JP7094629B2 - ベルト式の無段変速機 - Google Patents

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Description

本発明は、ベルト式の無段変速機に関する。
ベルト式の無段変速機では、回転駆動力の伝達時に、可動プーリに付設されたプーリ油室に遠心油圧が発生する。
特許文献1には、遠心油圧キャンセル室を設けて、プーリ油室に発生する遠心油圧を、遠心油圧キャンセル室に発生する遠心油圧でキャンセルすることが開示されている。
特開2014-185753号公報
遠心油圧キャンセル室への油(オイル)の供給は、固定プーリのプーリ軸内に設けた油路(軸内油路)を介して行われる。
軸内油路には、他の油圧機器からリークした油が供給される。そのため、リークした油の量が少ない場合には、遠心油圧キャンセル室へ供給する油量が不足することがある。
かかる場合、遠心油圧をキャンセルできないために、プーリの推力が余分に高まる結果、ベルトに対する挟持力が過大となる。
そこで、遠心油圧キャンセル室に油を適切に供給できるようにすることが求められている。
本発明のある態様は、
軸内油路が設けられたプーリ軸を有する固定プーリと、
前記プーリ軸に外挿されて回転軸方向に移動可能に設けられた可動プーリと、
前記可動プーリのシーブ面の裏面に設けられた受圧面を含む受圧室と、
前記受圧室に隣接する遠心油圧キャンセル室と、を有し、
前記軸内油路を介して前記受圧室に供給されるオイルの供給圧で、前記可動プーリを前記回転軸方向に移動させるように構成されたベルト式の無段変速機において、
前記遠心油圧キャンセル室に連絡する第1油路と、前記軸内油路に連絡する第2油路とを、前記プーリ軸における前記可動プーリが移動する領域の外周に開口させ、
前記回転軸方向に移動する前記可動プーリにより、前記第1油路と前記第2油路との連通/遮断が切り替えられるようにした。
本発明によれば、軸内油路に供給されるオイルOLは、油圧制御回路から供給される作動用のオイルであるので、リーク油のように供給が不足することない。よって、遠心油圧キャンセル室にオイルを適切に供給でき、ベルトに対する挟持力が過大となることを防止できる。
ベルト式の無段変速機のバリエータ周りを説明する図である。 変速比が最Lowである場合を説明する図である。 変速比が最Lowである場合におけるオイルの流れを説明する図である。 変速比が最Highである場合を説明する図である。 変速比が最Lowである場合を説明する図である。 変速比が最Highである場合を説明する図である。
以下、発明の実施形態を、車両用のベルト式の無段変速機1を例に挙げて説明する。
図1は、ベルト式の無段変速機1のバリエータ2周りを説明する図である。
図2は、変速比が最Lowである場合を説明する図である。図2の(a)は、変速比が最Lowである場合における可動プーリ42の配置を説明する図である。図2の(b)は、(a)におけるA-A断面図である。
図3は、変速比がLowである場合におけるオイルOLの流れを説明する図である。図3の(a)は、油室R2と遠心油圧キャンセル室R3に供給されるオイルOLの流れを説明する図である。図3の(b)は、図3の(a)におけるA-A断面図である。図3の(c)は、図3の(a)におけるB-B断面図である。
図4は、変速比が最Highである場合を説明する図である。図4の(a)は、変速比がHighである場合における可動プーリ42の配置を説明する図である。図4の(b)は、図4の(a)におけるA-A断面図である。図4の(c)は、図4の(a)におけるB-B断面図である。
図1に示すように、車両用のベルト式の無段変速機1のバリエータ2は、一対のプーリ(プライマリプーリ3、セカンダリプーリ4)と、一対のプーリに巻き掛けられた無端状のベルト5(無端状部材)と、を有している。
プライマリプーリ3は、固定プーリ31と、可動プーリ32とを有している。
固定プーリ31は、回転軸X1に沿って配置された軸部311と、軸部311の外周から径方向外側に延びるシーブ部312とを、有している。
可動プーリ32は、固定プーリ31の軸部311に外挿された環状基部321と、環状基部321の外周から径方向外側に延びるシーブ部322と、を有している。
可動プーリ32は、固定プーリ31との相対回転が規制された状態で、軸部311の軸方向(回転軸X1方向)に移動可能に設けられている。
固定プーリ31のシーブ部312と、可動プーリ32のシーブ部322は、回転軸X1方向で間隔をあけて対向している。
プライマリプーリ3では、固定プーリ31のシーブ面312aと、可動プーリ32のシーブ面322aの間に、ベルト5が巻き掛けられるV溝33が形成されている。
プライマリプーリ3では、可動プーリ32に付設された油室R1(受圧室)への供給圧を調節することで、可動プーリ32が回転軸X1方向に変位する。これにより、シーブ面312a、322aの間のV溝33の溝幅が、オイルOLの供給圧に応じて変更されて、プライマリプーリ3におけるベルト5の巻き掛け半径が変更される。
セカンダリプーリ4は、固定プーリ41と、可動プーリ42とを有している。
固定プーリ41は、回転軸X2に沿って配置された軸部411(プーリ軸)と、軸部411の外周から径方向外側に延びるシーブ部412とを、有している。
可動プーリ42は、固定プーリ41の軸部411に外挿された環状基部421と、環状基部421の外周から径方向外側に延びるシーブ部422と、を有している。
可動プーリ42は、固定プーリ41との相対回転が規制された状態で、軸部411の軸方向(回転軸X2方向)に移動可能に設けられている。
ここで、図2の(b)に示すように、固定プーリ41の軸部411の外周と、可動プーリ42の環状基部421の内周における互いに対向する部位には、回転軸X2に沿う溝419、429が設けられている。可動プーリ42と固定プーリ41との回転軸X2回りの相対回転の規制は、軸部411側の溝419と、環状基部421側の溝429とに跨がって設けられたボールBaにより成されている。
図1に示すように、固定プーリ41のシーブ部412と、可動プーリ42のシーブ部422は、回転軸X2方向で間隔をあけて対向している。
セカンダリプーリ4では、固定プーリ41のシーブ面412aと、可動プーリ42のシーブ面422aとの間に、ベルト5が巻き掛けられるV溝43が形成されている。
セカンダリプーリ4では、可動プーリ42に付設された油室R2(受圧室)への供給圧を調節することで、可動プーリ42が回転軸X2方向に変位する。これにより、シーブ面412a、422aの間のV溝43の溝幅が、供給圧に応じて変更されて、セカンダリプーリ4におけるベルト5の巻き掛け半径が変更される。
固定プーリ41の軸部411には、回転軸X2方向の一方の端部411aと他方の端部411bに、ベアリング44、45が外挿されている。
回転軸X2方向における軸部411の他方の端部411bは、ベアリング45を介して、変速機ケース10側の支持部112で回転可能に支持されている。
回転軸X2方向における軸部411の一方の端部411aは、ベアリング44を介して、サイドカバー13側の支持部132で回転可能に支持されている。
サイドカバー13では、変速機ケース10との対向部に、ベアリング44の支持孔17が開口している。回転軸X2方向から見て支持孔17の中央部には、固定プーリ41の軸部411との干渉を避けるための凹部171が形成されている。
凹部171の中央部には、支持筒172が設けられている。支持筒172は、変速機ケース10側(図中、右側)に突出しており、支持筒172の先端側は、固定プーリ41の軸内油路413に遊嵌している。
支持筒172には、円筒状のブッシュ173の一端側が内嵌しており、ブッシュ173の他端側は、軸内油路413に内嵌している。この状態おいて、軸部411とブッシュ173とは相対回転可能である。
軸内油路413は、軸部411の一方の端部411aに開口している。軸内油路413は、軸部411内を固定プーリ41の回転軸X2に沿って直線状に延びており、軸部411に外挿された可動プーリ42の内径側を、回転軸X2方向に横切っている。
軸内油路413には、油圧制御回路62で調圧されたオイルOL(作動油圧)が、油路14を介して供給される。軸内油路413の先端側(図中、右側)には、軸内油路413と軸部411の外周411dとを連通させる油孔414が設けられている。
本実施形態では、可動プーリ42の作動用の油圧が、軸内油路413に供給されたのち、油孔414を通って軸部411の外径側に位置する油室R2に供給される。
図2の(a)に示すように、可動プーリ42のシーブ部422では、シーブ面422aとは反対側の裏面422bに、筒状部材46が固定されている。筒状部材46は、回転軸X2に沿う向きで設けられており、筒状部材46の長手方向の一端には、内径側に延びる接合部461が設けられている。
接合部461は、回転軸X2方向から見てリング状を成しており、筒状部材46は、接合部461を、回転軸X2方向からシーブ部422の裏面422bに接触させた状態で、可動プーリ42に相対回転不能に固定されている。
筒状部材46は、可動プーリ42の環状基部421の外周を所定間隔で囲んでおり、筒状部材46の他端46bは、環状基部421の端部421cの外径側に位置している。
筒状部材46の他端46b側の内周では、バランスシールド47の外周部47aが、スナップリング465で位置決めされている。
バランスシールド47は、シーブ部422から離れる方向(図中、右方向)への移動が、スナップリング465により規制されている。
バランスシールド47の外周部47aよりも内周部47b側の領域は、可動プーリ42の環状基部421よりも外径側を、シーブ部422から離れる方向(図中、右方向)に延びたのち、内径側(回転軸X2)側に屈曲している。
バランスシールド47の内周部47bは、回転軸X2の径方向から、プランジャ48の筒状の嵌合部481の外周に、隙間をあけて対向している。
プランジャ48は、シーブ部422とバランスシールド47との間に位置しており、回転軸X2方向の一方の端部に筒状の嵌合部481を有している。嵌合部481は、固定プーリ41の軸部411の外周にスプライン嵌合している。プランジャ48の嵌合部481は、ベアリング45と、軸部411の段部411cとの間に位置している。
ここで、段部411cは、軸部411における可動プーリ42がスプライン嵌合した領域(大径部)と、軸部411における嵌合部481がスプライン嵌合した領域(小径部)との境界の段差である。
プランジャ48は、嵌合部481に隣接する領域が、可動プーリ42の環状基部421の外径側を、シーブ部422に近づく方向(図中、左方向)に延びたのち、外径側に屈曲している。
プランジャ48の外周部48aには、シールリングSが外嵌しており、プランジャ48の外周部48aは、筒状部材46の内周にシールリングSを接触させている。
可動プーリ42では、シーブ部422の裏面422b側(シーブ面422aとは反対側)に、可動プーリ42と、筒状部材46と、バランスシールド47とで囲まれた空間Rが形成されている。
本実施形態では、この空間Rが、プランジャ48により、回転軸X2方向で隣接する2つの空間(油室R2、遠心油圧キャンセル室R3)に区画されている。
固定プーリ41の軸部411では、プランジャ48の嵌合部481がスプライン嵌合した領域(小径部)に、軸部411を直径線方向に貫通する油孔417が設けられている。
この油孔417は、後記する第1油路416および第2油路415を介して、軸内油路413に連絡可能となっている。
プランジャ48の嵌合部481では、油孔417に対応する位置に、油孔486が設けられている。油孔486は、嵌合部481を径方向に貫通しており、油孔486は、遠心油圧キャンセル室R3の内径側に開口している。
遠心油圧キャンセル室R3は、嵌合部481の油孔486と、軸部411の油孔417と、第1油路416と第2油路415を介して、軸内油路413に連絡可能となっている。
図3の(a)、(c)に示すように、油室R2の内径側では、軸内油路413に連絡する油孔414が、軸部411の外周411dに開口している。回転軸X2方向から見て油孔414は、軸部411を直径線Lm方向に貫通している。
図3の(a)、(b)に示すように、軸内油路413では、当該軸内油路413でのオイルOL(作動油圧)の通流方向における油孔414の上流側に、第2油路415が設けられている。
第2油路415は、軸内油路413から回転軸X2の径方向外側に向けて直線状に延びており、回転軸X2周りの周方向に120°間隔で3つ設けられている。
第2油路415は、軸内油路413と軸部411の外周411dとを連通させている。
軸部411では、回転軸X2周りの周方向で隣り合う第2油路415の間に、前記した溝419が設けられている。溝419もまた、回転軸X2周りの周方向に120°間隔で3つ設けられている。
図3の(b)、(c)に示すように、回転軸X2方向から見て軸部411では、回転軸X2周りの周方向における油孔414が開口する位置と、回転軸X2周りの周方向における第2油路415が開口する位置とが重ならないように設定されている。
また、軸部411の外周には、回転軸X2周りの周方向において、第2油路415に隣接する位置に第1油路416が開口している。
軸内油路413から第2油路415を通って、軸部411の外周411d側に排出されたオイルOLが、第1油路416に流入できるようになっている。
前記したように第1油路416は、軸部411に設けた油孔417に連絡している(図3の(a)参照)。
よって、第2油路415から排出された後に第1油路416に流入したオイルOLは、油孔417と油孔486を通って、前記した遠心油圧キャンセル室R3に流入する。
軸部411の外周411dにおける第2油路415と第1油路416が開口する位置は、回転軸X2方向に移動する可動プーリ42(環状基部421)の移動範囲内に設定されている。
回転軸X2方向に移動する環状基部421により、軸部411の外周411dにおける第2油路415と第1油路416の開口を開閉できるようにするためである。
図3の(a)に示すように、環状基部421は、軸部411の回転軸X2からの径r1と同じ内径の第1基部421aと、第1基部421aよりも内径が大きい第2基部421bと、を有している。
第1基部421aと第2基部421bは、回転軸X2方向で連なっており、第1基部421aのほうが、第2基部421bよりもシーブ部422側(図3の(a)における左側)に位置している。
本実施形態では、バリエータ2での変速比が小さい最Lowの時に、第2基部421bが、軸部411の外周411dにおける第2油路415の開口および第1油路416の開口と重なる位置に配置される(図3参照)。
この最Lowの状態では、軸部411の外周411dと環状基部421の内周との間に隙間CLが形成されており、第2油路415から軸部411の外周411d側に排出されたオイルOLが、第1油路416に流入できるようになる。
そのため、最Lowの状態では、軸内油路413に供給される作動用のオイルOLの一部が、第2油路415、第1油路416、油孔417、486を通って遠心油圧キャンセル室R3に供給される。
さらに、最Lowの状態では、油孔414の外径側に環状基部421が位置していないので、軸内油路413に供給される作動用のオイルOLが、油孔414から可動プーリ42の油室R2に供給される。
よって、最Lowの状態では、可動プーリ42の油室R2に作動用のオイルOLが供給されると共に、遠心油圧キャンセル室R3に、作動用のオイルOLの一部が供給される。
一方、バリエータ2での変速比が大きい最Highの時に、第1基部421aが、軸部411の外周411dにおける第2油路415の開口および第1油路416の開口と重なる位置に配置される(図4参照)。
この最Highの状態では、軸部411の外周411dにおける第2油路415と重なる領域に、第1基部421aの内周が隙間なく接している。そのため、軸内油路413に供給された作動用のオイルOLは、第2油路415を通って第1油路416に流入できない。
なお、油孔414の外径側には、環状基部421の第2基部421bが位置している。軸部411における油孔414が設けられた領域では、軸部411の外周と環状基部421の内周との間に隙間CLが生じている。そのため、軸内油路413に供給された作動用のオイルOLは、油孔414を通って、セカンダリプーリ4の油室R2に供給される。
よって、最Highの状態では、軸内油路413に供給される作動用のオイルOLは、可動プーリ42の油室R2にのみ供給されて、遠心油圧キャンセル室R3には供給されない。
以下、本実施形態にかかる無段変速機1の作用を説明する。
図1に示すように、無段変速機1では、オイルポンプOPが駆動されると、オイルパン60内のオイルOLがオイルストレーナ63を介してオイルポンプOPに吸引される。
オイルポンプOPは、吸引したオイルOLを加圧したのち、オイルOLを、油圧制御回路62に供給する。
油圧制御回路62には、オイルOLの供給先を切り替える切替弁や、オイルOLを調圧する調圧弁などが設けられている。油圧制御回路62は、オイルポンプOPから供給されたオイルOLから、バリエータ2に供給するオイルOLの圧力を調圧して、プライマリプーリ3の可動プーリ32に付設された油室R1と、セカンダリプーリ4の可動プーリ42に付設された油室R2に、作動用のオイルOLを供給する。
セカンダリプーリ4では、油圧制御回路62で調圧されたオイルOL(作動圧)が、サイドカバー13内の油路14(図1参照)を通って、軸内油路413に供給される。
そして、軸内油路413に供給されたオイルOLは、油孔414を通って、油室R2に供給される。
これにより、油室R2に供給されたオイルOLが、可動プーリ42の作動圧として機能して、セカンダリプーリ4におけるV溝43の溝幅が、所望の変速を実現するための所定幅に調整される。
ここで、バリエータ2により回転駆動力を伝達している際に、セカンダリプーリ4が回転軸X2回りに回転する。そのため、油室R2に供給されたオイルOLが、回転による遠心力で径方向外側(筒状部材46側)に集中する。これにより、油室R2内では、外径側の圧力が高くなる。
そうすると、可動プーリ42の受圧面(裏面422b側)に油室R2から作用する押圧力が高くなって、可動プーリ42のシーブ部422が、高くなった押圧力(遠心油圧)で固定プーリ41のシーブ部412に近づくことがある。かかる場合、セカンダリプーリ4におけるベルト5の巻き掛け半径が、予定されていた巻き掛け半径とは異なる巻き掛け半径になって、バリエータ2での変速比が目標の変速比から外れてしまう。
そのため、バリエータ2では、遠心油圧キャンセル室R3が、油室R2に隣接して設けられている。そして、遠心油圧キャンセル室R3に発生させた遠心油圧で、油室R2内に発生する遠心油圧を相殺することで、セカンダリプーリ4におけるベルト5の巻き掛け半径が、予定されていた巻き掛け半径になるようにしている。
ここで、本実施形態にかかる無段変速機1のバリエータ2では、軸内油路413に供給された作動用のオイルOLの一部が、遠心油圧キャンセル室R3に供給される。
そして、変速比に応じて回転軸X2方向に移動する可動プーリ42の位置に応じて、遠心油圧キャンセル室R3へのオイルOLの供給/非供給や、オイルOLを供給する場合の供給量が調整される。
前記したように、変速比が最Highの時には、遠心油圧キャンセル室R3に作動用のオイルOLは供給されないが、変速比が最Highから最Low側に向かうにつれて、遠心油圧キャンセル室R3に供給されるオイルOLの量が増加する。
このように、油圧制御回路62から軸内油路413に供給される作動用のオイルOLの一部が、遠心油圧キャンセル室R3にも供給される。よって、遠心油圧キャンセル室R3にリーク油を供給する場合に比べて、遠心油圧キャンセル室R3にオイルOLを安定的に供給できる。
これにより、油室R2に生じる遠心油圧を、遠心油圧キャンセル室R3に生じる遠心油圧で適切に相殺できる。
よって、遠心油圧をキャンセルできないために、プーリの推力が余分に高まって、ベルトに対する挟持力が過大となる事態の発生を好適に防止できる。
本実施形態にかかるベルト式の無段変速機1は、以下の構成を有している。
(1)無段変速機1は、
軸内油路413が設けられた軸部411(プーリ軸)を有する固定プーリ41と、
軸部411に外挿されて回転軸X2方向に移動可能に設けられた可動プーリ42と、
可動プーリ42のシーブ面422aの裏面に設けられた裏面422b(受圧面)を含む油室R2(受圧室)と、
油室R2に隣接する遠心油圧キャンセル室R3と、を有する。
無段変速機1では、軸内油路413を介して油室R2に供給されるオイルOLの供給圧で、可動プーリ42を回転軸X1方向に移動させるように構成されている。
軸内油路413に供給されるオイルOLの一部が、遠心油圧キャンセル室R3に供給可能とされている。
このように構成すると、軸内油路413に供給されるオイルOLは、油圧制御回路62から供給される作動用のオイルOLである。よって、リーク油のように供給が不足することないので、遠心油圧キャンセル室R3にオイルOLを適切に供給でき、ベルト5に対する挟持力が過大となることを防止できる。
本実施形態にかかるベルト式の無段変速機1は、以下の構成を有している。
(2)遠心油圧キャンセル室R3に連絡する第1油路416と、軸内油路413に連絡する第2油路415とが、軸部411における可動プーリ42が移動する領域の外周に開口している。
回転軸X2方向に移動する可動プーリ42により、第1油路416と第2油路415との連通/遮断が切り替えられる。
このように構成すると、第1油路416と第2油路415とが連通すると、軸内油路413を介して供給されるオイルOLの一部が、遠心油圧キャンセル室R3に供給される。
軸内油路413に供給されるオイルOLは、油圧制御回路62から供給される作動用のオイルOLである。よって、リーク油のように供給が不足することないので、遠心油圧キャンセル室R3にオイルOLを適切に供給でき、ベルト5に対する挟持力が過大となることを防止できる。
本実施形態にかかるベルト式の無段変速機1は、以下の構成を有している。
(3)固定プーリ41と可動プーリ42は、無段変速機1が備える一対のプーリ(プライマリプーリ3、セカンダリプーリ4)のうちのセカンダリプーリ4(従動側のプーリ)を構成する。
可動プーリ42のシーブ面422aと、固定プーリ41のシーブ面412aとが、回転軸X1方向で所定距離以上離間すると、軸部411の外周における第2油路415の開口が、可動プーリ42により塞がれるように設定されている。
セカンダリプーリ4(従動側のプーリ)では、可動プーリ42のシーブ面422aと固定プーリ41のシーブ面412aとの間のV溝43が広くなるほど、バリエータ2での変速比がHigh側に変化する。
変速比をHighからLowに変化させる際には油室R2(受圧室)に供給されるオイルOLの供給圧を高めて、V溝43の溝幅を狭くする方向に可動プーリ42を移動させる。
この際に、軸内油路413を介して供給されるオイルOLの一部が、遠心油圧キャンセル室R3にも供給されると、油室R2内のオイルOLの圧力と、遠心油圧キャンセル室R3内のオイルOLの圧力とが略同じになる結果、V溝43の溝幅を狭くする方向への可動プーリ42の移動が阻害される。
かかる場合、Low側への変速が遅れてしまう。
上記のように構成すると、可動プーリ42のシーブ面422aと固定プーリ41のシーブ面412aとが回転軸X2方向で所定距離以上離間して、変速比が閾値の変速比よりもHigh側になった場合に、遠心油圧キャンセル室R3へのオイルOLの供給を止めることができる。
よって、この状態で、変速比をLow側に変化させようとすると、V溝43の溝幅を狭くする方向への可動プーリ42の移動が、遠心油圧キャンセル室R3内のオイルOLにより阻害されないので、Low側への変速をスムーズに行うことができる。
本実施形態にかかるベルト式の無段変速機1は、以下の構成を有している。
(4)可動プーリ42は、軸部411に外挿される環状基部421を有しており、
環状基部421では、軸部411の外径と整合する内径の第1基部421aと、軸部411の外径よりも大きい内径の第2基部421bとが、回転軸X2方向で隣接している。
第1基部421aが、軸部411の外周411dにおける第2油路415の開口に重なる位置に配置されると、第1油路416と第2油路415との連通が遮断される。
第2基部421bが、軸部411の外周411dにおける第2油路415の開口に重なる位置に配置されると、第1油路416と第2油路415とが連通する。
このように構成すると、軸部411に追加の油路を形成する工程と、環状基部421に内径の異なる部位を形成する工程を追加するだけで、遠心油圧キャンセル室R3へのオイルOLの供給/非供給を切り替えることができる。
遠心油圧キャンセル室R3へのオイルOLの供給/非供給の切替のために、別途部品を用意することや弁体などを用意する必要がないので、より安価な構成で、遠心油圧キャンセル室R3へのオイルの供給/非供給の切替を行うことができる。
以下、本件発明の変形例を説明する。
図5は、変速比が最Lowである場合を説明する図である。
図5の(a)は、変速比が最Lowである場合における可動プーリ42の配置を説明する図である。図5の(b)は、(a)におけるA-A断面図である。図5の(c)は、(a)におけるB-B断面図である。
図6は、変速比が最Highである場合を説明する図である。
図6の(a)は、変速比が最Highである場合における可動プーリ42の配置を説明する図である。図6の(b)は、(a)におけるA-A断面図である。図6の(c)は、(a)におけるB-B断面図である。
変形例に係るセカンダリプーリ4では、固定プーリ41における第1油路416、第2油路415の配置と、可動プーリ42における環状基部421の形状が、前記した実施形態のものと相違する。
以下においては、相違する部位について主として説明し、他の部位については必要に応じて説明する。
図5に示すように、固定プーリ41の軸部411では、軸内油路413でのオイルOL(作動油圧)の通流方向における油孔414の下流側に、第2油路415が設けられている。
第2油路415は、軸内油路413から回転軸X2の径方向外側に向けて直線状に延びており、回転軸X2周りの周方向に120°間隔で3つ設けられている。
第2油路415は、軸内油路413と軸部411の外周411dとを連通させている。
図5の(b)、(c)に示すように、回転軸X2方向から見て軸部411では、回転軸X2周りの周方向における油孔414が開口する位置と、回転軸X2周りの周方向における第2油路415が開口する位置とが重ならないように設定されている。
また、軸部411の外周には、回転軸X2周りの周方向において、第2油路415に隣接する位置に第1油路416が開口している。
軸内油路413から第2油路415を通って、軸部411の外周411d側に排出されたオイルOLが、第1油路416に流入できるようになっている。
軸部411の外周411dにおける第2油路415と第1油路416が開口する位置は、回転軸X2方向に移動する可動プーリ42(環状基部421)の移動範囲内に設定されている。
回転軸X2方向に移動する環状基部421により、軸部411の外周411dにおける第2油路415と第1油路416の開口を開閉できるようにするためである。
図5の(a)に示すように、環状基部421の内周には、回転軸X2方向における途中位置に、凹部423が設けられている。
凹部423は、回転軸X2周りの周方向の全周に亘って設けられており、回転軸X2方向に所定長さLxで設けられている。
本変形例では、以下の条件を満たすように、第2油路415、第1油路416が開口する位置と、凹部423の位置および長さLxと、油孔414の位置が設定されている。
(a)バリエータ2での変速比が小さい最Lowの時に、軸部411の外周411dにおける第2油路415の開口および第1油路416の開口と、油孔414の開口が、環状基部421と重なる位置に配置されない。
(b)バリエータ2での変速比が大きい最Highの時に、軸部411の外周411dにおける第2油路415の開口および第1油路416の開口が、環状基部421と重なる位置に配置される。
(c)バリエータ2での変速比が大きい最Highの時に、油孔414の開口が、環状基部421の凹部423と重なる位置に配置される。
これにより、最Lowの状態では、軸内油路413に供給される作動用のオイルOLの一部が、第2油路415、第1油路416、油孔417、486を通って遠心油圧キャンセル室R3に供給される。
さらに、最Lowの状態では、油孔414の外径側に環状基部421が位置していないので、軸内油路413に供給される作動用のオイルOLが、可動プーリ42の油室R2に供給される。
よって、最Lowの状態では、可動プーリ42の油室R2に作動用のオイルOLが供給されると共に、遠心油圧キャンセル室R3に、作動用のオイルOLの一部が供給される。
一方、バリエータ2での変速比が大きい最Highの時に、環状基部421が、軸部411の外周411dにおける第2油路415の開口および第1油路416の開口と重なる位置に配置される(図6参照)。
この最Highの状態では、軸部411の外周411dの第2油路415および第1油路416が開口する領域に、環状基部421の内周が隙間なく接している。そのため、軸内油路413に供給された作動用のオイルOLは、第2油路415を通って第1油路416に流入できない。
なお、最Highの状態では、油孔414の外径側に、環状基部421の凹部423が位置しており、環状基部421における凹部423の領域には、環状基部421の外周を凹部423とを連通させる油孔424が設けられている。
そのため、軸内油路413に供給された作動用のオイルOLは、油孔414と、凹部423と、油孔424とを通って、セカンダリプーリ4の油室R2に供給される。
よって、最Highの状態では、軸内油路413に供給される作動用のオイルOLは、可動プーリ42の油室R2にのみ供給されて、遠心油圧キャンセル室R3には供給されない。
このように、変形例にかかる無段変速機は、以下の構成を有している。
(5)可動プーリ42は、軸部411(プーリ軸)に外挿される環状基部421を有しており、
環状基部421が、軸部411の外周411dにおける第2油路415の開口に重なる位置に配置されると、第1油路416と第2油路415との連通が遮断される。
環状基部421が、軸部411の外周411dにおける第2油路415の開口から外れた位置に配置されると、第1油路416と第2油路415とが連通する。
このように構成することによっても、遠心油圧キャンセル室R3へのオイルOLの供給/非供給の切替のために、別途部品を用意することや弁体などを用意する必要がないので、より安価な構成で、遠心油圧キャンセル室R3へのオイルの供給/非供給の切替を行うことができる。
変形例にかかる無段変速機は、以下の構成を有している。
(6)環状基部421の内周には、回転軸X2方向における途中位置に、凹部423が設けられている。
バリエータ2での変速比が大きい最Highの時に、油孔414の開口が、環状基部421の凹部423と重なる位置に配置される。
バリエータ2での変速比が大きい最Highの時に、軸部411の外周411dにおける第2油路415の開口および第1油路416の開口が、環状基部421と重なる位置に配置される。
環状基部421における凹部423の領域には、環状基部421の外周を凹部423とを連通させる油孔424が設けられている。
バリエータ2での変速比が小さい最Lowの時に、軸部411の外周411dにおける第2油路415の開口および第1油路416の開口と、油孔414の開口が、環状基部421と、回転軸X2方向で離れた位置に配置される。
このように構成することによっても、油圧制御回路62から軸内油路413に供給される作動用のオイルOLの一部が、遠心油圧キャンセル室R3にも供給される。よって、遠心油圧キャンセル室R3にリーク油を供給する場合に比べて、遠心油圧キャンセル室R3にオイルOLを安定的に供給できる。
以上の通り、本件発明にかかる実施形態を説明した。本件発明は、上記した態様のみに限定されない。発明の技術的な思想の範囲内で適宜変更可能である。
1 無段変速機
2 バリエータ
3 プライマリプーリ
31 固定プーリ
32 可動プーリ
33 V溝
4 セカンダリプーリ
41 固定プーリ
411 軸部
411d 外周
412 シーブ部
412a シーブ面
413 軸内油路
414 油孔
415 第2油路
416 第1油路
417 油孔
419 溝
42 可動プーリ
421 環状基部
421a 第1基部
421b 第2基部
421c 端部
422 シーブ部
422a シーブ面
422b 裏面
423 凹部
424 油孔
429 溝
43 V溝
5 ベルト
46 筒状部材
47 バランスシールド
48 プランジャ
481 嵌合部
486 油孔
62 油圧制御回路
Ba ボール
CL 隙間
OL オイル
R1 油室
R2 油室
R3 遠心油圧キャンセル室
S シールリング
X1 回転軸
X2 回転軸

Claims (4)

  1. 軸内油路が設けられたプーリ軸を有する固定プーリと、
    前記プーリ軸に外挿されて回転軸方向に移動可能に設けられた可動プーリと、
    前記可動プーリのシーブ面の裏面に設けられた受圧面を含む受圧室と、
    前記受圧室に隣接する遠心油圧キャンセル室と、を有し、
    前記軸内油路を介して前記受圧室に供給されるオイルの供給圧で、前記可動プーリを前記回転軸方向に移動させるように構成されたベルト式の無段変速機において、
    前記遠心油圧キャンセル室に連絡する第1油路と、前記軸内油路に連絡する第2油路とを、前記プーリ軸における前記可動プーリが移動する領域の外周に開口させ、
    前記回転軸方向に移動する前記可動プーリにより、前記第1油路と前記第2油路との連通/遮断が切り替えられるようにしたことを特徴とするベルト式の無段変速機。
  2. 前記固定プーリと前記可動プーリは、無段変速機が備える一対のプーリのうちの従動側のプーリを構成しており、
    前記可動プーリのシーブ面と、前記固定プーリのシーブ面とが、前記回転軸方向で所距離以上離間すると、前記プーリ軸の外周における前記第2油路の開口が、前記可動プーリにより塞がれるように設定されていることを特徴とする請求項に記載のベルト式の無段変速機。
  3. 前記可動プーリは、前記プーリ軸に外挿される環状基部を有しており、
    前記環状基部では、前記プーリ軸の外径と整合する内径の第1基部と、前記プーリ軸の外径よりも大きい内径の第2基部とが、前記回転軸方向で隣接しており、
    前記第1基部が、前記プーリ軸の外周における前記第2油路の開口に重なる位置に配置されると、前記第1油路と前記第2油路との連通が遮断され、
    前記第2基部が、前記プーリ軸の外周における前記第2油路の開口に重なる位置に配置されると、前記第1油路と前記第2油路とが連通することを特徴とする請求項に記載のベルト式の無段変速機。
  4. 前記可動プーリは、前記プーリ軸に外挿される環状基部を有しており、
    前記環状基部が、前記プーリ軸の外周における前記第2油路の開口に重なる位置に配置されると、前記第1油路と前記第2油路との連通が遮断され、
    前記環状基部が、前記プーリ軸の外周における前記第2油路の開口から外れた位置に配置されると、前記第1油路と前記第1油路と前記第2油路とが連通することを特徴とする請求項に記載のベルト式の無段変速機。
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