JP7099247B2 - 活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ用ロジン変性樹脂とその製造方法、活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ用ワニス、活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ、及び印刷物 - Google Patents
活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ用ロジン変性樹脂とその製造方法、活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ用ワニス、活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ、及び印刷物 Download PDFInfo
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例えば、特許文献1は、ロジン酸類と、α,β-不飽和カルボン酸との付加反応によって得られる、多価カルボン酸を含むポリエステル樹脂を開示している。しかし、開示された樹脂を使用したインキは、流動性不足になり、印刷物の光沢性が不十分である傾向がある。
また、特許文献2は、ロジン酸類と、α,β-不飽和カルボン酸との付加反応によって得られる、多価カルボン酸と、水素添加ビスフェノールを含むポリエステル樹脂を開示している。しかし、開示された樹脂はアルコール成分として、シクロヘキサン環を2つ含む水素添加ビスフェノールAを主に含むため、プラスチック基材への密着性と、印刷適性の両立が不十分である傾向がある。
このように、活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ用のバインダー樹脂について、種々の検討が行われているが、活性エネルギー線硬化型平版印刷インキに要求される印刷適性及び印刷皮膜特性において十分に満足できるものはなく、さらなる改善が望まれている。
前記ロジン酸類(A)を、全配合量を基準として35~60質量%含み、
前記1つのシクロヘキサン環を含有するジオール(c)を、全配合量を基準として10~45質量%含み、
重量平均分子量が10,000未満である、活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ用ロジン変性樹脂に関する。
ロジン酸類(A)に、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)を付加させる反応を行う工程1と、
前記工程1で得た反応混合物と、1つのシクロヘキサン環を含有するジオール(c)を含むポリオール(C)とのエステル化反応を行う工程2と
を含み、
前記ロジン酸類(A)を、全配合量を基準として35~60質量%含み、
前記1つのシクロヘキサン環を含有するジオール(c)を、全配合量を基準として10~45質量%含み、
重量平均分子量が10,000未満である、活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ用ロジン変性樹脂の製造方法に関する。
<ロジン酸類(A)>
本発明のロジン変性樹脂を得るために用いるロジン酸類(A)とは、環式ジテルペン骨格を有する一塩基酸を指す。ロジン酸、不均化ロジン酸、水添ロジン酸、または前記化合物のアルカリ金属塩等を表し、具体的には、共役二重結合を有するアビエチン酸、およびその共役化合物である、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマル酸や、共役二重結合を有さないピマル酸、イソピマル酸、サンダラコピマル酸、及びデヒドロアビエチン酸等が挙げられる。またこれらのロジン酸類(A)を含有する天然樹脂として、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等が挙げられる。
本発明のロジン変性樹脂を得るために用いるα,β-不飽和カルボン酸またはその酸無水物(B)としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等およびこれらの酸無水物が例示される。ロジン酸類(A)との反応性を鑑みると、好ましくはマレイン酸またはその酸無水物である。
本発明のロジン変性樹脂を得るために、ロジン酸類(A)およびα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)に加えて、その他の有機酸類を、単独または2種類以上用いることもできる。
その他の有機酸類の配合量は、樹脂原料の全配合量を基準として0~30質量%であることが好ましく、0~20質量%であることが更に好ましい。
酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、及びベヘン酸等の飽和脂肪酸、
クロトン酸、リンデル酸、ツズ酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、ガドレイン酸、ゴンドレン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、リノエライジン酸、リノレン酸、及びアラキドン酸等の不飽和脂肪酸、
安息香酸、メチル安息香酸、ターシャリーブチル安息香酸、ナフトエ酸、オルトベンゾイル安息香酸等の芳香族一塩基酸、
共役リノール酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸、カレンジン酸等の共役二重結合を有するが環式ジテルペン骨格を有さない化合物
等が挙げられる。
1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、4-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、およびこれらの酸無水物等が挙げられる。
シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸などのアルケニルコハク酸、o-フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、およびこれらの酸無水物等が挙げられる。
ポリオール(C)は、ロジン酸類(A)に含まれる共役二重結合を有する有機酸とα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)とのディールスアルダー反応によって得られる化合物、ロジン酸類(A)のうち共役二重結合を有さない有機酸、及びその他の有機酸、それぞれにおけるカルボン酸との反応によってエステル結合を形成する。
本発明のロジン変性樹脂は、ポリオール(C)として、1つのシクロヘキサン環を含有するジオール(c)を、樹脂原料の全配合量を基準として10~45質量%含むことで、得られるロジン変性樹脂に適度な柔軟性が付与され、そのロジン変性樹脂を用いたインキの優れた印刷適性と、密着性の発現及び向上の両立が可能となる。
本発明のロジン変性樹脂を得るために用いる1つのシクロヘキサン環を含有するジオール(c)としては、1,2-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
本発明のロジン変性樹脂を得るために、1つのシクロヘキサン環を含有するジオール(c)以外のポリオールを、単独または2種類以上用いることもできる。
(c)以外のポリオールの具体的な例としては以下が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,2-デカンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,2-テトラデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,2-ヘキサデカンジオール等。
2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオ-ル、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ジメチロールオクタン、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール等。
1,2-シクロヘプタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、水添ビスフェノールS、水添カテコール、水添レゾルシン、水添ハイドロキノン等。
グリセリン、トリメチロ-ルプロパン、ペンタエリスリトール、1,2,6-ヘキサントリオール、3-メチルペンタン-1,3,5-トリオール、ヒドロキシメチルヘキサンジオール、トリメチロールオクタン、ジグリセリン、ジトリメチロ-ルプロパン、ジペンタエリスリト-ル、ソルビトール、イノシトール、トリペンタエリスリトール等の直鎖状、分岐状、及び環状の多価アルコール等。
ポリエチレングリコール(n=2~20)、ポリプロピレングリコール(n=2~20)、ポリテトラメチレングリコール(n=2~20)等のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等。
本発明のロジン変性樹脂は、(1)ロジン酸類(A)と、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)との反応、並びに(2)上記(1)の反応で得た反応混合物、及びその他の有機酸類と、1つのシクロヘキサン環を含有するジオール(c)を含むポリオール(C)との反応を経て製造される。
上記(1)の反応は、ロジン酸類(A)中の共役二重結合(ジエン)と、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)における二重結合(ジエノフィル)とのディールスアルダー付加反応である。また、上記(2)の反応は、(1)の反応で得た反応混合物、およびその他の有機酸類におけるカルボキシル基と、1つのシクロヘキサン環を含有するジオール(c)を含むポリオール(C)における水酸基との間のエステル化反応である。
例えば、ロジン酸類(A)、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)、その他の有機酸類、及び1つのシクロヘキサン環を含有するジオール(c)を含むポリオール(C)の混合物を用いて、2段階で反応を実施することができる。この場合、最初に、ロジン酸類(A)と、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)とのディールスアルダー付加反応が起こるように反応温度を調整すればよい。より具体的には、最初に、反応温度をディールスアルダー付加反応が進行する温度に制御し、一定時間にわたって維持した後に、エステル化反応が進行する温度まで加熱し反応を実施すればよい。
別法として、ロジン酸類(A)、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)を配合し、ディールスアルダー付加反応させた後、その他の有機酸類、及び1つのシクロヘキサン環を含有するジオール(c)を含むポリオール(C)を配合し、エステル化反応を実施してもよい。
ロジン酸類(A)に、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)を付加させる反応を行う工程1と、
前記工程1で得た反応混合物、その他の有機酸類、及び1つのシクロヘキサン環を含有するジオール(c)を含むポリオール(C)とのエステル化反応を行う工程2と
を含み、
ロジン変性樹脂の重量平均分子量が10,000未満であることを特徴とする。
本発明のロジン変性樹脂を使用して、活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ用ワニスを構成することができる。
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ用ワニスを構成するために使用可能な活性エネルギー線硬化型化合物の具体例として、
2-エチルヘキシルアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、アクリロイルモルホリン等の単官能活性エネルギー線硬化型化合物、
エチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=2~20)、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート(n=2~20)、アルカン(炭素数4~12)グリコールジアクリレート、アルカン(炭素数4~12)グリコールエチレンオキサイド付加物(2~20モル)ジアクリレート、アルカン(炭素数4~12)グリコールプロピレンオキサイド付加物(2~20モル)ジアクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、水添ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(2~20モル)ジアクリレート、水添ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(2~20モル)ジアクリレート等の2官能活性エネルギー線硬化型化合物、
グリセリントリアクリレート、グリセリンエチレンオキサイド付加物(3~30モル)トリアクリレート、グリセリンプロピレンオキサイド付加物(3~30モル)トリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物(3~30モル)トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド付加物(3~30モル)トリアクリレート等の3官能活性エネルギー線硬化型化合物、
ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物(4~40モル)テトラアクリレート、ペンタエリスリトールプロピレンオキサイド付加物(4~40モル)テトラアクリレート、ジグリセリンテトラアクリレート、ジグリセリンエチレンオキサイド付加物(4~40モル)テトラアクリレート、ジグリセリンプロピレンオキサイド付加物(4~40モル)テトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物(4~40モル)テトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンプロピレンオキサイド付加物(4~40モル)テトラアクリレート等の4官能活性エネルギー線硬化型化合物、及び
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物(6~60モル)ヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールプロピレンオキサイド付加物(6~60モル)ヘキサアクリレート等の多官能活性エネルギー線硬化型化合物
が挙げられる。活性エネルギー線硬化型化合物として、例示した化合物を単独で使用しても、2種以上を組合せて使用してもよい。
例えば、ロジン変性樹脂と、トリメチロールプロパントリアクリレートと、ハイドロキノンとを、100℃の温度条件下で、加熱溶融して得たワニスを好適に使用することができる。
本発明のロジン変性樹脂を使用して、活性エネルギー線硬化型平版印刷インキを構成することができる。
無機顔料の具体例として、黄鉛、亜鉛黄、紺青、硫酸バリウム、カドミウムレッド、酸化チタン、亜鉛華、弁柄、アルミナホワイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、二酸化珪素、群青、カーボンブラック、グラファイト、及びアルミニウム粉等が挙げられる。
有機顔料の具体例として、β-ナフトール系、β-オキシナフトエ酸系、β-オキシナフトエ酸系アリリド系、アセト酢酸アリリド系、及びピラゾロン系等の溶性アゾ顔料、
β-ナフトール系、β-オキシナフトエ酸系アリリド系、アセト酢酸アリリド系モノアゾ、アセト酢酸アリリド系ジスアゾ、及びピラゾロン系等の不溶性アゾ顔料、
銅フタロシアニンブルー、ハロゲン化(塩素又は臭素化)銅フタロシアニンブルー、及びスルホン化銅フタロシアニンブルー、金属フリーフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、
キナクリドン系、ジオキサジン系、スレン系(ピラントロン、アントアントロン、インダントロン、アントラピリミジン、フラバントロン、チオインジゴ系、アントラキノン系、ペリノン系、ペリレン系等)、イソインドリノン系、金属錯体系、キノフタロン系等の多環式顔料及び複素環式顔料等が挙げられる。
光重合開始剤は、1種を単独で使用しても、必要に応じて2種以上を組合せて使用しても良い。
光増感剤としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2-ジメチルアミノ)エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、及び4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル等のアミン類が挙げられる。
紫外線を発生するものとしては、例えば、LED、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、ヘリウム・カドミウムレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、及びアルゴンレーザーなどが挙げられる。
(重量平均分子量)
重量平均分子量は、東ソー(株)製のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(HLC-8320)で測定した。検量線は標準ポリスチレンサンプルにより作成した。また、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、カラムとしてTSKgel SuperHM-M(東ソー(株)製)を3本用いた。測定は、流速0.6mL/分、注入量10μL、及びカラム温度40℃の条件下で行った。
酸価は、中和滴定法によって測定した。具体的には、先ず、ロジン変性樹脂1gをキシレン:エタノール=2:1の質量比で混合した溶媒20mLに溶解させた。次いで、先に調製したロジン変性樹脂の溶液に、指示薬として3質量%のフェノールフタレイン溶液を3mL加えた後に、0.1mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液で中和滴定を行った。酸価の単位は、mgKOH/gである。
原料として使用するロジン酸類をガスクロマトグラフィー質量分析計で分析し、全ロジン酸ピーク面積100%に対する、各ピーク面積比(%)を求めた。より具体的には、ロジン酸類中に含まれ、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)とディールスアルダー付加反応を起こす共役系ロジン酸と、前記共役系ロジン酸以外との含有比を、それぞれ該当するピーク面積の比から求めた。
ディールスアルダー付加反応の反応液をガスクロマトグラフィー質量分析計で分析し、原料として使用した、ロジン酸類(A)、及びα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)の検出ピークの減少によって反応の進行を確認した。検出ピークの減少に変化が見られない時点で反応を終了した。
以下に示す実施例及び比較例の処方に従い、ロジン変性樹脂、ワニス、及び活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ組成物をそれぞれ調製した。なお、以下に示す処方で使用したガムロジンは、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)とディールスアルダー付加反応を起こす共役系ロジン酸の含有量が80質量%であり、前記共役系ロジン酸以外の含有量が20質量%であった。
攪拌機、水分離器付き還流冷却器、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、ガムロジン36部と無水マレイン酸13部とを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、180℃で1時間にわたって加熱することにより、反応混合物を得た。次いで、先に説明したように、反応混合物のガスクロマトグラフ質量分析によって、ディールスアルダー付加反応が完了したことを確認した。
次に、上記反応混合物に、テトラヒドロ無水フタル酸12部と、1,4-シクロヘキサンジメタノール39部と、触媒として、p-トルエンスルホン酸一水和物0.1部とを添加し、210℃で5時間にわたって脱水縮合反応を行い、樹脂1(R1)を得た。樹脂1(R1)の酸価は96であり、GPC測定ポリスチレン換算での重量平均分子量(Mw)は4,000であった。
次に、上記と同様のフラスコに、上記樹脂1(R1)を61部、トリメチロールプロパントリアクリレート38.9部、及びハイドロキノン0.1部を入れて混合し、これらを100℃で加熱溶融することでワニス1(V1)を得た。
さらに、ワニス1(V1)41部、リオノールブルーFG7330(トーヨーカラー社製の藍顔料)20部、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物(3~30モル)トリアクリレート22部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート11.9部、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン2.5部、2-メチル-2-モノホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン2.5部、及びハイドロキノン0.1部を、40℃の三本ロールミルにて練肉し混合物を得た。次いで、インキのタックが9~10になるように、上記混合物にトリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物(3~30モル)トリアクリレートを加えて調整し、活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ1(C1)を得た。インキのタックは、東洋精機社製のインコメーターにてロール温度30℃、400rpm、1分後の値を測定した。
実施例1と同様の操作にて、表1に示す配合組成で酸価89、Mw5,200の樹脂2(R2)を得た。次いで、表2に示す配合組成でワニス2(V2)、表3に示す配合組成で活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ2(C2)を得た。
実施例1と同様の操作にて、表1に示す配合組成で酸価126、Mw3,400の樹脂3(R3)を得た。次いで、表2に示す配合組成でワニス3(V3)、表3に示す配合組成で活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ3(C3)を得た。
攪拌機、水分離器付き還流冷却器、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、ガムロジン49部、無水マレイン酸18部、1,4-シクロヘキサンジメタノール33部、p-トルエンスルホン酸一水和物0.1部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、180℃で1時間にわたって加熱した。次いで、得られた反応混合物について、230℃で6時間にわたって脱水縮合反応を行い、樹脂4(R4)を得た。樹脂4(R4)の酸価は92であり、GPC測定ポリスチレン換算での重量平均分子量(Mw)は5,000であった。
次に、実施例1と同様の操作にて表2に示す配合組成でワニス4(V4)、表3に示す配合組成で活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ4(C4)を得た。
実施例1と同様の操作にて、表1に示す配合組成で酸価85、Mw3,000の樹脂5(R5)を得た。次いで、表2に示す配合組成でワニス5(V5)、表3に示す配合組成で活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ5(C5)を得た。
実施例1と同様の操作にて、表1に示す配合組成で酸価64、Mw9,700の樹脂6(R6)を得た。次いで、表2に示す配合組成でワニス6(V6)、表3に示す配合組成で活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ6(C6)を得た。
実施例1と同様の操作にて、表1に示す配合組成で酸価86、Mw4,900の樹脂7(R7)を得た。次いで、表2に示す配合組成でワニス6(V7)、表3に示す配合組成で活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ6(C7)を得た。
実施例1と同様の操作にて、表1に示す配合組成で酸価102、Mw4,200の樹脂8(R8)を得た。次いで、表2に示す配合組成でワニス8(V8)、表3に示す配合組成で活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ8(C8)を得た。
実施例1と同様の操作にて、表1に示す配合組成で酸価121、Mw4,100の樹脂9(R9)を得た。次いで、表2に示す配合組成でワニス9(V9)、表3に示す配合組成で活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ9(C9)を得た。
実施例1と同様の操作にて、表1に示す配合組成で酸価132、Mw7,200の樹脂10(R10)を得た。次いで、表2に示す配合組成でワニス10(V10)、表3に示す配合組成で活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ10(C10)を得た。
実施例1と同様の操作にて、表1に示す配合組成で酸価57、Mw4,000の樹脂11(R11)を得た。次いで、表2に示す配合組成でワニス11(V11)、表3に示す配合組成で活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ11(C11)を得た。
攪拌機、水分離器付き還流冷却器、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、ガムロジン49部、テトラヒドロ無水フタル酸19部、1,4-シクロヘキサンジメタノール32部、p-トルエンスルホン酸一水和物0.1部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、230℃で6時間にわたって脱水縮合反応を行い、樹脂(RA)を得た。樹脂A(RA)の酸価は128であり、GPC測定ポリスチレン換算での重量平均分子量(Mw)は4,000であった。
次に、実施例1と同様の操作にて表2に示す配合組成でワニスA(VA)、表3に示す配合組成にて活性エネルギー線硬化型平版印刷インキA(CA)を得た。
攪拌機、水分離器付き還流冷却器、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、ガムロジン54部と無水マレイン酸18部とを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、180℃で1時間にわたって加熱することにより、反応混合物を得た。次いで、先に説明したように、反応混合物のガスクロマトグラフ質量分析によって、ディールスアルダー付加反応が完了したことを確認した。
次に、上記反応混合物に、1,4-シクロヘキサンジメタノール28部と、触媒として、p-トルエンスルホン酸一水和物0.1部とを添加し、230℃で8時間にわたって脱水縮合反応を行い、樹脂B(RB)を得た。樹脂B(RB)の酸価は67であり、GPC測定ポリスチレン換算での重量平均分子量(Mw)は12,000であった。
次いで、実施例1と同様の操作にて表2に示す配合組成でワニスB(VB)、表3に示す配合組成にて活性エネルギー線硬化型平版印刷インキB(CB)を得た。
実施例1と同様の操作にて、表1に示す配合組成で酸価39、Mw6,000の樹脂C(RC)を得た。次いで、表2に示す配合組成でワニスC(VC)、表3に示す配合組成にて活性エネルギー線硬化型平版印刷インキC(CC)を得た。
実施例1と同様の操作にて、表1に示す配合組成で酸価135、Mw8,100の樹脂D(RD)を得た。次いで、表2に示す配合組成でワニスD(VD)、表3に示す配合組成にて活性エネルギー線硬化型平版印刷インキD(CD)を得た。
実施例1と同様の操作にて、表1に示す配合組成で酸価62、Mw2,500の樹脂E(RE)を得た。次いで、表2に示す配合組成でワニスE(VE)、表3に示す配合組成にて活性エネルギー線硬化型平版印刷インキE(CE)を得た。
実施例1と同様の操作にて、表1に示す配合組成で酸価94、Mw5,500の樹脂F(RF)を得た。次いで、表2に示す配合組成でワニスF(VF)、表3に示す配合組成にて活性エネルギー線硬化型平版印刷インキF(CF)を得た。
実施例1と同様の操作にて、表1に示す配合組成で酸価63、Mw7,700の樹脂G(RG)を得た。次いで、表2に示す配合組成でワニスG(VG)、表3に示す配合組成にて活性エネルギー線硬化型平版印刷インキG(CG)を得た。
実施例1と同様の操作にて、表1に示す配合組成で酸価75、Mw2,200の樹脂H(RH)を得た。次いで、表2に示す配合組成でワニスH(VH)、表3に示す配合組成にて活性エネルギー線硬化型平版印刷インキH(CH)を得た。
実施例及び比較例で調製した活性エネルギー線硬化型平版印刷インキについて、下記の方法に従い、印刷皮膜適性と印刷適性を評価した。
硬化性は、印刷物の印刷面を綿布で擦った時の状態を目視にて観察し、以下の基準に従い4段階で評価した。使用可能なレベルは、「3」以上である。
4:印刷面の変化なし。
3:印刷面の一部にキズが見られるが、剥離は見られない。
2:印刷面の一部(50%未満)に剥離が見られる。
1:印刷面の一部(50%以上)、又は全部に剥離が見られる。
耐溶剤性は、MEK(メチルエチルケトン)を浸した綿棒で印刷面を30回擦った後、印刷面の状態を目視にて観察し、以下の基準に従い4段階で評価した。使用可能なレベルは「3」以上である。
4:印刷面の変化なし。
3:印刷面の一部で溶解が見られるが、剥離は見られない。
2:印刷面の一部(50%未満)に剥離が見られる。
1:印刷面の一部(50%以上)、又は全部に剥離が見られる。
耐摩擦性は、印刷物の印刷面(塗膜)に対し、JIS-K5701-1に準じて、試験を行い評価した、具体的には、学振型摩擦堅牢度試験機(テスター産業社製)を用いて、摩擦用紙として上質紙を500g加重で塗膜表面を500回往復させた。次いで、摩擦面(塗膜表面)の変化を目視にて観察し、以下の基準に従い4段階で評価した。使用可能なレベルは「3」以上である。
4:摩擦面の変化なし。
3:摩擦面の一部にキズが見られるが、剥離は見られない。
2:摩擦面の一部(50%未満)に剥離が見られる。
1:摩擦面の一部(50%以上)又は全部に剥離が見られる。
プルーフバウ展色機を用いて、三菱製紙社製のパールコートにインキを同一濃度に展色し、試験サンプルを作製した。次いで、光沢計グロスメーターモデルGM-26((株)村上色彩技術研究所製)を用いて、試験サンプルの60°光沢値を測定した。得られた光沢値から光沢性を以下の基準に従い、4段階で評価した。光沢値の数値が高い程、光沢が良いことを表す。使用可能なレベルは「2」以上であるが、「3」以上がより好ましい。
4:光沢値が60以上である。
3:光沢値が50以上~60未満である。
2:光沢値が40以上~50未満である。
1:光沢値が40未満である。
上記のようにして得たPETフィルムおよびPEフィルムへの各印刷物に対し、セロハンテープ剥離試験を行い、密着性を評価した。試験後の印刷物の表面を目視で観察し、密着性を以下の基準に従い、4段階で評価した。使用可能なレベルは「3」以上である。
4:印刷面の変化なし。
3:印刷面の一部(25%未満)に剥離が見られる。
2:印刷面の一部(25%以上、50%未満)に剥離が見られる。
1:印刷面の一部(50%以上)又は全部に剥離が見られる。
また、印刷試験では、湿し水として、アストロマークIIIクリア(東洋インキ社製)1.5%と、イソプロピルアルコール3%とを含む水道水を使用した。正常に印刷できる条件範囲の境界付近における印刷状態の比較を行うために、水巾の下限値よりも2%高い水ダイヤル値で印刷を行った。なお「水巾の下限」とは、正常な印刷が可能である、湿し水の最低供給量を意味し、「水ダイヤル」とは、上記湿し水の供給量を調整するために、上記印刷機に備えられたダイヤルを意味する。
印刷試験で得られた各印刷物について、ベタ着肉状態、及び地汚れを比較したが、実施例のインキ1~11、および比較例のインキA~Hを用いた各印刷物の間で顕著な差は見られなかった。
印刷時に印刷機の安全カバーの内側に白紙を張り付け、10,000通し後に白紙を取り出し、インキの飛散の程度を、以下の基準に従い、4段階で評価した。使用可能なレベルは「3」以上である。
4:白紙の一部分に微量のインキミストが飛散している。
3:白紙全面に薄くインキミストが飛散している。
2:白紙全面にやや厚くインキミストが飛散している。
1:白紙全面にベッタリとインキミストが飛散している。
また、前記印刷試験において、刷り出し時、濃度変動が安定するまでに発生する損紙枚数から、以下の基準に従い、初期濃度安定性を4段階で評価した。使用可能なレベルは「2」以上であるが、「3」以上がより好ましい。評価結果を表4に示す。
4:損紙枚数が200枚以下である。
3:損紙枚数が201枚以上、500枚以下である。
2:損紙枚数が501枚以上、800枚以下である。
1:損紙枚数が801枚以上である。
より詳細には、実施例のインキ1~11、比較例のインキB、F~Hに見られるように、バインダー樹脂として使用されたロジン変性樹脂が、ロジン酸類(A)を好ましい量配合し、かつα,β-不飽和カルボン酸無水物(B)とディールスアルダー付加反応させたものを含む場合には、硬化性などの印刷皮膜の特性において良好な結果が得られた。
一方、比較例のインキA、C、Eでは、特に硬化性が著しく低下する結果となった。これは、比較例のインキAでは、バインダー樹脂として使用されたロジン変性樹脂は、α,β-不飽和カルボン酸無水物(B)を配合しておらず、ロジン酸類(A)中の化合物に含まれる共役二重結合が残留することで、硬化阻害が生じたためと考えられる。比較例のインキC、Eにおいては、α,β-不飽和カルボン酸無水物(B)を配合しているものの、ロジン酸類(A)の配合量が低いために、硬化皮膜の強度が不十分なためと考えられる。
また、比較例のインキA~Dでは、耐ミスチング性が低下する結果となった。これは、比較例のインキAでは、バインダー樹脂として使用したロジン変性樹脂は、α,β-不飽和カルボン酸無水物(B)を配合しておらず、比較例のインキCでは、ロジン酸類(A)が少ないために、インキの凝集力不足によりミストが発生しやすくなるものと考えられる。比較例のインキBでは、使用したロジン変性樹脂の重量平均分子量(Mw)が大きく、印刷機インキロール間で生じたフィラメントが伸張しやすく、ミスト化しやすいことに起因すると考えられる。比較例のインキDでは、ロジン酸類(A)の配合量が多すぎるため、ロジン変性樹脂と活性エネルギー線硬化型化合物との相溶性が低下したことに起因すると考えられる。
さらに、比較例のインキB~Gでは、PETおよび、またはPEフィルムへの密着性が低下する結果となった。比較例Bでは、ロジン変性樹脂の重量平均分子量(Mw)が大きく、硬化性には優れるが、密着性とのバランスが悪くなっているものと考えられる。比較例のインキC、F、Gは、1つのシクロヘキサン環を含有するジオール(c)が使用されていない、または配合量として不足しており、ポリオール(C)として使用されたネオペンチルグリコールや水素化ビスフェノールAでは、得られるロジン変性樹脂の柔軟性が十分でないことに起因すると考えられる。比較例のインキDにおいては、前述のようにロジン変性樹脂と活性エネルギー線硬化型化合物との相溶性低下により、密着性が低下したものと考えられる。比較例のインキEにおいては、ロジン酸類(A)の配合量が低いため、前述のとおり硬化皮膜の強度が十分でなく、その影響により基材への密着性が低下したものと考えられる。
一方、1つのシクロヘキサン環を含有するジオール(c)の配合量が多すぎる、比較例のインキHでは、耐MEK性、耐摩擦性が不十分なレベルであった。これは成分(c)が過多のために印刷皮膜強度が低下したためと考えられる。
また、実施例の1~9のインキのように、60~130mgKOH/gのロジン変性樹脂を用いた場合、実施例の10、11のインキと比べて、印刷皮膜適性と印刷適性との両立がより優れた結果となった。
Claims (6)
- ロジン酸類(A)およびα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)の付加反応混合物と、1つのシクロヘキサン環を含有するジオール(c)を含むポリオール(C)との反応物である、活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ用ロジン変性樹脂であって、
前記ロジン酸類(A)を、全配合量を基準として35~60質量%含み、
前記1つのシクロヘキサン環を含有するジオール(c)を、全配合量を基準として10~45質量%含み、
重量平均分子量が10,000未満である、活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ用ロジン変性樹脂。 - 酸価が60~130mgKOH/gである、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ用ロジン変性樹脂。
- 請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ用ロジン変性樹脂と、活性エネルギー線硬化型化合物とを含む、活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ用ワニス。
- 請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ用ロジン変性樹脂と、活性エネルギー線硬化型化合物とを含む、活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ。
- 請求項4に記載の活性エネルギー線硬化型平版印刷インキを基材に印刷してなる印刷物。
- 活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ用ロジン変性樹脂の製造方法であって、
ロジン酸類(A)に、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)を付加させる反応を行う工程1と、
前記工程1で得た反応混合物と、1つのシクロヘキサン環を含有するジオール(c)を含むポリオール(C)とを含むエステル化反応を行う工程2と
を含み、
前記ロジン酸類(A)を、全配合量を基準として35~60質量%含み、
前記1つのシクロヘキサン環を含有するジオール(c)を、全配合量を基準として10~45質量%含み、
重量平均分子量が10,000未満である、活性エネルギー線硬化型平版印刷インキ用ロジン変性樹脂の製造方法。
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