JP7107468B1 - ガラス繊維用ガラス組成物、ガラス繊維、ガラス繊維織物及びガラス繊維強化樹脂組成物 - Google Patents

ガラス繊維用ガラス組成物、ガラス繊維、ガラス繊維織物及びガラス繊維強化樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

生体溶解性を備え、長繊維化が可能な、ガラス繊維用ガラス組成物を提供する。本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、全量に対し、35.0~55.0質量%の範囲のSiO2と、10.0~30.0質量%の範囲のB2O3と、14.5~30.0質量%の範囲のAl2O3と、合計で8.7~25.0質量%の範囲のCaO及びMgOと、合計で0~0.4質量%の範囲のLi2O、K2O及びNa2Oとを含み、前記SiO2の含有率S、前記B2O3の含有率B、前記Al2O3の含有率A、前記CaOの含有率C及び前記MgOの含有率Mが下記式(1)及び(2)を満たす。11.3≦S×(C+M)/(A+B)≦20.7 ・・・(1)12.5≦(A+0.9×B)3×(3×C+2×M)/S3≦70.2 ・・・(2)

Description

本発明は、ガラス繊維用ガラス組成物、該ガラス繊維用ガラス組成物からなるガラス繊維、該ガラス繊維からなるガラス繊維織物及び該ガラス繊維を含むガラス繊維強化樹脂組成物に関する。
従来、ガラス短繊維において、肺液等の生理的液体に溶解する性質である生体溶解性が求められている(例えば、特許文献1参照)。
ガラス短繊維は、高圧空気、遠心力等によってガラス融液を吹き飛ばしながら綿状に製造され、袋体に封入されて、又は、外被材に被覆されて、断熱材や吸音材等の建築材料等に用いられる。ガラス短繊維は、その製造過程や使用過程において、極めて細い繊維がまれに発生する可能性がある。その極めて細い繊維が人体内に吸入され蓄積することによる健康リスクを低減するために、ガラス短繊維においては、生体溶解性が重要になる。
一方、ガラス長繊維は、粘度を制御したガラス融液をノズルから流出させ、巻き取り機によって巻き取って糸状に製造され、所定の長さに切断されて又は織編されて、樹脂との複合材料である、ガラス繊維強化樹脂組成物又はガラス繊維強化樹脂成形品等に用いられる。ガラス長繊維は、ガラス短繊維よりも繊維径が太いものが多く、製造過程や使用過程で極めて細い繊維が発生する可能性も極めて低いため、生体溶解性が重要視されていなかった。
ところが、近年、ガラス繊維強化樹脂成形品、とりわけガラス繊維織物を含むプリント配線板において軽薄短小化が進んでおり、それに合わせて、ガラス長繊維においても、極めて細いものが求められるようになってきている。そのため、今後、ガラス長繊維においても生体溶解性が重要な特性になっていくと考えられる。
特表2007-507413号公報
しかしながら、ガラス短繊維において、生体溶解性が認められるガラス組成では、ガラス長繊維を得ることが困難であるという不都合がある。
そこで、本発明は、かかる不都合を解消して、生体溶解性を備え、長繊維化が可能な、ガラス繊維用ガラス組成物を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するために、本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、全量に対し、35.0~55.0質量%の範囲のSiOと、10.0~30.0質量%の範囲のBと、14.5~30.0質量%の範囲のAlと、合計で8.7~25.0質量%の範囲のCaO及びMgOと、合計で0~0.4質量%の範囲のLi O、K O及びNa Oとを含み、前記SiOの含有率S、前記Bの含有率B、前記Alの含有率A、前記CaOの含有率C及び前記MgOの含有率Mが下記式(1)及び(2)を満たすことを特徴とする。
11.3≦S×(C+M)/(A+B)≦20.7 ・・・(1)
12.5≦(A+0.9×B) ×(3×C+2×M)/S ≦70.2 ・・・(2)
本発明のガラス繊維用ガラス組成物において、全量に対する、前記SiOの含有率をS、前記Bの含有率をB、前記Alの含有率をA、前記CaOの含有率をC、前記MgOの含有率をMとするときに、前記S、B、A、C、及び、Mが前記式(1)及び(2)を満たすことにより、ガラス繊維としたときに、生体溶解性を得ることができ、かつ長繊維化が可能になる。
た、本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、前記S、B、A、C、及び、Mが下記式(3)を満たすことが好ましい。
11.3≦S×(C+M)/(A+B)≦19.3 ・・・(3)
本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、前記S、B、A、C、及び、Mが前記式(3)を満たすことにより、ガラス繊維としたときに、優れた生体溶解性を得ることができ、かつ長繊維化が可能になる。
本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、溶融ガラスの溶融粘度を低減させて長繊維化を容易とするという観点からは、全量に対し、37.0~49.5質量%の範囲のSiOと、16.5~29.0質量%の範囲のBと、15.0~28.0質量%の範囲のAlと、10.5~21.0質量%の範囲のCaOと、0~6.5質量%の範囲のMgOとを含む組成において、全量に対し、0~0.4質量%の範囲のTiOを含んでもよい。一方で、前記組成において、全量に対しTiOが0.4質量%超であると、ガラス繊維としたときに、生体溶解性が低下する可能性がある。
また、前記いずれかの本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、前記S、B、A、C、及び、Mが下記式(4)を満たすことがより好ましく、下記式(5)を満たすことがさらに好ましく、下記式(6)を満たすことが特に好ましい。
13.6≦S×(C+M)/(A+B)≦17.5 ・・・(4)
16.2≦S×(C+M)/(A+B)≦17.2 ・・・(5)
16.6≦S×(C+M)/(A+B)≦16.9 ・・・(6)
前記いずれかの本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、前記S、B、A、C、及び、Mが前記式(4)を満たすことにより、ガラス繊維としたときに、優れた生体溶解性を有し、かつ、生体溶解性のバランスが良く、長繊維化が容易である。また、前記いずれかの本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、前記S、B、A、C、及び、Mが前記式(5)を満たすことにより、ガラス繊維としたときに、より優れた生体溶解性を有し、かつ、生体溶解性のバランスが良く、長繊維化が容易である。さらに、前記いずれかの本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、前記S、B、A、C、及び、Mが前記式(6)を満たすことにより、より優れた生体溶解性をより確実に有し、かつ、生体溶解性のバランスが良く、長繊維化が容易である。
また、本発明のガラス繊維は、前記いずれかのガラス繊維用ガラス組成物からなるガラスフィラメントを含むことを特徴とする。本発明のガラス繊維は、前記ガラスフィラメントのフィラメント径が3.0μm未満であることが好ましい。
また、本発明のガラス繊維織物は前記ガラス繊維からなることを特徴とする。
また、本発明のガラス繊維強化樹脂組成物は前記ガラス繊維を含むことを特徴とする。
次に、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量に対し、35.0~55.0質量%の範囲のSiOと、10.0~30.0質量%の範囲のBと、14.5~30.0質量%の範囲のAlと、合計で8.7~25.0質量%の範囲のCaO及びMgOと、合計で0~0.4質量%の範囲のLi O、K O及びNa Oとを含み、前記SiOの含有率S、前記Bの含有率B、前記Alの含有率A、前記CaOの含有率C及び前記MgOの含有率Mが下記式(1)及び(2)を満たす。
11.3≦S×(C+M)/(A+B)≦20.7 ・・・(1)
12.5≦(A+0.9×B) ×(3×C+2×M)/S ≦70.2 ・・・(2)
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、全量に対し、SiOが35.0質量%未満であると、ガラス長繊維の強度、及び、弾性率が低下し、樹脂との複合材料に用いたときに、樹脂を補強する効果が不十分になる。一方、全量に対し、SiOが55.0質量%超であると、生体溶解性を低下させる可能性がある。
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、全量に対するSiOの含有量は、好ましくは、37.0~49.5質量%の範囲であり、より好ましくは、37.5~48.5質量%の範囲であり、さらに好ましくは、38.0~47.5質量%の範囲であり、特に好ましくは、38.5~46.5質量%の範囲であり、最も好ましくは、39.0~45.0質量%の範囲である。
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、全量に対し、Bが、10.0質量%未満であると溶融ガラスの失透温度が高くなり、長繊維化が困難になる可能性があり、また、生体溶解性が低下する可能性がある。一方、全量に対し、Bが、30.0質量%超であると、溶融ガラスに分相が発生し、長繊維化が困難になる。
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、全量に対するBの含有量は、好ましくは、14.5~30.0質量%の範囲であり、より好ましくは、15.5~29.5質量%の範囲であり、さらに好ましくは、16.5~29.0質量%の範囲であり、とりわけ好ましくは、16.7~25.5質量%の範囲であり、特に好ましくは、17.0~24.4質量%の範囲であり、殊に好ましくは、17.2~22.0質量%の範囲であり、最も好ましくは、17.5~20.5質量%の範囲である。
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、全量に対し、Alが14.5質量%未満であると、ガラス長繊維の強度、及び、弾性率が低下し、樹脂との複合材料に用いたときに、樹脂を補強する効果が不十分になる。一方、全量に対し、Alが30.0質量%超であると、溶融ガラスの失透温度が高くなり、長繊維化が困難になる可能性がある。
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、全量に対するAlの含有量は、好ましくは、15.0~28.0質量%の範囲であり、より好ましくは、17.0~27.0質量%の範囲であり、さらに好ましくは、19.0~26.0質量%の範囲であり、特に好ましくは、21.0~25.5質量%の範囲であり、最も好ましくは、23.0~25.0質量%の範囲である。
また、本発明のガラス繊維用ガラス組成物において、全量に対し、CaO及びMgOの合計が8.7質量%未満であるとガラス長繊維の生体溶解性が低下する可能性がある。一方、全量に対し、CaO及びMgOの合計が、25.0質量%超であると溶融ガラスの失透温度が高くなり、長繊維化が困難になる可能性がある。
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、全量に対するCaO及びMgOの合計含有率は、好ましくは、9.0~23.0質量%の範囲であり、より好ましくは、14.0~22.0質量%の範囲であり、さらに好ましくは、15.0~21.0質量%の範囲であり、特に好ましくは、16.0~20.0質量%の範囲であり、最も好ましくは、17.0~19.5質量%の範囲である。
ここで、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物の全量に対するCaOの含有率は、例えば、8.0~25.0質量%の範囲であり、好ましくは、10.5~21.0質量%の範囲であり、より好ましくは、13.0~20.5質量%の範囲であり、さらに好ましくは、14.5~20.0質量%の範囲であり、特に好ましくは、16.0~19.5質量%の範囲であり、最も好ましくは、17.0~19.5質量%の範囲である。
一方、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物の全量に対するMgOの含有率は、例えば、0~10.0質量%の範囲であり、好ましくは、0~6.5質量%の範囲であり、より好ましくは、0~6.0質量%の範囲であり、さらに好ましくは、0~3.0質量%の範囲であり、特に好ましくは、0~1.0質量%の範囲であり、最も好ましくは、0~0.9質量%の範囲である。
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、溶融ガラスの溶融粘度を低減させて長繊維化を容易とするという観点からは、Li O、K O及びNa Oの合計含有量は、例えば、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、0~0.4質量%の範囲であり、好ましくは、0~0.3質量%の範囲であり、より好ましくは、0~0.2質量%の範囲であり、さらに好ましくは、0~0.1質量%の範囲であり、特に好ましくは、0~0.05質量%の範囲であり、最も好ましくは、0~0.01質量%の範囲である。
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、全量に対する、前記SiOの含有率をS、前記Bの含有率をB、前記Alの含有率をA、前記CaOの含有率をC、前記MgOの含有率をMとするときに、前記S、B、A、C、及び、Mが前記式(1)を満たすことにより、ガラス繊維としたときに、生体溶解性を得ることができ、かつ長繊維化が可能になる。
ここで、ガラス繊維が生体溶解性を有するとは、後述の方法で測定される、人工肺液に対するSiOの溶出量とAlの溶出量との合計値が100.0μg/h以上であることを意味する。また、ガラス繊維の長繊維化が可能とは、後述の方法で測定される、1000ポイズ温度と液相温度とを用い、作業温度範囲ΔT=1000ポイズ温度-液相温度としたとき、ΔTが-10℃以上であることを意味する。
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、前記S、B、A、C、及び、Mが前記式(2)を満たし、好ましくは下記式(2-1)を満たし、より好ましくは下記式(2-2)を満たし、さらに好ましくは下記式(2-3)を満たし、とりわけ好ましくは下記式(2-4)を満たし、特に好ましくは下記式(2-5)を満たし、殊に好ましくは下記式(2-6)を満たし、最も好ましくは下記式(2-7)を満たす。
5.0≦(A+0.9×B)×(3×C+2×M)/S≦65.0 ・・・(2-1)
17.5≦(A+0.9×B)×(3×C+2×M)/S≦62.5 ・・・(2-2)
20.0≦(A+0.9×B)×(3×C+2×M)/S≦62.0 ・・・(2-3)
25.0≦(A+0.9×B)×(3×C+2×M)/S≦61.5 ・・・(2-4)
30.0≦(A+0.9×B)×(3×C+2×M)/S≦61.0 ・・・(2-5)
40.0≦(A+0.9×B)×(3×C+2×M)/S≦60.5 ・・・(2-6)
50.0≦(A+0.9×B)×(3×C+2×M)/S≦60.0 ・・・(2-7)
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、前記S、B、A、C、及び、Mが下記式(3)を満たすことが好ましい。
11.3≦S×(C+M)/(A+B)≦19.3 ・・・(3)
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、前記S、B、A、C、及び、Mが前記式(3)を満たすことにより、ガラス繊維としたときに、優れた生体溶解性を得ることができ、かつ長繊維化が可能になる。
ここで、ガラス繊維が優れた生体溶解性を有するとは、後述の方法で測定される、人工肺液に対するSiOの溶出量とAlの溶出量との合計値が105.0μg/h以上であることを意味する。
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、溶融ガラスの溶融粘度を低減させて長繊維化を容易とするという観点からは、全量に対し、37.0~49.5質量%の範囲のSiOと、16.5~29.0質量%の範囲のBと、15.0~28.0質量%の範囲のAlと、10.5~21.0質量%の範囲のCaOと、0~6.5質量%の範囲のMgOとを含む組成において、全量に対し、0~0.4質量%の範囲のTiOを含んでもよい。一方で、前記組成において、全量に対し、TiOが0.4質量%超であると、ガラス繊維としたときに、生体溶解性が低下する可能性がある。
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物が、TiOを含む場合、TiOの含有量は、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、好ましくは、0~0.3質量%の範囲であり、より好ましくは、0~0.2質量%の範囲であり、さらに好ましくは、0~0.1質量%の範囲であり、特に好ましくは、0~0.05質量%の範囲であり、最も好ましくは、0~0.01質量%の範囲である。
また、前記いずれかの本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、前記S、B、A、C、及び、Mが下記式(4)を満たすことがより好ましく、下記式(5)を満たすことがさらに好ましく、下記式(6)を満たすことが特に好ましい。
13.6≦S×(C+M)/(A+B)≦17.5 ・・・(4)
16.2≦S×(C+M)/(A+B)≦17.2 ・・・(5)
16.6≦S×(C+M)/(A+B)≦16.9 ・・・(6)
前記いずれかの本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、前記S、B、A、C、及び、Mが前記式(4)を満たすことにより、ガラス繊維としたときに、優れた生体溶解性を有し、かつ、生体溶解性のバランスが良く、長繊維化が容易である。また、前記いずれかの本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、前記S、B、A、C、及び、Mが前記式(5)を満たすことにより、ガラス繊維としたときに、より優れた生体溶解性を有し、かつ、生体溶解性のバランスが良く、長繊維化が容易である。さらに、前記いずれかの本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、前記S、B、A、C、及び、Mが前記式(6)を満たすことにより、より優れた生体溶解性をより確実に有し、かつ、生体溶解性のバランスが良く、長繊維化が容易である。
ここで、ガラス繊維の生体溶解性のバランスが良いとは、前記人工肺液に対する前記SiOの溶出量に対する前記Alの溶出量の比(Al溶出量/SiO溶出量)が、0.7~1.3の範囲にあることを意味し、より優れた生体溶解性を有するとは、前記人工肺液に対する前記SiOの溶出量と前記Alの溶出量との合計値が120.0μg/h以上であることを意味する。また、ガラス繊維の長繊維化が容易とは、前記作業温度範囲ΔTが99℃以上であることを意味する。
さらに、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、全量に対する、SiO、B、Al、CaO及びMgOの合計の含有量が、例えば、91.0質量%以上であり、好ましくは、95.0質量%以上であり、より好ましくは、98.0質量%以上であり、さらに好ましくは、99.0質量%以上であり、とりわけ好ましくは、99.3質量%以上であり、特に好ましくは、99.5質量%以上であり、殊に好ましくは、99.7質量%以上であり、最も好ましくは、99.9質量%以上である。
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、溶融ガラスの脱泡性を高めて、長繊維化の安定性を高めるという観点からは、Feを含んでもよい。Feの含有量は、例えば、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、0~0.4質量%の範囲であり、好ましくは、0~0.3質量%の範囲であり、より好ましくは、0~0.2質量%の範囲であり、さらに好ましくは、0~0.1質量%の範囲であり、特に好ましくは、0~0.05質量%の範囲であり、最も好ましくは、0~0.01質量%の範囲である。
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、溶融ガラスの溶融粘度を低減させて長繊維化を容易とするという観点からは、ZrOを含んでもよい。ZrOの含有量は、例えば、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、0~0.4質量%の範囲であり、好ましくは、0~0.3質量%の範囲であり、より好ましくは、0~0.2質量%の範囲であり、さらに好ましくは、0~0.1質量%の範囲であり、特に好ましくは、0~0.05質量%の範囲であり、最も好ましくは、0~0.01質量%の範囲である。
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、溶融ガラスの脱泡性を高めて、長繊維化の安定性を高めるという観点からは、F及びClを含んでもよい。F及びClの合計の含有量は、例えば、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、0~0.4質量%の範囲であり、好ましくは、0~0.3質量%の範囲であり、より好ましくは、0~0.2質量%の範囲であり、さらに好ましくは、0~0.1質量%の範囲であり、特に好ましくは、0~0.05質量%の範囲であり、最も好ましくは、0~0.01質量%の範囲である。
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、溶融ガラスの溶融粘度を低減させ、長繊維化を容易にするという観点からは、SrOを含んでもよい。SrOの含有量は、例えば、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、0~0.4質量%の範囲であり、好ましくは、0~0.3質量%の範囲であり、より好ましくは、0~0.2質量%の範囲であり、さらに好ましくは、0~0.1質量%の範囲であり、特に好ましくは、0~0.05質量%の範囲であり、最も好ましくは、0~0.01質量%の範囲である。
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、溶融ガラスの失透温度の上昇を抑えて長繊維化を容易にするという観点からは、ZnOを含んでもよい。ZnOの含有量は、例えば、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、0~0.4質量%の範囲であり、好ましくは、0~0.3質量%の範囲であり、より好ましくは、0~0.2質量%の範囲であり、さらに好ましくは、0~0.1質量%の範囲であり、特に好ましくは、0~0.05質量%の範囲であり、最も好ましくは、0~0.01質量%の範囲である。
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、溶融ガラスの失透温度の上昇を抑えて長繊維化を容易にするという観点からは、SnOを含んでもよい。SnOの含有量は、例えば、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、0~0.4質量%の範囲であり、好ましくは、0~0.3質量%の範囲であり、より好ましくは、0~0.2質量%の範囲であり、さらに好ましくは、0~0.1質量%の範囲であり、特に好ましくは、0~0.05質量%の範囲であり、最も好ましくは、0~0.01質量%の範囲である。
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、溶融ガラスの失透温度の上昇を抑えて長繊維化を容易にするという観点からは、Pを含んでもよく、溶融ガラス中に気泡が発生するのを抑制するという観点からは、Pの含有量は、例えば、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、2.5質量%未満の範囲であることが好ましい。Pの含有量は、例えば、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物の全量に対し、好ましくは、2.5質量%未満の範囲であり、より好ましくは、2.0質量%未満の範囲であり、さらに好ましくは、1.5質量%未満の範囲であり、とりわけ好ましくは、1.0質量%未満の範囲であり、特に好ましくは、0.8質量%未満の範囲であり、殊に好ましくは、0.6質量%未満の範囲であり、最も好ましくは、0.5質量%未満の範囲である。
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、原材料に起因する不純物として、Ba、Mn、Co、Ni、Cu、Cr、Mo、W、Ce、Y、La、Bi、Gd、Pr、Sc、又は、Ybの酸化物を合計で、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、1.00質量%未満含んでもよい。特に本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物が、不純物として、BaO、CeO、Y、La、Bi、Gd、Pr、Sc、又はYbを含む場合、その含有量はそれぞれ独立に0.40質量%未満であることが好ましく、0.20質量%未満であることがより好ましく、0.10質量%未満であることがさらに好ましく、0.05質量%未満であることが特に好ましく、0.01質量%未満であることが最も好ましい。
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、前述した各成分の含有率の測定は、軽元素であるLiについてはICP発光分光分析装置を用いて、その他の元素は波長分散型蛍光X線分析装置を用いて行うことができる。
測定方法としては、初めに、ガラス原料を混合して調合したガラスバッチ、又は、ガラス繊維を白金ルツボに入れ、電気炉中で、ガラスバッチにおいては1500℃の温度に、ガラス繊維においては1450℃の温度に6時間保持して撹拌を加えながら溶融させることにより、均質な溶融ガラスを得る。ここで、ガラス繊維表面に有機物が付着している場合、又は、ガラス繊維が樹脂等の有機物中に主に強化材として含まれている場合には、例えば、300~650℃のマッフル炉で0.5~24時間程度加熱する等して、有機物を除去してから用いる。次に、得られた溶融ガラスをカーボン板上に流し出してガラスカレットを作製した後、粉砕し粉末化して、ガラス粉末とする。軽元素であるLiについては前記ガラス粉末を酸で加熱分解した後、ICP発光分光分析装置を用いて定量分析する。その他の元素は前記ガラス粉末をプレス機で円盤状に成形した後、波長分散型蛍光X線分析装置を用いて定量分析する。これらの定量分析結果を酸化物換算して各成分の含有量及び全量を計算し、これらの数値から前述した各成分の含有率(質量%)を求めることができる。
次に、本実施形態のガラス繊維は、前記本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物からなるガラスフィラメントを含む。
本実施形態のガラス繊維は、以下のように製造される。初めに、ガラス原料となる鉱石に含まれる成分と各成分の含有率、及び、溶融過程における各成分の揮発量に基づき、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物の組成となるように調合されたガラス原料(ガラスバッチ)を溶融炉に供給し、例えば、1450~1550℃の範囲の温度で溶融する。次に、溶融されたガラスバッチ(溶融ガラス)を、所定の温度に制御された、ブッシングの1~20000個のノズルチップから引き出して、急冷することで、ガラスフィラメントを形成する。
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、前記ガラス繊維の製造のために、前記範囲の温度で溶融された際に、1000ポイズ温度と液相温度とを用いて、作業温度範囲ΔT=1000ポイズ温度-液相温度としたとき、ΔTが-10℃以上であることにより長繊維化が可能であり、ΔTが99℃以上であることにより長繊維化が容易になる。
ここで、1個のノズルチップ又は孔から吐出され、冷却・固化されたガラス単繊維(ガラスフィラメント)は、通常、真円形の断面形状を有し、3.0μm未満の直径(フィラメント径)を有することが好ましい。一方、前記ノズルチップが、非円形形状を有し、溶融ガラスを急冷する突起部や切欠部を有する場合には、温度条件を制御することで、例えば、楕円形や長円形等の非円形の断面形状を有するガラスフィラメントを得ることができる。ガラスフィラメントが楕円形又は長円形の断面形状を有する場合、断面積を真円に換算したときの繊維径である換算繊維径が3.0μm未満であることが好ましい。なお、前記フィラメント径の下限値は、例えば、0.5μmであり、好ましくは、1.0μmであり、より好ましくは2.0μmである。
前記ガラスフィラメントのフィラメント径は、例えば、次のようにして算出することができる。まず、ガラス繊維をエポキシ樹脂等の樹脂に埋めて該樹脂を硬化させ、硬化した樹脂を切断してその断面を研磨する。次いで、電子顕微鏡を用いて硬化した樹脂の断面を観察し、前記断面に露出するガラスフィラメント50本以上につき、当該ガラスフィラメントの断面形状が真円形状又は略真円形状である場合には、その直径を測定する。また、当該ガラスフィラメントの断面形状が真円形状又は略真円形状以外である場合には、その断面積を算出した上で、当該断面積に基づいて換算繊維径を算出する。次いで、測定又は算出された直径又は換算繊維径の平均値を求めることで算出する。また、前記ガラスフィラメントのフィラメント径は、電子顕微鏡から得た画像を自動解析装置で画像処理することでも測定することができる。
一方、本実施形態のガラス繊維がガラス繊維強化樹脂成形品である場合には、前記ガラスフィラメントのフィラメント径は、例えば、次のようにして測定することができる。まず、ガラス繊維強化樹脂成形品を625℃で30分間加熱して、熱可塑性樹脂を焼却して、ガラス繊維を取り出す。次いで、前述のガラス繊維中の前記ガラスフィラメントのフィラメント径を測定する方法と同様にして、前記ガラスフィラメントのフィラメント径を測定する。
次に、形成されたガラスフィラメントに、塗布装置であるアプリケーターを用いて集束剤又はバインダーを塗布し、集束シューを用いて、ガラスフィラメント1~20000本を集束させながら、巻取り機を用いて、チューブに高速で巻取ることで、ガラス繊維を得ることができる。
本実施形態のガラス繊維は、ガラスフィラメントの集束性の向上、ガラス繊維と樹脂との接着性の向上、ガラス繊維と樹脂又は無機材料中との混合物中におけるガラス繊維の均一分散性の向上等を目的として、その表面を有機物で被覆されていてもよい。このような有機物としては、デンプン、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、変性ポリプロピレン、特にカルボン酸変性ポリプロピレン、(ポリ)カルボン酸、特にマレイン酸と不飽和単量体との共重合体等を挙げることができる。また、本実施形態のガラス繊維は、これらの樹脂に加えて、シランカップリング剤、潤滑剤、界面活性剤等を含む樹脂組成物で被覆されていてもよい。また、本実施形態のガラス繊維は、上記の樹脂を含まず、シランカップリング剤、界面活性剤等を含む処理剤組成物で被覆されていてもよい。このような樹脂組成物又は処理剤組成物は、樹脂組成物又は処理剤組成物に被覆されていない状態の本実施形態のガラス繊維の質量を基準として、0.03~2.0質量%の割合で、ガラス繊維を被覆する。なお、有機物によるガラス繊維の被覆は、例えば、ガラス繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーター等の公知の方法を用いて樹脂溶液又は樹脂組成物溶液をガラス繊維に付与し、その後、樹脂溶液又は樹脂組成物溶液の付与されたガラス繊維を乾燥させることで行うことができる。また、織物の形態をとる本実施形態のガラス繊維を、処理剤組成物溶液中に浸漬し、その後処理剤組成物の付与されたガラス繊維を乾燥させることで行うことができる。
ここで、シランカップリング剤としては、アミノシラン、ウレイドシラン、クロロシラン、エポキシシラン、メルカプトシラン、ビニルシラン、(メタ)アクリルシラン、フェニルシラン、スチリルシラン、イソシアネートシランを挙げることができる。本実施形態では、前記シランカップリング剤を単独で用いてもよく、又は、二種以上組み合わせて用いてもよい。
アミノシランとしては、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-N’-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
ウレイドシランとしては、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
クロロシランとしては、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
エポキシシランとしては、β-(3,4 -エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
メルカプトシランとしては、γ-メルカプトトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
ビニルシランとしては、ビニルトリメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
(メタ)アクリルシランとしては、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
フェニルシランとしては、フェニルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
スチリルシランとしては、p-スチリルトリメトキシシランを挙げることができる。
イソシアネートシランとしては、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
潤滑剤としては、変性シリコーンオイル、動物油及びこの水素添加物、植物油及びこの水素添加物、動物性ワックス、植物性ワックス、鉱物系ワックス、高級飽和脂肪酸と高級飽和アルコールとの縮合物、ポリエチレンイミン、ポリアルキルポリアミンアルキルアマイド誘導体、脂肪酸アミド、第4級アンモニウム塩を挙げることができる。本実施形態では、前記潤滑剤を単独で用いてもよく、又は、二種以上組み合わせて用いてもよい。
動物油としては、牛脂等を挙げることができる。
植物油としては、大豆油、ヤシ油、ナタネ油、パーム油、ひまし油等を挙げることができる。
動物性ワックスとしては、蜜蝋、ラノリン等を挙げることができる。
植物性ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナバワックス等を挙げることができる。
鉱物系ワックスとしては、パラフィンワックス、モンタンワックス等を挙げることができる。
高級飽和脂肪酸と高級飽和アルコールとの縮合物としては、ラウリルステアレート等のステアリン酸エステル等を挙げることができる。
脂肪酸アミドとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリエチレンポリアミンと、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸との脱水縮合物等を挙げることができる。
第4級アンモニウム塩としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のアルキルトリメチルアンモニウム塩等を挙げることができる。
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を挙げることができる。本実施形態では、前記界面活性剤を単独で用いてもよく、又は、二種以上組み合わせて用いてもよい。
ノニオン系界面活性剤としては、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックコポリマー、アルキルポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックコポリマーエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセロール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンキャスターオイルエーテル、硬化ヒマシ油エチレンオキサイド付加物、アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、グリセロール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、多価アルコールアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物を挙げることができる。
カチオン系界面活性剤としては、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、高級アルキルアミン塩(酢酸塩や塩酸塩等)、高級アルキルアミンへのエチレンオキサイド付加物、高級脂肪酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合物、高級脂肪酸とアルカノールアミンとのエステルの塩、高級脂肪酸アミドの塩、イミダゾリン型カチオン性界面活性剤、アルキルピリジニウム塩を挙げることができる。
アニオン系界面活性剤としては、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、α-オレフィン硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、脂肪酸ハライドとN-メチルタウリンとの反応生成物、スルホコハク酸ジアルキルエステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩を挙げることができる。
両性界面活性剤としては、アルキルアミノプロピオン酸アルカリ金属塩等のアミノ酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリン型両性界面活性剤を挙げることができる。
ガラス繊維の形態としては、織物(ガラスクロス)、編物、ヤーン、チョップドストランド、ロービング、チョップドストランドマット、ペーパー、メッシュ、組布、ミルドファイバー等を挙げることができるが、織物(ガラスクロス)であることが好ましい。
次に、本実施形態のガラス繊維織物は、本実施形態の前記ガラス繊維からなる。本実施形態のガラス織物は、それ自体公知の織機を用いて、本実施形態の前記ガラス繊維を経糸及び緯糸として製織することにより得ることができる。前記織機としては、例えば、エアージェット又はウォータージェット等のジェット式織機、シャトル式織機、レピア式織機等を挙げることができる。また、前記織機による織り方としては、例えば、平織、朱子織、ななこ織、綾織等を挙げることができ、製造効率の観点から平織が好ましい。
本実施形態のガラス繊維織物に含まれる、本実施形態の前記ガラス繊維は、2.0μm以上9.0μm以下のフィラメント径を備えるガラスフィラメントからなり、0.5~70.0tex(g/1000m)の質量を備えることが好ましく、2.0μm以上3.0μm未満のフィラメント径を備えるガラスフィラメントからなり、0.5~1.5texの質量を備えることがより好ましい。
ここで、本実施形態のガラス繊維織物に含まれる、本実施形態の前記ガラス繊維のフィラメント径は、前記ガラス繊維の断面少なくとも50点について、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、商品名:S-3400N、倍率:3000倍)で、前記ガラス繊維を構成するガラスフィラメントの直径を測定したときの測定値の平均値である。
また、本実施形態のガラス繊維織物は、40~150本/25mmの織密度を備える経糸と、40~150本/25mmの織密度を備える緯糸とから構成されることが好ましい。
また、前記経糸の織密度は、JIS R 3420に準拠して、織物分解鏡を用い、経方向の25mmの範囲にある経糸の本数を数えることにより求めることができる。また、前記緯糸の織密度は、JIS R 3420に準拠して、織物分解鏡を用い、緯方向の25mmの範囲にある緯糸の本数を数えることにより求めることができる。
本実施形態のガラス繊維織物は、製織された後で、脱油処理、表面処理、及び開繊処理を施されてもよい。
脱油処理としては、ガラス繊維織物を雰囲気温度が350℃~400℃の加熱炉内に40~80時間配置し、ガラス繊維に付着している有機物を加熱分解する処理を挙げることができる。
表面処理としては、前記シランカップリング剤、又は、前記シランカップリング剤及び前記界面活性剤を含む溶液中にガラス繊維織物を浸漬し、余分な水を絞液した後、80~180℃の温度範囲で、1~30分間、加熱乾燥させる処理を挙げることができる。
開繊処理としては、例えば、ガラス繊維織物の経糸に20~200Nの張力をかけながら、水流圧力による開繊、液体を媒体とした高周波の振動による開繊、面圧を有する流体の圧力による開繊、ロールによる加圧での開繊等を行い、経糸及び緯糸の糸幅を拡幅する処理を挙げることができる。
また、本実施形態のガラス繊維織物は、5.0~220g/mの範囲の質量を備え、4.0~200.0μmの範囲の厚さを備えることが好ましい。
また、本実施形態のガラス繊維織物は、前記シランカップリング剤、又は、前記シランカップリング剤及び前記界面活性剤を含む表面処理層を備えてもよい。本実施形態のガラス繊維織物が該表面処理層を含む場合、該表面処理層は、表面処理層を含むガラス繊維織物の全量に対して、例えば、0.03~1.50質量%の範囲の質量を備えることができる。
本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、前述の本実施形態のガラス繊維を含む。具体的には、本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、樹脂(熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂)、ガラス繊維、その他の添加剤を含むガラス繊維強化樹脂組成物において、ガラス繊維強化樹脂組成物全量に対して、10~90質量%のガラス繊維を含む。また、本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、ガラス繊維強化樹脂組成物全量に対して、90~10質量%の樹脂を含み、その他の添加剤を0~40質量%の範囲で含む。
ここで、前記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレン/無水マレイン酸樹脂、スチレン/マレイミド樹脂、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、塩素化ポリエチレン/アクリロニトリル/スチレン(ACS)樹脂、アクリロニトリル/エチレン/スチレン(AES)樹脂、アクリロニトリル/スチレン/アクリル酸メチル(ASA)樹脂、スチレン/アクリロニトリル(SAN)樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリカーボネート、ポリアリーレンサルファイド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、ポリアリールエーテルケトン、液晶ポリマー(LCP)、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSF)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミノビスマレイミド(PABM)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレン/酢酸ビニル(EVA)樹脂、アイオノマー(IO)樹脂、ポリブタジエン、スチレン/ブタジエン樹脂、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、オレフィン/ビニルアルコール樹脂、環状オレフィン樹脂、セルロース樹脂、ポリ乳酸等を挙げることができる。
具体的に、ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン等を挙げることができる。
ポリプロピレンとしては、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン及びこれらの混合物等を挙げることができる。
ポリスチレンとしては、アタクチック構造を有するアタクチックポリスチレンである汎用ポリスチレン(GPPS)、GPPSにゴム成分を加えた耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、シンジオタクチック構造を有するシンジオタクチックポリスチレン等を挙げることができる。
メタクリル樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、脂肪酸ビニルエステルのうち一種を単独重合した重合体、又は二種以上を共重合した重合体等を挙げることができる。
ポリ塩化ビニルとしては、従来公知の乳化重合法、懸濁重合法、マイクロ懸濁重合法、塊状重合法等の方法により重合される塩化ビニル単独重合体、または、塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体、または、重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト重合したグラフト共重合体等を挙げることができる。
ポリアミドとしては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリテトラメチレンセバカミド(ナイロン410)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリペンタメチレンセバカミド(ナイロン510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン106)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ナイロン1012)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリキシレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリキシレンセバカミド(ナイロンXD10)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリパラキシリレンアジパミド(ナイロンPXD6)、ポリテトラメチレンテレフタルアミド(ナイロン4T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド(ナイロン5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン10T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン11T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン12T)、ポリテトラメチレンイソフタルアミド(ナイロン4I)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンテレフタルアミド(ナイロンPACMT)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンイソフタルアミド(ナイロンPACMI)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンテトラデカミド(ナイロンPACM14)等の成分のうち1種、もしくは2種以上の成分を組み合わせた共重合体やこれらの混合物等を挙げることができる。
ポリアセタールとしては、オキシメチレン単位を主たる繰り返し単位とする単独重合体、および、主としてオキシメチレン単位からなり、主鎖中に2~8個の隣接する炭素原子を有するオキシアルキレン単位を含有する共重合体等を挙げることができる。
ポリエチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸またはその誘導体と、エチレングリコールとを重縮合することにより得ることができる重合体等を挙げることができる。
ポリブチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸またはその誘導体と、1,4-ブタンジオールとを重縮合することにより得ることができる重合体等を挙げることができる。
ポリトリメチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸またはその誘導体と、1,3-プロパンジオールとを重縮合することにより得ることができる重合体等を挙げることができる。
ポリカーボネートとしては、ジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを溶融状態で反応させるエステル交換法により得ることができる重合体、又は、ジヒドロキシアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法により得ることができる重合体を挙げることができる。
ポリアリーレンサルファイドとしては、直鎖型ポリフェニレンサルファイド、重合の後に硬化反応を行うことで高分子量化した架橋型ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンサルファイドサルフォン、ポリフェニレンサルファイドエーテル、ポリフェニレンサルファイドケトン等を挙げることができる。
ポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,3-ジメチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-クロロメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-ヒドロキシエチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-n-ブチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-エチル-6-イソプロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-エチル-6-n-プロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,3,6-トリメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ〔2-(4’-メチルフェニル)-1,4-フェニレンエーテル〕、ポリ(2-ブロモ-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-クロロ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-クロロ-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-クロロ-6-ブロモ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジ-n-プロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-イソプロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-クロロ-6-メチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジブロモ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジクロロ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)等を挙げることができる。
変性ポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリスチレンとのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/ブタジエン共重合体とのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/無水マレイン酸共重合体とのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリアミドとのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/ブタジエン/アクリロニトリル共重合体とのポリマーアロイ、前記ポリフェニレンエーテルのポリマー鎖末端にアミノ基、エポキシ基、カルボキシ基、スチリル基等の官能基を導入したもの、前記ポリフェニレンエーテルのポリマー鎖側鎖にアミノ基、エポキシ基、カルボキシ基、スチリル基、メタクリル基等の官能基を導入したもの等を挙げることができる。
ポリアリールエーテルケトンとしては、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)等を挙げることができる。
液晶ポリマー(LCP)としては、サーモトロピック液晶ポリエステルである芳香族ヒドロキシカルボニル単位、芳香族ジヒドロキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、脂肪族ジヒドロキシ単位、脂肪族ジカルボニル単位等から選ばれる1種以上の構造単位からなる(共)重合体等を挙げることができる。
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、フッ化エチレンプロピレン樹脂(FEP)、フッ化エチレンテトラフルオロエチレン樹脂(ETFE)、ポリビニルフロライド(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン樹脂(ECTFE)等を挙げることができる。
アイオノマー(IO)樹脂としては、オレフィンまたはスチレンと不飽和カルボン酸との共重合体であって、カルボキシル基の一部を金属イオンで中和してなる重合体等を挙げることができる。
オレフィン/ビニルアルコール樹脂としては、エチレン/ビニルアルコール共重合体、プロピレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物、プロピレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物等を挙げることができる。
環状オレフィン樹脂としては、シクロヘキセン等の単環体、テトラシクロペンタジエン等の多環体、環状オレフィンモノマーの重合体等を挙げることができる。
ポリ乳酸としては、L体の単独重合体であるポリL-乳酸、D体の単独重合体であるポリD-乳酸、またはその混合物であるステレオコンプレックス型ポリ乳酸等を挙げることができる。
セルロース樹脂としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等を挙げることができる。
また、前記熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ(EP)樹脂、メラミン(MF)樹脂、フェノール樹脂(PF)、ウレタン樹脂(PU)、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、変性ポリイミド(PI)樹脂、ユリア(UF)樹脂、シリコーン(SI)樹脂、フラン(FR)樹脂、ベンゾグアナミン(BR)樹脂、アルキド樹脂、キシレン樹脂、ビスマレイドトリアジン(BT)樹脂、ジアリルフタレート樹脂(PDAP)等を挙げることができる。
具体的に、不飽和ポリエステル樹脂としては、脂肪族不飽和ジカルボン酸と脂肪族ジオールとをエステル化反応させることで得ることができる樹脂を挙げることができる。
ビニルエステル樹脂としては、ビス系ビニルエステル樹脂、ノボラック系ビニルエステル樹脂を挙げることができる。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4'-(1,3-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4'-(1,4-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4'-シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタン型ノボラック型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂やフェニルアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
メラミン樹脂としては、メラミン(2,4,6-トリアミノ-1,3,5-トリアジン)とホルムアルデヒドとの重縮合からなる重合体を挙げることができる。
フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、メチロール型レゾール樹脂、ジメチレンエーテル型レゾール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂、または、アリールアルキレン型フェノール樹脂等を挙げることができ、この中の一種、もしくは、二種以上を組み合わせたものを挙げることができる。
ユリア樹脂としては、尿素とホルムアルデヒドとの縮合によって得ることができる樹脂を挙げることができる。
前記熱可塑性樹脂又は前記熱硬化性樹脂は、単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。
前記その他の添加剤としては、例えば、炭素繊維、金属繊維等のガラス繊維以外の強化繊維や、例えば、ガラスパウダー、タルク、マイカ等のガラス繊維以外の充填剤、難燃剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、流動性改良剤、アンチブロッキング剤、潤滑剤、核剤、抗菌剤、顔料等を挙げることができる。
本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、本実施形態の前記ガラス繊維織物に、それ自体公知の方法により、前記樹脂を含浸させ、半硬化させたプリプレグであってもよい。
本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、公知の成形法で成形して種々のガラス繊維強化樹脂成形品を得ることができる。公知の成形法としては、射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、中空成形法、超臨界流体も含む発泡成形法、インサート成形法、インモールドコーティング成形法、オートクレーブ成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法、スタンピング成形法、インフュージョン法、ハンドレイアップ法、スプレイアップ法、低圧RIM成形法、レジントランスファーモールディング法、シートモールディングコンパウンド法、バルクモールディングコンパウンド法、プルトルージョン法、フィラメントワインディング法等を挙げることができる。また、前記プリプレグを硬化させることによっても、ガラス繊維強化樹脂成形品を得ることができる。
このような成形品の用途としては、例えば、プリント配線基板、コネクタ等の電子部品、アンテナやレーダー等の電子機器の筐体、燃料電池のセパレーター等を挙げることができる。
次に本発明の実施例及び比較例を示す。
〔実施例1~7、比較例1~3〕
まず、溶融固化後のガラス組成が、表2~4に示された実施例1~7及び比較例1~3の各組成となるように、ガラス原料を混合し、ガラスバッチを得た。次に、得られたガラスバッチを白金ルツボに入れ、この白金ルツボを、1400~1550℃の範囲の、各実施例及び比較例のガラスバッチの溶融に適した温度条件で、電気炉中に4時間保持し、ガラスバッチを撹拌しながら溶融させることにより、均質な溶融ガラスを得た。次に、得られた溶融ガラスをカーボン板上に流し出し、冷却して塊状のガラスカレットを得た。
次に、得られたガラスカレット用いて、以下に示す方法で、生体溶解性の評価と長繊維化可能性の評価を実施した。
〔生体溶解性〕
まず、K.Sebastian. et al., Glass Science and Technology, Vol.75, pp.263-270 (2020)に準拠し、蒸留水約800mLに、表1に示すNo.1~12の試薬を逐次加え、No.13の塩酸を用いてpHが4.5となるよう調整しながら最終的に1Lになるようにして、表1に示す組成を備え、肺内環境を模したpH4.5の人工肺液を調製した。次いで、調製した人工肺液を24時間静置した。次いで、静置後の人工肺液においては、炭酸ガスの離脱に伴いpHの上昇が生じているので、塩酸を用いて、人工肺液のpHを4.5に再調整した。
なお、繊維が肺に取り込まれるとマクロファージに取り込まれることが知られており、マクロファージ周囲のpHは4.5であるため、pHが4.5の人工肺液に対する溶解性の高い繊維は肺内で溶解することが期待できる。
Figure 0007107468000001
次に、前述のガラスカレットを粗粉砕して粒子径0.5~1.5mmのガラス粒子を得た。次いで、得られたガラス粒子を自動乳鉢およびボールミル式の粉砕機によって微粉砕し、JIS Z 8801-1に準拠した公称目開き38μmのふるいを通過した粒子を試験用ガラス粉末サンプルとした。
次に、K.Sebastian. et al., Glass Science and Technology, Vol.75, pp.263-270 (2020)に準拠し、試験用ガラス粉末サンプルを、上下にシリンジフィルターをつけたシリコーンチューブ内に詰め、37℃に加温した前記人工肺液を140~170mL/日の流量になるようにポンプで送液してシリコンチューブ内に送り込み、試験用ガラス粉末サンプルとフィルターとを通過した濾液を容器内に溜めることにより、溶出試験を実施した。このとき、人工肺液の流量(単位:μm/s)とサンプル表面積(単位:μm)との比(人工肺液の流量/サンプル表面積)が0.030±0.005μm/sとなるよう、シリコーンチューブ内に詰める試験用ガラス粉末サンプルの質量を調整した。24時間経過後、容器から濾液を回収し、分析対象イオンをSi、Alとして、誘導結合プラズマ質量分析法(IPC-MS)を用いて濾液中の溶出イオン成分を定量し、Si又はAlに対するICP-MSの定量結果(μg)を24時間で除することで、各成分の溶出速度(μg/h)を算出した。実施例1~4の結果を表2に、実施例5~7の結果を表3に、比較例1~3の結果を表4に、それぞれ示す。
〔長繊維化可能性〕
回転粘度計付高温電気炉(芝浦システム株式会社製)を用い、白金ルツボ中で前述のガラスカレットを溶融し、回転式ブルックフィールド型粘度計を用いて溶融温度を変化させながら連続的に溶融ガラスの粘度を測定し、回転粘度が1000ポイズのときに対応する温度を測定することにより1000ポイズ温度を求めた。
次に、前述のガラスカレットを粉砕して得た粒径0.5~1.5mmのガラス粒子40gを180×20×15mmの白金製ボートに入れ、900~1300℃の温度勾配を設けた管状電気炉で8時間以上加熱した後、該管状電気炉から取り出し、偏光顕微鏡で観察して、失透したガラス由来の結晶が析出し始めた位置を特定した。管状電気炉内の温度をB熱電対を用いて測定し、析出が開始した位置の温度を求めて液相温度とした。
次に、上記の方法で測定した1000ポイズ温度と液相温度から、作業温度範囲ΔT(ΔT=1000ポイズ温度-液相温度)を算出した。ΔTが+99℃以上の場合に、長繊維化可能性を「A」、ΔTが-10℃以上+99℃未満の場合に、長繊維化可能性を「B」、ΔTが-10℃未満の場合に、長繊維化可能性を「C」と評価した。実施例1~4の結果を表2に、実施例5~7の結果を表3に、比較例1~3の結果を表4に、それぞれ示す。
〔実施例8〕
本実施例では、まず、底部に1個のノズルチップを備えた白金製容器に実施例1で得られたガラスカレットを投入し、白金製容器を1150~1350℃に加熱して、ガラスカレットを溶融して溶融ガラスを得た。次いで、ノズルチップから溶融ガラスを引きだして巻き取り装置に巻き付けた。次いで、白金製容器の加熱温度を調整し、また、巻き取り装置を回転させて、1150~1350℃の範囲の、各実施例のガラス組成に適した紡糸温度、及び、800~1100rpmの範囲の、各実施例のガラス組成に適した紡糸速度でガラス繊維を巻き取り装置に巻き取り、繊維直径13.0μmのガラス繊維サンプルを得た。
次に、K.Sebastian. et al., Glass Science and Technology, Vol.75, pp.263-270 (2020)に準拠し、前述のガラス繊維サンプルを、インライン式フィルターホルダー内に収まる長さである1~3mmの長さに切断し、溶出試験用ガラス繊維サンプルとした。前記溶出試験用ガラス繊維サンプルを、インライン式フィルターホルダー内に設置したメンブレンフィルタ上に載置し、37℃に加温した前記人工肺液を140~170mL/日の流量になるようにポンプで送液してインライン式フィルターホルダー内に送り込み、試験用ガラス繊維サンプルとフィルターホルダーとを通過した濾液を容器内に溜めることにより溶出試験を実施した。このとき、人工肺液の流量(単位:μm/s)とサンプル表面積(単位:μm)との比(人工肺液の流量/サンプル表面積)が0.030±0.005μm/sとなるよう、メンブレンフィルタ上に載置するサンプルの質量を調整した。24時間経過後、容器から濾液を回収し、分析対象イオンをSi、Alとして、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)を用いて濾液中の溶出イオン成分を定量し、Si又はAlに対するICP-MSの定量結果(μg)を24時間で除することで、各成分の溶出速度(μg/h)を算出した。結果を表5に示す。
〔実施例9〕
本実施例では、実施例4で得られたガラスカレットを用いた以外は、実施例8と全く同一にして、繊維直径13.0μmのガラス繊維サンプルを得た。
次に、本実施例で得られた繊維直径13.0μmのガラス繊維サンプルを用いた以外は、実施例8と全く同一にして、溶出試験を実施し、各成分の溶出速度(μg/h)を算出した。結果を表5に示す。
Figure 0007107468000002
Figure 0007107468000003
Figure 0007107468000004



Figure 0007107468000005
表1乃至表4から、実施例1~7のガラス繊維用ガラス組成物から得られたガラス粉末サンプルは、SiO及びAlの合計の溶出速度が103.5μg/h以上であって生体溶解性を備え、しかも長繊維化が可能であることが明らかである。一方、比較例1のガラス繊維用ガラス組成物から得られたガラス粉末は、SiO及びAlの合計の溶出速度は180.2μg/hであって優れた生体溶解性を備えるものの、長繊維化可能性に劣ることが明らかである。比較例2のガラス繊維用ガラス組成物から得られたガラス粉末は、SiO及びAlの合計の溶出速度が96.6μg/hであり比較的高い値を示すものの、長繊維化可能性に劣ることが明らかである。比較例3のガラス繊維用ガラス組成物から得られたガラス粉末は、長繊維化は可能であるものの、SiO及びAlの合計の溶出速度が41.7μg/hであって生体溶解性に劣ることが明らかである。
また、表5から、実施例8、9のガラス繊維サンプルは、同一のガラス繊維用ガラス組成物から得られた実施例1、4のガラス粉末サンプルと同等の生体溶解性を備えることが明らかである。従って、実施例2、3、5~7のガラス繊維用ガラス組成物から得られたガラス繊維サンプルも、実施例2、3、5~7のガラス粉末サンプルと同等の生体溶解性を備える蓋然性が高いと考えられる。

Claims (10)

  1. ガラス繊維用ガラス組成物であって、
    全量に対し、35.0~55.0質量%の範囲のSiOと、10.0~30.0質量%の範囲のBと、14.5~30.0質量%の範囲のAlと、合計で8.7~25.0質量%の範囲のCaO及びMgOと、合計で0~0.4質量%の範囲のLi O、K O及びNa Oとを含み、
    前記SiOの含有率S、前記Bの含有率B、前記Alの含有率A、前記CaOの含有率C及び前記MgOの含有率Mが下記式(1)及び(2)を満たすことを特徴とする、ガラス繊維用ガラス組成物。
    11.3≦S×(C+M)/(A+B)≦20.7 ・・・(1)
    12.5≦(A+0.9×B)×(3×C+2×M)/S≦70.2 ・・・(2)
  2. 請求項1記載のガラス繊維用ガラス組成物において、前記S、B、A、C及びMが、下記式(3)を満たすことを特徴とする、ガラス繊維用ガラス組成物。
    11.3≦S×(C+M)/(A+B)≦19.3 ・・・(3)
  3. 請求項1又は請求項2記載のガラス繊維用ガラス組成物において、
    全量に対し、37.0~49.5質量%の範囲のSiOと、16.5~29.0質量%の範囲のBと、15.0~28.0質量%の範囲のAlと、10.5~21.0質量%の範囲のCaOと、0~6.5質量%の範囲のMgOと、0~0.4質量%の範囲のTiOと、を含むことを特徴とする、ガラス繊維用ガラス組成物。
  4. 請求項1~請求項のいずれか1項記載のガラス繊維用ガラス組成物において、前記S、B、A、C及びMが、下記式(4)を満たすことを特徴とする、ガラス繊維用ガラス組成物。
    13.6≦S×(C+M)/(A+B)≦17.5 ・・・(4)
  5. 請求項1~請求項のいずれか1項記載のガラス繊維用ガラス組成物において、前記S、B、A、C及びMが、下記式(5)を満たすことを特徴とする、ガラス繊維用ガラス組成物。
    16.2≦S×(C+M)/(A+B)≦17.2 ・・・(5)
  6. 請求項1~請求項のいずれか1項記載のガラス繊維用ガラス組成物において、前記S、B、A、C及びMが、下記式(6)を満たすことを特徴とする、ガラス繊維用ガラス組成物。
    16.6≦S×(C+M)/(A+B)≦16.9 ・・・(6)
  7. 請求項1~請求項のいずれか1項記載のガラス繊維用ガラス組成物からなるガラスフィラメントを含むことを特徴とする、ガラス繊維。
  8. 請求項記載のガラス繊維において、前記ガラスフィラメントのフィラメント径が3.0μm未満であることを特徴とする、ガラス繊維。
  9. 請求項又は請求項記載のガラス繊維からなることを特徴とする、ガラス繊維織物。
  10. 請求項又は請求項記載のガラス繊維を含むことを特徴とする、ガラス繊維強化樹脂組成物。
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