JP7098306B2 - 無機ヨウ素化合物無水物の製造方法、及び塊状物 - Google Patents

無機ヨウ素化合物無水物の製造方法、及び塊状物 Download PDF

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Description

本発明は無機ヨウ素化合物無水物の製造方法、及び塊状物に関する。
従来から無機ヨウ素化合物は、化学原料、医薬品の製造原料等として様々な分野で用いられてきた。例えば、ヨウ化ナトリウムは医農薬の製造工程等で汎用的に使用される無機ヨウ素化合物である。また、ヨウ化リチウムは全固体リチウム電池、色素増感太陽電池等に用いられ、近年注目されている無機ヨウ素化合物である。
ここで、一般に無機ヨウ素化合物には、吸湿性が高く、潮解性を有しているものが多い。また、結晶内に結晶水を有するものも多く存在する。しかし、非水系の用途では、充分に水分を取り除いた無機ヨウ素化合物が望まれている。
無機ヨウ素化合物を乾燥させて水分を取り除く方法としては、従来多く知られており、例えば固体の無機ヨウ素化合物を加熱する方法が挙げられる(非特許文献1~3)。それ以外にも、例えば、有機溶媒を用いて、無機ヨウ素化合物に含まれる結晶水を抽出又は共沸させることにより水分を除去する方法が提案されている(特許文献1及び2)。また、ヨウ化リチウムの含水塩又は水溶液を乾燥させることにより、水分を除去する方法も提案されている(特許文献3及び4)。さらに、乾燥後の固体が容器へ固着しやすいため、壁面を掻き取るための撹拌翼を併用しながら水分を除去する方法も提案されている(特許文献5)。
特開2013-256416号公報 特開2015-157743号公報 特開2013-103851号公報 特開2015-214472号公報 特開2015-137214号公報
ヨウ素綜説、霞ヶ関出版、松岡敬一郎、昭和49年2月発行 新実験科学講座、第8巻、日本化学会編、1997年、462~463頁 実験科学講座、第5版、23巻、無機化合物、322頁
しかしながら、特許文献1及び2に記載されている有機溶媒を用いる手法では、生産の実施に際して、大量のアルコールを使用及び管理する必要性が有り、使用設備やコストの観点から欠点がある。
また、多くの場合、無機ヨウ素化合物は液相反応により合成されるため、合成された無機ヨウ素化合物は水溶液として得られる。そのため、無機ヨウ素化合物の水溶液から水を除去して直接無機ヨウ素化合物の乾燥固体を得る方法が望まれるが、この場合、析出した無機ヨウ素化合物が容器の側壁及び底面に強固に固着した凝集物が形成されてしまう。固着した無機ヨウ素化合物は、例えば、特許文献5の回転翼を使用してある程度回収することができるものの、無機ヨウ素化合物の粒子は非常に硬度が高いため、撹拌翼が急速に摩耗しやすく、十分な回収率を得ることができない。さらに、撹拌翼の摩耗等によって製品へ不純物が混入する可能性があり、品質の安定した製造が難しい。
非特許文献1~3、特許文献3及び4に記載されるように、固体の無機ヨウ素化合物を加熱する方法であっても、水和物等、水を多く含む固体を加熱した場合、加熱中に固体の再溶解が起こる。再溶解した固体から水を除去しようとすると、水溶液の場合と同様に析出した無機ヨウ素化合物が容器の側壁及び底面に強固に固着した凝集物が形成されてしまう。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、回収率が高い無機ヨウ素化合物無水物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の無機ヨウ素化合物無水物の製造方法は、無機ヨウ素化合物及び水を含む組成物に減圧条件下でマイクロ波を照射することにより、前記組成物から水を蒸発させて除去する水分除去工程を備える。
上記無機ヨウ素化合物が、結晶水を含む多形が存在するものであると好ましい。
上記組成物が、無機ヨウ素化合物の水溶液であると好ましい。
上記無機ヨウ素化合物が、ヨウ化ナトリウム又はヨウ化リチウムであると好ましい。
上記水分除去工程が、一定出力のマイクロ波を照射したときに照射時間に対して組成物の温度が少なくとも単調に減少するまで行われることが好ましい。
本発明の塊状物は、複数の無機ヨウ素化合物無水物の粒子が一体化したものであり、破壊強度が100N以下である。
本発明によれば、回収率が高い無機ヨウ素化合物無水物の製造方法を提供することができる。
図1は、照射時間に対する組成物の温度の変化を説明するための模式図である。
本実施形態の無機ヨウ素化合物無水物の製造方法は、無機ヨウ素化合物及び水を含む組成物に減圧条件下でマイクロ波を照射することにより、前記組成物から水を蒸発させて除去する水分除去工程を備える。
上記組成物としては、無機ヨウ素化合物と水とを含んでいれば特に制限はないが、無機ヨウ素化合物の水溶液、無機ヨウ素化合物の水和物、無機ヨウ素化合物固体と水との混合物等が挙げられる。組成物における水の含有量としては、特に制限はないが、組成物全量に対して44~99質量%であってよい。
また、本実施形態において、無機ヨウ素化合物無水物とは、実質的に水(結晶水の形態の水も包含する)を含まない無機ヨウ素化合物固体であり、例えば、無機ヨウ素化合物無水物の総量に対して水分の含有量が0.1質量%以下であることが好ましい。なお、水分量の下限は特に限定されないが、10ppmとすることができる。
上記無機ヨウ素化合物無水物は、目的とする無機ヨウ素化合物の含量(純度)が無機ヨウ素化合物無水物の総量に対して99.0質量%以上であると好ましい。なお、無機ヨウ素化合物無水物は、目的とする無機ヨウ素化合物及び微量の水以外に、原料等に由来する不可避不純物を含んでいてもよく、不可避不純物の含有量は例えば、0.1質量%以下であると好ましい。不純物としては、塩化物イオン、臭化物イオン、硫酸イオン等の陰イオン及び目的とする無機ヨウ素化合物無水物が有する金属以外の金属イオンとしてカルシウムイオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、及びナトリウムイオンが挙げられる。
無機ヨウ素化合物無水物における無機ヨウ素化合物の含量、及び水分量は以下の方法により測定することができる。
[含量分析]
無機ヨウ素化合物無水物中のヨウ素含量は、ヨウ素酸カリウム標準液で電位の変化を捉える自動的滴定装置のよってヨウ化物イオン濃度を定量し、無機ヨウ素化合物の濃度に換算して含量を求めることができる。なお、この分析法はヨウ化カリウム(試薬)のJIS K8913に準じた方法である。
また、金属不純物等の不純物については高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP発光分光分析法)を使った分析により求めることができる。
[水分測定法]
ヨウ化リチウムの場合には京都電子工業株式会社のカールフィッシャー水分測定装置に気化装置を組み合わせた気化法(280℃)で導入し、電量滴定法で測定して求めることができる。水分量は得られた無機ヨウ素化合物の総重量に対して、0.1質量%以下であると好ましい。
ヨウ化ナトリウムの場合には、京都電子工業株式会社のカールフィッシャー水分測定装置を用い、直接法による電量滴定法で測定して求めることができる。水分量は得られた無機ヨウ素化合物の総重量に対して、0.1質量%以下であると好ましい。
本実施形態における無機ヨウ素化合物としては、特に制限はないが、金属ヨウ化物塩であることが望ましい。金属ヨウ化物塩に含まれる金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、周期表におけるp-ブロックの金属等が挙げられる。
上記無機ヨウ素化合物の中には、結晶水を有する多形が存在するものがある。結晶水を含む多形が存在する無機ヨウ素化合物としては、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化コバルト、ヨウ化ストロンチウム、ヨウ化セリウム、ヨウ化鉄、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化マンガン、及びヨウ化リチウムの11種類が挙げられる。本実施形態の無機ヨウ素化合物としては、産業上特に使用頻度の高いアルカリ金属ヨウ化物塩が好ましく、ヨウ化ナトリウム又はヨウ化リチウムが特に好ましい。
無機ヨウ素化合物としてアルカリ金属ヨウ化物塩を使用する場合、アルカリ金属ヨウ化物塩の製造方法としては、例えば、ヨウ素とアルカリ金属水酸化物塩の水溶液に有機還元剤であるギ酸を使用して反応させる方法(方法1)と、アルカリ金属炭酸塩とヨウ化水素酸の中和反応により得られる方法(方法2)の二つを採用できる。
ヨウ化リチウムを例にとると、方法1のギ酸法の場合、水酸化リチウムの水溶液を撹拌しつつ、ヨウ素とギ酸を加えて反応させる。反応式は次式で表される。
+2LiOH+HCOOH→2LiI+CO+2H
反応器内の温度は、60~110℃の範囲内であることが好ましく、製造の容易さから、80~100℃の範囲内であることが特に好ましい。温度が60℃以上であるとヨウ素とギ酸の反応速度が十分大きく、110℃以下であると、ヨウ素の昇華によるロスが少なくなる。
また、上記反応において、得られたヨウ化リチウム水溶液のpHを調整することが好ましい。調整後のpHは、好ましくは5~9、より好ましく6~8の範囲内に調整される。なお、pH調整剤としては、反応工程における水酸化リチウム又はヨウ化水素酸を用いることができる。
反応後のヨウ化リチウム水溶液は、遊離したヨウ素によってわずかに着色しているので、多孔質吸着材で遊離ヨウ素を吸着する方法を採用ことが好ましい。多孔質吸着材としてゼオライト等の既知の材料が使用可能であるが、あらかじめ酸洗浄等の前処理を行い、さらに水で洗浄した活性炭を使うのが好ましい。これによって遊離ヨウ素を吸着し、得られる溶液は、溶液中の遊離ヨウ素が0.2質量%以下であるほとんど無色の溶液として得ることができる。また、反応溶液に例えば次亜リン酸等のリン系化合物、亜硫酸等の硫黄系化合物、ヒドラジン系化合物の還元剤を安定剤として添加することも可能であるが、不純物が増加するため、添加しないことが好ましい。
また、方法2の反応はリチウム源として非特許文献1に記載のある、炭酸リチウムを使用し、ヨウ化水素酸との中和反応を行うものである。原料であるヨウ化水素酸としては、57質量%の溶液が市販品として使用することができる。ヨウ化水素酸は低い濃度でも使用可能であるが、得られるヨウ化リチウムの濃度が低くなり過ぎないように、20~58質量%の範囲内のものが好ましい。また、炭酸リチウム水溶液の濃度は20~60w/v%の範囲とすることが好ましく、55~60w/v%の濃度がより好ましい。また、遊離ヨウ素の発生を抑制するために、窒素ガス又はアルゴンガスのような不活性ガス条件下で行なうことが好ましい。この反応の反応式は以下のとおりである。
LiCO+2HI→2LiI+CO+H
酸とアルカリの中和であるから発熱し、炭酸ガスも発生するので、撹拌しつつ、30~50℃の温度範囲を保ち注意しながら、ヨウ化水素酸を滴下し反応する。
次に30℃に保ちながら反応容器内のpHを確認し、酸やアルカリ溶液でpH調整を行うが、使用する水溶液の濃度は適宜選択すれば良く、アルカリ性であれば、例えば57質量%ヨウ化水素酸を添加し、酸性であれば水酸化リチウムの粉末又は水溶液を添加してpHを6.0~9.0に調整することが好ましい。これにより、無色のヨウ化リチウム溶液を得ることができる。
無機ヨウ素化合物の水溶液としては、無機ヨウ素化合物を水に溶解することにより調製することができる。また、上記の方法1、2等により得られた無機ヨウ素化合物の水溶液をそのまま用いてもよい。ここで、水溶液は反応原料として用いられるギ酸や反応溶媒として用いられる有機溶媒、その他、酸化防止剤としての有機物を含んでいても良い。さらに、ヨウ化物イオンの酸化による遊離ヨウ素の発生を抑制するために、溶液に例えば次亜リン酸等のリン系化合物、亜硫酸等の硫黄系化合物、ヒドラジン等の還元剤を安定剤として含んでいても良い。しかしながら、上記有機物、有機溶媒及び安定剤の含有量が10質量%以下であることが好ましく、実質的に上記有機物、有機溶媒及び安定剤を含まないことがより好ましい。
本実施形態の水分除去工程では、マイクロ波を照射することによって組成物が加熱され、組成物に含まれる水が蒸発し、除去される。このような水分除去工程を備えるため、本実施形態の製造方法では、無機ヨウ素化合物の固体を高い回収率で得ることができる。この理由について、必ずしも定かではないが、本発明者は以下のように考えている。
まず、従来の無機ヨウ素化合物の乾燥方法では、電熱器、熱風等の熱媒により無機ヨウ素化合物及び水を含む組成物を加熱する間接加熱が用いられてきた。間接加熱では、熱媒からの熱が容器の側壁及び底面を通じて容器の内部に徐々に伝導するため、容器の内表面(底面、側面等)付近と容器の内部とで温度勾配が生じる。そのため、上記組成物として無機ヨウ素化合物の水溶液を用いた場合、加熱中に温度が高い容器の内表面付近で局所的且つ急速に無機ヨウ素化合物の結晶の析出が始まるため、結晶同士が融合し、容器の内表面に大きな表面積で付着する凝集物が生じる。かかる凝集物は容器の内表面に強固に付着すると共に、硬度も高いため、破砕して容器の表面から掻き取ることが困難であり、回収率の低下につながる。
また、上記組成物として無機ヨウ素化合物の水和物を用いた場合、加熱中に水和物が再溶解した濃縮混合物が得られる。かかる濃縮混合物は、沸点上昇のため、従来の間接加熱では水分を除去することが難しい。また、水溶液の場合と同様に、間接加熱により濃縮混合物から水分を除去した場合、無機ヨウ素化合物の結晶が再び析出して上記凝集物が形成される。
一方、本実施形態の水分除去工程では、組成物がマイクロ波の照射によって加熱される(マイクロ波加熱)。マイクロ波加熱は、水分子等の双極子が高速でマイクロ波の電界の振動に追従して方向を変えることで発熱する直接加熱である。
直接加熱であるマイクロ波加熱には、間接加熱と異なる特徴があり、その一例を列挙すると(1)内部加熱、(2)高速加熱、(3)選択加熱等が挙げられる。マイクロ波は被加熱物の内部に進入することができるため、物質全体から均一に発熱する(内部加熱)。また、直接的に被加熱物質を加熱することから、熱伝導などにより熱が拡散する時間が無視でき、高速加熱が実現される。さらに、マイクロ波を吸収する程度は物質により異なることから、加熱したいものだけを加熱する選択加熱が可能となる。
そのため、間接加熱と異なり、マイクロ波による直接加熱では、容器の内表面付近だけでなく、組成物全体から略均一に結晶の析出が始まる。そのため、析出した結晶は容器の内表面に付着しにくく、成長した結晶同士がその表面を部分的に接触させて一体化する。これにより、無機ヨウ素化合物の固体が、複数の無機ヨウ素化合物無水物の粒子が一体化した塊状物の形態で得られやすい。また、このような塊状物は、多孔質で柔らかいため、容器の内表面に付着していたとしても容易に掻き取ることができる。また、本実施形態の製造方法によれば、上記(1)~(3)により効率よく水を蒸発させることができる。
上記塊状物の破壊強度としては、100N以下であることが好ましく、10~60Nであることがより好ましい。ここで、破壊強度は、直径約15mmの略球形のサンプルを塊状物から切り出し、株式会社藤原製作所製の木屋式硬度計043019-Aで測定することができる。
また、上記塊状物のかさ密度としては、例えば、1.00g/cm以下であることが好ましく、0.50~0.60g/cmであることが好ましい。かさ密度の測定方法としては、日本粉体工業技術協会企画 SAP01-79の造粒物のかさ密度測定方法が挙げられる。
上記水分除去工程は、一定出力のマイクロ波を照射したときに照射時間に対して組成物の温度が少なくとも単調に減少するまで行われることが好ましい。照射時間に対して組成物の温度変化について図1を用いて説明する。図1では、縦軸に組成物の温度(任意単位)及び横軸にマイクロ波の照射時間をとっている。一定出力で組成物にマイクロ波を照射した場合、始めのうちは組成物に含まれる水がマイクロ波を吸収して組成物の温度が上昇する。しかしながら、組成物に含まれる水の量が少なくなってくると、組成物におけるマイクロ波の吸収量が低下するため、組成物から大気等の外部への放熱量のほうが大きくなる。そのため、組成物の温度が照射時間t1で極大値をとる。照射時間t1以降、組成物の温度は照射時間に対して単調に減少する。
言い換えれば、組成物の温度が照射時間に対して単調に減少する領域(すなわち、照射時間がt1よりも大きい領域)では、組成物に含まれる水の含有量が十分に低下している傾向にあるため、マイクロ波の照射は少なくとも組成物の温度が単調に減少する領域(つまり、図1のt1以降)まで行われることが好ましい。
また、水分除去工程終了後、得られた無機ヨウ素化合物無水物は室温まで冷却される。冷却は容器の主に側壁又は底面を介して行われるため、容器の内表面付近に位置する無機ヨウ素化合物無水物のほうが容器の内部に位置するものよりも先に温度が低下する。これにより、得られた無機ヨウ素化合物無水物内に温度勾配を生じる。この際に、温度の高い容器内部の無機ヨウ素化合物固体から容器の表面付近の無機ヨウ素化合物固体に水が移動し、容器の表面付近で無機ヨウ素化合物固体の部分的な再溶解が起こる場合がある。この場合、無機ヨウ素化合物固体間に液体架橋が形成されると共に、再溶解した部分が容器の内表面に付着する。さらに温度が低下することに伴い無機ヨウ素化合物固体間に固体架橋が形成されると共に、無機ヨウ素化合物固体の容器に付着した部分が固化し、無機ヨウ素化合物無水物が容器の内表面に固着してしまう虞がある。マイクロ波の照射が、少なくとも組成物の温度が単調に減少するまで行われた場合、このような再溶解及び容器の内表面への固着を抑制できる傾向にあり、回収率をさらに向上できる。
マイクロ波照射中の組成物における水分除去の進捗状況は、組成物から反射されるマイクロ波を観測することによっても知ることができる。例えば、一定出力のマイクロ波を組成物に照射した場合に、マイクロ波の照射時間に対する組成物から反射されるマイクロ波の強度は、組成物に含まれる水分が減少することに伴い、略単調に増加する。組成物に含まれる水分量が十分に低下すると、組成物から反射されるマイクロ波の反射量は略一定となる。水分除去工程は、組成物から反射されるマイクロ波の反射量が略一定となるまで継続することが好ましい。
組成物から反射されるマイクロ波の強度を測定する方法としては、ミクロ電子株式会社製のパワーモニタであるPM10-DM又はPM10-BIを接続導波管の一部に挿入し、測定する方法が挙げられる。
水分除去工程終了後、得られた無機ヨウ素化合物無水物は室温まで冷却される。冷却方法はとしては、自然冷却が挙げられる。
マイクロ波の出力としては、特に制限はなく、水分の除去を行う組成物の投入量等に応じて適宜変更可能であるが、例えば、100~4000Wであることが好ましい。マイクロ波の出力が100~4000Wであれば十分な蒸発速度で水分を除去できる傾向にある。また、マイクロ波の出力は水分除去工程において一定であってもよいが、必要に応じて出力を変化させることも可能である。マイクロ波の周波数としては、マイクロ波が水に吸収される周波数であることが好ましく、例えば、24.2~24.8GHzであることが好ましい。
マイクロ波照射中の組成物の温度としては、特に制限はなく、組成物に含まれる無機ヨウ素化合物の種類等に応じて適宜変更してよい。例えば、無機ヨウ素化合物がヨウ化リチウムである場合、組成物の温度としては80~240℃であることが好ましい。組成物の温度を80~240℃とすることにより、熱分解産物である遊離ヨウ素による着色を抑制でき、十分な蒸発速度で水を除去することができる傾向にある。
マイクロ波の照射時間としては、マイクロ波の出力、無機ヨウ素化合物の種類等に応じて適宜変更することができるが、0.1~10時間が好ましく、1~4時間がより好ましい。マイクロ波加熱は高速で水分を蒸発させることが可能であるため、乾燥時間を短縮することが可能となる。
水分除去工程は、減圧条件下で行われる。水分除去工程を減圧条件下で行うことにより、酸素存在下で加熱することによる遊離ヨウ素の発生を抑制できる傾向にある。水分除去工程における具体的な圧力としては、大気圧(例えば、101.325kPa)よりも低い圧力であれば特に制限はないが、0.1~10kPaであることが好ましい。また、マイクロ波加熱により発生した水蒸気をすばやく容器外へ排気するために、キャリアガスを流しても良い。キャリアガスの種類としては、乾燥気体であれば特に制限されるものではなく、乾燥空気、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスを用いることができる。
乾燥の際、無機ヨウ素化合物を入れる容器の素材は、マイクロ波の照射によって加熱又は反応しないものであれば特に制限されないが、フッ素樹脂製、ホウケイ酸ガラス製、又は石英ガラス製の容器が好ましく、石英ガラス製の容器がより好ましい。
マイクロ波照射は、例えば、マイクロ波乾燥機によって行うことができる。マイクロ波乾燥機としては、回分式及び連続式のいずれのものであってよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、本明細書に記載した事項の範囲で変更が可能であり、開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても技術的範囲に含まれる。
以下に実施例を示し、本発明の実施形態についてさらに詳しく説明する。しかしながら、本発明は実施例に示した内容に限定されないことはいうまでもない。
[実施例1]
ミクロ電子株式会社製の真空マイクロ波乾燥機内に、無色透明の55.6質量%のヨウ化リチウム水溶液100.6gを入れた石英ガラス製の容器を置き、真空ポンプでチャンバー内部を5.3kPaまで減圧した。その後、周波数2.45GHz、出力100Wのマイクロ波を240分照射し、水分を蒸発させて除去した。水溶液の温度は約180℃で極大値に達した後、単調に減少した。マイクロ波の照射を終了した時点で、マイクロ波の照射時間に対する容器内の組成物の温度は約150℃程度であった。照射終了後冷却し、窒素ガスによって減圧解除し、白色固体を得た。得られた白色固体は、複数のヨウ化リチウム粒子が一体化した塊状物の形態であった。得られた白色固体は、プラスチック製の薬さじで回収された。
得られた白色固体の質量(回収量)及び算出した回収率を表1に示す。なお、回収率は以下の式により算出した。また、得られた白色固体の水分量をカールフィッシャー水分測定装置の気化法(280℃)で求め、ヨウ化リチウムの純度を自動滴定装置によるヨウ化物イオンの測定値から算出した。結果を表1に示す。
回収率=(回収されたヨウ化リチウム質量)/(投入したヨウ化リチウム質量)×100(%)
[実施例2]
ミクロ電子株式会社製の真空マイクロ波乾燥機内に、無色透明の55.6質量%のヨウ化リチウム水溶液100.2gを入れた石英ガラス製の容器を置き、真空ポンプでチャンバー内部を5.3kPaまで減圧した。その後、周波数2.45GHz、及び出力300Wのマイクロ波を26分照射し、続いて同一周波数で出力100Wのマイクロ波を84分照射し、水分を蒸発させて除去した。水溶液の温度は約180℃で極大値に達した後、単調に減少した。マイクロ波の照射を終了した時点で、マイクロ波の照射時間に対する容器内の組成物の温度は約140℃程度であった。照射終了後冷却し、窒素ガスによって減圧解除し、白色固体を得た。得られた白色固体は、複数のヨウ化リチウム粒子が一体化した塊状物の形態であった。なお、得られた白色固体は、プラスチック製の薬さじで回収された。得られた白色固体の回収量、回収率、水分量、及びLiI純度を、実施例1と同様に測定及び算出した。結果を表1に示す。
[実施例3]
ミクロ電子株式会社製の真空マイクロ波乾燥機内に、無色透明の55.6質量%のヨウ化リチウム水溶液300.5gを入れた石英ガラス製の容器を置き、真空ポンプでチャンバー内部を5.3kPaまで減圧した。その後、周波数2.45GHz、出力800Wのマイクロ波を20分照射し、続いて同一周波数で出力200Wのマイクロ波を90分照射し、水分を蒸発させて除去した。水溶液の温度は約170℃で極大値に達した後、単調に減少した。マイクロ波の照射を終了した時点で、マイクロ波の照射時間に対する容器内の組成物の温度は約140℃程度であった。照射終了後冷却し、窒素ガスによって減圧解除したところ、白色固体を得た。なお、得られた白色固体は、プラスチック製の薬さじで回収された。得られた白色固体は、複数のヨウ化リチウム粒子が一体化した塊状物の形態であった。得られた白色固体の回収量、回収率、水分量、及びLiI純度を、実施例1と同様に測定及び算出した。結果を表1に示す。
また、得られた白色固体を破砕して、平均粒径約15mmの試料を作製し、日本粉体工業技術協会企画 SAP01-79の造粒物のかさ密度測定方法を準用してかさ密度を測定したところ、かさ密度は0.54g/cmであった。
[比較例1]
500mLナスフラスコに無色透明の55.6質量%のヨウ化リチウム水溶液300.2gを入れ、ロータリーエバポレーターを用いて間接加熱による減圧乾燥を実施した。条件としては、2.5kPaまで減圧した後、200℃の温度で6時間乾燥を行った。乾燥終了後冷却し、窒素ガスによって減圧解除したところ、白色固体を得た。得られた白色固体は、フラスコに強固に固着しており、プラスチックの薬さじでは回収できなかったため、フラスコを木槌で破壊して回収された。得られた白色固体の回収量、回収率、水分量、及びLiI純度を、実施例1と同様に測定及び算出した。結果を表1に示す。
Figure 0007098306000001
実施例1で得られた塊状物から、直径約15mmの略球状のサンプルを切り出し、破壊強度を株式会社藤原製作所製の木屋式硬度計043019-Aで測定した。測定は、20サンプルについて行い、平均値、標準偏差、t値及び95%信頼区間を算出した(有意水準α=0.05)。結果を表2に示す。
比較例1で得られた無水ヨウ化リチウムは、部分的に粉末状のものとなったが、ナスフラスコの内壁面で固着した凝集物の状態となった。この凝集物から直径約15mmの略球状のサンプルを切り出し、破壊強度を株式会社藤原製作所製の木屋式硬度計043019-Eで測定した。測定は、20サンプルについて行い、破壊強度の平均値、標準偏差、t値及び95%信頼区間を算出した(有意水準α=0.05)。結果を表2に示す。
実施例1で得られた塊状物の破壊強度は、間接加熱による乾燥で得られた比較例1の凝集物の破壊強度の約10分の1倍となった。
Figure 0007098306000002
実施例1~3の結果から、マイクロ波照射による加熱では、内部の水分が急速に沸騰することによって上述の破壊強度が小さい塊状物が得られたと考えられる。このような塊状物が得られた結果として高い収率が得られた。
実施例1~3では、破壊強度が低下することによって、壁面へ付着した場合でもヨウ化リチウムの回収が容易となり、回収率が向上する。また、得られた結晶塊を粉砕する必要がある場合においても、破壊強度が小さいことから、摩耗等で不純物が混入する可能性が少なく、安定的に高品質な製品を製造できると考えられる。

Claims (5)

  1. 無機ヨウ素化合物を含む水溶液に減圧条件下でマイクロ波を照射することにより、前記水溶液から水を蒸発させて除去する水分除去工程を備え、
    前記無機ヨウ素化合物がヨウ化アルミニウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化コバルト、ヨウ化ストロンチウム、ヨウ化セリウム、ヨウ化鉄、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化マンガン、又はヨウ化リチウムである、無機ヨウ素化合物無水物の製造方法。
  2. 前記無機ヨウ素化合物が、ヨウ化ナトリウム又はヨウ化リチウムである、請求項1に記載の無機ヨウ素化合物無水物の製造方法。
  3. 前記水分除去工程が、一定出力のマイクロ波を照射したときに照射時間に対して前記水溶液の温度が少なくとも単調に減少するまで行われる、請求項1又は2に記載の無機ヨウ素化合物無水物の製造方法。
  4. 複数の無機ヨウ素化合物無水物の粒子が一体化した塊状物であって、
    木屋式硬度計で測定した破壊強度が100N以下であり、
    前記無機ヨウ素化合物がヨウ化アルミニウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化コバルト、ヨウ化ストロンチウム、ヨウ化セリウム、ヨウ化鉄、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化マンガン、又はヨウ化リチウムである、塊状物。
  5. 前記無機ヨウ素化合物が、ヨウ化ナトリウム又はヨウ化リチウムである、請求項4に記載の塊状物。
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