JP7089096B2 - 大豆タンパク加工品及び大豆タンパク加工品を含む食品 - Google Patents

大豆タンパク加工品及び大豆タンパク加工品を含む食品 Download PDF

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本発明は大豆タンパク加工品及び大豆タンパク加工品を含むレトルト食品に関する。本発明は食品用組成物、調味液用組成物及び調味液にも関する。
タンパク質を構成するアミノ酸は約20種類あり、このうち必須アミノ酸と呼ばれる9種類は成人の体内で合成できないため、食事から摂取しなければならない。大豆タンパクは、この必須アミノ酸をバランスよく豊富に含んでいるため、優れたタンパク質源として、種々の用途に加工され食品用組成物及び食品に利用されている。例えば粒状の大豆タンパク加工品は、脱脂大豆を主原料として組織化や粒状化して仕上げた乾燥肉組織状の大豆タンパクであり、ひき肉を加熱して得られるそぼろ肉の食感に近い肉粒感を有することから、肉の代替品として肉を用いる食品や料理に用いられている。また、近年では粒状大豆タンパクの色調や形状を調整することで、牛や豚、鶏など肉のタイプ別の粒状大豆タンパク加工品が提供されている。
一方で、これら粒状大豆タンパク加工品を調味料や食品等に利用するためには、原料由来の大豆臭の低減、食品に供したときの肉様食感の改善や肉様の風味付与など、さらなる改善が必要である。
大豆タンパク加工品の大豆臭低減に関連する知見として、特許文献1にはしょう油および乳酸を含有する調味液用組成物に浸漬した粒状大豆タンパク加工食品を配合することを特徴とする、液状調味料が記載されている。
大豆タンパク加工品の肉様食感改善に関する知見として、特許文献1のほか、特許文献2、3には、一定の大きさに膨潤させた粒状大豆タンパク膨潤物を含み、調味料中の水分活性や酸度をそれぞれ一定の範囲で調整されていることを特徴とする、具材入り調味液が記載されている。また特許文献4には、大豆タンパク原料とおからの混合物を組織化して得られた粒状大豆加工素材に、酢酸を含む調味料を含有させてなり、水分量を調整することを特徴とする、容器入りの肉そぼろ風チルド食品が記載されている。
大豆タンパク加工品の肉様の風味付与に関する知見として、特許文献5にはしょう油もろみを含有する、植物性食材の加熱調理物の風味増強用組成物が記載され、特許文献6にはローストミート様の香りを有するフレーバー組成物が記載されている。
特開2019-122347号公報 特開2013-042724号公報 特開2013-042725号公報 特開2016-149967号公報 特開2018-57373号公報 特開平4-91762号公報
J. Agric. Food. Chem. "Comparison of key aroma compounds in five different types of Japanese soy sauces by aroma extract dilution analysis (AEDA)", 2012, 60 科学研究費助成事業研究成果報告書平成 25 年 6 月 7 日)豆腐の風味に寄与する香気成分の生成機構の解明』
上記のように従来の粒状大豆タンパク加工品の課題については、一定の効果がある技術は知られているものの、複数の課題を同時に解決する先行技術はない。つまり、現在の大豆タンパク加工品を含む食品用組成物等においては、大豆タンパク加工品の好ましくない風味を抑えるとともに、加熱した挽き肉に近い風味、食感、及び外観の問題を十分に解決する食品用組成物等は存在しないことを本発明者らは見出した。
さらに、大豆タンパク加工品を含む食品用組成物等の製造工程で、レトルト殺菌など高温の加熱処理をすると、上記の大豆タンパク加工品の好ましくない風味はより増強されており抑制されていないことも本発明者らは見出した。特に、しょう油や味噌と大豆タンパク加工品を含有する和風タイプのレトルト食品においては、大豆タンパクの好ましくない風味はより顕著である。
したがって本発明は、大豆タンパク加工品を含む食品に用いられる組成物として、大豆タンパク加工品の不快な風味が従来のものより低減されるとともに、加熱した挽き肉に近い風味、食感、及び外観の少なくとも一つを呈する大豆タンパク加工品を含む食品に用いられる組成物を提供することを課題とした。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ある特定の成分を含有せしめることにより上記課題が解決できる可能性があることを見出し、さらに研究を進めた結果本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、少なくとも以下の発明に関する:
[1]
大豆タンパク加工品、糖類及びしょう油を含む調味液用組成物であって、HMMFを該調味液用組成物全体の重量に対して10ppm~500ppm含む調味液用組成物。
[2]
大豆タンパク加工品を含む食品用組成物であって、HMMFを該食品用組成物全体の重量に対して5ppm~100ppm含む、食品用組成物。
[3]
マルトールを食品用組成物全体の重量に対して5ppm~100ppmさらに含む[2]に記載の食品用組成物。
[4]
マルトールを調味液用組成物全体の重量に対して0.5ppm~1000ppmさらに含む[1]に記載の調味液用組成物。
[5]
HMMFを大豆タンパク加工品の重量に対して50ppm~2500ppm含む、[1]又は[4]に記載の調味液用組成物。
[6]
マルトールを大豆タンパク加工品の重量に対して2.5ppm~5000ppm含む、[4]又は[5]に記載の調味液用組成物。
[7]
[1]及び[4]~[6]のいずれかに記載の調味液用組成物を加熱してなる調味液。
[8]
[7]に記載の調味液を含む食品。
[9]
レトルト処理された食品である[8]に記載の食品。
[10]
大豆タンパク加工品を含む食品における好ましくない風味を、HMMFを含むことにより、又はHMMF及びマルトールを含むことにより、低減する方法。
[11]
HMMF、又はHMMF及びマルトールを含む、大豆タンパク加工品を含む食品における好ましくない風味を低減するための組成物。
[12]
大豆タンパク加工品、糖類及びしょう油を含む食品であって、HMMFを食品全体の重量に対して2.0ppm以上含む食品。
[13]
マルトールを本発明の食品全体の重量に対して0.9ppm以上さらに含む[12]に記載の食品。
[14] 以下の工程を含む、食品の製造方法:
(a)[7]に記載の調味液と他の成分及び食材とを配合して得られる配合物を加熱する工程、又は
(b)[7]に記載の調味液の成分と他の成分及び食材とを配合して得られる配合物を加熱する工程。
[15]
以下の工程を含む、食品の製造方法:
[7]に記載の調味液の成分と食材とを配合して得られる配合物を加熱する工程。
本発明によれば、大豆タンパク加工品を含む食品用組成物又は調味液用組成物として、HMMF(4-ヒドロキシ-5-メチル-3(2H)-フラノン)を、該食品用組成物全体重量に対して5ppm~100ppm、該調味液用組成物全体の重量に対しては10ppm~500ppm含むことにより、大豆タンパク加工品を含む食品用組成物又は調味液用組成物として、大豆タンパク加工品の好ましくない風味が従来のものより低減された大豆タンパク加工品を含む食品用組成物又は調味液用組成物を提供することができる。
また本発明の食品用組成物又は調味液用組成物のうち、マルトール(3-ヒドロキシ-2-メチル-4-ピロン)をさらに含むものによれば、大豆タンパク加工品の好ましくない風味を一層低減することができる。すなわち同発明によれば、HMMFとマルトールとの相乗効果により大豆タンパク加工品の好ましくない風味を低減することができる。
マルトールが粒状大豆タンパク加工品の不快な風味を抑制することや(非特許文献2)、肉様の風味を付与すること(特許文献6)は知られていたし、HMMFやマルトールがしょう油等に含有されることも知られていた(非特許文献1)。しかし、HMMFが微量で大豆タンパク加工品の好ましくない風味を低減することについての知見は、これまで得られていなかったし、HMMFとマルトールとが大豆タンパク加工品の好ましくない風味を相乗的に低減する効果を有することについて記載や示唆をする報告例もない。これらのことを考慮すれば、本願発明が奏する効果は、当業者といえども予測することができない格別なものである。理論に拘束されるものではないが、本発明の調味液用組成物及び調味液におけるHMMFは、甘く香ばしいカラメル様の香気により、肉の甘い風味を高め、大豆臭マスキングに寄与している可能性がある。
さらに本発明の調味液用組成物及び調味液においては、HMMF、又はHMMF及びマルトールに加えてしょう油と糖類とが大豆タンパク加工品に浸透することによって、大豆タンパク加工品加熱した牛挽き肉様の、風味、食感及び色を同時に付与しえるといった効果が奏される。
したがって、本発明によれば、大豆タンパクの不快な風味を抑えつつ、加熱した挽き肉に近い品質(風味、食感、又は外観)の大豆タンパク加工品を得ることができる。そのため、食物アレルギーなどの疾患、菜食主義や健康主義などの志向性、宗教上の理由などで、動物性食品の摂取を避けたり、制限したりする必要がある人向けに、肉類など動物性原料を用いない調味料や食品を提供することができる。
理論に拘束されるものではないが、本発明の調味液用組成物及び調味液における糖類の意義は、浸透圧の高い溶液中に大豆タンパクを浸漬することで、大豆タンパクからの脱水を促し、歯切れのよい繊維状の組織へと改変することにある可能性がある。
以下において、本発明についてさらに説明する。なお本明細書において「添加」又は「添加する」の語は、添加の対象となる2つの成分、物質及び材料のうち、両方が混在している状態にすることを意味する。すなわち、「AをBに添加する」の記載は、必ずしもBにAを加えることのみを限定的に意味するものではなく、AにBを加えることも包含して意味する。
また本明細書において、「%」又は「ppm」により表される量・割合(濃度)は、他に特段の記載がない限り重量による割合を示す。
本発明における「風味」とは、本明細書において、飲食時の口腔内から鼻にへぬけるときに感じる香りを意味し、何らかの指標により程度を示しえるものである。
本発明においてある量又は程度を「低減する」とは、ある構成を具備することにより、当該構成を具備しないものに比較して、当該量又は程度が小さくなることを意味する。
本発明において、調味料がある成分を「含む」とは、当該成分が前記調味料中に存在することを意味し、成分の由来は限定されない。すなわち、前記「含む」には、元々原料中に存在している、原料中に存在していなかった成分を外部から添加する、あるいは調味料の製造過程において生じるといった、当該成分が存在することとなったいずれの場合も包含される。
本発明における「大豆タンパク加工品」とは、大豆を加工して得られる、例えば牛の挽き肉のような外観(形状、色)及び食感(噛み応え、繊維感)を有する加工品であり、典型的には粒状を呈する加工品である。
本発明で用いる本発明における大豆タンパク加工品の大きさは限定されず、例えば長径約5mm~約20mmである。本発明における大豆タンパク加工品として市販のものを用いてよく、市販のものとしてニューソイミーF 2010、ニューソイミーS10、ニューソイミーS11、ニューソイミーS20F、ニューソイミーS21F、ニューソイミーS22F、ニューソイミーS31B、ニューソイミーS50、ニューコミテックスA-301、ニューコミテックスA-302、ニューコミテックスA-318、ニューコミテックスA-320(それぞれ、日清オイリオグループ社製)ニューフジニック58、ニューフジニック59、ニューフジニックAR、ニューフジニック61N、 ニューフジニックBSN(それぞれ、不二製油社製)等が挙げられる。本発明の食品用組成物、本発明の調味液用組成物及び本発明の食品においては、市販のものも含め、これらの大豆タンパク加工品のいずれを用いてもよい。また本発明の食品用組成物、本発明の調味液用組成物及び本発明の食品においては、所望の効果を得るために、大豆タンパク加工品の種類に応じてHMMF、マルトール、糖類及びしょう油の量を調節してよい。
本発明の食品用組成物、本発明の調味液用組成物及び本発明の食品に用いられる市販の大豆タンパク加工品としてニューソイミーF 2010(日清オイリオグループ社製)及びニューフジニック59(不二製油社製)などのほとんど着色処理をしていない大豆タンパク加工品は好ましい。
本明細書における「又は」の記載は、「又は」の記載を含んで列挙される各要素の少なくとも一つを特定することを意味する。例えば「A又はB」の記載は、Aのみ、Bのみ、ならびにA及びBが包含されることを意味する。
本発明は上記のとおり、少なくとも、
大豆タンパク加工品を含む食品用組成物であって、HMMFを該食品用組成物全体の重量に対して5ppm~100ppm含む、食品用組成物(上記[2]に記載)、
及び
大豆タンパク加工品、糖類及びしょう油を含む調味液用組成物であって、HMMFを該調味液用組成物全体の重量に対して10ppm~500ppm含む調味液用組成物(上記[1]に記載)、
に関する。
以下に本発明の食品用組成物及び調味液用組成物のそれぞれについて説明する。
1.食品用組成物
本発明の食品用組成物は、HMMFを該食品用組成物全体の重量に対して5ppm~100ppm含む。かかる範囲にすることにより、喫食時における大豆タンパク加工品の好ましくない風味を低減し、かつHMMFの風味が過剰に感じられないようにすることができる。HMMFの量として、5ppm~80ppmは好ましい。
本発明の食品用組成物における大豆タンパク加工品の量は、限定されない。かかる量は、例えば食品用組成物全体の重量に対して5%~20%である。
HMMFの大豆タンパク加工品に対する量は、所望の効果が奏される量であれば限定されない。かかる量は、例えば25ppm~1600ppmである。
本発明の上記食品用組成物のうち、マルトールを食品用組成物全体の重量に対して5ppm~100ppmさらに含むものは好ましい。かかる食品用組成物においては、HMMFとマルトールとの相乗効果により大豆タンパク加工品の好ましくない風味がより効率的に低減される。
マルトールは、香料、食品添加物として用いられる、天然に存在する有機化合物である。マルトールは、しょう油にも含まれることが知られていて、例えば濃口しょう油にはマルトールが9ppm含まれている旨の報告がある(非特許文献1)。
本発明の食品用組成物は、調味成分を、風味の調整のために含んでよい。
本発明の食品用組成物のうち糖類をさらに含むものは好ましい。かかる食品用組成物においては、HMMF及び/又はマルトールにより、大豆タンパク加工品の好ましくない風味がより確実に低減される。
本発明の食品用組成物において用いられる糖類の種類は、単糖類、少糖類、多糖類の甘味を付与する調味成分であれば良く、例えばブドウ糖、果糖、液糖、砂糖、三温糖、水あめ、オリゴ糖等を用いることができる。糖類の中でも砂糖(上白糖など)が好ましい。
糖類の量は限定されず、例えば食品用組成物全体の重量に対して1~50%の量であり、好ましくは10~50%の量であり、より好ましくは20%~50%の量であり、30%~50%の量は最も好ましい。
本発明の食品用組成物の製造方法は限定されず、本技術分野において公知の方法を用いることができる。本発明の食品用組成物は、例えば必要な材料を水に溶解又は懸濁し、所定の時間常温で保持するか、又は所定の時間常温で保持した後加熱することにより製造される。
本発明の食品用組成物は、各種食品のための素材として、他の素材と配合して食品を製造するために用いることができる。かかる食品には、調味料類、スープ類、副菜類、菓子類、スナック類が少なくとも包含されるが、上記食品はこれらに限定されない。
2.調味液用組成物
2-1.調味液用組成物
上記のとおり、本発明の調味液用組成物は、
大豆タンパク加工品と、糖類及びしょう油を含む前処理液からなる調味液用組成物であって、HMMFを該調味液用組成物全体の重量に対して10ppm~500ppm含む調味液用組成物
である。
本発明の調味液用組成物においては、大豆タンパク加工品の好ましくない風味を低減するためのHMMFの濃度としてより高い濃度を適用しえる。かかる知見はこれまで得られていなかった。
本発明の調味液用組成物は、たれ、つゆ等の各種調味液、及び惣菜の素等の各種加工食品のための素材として、他の素材(調味する他の成分や食材など)と配合して調味液を製造するために用いることができる。大豆タンパク加工品と前処理液の混合比率は、所望の効果が奏される比率であれば限定されず、例えば大豆タンパク加工品を1重量とした場合、前処理液が2~10重量であり、好ましくは前処理液が3~7重量が好ましい。
本発明の調味液用組成物に含まれる糖類の種類は、単糖類、少糖類、多糖類の甘味を付与する調味成分であれば良く、例えばブドウ糖、果糖、液糖、砂糖、三温糖、水あめ、オリゴ糖等を用いることができる。糖類の中でも砂糖(上白糖など)が好ましい。
糖類の量は所望の効果が奏される量であれば限定されず、例えば調味液用組成物全体の重量に対して1~50%の量であり、好ましくは10~50%の量であり、より好ましくは20%~50%の量であり、30%~45%の量は最も好ましい。
本発明の調味液用組成物におけるしょう油としては、通常の醸造方法によって得られるしょう油、濃口しょう油、淡口しょう油、たまりしょう油、再仕込しょう油、しろしょう油等から選ばれる1種または2種以上を用いてよい。また本発明の調味液用組成物におけるしょう油には、上記において例示したしょう油のみならず、ポン酢やつゆなどのしょう油含有調味料に含有されるしょう油も包含される。本発明の調味液用組成物にはポン酢やつゆなどのしょう油含有調味料によりしょう油を添加してよい。
本発明の調味液用組成物に用いられるしょう油の量は所望の効果が発揮される量であれば限定されず、例えば調味液用組成物全体の重量に対して30%~50%の量が挙げられ、35%~45%の量は好ましい。
しょう油としては、火入れ処理など加熱処理されたしょう油を含む本発明の調味液用組成物は好ましい。しょう油の製造工程において、加熱処理を行うことにより、HMMF及びマルトールが生じることが多い。本発明の調味液用組成物として、HMMF及びマルトールを含有するしょう油を含むものは好ましい。
本発明の調味液用組成物のうち、マルトールを調味液用組成物全体の重量に対して0.5ppm~1000ppmさらに含むものは好ましい。かかる本発明の調味液用組成物においては、HMMFとマルトールとの相乗効果により大豆タンパク加工品の好ましくない風味がより効率的に低減される。
本発明の調味液用組成物はしょう油を含むため、HMMF及びマルトールを、しょう油を含まない場合に比較してより多くの量で含むことができる。HMMFを大豆タンパク加工品の重量に対して50ppm~2500ppm含む本発明の調味液用組成物は好ましい。また、マルトールを大豆タンパク加工品の重量に対して2.5ppm~5000ppm含む、本発明の調味液用組成物は好ましい。加えることができる量の幅が、HMMF及びマルトールのいずれにおいてもこのように広いことは、本発明の調味液用組成物を調製する際、及び同組成物を用いて調味を行う際の利点になりえる。
また、調味液組成物に含まれるしょう油にはHMMFとマルトールを含んでいるので、HMMFやマルトールを香料として別途添加する必要がないといった利点も、本発明の調味液用組成物は有する。
一方、本発明の調味液用組成物に含有されるHMMFの量は、上記の量(調味液用組成物全体の重量に対して10ppm~500ppm)であれば限定されず、大豆タンパク加工品に適用される本調味液用組成物自体の量、ならびに必要に応じて、目的とする効果や他の成分の種類及び量等を基準に、設定してよい。
本発明の調味液用組成物に含有されるマルトールの量は限定されず、上記の量(調味液用組成物全体の重量に対して0.5ppm~1000ppm)は好ましい。
本発明の調味液用組成物の製造方法は限定されず、本技術分野において公知の方法を用いることができる。本発明の調味液用組成物は、例えば必要な材料を水に浸漬、溶解又は懸濁することにより製造される。
なお、本発明の調味液用組成物は、そのまま調味液として用いてもよい。
2-2.調味液
本発明の調味液用組成物を加熱することにより調味液が得られる。加熱を行うことにより、調味液に香ばしさが付与されるとともに大豆タンパク加工品に由来する牛の挽き肉様の風味も生じさせることができる。
上記加熱の温度は限定されず、例えば50~120 ℃であってよい。なお、肉様の風味や食感をより効果的に付与させるには、65~120℃が好ましく、さらに80~120℃がより好ましい。
また上記加熱を行う時間も限定されず、例えば達温(0秒)~30分の範囲から選択してよい。
上記加熱は2回以上行ってよく、例えば約80℃で達温(0秒)~30分の加熱を行った後、さらにレトルト処理を行うなどしてよい。レトルト処理を行う際には、下記に記載する調味するための他の成分や食材を含んでいてよい。したがって、本発明の調味液には、レトルト食品中に含まれる調味液も包含される。
本発明の調味液には調味するための他の成分を含んでよい。かかる調味するための他の成分として以下のものが例示される:
ぶどう糖、果糖、水飴、異性化液糖などの糖類;
穀物酢、醸造酢などの食酢;
グルタミン酸ナトリウム、グリシン等のアミノ酸系調味料;
イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム等の核酸系調味料等の調味料類;
でん粉、加工でん粉、多糖類、ガム類等の増粘剤;
大豆油、ナタネ油、ゴマ油、ラー油等の食用油脂類;
鰹エキス、鰹節エキス、ホタテエキス、昆布エキス等の魚介類・海産物エキス;
鶏、豚、牛等の畜肉類から得られる畜肉エキス;
ニンニクや生姜、椎茸等からの野菜エキス;
食塩、胡椒、酸味調味料、有機酸類、果汁、清酒、ワイン、発酵調味料、味噌、小麦粉、カレー粉、オイスターソース、乳化剤、香料、着色料、アルコール等。
本発明の調味液には、以下の食材を含んでよい。
ナス、玉ネギ、長ネギ、ニンジン、ゴボウ、れんこん、生姜、ニンニク、ピーマン(赤ピーマンを包含する)、トマト、コーン及びタケノコなどの野菜;
シソ、パセリ、セロリ、ニラ、ミツバ等の香辛野菜類;
椎茸、マッシュルーム、エノキ、シメジ等のキノコ類;
リンゴ、ナシ、キウイ、パイナップル、梅等の果実類;
牛、豚等の畜肉類、鶏等の家禽類、獣肉類等の食用可能な肉類;
ゴマ、ナッツ、栗等の種実類;
ツナ、イカ、ホタテ、カニ、鮭等の魚介類;
ひじき、昆布、ワカメ等の海藻類;及び
卵、豆腐、油揚げ、こんにゃく、粒状大豆たんぱく等の加工食品。
2-3.本発明の調味液を用いた食品
本発明により、本発明の調味液を用いた食品等の食品も提供される。
本発明の食品のうち、一般的な濃口しょう油よりもHMMF及び/又はマルトールを多く含有するしょう油を使用した食品は好ましい。このようなしょう油を用いて食品を製造する際に、大豆タンパク加工品の好ましくない風味の低減が一層効果的になされる。
本発明の食品は限定されず、ひき肉の代わりに大豆タンパクを用いた肉豆腐、そぼろ炒め、肉みそ炒め、そぼろあんかけ、煮物、炊き込み、混ぜご飯が例示される。
また、本発明の食品には、調味液を含むレトルト食品のようにそのまま喫食するタイプの食品、及び惣菜の素のような調味料に他の素材と合わせて調理して喫食する食品のいずれもが包含される。そのまま喫食するタイプの食品として容器詰め惣菜、麺類、弁当が例示される。他の素材と合わせて調理して喫食する食品として調味料または惣菜の素と野菜で調理した炒め物及び煮物、炊き込みご飯の素または混ぜご飯の素にご飯を加えたかやくご飯が例示される。
本発明の食品のうち、加熱されても大豆タンパク加工品の好ましくない風味が低減されているものは好ましい。かかる食品のうち、レトルト処理された食品(レトルト食品)は好ましい。また本発明の食品のうち、HMMFを食品全体の重量に対して2.0ppm以上含むものは好ましい。かかる本発明の食品のうち、マルトールを本発明の食品全体の重量に対して0.9ppm以上含むものはより好ましい。
レトルト処理された食品は限定されず、レトルトパウチ容器詰の鶏大根、肉じゃがなどの惣菜が例示される。
本発明の食品には、<本発明の調味液>の項において示した調味成分や食材を含んでよい。
本発明の食品の製造方法は限定されず、例えば本発明の調味液とともに、必要な他の素材とを配合し加熱することが挙げられる。あるいは、本発明の食品は、本発明の調味液の成分と他の必要な成分や食材とを配合して得られる配合物を加熱して製造することもできる。この場合、本発明の食品は、調味料として惣菜の素を使った食品である。なお、食品の形態としては、容器詰食品、加熱調理した料理などが含まれる。
上記加熱の温度は限定されず例えば50~120 ℃であってよい。
また上記加熱を行う時間も限定されず、例えば30秒~30分の範囲から選択してよい。
以下に本発明を実施例によってより詳細に説明するが、本発明は如何なる意味においても当該実施例に限定されるものではない。
なお、各例の番号は実施例及び比較例の区別をせず通し番号にて示した。
[実施例1]食品用組成物
(1)材料と方法
砂糖12g、食塩1.2g、及び下記表1に示す量のマルトール(東京化成工業社製)及びHMMF(東京化成工業社製)に水を加え、計60gの液体部を調製した。これを粒状大豆たんぱく(商品名:ニューソイミーF2010、日清オイリオグループ株式会社製)4gと混合し、下記表1に示す浸漬又は加熱処理を行い、食品用組成物を得た。
各食品用組成物の官能評価をするにあたり、3名の専門パネル(訓練期間:10~15年)に対して、大豆臭の討議と評価訓練を行った。具体的には、大豆臭の特性に対しては、パネル間で討議してもらい、すり合わせを行うことで、各パネリストが共通認識を持つようにした。また、官能試験の妥当性を担保するために、いくつかの組成物を用いて、該パネルに評価訓練をさせ、各パネリストにおける評価の再現性を確認した。これらを行った後、該パネルを用いて、各実施例および比較例について以下の大豆臭の評価を行った。なお、「大豆臭」は、大豆の青臭さ、きな粉様の臭い及び大豆を密閉系で加熱した際に生成する特有の好ましくない臭いの複合的な異臭であり、喫食時に口腔内から鼻へ抜ける時に感じるものを意味する。上記「加熱した際に生成する特有の好ましくない臭い」とは、詳しくは大豆中のメチオニンなど硫黄を含んだアミノ酸が加熱されることで発生する含硫化合物の由来の臭いである。
「大豆臭」の強度を下記の5段階評価で評価し、3名の合計点数が3~5点は×、6点~8点を△、9~11点は○、12点以上は◎とした。
5:感じない
4:ほぼ感じない
3:やや感じる
2:感じる(サンプルNo.2(120℃20分加熱処理))
1:非常に強く感じる(サンプルNo.1(120℃20分加熱処理))
(2)結果
表1に示すとおりであった。すなわち、大豆臭抑制(大豆タンパク加工品の不快な風味の低減)につき、HMMF及びマルトールのいずれにおいても5~100ppmで効果が認められた。
また、HMMFとマルトールとを併用すると、それぞれを単独で用いた場合より優れた効果が認められた。
マルトールとHMMFを各100ppm含むNo.19においては、大豆臭を顕著に抑制する一方で、若干の異質な甘い風味が感じられた。したがって、マルトールとHMMFを併用する場合、両者の合計含有量は200ppm未満にすることがより好ましいと考えられた。
なお、No.10、11、17及び18のサンプル等においても若干の甘い香りが感じられたが品質に影響するものではなかった。
また、本発明の食品用組成物においては、浸漬処理(20℃15分)においても大豆臭が抑制された。
Figure 0007089096000001
[実施例2]調味液用組成物1
(1)材料と方法
下記表2-1に示す各成分を混合した調味液用組成物(大豆タンパク加工品+前処理液)を作製した。同調味液用組成物について同じ表に示す加熱処理を行い、各調味液のサンプルを得た。
No.26~29の調味液用組成物にはマルトール(東京化成工業社製)を添加し、No.30~32の調味液用組成物にはHMMF(東京化成工業社製)を添加して、所定の量とした。
用いられたしょう油は、PこいくちSしょうゆ ロットA(「濃口しょう油A」と表記。キッコーマン食品社製)、PK-Hしょうゆ(「PK-Hしょう油」と表記。キッコーマン食品社製)、又はP丸大豆しょうゆ コク仕立て ロットA(「丸大豆 コク仕立てA」と表記。キッコーマン食品社製)であった。
各調味液のサンプルについて、3名の専門パネル(訓練期間:10~15年)によって、大豆臭、肉風味および大豆加工品タンパクの食感の官能評価を行い、色については機器分析により、それぞれ以下の方法で実施した。
各調味用組成物の官能評価をするにあたり、3名の専門パネル(訓練期間:10~15年)に対して、大豆臭、肉風味および食感の討議と評価訓練を行った。具体的には、各特性に対しては、パネル間で討議してもらい、すり合わせを行うことで、各パネリストが共通認識を持つようにした。また、官能試験の妥当性を担保するために、いくつかの組成物を用いて、該パネルに評価訓練をさせ、各パネリストにおける評価の再現性を確認した。これらを行った後、該パネルを用いて、各実施例および比較例について以下の大豆臭、肉風味および食感の評価をそれぞれ行った。
●<大豆臭>
「大豆臭」の強度を下記の5段階評価で評価し、3名の合計点数が3~5点は×、6点~8点を△、9~11点は○、12点以上は◎とした。
5:感じない
4:ほぼ感じない
3:やや感じる
2:感じる(サンプルNo.21:前処理液がすべて濃口しょう油の場合)
1:非常に強く感じる(サンプルNo.20:前処理液がすべて水の場合)
●<肉風味>
「肉風味」の強度を下記の5段階評価で評価し、3名の合計点数が3~5点は×、6点~8点を△、9~11点は○、12点以上は◎とした。
5:加熱した牛挽き肉様の風味を非常に感じる
4:加熱した牛挽き肉様の風味を感じる
3:加熱した牛挽き肉様の風味をやや感じる
2:加熱した牛挽き肉様の風味があまり感じられない(サンプルNo.21:前処理液がすべて濃口しょう油の場合)
1:加熱した牛挽き肉様の風味を全く感じない(サンプルNo.20:前処理液がすべて水の場合)
●<食感>
加熱した牛挽き肉様の食感を下記の5段階評価で評価し、3名の合計点数が3~5点は×、6点~8点を△、9~11点は○、12点以上は◎とした。
5:繊維感と噛み応えのある硬さがあり、牛挽き肉をフライパンで炒めたそぼろ肉の食感がある
4:繊維感と硬さが感じられ、牛挽き肉を沸騰水中で3分間茹でた時のそぼろ肉の食感である
3:繊維感と硬さがやや感じられ、牛挽き肉を沸騰水で湯通ししたそぼろ肉の食感である
2:繊維感があまり感じられず、やわらかい食感である(サンプルNo.21:前処理液がすべて濃口しょう油の場合)
1:繊維感が感じられず、やわらかい食感である (サンプルNo.20:前処理液がすべて水の場合)
●<色(L値)>
肉様の「色味」は、大豆加工品タンパクをすりつぶした後の色差を測定し、50以上は×、45~50を△、L値40~45は○、L値40以下は◎とした。
メッシュ(目開き1mm)で、液部と固形部を分離。固形部より、大豆加工品タンパク30gをサンプリングした。続いて20倍量の水(600g)で洗浄後、水切りし、フードプロセッサーで粉砕処理後、L値(反射光)を測定した。L値の測定には(測色色差計 Color Meter ZE2000 日本電色工業社製)を用いた。
これら4項目についての総合的な評価結果による総合評価も行った。総合的な評価は、すべての評価項目において、ひとつでも×がある場合を×とし、ひとつでも△がある場合を△、〇あるいは◎のいずれかであって、2つ以上○の場合を○、◎が3個以上である場合を◎とした。
各調味液サンプル中のマルトール及びHMMFの定量を行った。
マルトール及びHMMFの濃度は、Journal of Agricultural and Food Chemistry Vol. 60, 3832, 2012に記載のガスクロマトグラフィーを用いる定量方法により測定した。測定装置として(ガスクロマトグラフ Agilent 7890A、アジレント社製)を用いた。
(2)結果
表2-2に示すとおりであった。
すなわち、HMMFを調味液用組成物全体の重量に対して10ppm~500ppm含む調味液用組成物から得た調味液において、大豆臭抑制(大豆タンパク加工品の不快な風味の低減)と肉風味による風味の改善及び食感の向上についての効果が認められた。また、マルトールを調味液用組成物全体の重量に対して0.5ppm~1000ppm含む調味液用組成物から得た調味液においても、大豆臭抑制と肉風味付与による風味の改善及び食感の向上についての効果が認められた。
色についても加熱により牛挽き肉のような色合いになり、本発明の調味液用組成物から得た調味液に問題はなかった。
HMMFの量が15.6ppmである5つの調味液用組成物(No.22、No.26、No.27、No.28、No.29)をみると、マルトールの量がNo.22(マルトールの量:5.5ppm)のサンプルより多いNo.26(マルトールの量:100ppm)、No.27(マルトールの量:200ppm)、No.28(マルトールの量:400ppm)及びNo.29(マルトールの量:1000ppm)のサンプルにおいて、調味液における風味改善効果はより優れていた。
また、マルトールの量が5.5ppmである4つの調味液用組成物(No.22、No.30、No.31及びNo.32)をみると、HMMFの量がNo.22(HMMFの量:15.6ppm)のサンプルより多いNo.30(マルトールの量:80ppm)、No.31(HMMFの量:200ppm)及びNo.32(HMMFの量:500ppm)のサンプルにおいて、調味液における風味改善効果はより優れていた。
No.29及びNo.32の120℃20分加熱処理のサンプルや、No.29、No.31及びNo.32の90℃10分加熱処理のサンプルについては、調味液組成物の品質に大きな影響はないが、わずかに異質な甘い香りが感じられた。
HMMF及びマルトール無添加のNo.24とNo.25については、いずれも総合評価は良好であった。HMMF及びマルトールの含有量が高い「丸大豆しょうゆコク仕立て」をより多く使用しているNo.24の調味液用組成物から得た調味液の総合評価はとくに良好であり、No.25より優れていた。
Figure 0007089096000002

Figure 0007089096000003
[実施例3]調味液用組成物2
(1)材料と方法
下記表3-1に示す各成分を混合した調味液用組成物(大豆タンパク加工品+前処理液)を作製した。同調味液用組成物について120℃20分、または90℃10分の加熱処理を行い、各調味液のサンプルを得た。用いられたしょう油は、PこいくちSしょうゆ ロットB(「濃口しょう油B」と表記。キッコーマン食品社製)、又はP丸大豆しょうゆ コク仕立て ロットB(「丸大豆 コク仕立てB」と表記。キッコーマン食品社製)、用いられた大豆タンパク加工品は、ニューフジニック50(不二製油社製)であった。なお、各調味液用組成物の官能評価や、マルトール及びHMMFの定量については、実施例2に準じた。
(2)結果
表3-2に示すとおりであった。本発明の調味液用組成物において用いられる糖類の種類は単糖類、少糖類、多糖類の甘味を付与する調味成分であれば良く、例えばブドウ糖、液糖、砂糖、水あめ等を用いることができ、糖類の中でも砂糖(上白糖など)が好ましいことがわかった。
また、本発明の効果が認められたサンプルNo.35~39、40ならびに41の糖類の量は、調味液用組成物全体の重量に対して、それぞれ40%、20%、10%であった。よって、糖類の量は、10~40%の範囲で効果が認められた。
また、調味液用組成物の全重量に対するしょうゆの含有量がそれぞれ、40%、30%、50%であるサンプルNo.35、No.42、No.43はいずれも効果が認められた。よって、しょうゆの量は、30~50%の範囲で効果が認められた。

Figure 0007089096000004

Figure 0007089096000005
[実施例4]調味液
(1)材料と方法
下記表4-1に示す各成分を混和して調味液用組成物を作製した。
各調味液用組成物について加熱(80℃、1分間)を行うか(No.46~49)か又は加熱を行わずに(No.44及びNo.45)、所定量の各調味液用組成物に表4-2中の牛挽き肉、玉ねぎ、所定量の菜種油、加工でんぷん、しょう油(濃口しょう油)、砂糖、食塩及び水を混和し、レトルト処理を行い、各調味液のサンプルを得た。用いられたしょう油は、PこいくちSしょうゆ ロットA(「濃口しょう油A」と表記。キッコーマン食品社製)、PK-Hしょうゆ(「PK-Hしょう油」と表記。キッコーマン食品社製)、又はP丸大豆しょうゆ コク仕立て ロットA(「丸大豆 コク仕立てA」と表記。キッコーマン食品社製)であった。
No.44の調味液サンプルは調味液用組成物にしょう油を添加せず、上記加熱も行わない比較例であった。No.45はNo.44において得た食品サンプルに、No.46と同量(調味液サンプル全体の100gにおいて6g)の濃口しょう油をレトルト処理前に添加して得た、もう一つの比較例として位置づけられる調味液サンプルであった。
各調味液のサンプルについて、調味液の評価を行った。評価は、3名の専門パネル(訓練期間:10~15年)によって、風味、大豆加工品タンパクの食感及び色について、それぞれ以下の方法で実施した。
●<風味>
「大豆臭」の強度を下記の5段階評価で評価し、3名の合計点数が3~5点は×、6点~8点を△、9~11点は○、12点以上は◎とした。
5:感じない
4:ほぼ感じない
3:やや感じる
2:感じる(サンプルNo.45:濃口しょう油を調味液用組成物作製時には加えず、その後調味料の作製時に加えた調味液)
1:非常に強く感じる(サンプルNo.44:しょう油を一切加えない調味液)
●<食感>
牛挽き肉様の食感を下記の5段階評価で評価し、3名の合計点数が3~5点は×、6点~8点を△、9~11点は○、12点以上は◎とした。 5:繊維感と噛み応えのある硬さがあり、牛挽き肉をフライパンで炒めたそぼろ肉の食感がある
4:繊維感と硬さが感じられ、牛挽き肉を沸騰水中で3分間茹でた時のそぼろ肉の食感である
3:繊維感と硬さがやや感じられ、牛挽き肉を沸騰水で湯通ししたそぼろ肉の食感である
2:繊維感があまり感じられず、やわらかい食感である(サンプルNo.45と同等)
1:繊維感が感じられず、やわらかい食感である(サンプルNo.44と同等)
●<色(L値)>
肉様の「色味」は、大豆加工品タンパクをすりつぶした後の色差を測定し、50以上は×、45~50を△、L値40~45は○、L値40以下は◎とした。
メッシュ(目開き1mm)で、液部と固形部を分離。固形部より、大豆加工品タンパク30gをサンプリングした。続いて20倍量の水(600g)で洗浄後、水切りし、フードプロセッサーで粉砕処理後、L値(反射光)を測定した。L値の測定には(測色色差計 Color Meter ZE2000 日本電色工業社製)を用いた。
これら3項目についての総合的な評価結果による総合評価も行った。総合的な評価は、すべての評価項目が○の場合を○、ひとつでも△がある場合を△、ひとつでも×がある場合を×とし、とくに好ましいとの評価(◎)が2個以上である場合◎とした。
各調味液のマルトール及びHMMFの定量を行った。
マルトール及びHMMFの濃度は、Journal of Agricultural and Food Chemistry Vol. 60, 3832, 2012に記載のガスクロマトグラフィーを用いる定量方法により測定した。測定装置として(ガスクロマトグラフ Agilent 7890A アジレント社製)を用いた。
(2)結果
結果を表4-3に示す。本発明の調味液用組成物を用いて得た調味液であるサンプルNo.48及びNo.49においては、サンプルNo.44~47より大豆臭抑制による風味改善効果、食感及び色が優れていた。またサンプルNo.48及びNo.49は肉風味(加熱した牛挽き肉様の風味)においてもその他のサンプルを上回り、調味液における牛挽き肉の量を実際の量より多く感じさせる効果が奏された。

Figure 0007089096000006

Figure 0007089096000007

Figure 0007089096000008
[実施例・試験例5]食品
実施例4のサンプルNo.48の調味料を用いて、肉豆腐を調理した。具体的には、豆腐を、水を切った上で一口大の大きさに切った。次いでサラダ油 小さじ1をひいたフライパンを熱し、豆腐の両面を中火で3~4分焼いた。このフライパンの中に、調味液を加え、中火で1分間炒め合わせて、肉豆腐を得た。No.48の大豆タンパク加工品を牛挽き肉に置き換えた調味料で調理した肉豆腐を比較対照とした。その結果、No.48の肉豆腐は風味、食感、外観において比較対照と遜色のない良好な肉豆腐を得ることができた。
本発明によれば大豆タンパク加工品を含む食品に用いられる組成物として、大豆タンパク加工品の不快な風味が従来のものより低減された大豆タンパク加工品を含む組成物、同組成物を用いた及び食品が提供される。疾病や宗教などの理由で動物性食品の摂取を避けたり、制限したりする必要がある人向けに、肉類など動物性原料を用いずとも肉の味わいを感じることのできる調味料や食品を提供することができる。したがって本発明は調味液産業及び食品産業ならびにその関連産業の発展に寄与するところ大である。

Claims (9)

  1. 粒状の大豆タンパク加工品を含む食品用組成物であって、HMMFを該食品用組成物全体の重量に対して5ppm~100ppm含み、マルトールを食品用組成物全体の重量に対して5ppm~100ppm含む、食品用組成物。
  2. 請求項1に記載の食品用組成物の調製に用いるための組成物であって、HMMFを該組成物全体の重量に対して5.3ppm~106.7ppm含み、及びマルトールを該組成物全体の重量に対して5.3ppm~106.7ppm含む、大豆タンパク加工品を含む食品における好ましくない風味を低減するための、前記組成物。
  3. 粒状の大豆タンパク加工品を含む食品における好ましくない風味を低減するための、請求項1に記載の食品用組成物。
  4. 請求項1又は3に記載の食品用組成物を含む食品であって、粒状の大豆タンパク加工品を含む食品における好ましくない風味が、請求項1又は3に記載の食品用組成物由来のHMMF及び請求項1又は3に記載の食品用組成物由来のマルトールを含むことにより低減されている食品、ただし、
    前記請求項1又は3に記載の食品用組成物由来のマルトールは、粒状の大豆タンパク加工品の重量に対して25~1600ppm含まれる
  5. さらに糖類及びしょう油を含み、HMMFを食品全体の重量に対して2.0ppm以上含み、マルトールを食品全体の重量に対して0.9ppm以上含む、請求項4に記載の食品。
  6. 粒状の大豆タンパク加工品を含まない食品の素材に、請求項1又は3に記載の食品用組成物を含ませることにより、該食品における、前記粒状の大豆タンパク加工品による好ましくない風味を低減する方法。
  7. 粒状の大豆タンパク加工品を含む食品における好ましくない風味を、HMMF及びマルトールを含むことにより、低減する方法であって、
    請求項1又は3に記載の食品用組成物を、前記粒状の大豆タンパク加工品を含まない食品の素材に含ませて前記食品とすることを含む、前記方法。
  8. HMMFを該食品全体の重量に対して5.0ppm以上含み、マルトールを該食品全体の重量に対して5.0ppm以上含む、請求項7に記載の方法。
  9. 食品が糖類を含み、HMMFを前記粒状の大豆タンパク加工品の重量に対して80.0ppm以上含み、マルトールを前記粒状の大豆タンパク加工品の重量に対して80.0ppm以上含む、請求項7に記載の方法。
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山内 文男,大豆の発酵食品,大豆の科学,第1版,株式会社 朝倉書店 朝倉 邦造,p.92-103
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