以下、本発明の第1実施形態について、図1~図8を参照しつつ説明する。本実施形態に係る床材は、敷設対象としての床に敷設するものであり、熱可塑性樹脂製である。床材としては、タイルカーペット、樹脂製床タイルなどが挙げられる。床材は、図1に示すように、四角形状を有する。また、床材1は、模様が表れている模様層10を備える。
床材1の四つの角部20は、互いに対向する第一角部21及び第二角部22と、第一角部21及び第二角部22と異なり且つ互いに対向する第三角部23及び第四角部24と、を有する。第一角部21の角度θ1、第二角部22の角度θ2、第三角部23の角度θ3、及び、第四角部24の角度θ4は、以下の数式を満たす。
θ1=90°
θ2=90°
45°<θ3<90°
θ4=180°-θ3
このように、第三角部23の角度θ3は鋭角であり、第四角部24の角度θ4は鈍角である。第三角部23の角度θ3は、例えば、60°であり、第四角部24の角度θ4は例えば、120°である。また、対向する第一角部21の角度θ1及び第二角部22の角度θ2がいずれも直角であると共に、対向する第三角部23の角度θ3及び第四角部24の角度θ4の和が180°であるため、床材1の四つの頂点はいずれも、第三角部23と第四角部24とを結ぶ対角線を直径とする同一の仮想円上に位置する。
本実施形態の床材1では、第一角部21、第四角部24、第二角部22、及び、第三角部23が順に反時計回りに並んでいる。尚、床材1において、第一角部21、第四角部24、第二角部22、及び、第三角部23が順に時計回りに並んでいてもよい。このように、床材1は、図1に示す床材と鏡像関係の形状であってもよい。床材1は、鏡像関係の2種類の形状を含むことによって、床面に敷設する際、より多様な外観を表現することができる。
また、本実施形態の床材1は、例えば、長尺状のカーペット生機を準備する工程、長尺状のカーペット生機にポリ塩化ビニル(PVC)などの樹脂による裏打加工を行なうバッキング工程、正方形状などの所定形状に裁断する矩形裁断工程を経て、一枚のカーペット単位片が形成される。例えば、このカーペット単位片は、900mm×900mmの正方形状や1000mm×1000mmの正方形状である。続いて、このカーペット単位片を打ち抜き刃によって図1に示す形状に打ち抜く異形裁断工程によって形成される。このように、長尺状のカーペット原反から正方形状のカーペット単位片を切り出し、それを打ち抜いて床材1を形成することにより、歩留まり良く床材1を製造することができる。
また、前記の矩形裁断工程と異形裁断工程とを同時に行ってもよく、矩形と異形を併せた裁断刃を用いることによって一回の工程で裁断することができる。これによって、短時間でより精度良く打ち抜くことができる。
さらに、本実施形態の床材1は、例えば、図2に示すように、バッキング層41と、バッキング層41上に設けられた基布42と、基布42に対してタフトされた糸によって形成されたパイル43と、を備えるタイルカーペットである。尚、バッキング層41、基布42、及び、パイル43は、いずれも、熱可塑性樹脂を主成分としている。バッキング層41は、ガラス繊維などの補強層、炭酸カルシウムなどの充填剤、可塑剤、安定剤などを含んでいてもよい。
パイル43は、基布42から上方に延び、基布42の表面に露出した部位によって床材1の表面を構成している(図2参照)。また、パイル43は、床材1の表面の模様(色柄)を表す。たとえば、パイル43は、異なる種類の原料糸を引きそろえて撚り合わせた交撚糸や、2色以上のマルチフィラメントを撚糸によることなく収束させた混繊糸などによって形成することができる。さらに、パイル43は、基布42上でステッチ方向に並ぶことによりパイル列40を構成する。
パイル列40は、ステッチ方向に対して直交する方向、即ち、ゲージ方向に隣り合うように複数形成され、床材1の表面の略全域に亘って形成されている。パイル列40は、床材1の表面に、直線状に形成された複数の筋として表れている。このように、パイル列40は、ゲージ方向に並んで複数形成されることで、床材1の表面にストライプ状の柄を表している。
本実施形態の床材1では、隣り合うパイル列40の色彩は同じである。具体的に、各パイル列40が同じ色彩であり且つ高さH1が等しいパイル43で形成されることにより、パイル列40の色彩はすべて同じとなっている。尚、色彩とは、色相、彩度、及び、明度からなる概念であり、本明細書においては、金属色、蛍光色、及び、構造色なども含む概念である。また、色彩が同じであるとは、色の違いを人が視認できない程度であることをいう。
模様層10の模様は、無地、方向性を有する模様、ランダムな模様、及び、表面の凹凸模様等を含む。本実施形態の床材1において、パイル列40が床材1の表面の模様を表しているため、パイル列40が模様層10を構成する。パイル列40を形成するパイル43は、ループパイルでもカットパイルでもよいが、模様層10にパイル列40による筋状の模様を形成するには、パイル列がより明確に視認できるループパイルのほうが好ましい。また、本実施形態の床材1では、上述のようにパイル列40の色彩はすべて同じであるため、模様層10は均一な色であり(床材1におけるどの箇所でも色彩が同一であり)且つストライプ状の模様を有する。
本実施形態の床材1が樹脂製床タイルの場合、23℃における剛性度は、1000~1600kgf/cm2(6°)であり、好ましくは、1300~1500kgf/cm2(6°)である。5℃における剛性度は、3500~4500kgf/cm2(6°)であり、好ましくは、3800~4200kgf/cm2(6°)である。なお、本明細書における剛性度とは、JISK7106に準拠して測定した硬さの指標となる値をいう。
床材1の剛性度を前記範囲内に設定することによって、第三角部23が鋭角であっても、欠けや変形することのない十分な強度を有することとなる。また、5℃~23℃の温度範囲でほとんどの季節、及び地域の内装材の施工現場の温度条件を網羅することができるため、床材1を内装材として施工する場合には、季節及び地域による温度変化にかかわらず、不陸に追従させて施工することができる。すなわち、床材1を内装材として施工する場合、表面が凹凸な床に対しても床の形状に沿った状態で床材1を施工することができる。
[剛性度試験]
以下、床材1の剛性度測定試験について説明する。この試験は、片持ちばりによるプラスチックの曲げこわさ試験方法(JISK7106)に準じて行った。尚、温度条件、及び湿度条件は各々温度:23±3℃、湿度:50±5%、温度:5℃±3℃、湿度:50±5%、である。
試験片は、東リ株式会社製の商品名「ロイヤルストーン(品番:PST1354)」を、横2.5cm×縦10cmに裁断して用いた。なお、ロイヤルストーンの縦方向(例えば、製造工程において製造ラインの流れる方向)と横方向(例えば、製造ラインの流れる方向と直交する方向)のそれぞれの試験片を作成した。
具体的に、各試験片について、安田精機製作所製「No.118 オルゼン形剛性度試験機(重荷重式)」を用いて、3回ずつ測定を行い、この3回の測定値の平均値を算出し、算出された平均値の少数第一位を四捨五入した値を剛性度として求めた。なお、測定条件は、支点間距離4cm、読取角度6°とした。
以上の床材1を複数並べることで構成される敷設構造の例について、図3~図8を用いて説明する。
敷設構造2は、複数の床材で構成される床材セットや、複数の床材により構成される。図3~図5では、床材セット3は、正方形状であり、4つの床材1から構成されている。具体的に、敷設構造2は、複数の床材が端縁同士を接触させて敷設されることにより構成される。また、敷設構造2は、同一の床材セットや、異なる床材セットや、複数の床材や、床材セットと床材(本実施形態の床材、及び正方形状等の他の形状の床材)との組み合わせ等を含む。本実施形態の敷設構造2は、図3~図5に示すように、複数の床材1で構成された床材セット3を複数含む。敷設構造2では、複数の床材セット3が、田の字状に配置されている。田の字状の配置とは、床材セット3が正方形状である場合に、複数の床材セット3の上下左右の辺が縦横に直線状に連続するような配置をいう。また、敷設構造2では、複数の床材セット3が、田の字状の配置から縦方向や横方向にずれた配置や、その他規則的な配置や、ランダムな並び方で配置されていてもよい。
敷設構造2に含まれる床材セット3は、正方形状を含む矩形状、平行四辺形状、菱形状等の形状であると共に、複数の床材1により構成される。敷設構造2では、床材セット3は、同じ模様を有する複数の床材1や、異なる模様を有する複数の床材1を含む。
本実施形態の敷設構造2では、床材セット3は、正方形状であると共に、それぞれの第二角部22が一カ所に位置するように四つの床材1が並べられて構成されている。この床材セット3の一辺は、例えば、900mmや1000mmである。また、床材セット3は、二種類の模様を有する床材1、例えば、第一の模様を有する第一床材1Aと、第一の模様とは異なる第二の模様を有する第二床材1Bとを含む。具体的に、この床材セット3は、二つの第一床材1Aと二つの第二床材1Bとで構成されている。第一床材1A及び第二床材1Bは、例えば、それぞれ色彩が異なると共に同じ方向において延びるパイル列40で構成される模様層10を含む。
図3の敷設構造2では、同一の床材セット3が、田の字状に並ぶように配置されている。この敷設構造2では、いずれの床材セット3も同じ姿勢で配置されている。また、この床材セット3において、対向する二つの床材1が同一の模様を有する。具体的に、この床材セット3において、二つの第一床材1Aが横方向において第二角部22を接して対向すると共に、二つの第二床材1Bが縦方向において第二角部22を接して対向している。また、この床材セット3は、中心点(第二角部22の頂点)を通過する2本の直交する直線によって、二つの第一床材1Aと、二つの第二床材1Bとが形成される。
図4の敷設構造2では、床材セット3が田の字状の配置から、横方向においてずれて並ぶように配置されている。この敷設構造2では、横方向において隣り合う床材セット3が90°回転した状態で配置されている。また、横方向において一つの床材セット3を挟む二つの床材セット3が同一の姿勢で配置されている。この敷設構造2の床材セット3において、床材1は、隣り合う床材1のうち一方の床材1と同一の模様を有すると共に、他方の床材1と異なる模様を有する。
図5の敷設構造2では、床材セット3が田の字状の配置から、縦方向においてずれて並ぶように配置されている。この敷設構造2では、いずれの床材セット3も同じ姿勢で配置されている。この敷設構造2の床材セット3においても、床材1は、隣り合う床材1のうち一方の床材1と同一の模様を有すると共に、他方の床材1と異なる模様を有する。
図6~図8に示すように、床材1は、三種類の模様を有する床材1、例えば、第一の模様を有する第一床材1Aと、第一の模様とは異なる第二の模様を有する第二床材1Bと、第一の模様及び第二の模様のいずれとも異なる第三の模様を有する第三床材1Cとを含む。第一床材1A、第二床材1B、及び第三床材1Cは、例えば、それぞれ色彩が異なると共に同じ方向において延びるパイル列40で構成される模様層10を含む。敷設構造2は、それぞれの第二角部22が一カ所に位置するように四つの床材1が並べられた正方形状の床材セット3を含む。この床材セット3は、一つの第一床材1Aと二つの第二床材1Bと一つの第三床材1Cとで構成されている。
図6の敷設構造2では、同じ柄の床材セット3が田の字状に並ぶように配置されている。この敷設構造2では、横方向に隣り合う床材セット3、及び、縦方向に隣り合う床材セット3のいずれも、床材セット3の中心点(第二角部22の頂点)を中心として180°回転させた姿勢で配置されている。この敷設構造2における床材セット3において、二つの第二床材1Bが対向すると共に、一つの第一床材1Aと一つの第三床材1Cとが対向している。
図7の敷設構造2では、床材セット3が田の字状の配置から、横方向においてずれて並ぶように配置されている。この敷設構造2では、いずれの床材セット3も同じ姿勢で配置されている。この敷設構造2の床材セット3において、第一床材1Aと第二床材1Bとが対向すると共に、第三床材1Cと第二床材1Bとが対向している。
図8の敷設構造2では、床材セット3が田の字状の配置から、縦方向においてずれて並ぶように配置されている。この敷設構造2では、縦方向において並ぶ床材セット3がいずれも同じ姿勢で配置されている。また、この敷設構造2では、横方向に隣り合う床材セット3が、180°回転させた姿勢で配置されている。この敷設構造2の床材セット3において、二つの第二床材1Bが対向すると共に、一つの第一床材1Aと一つの第三床材1Cとが対向している。
以上の床材1によれば、複数の床材1を並べる際に四つの角部20(第一角部21、第二角部22、第三角部23、及び、第四角部24)の角度θ1~θ4を利用することで様々な並べ方が可能であり、模様層10の模様も様々に異ならせることができるため、多様な外観を表現できる。
また、本実施形態の床材1では、床材1の剛性度を前記範囲内、具体的には、床材1の23℃における剛性度を1000~1600kgf/cm2(6°)に設定し、床材1の5℃における剛性度を3500~4500kgf/cm2(6°)に設定することによって、第三角部23が鋭角であっても、欠けや変形することのない十分な強度を有することとなる。また、5℃~23℃の温度範囲でほとんどの季節、及び地域の内装材の施工現場の温度条件を網羅することができるため、床材1を内装材として施工する場合には、季節及び地域による温度変化にかかわらず、不陸に追従させて施工することができる。
さらに、本実施形態の床材1は、長尺状のカーペットから正方形状のカーペット単位片を切り出し、それを打ち抜いて床材1を形成することにより、単純な工程で、且つ、歩留まり良く床材1を製造することができる。また、長尺状のカーペットから一回の工程で複数の床材(例えば、4つの床材)を同時に打ち抜いて床材1を製造してもよい。このように、複数の床材を同時に打ち抜くことで、より効率良く床材1を製造することができる。
また、本実施形態の床材1で構成される床材セット3は、900mm×900mmの正方形状や1000mm×1000mmの正方形状であるため、一般的な450mm×450mmの正方形状や500mm×500mmの正方形状の床材と組み合わせて配置することで、床材1と正方形状の床材とを床に敷設する際の敷設パターンが多様なものとなる。
第1実施形態に係る床材1についての説明は以上である。続いて、本発明の第2実施形態に係る床材セット3について、図9~図15を参照しつつ説明する。尚、第1実施形態と共通する構成については、同じ符号を付し、説明は繰り返さない。
第2実施形態に係る床材セット3は、複数の床材1で構成され、例えば、図9に示すように、四つの床材1で構成される。本実施形態の床材1は、模様(柄)の方向性が異なる床材を含む。具体的に、床材1は、2種類の床材として、筋状交差床材1Dと筋状平行床材1Eとを含む。筋状交差床材1Dは、模様層10の模様が四つの辺30のうちで最も長い最長辺31に交差する方向の方向性を有する模様を有する。筋状平行床材1Eは、模様層10の模様が最長辺31に平行な方向の方向性を有する模様を有する。本実施形態の床材セット3では、筋状交差床材1Dの筋状の模様と筋状平行床材1Eの筋状の模様とが繋がるように、筋状交差床材1Dと筋状平行床材1Eとが接続されている。
筋状交差床材1Dの模様層10は、パイル列40を含んで構成されている。このパイル列40は、例えば、最長辺31に交差する方向、図9に示す例では、直交する方向に延びている。筋状平行床材1Eの模様層10は、例えば、最長辺31に平行な方向において延びるパイル列40で構成されている。この模様層10の筋状の模様は、上述のように、均一な色であり且つストライプ状の模様である。尚、この均一な色とは、床材1におけるどの箇所においても、当該模様をなす領域の色彩がほぼ同一と見て取れることをいう。また、この模様は、直線的なストライプ柄、或いは、曲がった筋状の模様(うねり模様)である。直線的なストライプ柄は、例えば、ストレートタフトにより形成される直線状のパイル列40により構成される。曲がった筋状の模様は、ニードルシフトによって若干蛇行するように形成されるパイル列40により構成される。尚、パイル列40は、ストレートタフトやニードルシフトを併用することにより形成されてもよい。
本実施形態の床材セット3は、筋状交差床材1D或いは筋状平行床材1Eのみで構成されてもよい。例えば、図10に示すように、床材セット3は、筋状平行床材1Eのみで構成される場合、隣り合う床材1と並ぶ床材1の端縁で交差する筋状の柄を有してもよい。換言すると、この床材セット3は、隣り合う床材1同士の筋状の柄が屈曲するようにして繋がる柄(屈曲柄)を有する。
以上の正方形状の床材セット3を複数並べることで構成される敷設構造の例について、図11~図13を用いて説明する。床材セット3は、筋状交差床材1D或いは筋状平行床材1Eのみで構成されている、又は、筋状交差床材1D及び筋状平行床材1Eにより構成されている。図11の敷設構造2では、床材セット3が田の字状に並ぶように配置されている。図12の敷設構造2では、床材セット3が田の字状の配置から横方向にずれて並ぶように配置されている。図13の敷設構造2では、床材セット3が田の字状の配置から縦方向にずれて並ぶように配置されている。
また、四枚の床材1で構成される平行四辺形状の床材セット3を複数並べることで構成される敷設構造の例について、図14を用いて説明する。この床材セット3も、筋状交差床材1D或いは筋状平行床材1Eのみで構成されている、又は、筋状交差床材1D及び筋状平行床材1Eにより構成されている。この敷設構造2では、各床材セット3の縦方向に対して傾斜して(斜めに)延びる辺が連続して一直線となるように、床材セット3が配置されている。この敷設構造2の床材セット3では、床材1の最長辺31が隣接する床材1の最長辺31、及び、別の隣接する床材1の最短辺32のいずれにも接触する。
さらに、二枚の床材1で構成される床材セット3を複数並べることで構成される敷設構造の例について、図15を用いて説明する。この床材セット3も、筋状交差床材1D或いは筋状平行床材1Eのみで構成されている、又は、筋状交差床材1D及び筋状平行床材1Eにより構成されている。この敷設構造2の床材セット3では、床材1の最長辺31の全体が隣接する床材1の最長辺31の全体と接触する(重なる)ように、床材1が配置されている。床材セット3が二つの筋状交差床材1D、或いは、二つの筋状平行床材1Eで構成される場合、床材セット3において筋状の模様が同じ方向に延びるように表れる。一方、床材セット3が、一つの筋状交差床材1Dと一つの筋状平行床材1Eとで構成される場合、筋状模様が交差するように表れる。
本実施形態の床材セット3では、複数の床材1、すなわち筋状交差床材1Dおよび筋状平行床材1Eを並べる際に、四つの角部20の角度θ1~θ4を利用することで筋状の模様の延びる方向を様々に異ならせた並べ方が可能であるため、例えば、屈曲柄を含む柄(模様)などの多様な幾何学的な外観を表現できる。
第2実施形態に係る床材セット3についての説明は以上である。続いて、本発明の第3実施形態に係る床材セット3について、図16~図19を参照しつつ説明する。尚、第1実施形態や第2実施形態と共通する構成については、同じ符号を付し、説明は繰り返さない。
第3実施形態に係る床材セット3は、図16に示すように、四つの床材1で構成される。床材セット3を構成する床材1は、床材1内において色が異なる模様、すなわち、色が変化する模様が表れている模様層10を備える。具体的に、この床材1は、一方から他方に向けて色が変化する模様が表れている模様層10を備える。色が変化する模様とは、例えば、色の色相、彩度、及び、明度のうち少なくとも一つが床材1の表面領域内の位置によって変化していることで模様として視認されるものをいう。より具体的に、この床材1は、床材1の表面領域の一方から他方へ向けて色の色相、彩度、及び、明度のうち少なくとも一つが変化していることによりグラデーションの模様が表れている模様層10を備える長辺大小床材1F、長辺小大床材1G、短辺大小床材1H、及び、短辺小大床材1Iを含む。
長辺大小床材1Fの模様層10の模様は、四つの辺30のうちで最も長い最長辺31に近いほど明度が大きく且つ第一角部21及び第二角部22のうち最長辺31以外の辺で形成される直角の角部(例えば、第二角部22)に近いほど明度が小さい模様である。長辺小大床材1Gの模様層10の模様は、最長辺31に近いほど明度が小さく且つ最長辺31以外の辺で形成される直角の角部(例えば、第二角部22)に近いほど明度が大きい模様である。短辺大小床材1Hの模様層10の模様は、四つの辺のうちで最も短い最短辺32に近いほど明度が大きく且つ第三角部23に近いほど明度が小さい模様である。短辺小大床材1Iの模様層10の模様は、最短辺32に近いほど明度が小さく且つ第三角部23に近いほど明度が大きい模様である。
本実施形態の床材1では、長辺大小床材1Fにおける模様層10のうち最長辺31を含む長辺部310の色は、短辺大小床材1Hにおける模様層10のうち最短辺32を含む短辺部320の色と同じである。また、長辺小大床材1Gにおける模様層10のうち長辺部310の色は、短辺小大床材1Iにおける模様層10のうち短辺部320の色と同じである。さらに、長辺大小床材1F、長辺小大床材1G、短辺大小床材1H、及び、短辺小大床材1Iのいずれにおいても模様層10のうち最長辺31以外の辺で形成される直角の角部(例えば、第二角部22)の色が同じである。
本実施形態の床材1では、模様層10は、グラデーション状の模様を有する。例えば、床材1では、図17に示すように、隣り合うパイル列40の色彩がステッチ方向(紙面の左右方向)に連続的に変化している。具体的には、パイル列40は、互いに色彩が異なる2種類のパイル43を含み、例えば、明度の高い第一パイル431、及び明度の低い第二パイル432を含んで構成される。図17において、左端では、第一パイル431が第二パイル432よりもパイル高さが高いので、第二パイル432が第一パイル431の下に隠れて、上方から人が視認した際、第一パイル431の面積が大きくなるので、明度の高い模様となる。右端では、その逆で、上方から人が視認した際、第二パイル432の面積が大きくなり、結果として、明度の低い模様となる。このように、第一パイル431と第二パイル432のパイル高さを段階的に変化させることによって、グラデーション状の模様となる。
具体的に、長辺大小床材1Fでは、最長辺31に最も近いパイル列40において、第一パイル431の高さH1が高く、第二パイル432の高さH2が低い。これにより、長辺大小床材1Fの最長辺31に最も近いパイル列40における色彩、すなわち、模様層10の最長辺31に最も近い部位における色彩は、明度が大きくなっている。長辺大小床材1Fでは、最長辺31から第二角部22に近づくほど、第一パイル431の高さH1がより低くなると共に、第二パイル432の高さH2がより高くなる。これにより、長辺大小床材1Fでは、最長辺31から第二角部22に近づくほど、明度が小さくなっている。
長辺小大床材1Gでは、最長辺31に最も近いパイル列40において、第一パイル431の高さH1が低く、第二パイル432の高さH2が高い。これにより、長辺小大床材1Gの最長辺31に最も近いパイル列40における色彩、すなわち、模様層10の最長辺31に最も近い部位における色彩は、明度が小さくなっている。長辺小大床材1Gでは、最長辺31から第二角部22に近づくほど、第一パイル431の高さH1がより高くなると共に、第二パイル432の高さH2がより低くなる。これにより、長辺小大床材1Gでは、最長辺31から第二角部22に近づくほど、明度が大きくなっている。
同様に、短辺大小床材1Hでは、最短辺32から第二角部22に近づくほど、第一パイル431の高さH1がより低くなると共に、第二パイル432の高さH2がより高くなることにより、最短辺32から第二角部22に近づくほど、明度が小さくなっている。また、短辺小大床材1Iでは、最短辺32から第二角部22に近づくほど、第一パイル431の高さH1がより高くなると共に、第二パイル432の高さH2がより低くなることにより、最短辺32から第二角部22に近づくほど、明度が大きくなっている。
さらに、長辺大小床材1F及び長辺小大床材1Gのいずれにおいても最長辺31以外の辺で形成される直角の角部(例えば、第二角部22)のパイル列40における第一パイル431の高さH1が同じであると共に第二パイル432の高さH2が同じである(図17参照)。同様に、短辺大小床材1H及び短辺小大床材1Iのいずれにおいても最長辺31以外の辺で形成される直角の角部(例えば、第二角部22)のパイル列40における第一パイル431の高さH1が同じであると共に第二パイル432の高さH2が同じであり、さらに、この高さが長辺大小床材1Fや長辺小大床材1Gの最長辺31以外の辺で形成される直角の角部(例えば、第二角部22)のパイル列40における第一パイル431の高さH1や第二パイル432の高さH2とそれぞれ同じである。以上により、長辺大小床材1F、長辺小大床材1G、短辺大小床材1H、及び、短辺小大床材1Iのいずれにおいてもこの直角の角部の色が同じである。
尚、長辺大小床材1Fにおける最長辺31を含む長辺部310のパイル列40の色彩は、短辺大小床材1Hにおける模様層10のうち最短辺32を含む短辺部320のパイル列40の色彩と同じである。また、長辺小大床材1Gにおける長辺部310のパイル列40の色彩は、短辺小大床材1Iにおける短辺部320のパイル列40の色彩と同じである。
以上の床材セット3を複数並べることで構成される敷設構造2の例について、図18、図19を用いて説明する。図18の敷設構造2では、四つの床材1で構成され且つ正方形状の床材セット3が田の字状に並ぶように配置されている。この敷設構造2では、床材セット3は、長辺大小床材1F、長辺小大床材1G、短辺大小床材1H、及び、短辺小大床材1Iのうち少なくとも一種類を複数(例えば、四つ)含んで構成されている。
図19の敷設構造2では、二つの床材1で構成され且つ最長辺31の全体が接触する(重なる)ように並んだ床材セット3が配置されている。この敷設構造2では、床材セット3は、長辺大小床材1F、長辺小大床材1G、短辺大小床材1H、及び、短辺小大床材1Iのうち少なくとも一種類を二つ含んで構成されている。
本実施形態の床材セット3では、複数の床材1を並べる際に、四つの角部20の角度θ1~θ4を利用することでグラデーション模様の並びを異ならせた様々な並べ方が可能であるため、多様な外観を表現できる。
また、本実施形態の床材セット3では、長辺大小床材1F、長辺小大床材1G、短辺大小床材1H、及び、短辺小大床材1Iを、全体として正方形状となるように並べた場合、図16に示すように、該正方形状全体において一辺からその対向する辺である他辺に向けて色が変化するグラデーション状の外観を表現できる。
尚、本発明の床材は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
例えば、模様層10は、均一な高さであり且つ色彩の異なるパイル列40で構成される筋状の模様を有していてもよい。また、この模様層10は、一部のパイル43の上部をカットすると共に、残りのパイル43のループを残すことで、上部がカットされたパイル列40とループ状に形成されたパイル列40とを混在させ、全体として筋状の模様を表現するものであってもよい。さらに、模様層10は、パイル43の色彩が同じである場合、一部のパイルの高さを他のパイルの高さよりも高くすることで、筋状の模様を表現するものであってもよい。模様層10は、高さが均一であって色彩の異なるパイル列40でグラデーション模様が構成される模様を有していてもよい。
上記実施形態の床材1は、タイルカーペットであったが、樹脂製床タイルであってもよい。樹脂製床タイルには、JISA5705で規定されるビニル系床材の床タイル、塩ビ被覆糸タイルなどのが含まれる。このビニル系床材の床タイルは、接着形と置敷き形とがあり、接着形としては、コンポジションビニル床タイル、単層ビニル床タイルおよび複層ビニル床タイルが挙げられ、置敷き形としては、置敷きビニル床タイルおよび薄型置敷きビニル床タイルが挙げられる。塩ビ被覆糸タイルとは、芯材に塩化ビニル樹脂を被覆した糸を用いて織物を作成し、この織物を表層材とした床タイルである。例えば、コンポジションビニル床タイルは、塩化ビニル樹脂、フィラー、可塑剤、安定剤等を含む樹脂配合物が均一に混合された樹脂組成物を、ロールの圧延で板状に延ばすカレンダー成形で連続的に形成される。単層ビニル床タイプのタイルは、例えば、塩化ビニル製の単一層(模様層10)のみで構成される。複層ビニル床タイプのタイルは、例えば、塩化ビニル製の層に、模様を印刷されたフィルムで形成される模様層10や透明の塩化ビニル製の層を重ねて形成される。これらタイルを構成する材料は、いずれも、熱可塑性樹脂である。
例えば、床材1は、コンポジションビニル床タイルである場合、樹脂組成物に含有されたチップが圧延方向に延ばされることで形成される。この床材1の表面には、流れ模様が表される。この床材1の模様層10は、樹脂組成物に含有されたチップで構成され、筋状の模様は圧延方向に延ばされたチップで構成される。
尚、床材1が、カーペットタイル以外である場合、床材1の各辺30を含む部位である外周部の上部は、面取りされていてもよい。この場合、複数の床材1を組み合わせて並べる際に隣接する床材1同士が当たる場合に、床材1の外周面が欠けたり曲がったりすることを防止できる。また、このような床材1を並べて構成される敷設構造2では、個々の床材1を目立たせたせることができる。
また、上記実施形態の床材1では、第三角部23の角度θ3は、例えば、60°であり、第四角部24の角度θ4は、例えば、120°であったが、角度θ3や角度θ4は、角度θ3が鋭角であると共に角度θ4が180°から角度θ3差し引いた角度であれば、別の角度であってもよい。
図20に示すように、角度θ3は、71.57°であり角度θ4が108.43°であってもよい。例えば、一辺の長さが300mm、600mmを含む床材1を形成した場合、4つの床材1で正方形状の床材セット3を形成することができ、床材セット3の一辺が900mmとなる。また、この床材1は、300mm×300mmの正方形状の床材と組み合わせることによって、図21(a)に示すように敷設することができる。また、この床材1は、600mm×600mmの正方形状の床材と組み合わせることによって、図21(b)に示すように敷設することができる。このように、様々なバリエーションの敷設構造を構築することができ、多様な外観を表現することができる。
また、図22(a)に示すように、角度θ3は63.43°であり角度θ4が116.57°であってもよい。例えば、一辺の長さが225mm、675mmを含む床材1を形成した場合、4つの床材1で正方形状の床材セット3を形成することができ、床材セット3の一辺が900mmとなる。また、この床材1は、450mm×450mmの正方形状の床材と組み合わせることによって、図22(b)に示すように敷設することができる。本発明の床材1は、一般的な450mm×450mmの正方形状の床材と組み合わせて、多様な外観の敷設構造にすることができる。
さらに、上記実施形態の床材1では、模様層10の模様は、筋状の模様やグラデーション模様であったが、ドット、マーク、その他の図柄の模様であってもよい。尚、模様層10の模様が異なるとは、柄が異なるに限らず、その色彩が異なること(例えば、無地であり且つ色が異なること)も含む。
また、上記第3実施形態の床材1は、一方から他方へ向けて明度が変化するグラデーションの模様が表れている模様層10を備えていたが、色の色相、彩度、及び、明度のうち少なくとも一つのパラメータ、即ち、色相のみが変化するグラデーションの模様や、彩度のみが変化するグラデーションの模様や、色相、彩度、及び、明度の組み合わせが変化するグラデーション模様が表れている模様層10を備えていてもよい。
上記第3実施形態の床材セット3は、一方から他方へ向けて色の色相、彩度、及び、明度のうち少なくとも一つが変化するグラデーションの模様が表れている模様層10を備える四つの床材1により構成されていたが、このようなグラデーションの模様が表れている模様層10を備える床材1と、別のグラデーションの模様が表れていない床材との組み合わせにより構成されていてもよい。