本発明の目的は、従来技術のコードと比較してエラストマー化合物による内部ストランドの改善された透過性を示して、従って、コード内及びコードに沿った腐食剤の侵入及び拡散を低減することを可能にするコードである。
本発明によるコード
この目的を達成するために、本発明の1つの主題は、二層多重ストランドコードであって、
Q=1個の内部ワイヤ(F1)から構成される内層(C1)と、ピッチp2で前記内層(C1)の廻りに巻かれたM個の中間ワイヤ(F2)から構成される中間層(C2)と、ピッチp3で前記中間層(C2)の廻りに巻かれたN個の外部ワイヤ(F3)から構成される外層(C3)とを含む3つの層(C1,C2,C3)を有する内部ストランド(TI)から構成されるコード内層(CI)と、
Q’個の内部ワイヤ(F1’)から構成される内層(C1’)と、内層(C1’)の廻りに巻かれたN’個の外部ワイヤ(F3’)から構成される外層(C3’)とを含む少なくとも2つの層(C1’,C3’)を有するL>1個の外部ストランド(TE)から構成されるコード外層(CE)と、
を備え、
コード外層は、二層多重ストランドコードの巻き方向でコード内層の廻りに巻かれ、内部ストランド及び外部ストランドの各々の各外層は、コードの巻き方向と反対方向で同じ巻き方向で内部ストランド及び外部ストランドの各々の内層及び中間層それぞれの廻りに巻かれ、コード外層が脱飽和化されており、ピッチp2及びピッチp3が、0.36≦(p3-p2)/p3≦0.57の関係を満たす、二層多重ストランドコードである。
周知のように、ストランドのピッチは、コードの軸線に平行に測定したこのストランドの長さを表し、このピッチを有するストランドは、その後、コードの上記軸線の廻りで完全に転回したことを想起されたい。同様に、ワイヤのピッチは、配置されるストランドの軸線に平行に測定したこのワイヤの長さを表し、このピッチを有するワイヤは、その後、ストランドの上記軸線の廻りで完全に転回したことを想起されたい。
ストランド又はワイヤの層の巻き方向によって意味されるのは、コード又はストランドの軸に対してストランド又はワイヤが形成する方向である。巻き方向は一般に、Z又はSの文字で表される。
ワイヤ及びストランドのピッチ、巻き方向、及び直径は、規格ASTM D2969-04,2014に従って決定される。
定義によれば、ストランドの脱飽和層は、エラストマー化合物が通過できる十分なスペースがストランド間に残されているようなものである。本発明によれば、ストランドの外層は脱飽和化され、これは、外部ストランドが接触しておらず、エラストマー化合物が内部ストランドの範囲まで通過できるよう2つの隣接する外部ストランド間に十分なスペースが存在することを意味する。換言すると、この場合も定義上、コードの主軸に垂直なコードの断面上で、平均して2つの隣接する外部ストランドが内接できる円形エンベロープを離隔する最短距離として定義される外部ストランドの外層のストランド間距離は、非ゼロである。
好ましくは、外部ストランドの外層におけるストランド間距離は、30μm以上、より好ましくは、40μm以上、及び更により好ましくは、50μm以上である。非常に好ましい1つの実施形態において、外部ストランドの外層のストランド間距離は、70μm以上、好ましくは100μm以上、より好ましくは150μm以上、更により好ましくは200μm以上である。
「少なくとも2つの層」によって意味するものは、特定の実施形態において、各外部ストランドが2つの層を備えることができ、これは、2つの層だけを備えるが、1層又は3層のみを備えていないことを意味し、また、他の実施形態では、各外部ストランドは、3つの層を備えることができ、これは、3つの層のみを備えるが、2層又は4層のみを備えていないことを意味する。
本発明において、コードは、2つの層のストランドを有し、これは、2つの層のストランドを超えることも下回ることもなく構成された組立体を備えることを意味し、組立体が、1つではなく、3つではなく、ただ2つの層のストランドを有することを意味する。コード外層は、コード内層と接触して該コード内層の廻りに巻かれる。
本発明によるコードは、例えば、国際公開第2015/090920号の実施例などのような、比(p3-p2)/p3が本発明による比の範囲外にあるコードと比較して透過性が改善され、該実施例では比(p3-p2)/p3が0.30に等しいが、これは本発明によって透過性を改善することができる。本発明を押し進める発明者らは、この比は、各外部ストランド内でエラストマー化合物の通過のための比較的大きなラジアル窓を得ることを可能にするという仮説を前提としている。ラジアル通過窓は、一方では、内部ストランドの外層の2つの隣接するワイヤ間のコードの主軸に平行な平面上に投影されたスペースと、他方では、この内部ストランドの中間層の2つの隣接するワイヤ間のコードの主軸に平行な平面上に投影されたスペースとの交差として定義される。このようなラジアル通過窓は、図14に例示されている。
加えて、コード外層が脱飽和化されているというお陰で、本発明によるコードは、エラストマー化合物が通過できるスペースを外部ストランド間に有する。コード外層が飽和化されている(外部ストランドが互いにペアで接触している)理由から比較的高い破断力を有し、これによりコードに加わる張力を吸収するアーチを形成するコードは、従来技術から既知である。本発明によるコードにおいて、内部ストランドの廻りのアーチは破断されるが、コード外層の脱飽和化の性質によって、一方では外部ストランド間と他方では外部ストランドと内部ストランドの間でエラストマー化合物が透過できるようになる。このようにして、アーチが少なくとも部分的に回復されて、コードの破断力の低下が制限され、一方でそれと同時にコードに優れた透過性をもたらしている。更に、この特徴により、エラストマー化合物が内部ストランド及び外部ストランドの外層間に透過することができ、内部ストランド及び外部ストランド間の力の半径方向成分を少なくとも部分的に吸収するエラストマー化合物の緩衝部を形成するようになる。
本発明によれば、各内部ストランド及び外部ストランドの各外層の巻き方向と反対のコードの巻き方向は、特に外部ストランド間でコードにより良好な透過性をもたらす。発明者らは、これらの巻き方向のお陰で、外部ストランドの外部ワイヤは、比較的点状の接触ゾーンを形成するように内部ストランドの外部ワイヤと交差するという仮説を前提としており、コードの巻き方向が、各内部ストランド及び外部ストランドの外層の巻き方向と同一であり、また、外部ストランドの外部ワイヤは、点状ではなくより線形の接触ゾーンを形成するように内部ストランドの外部ワイヤと交差し、エラストマー化合物が内部ストランドの範囲まで通過するのが妨げられる国際公開第2015/090920号の実施例のコードとは違っている。
本発明並びにp2とp3の関係に起因して、内部ストランドは、円筒層を有するストランドである。極めて有利には、各外部ストランドは、これが2つの層又は3つの層を有するかどうかに関係なく、円筒層を有するストランドである。このような円筒層は、ストランドの様々な層が異なるピッチで巻かれる場合及び/又はこれらの層の巻き方向が1つの層と別の層で異なる場合に得られることを想起されたい。円筒層を有するストランドは、層全てのピッチが同じであり且つ層全ての巻き方向が同じコンパクトな層を有して遙かに低い透過性を示すストランドとは違って、極めて透過性が高い。
任意の選択肢及び選好として、1つの実施形態において、コードは、ポリマー化合物を有しておらず、特に内部ストランドを覆う何らかのポリマー化合物のシースを有していない。別の実施形態において、コードは、エラストマー化合物を有しておらず、特に内部ストランドを覆う何らかのエラストマー化合物のシースを有していない。
有利には、コードは金属製である。用語「金属コード」は、定義によれば、ワイヤから形成され、該ワイヤが主成分として(すなわち、これらのワイヤの50%よりも多く)又は全体的に(ワイヤの100%)金属材料で構成されたコードを意味すると理解される。このような金属コードは、好ましくは、鋼製コードで、より好ましくは、以下で「炭素鋼」と呼ばれるパーライト(又はフェライト・パーライト)炭素鋼製、或いはステンレス鋼製(定義によれば、少なくとも11%のクロム及び少なくとも50%の鉄を含む鋼)のコードで実施される。しかしながら、当然、他の鋼又は他の合金を用いることも可能である。
炭素鋼を使用するのが有利である場合、炭素含有量(鋼の重量%)は、好ましくは、0.4%~1.2%の間、特に0.5%~1.1%の間で含まれ、これらの含有量は、タイヤに必要とされる機械的特性とワイヤの作業性の良好な妥協点を表している。
金属又は使用される鋼は、詳細には炭素鋼であるか又はステンレス鋼であるかに関わらず、それ自体を金属層でコーティングすることができ、これは、例えば、金属コード及び/又はその構成元素の作業性、或いは、接着特性、耐食性、又は耐老化性などのコード及び/又はタイヤ自体の使用特性を改善する。1つの好ましい実施形態によれば、使用される鋼は、黄銅(Zn-Cu合金)又は亜鉛の層で覆われる。
好ましくは、予め設定された(内部又は外部)ストランドの同じ1つの層のワイヤは全て、実質的に同じ直径を有する。有利には、外部ストランドは全て、実質的に同じ直径を有する。「実質的に同じ直径」によって意味されるものは、ワイヤ又はストランドが工業公差の範囲まで同じ直径を有することである。
有利には、各ストランドの各ワイヤは、0.15mm~0.60mm、好ましくは0.20mm~0.50mm、より好ましくは0.25mm~0.45mm、更により好ましくは0.28mm~0.42mmに及ぶ直径を有する。
ポリマー化合物によって意味されるものは、化合物が少なくとも1つのポリマーを含有することである。好ましくは、このようなポリマーは、熱可塑性(例えばポリエステル又はポリアミド)、熱硬化性ポリマー、エラストマー(例えば、天然ゴム)、熱可塑性エラストマー、又はこれらのポリマーの組み合わせとすることができる。
エラストマー化合物によって意味されるものは、化合物が、少なくとも1つのエラストマー又は1つのゴム(この2つの用語は同義である)及び少なくとも1つの他の成分を含有することである。好ましくは、エラストマー化合物はまた、加硫系及び充填剤を含む。より好ましくは、エラストマーは、ジエンエラストマーである。
有利には、外部ストランドは、40mm~100mm、好ましくは50mm~90mmに及ぶピッチで内部ストランドの廻りに螺旋状に巻かれる。有利には、ピッチp2及びp3は、0.38≦(p3-p2)/p3、好ましくは、0.40≦(p3-p2)/p3、より好ましくは0.43≦(p3-p2)/p3、更により好ましくは0.45≦(p3-p2)/p3の関係を満たす。比(p3-p2)/p3が高くなるほど、換言すると、ピッチp2及びp3の差が大きくなるほど、各外部ストランドの構造上の安定性が良好になる。具体的には、内部ストランドの中間層と外層のピッチが異なる程度がより大きくなるほど、中間ワイヤと外部ワイヤの互いに対する交差が大きくなり(中間ワイヤと外部ワイヤの間の接触が比較的点状接触になる)、外部ワイヤが中間ワイヤをより良好に機械的に保持し、内部ストランドの透過性がより良好になり、この場合、中間層及び外層のワイヤは、各中間層及び外層内で均一に分布することになる。この機械的完全性は、一方では、コードの製造中に、組み立てツールによって加えられる機械的力の影響を受けて中間層のワイヤ全てが互いに接触した状態で全てを共にグループ化されるのを回避し、他方では、コードを含むプライ又はコードを含むタイヤの製造中に、コードを透過するエラストマー化合物の圧力の影響を受けて中間層のワイヤ全てが互いに接触した状態で共にグループ化されるのを回避するのを可能にする。
更に、所与のp3に対して、比(p3-p2)/p3を大きくすることにより、内部ストランドの中間層のワイヤ間距離が小さくなる。当業者であれば、内部ストランドの透過性の低下を見いだすと予想するであろう。それでも予想に反して、以下で記載される比較試験が示すように、比(p3-p2)/p3を大きくすることによって、内部ストランドの中間層のワイヤ間距離が明らかに小さくなるが、エラストマー化合物のラジアル通路窓のサイズは大きくなり、これは、内部ストランドの透過性が明らかに改善されたことを意味している。
有利には、ピッチp2及びp3は、(p3-p2)/p3≦0.55、及び好ましくは(p3-p2)/p3≦0.53の関係を満たす。これらの値を下回ると、エラストマー化合物のラジアル通過窓のサイズが最大となり、各外部ストランドの透過性を最適化することが可能となる。
有利には、ピッチp2は、8mm≦p2≦16mm、好ましくは、8mm≦p2≦14mm、より好ましくは8mm≦p2≦12mmであるようなものである。
有利には、ピッチp3は、10mm≦p3≦40mm、好ましくは15mm≦p3≦35mm、より好ましくは15mm≦p3≦25mm、更により好ましくは17mm≦p3≦23mmであるようなものである。
これらの好ましい範囲内のピッチp2及びp3は、タイヤの用途、比較的低いコスト及び比較的低い線形コード重量と両立できる機械的特性を示すコードを得ることを可能にする。
定義によれば、ストランドの直径は、該ストランドがその内部で外接することができる最小円の直径である。
内部ストランドTIは、直径DIを有し、各外部ストランドTEは、直径DEを有する。
有利には、L=6の場合、DI/DE>1であり、好ましくはDI/DE>1.05、より好ましくはDI/DE>1.10である。これは、外部ストランド間のエラストマー化合物の通過をより良好に促進する。有利には、L=6の場合、DI/DE≦1.40であり、好ましくはDI/DE≦1.35、より好ましくはDI/DE≦1.30である。これにより、外部ストランド間に過剰なスペースを有することが回避され、一方では、コードの構造的安定性が確保され、他方では、できる限り多くの外部ストランドを敷設することによって破断力を最大にすると同時に、エラストマー化合物を外部ストランド間に通過させることが可能となる。このことによりコードの外径が制限され、従って、プライに敷設できる金属の質量が最大になる。更に、プライの厚みが低減され、従って、タイヤの加熱、転がり抵抗及び質量も同様に低減される。
加えて、DI/DEのこれらの好ましい値では、外部ストランド間のエラストマー化合物の通過が更に促進されると共に、コードのアーチの復元が促進される。
有利には、L=7の場合、DI/DE≧1.30、好ましくは、DI/DE≧1.35、より好ましくはDI/DE≧1.40である。有利には、L=7の場合、DI/DE≦1.70、好ましくは、DI/DE≦1.65、より好ましくはDI/DE≦1.60である。
有利には、L=8の場合、DI/DE≧1.60、好ましくは、DI/DE≧1.65、より好ましくはDI/DE≧1.70である。有利には、L=8の場合、DI/DE≦2.0、好ましくは、DI/DE≦1.95、より好ましくはDI/DE≦1.90である。
有利には、L=9の場合、DI/DE≧2.00、好ましくは、DI/DE≧2.05、より好ましくはDI/DE≧2.10である。有利には、L=9の場合、DI/DE≦2.50、好ましくは、DI/DE≦2.45、より好ましくはDI/DE≦2.40である。
L=6の場合と同様に、L=7、8又は9の場合、比較的高い値のDI/DEでは、外部ストランド間のエラストマー化合物の通過が更に促進され、コードの構造的安定性が確保され、破断力が最大にされると同時にエラストマー化合物が外部ストランド間を通過できるようになり、コードの外径が制限されて、プライの厚みが低減され、従って、タイヤの加熱、転がり抵抗及び質量も同様に低減される。最後に、コードのアーチもまた復元される。
1つの実施形態において、Lは、6,7,8,9,又は10に等しく、好ましくは、L=6,7,又は8、より好ましくは、L=6である。
任意選択的に、内部ストランドの内部ワイヤは、各外部ストランドの各内部ワイヤの直径d1’よりも大きいか又は等しい直径d1を有し、好ましくは、内部ストランドの内部ワイヤは、各外部ストランドの各内部ワイヤの直径d1’に等しい直径d1を有する。従って、各内部ストランドと外部ストランドの内層で同じ直径のワイヤが使用され、これによりコードの製造の際に管理する必要がある様々なワイヤの数が制限される。
任意選択的に、内部ストランドの内部ワイヤは、各外部ストランドの外部ワイヤの直径d3’よりも大きいか又は等しい直径d1を有し、好ましくは、内部ストランドの各内部ワイヤは、各外部ストランドの各外部ワイヤの直径d3’よりも大きい直径d1を有する。
任意選択的に、内部ストランドの各外部ワイヤは、各外部ストランドの各外部ワイヤの直径d3’よりも大きいか又は等しい直径d3を有し、好ましくは、内部ストランドの各外部ワイヤは、各外部ストランドの各外部ワイヤの直径d3’よりも大きい直径d3を有する。好ましくは、d3>d3’という特徴のお陰で、内部ストランドの各外部ワイヤは、コードが引張状態にあるときに内部ストランドに対して外部ストランドにより加えられる力の半径方向成分に耐えることを可能とすることができる。この特徴d3>d3’は、外部ストランドによって形成されたアーチを含むコードと比較すると、又はd3≦d3’であるコードと比較すると、コードの破断力を復元又は改善することを可能にする。好ましくは、1<d3/d3’≦2、より好ましくは、1<d3/d3’≦1.5、更に好ましくは1<d3/d3’≦1.25又は1.25<d3/d3’≦1.5である。
透過性と破断力の間の妥協点を促進する1つの実施形態において、コードの外層は、不完全に不飽和化される。
ストランドが不完全に不飽和化される層は、層のXストランドと同じ直径を有する少なくとも1つの(X+1)番目のストランドを加えるのに十分なスペースがこの層に存在しないようなものである。この特定の場合において、コード外層のL外部ストランドと同じ直径を有する少なくとも1つの(L+1)番目の外部ストランドを追加するのに十分なスペースが外層に存在しない。従って、コード外層のストランド間距離Eの合計SIEは、SIE<DEであるようなものである。合計SIEは、層内の隣接するストランドの各ペアを離隔するストランド間距離の合計である。層のストランド間距離は、コードの主軸に垂直なコード断面で最小距離として定義され、平均して、層の2つの隣接するストランドを離隔する。従って、ストランド間距離Eは、層内のストランドを離隔するスペースの数で合計SIEを除算することによって計算される。
本発明によるコードの内部ストランド
有利には、内部ストランドの中間層のワイヤ間距離の合計SI2が、SI2<d3であるようなものであり、ここでd3は、内部ストランドの各外部ワイヤの直径であり、好ましくは、SI2≦0.8×d3である。合計SI2は、層内の隣接するワイヤの各ペアを離隔するワイヤ間距離の合計である。層のワイヤ間距離は、コードの主軸に垂直なコード断面で最短距離として定義され、平均して、層の2つの隣接するワイヤを離隔する。従って、ワイヤ間距離は、層内のワイヤを離隔するスペースの数で合計SI2を除算することによって計算される。
内部ストランドの外層の外部ワイヤの直径3は、好ましくは合計SI2よりも大きいので、外部ワイヤが中間層を透過するのが阻止される。このことで良好な構造的安定性が確保され、これによりエラストマー化合物に対するラジアル通過窓の改変のリスクが低減され、従って、内部ストランドの良好な透過性の劣化のリスクが低減される。
有利には、内部ストランドの中間層は、脱飽和化され、好ましくは不完全に不飽和化される。
定義によれば、ワイヤの脱不飽和化層は、エラストマー化合物が通過できるほどワイヤ間に十分なスペースが残されているようなものである。従って、脱飽和化された層は、この層のワイヤが接触しておらず、エラストマー化合物が層を通過できるほど十分なスペースが層内の2つの隣接するワイヤ間に存在することを意味し、これは層内のワイヤ間距離が非ゼロであることを意味する。
好ましくは、内部ストランドの中間層におけるワイヤ間距離は、5μm以上であり、より好ましくは10μm以上であり、更により好ましくは20μm以上であり、極めて好ましくは30μm以上である。1つの高度に有利な実施形態において、各外部ストランドの中間層におけるワイヤ間距離は、35μm以上であり、より好ましくは50μm以上であり、更により好ましくは60μm以上である。
内部ストランドの中間層が脱飽和化されていることで、有利には、エラストマー化合物が内部ストランドに入ることがより容易になる。
定義によれば、不完全に不飽和化された層は、層のP個のワイヤと同じ直径を有する少なくとも1つの(P+1)番目のワイヤを加えるのに十分なスペースがこの層に存在しないようなものである。この特定の場合において、中間層のM個の中間ワイヤと同じ直径を有する少なくとも1つの(M+1)番目のワイヤを加えるのに十分なスペースがこの中間層に存在しない。換言すると、内部ストランドの不完全に不飽和化された中間層により意味されるものは、中間層C2のワイヤ間距離I2の合計SI2が、中間層C2の中間ワイヤF2の直径d2よりも小さいことである。
各外部ストランドの中間層が不完全に不飽和化されていることで、中間層の構造的安定性を確保することが可能となる。これにより、中間層を透過する外部ワイヤのリスクが低減され、エラストマー化合物に対するラジアル通過窓を改変させ及びひいては内部ストランドの良好な透過性を劣化させることになる何かが低減される。
更に、内部ストランドの中間層が不完全に不飽和化されることで、内部ストランドが比較的多数の中間ワイヤを含み、従って比較的高い破断力を示すことを確保することができる。
有利には、内部ストランドの外層は、脱飽和化され、好ましくは不完全に不飽和化される。中間層と同様にして、内部ストランドの外層が脱飽和化されたことで、有利には、エラストマー化合物が内部ストランドに入ることがより容易になる。
定義によれば、及び上記で既に指定されているように、ワイヤの脱飽和化された層は、エラストマー化合物が通過できるのに十分なスペースがワイヤ間に存在するようなものである。従って、脱飽和化された層は、この層のワイヤが接触しておらず、エラストマー化合物が層を通過できる十分なスペースが2つの隣接するワイヤ間に存在することを意味し、これは、層におけるワイヤ間距離が非ゼロであることを意味する。
好ましくは、内部ストランドの外層におけるワイヤ間距離は、5μm以上であり、より好ましくは10μm以上であり、更により好ましくは20μm以上であり、極めて好ましくは30μm以上である。1つの高度に有利な実施形態において、内部ストランドの外層におけるワイヤ間距離は、35μm以上であり、より好ましくは50μm以上であり、更により好ましくは60μm以上である。
定義によれば、不完全に不飽和化された層とは対照的に、完全に不飽和化された層は、層のP個のワイヤと同じ直径を有する少なくとも1つの(P+1)番目のワイヤを加えるのに十分なスペースがこの層に存在するようなものであり、従って、複数のワイヤを互いに接触させて又は接触させないようにすることができる。この特定の場合において、外層のN個の外部ワイヤと同じ直径を有する少なくとも1つの(N+1)番目のワイヤを加えるのに十分なスペースが内部ストランドの外層に存在する。換言すると、内部ストランドの完全に不飽和化された外層により意味されるものは、外層C3のワイヤ間距離I3の合計SI3が、外層C3の外部ワイヤF3の直径d3よりも大きいことである。
内部ストランドの外層が完全に不飽和化されることで、エラストマー化合物の内部ストランドへの透過を最大限にすることが可能となる。
1つの好ましい実施形態において、Q=1である。Q=1である実施形態において、本発明のコードではないコードが不十分に透過されると、内部ストランドの内部ワイヤが、コードに加えられた繰り返しの圧縮荷重の作用下で内部ストランドから及びコードから半径方向に離れて見えるリスクがある。本発明に基づけば、Q=1であることにも関わらず内部ストランドの優れた透過性に起因して、エラストマー化合物は、内部ストランド、特に内部ストランドの外層及び中間層の周りのラッピング層のように働き、内部ワイヤが繰り返しの圧縮加重下でも出てくるのを防ぐ。
1つの有利な実施形態において、内部ストランドの内部ワイヤは、内部ストランドの内部ワイヤの直径d3以上である直径d1を有し、好ましくは、内部ストランドの内部ワイヤは、内部ストランドの内部ワイヤの直径d3よりも大きい直径d1を有する。d1>d3であるような直径の使用により、外層を通過するエラストマー化合物の透過性を促進させることができる。
別の有利な実施形態において、内部ストランドの内部ワイヤは、内部ストランドの各中間ワイヤの直径d2以上である直径d1を有し、好ましくは、内部ストランドの各内部ワイヤは、内部ストランドの各中間ワイヤの直径d2よりも大きい直径d1を有する。d1>d2であるような直径の好ましい使用により、中間層を通過するエラストマー化合物の透過性を促進させることができる。
好ましい実施形態において、Q=1、M=5又は6、及びN=10、11又は12、好ましくは、Q=1、M=5又は6、及びN=10又は11、より好ましくはQ=1、M=6及びN=11である。
より有利には、Q=1、M=5又は6、及びN=10又は11で、内部ストランドの内部ワイヤは、外部ストランドの各中間ワイヤの直径d2以上である直径d1を有し、内部ストランドの内部ワイヤは、外部ストランドの内部ワイヤの直径d3以上である直径d1を有する。
更により有利には、Q=1、M=6、及びN=11で、内部ストランドの内部ワイヤは、外部ストランドの各中間ワイヤの直径d2よりも大きい直径d1を有し、内部ストランドの内部ワイヤは、外部ストランドの内部ワイヤの直径d3よりも大きい直径d1を有する。
このような内部ストランドは、上記で記載されたような構造的安定性及び透過性の利点を示す。詳細には、中間層及び外層が脱飽和化され、中間層が不完全に飽和化され、外層が完全に不飽和化されることは、ワイヤの異なる直径を用いることで得られる。
極めて有利には、内部ストランドの各中間ワイヤは直径d2を有し、各外部ストランドの各外部ワイヤが直径d3を有し、d2=d3である。従って、同じ直径のワイヤは、内部ストランドの中間層及び外層にて使用され、これによりコードの製造の際に管理する必要がある様々なワイヤの数が制限される。
本発明によるコードの外部ストランド
有利には、各外部ストランドの外層は、脱飽和化され、好ましくは、完全に不飽和化される。各外部ストランドの外層が脱飽和化されることで、有利には、エラストマー化合物が各外部ストランドに入って流れることがより容易になる。
定義によれば、及び上記で既に指定されているように、ワイヤの脱飽和化層は、エラストマー化合物が通過できるほどワイヤ間に十分なスペースが残されているようなものである。従って、脱飽和化された層は、この層のワイヤが接触しておらず、エラストマー化合物が層を通過できるほど十分なスペースが層内の2つの隣接するワイヤ間に存在することを意味し、これは層内のワイヤ間距離が非ゼロであることを意味する。
好ましくは、各外部ストランドの外層におけるワイヤ間距離は、5μm以上であり、より好ましくは10μm以上であり、更により好ましくは20μm以上であり、極めて好ましくは30μm以上である。1つの高度に有利な実施形態において、各外部ストランドの外層におけるワイヤ間距離は、35μm以上であり、より好ましくは50μm以上であり、更により好ましくは60μm以上である。
各外部ストランドの外層は、好ましくは、完全に脱飽和化されており、すなわち、外層のN’個のワイヤと同じ直径を有する少なくとも1つの(N’+1)番目のワイヤを追加するのに十分なスペースが外層内に存在する。換言すると、各外部ストランドの完全に不飽和化された外層により意味されるものは、外層C3’のワイヤ間距離I3’の合計SI3’が、外層C3’の外部ワイヤF3’の直径d3’よりも大きいことである。
各外部ストランドの外層が完全に不飽和化されることで、エラストマー化合物の各外部ストランドへの透過を最大限にすることが可能となる。
従って、上述の外部ストランドの高い透過性により、一方では外部ストランド間と他方では外部ストランドと内部ストランドの間でエラストマー化合物がより良好に透過できるようになる。このようにして、アーチが少なくとも部分的に回復され、従って、コードの破断力の低下が制限され、一方でそれと同時にコードに優れた透過性をもたらしている。更に、この特徴により、エラストマー化合物が内部ストランド及び外部ストランドの外層間に透過することができ、内部ストランド及び外部ストランド間の力の半径方向成分を少なくとも部分的に吸収するエラストマー化合物の緩衝部を形成するようになる。
一部の好ましい実施形態において、各外部ストランドの各内部ワイヤは、各外部ストランドの各外部ワイヤの直径d3’以上である直径d1’を有する。
1つの実施形態において、各外部ストランドは2つの層を有する。この実施形態において、各外部ストランドの外層は、各外部ストランドの内層と接触して各外部ストランドの内層の廻りに巻かれる。この実施形態において、各外部ストランドは、超えることも下回ることもない、ワイヤの2つの層から構成された一群のワイヤを備え、これは、一群のワイヤが、1ではなく、3ではなく、ただ2つの層のワイヤを有することを意味する。
1つの好ましい実施形態において、Q’>1、好ましくは、Q’=2、3、又は4である。
第1の代替の形態において、Q’=2及びN’=7又は8であり、好ましくは、Q’=2及びN’=7である。
第2の代替の形態において、Q’=3及びN’=7、8又は9であり、好ましくは、Q’=3及びN=8である。
第3の代替形態において、Q’=4及びN’=7、8、9又は10であり、好ましくは、Q’=4及びN’=9である。
極めて有利には、各外部ストランドの各内部ワイヤは、各外部ストランドの各外部ワイヤの直径d3’に等しい直径d1’を有する。従って、各外部ストランドの内層と外層で同じ直径のワイヤを用いるのが好ましく、これによりコードの製造の際に管理する必要がある様々なワイヤの数が制限される。
コードの第1の実施形態において、各内部ストランドの中間層は、コードの巻き方向と同じ巻き方向で内部ストランドの内層の廻りに巻かれる。
この第1の実施形態の第1の代替形態において、Q’>1である場合、各外部ストランドの内層は、コードの巻き方向と同じ巻き方向で螺旋状に巻かれる。
この第1の実施形態の第2の代替形態において、Q’>1の場合、各外部ストランドの内層は、コードの巻き方向と反対の巻き方向で螺旋状に巻かれる。
コードの第2の実施形態において、各外部ストランドの中間層は、コードの巻き方向と反対の巻き方向で各外部ストランドの内層の廻りに巻かれる。
この第2の実施形態の第1の代替形態において、Q’>1の場合、各外部ストランドの内層は、コードの巻き方向と同じ巻き方向で螺旋状に巻かれる。
この第2の実施形態の第2の代替形態において、Q>1の場合、各外部ストランドの内層は、コードの巻き方向と反対の巻き方向で螺旋状に巻かれる。コードの第2の実施形態のこの特定の好ましい代替形態において、隣接する層のワイヤの擦れ及びひいてはその摩耗が制限される。
従って、本発明の関連において、2つの層を有する外部ストランドの場合、以下の表Aにおいて並べられている巻き方向の組み合わせを想定することができる。
コードの破断力を改善する別の特定の有利な実施形態において、各外部ストランドは、3つの層を有し、内層の廻りに巻かれたM’個の中間ワイヤから構成される中間層と、中間層の廻りに巻かれたN’個の外部ワイヤから構成される外層とを含む。
この実施形態において、各外部ストランドの外層は、各外部ストランドの中間層と接触して各外部ストランドの中間層の廻りで巻かれ、各外部ストランドの中間層は、各外部ストランドの内層と接触して各外部ストランドの内層の廻りで巻かれる。この実施形態において、各外部ストランドは、3つの層のワイヤを超えることも下回ることもなく構成された一群のワイヤを備え、これは、一群のワイヤが、2つではなく、4つではなく、ただ3つの層のワイヤを有することを意味する。
有利には、中間層のワイヤ間距離の合計SI2’は、SI2’<d3’であるようなものであり、ここでd3’は、内部ストランドの各外部ワイヤの直径であり、好ましくは、SI2’<0.8×d3’である。内部ストランドと同様に、各外部ストランドの外層の外部ワイヤの直径d3’は、好ましくは、合計SI2’よりも大きいので、外部ワイヤは、中間層に透過するのが阻止される。このことで良好な構造的安定性が確保され、これによりエラストマー化合物に対するラジアル通過窓の改変のリスクが低減され、従って、各外部ストランドの良好な透過性の劣化のリスクが低減される。
有利には、各外部ストランドの中間層は、脱飽和化され、好ましくは不完全に不飽和化される。
定義によれば、ワイヤの脱不飽和化層は、エラストマー化合物が通過できるほどワイヤ間に十分なスペースが残されているようなものである。従って、脱飽和化された層は、この層においてワイヤが接触しておらず、エラストマー化合物が層を通過できるほど十分なスペースが層内の2つの隣接するワイヤ間に存在することを意味し、これは層内のワイヤ間距離が非ゼロであることを意味する。
好ましくは、各外部ストランドの中間層におけるワイヤ間距離は、5μm以上であり、より好ましくは10μm以上であり、更により好ましくは20μm以上であり、極めて好ましくは30μm以上である。1つの高度に有利な実施形態において、各外部ストランドの中間層におけるワイヤ間距離は、35μm以上であり、より好ましくは50μm以上であり、更により好ましくは60μm以上である。
各外部ストランドの中間層が脱飽和化されていることで、有利には、エラストマー化合物が内部ストランドの中心の範囲までは通過することがより容易になる。
各外部ストランドの中間層は、好ましくは、不完全に不飽和化されており、すなわち、中間層のM’個のワイヤと同じ直径を有する少なくとも1つの(M’+1)番目のワイヤを追加するのに十分なスペースが中間層内に存在しない。換言すると、各外部ストランドの不完全に不飽和化された中間層により意味されるものは、中間層C2’のワイヤ間距離I2’の合計SI2’が、中間層C2’の中間ワイヤF2’の直径d2’よりも小さいことである。各外部ストランドの中間層が不完全に不飽和化されることで、中間層の構造的安定性を確保することが可能となる。更に、各外部ストランドの中間層が不完全に不飽和化されることで、各外部ストランドが比較的多数の中間ワイヤを含み、従って比較的高い破断力を示すのを確保することが可能となる。
一部の好ましい実施形態において、各外部ストランドの各内部ワイヤは、各外部ストランドの各外部ワイヤの直径d3’よりも大きい直径d1’を有する。d1’>d3’であるような直径を使用することで、外層を通るエラストマー化合物の透過性を促進することが可能となる。
一部の好ましい実施形態において、各外部ストランドの各内部ワイヤは、各外部ストランドの各中間ワイヤの直径d2’以上である直径d1’を有し、より好ましくは、各外部ストランドの各内部ワイヤは、各外部ストランドの各中間ワイヤの直径d2’よりも大きい直径d1’を有する。d1’>d2’であるような直径を使用することで、中間層を通るエラストマー化合物の透過性を促進することが可能となる。
この実施形態の好ましい代替形態では、Q’=1、2、3、又は4であり、好ましくは、Q’=1、2、又は3であり、より好ましくはQ’=1又は3である。
1つの好ましい実施形態において、Q’=1である。
Q=1である実施形態において、M個の中間ワイヤは、ピッチp2’で内層の廻りに巻かれ、N’個の外部ワイヤは、ピッチp3’で中間層の廻りに巻かれ、ピッチp2’及びp3’は次式:
0.36≦(p3’-p2’)/p3’≦0.57
を満たす。このような比(p3’-p2’)/p3’は、各外部ストランド内でエラストマー化合物に対する比較的大きなラジアル通過窓を得ることが可能となる。
有利には、ピッチp2’及びp3’は、0.38≦(p3’-p2’)/p3’、好ましくは、0.40≦(p3’-p2’)/p3’、より好ましくは0.43≦(p3’-p2’)/p3’、更により好ましくは0.45≦(p3’-p2’)/p3’の関係を満たす。内部ストランドと同様にして、比(p3’-p2’)/p3’が高くなるほど、換言すると、ピッチp2’及びp3’の差が大きくなるほど、各外部ストランドの構造的安定性が良好になる。
有利には、ピッチp2’及びp3’は、(p3’-p2’)/p3’≦0.55及び好ましくは、(p3’-p2’)/p3’≦0.53の関係を満たす。これらの値を下回ると、エラストマー化合物のラジアル通過窓のサイズが最大となり、内部ストランドの透過性を最適化することが可能となる。
加えて、上述の高い透過性により、一方では外部ストランド間と他方では外部ストランドと内部ストランドの間でエラストマー化合物がより良好に透過できるようになる。このようにして、アーチが少なくとも部分的に回復される。
有利には、ピッチp2’は、8mm≦p2’≦16mm、好ましくは8mm≦p2’≦14mm、より好ましくは8mm≦p2’≦12mmであるようなものである。
有利には、ピッチp3’は、10mm≦p3’≦40mm、好ましくは15mm≦p3’≦35mm、より好ましくは15mm≦p3’≦25mm、更により好ましくは17mm≦p3’≦23mmであるようなものである。
これらの好ましい範囲内のピッチp2’及びp3’は、タイヤの用途、比較的低いコスト及び比較的低い線形コード重量と両立できる機械的特性を示すコードを得ることを可能にする。
1つの好ましい実施形態において、Q’=1、M’=5、及びN’=10、11、又は12であり、好ましくは、Q’=1、M’=5又は6、及びN’=10又は11であり、より好ましくは、Q’=1、M’=6、及びN’=11である。
より有利には、Q’=1、M’=5又は6、及びN’=10又は11で、各外部ストランドの内部ワイヤは、各外部ストランドの各中間ワイヤの直径d2’以上である直径d1’を有し、各外部ストランドの内部ワイヤは、内部ストランドの各外部ワイヤの直径d3’以上である直径d1’を有する。
更により有利には、Q’=1、M’=6、及びN’=11で、各外部ストランドの内部ワイヤは、各外部ストランドの各中間ワイヤの直径d2’よりも大きい直径d1’を有し、各外部ストランドの内部ワイヤは、各外部ストランドの各外部ワイヤの直径d3’よりも大きい直径d1’を有する。
このような外部ストランドは、上記で記載されたような構造的安定性及び透過性の利点を示す。詳細には、中間層及び外層が脱飽和化され、中間層が不完全に飽和化され、外層が完全に不飽和化されることは、ワイヤの異なる直径を用いることで得られる。
別の好ましい実施形態において、Q’=3、M’=8又は9、及びN’=13、14、又は15であり、好ましくは、Q’=3、M’=8又は9、及びN’=14又は15であり、より好ましくは、Q’=3、M’=9、及びN’=15である。Q’=3である実施形態において、本発明のコードではないコードが不十分に透過されると、コードに沿って広がることを極めて促進する中央毛細管の境界を定めるQ’=3の内部ワイヤの間に腐食剤の大幅な拡散が見えるリスクがある。コードが極めて十分に透過されたQ’=3の実施形態において、エラストマー化合物は、腐食剤が中央毛細管にアクセスするのを防ぎ、中央毛細管自体が透過される最良の場合には、これらの腐食剤がコードに沿って広がるのを防ぐことができる。
より有利には、Q’=3、M’=8又は9、及びN’=14又は15で、各外部ストランドの内部ワイヤは、各外部ストランドの各中間ワイヤの直径d2’以上である直径d1’を有し、各外部ストランドの内部ワイヤは、各外部ストランドの各外部ワイヤの直径d3’以上である直径d1’を有する。
より有利には、Q’=3、M’=9、及びN’=14又は15で、各外部ストランドの内部ワイヤは、各外部ストランドの各中間ワイヤの直径d2’よりも大きい直径d1’を有し、各外部ストランドの内部ワイヤは、各外部ストランドの各外部ワイヤの直径d3’よりも大きい直径d1’を有する。
このような外部ストランドは、上記で記載されたような構造的安定性及び透過性の利点を示す。詳細には、中間層及び外層が脱飽和化され、中間層が不完全に飽和化され、外層が完全に不飽和化されることは、ワイヤの異なる直径を用いることで得られる。
任意選択的に、内部ストランドの内部ワイヤは、各外部ストランドの各中間ワイヤの直径d2’以上の直径d1を有し、好ましくは、内部ストランドの内部ワイヤは、各外部ストランドの各中間ワイヤの直径d2’よりも大きい直径d1を有する。
極めて有利には、各外部ストランドの各中間ワイヤは直径d2’を有し、各外部ストランドの各外部ワイヤが直径d3’を有し、d2’=d3’である。従って、各外部ストランドの中間層及び外層にて同じ直径のワイヤが使用され、これによりコードの製造の際に管理する必要がある様々なワイヤの数が制限される。
好ましくは、内部ストランドの各中間ワイヤは、各外部ストランドの各中間ワイヤの直径d2’以上の直径d2を有し、好ましくは、内部ストランドの各中間ワイヤは、各外部ストランドの各中間ワイヤの直径d2’よりも大きい直径d2を有する。
コードの第1の実施形態において、各外部ストランドの中間層は、コードの巻き方向と同じ巻き方向で内部ストランドの内層の廻りに巻かれる。
この第1の実施形態の第1の代替形態において、各外部ストランドの中間層は、コードの巻き方向と同じ巻き方向で各外部ストランドの内層の廻りに巻かれる。
この第1の実施形態の第2の代替形態において、各外部ストランドの中間層は、コードの巻き方向と反対の巻き方向で各外部ストランドの内層の廻りに巻かれる。
上記で記載されたこの第1の実施形態の第1及び第2の代替形態の各々において、Q’>1の場合、各外部ストランドの内層は、コードの巻き方向と同じ巻き方向で螺旋状に巻かれ、或いは、代替として、コードの巻き方向と反対の巻き方向で螺旋状に巻かれる。
コードの第2の実施形態において、各内部ストランドの中間層は、コードの巻き方向と反対の巻き方向で内部ストランドの内層の廻りに巻かれる。
この第2の実施形態の第1の代替形態において、各外部ストランドの中間層は、コードの巻き方向と同じ巻き方向で各外部ストランドの内層の廻りに巻かれる。
この第2の実施形態の第2の代替形態において、各外部ストランドの中間層は、コードの巻き方向と反対の巻き方向で各外ストランドの内層の廻りに巻かれる。コードの第2の実施形態のこの特定の好ましい第2の代替形態において、隣接する層のワイヤの擦れ及びひいてはその摩耗が制限される。
上記で記載されたこの第2の実施形態の第1及び第2の代替形態の各々において、Q’>1の場合、各外部ストランドの内層は、コードの巻き方向と同じ巻き方向で螺旋状に巻かれ、或いは、代替として、コードの巻き方向と反対の巻き方向で螺旋状に巻かれる。
従って、本発明の関連において、3つの層を有する外部ストランドの場合、以下の表Bにおいて並べられている巻き方向の組み合わせを想定することができ、ここでNDは、以下で表される。
単一のワイヤから層が構成される各外部ストランドの内層の場合、ワイヤは、ピッチが無限大である理由から方向性を持たない。
複数のワイヤ(Q’>1)から層が構成される各外部ストランドの内層の場合、巻き方向は、S並びにZとすることができる。
1つの実施形態において、各外部ストランドは、そのままゴム引きされるタイプのものである。このようなストランドは、コードの組み立ての前に、ワイヤの2つの半径方向に隣接する層の間、場合によってはワイヤの半径方向に隣接する層の各々の間に配列されるポリマー化合物、とりわけエラストマー化合物の層を含む。そのままでゴム引きされるこのようなストランドは、とりわけ、国際公開第2010/054790号にて記載されている。
別の実施形態において、各外部ストランドは、そのままでゴム引きされないタイプのものである。そのままでゴム引きされないことにより意味されるのは、コードの組み立て前に、各外部ストランドが、様々な層のワイヤから構成され、ポリマー化合物、とりわけエラストマー化合物を有していないことである。
本発明によるタイヤ
本発明の別の主題は、上記で定められたような少なくとも1つのコードを含むタイヤである。
好ましくは、タイヤは、2つのビードに係止され且つクラウン補強体によって半径方向に載置されたカーカス補強体を有し、該クラウン補強体は、それ自体がトレッドにより載置されて2つのサイドウォールによって2つのビードに連結され、上記で定められたような少なくとも1つのコードを備える。
1つの好ましい実施形態において、クラウン補強体は、保護補強体及びワーキング補強体を備え、ワーキング補強体は、上記で定められた少なくとも1つのコードを含み、保護補強体は、トレッドとワーキング補強体との間に半径方向に配置される。
タイヤは、最も具体的には、「高出力車両」、すなわち、地下鉄、バス、道路輸送車両(大型トラック、トラクタ、トレーラ)、オフロード車両、農業機械又は土木計画プラント車両、又は他の輸送又は荷役車両のような大型車両から選択された産業車両を対象としている。
好ましくは、タイヤは、建設プラント型車両を目的としている。従って、タイヤは、タイヤを装着することを意図しているリムの座部の直径(インチ単位)が40インチ以上であるサイズを有する。
本発明は、図面を参照しながら単に非限定的な実施例として与えられた以下の記載を読むとより理解されるであろう。
「aとbとの間」という表現で表される任意の値の範囲は、aより大きくbより小さい値の範囲(すなわち、端点a及びbは含まない)を表し、他方、「aからbまで」という表現で表される任意の値の範囲は、端点「a」から端点「b」の範囲まで、すなわち、厳密に端点「a」及び「b」を含む値の範囲を意味する。
本発明によるタイヤの実施例
タイヤの通常の軸方向(X)、半径方向(Y)及び円周方向(Z)の向きに対応する座標系X、Y、Xが、図面に描かれている。
タイヤの「円周方向正中面」であるMは、タイヤの回転軸に垂直で、各ビードの感情強化構造から等距離の位置にある平面である。
図1及び2は、全体符号10で示された本発明によるタイヤを示している。
タイヤ10は、例えば、「ダンプカー」など、建設プラント型大型車両用のものである。従って、タイヤ10は、タイプ53/80R63のサイズを有する。
タイヤ10は、クラウン補強体14によって強化されたクラウン12と、2つの側壁16と、2つのビード18とを有し、これらのビード18の各々は、環状構造、この事例ではビードワイヤ20で強化されている。クラウン補強体14は、トレッド22によって載置され、側壁16によりビード18に接続されている。カーカス補強体24は、2つのビード18に係止され、この事例では、2つのビードワイヤの廻りに巻かれ、タイヤ20の外側に向かって位置付けられた折り返し部26を含み、ここではホイールリム28上に取り付けられて図示されている。カーカス補強体24は、クラウン補強体によって半径方向に載置されている。
カーカス補強体24は、半径方向カーカスコード(図示せず)によって強化された少なくとも1つのカーカスプライ30を含む。カーカスコードは、互いに垂直方向に並行に位置付けられ、一方のピード18から他方のビードに延びて、円周方向正中面Mに対して80°と90°の間を含む角度を形成する(2つのビード18の中間に位置し且つクラウン補強体14の中間を通過するタイヤの回転軸に垂直な平面)。
タイヤ10はまた、エラストマーから構成されたシールプライ32(一般的には「内側ライナ」として知られる)を含み、該シールプライは、タイヤ10の半径方向内面34を定め、タイヤ10の内側スペースからの空気の拡散からカーカスプライ30を保護することを意図している。
クラウン補強体14は、半径方向でタイヤ10の内側から外側に向かって、トレッド22の内側に半径方向に配列された保護補強体36と、保護補強体36の内側に半径方向に配列されたワーキング補強体38と、ワーキング補強体38の内側に半径方向に配列された追加補強体40と、を備える。従って、保護補強体36は、トレッド22とワーキング補強体38との間に半径方向に配置される。ワーキング補強体38は、保護補強体36と追加補強体40との間に半径方向に配置される。
保護補強体36は、保護金属コードを含む第1及び第2の保護プライ42,44を備え、第1の保護プライ42は第2の保護プライ44の内部に半径方向に配列されている。任意選択的に、保護金属コードは、タイヤの円周方向Zに対して、少なくとも10°、好ましくは10°から35°の範囲、より好ましくは15°から30°の範囲の角度を形成する。
ワーキング補強体38は、第1及び第2のワーキングプライ46、48を備え、第1のワーキングプライ46は、第2のワーキングプライ48の内部に半径方向に配列されている。各プライ46、48は、少なくとも1つのコード50を含む。任意選択的に、ワーキング金属コード50は、一方のワーキングプライから他のワーキングプライに交差され、タイヤの円周方向Zに対して最大で60°に等しい角度、好ましくは15°から40°の範囲の角度を形成する。
追加補強体40は、制限ブロックとも呼ばれ、その目的は膨張の機械的応力を部分的に吸収することであり、該追加補強体40は、例えば、フランス国第2 419 181号又はフランス国第2 419 182号にて記載されるように、例えば、それ自体として知られるように、追加の金属補強要素を備え、タイヤ10の円周方向Zに対して最大で10°に等しい角度、好ましくは5°から10°の範囲の角度を形成する。
本発明の第1の実施形態によるコード
図3は、本発明の第1の実施形態によるコード50を描いている。
コード50は、金属製であり、2つの円筒層を備えた多重ストランド型のものである。ストランドの層は、隣接し且つ同心状である。コード50は、タイヤに一体化されていないときは、ポリマー化合物及びエラストマー化合物がない。
コード50は、コード50の内層CI及びコード50の外層CEを備える。内層CIは、単一の内部ストランドTIから構成される。外層CEは、L>1の外部ストランドから構成され、これは複数の外部ストランドTEであることを意味する。この場合、L=6、7、8、9、又は10、好ましくは、L=6、7、又は8であり、この場合L=6である。
コード50はまた、単一のラッピングワイヤから構成されたラッパーFを含む。
内部ストランドTIは、無限大ピッチを有する。
外層CEは、コードの巻き方向(この場合はS方向)で内層CIの廻りに巻かれる。外部ストランドTEは、40mm≦p≦100mm、好ましくは50mm≦p≦90mmであるようなピッチpで内部ストランドTIの廻りに螺旋状に巻かれる。ここでp=70mmである。
ラッパーFは、ラッパーの巻き方向、この場合コードの巻き方向と反対、すなわちこの場合Z方向で外層CEの廻りに巻かれる。ラッピングワイヤは、2mm≦pf≦10mm、好ましくは3mm≦pf≦8mmであるようなピッチpfで外部ストランドTEの廻りに螺旋状に巻かれる。ここでpf=5.1mmである。
内層CI及び外層CEから構成される(ラッパーFなしのコード50であることを意味する)組立体は、4mm以上で、6mm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは4.3mm以下の直径Dを有する。ここでD=4.9mmである。
コード50の外層CEは脱飽和化される。2つの隣接する外部ストランドTEを離隔する平均ストランド間距離Eは、30μm以上、より好ましくは40μm以上、更により好ましくは50μm以上である。この実施形態において、外部ストランドの外層のストランド間距離は、70μm以上である。ここでE=87.3μmである。
内部ストランドTIは直径DIを有し、外部ストランドTEは直径DEを有し、これら直径は、比DI/DE>1、好ましくはDI/DE≧1.05、及びより好ましくはDI/DE≧1.10であるようなものである。この比DI/DEはまた、DI/DE>1.40、好ましくはDI/DE>1.35、より好ましくはDI/DE>1.30であるようなものである。この場合、DI=1.78mm、DE=1.58mm、及びDI/DE=1.13である。
コード50の外層CEは、不完全に不飽和化される。具体的には、SIE=6×0.087=0.52mm、これはDE=1.58mmよりも小さな値である。
コード50の内部ストランドTI
内部ストランドTIは、3つの層を有する。従って、内部ストランドTIは、この場合、より多くもより少なくもない、3つの層から構成される。
内部ストランドTIは、Q=1個の内部ワイヤから構成される内層C1と、M個の中間ワイヤF2から構成される中間層C2と、内層C1の廻り及び中間層C2と接触してその廻りに巻かれたN個の外部ワイヤF3から構成される外層C3と、を備える。
Q=1、M=5又は6、及びN=10、11又は12であり、より好ましくは、Q=1、M=5又は6、及びN=10又は11、ここではQ=1、M=6、及びN=11である。
内部ワイヤF1は、無限大ピッチを有する。
内部ストランドTIの中間層C2は、コードの巻き方向Sと反対の巻き方向Zで内部ストランドTIの内層CIの廻りに巻かれる。M個の中間ワイヤF2は、8mm≦p2≦16mm、好ましくは、8mm≦p2≦14mm、及びより好ましくは8mm≦p2≦12mmであるようなピッチp2で内部ワイヤF1の廻りに螺旋状に巻かれる。ここでp2=10mmである。
内部ストランドTIの外層C3は、コードの巻き方向Sと反対の巻き方向Zで及び内部ストランドTIの中間層C2と同じ方向Zで内部ストランドTIの中間層C2の廻りに巻かれる。N個の外部ワイヤF3は、10mm≦p3≦40mm、好ましくは15mm≦p3≦35mm、より好ましくは15mm≦p3≦25mm、更により好ましくは17mm≦p3≦23mmであるようなピッチp3でM個の中間ワイヤF2の廻りに螺旋状に巻かれる。ここでp3=20mmである。
ピッチp2及びピッチp3は、0.36≦(p3-p2)/p3≦0.57を満たす。
0.38≦(p3-p2)/p3、好ましくは、0.40≦(p3-p2)/p3、より好ましくは0.43≦(p3-p2)/p3、更により好ましくは0.45≦(p3-p2)/p3である。
(p3-p2)/p3≦0.55、及び好ましくは(p3-p2)/p3≦0.53である。
この場合、(p3-p2)/p3=0.50である。
内部ストランドTIの中間層C2は、脱飽和化され不完全に不飽和化される。M個の中間ワイヤを平均して離隔する中間層C2のワイヤ間距離I2は、5μm以上であり、ここでは8.2μmに等しい。中間層C2は不完全に不飽和化されるので、中間層C2のワイヤ間距離I2の合計SI2は、中間層C2の中間ワイヤF2の直径d2よりも小さい。ここで、合計SI2=6×0.0082=0.05mmであり、これはd2=0.35mmより真に小さい値である。
中間層C2のワイヤ間距離I2の合計SI2は、外層C3の外部ワイヤF3の直径d3よりも小さく、好ましくは、0.8×d3以下である。ここで、合計SI2=6×0.0082=0.05mmであり、これはd3=0.35mmより真に小さい値である。
内部ストランドTIの外層C3は、脱飽和化され完全に不飽和化される。N個の外部ワイヤを平均で離隔する外層C3のワイヤ間距離I3は、5μm以上である。ワイヤ間距離I3は、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは20μm以上であり、更により好ましくは30μm以上である。この実施形態において、ワイヤ間距離I3は、好ましくは35μm以上であり、ここでは45μmに等しい。外層C3のワイヤ間距離I3の合計SI3は、外層C3の外部ワイヤF3の直径d3よりも大きい。ここで、合計SI3=11×0.045=0.50mmであり、これは、d3=0.35mmより真に小さい値である。
内部ストランドTIの各内部ワイヤ、中間ワイヤ、及び外部ワイヤそれぞれは、直径d1、d2及びd3を有する。内部ストランドTIの各々内部ワイヤ直径d1、中間ワイヤ直径d2及び外部ワイヤ直径d3は、0.15mm~0.60mm、好ましくは0.20mm~0.50mm、より好ましくは0.25mm~0.45mm、及び更により好ましくは0.28mm~0.42mmに及ぶ。
内部ストランドTIの内部ワイヤF1は、内部ストランドTIの各中間ワイヤF2の直径d2以上の直径d1を有する。内部ストランドTIの内部ワイヤF1は、内部ストランドTIの各外部ワイヤF3の直径d3以上の直径d1を有する。内部ストランドTIの各中間ワイヤF2の直径d2及び内部ストランドTIの各外部ワイヤF3の直径d3は、d2=d3であるようなものである。
この場合、d1>d2及びd1>d3並びにd1=0.38mm、d2=d3=0.35mmである。
コード50の外部ストランドTE
各外部ストランドTEは、少なくとも2つの層を有する。この場合、各外部ストランドTEは3つの層を有する。従って、各外部ストランドTEは、3つの層を含み、この場合はより多くもより少なくもない3つの層から構成される。
各外部ストランドTEは、Q’個の内部ワイヤF1’から構成される内層C1’と、該内層C1’の廻りに螺旋状に巻かれたM’個の中間ワイヤF2’から構成される中間層C2’と、内層C1’の廻り及び中間層C2’と接触してその廻りに螺旋状に巻かれたN’個の外部ワイヤF3’から構成される外層C3’と、を備える。
Q’=1、2、3、又は4であり、好ましくは、Q’=1、2、又は3であり、より好ましくはQ’=1又は3である。
Q’=1、M’=5又は6、及びN’=10、11、又は12であり、好ましくはQ’=1、M’=5及びN’=10又は11、ここではQ’=1、M’=6及びN’=11である。
内部ワイヤF1’は無限大のピッチを有する。
各外部ストランドTEの中間層C2’は、コードの巻き方向と反対の巻き方向Zで各外部ストランドTEの内層C1’の廻りに巻かれる。M’個の中間ワイヤF2’は、8mm≦p2’≦16mm、好ましくは8mm≦p2’≦14mmであるようなピッチp2’で内部ワイヤF1’の廻りに螺旋状に巻かれる。ここでp2’=14mmである。
各外部ストランドTEの外層C3’は、コードの巻き方向Sと反対の巻き方向Zで且つ各外部ストランドTIの中間層C2’と同じ方向Zで各外部ストランドTEの中間層C2’の廻りに巻かれる。各外部ストランドTEの外層C3’は、内部ストランドTIの外層C3’と同じ方向Zで各外部ストランドTEの内層C1’及び中間層C2’の廻りに巻かれる。N’個の外部ワイヤF3’は、10mm≦p3’≦40mm、好ましくは15mm≦p3’≦35mm、より好ましくは15mm≦p3’≦25mm、更により好ましくは17mm≦p3’≦23mmであるようなピッチp3’でM’個の中間ワイヤF2’の廻りに螺旋状に巻かれる。ここでp3’=20mmである。
各外部ストランドTEの中間層C2’は、脱飽和化され不完全に不飽和化される。M’個の中間ワイヤを平均して離隔する中間層C2’のワイヤ間距離I2’は、5μm以上である。ワイヤ間距離I2’は、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは20μm以上であり、更により好ましくは30μm以上である。この実施形態において、ワイヤ間距離I2’は、好ましくは35μm以上であり、ここで38μmに等しい。中間層C2’は、不完全に不飽和化されるので、中間層C2’のワイヤ間距離I2’の合計SI2’は、中間層C2’の中間ワイヤF2’の直径d2’よりも小さい。ここで、合計SI2’=6×0.038=0.23mmであり、これはd2’=0.30mmより真に小さい値である。
更に、中間層C2の’ワイヤ間距離I2’の合計SI2’は、外層C3’の外部ワイヤF3’の直径d3’よりも小さく、好ましくは、0.8×d3’以下である。ここで、合計SI2’=6×0.038=0.23mmであり、これはd3’=0.30mmより真に小さい値である。
各外部ストランドTEの外層C3’は、脱飽和化され完全に不飽和化される。N’個の外部ワイヤを平均で離隔する外層C3’のワイヤ間距離I3’は、5μm以上である。ワイヤ間距離I3’は、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは20μm以上であり、更により好ましくは30μm以上である。この実施形態において、ワイヤ間距離I3’は、好ましくは35μm以上であり、より好ましくは50μm以上であり、ここでは55.4μmに等しい。外層C3’のワイヤ間距離I3’の合計SI3’は、外層C3’の外部ワイヤF3’の直径d3’よりも大きい。ここで、合計SI3’=11×0.0554=0.61mmであり、これは、d3’=0.30mmより真に小さい値である。
各外部ストランドTEの各内部ワイヤ、中間ワイヤ、及び外部ワイヤそれぞれは、直径d1’、d2’及びd3’を有する。各外部ストランドTEの各々内部ワイヤ直径d1’、中間ワイヤ直径d2’及び外部ワイヤ直径d3’は、0.15mm~0.60mm、好ましくは0.20mm~0.50mm、より好ましくは0.25mm~0.45mm、及び更により好ましくは0.28mm~0.42mmに及ぶ。
各外部ストランドTEの内部ワイヤF1’は、各外部ストランドTEの各中間ワイヤF2’の直径d2’以上の直径d1’を有する。各外部ストランドTEの内部ワイヤF1’は、各外部ストランドTEの各外部ワイヤF3’の直径d3’以上の直径d1’を有する。各外部ストランドTEの各中間ワイヤF2’の直径d2’及び各外部ストランドTEの各外部ワイヤF3’の直径d3’は、d2’=d3’であるようなものである。
この場合、d1’>d2’及びd1’>d3’並びにd1’=0.38mm、d2’=d3’=0.30mmである。
内部ストランドTIの内部ワイヤF1は、各外部ストランドTEの各内部ワイヤF1’の直径d1’以上の直径d1を有し、好ましくは、内部ストランドTIの内部ワイヤF1は、各外部ストランドTEの各内部ワイヤF1’の直径d1’に等しい直径d1を有する。ここでd1=d1’=0.38mmである。
内部ストランドTIの内部ワイヤF1は、各外部ストランドTEの各中間ワイヤF2’の直径d2’以上の直径d1を有し、好ましくは、内部ストランドTIの内部ワイヤF1は、各外部ストランドTEの各中間ワイヤF2’の直径d2’よりも大きい直径d1を有する。ここでd1=0.38mm>d2’=0.30mmである。
内部ストランドTIの各内部ワイヤF1は、各外部ストランドTEの各外部ワイヤF3’の直径d3’以上の直径d1を有し、好ましくは、内部ストランドTIの各内部ワイヤF1は、各外部ストランドTEの各外部ワイヤF3’の直径d3’よりも大きい直径d1を有する。ここでd1=0.38mm>d3’=0.30mmである。
内部ストランドTIの各中間ワイヤF2は、各外部ストランドTEの各中間ワイヤF2’の直径d2’以上の直径d2を有する。好ましくは、ここで、d2=0.35mm>d2’=0.30mmである。
内部ストランドTIの各外部ワイヤF3は、各外部ストランドTEの各外部ワイヤF3の直径d3’以上の直径d3を有する。好ましくは、ここで、d3=0.38mm>d3’=0.30mmである。
各ワイヤは、2500≦Rm≦3100MPaであるような、Rmで示される破断強度を有する。これらのワイヤの鋼鉄は、SHT(超高張力鋼)グレードのものと呼ばれる。例えば、UT(ウルトラ張力)又はMT(メガ張力)グレードのような上級グレードのワイヤと同様とすることができる、例えば、NT(標準引張)又はHT(高張力)グレードのような下級グレードのワイヤなど、他のワイヤを用いてもよい。
本発明によるコードの製造方法
本発明によるコードは、当業者には周知のステップを含む方法を用いて製造する。すなわち、想起されるように、金属ワイヤ又はストランドを組み立てるための2つの実施可能な技術があり、すなわち、ケーブル敷設法(この場合には、組立点の前後で同期回転する理由から、ワイヤ又はストランドがこれら自体の軸の周りに捻りを受けない);又は捻り法(この場合には、ワイヤ又はストランドは、これら自体の軸の周りに全体的な捻り及び個々の捻りの両方を受け、これによりワイヤ又はストランドの各々に捻り戻りトルクが発生する)の何れかによる。
上述の内部ストランドは、インラインで連続的に実施される以下のステップ:
最初に、第1の組立点にて中間層C2を形成するよう、Z方向にピッチp2で内層C1のQ=1個の内部ワイヤの廻りにM個の中間ワイヤを捻り法又はケーブル敷設法により組み立てる第1のステップと、
その後、第2の組立点にて外層C3を形成するよう、Z方向にピッチp3で中間層C2のM個の中間ワイヤの廻りにN個の外部ワイヤを捻り法又はケーブル敷設法により組み立てる第2のステップと、
好ましくは最終捻りバランス取りステップと、
を含む既知の方法に従って製造される。
同様の方法を用いて、変更すべきところは変更し、各外部ストランドTEを製造する。
「捻りのバランス取り(twist balancing)」によって意味するものは、当業者には周知のように、外層と同様に中間層においても、ストランドの各ワイヤに加わる残留トルク(又は、捻りの弾性復帰)をなくすことである。
この最終の捻りバランス取りステップの後、ストランドの製造が完了する。各ストランドは、多重ストランドコードを得るために基本ストランドを共にケーブリングする後工程の前に、保管のため1又は2以上の受け入れリール上に巻き取られる。
本発明の多重ストランドコードを製造するために、当業者には周知のように、本方法は、ストランドを組み立てるために定格されたケーブル敷設又はツイスト機械を使用して、以前に得られたストランドを共にケーブル敷設又はツイストすることである。
すなわち、L個の外部ストランドTEは、S方向のピッチpで内部ストランドTIの廻りに組み立てられてコード50を形成する。場合によっては、最後の組み立てステップにおいて、ラッパーFが以前に得られた組立体の廻りでZ方向にピッチpfで巻かれる。
コードは、ラジアルタイヤのクラウン補強体を製造するのに従来から使用される補強充填剤として天然ゴム及びカーボンブラックに基づいた既知の組成物から形成される複合織物にカレンダー加工することにより組み込まれる。この組成物は、エラストマー及び補強充填剤(カーボンブラック)に加えて、抗酸化剤、ステアリン酸、オイルエクステンダー、接着促進剤としてのナフテン酸コバルト、及び最後に加硫系(硫黄、促進剤及びZnO)を本質的に有する。
これらのコードによって強化された複合織物は、エラストマー化合物の薄い2つの層から形成されたエラストマー化合物マトリクスを有し、該2つの層は、コードのそれぞれの側に重ね合わされ、それぞれ1と4mmの間で1と4mmを含む厚みを有する。カレンダー加工のピッチ(エラストマー化合物の織物にコードが敷設されるピッチ)は、4mmから8mmに及ぶ。
これらの複合織物は、タイヤの製造法の際にクラウン補強体におけるワーキングプライとして使用され、そのステップは、当業者には既知である。
本発明の第2の実施形態によるコード
図4は、本発明の第2の実施形態によるコード51を示している。第1の実施形態と同様の要素は、同じ参照符号で示されている。別途記載の無い限り、第1の実施形態と比べて相違点のみが記載される。
コード51の内部ストランドTI
第2の実施形態によるコード51の内部ストランドは、第1の実施形態のコード50のものと同じである。
本発明によれば、ピッチp2及びp3は、0.36≦(p3-p2)/p3≦0.57を満たす。
コード51の外部ストランド
第1の実施形態とは違って、ピッチp2’は、8mm≦p2’≦16mm、好ましくは8mm≦p2’≦14mm、より好ましくは8mm≦p2’≦12mmであるようなものである。ここでp2’=10mmである。
加えて、ピッチp2’及びp3’は、0.36≦(p3’-p2’)/p3’≦0.57を満たす。有利には、ピッチp2’及びp3’は、0.38≦(p3’-p2’)/p3’、好ましくは、0.40≦(p3’-p2’)/p3’、より好ましくは0.43≦(p3’-p2’)/p3’、更により好ましくは0.45≦(p3’-p2’)/p3’の関係を満たす。有利には、ピッチp2’及びp3’は、(p3’-p2’)/p3’≦0.55及び好ましくは、(p3’-p2’)/p3’≦0.53の関係を満たす。ここで(p3’-p2’)/p3’=0.50である。
ワイヤ間距離I2’は35μmに等しく、また合計SI2’=6×0.0354=0.21mmであり、これはd3’=0.30mmより真に小さい値である。
本発明の第3及び第4の実施形態によるコード
図5及び6は、それぞれ、本発明の第3及び第4の実施形態によるコード52及び53を示す。第1の実施形態と同様の要素は、同じ参照符号で示されている。これらのコードの特徴は、表Cに並べられている。
本発明の第5、第6及び第7の実施形態によるコード
図7、8、及び9は、それぞれ、本発明の第5、第6及び第7の実施形態によるコード54、55及び56を示す。第1の実施形態と同様の要素は、同じ参照符号で示されている。
コード54、55及び56の内部ストランドTI
各コード54、55及び56の各内部ストランドは、第1の実施形態によるコード50の内部ストランドと同じである。
本発明によれば、ピッチp2’及びピッチp3’は、各コード54、55及び56において、0.36≦(p3’-p2’)/p3’≦0.57を満たす。
コード54の外部ストランドTE
上記のコード50の第1の実施形態とは違って、コード54の各外部ストランドTEは、2つの層を有する。各外部ストランドTEは、2つの層を含み、この場合それよりも多くも少なくもない2つの層から構成される。
各外部ストランドTEは、Q’個の内部ワイヤF1’から構成される内層C1’と、内層C1’の廻りで接触して螺旋状に巻かれたN’個の外部ワイヤF3’から構成される外層C3’と、を備える。
1つの好ましい実施形態において、Q’>1、好ましくは、Q’=2、3、又は4であり、ここでQ’=2である。Q’=2及びN’=7又は8であり、好ましくは、Q’=2及びN’=7である。
内部ワイヤF1’は、ピッチp1=7.7mmで螺旋状に巻かれる。
各外部ストランドTEの内層CI’は、コードの巻き方向Sと反対の巻き方向Zで螺旋状に巻かれる。
各外部ストランドTEの外層C3’は、コードの巻き方向Sと反対の巻き方向Zで各外部ストランドTEの内層C1’と同じ方向Zで各外部ストランドTEの内層C1’の廻りに巻かれる。N’個の外部ワイヤF3’は、10mm≦p3’≦40mm、好ましくは15mm≦p3’≦35mm、より好ましくは15mm≦p3’≦25mmであるようなピッチp3’で内部ワイヤF1’の廻りに螺旋状に巻かれる。ここでp3’=15.4mmである。
コード55の外部ストランド
上記のコード54の第5の実施形態とは違って、各外部ストランドTEは、Q’=3であるようなものである。Q’=3及びN’=7、8、又は9であり、好ましくは、Q’=3及びN’=8である。
コード56の外部ストランド
上記のコード54の第5の実施形態とは違って、各外部ストランドTEは、Q’=4であるようなものである。Q’=4及びN’=7、8、9又は10であり、好ましくは、Q’=4及びN’=9である。
上記のコード54、55及び56において、各外部ストランドTEの他の特徴、特に、I3’、SI3’に関連する特徴及び直径d1、d2、d3、d1’、d2’、d3’間の関係並びにDI、DE、DI/DE、D及びEに関連する特徴は、表Cに並べられ且つ直接推論される。
本発明の第8の実施形態によるコード
図10は、本発明の第8の実施形態によるコード57を示している。第1の実施形態と同様の要素は、同じ参照符号で示されている。別途記載の無い限り、第1の実施形態と比べて相違点のみが記載される。第8の実施形態によるコード57は、内部ストランドTIに関して第1の実施形態によるコード50と異なる。
コード57の内部ストランドTI
第1の実施形態によるコード50の内部ストランドとは違って、Q=1、M=5、N=11である。
ワイヤ間距離I2は、57.5μmに等しい。
中間層C2のワイヤ間距離I2の合計SI2は、外層C3の外部ワイヤF3の直径d3よりも小さく、好ましくは、0.8d3以下である。ここでSI2=5×0.0575=0.29mmであり、これはd3=0.30mmより真に小さい値である。
ワイヤ間距離I3は、74.7μmに等しい。ワイヤ間距離I3の合計SI3は、外層C3の外部ワイヤF3の直径d3よりも大きい。
この場合、d1=d2及びd1>d3及びd1=d2=0.35mm、並びにd3=0.30mmである。
本発明によれば、ピッチp2及びピッチp3は、0.36≦(p3-p2)/p3≦0.57の関係を満たす。
コード57の他の特徴、特にDI、DE、DI/DE、D及びEに関連する特徴は、表Dに並べられ且つ直接推論される。
本発明の第9の実施形態によるコード
図11は、本発明の第9の実施形態によるコード58を示している。第1の実施形態と同様の要素は、同じ参照符号で示されている。別途記載の無い限り、第1の実施形態と比べて相違点のみが記載される。
コード50の第1の実施形態とは違って、第9の実施形態によるコード58は、D=5.7mmであるようなものである。
内部ストランドTIの直径DI及び外部ストランドTEの直径DEは、DI=1.97mm、DE=1.85mm及びDI/DE=1.06であるようなものである。
2つの隣接する外部ストランドTEを離隔する平均ストランド間距離Eは、ここではE=41μmである。
コード58の内部ストランドTI
上記のコード50の第1の実施形態とは違って、第9の実施形態によるコード56の内部ストランドTIは、d1>d2=d3であり、ここでd1=0.45mm、d2=d3=0.38mmであるようなものである。
本発明によれば、ピッチp2及びピッチp3は、0.36≦(p3-p2)/p3≦0.57の関係を満たす。
M個の中間ワイヤを平均で離隔する中間層C2のワイヤ間距離I2は、25.7μmである。
中間層C2のワイヤ間距離I2の合計SI2は、外層C3の外部ワイヤF3の直径d3よりも小さく、好ましくは、0.8×d3以下である。ここで、SI2=6×0.0257=0.16mmであり、これはd3’=0.38mmより真に小さい値である。
N個の外部ワイヤを平均で離隔する外層C3のワイヤ間距離I3は、57.5μmに等しい。外層C3のワイヤ間距離I3の合計SI3は、外層C3の外部ワイヤF3の直径d3よりも大きい。ここで、合計SI3=11×0.0575=0.63mmであり、これは、d3=0.38mmより真に小さい値である。
コード50の外部ストランドTE
第1の実施形態によるコード50の外部ストランドとは違って、各外部ストランドTEは、Q’=3であるようなものである。
Q’=3、M’=8又は9、及びN’=13、14、又は15であり、好ましくは、Q’=3、M’=8又は9、及びN’=14又は15であり、より好ましくは、Q’=3、M’=9、及びN’=14又は15であり、更により好ましくは、Q’=3、M’=9、及びN’=15である。
各外部ストランドTEの内層C1’は、コードの巻き方向Sと反対の巻き方向Zで巻かれる。代替として、この方向は、コードの巻き方向Sと同じとすることができる。Q’個の内部ワイヤF1’は、5mm≦p1’≦10mmであるようなピッチp1’で螺旋状に巻かれる。ここでp1=6.5mmである。
第1の実施形態とは違って、M’個の中間ワイヤF2’は、ピッチp2’=12mmで内部ワイヤF1’の廻りに螺旋状に巻かれ、N’個の外部ワイヤF3’は、ピッチp3’=18mmで中間ワイヤF2’の廻りに螺旋状に巻かれる。
M’個の中間ワイヤを平均して離隔する中間層C2’のワイヤ間距離I2’は、16.5μmに等しい。
中間層C2の’ワイヤ間距離I2’の合計SI2’は、外層C3’の外部ワイヤF3’の直径d3’よりも小さく、好ましくは、0.8×d3’以下である。ここで、合計SI2’=9×0.0165=0.15mmであり、これはd3’=0.30mmより真に小さい値である。
N’個の外部ワイヤを平均で離隔する外層C3’のワイヤ間距離I3’は、1.5μmに等しい。外層C3’のワイヤ間距離I3’の合計SI3’は、外層C3’の外部ワイヤF3’の直径d3’よりも大きい。ここで、合計SI3’=15×0.0115=0.17mmであり、これはd3’=0.30mmより真に小さい値である。
更に、d1’=d2’=d3’=0.30mmである。加えて、d1=0.45mm>d1’==0.30mmである。
本発明の第10の実施形態によるコード
図12は、本発明の第10の実施形態によるコード59を示している。第9の実施形態と同様の要素は、同じ参照符号で示されている。別途記載の無い限り、第9の実施形態と比べて相違点のみが記載される。第10の実施形態によるコード59は、外部ストランドTEに関して及び外部ストランドTEの数Lに関して第9の実施形態によるコード54と異なる。
上記のコード54の第9の実施形態とは違って、第10の実施形態によるコード59は、外層CEがL=7個の外部ストランドTEから構成されるようなものである。内層CI及び外層CEから構成される組立体は、ラッパーFのないコード59を意味し、直径D=4.3mmを有する。
内部ストランドTIの直径DI及び各外部ストランドTEの直径DEは、DI/DE≧1.30、好ましくは、DI/DE≧1.35、より好ましくは、DI/DE≧1.40であるようなものである。この比DI/DEはまた、DI/DE≧1.70、好ましくは、DI/DE≧1.65、より好ましくは、DI/DE≧1.60であるようなものである。この場合、DI=1.78mm、DE=1.28mm、及びDI/DE=1.39である。
2つの隣接する外部ストランドTEを離隔する平均ストランド間距離Eは、ここではE=38μmである。
コード59の外部ストランド
第5の実施形態によるコード54の各外部ストランドTEとは違って、第10の実施形態によるコード59の各外部ストランドTEは、d1’=d3’=0.32mmであるようなものである。
N’個の外部ワイヤを平均して離隔する外層C3’のワイヤ間距離I3’は、ここでは93.3μmに等しい。外層C3’のワイヤ間距離I3’の合計SI3’は、外層C3’の外部ワイヤF3’の直径d3’よりも大きい。ここで、合計SI3’=7×0.0933=0.65mmであり、これは、d3’=0.32mmより真に小さい値である。
加えて、d1’=0.38mm>d1’=d3’=0.32mm、及びd3=0.35mm>d3’=0.32mmである。
上記の様々なコードの特徴は、以下のテーブルC及びDに要約されている。
比較試験及び測定
コード透過性試験
このような透過性試験は、当業者には周知であり、所与の時間期間にわたって一定の圧力下で試験体に沿って通過した空気の量を測定することによって、試験対象のコードの長手方向空気透過性を決定することができる。当業者には周知であるかかる試験の原理は、コードが空気に対して不透過性であるようにするためにコードの処理の有効性を実証することであり、この試験は、例えば、規格ASTM D2692-98に記載されている。
このような試験は、製造時の非時効のコードで行われる。未加工のコードは、事前に外側をコーティングコンパウンドと呼ばれるエラストマー化合物で被覆される。これを行うため、平行(20mmのコード間距離)に敷設された一連の10本のコードを未処理状態のジエンエラストマー化合物の2つの層又は「スキム」(80×200mmの2つの矩形)間に配置し、各スキムの厚さは5mmである。次に、この全体を金型内に固定し、コードの各々は、これがクランプモジュールを用いて金型内に配置されたときに真っ直ぐのままであるようにするために十分な張力(例えば、3daN)下に維持される。次いで、120℃の温度で15バールの圧力(80×200mmの矩形ピストン)下で10~12時間にわたって加硫処理(硬化)される。この後、全体が脱型され、このようにして被覆されているコードの10個の試験体が、特徴付けのために7×7×60mmの平行六面体の形態で切断される。
被覆エラストマー化合物として使用されるコンパウンドは、従来的にタイヤで使用されているジエンエラストマー化合物であり、かかるコンパウンドは、天然(解膠済み)ゴム及びN330カーボンブラック(65phr)を主成分とし、更に以下の通常の添加剤、すなはち、硫黄(7phr)、スルフェンアミド促進剤(1phr)、ZnO(8phr)、ステアリン酸(0.7phr)、抗酸化剤(1.5phr)及びナフテン酸コバルト(1.5phr)(phrは、エラストマー100重量部当たりの重量部を意味する)を更に含む。被覆エラストマー化合物の弾性率E10は、約10MPaである。
試験を以下の方法で硬化状態の周囲のエラストマー化合物(又は被覆エラストマー化合物)で被覆された長さ6cmのコード片について実施し、1バールの圧力下で空気をコードの入口端に注入し、流量計を用いて出口端での空気の体積量を測定する(例えば、0~500cm3/分まで較正する)。測定中、コードのサンプルを圧縮気密シール(例えば、ジエン発泡体又はゴム製のシール)中に固定化され、コードの長手方向軸線に沿って一方端から他方端までコードに沿って通過した空気量だけが測定により考慮され、気密シールの気密性自体が事前に中実エラストマー化合物試験体を用いて、すなわち、コードなしの試験体を用いてチェックする。
コードの長手方向不透過性が高ければ高いほど、測定された平均空気流量(10個の試験体に関する平均値)はそれだけ一層低い。測定は、±0.2cm3/分という精度で取られるので、0.2cm3/分以下の測定値はゼロと見なされ、これら測定値は、コード軸線に沿って(すなわち、コード長手方向に沿って)気密(完全に気密)であると言えるコードに対応している。
エラストマー化合物によるストランドの透過性のインジケータ
エラストマー化合物によって透過されることになるストランドの能力は、以下の試験において、中間層C2の2つの隣接するワイヤF2によって並びに外層C3の2つの隣接するワイヤF3によって形成されたラジアル通過窓のサイズをシミュレーションすることにより決定された。このようなラジアル通過窓は、主軸Pに沿った内部ストランドの概略図を示した図13並びに上記で定められたラジアル通過窓Sを描いた図14において例示されている。
ストランドのこのような透過性インジケータは、空気に対するストランドの不透過性のイメージを与える。具体的には、ウィンドウのサイズが大きくなるほど、透過性インジケータが高くなるほど、より多くのエラストマー化合物がストランドを透過しやすく、空気に対してストランドがより不透過性となる。透過性はまた、ストランドに適用された上述の透過性試験により決定することができる。それでもなお、ストランドを評価することができる速度のために、発明者らは、透過性試験よりもラジアル通過窓Sのシミュレーション及び計算を好ましいものとした。
窓方向の影響
以下の表1は、2つの対照コードT1及びT2についての透過性試験及び透過性インジケータ試験の結果を示している。
これらの試験結果は、ベース100にて示される。すなわち、これらの試験のあらゆるものについて100よりも大きい結果は、試験したコード又はストランドが対照のコード又はストランド、この場合コードT1又はコードT1のストランドに対して優れた不透過性又は透過性を示すことを意味する。
対照コードT1、T2との比較では、外層C3及びC3’がL個の外部ストランドTE(コードT1)の巻き方向と反対で同じ方向に巻かれていることが、コードの良好な不透過性を確保することを可能にする本発明の本質的な特徴であることを示している。
コード50のピッチp3’による内部ストランドについての透過性インジケータの評価
本発明によるコード50の内部ストランドに似た様々な内部部ストランドについて、上記の説明と比較してコードの他の全ての構造的特徴は変化しないまま、p3の種々の値に対してp2の値を変えることによりシミュレーションした。
これらのシミュレーションの結果は、各々の場合、(p3-p2)/p3=0.30であるような対照ストランドに対してベース100にて種々の表2~4にて示される。すなわち、試験したストランドの窓サイズ値St及び対照ストランドの窓サイズ値S0について、透過性インジケータは、St*100/S0に等しい。従って、100より大きい結果は、試験したストランドが対応する対照ストランドに対して優れた透過性を示すことを意味する。窓のサイズは、透過性インジケータが120以上であるときに有意に高くなると推定され、これは、試験したストランドの窓のサイズが対照ストランドのものよりも20%高い場合を意味する。
各テーブル2~4それぞれは、20、23、25mmに等しいピッチp3に対応する。p2が増大するとワイヤ間距離I2が増大するが、ラジアル通過窓の最大値は、必ずしも最も高い値ではないI2値において得られる点に留意されたい。従って、本発明を実施する前に、当業者は、より低いI2、すなわちより低いストランドの透過性では、I2に対して比較的低い値をもたらすp2値に対して最大透過性を予測することが困難であるという仮定から始める。
0.36から0.57にわたる比(p3-p2)/p3の区間内及び試験した各ピッチp3について、透過性インジケータの値は、対応する対照ストランドについて得られたものよりも有意に高くなる。
コード51から59の内部ストランドについての透過性インジケータの評価
本発明の第1の実施形態によるコード50と同様に、本発明の種々の実施形態によるコード51から59の種々の外部ストランドについて、上記の説明と比較して各コードの他の全ての構造的特徴は変化しないまま、上記の値に対してp3の値を固定しながら、p2の値を変えることによりシミュレーションした。
これらのシミュレーションの結果は、各々の場合、(p3-p2)/p3=0.30であるような対照ストランドに対してベース100にて種々の表5~8にて示される。すなわち、試験したストランドの窓サイズ値St及び対照ストランドの窓サイズ値S0について、透過性インジケータは、St*100/S0に等しい。従って、100より大きい結果は、試験したストランドが対応する対照ストランドに対して優れた透過性を示すことを意味する。窓のサイズは、透過性インジケータが120以上であるときに有意に高くなると推定され、これは、試験したストランドの窓のサイズが対照ストランドのものよりも20%高い場合を意味する。
p2が増大するとワイヤ間距離I2が増大するが、ラジアル通過窓のサイズの最大値は、必ずしも最も高い値ではないI2値において得られる点に留意されたい。従って、本発明を実施する前に、当業者は、より低いI2、すなわちより低いストランドの透過性では、I2に対して比較的低い値をもたらすp2値に対して最大透過性を予測することが困難であるという仮定から始める。
0.36から0.57にわたる比(p3-p2)/p3の区間内及び試験した各ピッチp3について、透過性インジケータの値は、対応する対照ストランドについて得られたものよりも有意に高くなる。
表5から8は、異なるコード構成に対して、このエラストマー化合物による内部ストランドへのエラストマー化合物の透過性は、比(p3-p2)/p3=0.30の対照コードと比較すると、0.36~0.57にわたる比(p3-p2)/p3について有意に改善されたことを示している。
当然のことながら、本発明は、上述の例示的な実施形態に限定されない。コスト及び全体性能についての産業上の実現可能性の理由から、従来の円形断面を有する線形スレッド、すなわち直線的スレッドで本発明を実施することが好ましい。
また、上述又は上記で想定される種々の実施形態の特徴は、これらの特徴が互いに組み合わされる条件で組み合わせることもできる。
上記に記載されていない1つの実施形態において、L=8の場合、DI/DE≧1.60、好ましくは、DI/DE≧1.65、より好ましくはDI/DE≧1.70及びDI/DE≦2.0、好ましくは、DI/DE≦1.95、より好ましくはDI/DE≦1.90である。
上記に記載されていない別の実施形態において、L=9の場合、DI/DE≧2.00、好ましくは、DI/DE≧2.05、より好ましくはDI/DE≧2.10及びDI/DE≦2.50、好ましくは、DI/DE≦2.45、より好ましくはDI/DE≦2.40である。
Q’=3、M’=9、N’=14又は15、である実施形態において、各外部ストランドの透過性を向上させるために、各外部ストランドの内部ワイヤが各外部ストランドの各中間ワイヤの直径d2’よりも大きな直径d1’を有すること、並びに各外部ストランドの内部ワイヤが各外部ストランドの各外部ワイヤの直径d3’よりも大きな直径d1’を有することを想起することができる。
上記に記載されていない第1の実施形態において、各外部ストランドTEが2つの層又は3つの層を有する場合、内部ストランドの中間層は、コードの巻き方向と同じ巻き方向で内部ストランドの内層の廻りに巻かれる。
Q’>1であるこの第1の実施形態の第1の代替形態において、各外部ストランドの内層は、コードの巻き方向と同じ巻き方向で螺旋状に巻かれる。Q’>1であるこの第1の実施形態の第2の代替形態において、各外部ストランドの内層は、コードの巻き方向と反対の巻き方向で螺旋状に巻かれる。
上記に記載されていない第2の実施形態において、各外部ストランドTEが2つの層又は3つの層を有する場合、内部ストランドの中間層は、コードの巻き方向と反対の巻き方向で内部ストランドの内層の廻りに巻かれる。Q’>1である第2の実施形態の第1の代替形態において、各外部ストランドの内層は、コードの巻き方向と同じ巻き方向で螺旋状に巻かれる。
上記で想定された実施形態及び代替形態の巻き方向は、S並びにZでもよい。