JP7106410B2 - 強誘電性液晶セルの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、強誘電性液晶の配向処理工程を有する強誘電性液晶セルの製造方法に関する。
従来、液晶表示装置は、薄型で低消費電力である特徴を生かし、幅広い分野において使用されている。また近年は、応答時間が早い等の特徴を有する強誘電性液晶(以下、FLCと略す)を用いた液晶表示装置が製品化されている。
[強誘電性液晶セルの基本構造の説明:図10]
図10は、液晶表示装置等で使用される従来からの強誘電性液晶セルの基本構造を示す断面図である。図10に示すように、強誘電性液晶セル1は、一対の基板110、120が球状のスペーサー101を含んだシール材102を介して互いに貼り合わされている。この基板110と基板120の狭小な隙間にFLC130が充填されている。
基板110は透明なガラス基板であり、その内側の表面には、ベタ状の透明電極111が形成され、その上に有機配向膜112が形成される。基板120はシリコン基板であり、その内側の表面には画素毎にパターン化されたアルミ電極121が形成され、その上に有機配向膜122が形成される。
一対の基板110、120の間に充填されたFLC130の液晶分子(図示せず)は、有機配向膜112、122による所定の配向処理が施されることで規則正しく配列した状態、即ち配向した状態となっており、ここでは図示しないが層構造を形成し、液晶層全体としてスメクティックC相(SmC相)を呈している。
[FLCの分子配列の説明:図11]
次によく知られているが、本発明を理解するためにFLCの分子配列、特に表面安定化強誘電性液晶(SSFLC)の分子配列について図11を用いて説明する。図11(a)は、FLCが等方相(ISO相)の状態であり、強誘電性液晶分子131(以下、FLC分子131と称する)は、ばらばらの方向に向いている。このISO相は、たとえば、温度が+110℃以上での状態である。
図11(b)は、FLCがネマティック相(N*相)の状態であり、すべてのFLC分子131は、配向規制力方向(矢印E)に向いている。このN*相は、たとえば、温度が+90℃から+110℃の間での状態である。
図11(c)は、FLCがスメクティックA相(SmA相)の状態であり、この状態において、FLC分子131は、所定の層構造を形成し、各層のFLC分子131は、配向規制力方向(矢印E)に向いている。このSmA相は、たとえば、温度が+80℃から+90℃の間での状態である。
図11(d)~図11(f)の三つは、FLCがスメクティックC相(SmC*相)の状態であり、この状態において、FLC分子131は、所定の層構造を形成し、各層のFLC分子131は、配向規制力方向(矢印E)に対して所定の傾き(チルト角)を有している。このSmC*相は、たとえば、温度が-35℃から+80℃の間の状態である。従って通常では、FLCはSmC*相で使用される。
ここで、図11(d)~図11(f)は、SmC*相における電圧無印加時でのFLC分子131の傾きの違いを示している。図11(d)は、FLC分子131の傾きが配向規制力方向Eに対して図面上で左であり、表示の見え方が黒安定の場合である。図11(e)は、FLC分子131の傾きが配向規制力方向Eに対して左や右が混在するダブルドメイン(黒安定部分と白安定部分が混在)の場合である。図11(f)は、FLC分子131の傾きが配向規制力方向Eに対して図面上で右であり、表示の見え方が白安定の場合である。
ここで、FLC分子131の好ましい配向方向は、ディスプレイ用途としては黒安定(傾きが左)が良い。これは黒安定の方が、黒がしまって見えて黒表示時のムラが少なく見栄えが良いからである。従って、FLC分子131の配向方向を電圧無印加時に黒安定(図11(d)の状態)にすることが一般的に強誘電性液晶セルに求められる特性である。
[FLCの液晶分子の基本動作の説明:図12]
次に、FLCの液晶分子の基本動作について図12を用いて説明する。図12は、図10で示した強誘電性液晶セル1の液晶分子の動作を模式的に示している。図12に示すように、強誘電性液晶セル1は、クロスニコルに合わせた偏光板140a、140bの間に、FLC130が充填されている。
ここで、FLC130のFLC分子131は、偏光板140aの偏光軸Aと偏光板140bの偏光軸Bのどちらか一方に、FLC分子131の第1の安定状態の分子長軸方向(矢印C)もしくは、第2の安定状態の分子長軸方向(矢印D)のどちらかが、ほぼ平行になるように、配向膜(図示せず)の配向規制力方向(ラビング方向:矢印E)が決められて配置される。図12においては、偏光板140aの偏光軸Aと第1の安定状態のときの分子長軸方向(矢印C)が、ほぼ平行になるように配置されている。
ここで、FLC分子131のスイッチング、つまり一方の安定状態から他方の安定状態への転移は、FLCに印加される駆動電圧の値が閾値以上となるときに起こる。例えば、閾値以上のマイナス電圧が印加されると第1の安定状態(矢印C)が選択され、閾値以上のプラス電圧が印加されると第2の安定状態(矢印D)が選択される。
この結果、図12に示すように偏光板140a、140bを配置した場合、第1の安定状態(矢印C)で黒安定(非透過状態)、第2の安定状態(矢印D)で白安定(透過状態)となる。尚、偏光板140a、140bの配置を変えることにより、第1の安定状態で白安定(透過状態)、第2の安定状態で黒安定(非透過状態)とすることも出来る。
ここで、FLC分子131は、自発分極を有しているので、液晶セルの内部電界の影響によって配向方向が不安定になりやすい問題がある。このFLC分子131の配向方向が不安定になると、黒安定部分と白安定部分が混在するダブルドメイン(図11(e)参照)の状態が生じて好ましくない。
[内部電界の影響による液晶分子の不安定動作の説明:図13]
次に、強誘電性液晶セル1の内部電界の影響によってFLC分子の配向方向が不安定になると推測される原因について、図13に示すイオンの挙動によって説明する。図13(a)は、強誘電性液晶セル1の断面を模式的に示しており、強誘電性液晶セル1の完成直後の状態を表している。なお、強誘電性液晶セル1の基本構造は、前述した図10と同様であり、各要素には同一番号を付している。
図13(a)に示すように、強誘電性液晶セル1は、一対の基板110、120のそれぞれの対向面に透明電極111とアルミ電極121が形成され、その隙間にFLC130が充填されている。このFLC130には、主に水分による正イオン141と負イオン142が含まれていると推測される。ここでは、説明の都合上、正イオン141、負イオン142のそれぞれのイオン量を8として示している(8個の正イオン141と負イオン142を模式的に図示)。
一方、強誘電性液晶セル1には、対向する透明電極111とアルミ電極121による異種金属によって発生する電界が存在し、この電界を内部電界E1(図面上の左側に位置する上向き矢印で示す)と称する。この内部電界E1の大きさを便宜上、E1=+10と定義する。
ここで、FLC130が充填されるときに加熱され、その後、徐々に冷やされるが、FLC130は、液晶分子が配列の規則性を失う等方相(ISO相)の状態から、その後、加熱温度の低下によってスメクティックC相(SmC*相)へと相転移する(図11参照)。この相転移に伴い、FLC130内部のイオンの吸着が進行する。
すなわち、内部電界E1により、正イオン141は、基板110側の透明電極111に引き寄せられて吸着し、また、負イオン142は、基板120側のアルミ電極121に引き寄せられて吸着する。なお、透明電極111とアルミ電極121の上に配向膜(図示せず)が形成されている場合には、正イオン141と負イオン142は、それぞれ配向膜に吸着する。
これにより、強誘電性液晶セル1内部には、吸着したイオンによって内部電界が発生し、この電界を内部電界E2(図面上の強誘電性液晶セル1内部の下向き矢印で示す)と称する。ここで、すべてのイオンが吸着したとすると、吸着した正と負のイオン量はそれぞれ8となるので、内部電界E2の値をE2=-8とする。すなわち、内部電界E2は、吸着したイオン量に等しい値として示している。なお、内部電界E2の極性がマイナスであるのは、内部電界E1を打ち消す方向に内部電界E2が発生するからである。
この結果、強誘電性液晶セル1内部のトータルとしての実内部電界ER(図面上の右側に位置する上向き矢印で示す)は、
実内部電界ER=内部電界E1+内部電界E2 [式1]
と考えられるので、実内部電界ER=10-8=+2となり、実内部電界ERはプラス電界となる。
ここで、内部電界E1は、対向電極の材質によって決まるので、ほぼ一定である。しかし、強誘電性液晶セル1内部の正イオン141と負イオン142の量は、液晶セルが置かれている環境によって変化し、これにより、イオンが電極に吸着する量も変動する。従って、イオンの吸着による内部電界E2の値は変動し、その結果、実内部電界ERも変動する。
図13(b)は、強誘電性液晶セル1の完成直後のFLC分子131の配向方向をよく用いられているコーン形で示している。ここで、FLC分子131の配向方向は、実内部電界ERの極性に依存する。すなわち、実内部電界ERがプラス電界であれば、FLC分子131の配向方向は、配向規制力方向(矢印E)に対して図面上で右側(白安定)となる。また、実内部電界ERがマイナス電界であれば、FLC分子131の配向方向は、配向規制力方向(矢印E)に対して図面上で左側(黒安定)となる。
ここで、強誘電性液晶セル1の完成直後の実内部電界ERは、前述したように、プラス電界(ER=+2)であるので、強誘電性液晶セル1の完成直後のFLC分子131の配向方向は、図示するように、配向規制力方向(矢印E)に対して図面上でやや右側(やや白安定)に位置すると推測される。
しかし、FLC分子131の好ましい配向方向は、前述したようにディスプレイ用途としては見栄えの良い黒安定(配向規制力方向(矢印E)に対して左側)が良い。また、やや白安定の状態では、実内部電界ERの変動の影響をうけてダブルドメイン(図11(e)参照)の状態になりやすい。
FLC分子131の配向方向がダブルドメインでは、液晶セルの駆動時に、表示ムラ、すなわち、表示画面の面内均一性(輝度や色味)の低下等の問題が生じて好ましくない。このように、従来の強誘電性液晶セルでは、実内部電界ERの変動等の影響によって、FLC分子131の配向方向が不安定でダブルドメインになりやすく、表示品質が低下する問題があった。
[従来の配向処理方法の説明:図14、図15]
上記課題を解決するために、従来では、完成した強誘電性液晶セルをスメクティックA相乃至等方相に相転移する温度に一定時間保持し、この温度を一定時間保持する間、強誘電性液晶セルに所定の交番電界を印加し、この交番電界を印加した状態で、強誘電性液晶セルを徐々に冷却し、温度を常温まで低下させた後に、所定の交番電界の印加を解除する配向処理方法が提案されていた(たとえば特許文献1参照)。
以下、従来の配向処理方法について図14、図15を用いて説明する。図14は、強誘電性液晶セルに外部から所定の交番電界を印加する従来の配向処理を示す説明図である。図14に示すように、強誘電性液晶セル1の基板110の透明電極111と、基板120のアルミ電極121に繋がるパッド123とに、交番電界を発生する電源2を電気的に接続し、所定の大きさの交番電界を所定の時間印加する。なお、交番電界は、所定のオフセット電圧を有するサイン波であることが好ましい。
図15は、従来の配向処理を実施する際の強誘電性液晶セルに対する加熱温度TXの推移を模式的に示すグラフであり、横軸は経過時間t、縦軸は加熱温度TXである。図15に示すように、まず、完成体の強誘電性液晶セル1に対して加熱温度TXを常温T0からFLC130がスメクティックA相乃至等方相を示す温度T1まで上昇し、一定時間保持する(期間t1)。
この期間t1で、図14で示した交番電界を印加し、期間t1の終了後、強誘電性液晶セル1に交番電界を印加したまま、液晶セルの加熱温度TXを常温T0まで徐々に低下させる(期間t2)。この期間t2の終了によって、従来の配向処理は終了する。
[従来の配向処理によるFLC分子の配向方向の変化の説明:図16]
次に従来の配向処理を実施することで、強誘電性液晶セル1のFLC分子の配向方向がどのように変化するかについて図16を用いて説明する。図16(a)は、前述の図13(a)と同様に、強誘電性液晶セル1の断面を模式的に示しており、従来の配向処理を実施した場合の内部電界やイオンの状態を示している。
図16(a)に示すように、図13(a)と同様に異種金属によって発生する内部電界E1の値をE1=+10、また、正イオン141と負イオン142の吸着によって発生する内部電界E2の値をE2=-8とする。
また、配向処理によって外部から印加される交番電界のオフセット値を一例として外部印加電界EO=-3(図面上の左端の下向きの矢印)とする。これにより、配向処理による実内部電界ERは、
実内部電界ER=内部電界E1+内部電界E2+外部印加電界EO [式2]
となって、ER=10-8-3=-1となる。従って、交番電界の印加によって、強誘電性液晶セル1の実内部電界ERをわずかにマイナス電界にすることができる。
なお、外部印加電界EOの印加によって、吸着した正イオン141、負イオン142が浮遊(離脱)を始めて、実内部電界ERがマイナス電界からプラス電界に向かうことが推測されるが、マイナス電界からプラス電界になるまでにはある程度の時間を要するため、配向処理の大部分の期間では実内部電界ERの極性はマイナス電界であると考えられる。
この実内部電界ERがマイナス電界で、強誘電性液晶セル1への加熱温度TXをスメクティックA相乃至等方相を示す温度T1まで上昇させ、一定期間終了後に常温T0まで徐々に低下させることで(図15参照)、FLC分子131の配向方向は変化する。
図16(b)は、強誘電性液晶セル1の従来の配向処理実施後におけるFLC分子131の配向方向を示している。図16(b)に示すように、FLC分子131の配向方向は、実内部電界ERがマイナス電界で配向処理(交番電界印加と加熱温度TX)が実施されたので、配向規制力方向(矢印E)に対して図面上でやや左側(やや黒安定)に位置するようになる。すなわち、FLC分子131の配向方向は、ディスプレイ用途として好ましい黒安定方向となる。
特開2017-138463号公報(第4頁、第1図)
しかしながら、本発明者らは、従来の配向処理(図14、図15参照)を多数の強誘電性液晶セルで実施して、FLC分子の配向状態を検査した。その結果、強誘電性液晶セルの全面が黒安定配向(図11(d)参照)になる強誘電性液晶セルの発生率は50%程度であり、必要とされる安定した配向方向を得るには不十分であることが判明した。
この原因は従来の配向処理では、実内部電界ERをわずかにマイナス電界にすることができるだけで、FLC分子131の傾きを確実に黒安定側とするには十分ではないからと考えられる(図16(b)参照)。
本発明の目的は上記課題を解決し、強誘電性液晶セルに所定の配向処理を実施することで、全面が黒安定配向になる強誘電性液晶セルを、高確率で得ることができる強誘電性液晶セルの製造方法を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明の強誘電性液晶セルの製造方法は、下記記載の方法を採用する。
本発明の強誘電性液晶セルの製造方法は、シール材を介して互いに貼り合わされた一対の基板間に強誘電性液晶が充填された強誘電性液晶セルを所定の湿度環境に一定時間置く特定環境処理工程と、強誘電性液晶セルをスメクティックA相乃至等方相に相転移する温度に加熱し、当該温度から徐々に冷却する間、強誘電性液晶セルに所定の電界を印加する配向処理工程と、を備えることを特徴とする。
本発明の強誘電性液晶セルの製造方法により、強誘電性液晶セルを所定の湿度環境に一定時間置く特定環境処理工程では、強誘電性液晶セルの内部に多くのイオンを溜めることができる。この内部に溜まったイオンは、強誘電性液晶セルの異種金属による電極間で発生する内部電界の大きさに応じて電極に吸着する。この吸着したイオンによって発生する内部電界と異種金属によって発生する内部電界とがバランスし、強誘電性液晶セルのトータルとしての内部電界(実内部電界)は、ほぼ零となる。この結果、配向処理工程による加熱と所定の電界の印加によって、実内部電界を要求される極性(マイナス電界)にほぼ確実に変化させることができ、液晶分子の配向方向を要求される方向(黒安定)に揃えることができる。
また、特定環境処理工程を、配向処理工程の前に実施することを特徴とすることができる。
これにより、前処理としての特定環境処理工程によって、強誘電性液晶セル内部のイオンを飽和させ、その後に配向処理工程を実施することで、実内部電界を要求される極性に確実に変化させることが可能となる。
また、特定環境処理工程を、配向処理工程と同時に実施することを特徴とすることができる。
これにより、特定環境処理工程と配向処理工程を同時に実施することで、製造工程を簡略化でき、製造工数を削減できる。
また、湿度環境の湿度は60%以上であることを特徴とすることができる。
これにより、特定環境処理工程の湿度を60%以上に管理することで、強誘電性液晶セル内部に多くのイオンを確実に溜めることが可能となる。
また、特定環境処理工程において、強誘電性液晶セルを所定の高温環境に一定時間置くことを特徴とすることができる。
これにより、特定環境処理工程として、強誘電性液晶セルを所定の高温環境に置くことで、強誘電性液晶セル内部に多くのイオンが溜まることを促進できる。
また、高温環境の温度は40℃以上であることを特徴とすることができる。
これにより、特定環境処理工程の温度を40℃以上に管理することで、強誘電性液晶セルの内部に多くのイオンを確実に溜めることが可能となる。
また、電界の強さは、強誘電性液晶の液晶分子が一方の安定状態から他方の安定状態へ切り替わるスイッチング電界閾値以上であることを特徴とすることができる。
これにより、液晶分子の配向方向を要求される方向に確実に揃えることができる。
また、電界の強さは、強誘電性液晶セルがスメクティックA相からスメクティックC相に相転移する温度において、スイッチング電界閾値以上であることを特徴とすることができる。
これにより、液晶分子の配向方向を要求される方向により確実に揃えることができる。
また、電界の強さは、スイッチング電界閾値と実質的に等しいことを特徴とすることができる。
これにより、液晶分子の配向方向を要求される方向により確実に揃えることができる。
また、電界の強さを、スイッチング電界閾値の変化に追従するように変化させることを特徴とすることができる。
これにより、液晶分子の配向方向を要求される方向により確実に揃えることができる。
また、電界の強さは、強誘電性液晶の液晶分子の規定された配向状態が破壊される配向破壊電界閾値よりも小さいことを特徴とすることができる。
これにより、液晶分子の配向方向を要求される方向に確実に揃えることができる。
また、電界の強さを、配向破壊電界閾値の変化に追従するように変化させることを特徴とすることができる。
これにより、液晶分子の配向方向を要求される方向により確実に揃えることができる。
上記の如く本発明によれば、強誘電性液晶セルを所定の湿度環境に一定時間置く特定環境処理工程により、強誘電性液晶セル内部に多くのイオンを溜めて飽和させることができる。このイオンは強誘電性液晶セルの異種金属による電極間で発生する内部電界の大きさに応じて電極に吸着する。この吸着したイオンによって発生する内部電界と異種金属によって発生する内部電界とがバランスし、強誘電性液晶セルのトータルとしての内部電界(実内部電界)が、ほぼ零となる。この結果、配向処理工程による加熱と所定の電界の印加によって、実内部電界は、要求される極性(マイナス電界)にほぼ確実に変化することができ、全面が黒安定配向になる強誘電性液晶セルを、高確率で得ることができる強誘電性液晶セルの製造方法を提供できる。
本発明の第1の実施形態のフローチャートである。 本発明の第1の実施形態の基板貼り合わせ工程と液晶充填工程を説明する断面図である。 本発明の第1の実施形態の強誘電性液晶セルの完成体の上面図と断面図である。 本発明の第1の実施形態の強誘電性液晶セルの回路基板実装工程の説明図である。 本発明の第1の実施形態の特定環境処理工程の説明図である。 本発明の第1の実施形態の特定環境処理工程による強誘電性液晶セルの内部状態とFLC分子の配向方向を示す説明図である。 本発明の第1の実施形態の配向処理工程による強誘電性液晶セルの内部状態とFLC分子の配向方向を示す説明図である。 本発明の第2の実施形態のフローチャートである。 本発明の第2の実施形態の特定環境処理工程と配向処理工程での加熱、交番電界、加湿の推移を示すグラフである。 従来の強誘電性液晶セルの基本構造を説明する断面図である。 強誘電性液晶分子の相と配向状態の説明図である。 強誘電性液晶分子の動作を示す説明図である。 従来の強誘電性液晶セル完成直後の内部状態とFLC分子の配向方向を示す説明図である。 従来の強誘電性液晶セルの配向処理による交番電界印加を説明する説明図である。 従来の強誘電性液晶セルの配向処理での加熱温度の推移を説明するグラフである。 従来の強誘電性液晶セルの配向処理による内部状態とFLC分子の配向方向を示す説明図である。
本発明者らは、液晶セルの全面が黒安定配向になる確率を高めることができる配向処理方法を検討した。その結果、強誘電性液晶セル内部のイオン量の増加が有効と推測し、本発明の製造方法を得た。
以下、添付図1~図9を参照して本発明の好適な第1及び第2の実施形態について詳細に説明する。なお図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図面の縮尺等は説明のため適宜変更し、また、構造が理解しやすいように一部を模式的に示している。
[各実施形態の特徴]
第1の実施形態は、特定環境処理工程を配向処理工程の前に実施する製造方法である。第2の実施形態は、特定環境処理工程と配向処理工程を同時に実施する製造方法である。
[第1の実施形態]
[第1の実施形態による製造方法のフロー説明:図1]
第1の実施形態による強誘電性液晶セルの製造方法のフローについて図1を用いて説明する。図1に示すように、強誘電性液晶セルの製造は、まず、ガラス基板とシリコン基板からなる一対の基板をシール材を介して貼り合わせる基板貼り合わせ工程を実施する(ステップST1)。
次に、貼り合わせた基板の隙間にFLCを充填する液晶充填工程を実施する(ステップST2)。
次に、シリコン基板側に回路基板を固着する回路基板実装工程を実施し、強誘電性液晶セルと回路基板で成る強誘電性液晶モジュール(以下、FLCモジュールと略す)が完成する(ステップST3)。
次に、強誘電性液晶セルと回路基板で成るFLCモジュールを所定の湿度環境と所定の高温環境に一定時間置く特定環境処理工程を実施する(ステップST4)。この特定環境処理工程は、強誘電性液晶セルの内部に多くのイオンを溜めることを目的としている。
次に、強誘電性液晶セルと回路基板で成るFLCモジュールを所定の温度で加熱すると共に、強誘電性液晶セルに所定の交番電界を印加する配向処理工程を実施する(ステップST5)。この配向処理工程(ST5)は、前述した従来の配向処理(図14、図15参照)と同様の処理が実施される。
ステップST5を実施して、強誘電性液晶セルの製造工程は完了し、強誘電性液晶セルと回路基板で成るFLCモジュールは完成する。この配向処理工程(ST5)は、強誘電性液晶セルのFLC分子の配向方向を黒安定にすることを目的としている。
[基板貼り合わせ工程(ST1)と液晶充填工程(ST2)の詳細説明:図2]
次に、基板貼り合わせ工程(ST1)と液晶充填工程(ST2)の詳細について図2を用いて説明する。図2は、第1の実施形態の強誘電性液晶セルの各製造工程を説明する断面図である。図2(a)に示すように、基板貼り合わせ工程(ST1)として、一対の基板であるガラス基板110とシリコン基板120の対向面のどちらか一方に、シール材102を塗布した状態で他方の基板を貼り合せる。これにより、ガラス基板110とシリコン基板120の隙間に空乏105が形成された強誘電性液晶セルの空セルが作られる。
次に液晶充填工程(ST2)に進み、同じく図2(a)に示すように、シール材102の一部に設けられた液晶注入用の開口部(液晶注入口)103近傍にFLC130を適量塗布し、空セル全体を真空チャンバー(図示せず)内において真空圧下に晒して空乏105を真空状態にする。
続いて、図2(b)に示すように、空セル全体を加熱してFLC130の流動性を高め、毛細管現象によりFLC130を空乏105内部へある程度浸透させ、その後、空セル全体を大気圧下に晒して空セル内部と外部との圧力差を利用して液晶の注入を継続し、空乏105にFLC130を充填させる。
このFLC130を充填させるときの加熱により、FLC130は、液晶分子が配列の規則性を失う等方相(ISO相:図11(a)参照)となる温度にまで加熱され、その後、加熱温度が低下するに連れて等方相(ISO相)からネマティック相(N相)、スメクティックA相(SmA相)を経て目的となるスメクティックC相(SmC相:図11(d)参照)へと順次相転移していく。
次に図2(c)に示すように、FLC130の充填が完了した後、強誘電性液晶セルの加熱温度を徐々に低下させる。それにより、充填されたFLC130は、SmC相の配向状態で流動性が低下して液晶セル内部に定着する。その後、液晶注入口103周辺に付着した余分な液晶材料を洗浄した上で液晶注入口103付近に封止材104を塗布して硬化させ、強誘電性液晶セル100が完成する。
[強誘電性液晶セルの構造説明:図3]
次に、完成した第1の実施形態の強誘電性液晶セル100の詳細な構造について図3を用いて説明する。なお、強誘電性液晶セル100は、前述した従来例の強誘電性液晶セル1(図10参照)と基本構造は同一であるので、同一要素には同一番号を付し、重複する説明は一部を省略する。
図3(a)は強誘電性液晶セル100の上面図、図3(b)は、図3(a)の切断線H―H´で切断した断面図である。図3に示すように、強誘電性液晶セル100は、一対の基板であるガラス基板110、シリコン基板120(以降、基板110、基板120と略す)がスペーサー101を含んだシール材102を介して互いに貼り合わされ、それにより形成された基板間の狭小な隙間にFLC130が充填されている。
基板110の内側は、透明電極111と有機配向膜112が形成されている。基板120の内側は、画素毎にパターンニングされたアルミ電極121と有機配向膜122が形成されている。
FLC130は、液晶注入口103から充填されて封止材104により封止される。シール材102は、基板110、120の内周部に形成され、FLC130は、このシール材102に囲まれた領域に充填される。このFLC130が充填された領域(破線で囲う)がFLC130の動作エリア106となる。なお、図3(a)で示す動作エリア106からは、画素毎にパターンニングされたアルミ電極121が見えるが、ここでは図示を省略する。
基板120の図面上の右端部には、複数のパッド123が並んで設けられている。これらのパッド123は、後述する回路基板からの電源や信号を入力する電気的接続点として機能する。なお、基板120の内部には、図示しないが、FLC130を駆動するための駆動回路等が形成される。
[回路基板実装工程(ST3)の説明:図4]
次に、完成した強誘電性液晶セル100に回路基板を実装してFLCモジュールとする回路基板実装工程(ST3)について図4を用いて説明する。図4(a)は接着工程を示し、完成した強誘電性液晶セル100を回路基板150に固着する。すなわち、強誘電性液晶セル100の基板120の背面120aと回路基板150の上面150aとを向き合わせて、接着剤等(図示せず)によって貼り合わせ、強誘電性液晶セル100を回路基板150の所定の位置に固着する。
図4(b)は、ボンディング工程を示し、回路基板150の電極151と強誘電性液晶セル100側のパッド123を複数の金属細線のワイヤー152によって接続し、回路基板150と強誘電性液晶セル100を電気的に接続して、FLCモジュール200を完成させる。
また、回路基板150の背面には、強誘電性液晶セル100の駆動条件等を記憶するROM160と、外部から電源や駆動信号を入力するコネクタ161が実装されている。なお、回路基板150には、強誘電性液晶セル100の光源となるLEDや他の電子部品も実装されるが、ここでは図示を省略する。このように、強誘電性液晶セル100は、回路基板150が実装されることでFLCモジュール200として完成し、コネクタ161を介して外部から電源や駆動信号等を入力して動作する。
[特定環境処理工程(ST4)の説明:図5]
次に強誘電性液晶セル100に対して実施される本発明の特徴である特定環境処理工程(ST4)について図5を用いて説明する。なお、前述したように、強誘電性液晶セル100は、回路基板150が実装されてFLCモジュール200として完成するので、以降説明する特定環境処理工程(ST4)と配向処理工程(ST5)は、FLCモジュール200に対して実施する。
図5に示すように、強誘電性液晶セル100と回路基板150からなるFLCモジュール200を恒温恒湿槽300に入れ、所定の湿度環境と所定の高温環境に一定時間置く。所定の湿度環境の湿度は60%以上であり、90%程度であることが好ましい。また、所定の高温環境の温度は40℃以上であり、60℃程度であることが好ましい。また、一定時間は湿度と温度に応じて適切な時間が選択されるが、湿度が90%程度で、且つ温度が60℃程度である場合には、20時間程度であることが好ましい。
恒温恒湿槽300内で一定時間が経過したならば、FLCモジュール200を槽から取り出して、常温常湿環境に戻す。なお、90%程度の高湿度と共に温度も60℃程度の高温にすることで、強誘電性液晶セル100内部に多くのイオンが溜まることを促進するが、高湿度だけで十分であれば、温度環境は常温でも良い。
[特定環境処理工程(ST4)でのFLC分子の配向方向の変化等の説明:図6]
次に、前述した特定環境処理工程(ST4)によって生じる強誘電性液晶セル100内部のイオン量の変化と内部電界の変化、及び、その結果として生じるFLC分子の配向方向の変化について図6を用いて説明する。図6(a)は、強誘電性液晶セル100の断面の一部を模式的に示しており、各要素には前述した図3と同一番号を付している。なお、液晶充填工程(ST2)直後のイオンと内部電界の状態、及び、FLC分子131の配向方向は、前述した図13と同様であるので説明は省略する。
図6(a)に示すように、強誘電性液晶セル100は、一対の基板110、120のそれぞれの対向面に透明電極111とアルミ電極121が形成され、その隙間にFLC130が充填されている。ここで、強誘電性液晶セル100が、特定環境処理工程(ST4)によって湿度約90%、温度約60℃の環境に一定時間置かれると、液晶セル内部に水分が侵入して正イオン141と負イオン142の量が増加すると推測される。なお、水分は,
液晶セルを構成する各要素(配向膜等)の内部や界面から浸透して液晶セル内部に侵入する。
図6(a)に示す例では、FLC130内の正イオン141と負イオン142が増加して、イオン量がそれぞれ12、もしくはそれ以上になったとする(12個の正イオン141と負イオン142を模式的に図示)。
ここで、対向する透明電極111とアルミ電極121による異種金属によって発生する内部電界E1は前述したようにE1=+10であるとする。この内部電界E1によって、イオン量10の正イオン141が透明電極111に吸着し、同様にイオン量10の負イオン142がアルミ電極121に吸着したと推測する。
すると、正イオン141と負イオン142のイオン量は12であるとしたので、吸着したイオン量10を差し引いた残りのイオン量2ずつが、FLC130の中で浮遊すると推測される。すなわち、特定環境処理工程(ST4)を実施することで、FLC130内のイオン量が増加し、内部電界E1に対してイオンが飽和状態になる。
従って、仮にFLC130内のイオン量がさらに増えたとしても、吸着したイオンは、内部電界E1に対して飽和しているので、浮遊イオンが増えるだけで、吸着イオンはほとんど増えない。
この吸着したイオンによって、強誘電性液晶セル100の内部には内部電界E2(図面上の強誘電性液晶セル内部の下向き矢印で示す)が発生する。ここで、吸着したイオン量は10としているので、この吸着イオンによって内部電界E1を打ち消す方向に発生する内部電界E2はE2=-10となる。これにより、強誘電性液晶セル100の実内部電界ERは、前述の式1から、実内部電界ER=内部電界E1+内部電界E2=10-10=0となる。
このように、特定環境処理工程(ST4)を実施することで、強誘電性液晶セル100内部のイオンが増加して、電極に吸着するイオン量が内部電界E1に対して飽和する。これにより、吸着したイオンによる内部電界E2と異種金属による内部電界E1とが相殺し、強誘電性液晶セル100内部のトータルとしての実内部電界ERがほぼ零となるようにバランスすると推測できる。すなわち、特定環境処理工程(ST4)を実施することで、強誘電性液晶セル100の内部イオンを内部電界E1に対して飽和させて、実内部電界ERをほぼ零にすることができるのである。
図6(b)は、特定環境処理工程(ST4)の実施後の強誘電性液晶セル100のFLC分子131の配向方向を示している。図6(b)に示すように、FLC分子131の配向方向は、実内部電界ERがほぼ零になったので、配向規制力方向(矢印E)と同じ方向(白安定と黒安定の中間)に位置している。
[配向処理工程(ST5)でのFLC分子の配向方向の変化等の説明:図7]
次に、配向処理工程(ST5)によって生じる強誘電性液晶セル100内部のイオン量の変化と内部電界の変化、及び、その結果として生じるFLC分子の配向方向の変化について図7を用いて説明する。図7(a)は、図6(a)と同様に強誘電性液晶セル100の断面の一部を模式的に示しており、各要素には前述した図3と同一番号を付している。
図7(a)に示すように、強誘電性液晶セル100には、透明電極111とアルミ電極121の異種金属によって発生する内部電界E1と、正イオン141と負イオン142の吸着によって発生する内部電界E2が存在する。また、配向処理工程(ST5)によって外部から印加される交番電界のオフセット値を外部印加電界EO(図面上の左端の下向きの矢印)とする。
ここで、内部電界E1=+10とし、配向処理工程(ST5)による外部印加電界EOを一例としてEO=-3とする。配向処理工程(ST5)の初めでは、正イオン141と負イオン142は、前述したように、それぞれイオン量10のイオンが各電極に吸着していると推測されるので(図6(a)参照)、内部電界E2=-10となる。
しかし、配向処理工程(ST5)による外部印加電界EO=-3によって、時間の経過とともに、吸着イオンはやがてイオン量3だけが取れて浮遊し、浮遊イオンの合計は、当初から浮遊していたイオン量2と合わせて、それぞれイオン量5となる。これにより、正イオン141と負イオン142の吸着イオンは、当初のイオン量10から減少して、それぞれイオン量7となり、吸着イオンによって発生する内部電界E2は、配向処理工程(ST5)の終盤では-7に減少する(図7(a))。
この結果、強誘電性液晶セル100の実内部電界ERは、配向処理工程(ST5)の初めでは、前述した式2により、実内部電界ER=10-10-3=-3となる。また、配向処理工程(ST5)の終盤では、前述したように内部電界E2=-7となるので、実内部電界ER=10-7-3=0になる。
このように、配向処理工程(ST5)の期間では、実内部電界ERが-3から最終的には、ほぼ零に変化する。しかし、実内部電界ERが-3からほぼ零になるまでにはある程度の時間を要するため、配向処理工程(ST5)の大部分の期間では、実内部電界ERの極性が十分なマイナス電界の状態であると推測できる。
この実内部電界ERがマイナス電界で、強誘電性液晶セル100への加熱温度TXをスメクティックA相乃至等方相を示す温度T1まで上昇させ、一定期間終了後に常温T0まで徐々に低下させることで(図15参照)、FLC分子131の層構造の再構築が行われ配向方向が変化する。
図7(b)は、配向処理工程(ST5)の実施後の強誘電性液晶セル100のFLC分子131の配向方向を示している。図7(b)に示すように、FLC分子131の配向方向は、実内部電界ERが十分なマイナス電界で配向処理(加熱温度TXと交番電界印加)が実施されるので、配向規制力方向(矢印E)に対して大きく傾き図面上で左側(黒安定)に位置するようになる。この結果、FLC分子131の配向方向は、ダブルドメインになることがなく、ディスプレイ用途として好ましい黒安定となる。
本発明者らは、第1の実施形態による製造方法によって製造した強誘電性液晶セル100を多数試作して検査した結果、全面が黒安定配向になる強誘電性液晶セルが高確率(場合よっては、ほぼ100%の確率)で得られることを確認した。
以上のように本発明の第1の実施形態によれば、強誘電性液晶セル100を所定の湿度と温度の環境に一定時間置く特定環境処理工程(ST4)により、強誘電性液晶セル100の内部に多くのイオンが溜まり、内部電界E1に応じて吸着するイオンが飽和状態となる。これにより、吸着したイオンによる内部電界E2と、異種金属による内部電界E1がバランスして、強誘電性液晶セル100のトータルとしての実内部電界ERが、ほぼ零となる。
さらに特定環境処理工程(ST4)のあとに実施される配向処理工程(ST5)によって、強誘電性液晶セル100のFLC分子131の配向方向が要求される黒安定となる。
これにより、全面が黒安定配向になる強誘電性液晶セルを、高確率で得ることができる強誘電性液晶セルの製造方法を実現できる。この結果、強誘電性液晶セルの駆動時に、表示ムラ、すなわち、表示画面の面内均一性(輝度や色味)の低下等がなく、高品質で安定した動作を実現する強誘電性液晶セルを提供できる。
なお、配向処理工程(ST5)において外部から印加される交番電界のオフセット値である外部印加電界EOについては、以下のことが言える。まず、FLC分子131を確実に黒安定の状態にするためには、外部印加電界EOの強さは、FLC分子131が白安定の状態から黒安定の状態へ切り替わる閾値(以下、スイッチング電界閾値と称する)以上であることが好ましい。しかし、外部印加電界EOの強さが大き過ぎると、FLC分子131が規定された可動範囲を超えて移動することで、FLC分子131の規定された配向状態が破壊されてしまうため、それを防止するためには、外部印加電界EOの強さは、FLC分子131の規定された配向状態が破壊される閾値(以下、配向破壊電界閾値と称する)よりも小さいことが好ましい。また、外部印加電界EOの強さは、大きいほど吸着イオンが取れ易くなり、実内部電界ERがマイナス電界からプラス電界に向かい易くなるため(図7(a))、それを抑制するためには、外部印加電界EOの強さは、できるだけ小さい(零に近い)ことが好ましい。これらのことを整理すると、外部印加電界EOの強さは、FLC分子131のスイッチング電界閾値と実質的に等しいことが特に好ましいと言える。
FLC分子131のスイッチング電界閾値は、例えば、0.2V程度の電圧に相当する電界であり、FLC分子131の配向破壊電圧閾値は、例えば、3.0V程度の電圧に相当する電界であるが、これらの値は、強誘電性液晶セル100の構成や環境(温度等)に応じて変化する。特に、FLC分子131のスイッチング電界閾値は、強誘電性液晶セル100の温度に応じて変化し易い。具体的には、FLC分子131のスイッチング電界閾値は、強誘電性液晶セル100が高温になるほど小さくなり、低温になるほど大きくなる傾向がある。ここで、配向処理工程(ST5)において強誘電性液晶セル100に印加される外部印加電界EOの強さは、常にFLC分子131のスイッチング電界閾値以上であることが好ましいが、FLC分子131のスイッチング電界閾値は、強誘電性液晶セル100の温度がT1とT0(図9参照)との間で変化することに連動して変化するため、外部印加電界EOの強さが一定の場合には、外部印加電界EOの強さは、常にFLC分子131のスイッチング電界閾値以上であるとは限らない。
このことに対しては、例えば、強誘電性液晶セル100の温度の変化(FLC分子131のスイッチング電界閾値の変化)に応じて、外部印加電界EOの強さを変化させることが考えられる。具体的には、FLC分子131のスイッチング電界閾値は、強誘電性液晶セル100の温度がT1からT0に向かって低下するに連れて大きくなるように変化するため、その変化に追従するように、外部印加電界EOの強さを、強誘電性液晶セル100の温度がT1からT0に向かって低下するに連れて大きくなるように変化させる。この時、外部印加電界EOの強さは、FLC分子131のスイッチング電界閾値と実質的に等しい状態を常に保って変化することが理想的である。
FLC分子131の配向方向は、スメクティックA相からスメクティックC相に相転移した時点(例えば、+80℃付近)で安定するため、外部印加電界EOの強さをFLC分子131のスイッチング電界閾値以上とするのは、その時点まで、もしくは、その時点だけでも有効である。その時点から温度がT0(常温)に低下するまでの間は、FLC分子131の配向方向が比較的安定しているため、必ずしも外部印加電界EOの強さをFLC分子131のスイッチング電界閾値以上とする必要はない。但し、FLC分子131の配向方向は、温度がT0付近になるまでは多少不安定な場合があるため、温度がT0付近になるまでは、外部印加電界EOの強さをFLC分子131のスイッチング電界閾値以上とすることが好ましい。
外部印加電界EOの強さは、常にFLC分子131の配向破壊電界閾値よりも小さいことが好ましいが、配向破壊電界閾値が強誘電性液晶セル100の温度に応じて変化する場合には、その変化に追従するように、外部印加電界EOの強さを変化させても良い。この時、外部印加電界EOの強さは、常に配向破壊電界閾値よりも小さく、且つ、常にスイッチング電界閾値以上である状態を保って変化することが理想的である。
[第2の実施形態]
[第2の実施形態による製造方法のフロー説明:図8]
次に、第2の実施形態による強誘電性液晶セルの製造方法のフローについて図8を用いて説明する。なお、図8に示すフローのうち、ステップST11~ST13は、前述した第1の実施形態のフロー(図1:ST1~ST3)と同様であるので、説明は省略する。
ステップST13(回路基板実装工程)終了後に、強誘電性液晶セルと回路基板から成るFLCモジュールを所定の湿度環境に一定時間置く特定環境処理工程、及び、強誘電性液晶セルを所定の温度で加熱すると共に、所定の交番電界を印加する配向処理工程が同時に実施される(ステップST14)。このステップST14を実施して、第2の実施形態の強誘電性液晶セルの製造工程は完了し、第1の実施形態と同様に、強誘電性液晶セル100と回路基板150で成るFLCモジュール200が完成する。
[特定環境処理工程と配向処理工程の同時実施工程(ST14)の説明:図9]
次に、特定環境処理工程と配向処理工程が同時に実施されるステップST14について図9を用いて詳細に説明する。なお、図5、図6、図14等も参照する。ステップST14は、前述したように、特定環境処理工程と配向処理工程が同時に実施される工程である。このため、強誘電性液晶セル100と回路基板150から成るFLCモジュール200を恒温恒湿槽300に入れる(図5参照)。
恒温恒湿槽300内では、特定環境処理工程のために湿度を制御し、また、配向処理工程のために温度を制御する。また、配向処理工程のために、FLCモジュール200に対して、所定のオフセット電圧を有する交番電界を所定の時間印加する(図14参照)。
図9は、ステップST14において、FLCモジュール200に対して、配向処理工程のために加熱する加熱温度TXの推移と、交番電界EXの印加タイミング、及び、特定環境処理工程のための加湿動作のタイミングを示すグラフである。
図9に示すように、期間t0は、配向処理工程として、FLCモジュール200に対して、加熱温度TXを常温T0からFLCがスメクティックA相乃至等方相を示す温度T1まで加熱する期間である。また、この期間t0では、交番電界EXは印加されない(OFF)。
また、この期間t0では、特定環境処理工程として、所定の湿度になるように加湿動作が実施される(加湿ON)。所定の湿度は、60%以上であり、90%程度が好ましい。
この期間t0での加湿動作によって、FLC130内のイオン量が増加し、この増加したイオンが電極の異種金属によって発生する内部電界E1によって、透明電極111とアルミ電極121に吸着すると推測される(図6参照)。
次に、期間t1では、加熱温度TXはFLC130がスメクティックA相乃至等方相を示す温度T1が維持され、次の期間t2では、加熱温度TXは常温T0まで徐々に冷却される。この期間t1と期間t2では、交番電界EXがONとなって、強誘電性液晶セル100に印加される。
また、この期間t1とt2では、特定環境処理工程として加湿動作は、実施したほうが好ましいが、期間t0で十分に加湿されていれば、期間t1とt2での加湿動作は、実施しなくてもよい。従って、期間t1とt2での加湿動作は、どちらでもよい(ONまたはOFF)。
以上のように、第2の実施形態では、ステップST14の期間t0で、特定環境処理工程による加湿動作が実施され、これにより、第1の実施形態と同様に、FLC130内のイオンが増加し、内部電界E1に対して飽和して吸着するので、実内部電界ERは、ほぼ零になると推測される(図6参照)。
また、期間t1では、配向処理工程として、交番電界EXが印加されながら、FLC130がスメクティックA相乃至等方相を示す温度T1が維持され、その後の期間t2では、交番電界EXが印加されながら常温T0まで徐々に冷却される。
この結果、強誘電性液晶セルは、第1の実施形態と同様に、実内部電界ERが十分なマイナス電界の状態で配向処理工程が実施されるので、全面が黒安定配向になる強誘電性液晶セルを、高確率で得ることができる強誘電性液晶セルの製造方法を実現できる。また、第2の実施形態は、ステップST14で特定環境処理工程と配向処理工程を同時に実施するので、製造工程を簡略化でき、製造工数を削減できるメリットがある。なお、第2の実施形態では、ステップST14の特定環境処理工程よりも前に、第1の実施形態におけるステップST4(図1参照)の特定環境処理工程を実施することも可能である。これによれば、FLC130内のイオン量を確実に増加させることができる。
特定環境理処理工程を実施するタイミングは、第1の実施形態と第2の実施形態において示したタイミングに限らず、その他のタイミングとすることが可能である。例えば、特定環境処理工程は、回路基板実装工程(図1、図8参照)よりも前に実施することが可能である。
100 強誘電性液晶セル
101 スペーサー
102 シール材
103 液晶注入口
104 封止材
106 動作エリア
110 ガラス基板(基板)
111 透明電極
112、122 有機配向膜
120 シリコン基板(基板)
121 アルミ電極
123 パッド
130 強誘電性液晶(FLC)
131 強誘電性液晶分子(FLC分子)
140a、140b 偏光板
141 正イオン
142 負イオン
150 回路基板
151 電極
152 ワイヤー
160 ROM
161 コネクタ
200 強誘電性液晶モジュール(FLCモジュール)
300 恒温恒湿槽

Claims (2)

  1. シール材を介して互いに貼り合わされた一対の基板間に強誘電性液晶が充填され且つ封止された強誘電性液晶セルを90%以上の湿度環境に一定時間置く特定環境処理工程と、
    前記強誘電性液晶セルをスメクティックA相乃至等方相に相転移する温度に加熱し、当該温度から徐々に冷却する間、前記強誘電性液晶セルに所定の電界を印加する配向処理工程と、
    を備えることを特徴とする強誘電性液晶セルの製造方法。
  2. 前記特定環境処理工程において、前記強誘電性液晶セルを回路基板と電気的に接続した状態で前記強誘電性液晶セルを90%以上の湿度環境に一定時間置く、ことを特徴とする請求項1に記載の強誘電性液晶セルの製造方法。
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