JP7099106B2 - アクチュエータ駆動装置、アクチュエータ駆動方法およびプログラム - Google Patents
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図11Aは、比較例のアクチュエータ3とその駆動回路4Aの構成と、片方の圧電素子31Aを駆動させた際の動作例とを示す図である。
圧電素子31Aには、正弦波状の電流Iaが流れる。これにより、非駆動側の圧電素子31Bは位相ずれした共振運動を行い、θだけ位相ずれした起電流が生じる。これが電流Ibである。ここでは、電流Iaの振幅と電流Ibの振幅とは略同一である。また、一般的には、Ia≧Ibである。
所定の変位を発生させる第1の変位素子および第2の変位素子と、
前記第1の変位素子および前記第2の変位素子と結合され、前記第1の変位素子および前記第2の変位素子の変位により駆動される駆動部材と、
前記駆動部材が当接することによって駆動される伝送部と、
を備えるアクチュエータを駆動するアクチュエータ駆動装置であって、
前記第1の変位素子に駆動電圧信号を印加する第1駆動回路と、
前記第2の変位素子に駆動電圧信号を印加する第2駆動回路と、
前記第2の変位素子に生じる起電流を検出する電流検出部と、
前記第1駆動回路を駆動させ、かつ前記第2駆動回路を駆動させずに前記アクチュエータを起動し、前記電流検出部が検出した起電流の振幅が閾値以下であることを検知した後には、前記第1駆動回路に加えて前記第2駆動回路も駆動させる制御部、
を備えることを特徴とするアクチュエータ駆動装置である。
本発明は、非駆動側の圧電素子に生じる起電流を観測することにより、非駆動側の圧電素子が正常振動できているかを監視する。正しい楕円運動を励起させることができなくなったと判断した場合に非駆動側の圧電素子を駆動側に変更して駆動のアシストを行い、駆動部材の正しい楕円運動を励起させ伝送部を正常駆動させる発明である。これにより、単相位相差駆動方式のトラス型アクチュエータにおいて、異物による駆動低下や駆動停止を低減させ、安定的に駆動を継続させることができる。これを、後記する図1から図4を用いて説明する。
駆動装置1は、駆動波形制御部2と、駆動回路4A,4Bと、電圧検出部24A,24Bと、電流検出部26A,26Bとを備える。駆動波形制御部2は、CPU21と、メモリ29と、PWM(Pulse Width Modulation)変換部22A,23A,22B,23Bと、A/D変換器25A,25Bと、A/D変換器27A,27Bとを備える。
メモリ29には、PWMコントロールプログラム291と出力コントロールプログラム292が格納されている。圧電素子31A,31Bは、後記する図2に示すアクチュエータ3を構成する素子である。駆動装置1は、圧電素子31A,31Bに流れる電流を制御することで、後記する図2に示すアクチュエータ3を駆動させる機能を有する。
所定の変位を発生させる圧電素子31B(第2の変位素子)側の各部は、圧電素子31A側と同様に構成されており、同様に動作する。PWM変換部23Bと正弦波変換器とは、圧電素子31Bに駆動電圧信号を印加する第2駆動回路として機能する。
トラス型のアクチュエータ3は、ベース振動体33に2本の圧電素子31A,31Bと駆動部材32を組み合わせたトラス型構造である。このアクチュエータ3は、ベース振動体33がロータ34の方向に付勢されており、駆動部材32を伝送部であるロータ34に押しつけた構成である。ベース振動体33は、圧電素子31A,31Bの先端が直交するように、これら圧電素子31A,31Bの基端が接着により固定されている。
なお、圧電素子31Aの側にも、圧電素子31Bの側と同様な電流検出部とスイッチが接続されているが、ここでは図示を省略している。以下、圧電素子31A,31Bを区別しないときには、単に圧電素子31と記載する。駆動回路4A,4Bを区別しないときには、単に駆動回路4と記載する。
圧電素子31Aには、正弦波状の電流Iaが流れる。これにより、非駆動側の圧電素子31Bは位相ずれした共振運動を行い、電流Ibが発生する。異物5によって共振周波数がずれているので、異物5がない場合よりも圧電素子31Bの振動は小さくなる。よって、圧電素子31Bの起電流の振幅も小さくなる。
ここで圧電素子31Bを駆動させるため、スイッチ28Bは、駆動回路4Bと圧電素子31Bとを接続している。更に駆動波形制御部2は、駆動回路4BにPWM信号を出力して、この駆動回路4Bに正弦波電圧信号を出力させる。これにより、図3Bに示すように、圧電素子31Bに流れる電流Ibの振幅は、圧電素子31Aに流れる電流Iaの振幅と同様となる。これにより、駆動部材32には、ロータ34との接触面に対してθ/2だけ長軸が傾いた楕円運動が励起される。図3Aに示したように駆動部材32Aに励起される楕円運動の長径と短径の比は1:1に近づき、略円形となるため、ロータ34に所定の駆動力が生じるようになる。
圧電素子31Aには、正弦波状の電流Iaが流れる。圧電素子31Bには、θだけ位相ずれした正弦波状の電流Ibが流れる。ここでは、電流Iaの振幅と電流Ibの振幅とは略同一である。
単相位相差駆動方式のトラス型アクチュエータにおいて、駆動波形制御部2は以下のように動作する。なお、以下のフローチャートでは、駆動側の駆動回路4Aのことを「駆動回路A」と記載し、圧電素子31Aのことを「圧電素子A」と記載する。非駆動側の駆動回路4Bのことを「駆動回路B」と記載し、圧電素子31Bのことを「圧電素子B」と記載する。
駆動波形制御部2は、駆動回路4Aを駆動制御しながら(S11)、圧電素子31Bの起電流である電流Ibを絶えず監視し(S12)、この電流Ibの振幅が閾値未満であるか否かを判定する(S13)。これにより、駆動波形制御部2は、非駆動側の圧電素子31Bの共振振動量を判定する。
トラス型圧電アクチュエータの最大機械出力特性は、使用する圧電素子の素材特性およびアクチュエータの構造に依存する。また最大機械出力時に電気-機械変換効率も最大となる。使用用途により必要とされる機械出力は様々であり、用途毎に効率の良いアクチュエータを設計することは困難である。
駆動回路4Aは、駆動波形発生器41と、この駆動波形発生器41のPWM信号を正弦波信号に変換する正弦波変換器42とを備える。駆動回路4の出力電圧は、正弦波信号であり、圧電素子31に印加される。電圧検出部24は、駆動回路4が出力する正弦波信号の振幅を検出する
駆動波形発生器41は、フルブリッジ接続されたスイッチング素子S1~S4で構成されている。駆動波形発生器41は、直流電源6から供給された電圧と、駆動波形制御部2から入力された正と0の2値からなる2つのPWM信号に基づき、正と負と0の三値からなるPWM信号を生成する。
圧電素子31Aを4.16V振幅の正弦波電圧信号で駆動した場合、機械出力の最大は略2.0(mW)である。また、圧電素子31を5.6V振幅の正弦波電圧信号で駆動した場合、機械出力の最大は略4.5(mW)である。しかし、機械出力2.0(mW)以下の全領域において、4.16V振幅の正弦波駆動の変換効率は、5.6V振幅の正弦波駆動の変換効率よりも良い。
第1グラフは、スイッチング素子S1のゲートに印加される制御信号を示している。第2グラフは、スイッチング素子S2のゲートに印加される制御信号を示している。第3グラフは、スイッチング素子S3のゲートに印加される制御信号を示している。第4グラフは、スイッチング素子S4のゲートに印加される制御信号を示している。第5グラフは、正弦波変換器42に出力されるPWM信号を示している。図1に示したPWM変換部22Aは、スイッチング素子S1,S4のゲートに印加される制御信号を出力する。図1に示したPWM変換部23Aは、スイッチング素子S2,S3のゲートに印加される制御信号を出力する。
圧電素子31Aを振幅E2の正弦波電圧信号で駆動した場合、機械出力の最大は略HPである。また、圧電素子31Aを、振幅E2よりも大きい振幅E1の正弦波電圧信号で駆動した場合、機械出力の最大はHPの2倍近くになる。しかし、機械出力HP以下の全領域において、振幅E2の正弦波駆動の変換効率は、振幅E1の正弦波駆動の変換効率よりも良い。よって、アクチュエータの機械出力の値に応じて正弦波電圧信号の振幅を選択することにより、電気-機械変換効率を上げることができる。
図9に示すグラフに基づき、圧電素子に印加する正弦波電圧信号を制御する電圧制御処理を説明する。この電圧制御処理は、アクチュエータの駆動を開始する際に起動される。
本実施形態の駆動波形制御部2は、単相位相差駆動方式のトラス型アクチュエータにおいて、異物等によって非駆動側の圧電素子の共振振動量が低下した場合、非駆動側の圧電素子の起電流の振幅低下から、アクチュエータの駆動低下や駆動停止が発生することを検出する。駆動波形制御部2は更に、本来は非駆動側である圧電素子を駆動側に変更し、駆動部材の楕円運動を強制アシストする。これにより、トラス型アクチュエータを継続して安定動作させることができる。
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更実施が可能であり、例えば、次の(a)~(d)のようなものがある。
(b) 駆動装置が駆動アシストを停止する条件は、所定時間の経過に限定されず、例えば所定の回転量に応じて停止してもよい。
(c) 圧電素子に印加する正弦波電圧信号の振幅のフィードバック制御は、図10に示したPI制御に限定されず、PID(比例積分微分)制御や現代制御など、任意の制御方式であってもよい。
(d) アクチュエータの機械出力の値を算出する元となる計測値、このアクチュエータの速度に限られず、アクチュエータのトルクに基づいて算出してもよい。
《請求項1》
所定の変位を発生させる第1の変位素子および第2の変位素子と、
前記第1の変位素子および前記第2の変位素子と結合され、前記第1の変位素子および前記第2の変位素子の変位により駆動される駆動部材と、
前記駆動部材が当接することによって駆動される伝送部と、
を備えるアクチュエータを駆動するアクチュエータ駆動装置であって、
前記第1の変位素子に駆動電圧信号を印加する第1駆動回路と、
前記第2の変位素子に駆動電圧信号を印加する第2駆動回路と、
前記第2の変位素子に生じる起電流を検出する電流検出部と、
前記第1駆動回路を駆動させ、かつ前記第2駆動回路を駆動させずに前記アクチュエータを起動し、前記電流検出部が検出した起電流の振幅が閾値以下であることを検知した後には、前記第1駆動回路に加えて前記第2駆動回路も駆動させる制御部、
を備えることを特徴とするアクチュエータ駆動装置。
《請求項2》
前記第1駆動回路および前記第2駆動回路は、それぞれ駆動波形発生器と、前記駆動波形発生器のPWM信号を正弦波電圧信号に変換する正弦波変換器と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ駆動装置。
《請求項3》
前記制御部は、前記アクチュエータの機械出力の値に応じて、前記正弦波の電圧が切り替わるように、前記駆動波形発生器を制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ駆動装置。
《請求項4》
前記駆動波形発生器は、フルブリッジ回路である、
ことを特徴とする請求項2または3に記載のアクチュエータ駆動装置。
《請求項5》
所定の変位を発生させる第1の変位素子および第2の変位素子と、
前記第1の変位素子および前記第2の変位素子と結合され、前記第1の変位素子および前記第2の変位素子の変位により駆動される駆動部材と、
前記駆動部材が当接することによって駆動される伝送部と、
を備えるアクチュエータの駆動方法であって、
前記第1の変位素子に駆動信号を印加する第1駆動回路を駆動させ、かつ前記第2の変位素子に駆動信号を印加する第2駆動回路を駆動させずに前記アクチュエータを起動するステップと、
前記第2の変位素子に生じる起電流の振幅を検知するステップと、
前記起電流の振幅が閾値以下であることを検知した後には、前記第1駆動回路に加えて前記第2駆動回路も駆動させるステップと、
を実行することを特徴とするアクチュエータ駆動方法。
《請求項6》
所定の変位を発生させる第1の変位素子および第2の変位素子と、
前記第1の変位素子および前記第2の変位素子と結合され、前記第1の変位素子および前記第2の変位素子の変位により駆動される駆動部材と、
前記駆動部材が当接することによって駆動される伝送部と、
を備えるアクチュエータをコンピュータに駆動させるプログラムであって、
前記第1の変位素子に駆動電圧信号を印加する第1駆動回路を駆動させ、かつ前記第2の変位素子に駆動電圧信号を印加する第2駆動回路を駆動させずに前記アクチュエータを起動する手順、
前記第2の変位素子に生じる起電流の振幅を検知する手順、
前記起電流の振幅が閾値以下であることを検知した後には、前記第1駆動回路に加えて前記第2駆動回路も駆動させる手順、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
2 駆動波形制御部
21 CPU (制御部)
29 メモリ
291 PWMコントロールプログラム
292 出力コントロールプログラム
22A,23A,22B,23B PWM変換部
24,24A,24B 電圧検出部
25A,25B A/D変換器
26A,26B 電流検出部
27A,27B A/D変換器
28B スイッチ
3 アクチュエータ
31 圧電素子
31A 圧電素子 (第1の変位素子)
31B 圧電素子 (第2の変位素子)
32 駆動部材
33 ベース振動体
34 ロータ (伝送部)
4 駆動回路
4A 駆動回路 (第1の駆動回路)
4B 駆動回路 (第2の駆動回路)
41 駆動波形発生器 (駆動回路の一部)
42 正弦波変換器 (駆動回路の一部)
5 異物
Claims (6)
- 所定の変位を発生させる第1の変位素子および第2の変位素子と、
前記第1の変位素子および前記第2の変位素子と結合され、前記第1の変位素子および前記第2の変位素子の変位により駆動される駆動部材と、
前記駆動部材が当接することによって駆動される伝送部と、
を備えるアクチュエータを駆動するアクチュエータ駆動装置であって、
前記第1の変位素子に駆動電圧信号を印加する第1駆動回路と、
前記第2の変位素子に駆動電圧信号を印加する第2駆動回路と、
前記第2の変位素子に生じる起電流を検出する電流検出部と、
前記第1駆動回路を駆動させ、かつ前記第2駆動回路を駆動させずに前記アクチュエータを起動し、前記電流検出部が検出した起電流の振幅が閾値以下であることを検知した後には、前記第1駆動回路に加えて前記第2駆動回路も駆動させる制御部、
を備えることを特徴とするアクチュエータ駆動装置。 - 前記第1駆動回路および前記第2駆動回路は、それぞれ駆動波形発生器と、前記駆動波形発生器のPWM信号を正弦波電圧信号に変換する正弦波変換器と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ駆動装置。 - 前記制御部は、前記アクチュエータの機械出力の値に応じて、前記正弦波の電圧が切り替わるように、前記駆動波形発生器を制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ駆動装置。 - 前記駆動波形発生器は、フルブリッジ回路である、
ことを特徴とする請求項2または3に記載のアクチュエータ駆動装置。 - 所定の変位を発生させる第1の変位素子および第2の変位素子と、
前記第1の変位素子および前記第2の変位素子と結合され、前記第1の変位素子および前記第2の変位素子の変位により駆動される駆動部材と、
前記駆動部材が当接することによって駆動される伝送部と、
を備えるアクチュエータの駆動方法であって、
前記第1の変位素子に駆動信号を印加する第1駆動回路を駆動させ、かつ前記第2の変位素子に駆動信号を印加する第2駆動回路を駆動させずに前記アクチュエータを起動するステップと、
前記第2の変位素子に生じる起電流の振幅を検知するステップと、
前記起電流の振幅が閾値以下であることを検知した後には、前記第1駆動回路に加えて前記第2駆動回路も駆動させるステップと、
を実行することを特徴とするアクチュエータ駆動方法。 - 所定の変位を発生させる第1の変位素子および第2の変位素子と、
前記第1の変位素子および前記第2の変位素子と結合され、前記第1の変位素子および前記第2の変位素子の変位により駆動される駆動部材と、
前記駆動部材が当接することによって駆動される伝送部と、
を備えるアクチュエータをコンピュータに駆動させるプログラムであって、
前記第1の変位素子に駆動電圧信号を印加する第1駆動回路を駆動させ、かつ前記第2の変位素子に駆動電圧信号を印加する第2駆動回路を駆動させずに前記アクチュエータを起動する手順、
前記第2の変位素子に生じる起電流の振幅を検知する手順、
前記起電流の振幅が閾値以下であることを検知した後には、前記第1駆動回路に加えて前記第2駆動回路も駆動させる手順、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
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