JP7101180B2 - ボイラの空気予熱装置及びボイラの運転方法 - Google Patents

ボイラの空気予熱装置及びボイラの運転方法 Download PDF

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Description

本発明は、ボイラの空気予熱装置及びボイラの運転方法に関する。
ボイラには、燃焼炉に供給される燃焼用空気を予熱するガス式の空気予熱器(GAH:Gas Air Heater)を備えるものがある。ガス式の空気予熱器は、燃焼炉から排出される排ガスの熱を用いて燃焼用空気を予熱する。
従来、空気予熱器に関する技術として、特許文献1には、複数系統の空気予熱器を備え、系統毎に空気予熱器に流れる排ガス量を制御可能にした構成が開示されている。また、特許文献2には、負荷応答特性を高めるために、燃焼用空気の一部を、空気予熱器を通さずに燃焼炉まで迂回させるバイパス機構を備えた構成が示されている。
実開平1-94748号公報 特開昭60-162110号公報
近年、ボイラの燃料として高水分又は高硫黄分の低品質の燃料を使用することが要求されることがある。低品質の燃料を用いた場合、排ガス中の水分が多くなり、それに起因して排ガスの酸露点(例えば硫酸露点又は塩酸露点)が高くなる。酸露点が高くなると、空気予熱器の低温部に酸が凝結しやすい状況が生じ、酸が凝結した場合に、空気予熱器の低温部に酸による腐食(以下、「酸露点腐食」と呼ぶ)が発生する。一般に、硫酸露点よりも塩酸露点の方が低く、硫酸及び塩酸ともに金属を腐食させる。
酸露点腐食を回避するには、例えば空気予熱器に送る排ガスを高い温度に設定するか、或いは、空気予熱器の低温部を酸に強い特殊金属で構成することを検討できる。しかし、空気予熱器に送る排ガスを高温にすると、排ガスの顕熱損失が増加し、ボイラ効率を低下させるため好ましくない。また、空気予熱器に特殊金属を用いると、部品コストが大幅に高騰するという課題が生じる。
一方、特許文献1と特許文献2とには、空気予熱器の低温部に生じる酸露点腐食を低減するという技術思想の開示はない。
本発明は、ボイラ効率の大きな低下、又は、部品コストの大幅な高騰を招くことなく、空気予熱器の酸露点腐食を低減できるボイラの空気予熱装置及びボイラの運転方法を提供することを目的とする。
本発明に係るボイラの空気予熱装置は、
排ガスの流れ方向に沿って並ぶ複数段の空気予熱器と、
前記複数段の空気予熱器のうち、何れかの段の空気予熱器の空気通路の上流で燃焼用空気の一部を分岐させ、別の段の空気予熱器の空気通路の上流へ迂回させるバイパス通路と、
を備え
前記複数段の空気予熱器のうち、他の空気予熱器を通過した燃焼用空気を含まない燃焼用空気が導入される第1の空気予熱器の体積が、他の空気予熱器の体積よりも小さく、前記第1の空気予熱器以外の他の空気予熱器の体積は互いに等しい
本発明に係るもう一つの態様のボイラの空気予熱装置は、
排ガスの流れ方向に沿って並ぶ複数段の空気予熱器と、
前記複数段の空気予熱器のうち、何れかの段の空気予熱器の空気通路の上流で燃焼用空気の一部を分岐させ、別の段の空気予熱器の空気通路の上流へ迂回させるバイパス通路と、
を備え、
前記複数段の空気予熱器のうち、排ガスの出口にある空気予熱器の体積は他の空気予熱器の体積よりも小さく、他の空気予熱器の体積は互いに等しい。
本発明に係るボイラの運転方法は、
燃料を燃焼させる燃焼炉と、
前記燃焼炉から排出される排ガスの流れ方向に沿って並ぶ複数段の空気予熱器と、
前記複数段の空気予熱器のうち、何れかの段の空気予熱器の空気通路の上流で燃焼用空気の一部を分岐させ、別の段の空気予熱器の空気通路の上流へ迂回させるバイパス通路と、
前記バイパス通路の開度を変更可能な流量調整部と、
を備え
前記複数段の空気予熱器のうち、他の空気予熱器を通過した燃焼用空気を含まない燃焼用空気が導入される第1の空気予熱器の体積が、他の空気予熱器の体積よりも小さく、前記第1の空気予熱器以外の他の空気予熱器の体積は互いに等しいボイラの運転方法であって、
前記ボイラの稼働率に応じて前記流量調整部の開度を変更するという運転方法である。
本発明に係るもう一つの態様のボイラの運転方法は、
前記燃焼炉から排出される排ガスの流れ方向に沿って並ぶ複数段の空気予熱器と、
前記複数段の空気予熱器のうち、何れかの段の空気予熱器の空気通路の上流で燃焼用空気の一部を分岐させ、別の段の空気予熱器の空気通路の上流へ迂回させるバイパス通路と、
前記バイパス通路の開度を変更可能な流量調整部と、
を備え、
前記複数段の空気予熱器のうち、排ガスの出口にある空気予熱器の体積は他の空気予熱器の体積よりも小さく、他の空気予熱器の体積は互いに等しいボイラの運転方法であって、
前記ボイラの稼働率に応じて前記流量調整部の開度を変更するという運転方法である。
本発明によれば、ボイラ効率を大きく低下させたり、部品コストを大幅に高騰させたりすることなく、空気予熱器の酸露点腐食の低減を図ることができる。
本発明の実施形態に係る空気予熱装置を有するボイラの全体を示す構成図である。 実施形態の空気予熱装置を示す構成図である。 比較例1の空気予熱装置を示す構成図である。 比較例2の空気予熱装置を示す構成図である。 比較例3の空気予熱装置を示す構成図である。 実施形態の空気予熱装置の変形例1を示す構成図である。 実施形態の空気予熱装置の変形例2を示す構成図である。 実施形態の空気予熱装置の変形例3を示す構成図である。 実施形態の空気予熱装置の変形例4を示す構成図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る空気予熱装置を有するボイラの全体を示す構成図である。
本実施形態に係るボイラ1は、図1に示すように、燃焼炉10、サイクロン等のセパレータ11、煙道12、過熱器13、エコノマイザ14、空気予熱装置15、集塵機16、ポンプ17、煙突18及び制御部20を備える。燃焼炉10は、炉外から燃料及び燃焼用空気が供給されて燃料を燃焼させる。セパレータ11は、燃焼炉10から排出された高温の排ガスから固体成分を分離させて排ガスを煙道12に送る。過熱器13は煙道12に設けられ、高温の排ガスの熱を受けてボイラ1の蒸気を過熱する。エコノマイザ14は煙道12の過熱器13より後段に設けられ排ガスの余熱を利用して温水を予熱する。集塵機16は、バグフィルタ及び電気集塵機等であり、低温の排ガスからダストを捕集する。ポンプ17及び煙突18は排ガスを空中に排出させる。
<空気予熱装置>
図2は、実施形態の空気予熱装置を示す構成図である。
空気予熱装置15は、燃焼炉10へ供給される燃焼用空気を排ガスの余熱を用いて予熱する装置であり、複数段の空気予熱器151、152、153と、燃焼用空気を流す通路(158a~158d)と、ダンパ159とを備える。空気予熱装置15から燃焼炉10へ供給される燃焼用空気は、一次エア、二次エア、又はこれらの両方であってもよい。上記のダンパ159は、本発明に係る流量調整部の一例に相当する。
空気予熱器151、152、153の各々は、燃焼用空気を内部に流し外側に排ガスが流れるよう間隔を開けて配列された複数の管体T2と、複数の管体T2の導入口が接続される上流側の母管T1と、複数の管体の導出口が接続される下流側の母管T3とを備える。そして、母管T1、T3を介して、複数の管体T2に燃焼用空気が流され、かつ、複数の管体T2の間に排ガスが流れることで、排ガスと燃焼用空気との間で熱が交換される。図2の空気予熱器151、152、153にのみ母管T1、T3を模式的に示したが、他の図の空気予熱器についても同様の構成を有する。
複数段の空気予熱器151、152、153は、煙道12の後部、排ガスの流れる方向で過熱器13及びエコノマイザ14よりも後方に設けられる。複数段の空気予熱器151、152、153は、排ガスの流れる方向に並んで配置される。以下では、複数段の空気予熱器151、152、153を、排ガスが流れる方向に沿った順で1段目の空気予熱器151、2段目の空気予熱器152、最後段の空気予熱器153と呼ぶ。
複数段の空気予熱器151、152、153のうち、最後段の空気予熱器153は、他の空気予熱器151、152よりも管体T2の数が少なく、他の空気予熱器151、152と比較して体積が小さい。言い換えれば、最後段の空気予熱器153は、燃焼用空気を流す流路の総断面積が、他の空気予熱器151、152よりも小さい(例えば30%~80%等)。
燃焼用空気を流す通路は、空気予熱装置15の外部から燃焼用空気が導入される空気通路158aと、複数の空気予熱器151、152、153の間で燃焼用空気を送る中間の空気通路158bとを含む。また、空気通路は、空気予熱装置15から燃焼炉10へ燃焼用空気を導出する空気通路158cと、複数段の空気予熱器151、152、153のうち何れかの段を抜かして別の段まで燃焼用空気の一部を迂回させるバイパス通路158dとを含む。
より具体的には、燃焼用空気を導入する空気通路158aは、最後段の空気予熱器153に接続される。また、中間の2つの空気通路158bは、最後段の空気予熱器153から2段目の空気予熱器152までと、2段目の空気予熱器152から1段目の空気予熱器151までとを結ぶ。燃焼用空気を導出する空気通路158cは、1段目の空気予熱器151に接続される。バイパス通路158dは、燃焼用空気の一部を、最後段の空気予熱器153の空気通路の上流から分岐させて、2段目の空気予熱器152の空気通路の上流まで迂回させる。言い換えれば、バイパス通路158dは、燃焼用空気が流れる順に見て、一番目の空気予熱器153の空気通路の上流から、二番目の空気予熱器152の空気通路の上流へ、燃焼用空気の一部を分岐させる。
ダンパ159は、バイパス通路158dに設けられ、流路の開度を変更してバイパス通路158dに流れる燃焼用空気の流量を調整可能である。
制御部20は、コンピュータ又はシーケンサなどであり、ダンパ159を制御して、バイパス通路158dに流れる燃焼用空気の流量を変更できる。制御部20は、燃焼炉10の燃焼量、すなわちボイラ1の稼働率に応じてダンパ159の開度を制御する。また、燃焼量により空気予熱装置15に導入される排ガスの温度が変化するので、制御部20は、排ガスの温度に基づいてダンパ159の開度を制御してもよい。制御部20は、ボイラ1の稼働率情報、又は排ガス温度情報等に基づいて、上記の制御を行う。ボイラ1の稼働率情報は、例えば燃焼炉10に投入される燃料量のデータ等から取得できる。また、排ガス温度情報は煙道12に設けられた温度センサの出力から取得することができる。また、ボイラの稼働中にボイラの稼働率が一定である場合には、ボイラの稼働前にダンパ159の開度が制御されてもよい。
<空気予熱装置の作用>
空気予熱装置15において、余熱を持った排ガスは、1段目の空気予熱器151、2段目の空気予熱器152、及び最後段の空気予熱器153の順に流れ、その間に、低温の燃焼用空気と熱交換することで、順次、温度が低下する。
一方、燃焼用空気は、先ず、一部が最後段の空気予熱器153に流れて加熱される一方、一部がバイパス通路158dに流れて、これらが最後段の空気予熱器153の空気通路の下流で混合される。その後、混合された空気が、2段目の空気予熱器152と1段目の空気予熱器151とに流れて、さらに温度が上昇し、燃焼炉10に送られる。
燃焼用空気が流れる複数段の空気予熱器151、152、153の順番は、排ガスが流れる順番と逆である。すなわち、バイパス通路158dを通らない燃焼用空気は、最後段の空気予熱器153、2段目の空気予熱器152、1段目の空気予熱器151の順に流れる。また、バイパス通路158dを通る燃焼用空気は、2段目の空気予熱器152、1段目の空気予熱器151の順に流れる。このような順序構成により、各段の空気予熱器151、152、153において、排ガスと燃焼用空気との温度差を適正な範囲に収めることができる。例えば、排ガスの温度は、1段目から3段目のうち、1段目の空気予熱器151に流れるときが最も高く、2段目の空気予熱器152に流れるときが2番目に高く、3段目の空気予熱器153に流れるときが最も低くなる。一方、燃焼用空気の温度は、1段目から3段目のうち、3段目の空気予熱器151で最も低く、2段目の空気予熱器152で次に低く、1段目の空気予熱器151で最も高くなる。つまり、全ての段の空気予熱器151~153において排ガスと燃焼用空気との温度差を大きくとることができる。したがって、空気予熱器151~153の全て管体T2の表面で大きな熱交換が行われるため、高い伝熱効率で燃焼用空気を予熱できる。
一方、温度の低い排ガスと温度の低い燃焼用空気とが流れる最後段の空気予熱器153では、バイパス通路158dを介して燃焼用空気の一部が迂回する分、少ない流量で燃焼用空気が流れる。一般に、空気予熱器の各部の表面温度は、そこに流れる排ガスの温度とその内部に流れる燃焼用空気の温度との中間の温度になる。また、排ガスの温度及び流量を一定として、燃焼用空気の流量を少なくすれば、燃焼用空気の流量が多いときと比べて、燃焼用空気の温度が上昇しやく、空気予熱器の表面温度が高くなる。このような作用により、バイパス通路158dに燃焼用空気の一部が迂回することで、迂回させない場合と比較して、最後段の空気予熱器153に流れる燃焼用空気の流量が減って、空気予熱器153の表面温度を高く維持できる。つまり、最後段の空気予熱器153を通過する排ガスの温度を、酸露点腐食を回避する目的で余分に高く設定しなくても、空気予熱器153の表面温度を高く維持できる。これにより、最後段の空気予熱器153の表面に酸が凝結し難くなり、酸露点腐食を低減することができる。
また、本実施形態では、最後段の空気予熱器153の管体T2の数と体積が、別の段の空気予熱器151、152に比べて削減されている。このような構成は、バイパス通路158dを介した燃焼用空気の迂回により、最後段の空気予熱器153に流れる燃焼用空気が少なくなるために実現できる。最後段の空気予熱器153では、酸露点腐食の低減が図られているものの、酸露点腐食を完全に避けることは難しく、酸露点腐食が進んだ場合には補修又は交換することが望ましい。このような場合、補修又は交換する部位が大きいと、メンテナンスコスト又は交換部品コストが高騰するが、最後段の空気予熱器153の管体T2の数と体積が削減されていることで、このようなコストの高騰を回避することができる。
<ダンパの作用>
本実施形態のボイラ1の運転方法では、制御部20が、燃焼炉10における燃料の燃焼量、すなわちボイラの稼働率に応じてダンパ159の開度を制御する。例えば、燃焼量が多いとき、空気予熱装置15に導入される排ガスの温度が高くなるため、制御部20は、ダンパ159の開度を小さくして、迂回させる燃焼用空気の割合を小さくする。一方、燃焼量が少ないとき、空気予熱装置15に導入される排ガスの温度が低くなるため、制御部20は、ダンパ159の開度を大きくして、迂回させる燃焼用空気の割合を大きくする。このような制御により、酸露点腐食の低減を図りつつ、空気予熱装置15の通過後の排ガスの温度を、適正な範囲に収まるように調整することができる。
なお、ダンパ159の制御は、制御部20が自動的に行うようにしてもよいし、手動等により制御部20を介さずに行ってもよい。
<比較例1との対比>
続いて、上記実施形態の空気予熱装置15と比較例の空気予熱装置との対比について詳述する。図3は、比較例1の空気予熱装置を示す構成図である。
図3の比較例1の構成は、本実施形態の構成からバイパス通路158dを省き、最後段の空気予熱器153Rの管体の数及び体積を1段目及び2段目の空気予熱器151、152と同等としたものである。このような構成では、温度の低い排ガスが流れる最後段の空気予熱器153Rにおいて、図2の本実施形態と比べて多くの燃焼用空気が流れる。このため、図2の本実施形態に比べて、空気予熱器153Rの燃焼用空気の温度が上昇しにくく、空気予熱器153Rの表面温度が低くなる。したがって、空気予熱器153Rの表面に酸が凝結し易くなり、酸露点腐食が生じ安い。
また、図3の比較例1の構成では、酸露点腐食により最後段の空気予熱器153Rを補修又は交換する場合に、図2の本実施形態と比べて、その体積が大きく管体も多いため、メンテナンスコスト及び交換部品コストが高騰する。
図2の本実施形態の構成では、このような課題を削減できる。
<比較例2との対比>
図4は、比較例2の空気予熱装置を示す構成図である。図4の比較例2の構成は、燃焼用空気が流れる順を、2段目の空気予熱器152、1段目の空気予熱器151、最後段の空気予熱器153Rの順に変更したものである。その他は、図3の比較例1の構成と同様である。このような構成によれば、温度の低い排ガスが流れる最後段の空気予熱器153Rには、温度が上昇した燃焼用空気が流れる。このため、最後段の空気予熱器153Rの表面温度の低下及び酸露点腐食の発生を防止できる。しかし、この構成では、1段目と2段目の空気予熱器151、152において排ガスと燃焼用空気との温度差か非常に大きくなる一方、最後段の空気予熱器153Rにおいて排ガスと燃焼用空気との温度差が小さくなる。このため、温度差が小さい段では熱交換量が小さくなるため、有効な熱交換が行われる管体の総表面積が小さくなる。また、温度差が非常に大きい段では、その分、熱交換量は増大するが、有効な熱交換が行われる管体の総表面積の縮小に比べると、総合的な熱交換量を上昇させる効果は小さい。このため、排ガスから燃焼用空気への総合的な伝熱効率が比較的に大きく低下する。したがって、必要な熱の交換量を確保するためには、複数段の空気予熱器151、152、153Rの管数を増大するなど、排ガスと燃焼用空気が熱交換する伝熱面積を増大させる必要があり、部品コストと設置スペースが増大するという課題が生じる。図2の本実施形態の構成では、このような課題を抑制できる。
<比較例3との対比>
図5は、比較例3の空気予熱装置を示す構成図である。図5の比較例3の構成は、比較例1の構成に、全ての空気予熱器151、152、153Rを迂回させて燃焼用空気の一部を流すバイパス通路158rを追加したものである。バイパス通路158rには、燃焼用空気の流量を変更できるダンパ159Rが設けられている。このような構成によれば、ダンパ159Rを制御して、バイパス通路158rに流れる燃焼用空気の割合を増加することで、空気予熱器151、152、153Rの燃焼用空気の流量を減らすことができる。これにより、熱の交換量が減って、空気予熱器151、152、153Rに流れる排ガスの温度低下が減少する。このように排ガスの温度を高くすることで、最後段の空気予熱器153Rでも酸露点腐食を回避できる。
しかし、この場合、高い温度の排ガスが、空気予熱器153Rより後段へ流れてしまい、空気予熱器153Rより後段の構成、例えば集塵機などについて、高い温度の排ガスに対応可能な温度設計が必要となり、コスト高騰を招く。図2の本実施形態の構成では、このような課題を発生させずに、最後段の空気予熱器153の酸露点腐食を低減できる。
他方、図5の比較例3では、バイパス通路158rを通過後の排ガスの温度が高くならないように、ダンパ159Rを制御して、バイパス通路158rに流れる燃焼用空気の割合を小さくすることができる。これにより、空気予熱器151、152、153Rの通過後の排ガスの温度を低くできる。或いは、導入する排ガスを低い温度に設定することで、空気予熱器151、152、153Rの通過後の排ガスの温度を低くできる。しかし、これらの場合には、比較例1と同様の状況が生じて、最後段の空気予熱器153Rに酸露点腐食が生じ安くなる。また、燃焼用空気の加熱量も少なくなる。
さらに、図5の比較例3の構成では、バイパス通路158rの終端で、加熱されて高温になった燃焼用空気と、極端に温度の低い燃焼用空気とが混合されて燃焼炉10に供給される。したがって、バイパス通路158rの流量に応じて燃焼炉10に供給される燃焼用空気の温度が大きく変化し、さらに、高温の燃焼用空気と低温の燃焼用空気との十分な混合過程が得られないため、燃焼炉10に供給される燃焼用空気が不安定となる。このため、燃焼炉10の燃焼温度に影響が波及し、安定した燃焼を阻害する場合があるという課題が生じる。
一方、本実施形態の空気予熱装置15では、バイパス通路158dの終端が、2段目の空気予熱器152の空気通路の上流に接続されている。このため、バイパス通路158dを通る燃焼用空気は、1段目、2段目の空気予熱器151、152を通る際に、元の燃焼用空気と混合されかつ加熱される。したがって、燃焼炉10に供給される燃焼用空気の温度及び温度分布が安定し、燃焼炉10における安定的な燃焼に寄与できる。
<実施形態の効果>
以上のように、本実施形態のボイラ1の空気予熱装置15によれば、複数段の空気予熱器151、152、153と、バイパス通路158dとを備える。そして、バイパス通路158dにより、燃焼用空気の一部を迂回させることで、最後段の空気予熱器153に流れる燃焼用空気の流量を、他の段の空気予熱器151、152を流れる燃焼用空気の流量よりも減らすことができる。これにより、排ガスを高い温度に設定したり、燃焼用空気の加熱量を大幅に低減したりしなくても、最後段の空気予熱器153の表面温度を高く維持することができる。このため、最後段の空気予熱器153に酸に強い特殊な材料を用いなくても、空気予熱器153に生じる酸露点腐食を低減できる。さらに、空気予熱器153の管体の数及び体積が削減されているので、最後段の空気予熱器153に酸露点腐食が生じて補修又は交換する場合でも、コストの低減を図ることができる。
また、本実施形態のボイラ1の空気予熱装置15によれば、バイパス通路158dにより燃焼用空気の一部が迂回される空気予熱器153は、排ガスの流れ方向の順で最後段に配置されている。また、バイパス通路158dは、燃焼用空気の一部を、燃焼用空気が流れる順で一番目の空気予熱器153を除いて流れるように迂回させる。このような構成により、伝熱効率が高くなる空気予熱器151、152、153の配置を実現しつつ、温度の低い排ガスと温度の低い燃焼用空気が流れる空気予熱器153について酸露点腐食を低減することが可能となる。酸露点には、硫酸露点とそれよりも低い塩酸露点とが含まれるが、本実施形態のボイラ1の空気予熱装置15によれば、特に塩酸露点腐食を十分に回避することができる。
(変形例1)
図6は、実施形態の空気予熱装置の変形例1を示す構成図である。変形例1の空気予熱装置15Aでは、バイパス通路158fが、最後段の空気予熱器153の空気通路の上流部から、1段目の空気予熱器151の空気通路の上流部にかけて設けられている。空気予熱装置15Aのその他の構成は、図2の空気予熱装置15と同様である。
このような構成では、図2の空気予熱装置15と比較して、迂回された燃焼用空気の一部が、2段目の空気予熱器152も迂回して、1段目の空気予熱器151から流れる。その分、空気予熱装置15Aの途中において排ガスと燃焼用空気との熱交換量に違いが生じるが、それ以外は、図2の空気予熱装置15とほぼ同様の作用効果が得られる。
なお、変形例1においては、2段目の空気予熱器152の燃焼用空気の流量が減るため、2段目の空気予熱器152の管数の数及び体積を、最後段の空気予熱器153Rと同様に削減してもよい。しかし、熱交換量を大きくするために、2段目の空気予熱器152の管体の数及び体積は、1段目の空気予熱器151と同様にしてもよい。また、バイパス通路158fには、図2の実施形態と同様に、ダンパを設け、バイパス通路158fを通過する燃焼用空気の流量を制御してもよい。
(変形例2)
図7は、実施形態の空気予熱装置の変形例2を示す構成図である。変形例2の空気予熱装置15Bでは、空気予熱装置15Bの外部から燃焼用空気が導入される空気通路158aが、2段目の空気予熱器152Bに接続されている。中間の空気通路158bは、2段目から1段目、1段目から最終段へと燃焼用空気を流すように接続され、燃焼炉10へ燃焼用空気を導出する空気通路158cは最後段の空気予熱器153Bに接続されている。また、バイパス通路158gは、2段目の空気予熱器152の空気通路の上流から1段目の空気予熱器151の空気通路の上流にかけて設けられている。つまり、バイパス通路158gにより燃焼用空気の流量が減らされる空気予熱器152Bは、排ガスの流れに沿った順で、最後段でなく二段目の空気予熱器152Bであり、燃焼用空気が流れる順番においては1番目の空気予熱器152Bである。空気予熱器152Bは、他の段の空気予熱器151、153Bと比較して、管体の数及び体積が削減されていてもよい。
このような構成によれば、例えば外部から供給される燃焼用空気が非常に低温であり、2段目の空気予熱器152から導入しても、空気予熱器152の表面温度が酸露点以下に低下する恐れがあるような場合に、バイパス通路158gの有用な作用が得られる。すなわち、このような場合でも、空気予熱器152の燃焼用空気の流量を減らすことで、空気予熱器152の表面温度を高く維持できる。よって、空気予熱器152の酸露点腐食の低減を図れる。
バイパス通路158gには、図2の実施形態と同様に、ダンパを設け、バイパス通路158gを通過する燃焼用空気の流量を制御してもよい。
(変形例3)
図8は、実施形態の空気予熱装置の変形例3を示す構成図である。変形例3の空気予熱装置15Cでは、燃焼用空気が導入される空気通路158aが、2段目の空気予熱器152に接続されている。中間の空気通路158bは、2段目から最後段、最後段から1段目へと燃焼用空気を流すように接続され、燃焼用空気を導出する空気通路158cは1段目の空気予熱器151に接続されている。また、バイパス通路158hは、最後段の空気予熱器153の空気通路の上流から1段目の空気予熱器151の空気通路の上流にかけて設けられている。つまり、バイパス通路158hにより燃焼用空気の流量が減らされる空気予熱器153は、燃焼用空気が流れる順番で、2番目の空気予熱器153である。
このような構成によれば、例えば燃焼用空気の流量が多くて、2段目の空気予熱器152で加熱された後も燃焼用空気の温度が低いような場合に有用となる。この場合、未だ温度の低い燃焼用空気が最後段の空気予熱器153を通過する際に、排ガスの温度が低下していることと相まって、空気予熱器153の表面温度が酸露点以下に低下する恐れが生じる。しかし、このような場合でも、バイパス通路158hによって、最後段の空気予熱器153の燃焼用空気の流量が減少することで、空気予熱器153の表面温度を高く維持できる。よって、空気予熱器153の酸露点腐食の低減を図れる。
バイパス通路158hには、図2の実施形態と同様に、ダンパを設け、バイパス通路158hを通過する燃焼用空気の流量を制御してもよい。
(変形例4)
図9は、実施形態の空気予熱装置の変形例4を示す構成図である。変形例4の空気予熱装置15Dは、複数の空気予熱器151~156が、排ガスが流れる方向に複数段、排ガスの流れと交差する方向に2系統設けられた構成を有する。第1系統の複数の空気予熱器151~153は、排ガスの流れに沿った順に、1段目の空気予熱器151と2段目の空気予熱器152と最後段の空気予熱器153とを含む。第2系統の複数の空気予熱器154~156は、排ガスの流れに沿った順に、1段目の空気予熱器154と2段目の空気予熱器155と最後段の空気予熱器156とを含む。
また、変形例4の空気予熱装置15Dは、第1系統の複数段の空気予熱器151~153に順に燃焼用空気を流す空気通路158a~158cと、第2系統の複数段の空気予熱器154~156に順に燃焼用空気を流す空気通路158a~158cとを備える。さらに、変形例4の空気予熱装置15Dは、第1系統の最後段の空気予熱器153の空気通路の上流から第2系統の2段目の空気予熱器155の空気通路の上流へ燃焼用空気の一部を迂回する第1バイパス通路158iを備えている。加えて、空気予熱装置15Dは、第2系統の最後段の空気予熱器156の空気通路の上流から第1系統の2段目の空気予熱器152の空気通路の上流へ燃焼用空気の一部を迂回する第2バイパス通路158jを備えている。
このように、第1バイパス通路158i及び第2バイパス通路158jは、別系統の空気予熱器の間で燃焼用空気を迂回させる構成としても良い。このような構成でも、各系統の複数段の空気予熱器151~153、154~156において、図2の実施形態と同様の作用効果が得られる。
第1バイパス通路158i及び第2バイパス通路158jの各々には、図2の実施形態と同様に、ダンパを設け、そこを通過する燃焼用空気の流量を制御してもよい。
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、空気予熱器の段数は二段又は四段以上としてもよいし、バイパス通路によって燃焼用空気の流量が減少される空気予熱器の段の位置は、図2、図6~図9の例に制限されない。さらに、バイパス通路によって燃焼用空気の流量が減少される空気予熱器が、燃焼用空気が流れる順に見て何番目であるかは、図2、図6~図9の例に制限されない。また、図2の実施形態では、バイパス通路によって燃焼用空気の一部が迂回される空気予熱器について、燃焼用空気の流路の総断面積を小さく構成したが、他の段の空気予熱器と比べて同等の大きさの構成としてもよい。また、図1には、ボイラの全体構成の一例を示したが、本発明に係る空気予熱装置は、図1のボイラに限られず、様々な型式のボイラに適用されてもよい。その他、実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
本発明は、ボイラの空気予熱装置及びボイラの運転方法に利用できる。
1 ボイラ
10 燃焼炉
12 煙道
15 空気予熱装置
20 制御部
151~156、152B、153B 空気予熱器
158a、158b、158c 空気通路
158d、158e、158f、158g、158h バイパス通路
158i 第1バイパス通路
158j 第2バイパス通路
159 ダンパ(流量調整部)
T2 管体

Claims (8)

  1. 排ガスの流れ方向に沿って並ぶ複数段の空気予熱器と、
    前記複数段の空気予熱器のうち、何れかの段の空気予熱器の空気通路の上流で燃焼用空気の一部を分岐させ、別の段の空気予熱器の空気通路の上流へ迂回させるバイパス通路と、
    を備え
    前記複数段の空気予熱器のうち、他の空気予熱器を通過した燃焼用空気を含まない燃焼用空気が導入される第1の空気予熱器の体積が、他の空気予熱器の体積よりも小さく、前記第1の空気予熱器以外の他の空気予熱器の体積は互いに等しいことを特徴とするボイラの空気予熱装置。
  2. 排ガスの流れ方向に沿って並ぶ複数段の空気予熱器と、
    前記複数段の空気予熱器のうち、何れかの段の空気予熱器の空気通路の上流で燃焼用空気の一部を分岐させ、別の段の空気予熱器の空気通路の上流へ迂回させるバイパス通路と、
    を備え
    前記複数段の空気予熱器のうち、排ガスの出口にある空気予熱器の体積は他の空気予熱器の体積よりも小さく、他の空気予熱器の体積は互いに等しいことを特徴とするボイラの空気予熱装置。
  3. 前記バイパス通路は、前記複数段の空気予熱器のうち燃焼用空気が流れる順で一番目の空気予熱器の空気通路の上流で燃焼用空気の一部を分岐させる、
    請求項1又は請求項2に記載のボイラの空気予熱装置。
  4. 前記バイパス通路は、前記複数段の空気予熱器のうち排ガスが流れる順で最も後段の空気予熱器の空気通路の上流で燃焼用空気の一部を分岐させる、
    請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のボイラの空気予熱装置。
  5. 前記複数段の空気予熱器のうち前記バイパス通路により燃焼用空気の一部が迂回される
    空気予熱器は、前記複数段の空気予熱器のうち前記バイパス通路により燃焼用空気の一部が迂回されない空気予熱器と比較して、燃焼用空気を流す通路の総断面積が小さい、
    請求項1から請求項のいずれか一項に記載のボイラの空気予熱装置。
  6. 前記バイパス通路の開度を調整可能な流量調整部と、
    前記流量調整部を制御する制御部と、
    を更に備える請求項1から請求項のいずれか一項に記載のボイラの空気予熱装置。
  7. 燃料を燃焼させる燃焼炉と、
    前記燃焼炉から排出される排ガスの流れ方向に沿って並ぶ複数段の空気予熱器と、
    前記複数段の空気予熱器のうち、何れかの段の空気予熱器の空気通路の上流で燃焼用空気の一部を分岐させ、別の段の空気予熱器の空気通路の上流へ迂回させるバイパス通路と、
    前記バイパス通路の開度を変更可能な流量調整部と、
    を備え
    前記複数段の空気予熱器のうち、他の空気予熱器を通過した燃焼用空気を含まない燃焼用空気が導入される第1の空気予熱器の体積が、他の空気予熱器の体積よりも小さく、前記第1の空気予熱器以外の他の空気予熱器の体積は互いに等しいボイラの運転方法であって、
    前記ボイラの稼働率に応じて前記流量調整部の開度を変更するボイラの運転方法。
  8. 燃料を燃焼させる燃焼炉と、
    前記燃焼炉から排出される排ガスの流れ方向に沿って並ぶ複数段の空気予熱器と、
    前記複数段の空気予熱器のうち、何れかの段の空気予熱器の空気通路の上流で燃焼用空気の一部を分岐させ、別の段の空気予熱器の空気通路の上流へ迂回させるバイパス通路と、
    前記バイパス通路の開度を変更可能な流量調整部と、
    を備え
    前記複数段の空気予熱器のうち、排ガスの出口にある空気予熱器の体積は他の空気予熱器の体積よりも小さく、他の空気予熱器の体積は互いに等しいボイラの運転方法であって、
    前記ボイラの稼働率に応じて前記流量調整部の開度を変更するボイラの運転方法。
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