JP4318954B2 - 液晶パネル及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一対の基板間に液晶を封入して構成される液晶パネル及びその製造方法に関し、特に柱状のスペーサにより一対の基板間の間隔を一定に維持した液晶パネル及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶パネルは、薄くで軽量であるとともに消費電力が小さいという長所があり、電卓、家庭用電化製品及びOA(Office Automation )機器等のディスプレイに使用されている。また、液晶パネルは、空間光変調素子(Spacial Light Modulator )として、光情報処理システムの入力装置及び計算機ホログラムにも使用されている。
【0003】
OA機器のディスプレイに使用される液晶パネルは、通常、一対の基板間に液晶を封入した構造を有している。一方の基板には画素毎にTFT(Thin Film Transistor)及び画素電極が形成されており、他方の基板には各画素共通のコモン電極が形成されている。以下、画素電極及びTFTが設けられている基板をTFT基板と呼び、TFT基板に対向して配置される基板を対向基板と呼ぶ。
【0004】
TFT基板と対向基板との間隔(セルギャップ)は、通常、樹脂又はセラミック等からなる球形のビーズにより一定に維持される。このビーズは、TFT基板と対向基板とをシール剤で接合する際に、TFT基板及び対向基板のいずれか一方の基板上に散布される。
【0005】
しかしながら、基板上にビーズを散布する方法では、基板全体にわたってビーズが均一に分布するとは限らない。基板全体にわたってビーズが均一に分布していない場合は、セルギャップの面内ばらつきが発生して表示品質の低下の原因となる。また、液晶分子はビーズの表面に沿って配向する性質があるので、画素領域内にビーズが存在すると、配向異常が発生して表示品質が低下する。
【0006】
特開平8−220546号公報、特開2001−83517号公報及び特開2001−201750号公報には、感光性レジストを使用して、画素領域の間(例えば、データバスラインとゲートバスラインとが交差する部分)に柱状のスペーサを形成することが提案されている。
【0007】
しかし、これらの公報に記載された液晶パネルでは、スペーサが一方の基板には接合されているものの他方の基板には接合されていないため、耐衝撃性が低いという欠点がある。即ち、図9に示すように、スペーサ51間の点Aに外圧が加えられて一対の基板50,60のうちの一方が変形した場合に、点Aの周囲のセルギャップが大きく変動して、干渉縞が発生したり、色調のばらつき及び駆動電圧特性のばらつき等が発生する。
【0008】
このような不具合を回避するためには、熱によりスペーサを軟化させた状態で圧力を加えてスペーサを一対の基板の両方に接合し、その後スペーサを硬化することが考えられる。しかし、この場合は、基板と接合する際にスペーサの高さが変化してしまうので、セルギャップを所望の値とすることが難しくなる。
【0009】
特開2000−155321号公報には、熱により変形しない材質のビーズを感光性材料に混入し、この感光性材料の膜を使用してビーズ入りの柱状スペーサを形成することによってセルギャップを所定の値とすることが提案されている。しかし、この方法では、粒径が均一なビーズは高価であるのにスペーサとなる部分以外の膜中のビーズを捨ててしまうので、ビーズの無駄が多く、製造コストが上昇する。また、この方法では、各スペーサ中に必ずビーズが存在しているとは限らず、パネルの全体にわたってセルギャップを均一に維持することが難しい。ビーズのないスペーサの割合を少なくするために、感光性材料に混入するビーズの量を増加することも考えられるが、そうすると、ビーズがフィラーとして作用し、感光性材料の膜を均一の厚さに形成することができず、その結果スペーサの高さにばらつきが発生する。
【0010】
【特許文献1】
特開平8−220546号公報
【特許文献2】
特開2001−83517号公報
【特許文献3】
特開2001−201750号公報
【特許文献4】
特開2000−155321号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、感光性レジストによりスペーサを形成する従来の液晶パネルの製造方法には、耐衝撃性が十分でない、セルギャップを均一にすることができない、又は製造コストが高くなる等の問題点がある。
【0012】
また、スペーサが一対の基板の両方に接合している場合、感光性レジストにより形成されたスペーサは一般的に柔軟性が低いため、環境温度の変化による液晶の体積変化に追従することができず、スペーサが基板から剥れてしまうこともある。このような不具合を回避するために、柔軟性が高い樹脂によりスペーサを形成することが考えられる。しかし、この場合は、大きな外力が加えられたときに一対の基板が接触して配向膜が損傷し、表示品質が著しく低下するという新たな問題点が発生する。
【0013】
以上から、本発明の目的は、環境温度の変化による液晶の体積変化に追従できるスペーサを有し、耐衝撃性が高く、セルギャップが均一であり、製造コストが低い液晶パネル及びその製造方法を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記した課題は、相互に対向して配置された一対の基板と、第1の樹脂と、硬化温度が前記第1の樹脂よりも高く且つ硬化後の弾力性が前記第1の樹脂よりも高い第2の樹脂とが積層されて構成され、前記一対の基板の両方に接合して前記一対の基板の間隔を一定に維持する複数のスペーサと、前記一対の基板の間に封入された液晶とを有することを特徴とする液晶パネルにより解決する。
【0015】
また、上記した課題は、第1の基板上に第1の樹脂を塗布して第1の樹脂膜を形成する工程と、前記第1の樹脂膜の上に、前記第1の樹脂よりも硬化温度が高く且つ硬化後の弾力性が前記第1の樹脂よりも高い第2の樹脂を塗布して第2の樹脂膜を形成する工程と、前記第1及び第2の樹脂膜をパターニングして前記第1及び第2の樹脂膜が積層された構造のスペーサを形成する工程と、シール剤と前記スペーサとにより前記第1の基板と前記第2の基板とを接合し、前記シール剤、前記第1及び第2の基板で囲まれる空間内に液晶を封入する工程とを有することを特徴とする液晶パネルの製造方法により解決する。
【0016】
本発明においては、硬化温度(硬化開始温度)が相互に異なる複数の樹脂膜を積層してスペーサを形成する。一般的に、硬化温度が低い樹脂は柔軟性(弾力性)が低く、硬化温度が高い樹脂は柔軟性が高いという性質がある。
【0017】
第1の基板上に第1及び第2の樹脂膜を積層して構成された複数のスペーサを形成し、これらのスペーサを挟んで第1の基板と第2の基板とを配置して加熱すると、まず下層の第1の樹脂膜が硬化する。そして、上層の第2の樹脂膜が熱により軟化して第2の基板に接合し、その後、第2の樹脂膜が硬化する。このようにして第1及び第2の樹脂膜が時間をずらして硬化するので、スペーサ全体が同時に軟化状態になった後に硬化する場合に比べて、セルギャップのばらつきが抑制される。
【0018】
また、本発明においてはスペーサを介して第1及び第2の基板が接合されているため、外圧が加えられても第1及び第2の基板の間隔が大きく広がることが回避される。従って、耐衝撃性が向上する。また、第1の樹脂膜の柔軟性が低いため、大きな応力が加えられても、第1及び第2の基板が直接接触することがなく、信頼性が高い。更に、第2の樹脂膜の柔軟性が高いので、環境温度の変化により液晶の体積が変化しても第2の樹脂膜が伸縮して、スペーサが基板から剥れることが防止される。
【0019】
第1及び第2の樹脂として感光性樹脂(フォトレジスト)を使用すると、第1及び第2の樹脂膜を通常のフォト工程で容易にパターニングすることができる。この場合に、第1の樹脂膜の露光感度は第2のパターニングの露光感度よりも高くすることが好ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0021】
(液晶パネル)
図1は本発明の実施の形態の液晶パネルの1画素を示す平面図、図2は図1のI−I線による断面図である。なお、本実施の形態は、本発明を透過型液晶表示パネルに適用した例について説明している。
【0022】
本実施の形態の液晶表示パネルは、図2に示すように、相互に対向して配置されたTFT基板10及び対向基板20と、これらのTFT基板10及び対向基板20の間に封入された液晶30とにより構成されている。なお、TFT基板10の下、及び対向基板20の上にはそれぞれ偏光板が配置される。また、TFT基板10の下方には、光源(バックライト)が配置される。
【0023】
TFT基板10は、図1,図2に示すように、ガラス基板11と、ガラス基板11上に形成されたゲートバスライン12、データバスライン14、TFT15及び画素電極18等により構成されている。ゲートバスライン12は水平方向に延在しており、データバスライン14は垂直方向に延在している。ゲートバスライン12とデータバスライン14との間にはゲート絶縁膜13が形成されており、このゲート絶縁膜13によりゲートバスライン12とデータバスライン14とは電気的に分離されている。これらのゲートバスライン12及びデータバスライン14により区画される領域がそれぞれ画素領域である。画素電極18及びTFT15は、各画素領域に1個づつ形成されている。
【0024】
本実施の形態では、図1に示すように、ゲートバスライン12の一部がTFT15のゲート電極となっており、チャネル保護膜16の幅方向の両側にはそれぞれTFT15のソース電極15s及びドレイン電極15dが配置されている。ソース電極15sは絶縁膜17に形成されたコンタクトホール17aを介して画素電極18に電気的に接続され、ドレイン電極15dはデータバスライン14に電気的に接続されている。また、画素電極18の上にはポリイミド等からなる配向膜19が形成されている。この配向膜19の表面には、電界が印加されていないときの液晶分子の配向方向を決めるラビング処理が施されている。
【0025】
一方、対向基板20は、ガラス基板21と、このガラス基板21の一方の面側(図2では下側)に形成されたブラックマトリクス22、絶縁膜23及びコモン電極24とにより構成されている。ブラックマトリクス22は、画素間の領域及びTFT形成領域を覆うように形成されている。また、絶縁膜23は、ガラス基板21の下側に、ブラックマトリクス22を覆うようにして形成されている。絶縁膜23の下にはコモン電極24が形成されており、このコモン電極24の下にはポリイミド等からなる配向膜25が形成されている。この配向膜25の表面にも、電界が印加されていないときの液晶分子の配向方向を決めるラビング処理が施されている。
【0026】
また、対向基板20には、対向基板20とTFT基板10との間隔を一定に維持するためのスペーサ26が形成されている。このスペーサ26は、硬化温度が低く柔軟性が低い樹脂により形成された第1の樹脂膜26aと、硬化温度が高く柔軟性が高い樹脂により形成された第2の樹脂膜26bとの積層構造を有している。
【0027】
これらのTFT基板10及び対向基板20は、配向膜19,25が形成された面を相互に対向させて配置され、スペーサ26及びシール剤(図示せず)により接合されている。
【0028】
このように構成された液晶パネルにおいて、画像を表示する際には駆動回路(図示せず)から垂直方向に並ぶゲートバスライン12に対し順番に走査信号を供給するとともに、データバスライン14に表示信号を供給する。走査信号が供給されたゲートバスライン12に接続しているTFT15はオン状態となり、画素電極18にはTFT15を介して表示信号が書き込まれる。これにより、画素電極18とコモン電極24との間に表示信号に応じた電界が発生して液晶分子の向きが変化し、その結果、画素を透過する光の光量が変化する。各画素毎に透過光の光量を制御することにより、液晶パネルに所望の画像を表示することができる。
【0029】
(液晶パネルの製造方法)
以下、本発明の実施の形態の液晶パネルの製造方法について説明する。
【0030】
まず、図1,図2に示すようなTFT基板10及び対向基板20をそれぞれ製造する。
【0031】
TFT基板10の製造方法を簡単に説明する。まず、PVD(Physical Vapor Deposition )法により、ガラス基板11上に第1の金属膜を形成し、フォトリソグラフィ法により第1の金属膜をパターニングしてゲートバスライン12を形成する。次に、ガラス基板11の上側全面にゲート絶縁膜13を形成し、その上にTFT15の動作層となる第1のシリコン膜と、チャネル保護膜16となるSiN膜とを形成する。その後、フォトリソグラフィ法によりSiN膜をパターニングして、ゲートバスライン12の上方の所定の領域にチャネル保護膜16を形成する。
【0032】
次に、ガラス基板11の上側全面に、オーミックコンタクト層となる不純物が高濃度に導入された第2のシリコン膜を形成し、続けて第2のシリコン膜の上に第2の金属膜を形成する。そして、フォトリソグラフィ法により第2の金属膜、第2のシリコン膜及び第1のシリコン膜をパターニングして、TFT15の動作層となるシリコン膜の形状を確定するとともに、データバスライン14、ソース電極15s及びドレイン電極15dを形成する。
【0033】
次いで、ガラス基板11の上側全面に絶縁膜17を形成し、この絶縁膜17の所定の位置にコンタクトホール17aを形成する。その後、ガラス基板11の上側全面にITO(Indium-Tin Oxide)等の透明導電体からなる膜を形成する。そして、この透明導電体の膜をパターニングすることにより、コンタクトホール17aを介しTFT15のソース電極15sに電気的に接続された画素電極18を形成する。その後、ガラス基板11の上側全面にポリイミドからなる配向膜19を形成する。このようにして、TFT基板10が完成する。
【0034】
以下、対向基板20の製造方法について簡単に説明する。まず、ガラス基板21の上にCr等の金属膜を形成し、この金属膜をパターニングしてブラックマトリクス22を形成する。その後、ガラス基板21の上に絶縁膜23を形成する。カラー型液晶表示パネルを製造する場合は、絶縁膜23を赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の樹脂により形成し、各画素毎に赤色、緑色及び青色のうちのいずれか1色の絶縁膜23を配置する。
【0035】
次いで、絶縁膜23の上に、ITO等の透明導電体によりコモン電極24を形成する。その後、コモン電極24の上にポリイミドからなる配向膜25を形成する。このようにして、対向基板20が完成する。
【0036】
次に、TFT基板10及び対向基板20のうちのいずれか一方の側に柱状のスペーサ26を形成する。本実施の形態では、前述したように、対向基板20の側にスペーサ26を形成している。
【0037】
即ち、図3(a)に示すように、スピンコート法により、対向基板20の上に硬化温度が例えば150℃の第1の感光性レジストを約1μmの厚さに塗布してレジスト膜35aを形成し、このレジスト膜35aを100℃の温度で1分間プリベーキングする。
【0038】
次に、レジスト膜35aの上に硬化温度が例えば170℃の第2の感光性レジストを約2μmの厚さに塗布してレジスト膜35bを形成し、このレジスト膜35bを100℃の温度で1分間プリベーキングする。
【0039】
なお、第1及び第2の感光性レジストの硬化温度は上述した温度に限定するものではないが、第1の感光性レジストは、第2の感光性レジストよりも硬化温度が低く、硬化後の柔軟性が低いことが必要である。
【0040】
また、第1の感光性レジストは、第2の感光性レジストよりも光に対する感度が高いものであることが好ましい。第1の感光性レジストの感度が第2の感光性レジストよりも低いと、第2の感光性レジストに合わせて露光量を設定したときに、第1の感光性レジストに対する露光が不足してしまうことが考えられる。
【0041】
更に、第1の感光性レジストの硬化温度は、第2の感光性レジストの軟化温度以下であることが好ましい。
【0042】
次に、図3(b)に示すように、例えば直径が10μmの円形パターンが縦方向及び横方向にいずれも100μmのピッチで並んだ露光マスク41を介してレジスト膜35a,35bに紫外線を露光する。次いで、現像処理を施すと、図3(c)に示すように、第1の樹脂膜26a(レジスト膜35a)と第2の樹脂膜26b(レジスト膜35b)とが積層されてなる円柱状のスペーサ26が形成される。その後、対向基板20の表面を純水で洗浄した後、乾燥させる。
【0043】
次に、図4に示すように、TFT基板10及び対向基板20のうちのいずれか一方に、表示領域を囲むようにしてシール剤36を塗布する。但し、液晶注入口となる部分にはシール剤36を塗布しないでおく。
【0044】
その後、図5に示すように、真空チャンバ内でTFT基板10と対向基板20との位置合わせを行って重ね合わせ、セルギャップが例えば2μmとなるように圧力を加えながらシール剤36を熱処理して硬化させる。但し、シール剤36は、配向膜19,25に施したラビング処理の効果が失われない程度の温度で硬化させることが必要である。
【0045】
このときの熱及び圧力により、スペーサ26がTFT基板10に接合される。この場合に、最初に第1の樹脂膜26aが硬化する。その後、第2の樹脂膜26bが温度と圧力とにより変形してTFT基板10に接合する。従って、第1の樹脂膜26a及び第2の樹脂膜26bの厚さはいずれも約1μmとなる。以下、TFT基板10と対向基板20とを貼合わせてなる構造物(液晶封入前のパネル)を空パネルという。
【0046】
一般的に、配向膜の温度が180℃を超えると、ラビング処理の効果が失われるため、180℃以下の温度でシール剤36を硬化させることが必要である。但し、180℃以下の温度であっても、長時間熱処理すると配向膜に施したラビング処理の効果が失われることが考えられるため、シール剤36を硬化させるための熱処理の時間は2時間以内、より好ましくは1時間以内とする。また、このとき同時にパネル内に封入した液晶を再配向させるためには、110℃以上の温度で熱処理することが必要である。なお、シール剤36として光硬化型樹脂を使用してもよい。
【0047】
このようにして空パネルを形成した後、真空注入法によりTFT基板10と対向基板20との間に液晶30を封入する。即ち、図6に示すように、液晶30を入れた容器37と空パネル40とを真空チャンバ(図示せず)内に入れ、真空チャンバ内を排気して真空状態とする。その後、空パネル40の液晶注入口39を液晶30中に入れて、真空チャンバ内を大気圧に戻す。そうすると、空パネル40の内部空間の圧力と大気圧との差により液晶30が空パネル40内に進入し、パネルの内部空間に液晶30が充填される。その後、液晶30が充填されたパネルを2枚の平板で挟んで余分な液晶30を押し出し、液晶注入口39を封止樹脂で封止する。このようにして、本実施の形態に係る液晶パネルが完成する。
【0048】
なお、温度差を利用して空パネル内に液晶を注入してもよい。例えば、空パネルを十分に加熱した後に冷却してパネル内の空間を減圧状態にし、液晶をパネル内に注入することができる。
【0049】
本実施の形態においては、スペーサ26がTFT基板10及び対向基板20の両方に接合されているので、外圧に対する耐性(耐ストレス性)が高い。例えば、図7に示すように、スペーサ26間の部分に外圧が加えられても、基板10がスペーサ26から離れることがなく、セルギャップの大きな変動が回避される。これにより、干渉縞の発生、色調のばらつき及び駆動電圧特性のばらつきが回避される。
【0050】
また、本実施の形態においては、スペーサ26を構成する第2の樹脂膜26bの柔軟性が高いので、環境温度の変化により液晶の体積が変化して基板間のギャップを広げる方向に応力が発生しても、第2の樹脂膜26bが伸びて体積の変化に追従する。これにより、スペーサ26がTFT基板10又は対向基板20から剥れてしまうことが回避される。
【0051】
更に、本実施の形態では、第1の樹脂膜26bの柔軟性が低いので、大きな外力が加えられてもTFT基板10と対向基板20とが直接接触することがなく、配向膜の破損等の不具合の発生が回避される。
【0052】
なお、本発明は、ツイステッドネマティック(TN)型液晶、スーパーツイステッドネマティック(STN)型液晶、ネマティックコレステリック相転移型液晶、ポリマー分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶、ツイストグレインバウンダリ液晶及び電傾効果を示すスメクティックA相液晶等を用いた液晶パネルに適用することができる。
【0053】
また、上述した実施の形態では本発明を透過型液晶パネルに適用した場合について説明したが、これにより本発明の適用範囲が透過型液晶パネルに限定されるものではない。本発明は、透過型液晶パネルの他にも、反射型液晶パネルや空間光変調素子に適用することができる。
【0054】
更に、上記の実施の形態ではスペーサ26が2層の樹脂層26a,26bにより構成されている場合について説明したが、スペーサ26が3層以上の樹脂膜により構成されていてもよい。
【0055】
以下,本発明の実施例に係る液晶パネルを実際に製造し、外圧を加えたときの表示品質を調べた結果について、比較例と比較して説明する。
【0056】
(実施例1)
長さが200mm、幅が100mm、厚さが1.1mmの2枚のガラス基板を用意した。そして、これらのガラス基板の一方の面上にそれぞれITO膜を形成し、透明電極とした。
【0057】
次に、スピンコータを用いて、透明電極の上に、濃度が3wt%のポリイミド溶液を2000rpmの回転数で塗布してポリイミド膜を形成した後、ポリイミド膜を200℃の温度で30分間焼成して配向膜とした。
【0058】
このようにして透明電極及び配向膜を形成した2枚のガラス基板の一方に、スピンコータを用いて硬化温度が150℃のポジ型感光性レジスト(AZ−5200:クラリアント社製)を塗布し、厚さが1.0μmの第1のレジスト膜を形成した。そして、ガラス基板をホットプレートの上に載せ、第1のレジスト膜を100℃の温度で1分間プリベーキングした。
【0059】
次に、第1のレジスト膜の上に、スピンコータを用いて硬化温度が170℃のポジ型感光性ポリシラン系レジスト(グラシア:日本ペイント(株)製)を塗布し、厚さが2.0μmの第2のレジスト膜を形成した。そして、ガラス基板をホットプレートの上に載せ、第2のレジスト膜を100℃の温度で1分間プリベーキングした。
【0060】
次に、直径が10μmの円形のパターンが縦方向及び横方向にいずれも100μmのピッチで並んだ露光マスクを介して第1及び第2のレジスト膜を10秒間露光し、その後現像処理を行って、硬化温度が相互に異なる第1及び第2の樹脂層からなるスペーサを形成した。その後、ガラス基板の表面を純水で洗浄した後、乾燥させた。
【0061】
次に、両方のガラス基板の表面の配向膜をラビング処理した。その後、シール剤としてエポキシ樹脂を使用し、印刷法により一方のガラス基板の上にシール剤を塗布した。このとき、シール剤は、液晶注入口となる部分を除き、ガラス基板の縁部に沿って枠状に塗布した。なお、シール剤として使用したエポキシ樹脂は、150℃の温度で1時間で硬化するものである。
【0062】
次に、この一対のガラス基板を、透明電極が向かい合うように貼り合わせた後、真空袋に入れた。そして、170℃の温度で1時間加熱して、シール剤であるエポキシ樹脂を硬化させた。
【0063】
このようにしてシール剤及びスペーサにより固定された一対の基板(空パネル)の間に、真空注入法により強誘電性液晶を注入し、液晶注入口を封止して強誘電性液晶表示パネルとした。
【0064】
この液晶表示パネルの上下にそれぞれ偏光板を配置した。偏光板は、偏光軸が直交するように(クロスニコルス)配置した。
【0065】
その後、先端径が0.8mmのペン先により、ペン荷重100gで液晶表示パネルの中央を押した。しかし、ペン先の周囲に表示色の変化はみられず、セルギャップを小さくする外力に対して、耐ストレス性が認められた。
【0066】
また、液晶表示パネルの中央部を支持し、両端に300gの荷重を加えたが、画面全体にわたって表示色の変化は観察されなかった。
【0067】
(実施例2)
第2のレジスト膜として硬化温度が160℃の感光性ソルダーレジスト(SK−66:信越シリコーン社製)を使用したこと以外は実施例1と同一条件で液晶表示パネルを製造した。
【0068】
この液晶表示パネルを実施例1と同様に試験した結果、実施例1と同様に良好な耐ストレス性を有することが確認できた。
【0069】
(実施例3)
基板間に封入する液晶としてツイステッドネマティック型液晶を使用し、セルギャップを6μmにしたこと以外は実施例1と同一条件で液晶表示パネルを製造した。
【0070】
この液晶表示パネルを実施例1と同様の方法で試験した結果、実施例1と同様に良好な耐ストレス特性を有することが確認できた。
【0071】
(実施例4)
基板間に封入する液晶としてスーパーツイステッドネマティック型液晶を使用し、セルギャップを6μmにしたこと以外は実施例1と同一条件で液晶表示パネルを製造した。
【0072】
この液晶表示パネルを実施例1と同様の方法で試験した結果、実施例1と同様に良好な耐ストレス特性を有することが確認できた。
【0073】
(実施例5)
基板間に封入する液晶としてネマティックコレステリック相転移型液晶を使用し、セルギャップを6μmにしたこと以外は実施例1と同一条件で液晶表示パネルを製造した。
【0074】
この液晶表示パネルを実施例1と同様の方法で試験した結果、実施例1と同様に良好な耐ストレス特性を有することが確認できた。
【0075】
(実施例6)
基板間に封入する液晶として反強誘電性液晶を使用したこと以外は実施例1と同一条件で液晶表示パネルを製造した。
【0076】
この液晶表示パネルを実施例1と同様の方法で試験した結果、実施例1と同様に良好な耐ストレス特性を有することが確認できた。
【0077】
(実施例7)
基板間に封入する液晶としてツイストバウンダリ液晶を使用し、セルギャップを6μmにした以外は実施例1と同一条件で液晶表示パネルを製造した。
【0078】
この液晶表示パネルを実施例1と同様の方法で試験した結果、実施例1と同様に良好な耐ストレス特性を有することが確認できた。
【0079】
(実施例8)
基板間に封入する液晶としてスメクティックA相液晶を使用し、セルギャップを6μmにした以外は実施例1と同一条件で液晶表示パネルを製造した。
【0080】
この液晶表示パネルを実施例1と同様の方法で試験した結果、実施例1と同様に良好な耐ストレス特性を有することが確認できた。
【0081】
(実施例9)
滴下注入法により基板間に液晶を注入した以外は実施例1と同様と同じ条件で液晶表示パネルを製造した。即ち、図8に示すように、スペーサを形成した対向基板20上に表示領域を囲むようにしてシール剤36を塗布した。その後、ディスペンサーにより、対向基板20の上に強誘電性液晶30を滴下した。この場合、液晶30の滴下量はパネルの大きさとセルギャップとに応じて決定し、対向基板20上に分散させて滴下した。その後、対向基板20の上にTFT基板(図示せず)を重ね合わせ、加熱によりシール剤36を硬化させた。
【0082】
このようにして製造した液晶表示パネルを実施例1と同様の方法で試験した結果、実施例1と同様に良好な耐ストレス特性を有することが確認できた。なお、この実施例9では滴下注入法により基板間に液晶を封入しているので、実施例1に比べて製造に要する時間を大幅に短縮することができた。
【0083】
(比較例1)
第1のレジスト膜を硬化温度が170℃のポジ型感光性レジスト(グラシア:日本ペイント社製)により形成し、第2のレジスト膜を硬化温度が150℃のポジ型感光性レジスト(AZ−5200:クラリアント社製)により形成したこと以外は実施例1と同一条件で液晶表示パネルを製造した。
【0084】
この液晶表示パネルを実施例1と同様の方法で試験した。その結果、実施例1と同様に良好な耐ストレス特性を有することが確認できた。しかし、この液晶表示パネルではパネル全体に色むらが見られ、表示品質が大幅に低下した。これは、第1のレジスト膜の軟化温度が第2のレジスト膜の硬化温度よりも低いので、加熱加圧工程により第1のレジスト膜が潰れて変形し、その後に第2のレジスト膜が溶融硬化して他方の基板に接合したためにパネル内のギャップにばらつきが発生したことによると考えられる。
【0085】
(比較例2)
実施例1と同様に柱状スペーサ(軟化温度150℃)を用い、シール剤の硬化温度を190℃で1時間で硬化させたこと以外は実施例1と同様にして液晶パネルを形成した。その結果、配向膜に熱によるダメージが見られ、表示品質が低下した。
【0086】
(付記1)相互に対向して配置された一対の基板と、硬化温度が異なる複数の樹脂膜が積層されて構成され、前記一対の基板の両方に接合して前記一対の基板の間隔を一定に維持する複数のスペーサと、前記一対の基板の間に封入された液晶とを有することを特徴とする液晶パネル。
【0087】
(付記2)第1の基板上に第1の樹脂を塗布して第1の樹脂膜を形成する工程と、前記第1の樹脂膜の上に、第1の樹脂よりも硬化温度が高い第2の樹脂を塗布して第2の樹脂膜を形成する工程と、前記第1及び第2の樹脂膜をパターニングして前記第1及び第2の樹脂膜が積層された構造のスペーサを形成する工程と、シール剤と前記スペーサとにより前記第1の基板と第2の基板とを接合し、前記シール剤、前記第1及び第2の基板で囲まれる空間内に液晶を封入する工程とを有することを特徴とする液晶パネルの製造方法。
【0088】
(付記3)前記第1の樹脂の硬化温度が前記第2の樹脂の軟化温度以下であることを特徴とする付記2に記載の液晶パネルの製造方法。
【0089】
(付記4)前記第1の樹脂及び第2の樹脂がいずれも感光性樹脂であることを特徴とする付記2に記載の液晶パネルの製造方法。
【0090】
(付記5)前記第1の樹脂の露光感度が前記第2の樹脂の露光感度よりも高いことを特徴とする付記4に記載の液晶パネルの製造方法。
【0091】
(付記6)前記第1及び第2の樹脂の硬化温度が前記第1及び第2の基板の表面に形成された配向膜のラビング効果を損なわない温度であることを特徴とする付記2に記載の液晶パネルの製造方法。
【0092】
(付記7)前記シール剤の硬化温度が110乃至180℃であることを特徴とする付記2に記載の液晶パネルの製造方法。
【0093】
(付記8)前記シール剤は、前記温度で2時間以内に硬化するものであることを特徴とする付記7に記載の液晶パネルの製造方法。
【0094】
(付記9)前記液晶を封入する工程は、真空注入法により実施することを特徴とする付記2に記載の液晶パネルの製造方法。
【0095】
(付記10)前記液晶を封入する工程では、温度差を利用して前記第1及び第2の基板間に液晶を注入することを特徴とする付記2に記載の液晶パネルの製造方法。
【0096】
(付記11)前記液晶を封入する工程は、滴下注入法により実施することを特徴とする付記2に記載の液晶パネルの製造方法。
【0097】
(付記12)前記シール剤が光硬化型樹脂であることを特徴とする付記2に記載の液晶パネルの製造方法。
【0098】
(付記13)前記液晶として、ツイステッドネマティック型液晶、スーパーツイステッドネマティック型液晶、ネマティックコレステリック相転移型液晶、ポリマー分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶、ツイストグレインバウンダリ液晶、及びスメクティックA相液晶からなる群から選択されたいずれか一種を使用することを特徴とする付記2に記載の液晶パネルの製造方法。
【0099】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、硬化温度が相互に異なる複数の樹脂膜を積層してスペーサを形成するので、スペーサを挟んで第1及び第2の基板を接合する際に、セルギャップのばらつきが抑制される。また、本発明においては、スペーサを介して第1及び第2の基板が接合されるので、耐衝撃性が高い液晶パネルが得られる。更に、本発明においては、大きな外力が加えられても第1及び第2の基板が直接接触することが回避される。更にまた、本発明においては、環境温度の変化により液晶の体積が変化してセルギャップの大きくなる方向に応力が発生しても、硬化温度が高い樹脂のもつ柔軟性により、スペーサが基板から剥れることが防止される。これらにより、信頼性が高い液晶パネルが得られるという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の実施の形態の液晶パネルの1画素を示す平面図である。
【図2】図2は、図1のI−I線による断面図である。
【図3】図3(a)〜(c)はスペーサの形成方法を示す模式図である。
【図4】図4は、基板上に塗布したシール剤を示す平面図である。
【図5】図5は、TFT基板と対向基板とを接合する工程を示す模式図である。
【図6】図6は、真空注入法を示す模式図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態の液晶パネルに外圧が加えられたとき載せるギャップの変化を示す模式図である。
【図8】図8は、滴下注入法を示す模式図である。
【図9】図9は、従来の液晶パネルに外圧が加えられたとき乗せるギャップの変化を示す模式図である。
【符号の説明】
10,60…TFT基板、
11,21…ガラス基板、
12…ゲートバスライン、
13…ゲート絶縁膜、
14…データバスライン、
15…TFT、
15d…ドレイン電極、
15s…ソース電極、
16…チャネル保護膜、
17,23…絶縁膜、
17a…コンタクトホール、
18…画素電極、
19,25…配向膜、
20,50…対向基板、
22…ブラックマトリクス、
24…コモン電極、
26,51…スペーサ、
26a…第1の樹脂膜、
26b…第2の樹脂膜、
30…液晶、
35a…第1のレジスト膜、
35b…第2のレジスト膜、
36…シール剤、
39…液晶注入口、
40…空パネル。
Claims (5)
- 相互に対向して配置された一対の基板と、
第1の樹脂と、硬化温度が前記第1の樹脂よりも高く且つ硬化後の弾力性が前記第1の樹脂よりも高い第2の樹脂とが積層されて構成され、前記一対の基板の両方に接合して前記一対の基板の間隔を一定に維持する複数のスペーサと、
前記一対の基板の間に封入された液晶と
を有することを特徴とする液晶パネル。 - 第1の基板上に第1の樹脂を塗布して第1の樹脂膜を形成する工程と、
前記第1の樹脂膜の上に、前記第1の樹脂よりも硬化温度が高く且つ硬化後の弾力性が前記第1の樹脂よりも高い第2の樹脂を塗布して第2の樹脂膜を形成する工程と、
前記第1及び第2の樹脂膜をパターニングして前記第1及び第2の樹脂膜が積層された構造のスペーサを形成する工程と、
シール剤と前記スペーサとにより前記第1の基板と前記第2の基板とを接合し、前記シール剤、前記第1及び第2の基板で囲まれる空間内に液晶を封入する工程と
を有することを特徴とする液晶パネルの製造方法。 - 前記第1の樹脂の硬化温度が前記第2の樹脂の軟化温度以下であることを特徴とする請求項2に記載の液晶パネルの製造方法。
- 前記第1の樹脂及び第2の樹脂がいずれも感光性樹脂であることを特徴とする請求項2に記載の液晶パネルの製造方法。
- 前記第1の樹脂の露光感度が前記第2の樹脂の露光感度よりも高いことを特徴とする請求項4に記載の液晶パネルの製造方法。
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