以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。また、以下の実施形態およびその変形例について、ほぼ同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
[実施形態]
図1は、実施形態に係る電動弁100の全体構成を表す断面図である。
図1に示すように、電動弁100は膨張装置として機能する電動膨張弁であり、弁本体200とモータユニット300とを組み付けて構成されている。弁本体200は、有底筒状の第1ボディ220と、円筒状の第2ボディ240と、円筒状の第3ボディ260と、を含む。第1ボディ220の上半部に、第2ボディ240が配設されている。第2ボディ240の下半部に、第3ボディ260が配設されている。第3ボディ260は、第1ボディ220の内方に位置する。第3ボディ260内部に弁部202が収容されている。第2ボディ240の上部中央には、ガイド部材242が立設されている。ガイド部材242の軸線方向中央部の外周面には雄ねじ部244が形成されている。ガイド部材242の下端部は大径となっており、その大径部245が第2ボディ240の上部中央に同軸状に固定されている。第2ボディ240の内方には、モータユニット300のロータ320から延びるシャフト246が挿通されている。シャフト246の下端部は、弁部202を構成する弁体204を兼ねている。ガイド部材242はその内周面によりシャフト246を軸線方向に摺動可能に支持する一方、その外周面によりロータ320の回転軸326を回転摺動可能に支持する。
第1ボディ220の一方の側部には導入ポート222が設けられ、他方の側部には導出ポート224が設けられている。導入ポート222は流体を導入し、導出ポート224は流体を導出する。導入ポート222と導出ポート224は第3ボディ260内に形成される内部通路によって連通する。
第3ボディ260の側部には入口ポート262が設けられ、底部には出口ポート264が設けられている。入口ポート262は導入ポート222と連通し、出口ポート264は導出ポート224と連通する。入口ポート262と出口ポート264は、弁室266を介して連通している。第3ボディ260の内方には弁孔208が設けられ、その上端開口端縁により弁座210が形成されている。弁体204が弁座210に接離することで、弁部202の開度が調整される。
弁室266内部では、シャフト246の下部にEリング212が嵌着されている。Eリング212の上方にはばね受け214が設けられる。ガイド部材242の下方にもばね受け248が設けられ、2つのばね受け214、248の間には弁体204を弁部202の閉弁方向へ付勢するスプリング216が弁体204と同軸状に挿入されている。本実施形態においては、シャフト246の下端部が弁体204を兼ねているから、スプリング216はシャフト246をも閉弁方向へ付勢する。
次に、モータユニット300の構造を説明する。
モータユニット300は、ロータ320とステータ340とを含む三相ステッピングモータとして構成されている。モータユニット300は有底円筒状のキャン302を有し、そのキャン302の内方にロータ320、外方にステータ340を配置して構成される。
ステータ340は、積層コア342とボビン344とを含む。積層コア342は、板状のコアが軸線方向に積層されて構成される。製造過程において、積層コア342を成形する工程を「コア成形工程」という。ボビン344には、コイル346が巻回されている。コイル346と、そのコイル346が巻回されているボビン344とをまとめて「コイルユニット345」という。コイルユニット345は、積層コア342に組みつけられている。製造過程において、ステータ340を形成するこの工程を「組立工程」という。本実施形態では、三相電流を供給するための3つのコイルユニット345が、積層コア342の中心軸に対して120度ごとに設けられている。積層コア342およびコイルユニット345の構造の詳細は後述する。
ステータ340は、後述するモールド成形によってケース400と一体に設けられている。ケース400上端開口部には、蓋体440がインロー嵌合されている。ケース400は、レーザ吸収性を有する樹脂材からなり、蓋体440は、レーザ透過性を有する樹脂材からなる。ケース400と蓋体440とに囲まれた空間Sには、プリント配線基板420が配設される。コイル346は、プリント配線基板420と接続されている。ケース400には端子カバー部402が設けられており、外部電源からの電力をプリント配線基板420へと供給するための端子422を保護する。以下、ステータ340、ケース400、プリント配線基板420および蓋体440をまとめて「ステータユニット520」という。
第3ボディ260と第1ボディ220との間、第2ボディ240と第1ボディ220との間にはそれぞれ、環状のシール部材206、201が介装されている。この構成により、第1ボディ220と第3ボディ260との間のクリアランスおよび第2ボディ240と第1ボディ220との間のクリアランスを介した流体の漏れが防止される。また、第2ボディ240とケース400との間には、環状のシール部材203が介装されている。この構成により、第2ボディ240とケース400との間のクリアランスを介した外気(水分等)の侵入が防止される。
ロータ320は、円筒状のロータコア322と、ロータコア322の外周に沿って設けられたマグネット324を備える。ロータコア322は回転軸326に組み付けられている。マグネット324は、その円周方向に複数極に磁化されている。
回転軸326は、有底円筒状の円筒軸であり、その開口端を下にしてガイド部材242に外挿されている。回転軸326の内周面には雌ねじ部328が形成され、ガイド部材242の雄ねじ部244と噛合している。これらのねじ部によるねじ送り機構によって、ロータ320の回転運動がシャフト246の軸線方向への並進運動に変換され、シャフト246は軸線方向に移動(昇降)する。
シャフト246の上部は縮径され、その縮径部が回転軸326の底部を貫通している。縮径部の先端には、環状のストッパ330が固定されている。一方、縮径部の基端と回転軸326の底部との間には、シャフト246を下方(閉弁方向)に付勢するバックスプリング332が介装されている。このような構成により、弁部202の開弁時にはストッパ330が回転軸326の底部に係止される態様でシャフト246がロータ320と一体変位する。一方、弁部202の閉弁時には、弁体204が弁座210から受ける反力により、バックスプリング332が押し縮められる。この時のバックスプリング332の弾性反力により弁体204を弁座210に押し付けることができ、弁体204の着座性能(弁閉性能)を高められる。
モータユニット300の駆動によりシャフト246が弁部202の開弁方向(図1の上方向)へ動き始めると、弁体204は弁座210から離脱する。これによりスプリング216は圧縮方向へ弾性変形する。弁体204が弁座210から離脱すると、導入ポート222から導入された流体が、入口ポート262、弁室266、弁部202、出口ポート264を順次通過し、導出ポート224から導出される。
[ステータユニット520の構造]
次に、ステータユニット520の構成およびその製造方法の詳細について説明する。
図2、3はステータユニット520の構成を表す図である。図2(A)は縦断面図であり、(B)は図2(A)のA-A矢視断面図である。図3(A)は図2(A)のB-B矢視断面図、(B)はC-C矢視断面図である。
図4はステータ340の構成を表す図である。(A)はコイルユニット345を組み付けた積層コア342の平面図、(B)は積層コア342のみの平面図、(C)はボビン344のみの正面図である。
図2(A)に示すように、ステータ340はケース400と一体に設けられている。ケース400は中空状となっている。ケース400の内周部と、ステータ340の内周部(積層コア342の内周部)とは、共通の軸心を有する。
図2(B)、図4(A)-(B)に示すように、積層コア342の内周部には、複数の第1溝348、第2溝352が設けられている。第1溝348は、積層コア342にコイルユニット345を組み付けるための溝である。隣り合う第1溝348を1セットとして、1セットの第1溝348に対して1つのコイルユニット345を嵌合させる。本実施形態におけるモータユニット300は三相三極のモータである。そのため、積層コア342の中心軸に対してコイルユニット345が120度の間隔で組みつけられるよう、各セットの中心は互いに120度の間隔を有する。セットとなる2つの第1溝348間には、半径方向内向きに突出する第1磁極350が形成される。
第2溝352はセットとなっていない第1溝348の間に設けられる。第1溝348、第2溝352の形状や数によって積層コア342の磁気特性が決定される。本実施形態においては、第1溝348間につき2つの第2溝352が形成されている。第2溝352間には、半径方向内向きに突出する第2磁極353が形成される。また、第1溝348と第2溝352との間には、半径方向内向きに突出する第3磁極363が形成される。以下、第1溝348および第2溝352をまとめて溝351という。また、第1磁極350、第2磁極353および第3磁極363をまとめて磁極355という。
各磁極355の内周面343は、共通の内接円と同じ曲率を有する。この内周面343によって積層コア342の内周面357が形成される。
図2(B)、図3(A)-(B)には、後述するモールド成形によって形成されたモールド樹脂Mについても示されている。図2(B)に示すとおり、モールド樹脂Mは積層コア342の外周を被覆する。また、モールド樹脂Mは第2溝352に充填される。第1溝348においては、コイルユニット345の周囲を覆うような態様でモールド樹脂Mが充填される。また、ボビン344の肉薄部358(後述)の内周面もモールド樹脂Mによって被覆される。溝351に充填されたモールド樹脂Mの表面は、磁極355と同じ曲率を有する。ただし、溝351に充填されたモールド樹脂Mの一部には、その表面に凹部362が設けられる。この凹部362は後述するモールド成形時において使用される金型の当接痕によって生じる。当接痕についてはモールド成形と同様に後述する。
図3(A)-(B)に示すように、積層コア342はその上方および下方においてもモールド樹脂Mによって被覆される。積層コア342の上方および下方においてはそれぞれ、ボビン344の上部肉厚部354(後述)と下部肉厚部356(後述)が設けられている。上部肉厚部354の内周面359と下部肉厚部356の内周面361は被覆されず、それぞれむき出しのままとなっている。
図2(B)に示すように、積層コア342の内周部においては、ボビン344の内周面はモールド樹脂Mによって被覆される。一方、図3(A)―(B)に示すように、積層コア342の上方および下方においては、ボビン344の内周面はむき出しのままである。以下、ボビン344の形状について説明し、モールド樹脂Mの被覆態様について詳説する。
図4(C)に示すように、ボビン344は上部肉厚部354、下部肉厚部356、肉薄部358、磁極用孔360を含む。上部肉厚部354は、積層コア342の上方に配設される部分である。モールド成形の際、上部肉厚部354の内周面は後述するセンターピン650と当接する。よって、成形後のステータユニット520において上部肉厚部354の内周面はモールド樹脂Mによって被覆されず、むき出しのままとなる。下部肉厚部356は、積層コア342の下方に配設される部分である。モールド成形の際、下部肉厚部356の内周面は後述する第3金型630と当接する。よって、成形後のステータユニット520において下部肉厚部356は被覆されずむき出しのままとなる。肉薄部358は積層コア342の内周部に配設される部分である。磁極用孔360に第1磁極350が挿入されることによって、ボビン344が積層コア342に対して組み付けられる。肉薄部358の厚さは第1磁極350の突出方向の高さより小さい。モールド成形の際、肉薄部358の内周面は後述するセンターピン650との間に隙間を有する。成形時には、モールド樹脂がこの隙間に導入される。したがって、成形後のステータユニット520において肉薄部358はモールド樹脂Mによって被覆される。
モールド成形が施されることにより、ステータ340はケース400内に保持されている。以下、ステータ340に対するケース400の被覆方法(モールド工程)の詳細について説明する。
図5はケース400をモールド工程によって製造するための金型600を表す図である。(A)は金型ハウジング602内にステータ340をセットした状態を表す断面図、(B)は金型ハウジング602にステータ340をセットする前の状態を表す断面図である。なお、ケース400の製造においては、ステータ340を図2(A)の状態から上下さかさまにして金型600にセットし、モールド樹脂を導入する。このため、図5においてはステータ340が上下さかさまに表されている。
図2(A)に関連して説明したとおり、ケース400は、ステータ340に対してモールド樹脂を射出成形(モールド成形)することによって製造される。製造過程において、モールド成形によるこの工程を「モールド工程」という。モールド成形時には、金型600が使用される。金型600は、第1金型610、第2金型620、第3金型630、第4金型640およびセンターピン650から構成される。第1金型610、第2金型620、第3金型630、第4金型640によってモールド成形時のチャンバが形成される。センターピン650を用いてチャンバ内にステータ340を位置決めし、チャンバにモールド樹脂Mを導入すると、ステータユニット520が得られる。以下、第1金型610、第2金型620、第3金型630、第4金型640をまとめて「金型ハウジング602」という。
第1金型610は、ケース400の上半部の成形に用いられる。第1金型610は、その内方に凹部612を有する。凹部612は、後述するセンターピン650の角柱部652と勘合する。センターピン650はステータ340を金型ハウジング602に対して位置決めする際に用いられる。センターピン650の形状について詳細は後述する。第2金型620は、端子カバー部402の内周面の成形に用いられる。第3金型630はステータ340の下部に当接する。第3金型630によってケース400の下部内周面が形成される。第4金型640は、ケース400の下半部外周の成形に用いられる。第4金型640は、その内方に凹部642を有している。凹部642は第3金型630と嵌合する。
金型ハウジング602に対するステータ340とセンターピン650の組み付け方について説明する。
まず、第1金型610の凹部612にセンターピン650の角柱部652(後述)を嵌合させる。次に、センターピン650の外周面とステータ340の内周面とを当接させる形で、センターピン650にステータ340を嵌合させる。また、第1金型610に第2金型620を載置する。第4金型640の凹部642には、第3金型630を嵌合させる。第3金型630を嵌合させた第4金型640を第1金型610、センターピン650、ステータ340、第2金型620の上方に載置する。その後、第1金型610と第4金型640とを図示しない位置決め構造によって固定することで、ステータ340を金型ハウジング602、センターピン650に対して位置決めする。
図6はセンターピン650を含む構成を表す図である。(A)はセンターピン650の正面図、(B)はセンターピン650の平面図、(C)はステータ340にセンターピン650を挿入した構成の正面図、(D)はステータ340にセンターピン650を挿入した構成の平面図である。
センターピン650は正六角柱状の角柱部652、円柱状の大径部653、円柱状の小径部654および位置決め嵌合部656からなる。位置決め嵌合部656は、2つの帯状の突起655によって構成される。角柱部652、大径部653、小径部654は同軸状に設けられる。角柱部652は、第1金型610の凹部612と嵌合する。これにより第1金型610に対してセンターピン650が位置決めされる。この位置決めは、第1金型610に対するセンターピン650の相対位置だけでなく、センターピン650の中心軸に対する回転方向への位置決めも含む。大径部653はボビン344の上部肉厚部354の内周面と当接し、上部肉厚部354を芯出しする。小径部654は積層コア342の内周面357(磁極355の内周面343)と当接する。小径部654の外周面と磁極355の内周面343とが当接することで、ステータ340が調心される。位置決め嵌合部656は、小径部654の軸線と並行に延びる2つの帯状の突起655からなる。2つの突起655の隙間は、第2磁極353の幅とほぼ等しい。突起655の高さは、小径部654に対する大径部653の高さと等しいか、それ以下である。複数の第2溝352のうち隣り合う2つの第2溝352に位置決め嵌合部656の突起655が嵌合される。
大径部653および小径部654によって、ステータ340とセンターピン650とが同軸状に配設される。第2溝352と嵌合している位置決め嵌合部656によって、ステータ340とセンターピン650とは回転方向に位置決めされる。角柱部652が第1金型610の凹部612と嵌合することで、第1金型610に対してセンターピン650が位置決めされるから、センターピン650に対して位置決めされているステータ340も第1金型610に対して位置決めされる。したがって、図5(A)-(B)に関連して説明したとおり、金型ハウジング602の内部にステータ340が位置決めされる。
金型ハウジング602およびセンターピン650に対してステータ340が位置決めされた後、金型ハウジング602によって構成されたチャンバにモールド樹脂Mが導入されることによって、ステータユニット520が得られる。
図7はステータ340に対するモールド樹脂の被覆箇所について表す図である。(A)は図2(B)のD-D矢視断面図、(B)は図2(B)のE-E矢視断面図である。
図2(B)に示すとおり、積層コア342とボビン344の周りはモールド樹脂Mにより被覆される。積層コア342の外周側は、第4金型640と積層コア342との間に流入されたモールド樹脂Mにより被覆される。積層コア342の内周側に設けられている溝351は、センターピン650と積層コア342またはセンターピン650とボビン344の間に流入されたモールド樹脂Mにより被覆される。
図6(A)に関連して説明したとおり、センターピン650の小径部654は磁極355の内周面343と当接する。小径部654と内周面343との間には、センターピン650の挿入出のためのクリアランスが設けられているが、その隙間はモールド樹脂Mが流入しない程度に抑えられている。よって、図7(A)に示すとおり、積層コア342の磁極355の表面はモールド樹脂Mによる被覆がなされず、むき出しのままとなっている。
図2(B)に関連して説明したとおり、センターピン650の小径部654と積層コア342の溝351との間には隙間が設けられており、モールド樹脂Mが流入する。また、センターピン650の小径部654とボビン344の肉薄部358との間にも隙間が設けられており、肉薄部358はモールド樹脂Mに被覆される。一方、センターピン650の位置決め嵌合部656が挿入されている第2溝352には、位置決め嵌合部656が当接したことで形成された凹部362を含む。この凹部362の詳細について説明する。
図6(A)に関連して説明したとおり、センターピン650の位置決め嵌合部656は積層コア342の隣り合う第2溝352と嵌合する。2つの突起655はこれらの第2溝352間にある第2磁極353を挟む態様となる。この突起655と、第2磁極353との間には、センターピン650挿出入のためのクリアランスが設けられているが、その隙間はモールド樹脂Mが流入しない程度に抑えられている。一方、突起655間以外の、位置決め嵌合部656と第2溝352との間にはモールド樹脂Mが導入される。よって、図7(B)に示すとおり、射出成形後に金型600から取り出されたケース400は、位置決め嵌合部656が挿入されていた箇所に位置決め嵌合部656の当接痕による凹部362を有する。
本実施形態においては、位置決め嵌合部656をステータ340の第2溝352に嵌合させることで、ステータ340を金型ハウジング602に対してその回転方向に位置決めした。積層コア342に予め設けられている溝351を、ステータ340の金型ハウジング602に対する位置決めに使用するため、積層コア342に位置決めのための孔を設ける必要がない。よって、積層コア342の磁気特性を変化させることなく、ステータ340を金型ハウジング602に対して位置決めできる。また、積層コア342に挿入して金型ハウジング602に位置決めするためのピンが不要となり、金型構造を簡略化できる。
[ケース400と蓋体440のレーザ溶着]
上述のように、ケース400上端開口部を閉止するように蓋体440がインロー嵌合されている。以下、そのインロー嵌合部の構造および固定方法について説明する。
図8はインロー嵌合部の構造を説明するための図である。(A)はステータユニット520の縦断面図、(B)は図8(A)のF-F矢視断面図である。図9はインロー嵌合部の組付構造の詳細を表す図である。(A)は図8(A)におけるG-G矢視断面図、(B)は(A)におけるインロー嵌合部の分解図である。
図8(A)、(B)に示すとおり、本実施形態では、ケース400の端部403と蓋体440とが環状にインロー嵌合される。このため、端部403の上面と蓋体440の下面との間に環状の当接面が形成される。その当接面に沿ってレーザが照射されることにより、ケース400と蓋体440とが溶着される。以下、ケース400と蓋体440とのインロー嵌合構造について詳細を説明する。
図8(B)に示すとおり、ケース400は、端部403と2つの位置決め突部406(「位置決め体」として機能する)を含む。端部403は、ケース400の上部に位置する筒形状の部分である。端部403の内方には、プリント配線基板420をケース400に対して位置決めするための位置決め突部406が設けられている。
図9(A)、(B)に示すとおり、蓋体440は、上記当接面を有する当接部442と、断面矩形状の突部444と、凹部446とを含む。当接部442は、蓋体440の底面において、その周縁部全体にわたって設けられている。突部444は、蓋体440の底面において、当接部442の内側に沿って環状に設けられている。凹部446は、蓋体440の底面において突部444よりも内側に2つ設けられている。
当接部442は、ケース400の端面404(端部403における上面)に沿って当接する。突部444は、その外周面が端部403の内周面と対向する。突部444と端部403によってインロー嵌合部448が形成される。
図9(A)に示すとおり、ケース400と蓋体440とにより形成される空間Sには、プリント配線基板420が格納される。プリント配線基板420には2つの位置決め用孔424が設けられている。2つの位置決め突部406が2つの位置決め用孔424にそれぞれ挿入されることで、プリント配線基板420はケース400に対して位置決めされる。また、蓋体440の2つの凹部446にも、それら2つの位置決め突部406がそれぞれ嵌合される。この構造によって蓋体440はケース400に対して位置決めされる。すなわち、位置決め突部406は、ケース400に対するプリント配線基板420の位置決めと、ケース400に対する蓋体440の位置決めの両方の機能を有する。以下、プリント配線基板420の位置決め用孔424における嵌合構造を「嵌合部460」という。また、凹部446における嵌合構造を「位置決め嵌合部450」という。
位置決め突部406は、凹部446に圧入されて固定されている。これにより、蓋体440は位置決め嵌合部450においてケース400と位置決めされ、突部444の外周面とケース400の内周面との間(インロー嵌合部448の隙間)は、その全周にわたって均一に保持される。なお、位置決め突部406の外周面と凹部446の内周面との間にクリアランス(位置決め嵌合部450における隙間)を設けて位置決め突部406を凹部446に嵌合させてもよい。この場合においても、位置決め嵌合部450の隙間をインロー嵌合部448の隙間より小さくすることで、蓋体440は位置決め嵌合部450においてケース400と位置決めされる。
次にケース400と蓋体440との溶着について説明する。
図10は図9におけるX部の拡大断面図である。
上記のとおり、ケース400の内周面と蓋体440の突部444とによってインロー嵌合部448が形成されている。蓋体440の当接部442はケース400の端面404に沿って当接している。蓋体440はレーザ透過性の樹脂材からなり、ケース400はレーザ吸収性の樹脂材からなる。当接部442に対して、蓋体440側からレーザを照射することで、レーザは蓋体440を透過し、ケース400の端面404に吸収される。吸収されたレーザから発生する熱によりケース400の端面404の一部が溶融する。図10に示すとおり、溶融した樹脂材Rはインロー嵌合部448の隙間に溜まり、蓋体440の突部444の外周面とケース400の内周面とを架橋する態様で固着する。
本実施形態においては、インロー嵌合部448の隙間に溶融した樹脂材Rを流入させ、蓋体440の突部444の外周面とケース400の内周面とにわたって架橋する態様で樹脂材Rを固着させた。これにより、蓋体440とケース400とは当接部442だけでなくインロー嵌合部448においても溶着されるから、その溶着性を高めることができる。
インロー嵌合部448の隙間に溶融した樹脂材Rを流入させるため、レーザの照射位置は端面404の中央よりケース400内方側が溶融するように調節される。この位置にレーザを照射することで、蓋体440とケース400の端面404との溶着部位が当接部442の中央よりも内側に偏らせられる。よって、溶融した樹脂材Rが当接部442より外周面側に流出することを防止でき、ケース400と蓋体440の外周側にバリが発生することを防止できる。
インロー嵌合部448の隙間aは、ケース400内周面とプリント配線基板420の端縁との隙間bより小さい。このような構造とすることで、レーザ照射位置がプリント配線基板420の端縁よりも外側となり、レーザがプリント配線基板420に照射されることを防止できる。また、レーザ照射により発生する熱を蓋体440の突部444によって吸収させることができ、プリント配線基板420に伝熱するのを防止できる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
上記実施形態では、図2(B)に示したように、センターピンの位置決め嵌合部を第2溝352に挿入する例を示した。変形例においては、第1溝348に挿入してもよい。第1溝348に挿入する場合には、第1磁極350の先端とボビン344の内周面とにより形成される段差を利用して嵌合できる。また、隣り合う第1溝348と第2溝352の間を位置決め嵌合部が嵌合する態様でもよいし、隣り合わない任意の溝351に挿入される態様でもよい。位置決め嵌合部は1箇所に限らず複数設けてもよいし、帯状の突起が1本でも3本以上でもよい。位置決め嵌合部は、ステータの金型ハウジングに対する位置決めがなされる態様であればよい。
上記実施形態では、センターピンの位置決め嵌合部を帯状とし、小径部の軸線方向全域にわたって設ける例を示した。位置決め嵌合部の形状についてはこれに限らず、積層コアの内周面に設けられる溝と嵌合可能な形状であればよい。例えば、小径部の軸線方向の上半部など一部分にのみ設ける態様でもよい。モールド成形後にセンターピンを引き抜けることを条件とし、突起等その他の形状であってもよい。
上記実施形態では、ステータのコアとして積層コアを例示した。変形例においては、圧粉コアその他のコアを採用してもよい。この場合においても、コア内周側の溝を利用できるため、コアの磁気特性を変えることなく金型に対するコアの位置決めが可能となる。
上記実施形態では、モータユニットを三相モータとしたが、二相、四相、五相などのその他のモータとしてもよい。ステータにおける電磁コイルの数も3つに限らず、モータの相数にあわせて適宜設定してよい。
上記実施形態では、位置決め突部(位置決め体)を2つとし、2箇所の位置決め嵌合部および嵌合部によって蓋体とプリント配線基板とをケースに位置決めした。変形例においては、位置決め嵌合部や嵌合部の数をそれぞれ3箇所以上としてもよい。また、蓋体とケースとの位置決めが正確であり、かつ、プリント配線基板がレーザ溶着の影響を受けない位置に位置決めできればよく、位置決め嵌合部と嵌合部とを異なる場所に構成してもよい。位置決め体は、位置決めピン等ケースとは別体の部材にしてもよい。位置決め体は、ケースと蓋体、ケースとプリント配線基板またはケースと蓋体とプリント配線基板のいずれかの組み合わせを位置決めする態様であればよい。
上記実施形態では、上記電動弁を膨張弁として構成したが、膨張機能を有しない開閉弁や流量制御弁として構成してもよい。また、ケースと蓋体との溶着構造については電動弁に限らず、可変容量圧縮機用制御弁等のインロー嵌合部を有する部材の溶着構造に適用してもよい。
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。