以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量又は部材等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量又は部材等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“R1”によって参照される左前方領域(図2(b)参照)は、左前方領域R1と表記されることもあるし、領域R1と略記されることもあり得るが、それらは同じものを指す。
図1は本実施形態に係るレーダ装置1の概略的な構成を示す図である。レーダ装置1は、例えば、自動車などの車両に搭載される。以下、レーダ装置1が搭載される車両を「自車両」と称する。自車両と異なる車両は「他車両」と称される。自車両に注目して前後左右を以下のように定義する。即ち、自車両の運転席からステアリングに向かう向きを「前方」と定義し、自車両のステアリングから運転席に向かう向きを「後方」と定義する。前方及び後方は自車両の直進進行方向に平行である。直進進行方向は水平面に対して平行であるとする。自車両において、運転手は前を向いて運転席に座っているものとし、当該運転手の左側から右側に向かう向きを「右方向」と定義し且つ当該運転手の右側から左側に向かう向きを「左方向」と定義する。左右方向は、自車両の直進進行方向及び鉛直線に対して垂直な方向である。
また、前輪と後輪を備えた任意の車両について、車長とは、前輪と後輪を結ぶ方向における当該車両の長さを指し、車幅とは、前輪と後輪を結ぶ方向に直交し且つ鉛直線に直交する方向における当該車両の長さを指す。
レーダ装置1は自車両の所定位置に設置される。レーダ装置1の送信アンテナから所定の送信波が送信され、自車両の周辺に存在する物標にて送信波が反射される。この反射による反射波がレーダ装置1の受信アンテナにて受信され、レーダ装置1は受信アンテナでの受信信号に基づき、物標に係る物標データを取得できる。物標データは複数のパラメータを含み、当該複数のパラメータには、物標からの反射による反射波がレーダ装置1の受信アンテナに受信されるまでの距離(即ち、レーダ装置1及び物標間の距離)、自車両に対する物標の相対速度、自車両の前後方向に沿った自車両及び物標間の距離、自車両の左右方向に沿った自車両及び物標間の距離などが含まれていて良い。
図1に示す如く、レーダ装置1は、送信部2と、受信部3と、信号処理部4と、を主に備える。ここでは、周波数変調された連続波であるFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)を用いる構成を例として説明する。
送信部2は、信号生成部21及び発信器22を備える。信号生成部21は、信号処理部4の制御の下で、三角波状に電圧が変化する変調信号を生成し、該変調信号を発信器22に供給する。発信器22は、供給された変調信号に基づいて連続波の信号を周波数変調することで、時間経過につれて周波数が変化する送信信号を生成し、該送信信号を送信アンテナ23に出力する。送信アンテナ23は、発信器22からの送信信号を送信波TWとして所定の向きに出力する(即ち空間に放射する)。送信アンテナ23から出力される送信波TWは、所定の周期で周波数が上下するFMCWとなる。送信波TWが物標(人や他車両など)にて反射されると、送信波TWに基づく反射波RWが物標から自車両に向かうことになる。
受信部3は、アレーアンテナを形成する複数の受信アンテナ31と、その複数の受信アンテナ31に接続された複数の個別受信部32と、を備える。各受信アンテナ31に対して個別に1つの個別受信部32が割り当てられる。ここでは例として、受信アンテナ31と個別受信部32の組が、4組分、受信部3に設けられているものとする。受信アンテナ31と個別受信部32の組ごとに、受信アンテナ31は物標からの反射波RWを受信して受信信号を取得し、個別受信部32は対応する受信アンテナ31で得られた受信信号に所定の処理を施す。
複数の個別受信部32の構成は互いに同一であり、各個別受信部32はミキサ33及びA/D変換器34を備える。各個別受信部32において、対応する受信アンテナ31で得られた受信信号はローノイズアンプ(不図示)にて増幅された後にミキサ33に送られ、ミキサ33はローノイズアンプを介して供給された受信信号と発信器22からの送信信号とをミキシングすることでビート信号を生成する。ビート信号は、送信信号の周波数と受信信号の周波数との差であるビート周波数を有する。各個別受信部32において、ミキサ33により生成されたビート信号は同期回路(不図示)にて受信アンテナ31間でタイミングを合わせた上でA/D変換器34によりデジタルの信号に変換された後に、信号処理部4に出力される。
信号処理部4は、CPU(Central Processing Unit)及びメモリなどを含むマイクロコンピュータを備え、各A/D変換器34から供給される信号に基づき(従って4つの受信アンテナ31の受信信号に基づき)、物標データを生成することができる。複数の受信アンテナ31による反射波RWの受信信号に基づき、上述したような物標データを生成する方法として公知の任意の方法を利用することができる。
レーダ装置1は自車両の様々な位置に設置されうるが、本実施形態では、特に断り無き限り、図2(a)に示す如く自車両の左側面前方部にレーダ装置1が設置されているものとし、自車両の左側面前方部に設置されたレーダ装置1の構成及び動作を詳細に説明する。図2(a)などでは、車両が5角形にて示される。
図2(a)において、概ね扇型状の外形を有する領域FOVはレーダ装置1の検知領域(換言すれば視野)を表している。検知領域FOVは、レーダ装置1から自車両の左斜め前方に向けて広がる概ね扇型状の領域である。レーダ装置1は、主に自車両の左斜め前方に向けて送信波TWを送信し、検知領域FOV内に存在する物標からの反射波RWを受信することで、検知領域FOV内に存在する物標についてのデータ(物標データ及び後述の反射点データを含む)を得ることができる。図2(a)に示される角度θはレーダ装置1の水平検知角を表している。水平検知角θは90°以上(換言すれば±45°以上)であり、例えば120°(換言すれば±60°)である(但し、それ以外でも構わない)。
また、図2(b)に示す如く、レーダ装置1の設置位置を基準にして、X軸及びY軸から成る二次元のXY座標面を定義する。XY座標面において、レーダ装置1の設置位置に原点Oがとられる。X軸及びY軸は原点Oにて互いに直交し且つ水平面に平行な軸である。X軸は左右方向に平行であり、Y軸は前後方向に平行である。XY座標面上における任意の点PTの位置を(x,y)で表す。このとき、xは点PTの位置のX軸成分であるX軸座標値を表し、yは点PTの位置のY軸成分であるY軸座標値を表す。原点Oから左方向に向かう向きにX軸の正をとり、原点Oから前方に向かう向きにY軸の正をとる。即ち、点PTが原点Oに対して左方向、右方向に位置する場合、座標値xの極性は、夫々、正、負となり、点PTが原点Oに対して前方向、後方向に位置する場合、座標値yの極性は、夫々、正、負となる。
“x>0”且つ“y>0”を満たす領域、“x>0”且つ“y<0”を満たす領域、“x<0”且つ“y>0”を満たす領域、“x<0”且つ“y<0”を満たす領域を、夫々、左前方領域R1、左後方領域R2、右前方領域R3、右後方領域R4と称する。レーダ装置1の検知領域FOVは左前方領域R1を内包し、左後方領域R2の内、左前方領域R1に近い側の一部の領域も内包する。更に、レーダ装置1の検知領域FOVは、右前方領域R3の内、左前方領域R1に近い側の一部の領域も内包しうる。但し、レーダ装置1からの距離が所定の検知距離以上となる領域は検知領域FOVに含まれない。右後方領域R4と検知領域FOVとは重なり合わない。以下では、レーダ装置1が原点Oに配置されたXY座標面に注目し、特に必要なき限り、鉛直線に平行な上下方向の位置成分を無視する。
図3に、レーダ装置1における信号処理部4内のブロック図を示す。信号処理部4は、前処理部41と、領域設定/推定処理部42(以下、推定処理部42と略記する)と、を備える。前処理部41及び推定処理部42にて実現される機能をプログラムで記述して、当該プログラムを信号処理部4に搭載可能なメモリに記憶させておき、信号処理部4内のマイクロコンピュータ上で当該プログラムを実行することで、前処理部41及び推定処理部42の機能を実現して良い。尚、図3に示される構成は信号処理部4の機能の一部を実現するための構成であり、他の機能を実現するための、前処理部41及び推定処理部42以外の処理部が信号処理部4に更に設けられていて良い。
前処理部41は、受信部3の各A/D変換器34から供給されるデジタル信号形式で表現されたビート信号に基づき、反射波RWの出所である反射点を検出して反射点に関わる反射点データを生成する前処理を行う。
図4に示す如く、反射点データは、反射検出位置、受信信号強度及び相対速度を示す情報を含む。反射点データは物標データの一種であると考えて良い。
或る反射点について、反射検出位置は、受信部3における反射波RWの受信信号に基づき、送信波TWを反射した点の位置(換言すれば反射波RWの出所の位置)を検出したものであり、XY座標面上の座標値として表現される。
或る反射点について、受信信号強度は、その反射点からの反射波RWの受信部3における受信強度を示す。受信部3における受信強度は、当該反射点からの反射波RWの4つの受信アンテナ31での合計受信強度であると解して良いし、当該反射点からの反射波RWの1つの受信アンテナ31での受信強度であると解しても良い。受信信号強度は反射点からの反射波RWの電力に比例することになるが、反射点及びレーダ装置1間の距離の増大に伴い受信信号強度は低下する傾向にある。
或る反射点について、相対速度は、レーダ装置1から見た当該反射点の相対速度である。レーダ装置1から見た反射点の相対速度は、自車両から見た反射点の相対速度でもあり、反射点を内包する物標の自車両に対する相対速度でもある。
多くの場合、複数の反射点が検知されるため、以下では特に記述無き限り、前処理において複数の反射点が検知されて複数の反射点についての反射点データが生成されることを想定する。複数の反射点の内、第iの反射点について反射検出位置を特に“(x[i],y[i])”にて表し、第iの反射点について受信信号強度を特に“p[i]”にて表し、第iの反射点について相対速度を特に“v[i]”にて表す(iは自然数)。x[i]、y[i]は、夫々、第iの反射点の反射検出位置のX軸成分、Y軸成分を表す。
各々に反射波RWを受信する複数の受信アンテナ31の受信信号に基づいて、反射点ごとに、レーダ装置1と反射点との位置関係、反射波RWの受信強度、及び、レーダ装置1から見た反射点の相対速度を導出する方法は周知であり、その方法を利用して反射点データを生成すれば良い。即ち簡単に説明すると例えば、各A/D変換部34からのビート信号に対し高速フーリエ変換(FFT)を施して得られる周波数スペクトラムにおいて、所定閾値以上のパワーを有した極大値(ピーク)をとる周波数をピーク周波数として特定し、ピーク周波数の信号成分から、対応する反射点についての反射点データを導出することができる。送信波TWの照射を受ける物標上の全ての点は反射点の候補であるが、或る点からの反射波RWの受信部3での受信信号強度が所定強度以上であるときにのみ、その点は、前処理部41にて反射点として検出されることになる、と考えて良い。
前処理部41による反射点データを生成するための前処理は所定の計測周期にて周期的に実行され、順次生成された反射点データは推定処理部42に与えられる。
推定処理部42は、クラスタ領域設定部43と、部分領域推定部44と、占有領域推定部45と、空き領域推定部46と、を備える。これらが行う処理内容を、説明の具体化のために図5等を参照しながら説明する。
図5に示す如く、自車両の左斜め前方に他車両600が存在することを想定する。図6に、他車両600に関わる反射点データの反射検出位置の例を、受信信号強度の情報を加味して示す。図6において、実線長方形REFは、他車両600の真の外形をXY座標面上に投影したものである。図6において、黒三角形、ハッチングが付された三角形、ハッチングが付された円、白三角形、白円は、或るタイミングで取得された複数の反射点データにおける複数の反射検出位置を、XY座標面上に示したものである。黒三角形に対応する反射点からの受信信号強度が最も高く、以下、ハッチングが付された三角形、ハッチングが付された円、白三角形、白円の順に対応する受信信号強度が低くなる(後述の図8、図10(a)及び(b)についても同様)。尚、実際の受信信号強度は5段階で表現されるものではなく、5段階を大きく超える分解能を有する。
他車両600の進行方向は自車両と同じであって、自車両の走行車線の左側の車線において他車両600が併走している状況を想定する。レーダ装置1にて他車両600の位置を検出するにあたり、他車両600のボディ上の位置のみが反射検出位置として検知されることが理想的ではある。しかし、検出精度や路面での反射など、様々な誤差要因が影響して、反射点データにおける反射検出位置は、真の検出されるべき反射点の位置に対して誤差を含み得る。
但し、統計的には、送信波TWの照射を受ける他車両600のボディ上の点であって且つレーダ装置1に相対的に近い点からの反射波RWが、相対的に高い受信信号強度を持つ反射点データを構成する。即ち、図6に示す如く、他車両600のボディ全体が左前方領域R1に存在することを想定した場合、他車両600の車尾からの反射波RWが相対的に高い受信信号強度で受信部3にて受信され、他車両600の車尾から離れた反射点についての受信信号強度は相対的に小さくなる。他車両600を含む任意の車両について車尾とは車両の後方における端部を指す。他車両600を含む任意の車両について、車両の前方における端部を車頭と称する。
クラスタ領域設定部43は、前処理部41から提供される複数の反射点データにおける各反射点の反射検出位置及び相対速度に基づき、或る物標上の反射点と、他の物標上の反射点とを分類するクラスタリングを行って、単一の物標上の反射点に分類された各反射点の反射検出位置を包含するクラスタ領域を設定する。このようなクラスタリングの方法としても公知の方法を利用できる。即ち例えば、図7に示すように、或る第1の点の周りに共通の相対速度vAを持つ第1の反射点群が集中している一方で、第1の点から離れた第2の点の周りに共通の相対速度vBを持つ第2の反射点群が集中しているとき、第1の反射点群を形成する各反射点を第1の物標についての反射点に分類する一方で、第2の反射点群を形成する各反射点を第2の物標についての反射点に分類すれば良い。この場合、第1の反射点群を形成する各反射点の反射検出位置を包含する第1のクラスタ領域が設定され、第2の反射点群を形成する各反射点の反射検出位置を包含する第2のクラスタ領域が設定される。
クラスタ領域の形状は矩形以外でも良いが、ここでは、矩形のクラスタ領域が設定されるものとする。図6において、符号CLSが付された破線矩形内の領域が、注目された他車両600に対して設定されたクラスタ領域を表している。クラスタ領域設定部43は、他車両600上の反射点に分類された複数の反射点を包含する(換言すれば複数の反射検出位置を包含する)最小の矩形を、クラスタ領域CLSとして設定する。
部分領域推定部44には、クラスタ領域設定部43によるクラスタ領域の設定内容が入力される。部分領域推定部44は、クラスタ領域に属する複数の反射点についての複数の反射検出位置を、対応する受信信号強度に基づき重み付けたときの、当該複数の反射検出位置の重み付き平均位置及び標準偏差を求める。ここで求められる重み付き平均位置のX軸座標値、Y軸座標値を、夫々、“Ex”、“Ey”にて表す。求められる標準偏差にはX軸方向の標準偏差とY軸方向の標準偏差があり、X軸方向の標準偏差、Y軸方向の標準偏差を、夫々、“Sx”、“Sy”にて表す。XY座標面上の位置を(x,y)と表現するのに倣って、以下では、部分領域推定部44で求められる重み付き平均位置、標準偏差を、夫々、“(Ex,Ey)” 、“(Sx,Sy)”と記述することがある。
今、注目した1つのクラスタ領域に第1~第nの反射点が属しているものとする。そして、第1~第nの反射点の1つである第iの反射点の反射検出位置を “(x[i],y[i])”にて表し、第iの反射点についての重みを“p[i]”にて表すと、重み付き平均位置(Ex,Ey)は下記式(1)及び(2)に従って求められ、標準偏差(Sx,Sy)は、重み付き平均位置(Ex,Ey)を利用しつつ下記式(3)及び(4)に従って求められる。ここで、重みは受信信号強度そのものであって良い。即ち、第iの反射点についての重みは、第iの反射点についての受信信号強度そのものであって良い。但し、受信信号強度を所定の変換式で変換したものを重みとして用いても良い。即ち、式(1)~式(4)におけるp[i]は、第iの反射点についての受信信号強度を所定の変換式に代入して得られる値であっても良い。所定の変換式には、例えば、指数関数、対数関数、累乗又は多項式や、それらを組み合わせたものを利用できる。また階段状に、所定の受信信号強度の範囲においては一定の重みを割り当てるなどの手法をとっても良い。即ち例えば、受信信号強度がとりうる範囲の全体をm個の範囲である所定の第1強度範囲~第m強度範囲に分割すると共に、第1強度範囲~第m強度範囲に1対1に対応する第1重み値~第m重み値を予め設定しておき(mは2以上の整数)、第iの反射点についての受信信号強度が所定の第j強度範囲内に属する場合、式(1)~式(4)におけるp[i]に所定の第j重み値を代入しても良い(jは1以上m以下の整数)。
そして、部分領域推定部44は、重み付き平均位置(Ex,Ey)を中心に標準偏差(Sx,Sy)に応じた広がりを有する矩形領域を、クラスタ領域に対応する物標の一部が存在する部分領域として推定する。ここで推定される部分領域は、重み付き平均位置(Ex,Ey)を中心とし、X軸方向において“kx×Sx”の幅を持ち且つY軸方向において“ky×Sy”の幅を持つ矩形領域であり、図5に示す他車両600の例では、図6における符号PRが付された破線矩形内の領域に相当する。kx及びkyは所定の正の係数である。図8は、“kx=ky=1”であるときの部分領域PRの導出イメージ図である。
他車両が物標であるとき、部分領域は、他車両の一部としての他車両の車尾を含んだ車尾領域、又は、他車両の一部としての他車両の車頭を含んだ車頭領域である。
“x>0”且つ“y>0”を満たす左前方領域R1(図2(b)参照)内にクラスタ領域が設定されているとき又は推定した部分領域が左前方領域R1内に収まっているとき、部分領域推定部44は部分領域を車尾領域として推定する。自車両の走行車線の左側の車線にて他車両が併走している状況下において、左前方領域R1内にクラスタ領域が設定されること又は部分領域が推定されることは、当該クラスタ領域に対応する他車両が自車両の左斜め前方に位置していることを示しており、このとき、他車両の車尾からの反射波RWが主としてレーダ装置1にて受信されるからである。図5に示す他車両600の例では、図6の部分領域PRが他車両600の車尾領域として推定される。
一方、“x>0”且つ“y<0”を満たす左後方領域R2(図2(b)参照)内にクラスタ領域が設定されているとき又は推定した部分領域が左後方領域R2内に収まっているとき、部分領域推定部44は部分領域を車頭領域として推定する。自車両の走行車線の左側の車線にて他車両が併走している状況下において、左後方領域R2内にクラスタ領域が設定されること又は部分領域が推定されることは、当該クラスタ領域に対応する他車両が自車両の左斜め後方に位置していることを示しており、このとき、他車両の車頭からの反射波RWが主としてレーダ装置1にて受信されるからである。尚、車頭領域が推定される状況については後に図示される。
このように、部分領域推定部44では、他車両の両端(車頭及び車尾)の内、レーダ装置1に近い側に位置する一端を含んだ部分領域が推定されることになる。以下、部分領域推定部44により上述の如く部分領域を推定する処理を、部分領域推定処理と称する。
占有領域推定部45は、部分領域推定処理による部分領域の推定結果を用いて、物標の占有領域を推定する。推定される占有領域は、XY座標面上において、対応する物標が占有している領域である。占有領域の外形形状は理想的には物標の真の外形形状と一致すべきであるが、占有領域推定部45は占有領域を矩形領域とみなして推定する(即ち推定される占有領域の形状は矩形である)。占有領域の具体的な推定方法については後述される。
空き領域推定部46は、占有領域推定部45による占有領域の推定結果を用いて、空き領域を推定する。空き領域は、XY座標上において、物標が存在していない領域に相当する。従って、空き領域推定部46は、XY座標面上において、占有領域以外の領域を空き領域として推定することができる。複数の物標が存在する場合にあっては、自車両の周辺領域から、複数の物標についての複数の占有領域を除去して得られる残りの領域を、空き領域として推定することができる。
以下の複数の実施例の中で、レーダ装置1に関わる具体的な動作例や応用技術、変形技術を説明する。特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、上述した事項が後述の各実施例に適用される。後述の各実施例において、上述の内容と矛盾する事項については、各実施例での記載が優先されて良い。また矛盾無き限り、以下に述べる複数の実施例の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち複数の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。尚、後述される任意の他車両は他車両600の一種と解される。
<<第1実施例>>
第1実施例を説明する。第1実施例では、図9に示す如く、自車両CR0及び他車両CR1が前方に向けて走行していることを想定する。自車両CR0は車線LN0上を走行し、他車両CR1は車線LN0の左側に隣接する車線LN1上を走行している。そして、自車両CR0の速度は他車両CR1の速度よりも小さいものとする。例えば、他車両CR1が自車両CR0の左斜め後方に存在している状態を基準として、自車両CR0が減速してゆくような状況が想定される。
前後方向にのみ注目した場合、タイミングt1では、他車両CR1の全体がレーダ装置1の設置位置よりも後方に位置しており、その後のタイミングt2では、他車両CR1の全体がレーダ装置1の設置位置よりも前方に位置しているものとする。故に、XY座標面上で考えた場合、タイミングt1では他車両CR1の全体が左後方領域R2に位置し、タイミングt2では他車両CR1の全体が左前方領域R1に位置することになる(図2(b)参照)。タイミングt1において少なくとも他車両CR1の車頭がレーダ装置1の検知領域FOV内に収まっており、且つ、タイミングt2において少なくとも他車両CR1の車尾がレーダ装置1の検知領域FOV内に収まっているものとする。タイミングt1及びt2の夫々において他車両CR1の全体がレーダ装置1の検知領域FOV内に収まっていても良い。このような想定の下、他車両CR1の占有領域等を推定する動作を説明する。
タイミングt1、t2における受信部3の受信信号に基づき前処理部41にて生成された反射点データを、夫々、タイミングt1、t2の反射点データと称する。タイミングt1及びt2の夫々の前処理において、複数の反射点が検知されて複数の反射点についての反射点データが生成される。タイミングt1にて生成される複数の反射点についての複数の反射点データの集まりをタイミングt1の反射点データ群と称する。タイミングt2についても同様である。
図10(a)に、タイミングt1における他車両CR1の反射点データの反射検出位置を、受信信号強度の情報を加味して示す。図10(b)に、タイミングt2における他車両CR1の反射点データの反射検出位置を、受信信号強度の情報を加味して示す。図10(a)、(b)において、実線長方形REF[t1]、REF[t2]は、夫々、タイミングt1、t2における他車両CR1の真の外形をXY座標面上に投影したものである。
タイミングt1において、クラスタ領域設定部43は、タイミングt1の反射点データ群に基づき他車両CR1上の各反射点の反射検出位置を包含するクラスタ領域CLS[t1]を設定する。そして、部分領域推定部44は、タイミングt1の反射点データ群を参照し、クラスタ領域CLS[t1]内の各反射点についての反射検出位置及び受信信号強度に基づいて上述の部分領域推定処理により他車両CR1の部分領域FR[t1]を推定する。ここでは、クラスタ領域CLS[t1]及び部分領域FR[t1]が左後方領域R2(図2(b)参照)内に収まっているため、部分領域FR[t1]はタイミングt1における他車両CR1の車頭領域として推定される。任意の他車両について、推定された車頭領域としての矩形の4頂点の内、他車両の進行方向側に位置し且つ原点Oに近い側の頂点を、車頭角と称する。部分領域推定処理は車頭角の推定処理も含む。他車両が左後方領域R2(図2(b)参照)に位置する場合にあっては、車頭領域としての矩形の4頂点の内、最も原点Oに近い頂点が車頭角として推定される。故に、図10(a)では頂点FC[t1]がタイミングt1の車頭角に相当する。
タイミングt2において、クラスタ領域設定部43は、タイミングt2の反射点データ群に基づき他車両CR1上の各反射点の反射検出位置を包含するクラスタ領域CLS[t2]を設定する。そして、部分領域推定部44は、タイミングt2の反射点データ群を参照し、クラスタ領域CLS[t2]内の各反射点についての反射検出位置及び受信信号強度に基づいて上述の部分領域推定処理により他車両CR1の部分領域RR[t2]を推定する。ここでは、クラスタ領域CLS[t2]及び部分領域RR[t2]が左前方領域R1(図2(b)参照)内に収まっているため、部分領域RR[t2]はタイミングt2における他車両CR1の車尾領域として推定される。任意の他車両について、推定された車尾領域としての矩形の4頂点の内、他車両の進行方向の逆側に位置し且つ原点Oに近い側の頂点を、車尾角と称する。部分領域推定処理は車尾角の推定処理も含む。他車両が左前方領域R1(図2(b)参照)に位置する場合にあっては、車尾領域としての矩形の4頂点の内、最も原点Oに近い頂点が車尾角として推定される。故に、図10(b)では頂点RC[t2]がタイミングt2の車尾角に相当する。
占有領域推定部45は、タイミングt1における車頭領域FR[t1]のタイミングt2における位置を、タイミングt1における受信部3の受信信号(タイミングt1における反射点データ)を少なくとも用いて推定し、その推定結果をタイミングt2における車尾領域RR[t2]に対応付けることにより、タイミングt2における他車両CR1の占有領域を推定する。
図11(a)に、タイミングt1における車頭領域FR[t1]及び車頭角FC[t1]並びにタイミングt2における車尾領域RR[t2]及び車尾角RC[t2]と共に、車頭領域FR[t2]及び車頭角FC[t2]を、共通のXY座標上に示す。車頭領域FR[t2]はタイミングt2において他車両CR1の車頭が存在する領域に相当し、車頭角FC[t2]はタイミングt2における他車両CR1の車頭角に相当する。車頭領域FR[t1]及びFR[t2]の形状は互いに合同である。
車頭領域FR[t2]及び車頭角FC[t2]は、タイミングt2における反射点データから直接的に推定されるものではなく、タイミングt1における反射点データを少なくとも用いて推定される。
単純には例えば、タイミングt1における他車両CR1の反射点データ中の相対速度から推定用相対速度を特定し、タイミングt1及びt2間において他車両CR1が自車両CR0から見て推定用相対速度で移動し続けると仮定した上で、タイミングt1における他車両CR1の車頭領域FR[t1]及び車頭角FC[t1]の位置からタイミングt2における他車両CR1の車頭領域FR[t2]及び車頭角FC[t2]の位置を推定する。この場合、推定用相対速度とタイミングt1及びt2間の時間差との積だけ、車頭領域FR[t1]及び車頭角FC[t1]をY軸の正の向きに移動した位置に、車頭領域FR[t2]及び車頭角FC[t2]が設定される。
上記の推定用相対速度は、タイミングt1におけるクラスタ領域CLS[t1]内又は車頭領域FR[t1]内の1つの反射点(例えば最大の受信信号強度に対応する反射点)についての相対速度でも良いし、タイミングt1におけるクラスタ領域CLS[t1]内又は車頭領域FR[t1]内の複数の反射点についての相対速度の平均(加重平均を含む)でも良い。基本的には、或る1つのタイミングにおいて、他車両CR1の複数の反射点データ中の相対速度は実質的に互いに等しく、クラスタ領域が設定される際に、クラスタ領域中の全反射点の相対速度は単一の相対速度に設定し直されても良い。
実際には例えば、タイミングt1より後であって且つタイミングt2よりも前の計測周期にて得られる反射点データを更に利用して車頭領域FR[t2]及び車頭角FC[t2]の位置を推定すると良い。この場合、タイミングt1及びt2間における他車両CR1の相対速度を、相対速度の変化状態を含めて正確に見積もることができるため、車頭領域FR[t2]及び車頭角FC[t2]の位置の推定精度が高まる。この際、推定処理部42は、反射検出位置及び相対速度の時間方向における連続性などに基づき物標の同定及び追跡を行う周知の方法を用いることができる。
図11(b)に、タイミングt2における車頭角FC[t2]及び車尾角RC[t2]と、それらに基づき推定された占有領域OR[t2]を示す。図11(b)において、実線長方形REF[t2]はタイミングt2における他車両CR1の真の外形をXY座標面上に投影したものである。占有領域OR[t2]は、タイミングt2において他車両CR1が占有している領域を推定したものである。占有領域OR[t2]はX軸に平行な2つの辺とY軸に平行な2つの辺とで形成される矩形領域であり、Y軸に平行な2つの辺の内、原点Oに近い側の辺の両端に車頭角FC[t2]及び車尾角RC[t2]が配置される。車頭角FC[t2]及び車尾角RC[t2]の内、車尾角RC[t2]の方が原点Oに近い。
占有領域推定部45は、X軸方向における占有領域OR[t2]の長さ、即ち車頭角FC[t2]及び車尾角RC[t2]間の距離を、他車両CR1の車長として推定する。X軸方向における占有領域OR[t2]の長さWDTは、他車両CR1の車幅の推定値に相当する。占有領域推定部45は、車頭角FC[t2]及び車尾角RC[t2]間の距離に基づいて他車両CR1の車幅(即ち長さWDT)を推定する。この際、車長が大きいほど車幅も大きくなる可能性が高いとの知見を利用する。
ここでは、占有領域推定部45は、他車両CR1の車長(即ち車頭角FC[t2]及び車尾角RC[t2]間の距離)が所定長さ(例えば5m)未満であれば他車両CR1の車種は普通車であると推定して他車両CR1の車幅が第1の車幅であると推定し(即ち長さWDTを第1の車幅に設定し)、他車両CR1の車長が所定長さ以上であれば他車両CR1の車種は大型車であると推定して他車両CR1の車幅が第2の車幅であると推定する(即ち長さWDTを第2の車幅に設定する)。第2の車幅は第1の車幅よりも大きく、例えば、第1の車幅、第2の車幅は、夫々、1.8m、2.2mである。他車両CR1の車長(即ち車頭角FC[t2]及び車尾角RC[t2]間の距離)に応じ、他車両CR1の車幅を3段階以上に分類して推定しても構わない。
本実施例では、上述の如く、複数の反射点についての反射検出位置だけでなく受信信号強度をも用いて物標の一部が存在する部分領域を推定する。このため、反射波の出所である物標の表面位置を精度良く表した部分領域を推定することが可能となり、その推定結果を利用することで、物標の占有領域の推定精度も高いものとすることができる。
具体的には、複数の反射点の反射検出位置を受信信号強度にて重み付けて平均をとり、複数の反射点に関する受信信号強度を考慮した標準偏差を利用して、物標の一部が存在する部分領域(本実施例では他車両の車尾領域、車頭領域)を推定する。このような部分領域の推定を利用することで、他車両の占有領域を精度良く推定することができる。
この際、本実施例の如く、他車両及び自車両の位置関係が互いに異なるタイミングで車尾領域及び車頭領域を別々に推定し、それらを対応付けて占有領域を推定するという方法を利用することで、単一のタイミングでの受信信号だけでは把握し難い他車両の占有領域を精度良く推定することができる。
レーダ装置の計測結果を利用して自車両の運転制御(自動運転制御又は運転支援制御)を行うシステムにおいて、上記のような推定結果を利用することにより、運転制御の精度及び妥当性を高めることができる。例えば、運転制御において他車両CR1の後方又は前方に自車両CR0を車線変更させる際、他車両CR1の占有領域、車尾角及び車頭角が正確に分からない場合には、自車両CR0が他車両CR1に接触する可能性が生まれる、又は、接触を避けるために十分な余裕をもってしか運転制御を行うことができなくなるが、本実施例によれば、このような不都合を解消できる。
タイミングt1は他車両CR1の車頭領域を推定可能なタイミングであれば任意であるが、以下のようにしても良い。他車両CR1の車頭領域を推定可能な各タイミングにおいて部分領域推定部44により部分領域を車頭領域として順次推定する。本実施例の想定の下では、時間経過と共に、車頭領域の位置がY軸の正の向きに移動していくことになるが、部分領域推定部44により推定される部分領域の全体が左後方領域R2に収まっている状態から、推定される部分領域の一部又は全部が左前方領域R1にかかる直前において(即ち他車両CR1の車頭が“y<0”の位置から“y>0”の位置へと移動する直前において)、車頭領域の推定を打ち切って、最後に推定された車頭領域をタイミングt1における車頭領域と捉えるようにしても良い。
また、タイミングt2も他車両CR1の車尾領域を推定可能なタイミングであれば任意である。例えば、左前方領域R1中の所定領域内にて部分領域推定部44により部分領域が推定されたとき、その部分領域をタイミングt2における車尾領域RR[t2]と捉えて占有領域OR[t2]を推定すれば良い。そして、占有領域推定部45は、占有領域OR[t2]のY軸方向及びX軸方向の長さを示す形状情報を作成及び保持し、以後は、他車両CR1の車長及び車幅が占有領域OR[t2]のY軸方向及びX軸方向の長さと一致するとみなす。
他車両CR1の形状情報が一旦作成されると、他車両CR1がレーダ装置1により物標として検出され続けている限り、当該形状情報は保持され続け、保持された形状情報にて定義される車長及び車幅を他車両CR1が有するとした上で、他車両CR1は受信部3での受信信号に基づきXY座標面上で追跡される(即ち、推定処理部42により他車両CR1の位置がXY座標面上で追跡される)。これは、後述の他の実施例及び他車両CR1以外の他車両についても同様である。
尚、本実施例では、時間進行につれて他車両CR1が自車両CR0の左斜め後方から左斜め前方に移動していく状況を想定したため、他車両CR1の車頭領域が車尾領域よりも先に推定されているが、時間進行につれて他車両CR1が自車両CR0の左斜め前方から左斜め後方に移動していく状況においては、他車両CR1の車尾領域が推定された後に他車両CR1の車頭領域が推定される(即ちタイミングt1及びt2間の時間関係が逆になる)。この場合、他車両CR1の車尾領域の推定を経て他車両CR1の車頭領域を推定した後、他車両CR1の車頭領域に対して、過去に推定済みの他車両CR1の車尾領域を対応付けることにより、他車両CR1の占有領域を推定すれば良い。これは、他車両CR1に限らず、後述の任意の他車両について当てはまる。
<<第2実施例>>
第2実施例を説明する。第1実施例において、車線LN1上で複数の他車両が走行している場合にも、上述した方法により、各他車両について車頭領域、車頭角、車尾領域、車尾角及び占有領域が推定されて良い。例えば、図12に示す如く、第1実施例にて想定された他車両CR1に加えて他車両CR1の後方にて車線LN1上を車両CR2が前向きに走行している場合を考える。そして、他車両CR1が自車両CR0の左斜め後方に存在している状態を基準として、自車両CR0が減速してゆくような状況を想定する。尚、車両CR1及びCR2間に他の物標は存在しないものとする。
この場合、第1実施例の如く、タイミングt1における他車両CR1の車頭領域及び車頭角の推定及びタイミングt2における他車両CR1の車尾領域及び車尾角の推定を介して他車両CR1の占有領域が推定されることになるが、これに加え、タイミングt2にて検知領域FOV内に他車両CR2の車頭が収まっていて他車両CR2の車頭領域及び車頭角が推定されたならば、空き領域推定部46は、図13に示す如く、タイミングt2における他車両CR1の占有領域651とタイミングt2における他車両CR2の車頭領域652とに挟まれた領域(換言すれば、タイミングt2における他車両CR1の車尾角と他車両CR2の車頭角とに挟まれた領域)を空き領域653として推定することができる。
空き領域推定部46にて推定される空き領域は、Y軸方向にのみ長さを有する一次元量である。但し、空き領域は、X軸方向に所定の幅を有する矩形領域として推定されても良い。何れにせよ、他車両CR1の車尾角と他車両CR2の車頭角との間の領域が空き領域653として推定される。そして例えば、空き領域653に自車両CR0を安全に割り込ませることが可能な程度に空き領域653が大きいのであれば、空き領域653に自車両CR0を移動させるように運転制御を行うといったことが可能となる。
タイミングt2の後において他車両CR2の車尾領域及び車尾角が更に推定されても良く、その推定を通じて、他車両CR1及びCR2の各占有領域の推定及び他車両CR1及びCR2の各形状情報の保持が完了する。この際、空き領域推定部46は、他車両CR1及びCR2の占有領域間の領域を空き領域として推定することができる。
他車両が2台の場合について説明したが、車線LN1上に3台以上の他車両が走行している場合にも同様にできる。
<<第3実施例>>
第3実施例を説明する。上述の図12の例の如く、或るタイミング(図12ではタイミングt2)にて他車両CR1の車尾角と他車両CR2の車頭角の位置を推定できるのであれば、それらの間の空き領域を直ちに推定することができる。しかし、他車両CR1及びCR2が共に自車両CR0の左斜め前方に位置している状況下においては、上述してきた方法では空き領域の推定が困難である。第3実施例では、そのような状況下においても、他車両の占有領域の推定を介して空き領域を推定可能な方法を説明する。
第3実施例では、図14に示すような状況を想定する。即ち、自車両CR0が車線LN0上を且つ他車両CR1及びCR2が車線LN1上を前方に向けて走行している。他車両CR1は他車両CR2の前方側に位置する。但し、タイミングtAにおいて、他車両CR1及びCR2は共に自車両CR0の左斜め前方に位置している。即ち、タイミングtAにおいて、他車両CR1及びCR2から成る車列の全体が左前方領域R1(図2(b)参照)内に位置している。また、タイミングtAにおいて、他車両CR1及びCR2の全体は検知領域FOV内に存在しているものとする。
タイミングtAでは、他車両CR1上の反射点からの反射波RWと他車両CR2上の反射点からの反射波RWとが受信部3にて受信される。故に、タイミングtAにて得られる反射点データから、上述してきた方法により、他車両CR1についてのクラスタ領域の設定を通じて他車両CR1の車尾領域及び車尾角を推定することができ、他車両CR2についてのクラスタ領域の設定を通じて他車両CR2の車尾領域及び車尾角を推定することができる。
図15に、タイミングtAにおいて設定又は推定された、他車両CR1についてのクラスタ領域CLS1、車尾領域RR1及び車尾角RC1と、他車両CR2についてのクラスタ領域CLS2、車尾領域RR2及び車尾角RC2とを、XY座標面上に示す。図15では図示を省略しているが、クラスタ領域CLS1及びCLS2の夫々には、複数の反射点が存在している(換言すれば複数の反射点についての複数の反射検出位置が存在している)。
第3実施例に係る占有領域推定部45は、或る他車両について、当該他車両についての反射点の検出数と、レーダ装置1及び他車両間の検出距離とに基づいて特徴量を導出し、導出した特徴量を用いて他車両の車種(種類)を判定する。そして、その判定結果を、部分領域推定部44の推定結果と組み合わせることで、他車両の占有領域を推定する。他車両についての反射点の検出数とは、その他車両に対して設定されたクラスタ領域に含まれる反射点の個数に相当する。このような占有領域の推定を他車両ごとに行うことができる。
図16を参照して、上記の特徴量につき説明する。図16は、クラスタ領域に含まれる反射点の個数と物標距離dとの関係を、様々な物標に対して実験した結果を示すグラフである。当該グラフにおいて、横軸は物標距離dに対応し、縦軸はクラスタ領域に含まれる反射点の個数の平方数(以下、反射点数評価値NUMと称する)に対応している。物標距離dとは、注目した物標の中心とレーダ装置1との間の距離を指す。当該実験において、物標として、普通車に分類される第1の車両及び第2の車両と、大型車に分類される第3の車両と、を用いた。大型車に分類される車両の車長及び車幅は、普通車に分類される車両の車長及び車幅よりも大きい。第1~第3の車両の夫々は、他車両でありうる。
図16のグラフには、円と、長方形と、ひし形と、3種類の三角形とが、各々に多数プロットされている。3種類の三角形は第1~第3の三角形から成る。第1及び第2の三角形は図16のグラフの横軸に平行な辺を有し、第3の三角形は図16のグラフの縦軸に平行な辺を有する。第1の三角形においてグラフの横軸に平行な辺は図16の紙面の下方側に配置され、第2の三角形においてグラフの横軸に平行な辺は図16の紙面の上方側に配置されている。図16のグラフにおいて、円のプロットと第1の三角形のプロットは、第1の車両についての反射点数評価値NUM及び物標距離d間の関係の実験結果を表し、長方形のプロットと第2の三角形のプロットは、第2の車両についての反射点数評価値NUM及び物標距離d間の関係の実験結果を表し、ひし形のプロットと第3の三角形のプロットは、第3の車両についての反射点数評価値NUM及び物標距離d間の関係の実験結果を表す。
反射点数評価値NUM及び物標距離d間の関係は、普通車(第1又は第2の車両)と大型車(第3の車両)との間で互いに区別可能な特性を有する。即ち、レーダ装置1から或る物標距離dだけ離れた位置に配置された物標が送信波TWの照射を受ける場合、当該物標が大型車であるときの反射点数評価値NUMは、当該物標が普通車であるときの反射点数評価値NUMよりも大きいという傾向(以下第1の傾向と称する)がある。これは、大型車の方が普通車よりも反射点を形成するボディの面積が大きいためと考えられる。また、物標が普通車であるか大型車であるかに関係なく、物標距離dの増大につれて反射点数評価値NUMは減少するという傾向(以下第2の傾向と称する)がある。これは、物標距離dの増大につれて、送信波TWを受ける部分の立体角が減少することや送信波TW及び反射波RWが減衰すること等が要因と考えられる。
これらの傾向を考慮した所定の演算式と車種判別閾値とを占有領域推定部45に予め与えておく。そして、占有領域推定部45は、クラスタ領域を形成する他車両ごとに、他車両についての反射点の検出数とレーダ装置1及び他車両間の検出距離とに基づき、上記演算式を従って特徴量を導出し、導出した特徴量を車種判別閾値と比較することで他車両の車種が普通車であるのか大型車であるのかを判定する。或る他車両について、特徴量を導出する際の検出距離は、当該他車両に対応するクラスタ領域の中心とレーダ装置1との距離であっても良いし、他車両の車尾角又は車頭角が推定済みであるならば当該他車両の車尾角又は車頭角とレーダ装置1との距離であっても良い。
図14及び図15に示す例では、クラスタ領域CLS2内の反射点の個数(即ち前処理部41にて検出されてクラスタ領域CLS2内に含まれることになった反射点の個数)と、レーダ装置1及び他車両CR2間の検出距離(即ちレーダ装置1とクラスタ領域CLS2の中心又は車尾角RC2との距離)とに基づき、他車両CR2の特徴量を導出する。そして、他車両CR2の特徴量の値を、上述の第1の傾向及び第2の傾向を考慮して定められた車種判別閾値と比較し、他車両CR2の特徴量が車種判別閾値以上であれば他車両CR2が大型車であると判定し、そうでなければ他車両CR2が普通車であると判定する。
他車両CR1についても同様である。即ち、クラスタ領域CLS1内の反射点の個数(即ち前処理部41にて検出されてクラスタ領域CLS1内に含まれることになった反射点の個数)と、レーダ装置1及び他車両CR1間の検出距離(即ちレーダ装置1とクラスタ領域CLS1の中心又は車尾角RC1との距離)とに基づき、他車両CR1の特徴量を導出する。そして、他車両CR1の特徴量の値を車種判別閾値と比較し、他車両CR1の特徴量が車種判別閾値以上であれば他車両CR1が大型車であると判定し、そうでなければ他車両CR1が普通車であると判定する。但し、本実施例で重要となるのは他車両CR1及びCR2間の空き領域であるので、他車両CR1の車種判定は行われなくても良い。
占有領域推定部45は、車種判定が行われた他車両ごとに、当該他車両が普通車であると判定した場合には当該他車両の車長、車幅が、夫々、所定の車長LA(例えば3m)、所定の車幅WA(1.8m)であると推定し、当該他車両が大型車であると判定した場合には当該他車両の車長、車幅が、夫々、車長LAよりも大きな所定の車長LB(例えば6m)、車幅WAよりも大きな所定の車幅WB(2.2m)であると推定する。そして、占有領域推定部45は、各他車両の車種の判定結果を部分領域推定部44の推定結果と組み合わせて各他車両の占有領域を推定する。
図17(a)に、他車両CR1が普通車であると判定され且つ他車両CR2が大型車であると判定されたときに推定された他車両CR1の占有領域711及び他車両CR2の占有領域712を示す。占有領域711及び712の夫々はX軸に平行な2辺とY軸に平行な2辺を有する矩形領域として推定される。占有領域711はY軸方向において車長LA分の長さを有すると共にX軸方向において車幅WA分の長さを有し、タイミングtAにおいて、占有領域711の4頂点の内、原点Oに最も近い頂点に推定された車尾角RC1が配置される。占有領域712はY軸方向において車長LB分の長さを有すると共にX軸方向において車幅WB分の長さを有し、タイミングtAにおいて、占有領域712の4頂点の内、原点Oに最も近い頂点に推定された車尾角RC2が配置される。タイミングtAにおいて、空き領域推定部46は、占有領域711及び712間に挟まれた領域(占有領域712と車尾角RC1とに挟まれた領域)を空き領域713として推定することができる。
図17(b)に、他車両CR1及びCR2が共に普通車であると判定されたときに推定された他車両CR1の占有領域721及び他車両CR2の占有領域722を示す。占有領域721及び722の夫々はX軸に平行な2辺とY軸に平行な2辺を有する矩形領域として推定される。占有領域721はY軸方向において車長LA分の長さを有すると共にX軸方向において車幅WA分の長さを有し、タイミングtAにおいて、占有領域721の4頂点の内、原点Oに最も近い頂点に推定された車尾角RC1が配置される。占有領域722はY軸方向において車長LA分の長さを有すると共にX軸方向において車幅WA分の長さを有し、タイミングtAにおいて、占有領域722の4頂点の内、原点Oに最も近い頂点に推定された車尾角RC2が配置される。タイミングtAにおいて、空き領域推定部46は、占有領域721及び722間に挟まれた領域(占有領域722と車尾角RC1とに挟まれた領域)を空き領域723として推定することができる。
占有領域推定部45は、任意の他車両について、他車両の占有領域を推定した後は、その占有領域のY軸方向及びX軸方向の長さを示す形状情報を作成及び保持し、以後は、当該他車両の車長及び車幅が、対応する形状情報に示されたY軸方向及びX軸方向の長さと一致するとみなす。
但し、タイミングtAの後において、自車両CR0及び他車両CR2間の位置関係が変化して他車両CR2が自車両CR0の左斜め後方に位置し、結果、そのときの受信部3の受信信号から他車両CR2の車頭角を直接的に推定できたときには、第1実施例で述べた方法に従い、他車両CR2について推定した車頭角及び車尾角間の距離に基づいて他車両CR2の占有領域を再度推定し、保持されていた形状情報を再度の推定結果に基づいて修正しても良い。他車両CR1についても同様である。そして、形状情報の修正が行われた場合には、その修正内容に基づく機械学習により、占有領域推定部45において、上記の車種判別閾値を修正するようにしても良い。例えば、修正前の車種判別閾値を用いて他車両CR2の車長が車長LBであると推定した場合において、その後の車頭角の推定を経て、他車両CR2の車長が車長LA程度であると判断された場合には、車種判別閾値を増大方向に補正しても良い(但し、車種判別閾値の増大により、車種判定の対象となる他車両が普通車と判定され易くなると仮定)。
本実施例の方法によれば、他車両の車尾角しか直接的に推定できていない場合であっても、他車両の占有領域を推定することができ、占有領域の推定を通じて複数の他車両間の空き領域を推定することが可能となる。そして例えば、推定した空き領域が自車両CR0を安全に割り込ませることが可能な程度に大きいのであれば、空き領域に自車両CR0を移動させるように運転制御を行うといったことが可能となる。
尚、上述の特徴量の導出は必須ではない。例えば、他車両についての反射点の検出数とレーダ装置1及び他車両間の検出距離とを入力情報として受けて、他車両の車種が何であるかを示す情報を出力するルックアップテーブルを用意しておいても良く、この場合には、当該ルックアップテーブルを用いて他車両の車種の判定処理が実現される。
また、他車両の車種を普通車と大型車の2種類に分類判定する方法を上述したが、他車両の車種を3種類以上の中から分類判定するようにしても良い。
また、図14及び図15に示す例では、タイミングtAにおいて、他車両CR2だけでなく他車両CR1の全体も検知領域FOV内に収まっていることを想定したが、他車両CR1については車尾だけが検知領域FOV内に収まっていて他車両CR1の車頭は検知領域FOV外に位置していても良い。この場合でも、他車両CR1の車尾角は推定可能であるため、他車両CR1及びCR2間の空き領域も推定可能となる。
本実施例では、タイミングtAにおいて、他車両CR1及びCR2が自車両CR0の左斜め前方に位置していることを想定したが故に他車両CR1及びCR2の部分領域として車尾領域(RR1及びRR2;図15参照)が推定されているが、仮に、タイミングtAにおいて、他車両CR1及びCR2が自車両CR0の左斜め後方に位置している場合には、他車両CR1及びCR2の部分領域として車尾領域の代わりに車頭領域が推定される変形例が想定される。但し、タイミングtAにおいて、他車両CR1及びCR2が検知領域FOV内に位置していることが必要となるため、検知領域FOVが自車両CR0の左斜め後方に向けて広がっている場合などに、当該変形例は有効である。当該変形例においては、車尾角の代わりに各他車両の車頭角が推定され、車頭角の位置を基準に各他車両の車種判定を介して各他車両の占有領域が推定される。この場合においても、各他車両の車種の判定方法、その判定結果を利用した各他車両の占有領域の推定方法及び他車両間の空き領域の推定方法は上述したものと同様となる(他車両の両端の内、車頭と車尾を逆転させて考えれば足る)。
<<第4実施例>>
第4実施例を説明する。自車両CR0に複数のレーダ装置を設置するようにしても良い。第4実施例では、自車両CR0の左側面前方部と左側面後方部に1台ずつ、上述のレーダ装置1と同じ構成を有するレーダ装置が設置されていることを想定する。第4実施例では、2台のレーダ装置を区別するべく、図18に示すように、自車両CR0の左側面前方部、左側面後方部に設置されたレーダ装置を、夫々、符号“1F”、“1R”にて参照し、レーダ装置1F、1Rの検知領域を、夫々、符号“FOVF”、“FOVR”にて参照する。
レーダ装置1Fの検知領域FOVFは、第3実施例までで述べたレーダ装置1の検知領域FOVと同じものであり、レーダ装置1Fから自車両CR0の左斜め前方に向けて広がる概ね扇型状の領域である。レーダ装置1Fは、主に自車両CR0の左斜め前方に向けて送信波TWを送信し、検知領域FOVF内に存在する物標からの反射波RWを受信することで、検知領域FOVF内に存在する物標についてのデータ(物標データ及び反射点データを含む)を得ることができる。
レーダ装置1Rの検知領域FOVRは、レーダ装置1Rから自車両CR0の左斜め後方に向けて広がる概ね扇型状の領域である。レーダ装置1Rは、主に自車両CR0の左斜め後方に向けて送信波TWを送信し、検知領域FOVR内に存在する物標からの反射波RWを受信することで、検知領域FOVR内に存在する物標についてのデータ(物標データ及び反射点データを含む)を得ることができる。
図2(b)に示す領域R1~R4との関係において検知領域FOVF及びFOVRについて説明を加える。尚、上述したように、X軸及びY軸並びに領域R1~R4は、レーダ装置1Fの設置位置を原点Oにとって定義されるものである。
検知領域FOVFは左前方領域R1を内包し、左後方領域R2の内、左前方領域R1に近い側の一部の領域も内包する。更に、検知領域FOVFは、右前方領域R3の内、左前方領域R1に近い側の一部の領域も内包しうる。但し、レーダ装置1Fからの距離が所定の検知距離以上となる領域は検知領域FOVFに含まれない。
検知領域FOVRは左後方領域R2を内包し(但し部分的に欠けがある)、左前方領域R1の内、左後方領域R2に近い側の一部の領域も内包する。更に、検知領域FOVRは、右後方領域R4の内、左後方領域R2に近い側の一部の領域も内包しうる。但し、レーダ装置1Rからの距離が所定の検知距離以上となる領域は検知領域FOVRに含まれない。
図19は、第4実施例に係る車両制御システムSYSの構成ブロック図である。車両制御システムSYSは、レーダ装置1F及び1Rと、レーダ装置1F及び1Rに接続されたレーダ統合ECU(Electronic Control Unit)6と、レーダ統合ECU6に接続された車両制御ECU7とを備え、自車両CR0に搭載される。
レーダ装置1F及び1Rは、夫々に、受信部3の受信信号に基づく情報(以下、レーダ計測結果情報と称する)をレーダ統合ECU6に伝達することができる。レーダ計測結果情報は、受信部3の受信信号に基づき信号処理部4にて得られる任意の情報(例えば他車両の占有領域の位置を示す情報や他車両の形状情報)を含んでいて良い。尚、車両制御システムSYSを構成する場合、推定処理部42にて実現されると述べた機能の一部をレーダ統合ECU6にて実現するようにしても良い。例えば、車両制御システムSYSにおいては、空き領域の推定はレーダ装置1F及び1Rではなく、レーダ統合ECU6で実行されて良い。
レーダ統合ECU6は、レーダ装置1F及び1Rから提供されるレーダ計測結果情報を統合し、その統合結果を示すレーダ統合情報を車両制御ECU7に伝達する。
レーダ装置1Fからのレーダ計測結果情報は、検知領域FOVF内の物標に関わる位置を、レーダ装置1Fの配置位置を原点OにとったXY座標面上において示す。これに対し、レーダ装置1Rからのレーダ計測結果情報は、検知領域FOVR内の物標に関わる位置を、レーダ装置1Rの配置位置を原点O’にとったX’Y’座標面上において示す(X’Y’座標面については図示せず)。X’Y’座標面は原点O’にて互いに直交するX’軸及びY’軸から成る二次元座標面であり、X’軸及びY’軸は、夫々、X軸及びY軸を、レーダ装置1F及び1R間の距離だけ後方にシフトした軸に相当する。レーダ統合ECU6は、予め認識しているレーダ装置1F及び1R間の幾何学的な位置関係に基づき、レーダ装置1RからのX’Y’座標面上のレーダ計測結果情報をXY座標面上のレーダ計測結果情報に変換し、変換後のレーダ計測結果情報と、レーダ装置1FからのXY座標面上のレーダ計測結果情報とを統合することでレーダ統合情報を生成する。
レーダ装置1Fと同様に、レーダ装置1Rにおいても上述の部分領域推定処理を実行可能であって良い。即ち、或る他車両に関し、他車両がレーダ装置1Rの左斜め後方に位置し且つ検出領域FOVR内に収まっている場合、レーダ装置1Rは他車両に対しX’Y’座標面上で部分領域推定処理を実行することによりX’Y’座標面上で他車両の車頭領域及び車頭角(車頭領域を形成する4頂点の内、レーダ装置1Rに最も近い頂点に相当)を推定できて良い。同様に、他車両がレーダ装置1Rの左斜め前方に位置し且つ検出領域FOVR内に収まっている場合、レーダ装置1Rは他車両に対しX’Y’座標面上で部分領域推定処理を実行することによりX’Y’座標面上で他車両の車尾領域及び車尾角(車尾領域を形成する4頂点の内、レーダ装置1Rに最も近い頂点に相当)を推定できて良い。
検知領域FOVF及びFOVRを含む自車両CR0の周辺領域において1以上の他車両が存在していて、各他車両の車頭領域、車頭角、車尾領域、車尾角及び占有領域がレーダ装置1F又は1Rにて推定されている場合、レーダ統合情報により、自車両CR0の周辺領域において車頭領域、車頭角、車尾領域、車尾角及び占有領域が特定され、その特定内容に基づき空き領域も特定される。また、レーダ装置1F又は1Rにて或る他車両の形状情報が作成されたとき、レーダ統合ECU6において当該他車両に対応付けて形状情報が保持されて良い。
車両制御ECU7は、レーダ統合情報に基づき自車両CR0の運転制御を行う。自車両CR0の運転制御には、自車両CR0の走行速度の制御(加速、減速の制御を含む)、及び、自車両CRの移動方向の制御が含まれる。自車両CR0の運転者は、自車両CR0に設けられた操作部材(ステアリング、アクセルペダル、ブレーキベダル等)を手動操作することで自車両CR0を運転することができるが、レーダ統合情報に基づく自車両CR0の運転制御は、運転者の手動運転操作に依存せずに実行される自動運転制御であっても良いし、運転者の手動運転操作を支援する運転支援制御であっても良い。
例えば、第2実施例に係る図12に示す状況において(図13も適宜参照)、第2実施例のレーダ装置1に相当するレーダ装置1Fにより、他車両CR1の占有領域651、他車両CR2の車頭領域652及び空き領域653が推定され、それらの推定結果を含むレーダ計測結果情報がレーダ統合部6に提供される。そのレーダ計測結果情報を含むレーダ統合情報に基づき、車両制御ECU7は、空き領域653に自車両CR0を割り込ませることができるかを判断し、割り込み可能と判断した場合には、車線LN1における他車両CR1及びCR2間の空き領域に自車両CR0を移動させる運転制御を行う。尚、この運転制御の実現に際しては、レーダ装置1Rは不要である。
また例えば、第3実施例に係る図14に示す状況において(図17(a)及び(b)も適宜参照)、第3実施例のレーダ装置1に相当するレーダ装置1Fにより、他車両CR1の占有領域(711又は721)と他車両CR2の占有領域(712又は722)と他車両CR1及びCR2間の空き領域(713又は723)とが推定され、それらの推定結果を含むレーダ計測結果情報がレーダ統合部6に提供される。そのレーダ計測結果情報を含むレーダ統合情報に基づき、車両制御ECU7は、他車両CR1及びCR2間の空き領域(713又は723)に自車両CR0を割り込ませることができるかを判断し、割り込み可能と判断した場合には、車線LN1における他車両CR1及びCR2間の空き領域に自車両CR0を移動させる運転制御を行う。尚、この運転制御の実現に際しては、レーダ装置1Rは不要である。
第2実施例及び第3実施例に示す状況に関わる車両制御システムSYSの動作の流れを、図20を参照して説明する。図12又は図14に示すような状況を想定し、車線LN1上を走行する2台の他車両の内、前方側に位置する他車両を前方車両と称し、後方側に位置する他車両を後方車両と称する。車線LN1において前方車両と後方車両は互いに隣接している。即ち、前方車両と後方車両との間に他の物標は存在しないものとする。図12又は図14の例では、他車両CR1、CR2が、夫々、前方車両、後方車両に相当する。図20の動作の実現にあたり、レーダ装置1Fに加えてレーダ装置1Rを利用することも可能であるが、まず、レーダ装置1Fのみを利用する場合の動作を説明する。
図20の動作は車両制御システムSYSにより実行されるステップS11~S17の処理から成る。まずステップ11において、レーダ装置1Fにより、上記標準偏差を利用した部分領域推定処理が実行され、各他車両の車尾領域及び車尾角並びに各他車両の車頭領域及び車頭角の全部又は一部が推定される。状況によっては、それらが一切推定できないこともありえる。
ステップS11に続くステップS12において、前方車両の車尾角及び後方車両の車頭角を推定できたかが確認され、それらが推定できた場合に限りステップS13に進む一方で、そうでない場合にはステップS14に進む。第2実施例に示すタイミングt1及びt2での動作が行われたとき(図12参照)、ステップS12からステップS13に進むことになる。
ステップS13において、レーダ装置1F又はレーダ統合ECU6により、前方車両と後方車両との車間距離が推定され、その後、ステップS17に進む。ステップS13で推定される車間距離は、第2実施例の方法により推定される空き領域のY軸方向の長さに相当する。
ステップS14において、前方車両及び後方車両の各車尾角を推定できたかが確認される。前方車両及び後方車両の各車尾角を推定されている場合にはステップS14からステップS16に進むが、そうでない場合にはステップS15に進む。第3実施例に示す動作が行われたとき、ステップS14からステップS16に進むことになる。
ステップS15では、レーダ装置1F又はレーダ統合ECU6により、前方車両と後方車両との車間距離が推定不能と判断されて、図20の動作を終える。
ステップS16では、第3実施例で示した方法により、後方車両の車種の判定を介して後方車両の車長が推定され、後方車両の推定車長を用いてレーダ装置1F又はレーダ統合ECU6により前方車両と後方車両との車間距離が推定される。その後、ステップS17に進む。ステップS16で推定される車間距離は、第3実施例の方法により推定される空き領域のY軸方向の長さに相当する。
ステップS13又はS16にて推定された前方車両及び後方車両間の車間距離を、以下、便宜上、記号“dEST”にて参照する。ステップS17に進む場合、推定された車間距離dESTと、XY座標面上における前方車両及び後方車両間の空き領域の位置(中心位置)と、自車両CR0から見た前方車両及び後方車両の相対速度と、が少なくともレーダ統合情報に含まれている。前方車両の相対速度は前方車両に対して検知された各反射点の相対速度にて特定され、後方車両の相対速度は後方車両に対して検知された各反射点の相対速度にて特定される。前方車両及び後方車両間における相対速度の差は前方車両及び後方車両間の速度差であり、その速度差に応じて時間経過と共に前方車両及び後方車両間の車間距離が車間距離dESTから変動することが見込まれる。
ステップS17において、車両制御ECU7は、推定された車間距離dESTと、前方車両及び後方車両間の速度差に基づく前方車両及び後方車両間の車間距離の時間変動率と、空き領域の中心に自車両CR0が到達するまでの予測時間と、に基づき、前方車両及び後方車両間の空き領域に対する自車両CR0の割り込み可否を判定する。空き領域の中心に自車両CR0が到達するまでの予測時間は、空き領域の中心に向けて自車両CR0を移動させる運転制御を行ったと仮定した場合に自車両CR0を空き領域の中心にまで移動させるためにかかる時間の予測値であり、その予測は、必要に応じ、自車両CR0の速度や、空き領域及び自車両CR0間の位置関係を参照して実行される。
ステップS17にて、割り込みが不可であると判定された場合、車両制御ECU7は、空き領域の中心に向けて自車両CR0を移動させる運転制御を行わない。ステップS17にて、割り込みが可能であると判定された場合、車両制御ECU7は、空き領域の中心に向けて自車両CR0を移動させる運転制御を実行する、又は、その運転制御の実行を許可する。例えば、運転者は車両制御システムSYSに対し左車線変更指示を入力することができて良い。車両制御ECU7は、例えば、自車両CR0に設置されたウィンカレバーに対し自車両CR0を左側に寄せることに対応する操作が入力されたとき、左車線変更指示が入力されたと判断する。そして、左車線変更指示が入力された場合において、ステップS17にて割り込みが可能と判断された場合、車両制御ECU7は、空き領域の中心に向けて自車両CR0を移動させる運転制御を実行して良い。
上述したように、レーダ装置1Fに加えてレーダ装置1Rを利用して図20の動作を実現することも可能である。この場合、ステップS11の推定動作をレーダ装置1F及びレーダ装置1Rが協働して実行して良い。即ち例えば、図21に示す如く、或る特定のタイミングにおいて、前方車両がレーダ装置1Fの左斜め前方に位置していて検出領域FOVF内に収まり且つ後方車両がレーダ装置1Rの左斜め後方に位置していて検出領域FOVR内に収まっている場合、レーダ装置1Fは前方車両に対しXY座標面上で部分領域推定処理を実行することにより前方車両の車尾領域及び車尾角を推定することができ、これと同時に、レーダ装置1Rは後方車両に対しX’Y’座標面上で部分領域推定処理を実行することにより後方車両の車頭領域及び車頭角を推定することができる。
そうすると、ステップS12からステップS13に進むことになる。そのステップS13において、レーダ統合ECU6は、レーダ装置1F及び1Rの推定内容を統合して前方車両と後方車両との車間距離(空き領域)を推定すれば良い。ここで推定される車間距離は、レーダ装置1Fにて推定された前方車両の車尾角のX座標値と、レーダ装置1Rにて推定された後方車両の車頭角のX座標値との差で表される。
このように、レーダ装置1Fのみを用いる場合においてステップS13にて車間距離(空き領域)を推定するためには上記標準偏差に基づく部分領域推定処理を複数のタイミングで実行する必要があるが(図12参照)、レーダ装置1F及び1Rの双方を用いれば、上記標準偏差に基づく部分領域推定処理を単一のタイミングで行えば足る場合がある。
本実施例によれば、渋滞時などにおける車列割り込みを、運転者の手動運転操作に依らず自動で安全に行う、といったことが可能となる。
<<第5実施例>>
第5実施例を説明する。第5実施例では、第4実施例で示した車両制御システムSYSの他の具体的動作例を説明する。
図22に示す如く、タイミングtB1において、自車両CR0が車線LN0上を前方に向けて走行し、且つ、他車両CR1~CR5が車線LN1上を前方に向けて走行していることを想定する。車線LN1上の他車両CR1~CR5の内、他車両CR1が最も先頭に位置し、他車両CR1、CR2、CR3、CR4、CR5の順に並んでいる(説明の便宜上、この順番は不変であると考える)。つまり、他車両CR1及びCR2の組み合わせに注目した場合、他車両CR1及びCR2は前方車両及び後方車両に相当し、他車両CR2及びCR3の組み合わせに注目した場合、他車両CR2及びCR3は前方車両及び後方車両に相当し、他車両CR3及びCR4の組み合わせに注目した場合、他車両CR3及びCR4は前方車両及び後方車両に相当し、他車両CR4及びCR5の組み合わせに注目した場合、他車両CR4及びCR5は前方車両及び後方車両に相当する。車線LN1上において、他車両CR1及びCR2間、他車両CR2及びCR3間、他車両CR3及びCR4間、他車両CR4及びCR5間の夫々に、他の物標は存在しないものとする。各タイミングにおいて、レーダ装置1Fの送信波TWを反射する物標には、他車両CR1~CR5の何れか1以上が含まれ得る。レーダ装置1Rについても同様である。
図22に示す如く、タイミングtB1において他車両CR1が自車両CR0の左斜め後方に存在している状態を基準として、自車両CR0が減速してゆき、結果、時間経過と共に、他車両CR1~CR5から成る車列全体に対し自車両CR0がX軸に沿って相対的に後方側に移動してゆく状況を想定する。
図23を参照する。他車両CR1~CR5から成る車列全体に対し自車両CR0が相対的にX軸に沿って後方側に移動してゆく過程において、部分領域推定処理により、他車両CR1の車頭領域及び車頭角並びに車尾領域及び車尾角が推定されて他車両CR1の形状情報が取得される。上記過程において自車両CR0が車列全体に対して更に後方側に移動すると、他車両CR2の車頭領域及び車頭角並びに車尾領域及び車尾角が推定されて他車両CR2の形状情報が取得され、その後、他車両CR3の車頭領域及び車頭角並びに車尾領域及び車尾角が推定されて他車両CR3の形状情報が取得される。タイミングtB2は、他車両CR3の車尾領域及び車尾角の推定が完了したタイミングである。
図23に示す状況では、他車両CR1及びCR2間の車間距離が、それらの間に自車両CR0を割り込ませることが不可能又は不適切な程度に狭い。このため、車両制御ECU7は、他車両CR1及びCR2間の空き領域に対する自車両CR0の割り込みは不可能であると判定し、他車両CR1の車尾領域及び車尾角並びに他車両CR2の車頭領域及び車頭角の推定後も自車両CR0を上記車列全体に対して後方側に移動させる。また、他車両CR2及びCR3間の車間距離も、それらの間に自車両CR0を割り込ませることが不可能又は不適切な程度に狭い。このため、車両制御ECU7は、他車両CR2及びCR3間の空き領域に対する自車両CR0の割り込みは不可能であると判定し、他車両CR2の車尾領域及び車尾角並びに他車両CR3の車頭領域及び車頭角の推定後も自車両CR0を上記車列全体に対して後方側に移動させる。
一方、図23に示す状況では、他車両CR3及びCR4間の車間距離がそれらの間に自車両CR0を安全に割り込ませることが可能な程度に広いとする。そうすると、車両制御ECU7は、他車両CR3の車尾領域及び車尾角並びに他車両CR4の車頭領域及び車頭角の推定後、他車両CR3及びCR4間の空き領域に対する自車両CR0の割り込みは可能であると判定して、車線LN1における他車両CR3及びCR4間の空き領域に自車両CR0を移動させる運転制御を行う。割り込み可否の判定方法は第4実施例で示した通りである。
各他車両の車頭領域及び車頭角の推定並びに車尾領域及び車尾角の推定は、レーダ装置1F単体にて行われても良いし、レーダ装置1R単体にて行われても良いし、レーダ装置1F及び1Rの双方が協働することで実現されても良い。特に、タイミングtB2における他車両CR4の車頭領域及び車頭角の推定は、レーダ装置1Rにて行われても良い。
尚、他車両CR3及びCR4間の車間距離が十分に大きく、タイミングtB2において、検知領域FOVR内に他車両を含む物標が存在しないことがレーダ装置1Rにて検知された場合、車両制御ECU7は、他車両CR3の後方における空き領域は十分に広いと判断して、その空き領域に自車両CR0を移動させる運転制御を行うことができる。この場合には、車両CR4の車頭領域及び車頭角の推定は行われない又は行われなくて良い。レーダ装置1Rは部分領域の推定機能を有していなくても良く、単に、検知領域FOVR内の物標の有無及び検知領域FOVR内の物標の存在位置を計測するレーダ装置であっても良い。
他車両CR1~CR5から成る車列全体に対し自車両CR0を相対的に後方側に移動させるための減速、及び、その減速を経て車線LN1における他車両CR3及びCR4間の空き領域に自車両CR0を移動させる運転制御は、車両制御システムSYSに対して上述の左車線変更指示が入力されたことに応答して車両制御ECU7により実現されるものであって良い。但し、減速自体は運転者の手動運転操作にて実現されるものであっても良い。
本実施例によれば、渋滞時などにおける車列割り込みを、運転者の手動運転操作に依らず自動で安全に行う、といったことが可能となる。
尚、ここでは、他車両CR1~CR5が前方に向けて走行していることを想定したが、各他車両は駐車(停止)していると考えても良い。この場合、タイミングtB1及びtB2間において自車両CR0は後方に向けて走行してゆくことになり、他車両CR3及びCR4間の空き領域への自車両CR0の移動は、いわゆる縦列駐車のための移動となる。即ち、本実施例の方法を用いれば、車両制御システムSYSにより、空き領域の探索が自動的に行われて駐車可能領域への自動駐車が可能となる。
<<第6実施例>>
第6実施例を説明する。
上述の幾つかの実施例では、自車両CR0が他車両に対して前方側に位置している状態を基準にして考え、自車両CR0を減速してゆくことで(縦列駐車の場合には、自車両CR0を後方に移動させていくことで)他車両に対し自車両CR0の位置を相対的に後退させていくことが想定されている。この場合には、上述の如く、他車両の車尾領域及び車尾角よりも先に他車両の車頭領域及び車頭角が推定されることになる(例えば図9(a)及び(b)参照)。
しかしながら、自車両CR0が他車両に対して後方側に位置している状態が基準となる場合には、自車両CR0を加速してゆくことで(縦列駐車の場合には、自車両CR0を前進させることで)自車両CR0を基準状態よりも他車両に向けて近づける又は自車両CR0を他車両の前方に移動させるといったことが想定されることになり、この場合には、他車両の車頭領域及び車頭角よりも先に他車両の車尾領域及び車尾角が推定されることになる。
上記式(1)~(4)に基づく標準偏差演算を利用した部分領域の推定は、1つの計測周期にて検知される反射点の個数が或る程度大きいときに高い精度を有する。狭帯域レーダ装置がレーダ装置として用いられる場合など、1つの計測周期にて検知される反射点の個数が十分でないときには、複数の計測周期にて検知される反射点を組み合わせて反射点の個数を仮想的に増やすことで、標準偏差演算を利用した部分領域の推定精度を高めるようにしても良い。
車両制御システムSYSに2台のレーダ装置(1F、1R)が設けられる例を上述したが、車両制御システムSYSにレーダ装置を1台だけ設けることも可能であるし、3台以上設けることも可能である。車両制御システムSYSに設けられる各レーダ装置は自車両CR0の対応する所定位置に設置される。車両制御システムSYSにレーダ装置が1台だけ設けられる場合でも第4実施例に示した方法により、他車両間の空き領域の推定や空き領域に自車両CR0を移動させる運転制御は可能である。車両制御システムSYSにレーダ装置が1台だけ設けられる場合には、レーダ統合ECU6は削除されて良い。
車両制御システムSYS内の何れかのレーダ装置により他車両CR1の形状情報が一旦作成されると、他車両CR1が車両制御システムSYS内の何れかのレーダ装置により物標として検出され続けている限り、他車両CR1に対して作成された形状情報は保持され続け、保持された形状情報にて定義される車長及び車幅を他車両CR1が有するとした上で他車両CR1はレーダ装置の受信信号に基づきXY座標面上で追跡される。他車両CR1以外の他車両についても同様である。
レーダ統合ECU6は、車両制御システムSYSに設けられた各レーダ装置からのレーダ計測結果情報を統合して、自車両CR0の周辺における各物標の占有領域及び空き領域の位置を動的に示したグリッドマップを生成しても良い。この際、上記追跡の結果を利用すれば、或るタイミングにおけるグリップマップは、反射波RWの過去の受信信号に基づき推定された各他車両の車長及び車幅をも定義した地図情報となり、形状情報を蓄積しつつ追跡処理を行ってゆくことで、自車両CR0の周辺の正確な占有領域及び空き領域をリアルタイムに示したグリッドマップを作成可能である。
例えば、自車両CR0の前方に検知領域を有する前方レーダ装置(不図示)を、レーダ装置1F及び1Rとは別に車両制御システムSYSに追加し、前方レーダ装置の検知距離(Y軸方向における検知領域の長さ)を相応に長いもの(例えば100m)としておく。そして、レーダ装置1Fの検知領域と前方レーダ装置の検知領域に部分的に重なり領域を持たせておけば、レーダ装置1F及び前方レーダ装置での反射波RWの受信信号に基づき、それらの検知領域を跨いでの物標の追跡が可能となり、レーダ統合ECU6において、それらの検知領域をカバーする広面積のグリッドマップを作成することも可能となる。グリッドマップは、車両制御システムSYSに設けられた全てのレーダ装置の検知領域をカバーするように形成されても良い。
このようなグリッドマップを作成して自車両CR0周辺の占有領域及び空き領域を一元管理すれば、複数の空き領域を繋ぎ合わせた走行ルートを探索するといったことも可能となり、探索した走行ルートに沿って自車両CR0を走行させるといった運転制御も実現可能となる。グリッドマップを用いて、上述したような車列割り込みや縦列駐車を自動的に且つ安全に行うことができる他、発展的には、自車両CR0の周辺車両の分合流推定、自車両CR0の周辺の渋滞推定なども可能となりうる。
車両制御ECU7にて実現される機能をプログラムで記述して、当該プログラムを車両制御ECU7に搭載可能なメモリに記憶させておき、車両制御ECU7内のマイクロコンピュータ上で当該プログラムを実行することで、車両制御ECU7の機能を実現しても良い。レーダ統合ECU6についても同様である。
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。