】溶接によるネジ継手部形成を示す断面図であ
る。
【図19】雄ネジ継手部の先端部を示す断面図である。
【図20】杭を吊り上げる状況を示す側面図である。
【図21】実施例に使用された本発明鋼管杭の継手部を
示す断面図である。
【図22】実施例における試験方法を示す説明図であ
る。
【図23】荷重と中央変移との関係を示すグラフであ
る。
【符号の説明】
1,1a,1b 鋼管杭本体 2 雌ネジ継手部 2a ネジ終点部 3 雄ネジ継手部 3a ネジ終点部 4 溶接部 5 ワイヤ 6 クレーン 7 非ネジ部 8 ショルダー部 9 継手部 10 ネジ螺合部 11 支点 12 荷重をかける載荷点 13 内側継手管の部分 14 内側継手管 15 杭本体 16 テーパ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 水谷 慎吾 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 前野 博之 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 浅川 弘夫 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 端部に雌ネジ継手部を有する鋼管杭本体
    と、端部に雄ネジ継手部を有する鋼管杭本体とをネジ込
    み結合してなる地すべり抑止用鋼管杭であって、 前記雌ネジ継手部および前記雄ネジ継手部の外径は前記
    鋼管杭本体の外径と実質的に同一であり、 前記雌ネジ継手部および前記雄ネジ継手部は、数回転で
    ネジ込みが完了するように設定された傾斜およびネジ山
    間隔を有するテーパ状のネジ継手からなり、且つ、 前記雌ネジ継手部および前記雄ネジ継手部のうちの両方
    または前記雄ネジ継手部は、その材料強度が前記鋼管杭
    本体の材料強度よりも大であることを特徴とする地すべ
    り抑止用鋼管杭。
  2. 【請求項2】 端部に雌ネジ継手部を有する鋼管杭本体
    と、端部に雄ネジ継手部を有する鋼管杭本体とをネジ込
    み結合してなる地すべり抑止用鋼管杭であって、 前記雌ネジ継手部および前記雄ネジ継手部の外径は前記
    鋼管杭本体の外径と実質的に同一であり、 前記雌ネジ継手部と前記雄ネジ継手部とは、数回転でネ
    ジ込みが完了するように設定された傾斜およびネジ山間
    隔を有するテーパ状のネジ継手からなり、且つ、 前記雌ネジ継手部および前記雄ネジ継手部のうちの両方
    または前記雄ネジ継手部は、そのネジ終点部の厚さが前
    記鋼管杭本体の厚さよりも大であることを特徴とする地
    すべり抑止用鋼管杭。
  3. 【請求項3】 前記雄ネジ継手部には、ネジ込み完了時
    に前記雌ネジ継手部の先端面が当接する位置にショルダ
    ー部が設けられている請求項1または2記載の地すべり
    抑止用鋼管杭。
  4. 【請求項4】 前記雌ネジ継手部および前記雄ネジ継手
    部は、前記鋼管杭本体の端部をアップセット加工により
    または遠心力鋳造法により増肉して形成する請求項1、
    2または3記載の地すべり抑止用鋼管杭。
  5. 【請求項5】 前記雌ネジ継手部および前記雄ネジ継手
    部は、前記鋼管杭本体よりも材料強度が高い鋼管にネジ
    加工を施したものを、前記鋼管杭本体に溶接してなる請
    求項1または3記載の地すべり抑止用鋼管杭。
  6. 【請求項6】 前記雌ネジ継手部および前記雄ネジ継手
    部は、前記鋼管杭本体よりも厚さが大きい鋼管にネジ加
    工を施したものを、前記鋼管杭本体に溶接してなる請求
    項2または3記載の地すべり抑止用鋼管杭。
  7. 【請求項7】 前記雄ネジ継手部は、その先端部に非ネ
    ジ部を有する請求項1から6のいずれか1つに記載の地
    すべり抑止用鋼管杭。
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