JP7108407B2 - 黒トナーの製造方法 - Google Patents
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Description
その一方で高い着色力を得るためには、一般的にトナー粒子中に顔料を多く含有し、且つ、トナー粒子中の顔料分散性を均一にすることが求められる。特に、乳化凝集法においてカーボンブラックを含有する黒トナーを製造する際には、カーボンブラックの含有量を高めると、液中での分散安定性が損なわれ、トナー粒子中の顔料分散性を均一にすることが難しかった。
そこで、本発明は、優れたドット再現性及び高い着色力を示す、黒トナーの製造方法に関する。
前記カーボンブラックは、そのDBP吸油量が25mL/100g以上60mL/100g以下である、黒トナーの製造方法に関する。
本発明の黒トナーの製造方法は、水性媒体中で、非晶性ポリエステル系樹脂Aを含有する樹脂粒子Xと界面活性剤により分散されたカーボンブラックとを凝集する工程を有する。
そして、カーボンブラックは、そのDBP吸油量が25mL/100g以上60mL/100g以下である。
以上の製造方法によれば、優れたドット再現性及び高い着色力を示す、黒トナーが得られる。
本発明によれば、樹脂粒子とカーボンブラックを凝集(以下、「ヘテロ凝集」ともいう)する際に、特定のBET比表面積とDBP吸油量を有するカーボンブラック(CB)を用いることで、高着色化を図りつつ、粒度分布をシャープにしドット再現性に優れる黒トナーが得られる。
樹脂粒子とカーボンブラックをヘテロ凝集する際に、カーボンブラックの添加量が多いと、一部の凝集粒子の表面にはカーボンブラックが露出した状態になると推察される。特定の範囲のDBP吸油量のカーボンブラック、すなわち低ストラクチャーのカーボンブラックでは表面活性が低いため、凝集粒子が低い活性の表面性となり、より安定で、均質な凝集粒子同士で造粒が進行する。その結果、カーボンブラックが均一に分散し、粒径の揃った凝集粒子を形成し、粒度分布がシャープなトナー粒子が得られると考えられる。
「DBP」とは、フタル酸ジブチルを意味する。
樹脂が結晶性であるか非晶性であるかについては、結晶性指数により判定される。結晶性指数は、後述する実施例に記載の測定方法における、樹脂の軟化点と吸熱の最大ピーク温度との比(軟化点(℃)/吸熱の最大ピーク温度(℃))で定義される。結晶性樹脂とは、結晶性指数が0.6以上1.4以下のものである。非晶性樹脂とは、結晶性指数が0.6未満又は1.4超のものである。結晶性指数は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。
炭化水素基に関して、「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」とする記載は、これらの接頭辞が存在する場合としない場合の双方を意味し、これらの接頭辞が存在しない場合には、ノルマルを示す。
「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種を意味する。
「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
水性媒体中で、非晶性ポリエステル系樹脂Aを含有する樹脂粒子Xと界面活性剤により分散されたカーボンブラックとを凝集する工程(以下、「工程1」ともいう)、及び
上記工程により得られた凝集粒子を水性媒体内で融着させる工程(以下、「工程2」ともいう)
を含む。
但し、上記カーボンブラックは、そのDBP吸油量が25mL/100g以上60mL/100g以下である。
以下、当該実施態様を例にとり、本発明について説明する。
工程1では、樹脂粒子X、及びカーボンブラックを凝集させて凝集粒子を得る。工程1では、樹脂粒子X及びカーボンブラックの他に、ワックス、その他添加剤を凝集させてもよい。
工程1において、樹脂粒子Xが結晶性ポリエステル樹脂Cを含有する、又は、樹脂粒子Xと共に、結晶性ポリエステル樹脂Cを含有する樹脂粒子X’を凝集させることが好ましい。
樹脂粒子Xは、優れたドット再現性及び高い着色力を示す黒トナーを得る観点から、非晶性ポリエステル系樹脂Aを含有する。
非晶性ポリエステル系樹脂Aとしては、例えば、非晶性ポリエステル樹脂、複合樹脂が挙げられる。
複合樹脂は、例えば、ポリエステル樹脂セグメント、スチレン化合物を含む原料モノマーの付加重合物である付加重合樹脂セグメント、及び、前記ポリエステル樹脂セグメントと前記付加重合樹脂セグメントと共有結合を介して結合した両反応性モノマー由来の構成単位を含む。
非晶性ポリエステル系樹脂Aは、トナーのドット再現性及び印刷物の画像濃度をより向上させる観点から、好ましくは、カルボキシ基又は水酸基を有する炭化水素ワックス(W1)由来の構成単位を更に含む。
非晶性ポリエステル樹脂は、例えば、アルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合物である。
アルコール成分としては、例えば、芳香族ジオール、直鎖又は分岐の脂肪族ジオール、脂環式ジオール、3価以上の多価アルコールが挙げられる。これらの中でも、芳香族ジオールが好ましい。
芳香族ジオールは、好ましくはビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物であり、より好ましくは式(I):
(式中、OR1及びR2Oはオキシアルキレン基であり、R1及びR2はそれぞれ独立にエチレン基又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは4以下である)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物である。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、ビスフェノールA〔2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〕のプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。これらの中でも、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物が好ましい。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、更に好ましくは100モル%である。
脂環式ジオールとしては、例えば、水素添加ビスフェノールA〔2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン〕、水素添加ビスフェノールAの炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイド付加物(平均付加モル数2以上12以下)が挙げられる。
3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールが挙げられる。
これらのアルコール成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
ジカルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸が挙げられる。これらの中でも、芳香族ジカルボン酸、及び、直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が挙げられる。これらの中でも、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
芳香族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは20モル%以上、より好ましくは40モル%以上、更に好ましくは50モル%以上であり、そして、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下、更に好ましくは75モル%以下である。
直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、アゼライン酸、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸が挙げられる。炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸としては、例えば、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸が挙げられる。これらの中でも、フマル酸、セバシン酸が好ましい。
直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは1モル%以上、より好ましくは10モル%以上であり、そして、好ましくは70モル%以下、より好ましくは50モル%以下、更に好ましくは30モル%以下である。
3価以上の多価カルボン酸を含む場合、3価以上の多価カルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは8モル%以上であり、そして、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは15モル%以下である。
これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
複合樹脂のポリエステル樹脂セグメントは、例えば、前述のポリエステル樹脂からなる。
付加重合樹脂セグメントは、例えば、スチレン系化合物を含む原料モノマーの付加重合物である。
スチレン系化合物としては、無置換又は置換のスチレンが挙げられる。スチレンに置換される、置換基としては、例えば、炭素数1以上5以下のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、スルホン酸基又はその塩等が挙げられる。
スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、tert-ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸又はその塩が挙げられる。これらの中でも、スチレンが好ましい。
付加重合樹脂セグメントの原料モノマー中、スチレン系化合物の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。
(メタ)アクリル酸アルキルにおけるアルキル基の炭素数は、より優れた画像濃度を得る観点から、好ましくは1以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上、更に好ましくは10以上、更に好ましくは14以上、更に好ましくは16以上であり、そして、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは20以下である。
(メタ)アクリル酸アルキルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸(イソ)プロピル、(メタ)アクリル酸(イソ又はターシャリー)ブチル、(メタ)アクリル酸(イソ)アミル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸(イソ)オクチル、(メタ)アクリル酸(イソ)デシル、(メタ)アクリル酸(イソ)ドデシル、(メタ)アクリル酸(イソ)パルミチル、(メタ)アクリル酸(イソ)ステアリル、(メタ)アクリル酸(イソ)ベヘニルが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリルが好ましく、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリルがより好ましく、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリルが更に好ましく、メタクリル酸ステアリルがより好ましい。
「両反応性モノマー由来の構造単位」とは、両反応性モノマーの官能基、不飽和結合部位が反応した単位を意味する。
両反応性モノマーとしては、例えば、分子内に、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する付加重合性モノマーが挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、水酸基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する付加重合性モノマーが好ましく、カルボキシ基を有する付加重合性モノマーがより好ましい。
カルボキシ基を有する付加重合性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸が挙げられる。これらの中でも、重縮合反応と付加重合反応の双方の反応性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
両反応性モノマー由来の構成単位の量は、複合樹脂Aのポリエステル樹脂セグメントのアルコール成分100モル部に対して、好ましくは1モル部以上、より好ましくは5モル部以上、更に好ましくは8モル部以上であり、そして、好ましくは30モル部以下、より好ましくは25モル部以下、更に好ましくは20モル部以下である。
炭化水素ワックスW1は、水酸基又はカルボキシ基を有する。炭化水素ワックスW1は、水酸基、カルボキシ基のいずれか一方、又は両方を有していてもよいが、トナーのドット再現性及び印刷物の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは、水酸基及びカルボキシ基を有する。
炭化水素ワックスW1は、例えば、未変性の炭化水素ワックスを公知の方法で変性させて得られる。炭化水素ワックスW1の原料としては、例えば、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスが挙げられる。これらの中でも、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスが好ましい。
炭化水素ワックスW1の水酸基価、酸価、数平均分子量の測定方法は、実施例に記載の方法による。
非晶性ポリエステル系樹脂Aは、例えば、アルコール成分及びカルボン酸成分による重縮合反応を行うことで得られる。
重縮合反応において、必要に応じて、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)、酸化ジブチル錫、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のエステル化触媒をアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対し0.01質量部以上5質量部以下;没食子酸(3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸と同じ。)等のエステル化助触媒をアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対し0.001質量部以上0.5質量部以下用いて重縮合してもよい。
また、重縮合反応にフマル酸等の不飽和結合を有するモノマーを使用する際には、必要に応じてアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上0.5質量部以下のラジカル重合禁止剤を用いてもよい。ラジカル重合禁止剤としては、例えば、4-tert-ブチルカテコールが挙げられる。
重縮合反応の温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは160℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは230℃以下である。なお、重縮合は、不活性ガス雰囲気中にて行ってもよい。
複合樹脂Aが炭化水素ワックスW1由来の構成単位を有する場合、上述の工程Aでは、例えば、水酸基又はカルボキシ基を有する炭化水素ワックスW1の存在下、アルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合反応を行う。
工程Aの後に工程Bを行ってもよいし、工程Bの後に工程Aを行ってもよく、工程Aと工程Bを同時に行ってもよい。
工程Aにおいて、カルボン酸成分の一部を重縮合反応に供し、次いで工程Bを実施した後に、カルボン酸成分の残部を重合系に添加し、工程Aの重縮合反応及び必要に応じて両反応性モノマーとの反応をさらに進める方法がより好ましい。
付加重合反応の重合開始剤としては、例えば、ジブチルパーオキサイド等の過酸化物、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。
ラジカル重合開始剤の使用量は、付加重合樹脂セグメントの原料モノマー100質量部に対して、好ましくは1質量部以上20質量部以下である。
付加重合反応の温度は、好ましくは110℃以上、より好ましくは130℃以上であり、そして、好ましくは220℃以下、より好ましくは200℃以下、更に好ましくは180℃以下である。
非晶性ポリエステル系樹脂Aの軟化点は、好ましくは70℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上であり、そして、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下、更に好ましくは125℃以下である。
非晶性ポリエステル系樹脂Aのガラス転移温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは45℃以上であり、そして、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下である。
非晶性ポリエステル系樹脂Aの軟化点、ガラス転移温度、及び酸価は、原料モノマーの種類及びその使用量、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、また、それらの値は、実施例に記載の方法により求められる。
なお、非晶性ポリエステル系樹脂Aを2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた軟化点、ガラス転移温度及び酸価の値がそれぞれ前述の範囲内であることが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂Cは、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物である。
アルコール成分としては、α,ω-脂肪族ジオールが好ましい。
α,ω-脂肪族ジオールの炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
α,ω-脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオールが挙げられる。これらの中でも、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが好ましく、1,10-デカンジオールがより好ましい。
脂肪族ジカルボン酸の炭素数は、好ましくは4以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上であり、そして、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸が挙げられる。これらの中でも、セバシン酸、ドデカン二酸が好ましく、セバシン酸がより好ましい。これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
結晶性ポリエステル樹脂Cの軟化点は、耐熱保存性をより向上させる観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは100℃以下である。
樹脂粒子Xの分散液は、非晶性ポリエステル系樹脂Aを水性媒体中に分散させることで得られる。なお、トナーが結晶性ポリエステル樹脂Cを含有する場合には、結晶性ポリエステル樹脂Cを同時に分散して、結晶性ポリエステル樹脂Cを含有する樹脂粒子Xとしてもよいし、樹脂粒子Xとは別に、結晶性ポリエステル樹脂Cを含有する樹脂粒子X’を使用してもよい。樹脂粒子X’の分散液も、樹脂粒子Xの分散液の製造方法と同様の方法で得られる。
水性媒体としては、水を主成分とするものが好ましく、樹脂粒子の分散液の分散安定性を向上させる観点、及び環境性の観点から、水性媒体中の水の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、更に好ましくは100質量%である。水としては、脱イオン水又は蒸留水が好ましい。水性媒体に含まれうる水以外の成分としては、例えば、炭素数1以上5以下のアルキルアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の総炭素数3以上5以下のジアルキルケトン;テトラヒドロフラン等の環状エーテルの水に溶解する有機溶媒が挙げられる。これらの中でも、メチルエチルケトンが好ましい。
有機溶媒溶液には、中和剤を添加することが好ましい。中和剤としては、例えば、塩基性物質が挙げられる。塩基性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;アンモニア、トリメチルアミン、ジエタノールアミン等の含窒素塩基性物質が挙げられる。
樹脂粒子Xに含まれる樹脂の中和度は、好ましくは10モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上であり、そして、好ましくは100モル%以下、より好ましくは80モル%以下、更に好ましくは70モル%以下である。
なお、樹脂粒子に含まれる樹脂の中和度は、下記式によって求めることができる。
中和度(モル%)=〔{中和剤の添加質量(g)/中和剤の当量}/[{樹脂粒子Xを構成する樹脂の加重平均酸価(mgKOH/g)×樹脂粒子Xを構成する樹脂の質量(g)}/(56×1000)]〕×100
水性媒体を添加する際の有機溶媒溶液温度は、樹脂粒子Xの分散安定性を向上させる観点から、好ましくは樹脂粒子Xを構成する樹脂のガラス転移温度以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは85℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは75℃以下である。
分散液中の樹脂粒子XのCV値は、高画質の画像が得られるトナーを得る観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上であり、そして、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下である。
樹脂粒子Xの体積中位粒径D50,CV値は、後述の実施例に記載の方法で求められる。
カーボンブラックとして、優れたドット再現性及び高い着色力を示す黒トナーを得る観点から、界面活性剤により分散されたカーボンブラックを用いる。
そして、カーボンブラックは、優れたドット再現性及び高い着色力を示す黒トナーを得る観点から、そのDBP吸油量が25mL/100g以上60mL/100g以下である。
カーボンブラックのBET比表面積、DBP吸油量、pH値は実施例記載の方法により求めることができる。
カーボンブラックの市販品としては、例えば、「REGAL」シリーズの、「T30R」、「T40R」(キャボット社製)が挙げられる。
これらの中でも、ドット再現性及び着色力をより向上させる観点から、アニオン性界面活性剤が好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸塩がより好ましい。
界面活性剤により分散されたカーボンブラックは、ドット再現性及び着色力をより向上させる観点から、好ましくはカーボンブラックと界面活性剤を水性媒体中で混合、分散することにより得られる粒子である。水性媒体は前述のとおりである。
分散に用いる装置としては、例えば、ロールミル、ニーダー等の混練機、マイクロフルイダイザー(Microfluidic社製)等のホモジナイザー、ペイントシェーカー、ビーズミル等のメディア式分散機が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。これらの中では、カーボンブラックを小粒子径化する観点から、ホモジナイザーを用いることが好ましい。
ホモジナイザーを用いる場合、処理圧力は、好ましくは60MPa以上、より好ましくは100MPa以上、更に好ましくは130MPa以上であり、そして、好ましくは270MPa以下、より好ましくは200MPa以下、更に好ましくは180MPa以下である。
また、パス回数は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは15以上であり、そして、好ましくは30以下、より好ましくは25以下である。
得られたカーボンブラックの分散液は、金網等で濾過し、粗大粒子等を除去するのが好ましい。
カーボンブラックの体積中位粒径D50,CV値は、後述の実施例に記載の方法で求められる。
樹脂粒子X及びカーボンブラックの凝集は、ワックスの存在下で行ってもよい。
ワックスとしては、例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス等の炭化水素系ワックス又はそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス又はそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。
これらの中でも、炭化水素ワックス、エステルワックスが好ましく、炭化水素ワックスがより好ましい。
ワックスは、ワックス粒子の分散液として、樹脂粒子X及びカーボンブラックと混合し、凝集させることが好ましい。
ワックス粒子の分散液は、界面活性剤を用いて得ることも可能であるが、ワックスと後述する樹脂粒子Zとを混合して得ることが好ましい。ワックスと樹脂粒子Zを用いてワックス粒子を調製することで、樹脂粒子Zによりワックス粒子が安定化され、界面活性剤を使用しなくてもワックスを水性媒体中に分散させることが可能となる。ワックス粒子の分散液中では、ワックス粒子の表面に樹脂粒子Zが多数付着した構造を有していると考えられる。
ワックスの種類及び添加量は、前述のワックスと同様である。
複合樹脂Dの軟化点は、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上であり、そして、好ましくは140℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは100℃以下である。
複合樹脂Dのその他の樹脂特性の好適範囲、樹脂を構成する原料モノマーの好適例等は、前述の非晶性ポリエステル系樹脂の複合樹脂で示した例と同様である。樹脂粒子Zの分散液は、例えば、前述の転相乳化法により得ることができる。
樹脂粒子ZのCV値は、ワックス粒子の分散安定性の観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上であり、そして、好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下、更に好ましくは30%以下である。
分散時の加熱温度は、好ましくはワックスの融点以上且つ80℃以上、より好ましくは85℃以上、更に好ましくは90℃以上であり、そして、好ましくは、樹脂粒子Pに含まれる樹脂の軟化点より10℃高い温度未満且つ100℃以下、より好ましくは98℃以下、更に好ましくは95℃以下である。
ワックス粒子のCV値は、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上であり、そして、好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下である。
ワックス粒子の体積中位粒径D50及びCV値の測定方法は実施例に記載の方法による。
他の添加剤としては、例えば、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤が挙げられる。
工程1では、各粒子の分散液を混合し、混合分散液を調製する際、樹脂粒子X、カーボンブラック、及び必要に応じて添加されるワックス粒子等の任意成分の分散安定性を向上させる観点から、界面活性剤の存在下で行ってもよい。界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルケニルエーテル類等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
界面活性剤を使用する場合、その使用量は、樹脂粒子X 100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
凝集剤としては、例えば、第四級塩等のカチオン性界面活性剤、ポリエチレンイミン等の有機系凝集剤、無機系凝集剤が挙げられる。無機系凝集剤としては、例えば、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム等の無機金属塩;硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩;2価以上の金属錯体が挙げられる。
凝集性を向上させ均一な凝集粒子を得る観点から、1価以上5価以下の無機系凝集剤が好ましく、1価以上2価以下の無機金属塩、無機アンモニウム塩がより好ましく、無機アンモニウム塩が更に好ましく、硫酸アンモニウムが更に好ましい。
凝集を停止させる方法としては、分散液を冷却する方法、凝集停止剤を添加する方法、分散液を希釈する方法等が挙げられる。不必要な凝集を確実に防止する観点からは、凝集停止剤を添加して凝集を停止させる方法が好ましい。
凝集停止剤としては、界面活性剤が好ましく、アニオン性界面活性剤がより好ましい。アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いてもよい。凝集停止剤は、水溶液で添加してもよい。
凝集停止剤の添加量は、不必要な凝集を確実に防止する観点から、トナー中の結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、そして、トナーへの残留を低減する観点から、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
工程2では、例えば、凝集粒子を水性媒体内で融着させる。
融着によって、凝集粒子に含まれる各粒子を融着し、融着粒子が得られる。
融着により得られた融着粒子の体積中位粒径D50は、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは6μm以下である。
融着は、上記好ましい円形度に達した後に終了することが好ましい。
工程2の後に後処理工程を行ってもよく、融着粒子を単離することによってトナー粒子が得られる。工程2で得られた融着粒子は、水性媒体中に存在するため、まず、固液分離を行うことが好ましい。固液分離には、吸引濾過法等が好ましく用いられる。
固液分離後に洗浄を行うことが好ましい。このとき、添加した界面活性剤も除去することが好ましいため、界面活性剤の曇点以下で水性媒体により洗浄することが好ましい。洗浄は複数回行うことが好ましい。
次に乾燥を行うことが好ましい。乾燥方法としては、例えば、真空低温乾燥法、振動型流動乾燥法、スプレードライ法、冷凍乾燥法、フラッシュジェット法が挙げられる。
トナー粒子の体積中位粒径D50は、トナーの高画質の画像を得る観点から、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは6μm以下である。
トナー粒子の体積中位粒径D50、トナー粒子中の体積中位粒径D50の2倍以上の粒径を有する粒子の体積割合及びCV値は、実施例に記載の方法により測定できる。
トナーは、トナー粒子を含む。
トナー粒子をトナーとしてそのまま用いることもできるが、流動化剤等を外添剤としてトナー粒子表面に添加処理したものをトナーとして使用することが好ましい。
外添剤としては、例えば、疎水性シリカ、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子、酸化セリウム微粒子、カーボンブラック等の無機微粒子、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、シリコーン樹脂等のポリマー微粒子が挙げられる。これらの中でも、疎水性シリカが好ましい。
外添剤を用いてトナー粒子の表面処理を行う場合、外添剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4.5質量部以下、更に好ましくは4質量部以下である。
以下の実施例等においては、各物性の測定及び評価は次の方法により行った。
〔BET比表面積〕
カーボンブラックのBET比表面積はJIS K6217-2:2001の「比表面積の求め方」に準拠して測定した。なお、当該BET比表面積は、分散される前のカーボンブラックの値である。
カーボンブラックのDBP吸油量はISO1126(JIS K6217-4:2017)の「オイル吸収量の求め方」に準拠して測定した。なお、当該DBP吸油量は、分散される前のカーボンブラックの値である。
カーボンブラックのpH値は、10質量%のカーボンブラックの水溶性懸濁液或いは泥状物を調製し、JIS K5101-17-2の方法により測定した。
樹脂及びワックスの酸価及び水酸基は、JIS K0070:1992に記載の中和滴定法に従って測定した。ただし、測定溶媒をクロロホルムとした。
(1)軟化点
フローテスター「CFT-500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
(2)結晶性指数
示差走査熱量計「Q100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで試料をそのまま1分間静止させ、その後、昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度(1)として、(軟化点(℃))/(吸熱の最大ピーク温度(1)(℃))により、結晶性指数を求めた。
(3)融点及びガラス転移温度
示差走査熱量計「Q100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度(2)とした。結晶性樹脂の時には該ピーク温度を融点とした。
また、非晶性樹脂の場合にピークが観測されるときはそのピークの温度を、ピークが観測されずに段差が観測されるときは該段差部分の曲線の最大傾斜を示す接線と該段差の低温側のベースラインの延長線との交点の温度をガラス転移温度とした。
示差走査熱量計「Q100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温した後、200℃から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで、試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定し、吸熱の最大ピーク温度を融点とした。
(1)測定装置:レーザー回折型粒径測定機「LA-920」(株式会社堀場製作所製)
(2)測定条件:測定用セルに試料を入れ、蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で体積中位粒径D50及び体積平均粒径を測定した。また、CV値は次の式に従って算出した。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積平均粒径)×100
赤外線水分計「FD-230」(株式会社ケツト科学研究所製)を用いて、測定試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分、水分量の変動幅0.05%)にて、水分(質量%)を測定した。固形分濃度は次の式に従って算出した。
固形分濃度(質量%)=100-水分(質量%)
凝集粒子の体積中位粒径D50は次のとおり測定した。
・測定機:「コールターマルチサイザー(登録商標)III」(ベックマンコールター株式会社製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:「マルチサイザー(登録商標)IIIバージョン3.51」(ベックマンコールター株式会社製)
・電解液:「アイソトン(登録商標)II」(ベックマンコールター株式会社製)
・測定条件:試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、改めて3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径D50を求めた。
トナー粒子の体積中位粒径D50は、次のとおり測定した。
測定装置、アパチャー径、解析ソフト、電解液は、前述の凝集粒子の体積中位粒径D50の測定で用いたものと同様のものを用いた。
・分散液:ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン(登録商標)109P」〔花王株式会社製、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)=13.6〕を前記電解液に溶解させ、濃度5質量%の分散液を得た。
・分散条件:前記分散液5mLに乾燥後のトナー粒子の測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製した。
・測定条件:前記試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径D50、体積平均粒径、及びトナー粒子中のD50の2倍以上の粒径を有する粒子の体積割合を求めた。
また、CV値(%)は次の式に従って算出した。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積平均粒径)×100
次の条件でトナー粒子の円形度を測定した。
・測定装置:フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス株式会社製)
・分散液の調製:トナー粒子の分散液を固形分濃度が0.001~0.05質量%になるように脱イオン水で希釈して調製した。
・測定モード:HPF測定モード
〔トナーのドット再現性〕
上質紙「J紙A4サイズ」(富士ゼロックス株式会社製)に市販のプリンタ「Microline(登録商標)5400」(株式会社沖データ製)を用いて、600dpiの解像度において、2ドット分の印字部(点)と、同じく2ドット分の非印字部(空白)を並べたハーフトーン画像(2dots 2spacesのハーフトーン画像)を印字した。これを目視により下記の5段階で評価を行った。数字が大きいほどドット周辺のトナーの飛散やドット内の白抜けが少なくドットが明瞭である。
<ドット周辺の飛散トナーのレベル>
5:ドット周辺に飛散トナーがほとんど確認されず、ドットが非常に明瞭である。
4:ドット周辺に飛散トナーがわずかに見られるもののドットは明瞭である。
3:ドット周辺の飛散トナーが見られるもののドットはほぼ明瞭である。
2:ドット周辺の飛散トナーが見られドットが不明瞭である。
1:ドットが判別できないくらいに飛散トナーが目立つ。
<ドットの白抜けレベル>
5:ドット内の白抜けはない。(12ドット中、白抜けのあるドットはゼロ)
4:ドット内の白抜けはわずかである。(12ドット中、白抜けのあるドットが1~2つ)
3:ドット内に白抜けがみられる。(12ドット中、白抜けのあるドットが3~4つ)
2:ドット内に白抜けがやや多い。(12ドット中、白抜けのあるドットが5~6つ)
1:ドット内に白抜けが非常に多い。(12ドット中、白抜けのあるドットが7つ以上)
上質紙「J紙A4サイズ」(富士ゼロックス株式会社製)に市販のプリンタ「Microline(登録商標)5400」(株式会社沖データ製)を用いて、トナーの紙上の付着量が0.40mg/cm2となるベタ画像を出力した。
次に、定着器を温度可変に改造した同プリンタを用意し、定着器の温度を140℃にし、A4縦方向に1枚あたり1.2秒の速度でトナーを定着させ、印刷物を得た。
印刷物の下に上質紙「J紙A4サイズ」を30枚敷き、出力した印刷物のベタ画像部分の反射画像濃度を、測色計「SpectroEye」(GretagMacbeth社製、光射条件;標準光源D50、観察視野2°、濃度基準DINNB、絶対白基準)を用いて測定し、画像上の任意の10点を測定した値を平均して画像濃度とした。数値が大きいほど、着色力に優れる。
製造例A1
(樹脂A-1の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド(2.2)付加物3356g、テレフタル酸955g、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)25g、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸2.5g、及び炭化水素ワックスW1「パラコール6490」(日本精蝋株式会社製)385gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、235℃に昇温し、235℃で5時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、160℃まで冷却し、160℃に保持した状態で、スチレン2198g、メタクリル酸ステアリル550g、アクリル酸110g、及びジブチルパーオキサイド330gの混合物を1時間かけて滴下した。その後、30分間160℃に保持した後、200℃まで昇温し、更にフラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、190℃まで冷却し、フマル酸200g、セバシン酸194g、トリメリット酸無水物184g、及び4-tert-ブチルカテコール2.5gを加え、210℃まで10℃/hrで昇温し、その後、4kPaにて所望の軟化点まで反応を行って、樹脂A-1を得た。物性を表1に示す。
(樹脂A-2の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド(2.2)付加物5405g、テレフタル酸769g、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)30g、及び3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸3.0gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、235℃に昇温し、235℃で10時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、190℃まで冷却し、フマル酸197g、セバシン酸1404g、トリメリット酸無水物296g、及び4-tert-ブチルカテコール3.8gを加え、210℃まで10℃/hrで昇温し、その後、フラスコ内の圧力を下げ、10kPaにて所望の軟化点まで反応を行って、樹脂A-2を得た。物性を表1に示す。
(樹脂D-1の製造)
原料組成を表1に示すように変更した以外は製造例A1と同様にして、樹脂D-1を得た。物性を表1に示す。
(結晶性ポリエステル樹脂C-1の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、1,10-デカンジオール3416g及びセバシン酸4084gを入れ、撹拌しながら、135℃に昇温し、135℃で3時間保持した後、135℃から200℃まで10時間かけて昇温した。その後、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)23gを加え、更に200℃にて1時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaの減圧下にて1時間保持し、結晶性ポリエステル樹脂C-1を得た。物性を表2に示す。
製造例M1
(マスターバッチM-1の製造)
樹脂A-1の微粉末1400g、カーボンブラック「Regal T30R」(キャボット社製)600gをヘンシェルミキサーを用いて1500r/minの攪拌回転数で1分間混合した後、二軸型連続混練機「PCM-30」(株式会社池貝製)を用いてフィード量10kg/hr、200r/min、混練温度100℃で溶融混練し、得られた混練物を冷却ベルトにて冷却後、2mmφのスクリーンを有するミルにて粗砕してマスターバッチM-1を得た。
製造例X1
(樹脂粒子分散液X-1の製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた内容積3Lの容器に、樹脂A-1を210g、結晶性ポリエステル樹脂C-1を90g、及びメチルエチルケトン300gと脱イオン水49gを入れ、73℃にて2時間かけて樹脂を溶解させた。得られた溶液に、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を、樹脂の酸価に対して中和度60モル%になるように添加して、30分撹拌した。
次いで、73℃に保持したまま、200r/min(周速度63m/min)で撹拌しながら、脱イオン水600gを60分かけて添加し、転相乳化した。継続して73℃に保持したまま、メチルエチルケトンを減圧下で留去し水系分散体を得た。その後、280r/min(周速度88m/min)で撹拌を行いながら水系分散体を30℃に冷却した後、固形分濃度が20質量%になるように脱イオン水を加えることにより、樹脂粒子分散液X-1を得た。得られた樹脂粒子の体積中位粒径D50及びCV値を表3に示す。
(樹脂粒子分散液X-2及びZ-1の製造)
使用する樹脂及び量比(樹脂の合計量は同様)を表3のように変更した以外は、製造例X-1と同様にして、樹脂粒子分散液X-2及びZ-1を得た。得られた樹脂粒子の体積中位粒径D50及びCV値を表3に示す。
(樹脂粒子分散液Em-1の製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた内容積5Lの容器に、樹脂A-1 252g、結晶性ポリエステル樹脂C-1 180g、マスターバッチM-1 240g、非イオン性界面活性剤「エマルゲン150」(花王株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル)18g、アニオン性界面活性剤「ネオペレックスG-15」(花王株式会社製、15質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液)80g、48質量%水酸化ナトウム水溶液23g、さらに脱イオン水136gを添加(系内の水と樹脂との質量比〔水/樹脂〕=0.32)、撹拌しながら、95℃に昇温して溶融し、95℃で2時間混合して、樹脂混合物を得た。
次に、撹拌しながら、脱イオン水1283gを6g/minの速度で滴下し、乳化物を得た。次に、得られた乳化物を25℃に冷却し、200メッシュ(目開き105μm)の金網を通した後、脱イオン水を加えて固形分を20質量%に調整して、樹脂粒子分散液Em-1を得た。物性を表3に示す。
製造例W1
(ワックス粒子分散液W-1の製造)
内容積1Lのビーカーに、脱イオン水96g、樹脂粒子分散液Z-1 80g、及びパラフィンワックス「HNP-9」(日本精蝋株式会社製、融点75℃)40gを添加し、90~95℃に温度を保持して溶融させ、撹拌し、溶融混合物を得た。
得られた溶融混合物を更に90~95℃に温度を保持しながら、超音波ホモジナイザー「US-600T」(株式会社日本精機製作所製)を用いて、20分間分散処理した後に室温(20℃)まで冷却した。脱イオン水を加え、固形分濃度を20質量%に調整し、ワックス粒子分散液W-1を得た。分散液中のワックス粒子の体積中位粒径D50は0.43μmであり、CV値は、33%であった。
製造例P1
(着色剤粒子分散液P-1の製造)
内容積1Lのビーカーに、カーボンブラック「Regal T30R」(キャボット社製)100g、アニオン性界面活性剤「ネオペレックスG-15」(花王株式会社製、15質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液)133g、及び脱イオン水267gを混合し、ホモミキサー「T.K.AGI HOMOMIXER 2M-03」(特殊機化工業株式会社製)を用いて室温下で撹拌翼の回転速度8000rpmで1時間分散させた後、200メッシュのフィルターを通し、ホモジナイザー「Microfluidizer M-110EH」(Microfluidics社製)を用いて150MPaの圧力で15パス処理し、再び200メッシュのフィルターを通し、固形分濃度が24質量%になるように脱イオン水を加えることにより着色剤粒子分散液P-1を得た。得られた着色剤粒子の体積中位粒径D50及びCV値を表4に示す。
(着色剤粒子分散液P-2及びP-51の製造)
使用するカーボンブラックを表4記載のものに変更した以外は、製造例P1と同様にして、着色剤粒子分散液P-2及びP-51を得た。得られた着色剤粒子の体積中位粒径D50及びCV値を表4に示す。
実施例1
(トナー1の作製)
脱水管、撹拌装置及び熱電対を装備した内容積3Lの4つ口フラスコに、樹脂粒子分散液X-1を500g、ワックス粒子分散液W-1を56g、着色剤粒子分散液P-1を60g、アニオン性界面活性剤「ネオペレックスG-15」(花王株式会社製、15質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液)13g、及び、非イオン性界面活性剤「エマルゲン150」(花王株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル)の10質量%水溶液20gを温度25℃で混合した。次に、当該混合物を撹拌しながら、硫酸アンモニウム34gを脱イオン水578gに溶解した水溶液に4.8質量%水酸化カリウム水溶液を添加してpH8.6に調整した溶液を、25℃で5分かけて滴下した後、62℃まで2時間かけて昇温し、凝集粒子の体積中位粒径D50が5.2μmになるまで、62℃で保持し、凝集粒子の分散液を得た。
得られた凝集粒子の分散液に、アニオン性界面活性剤「エマールE-27C」(花王株式会社製、27質量%ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム)18g、脱イオン水1411g、及び0.1mol/Lの硫酸水溶液67gを混合した水溶液を添加した。その後、75℃まで1時間かけて昇温した後、円形度が0.970になるまで75℃で保持することにより、凝集粒子が融着した融着粒子の分散液を得た。
得られた融着粒子分散液を30℃に冷却し、分散液を吸引濾過して固形分を分離した後、25℃の脱イオン水で洗浄し、25℃で2時間吸引濾過した。その後、真空定温乾燥機「DRV622DA」(ADVANTEC社製)を用いて、33℃で24時間真空乾燥を行って、トナー粒子を得た。得られたトナー粒子の物性を表5に示す。
トナー粒子100質量部、疎水性シリカ「RY50」(日本アエロジル株式会社製、個数平均粒径;0.04μm)2.5質量部、及び疎水性シリカ「キャボシル(登録商標)TS720」(キャボットジャパン株式会社製、個数平均粒径;0.012μm)1.0質量部をヘンシェルミキサーに入れて撹拌し、150メッシュの篩を通過させてトナー1を得た。得られたトナーの評価結果を表5に示す。
(トナー2~5及び51の作製)
使用する樹脂粒子分散液の種類及び着色剤粒子分散液の種類を表5に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー2~5及び51を作製した。得られたトナー粒子の物性及び得られたトナーの評価結果を表5に示す。
(トナー52の作製)
脱水管、撹拌装置及び熱電対を装備した内容積3Lの4つ口フラスコに、樹脂粒子分散液Em-1を560g、ワックス粒子分散液W-1を56gを温度25℃で混合した。次に、当該混合物を撹拌しながら、硫酸アンモニウム34gを脱イオン水578gに溶解した水溶液に4.8質量%水酸化カリウム水溶液を添加してpH8.6に調整した溶液を、25℃で5分かけて滴下した後、62℃まで2時間かけて昇温し、凝集粒子の体積中位粒径D50が5.2μmになるまで、62℃で保持し、凝集粒子の分散液を得た。
得られた凝集粒子の分散液に、アニオン性界面活性剤「エマールE-27C」(花王株式会社製、27質量%ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム)18g、脱イオン水1411g、及び0.1mol/Lの硫酸水溶液67gを混合した水溶液を添加した。その後、75℃まで1時間かけて昇温した後、円形度が0.970になるまで75℃で保持することにより、凝集粒子が融着した融着粒子の分散液を得た。
得られた融着粒子分散液を30℃に冷却し、分散液を吸引濾過して固形分を分離した後、25℃の脱イオン水で洗浄し、25℃で2時間吸引濾過した。その後、真空定温乾燥機「DRV622DA」(ADVANTEC社製)を用いて、33℃で24時間真空乾燥を行って、トナー粒子を得た。得られたトナー粒子の物性を表5に示す。
トナー粒子100質量部、疎水性シリカ「RY50」(日本アエロジル株式会社製、個数平均粒径;0.04μm)2.5質量部、及び疎水性シリカ「キャボシル(登録商標)TS720」(キャボットジャパン株式会社製、個数平均粒径;0.012μm)1.0質量部をヘンシェルミキサーに入れて撹拌し、150メッシュの篩を通過させてトナー52を得た。得られたトナーの評価結果を表5に示す。
実施例と比較例1との対比から、所定範囲のBET比表面積及び所定範囲のDBP吸油量を有するカーボンブラックを用いることで、優れたドット再現性及び高い着色力が得られることがわかる。
更に、実施例と比較例2の対比から、所定範囲のBET比表面積及び所定範囲のDBP吸油量を有するカーボンブラックを用いたとしても、カーボンブラックを含有する樹脂粒子を用いた場合よりも、界面活性剤で分散されたカーボンブラックを用いた場合のほうが、優れたドット再現性及び高い着色力が得られることがわかる。
Claims (6)
- 水性媒体中で、非晶性ポリエステル系樹脂Aを含有する樹脂粒子Xと界面活性剤により分散されたカーボンブラックとを凝集する工程を有する黒トナーの製造方法であって、
前記非晶性ポリエステル系樹脂Aが、カルボキシ基又は水酸基を有する炭化水素ワックス(W1)由来の構成単位を含み、
前記カーボンブラックは、そのDBP吸油量が25mL/100g以上60mL/100g以下であり、そのBET比表面積が60m 2 /g以上100m 2 /g以下である、黒トナーの製造方法。 - 前記カーボンブラックが、カーボンブラックと界面活性剤を水性媒体中で混合、分散することにより得られる粒子である、請求項1に記載の黒トナーの製造方法。
- 前記カーボンブラックと前記界面活性剤の質量比が50/50以上95/5以下である、請求項2に記載の黒トナーの製造方法。
- 前記カーボンブラックの量が、樹脂100質量部に対して8質量部以上20質量部以下である、請求項1~3のいずれかに記載の黒トナーの製造方法。
- 前記樹脂粒子Xが、結晶性ポリエステル樹脂Cを更に含む、請求項1~4のいずれかに記載の黒トナーの製造方法。
- 前記樹脂粒子Xが、非晶性ポリエステル系樹脂Aの有機溶媒溶液に水性媒体を添加して転相乳化して得られるものである、請求項1~5のいずれかに記載の黒トナーの製造方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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Publications (2)
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