JP7097339B2 - 混合粉末の造粒体及び造粒方法 - Google Patents

混合粉末の造粒体及び造粒方法 Download PDF

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Description

本発明は、無機物からなる2種以上の粉末が混合された混合粉末の造粒体及び造粒方法に関し、より詳しくは、Liイオン二次電池用負極材の製造原料として好適な、Si粉末及び金属珪酸塩粉末を含む酸化珪素系混合粉末の造粒体及び造粒方法に関する。
酸化珪素(SiOx)は電気容量が大きく、寿命特性に優れたLiイオン二次電池用負極材であることが知られている。この酸化珪素系負極材は、酸化珪素粉末、導電助剤及びバインダーを混合してスラリー化したものを、銅箔等からなる集電体上に塗工して薄膜状の負極とされる。ここにおける酸化珪素粉末は、例えばSiの粉末とSiOの粉末とを混合した珪素系混合粉末を減圧下で加熱して生成したSiOガスを冷却し、析出させた後、そのSiO析出物を細かく破砕することにより得られる。このような析出法で製造される酸化珪素粉末は、アモルファスの部分を多く含み、Liイオンの吸蔵による体積変化を小さくして、サイクル特性を向上させることが知られている。
このような酸化珪素系負極材に特徴的な問題点として初期効率の低さがある。これは正極のLiが、充放電に寄与しない不可逆容量となるLi化合物の生成に消費されてしまうことが原因である。これを解消する手法として、電池に組み込む前の酸化珪素粉末にLiを添加するLiドープや、その酸化珪素粉末にMgを添加するMgドープが知られており、Liドープの一つの手法として、近時、本出願人はSi粉末と珪酸リチウム粉末とを混合して減圧下で加熱する手法を開発した(特許文献3参照)。
ところで、前述した酸化珪素粉末の製造工程、特に、珪素系混合粉末を加熱してSiOガスを発生させるSiOガス発生工程においては、原料である珪素系混合粉末、すなわちSi粉末とSiO粉末との混合粉末を造粒玉などと称される造粒体に成形して、反応容器内に装填することがしはしば行われる(特許文献1及び2参照)。これは、反応容器内において原料微粒子が発生ガスに乗って製品に混入するのを防ぐこと、及び通気性を向上させることを目的としており、その造粒径は造粒体間における通気性確保の観点から1~20mmが適当とされている。また、ここにおける造粒方法としては、Si粉末とSiO粉末との混合粉末を水と混合し、混練して、所定の粒状に成形して乾燥させる湿式造粒法が比較的多く採用されている。
Si粉末とSiO粉末との混合粉末を水と混合し混練して成形する湿式造粒法の場合、水を使わない乾式造粒法に比べると、造粒体の機械的強度は高い。しかし、実操業においては、その機械的強度は十分とは言えず、造粒体が反応容器内に投入される過程等で解砕して微粉化することにより、原料粉末が製品に混入するとか、或いは反応容器内で所定の粒径が確保されなくなることにより、反応容器内での通気性が不足するといった問題を生じる危険性がある。特に、連続操業のための追加投入を考慮した場合、この危険性が高くなる。
造粒体の機械的強度を高めるために有機バインダーや無機バインダーを用いることは考えられる。いずれのバインダーの場合も造粒体の機械的強度は上昇するが、バインダー成分が反応の過程でガスを発生させて炉内圧力を上昇させることによる反応性低下が生じたり、バインダー成分そのものが不純物となったりする可能性が高く、実用的とは言えない。
特許第3488419号公報 特開2012-197207号公報 WO2018/074175公報
本発明の目的は、Liイオン二次電池用負極材の製造原料として特に適した酸化珪素系混合粉末の造粒体であって、機械的強度が高く、しかも不純物による汚染の危険が少ない酸化珪素系混合粉末の造粒体及び造粒方法を提供することにある。
Liイオン二次電池に使用される酸化珪素系負極材に特徴的な問題点として初期効率の低さがあること、その低さを解消する手法として、酸化珪素粉末にLiを添加するLiドープがあること、及びそのLiドープの一つの手法として、Si粉末と珪酸リチウム粉末とを混合して減圧下で加熱する手法を本出願人が先に開発したことは、前述したとおりである。
この手法によると、Si単体が共存する状況下において珪酸リチウムが減圧下で加熱されることにより、SiOガスとLiガスが同時に発生し、発生ガスを冷却して析出させることにより、SiOとLiが均一に混合した析出体が得られる。その結果、この析出体を粉砕して粉末化すると、そのLi含有SiO粉末は、粉末粒子間におけるLi濃度分布の不均一も、個々の粉末粒子中におけるLi濃度分布の不均一も共に解消された、均質性の高い負極材が得られる。
この負極材は、負極材用粉末粒子中におけるLi濃度分布の不均一と、粉末粒子間におけるLi濃度分布の不均一の両方が共に解消されることにより、Li濃度分布の不均一に起因する電池性能の低下を効果的に回避して、電池性能の大幅向上を図ることが可能である。
本発明者は、この負極材の開発に当初より深く関与しており、その過程で今回、Si粉末と珪酸リチウム粉末との混合粉末は、電池性能の向上に貢献するばかりでなく、造粒玉等と呼ばれる造粒体の製造に極めて高い適性を示すことを知見した。すなわち、Si粉末と珪酸リチウム粉末とを含む混合粉末は、水のみによる造粒を行っても、バインダーを使用したときに匹敵する高い機械的強度を造粒体に付与できることが、本発明者による調査検討の結果、判明したのである。
本発明は、かかる知見を基礎として開発されたものであり、その造粒体はSi粉末と金属珪酸塩粉末を原料の全部又は一部とし、水のみによる混練成形により造粒されたバインダーレス造粒体である。
また、本発明の造粒方法は、Si粉末と金属珪酸塩粉末とを原料の全部又は一部とし、これらの原料粉末を混合した後に水のみを用いて混練し、成形した後に乾燥させるバインダーレス造粒体の製造方法である。
本発明のバインダーレス造粒体は、Li含有SiO粉末、Mg含有SiO粉末といった金属元素含有SiO粉末の製造原料として主に使用される。例えば、金属珪酸塩として珪酸リチウムを用いた場合は、Li含有SiOの製造原料となり、珪酸マグネシウムを用いた場合は、Mg含有SiOの製造原料となる。これらの製造原料を減圧下で加熱してガスを発生させ、発生したガスを冷却することにより、珪酸リチウムの場合はLi含有SiOの析出体が得られ、珪酸マグネシウムの場合はMg含有SiOの析出体が得られる。これらの析出体を粉砕して得た粉末の造粒体が、均質性の高い負極材の製造原料となることは前述したとおりである。
珪酸リチウム、珪酸マグネシウム以外の金属珪酸塩としては、珪酸バリウム、珪酸カルシウムなどがある。珪酸カリウム、珪酸ナトリウムなどもあるが、これらは水に非常に溶けやすく、また、その水溶液のpHが高くなるため、水を用いたバインダーレス造粒体の原料粉末としては適さない。
珪酸リチウムについても、これはLiOとSiOの複合酸化物であり、LiO比が高いLiSiO、或いはそれ以上にLiO比が高いものは、水と混合したときに水に溶けるのではなく、水と激しく反応して強いアルカリと熱を生じ、Si粉末と水の反応を促進するため、水を用いたバインダーレス造粒体の原料粉末としては適さない。
すなわち、金属珪酸塩が珪酸リチウムの場合は、モル比でLiO/SiO<2であれば、水を用いたバインダーレス造粒体の原料粉末に用いることが可能であり、好ましくはLiO/SiO≦1、更に好ましくはLiO/SiO≦0.5である。
このような金属珪酸塩粉末とSi粉末とを含む混合粉末を水と混合し混練して造粒すると、図1A及び図1Bに示すように、混合粉末中の金属珪酸塩粉末が水に僅かに溶けて、その水を適度にアルカリ化する。そして、その弱アルカリ性の水がSi粉末の表面に形成されているSiO皮膜を僅かに溶かすことにより、SiO皮膜がバインダーの役目を果たす。その結果、混合粉末を混練するための液体として水しか使用しないにもかかわらず、バインダーを使用したのと同様に、金属珪酸塩粉末とSi粉末の粉末同士が強固に接着され、製造される造粒体の機械的強度が向上する。
水を用いたバインダーレス造粒体の原料粉末として適する金属珪酸塩の種類については、前述の各種金属珪酸塩以外にも、その金属珪酸塩粉末2gを純水100gに投入して作製した25°Cの懸濁液のpHが9~12を示すものは、水を用いたバインダーレス造粒体の原料粉末として適する。ここにおける懸濁液のpHは、11.5以下が特に好ましい。混練用の水のpHが低いと、Si粉末の表面に形成されたSiO皮膜の溶解が生じない。反対に、この水のpHが高すぎると、SiO皮膜の溶解が進み、内部のSiが、水と下記の化学式(1)に示される化学反応を連続的に起こして、熱と水素を生じるために危険である。また、反応原料としてのSiが酸化されるために品質上も問題が生じる。
Si+2HO→SiO+2H↑・・・(1)
水を用いたバインダーレス造粒体の原料粉末として適する前述の各種金属珪酸塩は、言うまでもなく、この条件を満たし、その粉末2gを純水100gに投入して作製した25℃の懸濁液のpHが9~12を示す。ただし、金属珪酸塩が同じ化合物であっても、その粉末の粒度、不純物量等によって、このpHは微妙に変化する。使用する金属珪酸塩粉末の懸濁液がこの条件を満たすことが重要である。
また、同じpHであっても造粒中(混練、成形中)の水温が高いとSiOの溶解が激しくなり、やはり前述の問題が生じる。このため、造粒中(混練、成形中)の水温は30℃以下が望ましく、15℃以下が更に望ましく、5℃以下が特に望ましい。
造粒体を構成する混合粉末の組成については、この混合粉末がLiイオン二次電池用負極材の製造原料であるという観点から、混合後の粉末のモル比で表して、0.8≦O/Si≦1.2であることが望ましい。O/Siが1に比して小さすぎると、余剰のSiが炉内に残留して連続操業の妨げになり、逆に1に比して大きすぎると、余剰の珪酸塩が炉内に残留して同じく連続操業の妨げになる。
造粒体の機械的強度に関しては、Si粉末、珪酸塩粉末ともに粒度が小さい方が表面積が増え、接着点が多くなるために、その強度が上昇するが、小さくなり過ぎた場合はpHが高くなり過ぎたり,化学式1の反応が進みすぎたりするために、適度な粒度であることが重要である。この観点から、Si粉末の粒度は、平均粒径で1~18μmが望ましく、1~10μmが更に望ましく、1~5μmが特に望ましい。金属珪酸塩粉末の粒度については、金属元素にもよるが、一般的には平均粒径で1~30μmが望ましく、1~20μmが更に望ましく、1~15μmが特に望ましい。珪酸リチウム粉末の場合は、まさにこの粒径範囲が適切である。
なお、本発明において、平均粒径とは、レーザ回折式の粒度分布計を用いて体積基準の粒度分布を測定した場合のメディアン径、いわゆるD50のことをいう。
造粒体の直径、すなわち造粒径については粒度範囲で0.25~30mmが望ましく、0.5~10mmが更に望ましく、0.5~5mmが特に望ましい。造粒径が大きすぎる場合は、造粒体が落下したときの衝撃が大きくなり過ぎて解砕が生じやすくなる。反対に小さすぎる場合は造粒体の流動性が悪化し、追加の投入が困難となる。
造粒体を製造するための装置は、公知の装置を用いることができる。例えばSi粉末と金属珪酸塩粉末との混合には公知のV型混合機などを用いることができる。混練、成形は手でこねることでも可能であるし、パン型造粒機やディスクペレッタ、流動層式造粒機などを用いることでも可能である。
乾燥には一般的な加熱乾燥の他に、減圧乾燥も用いることができる。加熱乾燥では一次的に化学式1の反応が促進されるが、温度が高いために乾燥が速い。乾燥すれば、化学式1の反応は停止する。減圧乾燥を用いれば、加熱せずに乾燥させることができるため、化学式1の反応を最小限に抑制することができる。但し、加熱乾燥に比べてバインダーとして働くSiOが少なくなり、強度は劣る傾向となる。
本発明の混合粉末の造粒体及び造粒方法は、Si粉末と金属珪酸塩粉末とを含む混合粉末を混練形成して造粒するに当たり、混練形成のための液体として水を使用し、バインダーを使用しないにもかかわらず、バインダーを使用したときに匹敵する機械的強度を造粒体に付与することができる。このため、造粒体の使用過程での解砕が抑制され、反応容器内での通気性の悪化を回避できる。また、バインダー成分による汚染の危険性へ回避できる。
Si粉末と金属珪酸塩粉末とを混合したときのイメージ図である。 Si粉末と金属珪酸塩粉末とを水を用いて混練したときのイメージ図である。
以下に本発明の実施形態として、Liイオン二次電池用負極材の製造原料として使用される混合粉末の造粒体及び造粒方法を、典型例について説明する。
事前段階として、Si粉末及び金属珪酸塩粉末を製造する。Si粉末については、Siウエハをボールミルで粉砕し、粒度を調整することにより、所定の粒度のSi粉末を製造することができる。Si粉末の粒度は、前述したとおり、平均粒径で1~18μmが望ましく、1~10μmが更に望ましく、1~5μmが特に望ましい。
金属珪酸塩粉末については、所定金属の炭酸塩又は酸化物をSiOと所定の比率で混合した後に融点以上に加熱して金属珪酸塩を作製した後、ボールミルで粒度を調整することにより、所定の粒度の金属珪酸塩粉末を作製することができる。
ここにおける金属珪酸塩粉末は、例えば珪酸リチウムであり、その珪酸リチウムは、モル比でLi/SiO<2を満足するものが好ましく、更に好ましくはLi/SiO≦1、特に好ましくはLi/SiO≦0.5を満足するものである。また、当該粉末2gを純水100gに投入したときに、25℃でpHが9~12を示す懸濁液を生成可能である。
金属珪酸塩粉末の粒度は、前述したとおり、平均粒径で1~30μmが望ましく、1~20μmが更に望ましく、1~15μmが特に望ましい。いずれの粉末についても、粒度は、レーザ回折式の粒度分布測定装置により測定しておく。粒度分布測定条件は以下のとおりである。
粒度分布測定条件
装置: マルバーン・パナリティカル 社製 Mastersizer 2000
分散媒:イソプロピルアルコール
粒子屈折率:実数部1.544 虚数部1
分散媒屈折率:1.390
Si粉末及び金属珪酸塩粉末が製造されると、第1段階として、製造されたSi粉末と金属珪酸塩粉末とを混合する。製造されたSi粉末と金属珪酸塩粉末との混合は、V型混合機により行うことができる。必要に応じて、O量調整のためのSiO粉末等を混合することができる。混合粉末の組成は、混合後の粉末のモル比で表して、0.8≦O/Si≦1.2であることが望ましい。
ここにおけるSi濃度は、Li濃度などと同様に、ICP発光分析によって求めることができる。O濃度については、LECO社製 TC-436 を使用して、不活性ガス融解-赤外線吸収法(inert gas fusion infrared absorption method;GFA )により測定することができる。
また、金属珪酸塩粉末の特性調査のために、混合前の金属珪酸塩粉末2gを100gの純水に投入して攪拌し、懸濁液を作製して、そのpHを測定しておく。pH測定条件は以下のとおりである。
pH測定条件
装置:HORIBA製 F-72
電極内部液:HORIBA製 比較電極内部液300
校正に用いる標準液:HORIBA製 pH標準液 100-4 (フタル酸塩標準液)
HORIBA製 pH標準液 100-7 (中性リン酸塩標準液)
HORIBA製 pH標準液 100-9 (ホウ酸塩標準液)
Si粉末と金属珪酸塩粉末とを含む混合粉末が作製されると、第2段階として、混合粉末を水により造粒する。すなわち、混合粉末を水により混練し、粒状に成形する。造粒機としてはアーステクニカ製ハイスピードミキサーを使用することができる。水と混合粉末は、ここでは重量比で10:90の割合で造粒機に投入する。
造粒後に造粒機から排出された造粒体を目開き500μm、目開き10mmの篩で分級することにより、微粉と粗粒を除去する。すなわち、造粒径が0.5~10mmの粒度範囲(0.5mmふるい上10mmふるい下の粒度範囲)である造粒体を分級する。分級後の造粒体を棚型乾燥機を用いて120℃で12hr乾燥する。乾燥後の造粒体を構成する粉末のSi濃度及びO濃度を、混合後の粉末の場合と同様にして測定する。また、乾燥後の造粒体をJIS Z8841に規定される造粒物の落下強度試験に供して、その機械的強度を測定する。落下強度試験における落下操作は1回のみとし、落下操作後に使用するふるいの目開きは250μmとした。
上記実施形態で説明した方法により実際に造粒を行った結果を、実施例として以下に説明し、合わせて比較例を示す。また、各例における各種数値を表1に整理して示す。
Figure 0007097339000001
(実施例1-1)
Si粉末と、金属珪酸塩粉末であるLiSiとをV型混合機により混合し、その混合粉末を造粒機(アーステクニカ製ハイスピードミキサー)により混練して粒状に成形した後、棚型乾燥機により乾燥した。造粒機内では適宜常温の水を加え、乾燥後の強度を最適化した。
LiSiは〔x(LiO)+y(SiO)〕(x=1,y=2)であり、LiO/SiO=0.5である。
Li2Si2O5粉末の粒度は平均粒径で15μmである。Si粉末の粒度は平均粒径で2.5μmである。混合粉末のO/Siモル比は1である。造粒径は0.5mmふるい上10mmふるい下の粒度範囲である。
造粒体を乾燥した後、その造粒体を構成する混合粉末のO/Siモル比を測定したが、1.1であり、O濃度比が上昇したこと、すなわち造粒過程でSiの酸化反応が発生したことが確認された。この酸化反応に伴って水素が発生したが、水素発生量は少量であり、このことはO濃度比の変化からも明らかである。ここにおける水素発生量は、5段階評価で中間の「3」であり、「5」は造粒が困難な領域である。
また、造粒とは別に、ここで用いたLiSi粉末2gを純水100gと混合して作製した懸濁液は、25℃でpH=11.2を示した。
そして、乾燥後の造粒体の機械的強度を測定したが、Si粉末とSiO粉末を水と混合して造粒した場合と比べて格段に向上した。そして、ここにおける造粒体の機械的強度を「100」とし、Si粉末とSiO粉末を水と混合して造粒した場合を「20」として、造粒体の機械的強度を相対評価した。ちなみに、Si粉末とSiO2粉末を水と混合して造粒した例は、後に比較例1として示されている。
(実施例1-2)
Si粉末の粒度を平均粒径で6.5μmに大きくした。これ以外は実施例1-1と同じである。
実施例1-1と比べて、混合粉末を水と混合して混練、成形したときのSiの酸化反応が抑制されている。その一方で、造粒体の機械的強度が若干低下した。
(実施例1-3)
Si粉末の粒度を平均粒径で10μmと更に大きくした。これ以外は実施例1-1と同じである。
実施例1-1と比べて、混合粉末を水と混合して混練、成形したときのSiの酸化反応が更に抑制されている。その一方で、造粒体の機械的強度が更に少し低下した。
(実施例1-4)
Si粉末の粒度を平均粒径で15μmと更に大きくした。これ以外は実施例1-1と同じである。
実施例1-1と比べて、混合粉末を水と混合して混練、成形したときのSiの酸化反応が更に抑制されている。その一方で、造粒体の機械的強度が更に少し低下した。機械的強度の評価は「50」であり、後述する比較例1での造粒体の機械的強度の評価が「20」であることを考えると、評価が「50」までは十分に満足できるレベルである。
(実施例1-5)
金属珪酸塩粉末としてのLiSi粉末の粒度を、実施例1-1と比べ、平均粒径で12μmと小さくした。これ以外は実施例1-1と同じである。
実施例1-1と比べて、混合粉末を水と混合して混練、成形したときのSiの酸化反応が活発化し、水素発生量の評価が「3」から「4」に上昇した。その一方で、造粒体の機械的強度が若干上昇した。
ここで用いたLiSi粉末2gを純水100gと混合して作製した懸濁液は、25℃でpH=11.3を示し、アルカリ度が若干上昇した。Siの酸化反応が活発化したのはこのためと考えられる。
(実施例1-6)
金属珪酸塩粉末としてのLiSi粉末の粒度を、実施例1-1と比べ、平均粒径で20μmと大きくした。これ以外は実施例1-1と同じである。
実施例1-5と比べて、混合粉末を水と混合して混練、成形したときのSiの酸化反応が抑制され、実施例1-1と同程度に戻った。水素発生量の評価も「3」に戻った。その一方で、造粒体の機械的強度が若干低下した。
ここで用いたLiSi粉末2gを純水100gと混合して作製した懸濁液は、25℃でpH=11.0を示し、アルカリ度が若干低下した。Siの酸化反応が抑制されたのはこのためと考えられる。
(実施例1-7)
金属珪酸塩粉末としてのLiSi粉末の粒度を、実施例1-1と比べ、平均粒径で30μmと更に大きくした。これ以外は実施例1-1と同じである。
混合粉末を水と混合して混練、成形したときのSiの酸化反応が抑制され、水素発生量の評価は「3」である。その一方で、造粒体の機械的強度が若干低下した。
ここで用いたLiSi粉末2gを純水100gと混合して生成した懸濁液は、25℃でpH=11.0を示した。
(実施例2)
金属珪酸塩粉末をLiSi粉末から、LiSiO粉末に変更した。LiSiOは〔x(LiO)+y(SiO)〕(x=1,y=1)であり、LiO/SiO=1である。これ以外は実施例1-1と同じである。
実施例1-1と比べ、混合粉末を水と混合して混練、成形したときのSiの酸化反応が活発化し、水素発生量の評価は「4」である。その一方で、造粒体の機械的強度は若干上昇した。
ここで用いたLiSiO粉末2gを純水100gと混合して作製した懸濁液は、25℃でpH=11.7を示し、実施例1-1~7と比べアルカリ度が上昇した。
(実施例3)
金属珪酸塩粉末を珪酸リチウムから、珪酸マグネシウムであるMgSi粉末に変更した。これ以外は実施例1-1と同じである。
実施例1-1と比べ、混合粉末を水と混合して混練、成形したときのSiの酸化反応は著しく抑制され、水素発生量の評価は「1」である。その一方で、造粒体の機械的強度は若干低下した。
ここで用いたMgSi粉末2gを純水100gと混合して作製した懸濁液は、25℃でpH=9.9を示し、弱アルカリ水ではあるものの、実施例1-1~7と比べてアルカリ度が低い。
(実施例4-1)
実施例1-1において、造粒に使用する水の温度を25℃から15℃に下げた。これ以外は実施例1-1と同じである。
実施例1-1と比べて、混合粉末を水と混合して混練、成形したときのSiの酸化反応が抑制されている。その一方で、造粒体の機械的強度が若干低下した。
(実施例4-2)
造粒に使用する水の温度を更に低い5℃に下げた。これ以外は実施例1-1と同じである。
実施例1-1と比べて、混合粉末を水と混合して混練、成形したときのSiの酸化反応が更に抑制されている。その一方で、造粒体の機械的強度が更に少し低下した。
(実施例4-3)
実施例2において、造粒に使用する水の温度を25℃から5℃に下げた。これ以外は実施例2と同じである。
実施例2と比べて、混合粉末を水と混合して混練、成形したときのSiの酸化反応が抑制されている。その一方で、造粒体の機械的強度が若干低下した。
(比較例1)
Si粉末と、SiO粉末(酸化珪素粉末)とをV型混合機により混合し、その混合粉末を造粒機(アーステクニカ製ハイスピードミキサー)により混練して粒状に生成した後、棚型乾燥機により乾燥した。Si粉末と混合する粉末の種類が異なる以外、実施例1-1と同じである。
SiO粉末(酸化珪素粉末)を水と混合して混練、成形したときのSiの酸化反応は発生していないが、造粒体の機械的強度は「20」と、上述した一連の実施例に比して著しく低下した。
ここで用いたSiO粉末(酸化珪素粉末)2gを純水100gと混合して作製した懸濁液は、25℃でpH=7.1と、ほぼ中性を示した。
(比較例2-1)
実施例1-1と同様に、Si粉末とLiSi粉末とをV型混合機により混合し、その混合粉末を造粒機(アーステクニカ製ハイスピードミキサー)により混練して粒状に成形した後、棚型乾燥機により乾燥した。
実施例1-1と相違するのは、Si粉末の粒度であり、その平均粒径は20μmと大きい。これ以外は実施例1-1と同じである。
実施例1-1と比べ、混合粉末を水と混合して混練、成形したときのSiの酸化反応は著しく抑制され、水素発生量の評価は「1」である。その一方で、造粒体の機械的強度は「30」と大きく低下した。ただし、その機械的強度は比較例1より高い。
ここで用いたLiSi粉末2gを純水100gと混合して作製した懸濁液は、実施例1と同じであり、25℃でpH=11.2を示す。
(比較例2-2)
金属珪酸塩粉末であるLiSi粉末の粒度を平均粒径で45μmとした。これ以外は実施例1-1と同じである。
実施例1-1と比べ、混合粉末を水と混合して混練、成形したときのSiの酸化反応が抑制され、水素発生量の評価は「2」である。その一方で、造粒体の機械的強度は「30」と大きく低下した。ただし、その機械的強度は比較例1より高い。
ここで用いたLiSi粉末2gを純水100gと混合して作製した懸濁液は、実施例1と同じであり、25℃でpH=11.0を示す。
(比較例2-3)
造粒体の直径、すなわち造粒径を0.5mmふるい上40mmふるい下の粒度範囲とした。これ以外は実施例1-1と同じである。
混合粉末を水と混合して混練、成形したときのSiの酸化反応は実施例1-1と同程度に抑制され、水素発生量の評価は「3」である。また、混合粉末を水と混合して混練、成形したときのSiの酸化反応も実施例1-1と同程度に抑制されている。
しかしながら、造粒体の機械的強度は「10」と大きく低下した。これは、単純に造粒体のサイズが大きすぎるためであり、金属珪酸塩粉末であるLiSi粉末の表面が水に溶解する現象、その現象により水が弱アルカリ化する現象、その弱アルカリ水により、Si粉末の表面に形成されているSiO皮膜が僅かに溶解する現象、これらの現象によるバインダー効果が消滅したわけではない。
(比較例3)
金属珪酸塩粉末をLiSi粉末からLiSiO粉末に変更した。LiSiOは〔x(LiO)+y(SiO)〕(x=2,y=1)であり、LiO/SiO=2である。これ以外は実施例1-1と同じである。
混合粉末を水と混合して混練、成形したときのSiの酸化反応が激しく、水素発生量の評価は、造粒が困難な「5」であった。
ここで用いたLiSiO粉末2gを純水100gと混合して懸濁液としたところ、その懸濁液は25℃でpH=12.1を示した。また、LiSiO粉末が水と激しく反応し、強いアルカリ及び熱を生じた。この高温の強アルカリ水がSiと激しく反応したことが、混合粉末の混練、成形過程でSiが激しく酸化し、多量の水素を発生した現象の要因である。

Claims (9)

  1. Liイオン二次電池用負極材の製造原料として使用される混合粉末の造粒体であって、Si粉末と金属珪酸塩粉末を原料の全部又は一部とし、水のみによる混練成形により造粒されたバインダーレス造粒体。
    ただし、前記金属珪酸塩粉末は、組成がモル比でLiO / SiO< 2 であるケイ酸リチウム粉末であり、前記バインダーレス造粒体の造粒径は粒度範囲で0.25~30mmである。
  2. Liイオン二次電池用負極材の製造原料として使用される混合粉末の造粒体であって、Si粉末と金属珪酸塩粉末を原料の全部又は一部とし、水のみによる混練成形により造粒されたバインダーレス造粒体。
    ただし、前記金属珪酸塩粉末は、当該粉末2gを純水100gに投入して作製した懸濁液のpHが25℃において9~12を示すものに限り、前記バインダーレス造粒体の造粒径は粒度範囲で0.25~30mmである。
  3. 請求項1又は2に記載バインダーレス造粒体において、
    前記Si粉末の粒度が平均粒径で1~18μmであるバインダーレス造粒体。
  4. 請求項1~3のいずれかに記載のバインダーレス造粒体において、
    前記金属珪酸塩粉末の粒度が平均粒径で1~30μmであるバインダーレス造粒体。
  5. Liイオン二次電池用負極材の製造原料として使用される混合粉末の造粒方法であって、Si粉末と金属珪酸塩粉末とを原料の全部又は一部とし、これらの原料粉末を混合した後に水のみを用いて混練し、粒状に成形した後に乾燥させるバインダーレス造粒体の製造方法。
    ただし、前記金属珪酸塩粉末は、組成がモル比でLiO / SiO< 2 であるケイ酸リチウム粉末であり、前記バインダーレス造粒体の造粒径は粒度範囲で0.25 ~30mmである。
  6. Liイオン二次電池用負極材の製造原料として使用される混合粉末の造粒方法であって、Si粉末と金属珪酸塩粉末とを原料の全部又は一部とし、これらの原料粉末を混合した後に水のみを用いて混練し、粒状に成形した後に乾燥させるバインダーレス造粒体の製造方法。
    ただし、前記金属珪酸塩粉末は、当該粉末2gを純水100gに投入して作製した懸濁液のpHが25℃において9~12を示すものに限り、前記バインダーレス造粒体の造粒径は粒度範囲で0.25 ~30mmである。
  7. 請求項5又は6に記載のバインダーレス造粒体の製造方法において、
    前記混練及び前記成形における水の温度を15℃以下に維持するバインダーレス造粒体の製造方法。
  8. 請求項5~7のいずれかに記載のバインダーレス造粒体の製造方法において、前記乾燥を減圧乾燥により行うバインダーレス造粒体の製造方法。
  9. 請求項5~8のいずれかに記載のバインダーレス造粒体の製造方法において、
    下記(a)又は(b)の少なくとも一つを満足するバインダーレス造粒体の製造方法。
    (a)前記Si粉末の粒度が平均粒径で1~18μmである。
    (b)前記金属珪酸塩粉末の粒度が平均粒径で1~30μmである。
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