JP7087642B2 - インク、インク収容容器、記録装置、及び記録方法 - Google Patents
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Description
本実施形態のインクは、樹脂粒子を含有し、必要に応じて、水、色材、有機溶剤、及び界面活性剤等の成分を含有する。また、樹脂粒子は、樹脂粒子A、及び樹脂粒子Bを含有する。
樹脂粒子とは、水中またはインク中に分散している樹脂の粒子であり、水中またはインク中に溶解している水溶性樹脂とは区別される。本実施形態のインクに含有される樹脂粒子は、樹脂粒子A、及び樹脂粒子Bを含み、必要に応じて、他の樹脂粒子や水溶性樹脂を含んでいてもよい。なお、樹脂粒子は、目的に応じて適宜合成したものを使用してもよく、市販品を使用してもよい。
本実施形態のインクに含有される樹脂粒子は、ガラス転移温度(Tg)が70℃以上120℃以下であって、体積平均粒子径が100nm以上300nm以下である樹脂粒子Aと、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であって、体積平均粒子径が50nm以下である樹脂粒子Bと、を含む。
一般に、ガラス転移温度(Tg)の高い樹脂粒子をインクに含有させた場合、付与されたインクが乾燥して形成されたインク膜の画像表面における摩擦抵抗は小さくなる。そのため、例えば、インク膜を形成した後の記録媒体をロール状に巻き取る場合などにおいて、インク膜に接触する記録媒体に対し、インク膜の一部が転移する現象(以降、「ブロッキング」とも示す)が生じにくくなる。一方で、ガラス転移温度(Tg)の高い樹脂粒子は、加熱してインクを乾燥させる工程などにおいて、樹脂粒子が溶融しにくい。そのため、例えば、記録媒体が非浸透性基材などである場合において、樹脂が記録媒体の表面に馴染まず、インク膜の記録媒体に対する密着性が劣ることがある。
また、ガラス転移温度(Tg)の低い樹脂粒子をインクに含有させた場合、樹脂粒子は容易に溶融する。そのため、例えば、記録媒体が非浸透性基材などであっても、樹脂が記録媒体の表面に馴染みやすく、インク膜の記録媒体に対する密着性が優れる。一方で、ガラス転移温度(Tg)の低い樹脂粒子は、インク膜の画像表面における摩擦抵抗や、タック性(インク膜のべたつき)が大きくなる。そのため、例えば、インク膜を形成した後の記録媒体をロール状に巻き取る場合などにおいて、ブロッキングが生じやすくなることがある。
そこで、ガラス転移温度(Tg)が高く且つ体積平均粒子径が大きい樹脂粒子Aと、ガラス転移温度(Tg)が低く且つ体積平均粒子径が小さい樹脂粒子Bと、をインクに含有させ、且つ、好適なガラス転移温度(Tg)と体積平均粒子径とを見出すことで、記録媒体に対する密着性が優れ、ブロッキング発生が抑制される(言い換えると、ブロッキング性が向上する)インクを得た。すなわち、ガラス転移温度(Tg)が高い樹脂粒子の体積平均粒子径を大きくすることで樹脂粒子Aを選択的にインク膜の画像表面に露出させてブロッキング性を向上させるとともに、ガラス転移温度(Tg)が低く微細な樹脂粒子Bで樹脂粒子Aと記録媒体との間を満たすことで樹脂粒子Aと記録媒体の接触面積を増加させて密着性を向上させる。
また、インク中における樹脂粒子Aと樹脂粒子Bのそれぞれの含有量は、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、インク全量に対して、1.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがより好ましい。
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
多価アルコール類の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等が挙げられる。
多価アルコールアルキルエーテル類としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
多価アルコールアリールエーテル類としては、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。
含窒素複素環化合物としては、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
アミド類としては、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等が挙げられる。
アミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
含硫黄化合物類としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等が挙げられる。
その他の有機溶剤としては、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、顔料として、混晶を使用しても良い。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー9,45,249、C.I.アシッドブラック1,2,24,94、C.I.フードブラック1,2、C.I.ダイレクトイエロー1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック3,4,35が挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
分散剤として、竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
顔料分散体に対し、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
インクには、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
インクが付与される記録媒体としては、特に限定されないが、非浸透性基材であることが好ましい。上記の通り、記録媒体が非浸透性基材であると、インク膜の記録媒体に対する密着性が劣る課題がより生じやすいため、本実施形態のインクを用いたときに得られる効果が大きくなるためである。
非浸透性基材とは、水透過性、水吸収性、又は水吸着性が低い表面を有する基材を指し、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない基材も含まれる。より定量的には、ブリストー(Bristow)法において、接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である基材を指す。
ポリプロピレンフィルムとしては、例えば、東洋紡社製P-2002、P-2161、P-4166、SUNTOX社製PA-20、PA-30、PA-20W、フタムラ化学社製FOA、FOS、FORなどが挙げられる。
ポリエチレンテレフタレートフィルムとしては、例えば、東洋紡社製E-5100、E-5102、東レ社製P60、P375、帝人デュポンフィルム社製G2、G2P2、K、SLなどが挙げられる。
ナイロンフィルムとしては、例えば、東洋紡社製ハーデンフィルムN-1100、N-1102、N-1200、ユニチカ社製ON、NX、MS、NKなどが挙げられる。
インク収容容器は、本実施形態のインクを収容するインク収容部を備え、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材を有してもよい。
インク収容容器は、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク収容部を有するもの、大容量のインクタンクなどが好適である。
巻き出し装置101は、巻出手段の一例であって、回転駆動することにより、ロール状に収納された非浸透性基材102を記録装置100内の搬送経路に供給する。
インクジェット吐出ヘッド107は、インク付与手段の一例であって、複数のノズルが配列された複数のノズル列を有しており、ノズルからのインクの吐出方向が、非浸透性基材102の搬送経路に向くように設けられている。これにより、インクジェット吐出ヘッド107は、非浸透性基材102上に、インク収容容器に収容されていたマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、及びブラック(K)の各色の液体を順次吐出する。なお、吐出されるインクの色はこれらに限らず、ホワイト、グレー、シルバー、ゴールド、グリーン、ブルー、オレンジ、バイオレットなどの色であってもよい。
また、インクジェット吐出ヘッド107は、ライン型のインクジェット吐出ヘッドであるが、「ライン型のインクジェット吐出ヘッド」とは、非浸透性基材102の搬送方向の全幅にわたってインクを吐出するノズルが配置されたインクジェット吐出ヘッドである。なお、インクジェット吐出ヘッドとしては、ライン型に限らず、シリアル型であってもよい。
また、インクジェット吐出ヘッド107において、インクに刺激を印加してインクを吐出させる手段としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば加圧装置、圧電素子、振動発生装置、超音波発振器、ライトなどが挙げられる。具体的には、圧電素子等の圧電アクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどが挙げられる。これらの中でも、特に、インクジェット吐出ヘッド内のインク流路内にある圧力室(液室などとも称する)と呼ばれる位置に接着された圧電素子に電圧を印加することにより、圧電素子が撓み、圧力室の容積が縮小することで圧力室中のインクが加圧され、インクジェット吐出ヘッドのノズルからインクを液滴として吐出させる手段が好ましい。
プラテン108は、搬送手段の一例であって、非浸透性基材102を、搬送経路に沿って搬送されるようにガイドする。
インク乾燥装置109は、加熱手段の一例であって、非浸透性基材102上に付与されたインクに温風を吹き付けて加熱し、インクを乾燥させる。なお、インクを乾燥させる手段は、温風を吹き付ける手段に限らず、例えば、非浸透性基材102の裏面を加熱ローラ、フラットヒータ等に接触させて乾燥させる手段等の各種公知の手段を用いることができる。インク乾燥装置109は、インクを50℃以上120℃以下で加熱する手段であることが好ましい。
巻取り装置110は、巻取手段の一例であって、インクを付与してから乾燥することで形成されたインク膜を有する非浸透性基材102を、回転駆動することにより、巻き取ってロール状に収納する。本実施形態では、記録装置が巻取手段を有することが好ましい。上記の通り、記録装置が巻取手段を有すると、インク膜においてブロッキングが生じる課題がより生じやすくなるため、本実施形態のインクを用いたときに得られる効果が大きくなるためである。
なお、記録装置は、非浸透性基材102とインクとの間の密着性を高める前処理液を、インクが付与される前の非浸透性基材102に対して付与する前処理液付与手段を有していてもよい。しかし、本実施形態のインクは、インク単独で非浸透性基材102に対する密着性を有するため、前処理液付与手段を有さない記録装置を用いることができ、これにより、記録装置の省スペース化を実現すことができる。
インク付与工程は、非浸透性基材102上に、インクを付与する工程であり、インクジェット吐出ヘッド107の各ノズルから非浸透性基材102上に、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、及びブラック(K)の各色の液体が順次吐出される。
インク乾燥工程は、インク付与工程の後に、付与されたインクを乾燥させる工程である。乾燥は、記録媒体にベタつきが感じられない程度に行うことが好ましい。なお、図1に示す乾燥工程では、付与されたインクをインク乾燥装置109により乾燥させるが、特別な乾燥手段を用いず、自然乾燥させてもよい。
巻取工程は、インクが付与されて乾燥された非浸透性基材102を巻き取って収納する工程である。
[ポリエステルポリオール1の合成]
0.5Lのセパラブルフラスコに、窒素を導入しながら、BA-2(ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物;日本乳化剤社製)343g、イソフタル酸ジメチル137gを材料として仕込み、130℃で溶融した。これらが溶融したところで、チタンテトライソプロポキシド0.14gを加え、攪拌しながら230℃まで4時間かけて昇温し、230℃でさらに3時間反応させた。その後、チタンテトライソプロポキシド0.07gを追加して2時間保持した後、窒素導入を止め、15kPa減圧下でさらに2時間反応させることで、ポリエステルポリオール1を得た。得られたポリエステルポリオール1の数平均分子量は900、水酸基価は110mgKOH/gであった。なお、ポリエステルポリオール1の数平均分子量は次の方法により測定した。
樹脂粒子の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定装置(例えば、HLC-8220GPC、東ソー社製)を用いて測定した。カラムとしては、TSKgel SuperHZM-H 15cm 3連(東ソー社製)を使用した。測定する樹脂は、テトラヒドロフラン(THF)(安定剤含有、和光純薬社製)にて0.15質量%溶液にし、0.2μmフィルターで濾過した後、その濾液を試料として用いた。具体的には、THF試料溶液を測定装置に100mL注入し、温度40℃の環境下にて、流速0.35μL/分で測定した。
数平均分子量は単分散ポリスチレン標準試料より作成された検量線を用いて計算を行った。標準ポリスチレン試料としては、昭和電工社製ShowdexSTANDARDシリーズおよびトルエンを用いた。以下の3種類の単分散ポリスチレン標準試料のTHF溶液を作成し、上記の条件で測定を行い、ピークトップの保持時間を単分散ポリスチレン標準試料の光散乱分子量として検量線を作成した。
・溶液A:S-7450 2.5mg,S-678 2.5mg,S-46.5,2.5mg,S-2.90 2.5mg,THF 50mL
・溶液B:S-3730 2.5mg,S-257 2.5mg,S-19.8,2.5mg,S-0.580 2.5mg,THF 50mL
・溶液C:S-1470 2.5mg,S-112 2.5mg,S-6.93,2.5mg,トルエン 2.5mg,THF 50mL
検出器にはRI(屈折率)検出器を用いた。
ポリエステルポリオール1の合成において、材料をプロピレングリコール177g、テレフタル酸ジメチル313gに変更した以外は同様にして、ポリエステルポリオール2を合成した。得られたポリエステルポリオール2の数平均分子量は1700、水酸基価は92mgKOH/gであった。
ポリエステルポリオール1の合成において、材料をプロピレングリコール177g、テレフタル酸ジメチル226g、アジピン酸ジメチル87gに変更した以外は同様にして、ポリエステルポリオール3を合成した。得られたポリエステルポリオール3の数平均分子量は1400、水酸基価は128mgKOH/gであった。
ポリエステルポリオール1の合成において、材料をBA-2(ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物;日本乳化剤社製)343g、テレフタル酸ジメチル137gに変更した以外は同様にして、ポリエステルポリオール4を合成した。得られたポリエステルポリオール4の数平均分子量は2300、水酸基価は61mgKOH/gであった。
50.0部のポリエステルポリオール1、3.0部の2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、1.8部のトリエチルアミン、52.0部のアセトンからなる混合物を、攪拌翼、温度計、還流管を備えた0.5Lのセパラブルフラスコに仕込み攪拌し、窒素を導入しながら40℃に加熱して原材料を溶解させた。次いで、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアナート23.2部、2-エチルヘキサン酸すず(II)を1滴加え、80℃に昇温して2時間反応させた。その後40℃に降温し、イオン交換水142.0部を加えて1時間攪拌して微粒子化し、ジエチレントリアミン1.1部を加えてさらに2時間反応させた。トリエチルアミン0.5部を加えて中和し、アセトンを除去することにより水系のウレタン樹脂分散液を得た。これを樹脂粒子A-1とした。
樹脂粒子A-1の合成において、材料を表1に記載の種類と配合量に変更した以外は同様にして、水系のウレタン樹脂粒子分散液を得た。これを樹脂粒子A-2~A-8とした。
[樹脂粒子B-1の合成]
PTMG-1000(ポリテトラメチレングリコール、三菱ケミカル社製)50.0部、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸3.1部、トリエチルアミン2.3部、アセトン53.0部からなる混合物を、攪拌翼、温度計、還流管を備えた0.5Lのセパラブルフラスコに仕込み攪拌し、窒素を導入しながら40℃に加熱して原材料を溶解させた。次いで、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアナート23.2部、2-エチルヘキサン酸すず(II)を1滴加え、80℃に昇温して2時間反応させた。その後40℃に降温し、イオン交換水142.0部を加えて1時間攪拌して微粒子化し、ジエチレントリアミン0.9部を加えてさらに2時間反応させた。pHが8未満の場合はトリエチルアミンで適宜中和し、アセトンを除去することにより、水系のウレタン樹脂分散液を得た。これを樹脂粒子B-1とした。
樹脂粒子B-1の合成において、材料を表2に記載の種類と配合量に変更した以外は同様にして、水系のウレタン樹脂粒子分散液を得た。これを樹脂粒子B-2~4、7~10とした。
樹脂粒子B-1の合成において、材料を表2に記載の種類と配合量に変更した以外は同様にして、ウレタン樹脂粒子分散液を得た。さらに超音波で分散を行い、0.2μmメンブレンフィルタ(セルロース混合エステル)で繰り返し濾過することで粗大粒子を取り除き、これを樹脂粒子B-5~6とした。
得られた樹脂粒子A及び樹脂粒子Bについて、ガラス転移温度Tgの測定を行った。ガラス転移温度Tgは、示差走査熱量計(DSCシステムQ-2000、TAインスツルメント社製)を用いて測定した。具体的には、樹脂粒子分散液をオーブンで乾燥させたサンプルを、アルミニウム製の試料容器に約5.0mg入れ、窒素雰囲気下にて測定を行った。2回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、中点法にてTgを求めた。
(1)-80まで冷却後5分保持
(2)10℃/minで160℃まで昇温
(3)-80まで冷却後5分保持
(4)10℃/minで160℃まで昇温
得られた樹脂粒子A及び樹脂粒子Bについて、体積平均粒子径の測定を行った。樹脂粒子の体積平均粒子径は、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置(ELSZ-1000S、大塚電子社製)を用いて測定した。樹脂粒子濃度が0.5質量%となるようにイオン交換水で希釈した後、測定温度25℃、光量最適値30,000(最大値50,000、最小値10,000)、ピンホール50、ダストカットトレランスを5%とし、Marquart法にて解析した。
・T-5651(ポリカーボネート系ポリマーポリオール、旭化成ケミカルズ社製)
・PTMG-650(ポリテトラメチレングリコール、三菱ケミカル社製)
・T-5650E(ポリカーボネート系ポリマーポリオール、旭化成ケミカルズ社製)
[実施例1]
樹脂粒子A-1を2.9部(固形分)、樹脂粒子B-1を5.5部(固形分)、ブラック顔料分散体(P-AK-512、花王社製)3.8部(固形分)、プロピレングリコール20部、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド(エクアミドM100、出光興産株式会製)5.9部、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール2.1部、TEGO Wet270(EVONIK INDUSTRIES製)0.7部、プロキセルLV(アビシア製)0.05部、1,2,3-ベンゾトリアゾール0.05部、イオン交換水23.8部を混合してマグネティックスターラーで攪拌し、0.8μmメンブレンフィルター(セルロース混合エステル)で濾過し、実施例1のインクを作製した。なお、インクを構成する各成分(固形分の分散媒も含む)の合計量は100部である。
実施例1の配合において、樹脂粒子A及び樹脂粒子Bの組み合わせを表3、4に記載の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2~13、比較例1~8のインクを作製した。
まず、作製したインクをインクジェットプリンター(IPSiO GXe5500、リコー製)に充填し、50℃に加熱したポリプロピレン系合成紙(FPU-130、ユポ製)上にベタ画像を1200×1200dpiで印刷し、70℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥をおこなった。
〔評価基準〕
A:残存マス数が100個
B:残存マス数が90個以上100個未満
C:残存マス数が70個以上90個未満
D:残存マス数が1個以上70個未満
E:残存マス数が0個
まず、作製したインクをインクジェットプリンター(IPSiO GXe5500、リコー製)に充填し、50℃に加熱したポリプロピレン系合成紙(FPU-130、ユポ製)上に2cm四方のベタ画像を1200×1200dpiで印刷し、70℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥をおこなった。そして、加熱乾燥直後に、ベタ画像に対し、印刷されていない同記録媒体(ポリプロピレン系合成紙 FPU-130、ユポ社製)を重ねた。更に、その上から加重(0.5kg/cm2)した状態で、25℃50%RHの環境下に24時間放置し、その後、印刷されていない記録媒体を剥離した。次に、重ねた記録媒体に移ったブラックインクの画像濃度(転写濃度)を反射型カラー分光測色濃度計(X-Rite社製)で測定し、下記評価基準に基づいてランク評価した。評価がC以上である場合を実用可能であると判断した。
〔評価基準〕
A:ベタ画像に接触跡が無く、転写濃度が0以上0.1未満(転写なし)
B:ベタ画像に接触跡が生じるが、転写濃度が0以上0.1未満(転写なし)
C:転写濃度が0.1以上0.2未満
D:転写濃度が0.2以上0.8未満
E:転写濃度が0.8以上
101 巻き出し装置
102 非浸透性基材
107 インクジェット吐出ヘッド
108 プラテン
109 インク乾燥装置
110 巻取り装置
Claims (15)
- 樹脂粒子A、及び樹脂粒子Bを含有するインクであって、
前記樹脂粒子Aのガラス転移温度は、70℃以上120℃以下であり、
前記樹脂粒子Aの体積平均粒子径は、100nm以上300nm以下であり、
前記樹脂粒子Bのガラス転移温度は、0℃以下であり、
前記樹脂粒子Bの体積平均粒子径は、50nm以下であり、
前記樹脂粒子A及び前記樹脂粒子Bは、ウレタン樹脂粒子であるインク。 - 前記樹脂粒子Bのガラス転移温度は、-70℃以上である請求項1に記載のインク。
- 前記樹脂粒子Bのガラス転移温度は-60℃以上-20℃以下であり、前記樹脂粒子Bの体積平均粒子径は40nm以下である請求項1又は2に記載のインク。
- 前記樹脂粒子Bの含有量は、前記樹脂粒子A及び前記樹脂粒子Bの合計の含有量に対して、50質量%以上である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のインク。
- 前記樹脂粒子Aと前記樹脂粒子Bの合計の含有量は、インク全量に対して、1.0質量%以上30.0質量%以下である請求項1乃至4のいずれか一項に記載のインク。
- 前記樹脂粒子Aと前記樹脂粒子Bのそれぞれの含有量は、インク全量に対して、1.0質量%以上20.0質量%以下である請求項1乃至5のいずれか一項に記載のインク。
- 前記樹脂粒子Aの体積平均粒子径及び前記樹脂粒子Bの体積平均粒子径の比(樹脂粒子A/樹脂粒子B)は、3.0以上である請求項1乃至6のいずれか一項に記載のインク。
- 水、有機溶剤、色材を含有する請求項1乃至7のいずれか一項に記載のインク。
- 請求項1乃至8のいずれか一項に記載のインクを収容するインク収容容器。
- 請求項9に記載のインク収容容器と、収容された前記インクを記録媒体に対して付与するインク付与手段と、を有する記録装置。
- 吐出された前記インクを50℃以上120℃以下で加熱する加熱手段を有する請求項10に記載の記録装置。
- 前記インクを付与された前記記録媒体をロール状に巻き取る巻取手段を有する請求項10又は11に記載の記録装置。
- 前記記録媒体は、ブリストー(Bristow)法において、接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である請求項10乃至12のいずれか一項に記載の記録装置。
- 前記インクを付与された前記記録媒体をロール状に巻き取る巻取手段を有し、
前記記録媒体は、ブリストー(Bristow)法において、接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である請求項10又は11に記載の記録装置。 - 請求項1乃至8のいずれか一項に記載のインクを付与するインク付与工程を有する記録方法。
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