JP7092056B2 - 成膜装置、及びそれを用いた金属膜の形成方法 - Google Patents
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Description
陽極と、
陰極と、
前記陽極と前記陰極の間に設けられた固体電解質膜と、
前記陽極と前記固体電解質膜の間に溶液収容空間を画成する溶液収容部と、
前記陽極と前記陰極の間に電圧を印加する電源部とを有し、
前記固体電解質膜が、前記溶液収容空間に露出する第一表面と、前記陰極に対向する第二表面とを有し、
前記固体電解質膜が、前記第一表面及び前記第二表面のいずれとも共有点を持たない分割面に沿って分割可能である、成膜装置が提供される。
図1に示すように、実施形態に係る成膜装置100は、陽極20と、陰極30と、固体電解質膜60と、溶液収容空間55を画成する溶液収容部50と、陽極20と陰極30の間に電圧を印加する電源部40とを有する。溶液収容空間55は、金属イオンを含む電解液Lを収容するための空間である。
陽極20は、電極として機能可能な導電率を有する。陽極20は、電解液L中の金属の標準酸化還元電位(標準電極電位)より高い標準酸化還元電位を有する金属(例えば、金)から構成され、電解液Lに不溶であってよい。あるいは、陽極20は、成膜装置100により形成する金属膜を構成する金属と同じ金属から構成され、電解液Lに可溶であってもよい。陽極20の形状及び面積は、陰極30の表面の金属成膜領域の形状及び面積に応じて適宜設計してよい。
陰極30は、金属イオンを含む電解液Lに対する耐食性、及び電極として機能可能な導電率を有する。成膜装置100により形成される金属膜は、陰極30の表面30aに形成される。例えば、アルミニウム、鉄等の金属から構成される基材を陰極30として用いてよい。また、エポキシ樹脂などの高分子樹脂、セラミックス等と、その表面を被覆する銅、ニッケル、銀、または鉄などの金属膜とから構成される基材を用いてもよく、その場合、導電性である金属膜が陰極30として機能する。基材の表面の一部分が導電性を有していてよく、導電性の部分が陰極30として機能する。
固体電解質膜60は、陽極20と陰極30の間に設けられ、溶液収容部50に固定されている。固体電解質膜60は、溶液収容空間55に露出する第一表面60aと、陰極30に対向する第二表面60bとを有する。第二表面60bは第一表面60aの反対面である。固体電解質膜60は、第一表面60a及び第二表面60bのいずれとも共有点を持たない分割面60cに沿って分割可能である。なお、固体電解質膜60は陰極30から離間する位置と陰極30に接触する位置の間を移動可能であってよい。
溶液収容部50は、通常、上部及び下部に開口を有する筒状の形状を有する。溶液収容部50の下部の開口を覆うように固体電解質膜60が配置され、溶液収容部50の上部の開口を覆うように蓋部52が配置されている。固体電解質膜60と蓋部52の間に、固体電解質膜60と離間して陽極20が配置される。それにより陽極20と固体電解質膜60の間に溶液収容空間55が画成される。溶液収容部50には、金属イオンを含む電解液Lが収容される。なお、図1において、陽極20は蓋部52に接触して設けられているが、陽極20と蓋部52は離間していてもよい。この場合、陽極20と蓋部52の間にも電解液Lが存在してよい。
電源部40は、陽極20及び陰極30に電気的に接続される。電源部40は、陽極20と陰極30の間に電位差を発生させる。
次に、成膜装置100(図1参照)を用いた金属膜の形成方法を説明する。
(1)固体電解質膜の作製
第一固体電解質層(厚さ5μm)、多孔質層、及び第二固体電解質層(厚さ25μm)がこの順に積層されて構成された固体電解質膜を、多層共押出法により作製した。具体的には、第一固体電解質層、多孔質層、及び第二固体電解質層の原料樹脂を加熱して溶融し、それぞれ押出機から押し出してTダイに供給した。Tダイから各溶融樹脂の層からなる多層溶融フィルムを吐出し、冷却ロールに接触させて冷却して固化した。
直径50mm、厚さ280μmのシリコンウエハ上に、厚さ80nmのチタン膜及び厚さ300nmの銅膜をこの順に形成した。これを基材(陰極)として用い、陽極として発泡ニッケル(ニラコ製)を用いて、基材と陽極が対向するように配置した。基材と陽極の間に固体電解質膜を配置した。このとき、固体電解質膜の第二固体電解質層を基材と接触させた。固体電解質膜と陽極の間の空間をニッケル溶液で満たした。ニッケル溶液としては、1mol/Lの塩化ニッケルと緩衝剤として0.05mol/Lの酢酸ニッケルを含有する水溶液(pH4.0)を用いた。それにより、図1に記載されるような成膜装置を構成した。
形成した複数のニッケル膜のうちのいくつかに、固体電解質膜の一部が付着していた。図5に固体電解質膜の一部が付着したニッケル膜の写真を示す。また、図6に、ニッケル膜に固体電解質膜の一部が付着した場合に使用していた固体電解質膜の使用後の写真を示す。使用後の固体電解質膜は厚さの小さい部分を有していたが、厚み方向に貫通する破れ(孔)は見られなかった。ニッケル膜から固体電解質膜を引き離したときに、固体電解質膜が部分的に多孔質層を境として第一固体電解質層と第二固体電解質層に分割され、分離した第二固体電解質層がニッケル膜に付着したと考えられる。第一固体電解質層には孔が生じず、それにより溶液収容空間の密閉状態が維持されたため、ニッケル溶液は漏出しなかった。なお、固体電解質膜が付着しなかったニッケル膜の写真と、このときに使用していた固体電解質膜の使用後の写真をそれぞれ図7、8に示す。使用後の固体電解質膜には厚さの小さい部分はなく、使用前の厚さを保っていた。
(1)ニッケル膜の形成
50mm×40mmのガラス基板上に、厚さ300nmの銅膜をスパッタにより形成した。これを基材(陰極)として用い、陽極として純ニッケル箔0.05mm(ニラコ製)を用いて、基材と陽極が対向するように配置した。基材と陽極の間に、市販の固体電解質膜(デュポン社製Nafion)を配置し、固体電解質膜を基材と接触させた。固体電解質膜と陽極の間の空間を、実施例1で用いたものと同じニッケル溶液で満たした。
ニッケル溶液が溶液収容空間から漏れ出た場合に使用していた固体電解質膜の使用後の写真を図9に示す。固体電解質膜には破れが生じていた。ニッケル膜から固体電解質膜を引き離したときに固体電解質膜が破れて厚み方向に貫通する孔が生じ、この孔を通って溶液収容空間からニッケル溶液が漏出したと考えられる。
Claims (2)
- 金属膜を形成するための成膜装置であって、
陽極と、
陰極と、
前記陽極と前記陰極の間に設けられた、前記陰極に接触可能な固体電解質膜と、
前記陽極と前記固体電解質膜の間に溶液収容空間を画成する溶液収容部と、
前記陽極と前記陰極の間に電圧を印加する電源部とを有し、
前記固体電解質膜が、第一固体電解質層、第二固体電解質層、及び前記第一固体電解質層と前記第二固体電解質層の間に設けられた多孔質層を有し、
前記固体電解質膜が、前記溶液収容空間に露出する第一表面と、前記陰極に対向する第二表面とを有し、
前記固体電解質膜が、前記第一表面及び前記第二表面のいずれとも共有点を持たない分割面に沿って分割可能である、成膜装置。 - 請求項1に記載の成膜装置において、金属イオンを含む電解液で溶液収容空間が満たされ且つ固体電解質膜と陰極が接触した状態で、陽極と陰極の間に電圧を印加することを含む、金属膜の形成方法。
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