JP7105552B2 - 農業用ポリオレフィン系多層フィルム - Google Patents

農業用ポリオレフィン系多層フィルム Download PDF

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Description

本発明は、農業用ポリオレフィン系多層フィルム、より詳しくは、長期使用後にも透明性低下が少なく、より長期間使用可能な農業用ポリオレフィン系多層フィルムに関する。
近年、ポリオレフィン系樹脂を主体とした農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムは、密度が塩化ビニル樹脂より小さいために軽く、焼却しても有毒ガスの発生が少なく、更にインフレーション成形法により幅継ぎの為の接着加工を必要としない広幅フィルムが安価に提供できることなどから盛んに利用されるようになってきている。
農業用ハウスは年々大型化しており、ハウスをフィルムで覆うためのフィルム展張作業は多くの人手を要するようになってきている。その一方で、農業従事者の数は年々減少すると共に高齢化が進行しており、毎年の展張作業に人手を確保することは容易ではない状況にある。
この様な状況に鑑み、ハウスに展張するフィルムは展張作業が容易で極力張り替えまでの使用期間の長いフィルムへの要求が増えてきており、単年度から長くても3年程度迄の使用を前提とした農業用塩化ビニル系フィルムよりも、より長期間展張可能な農業用ポリオレフィン系フィルムへの需要が増えている状況にある。
農業用ポリオレフィン系フィルムの中でも、防曇塗膜をコーティング処理することにより、数年程度の展張を可能にした商品が多く販売されて来ているものの、耐候後の性能が十分でなく、より耐候性が良好な製品が求められていた。言いかえれば、8年以上の長寿命を有し、長期間にわたり当初性能を保持できる高性能な農業用フィルムの開発が求められている。
この様な要求に対して、フィルムの具備すべき性能としては、耐候性、耐農薬性などが挙げられる。施設園芸農家が農業用フィルムを張り替える動機として、破れが生じての張替事例は少なく、実際には、長期使用後の透明性低下により、ハウス内への日射量が低下する為、張替実施するケースが多いことが判っている。
これらの耐候性の改良検討に関して、これまで最も困難とされてきた技術は耐候後の透明性の付与であり、耐候剤の組み合わせを具体的に開示して耐候後の透明性を付与する方法の提案がなく、10年程度の使用期間を設定した商品であっても使用末期には、破れは生じないものの透明性が低下し、555nm直進光線透過率で50%を下回る状態になり、実使用上は問題があった。過酷な条件下で使用される農業用フィルムの場合、更なる耐候後の透明性改良が要求されており、更なる改良、及び、良好な耐候後透明性を与えうる耐候剤、紫外線吸収剤の具体的な組み合わせ方法が求められていた。
また、耐候性の改良効果の更なる持続性を目的としてエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体を添加した農業用フィルム(例えば、特許文献1及び2等)が考案されている。このエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、その製造方法、分子構造から通常のヒンダードアミン系耐候剤とは明確に区別される(例えば、特許文献3及び4)。しかしながら、このエチレン系共重合体は樹脂との相溶性は高く、その添加による耐候性改良効果、特に長期での耐候性改良効果は認められるものの、添加量については、表面層に6~8%程度以内の添加に留めるケースが多く、増量した場合の具体的な効果については、はっきりしていなかった。また、化合物の総重量に占めるヒンダードアミン基の割合が、通常のヒンダードアミン系耐候剤と比較して低く、添加重量当たりの耐候性の改良効果が低く、必ずしも一般的に用いられているとはいえなかった。
また、特許文献5には、トリアジン系紫外線吸収剤及びヒンダードアミンを側鎖に有するエチレン系共重合体を添加した樹脂組成物が提案されている。しかしながら、当該文献記載の添加量で農業用フィルムを作成した場合でも未だ耐候後透明性は不十分なものであった。
特開平5-112725号公報 特開平5-124161号公報 特許第2695971号公報 特許第2695975号公報 特許第3707422号公報
本発明は、長期使用後にも透明性低下が少なく、より長期間使用可能な農業用ポリオレフィン系多層フィルムを提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意検討を行った結果、特定の構造を有するエチレン・環状アミノビニル化合物共重合体を表面層に特定の量以上含有させ、特定の構造を有するヒンダードアミン化合物を、組み合わせて使用した場合に、従来技術の農業用フィルムと比較して良好な耐候後の透明性を付与できることを見出した。さらに、基材フィルムに対して特定の構造のヒンダードベンゾエート系化合物を配合することにより、コストを配慮しながら、前記化合物と同様の耐候後透明性に優れる実用的な農業用フィルムが得られることを見出し、本発明を完成した。本発明記載の方法では、屋外に長期間展張される農業用フィルムとして有用である。
即ち、本発明は、
[1]少なくとも外層、中間層及び内層を有し、以下の要件を満たす農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
(i)少なくも外層及び内層に、エチレン(A)と下記式(1)で表される環状アミノビニル化合物(B)との共重合体(1)を8重量部より多く含有すること(ただし、外層、内層に含まれる樹脂成分の総重量を100重量部とする)。
Figure 0007105552000001
(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。)
(ii)少なくとも中間層に、分子量が1000以上であり、下記式(2)で表されるピペリジン環構造を1個以上有するヒンダードアミン化合物Aを含有すること。
Figure 0007105552000002
(式中、Rは、は炭素数1以上で、少なくとも1以上のメチレン基を含む、官能基もしくは化合物(オリゴマー、ポリマー含む)を表す。)
[2]少なくも外層及び内層に、前記共重合体(1)を8重量部より多く20重量部以下含有する(ただし、外層、内層に含まれる樹脂成分の総重量を100重量部とする)、[1]に記載の農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
[3]ヒンダードアミン化合物Aがトリアジン骨格を有する、[1]又は[2]に記載の農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
[4]外層、中間層又は内層の少なくとも1以上の層に、以下から選択される少なくとも1のヒンダードアミン化合物を更に含有する、[1]~[3]のいずれか1項に記載の農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
分子量2000以上であり、トリアジン骨格及び下記式(3)で表されるピペリジン環構造を少なくとも2個以上有するヒンダードアミン化合物B:
Figure 0007105552000003
(式中、Rは、水素原子又は炭素数1以上のアルキル基を表す。アルキル基は直鎖状、分岐状、又はシクロアルキル基を含む。)
下記式(4)で表されるヒンダードアミン化合物C:
Figure 0007105552000004
(式中、R6a及びR6bは、各々独立に、炭素数が1~20のアルキル基(アルキル基は直鎖状、分岐状、又はシクロアルキル基を含む)、であり、Xは、カルボニル基(-CO-)、-CO-(CH-CO-(nは、1~10の整数)である。)
分子量が4000以下であり、下記式(5)で表されるピペリジン環構造を少なくとも1個以上有するヒンダードアミン化合物D:
Figure 0007105552000005
(式中、Rは、水素原子、炭素数1以上のアルキル基、又は少なくとも1つ以上エステル基を含有する任意の置換基を表す。アルキル基は直鎖状、分岐状、又はシクロアルキル基を含む。)
[5]外層、中間層又は内層の少なくとも1以上の層に、ヒンダードベンゾエート系化合物を含有する、[1]~[4]のいずれか1項に記載の農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
[6]少なくとも中間層に、以下の式(6)で表される化合物を含有する、[1]~[4]のいずれか1項に記載の農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
Figure 0007105552000006
(式中、R8~R12は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基(直鎖状、分岐状、又はシクロアルキル基を含む)もしくはフェニル基を表す。)
[7]少なくとも中間層に、Mg/Al比率が4.5より大きい合成ハイドロタルサイト系の保温剤を含有する、[1]~[6]のいずれか1項に記載の農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
本発明により、長期使用後にも透明性低下が少なく、より長期間使用可能な農業用ポリオレフィン系多層フィルムを提供することが可能である。
本発明の1つの実施態様は、少なくとも外層、中間層及び内層を有し、以下の要件を満たす農業用ポリオレフィン系多層フィルムである。
(i)少なくも外層又は内層に、エチレン(A)と下記式(1)で表される環状アミノビニル化合物(B)との共重合体(1)を8重量部より多く含有すること(ただし、外層、内層のそれぞれに含まれる樹脂成分の総重量を100重量部とする)。
Figure 0007105552000007
(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。)
(ii)少なくとも中間層に、分子量1000以上であり、下記式(2)で表されるピペリジン環構造を1個以上有するヒンダードアミン化合物Aを含有すること。
Figure 0007105552000008
(式中、Rは、は炭素数1以上で、少なくとも1以上のメチレン基を含む、官能基もしくは化合物(オリゴマー、ポリマー含む)を表す。)
本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルムは、少なくとも外層、中間層、内層の三層で構成されるが、それ以上の層を含んでもよい。本発明においては、農業用ポリオレフィン系多層フィルムをハウスに展張した際に、ハウス外側に面している層を外層といい、ハウス内側に面している層を内層という。
本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルムの1つの側面においては、外層及び内層は、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン又は低酢酸ビニル含有量のエチレン酢酸ビニル共重合体から選択される少なくとも1種を含有する。本発明においては、外層及び内層をこのような樹脂構成にすることで、フィルム同士のべたつきや、フィルムがパイプハウスの部材などと融着することを抑制することができる。
線状低密度ポリエチレンとしては、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-オクテンなどの、所謂エチレン-α-オレフィン共重合体が挙げられる。線状低密度ポリエチレンとして、チーグラー触媒を用いて得られるもの、フィリップス触媒を用いて得られるもの、メタロセン触媒を用いて得られるもの等のいずれも用いることができる。
メタロセン触媒を用いて得られる線状低密度ポリエチレンは、例えば(A法)(特開昭58-19309号、特開昭59-95292号、特開昭60-35005号等)や(B法)(特開平6-9724号、特開平6-136195号、特開平6-136196号等)により得られる。
フィルムの良好な初期透明性及び透明持続性が得られる点では上記(A)法、(B)法に拘泥されることなく、メタロセン化合物を用いて重合された線状低密度ポリエチレンを用いることができる。
低密度ポリエチレンは、通常、高圧ラジカル法で製造され、高圧・高温条件下で重合される。密度は、0.910~0.930g/cmのものが低密度ポリエチレンと呼ばれるが、フィルムの成形加工性、柔軟性、透明性、強度等のバランスに配慮すると、主に0.92g/cm前後の密度のものを好ましく使用することができる。
本発明の外層、内層に含有することができるエチレン酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル含有量が好ましくは1~10重量%、より好ましくは2~8重量%の範囲である。ここで、酢酸ビニル含有量は、エチレン酢酸ビニル共重合体の重量を100重量%としたときの値である。酢酸ビニル含有量が上記の範囲にあると、フィルムを高温環境に曝したときにフィルム同士のべたつきや、パイプハウスの部材などとフィルムが融着するのを防止することができ好ましい。
外層及び内層には、本発明の効果を損なわない範囲で線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン又は酢酸ビニル含有量が1~10重量%のエチレン酢酸ビニル共重合体以外の樹脂を含有してもよい。このような他の樹脂としては、上記以外の樹脂で本発明の効果を損なわないものであれば任意の樹脂を使用することができる。
本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルムの1つの側面においては、外層と内層に含まれる樹脂の種類及び組成は同じであっても異なっていてもよい。
本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルムの1つの側面においては、中間層は酢酸ビニル含有量が1~20重量%のエチレン酢酸ビニル共重合体(A)を含有する。ここで、酢酸ビニル含有量は、エチレン酢酸ビニル共重合体(A)の重量を100重量%としたときの値であり、好ましくは1~20重量%であり、更に好ましくは2~18重量%である。
一方、酢酸ビニル含量を20重量%より大きくすると、エチレン酢酸ビニル共重合体の融点が80℃以下に低下するため、フィルムを高温環境に曝したときにフィルムがべたつき易くなり、耐ブロッキング性が劣り、また、展張後にフィルムがパイプハウスの部材などと融着したりするため好ましくない。従って、酢酸ビニル含有量を1~20重量%の範囲にすることにより、高温時の透明性低下の効果と耐ブロッキング性や高温時でのフィルムの融着の防止効果のバランスをとることができる。
中間層には、本発明の効果を損なわない範囲でエチレン酢酸ビニル共重合体(A)以外の樹脂を含有してもよい。このような他の樹脂としては、本発明の効果を損なわないものであれば任意の樹脂を選択することが可能である。
本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルムは、少なくも外層又は内層に、エチレン(A)と下記式(1)で表される環状アミノビニル化合物(B)との共重合体(1)を8重量部より多く含有する(ただし、外層、内層のそれぞれに含まれる樹脂成分の総重量を100重量部とする)。
Figure 0007105552000009
式(1)において、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、好ましくは、R及びRはそれぞれメチル基であり、Rは水素原子である。
本発明においては、エチレン(A)と式(1)で表される環状アミノビニル化合物(B)との共重合体(1)を8重量部より多く、好ましくは8重量部より多く20重量部以下(ただし、外層、内層に含まれる樹脂成分の総重量を100重量部とする)含有することが重要である。これにより、後述するヒンダードアミン化合物Aと組み合わせて使用した場合に、従来技術の農業用フィルムと比較して良好な耐候後の透明性を付与することができる。
式(1)で表されるビニル化合物(B)は、公知の方法、例えば特公昭47-8539号、特開昭48-65180号公報等に記載された方法にて合成することができる。
式(1)で表されるビニル化合物(B)の代表例としては、4-アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-アクリロイルオキシ-1-エチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-アクリロイルオキシ-1-プロピル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-アクリロイルオキシ-1-ブチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-メタクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-メタクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-メタクリロイルオキシ-1-エチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-メタクリロイルオキシ-1-ブチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルオキシ-1-プロピル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等を挙げることができる。
前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体の好ましいものとしては、そのエチレン(A)と環状アミノビニル化合物(B)との和に対する該(B)の割合が0.0005~0.85モル%、より好ましくは0.001~0.55モル%であるものが挙げられる。すなわち、本共重合体の好ましいものは、側鎖にヒンダードアミン基を有するビニルモノマー(環状アミノビニル化合物(B))の含有量が少ない割に高い光安定性を有するものである。環状アミノビニル化合物(B)の濃度は0.0005モル%で充分に光安定化効果を発揮し、一方、0.85モル%を超えると実質的に不経済となる傾向にある。
また、前記エチレン・環状アミノビニル化合物共重合体は、該共重合体中に(B)が2個以上連続せず、孤立して存在する割合が(B)の総量に対して83%以上、好ましくは90%以上であるものが好ましい。
使用可能な市販のエチレン・環状アミノビニル共重合体としては、XJ100H(日本ポリエチレン(株)製)等が挙げられる。
本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルムは、少なくとも中間層に、分子量1000以上であり、下記式(2)で表されるピペリジン環構造を1個以上有するヒンダードアミン化合物Aを含有する。
Figure 0007105552000010
(式中、Rは、は炭素数1以上で、少なくとも1以上のメチレン基を含む、官能基もしくは化合物(オリゴマー、ポリマー含む)を表す。)
本発明で用いるヒンダードアミン化合物Aの1つの好ましいタイプは、化合物中にトリアジン骨格を有し、式(2)で表されるピペリジン環構造を少なくとも2個以上有する分子量2000以上(好ましくは5000以下)のヒンダードアミン系化合物(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン誘導体及びその混合物)である。この場合、式(2)におけるRは、好ましくは炭素数1~20のアルキル基、またはシクロヘキシル基またはシクロオクチル基である。
このタイプのヒンダードアミン化合物Aとして、例えば、TINUVINNOR 371FF(BASF社製)、FLAMESTAB NOR 116FF(BASF製)等公知のヒンダードアミン化合物が挙げられる。
ヒンダードアミン化合物Aは、通常の農業用フィルムに一般的に用いられるヒンダードアミン系耐候剤(例えば、キマソーブ944:トリアジン骨格を有し、上記式(2)における-O-Rの代わりに、水素原子が結合したタイプの化合物。)と類似した分子量のため、同様の添加方法でフィルムの耐酸性を改良できる。また、ヒンダードアミン化合物Aは、ヒンダードアミンの骨格に-O-Rの基を導入することにより、農薬、酸性雨を始めとする酸性条件下での防曇持続性、耐候性に優れる。
トリアジン骨格を有するヒンダードアミン化合物Aの1つの好ましい例としては、下記式(7)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0007105552000011
式(7)において、kは1~15の範囲である。
また、R14は、置換基を有してもよい、炭素数1~12のアルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、もしくはアリーレン基を示す。
Bは、互いに独立して、Cl、-OR15、-N(R16)(R17)又は、-Z-に式(2)の基が結合した基、で表される基を表す。ここで、R15、R16、R17は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい、炭素数1~18のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアリールアルキル基を表し、-Z-は、-O-又は>N-R18を表す。
13又はR18は、各々、式(2)で示される基又はR15に与えられた定義の一つを表す。
式(7)の化合物として好ましくは、R14が炭素数2~12のアルキレン基で、Bが、-N(アルキル基)-式(2)の基、または、-N(R16)(R17)であり、R13が式(2)の基、であり、式(2)中のRが炭素数1~6のアルキル基が挙げられる。特に好ましくはR14が炭素数6のアルキレン基、Bが-NH(C)-式(2)の基又は-N-H(C)、R13が式(2)の基、であり式(2)中のRが炭素数3のアルキル基である化合物が挙げられる。
本発明で用いるヒンダードアミン化合物Aの別のタイプは、下記式(8)で表される化合物を平均分子量300以上の重合体に付加した付加体である。
Figure 0007105552000012
式(8)において、mは1~4の整数を表す。
19及びR19aは。同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に、水素原子又は任意の置換基を表す。
任意の置換基としては、アルキル基、ビニル基、アリル基、アリール基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、ヒドロキシルアミノ基、シクロアルキル基、シクロアルキルカルボニル基、ヘテロ環基、アリールオキシ基、ハロゲン原子などがあげられるが、これらに限定されない。また、これら置換基はさらに置換基を有してもよい。
また、シクロアルキル基やシクロカルボニル基中の1またはそれ以上の炭素原子は、酸素、窒素、硫黄、リンまたはケイ素などの1又はそれ以上のヘテロ原子で置換されていてもよい。また、R19の任意の置換基はカルボニル酸素やイミノ基(=NR')を表す結合であってもよく、この場合、-R19aの基は存在しない。ここで、R’は、水素原子、アルキル基等、任意の置換基を表す。
また、m=2またはそれ以上では、R19は、-O-CO-(CH)x-CO-O-(xは1以上の整数)などのような2以上のニトロキシ基を橋架けする基であってもよい。
分子量300以上の重合体としては、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレンなどのポリオレフィンなどの不飽和結合を有する重合体が挙げられる。また、重合体には、所謂ポリマー以外に、天然または合成ワックスのような長鎖アルカンも含まれる。好ましいワックスとしては、ポリエチレンワックスやポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックスがあげられる。また、ポリオレフィンワックスの長鎖アルカンは、直鎖でも分岐していてもよく、二本以上の主鎖が架橋していてもよい。
また、ポリオレフィンワックスの分子中に炭素・炭素二重結合を形成させて、式(8)のヒンダードアミン化合物を付加することもできる。また、ポリオレフィンワックスの分子中に炭素・炭素二重結合を形成させて、更にその二重結合を、反応性基に変換することにより、式(3)のヒンダードアミン化合物の付加を行うことができる。
このようなヒンダードアミン化合物としては、式(8)で表される化合物を分子量300以上(好ましくは分子量2000以上)の重合体に付加した付加体、例えばアデカスタブLA-900(ADEKA社製)が挙げられる。また、式(3)で表される化合物を分子量300以上のポリエチレンワックスに付加した付加体としては、例えば、クラリアント社のHostavinNOWが挙げられる。
式(8)で表される化合物を分子量300以上のポリエチレンワックスへの付加は公知の方法で行うことができ、用いるポリエチレンワックスとしては、熱分解法を用いたもの、チーグラー触媒を用いたもの、メタロセン触媒を用いたもの等任意のタイプを使用することができる。メタロセン触媒を用いたものは、例えば、三井化学(株)製のエクセレックスのようなポリオレフィンワックスが挙げられ、低分子量化、高硬度化、反応性基導入が容易である等の特徴があるが、コスト的には若干高くなる傾向がある。
本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルムは、少なくとも中間層に、ヒンダードアミン化合物Aを含有するが、1種類又は2種類以上のヒンダードアミン化合物Aを含有してもよい。
本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルム中の、ヒンダードアミン化合物Aの含有量(2種以上の化合物を含有する場合はそれらの総含有量)は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し0.001~10重量部未満、好ましくは0.01~5重量部、更に好ましくは0.1~4重量部である。含有量が上記範囲未満では耐候性改良効果が低く、上記範囲を超えるとブリードアウトにより実用上、農業用フィルムとしての使用には支障が生じる。
本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルムのもう1つの側面においては、外層、中間層又は内層の少なくとも1以上の層に、以下から選択される少なくとも1種のヒンダードアミン化合物を更に含有する。
分子量2000以上であり、トリアジン骨格及び下記式(3)で表されるピペリジン環構造を少なくとも2個以上有するヒンダードアミン化合物B:
Figure 0007105552000013
(式中、Rは、水素原子又は炭素数1以上のアルキル基を表す。アルキル基は直鎖状、分岐状、又はシクロアルキル基を含む。)
下記式(4)で表されるヒンダードアミン化合物C:
Figure 0007105552000014
(式中、R6a及びR6bは、各々独立に、炭素数が1~20のアルキル基(アルキル基は直鎖状、分岐状、又はシクロアルキル基を含む)、であり、Xは、カルボニル基(-CO-)、-CO-(CH-CO-(nは、1~10の整数)である。)
分子量が4000以下であり、下記式(5)で表されるピペリジン環構造を少なくとも1個以上有するヒンダードアミン化合物D:
Figure 0007105552000015
(式中、Rは、水素原子、炭素数1以上のアルキル基、又は少なくとも1つ以上エステル基を含有する任意の置換基を表す。アルキル基は直鎖状、分岐状、又はシクロアルキル基を含む。)
分子量2000以上であり、トリアジン骨格及び式(3)で表されるピペリジン環構造を少なくとも2個以上有するヒンダードアミン化合物Bとしては、例えば、キマソーブ944、キマソーブ2020FDL(BASF製)、キマソーブ119FL(SABO製)等公知のヒンダードアミン化合物が挙げられる。
式(4)で表されるヒンダードアミン化合物Cとしては、例えば、LA-81(ADEKA社製)、TINUVIN123(BASF製)等公知のヒンダードアミン化合物が挙げられる。
分子量が4000以下であり、式(5)で表されるピペリジン環構造を少なくとも1個以上有するヒンダードアミン化合物Dには、式(5)で表される1以上のピペリジン環構造の4位にエステル基又はエステル基を含む置換基が導入された化合物や、式(5)で表されるピペリジン環構造の4位にエステル基又はエステル基を含む置換基を導入して、これを介して2以上の当該ピペリジン環構造を連結させた化合物等、様々な構造を有するヒンダードアミン化合物が含まれる。
また、ヒンダードアミン化合物Dには、式(5)で表される1以上のピペリジン環構造の4位にエステル結合を導入し、更に、Rの少なくとも1つ以上のエステル基を含有する任意の置換基と結合して、2以上の当該ピペリジン環構造を鎖状に連結させた以下の構造を有する化合物も含まれる。
Figure 0007105552000016
上記の構造を有するヒンダードアミン化合物Dは、好ましくは分子量3100-4000を有する。
ヒンダードアミン化合物Dとしては、例えば、LA-52、LA-57、LA-63P、LA-68、LA-72、LA-77Y、LA-77G、LA-82、LA-87(ADEKA社製)、TINUVIN622D、TINUVIN765、TINUVIN770DF(BASF製)等、公知のヒンダードアミン化合物が挙げられる。
本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルムの更に好ましい側面においては、外層、中間層又は内層の少なくとも1以上の層に、ヒンダードアミン化合物C、ヒンダードアミン化合物Dから選択される少なくとも1のヒンダードアミン化合物を含有する。
本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルムのより好ましい側面においては、外層、中間層又は内層の少なくとも1以上の層に、ヒンダードアミン化合物Cを含有する。
理論に拘束されることを意図するものではないが、ヒンダードアミン化合物C及びヒンダードアミン化合物Dは、低分子タイプの化合物であるため、表面へ移行し易いことから、表面におけるヒンダードアミン化合物の濃度を高めることができる。これにより、紫外線に対する耐候性をより向上させることができ、更に良好な耐候後の透明性を付与することが可能である。
また、ヒンダードアミン化合物Cは、ヒンダードアミンの骨格に-O-R6a及び-O-R6bの基を有することにより、農薬、酸性雨を始めとする酸性条件下での防曇持続性、耐候性に優れるため、これを含有することがより好ましい。
本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルム中の、上記ヒンダードアミン化合物B、C、Dの含有量(2種以上の化合物を含有する場合はそれらの総含有量)は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.001~10重量部未満、好ましくは0.01~5重量部、更に好ましくは0.1~4重量部である。
本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルムの別の側面においては、外層、中間層又は内層の少なくとも1以上の層に、ヒンダードベンゾエート系化合物を含有する。
ヒンダードベンゾエート系化合物を、特にヒンダードアミン化合物Cと併用して用いると、その相乗剤として作用し、更に良好な耐候後の透明性を付与することが可能である。
即ち、本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルムの別の側面においては、外層、中間層又は内層の少なくとも1以上の層に、ヒンダードアミン化合物D及びヒンダードベンゾエート系化合物を含有する。
ヒンダードアミン化合物C及びヒンダードベンゾエート系化合物を併用する場合、ヒンダードアミン化合物Cとヒンダードベンゾエート系化合物の重量比は、1:99~99:1、好ましくは10:90~90:10、更に好ましくは、20:80~80:20である。
本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルムの1つの側面においては、少なくとも中間層に、以下の式(6)で表される化合物を含有する。
Figure 0007105552000017
式(6)中、R~R12は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基(直鎖状、分岐状、又はシクロアルキル基を含む)又はフェニル基を表す。より好ましくは、Rは炭素数6~10のアルキル基、特に好ましくは炭素数6~8のアルキル基であり、R~R12は水素原子、炭素数1~2のアルキル基、フェニル基、特に好ましくは水素原子、メチル基又はフェニル基である。
上記式(6)において、Rの炭素数が上記範囲未満ではブリードアウトしやすくなるので好ましくなく、上記範囲を超えると耐候性が劣るので好ましくない。特に、式(6)におけるRがオクチル基であり、R~R12がメチル基である場合、又は、Rがヘキシル基であり、R~R12が水素原子である場合に、特に耐ブリードアウト性、化学的安定性に優れる。
上記式(6)で表されるトリアリールトリアジン系紫外線吸収剤の入手方法は特に限定されず、市販のものを使用することができる。例えばUV1164(サイテック製)、TINUVIN 1577 ED、TINUVIN 1600(BASF製)等を挙げることができる。
本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルム中の、上記式(6)で表されるトリアリールトリアジン型紫外線吸収剤の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し5重量部未満、好ましくは0.001~3重量部、更に好ましくは0.005~1重量部である。含有量が上記範囲未満では耐候性改良効果が低く、上記範囲を超えると、ブリードアウトによる透明性低下等問題がある。
本発明における農業用ポリオレフィン系多層フィルムは、赤外線吸収剤を添加することにより、良好な保温性を付与することも出来る。赤外線吸収剤は、保温剤として有効なMg、Ca、Al、Si及びLiの少なくとも1つの原子を含有する無機化合物(無機酸化物、無機水酸化物、ハイドロタルサイト類等)を使用できる。
なかでも、下記の式(9)で表されるハイドロタルサイト類赤外線吸収剤を用いた場合に、安価で成形性良好なフィルムを得ることが出来る。
Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO (9)
なかでも、下記の式(10)で表される赤外線吸収剤を用いた場合に、安価で成形性良好なフィルムを得ることが出来る。
[Al(Li(1-x)・M(x+y))(OH)6+y(An2(1+x)/n・mHO(10)(式中、MはMg及び/又はZnで、Aはn価のアニオン、mは0又は正の数、x及びyは0≦x≦1、0≦y≦0.5の範囲である。)
上記式(10)で表される赤外線吸収剤(保温剤)の入手方法は特に限定されず、市販のものを使用することができ、例えば、DHT-4A、アルカマイザー、マグセラー、SYHT-3(協和化学(株)製)、HT-P(堺化学(株)製)、オプティマ(戸田工業(株)製)やミズカラック(水澤化学工業(株)製)等が挙げられる。
赤外線吸収剤(保温剤)は、赤外線吸収能を有する無機微粒子であり、これらは一種又は二種以上で組み合わせて用いることができる。用いることの出来る無機微粒子は特に制限はないが、成分:Si,Al,Mg,Caから選ばれた少なくとも1つの原子を含有する無機化合物を用いることが出来る。例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、燐酸リチウム、燐酸カルシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、アルミン酸カルシウム、アルミン酸マグネシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、アルミノ珪酸カリウム、アルミノ珪酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、マイカ、ゼオライト、ハイドロタルサイト類化合物等が挙げられる。これらは結晶水を脱水したものであってもよい。
上記無機微粒子は天然物であってもよく、また合成品であってもよい。また、上記無機微粒子は、その結晶構造、結晶粒子径などに制限されることなく使用することが可能である。
上記無機微粒子の含有量は、フィルム各層中の樹脂100重量部に対し好ましくは0.1重量部より多く15重量部未満、更に好ましくは1~12重量部である。含有量が上記範囲未満では保温性改良効果が低く、上記範囲を超えると透明性低下等問題がある。
上記の金属の有機酸塩、塩基性有機酸塩および過塩基性有機酸塩を構成する金属種としては、Li,Na,K,Ca,Ba,Mg,Sr,Zn,Cd,Sn,Cs,Al,有機Snがあげられ、有機酸としては、カルボン酸、有機リン酸類またはフェノール類があげられる。
また、本発明のもう1つの好ましい態様においては、少なくとも中間層に、Mg/Al比率が4.5より大きい合成ハイドロタルサイト系の保温剤を含有する農業用ポリオレフィン系多層フィルムである。
合成ハイドロタルサイトのMg/Al比率を従来対比上げることにより、高い透明性、透視性を付与することが可能である。合成ハイドロタルサイト系の保温剤のMg/Al比率は4.5より大きいことが好ましく、5.0以上であることがより好ましく、更に好ましくは5.5以上である。(Mg/Al比率とは、MgO/Alとしてのモル比を示す。)
一般に、ハイドロタルサイト化合物は、[M2+ 1-x3+ (OH)][An- x/n・mHO]として表現される。従来、Mg4.3Al2(OH)12.6CO3・mH2Oのものが、広く農業用フィルムの保温剤として使用されてきた。この場合、MgO/Alとしてのモル比、Mg/Al比率は4.3となる。
同様の方法で計算した場合の、Mg/Al比率が4.5より大きく、好ましくは5.0以上になるように、Mg比率を上げていくと、屈折率が樹脂と近接して、透明性、透視性が向上する、なかでも特に透明性の向上のために好ましく使用することができる。
Mg/Al比率が4.5より大きい合成ハイドロタルサイト系の保温剤としては、DHT-6A(協和化学(株)製)等が挙げられる。
中間層のMg/Al比率が4.5より大きい合成ハイドロタルサイト系の含有量剤としては、中間層の質量に対して1質量%以上が好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。また、40質量%以下が好ましく、35質量%以下であることがより好ましい。上記合成ハイドロタルサイト系の保温剤の添加量が中間層の質量に対して、上記の範囲とすることで、保温性に優れ、展張初期における透明性及び透視性が良好である農業用ポリオレフィン系多層フィルムを得ることができる。
本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルム中には、上記した添加剤化合物以外に、通常農業用ポリオレフィン系フィルムに使用される各種添加剤を併用することができる。それらの添加剤としては、例えば、防曇剤、防霧剤、耐候性向上剤(紫外線吸収剤等)、耐候剤、充てん剤、金属の有機酸塩、塩基性有機酸塩および過塩基性有機酸塩、ハイドロタルサイト化合物、エポキシ化合物、β-ジケトン化合物、多価アルコール、ハロゲン酸素酸塩、硫黄系、フェノール系およびホスファイト系などの酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、アンチブロッキング剤、などがあげられる。
防曇剤としては、公知の種々の非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等を始めとする、多価アルコールと高級脂肪酸類とから成る多価アルコール部分エステル系のもの、シリコーン系界面活性剤が好適に使用できる。このような界面活性剤の具体例としては、例えば非イオン系界面活性剤、例えば、ソルビタンパルミチン酸エステル、ソルビタンパルミチン酸エステルのアルキレンオキシド付加物、ソルビタンステアリン酸エステル、ソルビタンステアリン酸エステルのアルキレンオキシド付加物、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタンアルキレンオキシド付加物及びソルビタンモノパルミチン酸エステル(ここで、ソルビタンステアリン酸エステル、ソルビタンパルミチン酸エステルには、モノエステル、ジエステル、トリエステル、及びそれらの混合物が含まれる。)などのソルビタン系界面活性剤やグリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノパルミテート、グリセリンジパルミテート、グリセリンジステアレート、ジグリセリンモノパルミテート・モノステアレート、トリグリセリンモノステアレート、トリグリセリンジステアレートあるいはこれらのアルキレンオキシド付加物等などのグリセリン系界面活性剤やポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノパルミテート、ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテルなどのポリエチレングリコール系界面活性剤やその他トリメチロールプロパンモノステアレートなどのトリメチロールプロパン系界面活性剤やペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレートなどのペンタエリスリトール系界面活性剤、アルキルフェノールのアルキレンオキシド付加物;ソルビタン/グリセリンの縮合物と脂肪酸とのエステル、ソルビタン/アルキレングリコールの縮合物と脂肪酸とのエステル;ジグリセリンジオレートナトリウムラウリルサルフェート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルアミン塩酸塩、ラウリン酸ラウリルアミドエチルリン酸塩、トリエチルセチルアンモニウムイオダイド、オレイルアミノジエチルアミン塩酸塩、ドデシルピリジニウム塩などやそれらの異性体を含むものなどを挙げることができる。
防霧剤としては、フッ素系界面活性剤が好ましく、フッ素系界面活性剤の具体例としては、通常の界面活性剤の疎水基のCに結合したHの代わりにその一部または全部をFで置換した界面活性剤で、特にパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基を含有する界面活性剤である。このようなフッ素系界面活性剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。パーフルオロアルキル基を有する含フッ素化合物としては、例えば、アニオン系含フッ素界面活性剤、カチオン系含フッ素界面活性剤、両性含フッ素界面活性剤、ノニオン系含フッ素界面活性剤、含フッ素オリゴマーなどがあげられる。本発明においては、フッ素系界面活性剤が、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物又はパーフルオロアルキルプロピレンオキシド付加物を含むことが特に好ましい。
紫外線吸収剤として、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、5,5’-メチレンビス(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン)等の2-ヒドロキシベンゾフェノン類;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ第三ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ第三ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-第三ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’.5’-ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス(4-第三オクチル-6-ベンゾトリアゾリル)フェノール等の2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4-ジ第三ブチルフェニル-3’,5’-ジ第三ブチル-4’-ヒドロキシベンゾエート、2,4-ジ第三アミルフェニル-3’,5’-ジ第三ブチル-4’-ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル-3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2-エチル-2’-エトキシオキザニリド、2-エトキシ-4’-ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル-α-シアノ-β,β-ジフェニルアクリレート、メチル-2-シアノ-3-メチル-3-(p-メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-(オクチロキシ)フェノール等のトリアジン類等があげられる。これらの紫外線吸収剤は、一種又は二種以上で用いられる。
紫外線吸収剤は、多層フィルム各層中の樹脂100重量部に対し好ましくは0.001重量部より多く2重量部未満、更に好ましくは0.01~1重量部で添加することができる。含有量が上記範囲未満では耐候性改良効果が低く、上記範囲を超えると、ブリードアウトによる透明性低下等問題がある。
上記充てん剤としては、フィルムのベタツキを抑制するために、あるいは保温性をさらに高めるために、例えばシリカ、タルク、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、カオリンクレー、マイカ、アルミナ、炭酸マグネシウム、アルミン酸ナトリウム、導電性酸化亜鉛、リン酸リチウムなどが用いられる。これらの充てん剤は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ第三ブチル-p-クレゾール、2,6-ジフェニル-4-オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、ジステアリル(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート、チオジエチレングリコールビス〔(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6-ヘキサメチレンビス〔(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等があげられる。
上記硫黄系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、ジミリスチル、ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類及びペンタエリスリトールテトラ(β-ドデシルメルカプトプロピオネート)等のポリオールのβ-アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類があげられる。
上記ホスファイト系酸化防止剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス〔2-第三ブチル-4-(3-第三ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルチオ)-5-メチルフェニル〕ホスファイト等があげられる。
上記着色剤としては例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、アリザリンレーキ、酸化チタン、亜鉛華、群青、パーマネントレッド、キナクリドン、カーボンブラック等を挙げることができる。
本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルムは、上述した成分が組合わされて含有することができ、更に下記の任意成分を、必要に応じて含有させることができる。任意成分とは、その他安定剤、耐衝撃性改善剤、架橋剤、充填剤、発泡剤、帯電防止剤、造核剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、難燃剤、螢光剤、防黴剤、殺菌剤、金属不活性剤、離型剤、顔料、加工助剤などを挙げることができる。
本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルムは、各種添加剤を配合するには、各々必要量秤量し、リボンブレンダー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、単軸又は二軸押出機、ロールなどの配合機や混練機その他従来から知られている配合機、混合機を使用すればよい。このようにして得られた樹脂組成物をフィルム化するには、それ自体公知の方法、例えば、溶融押出し成形法(Tダイ法、インフレーション法を含む)、カレンダー加工、ロール加工、押出成型加工、ブロー成型、インフレーション成型、溶融流延法、加圧成型加工、ペースト加工、粉体成型等の方法を好適に使用することができる。
本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルムの厚みについては、強度やコストの点で0.01~1mmの範囲のものが好ましく、0.05~0.5mmのものがより好ましく、更に好ましくは0.05~0.2mmである。厚みがこの範囲であれば強度的、成形上、展張作業性の問題のない農業用多層フィルムを得ることができる。
また、外層、中間層、内層の層比としては、特に限定されるものではないが、成形性や透明性及び強度の点から1/0.5/1~1/5/1の範囲が好ましく、1/2/1~1/4/1の範囲がより好ましい。また、外層と内層の比率としては、特に規定されるものではないが、得られるフィルムのカール性から同程度の比率とするのが好ましい。
また、上記で添加する層を特に指定した添加剤以外は、耐候性向上剤(紫外線吸収剤等)、耐候剤、赤外線吸収剤、保温剤等の各種添加剤は、全層に添加してもよく、また一部の層(中間層、又は中間層及び外層に中間層等)に添加することもできる。
また、本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルムには、防曇性塗膜及びそれ以外の塗膜を形成することが出来る。例えば、農業用フィルムをハウスに被覆した際に内側になる面に防曇性塗膜を、外側になる面に防塵性塗膜を形成しても良い。
防曇性塗膜としては、無機質コロイドゾル及び/又は熱可塑性樹脂等のバインダー樹脂を主成分とする組成物等が挙げられる。好ましくは無機コロイド物質と親水性有機化合物を主成分とした防曇性塗膜や無機コロイド物質とアクリル系樹脂を主成分とする防曇性塗膜を用いることができる。又、バインダー樹脂は添加しなくても良く、コロイダルシリカやコロイダルアルミナ等の無機物を積層しても良い。
無機質コロイドゾルとしては、シリカ、アルミナ、水不溶性リチウムシリケート、水酸化鉄、水酸化スズ、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機質水性コロイド粒子を、種々の方法で、水又は親水性媒体中に分散させた、水性ゾルが挙げられる。中でも好ましく用いられるのは、シリカゾルとアルミナゾルで、これらは、単独で用いても併用しても良い。
無機質コロイドゾルとしては、その平均粒子径が5~100nmの範囲で選ぶのが好ましく、また、この範囲であれば、平均粒子径の異なる2種以上のコロイドゾルを組み合わせて用いても良い。平均粒子径をこの範囲にすることで被膜が白く失透したりすることがなく、無機質コロイドゾルの安定性においても良好である。
無機質コロイドゾルは、その配合量をバインダー樹脂組成物の固形分重量の合計に対して、固形分としての重量比で0.2以上5以下、好ましくは0.5以上4以下にするのが好ましい。すなわち、配合量が少なすぎる場合は、十分な防曇効果が発揮できないことがあり、一方、配合量が多すぎる場合は、防曇効果が配合量に比例して向上しにくいばかりでなく、塗布後に形成される被膜が白濁化してフィルムの光線透過率を低下させる現象があらわれ、また、被膜が粗雑で脆弱になることがあり、好ましくない。
バインダー樹脂としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。基材フィルムがポリオレフィン系フィルムの場合は、ポリオレフィン系フィルムとの相性から、特に、アクリル系樹脂、及び/又はウレタン系樹脂を用いることが好ましく、更に好ましくは後述する(a)親水性アクリル系重合体からなるもの、(c)疎水性アクリル系樹脂からなるもの、(e)疎水性アクリル系樹脂と、ポリウレタンエマルジョンからなるもの、が各々の特質を持ち、好ましい。
アクリル系樹脂としては、(a)親水性アクリル系重合体からなるもの、(b)一分子内に疎水性分子鎖ブロックと親水性分子鎖ブロックとを含むブロック共重合体からなるもの、(c)疎水性アクリル系樹脂からなるものが挙げられる。基材フィルムがポリオレフィン系フィルムの場合は、特に(a)が、初期の防曇濡れが早い点で基材フィルムとの相性に優れており好ましく、一方(c)については、基材フィルムとの相性に優れており好ましい。
(a)の親水性アクリル系重合体としては、水酸基含有ビニル単量体成分を主成分(好ましくは60重量%~99.9重量%、更に好ましくは65重量%~95重量%とし)、酸基含有ビニル単量体成分を0.1~30重量%含有する共重合体、その部分中和物または完全中和物が挙げられる。水酸基含有ビニル単量体成分としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類があげられ、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどがあげられるが、これらに限定されない。これらは単独重合体であってもよく、これらヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類を主成分とし、これらと共重合しうる他の単量体との共重合体であってもよい。
これらヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類と共重合しうる酸基含有単量体としては、カルボン酸類、スルホン酸類、ホスホン酸類が挙げられ、特に好ましくは、カルボン酸に属する(メタ)アクリル酸である。
その他の共重合体成分としては、たとえばスチレン、ビニルテルエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酸化ビニル、(メタ)アクリル酸エステル類、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン等があげられる。
(c)の疎水性アクリル系樹脂としては、少なくとも合計60重量%のアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類からなる単量体、またはアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類とアルケニルベンゼン類との単量体混合物及び0~40重量%の共重合しうるα、β-エチレン性不飽和単量体とを、通常の重合条件に従って、例えば乳化剤の存在下に、水系媒質中で乳化重合させて得られる水分散性の重合体または共重合体を挙げることができる。
疎水性アクリル系樹脂の製造に用いられるアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類としては、アクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸-n-プロピルエステル、アクリル酸イソプロピルエステル、アクリル酸-n-ブチルエステル等が挙げられ、一般には、アルキル基の炭素数が1~20個のアクリル酸アルキルエステル及び/又はアルキル基の炭素数が1~20個のメタクリル酸アルキルエステルが使用される。アルケニルベンゼン類としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
疎水性アクリル系樹脂を得るために用いるα、β-エチレン性不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等のα、β-エチレン性不飽和カルボン酸類;エチレンスルホン酸等のα、β-エチレン性不飽和スルホン酸類;2-アクリルアミド-2-メチルプロパン酸;α、β-エチレン性不飽和ホスホン酸類;アクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシエチル等の水酸基含有ビニル単量体;アクリロニトリル類;アクリルアマイド類;アクリル酸又はメタクリル酸のグリシジルエステル類等が挙げられる。これら単量体は、単独で用いても、または2種以上の併用でもよく、0~40重量%の範囲で使用するのが好ましい。使用量が多すぎると、防曇性能を低下させることがあり、好ましくない。
アクリル系樹脂は、公知の乳化剤、例えば陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤の中から選ばれる1種もしくは2種以上の存在下、水系媒質中で、乳化重合させる方法、反応性乳化剤を用いて重合させる方法、乳化剤を含有せずオリゴソープ理論に基づいて重合させる方法等によって得ることができる。
アクリル系樹脂の製造に好ましく用いられる重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらは、単量体の仕込み合計量に対して0.1~10重量%の範囲で使用することができる。
疎水性アクリル系樹脂は、特に、ガラス転移温度が35~80℃のものを用いるのが好ましい。ガラス転移温度が低すぎると無機質コロイド粒子が数次凝集して不均一な分散状態をとりやすく、高すぎる場合、透明性のある均一な塗膜を得るのが困難となりやすい。
疎水性アクリル系樹脂は水系エマルジョンとして用いるのが好ましい。各単量体を水系媒質中での重合によって得られた水系エマルジョンをそのまま使用しても良く、更にこのものに液状分散媒を加えて希釈したものでもよく、また上記のような重合によって生じた重合体を分別採取し、これを液状分散媒に再分散させて水系エマルジョンとしたものでもよい。
一方、(d)ウレタン系樹脂としては、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系のアニオン性ポリウレタンの水性組成物、エマルジョンが挙げられる。基材フィルムがポリオレフィン系フィルムの場合は、防曇性塗膜の基材フィルムとの密着性、耐水性及び耐傷付き性の点でポリカーボネート系のアニオン性ポリウレタンエマルジョンが好ましく、更なる防曇性塗膜の耐水性、耐傷付き性向上並びに防曇性を発現するまでの時間及び防曇持続性の点でシラノール基を含有するポリカーボネート系のアニオン性ポリウレタンエマルジョンがより好ましい。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
シラノール基を含有するポリカーボネート系のアニオン性ポリウレタンエマルジョンとは分子内に少なくとも1個のシラノール基を含有するポリウレタン樹脂と、硬化触媒として強塩基性第3級アミンとを含有してなり、具体的には水相中にシラノール基含有ポリウレタン樹脂及び前記強塩基性第3級アミンが溶解しているもの、又は微粒子状に分散しているコロイド分散系のもの(エマルジョン)をいう。
ポリウレタン水性組成物は、その配合量を固形分重量比で疎水性アクリル系樹脂に対して0.01以上、2以下、更に好ましくは0.01以上1以下にすることが好ましい。0.01に満たないときには耐傷付き性の向上が見られにくく、また、防曇性を発現するまでの時間が長く、十分な防曇効果が発揮しにくい。また、多すぎるときは、耐傷付き性が配合量に比例して向上しにくいばかりでなく、塗布後に形成される塗膜が白濁化し光線透過率を低下させやすく、また、コスト面でも不利であり好ましくない。
防曇性塗膜を形成するための防曇剤組成物を調製するときに、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、高分子界面活性剤等の界面活性剤を添加することができる。このような界面活性剤は、以下のものを使用することができる。
陰イオン系界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等の高級アルコール硫酸エステル類;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩及びアルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジアルキルスルホコハク酸塩;ジアルキルホスフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンサルフェート塩等が挙げられる。
陽イオン系界面活性剤としては、エタノールアミン類;ラウリルアミンアセテート、トリエタノールアミンモノステアレートギ酸塩;ステアラミドエチルジエチルアミン酢酸塩等のアミン塩;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルアルコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレン高級アルコールエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェノール、ポリオキシエチレンノニルフェノール等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類;ポリエチレングリコールモノステアレート等のポリオキシエチレンアシルエステル類;ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物;ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノベンゾエート等のソルビタン脂肪酸エステル類;ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンモノステアレート等のジグリセリン脂肪酸エステル類;グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル類;ペンタエリスリトールモノステアレート等のペンタエリスリトール脂肪酸エステル類;ジペンタエリスリトールモノパルミテート等のジペンタエリスリトール脂肪酸エステル類;ソルビタンモノパルミテート・ハーフアジペート、ジグリセリンモノステアレート・ハーフグルタミン酸エステル等のソルビタン及びジグリセリン脂肪酸・2塩基酸エステル類;またはこれらとアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオンオキサイド等の縮合物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシプロピレンソルビタンモノステアレート等;ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド等のポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド類;シュガーエステル類等が挙げられる。
高分子界面活性剤としては、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩、セルロースエーテル類等が挙げられる。
界面活性剤の添加は、バインダー樹脂と無機質コロイドゾルとを容易にかつ速やかに均一に分散することができ、また無機質コロイドゾルと併用することにより、疎水性のポリオレフィン系樹脂フィルム表面に親水性を付与する機能を果たす。界面活性剤の添加量は、樹脂の固形分100重量部に対し0.1~50重量部の範囲で選ぶと良い。界面活性剤の添加量が少なすぎると、樹脂及び無機質コロイドゾルが十分に分散するのに時間がかかり、また、無機質コロイドゾルとの併用での防曇効果を十分に発揮しえず、一方界面活性剤の添加量が多すぎると塗布後に形成される被膜表面へのブリードアウト現象により被膜の透明性が低下し、顕著な場合は被膜の耐ブロッキング性の悪化や被膜の耐水性低下を引き起こす場合がある。
防曇性塗膜を形成するための防曇剤組成物を調製するときに、架橋剤を添加することができる。架橋剤は、特にアクリル系樹脂同士を架橋させ、塗膜の耐水性を向上させる効果がある。架橋剤としては、フェノール樹脂類、アミノ樹脂類、アミン化合物類、アジリジン化合物類、アゾ化合物類、イソシアネート化合物類、エポキシ化合物類、シラン化合物類等が挙げられるが、特にアミン化合物類、アジリジン化合物類、エポキシ化合物類が好ましく使用できる。
本発明に使用される防曇剤組成物には、必要に応じて、液状分散媒を配合することができる。かかる液状分散媒としては、水を含む親水性ないし水混合性溶媒がふくまれ、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、等の1価アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;ベンジルアルコール等の環式アルコール類;セロソルブアセテート類;ケトン類等が挙げられる。これら液状分散媒は単独で用いても併用しても良い。
防曇剤組成物には、更に必要に応じて、消泡剤、可塑剤、造膜助剤、造粘剤、顔料、顔料分散剤等の慣用の添加剤を混合することができる。また、アクリル系樹脂以外のバインダー成分として、たとえばポリエーテル系、ポリカーボネート系、ポリエステル系の水分散性ウレタン樹脂などを混合していてもよい。
本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルムの表面に防曇性塗膜を形成するには、一般に防曇性組成物の溶液または分散液をそれぞれドクターブレードコート法、ロールコート法、ディップコート法、スプレーコート法、ロッドコート法、バーコート法、ナイフコート法、ハケ塗り法等それ自体公知の塗布方法を採用し、塗布後乾燥すればよい。塗布後の乾燥方法は、自然乾燥及び強制乾燥のいずれの方法を採用してもよく、強制乾燥方法を採用する場合、通常50~250℃、好ましくは70~200℃の温度範囲で乾燥すればよい。加熱乾燥には、熱風乾燥法、赤外線乾燥法、遠赤外線乾燥法、及び紫外線硬化法等適宜方法を採用すればよく、乾燥速度、安定性を勘案すれば熱風乾燥法を採用するのが有利である。
防曇性塗膜の厚さは、農業用ポリオレフィン系多層フィルム(以下「基材フィルム」ともいう)の1/10以下を目安に選択するとよいが、必ずしもこの範囲に限定されるものではない。塗膜の厚さが基材フィルムの1/10より大であると、基材フィルムと塗膜とでは屈曲性に差があるため、塗膜が基材フィルムから剥離する等の現象がおこりやすく、また、塗膜に亀裂が生じて基材フィルムの強度を低下させるという現象が生起し、好ましくない。
また、基材フィルムと防曇剤組成物に由来する塗膜との接着性が充分でない場合には、基材フィルムに表面処理を施しておいてもよい。表面処理の方法としては、コロナ放電処理、スパッタエッチング処理、ナトリウム処理、サンドブラスト処理等の方法が挙げられる。コロナ放電処理法は、針状あるいはナイフエッジ電極と対極間で放電を行わせ、その間に試料を入れて処理を行い、フィルム表面にアルデヒド、酸、アルコールパーオキサイド、ケトン、エーテル等の酸素を含む官能基を生成させる処理である。スパッタエッチング処理は、低気圧グロー放電を行っている電極間に試料を入れ、グロー放電によって生じた正イオンの衝撃によりフィルム上に多数の微細な突起を形成するものである。サンドブラスト処理は、フィルム面に微細な砂を吹きつけて、表面上に多数の微細な凹凸を形成するものである。これら表面処理の中では、塗布層との密着性、作業性、安全性、コスト等の点から、コロナ放電処理が好適である。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)積層フィルムの調製
3層インフレーション成形装置として3層ダイに100mmφ((株)プラ工研製)を用い、押出機はチューブ外内層を30mmφ((株)プラ技研製)2台、中間層を40mmφ((株)プラ技研製)として、外内層押出し機温度180℃、中間層押し出し機温度170℃、ダイス温度180~190℃、ブロー比2.0~3.0、引取り速度3~7m/分、厚さ0.15mmにて表1~表5に示した成分からなる3層の積層フィルムを得た。なお、これらのフィルムは、ハウス展張時にチューブの端部を切り開いて使用するため、展開した際に製膜時のチューブ外層が展張時にはハウスの内層(内面)となる。
〔配合〕 添加量は各表記載通り。
HP-LDPE:高圧ラジカル法触媒で製造した分岐状ポリエチレン(MFR:0.8g/10分、密度0.922)宇部丸善ポリエチエレン製「F022NH」
メタロセンPE:メタロセン触媒で製造したエチレン・αオレフィン共重合体(MFR:2.0g/10分、密度0.91307)日本ポリケム製カーネル「KF270」
EVA1:酢酸ビニル含量=15重量%:LV430:日本ポリエチレン(株)製
合成ハイドロタルサイトA:協和化学工業社製「DHT-4A」
合成ハイドロタルサイトB:協和化学工業社製「DHT-6A」
紫外線吸収剤A:トリアジン型紫外線吸収剤:サイテック社製UV-1577ED(2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-(オクチロキシ)フェノール)
エチレン・環状アミノビニル共重合体:日本ポリエチレン(株)製「XJ100H」(MFR=3g/10分(190℃、JIS-K6760)、密度=0.931g/cm(JIS-K6760)、環状アミノビニル化合物含量=5.1重量%(0.7モル%)、孤立して存在する環状アミノビニル化合物の割合=90モル%、融点=111℃)
光安定剤a:tinuvin NOR 371 FF(BASF社製光安定剤)(本願記載のヒンダードアミン化合物A)
光安定剤b:LA-81(本願記載のヒンダードアミン化合物C)
光安定剤c:chimassorb944(本願記載のヒンダードアミン化合物B)
光安定剤d:LA-77Y(本願記載のヒンダードアミン化合物D)
光安定剤e:本願記載のヒンダードアミン化合物Cとヒンダードベンゾエート系化合物の混合物(重量比:27:83)
(2)フィルムの表面処理
得られたチューブ状フィルムの外層表面を、放電電圧120V、放電電流4.7A、ラインスピード10m/minでコロナ放電処理を行い、JIS-K6768による「濡れ指数」を測定し、その値を確認した。
(3)防曇性塗膜の形成
コロイダルシリカと熱可塑性樹脂と架橋剤及び液状分散媒とを配合して防曇剤組成物を得た。
防曇剤組成物配合は以下の配合とした。
無機質コロイドゾル(コロイダルシリカ) 4.0
熱可塑性樹脂(サンモールSW-131) 3.0
架橋剤(T.A.Z.M) 0.1
分散媒(水/エタノール=3/1) 93
(注)無機質コロイドゾルの配合量は、無機質粒子量で示し熱可塑性樹脂の配合量は重合体固形分量で示す。
コロイダルシリカ:日産化学社製スノーテックス30、平均粒子径15mμ
サンモールSW-131:三洋化成社製アクリルエマルジョン
T.A.Z.M:相互薬工社製アジリジン系化合物
(2)で表面処理したフィルムの表面に、上記の防曇剤組成物を#5バーコーターを用いて各々塗布した。塗布したフィルムを80℃のオーブン中に1分間保持して、液状分散媒を揮発させ防曇性塗膜を形成した。得られた各フィルムの塗膜の厚みは約1μmであった。
上記で得られたフィルムを用いて試験を行った。なお、今回用いた樹脂、添加剤以外の組み合わせ、又は今回と異なるフィルム厚みでも、その要旨を変えない限り、同様の効果が得られる。各試験の測定法を以下に示す。
(1)555nm直進光線透過率測定:
3層インフレーション成形により得られた積層フィルム(ハウス内層側表面に防曇塗膜を形成(塗工)後)を、分光光度計(島津製作所製「UV-2450」により測定し、波長555nmにおける直進光線透過率(%)を示した。
(2)耐候試験:
岩崎電気製「SUV-W161」を用いて、下記条件にて暴露試験を実施し、暴露前及び暴露1600時間後の555nm直進光線透過率を測定した。
・タイマー設定:照射時間5時間、結露1時間
・紫外線強度:100mW/cm
[実施例1~8、比較例1~4]
実施例1~8、比較例1~4)について表1~4に示す。
Figure 0007105552000018
Figure 0007105552000019
Figure 0007105552000020
Figure 0007105552000021
表1に超促進耐候性試験機(S-UV)暴露前後の555nm直進光線透過率を示す。
内外層にエチレン・環状アミノビニル共重合体を8重量部添加した比較例1に対して、実施例1、2に示すように、エチレン・環状アミノビニル共重合体を内外層に8重量部より多く添加した場合、暴露後の透明性低下が抑えられていることが分かる。
更に、実施例3に示すように、内外層に本願記載の特定構造を有する耐候剤を特定量含有させることにより、暴露後の透明性低下を格段に抑制することが可能になることが分かる。
表2にエチレン・環状アミノビニル共重合体を内外層に8重量部より多く添加し、かつ、他の耐候剤を組み合わせて使用した場合の超促進耐候性試験機(S-UV)暴露前後の555nm直進光線透過率を示す。
内外層に他の耐候剤を組み合わせて使用することにより、比較的高価なエチレン・環状アミノビニル共重合体の含有量を低減しながら、良好な暴露後透明性を付与することが可能となる。
表3に特願2015-061632記載の赤外線吸収剤を使用した場合の超促進耐候性試験機(S-UV)暴露前後の555nm直進光線透過率を示す。
上記の特定構造を有する赤外線吸収剤を使用した場合に良好な暴露後透明性を付与することが可能となる。
表4に本願記載のエチレン・環状アミノビニル共重合体を内外層に含有しない場合の 超促進耐候性試験機(S-UV)暴露前後の555nm直進光線透過率を示す。
本願記載のエチレン・環状アミノビニル共重合体を含有しない場合、暴露後透明性の低下が顕著で従来の農業用ポリオレフィン系フィルムを超える様な長期間の使用には耐えないことが判る。

Claims (5)

  1. 少なくとも外層、中間層及び内層を有し、以下の要件を満たす農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
    (i)少なくとも外層及び内層に、エチレン(A)と下記式(1)で表される環状アミノビニル化合物(B)との共重合体(1)を12重量部以上20重量部以下を含有すること
    (ただし、外層、内層に含まれる樹脂成分の総重量を100重量部とする)。
    Figure 0007105552000022
    (式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。)
    (ii)少なくとも中間層に、分子量が1000以上であり、下記式(2)で表されるピペリジン環構造を1個以上有するヒンダードアミン化合物Aを含有すること。
    Figure 0007105552000023
    (式中、Rは、は炭素数1以上で、少なくとも1以上のメチレン基を含む、官能基もしくは化合物(オリゴマー、ポリマー含む)を表す。)
    外層、中間層又は内層の少なくとも1以上の層に、下記式(4)で表されるヒンダードアミン化合物Cを更に含有すること。
    Figure 0007105552000024
    (式中、R 6a 及びR 6b は、各々独立に、炭素数が1~20のアルキル基(アルキル基は直鎖状、分岐状、又はシクロアルキル基を含む)、であり、Xは、カルボニル基(-CO-)、-CO-(CH -CO-(nは、1~10の整数)である。)
  2. ヒンダードアミン化合物Aがトリアジン骨格を有する、請求項1に記載の農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
  3. 外層、中間層又は内層の少なくとも1以上の層に、ヒンダードベンゾエート系化合物を含有する、請求項1又は2に記載の農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
  4. 少なくとも中間層に、以下の式(6)で表される化合物を含有する、請求項1又は2に記載の農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
    Figure 0007105552000025
    (式中、R8~R12は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基(直鎖状、分岐状、又はシクロアルキル基を含む)もしくはフェニル基を表す。)
  5. 少なくとも中間層に、Mg/Al比率が4.5より大きい合成ハイドロタルサイト系の保温剤を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
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