以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、特に限定するものではない。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態に係る体腔液処理装置としての腹水処理装置1の構成の概略を示す説明図である。
腹水処理装置1は、腹水貯留部としての腹水バッグ10と、濾過器11と、第1のライン12と、第2のライン13と、第3のライン14と、第4のライン15と、第1の圧力測定装置16と、第2の圧力測定装置17と、ポンプ18と、第1の開閉装置19と、第2の開閉装置20と、洗浄装置30と、回収装置40と、制御装置50と、濃縮システム60等を備えている。
腹水バッグ10は、患者から採取された腹水を収容することができる。
濾過器11は、例えば円筒形状を有している。濾過器11は、長手方向の両端部に通液口11a、11bを有し、側面に2つの通液口11c、11dを有している。
濾過器11は、例えば細菌やがん細胞などの所定の病因物質を除去し、アルブミンなどの所定の有用成分を通過させる中空糸膜などの濾過膜70を備えている。濾過膜70の内側領域は、通液口11a、11bに通じ、濾過膜70の外側領域は、通液口11c、11dに通じている。
第1のライン12は、腹水バッグ10と濾過器11を接続している。第1のライン12の下流側の端部は、濾過器11の通液口11aに接続されている。
第2のライン13は、濾過器11と濃縮システム60の後述の濃縮器110を接続している。第2のライン13の上流側の端部は、濾過器11の通液口11cに接続されている。
第3のライン14は、一端が濾過器11の通液口11bに接続されている。第3のライン14の他端は、例えば図示しない排液部に接続されている。
第4のライン15は、一端が濾過器11の通液口11dに接続されている。第4のライン15は、他端が大気開放されている。なお、第1~第4のライン12~15には、軟質性のチューブが用いられることが多いが特に限定するものではない。
第1の圧力測定装置16は、第1のライン12に設けられ、濾過器11の濾過膜70の一次側(入口側)の圧力を測定できる。第2の圧力測定装置17は、第4のライン15に設けられ、濾過器11の濾過膜70の二次側(出口側)の圧力を測定できる。第1の圧力測定装置16と第2の圧力測定装置17の圧力測定結果は、制御装置50に出力される。
ポンプ18は、第1のライン12に設けられている。ポンプ18には、例えばチューブを扱いてチューブ内の腹水を圧送するチューブポンプが用いられている。なお、ポンプ18は、停止時に第1のライン12を閉鎖するものでもあり、開閉装置(流量調整装置)としても機能する。チューブポンプの他にも遠心ポンプ等、腹水を送液できるものであれば特に限定するものではない、停止時に第1のライン12を閉塞する機能を有さない場合には、別途第1のライン12に開閉手段(図示せず)を設けてもよい。
第1の開閉装置19は、例えば開閉バルブであり、第3のライン14に設けられている。第2の開閉装置20は、例えば開閉バルブであり、第2のライン13に設けられている。
洗浄装置30は、例えば洗浄液を貯留する洗浄液貯留部80と、洗浄液貯留部80と第2のライン13を接続する洗浄ライン81と、洗浄ライン81に設けられた洗浄ポンプ82を有している。
洗浄液貯留部80は、例えば軟質性のバッグであり、所定量の洗浄液を貯留できる。洗浄液には、例えば食塩水が用いられる。洗浄ライン81は、例えば第2のライン13における第2の開閉装置20よりも上流側(濾過器11側)に接続されている。洗浄ライン81には、例えば軟質性のチューブが用いられている。洗浄ポンプ82には、例えばチューブポンプが用いられている。洗浄装置30は、洗浄液貯留部80の洗浄液を洗浄ポンプ82により洗浄ライン81及び第2のライン13を通じて濾過膜70の出口側に供給しさらに濾過膜70を通過させて濾過膜70を洗浄することができる。ここで、濾過した腹水を希釈して再濃縮する手法なども提唱されており、洗浄の目的以外にも洗浄装置30は腹水の希釈目的に使用するなど、その用途を特に限定するものではない。
回収装置40は、濾過器11の濾過膜70の出口側に残存する濾過腹水(濾過された腹水)を第2のライン13を通じて回収するものである。回収装置40は、例えば流体供給装置を有し、例えば一端が濾過膜70の通液口11dに接続され、他端が大気開放された第4のライン15と、第4のライン15に設けられたポンプ90を備えている。これにより、回収装置40は、濾過膜70の出口側に気体(大気)を供給し濾過膜70の出口側の濾過腹水を第2のライン13に押し出すことができる。
第2のライン13には、気体検出装置91が設けられている。気体検出装置91は、洗浄ライン81の接続部分よりも上流側(濾過器11側)に設けられている。これにより、回収装置40により濾過膜70の出口側が気体に置換され、濾過膜70の出口側にあった濾過腹水が第2のライン13に排出されたことを検出できる。
制御装置50は、例えばCPU、メモリ等を有するマイクロコンピュータである。制御装置50は、ポンプ18、第1の開閉装置19、第2の開閉装置20、洗浄装置30、第1の圧力測定装置16、第2の圧力測定装置17、回収装置40のポンプ90、気体検出装置91、濃縮システム60等の各装置の動作を制御して腹水処理を実行できる。制御装置50は、例えば予めメモリに記憶されたプログラムを実行して腹水処理を実施できる。
具体的には、例えば制御装置50は、第1の圧力測定装置16により測定された圧力と第2の圧力測定装置17により測定された圧力との圧力差に基づいて、圧力差が所定の閾値を超えた場合に、ポンプ18を停止させ、第2の開閉装置20を閉鎖し、第1の開閉装置19を開放し、洗浄装置30により洗浄液を第2のライン13を通じて濾過膜70に供給させることができる。本実施の形態において、第1の圧力測定装置16により測定された圧力と第2の圧力測定装置17により測定された圧力との圧力差が、「第1の圧力測定装置により測定された圧力に基づいた値」となる。
濃縮システム60は、濃縮器110と、濃縮腹水貯留部としての濃縮腹水バッグ111と、濃縮ライン112と、排水ライン113と、循環ライン114と、濃縮ポンプ115と、循環ポンプ116と、第3の圧力測定装置117と、第4の圧力測定装置118等を有している。
濃縮器110は、例えば円筒形状を有している。濃縮器110は、長手方向の両端部に通液口110a、110bを有し、側面に2つの通液口110c、110dを有している。例えば濃縮器110の通液口110aには、第2のライン13が接続されている。
濃縮器110は、例えば第2のライン13から供給された濾過腹水から水分を除去して濾過腹水を濃縮する中空糸膜などの濃縮膜120を備えている。濃縮膜120の内側領域は、通液口110a、110bに通じ、濃縮膜120の外側領域は、通液口110c、110dに通じている。なお、本実施の形態において通液口110dは閉鎖されている。
濃縮腹水バッグ111は、濃縮器110で濃縮された濃縮腹水を収容することができる。濃縮ライン112は、濃縮器110の通液口110bと濃縮腹水バッグ111を接続している。排水ライン113は、一端が濃縮器110の通液口110cに接続され、他端が図示しない排水部に接続されている。
循環ライン114は、例えば濃縮腹水バッグ111と第2のライン13を接続している。循環ライン114は、第2のライン13の第2の開閉装置20よりも下流側(濃縮器110側)に接続されている。濃縮ライン112、排水ライン113及び循環ライン114には、例えば軟質性のチューブが用いられている。
濃縮ポンプ115は、例えば濃縮ライン112に設けられている。循環ポンプ116は、循環ライン114に設けられている。濃縮ポンプ115及び循環ポンプ116には、例えばチューブポンプが用いられている。
第3の圧力測定装置117は、例えば第2のライン13に設けられ、濃縮器110の濃縮膜120の一次側(入口側)の圧力を測定できる。第4の圧力測定装置118は、排水ライン113に設けられ、濃縮器110の濃縮膜120の二次側(出口側)の圧力を測定できる。なお、濃縮膜120の二次側(出口側)の圧力は、排水ライン113出口との落差圧に代えることもでき、第4の圧力測定装置118を省略することもできる。第3の圧力測定装置117と第4の圧力測定装置118の圧力測定結果は、制御装置50に出力される。制御装置50は、濃縮システム60の濃縮ポンプ115と、循環ポンプ116と、第3の圧力測定装置117と、第4の圧力測定装置118等の各装置の動作を制御して腹水処理を実行できる。
次に、上述の腹水処理装置1を用いて行われる腹水処理について説明する。
先ず、図1に示すように患者から採取した腹水を収容した腹水バッグ10が第1のライン12に接続される。次に、腹水の濾過、濃縮工程が開始される。第1の開閉装置19が閉鎖され、第2の開閉装置20が開放された状態で、ポンプ18及び濃縮ポンプ115が作動する。なお、洗浄ポンプ82、回収装置40のポンプ90、循環ポンプ116は停止した状態を維持する。
これにより、腹水バッグ10の腹水は、第1のライン12を通じて濾過器11に送られる。腹水は、濾過器11の通液口11aから濾過膜70の入口側(内側領域)に流入し、濾過膜70を通過して、濾過膜70の出口側(外側領域)に流出する。このとき、腹水から所定の病因物質が除去される。濾過膜70の出口側に流出した濾過腹水は、濾過器11から第2のライン13に流出し、第2のライン13を通って濃縮器110に送られ、濃縮器110の濃縮膜120の入口側に流入する。ここで、ポンプ18と濃縮ポンプ115との間の圧力差(流量差)により、例えば濾過腹水の一部の水分が、濃縮膜120を通過し濃縮膜120の出口側に流出する。これにより、濾過腹水から水分が除去され、濾過腹水が濃縮される。濃縮器110で濃縮された濃縮腹水は、濃縮ライン112を通って濃縮腹水バッグ111に収容される。濃縮腹水バッグ111に所定量の濃縮腹水が貯留されると、または濃縮腹水バッグ111の最大貯留量に到達するとポンプ18が停止し、濾過、濃縮工程が終了する。
次に、例えば再濃縮工程が行われる。このとき、図2に示すように第2の開閉装置20が閉鎖された状態で、循環ポンプ116及び濃縮ポンプ115が作動する。これにより、濃縮腹水バッグ111の濃縮腹水が、循環ライン114及び第2のライン13を通じて濃縮器110に送られ、濃縮器110から濃縮ライン112を通って濃縮腹水バッグ111に戻され、循環する。こうして濃縮腹水が再濃縮され、所望の濃度の濃縮腹水が生成される。
上述の腹水の濾過、濃縮工程において、第1の圧力測定装置16、第2の圧力測定装置17が作動し、濾過器11の濾過膜70の入口側の圧力、出口側の圧力がモニタリングされている。そして、図3に示すように例えば濾過器11における濾過膜70の入口側の圧力P1と出口側の圧力P2の圧力差(P1-P2)(膜間圧力差)が、所定の閾値Dを超えた場合には、濾過膜70が目詰まりを起こしているとみなされ、ポンプ18が停止し、腹水の濾過、濃縮工程が停止される。このとき、ポンプ18は所定の流量で連続運転をしても、段階的に所定の閾値Dに到達するまで流量を上げる方式を採用してもよく、特にその運転方法を限定するものではない。なお、閾値Dは、予め設定される。図3には、洗浄工程を行う際の主な制御フローを示す。
次に、例えば図4に示すように濾過器11の濾過膜70の出口側に残存する濾過腹水が回収される(図3の回収工程)。このとき、ポンプ18、洗浄ポンプ82及び循環ポンプ116が停止し、第2の開閉装置20が開放された状態で、回収装置40のポンプ90と濃縮ポンプ115が作動する。このとき、大気が第4のライン15を通じて濾過器11の濾過膜70の出口側に流入し、残存する濾過腹水が第2のライン13に押し出される。濾過腹水は、第2のライン13及び濃縮器110を通過し濃縮されて濃縮腹水バッグ111に収容される。
次に、例えば濾過器11の濾過膜70の出口側に流入した気体が、濾過膜70の出口側の濾過腹水を押し出し、第2のライン13の気体検出装置91に到達すると、気体検出装置91により気体が検出される。気体が検出されると、ポンプ90及び濃縮ポンプ115が停止する。
次に濾過膜70の洗浄工程が行われる。図5に示すようにポンプ18とポンプ90が停止し、第2の開閉装置20が閉鎖され、第1の開閉装置19が開放された状態で、洗浄装置30の洗浄ポンプ82が作動する。これにより、洗浄液貯留部80の洗浄液が、洗浄ライン81を通って第2のライン13に流入し、第2のライン13を通って濾過器11の濾過膜70の出口側に流入する。そして、洗浄液が、濾過膜70の出口側から濾過膜70を通って濾過膜70の入口側に流出する。このとき、濾過膜70に付着して目詰まりの原因となっていた付着物が、濾過膜70から離脱する。洗浄液は、付着物とともに濾過器11の入口側から第3のライン14に流出し、第3のライン14を通って排液部に排液される。こうして、濾過膜70が洗浄される(図3の洗浄工程)。そして、予め設定された所定量の洗浄液が濾過器11に供給されたところで、洗浄ポンプ82が停止し、濾過膜70の洗浄工程が終了する。このとき、洗浄ポンプ82の流量は予め決められた所定の流量でも、洗浄中に第2の圧力測定装置17にて測定される圧力が所定の圧力を超えないよう洗浄ポンプ82の流量を調整する方式でもよく、特にその運転方法を限定するものではない。
濾過膜70の洗浄工程が終了すると、図1に示すようにポンプ90、洗浄ポンプ82及び循環ポンプ116が停止し、第1の開閉装置19が閉鎖され、第2の開閉装置20が開放された状態で、ポンプ18及び濃縮ポンプ115が作動し、腹水の濾過、濃縮工程が再開される。
濾過器11における濾過膜70の入口側の圧力P1と出口側の圧力P2の圧力差(P1-P2)が、所定の閾値Dを超えるたびに、腹水の濾過、濃縮処工程が停止され、濾過腹水の回収工程と濾過膜70の洗浄工程が行われる。
なお、腹水の濾過、濃縮工程において、第3の圧力測定装置117及び第4の圧力測定装置118が作動し、濃縮器110の濃縮膜120の入口側の圧力、出口側の圧力がモニタリングされる。そして、例えば濃縮器110における濃縮膜120の入口側の圧力P3と出口側の圧力P4の圧力差(P3-P4)が、所定の閾値Fを超えた場合には、濃縮膜120が目詰まりを起こしているとみなされ、ポンプ18、濃縮ポンプ115の流量を加速/減速、再循環ポンプ116を減速するなどを行い、圧力差を下げ、濾過・濃縮工程を継続する。各ポンプの流量が最大/最低流量に到達し、かつ圧力差が所定の閾値Fを超えた場合には、腹水の濾過、濃縮工程を停止する。
本実施の形態によれば、腹水処理装置1が、洗浄装置30、第1の圧力測定装置16、第2の圧力測定装置17、第1の開閉装置19、第2の開閉装置20、制御装置50等を有し、制御装置50が、第1の圧力測定装置16により測定された圧力P1と第2の圧力測定装置17により測定された圧力P2との圧力差(P1-P2)に基づいて、圧力差が所定の閾値Dを超えた場合に、ポンプ18を停止させ、第2の開閉装置20を閉鎖し、第1の開閉装置19を開放した状態で、洗浄装置30により洗浄液を第2のライン13を通じて濾過膜70に供給させている。これにより、濾過膜70の洗浄のタイミングを正確に把握し、なおかつ自動で濾過膜70の洗浄を行うことができる。
洗浄装置30は、洗浄液を貯留する洗浄液貯留部80と、洗浄液貯留部80と第2のライン13を接続する洗浄ライン81と、洗浄液を供給する洗浄ポンプ82を有するので、洗浄液の供給を自動で正確に行うことができる。
腹水処理装置1が、濾過器11の濾過膜70の出口側に残存する濾過腹水を第2のライン13を通じて回収する回収装置40を備えているので、濾過器11の濾過膜70の出口側に残存する濾過腹水を、濾過膜70の洗浄が開始される前に回収できる。このため、濾過膜70の洗浄の際に濾過腹水が無駄になることを防止できる。
回収装置40は、濾過膜70の出口側に流体を供給し濾過膜70の出口側の濾過体腹水を第2のライン13に押し出す流体供給装置を有するので、濾過器11に残存した濾過腹水の回収を好適に行うことができる。
濾過膜70の出口側に供給される流体が気体であり、第2のライン13には、気体検出装置91が設けられているので、気体を用いて簡単に濾過腹水の回収を行うことができる。また気体が第2のライン13の下流側、例えば濃縮器110や濃縮腹水バッグ111に入り込むことを防止できる。
濾過膜70が中空糸膜であり、濾過膜70の入口側が中空糸膜の内側領域であり、濾過膜70の出口側が中空糸膜の外側領域である(内圧式濾過)ので、腹水を中空糸膜の内側領域から外側領域に流出させて、腹水の濾過を効果的に行うことができる。
腹水処理装置1は、第2のライン13の濾過腹水を濃縮する濃縮システム60を備えているので、腹水の濾過と濃縮を好適に行うことができる。
また、濃縮システム60は、濃縮腹水を貯留する濃縮腹水バッグ111と、濃縮腹水バッグ111の濃縮腹水を第2のライン13に戻す循環ライン114とをさらに備えているので、濃縮腹水の再濃縮を行い、所望の濃縮率の濃縮腹水を生成できる。
(第2の実施の形態)
上記実施の形態は、濾過膜70の入口側が中空糸膜の内側領域であり、濾過膜70の出口側が中空糸膜の外側領域(内圧式濾過)であったが、濾過膜の出口側が中空糸膜の内側領域であり、濾過膜の入口側が中空糸膜の外側領域(外圧式濾過)であってもよい。かかる場合の腹水処理装置1の一例を第2の実施の形態として説明する。
図6は、第2の実施の形態における腹水処理装置1の構成の概略を示す。腹水処理装置1において、濾過器11の濾過膜70の外側領域(入口側)は、通液口11c、11dに通じ、濾過膜70の内側領域(出口側)は、通液口11a、11bに通じている。
第1のライン12の下流側の端部は、濾過器11の通液口11dに接続されている。第2のライン13の上流側の端部は、濾過器11の通液口11aに接続されている。第3のライン14は、濾過器11の通液口11cに接続され、第4のライン15は、濾過器11の通液口11bに接続されている。第1の圧力測定装置16は、第1のライン12に設けられ、濾過器11の濾過膜70の入口側(外側領域)の圧力を測定する。第2の圧力測定装置17は、第2のライン13に設けられ、濾過器11の濾過膜70の出口側(内側領域)の圧力を測定する。なお、第2の実施の形態における腹水処理装置1のその他の構成は、第1の実施の形態と同様であるので、同じ符号を用いて説明を省略する。
そして、腹水の濾過、濃縮工程の際には、ポンプ90、洗浄ポンプ82及び循環ポンプ116が停止し、第1の開閉装置19が閉鎖され、第2の開閉装置20が開放された状態で、ポンプ18と濃縮ポンプ115が作動する。腹水バッグ10の腹水は、濾過器11の通液口11dから、中空糸膜の外側領域である濾過膜70の入口側に流入し、濾過膜70の外側から内側に流入して濾過される。濾過膜70を通過した濾過腹水は、通液口11aから第2のライン13に流出して、濃縮システム60に送られ、濃縮される。また、再濃縮工程では、第2の開閉装置20が閉鎖され、循環ポンプ116が作動し、濃縮腹水バッグ111の濃縮腹水が、循環ライン114及び第2のライン13を通じて濃縮器110に送られ、濃縮器110から濃縮ライン112を通って濃縮腹水バッグ111に戻され、循環する。こうして濃縮腹水が再濃縮される。
腹水の濾過、濃縮工程において、第1の圧力測定装置16により測定された濾過膜70の入口側(外側領域)の圧力P1と第2の圧力測定装置17により測定された濾過膜70の出口側(内側領域)の圧力P2の圧力差(P1-P2)が、所定の閾値Dを超えた場合には、濾過腹水の回収工程、濾過膜70の洗浄工程が開始される。
濾過腹水の回収工程では、図7に示すようにポンプ18、洗浄ポンプ82及び循環ポンプ116が停止し、回収装置40のポンプ90と濃縮ポンプ115が作動する。大気が第4のライン15を通じて濾過器11の通液口11bから濾過膜70の出口側(内側領域)に流入し、残存する濾過腹水が通液口11aから第2のライン13に押し出される。第2のライン13に押し出された濾過腹水は、濃縮器110を通過して濃縮され、濃縮腹水バッグ111に収容される。
濾過器11の濾過膜70の出口側に流入した気体が第2のライン13の気体検出装置91に到達し、気体検出装置91により気体が検出されると、ポンプ90及び濃縮ポンプ115が停止される。
次の濾過膜70の洗浄工程では、図8に示すようにポンプ18とポンプ90が停止し、第2の開閉装置20が閉鎖され、第1の開閉装置19が開放された状態で、洗浄装置30の洗浄ポンプ82が作動する。これにより、洗浄液貯留部80の洗浄液が、洗浄ライン81を通って第2のライン13に流入し、第2のライン13を通って濾過器11の濾過膜70の出口側(内側領域)に流入する。この洗浄液は、濾過膜70の出口側から濾過膜70を通って濾過膜70の入口側(外側領域)に流出し、濾過器11の通液口11cから第3のライン14に排出され、第3のライン14を通って排液部に排液される。こうして、濾過膜70が洗浄される。所定量の洗浄液が濾過器11に供給されると、洗浄ポンプ82が停止し、濾過膜70の洗浄工程が終了する。
濾過膜70の洗浄工程が終了すると、ポンプ90、洗浄ポンプ82及び循環ポンプ116が停止し、第1の開閉装置19が閉鎖され、第2の開閉装置20が開放された状態で、ポンプ18及び濃縮ポンプ115が作動し、腹水の濾過、濃縮工程が再開される。
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に濾過膜70の洗浄のタイミングを正確に把握し、なおかつ自動で濾過膜70の洗浄を行うことができる。また、濾過膜70の入口側が中空糸膜の内側領域であり、濾過膜70の出口側が中空糸膜の外側領域であるので、洗浄液を中空糸膜の内側領域から外側領域に流出させて、濾過膜70の洗浄を効果的に行うことができる。
以上の第1の実施の形態及び第2の実施の形態において、図9及び図10に示すように濾過膜70の洗浄工程の際に、制御装置50は、ポンプ18とポンプ90を停止させ、第1の開閉装置19と第2の開閉装置20を閉鎖した状態で、洗浄装置30の洗浄ポンプ82を作動させ、洗浄液貯留部80の洗浄液を洗浄ライン81と第2のライン13を通じて濾過膜70の出口側に供給し濾過膜70の出口側の圧力を所定の値B以上に上昇させ、その後第1の開閉装置19を開放して洗浄液を濾過膜70に通過させるようにしてもよい(パルス洗浄)。このとき、濾過膜70の出口側の圧力は、第2の圧力測定装置17によりモニタリングされ、第2の圧力測定装置17により測定された圧力が、所定の値B以上になったときに、第1の開閉装置19が開放される。こうすることにより、濾過膜70に付着した付着物が、濾過膜70から剥がれやすくなり、濾過膜70の洗浄が効果的に行われる。なお、第1の開閉装置19が開放される際の濾過膜70の出口側の所定の圧力の値Bは、例えば200mmHg以上に設定される。
さらに、制御装置50は、上述の濾過器11の濾過膜70の出口側の圧力を所定の値B以上に上昇させ、その後洗浄液を濾過膜70に通過させること(パルス洗浄)を、複数回繰り返すようにしてもよい(繰り返しパルス洗浄)。このとき、第1の開閉装置19を開放して洗浄液を濾過膜70に通過させた後、第1の開閉装置19を閉鎖し、洗浄装置30の洗浄ポンプ82を作動させ、洗浄液貯留部80の洗浄液を洗浄ライン81と第2のライン13を通じて濾過膜70の出口側に供給して、再び、濾過膜70の出口側の圧力を所定の値B以上に上昇させる。かかる例によれば、濾過膜70の洗浄をさらに効果的に行うことができる。なお、パルス洗浄の回数は、例えば1回以上が好ましい。
制御装置50は、濾過器11の濾過膜70の出口側の圧力を所定の値B以上に上昇させ、その後洗浄液を濾過膜70を通過させることを複数回繰り返した(繰り返しパルス洗浄)後、図5及び図8に示したように第1の開閉装置19を開放し、第2の開閉装置20を閉鎖した状態で、所定時間、洗浄装置30により洗浄液を濾過膜70の出口側に供給し濾過膜70の出口側の圧力を所定の値B以上に上昇させずに洗浄液を濾過膜70に通過させる(連続洗浄)。こうすることにより、濾過膜70から剥離した付着物を、濾過器11内に滞留させることなく確実に濾過器11から排出することができる。この連続洗浄は、例えば濾過器11の一次側のプライミングボリューム以上行うとよい。
以上の実施の形態において、さらに、濾過膜70の洗浄工程を行う前の腹水の濾過、濃縮工程において、制御装置50は、濾過器11における濾過膜70の入口側の圧力P1と出口側の圧力P2の圧力差(P1-P2)が、所定の閾値Dを超えた場合の初めの少なくとも1回は、ポンプ18の流量を減らして腹水の濾過器11への供給を継続し、その後圧力差(P1-P2)が閾値Dを超えた場合に、回収工程及び洗浄工程に移行し、洗浄工程においてポンプ18を停止させ、第2の開閉装置20を閉鎖し、第1の開閉装置19を開放した状態で、洗浄装置30により洗浄液を濾過膜70に供給させるようにしてもよい。図11に示すようにポンプ18の流量Qを減らすと、濾過膜70の圧力差(P1-P2)が一旦小さくなり、濾過膜70の負担が低減される。よって、かかる場合、濾過膜70の洗浄工程の実行を遅らせ、洗浄工程の回数や、洗浄工程にかかるトータルの時間を減らすことができる。よって、腹水の濾過、濃縮工程を効率的に行うことができる。
さらに、制御装置50は、圧力差(P1―P2)に基づきポンプ18の減速を繰り返し、ポンプ18の流量Qが所定の最低流量Lに到達し、圧力差(P1-P2)が閾値Dを超えた場合に、回収工程及び洗浄工程に移行し、洗浄工程においてポンプ18を停止させ、第2の開閉装置20を閉鎖し、第1の開閉装置19を開放した状態で、洗浄装置30により洗浄液を濾過膜70に供給させるようにしてもよい。かかる場合、さらに洗浄工程の実行を遅らせることでトータルの時間を減らすと共に、有用物質の排出を最低限に抑えることができる。なお、有用物質の排出を最低限に抑える手法として、ポンプ18を停止する前に、最低量の腹水を処理するようにしてもよい。かかる場合、過度なろ過と洗浄の繰り返しにより有用物質が排出されることを防ぐことができる。
以上の実施の形態において、腹水の濾過、濃縮工程において圧力差(P1-P2)が閾値Dを超えた場合に回収工程に移行していたが、回収工程を行わずに、直接洗浄工程に移行してもよい。
以上の実施の形態において、腹水の濾過、濃縮工程を終了した後に、再濃縮工程を行っていたが、再濃縮工程は行わなくてもよい。
以上の実施の形態において、第1の圧力測定装置16により測定された圧力P1と第2の圧力測定装置17により測定された圧力P2との圧力差(P1-P2)に基づいて、圧力差(P1-P2)が所定の閾値Dを超えた場合に、濾過膜70の洗浄工程を行っていたが、第1の圧力測定装置16により測定された圧力P1に基づいて、圧力P1が所定の閾値Eを超えた場合に、濾過膜70の洗浄工程を行ってもよい。かかる場合も、濾過膜70に目詰まりが生じたことを確実に検出できる。なお、閾値Eは、予め設定される。また、かかる場合、圧力P1が、「第1の圧力測定装置により測定された圧力に基づいた値となる。
以上の第1の実施の形態及び第2の実施の形態において、第1の圧力測定装置16は、第1のライン12又は第3のライン14のいずれかに設けられていてもよい。第2の圧力測定装置17は、第2のライン13又は第4のライン15のいずれかに設けられていてもよい。第3のライン14は、濾過器11の通液口11b、11cに接続されていたが、濾過器11の入口側に連通し、濾過膜70を通過した洗浄液を排出するものであれば、例えば図12に示すように第1のライン12に接続されていてもよい。このとき第3のライン14は、第1のライン12におけるポンプ18と濾過器11の間に接続されている。かかる場合、濾過膜70を通過した洗浄液は、第1のライン12と第3のライン14を通って排液部に排液される。
洗浄装置30は、他の構成を有するものであってもよい。洗浄装置30は、例えば洗浄ポンプ82を備えず、バルブを有し、洗浄液貯留部80の洗浄液を自由落下により濾過器11の濾過膜70の出口側に供給するものであってもよい。または第3のライン14に洗浄ポンプを設け、洗浄ライン81に洗浄開閉装置を設けていてもよい。
回収装置40は、第4のライン15とポンプ90を有するものであったが、他の構成を有するものであってもよい。回収装置40は、大気開放された第4のライン15と、その第4のライン15を開閉するバルブを有するものであってもよい。かかる場合、バルブを開くことにより、大気が第4のライン15に流入し、第4のライン15を通って濾過器11の濾過膜70の出口側に送られる。また、回収装置40は、濾過器11の濾過膜70の出口側に液体を供給するものであってもよい。なお、腹水処理装置1は、必ずしも回収装置40を備えている必要はない。
濾過器11は、円筒状で4つの通液口を有するものである必要はなく、他の構成を有するものであってもよい。濾過膜70は、中空糸膜である必要はなく、他の種類の濾過膜であってもよい。
濃縮システム60の構成も上記実施の形態のものに限られない。例えば濃縮ポンプ115は、濃縮ライン112に設けられていてもよいし、排水ライン113に設けられていてもよい。第4の圧力測定装置118は、濃縮ライン112に設けられていてもよい。循環ライン114は、あってもなくてもよい。さらに、本発明は、濃縮システム60を備えない腹水処理装置にも適用できる。かかる場合、例えば第2のライン13に濾過腹水収容部が接続され、濾過器11を通過した濾過腹水は、第2のライン13を通って濾過腹水収容部に収容されてもよい。
腹水処理装置1は、腹水、濾過された腹水、濃縮された腹水、洗浄液などを加温する加温器(図示せず)を有していてもよい。加温器は例えば第1のライン12、第2のライン13、洗浄ライン81、濃縮ライン112、循環ライン114などに設けられる。またはろ過器11、濃縮膜110を直接加温するものであってもよい。
以上の実施の形態において、腹水処理装置1は、腹水バッグ10の腹水を濾過、濃縮して濃縮腹水バッグ111に収容するものであったが、患者から直接第1のライン12に腹水を取り出し、濾過、濃縮するものであってもよい。また、濾過、濃縮した濃縮腹水を直接患者に戻すものであってもよい。よって、腹水処理装置1は、腹水バッグ10、濃縮腹水バッグ111を備えないものであってもよい。
以上の実施の形態は、本発明を腹水を処理する腹水処理装置1に適用した例であったが、本発明は、胸水などの他の体腔液を処理する体腔液処理装置にも適用できる。