JP7096515B2 - 被覆用組成物及び被覆物品 - Google Patents

Description

本開示は、被覆用組成物及び被覆物品に関する。

フッ素樹脂は、耐熱性、耐薬品性、撥水撥油性、離型性、摺動性等に優れている。このことから、フッ素樹脂は、成形金型離型材、オフィスオートメーション［ＯＡ］機器用ロール、アイロン等の家庭用品、フライパンやホットプレート等の厨房器具、食品工業、電気工業、機械工業等の分野で被覆材として用いられている。

特許文献１には、テトラフルオロエチレン重合体に、５０％分解温度が２５０℃以上である脂肪族系ポリオキシアルキレンエーテル分散剤を配合してなる含フッ素樹脂水性分散体組成物が開示されている。

特許文献２には、溶融加工可能なフルオロポリマーと、フルオロポリマー固形分の重量を基準にして１０ｐｐｍ未満の量の、分子量が１０００ｇ／ｍｏｌ以下のフッ素化界面活性剤を含む水性フルオロポリマー分散体が開示されている。

特許文献３には、溶融加工可能なフッ素樹脂、ノニオン系界面活性剤及び特定の多価アルコールからなり、含フッ素界面活性剤の濃度が低く、造膜性と貯蔵安定性に優れた水性被覆用組成物が開示されている。

特許文献４には、フッ素系界面活性剤を含有することなく、アセチレンジオール系界面活性剤を含有するフッ素樹脂水性分散体が開示されている。

国際公開第２００３／１０６５５６号 特表２００６／５２２８３６号公報 国際公開第２００９／０２８３８５号 特開２００９－１６１６１６号公報

本開示は、機械的安定性が良好で、造膜性に優れた被覆用組成物及びそれを被覆してなる被覆物品を提供することを目的とする。

本開示は、９８％積算粒子径が０．４μｍ以上１．０μｍ未満の含フッ素重合体（ａ）と、非アルキルフェノール型ノニオン界面活性剤（ｂ）と、アセチレンジオール系界面活性剤（ｃ）と、沸点が１００℃以上でかつ水酸基を２個以上有する水溶性の多価アルコール（ｄ）とを含有する水性分散体組成物であり、
前記含フッ素重合体（ａ）は、テトラフルオロエチレン〔ＴＦＥ〕／ヘキサフルオロプロピレン〔ＨＦＰ〕共重合体〔ＦＥＰ〕及びＴＦＥ／パーフルオロ（アルキルビニルエーテル）〔ＰＡＶＥ〕共重合体〔ＰＦＡ〕よりなる群から選択される少なくとも１種であり、
前記アセチレンジオール系界面活性剤（ｃ）は熱重量分析で３００℃における残量が３．０質量％以上であることを特徴とする被覆用組成物である。

上記非アルキルフェノール型ノニオン界面活性剤（ｂ）は、式（Ｉ）：
Ｒ－Ｏ－Ａ－Ｈ （Ｉ）
（式中、Ｒは直鎖状または分岐鎖状の炭素数８～１９の飽和又は不飽和の非環式脂肪族炭化水素基あるいは、炭素数８～１９の飽和環式脂肪族炭化水素基を表す。Ａはオキシエチレンユニットを３～２５個およびオキシプロピレンユニットを０～５個有するポリオキシアルキレン鎖）で示される非アルキルフェノール型ノニオン界面活性剤であることが好ましい。

上記アセチレンジオール系界面活性剤（ｃ）は、アセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物であることが好ましい。
上記アセチレンジオール系界面活性剤（ｃ）は、ＨＬＢが４を超えるものであることが好ましい。

上記沸点が１００℃以上でかつ水酸基を２個以上有する水溶性の多価アルコール（ｄ）は、エチレングリコールであることが好ましい。

本開示は、上記被覆用組成物を塗装することにより得られた被覆物品でもある。

本開示により、機械的安定性が良好で、造膜性に優れた被覆用組成物及びそれを被覆してなる被覆物品を提供することができる。

以下、本開示を詳細に説明する。
本開示の被覆用組成物は、９８％積算粒子径が０．４μｍ以上１．０μｍ未満の含フッ素重合体（ａ）と、非アルキルフェノール型ノニオン界面活性剤（ｂ）と、アセチレンジオール系界面活性剤（ｃ）とを含有する水性分散体組成物であり、前記アセチレンジオール系界面活性剤（ｃ）は熱重量分析で３００℃における残量が３．０質量％以上であるものである。本開示の被覆用組成物は、非アルキルフェノール型ノニオン界面活性剤（ｂ）と、特定のアセチレンジオール系界面活性剤（ｃ）とを組み合わせて用いたことによって、優れた機械的安定性と造膜性を実現した被覆用組成物である。

上記機械的安定性とは、送液や再分散の際、ホモジナイザー等による強い攪拌や剪断力を与えても、再分散不可能な凝集体を生成しにくい性質のことである。

フッ素樹脂は、表面張力が大きくなる傾向にあり、フッ素樹脂水性分散液を各種の基材にコーティングすると、はじきが生じて塗膜がきれいに形成できなかったり、フッ素樹脂水性分散液の貯蔵安定性や機械的安定性に問題が生じたりしやすい。

本開示においては、非アルキルフェノール型ノニオン界面活性剤（ｂ）と、特定のアセチレンジオール系界面活性剤（ｃ）とを用いることにより、塗膜性が良好で、塗膜後のクラック発生がなく、また、被覆用組成物中のフッ素樹脂の分散状態が安定するものである。

フッ素樹脂を含有する被覆用組成物において界面活性剤（ｂ）を使用すると、被覆用組成物の機械的安定性が向上する。界面活性剤（ｃ）を使用すると、被覆用組成物の機械的安定性を向上させ、かつ造膜性と塗膜の平滑性を向上させることができる。

上記アセチレンジオール系界面活性剤（ｃ）は、分子中に炭素－炭素三重結合を有する界面活性剤である。上記アセチレンジオール系界面活性剤（ｃ）としては、例えば、アセチレンジオール（同一分子内にアセチレン結合と２つの水酸基を同時に有する）界面活性剤、アセチレンジオールにアルキレンオキサイドユニットが付加した界面活性剤が挙げられる。
このようなアセチレンジオール系界面活性剤として具体的には例えば、下記一般式（１）で表される化合物、及び／又は下記一般式（２）で表される化合物を挙げることができる。

（式中、Ｒ^１およびＲ^２は、各々、独立して、炭素数３～９のアルキル基を表し、Ｒ^３およびＲ^４は、各々独立して、炭素数１～４のアルキレン基を表し、ｍおよびｎは整数であり、ｍとｎの合計は２～５０を表す。）

上記アセチレンジオール系界面活性剤（ｃ）は、熱重量分析で３００℃における残量が３．０質量％以上である。熱重量分析で３００℃における残量が３．０質量％以上であるアセチレンジオール系界面活性剤（ｃ）を使用することで、熱溶融時に高温での加熱を行った場合でも、アセチレンジオール系界面活性剤（ｃ）が塗膜中に残存し、これによって、各種機能を発揮することができる点で好ましい。

本開示において、３００℃における残質量割合は、示差熱・熱重量測定装置〔ＴＧ－ＤＴＡ〕（商品名：ＴＧ／ＤＴＡ７２００、日立ハイテクサイエンス社製）を用い、試料１０ｍｇを昇温速度１０℃／分で室温から昇温し、３００℃で試料が残存した質量割合である。

本開示において、アセチレンジオール系界面活性剤（ｃ）は、上記一般式（２）で表されるアセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物が好ましい。アセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物は、上記熱重量分析で３００℃における残量が３．０質量％以上を満たすものとすることが容易であり、これによって、高温での加熱硬化時時にも良好な効果が得られる点で好ましい。

上記アセチレンジオール系界面活性剤は、市販品を使用してもよい。例えば、サーフィノール（登録商標）４４０、４６５、４８５、ＳＥ、２５０２、オルフィン（登録商標）ＰＤ－００２Ｗ、ＥＸＰ．４２００、Ｅ１００４、Ｅ１０１０（いずれも日信化学工業社製）、アセチレノール（登録商標）Ｅ００、アセチレノールＥ１３Ｔ、アセチレノールＥ４０、アセチレノールＥ６０、アセレノールＥ１００、アセチレノールＥ２００（以上、川研ファインケミカル株式会社製）などが挙げられる。

上記アセチレンジオール系界面活性剤（ｃ）は、ＨＬＢが４を超えることが好ましく、５以上であることがより好ましい。６以上が更に好ましく、８以上が最も好ましい。
ＨＬＢが高いアセチレンジオール系界面活性剤は、耐熱性に優れる。ＨＬＢが高いアセチレンジオール系界面活性剤を使用することで、被覆用組成物の造膜性が向上する。また、ＨＬＢが高いアセチレンジオール系界面活性剤は、水性媒体に対して溶解性に優れるものであり、被覆用組成物の機械的安定性がより優れるものとなる。
なお、本開示において、ＨＬＢは、グリフィン法により、次の算出式で定義される値である。
ＨＬＢ値＝２０×［親水部の化学式量の総和］／分子量

本開示の被覆用組成物は、アセチレンジオール系界面活性剤（ｃ）の含有量が、含フッ素重合体（ａ）に対して０．０５～５．０質量％であることが好ましい。上記アセチレンジオール系界面活性剤（ｃ）の含有量の下限は０．１質量％であることがより好ましく、０．５質量％であることが更に好ましい。上記アセチレンジオール系界面活性剤（ｃ）の上限は、３．０質量％であることがより好ましく、２．０質量％であることが更に好ましい。アセチレンジオール系界面活性剤（ｃ）の含有量がこの範囲であれば、被覆用組成物の造膜性と機械的安定性が良好である。

上記含フッ素重合体（ａ）は、９８％積算粒子径が０．４μｍ以上１．０μｍ未満である。上記９８％積算粒子径とは、粒子径から換算した体積の最小点からの積算値が９８％の点の粒子径をいう。
９８％積算粒子径が０．４μｍ以上１．０μｍ未満であることから、被覆用組成物の機械的安定性が良好で、表面平滑性に優れた被膜を作製することができる。好ましい下限は０．５μｍであり、好ましい上限は０．９μｍである。

このような含フッ素重合体（ａ）は、乳化重合法で作製することが好ましい。
乳化重合法で作製することによって、容易に、９８％積算粒子径が０．４μｍ以上１．０μｍ未満の含フッ素重合体（ａ）を得ることができる。

上記含フッ素重合体（ａ）は、９８％積算粒子径が０．４μｍ以上１．０μｍ未満であり、かつ、平均粒子径が０．０１以上１．０μｍ未満の粒子であることが好ましい。平均粒子径が０．０１μｍ未満であると、フッ素樹脂（ａ）からなる粒子の機械的安定性が悪く、被覆用組成物の機械的安定性及び貯蔵安定性が劣るおそれがある。平均粒子径が１．０μｍ以上であると、含フッ素重合体（ａ）からなる粒子の均一分散性に欠け、被覆用組成物を用いて塗装する際、表面が平滑な塗膜が得られず、塗膜物性が劣るおそれがある。より好ましい下限は０．０５μｍであり、より好ましい上限は０．８μｍである。

上記９８％積算粒子径及び平均粒子径は、レーザー回折による粒度分布測定装置（マイクロトラック・ベル社製マイクロトラックＭＴ－３０００ＥＸＩＩ型）により測定したものである。
この装置により、平均粒子径と９８％積算粒子径は自動計算される。
なお、本開示において、上記平均粒子径は、上記装置により自動計算された５０％積算粒子径である。

上記含フッ素重合体（ａ）は、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン〔ＰＴＦＥ〕、テトラフルオロエチレン〔ＴＦＥ〕／ヘキサフルオロプロピレン〔ＨＦＰ〕共重合体〔ＦＥＰ〕、ＴＦＥ／パーフルオロアルキルビニルエーテル〔ＰＡＶＥ〕共重合体〔ＰＦＡ〕等が挙げられる。 特に、溶融加工可能なフッ素樹脂である、ＴＦＥ／ＨＦＰ共重合体〔ＦＥＰ〕、ＴＦＥ／ＰＡＶＥ共重合体〔ＰＦＡ〕なる群から選択される少なくとも一種の共重合体からなるものであることが好ましい。

上記ＦＥＰは、ＨＦＰ単位が２質量％を超え、２０質量％以下であることが好ましく、１０～１５質量％であることがより好ましい。

上記ＰＦＡにおけるＰＡＶＥとしては、炭素数１～６のアルキル基を有するものが好ましく、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロエチルビニルエーテル又はパーフルオロプロピルビニルエーテルがより好ましい。

上記ＰＦＡは、ＰＡＶＥ単位が２．０質量％を超え、５．０質量％以下であることが好ましく、２．５～４．０質量％であることがより好ましい。

上記ＦＥＰ、ＰＦＡは、それぞれ上述の組成を有するものであれば、更に、その他の単量体を重合させたものであってよい。上記その他の単量体としては、例えば、上記ＦＥＰである場合ＰＡＶＥが挙げられ、上記ＰＦＡである場合ＨＦＰが挙げられる。上記その他の単量体は、１種又は２種以上を用いることができる。

上記その他の単量体は、その種類によって異なるが、通常、フッ素樹脂の質量の１質量％以下であることが好ましい。より好ましい上限は０．５質量％であり、更に好ましい上限は０．３質量％である。

上記非アルキルフェノール型ノニオン界面活性剤（ｂ）は、構造中に、ベンゼン環を含んでいないノニオン界面活性剤である。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系の天然アルコールを原料としたノニオン界面活性剤等が挙げられる。 なお、上記アセチレンジオール系界面活性剤は、非アルキルフェノール型ノニオン界面活性剤（ｂ）に包含されないものである。

非アルキルフェノール型ノニオン界面活性剤（ｂ）は、下記一般式（Ｉ）：
Ｒ－Ｏ－Ａ－Ｈ （Ｉ）
（式中、Ｒは直鎖状又は分岐鎖状の炭素数８～１９の飽和又は不飽和の非環式脂肪族炭化水素基、あるいは、炭素数８～１９の飽和環式脂肪族炭化水素基を表す。Ａはオキシエチレンユニットを３～２５個及びオキシプロピレンユニットを０～５個有するポリオキシアルキレン鎖を表す。）で表されるノニオン界面活性剤であることが好ましい。

上記一般式（Ｉ）で表されるノニオン界面活性剤としては、下記一般式（ＩＩ）：
Ｃ_ｘＨ_２ｘ＋１ＣＨ（Ｃ_ｙＨ_２ｙ＋１）Ｃ_ｚＨ_２ｚＯ（Ｃ_２Ｈ_４Ｏ）_ｎＨ （ＩＩ）
（式中、ｘは１以上の整数、ｙは１以上の整数、ｚは０又は１、但しｘ＋ｙ＋ｚは８～１８の整数、ｎは４～２０の整数を表す。）で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤、又は、

下記一般式（ＩＩＩ）：
Ｃ_ｘＨ_２ｘ＋１－Ｏ－Ａ－Ｈ （ＩＩＩ）
（式中、ｘは８～１８の整数、Ａはオキシエチレンユニットを５～２０個及びオキシプロピレンユニットを１又は２個有するポリオキシアルキレン鎖を表す。）で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤が好ましい。

上記非アルキルフェノール型ノニオン界面活性剤（ｂ）は、ＨＬＢが１０～１５であることが好ましい。より好ましいＨＬＢ範囲は、１２～１４である。この範囲にあれば、貯蔵安定性に優れた被覆用組成物が得られる。

上記非アルキルフェノール型ノニオン界面活性剤（ｂ）の含有量は、本開示の被覆用組成物の分散状態を安定にさせる量であればよく、例えば、上記含フッ素重合体（ａ）に対して、好ましくは３～１５質量％、より好ましくは５～１２質量％の量を存在させればよい。

従来のフッ素樹脂の分散液においては、一般的に、含フッ素界面活性剤の含有量が低減すると貯蔵安定性が不十分であるが、本開示の被覆用組成物は優れた貯蔵安定性を示す。この理由は明確でないが、非アルキルフェノール型ノニオン界面活性剤（ｂ）のフッ素樹脂への吸着により、優れた貯蔵安定性を得ることができるものと考えられる。

本開示の被覆用組成物は、シリコーン系界面活性剤を含有しないものであることが好ましい。シリコーン系界面活性剤を含有すると、塗装時にハジキ、ピンホールを発生させることがあるという点で不利となるためである。

本開示の被覆用組成物は、更に、上記沸点が１００℃以上でかつ水酸基を２個以上有する水溶性の多価アルコール（ｄ）を含むことが好ましい。
上記多価アルコール（ｄ）は、被塗装物を塗布して乾燥させる場合に、水が蒸発した後にも塗膜中に残存して、溶剤や水の蒸散に伴う塗膜の収縮に起因するクラック（いわゆるマッドクラック）を防止する作用を示す。従って、本開示の被覆用組成物は、上記多価アルコール（ｄ）を含有することにより、塗装の際に、よりマッドクラックが生じにくい。また、上記多価アルコール（ｄ）は、焼成時に徐々に分解されるため、塗膜の着色の原因とならない。

上記多価アルコール（ｄ）は、沸点が１００℃以上であることが好ましい。沸点が１００℃未満であると、乾燥時に水よりも早く蒸散してしまい、乾燥後に塗膜中に残存させることができず、造膜性の改善に寄与しにくい。上記沸点は、乾燥温度以上であることが好ましく、１５０℃以上であることがより好ましく、１８０℃以上であることが更に好ましい。

上記多価アルコール（ｄ）は、水酸基を２個以上有する水溶性のものであることが好ましい。水酸基の数が１個又はゼロの化合物であって、沸点が１００℃以上のものは、親水性に劣るため、均一な混合が困難となる傾向にある。上記多価アルコール（ｄ）は、室温で液体でありマッドクラックの防止効果が高い点で、水酸基を２～３個有するものであることが好ましい。

上記多価アルコール（ｄ）は、焼成時の加熱により最終的に蒸散し尽くすか分解揮散し尽くすことが好ましい。従って、沸点又は熱分解温度がフッ素樹脂の溶融温度以下、好ましくは３４０℃以下のものが好ましい。

上記多価アルコール（ｄ）としては、例えば、エチレングルコール（沸点：１９８℃）、１，２－プロパンジオール（１８８℃）、１，３－プロパンジオール（２１４℃）、１，２－ブタンジオール（１９０℃）、１，３－ブタンジオール（２０８℃）、１，４－ブタンジオール（２２９℃）、１，５－ペンタンジオール（２４２℃）、２－ブテン－１，４－ジオール（２３５℃）、グリセリン（２９０℃）、２－エチル－２－ヒドロキシメチル－１，３－プロパンジオール（２９５℃）、１，２，６－ヘキサントリオール（１７８℃／５ｍｍＨｇ）、トリエチレングリコール（２８８℃）等が挙げられる。なかでも、造膜性が優れる点でエチレングリコールであることが好ましい。

多価アルコール（ｄ）の配合量は、上記含フッ素重合体（ａ）１００質量部に対して５～１８質量部であることが好ましく、より好ましくは７～１５質量部、特に好ましくは７～１２質量部である。５質量部未満であると、マッドクラックの発生防止効果が弱くなるおそれがあり、１８質量部を超えると、塗膜が白濁するおそれがある。

本開示の被覆用組成物は、水性媒体を含むものである。上記水性媒体としては、水を単独で使用してもよいし、水と水溶性化合物と併用した水性混合溶媒としてもよい。

本開示の被覆用組成物は、必要に応じ、本開示の特徴を損なわない範囲でその他の樹脂を含有するものであってもよい。
上記その他の樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリエチレンオキサイド（分散安定剤）、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンポリエステル樹脂等が挙げられる。

本開示の被覆用組成物は、塗装性、得られる塗膜の性質向上等を目的として、更に一般的な被覆用組成物に用いられる添加剤を含むものであってもよい。
上記添加剤としては特に限定されず、得られる被覆物品の用途に応じて選択することができ、例えば、レベリング剤、固体潤滑剤、木粉、石英砂、カーボンブラック、ダイヤモンド、トルマリン、ゲルマニウム、アルミナ、窒化珪素、蛍石、クレー、タルク、体質顔料、各種増量材、導電性フィラー、光輝材、顔料、充填材、顔料分散剤、沈降防止剤、水分吸収剤、表面調整剤、チキソトロピー性付与剤、粘度調節剤、ゲル化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、色分かれ防止剤、皮張り防止剤、スリ傷防止剤、防カビ剤、抗菌剤、酸化防止剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、消泡剤、乾燥剤、ハジキ防止剤が挙げられる。

上記光輝材としては、例えば、マイカ、金属粉末、ガラスビーズ、ガラスバブル、ガラスフレーク、ガラス繊維等が挙げられる。本開示の被覆用組成物は、このような光輝材を含有する場合、優れた外観を有する塗膜を形成することができる。上記光輝材の含有量は、上記被覆用組成物の固形分に対して０．１～１０．０質量％であることが好ましい。

上記金属粉末としては特に限定されず、例えば、アルミニウム、鉄、すず、亜鉛、金、銀、銅等の金属単体の粉末；アルミニウム合金、ステンレス等の合金の粉末等が挙げられる。上記金属粉末の形状としては特に限定されず、粒子状、フレーク状等が挙げられる。本開示の被覆用組成物は、これらの着色成分を含まないクリヤー塗料であってもよい。

上記粘度調節剤としては、例えば、メチルセルロース、アルミナゾル、ポリビニルアルコール、カルボキシル化ビニルポリマー等が挙げられる。

上記消泡剤としては、例えば、トルエン、キシレン、炭素数９～１１の炭化水素系等の非極性溶剤、シリコーンオイル等が挙げられる。

上記乾燥剤として、例えば、酸化コバルト等が挙げられる。

本開示の被覆用組成物には、含フッ素重合体（ａ）と、必要に応じて無機材料等の固形分が含まれるが、それらの固形分含量は２０～８０質量％、特に３０～７０質量％であることが好ましい。固形分濃度が２０質量％未満では一回の塗装により厚膜を得ることが困難となるおそれがあり、８０質量％を超えると粘度が高くなり、スプレー塗装が困難になるおそれがある。

本開示の被覆用組成物の調製は、通常の方法で行うことができる。例えば、含フッ素重合体（ａ）が水性媒体に分散しているフッ素樹脂水性分散液に、非イオン性界面活性剤（ｂ）、アセチレンジオール系界面活性剤（ｃ）、他の添加剤等を攪拌下に投入混合し、５～３０℃にて１０～４０分間攪拌混合することによって調製できる。更に、水性媒体を追加して固形分濃度を調整してもよい。

本開示の被覆用組成物は、塗料として好適に使用でき、上塗り塗料として使用できるし、中塗り塗料としても使用できる。また、ライニング用の塗料としても使用できる。

塗装方法としては従来と同様な各種の塗装方法が採用でき、例えば、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法、ドクターブレード法、スピンフローコート、カーテンフローコート法等が挙げられる。

本開示の被覆用組成物は基材に直接塗装してもよいが、密着性を向上させるために、プライマー層を設けてその上に塗装することが望ましい。基材としては特に限定されないが、たとえば各種金属、ホーロー、ガラス、各種セラミックスが採用でき、また密着性を高めるために表面をサンドブラスト法などで粗面化することが好ましい。

基材に塗布された被覆用組成物は次いで乾燥される。本開示の被覆用組成物はこの乾燥の段階でマッドクラックを生じない点に特徴がある。乾燥は通常の条件でよく、用いる多価アルコール（ｄ）の沸点によって異なるが、好ましくは室温～１５０℃、より好ましくは８０～１５０℃にて５～２０分間実施すれば、指触乾燥に達する。

乾燥した塗膜は焼成（加工）される。焼成（加工）温度及び時間はフッ素樹脂の種類や溶融温度などによって異なるが、例えば、フッ素樹脂の溶融温度以上、通常３４０～４１５℃にて５～３０分間行う。

プライマー層を設ける場合は、プライマーを塗布、乾燥、焼成した後に本開示の被覆用組成物を塗布、乾燥、焼成する方法（２コート２ベーク法）でもよいし、プライマーを塗布、乾燥した後に本開示の被覆用組成物を塗布、乾燥し、両者を同時に焼成する方法（２コート１ベーク法）でもよいし、プライマーを塗布、乾燥した後に本開示の被覆用組成物である光輝材を含む中塗り塗料を塗布、乾燥して、更にその上に本開示の被覆用組成物以外のクリヤー塗料である上塗り塗料を塗布、乾燥して、これらを同時に焼成する方法（３コート１ベーク法）であってもよい。また、プライマー塗布後にいずれも本開示の被覆用組成物である、光輝剤を含む中塗り塗料、クリヤー塗料である上塗り塗料による塗装を順次行うものであってもよい。

本開示の被覆用組成物によれば、１回の塗装で溶融塗膜の膜厚が３０μｍ以上の厚膜の塗膜を得ることもできる。

本開示の被覆用組成物を塗装することにより得られたことを特徴とする被覆物品も本開示の一つである。
本開示の被覆物品としては、例えば、フライパン、グリル鍋、圧力鍋、その他の各種鍋、炊飯器、餅つき器、オーブン、ホットプレート、パン焼き型、包丁、ガステーブル等の調理器具；電気ポット、製氷トレー等の飲食用容器；練りロール、圧延ロール、コンベア、ホッパー等の食品工業用部品；オフィスオートメーション機器〔ＯＡ〕用ロール、ＯＡ用ベルト、ＯＡ用分離爪、製紙ロール、フィルム製造用カレンダーロール等の工業用品；発泡スチロール成形用等の金型、鋳型、合板・化粧板製造用離型板等の成形金型離型；レンジフード等の厨房用品；コンベアーベルト等の冷凍食品製造装置；のこぎり、やすり、ダイス、きり等の工具；アイロン、鋏、包丁等の家庭用品；金属箔、電線；食品加工機、包装機、紡繊機械等のすべり軸受；カメラ・時計の摺動部品；パイプ、バルブ、ベアリング等の自動車部品、雪かきシャベル、すき、シュート、船底、ボイラー、工業用コンテナ（特に半導体工業用）、プリント配線基板、燃料電池の部材、絶縁テープ、壁材の裏打ち用、テント、工事用シート、照明カバー等の用途で用いられるガラスクロス、医療用ガイドワイヤー、カテーテル、シース、シースイントロデューサー等が挙げられる。
特に、調理器具、厨房用品、ガラスクロス、医療用ガイドワイヤー、カテーテル、シース、シースイントロデューサー、燃料電池の部材に好適に使用できる。

以下、本開示を実施例に基づいて具体的に説明する。
以下の実施例においては特に言及しない場合は、「部」「％」はそれぞれ「質量部」「質量％」を表す。

（フッ素樹脂（ａ）の９８％積算粒子径及び平均粒子径）
レーザー回折による粒度分布測定装置（マイクロトラック・ベル社製マイクロトラックＭＴ－３０００ＥＸＩＩ型）により測定した。
平均粒子径（５０％積算粒子径）と９８％積算粒子径は、この装置で自動計算される。

（アセチレンジオール系界面活性剤の３００℃における残質量割合）
示差熱・熱重量測定装置〔ＴＧ－ＤＴＡ〕（商品名：ＴＧ／ＤＴＡ７２００、日立ハイテクサイエンス社製）を用い、試料１０ｍｇを昇温速度１０℃／分で室温から昇温し、３００℃において残存していた試料の質量割合を算出した。

（機械的安定性）
各実施例、比較例で得られた被覆用組成物を、４０℃、３００ｒｐｍで６時間連続攪拌し、固まりができなければ、良好、固まりができた場合を不良とした。

（造膜性）
各実施例、比較例で得られた被覆用組成物を、ノンブラストアルミニウム板に、スプレー法により塗装し、乾燥（１００℃、１５分）、焼成（３８０℃、２０分）後の膜厚が２０μｍ以上でクラックの発生が無ければ、良好、クラックの発生がある場合は不良とした。

（実施例１）
公知の乳化重合法でＴＦＥ単位とパーフルオロ（プロピルビニルエーテル）（ＰＰＶＥ）単位とからなるＰＦＡ粒子を含むＰＦＡの固形分濃度が２０．０％のＰＦＡ水性分散液を得た。得られたＰＦＡ水性分散液に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル（第一工業製薬株式会社製ノイゲンＴＤＳ－８０Ｃ、ＨＬＢ＝１３）をＰＦＡに対して１０％添加し、公知の相分離濃縮方法により、濃縮を行った。
上澄相を除去し、濃縮相を回収したところ、ＰＦＡの固形分濃度が６４．０％、ノニオン界面活性剤がＰＦＡの３．０％に相当する量、ＰＦＡの９８％積算粒子径が０．５５μｍ、平均粒子径が０．３５μｍであるＰＦＡ水性分散体を得た。
得られたＰＦＡ水性分散体７８．１質量部に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル（第一工業製薬株式会社製 ノイゲンＴＤＳ－７０（ＨＬＢ値＝１２））の２０％水溶液１２．０質量部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル（第一工業製薬株式会社製 ノイゲンＴＤＳ－５０（ＨＬＢ値＝１０．５））の２０％水溶液３．５質量部、エチレングリコール５．０質量部、アセチレンジオール系活性剤（日信化学工業株式会社製 サーフィノール４４０（ＨＬＢ値＝８））０．５質量部、純水６．４質量部を添加し、被覆用組成物を調製した。
なお、アセチレンジオール系活性剤（日信化学工業株式会社製 サーフィノール４４０（ＨＬＢ８））の熱重量分析で３００℃における残存量は、６質量％であった。
得られた被覆用組成物について、機械的安定性、造膜性の各評価を行った。結果を表１に示す。

（実施例２、３）
被覆用組成物の原料組成比を、表１に示すように調整した以外は実施例１と同様にして被覆用組成物の調製を行い、得られた被覆用組成物について各種性能を評価した。結果を表１に示す。

（実施例４）
ＰＦＡ水性分散体の代わりに、ＦＥＰ水性分散体（９８％積算粒子径０．５１μｍ、平均粒子径０．２０μｍ、ＦＥＰの固形分濃度が６５．０質量％、レオコールＴＤ－９０Ｄ（ＨＬＢ値＝１３）６．５質量部含有）を用い、被覆用組成物の配合量を、表２に示すように調整した以外は実施例１と同様にして調製を行い、得られた被覆用組成物から形成した塗膜について各種性能を評価した。結果を表２に示す。

（実施例５）
ＰＦＡ水性分散体の代わりに、ＰＴＦＥ水性分散体（ＰＴＦＥ９８％積算粒子径０．８７μｍ、平均粒子径０．２８μｍ、ＰＴＦＥの固形分濃度が６１．０質量％、レオコールＴＤ－９０Ｄ（ＨＬＢ値＝１３）４．０質量部含有）を用い、被覆用組成物の配合量を、表３に示すように調整した以外は実施例１と同様にして調製を行い、得られた被覆用組成物から形成した塗膜について各種性能を評価した。結果を表３に示す。

（比較例１）
アセチレンジオール系活性剤（日信化学工業株式会社製 サーフィノール４４０（ＨＬＢ８））を配合しなかったこと以外は実施例１と同様にして調製を行い、得られた被覆用組成物から形成した塗膜について各種性能を評価した。結果を表４に示す。

（比較例２）
アセチレンジオール系活性剤（日信化学工業株式会社製 サーフィノール１０４Ａ（ＨＬＢ４））を配合したこと以外は実施例１と同様にして調製を行い、得られた被覆用組成物から形成した塗膜について各種性能を評価した。結果を表４に示す。
なお、アセチレンジオール系活性剤（日信化学工業株式会社製 サーフィノール１０４Ａ（ＨＬＢ４））の熱重量分析で３００℃における残存量は、０質量％であった。

（比較例３）
アセチレンジオール系活性剤（日信化学工業株式会社製 サーフィノール４２０（ＨＬＢ４））を配合したこと以外は実施例１と同様にして調製を行い、得られた被覆用組成物から形成した塗膜について各種性能を評価した。結果を表４に示す。
なお、アセチレンジオール系活性剤（日信化学工業株式会社製 サーフィノール４２０（ＨＬＢ４））の熱重量分析で３００℃における残存量は、０質量％であった。

本開示の被覆用組成物は、上述の構成を有するので、機械的安定性と造膜性を両立することが可能であり、調理器具等の表面被覆用塗料として好適である。

Claims (6)

1. ９８％積算粒子径が０．４μｍ以上１．０μｍ未満の含フッ素重合体（ａ）と、非アルキルフェノール型ノニオン界面活性剤（ｂ）と、アセチレンジオール系界面活性剤（ｃ）と、沸点が１００℃以上でかつ水酸基を２個以上有する水溶性の多価アルコール（ｄ）とを含有する水性分散体組成物であり、
   前記含フッ素重合体（ａ）は、テトラフルオロエチレン〔ＴＦＥ〕／ヘキサフルオロプロピレン〔ＨＦＰ〕共重合体〔ＦＥＰ〕及びＴＦＥ／パーフルオロ（アルキルビニルエーテル）〔ＰＡＶＥ〕共重合体〔ＰＦＡ〕よりなる群から選択される少なくとも１種であり、
   前記アセチレンジオール系界面活性剤（ｃ）は熱重量分析で３００℃における残量が３．０質量％以上であることを特徴とする被覆用組成物。
2. 非アルキルフェノール型ノニオン界面活性剤（ｂ）は、式（Ｉ）：
   Ｒ－Ｏ－Ａ－Ｈ （Ｉ）
   （式中、Ｒは直鎖状または分岐鎖状の炭素数８～１９の飽和又は不飽和の非環式脂肪族炭化水素基あるいは、炭素数８～１９の飽和環式脂肪族炭化水素基を表す。Ａはオキシエチレンユニットを３～２５個およびオキシプロピレンユニットを０～５個有するポリオキシアルキレン鎖）で示される非アルキルフェノール型ノニオン界面活性剤である請求項１に記載の被覆用組成物。
3. アセチレンジオール系界面活性剤（ｃ）は、アセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物である請求項１又は２記載の被覆用組成物。
4. アセチレンジオール系界面活性剤（ｃ）は、ＨＬＢが４を超えるものである請求項１、２又は３記載の被覆用組成物。
5. 沸点が１００℃以上でかつ水酸基を２個以上有する水溶性の多価アルコール（ｄ）は、エチレングリコールである請求項１、２、３又は４記載の被覆用組成物。
6. 請求項１、２、３、４又は５記載の被覆用組成物を塗装することにより得られたことを特徴とする被覆物品。