JP7101730B2 - 金型 - Google Patents
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Description
ところで、プレス成型に使用する金属板材としては、例えば特許文献2に記載されているように、厚みが異なる複数の板材料からなるテーラードブランクがある。このテーラードブランクは、厚みが異なる複数の金属製の板材料を互いに突き合わせた状態で溶接して形成されている。この種の金属板材を素材として成型された成型品の表面あるいは裏面には、板材料の厚みの違いに起因する段差部が形成される。
金属板材3は、厚みが相対的に薄い金属製の板材料からなる第1の板部3aと、厚みが相対的に厚い金属製の板材料からなる第2の板部3bとを互いに突き合わせた状態で溶接したものである。
下型1は、第1の板部3aを成型する第1の成型面1aと、第2の板部3bを成型する第2の成型面1bとを有している。この第2の成型面1bは、第1の成型面1aより上型2の成型面2aから離間するように形成され、第1の成型面1aとともに段差5を形成している。この段差5は、第1の板部3aの厚み方向に延びる第2の段差面1cを含む。第2の成型面1bは、第1の成型面1aより、第1の板部3aと第2の板部3bとの厚みの差に相当する高さだけ低い。
第1の板部3aの金型逃がし空間Sに露出する部分は、上述した成型品の段差部である。この段差部は、下型1から離れていて冷却され難いことから、焼入れが不十分になって強度が低くなる。
このため、加熱された金属板材をプレス成型するにあたり、金属板材の段差部においても焼入れが施されるようになる。したがって、本発明によれば、金属板材の段差部も焼入れされて硬度が高くなる熱間プレス成型用の金型および熱間プレス成型装置を提供することができる。
以下、本発明に係る金型および熱間プレス成型装置の一実施の形態を図1~図11を参照して詳細に説明する。
図1に示す熱間プレス成型装置11は、ホットスタンプ工法により金属板材12(図2参照)を成型するもので、一対の金型13,14を含む成型部15と、これらの金型13,14に複数の配管16~21を介して接続された冷却部22とによって構成されている。
以下において、この熱間プレス成型装置11の構成を説明するうえで方向を示すにあたっては、便宜上、図1の紙面の手前側を前側とし、図1の紙面の裏側を後側として説明する。また、図1に示す熱間プレス成型装置11を前側から見た状態で上側を熱間プレス成型装置11の上側、右側を熱間プレス成型装置11の右側として説明する。
この実施の形態で使用する金属板材12は、図3に示すように、第1の金属板材からなる第1の板部34と、第1の金属板材より厚みが厚い第2の金属板材からなる第2の板部35とによって形成されている。この金属板材12は、テーラードブランク(tailor welded blank)と呼称されているものである。以下においては、第1および第2の板部34,35からなる金属板材12をテーラードブランク12Aとする。テーラードブランク12Aの第1の板部34と第2の板部35とは、端面どうしを互いに突き合わせた状態で溶接されている。この実施の形態においては、金属板材12の上面、すなわち成型時に上型14と接する面は、平坦に形成されている。この金属板材12の下面、すなわち成型時に下型13と接する面には、第1の板部34と第2の板部35との境界に位置する段差36が形成されている。この段差36は、第2の板部35の端面からなる第1の段差面37を有している。
このように金型逃がし用の空間Sが形成されていることにより、公差の範囲内で金属板材12の第1の段差面37が下型13の第2の段差面54に近づくようなことがあったとしても、これら第1の段差面37と第2の段差面54との間隔が0になることはない。このため、成型時に下型13の相対的に高い第1の成型面51が金属板材12の相対的に厚い第2の板部35と重なって成型不良を起こすことを防ぐことができる。
噴出口61は、図8に示すように、噴出口61毎に形成された冷媒噴出路64の他端である。分配用の冷媒通路63は、下型13の下面に開口する冷媒入口65を有し、この冷媒入口65には、供給用の配管20(図1参照)の一端が接続されて後述する冷却部22から冷媒が供給される。図8は、図4中のVIII-VIII線で切断した下型13の斜視図である。冷媒噴出路64は、噴出口61から下型13内に直線的に延びている。冷媒噴出路64の他端が第2の成型面52の、段差53の近傍に噴出口61として開口している。
吸入口62は、吸入口62毎に形成された吸入路72の他端である。集合通路71は、下型13の下面に開口する冷媒出口73を有し、この冷媒出口73には、吸入用の配管21(図1参照)の一端が接続されて、後述する冷却部22から負圧が伝播される。図9は、図4中のIX-IX線で切断した下型13の斜視図である。吸入路72は、吸入口62から下型13内に直線的に延びている。
集合通路71は、冷媒出口73から上方に延びる縦通路71aと、この縦通路71aの上端から左右方向に延びる横通路71bとによってT字状に形成されている。吸入路72は、この集合通路71の横通路71bに接続されている。
第1の冷却装置81は、成型時に噴出口61から冷媒が噴出するように供給用の配管20に液状の冷媒を供給する。この液状の冷媒としては、水や、薬剤を含む冷却液などを用いることができる。この第1の冷却装置81は、冷媒を成型時に供給用の配管20に送る機能の他に、冷媒を所定の温度に冷却する機能を有している。この実施の形態においては、この第1の冷却装置81が本発明でいう「冷却装置」に相当する。
吸入装置83は、下型13の吸入用の配管21から冷媒を吸入し、図示していない排液タンクに排出する。
この実施の形態による一対の金型13,14を試作して実験を行ったところ、図10に示すような結果が得られた。この実験に使用した金属板材12の第1の板部34の厚みは1.2mmで、第2の板部35の厚みは1.6mmである。この第1の板部34における金型逃がし用空間Sに露出する部分の硬度を測定した。硬度の基準値は400Hvである。実験は2枚の金属板材12について行い、硬度の測定は、各々の金属板材12について、金型の左右方向に延びる金型逃がし用空間Sの長手方向の5箇所で行った。
この実験によれば、硬度が基準値を大きく上回るとともに、金属板材12毎に硬度が安定することが判る。
下型13の第1の成型面51と第2の成型面52は図11~図13に示すように形成することができる。これらの図において、図1~図9によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図11に示す下型13の第1の成型面51と第2の成型面52とには、それぞれ多数の噴出口61と多数の吸入口62とが形成されている。図11に示す噴出口61と吸入口62は、下型の前後方向に所定の間隔をおいて離間する位置に互いに離間するように設けられており、第1の成型面51と第2の成型面52の全域に設けられている。なお、噴出口61と吸入口62は、このように第1の成型面51と第2の成型面52の全域に設ける他に、第1の成型面51と第2の成型面52の特に冷却性を高くする部位にのみ形成することができる。すなわち、噴出口61と吸入口62は、第1の成型面51と第2の成型面52の少なくとも一部に形成される。
このように冷媒による冷却の効率が向上したり、冷媒の量が増えることにより、金属板材12の段差部12aの焼入れがより一層確実になる。
ノズル101は、冷媒が噴出する噴出通路103を有し、ねじ孔102に螺着されている。噴出通路103は、三つの機能部を有している。第1の機能部は、噴出通路103の上流側端部を構成するテーパー部104である。テーパー部104は、ノズル101の上流端に位置する開口105から下流側に向かうにしたがって孔径が次第に小さくなるテーパー状に形成されている。ノズル101の上流端の開口105は、ねじ孔102と連なる冷媒噴出路64の内径より大きい。
この実施の形態を採る場合は、通路孔106の孔径が異なる複数種類のノズル101が予め形成される。これらのノズル101は、冷媒噴出路64から噴出する冷媒の量が目標量となるような孔径のものが選択され、冷媒噴出路64に取付けられる。
。
本発明に係る金型は、図14~図17に示すような金属板材を成型することができる。図14~図17において、図1~図13によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図14~図17に示す金属板材12は、第1の板部34と第2の板部35との間に第3の板部111を有するテーラードブランク12Bである。
図14~図17に示すテーラードブランク12Bを下型13に重ねることにより生じる金型逃がし空間Sは、第1の板部34および第3の板部111と第2の成型面52とによって挟まれて形成されている。
図15に示す第3の板部111は、一端から他端まで厚みが一定で、第1の板部34より厚くかつ第2の板部35より薄く形成されている。
図16に示す第3の板部111は、第1の板部34に溶接される一端が第1の板部34より薄く、第2の板部35に溶接される他端が第2の板部35より僅かに薄くなるように形成されているとともに、厚みが一端から他端まで漸次増大するように形成されている。
図17に示す第3の板部111は、第1の板部34に溶接される一端の厚みが第1の板部34と同等で、第2の板部35に溶接される他端の厚みが第1の板部34より薄くなるように形成されているとともに、厚みが一端から他端まで漸次減少するように形成されている。
本発明に係る金型は、図18(A),(B)~図20(A),(B)に示すような金属板材を成型することができる。図18(A),(B)~図20(A),(B)において、図1~図13によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図18~図20に示す金属板材12は、テーラーロールドブランク(tailor rolled blank)と呼称されているもので、第1の板部34と、第1の板部34より厚みが厚い第2の板部35とが一体に形成されている。図18(A),(B)~図20(A),(B)においては、テーラーロールドブランクを符号12Cで示す。図18(A)、図19(A)、図20(A)は、テーラーロールドブランク12Cの厚みが変わる段差部の断面図、図18(B)、図19(B)、図20(B)は、テーラーロールドブランク12Cが下型13と上型14とに挟まれている状態を示す断面図である。
図19(A)に示すテーラーロールドブランク12Cを下型13に重ねることにより生じる金型逃がし空間Sは、図19(B)に示すように、第3の板部113を含む段差部112と第2の成型面52とによって挟まれて形成される。
本発明に係る金型は、図21(A),(B)に示すような金属板材を成型することができる。図21(A),(B)において、図1~図13によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図21に示す金属板材12は、パッチドブランク(Patchd blank)と呼称されているもので、1枚の金属板材のみによって形成された第1の板部34と、2枚の金属板材によって形成された第2の板部35とを有している。図21(A),(B)においては、パッチドブランクを符号12Dで示す。
パッチドブランク12Dを下型13に重ねることにより生じる金型逃がし空間Sは、図21(B)に示すように、第1の板部34と第2の成型面52とによって挟まれて形成される。
さらに、上述した実施の形態においては、複数の吸入口62が設けられている例を示した。しかし、吸入口62は設けなくてもよいし、金型逃がし用の空間Sと対応する位置に一つだけ設けてもよい。
Claims (12)
- 第1の板部と、板部段差を介し前記第1の板部より厚みが厚い第2の板部とを含むブランクを加熱された状態でプレス成型する金型であって、
冷媒が流れる冷媒通路と、
一端が前記冷媒通路と接続し、他端が前記金型の成型面に開口する少なくとも一つの冷媒噴出路と、
前記第1の板部を成型する第1の成型面と、
前記第1の成型面とともに金型段差を形成し、前記第2の板部を成型する第2の成型面と
を備え、
前記少なくとも一つの冷媒噴出路の他端(噴出口)は、前記板部段差と、これに連続する第1の板部、該第1の板部に対峙する前記第2の成型面、この第2の成型面に連続し前記板部段差と対峙する金型段差とに囲まれる冷却空間に臨み、前記金型段差側の第2の成型面に開口し、
前記冷媒噴出路からの冷媒を吸入する吸入口を、前記第2の板部側の前記第2の成型面に開口し、前記冷媒を前記冷媒噴出路から噴出し、前記金型段差で堰き止め、前記第1の板部に沿って流動し、前記板部段差に当てて排出することを特徴とする金型。 - 請求項1記載の金型において、
前記冷媒噴出路の前記他端の開口と、前記吸入口は、前記段差に沿って並ぶ複数の位置に千鳥状にそれぞれ設けられていることを特徴とする金型。 - 請求項1または請求項2に記載の金型において、
前記下型の前記第2の成型面の少なくとも一部は、多数の凸部によって形成され、
前記下型の前記第2の成型面の、前記多数の凸部を有する部分には、前記冷却空間に連通する吸入口が形成されていることを特徴とする金型。 - 請求項3記載の金型において、
前記下型の前記第2の成型面の少なくとも一部は、多数の凸部によって形成され、
前記第2の成型面の、前記多数の凸部を有する部分には、前記冷却空間に連通する噴出口および吸入口が形成されていることを特徴とする金型。 - 請求項4記載の金型において、
前記下型の前記第1の成型面の少なくとも一部は、多数の凸部によって形成され、
前記第1の成型面の、前記多数の凸部を有する部分には、前記冷却空間に連通する噴出口または吸入口が形成されていることを特徴とする金型。 - 請求項1記載の金型において、
前記第1、2の板部は第1、2の金属板材から構成され、互いに突き合わせた状態で溶接して形成されたテーラードブランクであることを特徴とする金型。 - 請求項4記載の金型において、
前記テーラードブランクは、前記第1の金属板材と前記第2の金属板材との間に溶接された第3の金属板材からなる第3の板部を有し、
前記空間は、前記第1の板部および前記第3の板部と前記第2の成型面とによって挟まれて形成されていることを特徴とする金型。 - 請求項1記載の金型において、
前記第1の板部と、前記第1の板部より厚みが厚い第2の板部とが一体に形成された金属板材であるテーラーロールドブランクを加熱された状態でプレス成型する金型。 - 請求項1記載の金型において、
前記第1の板部と、重ねて溶接してなる第2の板部とを有するパッチドブランクを加熱された状態でプレス成型する金型。 - 請求項1記載の金型において、
前記金型は、金属板材のブランクを加熱された状態でプレス成型して断面形状がハット状の長尺部材を形成し、急冷する熱間プレス成型する金型であって、
前記長尺部材は、ハット状の断面の突出側(外面)を同一の金属板材で平坦に形成、裏面側(内面)はハット状の断面を横切る方向に他の金属板材を重ねて形成される段差部または1の金属板材の板厚を変化させて形成される傾斜部を境に長手方向の一方の厚板部の第2の板部と他方の薄板部の第1の板部とから構成されていることを特徴とする金型。 - 請求項1記載の金型において、
前記冷媒噴出路の開口の近傍に、冷媒が吸入される少なくとも一つの吸入口が開口していることを特徴とする金型。 - 請求項11記載の金型において、
前記冷媒噴出路の前記他端の開口と、前記吸入口は、前記段差部または傾斜部に沿って並ぶ複数の位置にそれぞれ設けられていることを特徴とする金型。
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