JP7091711B2 - 遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法、遷移金属複合水酸化物粒子、非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法、非水系電解質二次電池用正極活物質 - Google Patents

遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法、遷移金属複合水酸化物粒子、非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法、非水系電解質二次電池用正極活物質 Download PDF

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Description

本発明は、遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法、遷移金属複合水酸化物粒子、非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法、非水系電解質二次電池用正極活物質に関する。
近年、スマートフォンやタブレットPCなどの携帯情報端末の普及に伴い、高いエネルギー密度を有する小型で軽量な二次電池の開発が強く望まれている。また、ハイブリット自動車を始めとする電気自動車用の電池として高出力の二次電池の開発が強く望まれている。
このような要求を満たす二次電池として、非水系電解質二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池がある。このリチウムイオン二次電池は、負極、正極、電解液などで構成され、その負極および正極の材料として用いられる活物質には、リチウムを脱離および挿入することが可能な材料が使用される。
このリチウムイオン二次電池のうち、層状またはスピネル型のリチウム遷移金属複合酸化物を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の電圧が得られるため、高エネルギー密度を有する電池として、現在、研究開発が盛んに行われており、一部では実用化も進んでいる。
このようなリチウムイオン二次電池の正極材料として、合成が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)粒子、コバルトよりも安価なニッケルを用いたリチウムニッケル複合酸化物(LiNiO2)粒子、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/32)粒子、マンガンを用いたリチウムマンガン複合酸化物(LiMn24)粒子、リチウムニッケルマンガン複合酸化物(LiNi0.5Mn0.52)粒子などのリチウム遷移金属複合酸化物粒子が提案されている。
そして、リチウムイオン二次電池の正極材料である正極活物質はその前駆体となる遷移金属複合水酸化物粒子の性状を引き継ぐことが知られており、正極活物質前駆体である遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法について各種検討がなされてきた。
例えば特許文献1には反応槽内に、少なくとも遷移金属を含有する原料水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液を供給することで反応水溶液を形成し、晶析反応によって、非水電解質二次電池用正極活物質の前駆体となる遷移金属複合水酸化物粒子を製造する方法であって、雰囲気や、反応水溶液のpH値を制御しながら核生成工程と、粒子成長工程とを実施する遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法が開示されている。
特開2017-016753号公報 特開2015-191847号公報
しかしながら、近年では非水系電解質二次電池の更なる高性能化が求められており、例えば出力特性の向上、具体的には初期放電容量の向上や、電池の内部抵抗の抑制が求められるようになっている。
このため、非水系電解質二次電池に適用した場合に、初期放電容量を向上させ、内部抵抗を抑制できる正極活物質の前駆体の製造方法が求められていた。
そこで上記従来技術が有する問題に鑑み、本発明の一側面では、非水系電解質二次電池の正極活物質の前駆体として用いた場合に、該非水系電解質二次電池の初期放電容量を高め、内部抵抗を抑制することができる遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、
非水系電解質二次電池用正極活物質の前駆体となる遷移金属複合水酸化物粒子を、晶析反応により製造する遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法であって、
反応槽内に、少なくとも遷移金属を含有する原料水溶液と、アルカリ水溶液とを供給して反応水溶液を形成し、前記反応水溶液を、液温25℃基準におけるpH値が12.0以上14.0以下に制御し、核の生成を行なう核生成工程と、
前記核生成工程で得られた前記反応水溶液に、少なくとも遷移金属を含有する原料水溶液と、アルカリ水溶液とを供給して、液温25℃基準におけるpH値を9.0以上11.0以下に制御し、前記核を成長させる粒子成長工程とを有し、
前記核生成工程と、前記粒子成長工程において、前記反応水溶液中のアンモニウムイオン濃度を1g/L以下に制御し、
前記核生成工程と、前記粒子成長工程の間、前記反応槽内の液温度を70℃以上80℃以下とし、
前記粒子成長工程後に得られる前記遷移金属複合水酸化物粒子の二次粒子の平均粒径が7.7μm以上15μm以下である遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法を提供する。
本発明の一態様によれば、非水系電解質二次電池の正極活物質の前駆体として用いた場合に、該非水系電解質二次電池の初期放電容量を高め、内部抵抗を抑制することができる遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法を提供できる。
実施例、比較例において作製したコイン型電池の断面構成の説明図。 実施例、比較例において作製したラミネート型電池の断面構成の説明図。 実施例1において作製した被覆前遷移金属複合水酸化物粒子のSEM画像。 実施例5において作製した被覆前遷移金属複合水酸化物粒子のSEM画像。 比較例1において作製した被覆前遷移金属複合水酸化物粒子のSEM画像。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
1.遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法
以下に、本実施形態の遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法の一構成例について説明する。
本実施形態の遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法は、非水系電解質二次電池用正極活物質の前駆体となる遷移金属複合水酸化物粒子を、晶析反応により製造する遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法に関し、以下の工程を有することができる。
反応槽内に、少なくとも遷移金属を含有する原料水溶液と、アルカリ水溶液とを供給して反応水溶液を形成し、反応水溶液を、液温25℃基準におけるpH値が12.0以上14.0以下に制御し、核の生成を行なう核生成工程。
核生成工程で得られた反応水溶液に、少なくとも遷移金属を含有する原料水溶液と、アルカリ水溶液とを供給して、液温25℃基準におけるpH値を9.0以上11.0以下に制御し、核を成長させる粒子成長工程。
そして、核生成工程と、粒子成長工程において、反応水溶液中のアンモニウムイオン濃度を1g/L以下に制御することができる。
本発明の発明者らの検討によれば、非水系電解質二次電池の初期放電容量を高め、内部抵抗を抑制できる正極活物質とするためには、該非水系電解質二次電池に用いる非水系電解質二次電池用正極活物質(以下、単に「正極活物質」と記載する)の内部に電解液が侵入可能な空隙部を形成することが好ましい。これは、係る空隙部を有する正極活物質とすることで、粒径が同程度の中実構造の正極活物質と比較して電解液との反応面積を大きくすることができ、内部抵抗を大幅に低減することができるからである。
正極活物質は、その前駆体となる遷移金属複合水酸化物粒子の粒子構造に大きな影響を受けることが知られている。このため、該正極活物質の前駆体である遷移金属複合水酸化物粒子についても、該正極活物質の製造に適した粒子構造とすることが求められる。
そして、核生成工程及び粒子成長工程におけるアンモニウムイオン濃度を制御することで、非水系電解質二次電池の正極活物質の前駆体として用いた場合に、該非水系電解質二次電池の初期放電容量を高め、内部抵抗を抑制することができる遷移金属複合水酸化物粒子が得られることを見出し、本発明を完成させた。
本実施形態の遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法は、反応槽内に、少なくとも遷移金属を含有する原料水溶液と、アルカリ水溶液とを供給することで反応水溶液を形成し、晶析反応によって、非水系電解質二次電池用正極活物質の前駆体となる遷移金属複合水酸化物粒子を製造する方法である。
(1)核生成工程
核生成工程では、既述の様に少なくとも遷移金属を含有する原料水溶液と、アルカリ水溶液とを供給して反応水溶液を形成し、係る反応水溶液を、液温25℃基準におけるpH値が12.0以上14.0以下に制御し、核の生成を行なうことができる。
核生成工程を開始する前に、少なくとも遷移金属を含有する原料水溶液と、アルカリ水溶液とを調製しておくことができる。
ここでまず、少なくとも遷移金属を含有する原料水溶液と、アルカリ水溶液とについて説明する。
(少なくとも遷移金属を含有する原料水溶液)
本実施形態の遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法によれば、少なくとも遷移金属を含有する原料水溶液(以下、単に「原料水溶液」とも記載する)中の金属元素の比率が、概ね、得られる遷移金属複合水酸化物粒子中の金属元素の組成比となる。このため、原料水溶液は、目的とする遷移金属複合水酸化物粒子の組成に応じて、各金属元素の含有量を適宜調整することが好ましい。
本実施形態の遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法により、製造する遷移金属複合水酸化物粒子の組成は特に限定されるものではない。本実施形態の遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法により、後述する粒子成長工程後に、例えば一般式(A):NiCoAl(OH)2+aで表される遷移金属複合水酸化物の粒子を製造できる。このため、原料水溶液は、例えばNi(ニッケル)、Co(コバルト)、及び必要に応じて添加元素M、Al(アルミニウム)を含むことができる。また、上述した一般式(A)で表される遷移金属複合水酸化物粒子を得ようとする場合には、原料水溶液中の各金属元素の物質量の比率を、例えばNi:Co:Al:M=x:y:z:tとなるように調整することができる。
なお、上記一般式(A)中、x、y、z、t、aは、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、0≦a≦0.5を満たすことが好ましい。
原料水溶液は、例えば原料となる遷移金属の化合物を水に溶解して調製することができる。原料水溶液を調製するための、遷移金属の化合物は、特に制限されることはないが、取扱いの容易性から、水溶性の硝酸塩、硫酸塩、及び塩酸塩等から選択された1種類以上を用いることが好ましく、コストやハロゲンの混入を防止する観点から、硫酸塩を用いることが特に好ましい。
また、遷移金属複合水酸化物粒子中に添加元素MおよびAlを含有させる場合には、添加元素MおよびAlを供給するための化合物としては、同様に水溶性の化合物を好ましく用いることができる。なお、添加元素Mとしては、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種類以上の添加元素とすることができる。このため、添加元素Mを供給するための化合物としては、例えば硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸チタン、ペルオキソチタン酸アンモニウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸バナジウム、バナジン酸アンモニウム、硫酸クロム、クロム酸カリウム、硫酸ジルコニウム、シュウ酸ニオブ、モリブデン酸アンモニウム、硫酸ハフニウム、タンタル酸ナトリウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸アンモニウムなどを好適に用いることができる。
添加元素MおよびAlは、例えば遷移金属複合水酸化物粒子の二次粒子の内部及び表面のいずれか一方、もしくは両方に均一に配置することが好ましい。
そして、原料水溶液に上述した添加元素MおよびAlの化合物を添加することで、遷移金属複合水酸化物粒子の内部に添加元素MおよびAlを均一に分散させることができる。
遷移金属複合水酸化物粒子の二次粒子の表面を、添加元素MおよびAlで均一に被覆するためには、粒子成長工程の終了後、添加元素MおよびAlで被覆する被覆工程を行なうことができる。被覆工程については後述する。
原料水溶液中の金属化合物の濃度は特に限定されないが、原料水溶液が含有する金属化合物の合計でその濃度が1mol/L以上2.6mol/L以下が好ましく、1.5mol/L以上2.2mol/L以下がより好ましい。これは原料水溶液中の金属化合物の濃度を1mol/L以上とすることで、反応槽当たりの晶析物量を十分に確保し、生産性を高めることができるからである。また、原料水溶液中の金属化合物の濃度を2.6mol/L以下とすることで、各金属化合物の結晶が再析出して、配管などを詰まらせることをより確実に防ぐことができるからである。
上述した金属化合物は、必ずしも全ての金属成分を添加した原料水溶液として反応槽に供給しなくてもよい。例えば、混合すると反応して目的とする化合物以外の化合物が生成されてしまう金属化合物を用いて晶析反応を行う場合には、例えば金属成分毎に原料水溶液(金属化合物水溶液)を調製することができる。そして、全ての原料水溶液(金属化合物水溶液)の合計の濃度が上記範囲となるように、所定の割合で反応槽内に供給してもよい。
原料水溶液の供給量は特に限定されないが、粒子成長工程の終了時点において、反応水溶液中の生成物の濃度が、30g/L以上200g/L以下となるように供給することが好ましく、80g/L以上150g/L以下となるように供給することがより好ましい。これは、粒子成長工程終了時点における反応水溶液中の生成物の濃度を30g/L以上とすることで、生成物の一次粒子の凝集を十分に進行させ、所望の二次粒子を得ることができるからである。一方、粒子成長工程終了時点における反応水溶液中の生成物の濃度を200g/L以下とすることで、反応槽内に原料水溶液を十分に拡散させながら供給することが可能になり、特に均一に粒子成長させることができるからである。
(アルカリ水溶液)
反応水溶液に添加し、反応水溶液のpH値を調整するアルカリ水溶液は、特に制限されることはなく、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの一般的なアルカリ金属水酸化物水溶液を用いることができる。なお、アルカリ金属水酸化物を、直接、反応水溶液に添加することもできるが、pH制御の容易さから、水溶液として添加することが好ましい。
アルカリ水溶液としてアルカリ金属水酸化物水溶液を用いる場合、アルカリ金属水酸化物水溶液の濃度は20質量%以上50質量%以下であることが好ましく、20質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。アルカリ金属水酸化物水溶液の濃度を20質量%以上50質量%以下とすることにより、反応系に供給する溶媒量(水量)を抑制しつつ、添加位置で局所的にpH値が高くなることを防止することができるため、粒度分布の狭い遷移金属複合水酸化物粒子を効率的に得ることが可能となるからである。
なお、アルカリ水溶液の供給方法は、特に制限されないが、反応水溶液のpH値が局所的に高くならず、かつ所定の範囲に維持されるように供給することが好ましい。例えば、反応水溶液を十分に撹拌しながら、アルカリ水溶液を定量ポンプなどの流量制御が可能なポンプにより供給することができる。
(核生成工程での操作について)
そして、核生成工程を開始する前に、晶析を行う反応槽内に、アルカリ水溶液を供給、及び混合して、液温25℃基準で測定するpH値が12.0以上14.0以下である反応前水溶液を調製しておくことができる。なお、反応槽内には予め水を入れておくことができる。反応前水溶液のpH値はpH計により測定することができる。反応槽内の液温度は、20℃以上80℃以下に制御しておくことが好ましく、35℃以上75℃以下に制御しておくことがより好ましい。
反応槽内の雰囲気は特に限定されるものではないが、非還元性雰囲気であれば良く、例えば窒素雰囲気等の不活性雰囲気や、大気雰囲気とすることができる。粒子成長工程においても同様の雰囲気とすることができる。
次に、この反応前水溶液を撹拌しながら、反応前水溶液に原料水溶液を供給することができる。これにより、反応槽内には反応水溶液が形成される。なお、核生成工程における反応水溶液を特に区別して示す場合には核生成用反応水溶液とも記載する。
核生成用反応水溶液のpH値は、液温25℃基準において12.0以上14.0以下に制御することができる。なお、核生成工程では核生成に伴い、核生成用反応水溶液のpH値が変化するので、該核生成用反応水溶液にはアルカリ水溶液を適時供給し、そのpH値を上記範囲に制御することができる。
核生成工程においては、反応水溶液(核生成用反応水溶液)のpH値を、液温25℃基準で上述のように12.0以上14.0以下とすることが好ましく、12.3以上13.5以下とすることがより好ましく、12.5以上13.3以下とすることがさらに好ましい。
核生成工程における反応水溶液のpH値を12.0以上14.0以下とすることで、核の成長を抑制し、核生成を優先させることが可能となり、この工程で生成する核を均質かつ粒度分布の狭いものとすることができる。一方、核生成工程における反応水溶液のpH値を12.0未満とした場合、核生成とともに核(粒子)の成長が進行するため、得られる遷移金属複合水酸化物粒子の粒径が不均一となり、粒度分布が悪化する恐れがある。
核生成工程では、核生成用反応水溶液に、原料水溶液や、アルカリ水溶液を供給することにより、連続して新しい核の生成が継続される。そして、核生成用反応水溶液中に、所定量の核が生成した時点で、核生成工程を終了することができる。
この際、核の生成量は、核生成用反応水溶液に供給した原料水溶液に含まれる金属化合物の量から判断することができる。核生成工程における核の生成量は、特に制限されるものではないが、本実施形態の遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法により得られる遷移金属複合水酸化物粒子の粒度分布が狭くなるように制御することが好ましい。
これは、粒度分布が狭い遷移金属複合水酸化物粒子から粒度分布が狭い正極活物質を製造でき、係る正極活物質を用いた場合、電極内で粒子に印加される電圧を均一化できるため、微粒子が選択的に劣化することによる電池容量の低下を特に抑制できるからである。
そして、核生成工程で核生成用反応水溶液に供給する原料水溶液に含まれる金属化合物中の金属元素の量を、核生成工程及び粒子成長工程を通じて供給する原料水溶液に含まれる金属化合物中の金属元素の量の、0.1原子%以上2原子%以下とすることが好ましく、0.1原子%以上1.5原子%以下とすることがより好ましい。
これは、核生成工程で核生成用反応水溶液に供給する原料水溶液に含まれる金属化合物中の金属元素の量を、核生成工程及び粒子成長工程を通じて供給する原料水溶液に含まれる金属化合物中の金属元素の量の0.1原子%以上2原子%以下とすることで反応水溶液の中に適切な量の核を生成させることができるためである。このため、核生成工程の後、さらに粒子成長工程を実施した場合に、より均一なサイズの粒子を得ることが可能になる。
(2)粒子成長工程
粒子成長工程では、核生成工程で得られた反応水溶液に、少なくとも遷移金属を含有する原料水溶液と、アルカリ水溶液とを供給して、液温25℃基準におけるpH値を核生成工程よりも低く、9.0以上11.0以下に制御し、核を成長させることができる。このように核生成工程と、粒子成長工程とで反応水溶液のpH値を変化させることで、主に核生成を行なう核生成工程と、主に粒子の成長を行う粒子成長工程と両工程を明確に区別することができる。
粒子成長工程を開始する前に、以下のpH調整工程を実施することもできる。
pH調整工程では、粒子成長工程を開始する前に、まず核生成工程終了後、反応槽内の核生成用水溶液のpH値を、液温25℃基準で9.0以上11.0以下に調整することができる。これにより、粒子成長工程における反応水溶液である粒子成長用反応水溶液を形成することができる。なお、粒子成長工程における反応水溶液を特に区別して示す場合には、上述のように粒子成長用反応水溶液と記載する。
粒子成長用反応水溶液のpH値は、核生成工程終了後、アルカリ水溶液の供給を停止することでも調整可能であるが、粒度分布の狭い複合水酸化物粒子を得るため、一旦全ての水溶液の供給を停止してpH値を調整することが好ましい。具体的には、例えば反応水溶液への全ての水溶液の供給を停止した後、核生成用反応水溶液に、原料となる金属化合物を構成する酸と同種の無機酸を供給することにより、pH値を調整することが好ましい。この際、反応槽内の液温度は、20℃以上80℃以下での制御を維持したままとすることが好ましく、35℃以上75℃以下での制御を維持したままとしておくことがより好ましい。
次に、この粒子成長用反応水溶液を撹拌しながら、粒子成長用反応水溶液に原料水溶液や、アルカリ水溶液の供給を再開することができる。なお、原料水溶液や、アルカリ水溶液としては、核生成工程と同様の物を用いることができるため、ここでは説明を省略する。
粒子成長工程においては、粒子成長用反応水溶液のpH値を核生成工程よりも低く、例えば液温25℃基準で、9.0以上11.0以下に制御することが好ましく、9.5以上10.5以下に制御することがより好ましい。粒子成長工程の間、粒子成長用反応水溶液のpH値を9.0以上11.0以下に制御することで、新たな核の生成が抑制され、粒子成長を優先させることが可能となり、所定の粒径を有する遷移金属複合水酸化物粒子を形成できる。また、得られる遷移金属複合水酸化物粒子を均質かつ粒度分布が狭いものとすることができる。
なお、粒子成長用反応水溶液のpH値が11.0を超えると、一次粒子が最適な板状粒子を含まず、二次粒子内に空隙部を保つことが困難となる恐れがある。
本実施形態の遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法における粒子成長工程の構成は上述の形態に限定されるものではない。
例えば核生成工程終了後、核生成用反応水溶液とは別に、粒子成長工程に適したpH値に調整された成分調整用水溶液を用意し、この成分調整用水溶液に、核生成工程後の核生成用反応水溶液を添加および混合して、これを粒子成長用反応水溶液として、さらに原料水溶液やアルカリ水溶液を添加し、粒子成長工程を行ってもよい。なお、成分調整用水溶液に添加する核生成用反応水溶液として、核生成工程後の核生成用反応水溶液から液体成分の一部を除去したものを用いることが好ましい。
成分調整用水溶液としては、例えば原料となる金属化合物を構成する酸と同種の無機酸の水溶液を用いることができる。
この場合、核生成工程と粒子成長工程の分離をより確実に行うことができるため、各工程における反応水溶液を、最適な状態に制御することができる。特に、粒子成長工程の開始時から粒子成長用反応水溶液のpH値を最適な範囲に制御することができるため、得られる複合水酸化物粒子の粒度分布をより狭いものとすることができ、好ましい。
ここまで核生成工程と、粒子成長工程について説明したが、両工程を実施している間、反応水溶液のアンモニウムイオン濃度は1g/L以下であることが好ましく、0.5g/L以下であることがより好ましい。
アンモニウムイオン濃度が1g/Lより高くなると、得られる遷移金属複合水酸化物粒子内に空隙が形成されにくくなり、該遷移金属複合水酸化物粒子を用いて製造した正極活物質においても、空隙部の割合が低下する恐れがあるからである。
反応水溶液はアンモニウムイオンを含んでいないことが好ましいことから、反応水溶液のアンモニウムイオン濃度は0以上とすることができる。
また、反応水溶液の温度(反応温度)は、核生成工程と粒子成長工程を通じて、20℃以上80℃以下が好ましく、35℃以上75℃以下の範囲に制御することがより好ましい。
これは、反応温度を20℃以上とすることで、反応水溶液の溶解度を十分に高くすることができるため、核生成が過度に起こることを抑制し、得られる遷移金属複合水酸化物粒子の平均粒径や粒度分布を容易に所望の範囲に制御できるからである。なお、反応温度の上限は特に限定されないが、80℃以下とすることで保温に要するエネルギーを抑制し、取扱い性を高めることができるため、コストを低減する観点から好ましい。
以上に本実施形態の遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法について説明したが、該製造方法により得られる遷移金属複合水酸化物粒子の粒径は、粒子成長工程や核生成工程の時間、核生成用反応水溶液や粒子成長用反応水溶液のpH値や、原料水溶液の供給量により制御することができる。例えば、核生成工程を高pH値で行うことにより、または、核生成工程の時間を長くすることにより、供給する原料水溶液に含まれる金属化合物の量を増やし、核の生成量を増加させ、得られる複合水酸化物粒子の粒径を小さくすることができる。反対に、核生成工程における核の生成量を抑制することで、得られる遷移金属複合水酸化物粒子の粒径を大きくすることができる。
本実施形態の遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法で用いる晶析装置(反応槽)としては特に限定されないが、晶析反応が終了するまで、析出した生成物を回収しないバッチ式晶析装置を用いることが好ましい。このような晶析装置であれば、オーバーフロー方式によって生成物を回収する連続晶析装置とは異なり、成長中の粒子がオーバーフロー液と同時に回収されることがないため、粒度分布の狭い遷移金属複合水酸化物粒子を容易に得ることができる。
本実施形態の遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法により得られる遷移金属複合水酸化物粒子は、一次粒子が凝集した二次粒子を有しており、添加元素MおよびAlから選択された1種類以上は、係る二次粒子の内部及び表面のいずれか一方、もしくは両方に均一に配置されていることが好ましい。
そして、係る二次粒子の表面に添加元素Mや、Alを配置する場合、本実施形態の遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法は、粒子成長工程で得られた(被覆前)遷移金属複合水酸化物粒子の表面を、添加元素MおよびAlから選択された1種類以上で被覆する被覆工程をさらに有することもできる。
被覆工程は、例えば、以下のいずれかの工程とすることができる。
遷移金属複合水酸化物粒子が懸濁したスラリーに、添加元素MおよびAlから選択された1種類以上を添加して、晶析反応により、遷移金属複合水酸化物粒子の表面に添加元素MおよびAlから選択された1種類以上を析出させる工程。
遷移金属複合水酸化物粒子に対して、添加元素MおよびAlから選択された1種類以上を含む水溶液、またはスラリーを吹き付けて乾燥させる工程。
遷移金属複合水酸化物粒子と添加元素MおよびAlから選択された1種類以上を含む化合物とが懸濁したスラリーを噴霧して乾燥させる工程。
遷移金属複合水酸化物粒子と添加元素MおよびAlから選択された1種類以上を含む化合物とを固相法で混合する工程。
被覆工程が、例えば、遷移金属複合水酸化物粒子が懸濁したスラリーに、添加元素MおよびAlから選択された1種類以上を添加して、晶析反応により、遷移金属複合水酸化物粒子の表面に添加元素MおよびAlから選択された1種類以上を析出させる工程であるとする。この場合、遷移金属複合水酸化物のスラリー化と、添加元素M及びAlから選択された1種類以上の元素の添加とを同時に実施することもできる。具体的には例えば、遷移金属複合水酸化物粒子を、添加元素MおよびAlから選択された1種類以上を含む水溶液を用いてスラリー化することができる。そして、添加元素M及びAlから選択された1種類以上を添加した後、例えば酸等を添加することで晶析反応を実施することができる。
なお、被覆工程で用いる、添加元素MおよびAlから選択された1種類以上を含む水溶液については、既述の核生成工程の場合と同様の水溶液を用いることができる。また、被覆工程では、添加元素MおよびAlから選択された1種類以上を含む水溶液に替えて、添加元素MおよびAlから選択された1種類以上を含むアルコキシド溶液を用いてもよい。
核生成工程や、粒子成長工程で原料水溶液に添加元素MおよびAlから選択された1種類以上を添加し、かつ被覆工程を実施して遷移金属複合水酸化物粒子の表面を添加元素MおよびAlから選択された1種類以上で被覆することもできる。この場合、核生成工程等において原料水溶液中に添加する添加元素M及びAlから選択された1種類以上のイオンの量は、被覆する量だけ少なくしておくことが好ましい。これは、原料水溶液への添加元素MおよびAlから選択された1種類以上の添加量を被覆する量だけ少なくしておくことで、得られる遷移金属複合水酸化物粒子に含まれる添加元素MおよびAlと、他の金属成分との原子数の比を所望の値とすることができるからである。
遷移金属複合水酸化物粒子の表面を、上述のように、添加元素MおよびAlから選択された1種類以上で被覆する被覆工程は、粒子成長工程の終了後、加熱した後の遷移金属複合水酸化物粒子に対して行ってもよい。
2.遷移金属複合水酸化物粒子
以下に、本実施形態の遷移金属複合水酸化物粒子の一構成例について説明する。
本実施形態の遷移金属複合水酸化物粒子は、例えば既述の遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法により製造することができる。このため、既に説明した事項の一部は説明を省略する。
本実施形態の遷移金属複合水酸化物粒子は、非水系電解質二次電池用正極活物質の前駆体となる遷移金属複合水酸化物粒子である。
本実施形態の遷移金属複合水酸化物粒子は、厚みが30nm以下の板状一次粒子、及び微細一次粒子が凝集して形成された二次粒子を有することができる。また、本実施形態の遷移金属複合水酸化物粒子が有する二次粒子は、少なくともその表面において、隣接する一方の板状一次粒子の主表面と、他方の板状一次粒子の端面とが接するようにして凝集した構造を有することが好ましい。係る二次粒子は平均粒径が1μm以上15μm以下とすることができる。
(1)二次粒子の粒子構造
本実施形態の遷移金属複合水酸化物粒子が有する二次粒子は、板状一次粒子および微細一次粒子が凝集して形成されている。この際、二次粒子の少なくとも表面において、例えば後述する図3に示すように、隣接する一方の板状一次粒子301の主表面301Aと、他方の板状一次粒子302の厚み方向を含む面である端面302Aとが接するようにして凝集した構造を有することが好ましい。二次粒子の表面に配置された複数の板状一次粒子は、端面が二次粒子の表面側に配置され、主表面が二次粒子の直径方向に沿って配置されていることが好ましい。
係る構造を有することで板状一次粒子間に十分な空隙を形成することができる。
板状一次粒子は該二次粒子の全体に分布しており、板状一次粒子の間に、微細一次粒子が分布した構造を有することができる。
板状一次粒子の厚みは、上述のように30nm以下であることが好ましい。板状一次粒子の厚みの下限値は特に限定されないが、例えば5nmよりも厚いことが好ましい。
なお、微細一次粒子の粒径は、例えばSEM観察を行い粒子に外接する最小の外接円を描いた時の直径とすることができ、その粒径は例えば板状一次粒子の厚みよりも小さいことが好ましく、1nm以上5nm以下であることがより好ましい。
このように所定のサイズの板状一次粒子と、微細一次粒子とが凝集することで、該二次粒子内に空隙部が均一に分布し、二次粒子の中心部から表面部までを連結させることができる。
このような遷移金属複合水酸化物粒子を焼成した場合には、均一に分布した空隙部を維持したまま焼結収縮することになる。このため、本実施形態の遷移金属複合水酸化物粒子を用いて得られる正極活物質においては、二次粒子の表面部(外殻部)と電気的に導通する一次粒子の凝集部と、一次粒子が存在しない空隙部とを有することができる。このような粒子構造を有する正極活物質では、一次粒子間の粒界または空隙部を介して、二次粒子の内部に電解液が浸入するため、二次粒子の表面ばかりでなく、二次粒子の内部においても、リチウムの脱離および挿入が可能となる。しかも、この正極活物質は、二次粒子表面部と内部とが電気的に導通し、かつ、その経路の断面積が十分に大きいため、粒子内部の抵抗(内部抵抗)を大幅に低減することができる。したがって、この正極活物質を用いて二次電池を構成した場合に、電池容量やサイクル特性を損なうことなく、出力特性をさらに改善、具体的には初期放電容量を向上し、内部抵抗を抑制することが可能となる。
(2)平均粒径
本実施形態の遷移金属複合水酸化物粒子は、二次粒子の平均粒径が、1μm以上15μm以下であることが好ましく、3μm以上12μm以下であることがより好ましく、3μm以上10μm以下であることがさらに好ましい。本実施形態の遷移金属複合水酸化物粒子の二次粒子の平均粒径は、該遷移金属複合水酸化物粒子を前駆体とする正極活物質の平均粒径と相関する。そして、本発明の発明者らの検討によれば、本実施形態の遷移金属複合水酸化物粒子の二次粒子の平均粒径を1μm以上15μm以下とすることで、該遷移金属複合水酸化物粒子を前駆体とする正極活物質の平均粒径を容易に所定の範囲に制御することが可能となり好ましい。
なお、本明細書において、二次粒子の平均粒径とは、体積基準平均粒径(MV)を意味し、たとえば、レーザ光回折散乱式粒度分析計で測定した体積積算値から求めることができる。
(3)組成
本実施形態の遷移金属複合水酸化物粒子の組成が制限されることはないが、一般式(A):NiCoAl(OH)2+aで表される遷移金属複合水酸化物粒子であることが好ましい。なお、上記一般式(A)中のx、y、z、t、aは、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、0≦a≦0.5の関係を満たすことが好ましい。また、添加元素Mは、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種類以上の添加元素とすることが好ましい。
上記組成を有する遷移金属複合水酸化物粒子を前駆体とすることで、後述する一般式(B)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物粒子を含む正極活物質を容易に得ることができ、より高い電池性能を実現することができ、好ましい。
なお、一般式(A)で表される遷移金属複合水酸化物粒子において、これを構成するニッケル、コバルト、アルミニウムおよび添加元素Mの好適な組成範囲や、該組成範囲とする意義は、一般式(B)で表される正極活物質と同様となる。このため、これらの事項について、ここでの説明は省略する。
3.非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法
次に本実施形態の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法(以下、単に「正極活物質の製造方法」とも記載する)の一構成例について説明する。
本実施形態の正極活物質の製造方法は、特に限定されるものではなく、既述の遷移金属複合水酸化物粒子を前駆体として用いて実施することができる。
本実施形態の正極活物質の製造方法は例えば以下の工程を有することができる。
既述の遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法により得られた遷移金属複合水酸化物粒子と、リチウム化合物とを混合して、リチウム混合物を形成する混合工程。
混合工程で形成されたリチウム混合物を、酸化性雰囲気中、650℃以上800℃以下で焼成する焼成工程。
以下、各工程について説明する
(1)混合工程
混合工程は、既述の遷移金属複合水酸化物の製造方法により製造した遷移金属複合水酸化物粒子と、リチウム化合物とを混合して、リチウム混合物を形成することができる。
なお、後述のように遷移金属複合水酸化物粒子は予め焙焼して酸化焙焼粒子とすることもでき、この場合、混合工程では、酸化焙焼を行った遷移金属複合水酸化物粒子、すなわち酸化焙焼粒子と、リチウム化合物とを混合してリチウム混合物を形成することができる。
混合工程では、リチウム混合物に含まれるリチウム以外の金属の原子数の和を1とした場合に、リチウム混合物に含まれるリチウムの原子数の比が0.95以上1.5以下となるように、リチウム混合物を形成することが好ましい。
すなわち、リチウム混合物中のリチウム以外の金属の原子数の和であるMeと、リチウムの原子数Liとの比であるLi/Meが0.95以上1.5以下であることが好ましい。
特にリチウム混合物に含まれるリチウム以外の金属の原子数の和を1とした場合に、リチウム混合物に含まれるリチウムの原子数の比は0.99以上1.15以下であることがより好ましく、1.0以上1.10以下であることがさらに好ましく、1.0以上1.07以下であることが特に好ましい。
これは、焼成工程の前後においてLi/Meはほとんど変化しないので、混合工程におけるリチウム混合物中のLi/Meが、目的とする正極活物質のLi/Meとなるように、遷移金属複合水酸化物粒子または酸化焙焼粒子とリチウム化合物を混合することが好ましいからである。
混合工程で使用するリチウム化合物は、特に制限されることはないが、入手の容易性から、水酸化リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウムから選択された1種類以上を好ましく用いることができる。特に、取り扱いの容易さや品質の安定性を考慮すると、水酸化リチウムまたは炭酸リチウムを用いることが好ましい。
遷移金属複合水酸化物粒子または酸化焙焼粒子と、リチウム化合物とは、混合する際に粉砕され、微粉が生じない程度に十分に混合することが好ましい。これは、遷移金属複合水酸化物粒子または酸化焙焼粒子と、リチウム化合物とを十分に混合することで、得られる正極活物質の粒子間でのLi/Meのばらつきを抑制し、特に均一な組成とし、電池特性を特に高めることができるからである。
なお、混合には、一般的な混合機を使用することができる。たとえば、シェーカーミキサ、レーディゲミキサ、ジュリアミキサ、Vブレンダなどを用いることができる。
混合工程において用いるリチウム化合物は、酸化焙焼粒子との混合性を考慮すると、粒度が細かいほど好ましく、平均粒径が110μm以下であることが好ましく、106μm以下であることがより好ましく、53μm以下であることがさらに好ましい。
リチウム化合物の平均粒径を110μm以下とすることで、遷移金属複合水酸化物粒子や、酸化焙焼粒子との混合性を特に高めることができるからである。混合性を高めることで、得られる正極活物質の組成の均一性を高めることができる。また、例えば焼成工程の際に粒子間での焼結の進行の程度のばらつきを抑制することができる。このため、目的とする空隙部率を有する正極活物質の粒子をより確実に得ることが可能になる。
なお、リチウム化合物の平均粒径の下限値は特に限定されるものではなく、例えば0.5μm以上とすることができる。
(2)焼成工程
焼成工程は、混合工程で得られたリチウム混合物を酸化性雰囲気中、650℃以下800℃以下で焼成し、遷移金属複合水酸化物粒子または酸化焙焼粒子中にリチウムを拡散させて、リチウム遷移金属複合酸化物粒子を得る工程である。
この焼成工程において、遷移金属複合水酸化物粒子や、酸化焙焼粒子は、空隙部を保ちながら焼結収縮する。この際、粒子の表面部と中心部との連結を維持したまま、焼結収縮するため、得られる正極活物質においては、表面部(外殻部)と凝集部とが電気的に導通し、かつ、その経路の断面積を十分に確保することができる。この結果、正極活物質の内部抵抗が大幅に減少し、二次電池を構成した場合に、電池容量やサイクル特性を損ねることなく、出力特性を改善することが可能となる。
このような正極活物質の粒子構造は、基本的に、前駆体である遷移金属複合水酸化物粒子の粒子構造に応じて定まるものである。ただし、その組成や焼成条件などの影響を受けることがあるため、予備試験を行った上で、所望の構造となるように、各条件を適宜調整することが好ましい。
なお、焼成工程に用いられる炉は、特に制限されることはなく、酸化性雰囲気中でリチウム混合物を加熱できるものであればよい。ただし、炉内の雰囲気を均一に保つ観点から、ガス発生がない電気炉が好ましく、バッチ式あるいは連続式の電気炉のいずれも好適に用いることができる。この点については、酸化焙焼工程等で用いる炉についても同様である。
(焼成温度)
リチウム混合物の焼成温度は、650℃以上800℃以下とすることが好ましい。焼成温度を650℃以上とすることで、遷移金属複合水酸化物粒子または酸化焙焼粒子中にリチウムを十分に拡散することができる。このため、余剰のリチウムや未反応の遷移金属複合水酸化物粒子または酸化焙焼粒子が残存することを抑制できる。また、得られるリチウム遷移金属複合酸化物粒子の結晶性を十分に高めることができる。
そして、焼成温度を800℃以下とすることで、リチウム遷移金属複合酸化物粒子間の焼結が過度に進行することを抑制し、正極活物質に含まれるリチウム遷移金属複合酸化物粒子内に空隙部をより確実に保持することが可能になる。また、焼成工程の間に異常粒成長が引き起こされることを防止できるため、例えば不定形な粗大粒子の混入を抑制できる。
また、焼成工程における昇温速度は特に限定されないが、例えば2℃/分以上10℃/分以下とすることが好ましく、5℃/分以上10℃/分以下とすることがより好ましい。さらに、焼成工程中、リチウム化合物の融点付近の温度で、好ましくは1時間以上5時間以下、より好ましくは2時間以上5時間以下保持することが好ましい。これにより、遷移金属複合水酸化物粒子または酸化焙焼粒子とリチウム化合物とを、より均一に反応させることができる。
(焼成時間)
焼成時間のうち、上述した焼成温度での保持時間を2時間以上とすることが好ましく、4時間以上24時間以下とすることがより好ましい。焼成温度における保持時間を2時間以上とすることで、遷移金属複合水酸化物粒子または酸化焙焼粒子中にリチウムを特に十分に拡散させることができる。このため、余剰のリチウムや未反応の遷移金属複合水酸化物粒子または酸化焙焼粒子が残存することを抑制できる。また、得られるリチウム遷移金属複合酸化物粒子の結晶性を十分に高めることができる。
なお、保持時間終了後、焼成温度から少なくとも200℃までの冷却速度は、2℃/分以上10℃/分以下とすることが好ましく、3℃/分以上7℃/分以下とすることがより好ましい。冷却速度を2℃/分以上10℃/分以下とすることにより、生産性を確保しつつ、匣鉢などの設備が、急冷により破損することを防止することができる。
(焼成雰囲気)
焼成時の雰囲気は、酸化性雰囲気とすることが好ましく、酸素濃度が95容量%以上100容量%以下の雰囲気とすることがより好ましい。
なお、焼成時の雰囲気は、例えば酸素と不活性ガスとの混合雰囲気とすることができ、酸素濃度が95容量%以上100容量%以下となるように酸素と不活性ガスとを混合した雰囲気とすることが好ましい。
酸素濃度を95容量%以上とすることで、リチウム複合酸化物粒子の結晶性を十分に高めることができる。
なお、焼成は酸素濃度が95容量%以上100容量%以下の気体の気流中で実施することもできる。
本実施形態の正極活物質の製造方法において、焼成工程後に得られる正極活物質の組成は特に限定されないが、例えば一般式(B):Li1+uNiCoAlで表され、六方晶系のリチウムニッケルコバルト複合酸化物粒子を含むことが好ましい。なお、係る正極活物質は、上記一般式(B)で表され、六方晶系のリチウムニッケルコバルト複合酸化物粒子から構成することもできる。
なお、上記一般式(B)中のu、x、y、z、tは-0.05≦u≦0.50、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1を満たすことが好ましい。また、添加元素Mは、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種類以上の添加元素であることが好ましい。
そして、係るリチウムニッケルコバルト複合酸化物粒子は多孔質構造を有することが好ましい。
本実施形態の正極活物質の製造方法は、上述の混合工程、及び焼成工程以外に任意の工程を有することもできる。
例えば酸化焙焼工程や解砕工程を有することができる。これらの工程について以下に説明する。
(3)酸化焙焼工程
上述のように本実施形態の正極活物質の製造方法はさらに酸化焙焼工程を有することもできる。酸化焙焼工程は、既述の混合工程の前に実施することができる。酸化焙焼工程では、遷移金属複合水酸化物粒子を105℃以上750℃以下の温度で酸化焙焼することができる。酸化焙焼工程により、遷移金属複合水酸化物粒子を酸化焙焼粒子とすることができる。
なお、酸化焙焼工程を実施した場合、混合工程では、酸化焙焼工程で得られた酸化焙焼粒子と、リチウム化合物とを混合してリチウム混合物を形成することになる。
酸化焙焼工程では、遷移金属複合水酸化物粒子の余剰水分を除去することができる。また、場合によってはさらに水酸化物を酸化物に転換することもできる。このため、酸化焙焼粒子としては、酸化焙焼工程において余剰水分を除去された遷移金属複合水酸化物粒子と、酸化焙焼工程により酸化物に転換された遷移金属複合酸化物粒子とから選択された1種類以上を含むことができる。なお、酸化焙焼粒子は余剰水分を除去された遷移金属複合水酸化物粒子と、遷移金属複合酸化物粒子との混合物であっても良い。
上述のように酸化焙焼工程は、遷移金属複合水酸化物粒子を105℃以上750℃以下の温度で加熱して酸化焙焼することにより、遷移金属複合水酸化物粒子に含有される余剰水分を除去する工程である。これにより、焼成工程後まで残留する水分を一定量まで減少させることができ、得られる正極活物質の組成のばらつきを特に抑制することができる。
酸化焙焼工程における加熱温度を105℃以上とすることで遷移金属複合水酸化物粒子中の余剰水分を十分に除去することができ、正極活物質の組成のばらつきを十分に抑制することができる。
また、酸化焙焼工程における加熱温度を750℃より高くしても、それ以上の効果は期待できないばかりか、生産コストが増加してしまう。このため、加熱温度は750℃以下とすることが好ましい。
なお、酸化焙焼工程では、正極活物質中の各金属成分の原子数や、Liの原子数の割合にばらつきが生じない程度に水分が除去できればよいので、例えば全ての遷移金属複合水酸化物粒子を遷移金属複合酸化物粒子に転換する必要はない。しかしながら、各金属成分の原子数やLiの原子数の割合のばらつきをより少ないものとするためには、400℃以上に加熱して、全ての遷移金属複合水酸化物粒子を、遷移金属複合酸化物粒子に転換することが好ましい。なお、酸化焙焼条件による遷移金属複合水酸化物粒子に含有される金属成分を分析によって予め求めておき、リチウム化合物との混合比を決めておくことで、上述したばらつきをより抑制することができる。
酸化焙焼を行う雰囲気は特に制限されるものではなく、非還元性雰囲気であればよいが、簡易的に行える空気気流中で行うことが好ましい。
また、上述の加熱温度で保持する酸化焙焼時間は、特に制限されないが、遷移金属複合水酸化物粒子中の余剰水分を十分に除去する観点から、1時間以上とすることが好ましく、2時間以上15時間以下とすることがより好ましい。
(4)解砕工程
本実施形態の正極活物質の製造方法は、焼成工程の後、得られた正極活物質を解砕する解砕工程を有することもできる。
焼成工程によって得られたリチウム遷移金属複合酸化物粒子を含む正極活物質は、凝集または軽度の焼結が生じている場合がある。このような場合には、正極活物質の凝集体または焼結体を解砕することが好ましい。これによって、リチウム遷移金属複合酸化物粒子の平均粒径や粒度分布を好適な範囲に調整することができる。なお、解砕とは、焼成時に二次粒子間の焼結ネッキングなどにより生じた複数の二次粒子からなる凝集体に、機械的エネルギを投入して、二次粒子自体をほとんど破壊することなく分離させて、凝集体をほぐす操作を意味する。
解砕の方法としては、公知の手段を用いることができ、たとえば、ピンミルやハンマーミルなどを使用することができる。なお、この際、二次粒子を破壊しないように解砕力を適切な範囲に調整することが好ましい。
4.非水系電解質二次電池用正極活物質
本実施形態の正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物粒子を含むことができる。
そして、リチウム遷移金属複合酸化物粒子は、複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子からなり、該二次粒子は、表面部と電気的に導通する一次粒子の凝集部と、空隙部とを有することができる。また、係る二次粒子は、平均粒径が1μm以上15μm以下であり、比表面積は0.8m/g以上であり、比表面積×タップ密度で算出される単位体積当たりの表面積が1.7m/cc以上であり、空隙部率を2.0%以上とすることができる。
(1)粒子構造
本実施形態の正極活物質は、上述のようにリチウム遷移金属複合酸化物粒子を含むことができる。また、本実施形態の正極活物質はリチウム遷移金属複合酸化物粒子から構成することもできる。なお、本実施形態の正極活物質がリチウム遷移金属複合酸化物粒子から構成される場合であっても、製造工程に起因する不可避成分等を含有することを排除するものではない。
そして、係るリチウム遷移金属複合酸化物粒子は、複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子から構成することができる。この二次粒子は、表面部(外殻部)と電気的に導通する一次粒子の凝集部および一次粒子が存在しない空隙部とを有することができる。ここで、「電気的に導通する」とは、一次粒子の凝集部同士が、構造的に接続され、電気的に導通可能な状態であることを意味する。また、「一次粒子の凝集部」とは、前駆体である遷移金属複合水酸化物粒子が焼結収縮した部分を意味する。
このような粒子構造を有する正極活物質では、一次粒子間の粒界または空隙部を介して、二次粒子の内部に電解液が浸入するため、二次粒子の表面ばかりでなく、二次粒子の内部においても、リチウムの脱離および挿入が可能となる。しかも、この正極活物質は、二次粒子表面部と内部とが電気的に導通し、かつ、その経路の断面積が十分に大きいため、粒子内部の抵抗(内部抵抗)を大幅に低減することができる。したがって、この正極活物質を用いて二次電池を構成した場合に、電池容量やサイクル特性を損なうことなく、出力特性をさらに改善、具体的には初期放電容量を向上し、内部抵抗を抑制することが可能となる。
(2)平均粒径
本実施形態の正極活物質が含むリチウム遷移金属複合酸化物粒子は、平均粒径が1μm以上15μm以下であることが好ましく、3μm以上12μm以下であることがより好ましく、3μm以上10μm以下であることがさらに好ましい。
本実施形態の正極活物質が含有するリチウム遷移金属複合酸化物粒子の平均粒径を1μm以上とすることで、正極活物質の充填性を高め、単位体積当たりの電池容量を高めることができる。
また、リチウム遷移金属複合酸化物粒子の平均粒径を15μm以下とすることで、正極活物質の反応面積を高め、電解液との界面を十分に確保できるため、出力特性を高めることができる。さらには安全性を高めることもできる。
なお、リチウム遷移金属複合酸化物粒子の平均粒径とは、上述した遷移金属複合水酸化物粒子と同様に、体積基準平均粒径(MV)を意味し、たとえば、レーザ光回折散乱式粒度分析計で測定した体積積算値から求めることができる。
(3)組成
本実施形態の正極活物質が含有するリチウム遷移金属複合酸化物粒子の組成は特に制限されることはないが、一般式(B):Li1+uNiCoAl2で表される組成を有することが好ましい。なお、上記一般式(B)内のu、x、y、z、tは-0.05≦u≦0.50、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1の関係を満たすことが好ましい。また、添加元素Mは、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種類以上の添加元素とすることができる。
上記一般式(B)において、リチウム(Li)の過剰量を示すuの値は、上述のように-0.05以上0.50以下が好ましく、-0.01以上0.15以下がより好ましく、0以上0.10以下がさらに好ましく、0以上0.07以下が特に好ましい。uの値を-0.05以上0.50以下とすることにより、この正極活物質を正極材料として用いた二次電池の出力特性および電池容量を特に向上させることができるため好ましい。
なお、uの値を-0.05以上とすることで、二次電池の内部抵抗を特に抑制し、出力特性を向上させることができる。一方、uの値を0.50以下とすることで、初期放電容量を特に高め、内部抵抗を特に抑制できる。
ニッケル(Ni)は、二次電池の高電位化および高容量化に寄与する元素であり、その含有量を示すxの値は、0.3以上0.95以下であることが好ましく、0.3以上0.9以下であることがより好ましい。
xの値を0.3以上とすることで、この正極活物質を用いた二次電池の電池容量を特に高めることができる。また、xの値を0.95以下とすることで、他の元素の含有割合を一定程度確保することができ、その効果を特に発揮することができる。
コバルト(Co)は、充放電サイクル特性の向上に寄与する元素であり、その含有量を示すyの値は、0.05以上0.55以下であることが好ましく、0.10以上0.35以下であることがより好ましい。yの値を0.05以上0.55以下とすることで、この正極活物質を用いた二次電池の初期放電容量を特に高めることができる。
本実施形態の正極活物質では、二次電池の耐久性や出力特性をさらに改善するため、上述した金属元素に加えて、添加元素MおよびAlを含有してもよい。このような添加元素Mとしては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)から選択される1種類以上を用いることができる。
Alの含有量を表すzの値は、0以上0.4以下であることが好ましく、0.01以上0.2以下がより好ましい。zの値を0.4以下とすることで、この正極活物質を用いた二次電池の初期放電容量を特に高めることができる。
添加元素Mの含有量を示すtの値は、0以上0.1以下が好ましく、0.001以上0.05以下がより好ましい。tの値を0.1以下とすることで、Redox反応に寄与する金属元素を十分に確保し、電池容量を高めることができる。
このような添加元素MやAlは、リチウム遷移金属複合酸化物粒子の粒子内部に均一に分散させてもよく、リチウム遷移金属複合酸化物粒子の粒子表面を被覆させてもよい。さらには、粒子内部に均一に分散させた上で、その表面を被覆させてもよい。いずれにしても、添加元素MおよびAlの含有量が上記範囲となるように制御することが好ましい。
(4)比表面積
本実施形態の正極活物質が含むリチウム遷移金属複合酸化物粒子は、比表面積が可能な限り大きいことが好ましい。比表面積が大きくなるほど電解液との接触面積が大きく、これを用いた二次電池の出力特性を大幅に改善することができるためである。
例えば本実施形態の正極活物質の比表面積は0.7m/g以上であることが好ましく、0.8m/g以上であることがより好ましい。これは0.7m/g以上とすることで、二次電池に適用した場合に電解液との反応面積を十分に確保することができ、出力特性を高めることができるからである。
なお、正極活物質の比表面積は、たとえば、窒素ガス吸着によるBET法により測定することができる。
(5)空隙部率
本実施形態の正極活物質が含有するリチウム遷移金属複合酸化物粒子では、空隙部が粒子内部に分散していることが好ましい。リチウム遷移金属複合酸化物粒子の断面積に対する空隙部面積の占有率(以下、「空隙部率」と記載する)は、これが大きくなるほど、比表面積は増大する傾向となる。すなわち、二次電池を構成した場合に、電解液との反応面積を確保することにつながる。
リチウム遷移金属複合酸化物粒子の空隙部率は2.0%以上であることが好ましく、3.0%以上であることがより好ましく、6.0%以上であることがさらに好ましい。
なお、空隙部率は、リチウム遷移金属複合酸化物粒子について、任意の5個以上の粒子の断面をそれぞれSEM観察して、二値化処理し、1つの粒子断面積のうち、その粒子内に分散した空隙部の総面積が占有する率を求め、これらの平均値を算出することにより求めることができる。
(6)単位体積当たりの表面積
本実施形態の正極活物質が含むリチウム遷移金属複合酸化物粒子は、比表面積と、タップ密度との積で算出される単位体積当たりの表面積が1.7m/cc以上であることが好ましく、1.9m/cc以上であることがより好ましく、2.3m/cc以上であることがさらに好ましい。これは、リチウム遷移金属複合酸化物粒子の単位体積当たりの表面積を1.7m/cc以上とすることで、単位体積当たりのリチウム遷移金属複合酸化物粒子の電解液との接触面積を十分に確保し、出力特性を高めることができるからである。
実施形態の正極活物質が含むリチウム遷移金属複合酸化物粒子の単位体積当たりの表面積の上限値は特に限定されないが、例えば20m/cc以下、好ましくは10m/cc以下とすることができる。
5.非水系電解質二次電池
次に、本実施形態の非水系電解質二次電池の一構成例について説明する。
本実施形態の非水系電解質二次電池は、既述の正極活物質を正極材料として用いた正極を有することができる。
まず、本実施形態の非水系電解質二次電池の構造の構成例を説明する。
本実施形態の非水系電解質二次電池は、正極材料に既述の正極活物質を用いたこと以外は、一般的な非水系電解質二次電池と実質的に同様の構造を備えることができる。
具体的には、本実施形態の非水系電解質二次電池は、ケースと、このケース内に収容された正極、負極、非水系電解液およびセパレータを備えた構造を有することができる。
より具体的にいえば、セパレータを介して正極と負極とを積層させて電極体とし、得られた電極体に非水系電解液を含浸させることができる。そして、正極の正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、および負極の負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を、それぞれ集電用リードなどを用いて接続し、ケースに密閉した構造を有することができる。
なお、本実施形態の非水系電解質二次電池の構造は、上記例に限定されないのはいうまでもなく、またその外形も円筒形や積層形など、種々の形状を採用することができる。
各部材の構成例について以下に説明する。
(1)正極
まず正極について説明する。
正極は、シート状の部材であり、例えば、既述の正極活物質を含有する正極合材ペーストを、アルミニウム箔製の集電体の表面に塗布乾燥して溶剤を飛散させて形成できる。なお、正極は、使用する電池にあわせて適宜処理される。例えば、目的とする電池に応じて適当な大きさに形成する裁断処理や、電極密度を高めるためにロールプレスなどによる加圧圧縮処理等を行うこともできる。
上述の正極合材ペーストは、正極合材に、溶剤を添加、混練して形成することができる。そして、正極合材は、粉末状になっている既述の正極活物質と、導電材と、結着剤とを混合して形成できる。
導電材は、電極に適当な導電性を与えるために添加されるものである。導電材の材料は特に限定されないが、例えば天然黒鉛、人造黒鉛および膨張黒鉛などの黒鉛や、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック系材料を用いることができる。
結着剤は、正極活物質をつなぎ止める役割を果たすものである。係る正極合材に使用される結着剤は特に限定されないが、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸等から選択された1種類以上を用いることができる。
なお、正極合材には活性炭などを添加することもできる。正極合材に活性炭などを添加することによって、正極の電気二重層容量を増加させることができる。
溶剤は、結着剤を溶解して正極活物質、導電材、および活性炭等を結着剤中に分散させる働きを有する。溶剤は特に限定されないが、例えばN-メチル-2-ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
また、正極合材ペースト中における各物質の混合比は特に限定されるものではなく、例えば一般の非水系電解質二次電池の正極の場合と同様にすることができる。例えば、溶剤を除いた正極合材の固形分を100質量部とした場合、正極活物質の含有量を60質量部以上95質量部以下、導電材の含有量を1質量部以上20質量部以下、結着剤の含有量を1質量部以上20質量部以下とすることができる。
なお、正極の製造方法は上記方法に限定されるものではなく、例えば正極合材をプレス成型した後、真空雰囲気下で乾燥することで製造することもできる。
(2)負極
負極は、銅などの金属箔集電体の表面に、負極合材ペーストを塗布し、乾燥して形成されたシート状の部材である。
負極は、負極合材ペーストを構成する成分やその配合、集電体の素材等は異なるが、実質的に上述の正極と同様の方法によって形成され、正極と同様に必要に応じて各種処理が行われる。
負極合材ペーストは、負極活物質と結着剤とを混合した負極合材に、適当な溶剤を加えてペースト状にすることができる。
負極活物質としては例えば、金属リチウムやリチウム合金などのリチウムを含有する物質や、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる吸蔵物質を採用することができる。
吸蔵物質は特に限定されないが、例えば天然黒鉛、人造黒鉛、フェノール樹脂等の有機化合物焼成体、およびコークスなどの炭素物質の粉状体等から選択された1種類以上を用いることができる。
係る吸蔵物質を負極活物質に採用した場合には、正極同様に、結着剤として、PVDF等の含フッ素樹脂を用いることができ、負極活物質を結着剤中に分散させる溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
なお、負極の製造方法や構成は上述の例に限定されるものではなく、負極として所定の形状に加工したリチウム金属を用いることもできる。
(3)セパレータ
セパレータは、正極と負極との間に挟み込んで配置されるものであり、正極と負極とを分離し、電解液を保持する機能を有している。
セパレータの材料としては、例えばポリエチレンや、ポリプロピレンなどの薄い膜で、微細な孔を多数有する膜を用いることができるが、上記機能を有するものであれば、特に限定されない。
(4)非水系電解液
非水系電解液は、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものである。
有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネートなどの環状カーボネート;また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート;さらに、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル化合物;エチルメチルスルホンやブタンスルトンなどの硫黄化合物;リン酸トリエチルやリン酸トリオクチルなどのリン化合物などから選ばれる1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
支持塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiN(CF3SO22、およびそれらの複合塩などを用いることができる。
なお、非水系電解液は、電池特性改善のため、ラジカル捕捉剤、界面活性剤、難燃剤などを含んでいてもよい。
本実施形態の非水系電解質二次電池は、既述の正極活物質を正極材料として用いているため、初期放電容量が高く、内部抵抗を抑制することができる。
たとえば、本発明の正極活物質を用いて、2032型コイン型電池を構成した場合に、185mAh/g以上の初期放電容量と低い内部抵抗とを同時に達成することができる。
具体的には、本実施形態の正極活物質を正極に用いて、2032型コイン型電池を構成し、電流密度を0.1mA/cmとして、カットオフ電圧4.3Vまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vまで放電した場合の放電容量である。初期放電容量が185mAh/g以上であることが好ましく、190mAh/g以上であることがより好ましい。
内部抵抗は、電流休止法により評価することができる。電流休止法は、例えば以下の手順により実施することができる。例えば負極が黒鉛粉末とポリフッ化ビニリデンとを混合した負極合材ペーストが銅箔に塗布されて形成されたシートであるラミネート型電池を構成する。そして、該ラミネート型電池について、25℃に保持された恒温槽内で電流密度を0.33mA/cmとして、カットオフ電圧4.3Vまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vまで放電するサイクルを5サイクル繰り返すコンディショニングを行う。次に、-20℃に保持された恒温槽内で電流密度を0.25mA/cmとして、3.7Vまで定電流で放電した後、600秒間休止させた際に生じる電圧緩和ΔVを評価することができる。
電圧緩和ΔVが小さい場合、例えば上記評価条件で0.086V以下の場合、内部抵抗が十分に抑制できていることを意味する。
本実施形態の非水系電解質二次電池は、上述のように、初期放電容量が高く、内部抵抗が抑制されている。このため、これらの特性が高いレベルで要求される小型携帯電子機器(ノート型パーソナルコンピュータや携帯電話端末など)の電源に好適に利用することができる。また、本実施形態の非水系電解質二次電池は、安全性にも優れており、小型化および高出力化が可能であるばかりでなく、高価な保護回路を簡略することができるため、搭載スペースに制約を受ける輸送用機器の電源としても好適に利用することができる。
以下、実施例を参照しながら本発明を詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例および比較例では、特に断りがない限り、遷移金属複合水酸化物粒子および正極活物質の作製には、和光純薬工業株式会社製試薬特級の各試料を使用した。また、核生成工程および粒子成長工程を通じて、反応水溶液のpH値は、pHコントローラ(日伸理化製、NPH-690D)により測定した。
[実施例1]
(1)遷移金属複合水酸化物粒子の製造
(核生成工程)
はじめに、反応槽内に、水を21L入れて撹拌しながら、槽内温度を70℃に設定した。なお、核生成工程、及び粒子成長工程を実施している間、反応前水溶液、及び反応水溶液の液温は上記槽内温度と同じ70℃に保たれている。また、反応槽内は窒素雰囲気となっており、核生成工程、及び粒子成長工程を実施している間、同じ雰囲気に保持した。
続いて、反応槽内にアルカリ水溶液である25質量%水酸化ナトリウム水溶液を適量供給し、pH値が、液温25℃基準で12.8となるように調整することで反応前水溶液を形成した。
同時に、硫酸ニッケル、硫酸コバルトを、各金属元素のモル比がNi:Co=82.0:15.0となるように水に溶解し、2mol/Lの原料水溶液を調製した。
次に、反応前水溶液を撹拌しながら、該反応前水溶液に、上記原料水溶液を125mL/分で供給することで、核生成用反応水溶液を形成し、1分間の核生成を行った。この際、アルカリ水溶液である25質量%の水酸化ナトリウム水溶液についても反応前水溶液に適時供給し、核生成用反応水溶液のpH値を12.8に維持した。
(粒子成長工程)
核生成工程終了後、一旦、すべての水溶液の供給を一旦停止するとともに、硫酸を加えて、pH値が、液温25℃基準で10.0となるように調整することで、粒子成長用反応水溶液を形成した。
粒子成長用反応水溶液のpH値が10.0になったことを確認した後、粒子成長用反応水溶液を撹拌しながら、核生成工程で調製したものと同じ原料水溶液を供給し、核生成工程で生成した核(粒子)を成長させた。成長後、すべての水溶液の供給を停止することで、粒子成長工程を終了した。その後、得られた生成物を、水洗、ろ過および乾燥させることにより、粉末状の被覆前遷移金属複合水酸化物粒子を得た。
なお、粒子成長工程においては、この工程を通じて、アルカリ水溶液である25質量%の水酸化ナトリウム水溶液を粒子成長用反応水溶液に適時供給し、粒子成長用反応水溶液のpH値を10.0に維持した。
また、核生成工程、及び粒子成長工程において、反応水溶液にアンモニア成分は添加しなかったことから、反応水溶液中のアンモニウムイオン濃度は0であった。
(被覆工程)
得られた被覆前遷移金属複合水酸化物粒子をアルミン酸ナトリウム水溶液に分散させ、硫酸による中和で粒子表面にAl(OH)を析出させることで、遷移金属複合水酸化物粒子を得た。
(遷移金属複合水酸化物粒子の評価)
得られた遷移金属複合水酸化物粒子について以下の評価を行った。
[組成]
ICP発光分光分析装置(株式会社島津製作所製、ICPE-9000)を用いた分析により、この遷移金属複合水酸化物粒子は、一般式:Ni0.820Co0.150Al0.030(OH)で表されるものであることが確認された。
[粒子構造]
上記被覆工程を実施する前の被覆前遷移金属複合水酸化物粒子が有する二次粒子の一部を樹脂に埋め込み、クロスセクションポリシャ加工によって断面観察可能な状態とした上で、SEM(日本電子株式会社製、型式:JSM-6360LA)により観察した。この結果、この遷移金属複合水酸化物粒子は、厚みが30nm以下の板状一次粒子、及び粒径が1nm以上5nm以下である微細一次粒子が粒子全体に分布、凝集して形成されており、中心部と粒子表面部は連結していることが確認された。
また、被覆工程を実施する前の被覆前遷移金属複合水酸化物粒子が有する二次粒子の外観について、SEM観察した結果を図3に示す。
図3に示すように厚みが30nm以下の板状一次粒子が確認できる。また、二次粒子の少なくとも表面において、隣接する一方の板状一次粒子301の主表面301Aと、他方の板状一次粒子302の厚み方向を含む面である端面302Aとが接するようにして凝集した構造を有することが確認できた。この際、二次粒子の表面に配置された複数の板状一次粒子は、端面が二次粒子の表面側に配置され、主表面が二次粒子の直径方向に沿って配置されていることも確認できた。
なお、ここでは被覆工程を実施する前の被覆前遷移金属複合水酸化物粒子の粒子構造を示したが、被覆工程の前後で遷移金属複合水酸化物粒子の粒子構造の変化は生じないことから、被覆工程の後においても同様の構造を有することができる。
[平均粒径および粒度分布]
レーザ光回折散乱式粒度分析計(日機装株式会社製、型式:マイクロトラックHRA)を用いて、遷移金属複合水酸化物粒子の平均粒径を測定した。この結果、平均粒径は、7.9μmであることが確認された。
(2)正極活物質の作製
以下の手順により、得られた遷移金属複合水酸化物粒子を用いて正極活物質の製造を行った。
(酸化焙焼工程)
得られた遷移金属複合水酸化物粒子を、空気(酸素濃度:21容量%)気流中、600℃で2時間酸化焙焼した。これにより酸化焙焼粒子を得た。
(混合工程)
得られた酸化焙焼粒子と、リチウム化合物である平均粒径が25μmである水酸化リチウムとをLi/Meが1.06となるように秤量し、シェーカーミキサ装置(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製 型式:TURBULA TypeT2C)を用いて十分に混合した。これにより、リチウム混合物を得た。
(焼成工程)
混合工程で得られたリチウム混合物を、酸素気流中、昇温速度を2℃/分として最高到達温度725℃まで昇温し、この温度で5時間保持することにより焼成した。焼成後、冷却速度を約4℃/分として室温まで冷却した。
(解砕工程)
焼成工程後に得られた正極活物質は、凝集または軽度の焼結が生じていた。このため、この正極活物質を解砕し、平均粒径および粒度分布を調整した。
(正極活物質の評価)
得られた正極活物質について以下の評価を行った。
[組成]
ICP発光分光分析装置を用いた分析により、この正極活物質は、一般式:Li1.06Ni0.820Co0.150Al0.030で表されるリチウムニッケルコバルト複合酸化物からなることが確認された。
また、正極活物質の粉末X線回折の結果から、正極活物質がリチウムニッケルコバルト複合酸化物(粒子)から構成され、該リチウムニッケルコバルト複合酸化物は六方晶であることが確認できた。
[粒子構造、空隙部率]
正極活物質の一部を樹脂に埋め込み、クロスセクションポリシャ加工によって断面観察可能な状態とした上で、SEMにより観察した。この結果、この正極活物質は、複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子から構成され、この二次粒子は、粒子表面部と電気的に導通する一次粒子の凝集部および空隙部とを備えた多孔質構造を有することが確認された。
また、任意の20個の粒子の断面をそれぞれSEM観察して、ImageJにより二値化処理し、1つの粒子断面積のうち、その粒子内に分散した空隙部の総面積が占有する率を求め、これらの平均値を算出することにより空隙部率を求めたところ10.0%であった。
[平均粒径および粒度分布]
レーザ光回折散乱式粒度分析計(日機装株式会社製 型式:マイクロトラックHRA)を用いて、正極活物質の平均粒径を測定した。この結果、平均粒径は、5.9μmであることが確認された。
[比表面積およびタップ密度]
流動方式ガス吸着法比表面積測定装置(ユアサアイオニクス株式会社製、マルチソーブ)により比表面積を、タッピングマシン(株式会社蔵持科学器械製作所、KRS-406)によりタップ密度を、それぞれ測定した。この結果、得られた正極活物質の比表面積は1.3m/gであり、タップ密度は2.1g/ccであることが確認された。
(3)二次電池の作製
以下の手順により、初期放電容量測定用にコイン型電池を、電圧緩和測定用にラミネート型電池をそれぞれ作製し、初期放電容量と、電圧緩和との測定を行った。
(コイン型電池の作製、初期放電容量の評価)
得られた正極活物質を用いて図1に示した2032型コイン型電池10を作製した。
2032型コイン型電池10は、ケース11と、このケース11内に収容された電極構造体12とから構成されている。
ケース11は、中空かつ一端が開口された正極缶111と、この正極缶111の開口部に配置される負極缶112とを有しており、負極缶112を正極缶111の開口部に配置すると、負極缶112と正極缶111との間に電極構造体12を収容する空間が形成されるように構成されている。
電極構造体12は、正極膜121、セパレータ122および負極膜123からなり、この順で並ぶように積層されており、正極膜121が正極缶111の内面に接触し、負極膜123が負極缶112の内面に接触するようにケース11に収容されている。なお、正極膜121が正極、負極膜123が負極となる。
ケース11は、ガスケット113を備えており、このガスケット113によって、正極缶111と負極缶112との間が電気的に絶縁状態を維持するように固定されている。また、ガスケット113は、正極缶111と負極缶112との隙間を密封して、ケース11内と外部との間を気密、液密に遮断する機能も有している。
まず得られた正極活物質52.5mgと、アセチレンブラック15mgと、PTEE7.5mgを混合し、100MPaの圧力で、直径11mm、厚さ100μmにプレス成型した後、真空乾燥機中120℃で12時間乾燥することで、正極膜121を作製した。
また、負極膜123には、直径17mm、厚さ1mmのリチウム金属を用いた。電解液には、1MのLiClOを支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。セパレータ122には、膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を用いた。
以上の材料を用いて2032型コイン型電池10を、露点が-80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で作製した。
2032型コイン型電池10を作製してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、以下の充放電を行い、初期放電容量の測定を行った。
具体的には、正極に対する電流密度を0.1mA/cmとして、カットオフ電圧が4.3Vとなるまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧が3.0Vになるまで放電したときの放電容量を測定する充放電試験を行ない、初期放電容量を求めた。この結果、初期放電容量は、202mAh/gであることが確認された。なお、初期放電容量の測定には、電池充放電システム(北斗電工株式会社製、HJ1001SD8)を用いた。
(ラミネート型電池の作製、電圧緩和の測定)
得られた正極活物質を用いて、図2に示したラミネート型電池20を作製した。
ラミネート型電池20は、正極膜21と、セパレータ22と、負極膜23との積層物に電解液を含浸させたものを、ラミネート24により封止した構造を有している。なお、正極膜21には正極タブ25が、負極膜23には負極タブ26がそれぞれ接続されており、正極タブ25、負極タブ26はラミネート24の外に露出している。
得られた正極活物質20.0gと、アセチレンブラック2.35gと、ポリフッ化ビニリデン1.18gとをN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に分散させたスラリーをAl箔上に1cmあたり正極活物質が7.3mg存在するように塗布した。次いで、係るAl箔上に正極活物質含有するスラリーを塗布したものを、120℃で30分間、大気中で乾燥し、NMPを除去した。正極活物質が塗布されたAl箔を幅66mmの短冊状に切り取り、荷重1.2tでロールプレスして正極膜を作製した。そして、正極膜を50mm×30mmの長方形に切り抜き、真空乾燥機中120℃で12時間乾燥したものをラミネート型電池20の正極膜21として用いた。
また、平均粒径20μm程度の黒鉛粉末とポリフッ化ビニリデンとの混合物である負極合材ペーストを銅箔に塗布された負極膜23を用意した。セパレータ22には、膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を、電解液には、1MのLiPFを支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)の3:7混合液(宇部興産株式会社製)を用いた。
露点-80℃に管理されたドライルームで、上記正極膜21と、セパレータ22と、負極膜23との積層物に電解液を含浸させ、ラミネート24により封止して、ラミネート型電池20を作製した。
ラミネート型電池を作製し、25℃に保持された恒温槽内で電流密度を0.33mA/cmとして、カットオフ電圧4.3Vまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vまで放電するサイクルを5サイクル繰り返すコンディショニングを行った。次に、-20℃に保持された恒温槽内で電流密度を0.25mA/cmとして、3.7Vまで定電流で放電した後、600秒間休止させた際に生じる電圧緩和ΔVを評価した。この結果、電圧緩和ΔVは、0.074Vであることが確認された。
なお、電圧緩和の測定には、電池充放電システム(北斗電工株式会社製、HJ1001SD8)を用いた。
[実施例2]
正極活物質を調製する際の焼成工程において、最高到達温度を735℃とした点以外は、実施例1と同様にして、遷移金属複合水酸化物粒子、正極活物質および二次電池を得て、その評価を行った。焼成工程における最高到達温度以外の条件、すなわち昇温速度、降温速度、最高到達温度での保持時間は実施例1と同じになっている。評価結果を表1、表2に示す。
なお、正極活物質のICP発光分光分析、及び粉末X線回折の結果から、正極活物質が表1に示した一般式で表されるリチウムニッケルコバルト複合酸化物(粒子)から構成され、該リチウムニッケルコバルト複合酸化物は六方晶であることが確認できた。
また、正極活物質の一部を樹脂に埋め込み、クロスセクションポリシャ加工によって断面観察可能な状態とした上で、SEMにより観察した。その結果、得られた正極活物質は、複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子から構成され、この二次粒子は、粒子表面部と電気的に導通する一次粒子の凝集部および空隙部とを備えた多孔質構造を有することが確認された。
[実施例3]
正極活物質を調製する際の焼成工程において、最高到達温度を745℃とした点以外は、実施例1と同様にして、遷移金属複合水酸化物粒子、正極活物質および二次電池を得て、その評価を行った。焼成工程における最高到達温度以外の条件、すなわち昇温速度、降温速度、最高到達温度での保持時間は実施例1と同じになっている。評価結果を表1、表2に示す。
なお、正極活物質のICP発光分光分析、及び粉末X線回折の結果から、正極活物質が表1に示した一般式で表されるリチウムニッケルコバルト複合酸化物(粒子)から構成され、該リチウムニッケルコバルト複合酸化物は六方晶であることが確認できた。
また、正極活物質の一部を樹脂に埋め込み、クロスセクションポリシャ加工によって断面観察可能な状態とした上で、SEMにより観察した。その結果、得られた正極活物質は、複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子から構成され、この二次粒子は、粒子表面部と電気的に導通する一次粒子の凝集部および空隙部とを備えた多孔質構造を有することが確認された。
[実施例4]
正極活物質を調製する際の焼成工程において、最高到達温度を760℃とした点以外は、実施例1と同様にして、遷移金属複合水酸化物粒子、正極活物質および二次電池を得て、その評価を行った。焼成工程における最高到達温度以外の条件、すなわち昇温速度、降温速度、最高到達温度での保持時間は実施例1と同じになっている。評価結果を表1、表2に示す。
なお、正極活物質のICP発光分光分析、及び粉末X線回折の結果から、正極活物質が表1に示した一般式で表されるリチウムニッケルコバルト複合酸化物(粒子)から構成され、該リチウムニッケルコバルト複合酸化物は六方晶であることが確認できた。
また、正極活物質の一部を樹脂に埋め込み、クロスセクションポリシャ加工によって断面観察可能な状態とした上で、SEMにより観察した。その結果、得られた正極活物質は、複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子から構成され、この二次粒子は、粒子表面部と電気的に導通する一次粒子の凝集部および空隙部とを備えた多孔質構造を有することが確認された。
[実施例5]
(1)遷移金属複合水酸化物粒子の製造
(核生成工程、粒子成長工程、被覆工程)
反応前水溶液を形成する際、アルカリ水溶液に加えて、25質量%アンモニア水を添加した。
また、反応前水溶液に原料水溶液、及びアルカリ水溶液を供給する際、併せて25質量%アンモニア水を添加した。
以上の点以外は実施例1と同様にして核生成工程、粒子成長工程、及び被覆工程を実施し、遷移金属複合水酸化物粒子の製造を行った。
なお、核生成工程と、粒子成長工程の間、反応前水溶液、及び反応水溶液のアンモニウムイオン濃度が1g/Lとなるようにアンモニア水を添加した。
(遷移金属複合水酸化物粒子の評価)
得られた遷移金属複合水酸化物粒子について実施例1の場合と同様に以下の評価を行った。
[組成]
ICP発光分光分析装置(株式会社島津製作所製、ICPE-9000)を用いた分析により、この遷移金属複合水酸化物粒子は、一般式:Ni0.820Co0.150Al0.030(OH)で表されるものであることが確認された。
[粒子構造]
上記被覆工程を実施する前の被覆前遷移金属複合水酸化物粒子が有する二次粒子の一部を樹脂に埋め込み、クロスセクションポリシャ加工によって断面観察可能な状態とした上で、SEMにより観察した。この結果、この遷移金属複合水酸化物粒子は、厚みが30nm以下の板状一次粒子、及び粒径が1nm以上5nm以下である微細一次粒子が粒子全体に分布、凝集して形成されており、中心部と粒子表面部は連結していることが確認された。
また、被覆工程を実施する前の被覆前遷移金属複合水酸化物粒子が有する二次粒子の外観について、SEM観察した結果を図4に示す。
図4に示すように厚みが30nm以下の板状一次粒子が確認できる。また、二次粒子の少なくとも表面において、隣接する一方の板状一次粒子401の主表面401Aと、他方の板状一次粒子402の厚み方向を含む面である端面402Aとが接するようにして凝集した構造を有することが確認できた。この際、二次粒子の表面に配置された複数の板状一次粒子は、端面が二次粒子の表面側に配置され、主表面が二次粒子の直径方向に沿って配置されていることも確認できた。
なお、ここでは被覆工程を実施する前の被覆前遷移金属複合水酸化物粒子の粒子構造を示したが、被覆工程の前後で遷移金属複合水酸化物粒子の粒子構造の変化は生じないことから、被覆工程の後においても同様の構造を有することができる。
[平均粒径および粒度分布]
レーザ光回折散乱式粒度分析計を用いて、遷移金属複合水酸化物粒子の平均粒径を測定した。この結果、平均粒径は、7.7μmであることが確認された。
(2)正極活物質の作製
上述の遷移金属複合水酸化物粒子を用いた点以外は、実施例4と同様にして正極活物質を製造した。
なお、焼成工程における最高到達温度以外の条件、すなわち昇温速度、降温速度、最高到達温度での保持時間は実施例1と同じになっている。
(正極活物質の評価)
得られた正極活物質について実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
なお、ICP発光分光分析装置を用いた分析により、得られた正極活物質は、一般式:Li1.06Ni0.820Co0.150Al0.030で表されるリチウムニッケルコバルト複合酸化物からなることが確認された。
また、正極活物質の粉末X線回折の結果から、正極活物質がリチウムニッケルコバルト複合酸化物(粒子)から構成され、該リチウムニッケルコバルト複合酸化物は六方晶であることが確認できた。
そして、正極活物質の一部を樹脂に埋め込み、クロスセクションポリシャ加工によって断面観察可能な状態とした上で、SEMにより観察した。その結果、得られた正極活物質は、複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子から構成され、この二次粒子は、粒子表面部と電気的に導通する一次粒子の凝集部および空隙部とを備えた多孔質構造を有することが確認された。
(3)二次電池の作製
上述の正極活物質を用いた点以外は、実施例1と同様にして初期放電容量測定用にコイン型電池を、電圧緩和測定用にラミネート型電池をそれぞれ作製し、初期放電容量と、電圧緩和との測定を行った。
結果を表2に示す。
[比較例1]
(1)遷移金属複合水酸化物粒子の製造
(核生成工程、粒子成長工程、被覆工程)
反応槽内の槽内温度を50℃に設定し、核生成工程、及び粒子成長工程を実施している間、反応前水溶液、及び反応水溶液の液温は上記槽内温度と同じ50℃に保持した。
そして、反応前水溶液を形成する際、アルカリ水溶液に加えて、25質量%アンモニア水を添加した。
また、反応前水溶液に原料水溶液、及びアルカリ水溶液を供給する際、併せて25質量%アンモニア水を添加した。
以上の点以外は実施例1と同様にして核生成工程、粒子成長工程、及び被覆工程を実施し、遷移金属複合水酸化物粒子の製造を行った。
なお、核生成工程と、粒子成長工程の間、反応前水溶液、及び反応水溶液のアンモニウムイオン濃度が14g/Lとなるようにアンモニア水を添加した。
(遷移金属複合水酸化物粒子の評価)
得られた遷移金属複合水酸化物粒子について実施例1の場合と同様に以下の評価を行った。
[組成]
ICP発光分光分析装置を用いた分析により、この複合水酸化物粒子は、一般式:Ni0.820Co0.150Al0.03(OH)で表されるものであることが確認された。
[粒子構造]
被覆工程を実施する前の複合水酸化物粒子の一部を樹脂に埋め込み、クロスセクションポリシャ加工によって断面観察可能な状態とした上で、SEMにより観察した。この結果、この複合水酸化物粒子は、板状一次粒子および微細一次粒子が密に凝集して二次粒子を形成しており、二次粒子内には空隙はほとんど確認されなかった。
また、被覆工程を実施する前の遷移金属複合水酸化物粒子の外観について、SEM観察した結果を図5に示す。
図5に示すように厚みが40nmを超える板状の一次粒子が確認できた。
[平均粒径および粒度分布]
レーザ光回折散乱式粒度分析計を用いて、複合水酸化物粒子の平均粒径を測定した。この結果、平均粒径は、5.8μmであることが確認された。
(2)正極活物質の作製
上述の遷移金属複合水酸化物粒子を用いた点以外は、実施例4と同様にして正極活物質を製造した。
なお、焼成工程における最高到達温度以外の条件、すなわち昇温速度、降温速度、最高到達温度での保持時間は実施例1と同じになっている。
(正極活物質の評価)
得られた正極活物質について実施例1と同様にして以下の評価を行った。
[組成]
ICP発光分光分析装置を用いた分析により、この正極活物質は、一般式:Li1.06Ni0.820Co0.150Al0.030で表されるリチウムニッケルコバルト複合酸化物からなるであることが確認された。
なお、正極活物質の粉末X線回折の結果から、正極活物質がリチウムニッケルコバルト複合酸化物(粒子)から構成され、該リチウムニッケルコバルト複合酸化物は六方晶であることが確認できた。
[粒子構造、空隙部率]
正極活物質の一部を樹脂に埋め込み、クロスセクションポリシャ加工によって断面観察可能な状態とした上で、SEMにより観察した。この結果、この正極活物質粒子は、複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子から構成され、この二次粒子は、ほとんど空隙部を有さないことが確認された。
また、実施例1と同様にして空隙部率を求めたところ1.6%であった。
[平均粒径および粒度分布]
レーザ光回折散乱式粒度分析計を用いて、正極活物質の平均粒径を測定した。この結果、平均粒径は、5.7μmであることが確認された。
[比表面積およびタップ密度]
流動方式ガス吸着法比表面積測定装置により比表面積を、タッピングマシンによりタップ密度を、それぞれ測定した。この結果、比表面積は0.7m/gであり、タップ密度は2.0g/ccであることが確認された。
(3)二次電池の作製
上述の正極活物質を用いた点以外は、実施例1と同様にして初期放電容量測定用にコイン型電池を、電圧緩和測定用にラミネート型電池をそれぞれ作製し、初期放電容量と、電圧緩和との測定を行った。
結果を表2に示す。
Figure 0007091711000001
Figure 0007091711000002
以上の結果から、反応水溶液内のアンモニウムイオン濃度を1g/L以下に抑制し、核生成工程、及び粒子成長工程を実施した実施例1~実施例5において得られた遷移金属複合水酸化物粒子を用いて製造した正極活物質を用いた非水系電解質二次電池は、比較例1と比較して、初期放電容量が高く、内部抵抗を抑制できることが確認できた。
301、302、401、402 板状一次粒子
301A、401A 主表面
302A、402A 端面

Claims (10)

  1. 非水系電解質二次電池用正極活物質の前駆体となる遷移金属複合水酸化物粒子を、晶析反応により製造する遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法であって、
    反応槽内に、少なくとも遷移金属を含有する原料水溶液と、アルカリ水溶液とを供給して反応水溶液を形成し、前記反応水溶液を、液温25℃基準におけるpH値が12.0以上14.0以下に制御し、核の生成を行なう核生成工程と、
    前記核生成工程で得られた前記反応水溶液に、少なくとも遷移金属を含有する原料水溶液と、アルカリ水溶液とを供給して、液温25℃基準におけるpH値を9.0以上11.0以下に制御し、前記核を成長させる粒子成長工程とを有し、
    前記核生成工程と、前記粒子成長工程において、前記反応水溶液中のアンモニウムイオン濃度を1g/L以下に制御し、
    前記核生成工程と、前記粒子成長工程の間、前記反応槽内の液温度を70℃以上80℃以下とし、
    前記粒子成長工程後に得られる前記遷移金属複合水酸化物粒子の二次粒子の平均粒径が7.7μm以上15μm以下である遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法。
  2. 前記粒子成長工程後に得られる前記遷移金属複合水酸化物粒子は、一般式(A):NiCoAl(OH)2+a(ただし、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、0≦a≦0.5、Mは、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種類以上の添加元素)で表される遷移金属複合水酸化物の粒子である、請求項1に記載の遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法。
  3. 前記粒子成長工程後に得られる前記遷移金属複合水酸化物粒子は、一次粒子が凝集した二次粒子を有しており、
    前記添加元素MおよびAlから選択された1種類以上は、前記二次粒子の内部及び表面のいずれか一方、もしくは両方に均一に配置されている請求項2に記載の遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法。
  4. 非水系電解質二次電池用正極活物質の前駆体となる遷移金属複合水酸化物粒子であって、
    厚みが30nm以下の板状一次粒子、及び微細一次粒子が凝集して形成された二次粒子を有し、
    前記二次粒子は、少なくともその表面において、隣接する一方の前記板状一次粒子の主表面と、他方の前記板状一次粒子の端面とが接するようにして凝集した構造を有し、
    前記二次粒子は平均粒径が7.7μm以上15μm以下である、遷移金属複合水酸化物粒子。
  5. 請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法により得られた遷移金属複合水酸化物粒子と、リチウム化合物とを混合して、リチウム混合物を形成する混合工程と、
    前記混合工程で形成された前記リチウム混合物を、酸化性雰囲気中、650℃以上800℃以下で焼成する焼成工程とを有する、非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  6. 前記混合工程において、前記リチウム混合物に含まれるリチウム以外の金属の原子数の和を1とした場合に、前記リチウム混合物に含まれるリチウムの原子数の比が0.95以上1.5以下となるように、前記リチウム混合物を形成する請求項5に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  7. 前記混合工程において、前記リチウム化合物の平均粒径が110μm以下である、請求項5または請求項6に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  8. 前記混合工程の前に、前記遷移金属複合水酸化物粒子を105℃以上750℃以下の温度で酸化焙焼する、酸化焙焼工程をさらに備え、
    前記混合工程では、前記酸化焙焼工程で得られた酸化焙焼粒子と、前記リチウム化合物とを混合して前記リチウム混合物を形成する請求項5~請求項7のいずれか一項に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  9. 前記焼成工程後に得られる非水系電解質二次電池用正極活物質は、一般式(B):Li1+uNiCoAl(ただし、-0.05≦u≦0.50、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、Mは、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種類以上の添加元素)で表され、六方晶系のリチウムニッケルコバルト複合酸化物粒子を含み、
    前記リチウムニッケルコバルト複合酸化物粒子は多孔質構造を有する請求項5~請求項8のいずれか一項に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  10. リチウム遷移金属複合酸化物粒子を含む非水系電解質二次電池用正極活物質であって、
    前記リチウム遷移金属複合酸化物粒子は、複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子からなり、
    前記二次粒子は、表面部と電気的に導通する一次粒子の凝集部と、空隙部とを有しており、
    前記二次粒子は、平均粒径が1μm以上15μm以下であり、比表面積は0.8m/g以上であり、比表面積×タップ密度で算出される単位体積当たりの表面積が1.7m/cc以上であり、空隙部率が2.0%以上10.0%以下である非水系電解質二次電池用正極活物質。
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