以下、液滴吐出装置の実施形態について、図を参照して説明する。本実施形態の液滴吐出装置は、液体の一例であるインクを吐出することによって記録用紙などの媒体に文字、写真などの画像を印刷するインクジェット式のプリンターである。
図1に示すように、液滴吐出装置700は、筐体701と、支持台712と、搬送ユニット713と、乾燥ユニット719と、印刷ユニット720と、ガイド軸721と、ガイド軸722とを備える。筐体701は、支持台712、乾燥ユニット719、印刷ユニット720などの構成要素を収容する。支持台712、ガイド軸721及びガイド軸722は、媒体STの幅方向となるX軸方向に延びる。
本実施形態の液滴吐出装置700は、液滴吐出装置700の動作状態を表示するように構成される報知部703を備える。報知部703は、液滴吐出装置700の動作状態を表示することにより、液滴吐出装置700の動作状態をユーザーに報知する。本実施形態の報知部703は、筐体701に取り付けられる。報知部703は、動作状態を表示する画面を介して液滴吐出装置700を操作できるように構成されてもよい。報知部703は、例えば、情報を表示するための表示画面と、操作するためのボタンとを含んで構成される。
支持台712は、媒体STを支持する。搬送ユニット713は、シート状の媒体STを搬送する。印刷ユニット720は、液体を用いて媒体STに印刷する。印刷ユニット720は、支持台712上に設定される印刷位置において、搬送される媒体STに向けて液滴を吐出する。Y軸方向は、印刷位置での媒体STの搬送方向である。乾燥ユニット719は、媒体STに付いた液体の乾燥を促進する。X軸及びY軸は、Z軸と交差する。本実施形態のZ軸方向は重力方向であり、液体の吐出方向である。
本実施形態の搬送ユニット713は、支持台712よりも搬送方向の上流に配置される搬送ローラー対714a、案内板715a及び供給リール716aを有する。本実施形態の搬送ユニット713は、支持台712より搬送方向の下流に配置される搬送ローラー対714b、案内板715b及び巻取リール716bを有する。搬送ユニット713は、搬送ローラー対714a及び搬送ローラー対714bを回転させる搬送モーター749を有する。
本実施形態において、媒体STは、供給リール716aにロール状に巻かれたロールシートRSから繰り出される。搬送ローラー対714a及び搬送ローラー対714bが媒体STを挟んだ状態で回転すると、媒体STは、案内板715a、支持台712及び案内板715bの表面に沿って搬送される。印刷済みの媒体STは、巻取リール716bに巻き取られる。媒体STは、ロールシートRSから繰り出される媒体STに限らず、単票状の媒体STでもよい。
本実施形態の印刷ユニット720は、キャリッジ723とキャリッジモーター748とを有する。キャリッジ723は、ガイド軸721及びガイド軸722に支持される。キャリッジ723は、キャリッジモーター748の駆動により、ガイド軸721及びガイド軸722に沿って支持台712の上方で往復移動する。
液滴吐出装置700は、往復移動するキャリッジ723に追従して変形可能な複数本の供給チューブ726と、キャリッジ723に取り付けられた接続部726aとを有する。供給チューブ726の上流端は、液体供給源702に接続される。供給チューブ726の下流端は、接続部726aに接続される。液体供給源702は、液体を補充可能なタンクでもよいし、筐体701に対して着脱可能なカートリッジでもよい。
印刷ユニット720は、液体を液滴として吐出するノズル21を複数有する液滴吐出部1を有する。液滴吐出部1は、キャリッジ723に保持される。本実施形態においては、液滴吐出部1を2つ有する。そのため、本実施形態において、2つの液滴吐出部1をそれぞれ液滴吐出部1A、液滴吐出部1Bと呼称する。
印刷ユニット720は、キャリッジ723に保持される構成要素として、液体供給路727と、貯留部730と、貯留部730を保持する貯留部保持体725と、貯留部730に接続される流路アダプター728とを有する。液滴吐出部1A及び液滴吐出部1Bは、キャリッジ723の下部に保持される。貯留部730は、キャリッジ723の上部に保持される。液体供給路727は、液体供給源702から供給された液体を液滴吐出部1A及び液滴吐出部1Bに供給する。
貯留部730は、液体供給路727と液滴吐出部1との間で液体を一時貯留する。貯留部730は、少なくとも液体の種類ごとに設けられる。液滴吐出装置700は、複数の貯留部730を備えてもよい。複数の貯留部730がそれぞれ色の異なるカラーインクを貯留する場合、カラー印刷が可能になる。
カラーインクの色には、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ホワイトなどがある。カラー印刷は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色で行ってもよいし、シアン、マゼンタ、イエローの3色で行ってもよい。シアン、マゼンタ、イエローの3色に、ライトシアン、ライトマゼンタ、ライトイエロー、オレンジ、グリーン、グレーなどのうち少なくとも1色を追加してカラー印刷を行ってもよい。各インクは、防腐剤を含んでもよい。
ホワイトインクは、透明又は半透明のフィルムである媒体ST、濃色の媒体STに印刷をする際に、カラー印刷する前の下地印刷に使用できる。下地印刷は、ベタ印刷、又は塗り潰し印刷とも呼ばれることがある。
貯留部730は、差圧弁731を有する。差圧弁731は、いわゆる減圧弁である。すなわち、差圧弁731は、液滴吐出部1で液体が消費されることにより、差圧弁731と液滴吐出部1との間の液圧が大気圧より低い所定の負圧を下回ると開弁する。このとき、差圧弁731は、貯留部730から液滴吐出部1に向かう液体の流動を許容する。
差圧弁731は、貯留部730から液滴吐出部1に向けて液体が流動することにより、差圧弁731と液滴吐出部1との間の液圧が上記所定の負圧に戻ると閉弁する。このとき、差圧弁731は、貯留部730から液滴吐出部1に向かう液体の流動を停止させる。差圧弁731は、差圧弁731と液滴吐出部1との間の液圧が高くなっても開弁することはない。そのため、差圧弁731は、貯留部730から液滴吐出部1への液体の流動を許容し、液滴吐出部1から貯留部730への液体の流動を抑制する一方向弁、いわゆる逆止弁として機能する。
液体供給路727は、接続部726aに上流端が接続される供給チューブ727aを有する。供給チューブ727aの下流端は、貯留部730よりも上方となる位置で、流路アダプター728に接続される。液体は、供給チューブ726、供給チューブ727a及び流路アダプター728を順に通って、貯留部730に供給される。
本実施形態の乾燥ユニット719は、発熱機構717と、送風機構718とを有する。発熱機構717は、キャリッジ723の上方に位置する。液滴吐出部1は、キャリッジ723が発熱機構717と支持台712との間で往復移動しているときに、支持台712上に停止した媒体STに対して液滴を吐出する。
発熱機構717は、X軸方向に延びる発熱部材717a及び反射板717bを有する。発熱部材717aは、例えば赤外線ヒーターである。発熱機構717は、発熱部材717aから赤外線等の熱である輻射熱を発し、図1において1点鎖線の矢印で示すエリアにある媒体STを加熱する。送風機構718は、発熱機構717が加熱するエリアに送風し、媒体STの乾燥を促進する。
キャリッジ723は、貯留部730と発熱機構717との間に、発熱機構717からの伝熱を遮る遮熱部材729を有してもよい。遮熱部材729は、例えばステンレススチール又はアルミニウムなどの熱伝導性のよい金属材料で形成される。遮熱部材729は、少なくとも貯留部730の上面を覆うことが好ましい。
図2に示すように、液滴吐出部1A及び液滴吐出部1Bは、X軸方向に所定の距離だけ離れ、且つY軸方向に所定の距離だけずれるように、キャリッジ723の下部に配置される。キャリッジ723は、X軸方向において液滴吐出部1A及び液滴吐出部1Bの間となる位置に、温度センサー711を保持する。
液滴吐出部1A及び液滴吐出部1BがX軸方向に移動可能な移動領域は、媒体STに印刷が行われる印刷領域PAと、印刷領域PAの外側の非印刷領域RA及び非印刷領域LAとを含む。非印刷領域RA及び非印刷領域LAは、印刷領域PAのX軸方向の両外側に位置する。印刷領域PAは、最大幅の媒体STに対して、液滴吐出部1A及び液滴吐出部1Bが液滴を吐出できる領域である。印刷ユニット720が縁なし印刷機能を有する場合、印刷領域PAは、最大幅の媒体STよりもX軸方向に若干広い領域となる。発熱機構717が媒体STを加熱する加熱領域HAは、印刷領域PAと重なる。
液滴吐出装置700は、液滴吐出部1をメンテナンスするためのメンテナンスユニット710を備える。メンテナンスユニット710は、非印刷領域LAにおいて、キャップ装置800を有する。メンテナンスユニット710は、非印刷領域RAにおいて、ワイピング機構750と、液体受容機構751と、キャップ機構752とを有する。キャップ機構752の上方は、液滴吐出部1のホームポジションHPとなる。ホームポジションHPは、液滴吐出部1の移動の始点となる。
<ヘッドユニットの構成について>
次に、ヘッドユニット2の構成について説明する。
1つの液滴吐出部1は、複数のヘッドユニット2を有する。本実施形態の液滴吐出部1は、4つのヘッドユニット2を有する。ヘッドユニット2は、液体の種類ごとに設けられる。
図3に示すように、1つのヘッドユニット2には、液滴を吐出するノズル21の開口が一方向に一定の間隔で多数並ぶ。本実施形態において、ノズル21の開口は、Y軸方向に並ぶ。一方向に並ぶノズル21は、ノズル列NLを構成する。ノズル列NLは、例えば180個のノズル21により構成される。本実施形態では、1つの液滴吐出部1に、X軸方向に並ぶ2列のノズル列NLが設けられる。本実施形態において、互いに接近して並ぶ2列のノズル列NLをノズル群という。
1つの液滴吐出部1には、4つのノズル群がX軸方向に一定の間隔で配置される。そのため、1つの液滴吐出部1には、合計8列のノズル列NLが設けられる。2つの液滴吐出部1は、ノズル21の位置をX軸方向に投影したときに、各々のノズル列NLの一番端のノズル21同士が、一のノズル列NLを構成するノズル21と同じ間隔で並ぶように、Y軸方向の位置が調整される。
図4に示すように、ヘッドユニット2は、ヘッド本体11と、ヘッド本体11の上面側に固定された流路形成部材40とを有する。ヘッド本体11は、流路形成部材40に近い方から順に積層された、保護基板30と、流路形成基板10と、連通板15と、ノズルプレート20と、コンプライアンス基板45とを有する。連通板15は、流路形成基板10の下面側に設けられる。保護基板30は、流路形成基板10の上面側に設けられる。ノズルプレート20は、連通板15の下面側に設けられる。コンプライアンス基板45は、連通板15の下面側、すなわちノズルプレート20が設けられる面側に設けられる。
流路形成基板10を構成するために、ステンレス鋼又はニッケルなどの金属、ZrO2あるいはAl2O3を代表とするセラミック材料、ガラスセラミック材料、MgO、LaAlO3のような酸化物などを用いることができる。本実施形態では、流路形成基板10は、シリコン単結晶基板からなる。
図5に示すように、流路形成基板10には、隔壁によって区画された複数の圧力室12が形成されている。圧力室12は、ノズル21の上方に配置される。流路形成基板10には、圧力室12のY軸方向の一端部に、圧力室12よりも開口面積が狭く、圧力室12に流入する液体の流路抵抗を付与する供給路等が設けられていてもよい。
ノズルプレート20は、ノズル21を構成する孔を有する。ノズルプレート20の下面であるノズル面20aには、ノズル21の下流端が開口する。
連通板15には、圧力室12とノズル21とに通じるノズル連通路16が設けられる。連通板15は、流路形成基板10よりも平面積が大きくなるように設けられる。ノズルプレート20は、流路形成基板10よりも平面積が小さくなるように設けられる。連通板15を設けることによって、ノズルプレート20のノズル21と圧力室12との距離が広がる。そのため、ノズル21から液体の水分が蒸発することによって圧力室12中の液体が増粘することを抑制できる。ノズルプレート20は、圧力室12とノズル21とに通じるノズル連通路16の開口を覆うだけでよいため、ノズルプレート20の面積を比較的小さくすることができ、コストの削減を図ることができる。
連通板15には、共通液室100を構成する第1マニホールド部17と、第2マニホールド部18とが設けられる。第1マニホールド部17は、連通板15を厚さ方向に貫通する。厚さ方向とは、例えば連通板15と流路形成基板10との積層方向となるZ軸方向である。第2マニホールド部18は、連通板15を厚さ方向に貫通することなく、連通板15のノズルプレート20側に開口する。第2マニホールド部18は、絞り流路、オリフィス流路とも呼ばれる。
連通板15には、圧力室12のY軸方向の一端部と通じる供給連通路19が、圧力室12ごとに独立して設けられる。供給連通路19は、第2マニホールド部18と圧力室12とに通じる。
連通板15を構成するために、ステンレス、ニッケルなどの金属、又はジルコニウムなどのセラミックス等を用いることができる。連通板15は、流路形成基板10と線膨張係数が同等の材料で形成されることが好ましい。連通板15として流路形成基板10と線膨張係数が大きく異なる材料を用いた場合、加熱又は冷却されることにより、流路形成基板10及び連通板15に反りが生じることがある。本実施形態では、連通板15として流路形成基板10と同じ材料、すなわち、シリコン単結晶基板を用いることにより、熱による反り、熱によるクラック又は剥離等を抑制できる。
ノズルプレート20を構成するために、例えば、ステンレス等の金属、ポリイミド樹脂のような有機物、又はシリコン単結晶基板等を用いることができる。ノズルプレート20としてシリコン単結晶基板を用いると、ノズルプレート20と連通板15との線膨張係数が同等になる。これにより、熱による反り、熱によるクラック又は剥離等を抑制できる。
流路形成基板10において連通板15とは反対面側には、振動板50が配置される。本実施形態では、振動板50として、流路形成基板10側に設けられた酸化シリコンからなる弾性膜51と、弾性膜51上に設けられた酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜52とを設けている。圧力室12等の液体流路は、流路形成基板10を一方面側、すなわちノズルプレート20が接合された面側から異方性エッチングすることにより形成される。圧力室12等の液体流路の他方面は、弾性膜51によって形成される。
流路形成基板10における振動板50上には、本実施形態の圧力発生手段であるアクチュエーター130が設けられる。アクチュエーター130は、例えば圧電アクチュエーターである。アクチュエーター130は、第1電極60と、圧電体層70と、第2電極80とを有する。
一般的には、アクチュエーター130の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極を圧力室12ごとにパターニングして構成する。本実施形態では、第1電極60を複数のアクチュエーター130にわたって連続して設けることにより共通電極とし、第2電極80をアクチュエーター130ごとに独立して設けることにより個別電極としている。駆動回路又は配線の都合でこれを逆にしても支障はない。
上述した例では、振動板50が弾性膜51及び絶縁体膜52で構成されたものを例示したが、勿論これに限定されない。例えば、振動板50として弾性膜51及び絶縁体膜52の何れか一方を設けたものでもよい。例えば、振動板50として弾性膜51及び絶縁体膜52を設けずに、第1電極60のみが振動板として作用するようにしてもよい。例えば、アクチュエーター130自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。
圧電体層70は、分極構造を有する酸化物の圧電材料からなる。圧電体層70は、例えば、一般式ABO3で示されるペロブスカイト型酸化物からなることができる。圧電体層70として、鉛を含む鉛系圧電材料、鉛を含まない非鉛系圧電材料などを用いることができる。
アクチュエーター130の個別電極である第2電極80には、リード電極90の先端が接続される。リード電極90は、供給連通路19とは反対側の端部近傍から引き出され、振動板50上まで延びる。リード電極90は、例えば、金等からなる。
リード電極90の他端部には、配線基板121が接続されている。配線基板121は、可撓性のあるシート状のもの、例えば、COF基板等を用いることができる。配線基板121には、アクチュエーター130を駆動するための駆動回路120が設けられる。
図4及び図6に示すように、配線基板121の一面には、第2端子列123が形成されている。第2端子列123は、Y軸方向に並ぶ複数の配線端子である第2端子122によって構成される。配線基板121は、COF基板に限定されず、FFC、FPC等でもよい。
図5に示すように、流路形成基板10のアクチュエーター130側の面には、流路形成基板10と略同じ大きさを有する保護基板30が接合されている。保護基板30は、アクチュエーター130を保護するための空間である保持部31を有する。
保持部31は、保護基板30を厚さ方向であるZ軸方向に貫通することなく、流路形成基板10側に開口する凹形状を有する。保持部31は、X軸方向に並べられたアクチュエーター130の列ごとに独立して設けられる。保持部31は、X軸方向に並べられたアクチュエーター130の列を収容するように設けられている。そのため、Y軸方向において2つの保持部31が並んで設けられている。このような保持部31は、アクチュエーター130の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
保護基板30は、厚さ方向であるZ軸方向に貫通した貫通孔32を有する。貫通孔32は、X軸方向において2つの保持部31の間に設けられる。貫通孔32は、Y軸方向にわたって延びるように設けられる。つまり、貫通孔32は、複数のアクチュエーター130が並ぶY軸方向に長辺を有した開口とされている。リード電極90の基端は、この貫通孔32内に露出するように設けられている。リード電極90と配線基板121とが、貫通孔32内で電気的に接続されている。
保護基板30を構成するために、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いてもよい。本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて保護基板30を形成した。流路形成基板10と保護基板30との接合方法は特に限定されず、例えば、本実施形態では、流路形成基板10と保護基板30とは接着剤を介して接合されている。
ヘッドユニット2は、流路形成部材40を有する。流路形成部材40は、複数の圧力室12と通じる共通液室100をヘッド本体11とともに形成する。流路形成部材40は、平面視において上述した連通板15と略同一形状を有し、保護基板30に接合されるとともに、上述した連通板15にも接合されている。具体的には、流路形成部材40は、保護基板30側に流路形成基板10及び保護基板30が収容される深さの凹部41を有する。
凹部41は、保護基板30の流路形成基板10に接合された面よりも広い開口面積を有する。凹部41に流路形成基板10等が収容された状態で凹部41のノズルプレート20側の開口面が連通板15によって封止されている。これにより、流路形成基板10の外周部には、流路形成部材40とヘッド本体11とによって第3マニホールド部42が形成されている。連通板15に設けられた第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18と、流路形成部材40とヘッド本体11とによって形成された第3マニホールド部42とによって本実施形態の共通液室100が構成されている。
共通液室100は、第1マニホールド部17、第2マニホールド部18及び第3マニホールド部42を有する。本実施形態の共通液室100は、X軸方向において、2列の圧力室12の両外側に配置されている。2列の圧力室12の両外側に設けられた2つの共通液室100は、ヘッドユニット2内では繋がらないようにそれぞれ独立して設けられる。すなわち、本実施形態の圧力室12の列ごとに1つの共通液室100が設けられる。言い換えると、ノズル列NLごとに共通液室100が設けられる。2つの共通液室100は、互いに繋がっていてもよい。
流路形成部材40は、共通液室100を形成する部材であり、共通液室100と通じる導入口44を有する。すなわち、導入口44は、ヘッド本体11に供給される液体を共通液室100に導入する入口となる開口である。流路形成部材40の材料として、例えば、樹脂、金属等を用いることができる。流路形成部材40の材料を樹脂材料とすると、流路形成部材40を低コストで量産できる。
流路形成部材40には、保護基板30の貫通孔32と通じる接続口43が設けられる。接続口43には、配線基板121が挿入される。配線基板121の上端部は、貫通孔32及び接続口43の貫通方向であるZ軸方向において、液滴の吐出方向とは反対側に延びるように設けられる。
連通板15の第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18が開口する面には、コンプライアンス基板45が設けられる。コンプライアンス基板45は、平面視において上述した連通板15と略同じ大きさを有する。コンプライアンス基板45には、ノズルプレート20を露出する第1露出開口部45aが設けられる。コンプライアンス基板45は、第1露出開口部45aによってノズルプレート20を露出した状態で、第1マニホールド部17と第2マニホールド部18とのノズル面20a側の開口を封止している。すなわち、コンプライアンス基板45が共通液室100の一部を形成している。
コンプライアンス基板45は、封止膜46と、固定基板47とを有する。封止膜46は、可撓性を有するフィルム状の薄膜、例えばポリフェニレンサルファイド等により形成された厚さが20μm以下の薄膜からなる。固定基板47は、ステンレス鋼等の金属等の硬質の材料で形成される。固定基板47の共通液室100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部48とされる。そのため、共通液室100の一方面は可撓性を有する封止膜46のみで封止された可撓部であるコンプライアンス部49とされる。本実施形態では、1つの共通液室100に対応して1つのコンプライアンス部49が設けられる。すなわち、本実施形態では、共通液室100が2つ設けられているため、ノズルプレート20を挟んでX軸方向の両側に2つのコンプライアンス部49が設けられている。
ヘッドユニット2では、液滴を吐出する際に、導入口44を介して液体を取り込み、共通液室100からノズル21に至るまでの流路内部を液体で満たす。その後、駆動回路120からの信号に従い、圧力室12に対応するアクチュエーター130に電圧を印加することにより、アクチュエーター130とともに振動板50をたわみ変形させる。これにより、圧力室12内の圧力が高まり、その圧力室12と通じるノズル21から液滴が吐出される。
<液滴吐出部の構成について>
次に、液滴吐出部1について説明する。
図6に示すように、液滴吐出部1は、4つのヘッドユニット2と、ヘッドユニット2を保持する流路部材200と、流路部材200に保持されたヘッド基板300と、可撓性配線基板の一例である配線基板121とを有する。流路部材200は、ヘッドユニット2に液体を供給するホルダー部材を含む。
図7には、シール部材230及び上流流路部材210の図示を省略した液滴吐出部1の平面図を示す。
図8に示すように、流路部材200は、上流流路部材210と、ホルダー部材の一例である下流流路部材220と、上流流路部材210と下流流路部材220との間に配置されるシール部材230とを有する。
上流流路部材210は、液体の流路となる上流流路500を有する。本実施形態では、上流流路部材210は、第1上流流路部材211と、第2上流流路部材212と、第3上流流路部材213とがZ軸方向に積層されることにより構成されている。第1上流流路部材211、第2上流流路部材212及び第3上流流路部材213には、それぞれ第1上流流路501、第2上流流路502、第3上流流路503が設けられる。第1上流流路部材211、第2上流流路部材212及び第3上流流路部材213が連結することにより上流流路500が構成されている。上流流路部材210はこのような態様に限定されるものではなく、単一の部材であっても、2以上の複数の部材で構成されていてもよい。上流流路部材210を構成する複数の部材の積層方向も特に限定されず、積層方向はX軸方向、Y軸方向であってもよい。
第1上流流路部材211は、下流流路部材220とは反対面側に、液体を貯留する貯留部730に接続される接続部214を有する。本実施形態では、接続部214として針状に突出したものとした。接続部214は、カートリッジなどの貯留部730と直接接続されてもよく、インクタンクなどの貯留部730とチューブなどの供給管を介して接続されてもよい。
第1上流流路部材211には、第1上流流路501が設けられている。第1上流流路501は、接続部214の頂面に開口する。第1上流流路501は、後述する第2上流流路502の位置に応じて、Z軸方向に延びる流路、Z軸方向に直交する方向、すなわちX軸方向及びY軸方向を含む面内に延びる流路等で構成されている。図6に示すように、第1上流流路部材211の接続部214の周囲には、貯留部730を位置決めするためのガイド壁215が設けられている。
図8に示すように、第2上流流路部材212は、第1上流流路部材211の接続部214とは反対面側に固定される。第2上流流路部材212は、第1上流流路501と通じる第2上流流路502を有する。第2上流流路502の下流側となる第3上流流路部材213側には、第2上流流路502よりも内径が広く拡幅された第1液体溜まり部502aが設けられている。
第3上流流路部材213は、第2上流流路部材212の第1上流流路部材211とは反対側に設けられている。第3上流流路部材213には、第3上流流路503が設けられている。第3上流流路503の第2上流流路502側の開口部分は、第1液体溜まり部502aに応じて拡幅された第2液体溜まり部503aとなっている。
第2液体溜まり部503aの開口部分、すなわち第1液体溜まり部502aと第2液体溜まり部503aとの間には、液体に含まれる気泡等の異物を除去するためのフィルター216が設けられている。これにより、第2上流流路502から供給された液体は、フィルター216を介して第3上流流路503に供給される。
フィルター216を構成するために、例えば、金網、樹脂性の網等の網目状体、多孔質体、微細な貫通孔を穿設した金属板を用いることができる。網目状体の具体的な例としては、金属メッシュフィルター、金属繊維、例えばSUSの細線をフェルト状にしたものがある。フィルター216として、圧縮焼結させた金属焼結フィルター、エレクトロフォーミング金属フィルター、電子線加工金属フィルター、レーザービーム加工金属フィルターなどを用いることができる。
フィルター216の性質として、バブルポイント圧力がばらつかないことが好ましい。そのため、フィルター216として、高精細な穴径を有するフィルターが適当である。バブルポイント圧力とは、フィルター開孔で形成されたメニスカスが壊れる圧力のことをいう。フィルター216の濾過粒度は、液体中の異物をノズル開口に到達させないようにするために、例えばノズル開口が円形の場合、ノズル開口の直径よりも小さいことが好ましい。
フィルター216として、ステンレスのメッシュフィルターを採用する場合、液体中の異物をノズル開口に到達させないようにするとよい。そのためには、ノズル開口が円形でその直径20μmである場合、濾過粒度10μmの綾畳織のメッシュフィルターを採用するとよい。この場合、表面張力28mN/mの液体で発生するバブルポイント圧力は、3~5kPaである。濾過粒度5μmの綾畳織のメッシュフィルターを採用した場合、表面張力28mN/mの液体で発生するバブルポイント圧力は、0~15kPaである。
第3上流流路503は、第2上流流路502とは反対側となる第2液体溜まり部503aよりも下流側で2つに分岐する。第3上流流路503は、第3上流流路部材213の下流流路部材220側の面に第1排出口504A及び第2排出口504Bとして開口している。以下、第1排出口504A及び第2排出口504Bを区別しない場合は排出口504と称する。
1つの接続部214に対応する上流流路500は、第1上流流路501、第2上流流路502及び第3上流流路503を有する。上流流路500は、下流流路部材220側に2つの排出口504である第1排出口504A及び第2排出口504Bとして開口する。言い換えると、2つの排出口504である第1排出口504A及び第2排出口504Bは、共通する流路と通じるように設けられている。
第3上流流路部材213の下流流路部材220側には、下流流路部材220側に向かって突出する第3突起部217が設けられている。第3突起部217は、第3上流流路503ごとに設けられている。第3突起部217の先端面には、排出口504が開口して設けられている。
上流流路500が設けられた第1上流流路部材211、第2上流流路部材212及び第3上流流路部材213は、例えば、接着剤、溶着等によって一体的に積層されている。なお、第1上流流路部材211、第2上流流路部材212及び第3上流流路部材213をネジ、クランプ等で固定することもできる。ただし、第1上流流路501から第3上流流路503に至るまでの接続部分から液体が漏出するのを抑制するためにも、接着剤、溶着等で接合することが好ましい。
本実施形態では、1つの上流流路部材210に4つの接続部214が設けられている。そのため、1つの上流流路部材210には4つの独立した上流流路500が設けられている。各上流流路500には、4つのヘッドユニット2のそれぞれに対応して液体が供給される。1つの上流流路500は2つに分岐し、後述する下流流路600と通じるヘッドユニット2の2つの導入口44のそれぞれに接続されている。
本実施形態では、上流流路500がフィルター216よりも下流、すなわち下流流路部材220側で2つに分岐した構成を例示したが、特にこれに限定されない。上流流路500は、フィルター216よりも下流側で3つ以上に分岐してもよい。複数の上流流路500のうち1つの上流流路500だけがフィルター216よりも下流で分岐しなくてもよい。
下流流路部材220は、上流流路部材210に接合される。下流流路部材220は、上流流路500と通じる下流流路600を有するホルダー部材の一例である。本実施形態に係る下流流路部材220は、第1部材の一例である第1下流流路部材240と、第2部材の一例である第2下流流路部材250とから構成されている。
下流流路部材220は、液体の流路となる下流流路600を有する。本実施形態の下流流路600は、形状の異なる2種の下流流路600A及び下流流路600Bで構成されている。
第1下流流路部材240は、ほぼ平板状に形成された部材である。第2下流流路部材250は、上流流路部材210側の面に凹部として第1収容部251、上流流路部材210とは反対側の面に凹部として第2収容部252が設けられた部材である。
第1収容部251は、第1下流流路部材240が収容される程度の大きさとされている。第2収容部252は、4つのヘッドユニット2が収容される程度の大きさとされている。本実施形態の第2収容部252は、4つのヘッドユニット2を収容可能である。
第1下流流路部材240には、上流流路部材210側の面に、第1突起部241が複数個形成されている。各第1突起部241は、上流流路部材210に設けられた第3突起部217のうち、第1排出口504Aが設けられた第3突起部217に対向して設けられている。本実施形態では、4つの第1突起部241が設けられている。
第1下流流路部材240には、Z軸方向に貫通し、第1突起部241の頂面となる上流流路部材210に対向する面に開口した第1流路601が設けられている。第3突起部217と第1突起部241とは、シール部材230を介して接合されている。第1排出口504Aと第1流路601とは、互いに通じている。
第1下流流路部材240には、Z軸方向に貫通した第2貫通孔242が複数個形成されている。各第2貫通孔242は、第2下流流路部材250に形成された第2突起部253が挿入される位置に形成されている。本実施形態では、4つの第2貫通孔242が設けられている。
第1下流流路部材240には、ヘッドユニット2に電気的に接続された配線基板121が挿入される第1挿通孔243が複数個形成されている。具体的には、各第1挿通孔243は、Z軸方向に貫通し、第2下流流路部材250の第2挿通孔255と、ヘッド基板300の第3挿通孔302とに通じるように形成されている。本実施形態では4つのヘッドユニット2に設けられた各配線基板121に対応して4つの第1挿通孔243が設けられている。第1下流流路部材240には、ヘッド基板300側に突出し、受け面を有する支持部245が設けられている。
第2下流流路部材250には、第1収容部251の底面に、第2突起部253が複数個形成されている。各第2突起部253は、上流流路部材210に設けられた第3突起部217のうち第2排出口504Bが設けられた第3突起部217に対向して設けられている。本実施形態では、4つの第2突起部253が設けられている。第2下流流路部材250には、Z軸方向に貫通し、第2突起部253の頂面と、第2収容部252の底面となるヘッドユニット2に対向した面とに開口した下流流路600Bが設けられている。第3突起部217と第2突起部253とは、シール部材230を介して接合されている。第2排出口504Bと下流流路600Bとは、互いに通じている。
第2下流流路部材250には、Z軸方向に貫通した第3流路603が複数個形成されている。各第3流路603は、第1収容部251及び第2収容部252の底面に開口している。本実施形態では、4つの第3流路603が設けられている。
第2下流流路部材250の第1収容部251の底面には、第3流路603に連続した溝部254が複数個形成されている。この溝部254は、第1収容部251に収容された第1下流流路部材240に封止されることにより、第2流路602を構成する。すなわち、第2流路602は、溝部254と第1下流流路部材240の第2下流流路部材250側の面とで形成された流路である。この第2流路602が第1部材と第2部材との間に設けられた流路に相当する。
第2下流流路部材250には、ヘッドユニット2に電気的に接続された配線基板121が挿入される第2挿通孔255が複数個形成されている。具体的には、各第2挿通孔255は、Z軸方向に貫通し、第1下流流路部材240の第1挿通孔243とヘッドユニット2の接続口43と通じるように形成されている。本実施形態では4つのヘッドユニット2に設けられた各配線基板121に対応して4つの第2挿通孔255が設けられている。
下流流路600Aは、上述した第1流路601、第2流路602及び第3流路603が通じることにより形成される。第2流路602は、第1下流流路部材240の一方面に形成された溝が第2下流流路部材250により封止されることによって形成されている。このような第1下流流路部材240と第2下流流路部材250とを接合することにより、第2流路602を下流流路部材220内に容易に形成することができる。
第2流路602は、水平方向に延びる流路の一例である。第2流路602が水平方向に延びるとは、第2流路602の延びる方向に、X軸方向又はY軸方向の成分、すなわちX軸方向又はY軸方向のベクトルが含まれていることをいう。第2流路602が水平方向に延びることにより、Z軸方向における液滴吐出部1の高さを小型化できる。仮に、第2流路602が水平方向に対して傾いていると、液滴吐出部1の高さ寸法が大きくなる。
第2流路602の延びる方向とは、第2流路602内の液体が流れる方向のことである。したがって、第2流路602は、水平方向に設けられているものも、水平方向に延びる水平面に交差して設けられているものも含む。本実施形態では、第1流路601と第3流路603をZ軸方向に並べ、第2流路602を水平方向に並べた。第1流路601と第3流路603とは、水平方向に並んでもよい。下流流路600Aは、これに限定されず、第1流路601、第2流路602、第3流路603以外の流路が存在してもよい。下流流路600Aは、第1流路601、第2流路602及び第3流路603から構成されず、一本の流路から構成されていてもよい。
下流流路600Bは、上述したように、第2下流流路部材250をZ軸方向に貫通した貫通孔として形成されている。もちろん、下流流路600Bはこのような態様に限定されず、例えば、水平方向に延びるように形成されてもよいし、下流流路600Aのように複数の流路から形成されてもよい。
下流流路600A及び下流流路600Bは1つのヘッドユニット2に対して1つずつ形成されている。すなわち、下流流路部材220には、下流流路600Aと下流流路600Bの1組が計4つ設けられている。
下流流路600Aの両端の開口のうち、第1排出口504Aと通じる第1流路601の開口を第1流入口610とし、第2収容部252に開口する第3流路603の開口を第1流出口611とする。
下流流路600Bの両端の開口のうち、第2排出口504Bと通じる下流流路600Bの開口を第2流入口620とし、第2収容部252に開口する下流流路600Bの開口を第2流出口621とする。以降、下流流路600A及び下流流路600Bを区別しない場合は、下流流路600と称する。
ホルダー部材である下流流路部材220は、ヘッドユニット2を下方の側で保持する。具体的には、下流流路部材220の第2収容部252に、複数のヘッドユニット2が収容されている。本実施形態では、下流流路部材220の第2収容部252に4つのヘッドユニット2が収容されている。
ヘッドユニット2には導入口44が2つずつ設けられている。下流流路600A及び下流流路600Bの第1流出口611及び第2流出口621は、各導入口44の開口する位置に合わせて下流流路部材220に設けられている。
ヘッドユニット2の各導入口44は、第2収容部252の底面部に開口した下流流路600の第1流出口611及び第2流出口621に通じるように位置合わせされている。ヘッドユニット2は、各導入口44の周囲に設けられた接着剤227により第2収容部252に固定されている。このようにヘッドユニット2が第2収容部252に固定されることにより、下流流路600の第1流出口611及び第2流出口621と導入口44とが通じ、ヘッドユニット2に液体が供給可能となる。
下流流路部材220は、ヘッド基板300が上方の側で載置される。具体的には、下流流路部材220の上流流路部材210側の面には、ヘッド基板300が載置されている。ヘッド基板300は、配線基板121が接続され、該配線基板121を介して液滴吐出部1の吐出動作等を制御する回路又は抵抗などの電装部品が実装された部材である。
図6に示すように、ヘッド基板300の上流流路部材210側の面には、配線基板121の第2端子列123が電気的に接続される電極端子である第1端子311が複数個並べられた第1端子列310が形成されている。本実施形態では、この第1端子列310が、配線基板121に電気的に接続される実装領域の一例となる。
ヘッド基板300には、ヘッドユニット2に電気的に接続された配線基板121が挿入される第3挿通孔302が複数個形成されている。具体的には、各第3挿通孔302は、Z軸方向に貫通し、第1下流流路部材240の第1挿通孔243と通じるように形成されている。本実施形態では4つのヘッドユニット2に設けられた各配線基板121に対応して4つの第3挿通孔302が設けられている。
ヘッド基板300には、Z軸方向に貫通した第3貫通孔301が設けられている。第3貫通孔301は、第1下流流路部材240の第1突起部241及び第2下流流路部材250の第2突起部253が挿入される孔である。本実施形態では、合計8つの第3貫通孔301が第1突起部241及び第2突起部253に対向するように設けられている。
ヘッド基板300に形成する第3貫通孔301の形状は上述したような態様に限定されない。例えば、第1突起部241及び第2突起部253が挿入される共通の貫通孔を挿通孔としてもよい。すなわち、ヘッド基板300は、下流流路部材220の下流流路600と、上流流路部材210の上流流路500とを接続する際の妨げとならないように挿通孔、切り欠き等が形成されていればよい。
図8、図9及び図10に示すように、ヘッド基板300と上流流路部材210との間には、シール部材230が設けられている。シール部材230を構成するために、液滴吐出部1に用いられるインク等の液体に対して耐液体性を有し、且つ弾性変形可能な弾性材料、例えばゴム、エラストマー等を用いることができる。
シール部材230は、Z軸方向に貫通した連通路232及び下流流路部材220側に突出した第4突起部231が形成された板状の部材である。本実施形態では、連通路232及び第4突起部231は、各上流流路500及び下流流路600に対応して8つ形成されている。
シール部材230の上流流路部材210側には、第3突起部217が挿入される環状の第1凹部233が設けられている。第1凹部233は、第4突起部231に対向する位置に設けられている。
第4突起部231は、下流流路部材220側に突出し、下流流路部材220の第1突起部241及び第2突起部253に対向する位置に設けられている。第4突起部231の頂面となる下流流路部材220に対向する面には、第1突起部241及び第2突起部253が挿入される第2凹部234が設けられている。
連通路232は、シール部材230をZ軸方向に貫通し、一端が第1凹部233に開口し、他端が第2凹部234に開口するように構成されている。第1凹部233に挿入された第3突起部217の先端面と、第2凹部234に挿入された第1突起部241及び第2突起部253の先端面との間で、第4突起部231がZ軸方向に所定の圧力が印加された状態で保持されている。したがって、上流流路500と下流流路600とは、密封された状態で連通路232を介して繋がっている。
図8に示すように、下流流路部材220の第2収容部252側となる下側には、カバーヘッド400が取り付けられている。カバーヘッド400は、ヘッドユニット2が固定され、下流流路部材220に固定される部材である。カバーヘッド400には、ノズル21を露出する第2露出開口部401が設けられている。本実施形態では、第2露出開口部401は、ノズルプレート20を露出する大きさ、つまり、コンプライアンス基板45の第1露出開口部45aと略同じ開口を有する。
カバーヘッド400は、コンプライアンス基板45の連通板15とは反対面側に接合されている。コンプライアンス部49の流路である共通液室100とは反対側の空間を封止する。このようにコンプライアンス部49をカバーヘッド400で覆うことにより、コンプライアンス部49が媒体STに接触することによって損傷するおそれを低減できる。コンプライアンス部49に液体が付着することを抑制する。カバーヘッド400の表面に付着した液体は、例えばワイパーブレード等で払拭できる。これにより、媒体STをカバーヘッド400に付着した液体によって汚すことを抑制できる。特に図示していないが、カバーヘッド400とコンプライアンス部49との間の空間は、大気開放されている。カバーヘッド400は、ヘッドユニット2ごとに独立して設けられてもよい。
<液滴吐出装置の電気的構成について>
次に液滴吐出装置700の電気的構成について説明する。
図11に示すように、液滴吐出装置700は、液滴吐出装置700の構成要素を統括的に制御する制御部830と、液滴吐出装置700内の状況を監視する検出器群150とを備える。検出器群150は、検出結果を制御部830に出力する。
制御部830は、インターフェイス部151と、CPU152と、メモリー153と、ユニット制御回路154と、駆動回路120とを有する。インターフェイス部151は、外部装置であるコンピューター160と液滴吐出装置700との間でデータを送受信する。駆動回路120は、アクチュエーター130を駆動させる駆動信号を生成する。
CPU152は演算処理装置である。メモリー153は、CPU152のプログラムを格納する領域または作業領域等を確保する記憶装置であり、RAM、EEPROM等の記憶素子を有する。CPU152は、メモリー153に格納されているプログラムに従い、ユニット制御回路154を介して、乾燥ユニット719、搬送ユニット713、メンテナンスユニット710及び印刷ユニット720を制御する。
検出器群150は、ノズル21からの液滴の吐出状態の異常を検出するように構成される検出部156を含む。本実施形態の検出部156は、圧力室12の残留振動を検出する回路である。検出部156は、アクチュエーター130を構成する圧電素子を含んでもよい。検出器群150は、検出部156の他に、例えば、キャリッジ723の移動状況を検出するリニアエンコーダー、媒体STを検出する媒体検出センサーを含む。
制御部830は、ノズル21からの液滴の吐出状態の異常の原因を推測する。本実施形態の制御部830は、検出部156の検出結果に基づいて、後述するノズル検査を実行する。制御部830は、ノズル検査を実行することにより、ノズル21における吐出状態の異常の原因を推測する。
<ノズル検査について>
駆動回路120からの信号を受けてアクチュエーター130に電圧が印加されると、振動板50がたわみ変形する。これにより圧力室12内で圧力変動が生じ、その変動により、振動板50はしばらく振動する。この振動を残留振動といい、残留振動の状態から圧力室12及び圧力室12と通じるノズル21の状態を検出することを、ノズル検査という。
図12は、振動板50の残留振動を想定した単振動の計算モデルを示す図である。
駆動回路120がアクチュエーター130に駆動信号を印加すると、アクチュエーター130は、駆動信号の電圧に応じて伸縮する。振動板50は、アクチュエーター130の伸縮に応じて撓み、これにより圧力室12の容積は拡大した後、収縮する。このとき、圧力室12内に発生する圧力により、圧力室12を満たす液体の一部が、ノズル21から液滴として吐出される。
この一連の振動板50の動作の際に、液体が流れる流路の形状、液体の粘度等による流路抵抗rと、流路内の液体重量によるイナータンスmと、振動板50のコンプライアンスCとによって決定される固有振動周波数で、振動板50が自由振動する。この振動板50の自由振動が残留振動である。
この振動板50の残留振動の計算モデルは、圧力Pと、上述のイナータンスm、コンプライアンスCおよび流路抵抗rとで表せる。図12の回路に圧力Pを与えた時のステップ応答を体積速度uについて計算すると、次式が得られる。
図13は、液体の増粘と残留振動波形の関係の説明図である。図13の横軸は時間を示し、縦軸は残留振動の大きさを示す。例えばノズル21付近の液体が乾燥した場合には、液体の粘性が増加、すなわち増粘する。液体が増粘すると、流路抵抗rが増加するため、振動周期、残留振動の減衰が大きくなる。
図14は、気泡混入と残留振動波形の関係の説明図である。図14の横軸は時間を示し、縦軸は残留振動の大きさを示す。例えば、気泡が液体の流路又はノズル21の先端に混入した場合には、ノズル21の状態が正常時に比べて、気泡が混入した分だけ、液体重量、すなわちイナータンスmが減少する。(2)式よりmが減少すると角速度ωが大きくなるため、振動周期が短くなる。すなわち、振動周波数が高くなる。
その他、ノズル21の開口付近に紙粉などの異物が固着すると、振動板50から見て圧力室12内及び染み出し分の液体が正常時よりも増えることにより、イナータンスmが増加すると考えられる。また、ノズル21の出口付近に付着した紙粉の繊維によって流路抵抗rが増大すると考えられる。したがって、ノズル21の開口付近に紙粉が付着した場合には、正常吐出時に比べて周波数が低く、液体の増粘の場合よりは、残留振動の周波数が高くなる。
液体の増粘、気泡の混入又は異物の固着などが生じると、ノズル21又は圧力室12内の状態が正常でなくなるため、典型的にはノズル21から液体が吐出されなくなる。このため、媒体STに印刷した画像にドット抜けが生じる。ノズル21から液滴が吐出されたとしても、液滴の量が少量であったり、その液滴の飛行方向がずれて目的の位置に着弾しなかったりする場合もある。このような液滴の吐出状態の異常が発生したノズル21のことを、異常ノズルという。
上述したように、異常ノズルと通じる圧力室12の残留振動は、正常なノズル21と通じる圧力室12の残留振動とは異なる。そこで、検出部156は、圧力室12の振動波形を検出することによって圧力室12内の状態を検出する。検出部156は、圧力室12の振動波形を検出することによって、ノズル21からの液滴の吐出状態の異常を検出する。
制御部830は、検出部156が検出する振動波形に基づいて、ノズル21において吐出状態の異常が発生しているか否かを推測する。すなわち、制御部830は、検出部156が検出する振動波形に基づいて、ノズル検査を実行する。制御部830は、検出部156が検出する振動波形に基づいて、ノズル21からの液滴の吐出状態の異常の原因を推測する。
メンテナンスユニット710は、ノズル検査の結果に基づいて、吐出状態の異常を解消するためのメンテナンスを実行してもよい。
<メンテナンスユニットの構成について>
次に、メンテナンスユニット710について説明する。
図15に示すように、非印刷領域RAは、液体受容機構751が設けられた受容領域FAと、ワイピング機構750が設けられた払拭領域WAと、キャップ機構752が設けられたメンテナンス領域MAとを含む。非印刷領域RAの中で、受容領域FAは最も印刷領域PAに近い位置に配置され、メンテナンス領域MAは印刷領域PAから最も離れた位置に配置される。
ワイピング機構750は、液滴吐出部1を払拭する払拭部材750aと、ワイピングモーター753とを有する。本実施形態の払拭部材750aは、可動式であり、ワイピングモーター753の動力によって移動することにより液滴吐出部1を払拭する。このような払拭によるメンテナンスをワイピングという。
ワイピング機構750は、Y軸方向に延びる一対のレール758と、レール758に支持される可動式のケース759とを有する。ケース759には、ワイピングモーター753の動力を伝達する図示しない動力伝達機構が設けられる。動力伝達機構は、例えばラックアンドピニオン機構により伝達される。ケース759は、ワイピングモーター753の動力によりレール758上を往復移動する。
ケース759は、Y軸方向に所定の間隔で並ぶ、繰出軸760、押圧ローラー765及び巻取軸761を、回転可能に支持する。ケース759は、押圧ローラー765の上方に開口を有する。
繰出軸760は、未使用の布シート762が円筒状に巻かれた繰出ロール763を支持する。巻取軸761は、使用済みの布シート762が形成する巻取ロール764を支持する。押圧ローラー765は、繰出ロール763と巻取ロール764の間の布シート762を押し上げ、ケース759の開口から突出させる。
ケース759は、ワイピングモーター753の正転により図15に示す退避位置からY軸方向に移動し、払拭位置に至る。その後、ケース759は、ワイピングモーター753の逆転により、払拭位置から退避位置に移動する。ケース759が退避位置から払拭位置に移動する過程で、払拭部材750aは液滴吐出部1を払拭する。ケース759が払拭位置から退避位置に移動する過程で、払拭部材750aは液滴吐出部1を払拭してもよい。
動力伝達機構は、ケース759の退避位置から払拭位置への移動が終わったときに、ワイピングモーター753の駆動力の出力先を巻取軸761に切り換え、ワイピングモーター753が逆転駆動するときの動力によって、ケース759の払拭位置から退避位置への移動と布シート762の巻き取りとを行ってもよい。ワイピング機構750は、ケース759が1回往復移動することで1つの液滴吐出部1を払拭し、ケース759が2回往復移動することで2つの液滴吐出部1の払拭を完了する。
液体受容機構751は、液滴吐出部1が吐出した液滴を受容する液体受容部751aと、フラッシングモーター754とを有する。フラッシングとは、ノズル21の目詰まりを予防及び解消する目的で、液滴吐出部1が液体を廃液として吐出するメンテナンスをいう。本実施形態の液体受容部751aは、ベルト768で構成される。液体受容機構751は、ベルト768のフラッシングによる汚れ量が規定量を超えたとみなされる時期に、フラッシングモーター754の動力によりベルト768を移動させる。
液体受容機構751は、駆動ローラー766と、従動ローラー767と、駆動ローラー766及び従動ローラー767に巻き掛けられた環状のベルト768とを有する。ベルト768の外周面は、液体を受容する液体受容面769となる。駆動ローラー766及び従動ローラー767は、X軸方向が軸方向とされ、Y軸方向において互いに離れるように配置される。ベルト768は、一の液滴吐出部1が有する全てのノズル21が同時に吐出する廃液を受容可能な幅寸法を有する。
液体受容機構751は、ベルト768の下方に、液体受容面769に保湿用液体を供給可能な保湿用液体供給部、液体受容面769に付着した廃液等を保湿状態で掻き取る液体掻取り部とを有する。駆動ローラー766の回転によりベルト768が移動すると、液体受容面769が受容した廃液が液体掻取り部によってベルト768から掻き取られる。これにより、次に液滴を受容する液体受容面769が、廃液の付いていない部分に更新される。
キャップ機構752は、2つのキャップ部752aと、キャッピングモーター755とを有する。2つのキャップ部752aは、キャッピングモーター755の動力により、接触位置と退避位置との間で移動する。接触位置は、キャップ部752aが液滴吐出部1に接触する位置である。退避位置は、キャップ部752aが液滴吐出部1から離れる位置である。
液滴吐出部1A及び液滴吐出部1Bが図15に2点鎖線で示すようにホームポジションHPで停止している場合に、キャップ部752aは、退避位置から接触位置に移動すると、ノズル21の開口を囲うように、それぞれ液滴吐出部1A及び液滴吐出部1Bに接触する。このように、キャップ部752aがノズル21の開口を囲うメンテナンスをキャッピングという。キャップ部752aが液滴吐出部1に接触した状態をキャッピング状態という。
1つのキャップ部752aは、4つの吸引用キャップ770を有する。各吸引用キャップ770は、液滴吐出部1に接触してノズル群を囲む空間を形成する。そのため、本実施形態の吸引用キャップ770は、2列のノズル列NLを囲む空間を形成する。吸引用キャップ770は、チューブ772を介して吸引ポンプ773に接続される。キャッピング時に吸引ポンプ773を駆動すると、吸引用キャップ770内に負圧が生じ、液滴吐出部1内が吸引される。この吸引により、液滴吐出部1内の増粘した液体及び気泡が排出される。このように、吸引によりノズル21から液体を排出するメンテナンスを吸引クリーニングという。
吸引クリーニングを実行すると、ノズル21から排出された液体が液滴吐出部1に付着することがある。そのため、吸引クリーニング後には、ワイピングを実行することにより、液滴吐出部1に付着した液滴等を除去してもよい。このとき、ワイピングに伴って、液滴吐出部1に付着していた異物及び気泡がノズル21内に押し込まれたり、ノズル21の気液界面に形成されるメニスカスが破壊されたりして、吐出不良を生じるおそれがある。そのため、ワイピング後には、フラッシングを実行することにより、混入した異物を排出したり、メニスカスを整えたりしてもよい。
図16に示すように、キャップ装置800は、保湿用のキャップ部801及びキャップ部802と、保湿液供給部804とを有する。キャップ部801及びキャップ部802は、液滴吐出部1A及び液滴吐出部1Bが非印刷領域LAで停止している場合に、ノズル21の開口を囲うように液滴吐出部1A及び液滴吐出部1Bにそれぞれ接触する。このように、キャップ部801及びキャップ部802がノズル21の開口を囲うメンテナンスを、保湿キャッピングという。保湿キャッピングは、キャッピングの一種である。保湿キャッピングにより、ノズル21の乾燥が抑制される。キャップ部801及びキャップ部802は、保湿用のキャップ803を4つずつ有する。4つのキャップ803は、液滴吐出部1の4つのノズル群に対応して、X軸方向に並ぶ。
キャップ装置800は、キャップ803と保湿液貯留部805とを接続する接続流路808を有する。図16において、接続流路808は、キャップ部801及びキャップ部802にそれぞれ1本ずつ図示しているが、実際には、キャップ803の個数に対応するように4本ずつ設けられる。そのため、合計8本の接続流路808が保湿液貯留部805から延びている。
キャップ装置800は、キャップ部801、キャップ部802及び保湿液貯留部805を保持する保持体809と、保持体809を上下に移動させる保湿用モーター811とを有する。保湿用モーター811により保持体809が上下に移動すると、キャップ803及び保湿液貯留部805がともに上下に移動する。これにより、キャップ803は、液滴吐出部1に接触する接触位置と、液滴吐出部1から離れる退避位置とに移動する。
図17に示すように、キャップ803は、接触位置に位置することにより、複数のノズル21が開口する空間CKを形成する。すなわち、キャップ803は、複数のノズル21が開口する空間CKを形成するキャッピング状態と、液滴吐出部1から離れる非キャッピング状態と、をとり得るように構成される。キャップ803は、接触位置に位置する場合にキャッピング状態となり、退避位置に位置する場合に非キャッピング状態となる。
保湿液供給部804は、保湿液を貯留する保湿液貯留部805と、保湿液貯留部805よりも上方に配置される保湿液収容部806と、保湿液貯留部805と保湿液収容部806とを接続する供給流路807とを有する。供給流路807は、保湿液収容部806から保湿液貯留部805に向けて保湿液を供給するための流路である。供給流路807は、その上流端が保湿液収容部806に接続され、その下流端が保湿液貯留部805内に収容されるように延びる。
保湿液貯留部805の上部には、供給流路807を通すための孔813が設けられる。供給流路807の途中には、保湿液収容部806内の保湿液を保湿液貯留部805に向けて送出するための保湿液ポンプ812が配置される。保湿液ポンプ812は、液滴吐出装置700の電源が投入されている間、一定の圧力で保湿液の送出を継続する。
保湿液供給部804は、保湿液貯留部805と保湿液収容部806と供給流路807とをそれぞれ別体に形成することにより、保湿液収容部806を交換できるように構成される。この場合、保湿液収容部806を交換することによって、保湿液を補充することができる。保湿液供給部804は、保湿液貯留部805と保湿液収容部806と供給流路807とを一体的に形成することにより構成されてもよい。この場合、保湿液収容部806に保湿液を補充するための補充口を設けるとよい。
保湿液貯留部805内には、フロート815が収容される。フロート815は、保湿液に浮かぶ浮力体816と、浮力体816が先端に固定されたアーム817と、アーム817の基端を回動可能に保持する軸818と、浮力体816の上部に取り付けられる弁部819とを有する。浮力体816は、保湿液貯留部805内において、保湿液の液位の変化に伴って、軸818を中心に弧を描くように移動する。
保湿液貯留部805内における保湿液の液位が図17において1点鎖線で示す第1の位置h1に達すると、浮力体816の浮力によって弁部819が供給流路807の下流端841に押し付けられる。このとき、弁部819が供給流路807を閉じるため、保湿液収容部806からの保湿液の供給が停止される。保湿液貯留部805内における保湿液の液位が第1の位置h1より下がると、弁部819が供給流路807の下流端841から離れる。そのため、供給流路807が開く。このように、保湿液供給部804は、保湿液貯留部805に貯留される保湿液の液位が第1の位置h1に保たれるように、保湿液収容部806から保湿液を供給する。
保湿液貯留部805は、保湿液貯留部805内を大気と通じさせる連通部820を有する。連通部820は、保湿液貯留部805の上部に設けられる。連通部820は、蛇行するように延長された細長い穴で形成される。連通部820は、保湿液貯留部805内の蒸発した保湿液が外部に放出されることを抑制しつつ、保湿液貯留部805内を大気に開放する。
保湿液貯留部805は、貯留する保湿液をキャップ803に向けて供給するための供給口814を有する。接続流路808において、その上流端が供給口814に接続され、その下流端がキャップ803に接続される。保湿液貯留部805に貯留された保湿液は、水頭差によって、接続流路808を介してキャップ803内に供給される。
キャップ803は、保湿キャッピング時に、ノズル21を含む空間CKを形成する。キャップ803は、保湿キャッピング時にノズル21と対向するキャップ803の内底面822と、内底面822に開口する導入口821と、大気連通部823とを有する。接続流路808の下流端は、導入口821に接続する。大気連通部823は、キャップ803の内底面822に設けられ、保湿キャッピングにより形成される空間CKを大気に開放する。
接続流路808内の下流部分には、毛細管力を有する毛管部材824が配置される。本実施形態の毛管部材824は、細い紐状の部材で構成される。毛管部材824においては、その下端寄りの部分が接続流路808内に配置され、その上端寄りの部分がキャップ803の内底面822に沿って配置される。本実施形態の毛管部材824は、キャップ803の内底面822において、大気連通部823が設けられている側とは反対側に屈曲するように設けられる。毛管部材824は、キャップ803の内底面822において、大気連通部823が設けられている側に屈曲するように設けられてもよい。
毛管部材824は、例えば、数μm~数百μmの連続気泡を持つスポンジ状の部材である。毛管部材824を構成するために、例えば、EVA、ポリエチレンなどのポリオレフィンを採用できる。毛管部材824は、毛管部材824自身の毛細管力を利用し、毛管部材824内を経由させて保湿液をキャップ803に向けて供給する。毛管部材824を撥液性の高いものとした場合には、毛管部材824の表面と接続流路808の内面との隙間に発生する毛細管力を利用し、毛管部材824外を経由させて保湿液をキャップ803に向けて供給することも可能である。この場合、接続流路808内の空気は、毛管部材824内を経由してキャップ803側に排出される。こうした毛管部材824を接続流路808内に配置すると、保湿液をキャップ803に向けて導きやすくなるため、空間CK内の保湿効果が高くなる。
図18及び図19に示すように、キャップ803には、毛管部材824を上方から押さえる板部材825を、内底面822に沿って配置してもよい。毛管部材824を板部材825で押さえると、毛管部材824をキャップ803の内底面822に沿わせることができる。
大気連通部823は、内底面822を貫通する貫通孔826と、貫通孔826に圧入されるピン827とにより構成してもよい。ピン827の外周には、螺旋状に延びる細い溝828を形成してもよい。溝828により、貫通孔826の内周面とピン827の外周面との間に螺旋状の隙間が形成される。この隙間を介して、空間CKを大気と通じさせることができる。ピン827の内底面822に位置する先端は、板部材825によって押さえてもよい。ピン827の基端は、ワッシャー829で留めてもよい。大気連通部823は、保湿キャッピング時に、空間CK内で気化した保湿液が外部に出ることを螺旋状の隙間で抑制しつつ、キャップ803の空間CKを大気に開放する。
図17に示すように、保湿液貯留部805に貯留される保湿液は、接続流路808を通じて水頭差によりキャップ803に向けて供給される。そのため、接続流路808には、保湿液貯留部805内の保湿液の液位と同じ高さまで保湿液が満たされる。すなわち、接続流路808には、第1の位置h1にまで保湿液が流れ込む。第1の位置h1は、接続流路808内において、毛管部材824の下端寄りの部分が流入した保湿液に浸かるように設定されてもよい。
第1の位置h1は、キャップ803の内底面822よりも低い位置に設定してもよい。こうすると、空間CKは、第1の位置h1より高い位置に形成される。接続流路808において第1の位置h1まで流入した保湿液が気化し、気化した保湿液がキャップ803の空間CK内に充満することにより、ノズル21の乾燥が抑制される。気化により保湿液の液位が下がった場合には、保湿液供給部804が保湿液を供給するため、空間CK内の保湿効果が維持される。
キャップ装置800で使用される保湿液は、液滴吐出部1が使用する液体の主溶媒と同じにすることが好ましい。例えば、液滴吐出部1が用いる液体が水系レジンインクである場合、その溶媒が水であるため、保湿液として純水を使用するとよい。液滴吐出部1が用いる液体の溶媒が溶剤である場合は、保湿液としてその液体と同じ溶剤を使用することが好ましい。保湿液として、純水に防腐剤を含有させた液体を用いてもよい。
保湿液に含有させる防腐剤は、液滴吐出部1が用いる液体に含有される防腐剤と同じであることが好ましい。保湿液に含有させる防腐剤は、例えば、芳香族ハロゲン化合物、メチレンジチオシアナート、含ハロゲン窒素硫黄化合物、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。芳香族ハロゲン化合物とは、例えば、PreventolCMKである。1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンとは、例えば、PROXELGXLである。防腐剤として、泡立ち難さの観点からPROXELを採用する場合には、保湿液に対する含有量を0.05質量パーセント以下にすることが好ましい。
<キャッピング状態において発生する吐出状態の異常について>
通常、キャップ803がキャッピング状態となると、複数のノズル21が開口する空間CKが形成されることにより、ノズル21内の液体の増粘が抑制される。しかし、何らかの要因によりキャップ803の機能を損なうと、キャップ803がキャッピング状態となったとしても、ノズル21内の液体の増粘を抑制できないことがある。そのため、キャップ803が正常に機能していない場合、キャッピング状態においてノズル21からの液滴の吐出状態に異常が発生することがある。
上述したように、吐出状態の異常がキャッピング状態において発生した場合、吐出状態の異常が発生した原因として、キャップ803の機能不全が疑われる。そのため、制御部830は、キャッピング状態において吐出状態の異常が発生した場合に、吐出状態の異常の原因がキャップ803の機能不全と推測する。
キャップ803の機能不全は、例えば、液体によりキャップ803が汚染されることによって発生することがある。液滴吐出部1が用いる液体がキャップ803内に付着すると、この液体によりキャップ803が汚染される。この状態で、キャップ803がキャッピング状態となると、キャップ803内に付着した液体によって、ノズル21内の液体の増粘が促進されることがある。
例えば、液滴吐出部1が用いる液体が保湿剤としてグリセリンを含む場合、キャップ803内にその液体が付着していると、その液体に含まれるグリセリンがノズル21内の水分を吸収することがある。これにより、キャッピング状態において、ノズル21内の液体の増粘が促進することがある。
キャップ803の機能不全は、キャップ803が正常なキャッピング状態とならない場合を含む。キャップ803が正常なキャッピング状態とならない場合、複数のノズル21が開口する空間CKが適切に形成されない。例えば、キャップ803の先端に傷が付いていたり、異物や増粘した液体が付着していると、キャッピング状態においてキャップ803が液滴吐出部1に密着しないことがある。この場合、キャップ803内の空間CKは、キャップ803外の大気と通じた空間となる。そのため、キャップ803が正常なキャッピング状態とならない場合、ノズル21内の液体の増粘を抑制できないことがある。
本実施形態においては、例えば、大気連通部823が破損している場合にも、キャップ803が正常なキャッピング状態とならないことがある。大気連通部823が破損していると、空間CK内で気化した保湿液が外部に出ることを適切に抑制できず、キャップ803内の空間CKが適切に保湿されないことがある。この場合にも、ノズル21内の液体の増粘を抑制できないことがある。本実施形態においては、キャップ803内への保湿液の供給が止まった場合にも、ノズル21内の液体の増粘を抑制できないことがある。
次に、図20を参照して液体の増粘とキャップ803の機能不全との関係について説明する。
図20の縦軸は、液体が増粘することによって吐出状態の異常を発生した異常ノズルの数である異常ノズル数Qを示す。図20の横軸は、キャップ803がキャッピング状態となってから経過した時間である経過時間Tを示す。図20に示すグラフL1、グラフL2及びグラフL3は、キャッピング状態において、液体の増粘に起因する異常ノズルの数の時間変化を示している。
グラフL1は、キャップ803の機能不全が発生していない場合のグラフである。グラフL2及びグラフL3は、キャップ803の機能不全が発生している場合のグラフである。グラフL2は、液滴吐出部1が用いる液体によりキャップ803が汚染されている場合のグラフである。グラフL3は、キャップ803が正常なキャッピング状態となっていない場合のグラフである。なお、グラフL2において、キャップ803は正常なキャッピング状態となっている。グラフL3において、キャップ803は液体によって汚染されていない。
グラフL1において、異常ノズル数Qは、経過時間Tが所定時間T0を経過するまでは大きく変動しない。これは、キャップ803により保湿されることによってノズル21内の液体の増粘が抑制されるためである。
グラフL1において、異常ノズル数Qは、経過時間Tが所定時間T0を経過すると急激に増加する。たとえキャッピング状態であってもノズル21内の液体の増粘を完全に防止することはできないため、経過時間Tが所定時間T0を経過すると異常ノズル数Qが急激に増加し始める。
グラフL2において、異常ノズル数Qは、キャッピング状態となった直後から急激に増加する。これは、キャップ803内に付着した液体によって、ノズル21内の液体の増粘が促進されるためである。
グラフL2において、異常ノズル数Qは、キャッピング状態となった直後から急激に増加した後、経過時間Tが所定時間T0を経過する前に急激に減少する。異常ノズル数Qが急激に増加した後に急激に減少するのは、増粘したノズル21内の液体が、例えば圧力室12内の液体、共通液室100内の液体によって再び湿潤した状態に戻るためである。
グラフL2において、異常ノズル数Qは、経過時間Tが所定時間T0を経過すると、グラフL1と同様に増加する。そのため、液体の増粘による異常ノズルがキャッピング状態において発生した場合に、経過時間Tが所定時間T0以上のときには、時間の経過によって異常ノズルが発生したと推測できる。
グラフL3において、異常ノズル数Qは、経過時間Tが所定時間T0を経過する前に急激に増加する。正常なキャッピング状態とならない場合、キャップ803内の空間CKが適切に保湿されない。そのため、経過時間Tが所定時間T0を経過する前でも、ノズル21内の液体の増粘が促進される。
グラフL2及びグラフL3においては、異常ノズル数Qが急激に増加し始めるタイミングが異なる。グラフL2の異常ノズル数Qは、グラフL3の異常ノズル数Qが急激に増加する前に、急激に増加した後に急激に減少するように変動している。すなわち、液体によりキャップ803が汚染されている場合の方が、キャップ803が正常なキャッピング状態となっていない場合よりも、異常ノズル数Qが増加し始めるタイミングが早い。そのため、キャッピング状態において吐出状態の異常が発生した場合、異常ノズル数Qが急激に増加するタイミングによって、異常ノズルが生じた原因を特定できる。
例えば、グラフL2において異常ノズル数Qが急激に増加し始めるタイミングと、グラフL3において異常ノズル数Qが急激に増加し始めるタイミングとの間に、設定時間T1を設定してもよい。こうすると、液体の増粘による異常ノズルがキャッピング状態において発生した場合に、経過時間Tが設定時間T1未満のときには、液体によるキャップ803の汚染によって異常ノズルが発生したと推測できる。液体の増粘による異常ノズルがキャッピング状態において発生した場合に、経過時間Tが設定時間T1以上のときには、キャップ803が正常なキャッピング状態とならないために異常ノズルが発生したと推測できる。
<キャッピング状態において吐出状態の異常が発生した場合の動作について>
制御部830は、吐出状態の異常の原因がキャップ803の機能不全と推測した場合に、キャップ803の機能不全に対応する表示を報知部703に表示させる。こうすると、キャップ803の機能不全に対応する表示に基づいて、キャップ803の機能不全を解消するために適切な対応をとることができる。そのため、液体の増粘に対して適切なメンテナンスを実行できる。このとき、キャップ803の機能不全に対応する表示を、液滴吐出装置700と接続されるコンピューター160などの外部端末に表示させてもよい。この場合、液滴吐出装置700と接続される外部端末が、キャップ803の機能不全に対応する表示を表示する報知部として機能する。
制御部830は、吐出状態の異常の原因が液体によるキャップ803の汚染と推測できる場合、例えば、キャップ803の清掃を促す表示を報知部703に表示させてもよい。キャップ803が清掃されることにより、液体の汚染によるキャップ803の機能不全を解消できる。
制御部830は、吐出状態の異常の原因がキャップ803の清掃では回復しないキャップ803の機能不全と推測できる場合、例えば、キャップ803の交換を促す表示を報知部703に表示させてもよい。キャップ803が交換されることにより、キャップ803の機能不全を解消できる。キャップ803の清掃では回復しないキャップ803の機能不全とは、例えば、キャップ803が正常なキャッピング状態にならない場合である。
制御部830は、液体の増粘によって異常ノズルが生じた場合、ノズル21の吐出状態を回復するためにフラッシング又は吸引クリーニングなどのメンテナンスを実行する。キャップ803の機能不全が発生している場合、液体の増粘に起因する異常ノズルの発生する頻度が高くなる。そのため、吐出状態の異常がキャッピング状態において発生した場合には、その原因がキャップ803の機能不全であると推測し、キャップ803の機能不全に対応する表示を報知部703に表示させることにより、メンテナンスの頻度を減らすことができる。これにより、液体の消費を低減できる。
制御部830は、吐出状態の異常がキャッピング状態において発生した場合に、キャッピング状態での経過時間Tが設定時間T1未満のときには、吐出状態の異常の原因が液体によるキャップ803の汚染と推測してもよい。こうすると、液体によるキャップ803の汚染を解消するために適切な対応をとることができる。
制御部830は、吐出状態の異常の原因が液体によるキャップ803の汚染と推測した場合に、キャップ803の清掃を促す表示を報知部703に表示させてもよい。こうすると、例えばユーザーにキャップ803の清掃を促すことができる。これにより、液体によるキャップ803の汚染を解消できる。そのため、液体の増粘に対して適切なメンテナンスを実行できる。
制御部830は、吐出状態の異常がキャッピング状態において発生した場合に、キャッピング状態での経過時間Tが設定時間T1以上のときには、吐出状態の異常の原因がキャップ803の清掃では回復しないキャップ803の機能不全と推測してもよい。こうすると、清掃では回復しないキャップ803の機能不全を解消するために適切な対応をとることができる。
制御部830は、吐出状態の異常の原因がキャップ803の清掃では回復しないキャップ803の機能不全と推測した場合に、キャップ803の交換を促す表示を報知部703に表示させてもよい。こうすると、例えばユーザーにキャップ803の交換を促すことができる。これにより、キャップ803の清掃では回復しないキャップ803の機能不全を解消できる。そのため、液体の増粘に対して適切なメンテナンスを実行できる。
制御部830は、吐出状態の異常の原因がキャップ803の清掃では回復しないキャップ803の機能不全と推測した場合に、キャップ803の清掃を促す表示を報知部703に表示させ、その後、吐出状態の異常がキャッピング状態において発生した場合に、吐出状態の異常の原因がキャップ803の機能不全と推測し、キャップ803の交換を促す表示を報知部703に表示させてもよい。この場合、吐出状態の異常の原因がキャップ803の清掃では回復しないキャップ803の機能不全である場合でも、一度はキャップ803の清掃を実行させる。キャップ803が清掃されることによりキャップ803の機能不全が解消された場合には、そのキャップ803を継続して使用できる。これにより、キャップ803を交換する頻度を低減できる。
制御部830は、キャップ803がキャッピング状態から非キャッピング状態に切り替わったタイミングで検出部156により検出される吐出状態の異常に基づいて、吐出状態の異常の原因を推測してもよい。こうすると、吐出状態の異常がキャッピング状態において発生したか否かを適切に推測できる。
制御部830は、キャッピング状態において2つ以上のノズル21に液体の増粘に起因する吐出状態の異常が発生した場合に、吐出状態の異常の原因がキャップ803の機能不全と推測してもよい。ノズル21は複数設けられるため、キャップ803の機能不全が発生していなくとも、キャッピング状態において液体の増粘に起因する吐出状態の異常が一部のノズル21に発生することがある。そのため、キャッピング状態において液体の増粘に起因する吐出状態の異常が発生しているノズル21が1つだけの場合、吐出状態の異常の原因がキャップ803の機能不全ではない可能性が高い。このことから、キャッピング状態において2つ以上のノズル21に液体の増粘に起因する吐出状態の異常が発生した場合に、吐出状態の異常の原因がキャップ803の機能不全と推測することにより、キャップ803の機能不全を適切に推測できる。
<推測処理について>
次に、液滴吐出装置700をメンテナンスするメンテナンス方法の一例である推測処理について図21を参照しながら説明する。この推測処理は、キャップ803がキャッピング状態から非キャッピング状態に切り替わった直後に実行される。
図21に示すように、推測処理を実行する制御部830は、ステップS31において、ノズル検査を実行する。このとき、制御部830は、液体がノズル21から吐出されない程度に圧力室12を振動させてもよいし、液体がノズル21から吐出される程度に圧力室12を振動させてもよい。
制御部830は、ステップS32において、吐出状態の異常の有無を推測する。このとき、制御部830は、ステップS31において検出部156が検出した振動波形に基づいて、液体の増粘に起因する吐出状態の異常が発生したか否かを推測する。制御部830は、ステップS32において、吐出状態の異常がないと推測した場合、推測処理を終了する。制御部830は、ステップS32において、吐出状態の異常があると推測した場合、ステップS33に処理を移行する。
ステップS31の処理は、キャップ803がキャッピング状態から非キャッピング状態に切り替わった直後に実行される。そのため、制御部830は、ステップS32において吐出状態の異常があると推測した場合、その吐出状態の異常はキャッピング状態において発生したと推測する。
制御部830は、ステップS33において、吐出状態の異常が発生したノズル21が2つ以上か否かを推測する。このとき、制御部830は、ステップS31において検出部156が検出した振動波形に基づいて、液体の増粘に起因する吐出状態の異常が発生したノズル21が2つ以上か否かを推測する。制御部830は、ステップS33において、吐出状態の異常が発生したノズル21が1つの場合、キャップ803の機能不全が発生していないと推測し、推測処理を終了する。制御部830は、ステップS33において、吐出状態の異常が発生したノズル21が2つ以上の場合、キャップ803の機能不全が発生していると推測し、ステップS34に処理を移行する。
制御部830は、ステップS34において、経過時間Tが設定時間T1未満か否かを推測する。このとき、制御部830は、キャップ803がキャッピング状態になってから非キャッピング状態になるまでに経過した経過時間Tと、予め設定された設定時間T1とを比較する。本実施形態の制御部830は、キャップ803が非キャッピング状態からキャッピング状態に切り替わった際に、経過時間Tをリセットし、その計測をスタートする。
制御部830は、ステップS34において、経過時間Tが設定時間T1未満の場合に、吐出状態の異常の原因が液体によるキャップ803の汚染と推測し、ステップS35に処理を移行する。制御部830は、ステップS34において、経過時間Tが設定時間T1未満ではない場合、すなわち経過時間Tが設定時間T1以上の場合に、吐出状態の異常の原因がキャップ803の清掃では回復しないキャップ803の機能不全と推測し、ステップS36に処理を移行する。
制御部830は、ステップS35において、キャップ803の清掃をユーザーに促す。このとき、制御部830は、キャップ803の清掃を促す表示を報知部703に表示させる。制御部830は、キャップ803の清掃が完了すると、推測処理を終了する。
制御部830は、ステップS34において経過時間Tが設定時間T1以上の場合に、ステップS36において、キャップ803の交換をユーザーに促す。このとき、制御部830は、キャップ803の交換を促す表示を報知部703に表示させる。制御部830は、キャップ803の交換が完了すると、推測処理を終了する。
制御部830は、ステップS36において、キャップ803の清掃をユーザーに促してもよい。こうすると、キャップ803の清掃では回復しないキャップ803の機能不全と推測される場合でも、キャップ803の清掃をユーザーに実行させる。キャップ803の清掃後、次回の推測処理において吐出状態の異常が再び発生した場合、すなわちキャップ803を清掃してもキャップ803の機能不全が解消されないと見込まれる場合には、キャップ803の交換を促してもよい。こうすると、キャップ803を交換する頻度を低減できる。
推測処理は、キャッピング状態において実行してもよい。制御部830は、キャッピング状態においてノズル検査を実行することにより、吐出状態の異常がキャッピング状態において発生したか否かを推測してもよい。この場合、キャッピング状態においてノズル検査を定期的に実行することにより、液体の増粘の進行程度を把握できる。制御部830は、液体の増粘の進行程度に基づいて、吐出状態の異常の有無を推測してもよい。例えば、キャッピング状態において液体の増粘の進行程度が通常よりも速い場合には、キャップ803の機能不全が疑われる。
<保湿キャッピング時のノズル検査について>
保湿キャッピングは、不使用時にノズル21の乾燥を抑制するために行われるが、ノズル21の乾燥を完全に防止することはできない。キャップ803の先端にゴミなどの異物が付着していて、キャッピング時に液滴吐出部1に密着しなかった場合には、ノズル21が乾燥しやすくなる。
保湿キャッピングの時間が長くなると、液体の溶媒成分が蒸発することによって液体が増粘したり、顔料成分が沈降したりすることがある。そうすると、保湿キャッピング後の印刷で、吐出不良が生じるおそれがある。そこで、制御部830は、保湿キャッピング時に所定の間隔でノズル検査を実行してもよい。このノズル検査では、キャップ803がキャッピング状態のときに、検出部156が、圧力室12内の状態を検出する。保湿キャッピング時のノズル検査では、液体がノズル21から吐出されない程度に圧力室12を振動させて、その残留振動を検出してもよい。
保湿キャッピングが継続される間、一定の時間間隔でアクチュエーター130を駆動させ、その都度、検出部156が圧力室12の残留振動の駆動波形を検出してもよい。こうすると、液体の増粘の進行程度に応じて、適切な対応をとることができる。
制御部830は、キャッピング状態のときに時間間隔をおいて検出した圧力室12の駆動波形を比較することによって、圧力室12内の液体の増粘の進行程度を推測してもよい。増粘の進行程度は、例えば、正常な保湿キャッピングを一定時間行った場合の液体の粘度を基準値として、その基準値に対する比率、すなわち粘度比として算出できる。例えば、正常な保湿キャッピングを一定時間行った場合の液体の粘度は、粘度比1.0となる。
保湿キャッピング時に圧力室12内の状態が正常でない、すなわちキャッピング状態において吐出状態の異常が発生したことを検出部156が検出した場合、制御部830は、液滴吐出部1のメンテナンスを実行してもよい。この場合、制御部830は、液体の増粘の程度に応じて、液滴吐出部1のメンテナンスの種類を選択してもよい。
例えば、増粘の進行を推測した結果が、進行程度として設定される第1基準を超えている場合、液体をノズル21から排出させる液体排出により、液滴吐出部1をメンテナンスしてもよい。こうすると、圧力室12内の状態が正常でないことを検知して、状態が悪化する前に液滴吐出部1をメンテナンスすることによって、液滴吐出部1を良好な状態に維持できる。制御部830は、増粘の進行の程度を推測することによって、液体の増粘の程度に応じて、液滴吐出部1をメンテナンスできる。
第1基準は、圧力室12の状態が正常でないノズル21が存在するが、その程度は重度ではないものである。液体排出は、吐出不良の要因または不良の程度に応じて変更してもよい。例えば、軽度の不良であれば、アクチュエーター130の駆動によってノズル21から液滴を吐出するフラッシングを実行し、中度の不良であれば、吸引クリーニングを実行するようにしてもよい。
増粘の進行を推測した結果が、進行程度として設定される第1基準を超えない場合には、例えば、アクチュエーター130の駆動によって、液体がノズル21から吐出されない程度に圧力室12を振動させてもよい。このように、圧力室12を微小に振動させるメンテナンスを微振動という。微振動により液滴吐出部1をメンテナンスする場合、1回の微振動で、複数回アクチュエーター130を駆動させてもよい。ノズル21内で顔料成分が沈降している場合には、微振動により、沈降した顔料成分を攪拌できる。メンテナンスとして微振動を採用すると、液体を排出することなく、液滴吐出部1をメンテナンスできる。
増粘の進行を推測した結果が、第1基準よりも増粘が進んだ第2基準を超えている場合、制御部830は、キャップ803の状態が異常である、すなわちキャップ803の機能不全が発生していると推測してもよい。第2基準を超える異常状態は、圧力室12の状態が異常なノズル21が多数存在する場合、短時間に増粘が進行した場合などが該当する。
例えば、何らかの要因でキャップ803内への保湿液の供給が止まった場合には、それ以降、急激にノズル21の乾燥が進むことがある。液体が保湿剤としてグリセリンを含む場合、キャップ803内に液滴が落ちると、その液滴に含まれるグリセリンがノズル21内の水分を吸収して、ノズル21の乾燥を促進することがある。
このような異常がキャップ803で生じると、増粘が過度に進行し、通常のメンテナンスを繰り返しても回復が困難になる。このような場合には、例えば制御部830が報知部703に異常が発生した旨を表示するなどして、ユーザーに異常を報知してもよい。そうすると、ユーザーは、増粘が第2基準まで進んだことを把握して、キャップ803の清掃、保湿液の補給またはキャップ803の交換など、適切な対応を取ることができる。報知部703に異常の発生を表示するときには、考えられる要因または要因に応じた対応策を合わせて表示してもよい。対応策とは、例えば、キャップ803の清掃、保湿液の残量の確認又はキャップ803の点検などである。
保湿キャッピング時に制御部830が実行するノズル検査のための処理の例を、図22に示す。
図22に示すように、保湿キャッピングが開始されると、制御部830は、ステップS11でノズル検査の回数をリセットする。制御部830は、ステップS12でノズル検査を実行する。ノズル検査では、アクチュエーター130が駆動して、検出部156が圧力室12の残留振動の駆動波形を検出する。
制御部830は、ステップS13でノズル検査の検査回数Nに1を加算する。制御部830は、ステップS14で検査回数Nが規定の回数であるM以上になったか否かを推測する。ステップS14で検査回数NがM未満の場合、制御部830は、ステップS12に戻り、次のノズル検査を実行する。ステップS14で検査回数NがM以上になった場合、制御部830は、ステップS15に進む。
制御部830は、ステップS15で増粘の進行Vを推測する。制御部830は、ステップS16で増粘の進行Vが第1基準V1を超えたか否かを推測する。ステップS16で増粘の進行Vが第1基準V1を超えない場合、制御部830はステップS17に進む。制御部830は、ステップS17で簡易なメンテナンスとして微振動を行い、ステップS12に戻る。
ステップS16で増粘の進行Vが第1基準V1を超えた場合、制御部830はステップS18に進む。制御部830は、ステップS18で増粘の進行Vが第2基準V2を超えたか否かを推測する。ステップS18で増粘の進行Vが第2基準V2を超えない場合、制御部830はステップS19に進む。
制御部830は、ステップS19で液体の排出、例えば吸引クリーニングによるメンテナンスを行い、ステップS11に戻る。その後、制御部830はステップS11で検査回数をリセットし、ステップS12に進んで次のノズル検査を実行する。
ステップS18で増粘の進行Vが第2基準V2を超えた場合、制御部830はキャップ803の状態が異常であると推測し、ステップS20に進む。制御部830はステップS20でキャップ803の状態が異常である旨をユーザーに報知し、処理を終了する。キャップ803の異常が生じなかった場合、保湿キャッピングの終了に伴って、処理が終了する。
保湿キャッピング時に微振動を繰り返すと、ノズル21内の気液界面が振動することによって、かえってノズル21内の溶媒成分が蒸発することがある。気液界面の振動による蒸発は、特に、空間CKの湿度が低い場合に生じやすい。そこで、検出部156が検出を行った後、次の検出を行うまでの間に微振動を行うことにより、その間に微振動を行わないときよりも圧力室12内の液体の増粘が速く進行する場合には、その後の微振動を、アクチュエーター130の駆動エネルギーを小さくして行ってもよい。これにより、微振動による増粘の進行を抑制できる。
例えば、制御部830は、保湿キャッピングを開始後、一定の間隔でM回のノズル検査を、その間隔に微振動を行うことなく陰性対照として実施し、その間の増粘の進行の程度Vnを記憶しておく。その後、制御部830は、一定の間隔でM回のノズル検査を、その間隔に微振動を行いつつ陽性対照として実施し、その間の増粘の進行の程度Vyを記憶しておく。陽性対照のVyが、陰性対照のVnよりも有意に増粘の進行が速かった場合には、微振動により溶媒の蒸発が促進されたことが疑われる。そのため、この場合には、微振動の悪影響を低減するため、その後に微振動を行うときのアクチュエーター130の駆動エネルギーを小さくする。なお、Mは正の整数である。
微振動を行うときのアクチュエーター130の駆動エネルギーを小さくすることのバリエーションとしては、例えば、振動の振幅を小さくしてもよいし、1回の微振動での駆動回数を小さくしてもよいし、微振動を行う時間間隔を長くしてもよい。
微振動の悪影響が大きい場合、アクチュエーター130の駆動エネルギーを小さくしてもなお増粘が進行する場合には、その後の微振動を行わないようにしてもよい。これにより、微振動による増粘の進行を防止できる。この場合にも、ノズル検査のために圧力室12を振動させることにより、ノズル21内が攪拌される。
液滴吐出装置700では、保湿キャッピング時にノズル検査を実行するため、保湿キャッピングが長時間に及んだ場合にも、圧力室12内で生じた異常を検出し、適切に液滴吐出部1をメンテナンスできる。また、キャップ装置800に何らかの異常が発生して、メンテナンスにより回復できない程に増粘が進行した場合にも、それを検出してユーザーに報知できる。そのため、無駄なメンテナンスにより液体を消費することが避けられる。
このように、上記実施形態によれば、圧力室12内の状態に基づいて、ノズル21からの液滴の吐出を安定させるための対応をとることができる。これにより、キャッピング後の吐出不良を抑制して、液滴を良好に吐出できる状態を維持できる。
次に、上記実施形態における作用及び効果について説明する。
(1)制御部830は、吐出状態の異常の原因がキャップ803の機能不全と推測した場合に、キャップ803の機能不全に対応する表示を報知部703に表示させる。吐出状態の異常がキャッピング状態において発生した場合、吐出状態の異常の原因として、キャップ803の機能不全が疑われる。上記実施形態によれば、キャップ803の機能不全に対応する表示に基づいて、キャップ803の機能不全を解消するために適切な対応をとることができる。そのため、液体の増粘に対して適切なメンテナンスを実行できる。
(2)制御部830は、吐出状態の異常がキャッピング状態において発生した場合に、キャッピング状態での経過時間Tが設定時間T1未満のときには、吐出状態の異常の原因が液体によるキャップ803の汚染と推測する。キャッピング状態での経過時間Tが設定時間T1未満であるにもかかわらず、吐出状態の異常がキャッピング状態において発生した場合、キャップ803の機能不全として、液体によってキャップ803が汚染されていることが疑われる。液体によってキャップ803が汚染されていると、その液体がノズル21内の液体の溶媒を吸着することがある。これにより、ノズル21内の液体の増粘が促進される。そのため、上記実施形態によれば、液体によるキャップ803の汚染を解消するために適切な対応をとることができる。
(3)制御部830は、吐出状態の異常の原因が液体によるキャップ803の汚染と推測した場合に、キャップ803の清掃を促す表示を報知部703に表示させる。これによれば、液体によるキャップ803の汚染を解消できる。そのため、液体の増粘に対して適切なメンテナンスを実行できる。
(4)制御部830は、吐出状態の異常がキャッピング状態において発生した場合に、キャッピング状態での経過時間Tが設定時間T1以上のときには、吐出状態の異常の原因がキャップ803の清掃では回復しないキャップ803の機能不全と推測する。キャッピング状態での経過時間Tが設定時間以上であるときに、吐出状態の異常がキャッピング状態において発生した場合、キャップ803が正常なキャッピング状態となっていないことが疑われる。キャップ803が正常なキャッピング状態とならない場合、キャップ803を清掃してもキャップ803の機能が回復しないおそれがある。そのため、上記実施形態によれば、清掃では回復しないキャップ803の機能不全を解消するために適切な対応をとることができる。
(5)制御部830は、吐出状態の異常の原因がキャップ803の清掃では回復しないキャップ803の機能不全と推測した場合に、キャップ803の交換を促す表示を報知部703に表示させる。これによれば、キャップ803の清掃では回復しないキャップ803の機能不全を解消できる。そのため、液体の増粘に対して適切なメンテナンスを実行できる。
(6)制御部830は、吐出状態の異常の原因がキャップ803の清掃では回復しないキャップ803の機能不全と推測した場合に、キャップ803の清掃を促す表示を報知部703に表示させ、その後、吐出状態の異常がキャッピング状態において発生した場合に、吐出状態の異常の原因がキャップ803の機能不全と推測し、キャップ803の交換を促す表示を報知部703に表示させる。これによれば、吐出状態の異常の原因がキャップ803の清掃では回復しないキャップ803の機能不全である場合でも、一度はキャップ803の清掃を実行させる。キャップ803が清掃されることによりキャップ803の機能不全が解消された場合には、そのキャップ803を継続して使用できる。これにより、キャップ803を交換する頻度を低減できる。
(7)制御部830は、キャップ803がキャッピング状態から非キャッピング状態に切り替わったタイミングで検出部156により検出される吐出状態の異常に基づいて、吐出状態の異常の原因を推測する。これによれば、吐出状態の異常がキャッピング状態において発生したか否かを適切に推測できる。
(8)検出部156は、圧力室12の振動波形を検出することによって、ノズル21からの液滴の吐出状態の異常を検出する。これによれば、液滴を吐出するノズル21の吐出状態の異常を適切に検出できる。
(9)制御部830は、キャッピング状態において2つ以上のノズル21に液体の増粘に起因する吐出状態の異常が発生した場合に、吐出状態の異常の原因がキャップ803の機能不全と推測する。これによれば、キャップ803の機能不全を適切に推測できる。
<キャップ装置の変更例>
液滴吐出装置700が備えるキャップ装置800は、図23に示すキャップ装置361に変更できる。
図23に示すように、キャップ装置361は、キャップホルダー362と、キャップホルダー362に保持されたキャップ体363とを有する。キャップ体363は、保湿用のキャップ803と、少なくとも1つのキャップ803を支持する支持部365とを有する。
キャップホルダー362は、複数のキャップ803を保持する。キャップ803は、エラストマーなどの弾性部材からなる環状の枠部367と、枠部367に対して嵌合された剛性部材368とを有する。
剛性部材368は、ポリプロピレン等の気体バリア性の高い硬質の合成樹脂によって構成してもよい。剛性部材368の材質としては、気体バリア性の高い硬質の材料であれば任意の材質を採用することができ、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、変性ポリフェニレンエーテル等を採用してもよい。
図24に示すように、剛性部材368は、外形が直方体状の本体部370と、本体部370から突出する円管状の突出部371とを有する。本体部370は、長手方向となるY軸方向及びZ軸方向に延びる側面である第1側面370bと第2側面370cとを有する。突出部371は、内部に中空部372を有する。
本体部370において突出部371が形成された面を下面とし、下面とは反対側の面を上面370aとする。上面370aは、剛性部材368が枠部367に嵌合された場合に、キャップ803の内底面となる。
本体部370の上面370aには、長手方向の中央位置に凹部374が形成されている。この凹部374の内底面において、短手方向に延びる凸条375と、平面視略矩形板状をなす笠部376とが本体部370と一体成形されている。凸条375と笠部376との境目には、環状凹部377が形成されている。
笠部376の両側面には、段差部378がそれぞれ形成されている。各段差部378における長手方向の両端は、下方に向けて直角に屈曲した後に斜め下方に広がるように傾斜している。
本体部370には、第1側面370bから短手方向に貫通する貫通孔380が形成されている。第1側面370bには、貫通孔380と環状凹部377と蛇行しながら結ぶ第1溝部381が形成されている。
第1溝部381は、Y軸方向に延びる第1長手溝部381a、第2長手溝部381b及び第3長手溝部381cと、Z軸方向に延びる第1上下溝部381d、第2上下溝部381e及び第3上下溝部381fとにより構成されている。第1長手溝部381a、第2長手溝部381b及び第3長手溝部381cは、Z軸方向において異なる位置に形成されている。第1上下溝部381d、第2上下溝部381e及び第3上下溝部381fは、Y軸方向及びZ軸方向において異なる位置に形成されている。
第1長手溝部381aは、貫通孔380と第1上下溝部381dの下端とを接続する。第2長手溝部381bは、第1上下溝部381dの上端と第2上下溝部381eの下端とを接続する。第3長手溝部381cは、第2上下溝部381eの上端と第3上下溝部381fの下端とを接続する。第3上下溝部381fの上端は、笠部376の下面と対向している。
図25に示すように、第2側面370cには、一端が貫通孔380に接続された第2溝部382と、第2溝部382の他端と中空部372とを接続する接続穴383とが形成されている。第2溝部382は、貫通孔380と接続穴383とを結ぶように蛇行している。
第2溝部382は、Y軸方向に延びる第4長手溝部382a及び第5長手溝部382bと、Z軸方向に延びる第4上下溝部382c、第5上下溝部382d及び第6上下溝部382eとにより構成されている。第4長手溝部382a及び第5長手溝部382bは、Z軸方向において異なる位置に形成されている。第4上下溝部382c、第5上下溝部382d及び第6上下溝部382eは、Y軸方向において異なる位置に形成されている。
第4上下溝部382cの下端は、貫通孔380に接続されている。第4長手溝部382aは、第4上下溝部382cの上端と第5上下溝部382dの上端とを接続している。第5長手溝部382bは、第5上下溝部382dの下端と第6上下溝部382eの上端とを接続している。第6上下溝部382eの下端は接続穴383に接続されている。
図26に示すように、剛性部材368を枠部367に装着した場合には、剛性部材368の第1側面370b及び第2側面370cが枠部367の内面と密着する。これにより、第1溝部381、第2溝部382、貫通孔380、接続穴383の開口が枠部367の内面によって覆われ、それぞれが通気路となる。剛性部材368を枠部367に装着することにより、本体部370と笠部376との隙間も通気路となる。これらの通気路と中空部372とにより、ノズル21が開口する空間CKを大気と通じさせる大気連通部384が構成される。
キャップ803が液滴吐出部1に接触すると、ノズル21が開口する空間CKが形成される。キャップ体363は、大気連通部384に液体が付着して乾燥したときなどに、ノズル21が開口する空間CKを大気と通じさせた状態で空間CKを密閉する機能が低下することがある消耗品である。
図27に示すように、キャップ装置361は、キャップホルダー362を昇降させるカム機構386を有する。キャップ体363とキャップホルダー362は、カム機構386の動作により一体的に昇降する。キャップ装置361は、上昇したキャップホルダー362に接触して移動を規制する規制部387を有する。
カム機構386は、図示しないモーターの回転駆動によって回転する回転軸388と、回転軸388に基端部が固定された略三角形状のカムフレーム389とを有する。カムフレーム389の先端部には、カムローラー390の軸部391が回動自在に軸支されている。カムローラー390の軸部391は、カムフレーム389を貫通してカムフレーム389の両側面から突出する。回転軸388の回転に伴ってカムフレーム389が回転軸388を中心として回転すると、カムフレーム389の先端部に軸支されたカムローラー390が回転軸388を中心として周回運動する。
キャップホルダー362には、カム機構386と対応する位置に、カム溝393が形成されている。このカム溝393は、下方に向かって開口する開口部394を有し、開口部394からカム機構386が挿入されることにより、カム機構386によってキャップホルダー362が支持されている。
カム溝393は、開口部394の上方に位置する平面部395と、平面部395から斜め下に延びる第1斜面部396とを有する。カム溝393は、軸部391の両端と接触可能な位置に、凹面部397と、凹面部397から斜め下に延びる第2斜面部398とを有する。第1斜面部396と第2斜面部398は、実質的に平行をなす。
次に、キャップ体363の機能不全を検出する処理について説明する。なお、キャップ体363の機能不全検出処理は、定期的若しくはユーザーからの指示に基づいて実行される。
まず、制御部830は、吸引クリーニングを実行した後、検出部156を用いて、キャップ803によるキャッピングを実行する前の圧力室12の振動波形を検出する。次いで、制御部830は、キャップ803を上昇移動させて、液滴吐出部1に接触させる。
続いて、制御部830は、キャップ803を下降させて、キャッピングを解除する。その後、制御部830は、検出部156を用いて、キャッピング後の圧力室12の振動波形を検出する。続いて、制御部830は、キャッピング前後の振動波形を比較し、ノズル21及び圧力室12に気泡が混入したか否かを推測する。制御部830は、ノズル21及び圧力室12内の気泡が増加していなかった場合には、キャップ803の機能不全検出処理を終了する。
一方、制御部830は、キャッピング前の検査で気泡が混入していた圧力室12の数に比べて、キャッピング後の検査で気泡が混入していた圧力室12の数が増加した場合には、大気連通部384が機能不全であると推測し、キャップ803の交換が必要な旨をユーザーに報知し、キャップ803の機能不全検出処理を終了する。ユーザーへの報知は、例えば、報知部703への情報の表示によって行うことができる。
次に、液滴吐出部1の交換要否推測方法について、図28のフローチャートを用いて説明する。本実施形態における液滴吐出装置700の制御部830は、メンテナンスユニット710が正常に機能していることを確認した上で、液滴吐出部1の交換要否を推測する。
図28に示すように、制御部830は、ステップS1として、メンテナンスによって圧力室12内の気泡が増加したか否かを推測する。このステップS1における処理をメンテナンスユニット正常判定工程とする。このとき、制御部830は、検出部156がメンテナンス前に検出した圧力室12の振動波形と、メンテナンス中及びメンテナンス後のうち少なくとも一方で検出した圧力室12の振動波形とを比較して、気泡が増加したかどうかを推測する。ステップS1において、制御部830は、既に述べたキャップ803の機能不全検出処理等を採用することができる。
制御部830は、ステップS1で気泡が増加したと推測した場合にはステップS2に進む。ステップS2で制御部830はメンテナンスユニット710が機能不全であると推測し、その旨をユーザーに報知する。このステップS2における処理を機能不全報知工程とする。ステップS2の後、制御部830は、制御を終了する。
制御部830は、ステップS1で気泡が増加していないと推測した場合、ステップS3に進む。制御部830は、ステップS3で、圧力室12内の状態が正常でないことが検出部156によって所定回数検出されたか否かを推測する。このステップS3における処理を圧力室異常判定工程とする。
制御部830は、ステップS3で圧力室12内の状態が正常であると推測した場合には、ステップS5に進む。制御部830は、ステップS3で圧力室12内の状態が正常でないことが所定回数未満検出されたと推測した場合にも、ステップS5に進む。ステップS5で制御部830は液滴吐出部1の交換が不要であると推測する。このステップS5における処理を交換不要判定工程とする。ステップS5における処理を終えると、制御を終了する。
制御部830は、ステップS3で圧力室12内の状態が正常でないことが所定回数検出されたと推測した場合にはステップS6に進む。ステップS6で制御部830は、液滴吐出部1の交換が必要であると推測する。ステップS6における処理を交換必要判定工程とする。ステップS6の後、制御部830は、ステップS7として、液滴吐出部1の交換が必要である旨を報知部703に表示するなどしてユーザーに報知する。ステップS7における処理を交換情報表示工程とする。ステップS7の後、制御部830は制御を終了する。
図29に示すように、キャリッジ723にRGBカメラ290を取り付けてもよい。RGBカメラ290は、媒体ST上に液滴の吐出によって形成されたカラー画像を、RGBの色分解により読み取ることによって、ノズル21から実際に液滴が吐出されたか否かを検出する。この場合、制御部830は、RGBカメラ290が検出したカラー画像の画質が所定の許容量を超えた場合には、液滴の吐出状態が正常でないと推測する。RGBカメラ290が検出したカラー画像の画質が所定の許容量を超えた場合とは、例えば、液滴の着弾位置が所定の領域に入っていないような場合である。
こうしたRGBカメラ290による液滴の吐出状態の検出及び推測は、例えばステップS3の後にステップS4として行うことができる。液滴の吐出状態が正常でない場合にはステップS6に進んで交換が必要と推測し、液滴の吐出状態が正常な場合にはステップS5に進んで交換不要と推測してもよい。
<液滴吐出装置の変更例>
液滴吐出装置700の変更例を図29に示す。
図29に示すように、変更例の液滴吐出装置700は、液滴吐出部1と、少なくとも1つの供給機構261とを備える。供給機構261は、液体供給源702に収容された液体を液滴吐出部1に供給可能に構成される。液体供給源702は、キャリッジ723に搭載されず、キャリッジ723から離れた位置に配置される。キャリッジ723には、液滴の吐出状態を検出するためのRGBカメラ290を取り付けてもよい。
液体供給源702は、液体を収容可能な収容容器であり、装着部266に着脱可能に装着される。液体供給源702は、装着部266に固定される収容タンクであってもよい。この場合、収容タンクは、液体を継ぎ足し可能な注入口を備えてもよい。装着部266は、複数の液体供給源702を保持可能である。
液滴吐出装置700は、吸引用キャップ770と、吸引ポンプ773とを備える。吸引用キャップ770は、液滴吐出部1に接触してノズル21が開口する空間CKを形成する。吸引用キャップ770には、大気開放弁264が設けられる。大気開放弁264は、開弁時に空間CKを大気と通じさせ、閉弁時には空間CKを大気と通じさせない。吸引用キャップ770によるキャッピング時に大気開放弁264が閉弁した状態で吸引ポンプ773が駆動すると、空間CKに生じる負圧によってノズル21内が吸引される。このように、吸引クリーニング時には、大気開放弁264が閉弁する。吸引用キャップ770が液滴吐出部1から離れるときには、大気開放弁264が開弁する。
供給機構261は、上流側となる液体供給源702から下流側となるノズル21に液体を供給する液体供給路262を有する。液体供給路262には、液体供給源702からノズル21に向けて液体を流動させる供給ポンプ267と、フィルタユニット268と、液体の圧力を調整する圧力調整弁269とが配置される。供給ポンプ267は、例えばギヤポンプまたはダイヤフラムポンプである。
フィルタユニット268は、第1フィルター271を有し、第1フィルター271によって上流室275と下流室276とに仕切られている。フィルタユニット268は、液体供給路262に対して着脱可能に設けられる。
圧力調整弁269は、第2フィルター272を有する。液滴吐出部1は、第3フィルター273を有する。第2フィルター272及び第3フィルター273は、液体供給路262に対して着脱可能に設けられる。第1フィルター271、第2フィルター272及び第3フィルター273は、通過する液体中の異物を捕集するにつれて、濾過機能が低下する消耗品である。
圧力調整弁269は、第2フィルター272により仕切られたフィルター室278と供給室279とを有する。圧力調整弁269は、供給室279と連通孔280を介して通じる圧力調整室281と、圧力調整室281と供給室279との間を開閉可能な弁体282と、弁体282を押し付ける押付部材283とを有する。弁体282は、押付部材283の押付力により、連通孔280を塞ぐ。
圧力調整室281は、壁面の一部が撓み変形可能なダイヤフラム284により構成されている。ダイヤフラム284は、外面側に大気圧を受ける一方で、内面側に圧力調整室281内の液体の圧力と押付部材283の押付力とを受ける。ダイヤフラム284は圧力調整室281内の圧力と外面側に受ける圧力との差圧の変化に応じて撓み変位し、ダイヤフラム284が圧力調整室281の内側に向けて変位するのに伴って、弁体282が連通孔280を開く。
液体供給路262は、第1接続流路286、第2接続流路287、第3接続流路288及び第4接続流路289を有する。第1接続流路286は、液体供給源702と供給ポンプ267とを接続する。第2接続流路287は、供給ポンプ267とフィルタユニット268の上流室275とを接続する。第3接続流路288は、フィルタユニット268の下流室276と圧力調整弁269のフィルター室278とを接続する。第4接続流路289は、圧力調整弁269の圧力調整室281と液滴吐出部1の共通液室となるリザーバー143とを接続する。
制御部830は、ノズル21から液滴を吐出した回数及び液滴吐出部1のメンテナンスを行った回数をカウントする。制御部830は、メンテナンスの回数に基づいて、液滴吐出部1で消費された液体の量を算出し、液体供給路262における液体の通過量としてメモリー153に記憶させる。このように、メモリー153は、第1フィルター271、第2フィルター272及び第3フィルター273を通過した液体の量である通過量を記憶している。
次に、第1フィルター271、第2フィルター272及び第3フィルター273の目詰まりを検出する場合の作用について説明する。液滴吐出装置700において、吸引クリーニングが実行されると、吸引用キャップ770に覆われたノズル21から液体とともに気泡等の異物が排出される。そのため、吸引クリーニング後に検出部156がノズル検査を実行すると、気泡が混入したノズル21及び圧力室12が検出される虞を低減できる。
ノズル検査の後にフラッシングを実行すると、液体供給源702からノズル21に向けて、液体供給路262を通じて液体が供給される。液体供給路262には、第1フィルター271、第2フィルター272及び第3フィルター273が設けられている。そのため、液体は、第1フィルター271、第2フィルター272及び第3フィルター273を通過してノズル21へ供給される。このとき、第1フィルター271、第2フィルター272及び第3フィルター273が目詰まりしていると、液体が流れにくくなる。この場合、単位時間当たりにノズル21が吐出することができる液量よりも、単位時間当たりに第1フィルター271、第2フィルター272及び第3フィルター273を通過してノズル21に供給可能な液量の方が少なくなることがある。
換言すると、第1フィルター271、第2フィルター272及び第3フィルター273が目詰まりしている場合には、ノズル21から液滴を吐出しても十分な量の液体が供給されないことがある。すると、ノズル21と第1フィルター271、第2フィルター272及び第3フィルター273との間の液体供給路262における負圧が高まり、ノズル21から空気、すなわち気泡が引き込まれやすくなる。
検出部156がノズル検査を実行することにより、気泡が引き込まれたノズル21及び圧力室12を検出できる。すなわち、制御部830は、フラッシングの前後で圧力室12の振動波形を検出し、フラッシングによる圧力室12の状態の変化に基づいて、第1フィルター271、第2フィルター及び第3フィルター273が目詰まりしているか否かを推測する。
制御部830は、フラッシングの前後に検出された圧力室12内の状態の変化が、圧力室12内の気泡の増加である場合、第1フィルター271、第2フィルター272及び第3フィルター273が詰まりしていると推測する。具体的には、フラッシング前より、フラッシング後にノズル検査で検出した気泡が混入している圧力室12の数が多い場合には、フラッシングに伴って気泡が混入したものと推測される。この場合、供給機構261は、第1フィルター271、第2フィルター272及び第3フィルター273が目詰まりして十分な量の液体を供給することができない状態だと考えられる。そこで、制御部830は、第1フィルター271、第2フィルター272及び第3フィルター273が目詰まりして機能不全となっていると推測した場合、ユーザーに第1フィルター271、第2フィルター272及び第3フィルター273の交換を促す。
一方、制御部830は、第1フィルター271、第2フィルター272及び第3フィルター273の機能が正常であると推測した場合に、圧力室12内の状態が正常でないことが検出部156によって所定回数検出されたか否かを推測できる。制御部830は、圧力室12内の状態が正常である、又は圧力室12内の状態が正常でないことが所定回数未満検出されたと推測し、且つ、液滴の吐出状態が正常である、又は液滴の吐出状態が正常でないことが所定回数未満検出されたと推測した場合には、液滴吐出部1の交換が不要であると推測できる。これに対し、制御部830は、圧力室12内の状態が正常でないことが所定回数検出されたと推測した場合、又は、液滴の吐出状態が正常でないことが所定回数検出されたと推測した場合には、液滴吐出部1の交換が必要であると推測し、その旨をユーザーに報知できる。
このように、制御部830は、メンテナンスの前後に検出された圧力室12内の状態の変化が圧力室12内の気泡の増加に起因する場合、第1フィルター271、第2フィルター272及び第3フィルター273が目詰まりしていると推測できる。すなわち、制御部830は、ノズル21から液滴を吐出する前後の圧力室12内の状態の変化に基づいて第1フィルター271、第2フィルター272及び第3フィルター273の異物を捕集する機能の不全を推測できる。
制御部830は、第3フィルター273及びメンテナンスユニット710の双方が正常に機能していることを確認した上で、図28に示すように、液滴吐出部1の交換要否を推測できる。この場合、制御部830は、フラッシングの前後で検出部156により圧力室12の振動波形を検出し、フラッシングによる圧力室12の状態の変化に基づいて、第3フィルター273が目詰まりしているかを推測できる。制御部830は、第3フィルター273が目詰まりしていると推測した場合に、その旨をユーザーに報知できる。
制御部830は、吸引クリーニングの前と、吸引クリーニング中に圧力室12内の状態を検出してもよい。
ノズル21が開口する空間CKに負圧を印加すると、その空間CKと通じるノズル21内及び圧力室12内も負圧となる。そのため、振動板50は、圧力室12の容積を減少させる方向に変位する。したがって、振動板50が変形した状態でアクチュエーター130を駆動させるとともに、アクチュエーター130の駆動によって振動した圧力室12の振動波形を検出すると、振動板50が変形していない状態で検出した振動波形とは異なる。
そこで、制御部830は、まず吸引クリーニング前の負圧が印加されていない状態の圧力室12の振動波形を検出する。続いて、制御部830は、吸引クリーニング中に負圧が印加された状態の圧力室12の振動波形を検出する。制御部830は、吸引クリーニングの前と吸引クリーニング中の圧力室12内の状態が変化した場合にはメンテナンスユニット710の機能が正常であると推測する。
このように、吸引用キャップ770が形成した空間CKを負圧にすると、ノズル21を介して圧力室12内にも負圧が及ぶ。圧力室12に負圧が及んでいる場合と、及んでいない場合とでは、圧力室12の振動波形は変化する。そのため、吸引クリーニングの前と、吸引クリーニング中とで、圧力室12内の状態が変化している場合には、圧力室12に負圧が及んで、メンテナンスユニット710が正常に機能していると推測できる。
同様に、制御部830は、吸引用キャップ770がキャッピング状態のときに吸引ポンプ773を駆動して、大気開放弁264が正常に機能しているかどうかを推測してもよい。この場合には、大気開放弁264が開弁して負圧が印加されていない状態と、大気開放弁264が閉弁して負圧が印加されている状態と、において圧力室12内の状態を比較してもよい。
このように吸引クリーニング中に圧力室12の振動波形を検出する場合には、圧力室12よりも上流側に弁を設け、この弁を閉弁した状態で吸引クリーニングを実行してもよい。すなわち、弁を設けることにより、液体の消費を低減するとともに、振動板50を変形させやすくすることができる。
<その他の変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・制御部830は、キャップ803がキャッピング状態から非キャッピング状態に切り替わったタイミングで実行されるフラッシングなどの液滴吐出部1のメンテナンス動作に伴う振動波形に基づいて、吐出状態の異常の原因を推測してもよい。こうすると、推測処理と液滴吐出部1のメンテナンス動作とを並行して実行できる。
・ノズル21から吐出される液滴を光学センサーで検出することにより、吐出状態の異常を検出してもよい。印刷されたチェックパターンをカメラなどの撮像素子でチェックすることにより、吐出状態の異常を検出してもよい。印刷されたチェックパターンをユーザーがチェックし、液滴を正常に吐出できていない抜けノズルを液滴吐出装置700に入力することにより、吐出状態の異常を検出してもよい。
・液滴吐出装置700は、キャップ装置800のキャップ803を清掃する清掃装置を備えてもよい。この場合、制御部830は、キャッピング状態において発生した吐出状態の異常の原因が液体によるキャップ803の汚染と推測した場合に清掃装置によるキャップ803の清掃を実行してもよい。制御部830は、清掃装置によるキャップ803の清掃を実行した後、吐出状態の異常がキャッピング状態において発生したと推測した場合に、吐出状態の異常の原因がキャップ803の機能不全と推測してもよい。
・キャップ803において清掃が難しい箇所、例えば大気連通部823を構成するピン827の溝828内に液体が付着した場合、キャップ803の清掃では回復しないキャップ803の機能不全となり得る。そのため、制御部830は、キャップ803が清掃されたにもかかわらず、液体によるキャップ803の汚染を原因とする吐出常態の異常がキャッピング状態において連続して発生したと推測した場合には、キャップ803の交換を促す表示を報知部703に表示してもよい。
・図22に示すキャッピング時のノズル検査は、吸引用キャップ770によるキャッピング状態で実行してもよい。この場合、ノズル検査の結果に応じて、吸引用キャップ770内に液体を排出することができる。
・液滴吐出装置700がキャリッジ723を備えず、媒体STの幅全体と対応した長尺状の液滴吐出部1を備える、いわゆるフルラインタイプの液滴吐出装置700に変更してもよい。
・ノズル21から液滴を吐出するためのアクチュエーター130とは別に、圧力室12の振動波形を検出するセンサーを検出部156として設けてもよい。検出部156であるセンサーが検出した圧力室12の振動波形に基づいて、制御部830が圧力室12の状態を推測してもよい。この場合、センサーとして圧電素子を採用してもよい。
・液滴吐出部1が吐出する液体はインクに限らず、例えば機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体などでもよい。例えば、液滴吐出部1が液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材又は画素材料などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を吐出してもよい。
・媒体STは用紙に限らず、プラスチックフィルムまたは薄い板材などでもよいし、捺染装置などに用いられる布帛でもよい。媒体STはTシャツなど、任意の形状の衣類等でもよいし、食器または文具のような任意の形状の立体物でもよい。
以下に、上述した実施形態及び変更例から把握される技術的思想及びその作用効果を記載する。
液滴吐出装置は、液体を液滴として吐出するノズルを複数有する液滴吐出部と、複数の前記ノズルが開口する空間を形成するキャッピング状態と、前記液滴吐出部から離れる非キャッピング状態と、をとり得るように構成されるキャップと、前記ノズルからの前記液滴の吐出状態の異常を検出するように構成される検出部と、前記吐出状態の異常が前記キャッピング状態において発生した場合に、前記吐出状態の異常の原因が前記キャップの機能不全と推測する制御部と、を備え、前記制御部は、前記吐出状態の異常の原因が前記キャップの機能不全と推測した場合に、前記キャップの機能不全に対応する表示を報知部に表示させる。
吐出状態の異常がキャッピング状態において発生した場合、吐出状態の異常の原因として、キャップの機能不全が疑われる。上記構成によれば、キャップの機能不全に対応する表示に基づいて、キャップの機能不全を解消するために適切な対応をとることができる。そのため、液体の増粘に対して適切なメンテナンスを実行できる。
液滴吐出装置において、前記制御部は、前記吐出状態の異常が前記キャッピング状態において発生した場合に、前記キャッピング状態での経過時間が設定時間未満のときには、前記吐出状態の異常の原因が前記液体による前記キャップの汚染と推測してもよい。
キャッピング状態での経過時間が設定時間未満であるにもかかわらず、吐出状態の異常がキャッピング状態において発生した場合、キャップの機能不全として、液体によってキャップが汚染されていることが疑われる。液体によってキャップが汚染されていると、その液体がノズル内の液体の溶媒を吸着することがある。これにより、ノズル内の液体の増粘が促進される。上記構成によれば、液体によるキャップの汚染を解消するために適切な対応をとることができる。
液滴吐出装置において、前記制御部は、前記吐出状態の異常の原因が前記液体による前記キャップの汚染と推測した場合に、前記キャップの清掃を促す表示を前記報知部に表示させてもよい。
この構成によれば、液体によるキャップの汚染を解消できる。そのため、液体の増粘に対して適切なメンテナンスを実行できる。
液滴吐出装置において、前記制御部は、前記吐出状態の異常が前記キャッピング状態において発生した場合に、前記キャッピング状態での経過時間が前記設定時間以上のときには、前記吐出状態の異常の原因が前記キャップの清掃では回復しない前記キャップの機能不全と推測してもよい。
キャッピング状態での経過時間が設定時間以上であるときに、吐出状態の異常がキャッピング状態において発生した場合、キャップが正常なキャッピング状態となっていないことが疑われる。キャップが正常なキャッピング状態とならない場合、キャップを清掃してもキャップの機能が回復しないおそれがある。上記構成によれば、清掃では回復しないキャップの機能不全を解消するために適切な対応をとることができる。
液滴吐出装置において、前記制御部は、前記吐出状態の異常の原因が前記キャップの清掃では回復しない前記キャップの機能不全と推測した場合に、前記キャップの交換を促す表示を前記報知部に表示させてもよい。
この構成によれば、キャップの清掃では回復しないキャップの機能不全を解消できる。そのため、液体の増粘に対して適切なメンテナンスを実行できる。
液滴吐出装置において、前記制御部は、前記吐出状態の異常の原因が前記キャップの清掃では回復しない前記キャップの機能不全と推測した場合に、前記キャップの清掃を促す表示を前記報知部に表示させ、その後、前記吐出状態の異常が前記キャッピング状態において発生した場合に、前記吐出状態の異常の原因が前記キャップの機能不全と推測し、前記キャップの交換を促す表示を前記報知部に表示させてもよい。
この構成によれば、吐出状態の異常の原因がキャップの清掃では回復しないキャップの機能不全である場合でも、一度はキャップの清掃を実行させる。キャップが清掃されることによりキャップの機能不全が解消された場合には、そのキャップを継続して使用できる。これにより、キャップを交換する頻度を低減できる。
液滴吐出装置において、前記制御部は、前記キャップが前記キャッピング状態から前記非キャッピング状態に切り替わったタイミングで前記検出部により検出される前記吐出状態の異常に基づいて、前記吐出状態の異常の原因を推測してもよい。
この構成によれば、吐出状態の異常がキャッピング状態において発生したか否かを適切に推測できる。
液滴吐出装置において、前記液滴吐出部は、液体供給源から前記液体が供給される圧力室と、前記圧力室と通じる前記ノズルと、前記圧力室を振動させるアクチュエーターと、を有し、前記検出部は、前記圧力室の振動波形を検出することによって、前記ノズルからの前記液滴の吐出状態の異常を検出してもよい。
この構成によれば、液滴を吐出するノズルの吐出状態の異常を適切に検出できる。
液滴吐出装置において、前記制御部は、前記キャッピング状態において2つ以上の前記ノズルに前記液体の増粘に起因する前記吐出状態の異常が発生した場合に、前記吐出状態の異常の原因が前記キャップの機能不全と推測してもよい。
この構成によれば、キャップの機能不全を適切に推測できる。
液滴吐出装置のメンテナンス方法は、液体を液滴として吐出するノズルを複数有する液滴吐出部と、前記複数のノズルが開口する空間を形成するキャッピング状態と、前記液滴吐出部から離れる非キャッピング状態と、をとり得るように構成されるキャップと、前記ノズルからの前記液滴の吐出状態の異常を検出するように構成される検出部と、を備える液滴吐出装置のメンテナンス方法であって、前記吐出状態の異常が前記キャッピング状態において発生した場合に、前記吐出状態の異常の原因が前記キャップの機能不全と推測し、前記キャップの機能不全に対応する表示を報知部に表示する。
吐出状態の異常がキャッピング状態において発生した場合、吐出状態の異常の原因として、キャップの機能不全が疑われる。上記方法によれば、キャップの機能不全に対応する表示に基づいて、キャップの機能不全を解消するために適切な対応をとることができる。そのため、液体の増粘に対して適切なメンテナンスを実行できる。