JP7093961B2 - ストレス低減薬剤 - Google Patents

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本発明は、非ヒト動物の飼育条件下でのストレスを低減しながら飼育したり、ヒトのストレスを低減して精神的に安定化したりするストレス低減薬剤に関するものである。
海洋深層水(Deep Ocean Water: DOW)は、光合成による有機物生産よりも有機物分解が卓越し、鉛直混合や人為の影響が少なく、補償深度以深の資源性の高い海水と定義されたものである。このような海洋深層水は、水深200m以深に存在するため、(i)常に低温に保たれ(低水温性)、(ii)細菌や汚染物質が少なく(清浄性)、(iii)窒素・リン・ケイ素など豊富なミネラルや無機栄養分を含み(富栄養性)、(iv)水質の季節変化や経年変動が小さい(水質安定性)という特徴を持つ。
このような特徴を生かして、海洋深層水は、ミネラル源や冷媒等の工業的な利用や、ミネラル豊富で清浄であるという健康的で安全なイメージを利用した化粧品や健康グッズへの応用の他、海洋深層水で海産生物を飼育するという水産養殖への応用など、様々な分野で使用されている。
例えば、特許文献1に、海洋深層水を用いてカキを畜養する方法であって、水槽中のカキに対し、海水温8~18℃で、12~72時間、海洋深層水をかけ流して畜養を行うカキの畜養方法が、開示されている。
また、特許文献2に、(A)海洋深層水、(B)硬度100mg/L以下の淡水、(C)ポリ塩基性アミノ酸、(D)グレープフルーツ種子エキスを含有し、浸透圧が200~350mOsmであり、pHが6.5~9.5である皮膚化粧料が、開示されている。
しかし、海産生物の生育を良くする海洋深層水中の成分又はその相関関係に関する研究や、海洋深層水とヒトをはじめとする各種動物の生態又は生理現象又は健康促進効果との相関関係に関する研究や、それを利用した新規薬剤の開発は、殆んどなされていない。
特開2016-015947号公報 特開2014-234352号公報
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、海洋深層水に由来する成分、インドール類やその塩やそれの代謝物を、ストレス低減化成分を含有し、安全で効果的なストレス低減薬剤を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するためになされた魚介類のストレス低減薬剤は、下記化学式(I)
Figure 0007093961000001
(式(I)中、
は、水素原子、水酸基、若しくは置換基で置換されていてもよいもので、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオエーテル基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルケニルチオエーテル基、アルキニル基、アルキニルオキシ基、アルキニルチオエーテル基、炭化水素芳香族基、炭化水素芳香族基含有オキシ基、炭化水素芳香族基含有チオエーテル基、飽和複素環基、飽和複素環基含有オキシ基、飽和複素環基含有チオエーテル基、芳香族複素環基、芳香族複素環基含有オキシ基、芳香族複素環基含有チオエーテル基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、アラルキルチオエーテル基、アシル基、アシルオキシ基、チオエステル基、チオアミド基、アルキルスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基、アルケニルスルホニル基、アルケニルスルホニルオキシ基、アルキニルスルホニル基、アルキニルスルホニルオキシ基、アリールスルホニル基、アリールスルホニルオキシ基、アラルキルスルホニル基、アラルキルスルホニルオキシ基、又はアミジノ基;
は、水素原子、ハロゲン原子、又は置換基で置換されていてもよいアルキル基;
n1は、0又は1の数;
は、水素原子、ハロゲン原子、-COOH、-COOR、-CONH、又は-CONHR(但し、R、Rは、置換基で置換されていてもよいもので、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭化水素芳香族基、飽和複素環基、芳香族複素環基、アラルキル基、アシル基、アルキルスルホニル基、アルケニルスルホニル基、アルキニルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はアラルキルスルホニル基);
及びRは、同一又は異なり、水素原子、若しくは置換基で置換されていてもよいもので、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭化水素芳香族基、飽和複素環基、芳香族複素環基、アラルキル基、アシル基、アルキルスルホニル基、アルケニルスルホニル基、アルキニルスルホニル基、アリールスルホニル基、アラルキルスルホニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、又はアリールアミノカルボニル基;
n2は、0又は1の数であり、n3は、0又は1の数であって、n2+n3>0;
~Rは、同一又は異なり、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、若しくは置換基で置換されていてもよいもので、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオエーテル基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルケニルチオエーテル基、アルキニル基、アルキニルオキシ基、アルキニルチオエーテル基、炭化水素芳香族基、炭化水素芳香族基含有オキシ基、炭化水素芳香族基含有チオエーテル基、飽和複素環基、飽和複素環基含有オキシ基、飽和複素環基含有チオエーテル基、芳香族複素環基、芳香族複素環基含有オキシ基、芳香族複素環基含有チオエーテル基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、アラルキルチオエーテル基、アシル基、アシルオキシ基、アルキルスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基、アルケニルスルホニル基、チオエステル基、チオアミド基、アルケニルスルホニルオキシ基、アルキニルスルホニル基、アルキニルスルホニルオキシ基、アリールスルホニル基、アリールスルホニルオキシ基、アラルキルスルホニル基、アラルキルスルホニルオキシ基、アミジノ基、-COOH、-COOR、-CONH、又は-CONHR(但し、R、Rは、置換基で置換されていてもよいもので、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭化水素芳香族基、飽和複素環基、芳香族複素環基、アラルキル基、アシル基、アルキルスルホニル基、アルケニルスルホニル基、アルキニルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はアラルキルスルホニル基)、-NH、-NHR(但しRはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、又はアシル基)、-NRf’(但しR及びRf’は同一又は異なりアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、又はアシル基)、アルキルアミノカルボニルアミド基、又はアリールアミノカルボニルアミド基;
破線/実線平行線は、単結合又は二重結合であり、
前記R~R中の前記置換基は、夫々単数又は複数であって、水酸基、メルカプト基、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオエーテル基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルケニルチオエーテル基、アルキニル基、アルキニルオキシ基、アルキニルチオエーテル基、炭化水素芳香族基、炭化水素芳香族基含有オキシ基、炭化水素芳香族基含有チオエーテル基、飽和複素環基、飽和複素環基含有オキシ基、飽和複素環基含有チオエーテル基、芳香族複素環基、芳香族複素環基含有オキシ基、芳香族複素環基含有チオエーテル基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、アラルキルチオエーテル基、アシル基、チオエステル基、チオアミド基、アシルオキシ基、アルキルスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基、アルケニルスルホニル基、アルケニルスルホニルオキシ基、アルキニルスルホニル基、アルキニルスルホニルオキシ基、アリールスルホニル基、アリールスルホニルオキシ基、アラルキルスルホニル基、アラルキルスルホニルオキシ基、-COOH、-COOR、-CONH、又は-CONHR(但し、R、Rは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭化水素芳香族基、飽和複素環基、芳香族複素環基、アラルキル基、アシル基、アルキルスルホニル基、アルケニルスルホニル基、アルキニルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はアラルキルスルホニル基)、-NH、-NHR(但しRはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、又はアシル基)、-NRj’(但しR及びRj’は同一又は異なりアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、又はアシル基)、アルキルアミノカルボニルアミド基、アリールアミノカルボニルアミド基、又はアミジノ基である。)で表わされるインドール類、それの薬学的に許容される塩、及び/又は、それらインドール類のうちトリプトファン骨格を有する前記インドール類のキヌレニン経路代謝産物であるキヌレニン骨格含有代謝物を、ストレス低減化成分として、海洋深層水と共に含有するというものである。
このストレス低減薬剤は、例えば前記インドール類がトリプトファン骨格を有するものであり、その代謝物がキヌレニン骨格を有するものであり、または前記インドール類がインドール酢酸骨格を有するものである。
このストレス低減薬剤は、例えば前記インドール類が、下記化学式
Figure 0007093961000002
で表される化合物と、キヌレニンと、インドール酢酸とから選ばれる少なくとも何れかであるというものである。
とりわけ、前記の目的を達成するためになされた本発明の魚介類のストレス低減薬剤は、前記インドール類が、キヌレニンと、インドール酢酸とから選ばれる少なくとも何れかを、ストレス低減化成分として、海洋深層水と共に含有するというものである。
このストレス低減薬剤は、例えば、前記魚介類の治療用、予防用、及び/は飼育用として用いられる。
このストレス低減薬剤は、例えば、血中及び/又は尿中で、コルチゾルを低下させ、カルシトニンを上昇させ、カルシウムを低下させ、及び/又は骨芽細胞を活性化させるものである。
このストレス低減薬剤は、海洋深層水が、能登海洋深層水であることが好ましい。
本発明のストレス軽減薬剤は、海洋深層水に由来する成分、インドール類やその塩やそれの代謝物を、ストレス低減化成分として含有し、コルチゾルを低下させ、カルシトニンを上昇させ、カルシウムを低下させ、及び/又は骨芽細胞を活性化させることができる。
そのためストレス軽減薬剤は、ヒトや、魚介類、両生類、鳥類、非ヒト哺乳類のような家畜や食用動物やペット等の各種動物のストレスを低減する予防や治療に、効果がある。このストレス軽減薬剤は、魚を閉鎖空間に閉じ込めて運搬する方法、例えば、活魚輸送などにも、有効である。
本発明を適用するストレス低減薬剤を用いた実施例と本発明を適用外の比較例とにおけるメジナの5日間飼育時でのコルチゾル濃度を示すグラフである。 本発明を適用するストレス低減薬剤を用いた実施例と本発明を適用外の比較例とにおけるメジナの0、5、10日間飼育時でのコルチゾル濃度を示すグラフである。 本発明を適用するストレス低減薬剤を用いた実施例と本発明を適用外の比較例とにおけるヒラメの0、5、10日間飼育時でのコルチゾル濃度を示すグラフである。 本発明を適用するストレス低減薬剤を用いた実施例と本発明を適用外の比較例とにおけるヒラメの血中成分のカルシウム濃度と無機リン酸濃度を示すグラフである。 本発明を適用するストレス低減薬剤を用いた実施例と本発明を適用外の比較例とにおけるヒラメの0、5、10日間飼育時での血中カルシウム濃度を示すグラフである。 本発明を適用するストレス低減薬剤を用いた実施例と本発明を適用外の比較例とにおけるヒラメの5日間飼育時での血中カルシトニン濃度を示すグラフである。 本発明を適用するストレス低減薬剤を用いた実施例と本発明を適用外の比較例とにおけるヒラメの5日間飼育時での血中コルチゾル濃度を示すグラフである。 本発明を適用するストレス低減薬剤を用いた実施例と本発明を適用外の比較例とにおけるヒラメの5日間飼育時でのカルシウム濃度を示すグラフである。 本発明を適用するストレス低減薬剤を用いて10日間再生させたキンギョのウロコのALP及びTRAPの活性を示すグラフである。 本発明を適用するストレス低減薬剤を用いて14日間再生させたキンギョのウロコのALP及びTRAPの活性を示すグラフである。 本発明を適用するストレス低減薬剤を用いて6、12及び24時間培養させたキンギョのウロコのALPの活性を示すグラフである。 本発明を適用するストレス低減薬剤を用いて10日間再生させたキンギョのウロコのALPの活性を無添加の対照群を1とした時の値、およびSSWを1とした時のDOWの値として示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
ストレス低減薬剤は、前記化学式(I)で表わされるインドール類、それの薬学的に許容される塩、及び/又はそれの代謝物を、ストレス低減化成分として、含有するものである。
前記化学式(I)中、アルキル基やアルキルオキシ基やアルキルチオエーテル基のアルキルは、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状の飽和アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、アダマンチル;
アルケニル基やアルケニルオキシ基やアルケニルチオエーテル基のアルケニルは、炭素数2~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状の不飽和アルケニル、例えばビニル、アリル;
アルキニル基やアルキニルオキシ基やアルキニルチオエーテル基のアルキニルは、炭素数2~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状の不飽和アルキニル、例えばエチニル、2-プロピニル;
炭化水素芳香族基や炭化水素芳香族基含有オキシ基や炭化水素芳香族基含有チオエーテル基の炭化水素芳香族基は、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリルのようなアリール;
飽和複素環基や飽和複素環基含有オキシ基や飽和複素環基含有チオエーテル基の飽和複素環基は、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ピロリジニル、ピペリジニルのような酸素及び/又は窒素含有飽和複素環基;
芳香族複素環基や芳香族複素環基含有オキシ基や芳香族複素環基含有チオエーテル基の芳香族複素環基は、フラニル、ピリジル、インドールイルのような酸素及び/又は窒素含有芳香族複素環基;
アラルキル基やアラルキルオキシ基やアラルキルチオエーテル基のアラルキルは、ベンジル、フェネチルのようなアリールアルキル;
アシル基やアシルオキシ基やチオエステル基のアシルは、炭素数1~18で直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和の脂肪族アシル基(例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、(メタ)アクリル基(アクリル基又はメタクリル基)、3,3-ジメチルアクリル基)、アラルキルアシル基(例えばフェニルアセチル基)又は芳香族アシル基(例えばベンゾイル基、フェノール性水酸基含有ベンゾイル基具体的には4-ヒドロキシベンゾイル基や3,4-ジヒドロキシベンゾイル基や4-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾイル基);
チオアミド基のチオケト基は前記アシルに対応するチオケト基;
アルキルスルホニル基やアルキルスルホニルオキシ基やアルキルアミノカルボニルアミド基のアルキルは、前記のアルキル基で例示されたアルキル;
アルケニルスルホニル基やアルケニルスルホニルオキシ基のアルケニルは、前記のアルケニル基で例示されたアルケニル;
アルキニルスルホニル基やアルキニルスルホニルオキシ基のアルキニルは、前記のアルキニル基で例示されたアルキニル;
アリールスルホニル基やアリールスルホニルオキシ基やアリールアミノカルボニルアミド基のアリールは、前記の炭化水素芳香族基で例示されたアリール;
アラルキルスルホニル基や又はアラルキルスルホニルオキシ基のアラルキルは、前記のアラルキル基で例示されたアリールアルキル;
アミジノ基はC(=NH)-NH
ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子;
が挙げられる。
このストレス低減薬剤中、前記化学式(I)で表わされるインドール類の薬学的に許容される塩として、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩であってもよく、塩酸塩・硫酸塩・臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩・リン酸塩・メタリン酸塩のような無機酸塩であってもよく、酢酸塩・プロピオン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩・酒石酸塩・安息香酸塩、メタンスルホン酸塩・トルエンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩等の有機酸塩であってもよく、アミノ酸との塩であってもよい。
このストレス低減薬剤は、前記化学式(I)で表わされるインドール類、それの薬学的に許容される塩、及び/又はそれの代謝物を、ストレス低減化成分として、含有し、必要に応じ、非毒性で不活性の薬学的に許容しうる賦形剤、例えば固体状、半固体状もしくは液状の希釈剤、分散剤、充填剤及び担体と混合することにより、製剤化されていてもよい。水や海水に混入されていてもよい。さらに安定剤、保存剤、pH調整剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料防腐剤、媒質、生理食塩水、別な薬効を有する薬剤が添加剤として含まれていてもよい。
このストレス低減薬剤の剤形は、例えばエリキシル剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、軟膏、懸濁剤、液剤、腸溶剤、乳剤、硬膏剤、坐剤、散剤、錠剤、シロップ剤、注射剤、トローチ剤、軟膏剤、ハップ剤、リニメント剤、リモナーデ剤、ローション剤が挙げられる。液状媒体に溶解させてもよく懸濁させてもよく、固体状媒体に分散させたものであってもよい。このストレス低減薬剤を用時に、水や海水に混入して、飼育水や飲料水として用いるものであってもよい。
このストレス低減薬剤は、ヒトに用いる際、経口で投与してもよく、静脈注射・点滴で投与してもよく、皮膚に塗布乃至貼付して経皮吸収させてもよい。
このストレス低減薬剤中、ストレス低減化成分を、剤型中、0.001~99質量%含んでいる。このストレス低減薬剤は、水や海水に混入して、非ヒト動物の飼育水や飲料水や飼料として用いる場合、ストレス低減化成分を、0.0001~200μg/kgの濃度で用いることが好ましい。またこのストレス低減薬剤をヒトに用いる場合、0.001~100mg/kg含んでいることが好ましい。
このストレス低減薬剤の投与量、用量は、ストレス低減化成分の有効性、ヒト(患者)又は非ヒト動物の投与対象、投与の形態・経路、ストレスの程度、ヒトや非ヒト動物の体型・体重・年齢、環境、食事や食餌の量や種類に応じ、適宜選択される。その投与は、1日1~5回毎日投与してもよく、1日~14日おきに又は2~6週間おきに間欠的に投与してもよく、水や海水等の飼育水や飲料水に混入して適宜継ぎ足してもよい。
このストレス低減薬剤中の前記化学式(I)で表わされるインドール類は、未置換乃至一部置換された原料インドール化合物、例えば未置換乃至一部置換されたトリプタミン化合物やトリプトファン化合物を、ハロゲン化をしたり、アルキル化・アルケニル化・アルキニル化・アラルキル化等の置換をしたり、スルホニル化・アシル化等で保護をしたり、必要に応じ常法に従い別な官能基に誘導をしたりして製造することができる。例えば、特開2006-104152号公報や国際公開公報WO20007/010723号パンフレットやM. Somei et al., Heterocycles, 36, p1859 (1993)やM. Somei, et al., Heterocycles, 53, p1725-1736 (2000)やM. Somei, et al., Advances in Heterocyclic Chemistry, Vol. 82, 2002, p101-155に準じて、合成する。必要に応じて、薬学的に許容される塩や水和物にしてもよい。
前記インドール類として、より具体的には、トリプトファン骨格を有するもの、例えばトリプトファン誘導体(具体的には式(I)中、Rが-COOH、-COOR、-CONH、又は-CONHRであり、n1=n2=n3=1で表わされる誘導体)が、挙げられる。その代謝物として、キヌレニン骨格を有するもの、例えば下記化学式(II)
Figure 0007093961000003
で表わされるキヌレニンのようなキヌレニン誘導体であってもよい。
別な前記インドール類として、より具体的には、インドール酢酸骨格を有するもの、例えばインドール-3-酢酸誘導体(具体的には式(I)中、Rが-COOH、-COOR、-CONH、又は-CONHRであり、n1=n3=0かつn2=1で表わされる誘導体)が、挙げられる。
海洋深層水、例えば能登海洋深層水は、キヌレニンやインドール-3-酢酸が含有されている。このような海洋深層水で魚類を飼育すると、血中コルチゾル濃度を低下し、カルシトニンを上昇させ、カルシウムを低下させ、骨芽細胞を活性化させる。このことは、海洋深層水によって魚のストレスが低減されたことを示唆している。コルチゾルは、筋肉の分解を亢進したり、骨芽細胞活性を低下させたりするという、成長を阻害する作用を引き起こすことが知られているため、コルチゾルが低下することで成長阻害から解放され、生育が良くなると推察される。
また、魚類の骨芽細胞に対する海洋深層水の影響について、キンギョ(Carassius auratus)の再生ウロコを用い、骨芽細胞に特異的な酵素であるアルカリフォスファターゼ(ALP)活性を調べたところ、海洋深層水を用いて培養すると、表層海水を用いて培養するよりも、ウロコ上の骨芽細胞のALP活性が表層の海水で培養したものと比べて有意に上昇した。
海洋深層水に由来する成分、前記化学式(I)で表わされるインドール類やその塩やそれの代謝物についても同様の傾向が認められた。従って、海洋深層水、海洋深層水に由来する成分、インドール類やその塩やそれの代謝物は骨芽細胞の活性を上昇させる作用がある。魚類の成長に際し、骨格の伸長は欠かせないものであるため、それを促す骨芽細胞活性の上昇は、魚類の水産増養殖にも貢献できる。
以下、本発明を適用する実施例と、本発明を適用外の比較例とについて、具体的に説明する。
実施例及び比較例の一般的な材料及び方法は、以下の通りである。
(材料と方法)
(1) 試験動物
試験動物として、入手容易なメジナ(Girella punctata)及びヒラメ(Paralichthys olivaceus)を試験魚に用いた。採取後又は入手後、試験の直前まで野外のかけ流し水槽で3日間以上の馴致処理をした。
(2) 飼育水
試験用の飼育水は、DOW (海洋深層水:Deep Ocean Water)として能登半島小木港の沖合水深332 mの深海から能登海洋深層水施設でポンプにより汲み上げた日本海固有水である能登海洋深層水を使用し、またSSW(表層海水:Surface Sea Water)として九十九湾の水深2 mから国立大学法人金沢大学 環日本海域環境研究センター 臨海実験施設でポンプにより汲み上げた表層海水を使用した。これらの海水は、試験用の飼育水として、各施設の給水バルブから供給され、又はポリタンクで汲み置きして日陰冷暗所で保管されたものを、使用した。
(3) 飼育系
(3.1)飼育系I
水槽(容積:120×45×45 cm3)を使用して構築した。この水槽を2 個用意し夫々、DOW飼育群用及びSSW飼育群用とした。飼育水を、水槽に200 L入れ、一日20 Lの水替えを行った。アンモニア除去のための生物濾過装置として、EHEIM FILTER 2260(EHEIM社製)を用い、濾材として珊瑚砂を封入した。この装置にはクーラータワー(ZC-200α, ゼンスイ株式会社製) 及びヒーター(プロテクトPRO 500W, ニッソー株式会社製)を連結して、サーモスタット制御によって水温を一定にした。また、エアーポンプを用いた過剰のバブリングにより、飼育水中に酸素を供給した。光源としてLED 灯(フラットLED 1200, 寿工芸株式会社製)を用意し、6:00 から18:00 を明期としてタイマーで制御し調光した。エサは一日一回、タイ養殖用の人工飼料を食べ残しのない量(約15 g)を与えた。
(3.2)飼育系II
水槽(容積:60×25×30 cm3)の4個ずつの2系統に対し、ひとつの濾過装置を連結したこと以外は、飼育系Iと同様にして、DOW飼育群用及びSSW飼育群用とした。
(実施例1~3及び比較例1~3)
先ず、実施例1~3と比較例1~3とにおいて、DOW飼育群及びSSW飼育群での血中コルチゾル濃度を比較した。
(実施例1及び比較例1:DOW とSSW とのメジナ飼育下での血中コルチゾル濃度比較)
馴致処理を終えたメジナ(100 ± 25 g)を10匹を用い、DOW 飼育群(実施例1)とSSW 飼育群(比較例1)に5匹ずつ分け、飼育系Iの水槽中、水温20 ℃で5 日間飼育した。その後、麻酔下で採血した。
(実施例2及び比較例2:DOW とSSW とのメジナ飼育下での血中コルチゾル濃度比較)
馴致処理を終えたメジナ(100 ± 25 g)を16匹を用い、DOW 飼育群(実施例2)とSSW 飼育群(比較例2)に8匹ずつ分け、飼育系IIの水槽中、水温20 ℃で10 日間飼育した。飼育0 日目、5 日目、10 日目に、同じ個体から麻酔下で連続採血を行った。
(実施例3及び比較例3:DOW とSSW とのヒラメ飼育下での血中コルチゾル濃度測定試験)
馴致処理を終えたメジナ(350 ± 100 g)を16匹を用い、DOW 飼育群(実施例3)とSSW 飼育群(比較例3)に8匹ずつ分け、飼育系IIの水槽中、水温20 ℃で10 日間飼育した。飼育0 日目、5 日目、10 日目に、同じ個体から麻酔下で連続採血を行った。
(実施例1~3及び比較例1~3での採血)
血中コルチゾル濃度測定のため、メジナ又はヒラメから採血し、その血漿を用いることにした。麻酔効果の見られる下限の濃度を採用して、メジナ又はヒラメを麻酔液(0.02%Phenoxyethanol, 和光純薬工業株式会社製)で麻酔し、背大動脈からヘパリン処理したシリンジで採血した。採取した血液を、直ちに卓上遠心機で1 分間遠心分離し、上澄みを分離して、血漿サンプルとして-80 ℃で保管した。分離した血漿サンプルは、5 倍量のジエチルエーテルに通し、エーテル層を窒素乾固することで除タンパク処理した。乾固したサンプルは、分離したサンプルの3 倍量のELISA 用のアッセイバッファー(50 mM H3BO3; 0.2 % BSAfor ELISA; 0.01 % Thimerosal, 何れも和光純薬工業株式会社製)(pH 7.8) で溶解し、試験の直前まで-80 ℃で保管した。
(実施例1~3及び比較例1~3でのコルチゾル濃度の測定)
<測定原理>
コルチゾル濃度の測定には、サンプル溶液中のコルチゾルと、酵素標識した標識コルチゾルとを、抗コルチゾル抗体に対して競合的に抗原抗体反応させ、その後の酵素反応による基質溶液の呈色をスタンダード曲線に対応させて比色定量するという、一般的なステロイドホルモンの競合ELISA 法を応用して行った。
<操作1:二次抗体固相化プレートの調製>
先ず、抗ウサギ抗体ヤギ抗体をプレートに固相化した。市販の抗ウサギ抗体ヤギ抗体(CPL55641, コスモ・バイオ株式会社製) を、炭酸バッファー(15mMNa2CO3; 35mM NaHCO3; 3mM NaN3; 何れも和光純薬工業株式会社製)(pH 9.6)に15 μg/mL となるように希釈し、二次抗体溶液を調製した。この溶液を96穴プレート(C8 MAXISORP,Nunc-Imnomodule) に100 μL ずつ注ぎ、セロハンテープで封をし、室温で48 時間インキュベートして固相化した。次に、プレートを糖でブロッキングした。二次抗体溶液を捨て、生理食塩水250 μL で4 回洗浄した。その後ブロッキングバッファー(50 mM H3BO3;0.1 % BSA;3% Sucrose, 和光純薬工業株式会社製)(pH 7.8)を200 μL ずつ注ぎ、セロハンテープで封をし、室温で48 時間インキュベートしてブロッキングした。その後ブロッキングバッファーを捨て、セロハンテープで封をして4 ℃で保管した。
<操作2:既知濃度のコルチゾル溶液(標準液)の希釈系列の調製>
未標識のコルチゾルを1mg/mL となるようエタノールに溶解した溶液を用意した。毎回、100ng/mL, 50 ng/mL, 25ng/mL,12.5ng/mL, 6.25ng/mL, 3.23ng/mL, 1.56ng/mL, 0.78 ng/mL となるよう、アッセイバッファーで段階希釈し、標準液としてそれぞれサンプルと同時にインキュベートした。
<操作3:西洋ワサビペルオキシダーゼ(Horseradish peroxidase: HRP)標識コルチゾルの調製>
HRP 標識コルチゾル(FKA 403, コスモ・バイオ株式会社製) を4 ℃で保管しておき、測定の都度、アッセイバッファーで1/50 倍に希釈して使用した。
<操作4:一次抗体溶液の調製>
抗コルチゾルウサギ抗体(FKA 404-E, コスモ・バイオ株式会社製)を用い、内溶液20 μLをアッセイバッファー9.98 mL に溶かして1/500 倍に希釈し、440 μL ずつエッペンドルフチューブに分注し、-80 ℃で保管した。実験の直前、アッセイバッファーで1/10 倍に希釈して使用した。
<操作5:抗原抗体反応>
二次抗体固相化プレートのwellに、前述までの要領で調製した溶液を、サンプルまたは標準液、HRP 標識コルチゾル溶液、一次抗体溶液の順で50 μL ずつ加えた。その後、セロハンテープでシールし、軽く振盪し、室温で24 時間インキュベートした。
<操作6:HRP の基質溶液の調製と呈色反応>
HRPによる酵素反応の基質として、o-フェニレンジアミン二塩酸塩(o-Phenylenediamine: OPD, 和光純薬工業株式会社製)を用いた。OPD はHRP が触媒する反応により酸化的に切断され、492 nm の吸光波長を呈するものである。呈色反応の直前にOPD 及び過酸化水素(Hydrogen peroxide: H2O2, 和光純薬工業株式会社製)、クエン酸バッファー(0.2 M Citric acid, 和光純薬工業株式会社製)(pH 4.5) を用いて、基質溶液(0.08 % OPD, 0.02 % H2O2 in Citricacic buffer)を調製した。抗原抗体反応の手順の終了後、プレートを250 μL のプレート洗浄液(131 mM NaCl; 9 mM Na2HPO4; 1.1mM NaH2PO4, 和光純薬工業株式会社製;1.5 mM KH2PO4, 以上何れも和光純薬工業株式会社製;0.05 % Tween20)(pH 7.4)で4 回洗浄した。その後、基質溶液を100 μL ずつ注ぎ、遮光し、軽く振盪しながら20 分程度インキュベートした。基質溶液が十分呈色したことを確認し、規定度3 の硫酸を50 μL 追加して酵素反応を停止した。このプレートを、吸光波長の492 nm に設定したプレートリーダーで吸光度を測定することでデータ化し、その吸光度を標準液のものと比較して、サンプル溶液中のコルチゾル濃度を求めた。
(実施例1~3及び比較例1~3でのコルチゾル濃度の統計学的処理)
実施例1及び比較例1のデータを統計学的に処理する場合、先ずDOW 飼育群及びSSW 飼育群の各群について外れ値検定(Grubbs' outlier t-test) を施してp <0.05 となる要素を外れ値として見出した後、平均値の計算から除外した。次に等分散を仮定した2標本による片側t-検定(student's t-test)を行った。その結果であるp値について、p <0.05 を統計学的有意水準、p < 0.10 を統計学的有意傾向とした。外れ値とした要素はグラフ中に× 印で挿入した。
一方、実施例2~3及び比較例2~3のデータを統計学的に処理する場合は、まず5 日間及び10 日間飼育した各個体の血中コルチゾルの濃度の値を、0 日目の血中コルチゾルの値で除し、変化率を算出した。その値を用いて、5 日目、10 日目それぞれのタイムポイントごとにSidak の多重比較検定を行った。それらの結果であるp 値について、p < 0.05 を統計学的有意水準、p < 0.10 を統計学的有意傾向とした。
(実施例1及び比較例1におけるメジナでのコルチゾル濃度の結果)
20 ℃で5 日間メジナ5 匹ずつ飼育したDOW 飼育群(実施例1)及びSSW 飼育群(比較例1)でのメジナの血漿中コルチゾル濃度の結果を、図1に示す。その平均値を求め、統計的な検定を行ったところ、図1から明らかな通り、DOW 飼育群の血漿中コルチゾル濃度がSSW 飼育群よりも有意に低かった。
(実施例2及び比較例2におけるメジナでのコルチゾル濃度の結果)
20 ℃で5及び10 日間飼育したDOW 飼育群(実施例2)及びSSW 飼育群(比較例2)とのメジナの血漿中コルチゾル濃度の結果を、図2に示す。各個体の0 日目(イニシャル)に対する5及び10 日目の血漿中コルチゾルの変化率は、SSW 飼育群では飼育期間が増えると、血漿中コルチゾル濃度が増加していくのに対し、DOW 飼育群では飼育期間が増えても血漿中コルチゾル濃度はほとんど変化しなかった。
(実施例3及び比較例3におけるヒラメでのコルチゾル濃度の結果)
20 ℃で5及び10 日間飼育したDOW 飼育群(実施例3)及びSSW 飼育群(比較例3)とのヒラメの血漿中コルチゾル濃度の結果を、図3に示す。各個体の0 日目(イニシャル)に対する5及び10 日目の血漿中コルチゾルの変化率は、SSW 飼育群では飼育期間が増えると血漿中コルチゾル濃度が増加していくのに対し、DOW 飼育群では飼育期間が増えても血漿中コルチゾル濃度はほとんど変化しなかった。
コルチゾルはストレスホルモンの一つとして知られ、生体がストレスを受けたときに副腎皮質(魚類では間腎腺)から分泌され血中濃度が増加するため、慢性ストレスの指標になることが知られている。実施例1~3及び比較例1~3の結果の比較の通り、SSW 飼育により血中コルチゾル濃度が経時的に上昇したことから、水槽で飼育されること自体が魚にとってストレスになっていると考えられるのに対し、海洋深層水(DOW)で飼育したメジナ又はヒラメのような魚類は、血中コルチゾル濃度がほとんど低下しないことがわかった。DOW 飼育により、狭い水槽による飼育でかかる慢性ストレスが軽減されることがわかった。コルチゾルは筋肉の分解を亢進するなどの成長を阻害するような作用を引き起こすことが知られており、これが低下することで成長阻害から解放され、生育が良くなると考えられる。
(実施例4及び比較例4)
次に、実施例4と比較例4とにおいて、DOW飼育群及びSSW飼育群でのヒラメ飼育下での血中成分について検討した。
(実施例4及び比較例4:DOW とSSW とのヒラメ飼育下での血中成分の測定)
前記の実施例3及び比較例3にて20 ℃で10 日間飼育したDOW 飼育群及びSSW 飼育群のヒラメそれぞれ8 匹ずつの血漿の各検査項目について、ヒトの健康診断での血中測定の検査項目と同様にして、総タンパク(TP)(g/dL)、アルブミン(ALB)(g/dL)、尿素窒素(BUN)(mg/dL)、クレアチニン(CRE)(mg/dL)、ナトリウム(Na)(mEq/L)、カリウム(K)(mEq/L)、クロール(Cl)(mEq/L)、カルシウム(Ca)(mg/dL)、無機リン(IP)(mg/dL)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST) (IU/L)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)(IU/L)、乳酸脱水素酵素(LDH)(IU/L)、アミラーゼ(AMY)(IU/L)、γ-グルタミルトランスフェラーゼ(r-G)(IU/L)、総コレステロール(T-CHO)(mg/dL)、中性脂肪(TG)(mg/dL)、高比重リポタンパク-コレステロール(HDL-C)(mg/dL)、総ビリルビン(T-BIL)(mg/dL)、グルコース(GLU)(mg/dL)を測定した。
(実施例4及び比較例4での血中成分の統計学的処理)
解析したデータの統計処理には、DOW 飼育群(実施例4)及びSSW 飼育群(比較例4)で、各検査項目について等分散を仮定した2標本による両側t-検定(student's t-test) を行った。なお、p 値については、p < 0.05 を統計的有意水準、p < 0.10 を統計的有意傾向ありとみなした。
(実施例4及び比較例4におけるヒラメでの各検査項目の結果)
5及び10 日間飼育したDOW 飼育群(実施例4)及びSSW 飼育群(比較例4)とのヒラメの血中成分スクリーニングの結果、図4に示す通り、SSW 飼育群に比べDOW 飼育群で血中カルシウム濃度が有意に低く、無機リン濃度が有意に高かった。
(実施例5及び比較例5)
そこで、次に、実施例5と比較例5とにおいて、DOW飼育群及びSSW飼育群でのヒラメ飼育下での血中カルシウム濃度について、各タイムポイントで測定した。
(実施例5及び比較例5:DOW とSSW とのヒラメ飼育下での血中カルシウム濃度比較)
前記の実施例3及び比較例3にて20 ℃で10 日間飼育したDOW 飼育群及びSSW 飼育群のヒラメそれぞれ8 匹ずつの血漿(0 日目、5 日目、10 日目)について、血中カルシウム濃度を測定した。
(実施例5及び比較例5でのカルシウム濃度の測定)
<測定原理>
呈色液中のキレート剤であるアルゼナゾIII が、サンプル中のカルシウムにキレートすると660 nm の吸光を示すことを利用し、カルシウム濃度に比例して吸光度が高くなるため、既知濃度のカルシウム溶液を用いてスタンダード曲線を作成することで、カルシウム濃度を比色定量するというものである。
<カルシウム濃度の測定手順>
カルシウム濃度は、アクアオートカイノスCa 試薬(株式会社カイノス製) のキットを用いて測定した。既知濃度のカルシウム溶液(標準液) 及びサンプルとした血漿4 μL を、1.5 mL エッペンドルフチューブに入れ、試薬360 μL を添加し、転倒混和した。その後、各液を96 穴プレート(Code No. 269620, Thermo Fisher Scentific社製) の所定の位置に、1 well あたり100 μL ずつ、トリプリケーションとなるように入れた。このプレートを、吸光波長を660 nm に設定したプレートリーダーで吸光度を測定することでデータ化し、その吸光度を標準液のもの比較してサンプル溶液中のカルシウム濃度を求めた。
(実施例5及び比較例5でのカルシウム濃度の統計学的処理)
実施例5及び比較例5のデータを統計学的に処理する場合、先ずDOW 飼育群及びSSW 飼育群ごとに外れ値検定(Grubbs’ outlier t-test) を施し、p < 0.05 となる要素を外れ値として平均値の計算から除外した。その後、各タイムポイントについて等分散を仮定した2標本による両側t-検定(student's t-test) を行った。なおp 値について、p < 0.05 を統計的有意水準、p < 0.10 を統計的有意傾向ありとみなした。
(実施例5及び比較例5におけるヒラメでのカルシウム濃度の結果)
20 ℃で5及び10 日間飼育したDOW 飼育群(実施例5)とSSW 飼育群(比較例5)でのヒラメそれぞれ8 匹ずつの、飼育0, 5, 10 日目の血中カルシウム濃度の結果を、図5に示す。その平均値を求め、統計的な検定を行ったところ、図5から明らかな通り、飼育10 日目のサンプルでSSW 飼育群に比べDOW 飼育群で血中カルシウム濃度が有意に低かった。
(実施例6及び比較例6)
そこで、次に、実施例6と比較例6とにおいて、DOW飼育群及びSSW飼育群でのヒラメ飼育下での血中カルシトニン濃度について、各タイムポイントで測定した。
(実施例6及び比較例6:DOW とSSW とのヒラメ飼育下での血中カルシトニン濃度比較)
前記の実施例3及び比較例3にて20 ℃で10 日間飼育したDOW 飼育群及びSSW 飼育群のヒラメそれぞれ8 匹ずつの血漿(0 日目、5 日目)について5倍希釈し、血中カルシトニン濃度を測定した。
(実施例6及び比較例6でのカルシトニン濃度の測定)
<測定原理>
カルシトニン競合ELISA法で測定した。この競合ELISA 法は、試験管内でプレインキュベーションしたサンプル及び一次抗体溶液を、カルシトニン固相化プレート上に注ぐことで、結果的に固相上のカルシトニンとサンプル中のカルシトニンとが競合的に抗原抗体反応し、その後、酵素反応による基質溶液の呈色を標準曲線に対応させて比色定量するというものである。
<操作1: プレインキュベーション>
サンプル溶液中のカルシトニンを、一次抗体である抗サケカルシトニンウサギ抗体と抗原抗体反応させるプレインキュベーションの操作を行った。まず、一次抗体溶液を用意した。抗サケカルシトニンウサギ抗体を血清の32 万分の1 となるように、PBS (0.13 M NaCl, 9 mM Na2HPO4, 1.1 mM NaH2PO4, 1.5 mM KH2PO4, 0.1 % BSA, 0.1 % NaN3)(pH 7.4) で希釈し、一次抗体溶液として使用した。
次に、既知濃度のカルシトニン溶液(標準液) の希釈系列を調製した。まず、未標識のカルシトニン(和光純薬工業株式会社製) を500 ng/μL となるよう蒸留水(DW)に溶解した溶液を調製し、エッペンドルフチューブに分注し、-80 ℃で保管した。実験の都度、1600 pg/mL, 800 pg/mL, 400pg/mL, 200pg/mL, 100pg/mL, 50pg/mL, 25pg/mL, 12.5 pg/mLとなるようPBS で希釈し、標準液としてそれぞれサンプルと同時にプレインキュベーション用に使用した。その後、5 mL ガラス試験管に、一次抗体溶液及びそれと等量の血液サンプルまたは標準液を入れた。この試験管にフタをし、4 ℃で72 時間プレインキュベートした。
<操作2: カルシトニン固相化プレートの調製>
まず、カルシトニンをプレートに固相化した。炭酸バッファー(15mM Na2CO3, 35mM NaHCO3 , 3mM NaN3) (pH 9.6) で0.1 ng/μL となるよう希釈したサケカルシトニン溶液を調製し、96 穴plate (Falcon社製) のすべてのwell に100 μL ずつ入れ、セロハンテープでシールして、25 ℃で24 時間インキュベートして固相化した。次に、プレートをスキムミルクでブロッキングした。インキュベートの後、250 μL のプレート洗浄液(131 mM NaCl , 9 mM Na2HPO4, 1.1 mM NaH2PO4, 1.5 mM KH2PO4, 0.05 % Tween20)(pH 7.4) で4 回洗浄し、ブロッキングバッファー(5 % スキムミルクin炭酸バッファー) を250 μL ずつ注ぎ、25 ℃で1 時間インキュベートし、ブロッキングした。このプレートをさらに洗浄し、カルシトニン固相化プレートとして使用した。
<操作3: 抗原抗体反応>
カルシトニン固相化プレートの所定の位置に、プレインキュベーションを済ませたサンプル溶液及び標準液を100 μL ずつ注いだ。その後、セロハンテープでシールし、軽く振盪し、4 ℃で24 時間インキュベートした。
<操作4: 二次抗体の反応>
ビオチン標識抗ウサギ抗体ヤギ抗体(Polyclonal Goat Anti-Rabbit Immunoglobulins / Biotinylated, Dako社製) をPBSで5000 倍に希釈し、二次抗体溶液を調製した。その溶液を、洗浄を済ませたプレートのすべてのwell に100 μL ずつ注ぎ、シールをし、25 ℃で2 時間インキュベートした。
<操作5: 西洋ワサビペルオキシダーゼ(Horseradish peroxidase: HRP) 標識ストレプトアビジンの反応>
HRP 標識ストレプトアビジン(Streptavidin/HRP, Dako社製) をPBSで10000 倍に希釈し、HRP 標識ストレプトアビジン溶液を調製した。その溶液を、洗浄を済ませたプレートのすべてのwell に100 μL ずつ注ぎ、シールをして、25 ℃で1 時間インキュベートした。
<操作6: HRP の基質溶液の調製と呈色反応>
HRP による酵素反応の基質として、o-フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD) を使用した。呈色反応の直前にOPD 及び過酸化水素、クエン酸バッファー(0.2 M Citric acid, pH 4.5) を用いて、基質溶液(0.08 % OPD, 0.02 % H2O2 in クエン酸バッファー) を調製した。HRP 標識ストレプトアビジンインキュベートの手順の終了後、プレートを250 μL のプレート洗浄液で4 回洗浄した。その後、基質溶液を100 μL ずつ注ぎ、遮光し、軽く振盪しながら30 分程度インキュベートした。基質溶液が十分呈色したことを確認し、規定度3 の硫酸を50 μL 追加して酵素反応を停止した。このプレートを、吸光波長を492 nm に設定したプレートリーダーで吸光度を測定することでデータ化し、その吸光度をカルシトニンのスタンダードと比較してサンプル溶液中のカルシトニン濃度を求めた。
(実施例6及び比較例6でのカルシトニン濃度の統計学的処理)
実施例6及び比較例6のデータを統計的に処理する場合、DOW 飼育群及びSSW 飼育群の各群について外れ値検定(Grubbs’ outlier t-test) を施してp < 0.05 となる要素を外れ値として見出した後、除外した。次に、等分散を仮定した2標本による両側t-検定(student's t-test) を行った。なお、p 値について、p < 0.05 を統計的有意水準、p < 0.10 を統計的有意傾向ありとみなした。
(実施例6及び比較例6におけるヒラメでのカルシトニン濃度の結果)
20℃で10 日間飼育したSSW 飼育群とDOW 飼育群のヒラメそれぞれ8 匹ずつの飼育5 日目での血中カルシトニン濃度の平均値を求め、統計的な検定を行った結果を、図6に示す。図6から明らかな通り、5 日目ではSSW 飼育群に比べDOW 飼育群の血中カルシトニン濃度の平均値が高い傾向にあった(p = 0.10)。
実施例5~6及び比較例5~6の結果の比較の通り、海洋深層水(DOW) で魚を飼育することで、表層海水(SSW) で飼育した魚と比べて血中カルシウム濃度が有意に低下した。カルシウムは生体において、主に骨や歯のヒドロキシアパタイトの形で存在する。カルシウムイオンは筋肉や神経の機能維持、血液凝固、酵素の活性化剤として作用し、細胞内ではcAMP とともに細胞内情報伝達の調整因子としても作用する。また、細胞間接着を担う分子のカドヘリンは、カルシウム依存的に隣り合う細胞同士を接着させる。
血中カルシウム濃度の変化が起こった理由は、次のように推定される。実施例1及び比較例1の結果の通り血中に存在するコルチゾルは、血液中のカルシウム濃度の変化に関与しているようである。コルチゾルは魚類の間腎腺(哺乳類では副腎皮質) から分泌されるステロイドホルモンであり、ストレスホルモンとしての働きを持つが、カルシウム代謝にも影響を与えているようである。骨芽細胞は骨を形成する働きを持ち(骨形成) 、カルシウムを骨組織に沈着させる。また、破骨細胞は骨を酵素的に分解し(骨吸収) 、カルシウムを放出させる。コルチゾルは、破骨細胞分化促進因子のRANKL (receptor activator of nuclear factor κ B ligand) の発現を増加させるとともに、そのデコイ受容体でOPG (osteoclastogenesis) の発現を抑制することで、破骨細胞形成を促進し、骨吸収を増加させる。また、骨芽細胞の分化、増殖を抑制するうえ、成熟骨芽細胞のアポトーシスを増加させる。これらの結果、骨基質へのカルシウムの沈着が滞り、血中カルシウム濃度は増加する方向に向かうと推察される。実施例1~3及び比較例1~3の結果の通り、SSW 飼育に比べてDOW 飼育により血中コルチゾル濃度は低く保たれている。カルシウム濃度の変化は、このコルチゾル濃度の変化に対応したものと考えられる。
大部分の硬骨魚類で、血中カルシウム濃度の調節にウロコ上の骨芽細胞と破骨細胞が関係していることが知られている。硬骨魚類のウロコには、哺乳類の骨と同様に、線維層と骨質層から成る骨基質が存在し、骨芽細胞及び破骨細胞による骨代謝調節が行われている。魚類にとって背骨は遊泳の際に重要であることから、血中カルシウムの恒常性の維持のためにカルシウムを出し入れする貯蔵庫としてウロコの骨基質を利用していると考えられる。実際に、カルシウムが不足する性成熟や飢餓といった状況下では、背骨ではなく主にウロコの骨基質をカルシウム調節に利用することが知られている。DOW が魚類のウロコ上の骨芽細胞と破骨細胞による骨代謝調節に影響を与え、血中カルシウム濃度が変化したと推察される。
さらに、血中カルシウム濃度を低下させる働きを持つホルモンのカルシトニンの関与もあるようである。カルシトニンは破骨細胞上の受容体に結合し、破骨細胞の骨格(アクチンリング)の破壊を介して破骨細胞を収縮させ骨吸収を抑制する。海産魚においてカルシトニンが血漿カルシウム濃度を生理的な濃度に保つ役割を持つことが知られている。
カルシトニンには鎮痛作用があることが知られており、そのメカニズムについて様々な要素(プロスタグランジン合成阻害、内因性オピオイド系の活性化、セロトニン受容体の変動に関わる感覚C 線維、CGRP 放出の抑制など)が関わっている。また、マウスにおいて、カルシトニンがカルパインというタンパク質分解酵素の活性の抑制を介して、ストレスによるタンパク質分解を抑制してショックを緩和している。このように、カルシトニンはいくつかのターゲットに対し抑制的に働くことで、生体の健康維持に関わっている。DOW が魚類のウロコに影響を与え、カルシトニンの発現を増加させ、それが血中に放出され、神経系に影響を与えた可能性がある。
(実施例7及び比較例7)
次に、実施例7及び比較例7において、飼育水として用いたDOW及びSSW中のストレス低減化成分を同定した。
<海水サンプルのフィルター処理>
フィルターホルダーユニットに、上からガラス繊維フィルター(GC-50, Advantec社製)、C-18 フィルター(2215-C18, Empore社製) の順番になるように設置し、クランプで固定し、ろ瓶に接続した。フィルターユニットにメタノール(HPLC用, 和光純薬工業株式会社製) 50 mL 、ミリポア社製の超純水製造装置で作製したミリQ 水100 mLの順で注ぎ、シリコン製のフィルターを親水化した。フィルターユニットに海水サンプル3Lを注ぎ、吸引ポンプでろ瓶内を陰圧にし、フィルターに海水を通過させた。このとき、ガラス繊維フィルターが目詰まりして流速が著しく落ちた場合には、クランプを取り外しガラス繊維フィルターを交換した。海水サンプル3 L を通過させ終えた後、ミリQ 水50 mL を注ぎフィルターを軽く洗浄した。その後、20 分間空気吸引し、フィルターを乾燥させた。
<フィルターからの成分の溶出>
フィルターホルダーユニットに、海水サンプルを通過させたC-18 フィルターを設置し、クランプで固定した。エタノール10 mL 、ベンゼン30 mL を注ぎ、10 分間かけてフィルターを通過させ、化合物を溶出させた。この液体はいったんコニカルビーカーに集めた。溶出の済んだフィルターを捨て、フィルターホルダーユニットを少量のエタノールですすいだ。このエタノールもコニカルビーカーに集めた。コニカルビーカーに集めた溶液を約10 mLになるまで窒素乾固した。この溶液を駒込ピペットで20 mL 容積の蓋付きの褐色瓶に移した。さらに、コニカルビーカーの中を3 mL 程度のエタノールで2 回洗いこみ、その液も褐色瓶に移した。褐色瓶に集めた溶液をすべて窒素乾固した。乾固した試料を測定直前に、DW 500 μL に再溶解し、その溶液をLC-MS/MS で分析した。分析する際には、10 種類のインドール化合物をスタンダードとした各化合物の濃度の分析を行った(メラトニン:MEL, N-アセチル-5-メトキシキヌラミン:AMK, N-アセチル-N-ホルミル-5-メトキシキヌラミン:AFMK, セロトニン:5HT, N-アセチルセロトニン:NAS, ハイドロキシメラトニン: HaMT, キヌラミン, キヌレニン, 5-メトキシトリプタミン: 5MTP, インドール酢酸: IAA) 。検出された成分の結果を、表1に示す。
Figure 0007093961000004
表1から明らかな通り、能登海洋深層水(DOW) には表層海水(SSW) と比べてキヌレニンが多く含まれていた。また、インドール-3-酢酸も含有されていた。このことから、DOW が魚類生理に与える影響が、キヌレニンやインドール酢酸の働きによるものである可能性が示された。
キヌレニンはトリプトファンの代謝経路の一種であるキヌレニン経路の中間代謝産物のひとつである。哺乳類において、トリプトファンは肝臓に存在するトリプトファン酸素添加酵素(Tryptophan 2,3-dioxygenase, TDO) により触媒されN’-ホルミルキヌレニンを経てキヌレニンとなり、キヌレニン経路に入る。キヌレニン経路に入らず脳に達したトリプトファンがトリプトファンヒドロキシラーゼ(Tryptophan 5-hydroxylase) に代謝され脳内セロトニンとなる。キヌレニン経路の中間代謝産物であるキノリン酸、3-ヒドロキシキヌレニン及びキヌレン酸は神経刺激性(neuroactive) 物質であり、ヒトのアルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、AIDS痴呆複合体、マラリア、癌、うつ病及び統合失調症を含む多くの疾患及び障害に関与することが知られている。また、抗原提示細胞をはじめ上皮細胞や腫瘍細胞などで強発現するインドールアミン酸素添加酵素(Indoleamine 2,3-dioxygenase 1:IDO1) もトリプトファンをキヌレニンに変換する酵素であり、この酵素の働きを契機としたトリプトファンの枯渇とキヌレニン代謝産物の生産がT 細胞を介した免疫応答において重要な調節作用を果たしている。キヌレニン自体もアリール炭化水素受容体の内因性リガンドとしてI 型インターフェロンの産生の誘導を抑制して自然免疫応答を制御する働きを有する。
一方、魚類生理に関し、キヌレニン自体はサケ科魚類のサクラマスの性フェロモンとして同定されている。キヌレニン経路に関係することとして、ウシとニジマスの肝臓から抽出したアリルホルムアミダーゼ(Arylformamidases) (N’-ホルミルキヌレニンからキヌレニンに至る反応を触媒する) を比較し、耐熱性やフィードバック機構などの性状に大きな差があることが分かっている。抗ストレスや健康に関わる知見としては、ゼブラフィッシュのタンク行動試験において、キヌレニンから生産されるキヌレン酸(KYNA) 曝露は、抗不安様の効果が知られている(マウスやラットの知見と同様の結果である)。またin vitroで、ある濃度のKYNA 曝露でニジマスの免疫細胞の増殖が観察されたことから、KYNA が魚のリンパ球を活性化する可能性が示唆されている。
(実施例8及び比較例8)
そこで、次に、実施例8及び比較例8において、キヌレニン又はインドール酢酸含有人工海水飼育によるヒラメの血中コルチゾル、カルシウム濃度の変化を測定し、キヌレニンやインドール酢酸の効果を検討した。
<飼育系III>
プラスチックケースの水槽(300×195×205 mm3)を使用して構築した。この水槽を6 個用意し、その内、2 個を無処理群飼育用(コントロール)、2 個をインドール酢酸(Indole-3-acetic acid:IAA) 処理群飼育用、2 個をキヌレニン処理群とした。飼育水として、3 % 人工海水(SEALIFE, 株式会社日本海水製) を溶媒とし、下記の3 種類の海水を調製し使用した。
(i)無処理人工海水:水道水に人工海水を3 %実用塩分となるよう溶かして調製した。
(ii)IAA 含有人工海水:無処理人工海水に、10-6M となるようIAA (和光純薬工業株式会社製)を加えて調製した。
(iii)キヌレニン含有人工海水: 無処理人工海水に、10-6M となるようキヌレニン(Sigma社製) を加えて調製した。
飼育水はケースに5 L 入れ、一日2 L の水替えを行った。ここで、水替えによって損失するIAA 及びキヌレニンは、あらかじめ1 mL のエタノール(HPLC 用, 和光純薬工業株式会社製) 及び19 mL のDW に溶解させて冷蔵し調製した溶液を用いて、水替えのたびに計算上減った分を新鮮な人工海水に追加して補った。また、エアーポンプを用いたバブリングにより、飼育水中に酸素を供給した。6:00 から18:00を明期としてタイマーで制御し、調光した。エサは実験期間中、与えなかった。
<飼育及び採血>
馴致処理を終えたヒラメ18 匹(15 ± 6 g) を用い、無処理群(比較例8)、IAA 処理群及びキヌレニン処理群(何れも実施例8)に6 匹ずつ分け、それぞれ3 匹ずつ水槽にいれた。水温を20 ℃として、5 日間飼育した。5 日目に、血中コルチゾル及びカルシウム濃度測定のためのサンプルとするため、ヒラメを麻酔液で麻酔して、背大動脈からヘパリン処理をしていないシリンジで採血した。採取した血液は室温で2 時間、4 ℃で24 時間おき凝血させた。その後5,000 rpm で15 分間遠心分離し、上澄みを分離して血清サンプルとして-80 ℃で保管した。
<血中のコルチゾル及びカルシウム濃度の測定>
コルチゾル濃度の測定には、実施例1~3及び比較例1~3と同様にして、競合ELISA 法によるコルチゾル測定系を使用した。また、カルシウム濃度の測定には、実施例5及び比較例5と同様にして、アクアオートカイノスCa 試薬(株式会社カイノス製) のキットを用いて測定した。
(実施例8及び比較例8でのカルシウム濃度の統計学的処理)
のデータを統計的に処理する場合は、無処理群、IAA 処理群、キヌレニン処理群それぞれのコルチゾル濃度またはカルシウム濃度について、各群について外れ値検定(Grubbs’ outlier t-test) を施してp < 0.05 となる要素を外れ値として見出し、平均値の計算から除外した。その後、無処理群をコントロールとして、コントロールと差がないことを帰無仮説としたDunnett の方法による多重比較検定を行った。その結果であるp 値について、p < 0.05 を統計的有意水準、p < 0.10 を統計的有意傾向とした。外れ値とした要素はグラフ中に× 印で挿入した。
(実施例8及び比較例8におけるヒラメでのカルシウム濃度の結果)
20 ℃で5 日間飼育した無処理群、IAA 処理群、キヌレニン処理群のヒラメそれぞれ6 匹ずつの血清中コルチゾル濃度及びカルシウム濃度を測定した。その結果を、図7A及びBに示す。図7から明らかな通り、無処理群の血中コルチゾル濃度に対し、IAA 処理群及びキヌレニン処理群の血中コルチゾル濃度は低い傾向にあった(p = 0.09) 。また、無処理群の血中カルシウム濃度に対し、IAA 処理群の血中カルシウム濃度は低い傾向にあり(p = 0.06) 、キヌレニン処理群の血中カルシウム濃度も同様の傾向を示した(p = 0.18)。
(実施例9及び比較例9)
次に、実施例9及び比較例9において、魚類のカルシウム代謝に深くかかわる組織であるウロコを用いた実験を行った。
(実施例9及び比較例9:キンギョのウロコを用いた骨芽細胞及び破骨細胞の酵素活性)
硬骨魚類のウロコは、線維層と骨質層から成る骨基質と、骨芽細胞及び破骨細胞をもち、哺乳類の膜性骨とよく似た骨代謝を行っている。キンギョのウロコを用いたバイオアッセイ系を利用して、DOW及びキヌレニンの魚類の骨代謝に与える影響を調べ、DOWとキヌレニンそれぞれの魚類生理に与える影響の作用機序について検討した。
<試験魚>
試験魚には、キンギョ(Carassius auratus) を用いた。試験の前週に、キンギョを小分けにして小さい水槽に入れ、サーモスタット制御によって水温を26 ℃で一定にし、エサを1 日2 回、2 分程度で食べきれる量(約1 ~2g)を与えた。
<再生ウロコの入手のための処理>
キンギョのウロコの、骨芽細胞と破骨細胞のフォスファターゼ活性、及びウロコの遺伝子発現量を測定するアッセイ系を用いた実験を行う場合は、通常のウロコを使用するよりも、再生ウロコを使用したほうが、測定感度が高くなることが知られている。また、体側の左右で対応した位置にあるウロコでは、骨芽細胞及び破骨細胞のそれぞれのマーカー酵素活性がほぼ同じであることが知られている。骨芽細胞のマーカー酵素はアルカリフォスファターゼ(AlkalinePhosphatase:ALP) 、破骨細胞のマーカー酵素は酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ(Tartrateresistant acid phosphatase:TRAP) である。キンギョのウロコのアッセイ系ではこのことを利用して、片方の体側のウロコを対照群、もう片方の体側のウロコを実験群として解析を行った。キンギョを麻酔液(0.03 % MS-222,Sigma社製;0.03 % NaHCO3, 和光純薬工業株式会社製) で麻酔し、左右の体側のそれぞれ対応する位置のウロコを必要な数だけ選んで、ピンセットで抜去した。ウロコを抜いたキンギョは、水温を26 ℃で一定にした水槽に移し、エサを1 日2 回、2 分程度で食べきれる量(約1 ~2g)を与え、10 日間あるいは14 日間飼育してウロコの再生を促した。
<ウロコを培養する培地の調製>
ウロコを培養するにあたっては、抗生物質入りのL-15 液体培地を用いた(1 % Penicillin-Streptomycin-Amphotericin, ICN Biomedicals;Leibovitz's L-15, Life Technologies社製) 。試験には、下記の各種培地を調製し、適宜組み合わせて実験を設定した。
<DOW添加の影響>
一定割合のSSW 含有培地を対照群、同じ割合のDOW 含有培地を実験群とした。
(i)10 % SSW L-15 vs 10 % DOW L-15
(ii)20 % SSW L-15 vs 20 % DOW L-15
<キヌレニン添加の影響>
溶質を加えていない培地を対照群、一定割合のキヌレニン含有培地を実験群とした。
(i)L-15 vs 10-6M キヌレニンL-15
(ii)L-15 vs 10-4M キヌレニンL-15
<ウロコのサンプリング>
キンギョから再生ウロコを採取するため、キンギョを麻酔液で麻酔し、ピンセットで採取した。採取したウロコは、あらかじめ各ウェルに溶質を加えていない培地を200 μL ずつ入れておいた96 穴プレート(Falcon社製) の所定の位置に、一枚ずつ入れた。15 ℃のインキュベーターに入れ、1 時間の前培養を行った。その後、培地を捨て、各培地を100 μL ずつ加え、15 ℃で一定時間培養した。培養の後、すべての培地を除去し、100 μL のPBS (和光純薬工業株式会社製) でウロコを洗浄し、骨芽細胞活性測定用のウロコにはアルカリ緩衝液(ALP buffer: 1 mM MgCl2; 0.1 mM ZnCl2; 100 mM Tris, 何れも和光純薬工業株式会社製) (pH 9.5) 、破骨細胞活性測定用のウロコには酸性酒石酸耐性酸緩衝液(TRAP buffer: 20 mM Tartrateresistant acid; 100mM Acetic Acid-SodiumAcetate Buffer Solution, 何れも和光純薬工業株式会社製)(pH 5.3) を、それぞれ100 μL 加えた。このプレートは封をし、-80 ℃で測定まで冷凍保存した。
<酵素活性の測定>
フォスファターゼの基質として、p-ニトロフェニルリン酸二ナトリウム(Disodium p-Nitrophenylphosphate Hexahydrate: pNPP, 和光純薬工業株式会社製) を用いた。pNPP はフォスファターゼによる分解を受けてp-ニトロフェノール(p-Nitrophenol:pNP) を生じ、アルカリ性の条件下で405 nm の吸光波長を呈する。冷凍したサンプルを室温で解凍し、20 mM pNPP を添加したALP buffer またはTRAP buffer をそれぞれ100 μL ずつ添加した。振盪機に載せ、軽く揺らしながら30 分間反応させた。反応後、3N NaOH (和光純薬工業株式会社製) を50 μL ずつ各ウェルに加え、反応を停止させた。この反応液を、ピペッテイングにより撹拌したのち、100 μL ずつ新しい96 穴プレートの対応する位置に移した。このプレートを吸収波長405 nmのプレートリーダーで測定し、あらかじめ既知濃度のpNP 溶液で作成した標準曲線を用いて濃度を算出した。
<ウロコの面積の測定>
キンギョのウロコのALP とTRAP の酵素活性はウロコの面積に比例することが知られている。そこで、これを利用して、単位時間単位面積当たりのウロコの酵素活性を算出し比較した。吸光度測定後、残った反応液を除きPBS 100 μL でウロコを洗浄し、メチレンブルーを100 μL ずつ加えて10分間以上置き染色した。染色したウロコをスキャナーにて画像データとして取り込み、画像解析ソフトImage Jにて面積を測定した。
<単位時間単位面積あたりの酵素活性の算出と統計処理>
測定したpNP 濃度を、ウロコ一枚あたりの面積、及び反応時間で除し、単位時間単位面積あたりの酵素活性(μM/ h/ mm2) を算出した。対照群と実験群の間で対応のある両側t 検定(paired t-test) を行った。その結果であるp 値について、p < 0.05 を統計的有意水準、p < 0.10 を統計的有意傾向とした。
<結果>
SSW またはDOW を添加したL-15 培地で、10 日間、14 日間の期間再生させたウロコを24 時間培養し、そのALP とTRAP の活性を測定した結果、DOW を添加した培地で培養したALP の活性は上昇傾向を示したが、TRAPの活性は変化しなかった(図8及び9)。また、SSW またはDOW を添加したL-15 培地で、10 日間の期間再生させたウロコを6、12及び24 時間培養し、そのALPの活性を測定した結果、24 時間培養でDOW 含有培地で培養したウロコのALP の活性が上昇する傾向にあった(図10)。さらに、キヌレニンを10-4M または10-6M、SSW またはDOW を添加したL-15 培地と、10 日間の期間再生させたウロコを24 時間培養し、そのALP とTRAP の活性を測定した結果、キヌレニン無添加の培地を1とした時に、キヌレニンを添加したウロコのALP活性の値を算出して比較すると、キヌレニン添加によりALP活性が上昇した。さらにSSWを1とした時に、DOW を添加した培地で培養したウロコのALP の活性を算出して比較するとDOWを添加するとALP活性が有意に上昇した(図11)。
キンギョのウロコ上の骨芽細胞、破骨細胞の酵素活性の結果(図8~9)と同様に、飼育人工海水中にキヌレニンを添加して飼育したヒラメでは、無添加人工海水で飼育したヒラメと比較して血中コルチゾル濃度が低い傾向にあった(p = 0.09)(図7A)。このことから、キヌレニン添加によって水槽飼育によるストレスが軽減されることが示唆された。これは、DOW 飼育による効果と同様の結果であり、DOW 飼育による効果がキヌレニンによるものであることが示唆された。
キンギョのウロコ上の骨芽細胞の酵素活性の結果を示す図10~11から明らかな通り、DOW 及びキヌレニンに、キンギョのウロコ上のアルカリフォスファターゼ(Alkaline Phosphatase: ALP) 活性を増進する作用があることが示唆された。骨芽細胞のマーカー酵素であるALP は、骨芽細胞周辺で二リン酸をモノリン酸に代謝する。二リン酸は歯や骨の主成分であるヒドロキシアパタイト結晶生成の阻害剤として知られており、ALP はこの二リン酸を代謝しヒドロキシアパタイトの材料として骨石灰化に利用できる形に変換していることが知られている。この実施例の結果より、ALP 活性が、DOW 及びキヌレニン添加培地において、24 時間培養により上昇する傾向にあった。このことは、DOW が骨芽細胞の機能を亢進したことを示している。
(実施例10)
次に、実施例10で、前記化学式(I)で表わされるインドール類(表2及び3の化合物[1]~[18])について、特開2006-104152号公報や国際公開公報WO20007/010723号パンフレットやM. Somei, et al., Heterocycles, 36, p1859-1866 (1993)やM. Somei, et al., Heterocycles, 53, p1725-1736 (2000)やM. Somei, et al., Advances in Heterocyclic Chemistry, Vol. 82, ed. by A. R. Katritzky, Elsevier Science (USA), 2002, p101-155の文献に記載の方法に準じて又は常法により合成し、そのインドール類について、アルカリホスファターゼ(ALP)活性を測定した。化合物[1]~[5]は、Heterocycles, 53, p1725-1736 (2000)に記載のものである。化合物[17]はAdvances in Heterocyclic Chemistry, Vol. 82, 2002, p101-155に記載のものである。その他の化合物の代表例として化合物[6]~[8]、[12]の合成例を具体的に示す。なお、それ以外の化合物も同様に前記文献に記載の方法及び常法に準じて合成したものである。
<化合物[6]の合成>
Figure 0007093961000005
30.2mg(0.064mmol)の2,4,6-トリブロモメラトニン(N-アセチル-2,4,6-トリブロモ-5-メトキシインドール-3-エタナミン)(M. Somei, et al., Heterocycles, 53, p1725-1736 (2000))を2.0mLのDMFに溶解した溶液に、31.1mg(0.22mmol)の炭酸カリウムを加えて室温下5分間撹拌した。この溶液に、0.11mL(1.28mmol)のアリルブロミドを加えて室温下1.5時間撹拌した。反応液に水及び酢酸エチルエステル-メタノール(95:5,v/v)混合溶媒を加えて撹拌後、有機相を分離した。水相を更に酢酸エチルエステル-メタノール(95:5,v/v)混合溶媒で3回抽出した。有機相と抽出液を合し、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去して黄色油状物を得た。シリカゲルを担体とし、酢酸エチルエステルを溶出溶媒とするカラムクロマトグラフィーで精製すると31.0mg(95%)の収率で目的物の2,4,6-トリフ゛ロモメラトニンから1-アリル-2,4,6-トリブロモメラトニン(N-アセチル-1-アリル-2,4,6-トリブロモ-5-メトキシインドール-3-エタナミン)(化合物[6])が得られた。酢酸エチルエステル-ヘキサンから再結晶して、無色の針状晶を得た。
mp 142-143℃.
IR (KBr): 3284, 1633, 1562, 1456, 1412, 1298, 1018 cm-1.
1H-NMR (CDCl3)δ: 1.93 (3H, s), 3.24 (2H, t, J=6.6 Hz), 3.58 (2H, q, J=6.6 Hz), 3.89 (3H, s), 4.76 (2H, dt, J=4.9, 1.7 Hz), 4.89 (1H, d, J=16.6 Hz), 5.20 (1H, d, J=10.3 Hz), 5.55 (1H, br t, 重水添加により消失), 5.87 (1H, ddt, J=16.6, 10.3, 4.9 Hz), 7.4 (1H, s).
Anal. Calcd for C16H17Br3N2O2: C, 37.75; H, 3.37; N, 5.50. Found: C, 37.75; H, 3.37; N, 5.42.
<化合物[7]の合成>
Figure 0007093961000006
30.1mg(0.064mmol)の2,4,6-トリブロモメラトニン(N-アセチル-2,4,6-トリブロモ-5-メトキシインドール-3-エタナミン)を2.0mLのDMFに溶解した溶液に、31.9mg(0.22mmol)の炭酸カリウムを加えて室温下5分間撹拌した。この溶液に、0.09mL(1.28mmol)のプロパルギルクロリドを加えて室温下4時間撹拌した。反応液に水及び酢酸エチルエステル-メタノール(95:5,v/v)混合溶媒を加えて撹拌後、有機相を分離した。水相を更に酢酸エチルエステル-メタノール(95:5,v/v)混合溶媒で3回抽出した。有機相と抽出液を合し、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去して黄色油状物を得た。シリカゲルを担体とし、酢酸エチルエステルを溶出溶媒とするカラムクロマトグラフィーで精製すると31.6mg(97%)の収率で目的物2,4,6-トリブロモ-1-プロパルギルメラトニン(N-アセチル-2,4,6-トリブロモ-5-メトキシ-1-プロパルギルインドール-3-エタナミン)(化合物[7])が得られた。酢酸エチルエステル-ヘキサンから再結晶して、無色の針状晶を得た。
mp 199-200℃.
IR (KBr): 3286, 1628, 1558, 1456, 1435, 1410, 1294, 1018 cm-1.
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.93 (3H, s), 2.34 (1H, t, J = 2.4 Hz), 3.23 (2H, t, J = 6.6 Hz), 3.58 (2H, dt, J = 2.9, 6.6 Hz, 重水添加によりt, J = 6.6 Hz に変化), 3.89 (3H, s), 4.91 (2H, d, J = 2.4 Hz), 5.54 (1H, br t, J = 6.6 Hz, 重水添加により消失), 7.58 (1H, s).
Anal. Calcd for C16H15Br3N2O2: C, 37.90; H, 2.98; N, 5.53. Found: C, 37.78; H, 3.00; N, 5.44.
<化合物[8]の合成>
Figure 0007093961000007
40.1mg(0.086mmol)の2,4,6-トリブロモメラトニン(N-アセチル-2,4,6-トリブロモ-5-メトキシインドール-3-エタナミン)を2.0mLのDMFに溶解した溶液に、41.4mg(0.30mmol)の炭酸カリウムを加えて室温下5分間撹拌した。この溶液に、0.20mL(1.72mmol)のベンジルブロミドを加えて室温下1時間撹拌した。反応液に水及び酢酸エチルエステル-メタノール(95:5,v/v)混合溶媒を加えて撹拌後、有機相を分離した。水相を更に酢酸エチルエステル-メタノール(95:5,v/v)混合溶媒で3回抽出した。有機相と抽出液を合し、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去して黄色油状物を得た。シリカゲルを担体とし、酢酸エチルエステルを溶出溶媒とするカラムクロマトグラフィーで精製すると40.3mg(83%)の収率で目的物1-ベンジル-2,4,6-トリブロモメラトニン(N-アセチル-1-ベンジル-2,4,6-トリブロモ-5-メトキシインドール-3-エタナミン)(化合物[8])が得られた。酢酸エチルエステル-ヘキサンから再結晶して、無色の針状晶を得た。
mp 218-219℃.
IR (KBr): 3280, 1630, 1547, 1454, 1414, 1360, 1298, 1014 cm-1.
1H-NMR (CDCl3)δ: 1.91 (3H, s), 3.26 (2H, t, J=6.6 Hz), 3.61 (2H, td, J=12.7, 6.6 Hz), 3.88 (3H, s), 5.36 (2H, s), 5.54 (1H, br t, J=6.6 Hz, 重水添加により消失), 7.01 (2H, d, J=6.6 Hz), 7.27-7.33 (3H, m), 7.39 (1H, s).
Anal. Calcd for C20H19Br3N2O2: C, 42.97; H, 3.43; N, 5.01. Found: C, 42.76; H, 3.40; N, 4.86.
<化合物[12]の合成>
Figure 0007093961000008
フェニルイソシアネート(0.9 mL, 8.28 mmol) を無水テトラヒドロフラン (1 mL) に溶かして、1,8-ジメチル-1,2,3,3a,8,8a-ヘキサヒドロピロロ [2,3-b]インドール-5-オール・ボランコンプレックス (94.1 mg, 0.43 mmol) を無水テトラヒドロフラン (9 mL) に溶かした溶液に、氷冷撹拌下加えた後、全体を65°Cで1.5時間撹拌した。減圧下に溶媒を留去して得られた固形物を、クロロホルムを溶出溶液として、シリカゲルカラムクロマトグラフィを行い、溶出順にN-フェニル-N’-メチル-N’-[5-(N-フェニルカルバモイル)オキシ-1-メチルインドール-3-イル]-エチルウレア(化合物[12])(76.1 mg, 40%) およびN-フェニル-N’-[5-ヒドロキシ-1-メチルインドール-3-イル]-エチル-N’-メチルウレア (70.5 mg, 51%) を得た。
なおフェニルイソシアネート(0.07 mL, 0.64 mmol) を無水テトラヒドロフラン(1 mL) に溶かして、N-フェニル-N’-[5-ヒドロキシ-1-メチルインドール-3-イル]-エチル-N’-メチルウレア(10.0 mg, 0.03 mmol) を無水テトラヒドロフラン(1 mL) に溶かした溶液に加え、5時間還流撹拌した。減圧下に溶媒を留去し、得られた固形物を、酢酸エチルエステル-ヘキサン(1:1, v/v)混合溶媒を溶出溶液として、シリカゲルカラムクロマトグラフィを行い、N-フェニル-N’-メチル-N’-[5-(N-フェニルカルバモイル)オキシ-1-メチルインドール-3-イル]-エチルウレア(化合物[12])(12.6 mg, 92%)を得た。クロロホルム-メタノールから再結晶して無色プリズム晶を得た。
mp 182-184℃.
IR (KBr): 3375, 1710, 1645, 1526, 1484, 1443, 1227, 746 cm-1.
1H-NMR (DMSO-d6)δ: 2.89 (2H, t, J=7.6 Hz), 2.98 (3H, s), 3.55 (2H, t, J=7.6 Hz), 3.74 (3H, s), 6.90 (1H, t, J=7.3 Hz), 6.98 (1H, dd, J=8.5, 2.2 Hz), 7.03 (1H, t, J=7.3 Hz), 7.19 (2H, t, J=7.5 Hz), 7.22 (1H, s), 7.31 (2H, t, J=7.5Hz), 7.38-7.44 (4H, m), 7.52 (2H, d, J=8.3 Hz), 8.16 (1H, s), 10.12 (1H, s, 重水添加により消失). High-resolution MS (FAB+) m/z: Calcd for C26H27N4O3: 443.2083. Found: 443.2044.
Anal. Calcd for C26H26N4O3・1/4H2O: C, 69.86; H, 5.98; N, 12.53. Found: C, 69.83; H, 5.92; N, 12.43.
<骨芽細胞の受ける影響:アルカリホスファターゼ(ALP)活性測定>
キンギョのメス(体重30g前後)をMS222(3-アミノ安息香酸エチルエステルメタンスルホン酸塩(ethyl 3-aminobenzoate, methane sulfonic acid salt))(Aldrich社製)で麻酔し、ウロコを所要枚数剥離した。そのウロコを1%の抗生物質(ペニシリン-ストレプトマイシン混合物)を含むイーグルスの最少培地(大日本製薬株式会社製)で2度洗浄した。同様の培地を24穴のプレートにそれぞれ1mlずつ入れ、前記ウロコを複数枚ずつ(通常8枚)それぞれ入れるとともに、各穴に10-8、10-6、10-4Mのインドール類をそれぞれ添加した。次いで、これらを15℃で6時間培養した。なお、インドール類無添加の群(コントロール)も作成し、骨細胞に対する作用を比較した。コントロール、10-8、10-6、10-4Mのインドール類(それぞれ2穴)の合計8穴作成した。したがって、24穴のプレートでは3種類のインドール類を調べることができる。
培養後、培地を取り除き、10%ホルマリンの入った0.05Mカコジル酸緩衝液(pH7.4)を加え、固定した。このウロコは、酵素活性の測定まで、0.05Mカコジル酸緩衝液中に4℃で保管した。
前記固定処理を施したウロコを取り出し、ウロコの重量を測定した。測定後、ウロコを96穴のマイクロプレートに入れ、それぞれの穴に10mMパラニトロフェノールリン酸(基質)、1mM塩化マグネシウム及び0.1mM塩化亜鉛の入った100mMトリス-塩酸緩衝液(pH9.5)を200μl加えて25℃で1時間反応させ、2N水酸化ナトリウム水溶液(50μl)を加えて反応を止めた。その後、反応終了液150μlを別のマイクロプレートに移し、ALPにより生じたpNPの量を分光光度計(405nm)により測定し、活性を求めた。
t-検定(student's t-test)によるp値について、p <0.05 を統計学的有意水準として**を付し、p < 0.10 を統計学的有意傾向とし、*を付した。
その結果を、下記表2~3に示す。
表2~3に示すように、前記化学式(I)で示される化合物[1]~[18]は、キヌレニンやインドール酢酸と同様に、ALP活性があった。
Figure 0007093961000009
Figure 0007093961000010
実施例1~10、及び表2及び3から明らかな通り、本発明を適用するストレス低減薬剤として、キヌレニンやインドール-3-酢酸を含有する海洋深層水や人工海水、前記化学式(I)で表わされるインドール類、それの薬学的に許容される塩、及び/又はそれの代謝物は、コルチゾルを低下させ、カルシトニンを上昇させ、カルシウムを低下させ、骨芽細胞を活性化させることができる。魚介類での実施例であるが、作用機序が似ているので、両生類、鳥類、非ヒト哺乳類のような家畜や食用動物やペット等の各種動物の飼育の際にストレスが低減されて、健康に長期間生存させることができる。
本発明のストレス低減薬剤、例えばキヌレニンを含む海洋深層水が魚類生理に与える影響について、作用機序を推定すると以下の通りである。腸で吸収されたキヌレニンがトリプトファンの代わりにキヌレニン経路の初発物質として消費されることで間接的にセロトニン合成の基質を増やすとともに、海洋深層水中に存在するキヌレニンに魚類のウロコ上の骨芽細胞からカルシトニンが放出されることで、慢性ストレスを軽減する。魚類以外の動物についても、同様な作用機序により、ストレスを低減するものと考えられる。
従って、このストレス低減薬剤によれば、漁場を採取した活魚を、水槽中でストレス低減薬剤を含有した飼育水により飼育して、ストレスがかからないので元気なまま長生きして鮮度を保ち高品質のまま、小売店・飲食店・消費者に届けることができる。また、各種動物の飼育の際に、ストレスがかからないので、健康なまま飼育できる。また、食用家畜の味を向上させたり品質を向上させたりすると共に、家畜を安全に飼育することができる。
このストレス低減薬剤は、社会上ストレスがかかるヒトに対して使用し、ストレスを低減して健康な状態を維持し、医療費削減に資することができる。
また、このストレス低減薬剤は、特段の外観上若しくは生理学上又は病理学上の異常は認められず、安全である。
本発明のストレス低減薬剤は、ヒトのストレスを低減する予防や治療をするのに有用であり、また魚介類、両生類、鳥類、非ヒト哺乳類のような家畜や食用動物やペット等の各種動物のストレスを低減する予防や治療をしながら飼育したり活魚輸送したりするのに有用である。

Claims (4)

  1. キヌレニンと、インドール酢酸とから選ばれる少なくとも何れかを、ストレス低減化成分として、海洋深層水と共に含有することを特徴とする魚介類のストレス低減薬剤。
  2. 前記魚介類の治療用、予防用、及び/は飼育用であることを特徴とする請求項に記載のストレス低減薬剤。
  3. 血中及び/又は尿中で、コルチゾルを低下させ、カルシトニンを上昇させ、カルシウムを低下させ、及び/又は骨芽細胞を活性化させることを特徴とする請求項1~の何れかに記載のストレス低減薬剤。
  4. 海洋深層水が、能登海洋深層水であることを特徴とする請求項1~の何れかに記載のストレス低減薬剤。
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