JP7093961B2 - ストレス低減薬剤 - Google Patents
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R1は、水素原子、水酸基、若しくは置換基で置換されていてもよいもので、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオエーテル基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルケニルチオエーテル基、アルキニル基、アルキニルオキシ基、アルキニルチオエーテル基、炭化水素芳香族基、炭化水素芳香族基含有オキシ基、炭化水素芳香族基含有チオエーテル基、飽和複素環基、飽和複素環基含有オキシ基、飽和複素環基含有チオエーテル基、芳香族複素環基、芳香族複素環基含有オキシ基、芳香族複素環基含有チオエーテル基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、アラルキルチオエーテル基、アシル基、アシルオキシ基、チオエステル基、チオアミド基、アルキルスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基、アルケニルスルホニル基、アルケニルスルホニルオキシ基、アルキニルスルホニル基、アルキニルスルホニルオキシ基、アリールスルホニル基、アリールスルホニルオキシ基、アラルキルスルホニル基、アラルキルスルホニルオキシ基、又はアミジノ基;
R2は、水素原子、ハロゲン原子、又は置換基で置換されていてもよいアルキル基;
n1は、0又は1の数;
R3は、水素原子、ハロゲン原子、-COOH、-COORa、-CONH2、又は-CONHRb(但し、Ra、Rbは、置換基で置換されていてもよいもので、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭化水素芳香族基、飽和複素環基、芳香族複素環基、アラルキル基、アシル基、アルキルスルホニル基、アルケニルスルホニル基、アルキニルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はアラルキルスルホニル基);
R4及びR5は、同一又は異なり、水素原子、若しくは置換基で置換されていてもよいもので、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭化水素芳香族基、飽和複素環基、芳香族複素環基、アラルキル基、アシル基、アルキルスルホニル基、アルケニルスルホニル基、アルキニルスルホニル基、アリールスルホニル基、アラルキルスルホニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、又はアリールアミノカルボニル基;
n2は、0又は1の数であり、n3は、0又は1の数であって、n2+n3>0;
R6~R9は、同一又は異なり、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、若しくは置換基で置換されていてもよいもので、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオエーテル基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルケニルチオエーテル基、アルキニル基、アルキニルオキシ基、アルキニルチオエーテル基、炭化水素芳香族基、炭化水素芳香族基含有オキシ基、炭化水素芳香族基含有チオエーテル基、飽和複素環基、飽和複素環基含有オキシ基、飽和複素環基含有チオエーテル基、芳香族複素環基、芳香族複素環基含有オキシ基、芳香族複素環基含有チオエーテル基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、アラルキルチオエーテル基、アシル基、アシルオキシ基、アルキルスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基、アルケニルスルホニル基、チオエステル基、チオアミド基、アルケニルスルホニルオキシ基、アルキニルスルホニル基、アルキニルスルホニルオキシ基、アリールスルホニル基、アリールスルホニルオキシ基、アラルキルスルホニル基、アラルキルスルホニルオキシ基、アミジノ基、-COOH、-COORc、-CONH2、又は-CONHRd(但し、Rc、Rdは、置換基で置換されていてもよいもので、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭化水素芳香族基、飽和複素環基、芳香族複素環基、アラルキル基、アシル基、アルキルスルホニル基、アルケニルスルホニル基、アルキニルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はアラルキルスルホニル基)、-NH2、-NHRe(但しReはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、又はアシル基)、-NRfRf’(但しRf及びRf’は同一又は異なりアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、又はアシル基)、アルキルアミノカルボニルアミド基、又はアリールアミノカルボニルアミド基;
破線/実線平行線は、単結合又は二重結合であり、
前記R1~R9中の前記置換基は、夫々単数又は複数であって、水酸基、メルカプト基、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオエーテル基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルケニルチオエーテル基、アルキニル基、アルキニルオキシ基、アルキニルチオエーテル基、炭化水素芳香族基、炭化水素芳香族基含有オキシ基、炭化水素芳香族基含有チオエーテル基、飽和複素環基、飽和複素環基含有オキシ基、飽和複素環基含有チオエーテル基、芳香族複素環基、芳香族複素環基含有オキシ基、芳香族複素環基含有チオエーテル基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、アラルキルチオエーテル基、アシル基、チオエステル基、チオアミド基、アシルオキシ基、アルキルスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基、アルケニルスルホニル基、アルケニルスルホニルオキシ基、アルキニルスルホニル基、アルキニルスルホニルオキシ基、アリールスルホニル基、アリールスルホニルオキシ基、アラルキルスルホニル基、アラルキルスルホニルオキシ基、-COOH、-COORg、-CONH2、又は-CONHRh(但し、Rg、Rhは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭化水素芳香族基、飽和複素環基、芳香族複素環基、アラルキル基、アシル基、アルキルスルホニル基、アルケニルスルホニル基、アルキニルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はアラルキルスルホニル基)、-NH2、-NHRi(但しRiはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、又はアシル基)、-NRjRj’(但しRj及びRj’は同一又は異なりアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、又はアシル基)、アルキルアミノカルボニルアミド基、アリールアミノカルボニルアミド基、又はアミジノ基である。)で表わされるインドール類、それの薬学的に許容される塩、及び/又は、それらインドール類のうちトリプトファン骨格を有する前記インドール類のキヌレニン経路代謝産物であるキヌレニン骨格含有代謝物を、ストレス低減化成分として、海洋深層水と共に含有するというものである。
このストレス低減薬剤は、例えば前記インドール類が、下記化学式
とりわけ、前記の目的を達成するためになされた本発明の魚介類のストレス低減薬剤は、前記インドール類が、キヌレニンと、インドール酢酸とから選ばれる少なくとも何れかを、ストレス低減化成分として、海洋深層水と共に含有するというものである。
アルケニル基やアルケニルオキシ基やアルケニルチオエーテル基のアルケニルは、炭素数2~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状の不飽和アルケニル、例えばビニル、アリル;
アルキニル基やアルキニルオキシ基やアルキニルチオエーテル基のアルキニルは、炭素数2~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状の不飽和アルキニル、例えばエチニル、2-プロピニル;
炭化水素芳香族基や炭化水素芳香族基含有オキシ基や炭化水素芳香族基含有チオエーテル基の炭化水素芳香族基は、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリルのようなアリール;
飽和複素環基や飽和複素環基含有オキシ基や飽和複素環基含有チオエーテル基の飽和複素環基は、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ピロリジニル、ピペリジニルのような酸素及び/又は窒素含有飽和複素環基;
芳香族複素環基や芳香族複素環基含有オキシ基や芳香族複素環基含有チオエーテル基の芳香族複素環基は、フラニル、ピリジル、インドールイルのような酸素及び/又は窒素含有芳香族複素環基;
アラルキル基やアラルキルオキシ基やアラルキルチオエーテル基のアラルキルは、ベンジル、フェネチルのようなアリールアルキル;
アシル基やアシルオキシ基やチオエステル基のアシルは、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和の脂肪族アシル基(例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、(メタ)アクリル基(アクリル基又はメタクリル基)、3,3-ジメチルアクリル基)、アラルキルアシル基(例えばフェニルアセチル基)又は芳香族アシル基(例えばベンゾイル基、フェノール性水酸基含有ベンゾイル基具体的には4-ヒドロキシベンゾイル基や3,4-ジヒドロキシベンゾイル基や4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾイル基);
チオアミド基のチオケト基は前記アシルに対応するチオケト基;
アルキルスルホニル基やアルキルスルホニルオキシ基やアルキルアミノカルボニルアミド基のアルキルは、前記のアルキル基で例示されたアルキル;
アルケニルスルホニル基やアルケニルスルホニルオキシ基のアルケニルは、前記のアルケニル基で例示されたアルケニル;
アルキニルスルホニル基やアルキニルスルホニルオキシ基のアルキニルは、前記のアルキニル基で例示されたアルキニル;
アリールスルホニル基やアリールスルホニルオキシ基やアリールアミノカルボニルアミド基のアリールは、前記の炭化水素芳香族基で例示されたアリール;
アラルキルスルホニル基や又はアラルキルスルホニルオキシ基のアラルキルは、前記のアラルキル基で例示されたアリールアルキル;
アミジノ基はC(=NH)-NH2;
ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子;
が挙げられる。
(1) 試験動物
試験動物として、入手容易なメジナ(Girella punctata)及びヒラメ(Paralichthys olivaceus)を試験魚に用いた。採取後又は入手後、試験の直前まで野外のかけ流し水槽で3日間以上の馴致処理をした。
試験用の飼育水は、DOW (海洋深層水:Deep Ocean Water)として能登半島小木港の沖合水深332 mの深海から能登海洋深層水施設でポンプにより汲み上げた日本海固有水である能登海洋深層水を使用し、またSSW(表層海水:Surface Sea Water)として九十九湾の水深2 mから国立大学法人金沢大学 環日本海域環境研究センター 臨海実験施設でポンプにより汲み上げた表層海水を使用した。これらの海水は、試験用の飼育水として、各施設の給水バルブから供給され、又はポリタンクで汲み置きして日陰冷暗所で保管されたものを、使用した。
(3.1)飼育系I
水槽(容積:120×45×45 cm3)を使用して構築した。この水槽を2 個用意し夫々、DOW飼育群用及びSSW飼育群用とした。飼育水を、水槽に200 L入れ、一日20 Lの水替えを行った。アンモニア除去のための生物濾過装置として、EHEIM FILTER 2260(EHEIM社製)を用い、濾材として珊瑚砂を封入した。この装置にはクーラータワー(ZC-200α, ゼンスイ株式会社製) 及びヒーター(プロテクトPRO 500W, ニッソー株式会社製)を連結して、サーモスタット制御によって水温を一定にした。また、エアーポンプを用いた過剰のバブリングにより、飼育水中に酸素を供給した。光源としてLED 灯(フラットLED 1200, 寿工芸株式会社製)を用意し、6:00 から18:00 を明期としてタイマーで制御し調光した。エサは一日一回、タイ養殖用の人工飼料を食べ残しのない量(約15 g)を与えた。
水槽(容積:60×25×30 cm3)の4個ずつの2系統に対し、ひとつの濾過装置を連結したこと以外は、飼育系Iと同様にして、DOW飼育群用及びSSW飼育群用とした。
先ず、実施例1~3と比較例1~3とにおいて、DOW飼育群及びSSW飼育群での血中コルチゾル濃度を比較した。
馴致処理を終えたメジナ(100 ± 25 g)を10匹を用い、DOW 飼育群(実施例1)とSSW 飼育群(比較例1)に5匹ずつ分け、飼育系Iの水槽中、水温20 ℃で5 日間飼育した。その後、麻酔下で採血した。
馴致処理を終えたメジナ(100 ± 25 g)を16匹を用い、DOW 飼育群(実施例2)とSSW 飼育群(比較例2)に8匹ずつ分け、飼育系IIの水槽中、水温20 ℃で10 日間飼育した。飼育0 日目、5 日目、10 日目に、同じ個体から麻酔下で連続採血を行った。
馴致処理を終えたメジナ(350 ± 100 g)を16匹を用い、DOW 飼育群(実施例3)とSSW 飼育群(比較例3)に8匹ずつ分け、飼育系IIの水槽中、水温20 ℃で10 日間飼育した。飼育0 日目、5 日目、10 日目に、同じ個体から麻酔下で連続採血を行った。
血中コルチゾル濃度測定のため、メジナ又はヒラメから採血し、その血漿を用いることにした。麻酔効果の見られる下限の濃度を採用して、メジナ又はヒラメを麻酔液(0.02%Phenoxyethanol, 和光純薬工業株式会社製)で麻酔し、背大動脈からヘパリン処理したシリンジで採血した。採取した血液を、直ちに卓上遠心機で1 分間遠心分離し、上澄みを分離して、血漿サンプルとして-80 ℃で保管した。分離した血漿サンプルは、5 倍量のジエチルエーテルに通し、エーテル層を窒素乾固することで除タンパク処理した。乾固したサンプルは、分離したサンプルの3 倍量のELISA 用のアッセイバッファー(50 mM H3BO3; 0.2 % BSAfor ELISA; 0.01 % Thimerosal, 何れも和光純薬工業株式会社製)(pH 7.8) で溶解し、試験の直前まで-80 ℃で保管した。
<測定原理>
コルチゾル濃度の測定には、サンプル溶液中のコルチゾルと、酵素標識した標識コルチゾルとを、抗コルチゾル抗体に対して競合的に抗原抗体反応させ、その後の酵素反応による基質溶液の呈色をスタンダード曲線に対応させて比色定量するという、一般的なステロイドホルモンの競合ELISA 法を応用して行った。
先ず、抗ウサギ抗体ヤギ抗体をプレートに固相化した。市販の抗ウサギ抗体ヤギ抗体(CPL55641, コスモ・バイオ株式会社製) を、炭酸バッファー(15mMNa2CO3; 35mM NaHCO3; 3mM NaN3; 何れも和光純薬工業株式会社製)(pH 9.6)に15 μg/mL となるように希釈し、二次抗体溶液を調製した。この溶液を96穴プレート(C8 MAXISORP,Nunc-Imnomodule) に100 μL ずつ注ぎ、セロハンテープで封をし、室温で48 時間インキュベートして固相化した。次に、プレートを糖でブロッキングした。二次抗体溶液を捨て、生理食塩水250 μL で4 回洗浄した。その後ブロッキングバッファー(50 mM H3BO3;0.1 % BSA;3% Sucrose, 和光純薬工業株式会社製)(pH 7.8)を200 μL ずつ注ぎ、セロハンテープで封をし、室温で48 時間インキュベートしてブロッキングした。その後ブロッキングバッファーを捨て、セロハンテープで封をして4 ℃で保管した。
未標識のコルチゾルを1mg/mL となるようエタノールに溶解した溶液を用意した。毎回、100ng/mL, 50 ng/mL, 25ng/mL,12.5ng/mL, 6.25ng/mL, 3.23ng/mL, 1.56ng/mL, 0.78 ng/mL となるよう、アッセイバッファーで段階希釈し、標準液としてそれぞれサンプルと同時にインキュベートした。
HRP 標識コルチゾル(FKA 403, コスモ・バイオ株式会社製) を4 ℃で保管しておき、測定の都度、アッセイバッファーで1/50 倍に希釈して使用した。
抗コルチゾルウサギ抗体(FKA 404-E, コスモ・バイオ株式会社製)を用い、内溶液20 μLをアッセイバッファー9.98 mL に溶かして1/500 倍に希釈し、440 μL ずつエッペンドルフチューブに分注し、-80 ℃で保管した。実験の直前、アッセイバッファーで1/10 倍に希釈して使用した。
二次抗体固相化プレートのwellに、前述までの要領で調製した溶液を、サンプルまたは標準液、HRP 標識コルチゾル溶液、一次抗体溶液の順で50 μL ずつ加えた。その後、セロハンテープでシールし、軽く振盪し、室温で24 時間インキュベートした。
HRPによる酵素反応の基質として、o-フェニレンジアミン二塩酸塩(o-Phenylenediamine: OPD, 和光純薬工業株式会社製)を用いた。OPD はHRP が触媒する反応により酸化的に切断され、492 nm の吸光波長を呈するものである。呈色反応の直前にOPD 及び過酸化水素(Hydrogen peroxide: H2O2, 和光純薬工業株式会社製)、クエン酸バッファー(0.2 M Citric acid, 和光純薬工業株式会社製)(pH 4.5) を用いて、基質溶液(0.08 % OPD, 0.02 % H2O2 in Citricacic buffer)を調製した。抗原抗体反応の手順の終了後、プレートを250 μL のプレート洗浄液(131 mM NaCl; 9 mM Na2HPO4; 1.1mM NaH2PO4, 和光純薬工業株式会社製;1.5 mM KH2PO4, 以上何れも和光純薬工業株式会社製;0.05 % Tween20)(pH 7.4)で4 回洗浄した。その後、基質溶液を100 μL ずつ注ぎ、遮光し、軽く振盪しながら20 分程度インキュベートした。基質溶液が十分呈色したことを確認し、規定度3 の硫酸を50 μL 追加して酵素反応を停止した。このプレートを、吸光波長の492 nm に設定したプレートリーダーで吸光度を測定することでデータ化し、その吸光度を標準液のものと比較して、サンプル溶液中のコルチゾル濃度を求めた。
実施例1及び比較例1のデータを統計学的に処理する場合、先ずDOW 飼育群及びSSW 飼育群の各群について外れ値検定(Grubbs' outlier t-test) を施してp <0.05 となる要素を外れ値として見出した後、平均値の計算から除外した。次に等分散を仮定した2標本による片側t-検定(student's t-test)を行った。その結果であるp値について、p <0.05 を統計学的有意水準、p < 0.10 を統計学的有意傾向とした。外れ値とした要素はグラフ中に× 印で挿入した。
一方、実施例2~3及び比較例2~3のデータを統計学的に処理する場合は、まず5 日間及び10 日間飼育した各個体の血中コルチゾルの濃度の値を、0 日目の血中コルチゾルの値で除し、変化率を算出した。その値を用いて、5 日目、10 日目それぞれのタイムポイントごとにSidak の多重比較検定を行った。それらの結果であるp 値について、p < 0.05 を統計学的有意水準、p < 0.10 を統計学的有意傾向とした。
20 ℃で5 日間メジナ5 匹ずつ飼育したDOW 飼育群(実施例1)及びSSW 飼育群(比較例1)でのメジナの血漿中コルチゾル濃度の結果を、図1に示す。その平均値を求め、統計的な検定を行ったところ、図1から明らかな通り、DOW 飼育群の血漿中コルチゾル濃度がSSW 飼育群よりも有意に低かった。
20 ℃で5及び10 日間飼育したDOW 飼育群(実施例2)及びSSW 飼育群(比較例2)とのメジナの血漿中コルチゾル濃度の結果を、図2に示す。各個体の0 日目(イニシャル)に対する5及び10 日目の血漿中コルチゾルの変化率は、SSW 飼育群では飼育期間が増えると、血漿中コルチゾル濃度が増加していくのに対し、DOW 飼育群では飼育期間が増えても血漿中コルチゾル濃度はほとんど変化しなかった。
20 ℃で5及び10 日間飼育したDOW 飼育群(実施例3)及びSSW 飼育群(比較例3)とのヒラメの血漿中コルチゾル濃度の結果を、図3に示す。各個体の0 日目(イニシャル)に対する5及び10 日目の血漿中コルチゾルの変化率は、SSW 飼育群では飼育期間が増えると血漿中コルチゾル濃度が増加していくのに対し、DOW 飼育群では飼育期間が増えても血漿中コルチゾル濃度はほとんど変化しなかった。
次に、実施例4と比較例4とにおいて、DOW飼育群及びSSW飼育群でのヒラメ飼育下での血中成分について検討した。
前記の実施例3及び比較例3にて20 ℃で10 日間飼育したDOW 飼育群及びSSW 飼育群のヒラメそれぞれ8 匹ずつの血漿の各検査項目について、ヒトの健康診断での血中測定の検査項目と同様にして、総タンパク(TP)(g/dL)、アルブミン(ALB)(g/dL)、尿素窒素(BUN)(mg/dL)、クレアチニン(CRE)(mg/dL)、ナトリウム(Na)(mEq/L)、カリウム(K)(mEq/L)、クロール(Cl)(mEq/L)、カルシウム(Ca)(mg/dL)、無機リン(IP)(mg/dL)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST) (IU/L)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)(IU/L)、乳酸脱水素酵素(LDH)(IU/L)、アミラーゼ(AMY)(IU/L)、γ-グルタミルトランスフェラーゼ(r-G)(IU/L)、総コレステロール(T-CHO)(mg/dL)、中性脂肪(TG)(mg/dL)、高比重リポタンパク-コレステロール(HDL-C)(mg/dL)、総ビリルビン(T-BIL)(mg/dL)、グルコース(GLU)(mg/dL)を測定した。
解析したデータの統計処理には、DOW 飼育群(実施例4)及びSSW 飼育群(比較例4)で、各検査項目について等分散を仮定した2標本による両側t-検定(student's t-test) を行った。なお、p 値については、p < 0.05 を統計的有意水準、p < 0.10 を統計的有意傾向ありとみなした。
5及び10 日間飼育したDOW 飼育群(実施例4)及びSSW 飼育群(比較例4)とのヒラメの血中成分スクリーニングの結果、図4に示す通り、SSW 飼育群に比べDOW 飼育群で血中カルシウム濃度が有意に低く、無機リン濃度が有意に高かった。
そこで、次に、実施例5と比較例5とにおいて、DOW飼育群及びSSW飼育群でのヒラメ飼育下での血中カルシウム濃度について、各タイムポイントで測定した。
前記の実施例3及び比較例3にて20 ℃で10 日間飼育したDOW 飼育群及びSSW 飼育群のヒラメそれぞれ8 匹ずつの血漿(0 日目、5 日目、10 日目)について、血中カルシウム濃度を測定した。
<測定原理>
呈色液中のキレート剤であるアルゼナゾIII が、サンプル中のカルシウムにキレートすると660 nm の吸光を示すことを利用し、カルシウム濃度に比例して吸光度が高くなるため、既知濃度のカルシウム溶液を用いてスタンダード曲線を作成することで、カルシウム濃度を比色定量するというものである。
カルシウム濃度は、アクアオートカイノスCa 試薬(株式会社カイノス製) のキットを用いて測定した。既知濃度のカルシウム溶液(標準液) 及びサンプルとした血漿4 μL を、1.5 mL エッペンドルフチューブに入れ、試薬360 μL を添加し、転倒混和した。その後、各液を96 穴プレート(Code No. 269620, Thermo Fisher Scentific社製) の所定の位置に、1 well あたり100 μL ずつ、トリプリケーションとなるように入れた。このプレートを、吸光波長を660 nm に設定したプレートリーダーで吸光度を測定することでデータ化し、その吸光度を標準液のもの比較してサンプル溶液中のカルシウム濃度を求めた。
実施例5及び比較例5のデータを統計学的に処理する場合、先ずDOW 飼育群及びSSW 飼育群ごとに外れ値検定(Grubbs’ outlier t-test) を施し、p < 0.05 となる要素を外れ値として平均値の計算から除外した。その後、各タイムポイントについて等分散を仮定した2標本による両側t-検定(student's t-test) を行った。なおp 値について、p < 0.05 を統計的有意水準、p < 0.10 を統計的有意傾向ありとみなした。
20 ℃で5及び10 日間飼育したDOW 飼育群(実施例5)とSSW 飼育群(比較例5)でのヒラメそれぞれ8 匹ずつの、飼育0, 5, 10 日目の血中カルシウム濃度の結果を、図5に示す。その平均値を求め、統計的な検定を行ったところ、図5から明らかな通り、飼育10 日目のサンプルでSSW 飼育群に比べDOW 飼育群で血中カルシウム濃度が有意に低かった。
そこで、次に、実施例6と比較例6とにおいて、DOW飼育群及びSSW飼育群でのヒラメ飼育下での血中カルシトニン濃度について、各タイムポイントで測定した。
前記の実施例3及び比較例3にて20 ℃で10 日間飼育したDOW 飼育群及びSSW 飼育群のヒラメそれぞれ8 匹ずつの血漿(0 日目、5 日目)について5倍希釈し、血中カルシトニン濃度を測定した。
<測定原理>
カルシトニン競合ELISA法で測定した。この競合ELISA 法は、試験管内でプレインキュベーションしたサンプル及び一次抗体溶液を、カルシトニン固相化プレート上に注ぐことで、結果的に固相上のカルシトニンとサンプル中のカルシトニンとが競合的に抗原抗体反応し、その後、酵素反応による基質溶液の呈色を標準曲線に対応させて比色定量するというものである。
サンプル溶液中のカルシトニンを、一次抗体である抗サケカルシトニンウサギ抗体と抗原抗体反応させるプレインキュベーションの操作を行った。まず、一次抗体溶液を用意した。抗サケカルシトニンウサギ抗体を血清の32 万分の1 となるように、PBS (0.13 M NaCl, 9 mM Na2HPO4, 1.1 mM NaH2PO4, 1.5 mM KH2PO4, 0.1 % BSA, 0.1 % NaN3)(pH 7.4) で希釈し、一次抗体溶液として使用した。
次に、既知濃度のカルシトニン溶液(標準液) の希釈系列を調製した。まず、未標識のカルシトニン(和光純薬工業株式会社製) を500 ng/μL となるよう蒸留水(DW)に溶解した溶液を調製し、エッペンドルフチューブに分注し、-80 ℃で保管した。実験の都度、1600 pg/mL, 800 pg/mL, 400pg/mL, 200pg/mL, 100pg/mL, 50pg/mL, 25pg/mL, 12.5 pg/mLとなるようPBS で希釈し、標準液としてそれぞれサンプルと同時にプレインキュベーション用に使用した。その後、5 mL ガラス試験管に、一次抗体溶液及びそれと等量の血液サンプルまたは標準液を入れた。この試験管にフタをし、4 ℃で72 時間プレインキュベートした。
まず、カルシトニンをプレートに固相化した。炭酸バッファー(15mM Na2CO3, 35mM NaHCO3 , 3mM NaN3) (pH 9.6) で0.1 ng/μL となるよう希釈したサケカルシトニン溶液を調製し、96 穴plate (Falcon社製) のすべてのwell に100 μL ずつ入れ、セロハンテープでシールして、25 ℃で24 時間インキュベートして固相化した。次に、プレートをスキムミルクでブロッキングした。インキュベートの後、250 μL のプレート洗浄液(131 mM NaCl , 9 mM Na2HPO4, 1.1 mM NaH2PO4, 1.5 mM KH2PO4, 0.05 % Tween20)(pH 7.4) で4 回洗浄し、ブロッキングバッファー(5 % スキムミルクin炭酸バッファー) を250 μL ずつ注ぎ、25 ℃で1 時間インキュベートし、ブロッキングした。このプレートをさらに洗浄し、カルシトニン固相化プレートとして使用した。
カルシトニン固相化プレートの所定の位置に、プレインキュベーションを済ませたサンプル溶液及び標準液を100 μL ずつ注いだ。その後、セロハンテープでシールし、軽く振盪し、4 ℃で24 時間インキュベートした。
ビオチン標識抗ウサギ抗体ヤギ抗体(Polyclonal Goat Anti-Rabbit Immunoglobulins / Biotinylated, Dako社製) をPBSで5000 倍に希釈し、二次抗体溶液を調製した。その溶液を、洗浄を済ませたプレートのすべてのwell に100 μL ずつ注ぎ、シールをし、25 ℃で2 時間インキュベートした。
HRP 標識ストレプトアビジン(Streptavidin/HRP, Dako社製) をPBSで10000 倍に希釈し、HRP 標識ストレプトアビジン溶液を調製した。その溶液を、洗浄を済ませたプレートのすべてのwell に100 μL ずつ注ぎ、シールをして、25 ℃で1 時間インキュベートした。
HRP による酵素反応の基質として、o-フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD) を使用した。呈色反応の直前にOPD 及び過酸化水素、クエン酸バッファー(0.2 M Citric acid, pH 4.5) を用いて、基質溶液(0.08 % OPD, 0.02 % H2O2 in クエン酸バッファー) を調製した。HRP 標識ストレプトアビジンインキュベートの手順の終了後、プレートを250 μL のプレート洗浄液で4 回洗浄した。その後、基質溶液を100 μL ずつ注ぎ、遮光し、軽く振盪しながら30 分程度インキュベートした。基質溶液が十分呈色したことを確認し、規定度3 の硫酸を50 μL 追加して酵素反応を停止した。このプレートを、吸光波長を492 nm に設定したプレートリーダーで吸光度を測定することでデータ化し、その吸光度をカルシトニンのスタンダードと比較してサンプル溶液中のカルシトニン濃度を求めた。
実施例6及び比較例6のデータを統計的に処理する場合、DOW 飼育群及びSSW 飼育群の各群について外れ値検定(Grubbs’ outlier t-test) を施してp < 0.05 となる要素を外れ値として見出した後、除外した。次に、等分散を仮定した2標本による両側t-検定(student's t-test) を行った。なお、p 値について、p < 0.05 を統計的有意水準、p < 0.10 を統計的有意傾向ありとみなした。
20℃で10 日間飼育したSSW 飼育群とDOW 飼育群のヒラメそれぞれ8 匹ずつの飼育5 日目での血中カルシトニン濃度の平均値を求め、統計的な検定を行った結果を、図6に示す。図6から明らかな通り、5 日目ではSSW 飼育群に比べDOW 飼育群の血中カルシトニン濃度の平均値が高い傾向にあった(p = 0.10)。
次に、実施例7及び比較例7において、飼育水として用いたDOW及びSSW中のストレス低減化成分を同定した。
フィルターホルダーユニットに、上からガラス繊維フィルター(GC-50, Advantec社製)、C-18 フィルター(2215-C18, Empore社製) の順番になるように設置し、クランプで固定し、ろ瓶に接続した。フィルターユニットにメタノール(HPLC用, 和光純薬工業株式会社製) 50 mL 、ミリポア社製の超純水製造装置で作製したミリQ 水100 mLの順で注ぎ、シリコン製のフィルターを親水化した。フィルターユニットに海水サンプル3Lを注ぎ、吸引ポンプでろ瓶内を陰圧にし、フィルターに海水を通過させた。このとき、ガラス繊維フィルターが目詰まりして流速が著しく落ちた場合には、クランプを取り外しガラス繊維フィルターを交換した。海水サンプル3 L を通過させ終えた後、ミリQ 水50 mL を注ぎフィルターを軽く洗浄した。その後、20 分間空気吸引し、フィルターを乾燥させた。
フィルターホルダーユニットに、海水サンプルを通過させたC-18 フィルターを設置し、クランプで固定した。エタノール10 mL 、ベンゼン30 mL を注ぎ、10 分間かけてフィルターを通過させ、化合物を溶出させた。この液体はいったんコニカルビーカーに集めた。溶出の済んだフィルターを捨て、フィルターホルダーユニットを少量のエタノールですすいだ。このエタノールもコニカルビーカーに集めた。コニカルビーカーに集めた溶液を約10 mLになるまで窒素乾固した。この溶液を駒込ピペットで20 mL 容積の蓋付きの褐色瓶に移した。さらに、コニカルビーカーの中を3 mL 程度のエタノールで2 回洗いこみ、その液も褐色瓶に移した。褐色瓶に集めた溶液をすべて窒素乾固した。乾固した試料を測定直前に、DW 500 μL に再溶解し、その溶液をLC-MS/MS で分析した。分析する際には、10 種類のインドール化合物をスタンダードとした各化合物の濃度の分析を行った(メラトニン:MEL, N-アセチル-5-メトキシキヌラミン:AMK, N-アセチル-N-ホルミル-5-メトキシキヌラミン:AFMK, セロトニン:5HT, N-アセチルセロトニン:NAS, ハイドロキシメラトニン: HaMT, キヌラミン, キヌレニン, 5-メトキシトリプタミン: 5MTP, インドール酢酸: IAA) 。検出された成分の結果を、表1に示す。
そこで、次に、実施例8及び比較例8において、キヌレニン又はインドール酢酸含有人工海水飼育によるヒラメの血中コルチゾル、カルシウム濃度の変化を測定し、キヌレニンやインドール酢酸の効果を検討した。
プラスチックケースの水槽(300×195×205 mm3)を使用して構築した。この水槽を6 個用意し、その内、2 個を無処理群飼育用(コントロール)、2 個をインドール酢酸(Indole-3-acetic acid:IAA) 処理群飼育用、2 個をキヌレニン処理群とした。飼育水として、3 % 人工海水(SEALIFE, 株式会社日本海水製) を溶媒とし、下記の3 種類の海水を調製し使用した。
(i)無処理人工海水:水道水に人工海水を3 %実用塩分となるよう溶かして調製した。
(ii)IAA 含有人工海水:無処理人工海水に、10-6M となるようIAA (和光純薬工業株式会社製)を加えて調製した。
(iii)キヌレニン含有人工海水: 無処理人工海水に、10-6M となるようキヌレニン(Sigma社製) を加えて調製した。
飼育水はケースに5 L 入れ、一日2 L の水替えを行った。ここで、水替えによって損失するIAA 及びキヌレニンは、あらかじめ1 mL のエタノール(HPLC 用, 和光純薬工業株式会社製) 及び19 mL のDW に溶解させて冷蔵し調製した溶液を用いて、水替えのたびに計算上減った分を新鮮な人工海水に追加して補った。また、エアーポンプを用いたバブリングにより、飼育水中に酸素を供給した。6:00 から18:00を明期としてタイマーで制御し、調光した。エサは実験期間中、与えなかった。
馴致処理を終えたヒラメ18 匹(15 ± 6 g) を用い、無処理群(比較例8)、IAA 処理群及びキヌレニン処理群(何れも実施例8)に6 匹ずつ分け、それぞれ3 匹ずつ水槽にいれた。水温を20 ℃として、5 日間飼育した。5 日目に、血中コルチゾル及びカルシウム濃度測定のためのサンプルとするため、ヒラメを麻酔液で麻酔して、背大動脈からヘパリン処理をしていないシリンジで採血した。採取した血液は室温で2 時間、4 ℃で24 時間おき凝血させた。その後5,000 rpm で15 分間遠心分離し、上澄みを分離して血清サンプルとして-80 ℃で保管した。
コルチゾル濃度の測定には、実施例1~3及び比較例1~3と同様にして、競合ELISA 法によるコルチゾル測定系を使用した。また、カルシウム濃度の測定には、実施例5及び比較例5と同様にして、アクアオートカイノスCa 試薬(株式会社カイノス製) のキットを用いて測定した。
のデータを統計的に処理する場合は、無処理群、IAA 処理群、キヌレニン処理群それぞれのコルチゾル濃度またはカルシウム濃度について、各群について外れ値検定(Grubbs’ outlier t-test) を施してp < 0.05 となる要素を外れ値として見出し、平均値の計算から除外した。その後、無処理群をコントロールとして、コントロールと差がないことを帰無仮説としたDunnett の方法による多重比較検定を行った。その結果であるp 値について、p < 0.05 を統計的有意水準、p < 0.10 を統計的有意傾向とした。外れ値とした要素はグラフ中に× 印で挿入した。
20 ℃で5 日間飼育した無処理群、IAA 処理群、キヌレニン処理群のヒラメそれぞれ6 匹ずつの血清中コルチゾル濃度及びカルシウム濃度を測定した。その結果を、図7A及びBに示す。図7から明らかな通り、無処理群の血中コルチゾル濃度に対し、IAA 処理群及びキヌレニン処理群の血中コルチゾル濃度は低い傾向にあった(p = 0.09) 。また、無処理群の血中カルシウム濃度に対し、IAA 処理群の血中カルシウム濃度は低い傾向にあり(p = 0.06) 、キヌレニン処理群の血中カルシウム濃度も同様の傾向を示した(p = 0.18)。
次に、実施例9及び比較例9において、魚類のカルシウム代謝に深くかかわる組織であるウロコを用いた実験を行った。
硬骨魚類のウロコは、線維層と骨質層から成る骨基質と、骨芽細胞及び破骨細胞をもち、哺乳類の膜性骨とよく似た骨代謝を行っている。キンギョのウロコを用いたバイオアッセイ系を利用して、DOW及びキヌレニンの魚類の骨代謝に与える影響を調べ、DOWとキヌレニンそれぞれの魚類生理に与える影響の作用機序について検討した。
試験魚には、キンギョ(Carassius auratus) を用いた。試験の前週に、キンギョを小分けにして小さい水槽に入れ、サーモスタット制御によって水温を26 ℃で一定にし、エサを1 日2 回、2 分程度で食べきれる量(約1 ~2g)を与えた。
キンギョのウロコの、骨芽細胞と破骨細胞のフォスファターゼ活性、及びウロコの遺伝子発現量を測定するアッセイ系を用いた実験を行う場合は、通常のウロコを使用するよりも、再生ウロコを使用したほうが、測定感度が高くなることが知られている。また、体側の左右で対応した位置にあるウロコでは、骨芽細胞及び破骨細胞のそれぞれのマーカー酵素活性がほぼ同じであることが知られている。骨芽細胞のマーカー酵素はアルカリフォスファターゼ(AlkalinePhosphatase:ALP) 、破骨細胞のマーカー酵素は酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ(Tartrateresistant acid phosphatase:TRAP) である。キンギョのウロコのアッセイ系ではこのことを利用して、片方の体側のウロコを対照群、もう片方の体側のウロコを実験群として解析を行った。キンギョを麻酔液(0.03 % MS-222,Sigma社製;0.03 % NaHCO3, 和光純薬工業株式会社製) で麻酔し、左右の体側のそれぞれ対応する位置のウロコを必要な数だけ選んで、ピンセットで抜去した。ウロコを抜いたキンギョは、水温を26 ℃で一定にした水槽に移し、エサを1 日2 回、2 分程度で食べきれる量(約1 ~2g)を与え、10 日間あるいは14 日間飼育してウロコの再生を促した。
ウロコを培養するにあたっては、抗生物質入りのL-15 液体培地を用いた(1 % Penicillin-Streptomycin-Amphotericin, ICN Biomedicals;Leibovitz's L-15, Life Technologies社製) 。試験には、下記の各種培地を調製し、適宜組み合わせて実験を設定した。
一定割合のSSW 含有培地を対照群、同じ割合のDOW 含有培地を実験群とした。
(i)10 % SSW L-15 vs 10 % DOW L-15
(ii)20 % SSW L-15 vs 20 % DOW L-15
溶質を加えていない培地を対照群、一定割合のキヌレニン含有培地を実験群とした。
(i)L-15 vs 10-6M キヌレニンL-15
(ii)L-15 vs 10-4M キヌレニンL-15
キンギョから再生ウロコを採取するため、キンギョを麻酔液で麻酔し、ピンセットで採取した。採取したウロコは、あらかじめ各ウェルに溶質を加えていない培地を200 μL ずつ入れておいた96 穴プレート(Falcon社製) の所定の位置に、一枚ずつ入れた。15 ℃のインキュベーターに入れ、1 時間の前培養を行った。その後、培地を捨て、各培地を100 μL ずつ加え、15 ℃で一定時間培養した。培養の後、すべての培地を除去し、100 μL のPBS (和光純薬工業株式会社製) でウロコを洗浄し、骨芽細胞活性測定用のウロコにはアルカリ緩衝液(ALP buffer: 1 mM MgCl2; 0.1 mM ZnCl2; 100 mM Tris, 何れも和光純薬工業株式会社製) (pH 9.5) 、破骨細胞活性測定用のウロコには酸性酒石酸耐性酸緩衝液(TRAP buffer: 20 mM Tartrateresistant acid; 100mM Acetic Acid-SodiumAcetate Buffer Solution, 何れも和光純薬工業株式会社製)(pH 5.3) を、それぞれ100 μL 加えた。このプレートは封をし、-80 ℃で測定まで冷凍保存した。
フォスファターゼの基質として、p-ニトロフェニルリン酸二ナトリウム(Disodium p-Nitrophenylphosphate Hexahydrate: pNPP, 和光純薬工業株式会社製) を用いた。pNPP はフォスファターゼによる分解を受けてp-ニトロフェノール(p-Nitrophenol:pNP) を生じ、アルカリ性の条件下で405 nm の吸光波長を呈する。冷凍したサンプルを室温で解凍し、20 mM pNPP を添加したALP buffer またはTRAP buffer をそれぞれ100 μL ずつ添加した。振盪機に載せ、軽く揺らしながら30 分間反応させた。反応後、3N NaOH (和光純薬工業株式会社製) を50 μL ずつ各ウェルに加え、反応を停止させた。この反応液を、ピペッテイングにより撹拌したのち、100 μL ずつ新しい96 穴プレートの対応する位置に移した。このプレートを吸収波長405 nmのプレートリーダーで測定し、あらかじめ既知濃度のpNP 溶液で作成した標準曲線を用いて濃度を算出した。
キンギョのウロコのALP とTRAP の酵素活性はウロコの面積に比例することが知られている。そこで、これを利用して、単位時間単位面積当たりのウロコの酵素活性を算出し比較した。吸光度測定後、残った反応液を除きPBS 100 μL でウロコを洗浄し、メチレンブルーを100 μL ずつ加えて10分間以上置き染色した。染色したウロコをスキャナーにて画像データとして取り込み、画像解析ソフトImage Jにて面積を測定した。
測定したpNP 濃度を、ウロコ一枚あたりの面積、及び反応時間で除し、単位時間単位面積あたりの酵素活性(μM/ h/ mm2) を算出した。対照群と実験群の間で対応のある両側t 検定(paired t-test) を行った。その結果であるp 値について、p < 0.05 を統計的有意水準、p < 0.10 を統計的有意傾向とした。
SSW またはDOW を添加したL-15 培地で、10 日間、14 日間の期間再生させたウロコを24 時間培養し、そのALP とTRAP の活性を測定した結果、DOW を添加した培地で培養したALP の活性は上昇傾向を示したが、TRAPの活性は変化しなかった(図8及び9)。また、SSW またはDOW を添加したL-15 培地で、10 日間の期間再生させたウロコを6、12及び24 時間培養し、そのALPの活性を測定した結果、24 時間培養でDOW 含有培地で培養したウロコのALP の活性が上昇する傾向にあった(図10)。さらに、キヌレニンを10-4M または10-6M、SSW またはDOW を添加したL-15 培地と、10 日間の期間再生させたウロコを24 時間培養し、そのALP とTRAP の活性を測定した結果、キヌレニン無添加の培地を1とした時に、キヌレニンを添加したウロコのALP活性の値を算出して比較すると、キヌレニン添加によりALP活性が上昇した。さらにSSWを1とした時に、DOW を添加した培地で培養したウロコのALP の活性を算出して比較するとDOWを添加するとALP活性が有意に上昇した(図11)。
次に、実施例10で、前記化学式(I)で表わされるインドール類(表2及び3の化合物[1]~[18])について、特開2006-104152号公報や国際公開公報WO20007/010723号パンフレットやM. Somei, et al., Heterocycles, 36, p1859-1866 (1993)やM. Somei, et al., Heterocycles, 53, p1725-1736 (2000)やM. Somei, et al., Advances in Heterocyclic Chemistry, Vol. 82, ed. by A. R. Katritzky, Elsevier Science (USA), 2002, p101-155の文献に記載の方法に準じて又は常法により合成し、そのインドール類について、アルカリホスファターゼ(ALP)活性を測定した。化合物[1]~[5]は、Heterocycles, 53, p1725-1736 (2000)に記載のものである。化合物[17]はAdvances in Heterocyclic Chemistry, Vol. 82, 2002, p101-155に記載のものである。その他の化合物の代表例として化合物[6]~[8]、[12]の合成例を具体的に示す。なお、それ以外の化合物も同様に前記文献に記載の方法及び常法に準じて合成したものである。
mp 142-143℃.
IR (KBr): 3284, 1633, 1562, 1456, 1412, 1298, 1018 cm-1.
1H-NMR (CDCl3)δ: 1.93 (3H, s), 3.24 (2H, t, J=6.6 Hz), 3.58 (2H, q, J=6.6 Hz), 3.89 (3H, s), 4.76 (2H, dt, J=4.9, 1.7 Hz), 4.89 (1H, d, J=16.6 Hz), 5.20 (1H, d, J=10.3 Hz), 5.55 (1H, br t, 重水添加により消失), 5.87 (1H, ddt, J=16.6, 10.3, 4.9 Hz), 7.4 (1H, s).
Anal. Calcd for C16H17Br3N2O2: C, 37.75; H, 3.37; N, 5.50. Found: C, 37.75; H, 3.37; N, 5.42.
mp 199-200℃.
IR (KBr): 3286, 1628, 1558, 1456, 1435, 1410, 1294, 1018 cm-1.
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.93 (3H, s), 2.34 (1H, t, J = 2.4 Hz), 3.23 (2H, t, J = 6.6 Hz), 3.58 (2H, dt, J = 2.9, 6.6 Hz, 重水添加によりt, J = 6.6 Hz に変化), 3.89 (3H, s), 4.91 (2H, d, J = 2.4 Hz), 5.54 (1H, br t, J = 6.6 Hz, 重水添加により消失), 7.58 (1H, s).
Anal. Calcd for C16H15Br3N2O2: C, 37.90; H, 2.98; N, 5.53. Found: C, 37.78; H, 3.00; N, 5.44.
mp 218-219℃.
IR (KBr): 3280, 1630, 1547, 1454, 1414, 1360, 1298, 1014 cm-1.
1H-NMR (CDCl3)δ: 1.91 (3H, s), 3.26 (2H, t, J=6.6 Hz), 3.61 (2H, td, J=12.7, 6.6 Hz), 3.88 (3H, s), 5.36 (2H, s), 5.54 (1H, br t, J=6.6 Hz, 重水添加により消失), 7.01 (2H, d, J=6.6 Hz), 7.27-7.33 (3H, m), 7.39 (1H, s).
Anal. Calcd for C20H19Br3N2O2: C, 42.97; H, 3.43; N, 5.01. Found: C, 42.76; H, 3.40; N, 4.86.
なおフェニルイソシアネート(0.07 mL, 0.64 mmol) を無水テトラヒドロフラン(1 mL) に溶かして、N-フェニル-N’-[5-ヒドロキシ-1-メチルインドール-3-イル]-エチル-N’-メチルウレア(10.0 mg, 0.03 mmol) を無水テトラヒドロフラン(1 mL) に溶かした溶液に加え、5時間還流撹拌した。減圧下に溶媒を留去し、得られた固形物を、酢酸エチルエステル-ヘキサン(1:1, v/v)混合溶媒を溶出溶液として、シリカゲルカラムクロマトグラフィを行い、N-フェニル-N’-メチル-N’-[5-(N-フェニルカルバモイル)オキシ-1-メチルインドール-3-イル]-エチルウレア(化合物[12])(12.6 mg, 92%)を得た。クロロホルム-メタノールから再結晶して無色プリズム晶を得た。
mp 182-184℃.
IR (KBr): 3375, 1710, 1645, 1526, 1484, 1443, 1227, 746 cm-1.
1H-NMR (DMSO-d6)δ: 2.89 (2H, t, J=7.6 Hz), 2.98 (3H, s), 3.55 (2H, t, J=7.6 Hz), 3.74 (3H, s), 6.90 (1H, t, J=7.3 Hz), 6.98 (1H, dd, J=8.5, 2.2 Hz), 7.03 (1H, t, J=7.3 Hz), 7.19 (2H, t, J=7.5 Hz), 7.22 (1H, s), 7.31 (2H, t, J=7.5Hz), 7.38-7.44 (4H, m), 7.52 (2H, d, J=8.3 Hz), 8.16 (1H, s), 10.12 (1H, s, 重水添加により消失). High-resolution MS (FAB+) m/z: Calcd for C26H27N4O3: 443.2083. Found: 443.2044.
Anal. Calcd for C26H26N4O3・1/4H2O: C, 69.86; H, 5.98; N, 12.53. Found: C, 69.83; H, 5.92; N, 12.43.
キンギョのメス(体重30g前後)をMS222(3-アミノ安息香酸エチルエステルメタンスルホン酸塩(ethyl 3-aminobenzoate, methane sulfonic acid salt))(Aldrich社製)で麻酔し、ウロコを所要枚数剥離した。そのウロコを1%の抗生物質(ペニシリン-ストレプトマイシン混合物)を含むイーグルスの最少培地(大日本製薬株式会社製)で2度洗浄した。同様の培地を24穴のプレートにそれぞれ1mlずつ入れ、前記ウロコを複数枚ずつ(通常8枚)それぞれ入れるとともに、各穴に10-8、10-6、10-4Mのインドール類をそれぞれ添加した。次いで、これらを15℃で6時間培養した。なお、インドール類無添加の群(コントロール)も作成し、骨細胞に対する作用を比較した。コントロール、10-8、10-6、10-4Mのインドール類(それぞれ2穴)の合計8穴作成した。したがって、24穴のプレートでは3種類のインドール類を調べることができる。
Claims (4)
- キヌレニンと、インドール酢酸とから選ばれる少なくとも何れかを、ストレス低減化成分として、海洋深層水と共に含有することを特徴とする魚介類のストレス低減薬剤。
- 前記魚介類の治療用、予防用、及び/又は飼育用であることを特徴とする請求項1に記載のストレス低減薬剤。
- 血中及び/又は尿中で、コルチゾルを低下させ、カルシトニンを上昇させ、カルシウムを低下させ、及び/又は骨芽細胞を活性化させることを特徴とする請求項1~2の何れかに記載のストレス低減薬剤。
- 海洋深層水が、能登海洋深層水であることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載のストレス低減薬剤。
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