実施の形態1.
本発明の実施の形態1に係るサーボアンプについて説明する。サーボアンプは、例えば工場の生産ラインで用いられるサーボモータを制御するように構成されている。サーボアンプには、サーボモータに電流を連続して流す連続運転機能に加えて、外力が加えられてもサーボモータの停止状態を保持するサーボロック機能が備えられている。
図1は、本実施の形態に係るサーボアンプ100の構成を示す斜視図である。図1では、冷却媒体である空気の流れ方向、すなわち風向を太矢印で表している。図1に示すように、サーボアンプ100は、サーボモータ(図示せず)の動きを操作する指令を出力する指令部10と、指令部10からの指令に基づきサーボモータに電流を流す制御機器部20と、を有している。制御機器部20は、回路基板21と、回路基板21の一方の面に搭載された複数の半導体素子31、32、33と、回路基板21の他方の面に配置されたヒートシンク40と、を有している。サーボロック機能が実行されてサーボロック状態になると、指令部10からの指令により、連続運転中よりも大きい電流が複数の半導体素子31、32、33のそれぞれに送られる。これにより、連続運転後にサーボロック状態になると、複数の半導体素子31、32、33のそれぞれでの発熱量が数秒間、連続運転中よりも多くなる。すなわち、連続運転後にサーボロック状態になると、制御機器部20では、一時的に発熱量が大きくなる瞬時高発熱運転が行われる。
ヒートシンク40は、空気への放熱によって複数の半導体素子31、32、33を冷却するように構成された放熱器である。ヒートシンク40は、回路基板21の他方の面に沿って配置される平板状のベース板41と、回路基板21から離れる方向に向かってベース板41から延びた複数のフィン42と、を有している。複数のフィン42のそれぞれは、長方形平板状の形状を有している。複数のフィン42のそれぞれは、ピン状の形状を有していてもよい。複数の半導体素子31、32、33で発生した熱は、ヒートシンク40に伝達される。ヒートシンク40に伝達された熱は、互いに隣り合う2枚のフィン42の間に形成された風路を通過する空気に放熱される。ヒートシンク40の材質としては、例えば、熱伝導率が高く加工性の良好なアルミニウムが用いられる。
複数の半導体素子31、32、33のそれぞれは、指令部10から送られる電流により発熱する素子である。複数の半導体素子31、32、33のそれぞれでは、定常状態である連続運転中に発熱が生じることに加えて、連続運転後のサーボロック状態において瞬時高発熱が生じる。複数の半導体素子31、32、33のそれぞれは、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、ダイオード等のパワーモジュールである。半導体素子31は、複数の半導体素子31、32、33のうち最も風上側に配置されている。半導体素子32は、複数の半導体素子31、32、33のうち最も風下側に配置されている。半導体素子33は、半導体素子31よりも風下側であって半導体素子32よりも風上側に配置されている。すなわち、回路基板21上には、風上側から風下側に向かって、半導体素子31、半導体素子33及び半導体素子32がこの順に配置されている。
ここで、本実施の形態では、以下のような座標系をとっている。ベース板41と平行な平面内で風向に沿ってx軸をとり、風上側から風下側に向かう方向を+x方向とする。ベース板41と平行な平面内でx軸と直交する方向に沿ってy軸をとる。x軸及びy軸の双方と平行なxy平面は、ベース板41と平行になっている。xy平面と交差する方向に沿ってz軸をとる。z軸は、例えばxy平面と直交している。複数のフィン42のそれぞれは、z軸に沿って配置されている。複数のフィン42のそれぞれの先端部43側からベース板41に向かう方向を+z方向とする。x軸及びz軸の双方と平行なxz平面は、複数のフィン42のそれぞれと平行になっている。
本実施の形態の複数のフィン42は、後述する図2~図4に示すように、y軸方向に間隔を空けて並列した10枚のフィン42a、42b、42c、42d、42e、42f、42g、42h、42i、42jによって構成されている。図では複数のフィン42のy軸方向の間隔を等間隔としたが、不等間隔としてもよい。フィン42a、42b、42c、42d、42e、42f、42g、42h、42i、42jのそれぞれは、z方向に沿って延びている。フィン42a、42b、42c、42d、42e、42f、42g、42h、42i、42jのそれぞれのz軸方向の長さは同一である。本実施の形態のヒートシンク40は、空気の自然対流を用いた自然空冷方式である。自然空冷方式では、風向が鉛直上向きとなる。このため、ヒートシンク40及びそれを含む制御機器部20は、-x方向が鉛直下向きとなるような姿勢で設置される。
図2は、本実施の形態に係るサーボアンプ100の制御機器部20の構成を示す斜視図である。図2では、xz平面と平行な平面で切断された制御機器部20の構成を示している。図3は、本実施の形態に係るサーボアンプ100の制御機器部20を+x方向に見た構成を示す正面図である。図4は、本実施の形態に係るサーボアンプ100の制御機器部20を+z方向に見た構成を示す平面図である。
図2~図4に示すように、複数の半導体素子31、33、32のそれぞれは、z軸方向に沿って見たとき、複数のフィン42のうちの少なくとも1枚と重なるように配置されている。本実施の形態では、複数の半導体素子31、33、32はいずれも、z軸方向に沿って見たときにフィン42eと重なるように配置されている。
フィン42eには、複数の突起体51、53、52が形成されている。フィン42eに形成される突起体51、53、52の個数は、z軸方向に沿って見たときに当該フィン42eと重なる半導体素子31、33、32の個数と同数である。突起体51、53、52は、z軸方向に沿って見たとき、半導体素子31、33、32とそれぞれ重なるように配置されている。すなわち、突起体51、53、52は、風上側から風下側に向かってこの順に配置されている。y軸方向における突起体51の幅W1は、y軸方向におけるフィン42eの幅W0よりも大きくなっている(W1>W0)。y軸方向における突起体53の幅、及びy軸方向における突起体52の幅のそれぞれも、y軸方向におけるフィン42eの幅W0よりも大きくなっている。y軸方向における突起体53の幅、及びy軸方向における突起体52の幅のそれぞれは、例えば、y軸方向における突起体51の幅W1と等しい。突起体51、53、52のそれぞれは、フィン42eと同一の材料でフィン42eと一体に形成されている。突起体51、53、52のそれぞれは、例えば、内部に空洞を備えない中実体である。
突起体51、53、52のそれぞれは、ベース板41とフィン42eとの接触部から-z方向に延伸している。z軸方向における突起体51の長さL1、z軸方向における突起体53の長さL3、及びz軸方向における突起体52の長さL2は、いずれもz軸方向におけるフィン42eの長さL0よりも短い(L1<L0、L3<L0、L2<L0)。すなわち、突起体51、53、52のそれぞれにおいて、+z方向の端部はベース板41に接続されており、-z方向の端部は各フィンの先端部43よりも+z側に位置している。
突起体51、53、52のそれぞれは、xy平面と平行な断面において、楕円状の形状を有している。同断面において、突起体51、53、52のそれぞれの長径方向はx軸と平行になっており、突起体51、53、52のそれぞれの短径方向はy軸と平行になっている。突起体51、53、52は、例えば同一の断面形状を有している。
突起体51は、フィン42eから-y方向に突出した突起51aと、フィン42eから+y方向に突出した突起51bと、を有している。突起51a及び突起51bのそれぞれは、xy平面と平行な断面において半楕円状の形状を有している。突起体51は、突起51a又は突起51bのみによって形成されていてもよい。同様に、突起体53は、フィン42eから-y方向に突出した突起53aと、フィン42eから+y方向に突出した突起53bと、を有している。突起53a及び突起53bのそれぞれは、xy平面と平行な断面において半楕円状の形状を有している。突起体53は、突起53a又は突起53bのみによって形成されていてもよい。突起体52は、フィン42eから-y方向に突出した突起52aと、フィン42eから+y方向に突出した突起52bと、を有している。突起52a及び突起52bのそれぞれは、xy平面と平行な断面において半楕円状の形状を有している。突起体52は、突起52a又は突起52bのみによって形成されていてもよい。
突起体51、53、52のうち最も風上側に位置する突起体51のz軸方向における長さL1は、突起体51、53、52のうち最も風下側に位置する突起体52のz軸方向における長さL2よりも短い(L1<L2)。z軸方向における突起体53の長さL3は、z軸方向における突起体51の長さL1以上(L3≧L1)であり、かつz軸方向における突起体52の長さL2以下(L3≦L2)であることが好ましい。例えば、長さL1、L3及びL2は、L1<L3<L2の関係を満たしている。
本実施の形態では、突起体51、53、52のそれぞれが1枚のフィン42eに設けられている。しかしながら、突起体51、53、52のそれぞれは、複数枚のフィンに跨がって設けられていてもよい。例えば、z軸方向に沿って見たときに半導体素子31が複数枚のフィンに跨がっている場合には、突起体51は当該複数枚のフィンに跨がって設けられていてもよい。
次に、制御機器部20からの放熱経路について説明する。連続運転中の半導体素子31、33、32では、ほぼ一定量の熱が連続的に発生し続ける。半導体素子31、33、32で発生した熱は、まずベース板41に伝達される。ベース板41に伝達された熱は、xy平面内である程度広がり、一部の熱がベース板41から空気に放熱される。その他の熱は、熱伝導により複数のフィン42及び複数の突起体51、53、52に伝熱し、複数のフィン42及び複数の突起体51、53、52から空気に放熱される。ベース板41、複数のフィン42及び複数の突起体51、53、52のそれぞれの表面付近では、空気の対流が生じる。自然空冷の場合、空気の対流は、空気の密度差によって浮力が発生することにより生じる。空気は高温になるほど密度が小さくなるため、放熱によって温度が上昇した空気は、鉛直上向きすなわち+x方向に上昇する。これにより、+x方向に向かう空気の流れが生じ、半導体素子31、33、32で連続的に発生する熱は、空気に放熱され続ける。連続運転中の半導体素子31、33、32のそれぞれの温度は、ある温度まで上昇して飽和する。
一方、瞬時高発熱運転時の半導体素子31、33、32では、連続運転中よりも大きい熱量が数秒間、発生する。瞬時高発熱運転時の半導体素子31、33、32で発生した熱は、ベース板41を介して、複数のフィン42及び複数の突起体51、53、52に伝達される。本実施の形態のヒートシンク40は、突起体51、53、52の分だけ熱容量が大きくなっている。また、突起体51、53、52は、ベース板41及び複数のフィン42と比較すると、表面積当たりの質量が大きくなっている。したがって、ヒートシンク40のうち特に突起体51、53、52は、伝達された熱を蓄熱する蓄熱部として機能する。例えば、突起体51は主に半導体素子31で発生した熱を蓄熱し、突起体53は主に半導体素子33で発生した熱を蓄熱し、突起体52は主に半導体素子32で発生した熱を蓄熱する。蓄熱部は、時間当たりの発熱量と放熱量との差を埋めるバッファとなる。蓄熱部に蓄熱された熱は、徐々に空気に放熱される。
瞬時高発熱運転時の発熱は一時的なものであるため、連続運転中の連続的な発熱とは異なり、空気の対流による放熱が生じにくい。つまり、瞬時高発熱運転時の半導体素子31、33、32で発生した熱が空気に到達して飽和状態となるまでの間に、瞬時高発熱運転は終了する。このため、瞬時高発熱運転時の半導体素子31、33、32の温度上昇を抑制するためには、蓄熱効果を有する、熱容量の大きいヒートシンク40が有効である。熱容量は比熱と質量との積で表される。このため、ヒートシンク40の比熱及び質量の一方又は両方の値を大きくすることにより、ヒートシンク40の熱容量を大きくすることができる。ヒートシンク40の熱容量を大きくすることによって、瞬時高発熱運転時の半導体素子31、33、32の温度上昇を抑えることができる。
比熱とは、質量1kgの物質の温度を1K上昇させるために必要な熱量のことである。比熱の単位は[J/(kg・K)]である。比熱は、物質の温まりにくさを表すものである。つまり、比熱が大きいほど、短時間での温度上昇が生じにくい。比熱の値は、物質によって異なる。例えば、ヒートシンク40の材質よりも大きい比熱を有する蓄熱材が、ヒートシンク40の周囲又は半導体素子31、33、32の周囲に設けられる。これにより、蓄熱材の分だけ熱容量が増加するため、瞬時高発熱運転時の半導体素子31、33、32の温度上昇を抑えることができる。
ヒートシンク40の質量を増加させることによっても、ヒートシンク40の熱容量を大きくすることができる。例えば、本実施の形態の突起体51、53、52のように、ヒートシンク40の材質を変えずに形状のみを変更し、ヒートシンク40の質量を部分的に増加させる。これにより、製造コストの増加を抑えつつ、ヒートシンク40の熱容量を大きくすることができる。
熱容量を増加させる上記のいずれの手法によっても、ヒートシンク40の放熱面積の減少、又は、空気が通過する流路断面積の減少が生じ得る。このため、連続運転中の放熱のみを考慮したヒートシンクと比較すると、熱容量を増加させたヒートシンク40では、連続運転中の放熱性能が低下する場合がある。しかしながら、連続運転後に瞬時高発熱運転が行われるサーボアンプ100では、連続運転中の温度上昇を抑制できるだけでなく、連続運転中の温度上昇幅と、その後の瞬時高発熱運転時の温度上昇幅と、の総和を低減できる設計が求められる。
従来のサーボアンプが備えるヒートシンクでは、放熱性能を高めるために放熱面積が大きく確保されている。しかしながら、ヒートシンクからの放熱によって、連続運転中の温度上昇だけでなく瞬時高発熱運転での温度上昇をも抑制するためには、ヒートシンクの放熱面積をより大きくする必要がある。したがって、半導体素子の温度が許容温度を満たすようにするためには、ヒートシンクをより大型化するか、あるいは、入力電流量を制限する必要があるという課題があった。
これに対し、本実施の形態のヒートシンク40は、連続運転中の温度上昇だけでなく瞬時高発熱運転での温度上昇をも抑制できるように構成されている。このため、本実施の形態のヒートシンク40では、連続運転中の温度上昇幅と、その後の瞬時高発熱運転時の温度上昇幅と、の総和を低減することができる。したがって、本実施の形態によれば、ヒートシンク40の大型化を抑制することができる。また、本実施の形態では、入力電流量の制限を必ずしも必要としない。
本実施の形態のヒートシンク40では、突起体51、53、52のそれぞれがベース板41とフィン42eとの接触部から-z方向に延伸している。突起体51の長さL1、突起体53の長さL3及び突起体52の長さL2は、いずれもフィン42eの長さL0よりも短くなっている。この構成により、連続運転中には、半導体素子31、33、32で発生した熱がフィン42eの先端部43側まで伝達されやすくなることに加え、フィン42eの先端部43側ではフィン42d及びフィン42fのそれぞれとの間隔が広く確保される。このため、半導体素子31、33、32を効率良く冷却することができる。一方、瞬時高発熱運転時には、突起体51、53、52の分だけヒートシンク40の熱容量が増大するため、半導体素子31、33、32の温度上昇を抑制することができる。
半導体素子32は、空気の流れで半導体素子31及び半導体素子33よりも下流側に位置している。このため、半導体素子32は、半導体素子31及び半導体素子33から熱を奪ったことによって既に温度が上昇した空気によって冷却される。したがって、連続運転中には、半導体素子32の温度は、半導体素子31の温度及び半導体素子33の温度よりも高くなる。このように、連続運転中には、下流側に位置する半導体素子ほど温度が高くなる。これに対し、本実施の形態では、空気の流れにおいて下流側に位置する突起体ほど、z軸方向の長さが長くなっている。これにより、空気の流れにおいて上流側では、突起体により通風が阻害されるのを抑えることができる。また、下流側に位置する突起体ほど熱容量が大きくなっていることから、下流側に位置する半導体素子ほど、瞬時高発熱運転時の温度上昇を抑えることができる。したがって、本実施の形態によれば、連続運転中の温度上昇幅と、その後の瞬時高発熱運転時の温度上昇幅と、の総和を低減することができる。
図5は、本実施の形態に係るサーボアンプ100の効果を説明するグラフである。グラフの縦軸は温度を表している。グラフ中の(1)、(2)及び(3)は、本実施の形態のサーボアンプ100における3つの半導体素子のそれぞれの温度を表している。(1)は最も上流側の半導体素子31の温度を表しており、(2)はそれより下流側の半導体素子33の温度を表しており、(3)は最も下流側の半導体素子32の温度を表している。グラフ中の(4)、(5)及び(6)は、比較例のサーボアンプにおける3つの半導体素子のそれぞれの温度を表している。比較例のサーボアンプは、突起体51、53、52が設けられていないことを除き、本実施の形態と同様の構成を有している。(4)は最も上流側の半導体素子の温度を表しており、(5)はそれより下流側の半導体素子の温度を表しており、(6)は最も下流側の半導体素子の温度を表している。また、グラフ中の各棒において、下側のドットを付した部分は、連続運転中の温度上昇幅を表しており、上側の白抜きの部分は、瞬時高発熱運転時の温度上昇幅を表している。ドットを付した部分の上端で表される温度は、連続運転中の温度飽和状態での温度である。この温度は、瞬時高発熱運転が開始される時点での温度に相当する。
図5に示すように、本実施の形態及び比較例のいずれにおいても、連続運転中の温度は、下流側の半導体素子ほど高くなっている。これは、既に述べたように、下流側の半導体素子は、上流側の半導体素子から熱を奪って温度が上昇した空気によって冷却されるためである。
連続運転中における各位置の半導体素子の温度を本実施の形態と比較例とで比較すると、いずれも本実施の形態の方が高くなっている。つまり、(1)の連続運転中の温度は(4)の連続運転中の温度よりも高く、(2)の連続運転中の温度は(5)の連続運転中の温度よりも高く、(3)の連続運転中の温度は(6)の連続運転中の温度よりも高い。これは、突起体51、53、52によるヒートシンク40の放熱面積の減少と、空気の流路断面積の減少による通風抵抗の上昇と、の少なくとも一方に起因するものと考えられる。したがって、連続運転中の半導体素子の温度のみを比較した場合、比較例の方が本実施の形態よりも好ましい結果となっている。
比較例の各半導体素子における瞬時高発熱運転時の温度上昇幅を比較すると、各半導体素子の温度上昇幅は、配置位置に関わらずほぼ等しいことが分かる。つまり、(4)、(5)及び(6)の瞬時高発熱運転時の温度上昇幅はほぼ等しい。これは、比較例の構成では、各半導体素子の周囲の熱容量が等しいためである。一方、本実施の形態の各半導体素子における瞬時高発熱運転時の温度上昇幅を比較すると、下流側に配置された半導体素子ほど温度上昇幅が小さいことが分かる。つまり、(2)の瞬時高発熱運転時の温度上昇幅は(1)の瞬時高発熱運転時の温度上昇幅よりも小さく、(3)の瞬時高発熱運転時の温度上昇幅は(2)の瞬時高発熱運転時の温度上昇幅よりもさらに小さい。これは、本実施の形態の構成では、下流側の突起体ほど蓄熱量が大きくなっているためである。
各位置の半導体素子における連続運転中の温度上昇幅と瞬時高発熱運転時の温度上昇幅との総和を、本実施の形態と比較例とで比較すると、いずれも本実施の形態の方が小さくなっている。つまり、(1)の温度上昇幅の総和は(4)の温度上昇幅の総和よりも小さく、(2)の温度上昇幅の総和は(5)の温度上昇幅の総和よりも小さく、(3)の温度上昇幅の総和は(6)の温度上昇幅の総和よりも小さい。また、温度上昇幅の総和の最大値同士を本実施の形態と比較例とで比較しても、本実施の形態の方が小さくなっている。つまり、(6)の温度上昇幅の総和は(2)の温度上昇幅の総和よりも小さい。さらに、本実施の形態では、半導体素子の位置による温度上昇幅の総和のばらつきが小さくなっている。
以上のように、瞬時高発熱運転時の半導体素子の温度を比較すると、本実施の形態の方が比較例よりも半導体素子の温度上昇を抑制できることが分かる。瞬時高発熱運転時の半導体素子の温度は連続運転中よりも高いため、本実施の形態の方が比較例よりも、半導体素子が到達する最高温度を低下させることができる。
既に述べたように、本実施の形態のヒートシンク40には突起体51、53、52が設けられるため、突起体が設けられていない比較例と比較すると、空気の流路断面積が減少する。このため、図5に示したように、本実施の形態では、連続運転中の半導体素子の温度が比較例よりも上昇する。本実施の形態の突起体51、53、52のそれぞれは、xy平面と平行な断面において、楕円状の形状を有している。また、同断面において、突起体51、53、52のそれぞれの長径方向は、x軸と平行になっている。この構成によると、突起体51、53、52のそれぞれのyz断面の断面形状及び断面積は、空気の流れ方向に対して滑らかに変化する。これにより、ヒートシンク40に突起体51、53、52が設けられることによる空気抵抗の増加を抑えることができるため、連続運転中の半導体素子の温度上昇を抑制することができる。
本実施の形態では、突起体51、53、52は、z軸方向に沿って見たときに半導体素子31、33、32とそれぞれ重なるように配置されている。しかしながら、突起体51、53、52は、z軸方向に沿って見たときに、必ずしも半導体素子31、33、32とそれぞれ重なっていなくてもよい。また、本実施の形態では、半導体素子31、33、32の個数と同数の突起体51、53、52が設けられているが、半導体素子の個数と突起体の個数とが異なっていてもよい。
以上説明したように、本実施の形態に係るサーボアンプ100は、回路基板21と、少なくとも1つの半導体素子31、32と、ヒートシンク40と、を備える。半導体素子31、32は、回路基板21の一方の面に搭載されている。ヒートシンク40は、回路基板21の他方の面に配置され、回路基板21と平行なx軸方向に沿って流れる空気に放熱するように構成されている。ヒートシンク40は、ベース板41と、複数のフィン42と、突起体51と、突起体52と、を有している。ベース板41は、回路基板21と平行に配置されている。複数のフィン42のそれぞれは、ベース板41から回路基板21と交差するz軸方向に沿って回路基板21と離れる方向に延び、回路基板21と平行でかつx軸方向と直交するy軸方向に間隔を空けて並列している。突起体51は、複数のフィン42のうちの少なくとも1つのフィン42eに形成され、z軸方向に沿って延伸している。突起体52は、複数のフィン42のうちの少なくとも1つのフィン42eに形成され、z軸方向に沿って延伸し、空気の流れにおいて突起体51よりも下流側に配置されている。y軸方向における突起体51及び突起体52のそれぞれの幅W1は、y軸方向における複数のフィン42のそれぞれの幅W0よりも広くなっている。z軸方向における突起体52の長さL2は、z軸方向における突起体51の長さL1よりも長い。ここで、x軸方向は、第1方向の一例である。z軸方向は、第2方向の一例である。空気は、流体の一例である。ヒートシンク40は、放熱器の一例である。突起体51は、第1突起体の一例である。突起体52は、第2突起体の一例である。y軸方向は、第3方向の一例である。
サーボアンプ100において、半導体素子31、32の温度上昇を抑えるためには、連続運転中の温度上昇幅と、その後の瞬時高発熱運転時の温度上昇幅と、の総和を減少させる必要がある。連続運転中の温度上昇幅は、主にヒートシンク40の放熱性能に依存する。通常、ヒートシンク40の放熱性能は、空気の流れで下流側ほど低くなる。このため、連続運転中における半導体素子31、32及び回路基板21の温度上昇幅は、より下流側で大きくなりやすい。本実施の形態の上記構成では、突起体51の長さL1が突起体52の長さL2よりも短くなっていることから、突起体52よりも上流側に配置される突起体51による通風抵抗の増加を抑制することができる。これにより、ヒートシンク40の下流側部分での放熱性能の低下を抑えることができる。
一方、瞬時高発熱運転時の温度上昇幅は、ヒートシンク40の放熱性能だけでなく、ヒートシンク40の蓄熱性能にも依存する。上記構成では、突起体52の長さL2が突起体51の長さL1よりも長くなっていることから、ヒートシンク40の下流側部分の熱容量がそれより上流側の部分と比較して相対的に大きくなる。このため、ヒートシンク40の下流側部分の蓄熱性能は、それより上流側の部分と比較して相対的に高くなる。これにより、瞬時高発熱運転時における半導体素子31、32及び回路基板21の温度上昇幅を、特に下流側で減少させることができる。
したがって、上記構成によれば、連続運転中の温度上昇幅が大きくなりやすい半導体素子31、32及び回路基板21の下流側部分においても、連続運転中の温度上昇幅と、その後の瞬時高発熱運転時の温度上昇幅と、の総和を減少させることができる。このため、ヒートシンク40の放熱面積の拡大を抑えつつ、半導体素子31、32及び回路基板21の温度上昇を抑えることができる。よって、上記構成によれば、ヒートシンク40の大型化を抑えることができる。
また、本実施の形態に係るサーボアンプ100において、突起体51及び突起体52のそれぞれは、x軸方向及びy軸方向の双方と平行な断面において、楕円状の形状を有している。この構成によれば、突起体51及び突起体52が設けられていることによる通風抵抗の増加を抑えることができる。したがって、特に連続運転中における半導体素子31、32の温度上昇を抑えることができる。
また、本実施の形態に係るサーボアンプ100において、回路基板21には、半導体素子31及び半導体素子32が搭載されている。z軸方向に沿って見たとき、半導体素子31及び半導体素子32は、それぞれ突起体51及び突起体52と重なって配置されている。ここで、半導体素子31は、第1半導体素子の一例である。半導体素子32は、第2半導体素子の一例である。この構成によれば、瞬時高発熱運転時において、半導体素子31で発生した熱は主に突起体51に蓄熱され、半導体素子32で発生した熱は主に、突起体51よりも熱容量の大きい突起体52に蓄熱される。このため、瞬時高発熱運転時において、半導体素子32の温度上昇幅を半導体素子31の温度上昇幅よりも小さくすることができる。したがって、連続運転中の温度上昇幅が大きくなりやすい半導体素子32においても、連続運転中の温度上昇幅と、その後の瞬時高発熱運転時の温度上昇幅と、の総和を減少させることができる。
実施の形態2.
本発明の実施の形態2に係るサーボアンプについて説明する。図6は、本実施の形態に係るサーボアンプ100の制御機器部20を+z方向に見た構成を示す平面図である。本実施の形態に係るサーボアンプ100は、突起体51、53、52が互いに異なるフィンに設けられている点で、実施の形態1と異なっている。
図6に示すように、突起体52は、y軸方向でヒートシンク40のほぼ中央部に位置するフィン42eに設けられている。突起体51は、フィン42gに設けられている。フィン42gは、フィン42fを挟んでフィン42eの+y側に位置している。突起体53は、フィン42cに設けられている。フィン42cは、フィン42dを挟んでフィン42eの-y側に位置している。
半導体素子31、33、32は、z軸方向に沿って見たとき、突起体51、53、52とそれぞれ重なるように配置されている。半導体素子31及び突起体51は、主に、フィン42f及びフィン42gの間の風路を流通する空気と、フィン42g及びフィン42hの間の風路を流通する空気と、によって冷却される。半導体素子33及び突起体53は、主に、フィン42b及びフィン42c間の風路を流通する空気と、フィン42c及びフィン42dの間の風路を流通する空気と、によって冷却される。半導体素子32及び突起体52は、主に、フィン42d及びフィン42eの間の風路を流通する空気と、フィン42e及びフィン42fの間の風路を流通する空気と、によって冷却される。
半導体素子31、33、32はいずれも、空気の流れにおいて回路基板21の上流端に位置する第1端部21aと、空気の流れにおいて回路基板21の下流端に位置する第2端部21bと、の間に配置されている。半導体素子32は、y軸方向に沿って見たとき、半導体素子31と第2端部21bとの間に配置されている。半導体素子33は、y軸方向に沿って見たとき、半導体素子31と半導体素子32との間に配置されている。一方、x軸方向に沿って見ると、半導体素子32は、半導体素子31と半導体素子33との間に配置されている。
以上説明したように、本実施の形態に係るサーボアンプ100において、突起体51及び突起体52は、複数のフィン42のうち互いに異なるフィンに形成されている。ここで、z軸方向に沿って見たとき、半導体素子31及び半導体素子32は、それぞれ突起体51及び突起体52と重なって配置されているものとする。この構成によれば、複数のフィン42の1枚当たりの受熱量が減少するため、連続運転中及び瞬時高発熱運転時のいずれにおいても、ヒートシンク40の冷却性能を高めることができる。また、上記構成によれば、半導体素子31からの放熱量の小さい低温の空気によって半導体素子32を冷却できるため、半導体素子31よりも下流側に位置する半導体素子32を効率良く冷却することができる。したがって、連続運転中及び瞬時高発熱運転時のいずれにおいても、ヒートシンク40の冷却性能を高めることができる。
また、本実施の形態に係るサーボアンプ100において、回路基板21には、半導体素子31、半導体素子32及び半導体素子33が搭載されている。空気の流れ方向は、回路基板21の第1端部21aから第2端部21bに向かう方向である。y軸方向に沿って見たとき、半導体素子32は、半導体素子31と第2端部21bとの間に配置されている。y軸方向に沿って見たとき、半導体素子33は、半導体素子31と半導体素子32との間に配置されている。x軸方向に沿って見たとき、半導体素子32は、半導体素子31と半導体素子33との間に配置されている。ここで、半導体素子31は、第1半導体素子の一例である。半導体素子32は、第2半導体素子の一例である。半導体素子33は、第3半導体素子の一例である。この構成によれば、最も高温になりやすい半導体素子32を、y軸方向でヒートシンク40の中心付近に配置することができる。これにより、半導体素子32で発生した熱のヒートシンク40内での平均伝熱距離を減少させることができるため、ヒートシンク40内での熱抵抗を小さくすることができる。したがって、連続運転中及び瞬時高発熱運転時のいずれにおいても、ヒートシンク40の冷却性能を高めることができる。
本発明は、上記実施の形態に限らず種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、自然空冷方式のヒートシンク40を例に挙げたが、ヒートシンク40は、ファンを備えた強制空冷方式であってもよい。
また、上記実施の形態では、冷却媒体となる流体として空気を例に挙げたが、冷却媒体となる流体としては、水、ブラインなどの他の流体を用いることもできる。
また、複数のフィン42の長さ、形状、厚みは必ずしも同じとしなくてもよい。例えば、突起体51、52、53を形成したフィン42のz軸方向の長さは、突起体51、52、53の長さよりも長い同じ長さとし、その長さと突起体51、52、53を設けないいずれかのフィンの長さとが異なるようにしてもよい。