[鉛蓄電池の課題]
鉛蓄電池では、電槽内で生じた水蒸気やミストからなるガスによって電槽内の圧力が高くなることがある。鉛蓄電池の蓋には、例えば、電槽内のガスを外部へ排出する排気口が設けられる。
鉛蓄電池の蓋には、内部に空間を有する箱状であって、いわゆる二重蓋と称されるものがある。この種の蓋では、例えば、底に通気口が設けられ、側壁に排気口が設けられ、通気口から排気口に至る通路が設けられる。電槽内で発生したガスは、通気口から蓋内に進入し、通路を通じて排気口に至り、排気口から外部に排出される。上記通路には、例えば、還流孔が設けられ、蓋内の液体は、通路を通じて還流孔に導かれ、還流孔から電槽内に戻る。
車両等に搭載されて使用される鉛蓄電池では、揺れや振動が加えられると、還流孔から蓋内に電解液が進入することがある。蓋内に設けられる通路は、還流孔から蓋内に進入した電解液が排気口から漏れ出ることを抑制できるように、例えば、曲折して設けられる。また、通路の途上には、例えば、液体が流入する空間が設けられることがある。
そして、上記空間に液体が容易に流入できる構成にするため、例えば、還流孔から蓋内に進入し、通路を逆流する液体を上記空間にスムースに導けるように、当該空間に、通路に連通して液体が流入する連通口と、通路に連通して液体が流出する連通口との2つの連通口を設けることが考えられる。或いは、通路の幅の1.5倍以上の幅広の連通口を上記空間に設けることが考えられる。
このような蓋の構成では、液体を上記空間にスムースに導くことができる。しかしながら、その反面、上記空間から液体がスムースに流出する。そうすると、上記空間に流入した液体が、当該空間にさらに流入した液体によって、当該空間から勢いよく流出してしまう。当該空間から勢いよく流出した液体は、排気口まで到達するおそれを生じさせる。
本願の発明者は、試行錯誤の結果、通路における液体の流速(以下、液体の勢いとも記載する)を低下させることが、排気口から液体が漏れ出ることを抑制する溢液性能を高めることになり、通路における液体の勢いを弱めるためには、上記空間の連通口を1つに限定し、かつ、当該連通口の幅を通路の幅の1.5倍未満にすることが効果的であるとの知見を得た。
[概要説明]
初めに、本発明の一実施形態に係る鉛蓄電池の概要について説明する。本発明の一実施形態に係る鉛蓄電池は、上部に開口を有し、電極群及び電解液を収容する電槽と、上記開口を封口し、且つ排気口が形成された蓋部材とを備える。上記蓋部材は、上記電槽内と連通する還流孔が形成された底壁と、上記底壁と対向する天壁と、上記底壁に立設されたリブと、を有する。上記リブは、上記還流孔から上記排気口に至る通路と、当該通路と1つの連通口を介して連通し、当該連通口を通じて上記電解液が流入及び流出可能な第1空間と、を形成する。上記連通口の幅は、当該連通口に隣接する部分における上記通路の幅の1.5倍未満である。
通路を流れる液体は、連通口から第1空間に流入し、第1空間に一時的に貯留される。第1空間に流入した液体は、鉛蓄電池に加えられた振動や揺れ、或いは、連通口から第1空間にさらに流入した液体により、第1空間から流出する。第1空間の連通口は、ただ1つであるので、この連通口から液体が第1空間内に流入し、この連通口から液体が流出する。したがって、連通口から流出する液体と通路を流れる液体とを衝突させて、通路を流れる液体の勢いと、連通口から流出する液体の勢いとを、ともに弱めることができる。また、第1空間の連通口の幅は、通路の幅の1.5倍未満であるので、連通口を通じて第1空間から流出する液体を、通路を流れる液体の勢いを弱めることができるだけの強さで流出させることができる。その結果、溢液性能を高めることができる。
ここで、上記連通口の幅は、当該連通口に隣接する部分における上記通路の幅の半分以上であってもよい。
第1空間の連通口の幅が通路の幅の半分以上であるので、通路を流れる液体の勢いを十分に弱めることができるだけの量の液体を連通口から第1空間内に流入させることができる。その結果、溢液性能をさらに高めることができる。
また、上記リブは、上記通路と連通し、液体が流入する第2空間をさらに形成していてもよい。上記第2空間は、複数の連通口と、上記通路の幅の1.5倍以上の幅の1つの連通口との少なくとも一方を通じて上記通路と連通し、かつ、上記還流孔と直接連通しない。上記第1空間は、上記第2空間よりも、上記通路における上記還流孔に近い位置に位置する。
幅の狭い1つの連通口のみを有する第1空間は、複数の連通口或いは幅広の1つの連通口を有する第2空間よりも、通路における還流孔に近い位置に位置するので、還流孔から通路に進入した液体は、第1空間から流出した液体によって勢いを弱められた後、第2空間にスムースに流入する。その結果、溢液性能をさらに高めることができる。
また、上記リブは、上記通路の一部であって、直線状の第1直線通路部と、上記第1直線通路部と交差する第2通路部と、を形成していてもよい。上記第1空間の連通口は、上記第1直線通路部の延長上であって、上記第1直線通路部と上記第2通路部との交差部に面して設けられている。
直線状の第1直線通路部により、第1空間の連通口に液体を導くことができるので、連通口から流出する液体の勢いを十分に弱め得るだけの量の液体を第1空間に流入させることができる。その結果、溢液性能をさらに高めることができる。
また、上記第1直線通路部と、上記第2通路とは、直交してもよい。第1直線通路部を流れる液体の量や勢いと、連通口から流出する液体の量や勢いとの間に差があっても、当該差によって溢液性能が大きく変化することを抑制することができる。その結果、溢液性能を安定させることができる。
また、上記リブは、上記第1直線通路部の一部及び上記貯留空間の一部を区画する直線状のリブを含んでいてもよい。上記連通口は、上記直線状のリブの中間に位置する。
第1直線状通路部を流れる液体は、直線状のリブに沿って、第1空間の連通口に案内される。一方、貯留空間から流出する液体も、直線状のリブに沿って連通口に案内される。したがって、第1直線通路部を流れる液体と、連通口から流出する液体とを、正面衝突させることができる。その結果、通路を流れる液体の勢いをさらに弱めて、溢液性能をさらに高めることができる。
[実施形態]
一実施形態の鉛蓄電池を適宜図面を参照しながら説明する。
図1及び図2に示されるように、鉛蓄電池10は、一面に開口を有する矩形箱状の電槽20と、電槽20の開口を閉塞する蓋部材30と、を備える。図2は、図1におけるII-II断面図であって、後述の負極柱33の中心軸を通る平面で鉛蓄電池10を切断した断面図である。以下では、開口が設けられた電槽20の一面が上面であるものとして上下方向7を定義し、矩形箱状の電槽20の短辺に沿う方向を前後方向8と定義し、長辺に沿う方向を左右方向9と定義して説明する。上下方向7と、前後方向8と、左右方向9とは、互いに直交する。
電槽20は、前後左右の4つの側板21及び底板22を備える。4つの側板21及び底板22に囲まれた内部空間23は、希硫酸からなる電解液6を貯留する。すなわち、鉛蓄電池10は、いわゆる液式蓄電池である。電槽20は、例えば、耐蝕性及び絶縁性を有する合成樹脂を用いて成形された樹脂成型品である。
図3に示されるように、電槽20は、内部空間23を6つに仕切る5つの仕切板24を備える。仕切板24は、左右方向9を厚みとする板状である。仕切板24は、側板21及び底板22と一体に成形されており、底板22及び前後の側板21と連結している。
左右の側板21と、5つの仕切板24とは、左右方向9において、ほぼ等間隔で互いに離間している。仕切板24の上端は、側板21の上端とほぼ同じ高さに位置する。5つの仕切板24は、電槽20の内部空間23を、6つのセル室11~16に仕切る。各セル室11~16は、電解液6をそれぞれ貯留する。
各セル室11~16は、図2に示されるように、正極板25と、負極板26と、セパレータ27とをそれぞれ収容している。正極板25と、負極板26と、セパレータ27とは、左右方向9を厚みとする板状であって、左右方向9において、互いに離間している。セパレータ27は、正極板25と負極板26との間に位置しており、正極板25と、負極板26との間を仕切る。
正極板25及び負極板26は、例えば、格子体に活物質が充填されたものである。正極板25の活物質の主成分は二酸化鉛である。負極板26の活物質の主成分は鉛である。
各セル室11~16にそれぞれ収容された各正極板25及び各負極板26は、導電性のストラップ28によって、相互に接続されている。詳しく説明すると、一のセル室に収容された正極板25は、ストラップ28を介して、隣のセル室に収容された負極板26と接続されている。一のセル室に収容された負極板26は、他のストラップ28を介して、隣のセル室に収容された正極板25と接続されている。例えば、セル室12に収容された正極板25は、ストラップ28を介して、セル室11、13に収容された負極板26と接続されており、セル室12に収容された負極板26は、他のストラップ28を介して、セル室11、13に収容された正極板25と接続されている。すなわち、セル室11~16は、直列接続されている。
図1及び図2に示されるように、蓋部材30は、矩形箱状の蓋本体31と、蓋本体31を上下方向7に貫通する正極柱32及び負極柱33と、ブッシング38、39と、を備える。
蓋本体31は、矩形箱状である。蓋本体31の上下方向7の厚みは、前後方向8に沿う短辺及び左右方向9に沿う長辺よりも短い。すなわち、蓋本体31は、扁平な矩形箱状である。蓋本体31は、電槽20の上面よりも大きな下面を有する。当該下面の周端部からは、電槽20の側板21の外面の上部を覆う周壁35が下向きに突出している。蓋本体31は、周壁35の内側に電槽20の側板21の上部を嵌め込んで配置されている。
蓋本体31は、電槽20に固着されている。詳しく説明すると、蓋本体31は、周壁35に沿って設けられた矩形枠状の当接面36を有している。当接面36は、蓋本体31の下面の一部である。当接面36は、電槽20の側板21の上端と当接している。当接面36と電槽20の側板21の上端とは、熱溶着などによって、相互に固着されている。すなわち、蓋本体31は、電槽20に固着されている。
また、蓋本体31は、電槽20の各セル室11~16間で電解液6が相互に移動することを防止可能なように、電槽20に固着されている。詳しく説明すると、蓋本体31は、図5に示されるように、下面から下向きに突出する5つのリブ37を有する。各リブ37は、左右方向9を厚みとし、前後方向8に沿って設けられている。各リブ37の下端は、電槽20の各仕切板24の上端とそれぞれ当接している。蓋本体31のリブ37の下端と電槽20の仕切板24の上端とは、熱溶着などによって相互に固着されている。仕切板24及びリブ37は、各セル室11~16間で電解液6が相互に移動することを防止する。
図1に示される蓋本体31と、ブッシング38、39とは、例えば、いわゆるインサート成形によって一体に成形されている。すなわち、ブッシング38、39は、蓋本体31に固定されている。
ブッシング38とブッシング39とは、ともに、鉛合金等の導電性の金属からなる円筒状であって、同形状である。以下では、主にブッシング38について説明するが、ブッシング39についても同様である。なお、ブッシング38とブッシング39とは、別形状であってもよいし、同形状で大きさが相違(相似形)していてもよい。
ブッシング38の上部は、蓋本体31の上面から上向きに突出しており、外部に露出している。すなわち、ブッシング38は、外部接続端子として機能する。ブッシング38の内部には、導電性の金属からなる正極柱32の上端部が挿入されている。正極柱32は、たとえば溶接によって、ブッシング38に固定されている。正極柱32の下端は、図2に示されるストラップ28と接続されている。同様に、負極柱33の下端は、他のストラップ28と接続されている。鉛蓄電池10は、正負一対のブッシング38、39から直流電圧を出力する。
図1に示されるように、蓋本体31は、電槽20内の内圧が高くなり過ぎるのを防止するため、電槽20内で発生したミストや水蒸気からなるガスを外部に排気する排気口45を側壁に有する。また、蓋本体31は、排気口45から液体が漏れ出ることを防止する構成を有する。以下、蓋本体31の構成について、詳しく説明する。
[蓋本体31]
図4、図5に示されるように、蓋本体31は、中蓋40及び上蓋50を備える。中蓋40及び上蓋50は、合成樹脂成型品である。
中蓋40は、電槽20に熱溶着される上述の周壁35を有しており、電槽20に固着されている。上述のブッシング38、39は、中蓋40の後部に、左右方向9において離間して位置している。
中蓋40は、電槽20の各セル室11~16にそれぞれ電解液6を注入するための6個の注入口431~436を前部に有している。6個の注入口431~436は、左右方向9において相互に離間している。注入口431~436は、栓60によってそれぞれ閉塞される。各栓60は、上蓋50にそれぞれ固定される。詳しくは後述する。
中蓋40の前部の上面である前部上面41は、後部の上面である後部上面42よりも低い位置にある。中蓋40の前部上面41の上に、上蓋50が配置される。中蓋40の後部上面42と前部上面41との間の高さの差と、上蓋50の上下方向7における長さとは、ほぼ等しい。すなわち、蓋本体31において、中蓋40の後部上面42と、上蓋50の上面とは、ほぼ面一である。中蓋40の前部は、蓋部材30の底壁を構成する。
上蓋50は、左右方向9に沿う長さが前後方向8に沿う長さよりも長く、上下方向7を厚みとする矩形板状の板状部51と、板状部51の下面の周縁から下向きに突出する周壁52とを備える。周壁52の下端は、中蓋40の前部上面41に熱溶着によって固着される。すなわち、上蓋50は、中蓋40に固定される。上蓋50の板状部51は、蓋部材30の天壁を構成する。上蓋50の板状部51及び周壁52は、蓋部材30の外壁を構成する。
上蓋50は、中蓋40の注入口431~436と上下方向7において重なる6個の注入開口531~536を前部に有する。注入開口531~536の内周面には、ネジ溝54がそれぞれ設けられている。ネジ溝54は、円柱状である栓60の外周面に設けられたネジ溝61と螺合する。すなわち、上蓋50は、6個の栓60をそれぞれ固定する。
上蓋50は、上述の排気口45を周壁52に有している。排気口45は、周壁52を左右方向9において貫通している。中蓋40の前部と上蓋50とに囲まれた空間5に、ガスが流通し、かつ、液体を電槽内20内に戻す通路151~156(図7参照)が形成されている。以下、詳しく説明する。
図6に示されるように、中蓋40は、通路151~156の起点となる6個の通気口161~166を有している。通気口161~166は、中蓋40の前部を上下方向7にそれぞれ貫通している。通気口161~166は、各セル室11~16と空間5とをそれぞれ連通する。具体的には、通気口161は、セル室11と空間5とを連通し、通気口162は、セル室12と空間5とを連通し、通気口163は、セル室13と空間5とを連通し、通気口164は、セル室14と空間5とを連通し、通気口165は、セル室15と空間5とを連通し、通気口166は、セル室16と空間5とを連通する。
図7に示されるように、空間5内には、通気口161~166をそれぞれ起点とする通路151~156が形成されている。通路151は、セル室11と連通する通気口161から排気口45に至る通路である。通路152は、セル室12と連通する通気口162から排気口45に至る通路である。通路153は、セル室13と連通する通気口163から排気口45に至る通路である。通路154は、セル室14と連通する通気口164から排気口45に至る通路である。通路155は、セル室15と連通する通気口165から排気口45に至る通路である。通路156は、セル室16と連通する通気口166から排気口45に至る通路である。
通路151は、図7に示されるリブ101~127と、図8に示されるリブ171~197とによって形成されている。リブ101~127は、中蓋40の前部上面41から上向きに突出している。リブ171~197は、上蓋50の下面から下向きに突出している。リブ101~127の上端とリブ171~197の下端とは当接しており、熱溶着によって相互に固着されている。図7及び図8では、熱溶着される領域がハッチングによって示されている。平面視におけるリブ101~127の形状とリブ171~197の形状とは概ね同じであるので、以下では、図7を参照して、中蓋40に設けられたリブ101~127について説明し、上蓋50に設けられたリブ171~197の形状についての説明を省略する。
リブ127は、通気口161の右に位置しており、かつ、前後方向8に沿って延びている。リブ101は、通気口161の後に位置しており、かつ、左右方向9に沿って延びている。リブ102は、通気口161の前に位置しており、かつ、左右方向9に沿って延びている。通路151の一部は、リブ101とリブ102との間に形成されている。通気口161を通じて電槽20から空間5内に進入したガスは、通気口161から左に進む。
リブ103は、リブ102の左端から右斜め後方に向かって延びている。リブ103の後端は、リブ101から離間している。通路151の一部は、リブ103の後端とリブ101との間に形成されている。通気口161を通じて電槽20から空間5内に進入したガスは、通気口161から左に進み、リブ103の後端とリブ101との間を左方へ向かって通過する。
リブ104は、リブ103の左に位置しており、かつ、前後方向8に沿って延びている。リブ104の後端は、リブ101の左端と接続している。通路151の一部は、リブ103とリブ104との間に形成されている。リブ103の後端とリブ101との間を通過したガスは、リブ103とリブ104との間を前方へ向かって通過する。
リブ102の前に、リブ110、リブ105、及びリブ106が形成されている。リブ110は、円弧状である。リブ110の左端は、リブ104と接続している。リブ110の左右方向9における中央部から後方に向かって、リブ105が延びている。リブ105の後端は、リブ102から離間している。通路の一部は、リブ105の後端とリブ102との間に形成されている。リブ106は、前後方向8におけるリブ105の中央部から右方に向かって延びている。通路151の一部は、リブ106とリブ102との間に形成されている。リブ103とリブ104との間を通過したガスは、リブ105の後端とリブ102との間を通過した後、リブ106とリブ102との間を右方へ向かって通過する。
リブ106の右には、リブ107が形成されている。リブ107は、リブ106から離間しており、かつ、前後方向8に沿って延びている。通路151の一部は、リブ106とリブ107との間に形成されている。リブ106とリブ102との間を通過したガスは、リブ106の右端とリブ107との間を前方へ向かって通過する。
リブ107の前には、リブ108が形成されている。リブ108は、左右方向9に沿って延びており、かつ、リブ107の前端と接続している。リブ108の左端からは、リブ109が後方に向かって延びている。リブ109の後端は、リブ106と離間している。通路151の一部は、リブ109とリブ106との間に形成されている。リブ106の右端とリブ107との間を通過したガスは、リブ109とリブ106との間を左方へ向かって通過する。
通路151の一部は、上述のリブ109とリブ105とリブ110とによって形成されている。リブ109とリブ106との間を通過したガスは、リブ109と、リブ105及びリブ110との間を前方へ向かって通過する。
リブ110の前には、リブ111が形成されている。リブ111は、注入口431の周縁に沿って延びている。リブ110の右端は、リブ111と接続している。通路151の一部は、リブ111と、リブ109及びリブ108との間に形成されている。リブ109と、リブ105及びリブ110との間を通過したガスは、リブ111と、リブ127及びリブ108との間を、概ね右斜め前方へ向かって通過する。
リブ111の右には、リブ112が形成されている。リブ112は、左右方向9に沿って延びている。リブ112の左端は、リブ111と接続している。ハッチングで示されているように、上述のリブ127の前端は、上蓋50に設けられたリブ197(図8参照)と熱溶着されていない。通路151の一部は、リブ127における熱溶着されない部分に形成されている。リブ111とリブ108との間を通過したガスは、リブ127における熱溶着されない部分を右方へ向かって通過する。
リブ112の右端は、リブ113と接続している。リブ113は、注入口432の周縁に沿って延びている。リブ113の後には、リブ124が形成されている。リブ124は、左右方向9に沿って延びている。通路の一部はリブ124とリブ113との間に形成されている。リブ127における熱溶着されない部分を通過したガスは、リブ124とリブ113との間を右方へ向かって通過する。なお、リブ124の左端は、リブ127から離間している。リブ124の左端とリブ127との間は、通路151と、後述の通路152とが合流する接続ポイントとなっている。
リブ113の右には、リブ114が形成されている。リブ114は、左右方向9に沿って延びている。リブ114の左端は、リブ113と接続している。ハッチングで示されているように、リブ227の前端は、上蓋50に設けられたリブ297(図8参照)と熱溶着されていない。通路151の一部は、リブ227における熱溶着されない部分に形成されている。リブ113とリブ124との間を通過したガスは、リブ227における熱溶着されない部分を右方へ向かって通過する。
リブ114の右端は、リブ115と接続している。リブ115は、注入口433の周縁に沿って延びている。リブ115の後には、リブ125が形成されている。リブ125は、左右方向9に沿って延びている。通路151の一部はリブ125とリブ115との間に形成されている。リブ114とリブ124との間を通過したガスは、リブ125とリブ115との間を右方へ向かって通過する。なお、リブ125の左端は、リブ227から離間している。リブ125の左端とリブ227との間は、通路151と、後述の通路153とが合流する接続ポイントとなっている。
リブ115の右には、リブ126が形成されている。リブ126は、前後方向8に沿って延びている。リブ126の後端は、リブ125の右端と接続している。通路151の一部は、リブ115とリブ126との間に形成されている。リブ125とリブ115との間を通過したガスは、リブ115とリブ126との間を、概ね右斜め前方へ向かって通過する。
リブ126の右には、リブ116が形成されている。リブ116は、注入口434の周縁に沿って延びている。リブ116は、リブ115及びリブ126と離間している。通路151の一部は、リブ115とリブ116との間に形成されている。リブ115とリブ126との間を通過したガスは、リブ115とリブ116との間を前方へ向かって通過する。なお、リブ115とリブ116との間は、通路151と、後述の通路156とが合流する接続ポイントとなっている。
リブ116の右には、左から順に、リブ117、118、119、120が形成されている。リブ117は、左右方向9に沿って延びている。リブ117の左端は、リブ116と接続している。リブ117の右端は、リブ118と接続している。リブ118は、注入口435の周縁に沿って延びている。リブ119は、左右方向9に沿って延びている。リブ119の左端は、リブ118と接続している。リブ119の右端は、リブ120と接続している。リブ120は、注入口436の周縁に沿って延びている。また、リブ116、118、120の前には、リブ121が形成されている。リブ121は、左右方向9に沿って延びている。通路151の一部は、リブ121と、リブ116、117、118、119、120との間に形成されている。リブ115とリブ116との間を通過したガスは、リブ121と、リブ116、117、118、119、120との間を右方へ向かって通過する。
リブ120の右には、リブ122が形成されている。リブ122は、前後方向8に沿って延びている。リブ122の前端は、リブ121の右端と接続している。リブ122は、リブ120と離間している。通路151の一部は、リブ120とリブ122との間に形成されている。リブ120と、リブ116、117、118、119、120との間を通過したガスは、リブ120とリブ122との間を後方へ向かって通過する。
リブ120の後には、リブ123が形成されている。リブ123の左端は、リブ120と接続し、リブ123の右端は、リブ122と接続している。リブ122の上端と熱溶着される上蓋50のリブ192(図8参照)は、開口63を有する。開口63は、通路151と排気口45とを連通する。すなわち、通気口161を起点とする通路151は、開口63及び排気口45を通じて外部と連通している。
リブ120、リブ122、及びリブ123に囲まれた領域には、フィルタ64(図8参照)が配置されている。フィルタ64は、排気口45から火花が空間5内に進入することを防止する。
次に、通路152について説明する。通路152の起点となる通気口162は、上述のリブ127の右に位置している。通気口162の後には、リブ201が形成されている。リブ201は、左右方向9に沿って延びている。通気口162の前には、リブ202が形成されている。リブ202は、左右方向9に沿って延びている。通路152の一部は、リブ201とリブ202との間に形成されている。通気口162を通じてセル室12から空間5内に進入したガスは、通気口162から右に進む。
リブ203は、リブ202の右端から左斜め後方に向かって延びている。リブ203の後端は、リブ201から離間している。通路152の一部は、リブ203の後端とリブ201との間に形成されている。通気口162を通じてセル室12から空間5内に進入したガスは、通気口162から右に進み、リブ203の後端とリブ201との間を右方へ向かって通過する。
リブ227は、リブ203の右に位置しており、かつ、前後方向8に沿って延びている。リブ227の後端は、リブ201の右端と接続している。通路152の一部は、リブ203とリブ227との間に形成されている。リブ203の後端とリブ201との間を通過したガスは、リブ203とリブ227との間を前方へ向かって通過する。
リブ202の前に、リブ205及びリブ206が形成されている。リブ206は、左右方向9に沿って延びている。リブ206の右端は、リブ227と接続している。リブ205は、前後方向8に沿って延びている。リブ205の前端は、リブ206と接続している。通路152の一部は、リブ205及びリブ206と、リブ202との間に形成されている。リブ203とリブ227との間を通過したガスは、リブ202とリブ205の後端との間を左方へ向かって通過し、次いで、リブ202とリブ206との間を左方へ向かって通過する。
リブ206の左には、リブ207が形成されている。リブ207は、リブ206から離間しており、かつ、前後方向8に沿って延びている。通路152の一部は、リブ206とリブ207との間に形成されている。リブ206とリブ202との間を通過したガスは、リブ206の左端とリブ207との間を前方へ向かって通過する。
リブ207の前には、リブ208が形成されている。リブ208は、左右方向9に沿って延びており、かつ、リブ207の前端と接続している。通路152の一部は、リブ208とリブ206との間に形成されている。リブ206の左端とリブ207との間を通過したガスは、リブ208とリブ206との間を右方へ向かって通過する。
リブ208の右端は、リブ227から離間している。通路152の一部は、リブ208の右端とリブ227との間に形成されている。リブ208とリブ206との間を通過したガスは、リブ208の右端とリブ227との間を前方へ向かって通過する。
また、リブ208は、上述のリブ124の後に位置しており、リブ124と離間している。通路152の一部は、リブ208とリブ124との間に形成されている。リブ208の右端とリブ227との間を通過したガスは、リブ208とリブ124との間を左方へ向かって通過し、リブ124の左端とリブ127との間の接続ポイントにおいて、通路151と合流する。
なお、上蓋50の下面からは、通路152を形成するリブ201等と熱溶着される複数のリブが下向きに突出している。このリブは、リブ201等とともに、通路152を形成する。
通路153は、通路152と同構成である。具体的には、通路153を形成するリブ301、302、303、305、306、307、308、327の形状は、通路152を形成する上述のリブ201、202、203、205、206、207、208、227の形状と、それぞれ同一である。通路153は、リブ125の左端とリブ227との間の接続ポイントにおいて、通路151と合流している。なお、上蓋50の下面からは、通路153を形成するリブ301等と熱溶着される複数のリブが下向きに突出している。リブ301等と熱溶着される上蓋50のリブの形状は、通路153を形成するリブ301等と同形状であるので、説明を省略する。
通路154は、通路153と左右対称な構成である。具体的には、通路154を形成するリブ401、402、403、405、406、407、408、427と、通路153を形成する上述のリブ301、302、303、305、306、307、308、327とは、リブ327を対称軸として、左右対称である。通路154は、左右方向9に延びるリブ410の右端と前後方向8に延びるリブ427の前端との間の接続ポイントにおいて、通路156と合流している。なお、上蓋50の下面からは、通路154を形成するリブ401等と熱溶着される複数のリブが下向きに突出している。リブ401等と熱溶着される上蓋50のリブの形状は、通路154を形成するリブ401等と同形状であるので、説明を省略する。
通路155は、通路152と左右対称な構成である。具体的には、通路155を形成するリブ501、502、503、505、506、507、508、527と、通路152を形成する上述のリブ201、202、203、205、206、207、208、227とは、リブ327を対称軸として、左右対称である。通路155は、左右方向9に延びるリブ510の右端と前後方向8に延びるリブ527の前端との間の接続ポイントにおいて、通路156と合流している。なお、上蓋50の下面からは、通路155を形成するリブ501等と熱溶着される複数のリブが下向きに突出している。リブ501等と熱溶着される上蓋50のリブの形状は、通路155を形成するリブ501等と同形状であるので、説明を省略する。
通路156は、通気口161から、リブ115とリブ116との間の接続ポイントまでの通路151と、左右対称な構成である。具体的には、通路156を形成するリブ601、602、603、605、606、607、608、122、123、527と、通路151を形成する上述のリブ101、102、103、105、106、107、108、104、110、127とは、リブ327を対称軸として、左右対称である。通路151と通路156とは、リブ115とリブ116との間の接続ポイントで合流している。なお、上蓋50の下面からは、通路156を形成するリブ601等と熱溶着される複数のリブが下向きに突出している。リブ601等と熱溶着される上蓋50のリブの形状は、通路156を形成するリブ601等と同形状であるので、説明を省略する。
通路151~156は、空間5内の液体を、還流孔231~236からセル室11~16内に戻す通路としても機能する。還流孔231~236は、中蓋40の前部を上下方向7に貫通する。還流孔231は、セル室11と通路151とを連通する。還流孔232は、セル室12と通路152とを連通する。還流孔233は、セル室13と通路153とを連通する。還流孔234は、セル室14と通路154とを連通する。還流孔235は、セル室15と通路155とを連通する。還流孔236は、セル室16と通路156とを連通する。
図6に示されるように、中蓋40の前部の下面からは、還流孔231~236をそれぞれ囲む6個の周壁リブ66が下向きに突出している。周壁リブ66は、揺れや振動によって電槽20内の電解液6が還流孔231~236に到達することを抑制する。各周壁リブ66は、下端から上方に切り欠かれた切欠67をそれぞれ有している。切欠67は、周壁リブ66を伝って電解液6が還流孔231~236に到達することを抑制する。
図7に示す通路151~156を形成する中蓋40の前部上面41は、還流孔231~236に向かって傾斜している。空間5内で液化したガスからなる液体、或いは、揺れや振動によって還流孔231~236から通路151~156に進入した電解液6からなる液体は、還流孔231~236に向かって傾斜する前部上面41によって、還流孔231~236に導かれ、還流孔231~236からセル室11~16に戻る。
揺れや振動によって還流孔231~236から通路151~156に進入した液体が排気口45に到達することを防止するため、第1空間130~141と、第2空間240~243とが空間5に形成されている。
図9に示されるように、第1空間130は、リブ104と、リブ110と、リブ105とで囲まれた空間である。なお、図9では、第1空間130、131及び第2空間240、241は、ハッチングで示されている。
リブ105の後端と、リブ104との間は、第1空間130の連通口142を形成する。すなわち、第1空間130は、1つの連通口142のみで通路151と連通している。連通口142を通じて、液体が通路151から第1空間130内に流入し、液体が第1空間130内から通路151に流出する。具体的には、連通口142から第1空間130内に流入した液体によって第1空間130内の液体が押し出されることにより、或いは、揺れや振動によって、第1空間130内の液体が第1空間130から通路151に流出する。第1空間130内から通路151に流出した液体は、通路151を流れる液体と衝突する。その結果、第1空間130内から通路151に流出した液体の勢いが弱められ、かつ、通路151を流れる液体の勢いが弱められる。
詳しく説明すると、図10に示されるように、リブ103と、リブ104と、中蓋40の前部上面41と、上蓋50の下面とは、通路151の一部であって、概ね前後方向8に沿って延びる直線状の第1直線通路部261を形成する。図10において、第1直線通路部261は、一点鎖線の斜線で示されている。第1空間130の連通口142は第1直線通路部261の延長線上にある。具体的には、連通口142は、前後方向8に延びる直線状のリブ104の前後方向8における中間に位置している。第1直線通路部261は、液体を第1空間130の連通口142に向かって導く。
また、リブ102と、リブ106と、中蓋40の前部上面41と、上蓋50の下面とは、通路151の一部である第2通路部262を形成する。図10において、第2通路部262は、二点鎖線の斜線で示されている。第2通路部262は、概ね左右方向9に沿って延びる直線状である。第1空間130の連通口142は、直交する第1直線通路部261と第2通路部262との交差部263に面して設けられている。
図9に示されるように、還流孔231から通路151に進入した液体は、還流孔231から左方に向かって流れ、リブ103に一部が衝突して、その勢いを弱められた後、リブ103の後端とリブ101との間を左方に向かって進み、次いで、リブ104に衝突して、その勢いをさらに弱められる。その後、液体は、リブ104に沿って前方へ向かって流れ、連通口142から第1空間130内に流入する。第1空間130内に流入した液体は、第1空間130内にさらに流入した液体によって押し出され、或いは、揺れや振動によって、第1空間130内から、連通口142を通じて流出する。連通口142から流出する液体は、直線状のリブ104に沿って後方へ向かって流出する。すなわち、直線状のリブ104は、液体を連通口142に向かって前方に導き、かつ、連通口142を通じて第1空間130から流出する液体を後方に向かって導く。連通口142から後方へ向かって流出した液体は、リブ104に沿って前方へ向かって流れる液体と正面衝突する。連通口142から後方へ向かって流出した液体と、リブ104に沿って前方へ向かって流れる液体とが正面衝突することにより、通路151を流れる液体の勢いが弱められる。
また、左右方向9におけるリブ104とリブ103の前端との間の長さは、第1空間130に繋がる直前の通路151の通路幅L1である。通路幅L1は、本発明における「連通口に隣接する部分における通路の幅」の一例である。すなわち、本発明における「連通口に隣接する部分における通路の幅」とは、還流孔側かつ連通口近傍の通路のうち、液体が流れる向きに直交する方向における通路の一番狭い部分の幅を意味する。
連通口142の幅L2は、通路幅L1の約1.4倍である。すなわち、連通口142の幅L2は、十分な量の液体が連通口142を通じて第1空間130に流入できるように、通路幅L1より広くされており、かつ、通路151を流れる液体の勢いを弱めることができるだけの勢いで連通口142を通じて第1空間130から液体が流出するように、通路幅L1の1.5倍未満とされている。勢いを弱められた液体は、リブ105の後端とリブ102との間を右方に向かって流れる。そして、液体は、左右方向9に延びるリブ102に沿って、右方へ流れ、第1空間131内に流入する。
第1空間131は、リブ102と、リブ127と、リブ107とで囲まれた空間である。リブ107の後端と、リブ102との間は、第1空間131の連通口143を形成する。第1空間131は、1つの連通口143のみで通路151と連通している。すなわち、連通口143を通じて、液体が通路151から第1空間131内に流入し、液体が第1空間131内から通路151に流出する。具体的には、連通口143から第1空間131内に流入した液体によって第1空間131内の液体が押し出されることにより、或いは、揺れや振動によって、液体が第1空間131内から通路151に流出する。第1空間131内から通路151に流出した液体は、通路151を流れる液体と衝突する。その結果、第1空間131内から通路151に流出した液体の勢いが弱められ、かつ、通路151を流れる液体の勢いが弱められる。
詳しく説明すると、図10に示されるように、リブ102とリブ106と、中蓋40の前部上面41と、上蓋50の下面とは、通路151の一部であって、直線状の第1直線通路部264を形成する。図10において、第1直線通路部264は、一点鎖線の斜線で示されている。
第1空間131の連通口143は第1直線通路部264の延長線上にある。具体的には、連通口143は、左右方向9に延びる直線状のリブ102における左右方向9の中間に位置する。第1直線通路部264は、液体を第1空間131に向かって導く。また、リブ106の右端と、リブ107と、中蓋40の前部上面41と、上蓋50の下面とは、通路151の一部である第2通路部265を形成する。図10において、第2通路部265は、二点鎖線の斜線で示されている。すなわち、第1空間131の連通口143は、直交する第1直線通路部264と第2通路部265との交差部266に面して設けられている。
第1直線通路部264をリブ102に沿って右方へ向かって流れる液体は、連通口143から第1空間131内に流入する。第1空間131内に流入した液体は、第1空間131内にさらに流入した液体によって押し出され、或いは、揺れや振動によって、第1空間131内から、連通口143を通じて流出する。連通口143から流出する液体は、直線状のリブ102に沿って左方へ向かって連通口143から流出する。すなわち、直線状のリブ102は、液体を連通口143に向かって右方に導き、かつ、連通口143を通じて第1空間131から流出する液体を左方に向かって導く。連通口143から左方へ向かって流出した液体は、リブ102に沿って通路151を右方へ向かって流れる液体と正面衝突する。連通口143から左方へ向かって流出した液体と、リブ104に沿って右方へ向かって流れる液体とが正面衝突することにより、通路151を流れる液体の勢いが弱められる。
また、図9に示されるように、前後方向8におけるリブ102とリブ106の後端との間の長さは、第1空間131に繋がる直前の通路151の通路幅L3である。連通口143の幅L4は、通路幅L3と略同一である。すなわち、連通口143の幅L4は、液体が連通口143を通じて第1空間131に流入できるように、かつ、第1空間131から流出する液体によって通路151を流れる液体の勢いを弱めることができるように、通路幅L3と略同一にされている。その結果、通路151を右方に向かって流れる液体の勢いと、第1空間131から左方に向かって流出する液体の勢いの双方を弱めることができる。勢いを弱められた液体は、前後方向8に延びるリブ107に沿って前方へ流れ、第2空間240内に流入する。
図11に示されるように、第2空間240は、リブ107と、リブ108と、リブ109とで囲まれた空間である。なお、図11では、第2空間240、241は、実線の斜線(ハッチング)で示されている。
リブ109の後端とリブ107の後端との間は、液体が流出入する連通口144を形成する。連通口144の幅L6は、第2空間240に繋がる直前の通路151の通路幅L5の1.5倍以上である。すなわち、第1空間130、131によって勢いを弱められた液体をスムースに第2空間240に導くため、連通口144の幅L6は、通路151の幅L5の1.5倍以上とされている。なお、図示例では、連通口144の幅L6は、通路151の幅L5の約2.8倍である。
上述のように、第1空間130、131は、通路を流れる液体の勢いを弱めて溢液を抑制するための空間であり、第2空間240は、液体を一時的に貯留して溢液を抑制するための空間である。
第2空間240で一時的に貯留できずに第2空間240から溢れた液体は、連通口144から流出して左方に向かって流れ、第2空間241に流入する。
第2空間241は、リブ105と、リブ106と、リブ110とで囲まれた空間である。リブ106の右端とリブ110との間は、液体が流出入する連通口145を形成する。連通口145の幅L8は、第2空間241に繋がる直前の通路151の通路幅L7の1.5倍以上である。すなわち、第2空間240から流出した液体をスムースに第2空間241に導くため、連通口145の幅L8は、通路151の幅L7の1.5倍以上とされている。なお、図示例では、連通口145の幅L8は、通路151の幅L7の約2.8倍である。
次に、図12を参照して、通路152と連通する第1空間132、133を説明する。第1空間132は、リブ227と、リブ206と、リブ205とで囲まれた空間である。
第1空間132は、1つの連通口146のみで通路152と連通している。すなわち、連通口146を通じて、液体が通路152から第1空間132内に流入し、液体が第1空間132内から通路152に流出する。具体的には、連通口146から第1空間132内に流入した液体によって第1空間132内の液体が押し出されることにより、或いは、揺れや振動によって、第1空間132内の液体が第1空間132から通路152に流出する。第1空間132内から通路152に流出した液体は、通路152を流れる液体と衝突する。その結果、第1空間132内から通路152に流出した液体の勢いが弱められ、かつ、通路152を流れる液体の勢いが弱められる。
左右方向9におけるリブ203とリブ205の前端との間の長さは、第1空間132に繋がる直前の通路152の通路幅L9である。連通口146の幅L10は、通路幅L9の約1.4倍である。すなわち、連通口146の幅L10は、十分な量の液体が連通口146を通じて第1空間132に流入できるように、通路幅L9より広くされており、かつ、通路152を流れる液体の勢いを弱めることができるだけの勢いで連通口146を通じて第1空間132から液体が流出するように、通路幅L9の1.5倍未満とされている。勢いを弱められた液体は、リブ205の後端とリブ202との間を左方に向かって流れる。そして、液体は、左右方向9に延びるリブ202に沿って、左方へ流れ、第1空間133内に流入する。
第1空間133は、リブ202と、リブ127と、リブ208と、リブ207とで囲まれた空間である。第1空間133は、1つの連通口147のみで通路152と連通している。すなわち、連通口147を通じて、液体が通路152から第1空間133内に流入し、液体が第1空間133内から通路152に流出する。具体的には、連通口147から第1空間133内に流入した液体によって第1空間133内の液体が押し出されることにより、或いは、揺れや振動によって、第1空間133内の液体が第1空間133から通路152に流出する。第1空間133内から通路152に流出した液体は、通路152を流れる液体と衝突する。その結果、第1空間133内から通路152に流出した液体の勢いが弱められ、かつ、通路152を流れる液体の勢いが弱められる。
リブ206の左端とリブ202との間の長さは、第1空間133に繋がる直前の通路152の通路幅L11である。連通口147の幅L12は、通路幅L11と略同一である。すなわち、連通口147の幅L12は、液体が連通口147を通じて第1空間133に流入できるように、かつ、第1空間133から流出する液体によって通路152を流れる液体の勢いを弱めることができるように、通路幅L11と略同一にされている。その結果、通路152を右方に向かって流れる液体の勢いと、第1空間133から左方に向かって流出する液体の勢いの双方を弱めることができる。
上述のように、通路153を形成するリブ301~303、305~308、327、125の形状は、通路152を形成するリブ201~203、205~208、227、124の形状と同じである。したがって、通路153と連通する第1空間134、135の形状も第1空間132、133と同じであるので、説明を省略する。
また、上述のように、通路154を形成するリブ401~403、405~408、427、126の形状は、通路153を形成するリブ301~303、305~308、327、125の形状と左右対称である。したがって、通路154と連通する第1空間136、137の形状も、第1空間134、135の形状と左右対称であるので、説明を省略する。
また、上述のように、通路155を形成するリブ501~503、505~508、527、126の形状は、通路152を形成するリブ201~203、205~208、227、124の形状と左右対称である。したがって、通路155と連通する第1空間138、139の形状も第1空間132、133と左右対称であるので、説明を省略する。
また、上述のように、通路156を形成するリブ601~603、605~609、123、122の形状は、通路151を形成するリブ101~110の形状と左右対称である。したがって、通路156と連通する第1空間140、141の形状も同じであるので、説明を省略する。
[実施形態の効果]
上述の実施形態では、連通口144、145の幅が通路151の幅の1.5倍以上である第2空間240、241に加え、第1空間130、131が通路151に連通して形成されている。第1空間130は、通路151に通じる1つの連通口142のみを有し、第1空間131は、通路151に通じる1つの連通口143のみを有している。また、連通口142、143の幅は、連通口142、143が繋がる通路151の幅の半分以上である。さらにまた、連通口142、143の幅は、連通口142、143が繋がる通路151の幅の1.5倍未満である。したがって、通路151を流れる液体の勢いを弱めることができるだけの勢い及び量で第1空間130、131から液体を流出させることができる。その結果、通路151に第2空間240、241と同構成の空間のみが設けられた蓋部材に比べ、溢液性能を高めることができる。
また、上述の実施形態では、液体の勢いを弱めるための第1空間130、131は、液体を一時的に貯留するための第2空間240、241よりも、通路151における還流孔231に近い位置に位置している。したがって、第1空間130、131が第2空間240、241よりも、通路151における還流孔231から遠い位置に位置している場合に比べ、溢液性能を高めることができる。
また、上述の実施形態では、第1空間130、131の連通口142、143は、直線状の第1直線通路部261、264の延長線上であって、直交する第1直線通路部261と第2通路部262との交差部263に面して設けられている。したがって、通路151を流れる液体と、連通口142、143を通じて第1空間130、131から流出する液体とを、正面衝突させることができる。その結果、通路151を流れる液体と、連通口142、143を通じて第1空間130、131から流出する液体とが、正面衝突しない場合に比べ、溢液性能を高めることができる。
また、上述の実施形態では、第1直線通路部261と第2通路部262とは直交するので、溢液性能を安定させることができる。詳しく説明すると、連通口142に向かって流れる液体の量や勢いと、連通口142を通じて第1空間130から流出する液体の量や勢いとの間に差があると、第1直線通路部261と第2通路部262とのなす角度によって、交差部263から第2通路部262に流れ込む液体の勢いが変化する。そうすると、連通口142に向かって流れる液体の量や勢いと、連通口142を通じて第1空間130から流出する液体の量や勢いとの間に差に応じて溢液性能が変化することになる。第1直線通路部261と第2通路部262とを直交させることにより、連通口142に向かって流れる液体の量や勢いと、連通口142を通じて第1空間130から流出する液体の量や勢いとの間の差による溢液性能の変化を低減させることができる。すなわち、溢液性能を安定させることができる。第1直線通路部264、第2通路部265、第1空間131についても同様である。
また、第1空間130と第1空間131とのうち、還流孔231に近い方の第1空間130の連通口142の幅を、還流孔231から遠い方の第1空間131の連通口143の幅よりも広くすることにより、溢液性能をさらに高めることができる。詳しく説明すると、還流孔231に近い方が、通路151を流れる液体の量が多い。還流孔231に近く、より多くの液体が通路を流れる第1空間130の連通口142の幅を、還流孔231から遠い方の第1空間131の連通口143の幅よりも広くすることにより、通路151を流れる液体の勢いを弱めることができるだけの十分な量の液体を第1空間130に流入させることができる。その結果、溢液性能をさらに高めることができる。
なお、上述では、通路151における第1空間130、131の効果について説明したが、通路152~156についても、上述と同様の効果が得られる。
[他の実施形態]
上述の実施形態では、第1空間130の連通口142の幅が、通路151の幅の約1.4倍であり、第1空間131の連通口143の幅が、通路151の幅と略同一である例を説明した。しかしながら、第1空間130、131の連通口142、143の幅は、通路151の幅と略同一以上、かつ、1.2倍未満であってもよい。
また、上述の実施形態では、第1空間130と第1空間131とのうち、還流孔231に近い方の第1空間130の連通口142の幅を、還流孔231から遠い方の第1空間131の連通口143の幅よりも広くする例を説明した。しかしながら、第1空間130の連通口142の幅と、第1空間131の連通口143の幅とは、略同一であってもよい。その場合も、第2空間240、241と同構成の空間のみが通路に形成された蓋部材よりも、溢液性能が向上することが確認された。
また、上述の実施形態では、液体を連通口142、143に導く第1直線通路部261と第2通路部262とが直交する例を説明した。しかしながら、第1直線通路部261と第2通路部262とは直交していなくてもよい。第1直線通路部261と第2通路部262とが直交しない場合であっても、第2空間240、241と同構成の空間みが通路に形成された蓋部材よりも、溢液性能が向上することが確認された。
また、上述の実施形態では、第1直線通路部261と第2通路部262とが共に直線状である例を説明した。しかしながら、第1直線通路部261と第2通路部262とは、円弧状など、湾曲していてもよい。その場合も、第2空間240、241と同構成の空間のみが通路に形成された蓋部材よりも、溢液性能が向上することが確認された。
上述の実施形態では、排気口45が蓋部材30の側壁を構成する上蓋50の周壁52に設けられた例を説明した。しかしながら、排気口45は、蓋部材30の天壁を構成する上蓋50の板状部51に設けられていてもよいし、中蓋40の前部を左右或いは前後に広げて、当該広げた部分に設けられていてもよい。
上述の実施形態では、第1空間130、131は、1つのの連通口142、143を通じて通路151と連通する例を説明した。しかしながら、第1空間130、131は、連通口142、143に加え、液体が通過しない程度の幅の開口やスリットや孔を通じて通路151と連通していてもよい。当該「液体が通過しない程度の幅の開口、スリット、孔」は、本発明における「1つの連通口」には含まれない。
なお、本発明は、以下の形で実施することができる。
(1)上部に開口を有し、電極群及び電解液を収容する電槽と、
上記開口を封口し、且つ排気口が形成された蓋部材とを備え、
上記蓋部材は、
上記電槽内と連通する還流孔が形成された底壁と、
上記底壁と対向する天壁と、
上記底壁に立設されたリブと、を有し、
上記リブは、
上記還流孔から上記排気口に至る通路と、
当該通路と1つの連通口を介して連通し、当該連通口を通じて上記電解液が流入及び流出可能な第1空間と、を形成し、
上記連通口の幅は、当該連通口に隣接する部分における上記通路の幅の1.5倍未満である鉛蓄電池。
(2)上記連通口の幅は、当該連通口に隣接する部分における上記通路の幅の半分以上である(1)に記載の鉛蓄電池。
(3)上記リブは、
上記通路と連通し、液体が流入する第2空間をさらに形成し、
上記第2空間は、複数の連通口と、上記通路の幅の1.5倍以上の幅の1つの連通口との少なくとも一方を通じて上記通路と連通し、かつ、上記還流孔と直接連通せず、
上記第1空間は、上記第2空間よりも、上記通路における上記還流孔に近い位置に位置する(1)または(2)に記載の鉛蓄電池。
(4)上記リブは、
上記通路の一部であって、直線状の第1直線通路部と、
上記第1直線通路部と交差する第2通路部と、を形成し、
上記第1空間の連通口は、上記第1直線通路部の延長上であって、上記第1直線通路部と上記第2通路部との交差部に面して設けられた(1)から(3)のいずれかに記載の鉛蓄電池。
(5)
上記第1直線通路部と、上記第2通路とは、直交する(4)に記載の鉛蓄電池。
(6)
上記リブは、上記第1直線通路部の一部及び上記貯留空間の一部を区画する直線状のリブを含み、
上記連通口は、上記直線状のリブの中間に位置する(4)または(5)に記載の鉛蓄電池。