JP7090050B2 - 水電解システム及びその制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は、水を電気分解してアノード側に酸素を発生させ、一方で、酸素よりも高圧な高圧水素をカソード側に発生させる水電解システム、及び、その制御方法に関する。
特許文献1には、水を電気分解してアノード側に酸素を発生させ、一方で、酸素よりも高圧な高圧水素をカソード側に発生させる差圧式の水電解システムが開示されている。この水電解システムは、固体高分子電解質膜(PEM)を含むMEA(膜/電極接合体)等を有する複数のセルを直列に接続したスタックを備えており、カソード側には高圧水素が充満され、一方で、アノード側には常圧の水及び酸素が存在する。
そして、水電解システムでは、高圧水素の生成処理後(水電解システムの運転停止後)、スタック内のMEAを保護するため、カソード側の高圧水素を強制的に脱圧し、常圧付近まで減圧する。その際、急激に脱圧処理を行えば、PEMにブリスターが発生するため、時間をかけてゆっくりと高圧水素を排出する必要がある。なお、ブリスターは、PEM内に滞留している水素ガスが、周囲の脱圧に伴って、PEMから抜け切れずに膨張することに起因して発生する。
特開2012-219291号公報
ところで、特許文献1では、水電解システムの運転停止時に、カソード側からアノード側にクロスリークする水素を、PEMの膜ポンプ効果によりカソード側に戻すことにより、水素によるアノード触媒の還元を抑制し、スタックの性能低下を阻止している。しかしながら、膜ポンプ効果に対して水素のクロスリーク量が多いと、PEM内の条件によっては、水素及び酸素等がPEMの膜成分と反応し、該膜成分の流出、いわゆる膜やせが起こる可能性がある。
このような膜やせの発生は、差圧式の水電解システムで差圧を保持する際、重要な要因となるため、膜成分の流出を防ぐ必要がある。そこで、クロスリークする水素を抑制するため、MEAに印加する電解電流を増加させて膜ポンプ効果を向上させることが考えられる。しかしながら、このような手法で脱圧処理を行うと、水素を無駄に排出することになるため、システム効率が却って低下する。
上記の課題を鑑みると、例えば、図3に例示するように、脱圧処理の開始時には、比較的速い脱圧速度(高圧水素の圧力の時間変化量)で水素を排出することで、カソード側の高圧水素の圧力を速やかに低下させ、一方で、該圧力がある程度低下すれば、比較的遅い脱圧速度で水素を排出すればよい。そのためには、カソード側から配管を介して水素を排出する場合に、該水素の圧力を圧力センサで検出し、検出した圧力に基づいて、配管に設けられた脱圧制御弁の開度を調整すればよい。
前述のように、脱圧処理の開始時には、水素の圧力が急激に低下する。そのため、比較的広いレンジの圧力センサを用いて圧力を検出する必要がある。しかしながら、広いレンジの圧力センサでは、検出精度が低いので、低圧力領域での水素の圧力を精度よく検出することができない。
一方、低圧力領域では、時間をかけて水素を排出するので、検出精度の高い圧力センサで圧力を検出する必要がある。しかしながら、検出精度の高い圧力センサでは、検出範囲が狭いので、高圧力領域での水素の圧力を検出することができない。
このように、従来の手法では、水素の圧力に応じて脱圧制御弁の開度を適切に制御することが難しい。
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、脱圧制御弁を精度よく制御することで、脱圧処理時のブリスターの発生を効果的に抑制することができる水電解システム及びその制御方法を提供することを目的とする。
本発明の態様は、電解質膜と、該電解質膜の両側に設けられた給電体とを有し、前記各給電体間に電解電流を印加することで、水を電気分解してアノード側に酸素を発生させ、一方で、カソード側に前記酸素よりも高圧な高圧水素を発生させる水電解システム及びその制御方法に関する。
前記水電解システムは、配管、脱圧制御弁、減圧機構、第1圧力センサ、第2圧力センサ及び制御部をさらに有する。前記配管は、前記カソード側に接続されている。また、前記脱圧制御弁は、前記配管に設けられ、前記電解電流による電解処理の停止後、開弁状態になることで、前記カソード側から前記配管を介して前記高圧水素を排出する脱圧処理を行う。前記減圧機構は、前記配管における前記脱圧制御弁よりも前記高圧水素の排出方向の上流側に設けられ、前記高圧水素を減圧する。前記第1圧力センサは、前記配管における前記減圧機構よりも前記排出方向の上流側で、減圧前の前記高圧水素の圧力を、第1圧力として検出する。前記第2圧力センサは、前記配管における前記減圧機構と前記脱圧制御弁との間で、減圧後の前記高圧水素の圧力を、第2圧力として検出する。前記制御部は、前記第1圧力又は前記第2圧力に基づいて、前記脱圧制御弁の開度を制御する。
また、前記制御方法は、第1~第3ステップを有する。前記第1ステップでは、前記電解電流による電解処理の停止後、前記カソード側に接続された配管に設けられた脱圧制御弁を制御部によって開弁状態に制御することで、前記カソード側から前記配管を介して前記高圧水素を排出する脱圧処理を開始させる。前記第2ステップでは、前記配管における前記脱圧制御弁よりも前記高圧水素の排出方向の上流側に設けられた減圧機構により前記高圧水素を減圧する際に、前記減圧機構よりも前記排出方向の上流側で、第1圧力センサが減圧前の前記高圧水素の圧力を第1圧力として検出すると共に、前記減圧機構と前記脱圧制御弁との間で、第2圧力センサが減圧後の前記高圧水素の圧力を第2圧力として検出する。前記第3ステップでは、前記制御部が前記第1圧力又は前記第2圧力に基づいて前記脱圧制御弁の開度を制御する。
本発明によれば、減圧機構によって高圧水素を減圧させ、配管における減圧機構の上流側の圧力を第1圧力センサで検出し、下流側の圧力を第2圧力センサで検出する。このように、圧力センサを多段化することで、高圧力領域では第1圧力センサが検出した第1圧力に基づいて脱圧制御弁の開度を制御し、低圧力領域では第2圧力センサが検出した第2圧力に基づいて脱圧制御弁の開度を制御することが可能となる。つまり、本発明では、圧力領域に応じて、圧力センサを切り替えることで、脱圧制御弁の開度を適切に制御することができる。従って、本発明では、脱圧制御弁を精度よく制御しつつ、脱圧処理時のブリスターの発生を抑制することができる。
本実施形態に係る水電解システムの構成図である。 水素の挙動の説明図である。 図1の水電解システムの制御方法を説明するタイミングチャートである。 図1の水電解システムの制御方法を説明するフローチャートである。 図1の水電解システムの制御方法を説明するタイミングチャートである。
以下、本発明に係る水電解システム及びその制御方法について好適な実施形態を例示し、添付の図面を参照しながら説明する。
[1.本実施形態の構成]
本実施形態に係る水電解システム10は、図1に示すように、純水を電気分解することによって高圧水素(常圧よりも高圧、例えば、1MPa~100MPaの水素)を製造する高圧水電解装置12と、純水供給装置14を介して市水から生成された純水が供給され、該純水を高圧水電解装置12に供給すると共に、高圧水電解装置12から排出される余剰の水を、高圧水電解装置12に循環供給する水循環装置16と、高圧水電解装置12から高圧水素が導出される高圧水素配管18(配管)と、コントローラ20(制御部)とを備える。
高圧水電解装置12は、差圧式高圧水素製造装置(カソード側圧力>アノード側圧力)を構成しており、複数の単位セル24が積層される。単位セル24の積層方向一端には、ターミナルプレート26a、絶縁プレート28a及びエンドプレート30aが外方に向かって、順次、配設される。単位セル24の積層方向他端には、同様にターミナルプレート26b、絶縁プレート28b及びエンドプレート30bが外方に向かって、順次、配設される。エンドプレート30a、30b間は、一体的に締め付け保持される。
ターミナルプレート26a、26bの側部には、端子部34a、34bが外方に突出して設けられる。端子部34a、34bは、配線36a、36bを介して電解用電源38に電気的に接続される。陽極(アノード)側である端子部34aは、電解用電源38のプラス極に接続される一方、陰極(カソード)側である端子部34bは、前記電解用電源38のマイナス極に接続される。なお、配線36aには、電解用電源38から配線36a、36b及び端子部34a、34bを介して単位セル24に印加される電解電流を検出する電流センサ40が設けられている。電流センサ40が検出した電解電流の信号は、コントローラ20に入力される。
単位セル24は、円盤状の電解質膜・電極構造体(MEA)42と、該電解質膜・電極構造体42を挟持するアノード側セパレータ44及びカソード側セパレータ46とを備える。アノード側セパレータ44及びカソード側セパレータ46は、円盤状を有する。
電解質膜・電極構造体42は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜(PEM)48と、前記固体高分子電解質膜48の両面に設けられるアノード側給電体50及びカソード側給電体52とを備える。
固体高分子電解質膜48の両面には、アノード電極触媒層50a及びカソード電極触媒層52aが形成される。アノード電極触媒層50aは、例えば、Ru(ルテニウム)系触媒を使用する一方、カソード電極触媒層52aは、例えば、白金触媒を使用する。
単位セル24の外周縁部には、積層方向に互いに連通して、水(純水)を供給するための水供給連通孔56と、反応により生成された酸素及び未反応の水(混合流体)を排出するための排出連通孔58と、反応により生成された水素を流すための水素連通孔60とが設けられる。
アノード側セパレータ44の電解質膜・電極構造体42に対向する面には、水供給連通孔56及び排出連通孔58に連通する第1流路64が設けられる。第1流路64は、アノード側給電体50の表面積に対応する範囲内に設けられると共に、複数の流路溝や複数のエンボス等で構成される。第1流路64には、反応により生成された酸素及び未反応の水が流通する。
カソード側セパレータ46の電解質膜・電極構造体42に向かう面には、水素連通孔60に連通する第2流路68が形成される。第2流路68は、カソード側給電体52の表面積に対応する範囲内に設けられると共に、複数の流路溝や複数のエンボス等で構成される。第2流路68には、反応により生成された高圧水素が流通する。
水循環装置16は、高圧水電解装置12の水供給連通孔56に連通する循環配管72を備え、この循環配管72には、循環ポンプ74、イオン交換器76及び酸素側気液分離器78が配設される。
酸素側気液分離器78の上部には、戻り配管80の一端部が連通すると共に、戻り配管80の他端は、高圧水電解装置12の排出連通孔58に連通する。酸素側気液分離器78には、純水供給装置14に接続された純水供給配管82と、酸素側気液分離器78で純水から分離された酸素を排出するための酸素排気配管84とが連結される。
高圧水電解装置12の水素連通孔60には、高圧水素配管18が接続され、高圧水素配管18は、逆止弁86及び背圧弁(図示せず)を介して水素供給部(例えば、水素タンク等)に接続される。高圧水素配管18からは、後述する脱圧処理の際、カソード側から高圧水素を排出するための脱圧配管88(配管)が分岐している。
脱圧配管88には、高圧水素の排出方向に沿って、高圧用減圧弁90(減圧機構)及び脱圧制御弁92が順に設けられている。高圧用減圧弁90は、排出方向の上流側の第1減圧弁90aと、排出方向の下流側の第2減圧弁90bとを備える。第1減圧弁90a及び第2減圧弁90bは、リリーフ機能を備えた減圧弁である。
高圧水素配管18には、水素連通孔60の近傍の高圧水素の圧力を、第1圧力として検出する第1圧力検出センサ94(第1圧力センサ)が配置されている。また、脱圧配管88には、第1減圧弁90aと第2減圧弁90bとの間の高圧水素の圧力を、第2圧力として検出する第2圧力検出センサ96(第2圧力センサ)が配置されている。さらに、脱圧配管88には、第2減圧弁90bと脱圧制御弁92との間の高圧水素の圧力を、第3圧力として検出する第3圧力検出センサ98(第3圧力センサ)が配置されている。第1~第3圧力検出センサ94~98により検出される第1~第3圧力の信号は、コントローラ20に入力される。
なお、第1~第3圧力検出センサ94~98は、第1圧力検出センサ94、第2圧力検出センサ96、及び、第3圧力検出センサ98の順に、検出範囲(レンジ)が狭くなる。また、第1~第3圧力検出センサ94~98は、第1圧力検出センサ94、第2圧力検出センサ96、及び、第3圧力検出センサ98の順に、検出精度が高くなる。
コントローラ20は、電流センサ40及び第1~第3圧力検出センサ94~98から入力される各信号に基づいて、脱圧制御弁92の開度を制御する。
[2.本実施形態の動作]
このように構成される水電解システム10の動作について説明する。ここでは、水電解システム10による水素の生成処理について簡単に説明した後、本実施形態に係る水電解システム10の制御方法である高圧水素の脱圧処理について説明する。
先ず、水電解システム10の始動時には、純水供給装置14を介して市水から生成された純水が、水循環装置16を構成する酸素側気液分離器78に供給される。
水循環装置16では、循環ポンプ74の作用下に、循環配管72を介して純水が高圧水電解装置12の水供給連通孔56に供給される。一方、ターミナルプレート26a、26bの端子部34a、34bには、電気的に接続されている電解用電源38を介して通常の電解電流が印加される。
このため、各単位セル24では、水供給連通孔56からアノード側セパレータ44の第1流路64に水が供給され、この水がアノード側給電体50内に沿って移動する。従って、水は、アノード電極触媒層50aで電気により分解され、水素イオン、電子及び酸素が生成される。この陽極反応により生成された水素イオンは、固体高分子電解質膜48を透過してカソード電極触媒層52a側に移動し、電子と結合して水素が得られる。
これにより、カソード側セパレータ46とカソード側給電体52との間に形成される第2流路68に沿って水素が流動する。この水素は、水供給連通孔56よりも高圧に維持されており、水素連通孔60を流れて高圧水電解装置12の外部に取り出し可能となる。
一方、第1流路64には、反応により生成した酸素と、未反応の水とが流動しており、これらの混合流体が排出連通孔58に沿って水循環装置16の戻り配管80に排出される。この未反応の水及び酸素は、酸素側気液分離器78に導入されて分離された後、水は、循環ポンプ74を介して循環配管72からイオン交換器76を通って水供給連通孔56に導入される。水から分離された酸素は、酸素排気配管84から外部に排出される。
次いで、本実施形態に係る水電解システム10の制御方法である高圧水素の脱圧処理について、図2~図5を参照しながら説明する。
脱圧処理は、上述した水電解システム10の電解運転の停止後、脱圧制御弁92を開放して、脱圧配管88を水素連通孔60に連通することで開始される。この場合、電解運転時の電解電流よりも低い電流値の電解電流を印加しつつ、脱圧制御弁92の開度調整によって徐々に減圧処理を行う。該電流値は、膜ポンプ効果が得られる最小電流値に設定される。
すなわち、図2に示すように、高圧状態の第2流路68から常圧状態の第1流路64に、固体高分子電解質膜48を透過して水素が移動しやすい(水素のクロスリーク又は水素の拡散という)。アノード電極触媒層50aにクロスリークした水素は、再度プロトン化し、固体高分子電解質膜48の膜ポンプ効果によって、カソード電極触媒層52a側に戻される。従って、運転停止後に、アノード電極触媒層50a側にリークした高圧水素が滞留することを抑制し、アノード電極触媒層50aが水素により還元(劣化)されることを良好に阻止する。
そして、脱圧処理では、脱圧制御弁92の開放により、図3に示すように、脱圧時間の初期段階では、カソード側の第2流路68(図1及び図2参照)に充填されている高圧水素を、比較的速い脱圧速度で減圧処理する。また、高圧水電解装置12のカソード側圧力が、設定閾値(圧力)Pまで降圧した場合、脱圧制御弁92の開度を絞って、比較的遅い脱圧速度で減圧処理を行う。なお、脱圧速度とは、高圧水素の圧力の時間変化量をいう。
このように、脱圧処理において、高圧力領域では、高圧水素の圧力を急激に低下させ、一方で、低圧力領域では、ブリスターの発生を抑制するため、時間をかけてゆっくりと減圧する。この場合、高圧水素の排出経路である高圧水素配管18及び脱圧配管88に1つの圧力センサのみ配置し、該圧力センサの検出結果を用いて、図3のように高圧水素の圧力を変化させるべく脱圧制御弁92の開度を制御する場合、該開度を精度よく制御することが困難である。すなわち、高圧力領域をカバーすべく広いレンジの圧力センサを用いた場合、検出精度が低下する。一方、低圧力領域の圧力を検出する高精度の圧力センサを用いた場合、検出範囲が狭いため、高圧力領域の圧力を検出することができない。
そこで、本実施形態の脱圧処理では、高圧水素の圧力領域に応じて、圧力センサを切り替え、切り替えた圧力センサが検出した圧力を用いて脱圧制御弁92の開度を調整することで、該脱圧制御弁92を精度よく制御し、ブリスターの発生を抑制する。
ここで、本実施形態の脱圧処理について、図4及び図5を参照しながら説明する。
図4のステップS1(第1ステップ)において、コントローラ20は、図5の時点t0で、脱圧制御弁92を開放する。これにより、脱圧処理が開始され、カソード側の高圧水素は、高圧水素配管18及び脱圧配管88を介して外部に排出される。この結果、図3及び図5に示すように、時間経過に伴って、高圧水素の圧力は、急激に低下する。
この場合、図1及び図5に示すように、第1~第3圧力検出センサ94~98は、測定対象箇所の高圧水素の圧力を逐次検出し、検出結果を示す信号をコントローラ20に出力する。
すなわち、第1圧力検出センサ94は、高圧水素配管18の高圧水素の圧力、すなわち、高圧用減圧弁90よりも上流側の減圧前の高圧水素の圧力(高圧ラインの圧力)を、第1圧力P1として検出する。
第2圧力検出センサ96は、脱圧配管88における第1減圧弁90aと第2減圧弁90bとの間の高圧水素の圧力、すなわち、第1減圧弁90aによって減圧された高圧水素の圧力(中圧ラインの圧力)を、第2圧力P2として検出する。
第3圧力検出センサ98は、脱圧配管88における第2減圧弁90bと脱圧制御弁92との間の高圧水素の圧力、すなわち、第2減圧弁90bによってさらに減圧された高圧水素の圧力(低圧ラインの圧力)を、第3圧力P3として検出する。
そして、図4のステップS2(第2ステップ)において、コントローラ20は、第1圧力P1及び第2圧力P2から高圧水素の脱圧速度をそれぞれ算出する。
脱圧処理の初期段階では、図5に示すように、時間経過に伴って第1圧力P1は低下する一方で、第2圧力P2及び第3圧力P3は、一定値に維持されている。これは、カソード側の高圧水素の圧力が高圧力領域にあり、第1減圧弁90a及び第2減圧弁90bで減圧しても、検出される圧力が第2圧力検出センサ96及び第3圧力検出センサ98の検出範囲外であるためである。
そこで、次のステップS3(第3ステップ)において、コントローラ20は、第1圧力P1を用いて算出された脱圧速度と、所定の設定速度とを比較し、脱圧速度が設定速度を超えないように、脱圧制御弁92の開度を制御する(絞る)。
次のステップS4において、コントローラ20は、第1圧力P1が所定の第1圧力閾値Pxを下回り(P1<Px)、且つ、第2圧力P2が所定の第2圧力閾値Pyを下回る(P2<Py)か否かを判定する。
ここで、第1圧力閾値Pxとは、第1圧力P1の測定箇所における水素の圧力状態を示す閾値である。P1≧Pxであれば、第1圧力検出センサ94が測定している高圧ラインに高圧水素が存在していると判断することができる。一方、P1<Pxであれば、第1圧力検出センサ94が測定している高圧ラインの高圧水素が減圧していると判断することができる。
また、第2圧力閾値Pyとは、第2圧力P2の測定箇所における水素の圧力状態を示す閾値である。P2≧Pyであれば、第2圧力検出センサ96が測定している中圧ラインに高圧水素が存在していると判断することができる。一方、P2<Pyであれば、第2圧力検出センサ96が測定している中圧ラインの高圧水素が減圧していると判断することができる。
図5に示すように、時点t1に到達するまではP1≧Pxであり、時点t2に到達するまではP2≧Pyである。従って、時点t0から時点t2までの時間帯では、否定的な判定結果となり(ステップS4:NO)、ステップS2~S4の処理が繰り返し行われる。
一方、時点t2の経過後、P1<Px且つP2<Pyとなるため(ステップS4:YES)、コントローラ20は、次のステップS5に進む。ステップS5において、コントローラ20は、時点t2から所定時間T経過したか否かを判定する。ここで、所定時間Tとは、脱圧制御弁92の開度を制御するために用いる圧力を、第1圧力P1から第2圧力P2に切り替えるか否かを見極めるための判定時間である。
従って、時点t2から所定時間T経過していなければ(ステップS5:NO)、ステップS5の判定処理が繰り返し行われる。一方、時点t2から所定時間T経過した時点t3において(ステップS5:YES)、コントローラ20は、脱圧制御弁92の開度を制御するために用いる圧力を、第1圧力P1から第2圧力P2に切り替えることを決定し、次のステップS6に進む。
ステップS6(第2ステップ、第3ステップ)において、コントローラ20は、第2圧力検出センサ96が測定した第2圧力P2を用いて脱圧速度を算出する。コントローラ20は、第2圧力P2を用いて算出された脱圧速度と、所定の設定速度とを比較し、脱圧速度が設定速度を超えないように、脱圧制御弁92の開度を制御する(絞る)。
次のステップS7において、コントローラ20は、第3圧力検出センサ98が測定した第3圧力P3が所定の第3圧力閾値Pzを下回る(P3<Pz)か否かを判定する。ここで、第3圧力閾値Pzとは、第3圧力P3の測定箇所における水素の圧力状態を示す閾値である。P3≧Pzであれば、第3圧力検出センサ98が測定している低圧ラインに高圧水素が存在していると判断することができる。一方、P3<Pzであれば、第3圧力検出センサ98が測定している低圧ラインの高圧水素が減圧しているため、脱圧処理を完了してもよいと判断することができる。
図5に示すように、時点t4に到達するまではP3≧Pzである。従って、時点t3から時点t4までの時間帯では、否定的な判定結果となり(ステップS7:NO)、ステップS6、S7の処理が繰り返し行われる。
一方、時点t4となり、P3<Pzとなった場合(ステップS7:YES)、コントローラ20は、次のステップS8に進む。ステップS8において、コントローラ20は、脱圧制御弁92を閉弁状態に切り替え、脱圧処理を完了させる。
[3.本実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態は、固体高分子電解質膜48(電解質膜)と、該固体高分子電解質膜48の両側に設けられたアノード側給電体50及びカソード側給電体52(給電体)とを有し、アノード側給電体50及びカソード側給電体52間に電解電流を印加することで、水を電気分解してアノード側に酸素を発生させ、一方で、カソード側に酸素よりも高圧な高圧水素を発生させる水電解システム10及びその制御方法に関する。
水電解システム10は、高圧水素配管18及び脱圧配管88(配管)、脱圧制御弁92、高圧用減圧弁90(減圧機構)、第1圧力検出センサ94、第2圧力検出センサ96、並びに、コントローラ20(制御部)をさらに有する。
高圧水素配管18及び脱圧配管88は、カソード側に接続されている。また、脱圧制御弁92は、脱圧配管88に設けられ、電解電流による電解処理の停止後、開弁状態になることで、カソード側から高圧水素配管18及び脱圧配管88を介して高圧水素を排出する脱圧処理を行う。高圧用減圧弁90は、脱圧配管88における脱圧制御弁92よりも高圧水素の排出方向の上流側に設けられ、高圧水素を減圧する。第1圧力検出センサ94は、高圧用減圧弁90よりも排出方向の上流側で、減圧前の高圧水素の圧力を、第1圧力P1として検出する。第2圧力検出センサ96は、高圧用減圧弁90と脱圧制御弁92との間で、減圧後の高圧水素の圧力を、第2圧力P2として検出する。コントローラ20は、第1圧力P1又は第2圧力P2に基づいて、脱圧制御弁92の開度を制御する。
また、制御方法は、第1~第3ステップを有する。
第1ステップ(図4のステップS1)では、電解電流による電解処理の停止後、カソード側に接続された脱圧配管88に設けられた脱圧制御弁92をコントローラ20によって開弁状態に制御することで、カソード側から高圧水素配管18及び脱圧配管88を介して高圧水素を排出する脱圧処理を開始させる。
第2ステップ(ステップS2、S6)では、脱圧制御弁92よりも高圧水素の排出方向の上流側に設けられた高圧用減圧弁90により高圧水素を減圧する際に、高圧用減圧弁90よりも排出方向の上流側で、第1圧力検出センサ94が減圧前の高圧水素の圧力を第1圧力P1として検出すると共に、高圧用減圧弁90と脱圧制御弁92との間で、第2圧力検出センサ96が減圧後の高圧水素の圧力を第2圧力P2として検出する。第3ステップ(ステップS3、S6)では、コントローラ20が第1圧力P1又は第2圧力P2に基づいて脱圧制御弁92の開度を制御する。
このように、高圧用減圧弁90によって高圧水素を減圧させ、高圧用減圧弁90の上流側の圧力(第1圧力P1)を第1圧力検出センサ94で検出し、下流側の圧力(第2圧力P2)を第2圧力検出センサ96で検出する。このように、圧力センサを多段化することで、高圧力領域では第1圧力検出センサ94が検出した第1圧力P1に基づいて脱圧制御弁92の開度を制御し、低圧力領域では第2圧力検出センサ96が検出した第2圧力P2に基づいて脱圧制御弁92の開度を制御することが可能となる。つまり、本実施形態では、圧力領域に応じて、圧力センサを切り替えることで、脱圧制御弁92の開度を適切に制御することができる。従って、本実施形態では、脱圧制御弁92を精度よく制御しつつ、脱圧処理時のブリスターの発生を抑制することができる。
ここで、高圧用減圧弁90は、脱圧配管88の途中に設けられ、高圧水素を減圧する少なくとも1つの減圧弁(第1減圧弁90a、第2減圧弁90b)を備える。これにより、脱圧配管88を圧力の異なる複数のラインに容易に構成することができる。
この場合、高圧用減圧弁90は、該高圧用減圧弁90内の排出方向の上流側に設けられ、高圧水素を減圧する第1減圧弁90aと、排出方向の下流側に設けられ、第1減圧弁90aで減圧された高圧水素をさらに減圧する第2減圧弁90bとを備える。第2圧力検出センサ96は、第1減圧弁90aによって減圧された高圧水素の圧力を第2圧力P2として検出する。一般に、減圧機構は、2つの減圧弁から構成される二段方式により流体を減圧する。従って、本実施形態では、市販の減圧機構を用いて、水電解システム10を安価に構成することができる。
また、水電解システム10は、第2減圧弁90bで減圧された高圧水素の圧力を、第3圧力P3として検出する第3圧力検出センサ98をさらに有する。コントローラ20は、第3圧力P3が第3圧力閾値Pzを下回る場合、脱圧制御弁92を閉弁状態に切り替えて脱圧処理を完了させる。これにより、検出範囲が最も狭く、且つ、高精度の圧力センサを用いて第3圧力検出センサ98を構成することができる。この結果、脱圧処理の完了に関わる判定処理を精度よく且つ確実に行うことができる。
さらに、第1減圧弁90a及び第2減圧弁90bは、リリーフ機能を備えることが望ましい。これにより、水電解システム10に安全対策機能を施すことができる。
また、コントローラ20は、脱圧処理を開始する際、第1圧力P1に基づき脱圧制御弁92の開度を制御し、一方で、第1圧力P1が第1圧力閾値Pxを下回り、第2圧力P2が第2圧力閾値Pyを下回り、且つ、第2圧力P2が第2圧力閾値Pyを下回った時点t2から所定時間T経過した場合、第2圧力P2に基づき脱圧制御弁92の開度を制御する。これにより、第1圧力P1から第2圧力P2への切り替えを効率よく且つ確実に行うことができる。
さらに、コントローラ20は、第1圧力P1又は第2圧力P2の時間変化を高圧水素の脱圧速度として算出し、算出した脱圧速度に基づいて脱圧制御弁92の開度を制御する。これにより、脱圧速度が所望の速度となるように脱圧制御弁92の開度を制御することが可能となる。
すなわち、ブリスターの発生を抑制するためには、設定速度を遵守して脱圧処理を行う必要がある。その要求は、低圧力領域になる程、厳しくなる。そのため、脱圧処理を低圧力領域まで実行する場合、高精度の第2圧力検出センサ96が検出した第2圧力P2に切り替え、切替後の第2圧力P2を用いて脱圧速度を算出し、算出した脱圧速度に基づいて開度を制御することで、厳しく制限された要求速度を満たすことが可能となる。この結果、ブリスターが発生しやすい低圧力領域側での精密な脱圧処理の制御を行うことで、ブリスターの発生を効果的に抑制することができる。
第1圧力検出センサ94は、第2圧力検出センサ96よりも広いレンジで第1圧力P1を検出するセンサであり、第2圧力検出センサ96は、第1圧力検出センサ94よりも検出精度の高いセンサであればよい。これにより、脱圧処理の際、全ての圧力領域をカバーすることが可能となる。
なお、本発明は、上述の実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることは勿論である。
10…水電解システム 18…高圧水素配管(配管)
20…コントローラ(制御部) 38…電解用電源
48…固体高分子電解質膜(電解質膜) 50…アノード側給電体(給電体)
52…カソード側給電体(給電体) 88…脱圧配管(配管)
90…高圧用減圧弁(減圧機構) 90a…第1減圧弁
90b…第2減圧弁 92…脱圧制御弁
94…第1圧力検出センサ(第1圧力センサ)
96…第2圧力検出センサ(第2圧力センサ)

Claims (8)

  1. 電解質膜と、該電解質膜の両側に設けられた給電体とを有し、前記各給電体間に電解電流を印加することで、水を電気分解してアノード側に酸素を発生させ、一方で、カソード側に前記酸素よりも高圧な高圧水素を発生させる水電解システムにおいて、
    前記カソード側に接続された配管と、
    前記配管に設けられ、前記電解電流による電解処理の停止後、開弁状態になることで、前記カソード側から前記配管を介して前記高圧水素を排出する脱圧処理を行う脱圧制御弁と、
    前記配管における前記脱圧制御弁よりも前記高圧水素の排出方向の上流側に設けられ、前記高圧水素を減圧する第1減圧弁を備える減圧機構と、
    前記配管における前記減圧機構よりも前記排出方向の上流側で、減圧前の前記高圧水素の高圧力領域における圧力を、第1圧力として検出する第1圧力センサと、
    前記第1圧力センサよりも検出精度の高いセンサであり、前記配管における前記減圧機構内の前記第1減圧弁よりも前記排出方向の下流側で、減圧後の前記高圧水素の低圧力領域における圧力を、第2圧力として検出する第2圧力センサと、
    前記高圧水素の圧力領域に応じて、前記圧力センサを切り替え、切り替えた前記圧力センサが検出した圧力を用いて、前記脱圧制御弁の開度を制御する制御部と、
    をさらに有する、水電解システム。
  2. 請求項記載の水電解システムにおいて、
    前記減圧機構は、
    前記配管における前記減圧機構内の前記排出方向の上流側に設けられ、前記高圧水素を減圧する前記第1減圧弁と、
    前記配管における前記減圧機構内の前記排出方向の下流側に設けられ、前記第1減圧弁で減圧された前記高圧水素をさらに減圧する第2減圧弁と、
    を備える、水電解システム。
  3. 請求項記載の水電解システムにおいて、
    前記第2減圧弁で減圧された前記高圧水素の圧力を、第3圧力として検出する第3圧力センサをさらに有し、
    前記制御部は、前記第3圧力が第3圧力閾値を下回る場合、前記脱圧制御弁を閉弁状態に切り替えて前記脱圧処理を完了させる、水電解システム。
  4. 請求項2又は3記載の水電解システムにおいて、
    前記第1減圧弁及び前記第2減圧弁は、リリーフ機能を備える、水電解システム。
  5. 請求項1~のいずれか1項に記載の水電解システムにおいて、
    前記制御部は、
    前記脱圧処理を開始する際、前記第1圧力に基づき前記開度を制御し、
    前記第1圧力が第1圧力閾値を下回り、前記第2圧力が第2圧力閾値を下回り、且つ、前記第2圧力が前記第2圧力閾値を下回った時点から所定時間経過した場合、前記第2圧力に基づき前記開度を制御する、水電解システム。
  6. 請求項記載の水電解システムにおいて、
    前記制御部は、前記第1圧力又は前記第2圧力の時間変化を前記高圧水素の脱圧速度として算出し、算出した前記脱圧速度に基づいて前記開度を制御する、水電解システム。
  7. 請求項1~のいずれか1項に記載の水電解システムにおいて、
    前記第1圧力センサは、前記第2圧力センサよりも広いレンジで前記第1圧力を検出するセンサである、水電解システム。
  8. 電解質膜と、該電解質膜の両側に設けられた給電体とを有し、前記各給電体間に電解電流を印加することで、水を電気分解してアノード側に酸素を発生させ、一方で、カソード側に前記酸素よりも高圧な高圧水素を発生させる水電解システムの制御方法において、
    前記電解電流による電解処理の停止後、前記カソード側に接続された配管に設けられた脱圧制御弁を制御部によって開弁状態に制御することで、前記カソード側から前記配管を介して前記高圧水素を排出する脱圧処理を開始させる第1ステップと、
    前記配管における前記脱圧制御弁よりも前記高圧水素の排出方向の上流側に設けられた減圧機構の第1減圧弁により前記高圧水素を減圧する際に、前記減圧機構よりも前記排出方向の上流側で、第1圧力センサが減圧前の前記高圧水素の高圧力領域における圧力を第1圧力として検出すると共に、前記第1圧力センサよりも検出精度の高いセンサであり、前記配管における前記減圧機構内の前記第1減圧弁よりも前記排出方向の下流側で、第2圧力センサが減圧後の前記高圧水素の低圧力領域における圧力を第2圧力として検出する第2ステップと、
    前記制御部が前記高圧水素の圧力領域に応じて、前記圧力センサを切り替え、切り替えた前記圧力センサが検出した圧力を用いて前記脱圧制御弁の開度を制御する第3ステップと、
    を有する、水電解システムの制御方法。
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