以下、本発明に係る制御弁の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、下記の実施形態では、本発明に係る制御弁を従来と同様の自動車用冷却水(以下、単に「冷却水」と略称する。)の循環系に適用したものを例に説明する。
(冷却水の循環回路の構成)
図1は、本発明に係る制御弁CVが適用される機関の冷却回路である冷却水の循環回路の構成を表したブロック図を示している。
制御弁CVは、自動車の機関であるエンジンEG(具体的には図示外のシリンダヘッド)の側部に配置されるもので、図1に示すように、エンジンEGと、ヒータHT、オイルクーラOC、ラジエータRDといった各デバイスとの間に配置されている。ヒータHTは、図示外のエアコンの温風を作り出すために熱交換を行う暖房熱交換器である。オイルクーラOCは、エンジンEGの摺動部の潤滑に供するオイルを冷却する。ラジエータRDは、エンジンEGの冷却に供する冷却水を冷却する。
ここで、図中の符号WPは、冷却水の循環に供するウォータポンプである。また、符号WTは、制御弁CVの駆動制御に供する水温センサであって、当該水温センサWTの検出結果に応じて制御弁CVが駆動制御される。また、符号TCは、エンジンEG内で燃焼される燃料と混合される空気の流量を制御するスロットルチャンバーであり、符号ECは、エンジンEGの燃焼後の排気ガスを冷却するEGRクーラである。
具体的には、ウォータポンプWPから吐出された冷却水が、導入通路L0を通じて制御弁CVへと導かれる。そして、水温センサWTによる検出結果などエンジンEGの運転状態に基づき制御弁CV内のロータRTが駆動制御される。これにより、導入通路L0を介して制御弁CVへと導かれた冷却水が、第1~第3配管L1~L3を介して、ヒータHT、オイルクーラOC及びラジエータRDへとそれぞれ分配される。
また、制御弁CVには、導入通路L0をバイパスすることによって冷却水をエンジンEGからスロットルチャンバーTCへと直接導くためのバイパス通路BLが設けられている。これにより、バイパス通路BLを介して制御弁CVへと導かれた冷却水が、図示外の第4配管L4を介して、スロットルチャンバーTCへと常時供給される。なお、スロットルチャンバーTCに供給された冷却水は、ヒータHTと同様、EGRクーラECへと導かれて、EGRクーラEC及びウォータポンプWPを介してエンジンEG側へと還流される。
このように、制御弁CVは、いわゆる1in-3out形式の分配デバイスとして適用されるもので、導入通路L0より流入した冷却水を第1~第3配管L1~L3へと分配すると共に、当該分配時の冷却水の流量を制御する。
なお、本実施形態では、自動車の機関の一態様として、内燃機関であるエンジンEGを例示しているが、当該機関には、エンジンEGのみならず、例えばモータや燃料電池など、エネルギを動力に変換するあらゆる装置が含まれる。
〔第1実施形態〕
(制御弁の構成)
図2は、本発明に係る制御弁CVの分解斜視図を示している。また、図3は、図2に示す制御弁CVを組み立てた状態を表した、当該制御弁CVの斜視図を示している。さらに、図4は、図3に示す制御弁CVの平面図を示している。なお、本図の説明では、駆動軸2の回転軸線Zに平行な方向を「軸方向」、駆動軸2の回転軸線Zに直交する方向を「径方向」、駆動軸2の回転軸線Z周りの方向を「周方向」として説明する。また、前記「軸方向」については、図2中の上方を「一端側」、下方を「他端側」として説明する。
図2~図4に示すように、制御弁CVは、ハウジング1の内部において駆動軸2を介して回転可能に支持された筒状の弁体3と、ハウジング1に収容され、弁体3を回転駆動する電動モータ4と、ハウジング1に収容され、電動モータ4の回転を減速して伝達する減速機構5と、を有する。
ハウジング1は、軸方向に2分割に形成されていて、弁体3及び電動モータ4を収容する第1ハウジング11と、第1ハウジング11の一端側の開口部を閉塞するように設けられ、減速機構5を収容する第2ハウジング12と、から構成される。第1ハウジング11と第2ハウジング12は、共に合成樹脂材料によって成形されていて、複数のボルト13により固定されている。
第1ハウジング11は、弁体3を収容する中空円筒状の弁体収容部111と、弁体収容部111に並列して付設され、電動モータ4のモータ本体41を収容する中空円筒状のモータ収容部112と、を有する。そして、この第1ハウジング11は、軸方向の他端部に設けられた取付部(具体的には、後述するフランジ部114a,114b,114c)を介して図示外のシリンダブロックに、図示外の固定手段、例えば複数のボルトにより固定される。
弁体収容部111は、軸方向の一端側が端壁113により閉塞され、他端側が開口形成される。弁体収容部111の軸方向の他端部には、第1ハウジング11を図示外のシリンダブロックに取り付ける複数(本実施形態では3つ)のフランジ部114a,114b,114cが、概ね放射状に、径方向の外側へ延びるように設けられている。各フランジ部114a,114b,114cは、周方向において、ほぼ等間隔に配置されている。また、各フランジ部114a,114b,114cの先端部には、断面が円形の貫通孔114dが、軸方向に沿って貫通形成されていて、各貫通孔114dには、円筒状に形成された金属製のスリーブ14が圧入されている。なお、このスリーブ14は、各フランジ部114a,114b,114cと同等の高さ(軸方向寸法)を有していて、このスリーブ14によって図示外のボルトの軸力を受ける構成となっている。
また、弁体収容部111の端壁113には、有蓋円筒状のボス部115が、第2ハウジング12側へ突出形成されている。ボス部115の端壁には、駆動軸2が貫通する軸貫通孔116が貫通形成されている。また、この弁体収容部111の端壁113には、後述する減速機構5の支持軸51,52の軸受けに供する平板状の1対の軸受部117,117が、直立形成されている。1対の軸受部117,117には、それぞれ支持軸51,52を回転可能に支持する軸受孔117a,117aが貫通形成されている。
また、第1ハウジング11には、弁体収容部111の側壁(周壁)に、弁体収容部111とヒータHT、オイルクーラOC、ラジエータRD(図1参照)とを接続する第1~第3配管L1~L3が取り付けられている。なお、図2~図4中の符号L4については、弁体収容部111とスロットルチャンバーTC(図1参照)とを接続するバイパス通路BLを構成する第4配管を示している。第1~第4配管L1~L4は、いずれも複数のボルト13によって第1ハウジング11に固定されている。
第2ハウジング12は、弁体収容部111とモータ収容部112とに跨ってこれら弁体収容部111とモータ収容部112とを被覆可能に開口する縦断面凹形状に形成されている。そして、この凹形状の内部空間によって、減速機構5を収容する減速機構収容部121が形成される。
電動モータ4は、出力軸42が第2ハウジング12側へ臨むかたちでモータ本体41がモータ収容部112内に収容される。そして、この電動モータ4は、モータ本体41の出力軸42側の端部に径方向の外側へと延びるように設けられたフランジ部43を介して、モータ収容部112の開口縁部に複数のボルト44により固定される。なお、電動モータ4は、図示しない車載の電子コントローラによって駆動制御され、車両の運転状態に応じて弁体3を回転駆動することによって、ラジエータRD等(図1参照)に対する冷却水の適切な分配が実現される。
減速機構5は、2組の食い違い歯車である第1歯車G1及び第2歯車G2により構成された駆動機構である。第1歯車G1は、電動モータ4の出力軸42と同軸上に設けられ、出力軸42と一体となって回転する第1ねじ歯車WG1と、電動モータ4の出力軸42と直交するように配置される第1支持軸51によって回転支持され、第1ねじ歯車WG1と噛み合う第1斜歯歯車HG1と、で構成される。第2歯車G2は、第2支持軸52によって回転支持され、第1斜歯歯車HG1と一体となって回転する第2ねじ歯車WG2と、駆動軸2に固定され、第2ねじ歯車WG2と噛み合う第2斜歯歯車HG2と、で構成される。ここで、第1斜歯歯車HG1と第2斜歯歯車HG2とは、筒状の両歯車HG1,HG2が直列状に並んで一体に構成された複合歯車部材であって、この複合歯車部材の両端部に挿入される第1、第2支持軸51,52を介して、第1ハウジング11の1対の軸受部117,117に回転支持される。このような構成から、電動モータ4の出力軸42から出力された回転駆動力が、第1歯車G1及び第2歯車G2を介して2段階に減速されて弁体3へと伝達される。
図5は、図4のA-A線に沿って切断した制御弁CVの断面図を示している。なお、本図の説明では、駆動軸2の回転軸線Zに平行な方向を「軸方向」、駆動軸2の回転軸線Zに直交する方向を「径方向」、駆動軸2の回転軸線Z周りの方向を「周方向」として説明する。また、前記「軸方向」については、図4中の上方を「一端側」、下方を「他端側」として説明する。
図5に示すように、第1ハウジング11には、軸方向の一端側が端壁113により閉塞され、かつ他端側が外部に開口する有底円筒状の弁体収容部111が形成されている。また、弁体収容部111の端壁113に設けられたボス部115には、駆動軸2が貫通する軸貫通孔116が、弁体収容部111と後述の減速機構収容部121とを連通するように、軸方向に沿って形成されている。また、第1ハウジング11には、弁体収容部111に隣接するかたちで、内部に電動モータ4のモータ本体41を収容する有底円筒状のモータ収容部112が、軸方向の一端側に向けて開口形成されている(図3参照)。
また、第1ハウジング11は、弁体収容部111の軸方向の他端部に、図示外のシリンダブロックの内部と連通してシリンダブロック側から冷却水を導入するための導入口E0(本発明に係る連通部に相当)が開口形成されている。すなわち、制御弁CVを図示外のエンジン(シリンダブロック)に取り付けた状態(以下、「制御弁CVの取付状態」という。)において、この導入口E0が図示外のシリンダブロック側の開口部と通じていて、当該導入口E0を介してシリンダブロック側から弁体収容部111に冷却水が導入されるようになっている。
また、弁体収容部111の周壁には、外部と弁体収容部111を連通する横断面ほぼ円形状の複数の貫通孔が、第1~第3排出口E1~E3として形成されていて、これら各排出口E1~E3に、対応する第1~第3配管L1~L3が接続されている(以下、第2排出口E2については、図2参照)。第1排出口E1は、第1配管L1を介して、例えばヒータHTに接続される。第2排出口E2は、第2配管L2を介して、例えばオイルクーラOCに接続される。第3排出口E3は、第3配管L3を介して、例えばラジエータRDに接続される。
ここで、第1~第3排出口E1~E3は、それぞれ第1ハウジング11の周壁上において異なる軸方向位置であって、かつそれぞれ第1ハウジング11の周壁上において異なる周方向位置、具体的には、約90°ずつ位相をずらした位置に配置されている(図3参照)。
また、第1~第3排出口E1~E3の内周側には、当該各排出口E1~E3と弁体3との間を気密にシールするシール手段が設けられている。このシール手段は、合成樹脂材料からなる円筒状の第1~第3シール部材S1~S3と、これら第1~第3シール部材S1~S3を弁体3側へ付勢する金属製の第1~第3コイルスプリングSP1~SP3と、から構成される。また、第1~第3シール部材S1~S3の外周側には、第1~第3排出口E1~E3と摺接可能な第1~第3シールリングSR1~SR3が取り付けられている。
第1~第3シール部材S1~S3は、所定のフッ素樹脂(本実施形態では、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン))により形成され、第1~第3排出口E1~E3の内周側に収容されて、それぞれ弁体3側へ向けて進退移動可能に設けられている。第1~第3コイルスプリングSP1~SP3は、第1~第3シール部材S1~S3と第1~第3配管L1~L3との間に所定のセット荷重をもって配置され、それぞれシール部材S1~S3を弁体3側へ付勢する付勢部材である。
駆動軸2は、一定外径の棒状を呈し、軸貫通孔116を貫通して弁体収容部111と減速機構収容部121とに跨って配置され、ボス部115の内周側に収容保持された軸受B1によって回転可能に支持される。また、駆動軸2と軸貫通孔116の間は、環状のシール部材20によって気密にシールされている。すなわち、このシール部材20によって、軸貫通孔116を通じた弁体収容部111内の冷却水の第2ハウジング12側への流出が抑止されている。
弁体3は、所定の硬質樹脂材料によって形成され、一定の外径を有する有底円筒状を呈し、他端側の開口部である導入部M0が導入口E0側へ臨むように設けられることで、内周側に形成される内部通路118に冷却水を導くようになっている。そして、この弁体3は、軸方向の一端部が、当該一端部の内周側に埋設された金属製のインサート部材30を介して駆動軸2に圧入固定される一方、導入口E0側へと臨む他端部が、導入口E0の内周側に保持される軸受B2によって回転可能に支持されている。
また、弁体3の周壁には、第1ハウジング11の第1~第3排出口E1~E3に対応する軸方向位置に、所定の回転位置(位相)において第1~第3排出口E1~E3と連通可能な第1~第3開口部M1~M3が、それぞれ径方向に沿って貫通形成されている。なお、第1~第3開口部M1~M3については、例えば真円や周方向に延びる長円など、弁体3の制御内容に応じた形状や数量に設定されている。
以上のように構成された制御弁CVは、第1開口部M1と第1排出口E1の少なくとも一部が重なる周方向位置に弁体3が制御されることによって、第1配管L1に冷却水を分配する。同様に、制御弁CVは、第2開口部M2と第2排出口E2の少なくとも一部が重なる周方向位置に弁体3が制御されることにより第2配管L2に冷却水を分配し、第3開口部M3と第3排出口E3の少なくとも一部が重なる周方向位置に弁体3が制御されることにより第3配管L3に冷却水を分配する。また、この冷却水の分配に際し、第1~第3開口部M1~M3と第1~第3排出口E1~E3との重なり具合(重なり合う面積)が変化することで、当該分配時の冷却水の流量が変化する。
図6は、図3に示す制御弁CVを取付部から見た斜視図を示している。なお、本図の説明では、弁体3の回転軸線Zに平行な方向を「軸方向」、弁体3の回転軸線Zに直交する方向を「径方向」、弁体3の回転軸線Z周りの方向を「周方向」として説明する。また、前記「軸方向」については、図6中の上方を「一端側」、下方を「他端側」として説明する。
図6に示すように、第1ハウジング11における弁体収容部111の軸方向の他端部には、図示外のシリンダブロックに対する第1ハウジング11の取り付けに供する複数(本実施形態では3つ)のフランジ部114a,114b,114cが設けられている。このフランジ部114a,114b,114cは、図示外のシリンダブロックの取付面に直交して導入口E0を通過する仮想線(本実施形態では回転軸線Z)に対する径方向の外側へと突出して設けられ、回転軸線Zの周方向においてほぼ等間隔に配置されている。また、各フランジ部114a,114b,114cの先端部には、断面が円形の貫通孔114dが軸方向に沿って貫通形成されていて、この各貫通孔114dには、円筒状に形成された金属製のスリーブ14が圧入固定されている。なお、このスリーブ14は、フランジ部114a,114b,114cと同等の高さ(軸方向寸法)を有していて、このスリーブ14によって図示外のボルトの軸力を受ける構成となっている。
ここで、第1ハウジング11では、各貫通孔114dの軸方向他端側の開口端面114eと、導入口E0の開口端面(後述する外周壁部161)とが同一平面を構成し、制御弁CVの取付状態において、図示外のシリンダブロックの取付面に着座する。換言すれば、各貫通孔114dの軸方向他端側の開口端面114eと、導入口E0の開口端面(後述する外周壁部161)とによって、図示外のシリンダブロックとの取付面110が構成されている。
また、フランジ部114a,114b,114cのうち、径方向の延出量が比較的大きい所定のフランジ部114a,114bには、弁体収容部111と各貫通孔114dの径方向間に、それぞれ格子状リブ151により画定された複数の肉抜き部150が、図示外のシリンダブロックと対向する取付面110側に開口形成されている。格子状リブ151は、径方向(フランジ部114a,114bの延びる方向)に沿って直線状に延びる幹部151aと、この幹部151aの途中から分岐形成され、幹部151aと直交するように延びる複数の枝部151bと、が一体に形成されている。また、格子状リブ151は、幹部151a及び枝部151bの取付面110側の端面が、取付面110に対して軸方向一端側へと若干オフセットされている。これにより、制御弁CVの取付状態において、格子状リブ151と図示外のシリンダブロックの取付面との間には、図示外の所定の隙間が形成されるようになっている。
ここで、本実施形態では、前記格子状リブ151が、特許請求の範囲に記載の本発明に係るリブに相当する。また、本発明に係るリブは、前記格子状リブ151のような格子状の形態に限定されるものではなく、例えば必要な剛性や、肉抜き部150の数量や開口形状等に応じて、任意の形態を採用することが可能である。
他方、フランジ部114a,114b,114cのうち、径方向の延出量が比較的小さい所定のフランジ部114cの基部の近傍には、軸方向に延びる板状リブ152により画定された複数の肉抜き部150が、弁体収容部111の径方向外側に向かって開口形成されている。
また、弁体収容部111(導入口E0)の開口端面であって、導入口E0の外周側には、取付面110側から軸方向一端側へ凹む溝部160が、周方向に沿って連続する環状に形成されている。そして、この溝部160には、円環状のシール部材171が嵌め込まれている。
図7は、図5の要部拡大図を示している。なお、本図の説明では、弁体3の回転軸線Z(図5参照)に平行な方向を「軸方向」、弁体3の回転軸線Zに直交する方向を「径方向」、弁体3の回転軸線Z周りの方向を「周方向」として説明する。また、前記「軸方向」については、図7中の上方を「一端側」、下方を「他端側」として説明する。
図7に示すように、第1ハウジング11の弁体収容部111(導入口E0)の開口端部には、軸受B2を保持する軸受保持溝119が、周方向に沿って環状に形成されている。軸受保持溝119は、弁体収容部111の内径に対して径方向外側へ段差状に拡径形成され、この軸受保持溝119の内周面に、軸受B2が圧入固定されている。この軸受B2は、ハウジング1及び弁体3を形成するPPS樹脂などの樹脂材料よりも摩擦に強く、高温に耐えることのできる例えばPEEK樹脂などの樹脂材料で形成される。これにより、ハウジング1や弁体3の内部に高温の冷却水が導入されたとしても、この高温の冷却水の熱によって軸受B2の強度が低下することによる当該軸受B2の摩耗を抑制でき、弁体3の作動不良が発生し難くなり、制御弁CVの作動の信頼性を向上させることが可能となる。
また、弁体収容部111(導入口E0)の開口端面であって、導入口E0の外周側には、取付面110側から軸方向一端側へ凹む溝部160が、周方向に連続する環状に形成されている。そして、溝部160には、横断面が長円状に形成された円環状のシール部材171が嵌め込まれている。シール部材171は、制御弁CVの取付状態において、溝部160の底部163とシリンダブロック10の取付面100との間で圧縮された状態で、溝部160内に収容保持される。
溝部160は、シリンダブロック10の取付面100側に開口する、横断面コ字形状となるように形成されている。具体的には、溝部160は、シリンダブロック10の取付面100と対向(当接)する外周壁部161と、外周壁部161よりも内周側であって、かつ外周壁部161よりも内側(軸方向他端側)へオフセットして設けられた内周壁部162と、によって画定されている。
外周壁部161は、溝部160の外周側に設けられ、底部163からの高さが内周壁部162よりも相対的に高く設定されている。また、外周壁部161は、制御弁CVの取付状態において、シリンダブロック10の取付面100と当接する。すなわち、外周壁部161は、シリンダブロック10の取付面100に着座する取付面110を構成する。
他方、内周壁部162は、溝部160の内周側に設けられ、底部163からの高さが外周壁部161よりも相対的に低く設定されている。すなわち、内周壁部162は、制御弁CVの取付状態において、シリンダブロック10の取付面100と離間し、シリンダブロック10の取付面100との間に所定の隙間Cを形成する。この隙間Cは、周方向に連続して設けられ、溝部160の全周にわたって形成されている。
ここで、内周壁部162は、その高さが、内周壁部162の端面とシリンダブロック10の取付面100との間に形成される隙間Cが溝部160の深さDの50%以下となるように設定されている。換言すれば、内周壁部162は、外周壁部161の高さの50%以上であって、製造時における誤差が最大公差となっても隙間Cを確保可能な高さに設定されている。
また、溝部160は、内周壁部162の端面とシリンダブロック10の取付面100との間に形成される隙間Cを介して導入口E0と連通する。このため、溝部160には、シリンダブロック10側から導入口E0を介して弁体収容部111内に導かれる冷却水が常時流入する。すなわち、溝部160内に冷却水が常時流入することで、溝部160内におけるシール部材171よりも内側(内周側)の冷却水が常時循環するようになっている。
また、隙間Cを介して溝部160に冷却水が流入する結果、溝部160内に収容されるシール部材171には、当該隙間Cを介して流入する冷却水の圧力が常時作用する。すなわち、溝部160内に収容されるシール部材171は、隙間Cを介して流入する冷却水の圧力により、外周壁部161の内側面に常時押しつけられた状態となっている。
(本実施形態の作用効果)
従来の制御弁によれば、シール溝の内周壁部と外周壁部とが同じ高さに設定されている。このため、ハウジングを樹脂材料で形成する場合、製造上の誤差によって、シール溝の外周壁部の高さが、内周壁部の高さよりも小さくなってしまう場合がある。このように、シール溝の外周壁部の高さが内周壁部の高さよりも小さくなってしまうと、ハウジングをエンジン(シリンダブロック)側に固定するためのボルトの軸力が作用したときに、ハウジングの内周側に浮きが生じてしまい、ハウジングとエンジン(シリンダブロック)との間のシール性が低下してしまうおそれがあった。
これに対して、本実施形態に係る制御弁CVでは、以下の効果が奏せられることで、前記従来の制御弁の課題を解決することができる。
すなわち、制御弁CVは、自動車の機関(本実施形態ではエンジンEG)の冷却回路に接続され、樹脂材料で形成されたハウジング1の内部に弁体3が収容されてなる制御弁であって、ハウジング1に設けられ、エンジンEG(シリンダブロック10)の取付面100に取り付けられる取付部(本実施形態では第1ハウジング11の第2ハウジング12と反対側の端部)と、前記取付部に開口し、流体(冷却水)の導入又は排出に供する連通部(本実施形態では導入口E0)と、導入口E0の周縁を囲む環状の溝部160と、溝部160とエンジンEG(シリンダブロック10)の取付面100との間に設けられた環状のシール部材171と、溝部160の外周縁に設けられ、エンジンEG(シリンダブロック10)の取付面100と対向する外周壁部161と、溝部160の内周縁に、外周壁部161よりも内側へオフセットして設けられ、エンジンEG(シリンダブロック10)の取付面100との間に隙間Cを形成する内周壁部162と、を備えている。
このように、本実施形態に係る制御弁CVでは、弁体3を収容するハウジング1のエンジンEG(シリンダブロック10)との取付面110に設けられた環状の溝部160の内周壁部162が外周壁部161よりも内側へオフセットされていて、溝部160の内周壁部162とエンジンEG(シリンダブロック10)の取付面100との間に隙間Cが形成されている。かかる隙間Cが形成されていることで、ハウジング1の製造時における誤差が最大公差となった場合であっても、内周壁部162の高さが外周壁部161の高さを上回るおそれがなくなる。その結果、制御弁CVの取り付けに際し、取付面110における内周側の浮きの発生が抑制され、ハウジング1とエンジンEG(シリンダブロック10)との間の良好なシール性を確保することができる。
また、本実施形態では、前記取付部は、エンジンEG(シリンダブロック10)の取付面100に直交して導入口E0を通過する仮想線(本実施形態では回転軸線Z)に対する径方向の外側へ突出して設けられ、エンジンEG(シリンダブロック10)との締結に供するボルト(図示外)が挿入される複数のフランジ部114a,114b,114cを有する。
このように、本実施形態では、制御弁CV(ハウジング1)が、複数のフランジ部114a,114b,114cを介して、ボルト(図示外)によりシリンダブロック10に締結される。このため、ボルトの軸力をもってシール部材171に予圧が付与され、導入口E0からの冷却水の漏れを効果的に抑制することができる。
また、本実施形態では、複数のフランジ部114a,114b,114cは、仮想線(回転軸線Z)の周方向において、ほぼ等間隔に設けられている。
このように、複数のフランジ部114a,114b,114cが、周方向に等間隔に設けられていることで、シール部材171に対して前記予圧を均等に作用させることができる。これにより、シール部材171による導入口E0からの冷却水の漏れをより効果的に抑制することができる。
また、本実施形態では、複数のフランジ部114a,114b,114cの少なくとも1つのフランジ部(本実施形態ではフランジ部114a,114b)は、エンジンEG(シリンダブロック10)の取付面100に対向して設けられた複数の肉抜き部150と、複数の肉抜き部150の間にエンジンEG(シリンダブロック10)の取付面100から離間して設けられたリブ(本実施形態では格子状リブ151)と、を有する。
このように、複数のフランジ部114a,114b,114cの少なくとも1つのフランジ部(本実施形態ではフランジ部114a,114b)に複数の肉抜き部150が設けられていることで、制御弁CVを軽量化できる。また、肉抜き部150によって、ハウジング1の材料削減による歩留まりが向上し、制御弁CVの製造コストの低廉化に寄与できる。さらには、肉抜き部150が設けられていることで、ハウジング1の成型時における樹脂材料のヒケ(樹脂材料の成型収縮により発生する凹み)を抑制することができる。
また、本実施形態では、外周壁部161は、エンジンEG(シリンダブロック10)の取付面100と当接する。
このように、外周壁部161がエンジンEG(シリンダブロック10)の取付面100と当接していることによって、取付面100とシール部材171の間に安定した面圧を作用させることができる。さらには、外周壁部161の当接によって、前記取付部の適切な高さ管理、すなわちシール部材171の適切な圧縮変形量の管理に供し、シール部材171のシール性をさらに向上させることができる。
また、本実施形態では、内周壁部162とエンジンEG(シリンダブロック10)との間に形成される隙間Cは、溝部160の深さの50%以下に設定されている。
このように、隙間Cが溝部160の深さDの50%以下に設定されていることで、溝部160内においてシール部材171を良好に保持することが可能となり、シール部材171の良好なシール性を確保することができる。
また、本実施形態では、溝部160とシール部材171との間である間口部164は、内周壁部162とエンジンEG(シリンダブロック10)の取付面100との間に形成される隙間Cを介して連通部である導入口E0と連通している。
このように、溝部160とシール部材171との間である間口部164が隙間Cを介して導入口E0と連通していることで、導入口E0を介して弁体収容部111に導入される冷却水の一部を溝部160内へと導き、溝部160内で冷却水を循環させることが可能になる。これにより、シール部材171に異物等が付着した場合でも、当該異物等は前記循環する冷却水によって洗い流され、シール部材171の寿命を向上させることができる。
さらに、隙間Cを介して溝部160とシール部材171との間である間口部164内へと導入された冷却水は、シール部材171の内周側に作用し、その水圧によって、シール部材171を外周壁部161側へ常時押圧する。これにより、外周壁部161とエンジンEG(シリンダブロック10)の取付面100との間のシール部材171によるシール性がさらに向上し、外部からの異物等の侵入をより効果的に抑制することができる。
また、本実施形態では、内周壁部162とエンジンEG(シリンダブロック10)の取付面100との間に形成される隙間Cは、溝部160の全周にわたって形成されている。
このように、隙間Cが溝部160の全周にわたって形成されていることで、当該隙間Cを介して冷却水が溝部160とシール部材171の間である間口部164内に満遍なく導入され、溝部160内における冷却水の滞留を抑制することができる。そして、この溝部160とシール部材171の間である間口部164内に導入された冷却水によって、シール部材171に付着した異物等を効果的に除去し、シール部材171の寿命をさらに向上させることができる。
〔第2実施形態〕
図8~図11は、本発明に係る制御弁の第2実施形態を示し、導入口E0に加えて第1、第2排出口E1,E2を本発明に係る連通部として構成したものである。すなわち、本実施形態では、前記第1実施形態に係る第1、第2排出口E1,E2を取付面110側に開口させ、第1、第2排出口E1,E2から排出された冷却水をシリンダブロック10を介して各デバイス(ヒータHT、オイルクーラOC)へ供給するように構成したものである。なお、かかる変更点以外の基本的な構成については前記第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことによって、その説明を省略する。
図8は、本実施形態に係る制御弁CV2の平面図を示し、図9は、図8のB-B線に沿って切断した制御弁CV2の断面図を示している。なお、各図の説明では、弁体3の回転軸線Z(図9参照)に平行な方向を「軸方向」、弁体3の回転軸線Zに直交する方向を「径方向」、弁体3の回転軸線Z周りの方向を「周方向」として説明する。
図8、図9に示すように、本実施形態に係る制御弁CV2では、第1、第2排出口E1,E2が、それぞれL字形状に形成されていて、取付面110側であって導入口E0に隣接する位置に開口形成されている。具体的には、第1、第2排出口E1,E2は、導入口E0の外周域(径方向外側の領域)であって、弁体収容部111に対して第1、第2排出口E1,E2の内部通路を隔てる隔壁111aを挟んで隣接した位置に、シリンダブロック10の取付面100側に向けて開口形成されている。
また、ハウジング1の取付部、すなわち第1ハウジング11の軸方向端部であって、かつ第2ハウジング12とは反対側の端部に設けられた取付面110には、当該取付面110とシリンダブロック10の取付面100との間を液密にシールするシール部材172が設けられている。このシール部材172は、後述するように、一体に形成されている(図10参照)。
図10は、本実施形態に係る制御弁CV2を取付面110側から見た図を示し、図11は、図9の要部拡大図を示している。なお、各図の説明では、弁体3の回転軸線Z(図9参照)に平行な方向を「軸方向」、弁体3の回転軸線Zに直交する方向を「径方向」、弁体3の回転軸線Z周りの方向を「周方向」として説明する。また、前記「軸方向」については、図10中の上方を「一端側」、下方を「他端側」として説明する。
図10、図11に示すように、第1ハウジング11の取付面110には、導入口E0及び第1、第2排出口E1,E2の開口縁部に、取付面110側から軸方向一端側へ凹む一連の溝部160が、導入口E0及び第1、第2排出口E1,E2を囲繞するように形成されている。溝部160には、横断面が長円状に形成された環状のシール部材172が嵌め込まれている。
シール部材172は、図10に示すように、導入口E0を囲繞する円環状の第1環部172aと、第1排出口E1を囲繞する環状の第2環部172bと、第2排出口E2を囲繞する環状の第3環部172cと、が一体に形成されたものである。なお、シリンダブロックについては図示を省略しているが、シール部材172は、前記第1実施形態に係るシール部材171と同様、制御弁CV2の取付状態において、溝部160の底部163と図示外のシリンダブロックの取付面との間に圧縮された状態で溝部160に収容保持される。
溝部160は、図11に示すように、図示外のシリンダブロックの取付面側へ開口する、横断面がコ字形状となるように形成されている。具体的には、溝部160は、図示外のシリンダブロックの取付面と対向(当接)する外周壁部161と、外周壁部161よりも内周側であって、かつ外周壁部161よりも内側(軸方向他端側)へオフセットして設けられた内周壁部162と、によって画定されている。
外周壁部161は、溝部160の最外周側に設けられ、前記第1実施形態と同様、底部163からの高さが内周壁部162よりも相対的に高く設定されている。また、外周壁部161は、制御弁CV2の取付状態で図示外のシリンダブロックの取付面と当接する、第1ハウジング11の取付面110を構成する。
他方、内周壁部162は、溝部160の内周側に設けられ、底部163からの高さが外周壁部161よりも相対的に低く設定されている。すなわち、内周壁部162は、前記第1実施形態と同様、制御弁CV2の取付状態にて図示外のシリンダブロックの取付面と離間し、当該シリンダブロックの取付面との間に所定の隙間Cを形成する。なお、本実施形態でも、内周壁部162の高さは、隙間Cが溝部160の深さDの50%以下となるように設定されていることが望ましい。
また、溝部160は、隙間Cを介して導入口E0及び第1、第2排出口E1,E2と連通している。このため、溝部160には、導入口E0及び第1、第2排出口E1,E2を介して、導入口E0及び第1、第2排出口E1,E2を通流する冷却水が常時流入して、溝部160内の冷却水が常時循環するようになっている。なお、シール部材172は、導入口E0及び第1、第2排出口E1,E2を通流する冷却水の圧力によって溝部160の外周側へと押しつけられるため、溝部160内では、シール部材172よりも内周側の冷却水が常時循環することになる。
以上のように、本実施形態に係る制御弁CV2でも、溝部160の内周壁部162が外周壁部161よりも内側へとオフセットされていて、内周壁部162と図示外のシリンダブロックの取付面との間に隙間Cが形成される。これにより、ハウジング1の製造時の誤差が最大公差となった場合であっても、内周壁部162の高さが外周壁部161の高さを上回ることがなく、制御弁CV2の取り付けに際して、取付面110における内周側の浮きの発生が抑制され、本発明の技術的課題を解決することができる。その他、本実施形態に係る制御弁CV2によっても、前記第1実施形態と同様の作用効果が奏せられる。
〔第3実施形態〕
図12~図14は、本発明に係る制御弁の第3実施形態を示し、導入口E0に加えて、第1排出口E1を本発明に係る連通部として構成すると共に、当該導入口E0及び第1排出口E1をハウジング1の側部に配置したものである。すなわち、本実施形態では、前記第1実施形態に係る導入口E0及び第1排出口E1を第1ハウジング11の側方へと開口させ、当該側部に取付面110を構成したものである。なお、かかる変更点以外の基本的な構成については前記第1実施形態と同様である。このため、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことによって、その説明を省略する。
図12は、本実施形態に係る制御弁CV3の側面図を示している。また、図13は、図12のC-C線に沿って切断した制御弁CV3の断面図を示し、図14は、図13の要部拡大図を示している。なお、各図の説明では、弁体3の回転軸線Z(図13参照)に平行な方向を「軸方向」、弁体3の回転軸線Zに直交する方向を「径方向」、弁体3の回転軸線Z周りの方向を「周方向」として説明する。また、前記「軸方向」については、図14中の上方を「一端側」、下方を「他端側」として説明する。
図12~図14に示すように、本実施形態に係る制御弁CV3は、第1ハウジング11の軸方向他端側の開口端部が、有底円筒状の封止部材18によって封止されていて、第1ハウジング11の周壁に、本発明に係る取付部が径方向に膨出形成されている。そして、この取付部の端面に、図示外のシリンダブロックの取付面に当接配置されるほぼ平坦状の取付面110が形成されている。
また、図12に示すように、第1ハウジング11の外周壁には、フランジ部114a,114bとフランジ部114cとが、周方向において180°間隔に、取付面110を挟んで設けられている。そして、各フランジ部114a,114b,114cには、取付面110側に開口する断面が円形の貫通孔114dが形成されている。すなわち、本実施形態に係る制御弁CV3は、取付面110が図示外のシリンダブロックの取付面に着座した状態で、各フランジ部114a,114b,114cの貫通孔114dに挿入された図示外のボルトによって、シリンダブロックに固定される。
また、図13に示すように、第1ハウジング11の周壁の軸方向中間部に相当する、取付面110の軸方向一端側の領域には、冷却水の導入に供する導入口E0が開口形成されている。この導入口E0には、前記第1実施形態に係る第1~第3排出口E1~E3と同様に、弁体3側(径方向内側)へと向かって付勢されたシール部材S0が、第1ハウジング11の径方向に沿って進退移動可能に配置されている。このシール部材S0は、前記第1実施形態に係る第1~第3シール部材S1~S3と同様に構成され、導入口E0の外端部の内周面に固定されたリテーナ部材19に着座するコイルスプリングSP0の付勢力をもって、弁体3と常時摺接可能となっている。
なお、本実施形態に係る制御弁CV3では、導入口E0と第1開口部M1とが重なり合わず、シール部材S0によって導入口E0と弁体3との間がシールされることで閉弁する。このように、導入口E0を閉じて制御弁CV3内への冷却水の導入を遮断することによっても、冷却水の循環が停止し、機関始動時における暖機の促進を図ることができる。
また、本実施形態に係る制御弁CV3では、第1排出口E1が、取付面110の軸方向他端側の領域に、導入口E0と並列に開口形成されている一方、第2、第3排出口E2,E3が、弁体収容部111を挟んで取付面110の径方向反対側へと、V字状に斜めに開口形成されている。ここで、第1排出口E1については、封止部材18の開口端部に切り欠かれた連通溝180を介して弁体3の内部通路118と第1排出口E1とが連通可能となっている。また、本実施形態の第1~第3排出口E1~E3では、前記第1実施形態に係る第1~第3シール部材S1~S3が省略されていて、第1~第3排出口E1~E3と弁体3との間が、微小隙間からなるクリアランスシールによってシールされている。
かかる構成から、本実施形態に係る制御弁CV3は、導入口E0が第1開口部M1と重なり合うことで、導入口E0を介して図示外のシリンダブロック側から導入された冷却水が、弁体3の内部通路118へ導かれる。この内部通路118に導かれた冷却水の一部は、第1排出口E1を介してヒータHTに供給される。また、内部通路118に導かれた冷却水の一部は、第2、第3開口部M2,M3が第2、第3排出口E2,E3と重なり合うことで、第2、第3排出口E2,E3を介してオイルクーラOC、ラジエータRDに供給される。
また、図12~図14に示すように、第1ハウジング11の取付面110には、導入口E0及び第1排出口E1の開口縁部に、取付面110側から径方向内側へと凹む一連の溝部160が、導入口E0及び第1排出口E1を囲繞するように形成されている。溝部160には、横断面が長円状に形成された環状のシール部材173が嵌め込まれている。
シール部材173は、図12に示すように、導入口E0を囲繞する円環状の第1環部173aと、第1排出口E1を囲繞する円環状の第2環部173bと、が接続部173cを介して接続され、全体として一体に形成されたものである。なお、シリンダブロックについては図示を省略しているが、シール部材173は、前記第1実施形態に係るシール部材171と同様、制御弁CV3の取付状態において、溝部160の底部163と図示外のシリンダブロックの取付面との間で圧縮された状態で溝部160に収容保持される。
溝部160は、図14に示すように、図示外のシリンダブロックの取付面側へ開口する、横断面がコ字形状となるように形成されている。具体的には、溝部160は、図示外のシリンダブロックの取付面と対向(当接)する外周壁部161と、外周壁部161よりも内周側であって、かつ外周壁部161よりも径方向内側へオフセットして設けられた内周壁部162と、によって画定されている。
外周壁部161は、溝部160の外周側に設けられ、前記第1実施形態と同様に、底部163からの高さが内周壁部162よりも相対的に高く設定されている。また、外周壁部161は、制御弁CV3の取付状態で図示外のシリンダブロックの取付面と当接する、第1ハウジング11の取付面110を構成する。
他方、内周壁部162は、溝部160の内周側に設けられ、底部163からの高さが外周壁部161よりも相対的に低く設定されている。すなわち、内周壁部162は、前記第1実施形態と同様、制御弁CV3の取付状態にて図示外のシリンダブロックの取付面と離間し、当該シリンダブロックの取付面との間に所定の隙間Cを形成する。なお、本実施形態でも、内周壁部162の高さは、隙間Cが溝部160の深さDの50%以下となるように設定されていることが望ましい。
また、溝部160は、隙間Cを介して導入口E0及び第1排出口E1と連通する。このため、溝部160には、導入口E0及び第1排出口E1を介して、導入口E0及び第1排出口E1を通流する冷却水が常時流入し、溝部160内の冷却水が常時循環するようになっている。なお、シール部材173は、導入口E0及び第1排出口E1を通流する冷却水の圧力によって溝部160の外周側へと押しつけられるため、溝部160内では、シール部材173よりも内周側の冷却水が常時循環することになる。
以上のように、本実施形態に係る制御弁CV3でも、溝部160の内周壁部162が外周壁部161よりも内側へとオフセットされていて、内周壁部162と図示外のシリンダブロックの取付面との間に隙間Cが形成される。これにより、ハウジング1の製造時の誤差が最大公差となった場合であっても、内周壁部162の高さが外周壁部161の高さを上回ることがなく、制御弁CV3の取り付けに際して、取付面110における内周側の浮きの発生が抑制され、本発明の技術的課題を解決することができる。その他、本実施形態に係る制御弁CV3によっても、前記第1実施形態と同様の作用効果が奏せられる。
本発明に係る制御弁は、前記各実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の作用効果を奏し得る形態であれば、適用する機関の仕様等に応じて自由に変更可能である。
特に、前記各実施形態では、制御弁の適用の一例として、冷却水の循環系に適用したものを例示したが、当該制御弁は、冷却水のみならず、例えば潤滑油など様々な流体について適用可能であることは言うまでもない。
また、前記各実施形態では、本発明に係る連通部として、導入口E0のほか、第1~第3排出口E1~E3からなる3つの開口部を設けた態様を例示したが、排出口については、少なくとも1つ設けられていればよく、第1~第3排出口E1~E3の3つに限定されるものではない。
また、本発明に係る連通部は、前記各実施形態に限定されるものではなく、導入口E0と他の排出口(例えば第2排出口E2や第3排出口E3)との組み合わせや、排出口単体であってもよい。換言すれば、本発明に係る連通部は、冷却水の導入又は排出に供するものであれば、導入口E0のみ、導入口E0と第1~第3排出口E1~E3とを組み合わせたもの、第1~第3排出口E1~E3のみなど、制御弁の仕様に応じて任意に設定可能である。
以上説明した実施形態に基づく制御弁としては、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
すなわち、当該制御弁は、その1つの態様において、自動車の機関の冷却回路に接続され、樹脂材料で形成されたハウジングの内部に弁体が収容されてなる制御弁であって、前記ハウジングに設けられ、前記機関の取付面に取り付けられる取付部と、前記取付部に開口し、流体の導入又は排出に供する連通部と、前記連通部の周縁を囲む環状の溝部と、前記溝部と前記機関の取付面との間に設けられた環状のシール部材と、前記溝部の外周縁に設けられ、前記機関の取付面と対向する外周壁部と、前記溝部の内周縁に、前記外周壁部よりも内側へオフセットして設けられ、前記機関の取付面との間に隙間を有する内周壁部と、を備えている。
前記制御弁の好ましい態様において、前記取付部は、前記機関の取付面に直交して前記連通部を通過する仮想線に対する径方向の外側へ突出して設けられ、前記機関との締結に供するボルトが挿入される複数のフランジ部を有する。
別の好ましい態様では、前記制御弁の態様のいずれかにおいて、前記複数のフランジ部は、前記仮想線の周方向において、ほぼ等間隔に設けられている。
さらに別の好ましい態様では、前記制御弁の態様のいずれかにおいて、前記複数のフランジ部の少なくとも1つのフランジ部は、前記機関の取付面に対向して設けられた複数の肉抜き部と、前記複数の肉抜き部の間に前記機関の取付面から離間して設けられたリブと、を有する。
さらに別の好ましい態様では、前記制御弁の態様のいずれかにおいて、前記外周壁部は、前記機関の取付面と当接する。
さらに別の好ましい態様では、前記制御弁の態様のいずれかにおいて、前記内周壁部と前記機関の取付面との間に形成される前記隙間は、前記溝部の深さの50%以下に設定されている。
さらに別の好ましい態様では、前記制御弁の態様のいずれかにおいて、前記溝部は、前記内周壁部と前記機関の取付面との間に形成される前記隙間を介して前記連通部と連通する。
さらに別の好ましい態様では、前記制御弁の態様のいずれかにおいて、前記内周壁部と前記機関の取付面との間に形成される前記隙間は、前記溝部の全周にわたって形成されている。