以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
図1を参照して、実施例1の光走査装置1の構成について説明する。図1は、光走査部10を備えた光走査装置1を示すブロック図である。
光走査装置1は、例えばプロジェクターやヘッドマウントディスプレイ等、映像を投影する機能を有する装置である。光走査装置1は、例えばカメラや内視鏡等、映像を撮影する機能を有する装置であってもよい。
光走査装置1は、光走査部10、照明部11、受光部12、駆動信号生成部20、リマッピング制御部21、発光制御部22、位相差計測部23、増幅部30、レーザドライバ31、差動信号生成部32、表示画像格納メモリ33、コントローラ(制御部)40、記憶部41及び入出力制御回路42を備えている。
駆動信号生成部20、リマッピング制御部21、発光制御部22、位相差計測部23は、一例として、FPGA(Field Programable Gate Array)による論理回路として実現される。または、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェアにて実装してもよい。
光走査装置1は、入出力制御回路42を介して外部制御装置50と接続されている。光走査装置1は、外部制御装置50から映像信号を受け取り、映像を表示する機能を有する。
制御部としてのコントローラ40は、光走査装置1の各ブロックに対して制御を行う。コントローラ40は、CPU(Central Processing Unit)等の中央演算処理装置によってその機能を実現する。図1においてコントローラ40からの信号線は説明上重要な線のみを記載しており、全てを図示していない。例えば、リマッピング制御部21も、コントローラ40からの指示を受けて動作の開始や終了を行ったり、コントローラ40に対して状態の返答を行っても良い。
記憶部41は、コントローラ40をはじめとして、光走査装置1を構成する各部の処理に必要な情報や、生成された情報を記憶する。記憶部41は、RAM(Random Access Memory)又はフラッシュメモリ等の記憶装置であり、プログラムやデータが一時的に読み出される記憶エリアとして機能する。記憶部41は、HDD(Hard Disk Drive)や、CD-R(Compact Disc- Recordable)、DVD-RAM(Digital Versatile Disk-Random Access Memory)、及びSSD(solid state drive)等の書き込み及び読み出し可能な記憶メディア及び記憶メディア駆動装置等であってもよい。なお、コントローラ40は、記憶部41上に読み出されたプログラムに従って動作するCPUにより処理を行う。
光走査装置1が入出力制御回路42を介して受け取った映像信号は、表示画像格納メモリ33に格納される。駆動信号生成部20は、コントローラ40からの指示に基づき、光走査部10において光を走査するための複数の駆動信号を生成する。駆動信号生成部20から出力された駆動信号は、増幅部30によって増幅され、光走査部10に設けられたアクチュエータに印加される。これにより、光が走査される。
リマッピング制御部21は、駆動信号生成部20からの情報を元に、表示画像格納メモリ33に蓄えられた映像情報のうち、どの座標の画素情報で点灯すべきかを計算する。計算された座標(xcalc、ycalc)は表示画像格納メモリ33に供給され、対応する座標の画素の階調データ(R、G、B)が発光制御部22に供給される。発光制御部22は、画素の階調データに基づきレーザの発光を制御するための信号を生成する。更に、発光制御部22は、駆動信号生成部20からの情報を元に、輝度の補正を行う。発光制御部22で生成された信号はレーザドライバ31を介して、照明部11に設けられたレーザに供給される。レーザを出射した光は光走査部10を介して投影面に照射される。これにより、光の走査に同期して、レーザの発光が制御される。
差動信号生成部32は、光走査部10に設けられた光検出機110からの信号を元に、後述する差動信号を出力する。位相差計測部23は、駆動信号生成部20の出力信号と差動信号生成部32から出力される差動信号を元に位相差を計測し、コントローラ40に伝達する。コントローラ40は、計測された位相差を元に、必要に応じて駆動信号生成部20の駆動パラメータの変更を指示する。
画像を撮影する場合、対象に照射されて戻ってきた戻り光が光走査部10を介して受光部12に導かれる。なお、光走査装置1が撮影機能を有しない場合、受光部12は必ずしも必要でない。また、発光制御部22は、発光したタイミングを別の回路に通知する機能を有していてもよい。
次に、光走査部10の構造について、図2Aを用いて説明する。光走査部10は、振動部101、導光路102、接着部103、レンズ104、筐体105、支持部材106、電気配線107、分波部108、プリズム109及び光検出器110を備える。分波部108については後述する。また、本明細書中における座標軸についても示している。
振動部101は、振動を発生させるアクチュエータであって、例えば圧電アクチュエータ、電磁アクチュエータ、又は静電アクチュエータである。振動部101は、中心部が中空の円筒型の圧電素子の内周又は外周に複数の電極を設置して構成される。振動部101に設けられた電極は電気配線107と接続されており、電気配線107を通じて印加される駆動信号に基づいて振動部101が振動する。振動部101は、x軸及びy軸の2軸に関して変位が可能なアクチュエータである。
振動部101の中空部分には、導光路102が設置され、振動部101と導光路102は接着部103により固定される。また、振動部101は支持部材106によって、筐体105に固定される。
導光路102は、例えばシングルモードやマルチモードの光ファイバである。光ファイバは、コート層、クラッド層、及びコア層で構成され、光がコア層内に閉じ込められて伝播する。なお、コート層を剥離させた光ファイバを導光路102に用いてもよい。これにより、光走査部10のサイズを小型化できる。
画像を撮影する場合、導光路102は、対象からの戻り光を取り込む。戻り光は最終的に受光部12へと導かれる。導光路102は、戻り光の取り込み効率を高めるために、光ファイバを複数本用いたものであってもよいし、マルチコアタイプの光ファイバを用いたものであってもよい。
レンズ104はガラス又は樹脂により形成されるレンズである。レンズ104は、球面又は非球面レンズであって、フレネルレンズや、屈折率分布型のGRIN(gradient index)レンズであってもよい。また、レンズ104は、導光路102の出射端102aと一体化していてもよい。また、レンズ104は、1枚のレンズでなく、複数枚のレンズから構成されてもよい。
プリズム109は、一部の光を透過すると共に、一部の光を入射方向に対して直角に偏向するプリズムである。レンズ104の先にプリズム109が配置される。図2Aにおいて、透過する光をL1、偏向される光をL2で示している。L1とL2の強度の比率は、例えばL1:L2=9:1など、L1の光の強度の方が高い。光検出器110は、プリズム109で偏向された光L2を検出する。
導光路102の出射端102aは、接着部103を固定端として片持ち梁状に突き出している。振動部101を振動させると、自由端である導光路102の出射端102aが共振振動する。この振動によって、導光路102から出射された光はレンズ104及びプリズム109を介して出射される透過光L1となり、対象面に照射されて光の走査が行われる。
図3は、光検出器110の構造及び光走査中に光検出器110で検出される光スポットを示す図である。光検出器は4分割のディテクタである。
図3(a)に示すように、xz平面に沿って分割軸が配置されており、分割されたそれぞれの受光面を110A、110B、110C、110Dとする。また本明細書では、それぞれの受光面からの電気信号を信号A、B、C、Dで表現する。光検出器110は複数のゲイン設定を切り替え可能であり、電気信号の増幅率を変更可能な構成であってもよい。差動信号生成部32では、これら4つの信号に関して、以下の(数1)及び(数2)の演算を行い、第一の差動信号D1及び第二の差動信号D2を出力する。
ここで分母は総光量に相当する値であるため、実施例1の差動信号は正規化を行った信号となっている。
ここで、実施例1における差動信号の意味合いについて説明する。図2Bは、光検出器110で受光される光スポットの大きさを説明するための図である。
導光路102の出射端102aが共振振動することで、レンズ104を出た光は図中のθFOVで示す範囲を走査する。このとき、レンズ104を出射した光が光検出器110に到達するまでの光線図は、図2Bに示すようになる。SP0及びSP1は、光走査中に光検出機110で検出される光スポットの位置を示している。SP0は軌跡の中心を通過する場合の光スポットであり、SP1は光走査の軌跡がy軸正方向を通過する場合の光スポットである。図2Bからわかるように、光検出器110に到達する光スポットは大きく面積を持つ。
このことを踏まえ、差動信号の意味合いについて図3を用いて説明する。図3のSP1及びSP2は光スポットの大きさを示しており、SP1-0及びSP2-0は光スポットの中心を示している。
本明細書では説明のため、xz平面の原点を4分割ディテクタの中心に取り、xz平面における偏角を光走査の位相と称する。即ち、図3(a)は光走査の位相が90度の場合であり、図3(b)は光走査の位相が0度の場合である。図3(a)の場合、光スポットはz軸によって2等分されている。そのため、第一の差動信号D1の値はゼロになる。また図3(b)の場合には、光スポットはx軸によって2等分されるため、第二の差動信号D2の値がゼロになる。
なお、実施例1においては、光検出器110の外形サイズは、光走査軌跡の任意の位置の光スポットが受光面に受光される条件下で、最も小さい正方形であるとする。もちろん、光検出器110のサイズはこれに限定されるものではなく、より大きなサイズであっても構わない。
実施例1の差動信号について、図4を用いて説明する。説明のため、光走査の軌跡は原点を中心とする円であるとし、その位相を変化させた場合の差動信号を図4に示す。図4(a)は第一の差動信号D1の値、図4(b)は第二の差動信号D2の値である。このことから、差動信号がゼロクロスするのは光スポットの中心が4分割ディテクタの分割線(即ちx軸またはz軸)上に位置する場合である。
このように、4分割ディテクタを用いて検出することにより、光スポットの中心が4分割ディテクタの分割線(即ちx軸またはz軸)上に位置することを検出可能である。
図5は照明部11と受光部12、そして光走査部10内の分波部108との関係を示す図である。照明部11は光源部1101と合波部1102から成る。光源部1101は少なくとも1以上の光源を有しており、光源から出た1以上の光は合波部1102によって合波され、光ファイバ(図示しない)を通じて、光走査部10内の分波部108に導光される。本実施例の光源部1101には光の3原色である赤、緑、青の各色に対応したレーザ及び赤外の波長のレーザが搭載されており、合波部1102によって任意の色を導光する。
分波部108は照明部11からの光を導光路102に導光する機能を有し、この結果、導光路102の出射端102aから光が出射される。更に、分波部108は、導光路102に取り込まれた、対象からの戻り光を受光部12へと導く。受光部12はカメラにおける受光部に相当し、対象からの戻り光の強度に応じた情報を出力する。受光部12は例えば、カラーフィルタとレンズ、ディテクタから構成される。
続いて、実施例1における駆動信号生成部20の構成について、図6を用いて説明する。
駆動信号生成部20は、走査座標生成部2001、第一の正弦波生成部2002、第二の正弦波生成部2003、第一の振幅変調波形生成部2004、第二の振幅変調波形生成部2011、第一の可変ゲイン2005、第二の可変ゲイン2006、第一の乗算器2007、第二の乗算器2008、第一の反転ゲイン2009及び第二の反転ゲイン2010を備える。駆動信号生成部20は、VX1、VX2、VY1、VY2の4つの駆動信号を出力する。
走査座標生成部2001は、投影面におけるレーザの軌跡が所定の軌跡を描くように、走査軌跡の座標(以下、走査座標と称する)を生成する。走査座標生成部2001の生成する走査座標は、以下の(数3)及び(数4)で表される。
第一の正弦波生成部2002は、角度θdrvに基づき、第一の正弦波S1を生成する。第一の正弦波生成部2002から出力された第一の正弦波は、第一の可変ゲイン2005で振幅が変更され、x軸駆動正弦波Sxとなる。第一の可変ゲイン2005における倍率は、コントローラ40から指示される。
第二の正弦波生成部2003は、角度θdrvとコントローラ40からの指令信号に基づき、第一の正弦波に対して所定の位相差△θdrvを有する、第二の正弦波S2を生成する。位相差△θdrvの情報は、コントローラ40から指示される。第二の正弦波生成部2003から出力された第二の正弦波は、第二の可変ゲイン2006で振幅が変更され、y軸駆動正弦波Syとなる。第二の可変ゲイン2006における倍率は、コントローラ40から指示される。
第一の振幅変調波形生成部2004は、半径rxに基づき、振幅変調波形S3を生成する。第一の乗算器2007は、x軸駆動正弦波SXと振幅変調波形S3との乗算を行う。乗算された波形は信号Vx1となると共に、第一の反転ゲイン2009にて振幅が反転され、反転された波形は信号Vx2となる。
また、第二の振幅変調波形生成部2004は、半径ryに基づき、振幅変調波形S4を生成する。第二の乗算器2008は、y軸駆動正弦波SYと振幅変調波形S4との乗算を行う。乗算された波形は信号Vy1となると共に、第二の反転ゲイン2010にて振幅が反転され、反転された波形は信号Vy2となる。
実施例1において、電圧Vx1、Vx2、Vy1、Vy2は、増幅部30にて増幅されて増幅駆動信号Vdx1、Vdx2、Vdy1、Vdy2となる。これらの増幅駆動信号は、光走査部10内の振動部101に設けられた電極に印加される。このように、振動部101に設けられた電極のうち、互いに対向する電極には極性の異なる正弦波が印加される。この条件にて、図2A、図2Bで示した軸の方向に変位するように、振動部101が構成されているものとする。振動部101は圧電素子であるので、圧電素子の分極を実施する際の方向により、上記の構成を実現できる。
また、第一の正弦波S1及び第二の正弦波S2は、位相差計測部23に出力される。また、角度θdrvが0度から360度まで回転する周波数fdrvは、駆動信号の主たる周波数成分となるため、本明細書では駆動周波数と称する。駆動周波数fdrvは、コントローラ40から指示される。
この構成による駆動回路生成部は、振幅が変調された正弦波によって生成される任意の駆動信号を生成できる。また、駆動信号は、走査座標生成部の生成する走査座標に対応したものとなる。言い換えれば、走査座標は駆動信号の波形から逆算できる走査軌跡の座標である。走査座標生成部2001の生成する振幅Rx及びRyは、時間の関数として以下の(数5)及び(数6)で表される。ここでa12は正の数である。
即ち、実施例1において、x軸は振幅変調がされない。また、y軸の駆動信号の正弦波の振幅(正弦波の包絡線)は単調増加する。このように制御すると、図7のような走査軌跡を描くことができる。即ち、同一の長軸を持つ楕円状の軌跡を描く。
続いて、実施例1におけるリマッピング制御部21の構成について、図8を用いて説明する。
リマッピング制御部21は、角度補正部2101と、座標計算部2102から構成される。角度補正部2101は、駆動信号生成部20からのθdrv、rx、ryを用いて以下の(数7)及び(数8)の演算を行い、補正角度θcalcを出力する。
座標計算部2102は、以下の(数9)及び(数10)の演算を行い、xcalc、ycalcを出力する。
以上の式において、fθ()、fx()、fy()は振幅r及び角度θを引数とする関数であり、関数はコントローラ40から指示される。本明細書ではこれらの関数を歪み補正関数と総称する。また、Cは定数である。xcalc、ycalcは投影画像の歪みを補正するための座標情報である。この結果、表示画像格納メモリ33に格納された映像情報のうち、座標(xcalc、ycalc)に対応する画素の階調データが読み出される。階調データとは、画像を構成する画素の色に関する情報であり、例えば光の3原色である赤、緑、青の色ごとに256階調のデータである。本明細書では各色の階調の値をR、G、Bで表し、階調データを(R、G、B)で表記する。以上の構成により、リマッピング制御部21及び表示画像格納メモリ33は、レーザの発光データを決定する。
続いて、発光制御部22の動作について説明する。実施例1における発光制御部22は、表示画像格納メモリ33から供給される階調データ(R、G、B)を受け取り、それに基づいてレーザの発光を制御する。更に、実施例1における発光制御部22は、コントローラ40からの指示に基づき、走査座標に基づいて輝度の補正を行う機能を有する。なお、コントローラ40からの指示によっては、輝度の補正を行わないことも可能である。
実施例1における輝度の補正は、レーザの点灯頻度を変更することにより行う。図9は、実施例1における発光制御部22の動作を説明する図である。横軸は時刻、縦軸はレーザ発光強度である。図9(a)は通常の発光状態を示している。一方、図9(b)は輝度を低下する場合の発光状態を示している。
図9(b)に示すように、輝度を下げる際、レーザの発光強度を一律下げるのではなく、レーザの点灯頻度(デューティー)を下げることで輝度を下げる。なお、図9(b)の点滅の周期は人間の眼で視認できない程度に高速であるとする。以上の構成により、光の走査に同期してレーザの発光が制御され、また画像の位置によらず輝度が均一化される。
ここで、実施例1の走査軌跡の場合に投影像について説明する。投影像には大きく、2つの特徴がある。一つは楕円軌跡の長軸の上下でのドットずれであり、もう一つは投影像の歪みである。
まず、ドットずれについて説明する。実際の投影像では後述する歪みも存在するが、ここでは歪みがないと仮定して、ドットずれに関してのみ説明する。補正角度θcalcの式である(数8)の定数項Cを変化させたときの投影像について図11を用いて説明する。
なおfθ()は、画像座標が楕円軌跡の長軸に一致する条件でゼロとなる関数であるとする。即ち、楕円軌跡の長軸上においては以下の(数11)が成り立つものとする。
投影画像として、図11(a)に示すような十字の映像を投影する場合を考える。定数項Cを最適値にし、図11(a)の状態にできているとする。その状態から、Cを例えば10°大きくすると、投影像は図11(b)に示すようになる。また、Cを10°小さくすると、投影像は図11(c)に示すようになる。このように発明者は、以下の点を見出した。(1)定数項Cを変化させると、楕円軌跡の長軸の上下で画像が不連続になる。(2)理想的には、定数項Cは90°である。
以下、本明細書ではこの現象をドットずれと称する。また、このドットずれは画像の不連続を引き起こすので視認しやすく、違和感の原因となる。そのため、高精度に補正する必要がある。
この原因は、駆動信号から導光路102の変位までの伝達関数について考察することで説明できる。導光路102の出射端102aは、駆動信号によって振動部101が振動することにより、共振振動する。一般に、2次共振系のゲイン(利得)と位相の周波数特性は、図13(a)、(b)に示すようになる。
ここで、例えば温度などの要因によって、導光路102から成る片持ち梁の共振周波数(以下、導光路102の共振周波数と称する)がf0からf1に変化した場合を考える。ここではまず、f0よりf1が大きい場合を考える。導光路102の共振周波数がf0である状態を状態0、f1に変化した状態を状態1と称する。図13(a)、(b)の実線は状態0の周波数特性、点線は状態1の周波数特性である。
ここで、実施例1において、2次共振系の周波数特性は、増幅駆動信号から導光路102の変位までの伝達関数である。実施例1において、駆動軸はx、yの2軸あるが、ここではx軸を例に説明する。また、実施例1のx軸の増幅駆動信号はVdx1とVdx2の2つ存在するが、これらは振幅が反転しただけの信号であるため、Vdx1を用いて説明を行う。
状態0において、増幅駆動信号Vdx1の周波数成分である第一の正弦波S1の周波数はf0と一致しているものとする。このとき、黒丸で示すように、導光路102の変位は最大となり、位相差は-90°となる。これは、増幅駆動信号Vdx1を基準としたとき、導光路102のx軸方向の変位の位相が90°遅延していることを意味する。
ここで、温度などの要因で状態1に変化した場合を説明する。第一の正弦波S1の周波数がf0のままの場合、ゲイン特性の白丸からわかるように、導光路102の変位は大きく低下し、共振状態から外れてしまう。またこのとき、位相は-90より大きい値である、△θ‘となる。
また、f0よりf1が小さい場合には、位相は-90°より小さい値となる。このことから、2次共振系の位相を計測することができれば、計測される位相の値が-90°より大きいか否かによって、共振周波数に対して現在の増幅駆動信号の周波数が大きいか小さいかを判別できる。このことを利用し、増幅駆動信号Vdx1の周波数をf0からf1に変更することが可能である。増幅駆動信号Vdx1の周波数が、状態1における導光路102の共振周波数f1と等しくなると、計測される位相差は-90°になる。
ここで、実施例1においては、温度変化などの要因がなく、導光路102の共振周波数がf0である状態0を維持しているものとして、以下に説明する。
共振状態において位相差が-90°になるのは増幅駆動信号Vdx1を基準としたとき、導光路102のx軸方向の変位の位相である。駆動信号から導光路102の変位までの伝達関数を考えると、上記の位相差に加えて、増幅部の電気回路による遅延d1が加わった値となる。本明細書では説明のため、d1を10°とする。このとき、共振状態において駆動信号から導光路102の変位までの位相は-100°となる。即ち、定数項Cの最適値は100°となる。また、定数項Cが最適値からずれると、楕円軌道に沿って点灯タイミングがずれるため、図11(b)や図11(c)に示すようになる。
このように、2次共振系の位相遅れや電気回路による遅延を加味して、補正角度θcalcの式である(数8)の定数項Cを設定しないと、正しい映像を表示することができない。更には、温度などの要因によって位相は上記の100°からずれる可能性がある。そのため、実際の光の走査軌跡からドットずれを検出し、定数項Cを調整することが好ましい。そのため、実施例1の光走査装置1は、後述するドットずれ補正処理を行う。
次に、実施例1の走査軌跡の場合に発生する投影画像の歪みについて、図10を用いて説明する。ここでは、前述のドットずれは適切に補正されているものとする。投影画像として、図10(a)に示すような映像を投影する場合を考える。図10(a)は半径が異なる複数の同心円と、同心円の中心を通り傾きの異なる複数の直線から成る画像である。理想的には、投影面には図10(a)と同一の像が描画される。しかしながら、実際に投影される像は図10(b)に示すように歪む。
発明者は、実施例1の走査軌跡の場合に、画像角度に依存した歪みが発生することを見出した。具体的には、図10(b)に示すように、画像座標の偏角が30°のときの歪み方f1と、画像座標の偏角60°のときの歪み方f2は異なる。偏角が180°に近づくにつれて、歪み方はf1、f2、f3、f4に示すように、歪み方が小さくなるという特徴がある。一方で、偏角が180°を超えると、画像座標の偏角が210°のときの歪み方f1’は、画像座標の偏角が30°の歪み方f1と等しい。同様に、f2とf2’は等しい。即ち、画像座標の偏角がθ[rad]の歪み方は、画像座標の偏角がθ+π[rad]の歪み方と等しい。即ち、関数fθ(r、θ)は、θに関する周期π[rad]の周期関数である。
また、円が楕円になるような歪みだけでなく、楕円の長軸上はAやBで示すように、軸方向に伸張するような歪みも存在する。そのため、関数fx(r、θ)、fy(r、θ)は半径r及び偏角θの関数である必要がある。このように、駆動信号の振幅の変調がx軸とy軸で異なる場合、ドットずれや周期π[rad]の画像角度に依存した歪みなどが発生する。これは、画像座標の半径及び画像座標の偏角の少なくとも一方が、前記走査座標の半径及び前記走査座標の偏角に依存する、と言い換えることもできる。
実施例1におけるドットずれ補正処理について説明する。実施例1の光走査装置1におけるドットずれ補正処理のフローチャートを図12に示す。
光走査装置1がドットずれ補正処理を開始すると(ステップS1201)、コントローラ40は指定タイミングでの差動信号の値を取得する(ステップS1202)。続いて、差動信号の値がゼロであるか否かを判断する(ステップS1203)。
差動信号の値がゼロでない場合(ステップS1203でNoの場合)、定数項Cを変更し(ステップS1204)、ステップS1202に戻る。このとき、差動信号の値の正負によって、定数項Cをより大きな値に変更すべきか、小さい値に変更すべきかを判断可能である。更には、差動信号の値によって、定数項Cを変更すべき量も計算することも可能である。差動信号の値がゼロである場合(ステップS1203でYesの場合)、ドットずれ補正処理を終了する(ステップS1205)。
このように、検出器110の出力信号を用いてドットずれを検出し、定数項Cを変更して最適な値に調整する。これにより、ドットずれを高精度に補正でき、画像の不連続を解決できる。
このように、実施例1によれば、映像を表示する機能を有する光走査装置において、適切に画像を表示することができる。
次に、実施例2の光走査装置の構成について説明する。
実施例1は、同一の長軸を持つ楕円状の軌跡を描く構成であったが、光走査の軌跡はこれに限らない。実施例2は別の光走査の軌跡を実現する実施の形態である。
実施例2の光走査装置の構成は、実施例1と共通であり、駆動信号生成部26の生成する内部信号が異なる。本実施例の走査座標生成部2001の生成する振幅Rx及びRyは、時間の関数として以下の(数12)及び(数13)で表される。ここで、a11は負の数であり、a12は正の数である。
即ち、駆動信号の正弦波の振幅(包絡線の増減)が、略直交するx軸とy軸とで逆に一方が増加するとき他方が減少するような変調を行う。このように制御し、軸を斜めに45度傾けると図14(a)のように長方形に近しい軌跡となる。これを横方向に伸張し、走査位置が所定の有効範囲Aにある場合のみレーザを発光させることで、一般的な映像フォーマットのような長方形のアスペクト比の映像表示を行うことができる。走査範囲の伸張は、プリズム109の先にレンズなどを配置することにより、光学的に行うことができる。
本発明者は、このように駆動信号の正弦波の振幅(包絡線の増減)が、略直交するx軸とy軸とで逆に一方が増加するとき他方が減少するような変調を行う場合にも、実施例1の場合と同様にドットずれや画像角度に依存した歪みなどが発生することを見出した。
これは、図14(a)で示した走査軌跡を前半と後半で分けて描画することで理解できる。図14(b)は走査軌跡の前半、図14(c)は走査軌跡の後半を描画した結果である。このように、実施例1の場合と異なり楕円の長軸の長さは一定ではないが、前半は角度45°を長軸とする楕円からなる軌跡の集合となり、後半は角度-45°を長軸とする楕円からなる軌跡の集合となる。
このため、実施例2の場合にも、実施例1と同様の歪みが発生する。そのため、実施例1の場合と同様に、ドットずれ補正処理を行うことが好ましい。ドットずれを検出するため、本実施例の振動部101及び光検出器110は、部品としては実施例1のものと同一であるが、取り付けられる角度が異なる。
図29は、実施例2の振動部101を導光路102の長手方向に平行な断面(xy平面)で切断した断面図である。
実施例1の場合と比較して、実施例2の振動部101は45°傾けて配置される。これによって、導光路102の出射端102aの変位は図14(a)に示す軌跡を描く。
また、図30は、光検出器110の構造及び設置方向を示す図である。実施例1の図4と比較して分かるように、実施例2の光検出器110は45°傾けて配置される。実施例2では、光走査部16内の振動部101の駆動軸と、光検出器110の分割軸が対応するように構成している。具体的には、レンズによる横方向の伸張を行う前の段階の光の一部をプリズム109にて分岐し、光検出器110で検出する。
このような構成とすることで、長方形の投影画像を投影する光走査装置の場合であっても、実施例1と同様にドットずれの検出が可能になる。即ち、実施例1と同様の効果を実現できる。
次に、実施例2の構成をヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display:HMD)に搭載する場合に好適な構成について述べる。図2から明らかなように、光走査部10の構造は、プリズム109によって一部の光を偏向する方向に大きくなる。一方、ヘッドマウントディスプレイにおいては、地面に水平な方向を向いた頭に装着した場合に、水平方向の厚さは薄い方が好ましい。
そのため、図24に示すように、プリズム109によって一部の光を偏向する方向は、ヘッドマウントディスプレイ70を頭部に装着した際に略垂直な方向であることが好ましい。これにより、ヘッドマウントディスプレイ70を装着したときに、装着者が感じる負荷を低減させることができる。更に、偏向した先で受光する光検出器に関して、分割軸が駆動軸と対応するように光検出器を配置することが好ましい。
このように実施例2によれば、映像を表示する機能を有する光走査装置において、適切に画像を表示することができる。
次に、実施例3の光走査装置の構成について説明する。
図13を用いて説明したように、光走査装置1は、導光路102から成る片持ち梁の2次共振系である。以上の実施例では、温度などの要因によって、導光路102の共振周波数がf0からf1に変化することを想定していなかった。実施例3は、このような共振周波数の変化した場合にも適切に映像を表示することが可能である。
実施例3の光走査装置の構成は、実施例2と共通であり、差動信号を入力とする位相差計測部23を用いる点が異なる。
実施例3における位相差計測部23の役割について説明する。位相差計測部23は第一の正弦波S1と第一の差動信号D1との位相差を計測し、位相差計測値△θ1として出力する。また、位相差計測部23は第二の正弦波S2と第二の差動信号D2との位相差を計測し、位相差計測値△θ2として出力する。
第一の正弦波S1はx軸駆動信号の共振周波数成分であり、第一の正弦波S1がゼロになるとは、x軸方向の駆動信号値がゼロであることを意味する。また、第一の差動信号D1がゼロになるとは、光スポット中心が光検出器110のx軸の分割線を通過するタイミングを意味する。
図13で説明したように、2次共振系の位相を計測することができれば、計測される位相の値が-90°より大きいか否かによって、共振周波数に対して現在の増幅駆動信号の周波数が大きいか小さいかを判別できる。このことを利用し、増幅駆動信号Vdx1の周波数をf0からf1に変更することが可能である。
実施例3における位相差計測部23は、増幅駆動信号Vdx1の周波数成分である第一の正弦波S1から、差動信号D1によって検出される光スポットのx軸方向の変位までの伝達関数の位相差を検出する。位相差が-90°になるのは増幅駆動信号Vdx1を基準としたとき、導光路102のx軸方向の変位の位相である。位相差計測部23で計測される位相差は、上記の位相差に加えて、増幅部の電気回路による遅延d1や、差動信号生成部32の電気回路による遅延d2が加わった値となる。即ち、共振状態において位相差計測部23で計測される位相差は、-90°とはならない。本明細書では説明のため、d1とd2の和を、駆動周波数の位相に換算した値△θplusを、10°とする。このとき、共振状態において位相差計測部23で計測される位相差は-100°となる。
位相差計測部23の構成について図15を用いて説明する。
二値化回路2301は、第一の正弦波S1を二値化して出力する。遅延器2302は、二値化回路2301の出力信号を所定の時間、遅延させる。論理和回路2303は、二値化回路2301の出力信号と遅延器2302の出力信号との論理和を取った信号を出力する。
二値化回路2304は、第一の差動信号D1を二値化して出力する。遅延器2305は、二値化回路2304の出力信号を所定の時間だけ遅延させる。論理和回路2306は、二値化回路2304の出力信号と遅延器2305の出力信号との論理和を取った信号を出力する。
カウンタ回路2307は、入力端子としてrst端子とstop端子を有し、rst端子への入力に同期してカウントを開始しstop端子への入力への入力に同期してカウントを終了し、同時に、終了時のカウント値を出力する。これにより、rst端子への入力からstop端子への入力までの時間差が計測される。rst端子には論理和回路2303の出力信号、stop端子には論理和回路2306の出力信号が接続され、時間差が計測される。この時間差は、導波路102の共振周期の情報と合わせると、位相差の情報に変換可能である。本明細書では、カウンタ回路2307の出力信号を位相差計測値△θ1と称する。以上の構成により、位相差計測部23は第一の正弦波S1と第一の差動信号D1との位相差を計測し、位相差計測値△θ1として出力する。
また、位相差計測部23は第二の正弦波S2と第二の差動信号D2との位相差を計測し、位相差計測値△θ2として出力するために、同様の回路をもう一組、含んでいる。同様の回路とは、図14において、二値化回路2308、遅延器2309、論理和回路2310、二値化回路2311、遅延器2312、論理和回路2313、カウンタ回路2314である。カウンタ回路2314の出力信号を位相差計測値△θ2と称する。
更に、位相差計測部23はカウンタ回路2315を有する。カウンタ回路2315は第一の差動信号D1と第二の差動信号D2との位相差を計測し、位相差計測値△θxzとして出力する。この計測は、カウンタ回路2315のrst端子に論理和回路2306の出力信号、stop端子には論理和回路2313の出力信号が接続される構成にて、計測される。
また、図15からわかるように、二値化回路2301、遅延器2302、及び論理和回路2303から成る回路構成(図14中、231、232、233、234で示す部分)が4つ含まれている。本明細書ではこの回路をゼロクロス検出回路と呼ぶこととし、以降の実施例においてはゼロクロス検出回路の名称で説明を行う。
実施例3における位相差計測部23内部の波形について、図16を用いて説明する。図16(a)は第一の正弦波S1、(b)はゼロクロス検出回路231の出力である。図16(c)及び(d)は状態0、即ち共振状態にある場合の信号であり、(c)は第一の差動信号D1、(d)はゼロクロス検出回路232の出力である。また、図16(e)及び(f)は状態1、即ち共振状態から外れた場合の信号であり、(e)は第一の差動信号D1、(f)はゼロクロス検出回路232の出力である。
図16よりわかるように、ゼロクロス検出回路231の出力は、第一の正弦波S1のゼロクロスのタイミングでHighとなる。このように、ゼロクロス検出回路201は入力信号がゼロクロスするタイミングで、遅延器2302における遅延時間だけHighになる信号を出力できる。即ち、入力信号のゼロクロスを検出できる。
同様に、ゼロクロス検出回路232の出力は、第一の差動信号D1のゼロクロスのタイミングでHighとなる。この結果として、共振状態である状態0においてカウンタ回路2307で計測される位相差は、図16中の△θtgtとなる。
ここで、△θtgtは駆動周波数の位相に換算して凡そ90°に相当する値であるが、前述した遅延△θplusの分だけ大きな値となる。本実施例では前述したように、△θtgtは駆動周波数の位相に換算して100度である。ここで、△θtgtは共振状態において計測される位相差と言い換えることができる。
共振状態から外れた状態1の場合には、カウンタ回路2307で計測される位相差は、図16(f)で示す△θ1となる。図13で図示した値を用いれば、△θ1は△θ‘の絶対値と△θplusの和となる。
このように、第一の正弦波S1のゼロクロスのタイミング及び第一の差動信号D1のゼロクロスのタイミングを検出し、その時間差を計測することで位相差計測が可能である。しかし、実施例3の位相差計測部23の構成は位相差を計測するための一例であり、これ以外にも様々な形態が考えられる。
例えば、第一の正弦波S1の代わりに、x軸駆動正弦波Sxを用いても良い。更には、位相差計測部23は第一の正弦波S1の位相情報のみを駆動信号生成部20から入力する構成として、第一の差動信号D1のゼロクロスのタイミングにおける第一の正弦波S1の位相の値を、位相差計測値△θ1として出力してもよい。
位相差計測部23で計測される位相差計測値が、共振状態において計測される位相差△θtgtに一致する状態では、第一の差動信号D1のゼロクロスのタイミングにおける第一の正弦波S1の位相の値が△θtgtになる。即ち、駆動周波数が共振周波数に一致するとき、第一の差動信号D1のゼロクロスのタイミングにおける第一の正弦波S1の位相の値が△θtgtになる。
実施例3の光走査装置1におけるコントローラ40のフローチャートを図17に示す。
光走査装置1が動作を開始すると(ステップS1001)、コントローラ40は記憶部41から光走査装置1を構成する各部の処理に必要な情報を読み出す(ステップS1002)。この中には、関数f(r)、a(r)、b(r)に関する情報や、第一の可変ゲイン2005における倍率や第二の可変ゲイン2006における倍率、第二の正弦波生成部2003の位相差などが含まれる。
続いてコントローラ40は、入出力制御回路42を通じて外部制御装置50から表示開始の指示があるかを判断する(ステップS1003)。表示開始の指示がない場合(ステップS1003でNoの場合)は、ステップS1003に戻る。
表示開始の指示があった場合(ステップS1003でYesの場合)、コントローラ40は駆動信号生成部20に指示を出し、駆動信号の出力開始を行う(ステップS1004)。本実施例においては、第一の可変ゲイン2005における倍率及び第二の可変ゲイン2006における倍率としてゼロ以外の値を設定することで出力が開始される。この際、設定される値はステップS1002で記憶部41から読み出された設定値である。
続いて、コントローラ40はリマッピング制御部21に指示を出し、リマッピング制御の開始を指示する(ステップS1005)。コントローラ40はリマッピング制御部21における計算で使われる関数に関する情報を送信し、リマッピング制御が開始される。また、表示画像格納メモリ33に格納された映像情報のうち、座標(xcalc、ycalc)に対応する画素の階調データが読み出される仕組みはハードウェアで実装されており、ステップS1005によって画素の階調データが読み出しも開始される。
続いて、コントローラ40は発光制御部22に指示を出し、レーザの発光制御の開始を指示する(ステップS1006)。以上により、映像の表示が行われる。
なお、入出力制御回路42を通じて外部制御装置50から入力される映像信号を表示画像格納メモリ33へ格納する処理はハードウェアにて実装されており、映像信号の表示画像格納メモリ33への格納は光走査装置1の軌道直後から常時、行われ続けるものとする。
続いて、コントローラ40は、表示フレームの切替りに同期して、位相差計測部23から位相差計測値△θ1及び△θ2を取得する(ステップS1007)。
ステップS1007の後、コントローラ40は取得回数がN回になったか否かを判断する(ステップS1008)。取得回数がN回でない場合には(ステップS1008でNoの場合)、ステップS1007に戻り、次のフレームでの位相差計測値を取得する。
取得回数がN回の場合(ステップS1008でYesの場合)、取得した位相差計測値の平均値を算出する(ステップS1009)。算出した位相差計測値の平均値を△θavgとする。また、このタイミングで取得回数のカウントをリセットする。以上の動作により、Nフレームおきに位相差計測値の平均値を算出する。本実施例においては、N個の△θ1及びN個の△θ2の平均値を△θavgとする。
ステップS1009の後、コントローラ40は、算出した位相差計測値の平均値△θavgと△θtgtの差の絶対値が所定の閾値△θth未満であるかを判断する(ステップS1010)。ここで、△θtgtは共振状態において計測されるべき位相差である。
算出した位相差計測値の平均値△θavgと△θtgtの差の絶対値が所定の閾値△θth未満でない場合(ステップS1010でNoの場合)には、共振状態から外れていると判断し、駆動信号生成部20に対して駆動周波数fdrvの変更を指示する(ステップS1011)。このとき、算出した位相差計測値の平均値△θavgと△θtgtの差の値に応じて、駆動周波数をどれだけ変更すれば良いかを推測して、指示を出す。ステップS1011の後は、ステップS1007に戻る。これにより、駆動周波数変更後に再度、位相差計測と共振状態であるか否かの判断(ステップS1007からステップS1010に至るまでの処理)を行う。
算出した位相差計測値の平均値△θavgと△θtgtの差の絶対値が所定の閾値△θth未満である場合(ステップS1010でYesの場合)には、共振状態にあると判断する。以降は、光走査装置1が動作を終了する際のフローである。
コントローラ40は、入出力制御回路42を通じて外部制御装置50から表示終了の指示があるかを判断する(ステップS1012)。表示開始の指示がない場合(ステップS1012でNoの場合)は、ステップS1007に戻る。
表示開始の指示があった場合(ステップS1012でYesの場合)、コントローラ40は発光制御部22に指示を出し、レーザの発光制御の終了を指示する(ステップS1013)。ステップS1013の後、各部の動作終了を指示し(ステップS1014)、動作を終了する(ステップS1015)。ここで各部とは、例えば駆動信号生成部20、リマッピング制御部21である。
次に、実施例3による効果について説明する。実施例3の第一の効果は、映像表示を中断することなく、導光路102の共振状態を維持して適切な映像表示を継続することができる点である。
実施例3は、映像の表示を行っている最中の光の一部を光検出器110で検出し、その検出結果に応じて共振状態を維持するように駆動周波数を変更する。共振状態を維持できない場合には、図13で示したように、導光路102の変位は大きく低下してしまう可能性がある。この結果、光走査装置1による映像表示画面のサイズが小さくなってしまう。実施例3によれば、温度などの要因で共振状態に変化があっても、共振状態であるか否かを検出して、駆動周波数を共振周波数に追従さることができ、その結果、共振状態を維持できる。
更に、本実施例3では、映像の表示を行っている最中の光の一部を用いて共振状態であるか否かを検出するため、映像表示を中断する必要がない。また、共振周波数が駆動周波数に対して大きいか小さいかの情報も検出できるため、駆動周波数を高速に共振周波数に追従させることができる。
実施例3の第二の効果は、差動信号による位相差計測により、共振状態であるか否かの検出を実現している点である。これを実現する上で第一の着眼点は、本実施例の差動信号の生成である。本発明者らは、光検出器110に到達する光スポットが面積を持つことを利用し、実施例3の差動信号を考案した。実施例3によれば、光スポットの中心が4分割ディテクタの分割線上に位置するタイミングを検出可能である。
また第二の着眼点は、光走査部10内の振動部101の駆動軸と、光検出器110の分割軸が対応するように構成している点である。ここで、振動部101の駆動軸はx軸及びy軸であり、光検出器110へ向かう光はプリズム109で直角に偏向されるため、対応する座標軸がx軸とz軸になる。本明細書における『駆動軸と分割軸が対応する』とは、分割軸がx軸とz軸に一致することを意味する。
実施例3の差動信号は、光スポットの中心が4分割ディテクタの分割線上に位置する場合にゼロクロスし、そのタイミングを検出可能である。実施例3では、増幅駆動信号から導光路102の変位までの伝達関数の位相特性を使用しているため、差動信号がゼロクロスするのに対応した駆動信号のタイミングを検出する必要がある。そのため振動部101の駆動軸と、光検出器110の分割軸が対応するように構成することが好ましい。このように構成することで、第一の差動信号D1がゼロクロスするのに寄与するのはx軸の駆動(のみ)になる。同様に、第二の差動信号D2がゼロクロスするのに寄与するのはy軸の駆動(のみ)になる。
従って、差動信号がゼロクロスするのに対応した駆動信号のタイミングは、前記の寄与をする軸の駆動信号のゼロクロス点になる。そのため、差動信号がゼロクロスするのに対応した駆動信号のタイミングを検出するのに、単一の軸の駆動信号のみを用いることができる。この結果、共振状態であるか否かの検出を可能となる。駆動軸と分割軸が対応していない場合には、例えばx軸とy軸の振動部101の感度に差があった場合に、正確な検出ができなくなる。
なお、振動部101の駆動軸が直交しない場合には、駆動軸の少なくとも1つの軸が、分割軸であるx軸、z軸のいずれかと対応していればよい。この場合であっても、位相差計測は可能である。
実施例3の第三の効果は、4分割ディテクタによる差動信号を取る構成により、小型・安価な構成にて共振状態であるか否かの正確な検出が可能である点である。位置を検出するデバイスPSD(Position Sensing Device)を用いる構成と比較して、実施例3の構成は、小型・安価な構成である。本実施例はプリズム109と光検出器110の間にレンズを設ける必要がなく、また、安価な4分割ディテクタを用いるためである。
実施例3の第四の効果は、差動信号は総光量で正規化しているので、階調データ(R、G、B)の輝度による影響を受けず、正確な位相差検出が可能である点である。言い換えれば、黒に近い映像を表示する場合であっても、位相差検出が可能である。なお、レーザの発光輝度が階調データ(R、G、B)の輝度に依存して変化し、一定でないという課題は、映像を表示する装置の場合に特有の課題である。
更に、実施例3の第五の効果は、駆動周波数を変更して共振周波数に追従させた後の投影画像の歪みが良好に補正される点である。実施例3の構成によれば、変更した駆動周波数を用いて、(数5)乃至(数7)の補正を含む座標の計算を行う。ここで、第一の共振状態から、温度などにより共振状態が変化し、駆動周波数を変更して共振周波数に追従させ、第二の共振状態に移行する場合を考える。本発明者らは、第一の共振状態と第二の共振状態で、投影画像の歪み方の変化が小さいことを見出した。即ち、出荷時に決定する歪み補正関数f(r)、a(r)、b(r)は駆動周波数を変更して共振周波数に追従させた後も使用可能である。そのため、変更後の駆動周波数を用いてリマッピング制御部における画像座標を行うことで、投影画像の歪みを良好に補正できる。
実施例3の第六の効果は、位相差計測においてフレーム平均を行っているため、時間分解能が向上し、正確な位相差計測が可能である点である。なおこれは、共振周波数が変化する時定数に対して、1フレームの時間が十分に小さいことを利用している。
実施例3の第七の効果は、輝度の補正と両立できる点である。実施例3の差動信号は正規化を行っているとはいえ、発光輝度が高いほど、S/Nは有利であり、より正確な計測が可能になる。実施例3の発光制御部22は、輝度を下げる際に、レーザの発光強度を一律下げるのではなく、レーザの点灯頻度を下げることで輝度を下げる。この結果、輝度を下げる投影領域においても、発光輝度が低下しないため、輝度の補正と両立できる。
実施例3では、共振状態において位相差計測部23で計測されるべき位相差△θtgtはx軸、y軸で区別せずに説明したが、x軸、y軸で別々の値であっても構わない。これは例えば、増幅部30の特性が厳密には同一でないためである。例えば、x軸に関して第一の正弦波S1と第一の差動信号D1との位相差△θ1が110°になるように調整し、y軸に関して第二の正弦波S2と第二の差動信号D2との位相差△θ2が112°になるように調整しても良い。
また、実施例3では、第一の正弦波S1と第一の差動信号D1との位相差△θ1及び第二の正弦波S2と第二の差動信号D2との位相差△θ2の両方を用いて位相差を計測する構成としたが、いずれか一方でも構わない。例えば、第一の正弦波S1と第一の差動信号D1との位相差△θ1のみを用いてもよい。この場合、光検出器110は4分割のディテクタでなく、2分割のディテクタで構わない。例えば、図4において領域110Aと領域110Bが単一の受光面、領域110Cと領域110Dが単一の受光面である2分割ディテクタであってもよい。
更には、実施例3では、位相差計測部23での計測を軌跡の1回転あたり4回行う構成で説明したが、光の走査軌跡上の1点のみで行っても構わない。言い換えれば、1フレームに1回の計測であっても、位相差計測は可能である。
また、実施例3の振動部110はx軸及びy軸の2つの駆動軸を有する構成で説明したが、実施例3は振動部の駆動軸が1つである場合にも同様に適用可能である。この場合の映像表示とは、例えば、感光剤が塗布されているスクリーンが振動部の駆動軸と直交する方向に移動し、光走査装置で時分割でレーザを点灯すると、スクリーン上に画像を表示することができる。本明細書ではこのような形態も映像の表示と称する。
更に、実施例3では、光検出器110のゲイン設定について言及しなかったが、表示する画素の輝度に応じて、光検出器110のゲイン設定を切り替えても良い。具体的には、表示画像格納メモリ33が出力する階調データ(R、G、B)に応じて光検出器110のゲイン設定を切り替える。これにより、表示する画素の輝度の影響を低減し、より正確な位相差計測が可能になる。
このように、実施例3によれば、映像を表示する機能を有する光走査装置において、適切に画像を表示することができる。
次に、実施例4の光走査装置の構成について説明する。
実施例1における光走査装置は、共振状態であるか否かを検出して共振状態を維持する構成であった。実施例4はそれに加えて、光走査の軌跡を推定することで、より適切な映像の表示を実現する実施の形態である。
図18は、光走査部10を備えた光走査装置2を示すブロック図である。なお、実施例1のブロック図である図1と共通の構成要素については同一の番号を付し、説明を省略する。実施例1との構成上の差異は移動時間計測部24であり、またブロック間の一部の結線状態やコントローラ40からの指令の内容が異なる。移動時間計測部24は、差動信号生成部32から出力される差動信号を元に、光の走査の軌跡の移動時間、言い換えれば移動速度を推定する。
コントローラ40は、移動時間計測部24の計測した移動時間の情報と、位相差計測部23の計測した位相差を元に、光走査の軌跡を推定する。更に、コントローラ40は、必要に応じてリマッピング制御部21の歪み補正関数の変更を指示する。
実施例4における移動時間計測部24の構成について図19を用いて説明する。減算器2401は、第一の差動信号D1からコントローラ40から指示される値Th1d1を減算した値を出力する。また、減算器2403は、第一の差動信号D1からコントローラ40から指示される値Th2d1を減算した値を出力する。実施例4においては、値Th1d1は正の値であり、値Th2d1は負の値であり、値Th1d1と値Th2d1は同じ絶対値であるとする。
ゼロクロス検出回路2402は、減算器2401の出力信号を入力とし、ゼロクロスのタイミングで所定の時間Highとなる信号を生成する。また、ゼロクロス検出回路2404は、減算器2403の出力信号を入力とし、ゼロクロスのタイミングで所定の時間Highとなる信号を生成する。
カウンタ回路2305は、入力端子としてrst端子とstop端子を有し、rst端子への入力に同期してカウントを開始しstop端子への入力への入力に同期してカウントを終了し、同時に、終了時のカウント値を出力する。rst端子にゼロクロス検出回路2402の出力信号、stop端子にはゼロクロス検出回路2404の出力信号が接続され、時間差△Txが計測される。
減算器2406は、第二の差動信号D2から、コントローラ40から指示される値Th1d2を減算した値を出力する。また、減算器2408は、第二の差動信号D2から、コントローラ40から指示される値Th2d2を減算した値を出力する。実施例4においては、値Th1d2は負の値であり、値Th2d2は正の値であり、値Th1d2と値Th2d2は同じ絶対値であるとする。
ゼロクロス検出回路2407は、減算器2406の出力信号を入力とし、ゼロクロスのタイミングで所定の時間Highとなる信号を生成する。また、ゼロクロス検出回路2409は、減算器2408の出力信号を入力とし、ゼロクロスのタイミングで所定の時間Highとなる信号を生成する。
カウンタ回路2310は、入力端子としてrst端子とstop端子を有し、rst端子への入力に同期してカウントを開始しstop端子への入力への入力に同期してカウントを終了し、同時に、終了時のカウント値を出力する。rst端子にゼロクロス検出回路2407の出力信号、stop端子にはゼロクロス検出回路2409の出力信号が接続され、時間差△Tzが計測される。
以上の構成により、第一の差動信号D1が値Th1d1になってから、値Th2d1になるまでの時間△Txが計測される。また、第二の差動信号D2が値Th1d2になってから、値Th2d2になるまでの時間△Tzが計測される。
次に、実施例4における移動時間計測部24の役割について説明する。ここでは説明のため、値Th1d1及び値Th1d2は0.2であるとする。
差動信号D1の値が0.2になることの意味について、図20(a)を用いて説明する。差動信号D1が-0.2になるということは、光検出器110で検出される光スポットが、光検出器110のz軸方向の分割軸によって面積比6:4で分割されることを意味する。即ち、図20(a)に示すように、差動信号D1が0.2になる条件の光スポットの中心は、z軸に平行な線分L1上に乗り、x軸の値が同一となる。
次に、実施例4の移動時間計測部24が計測する移動時間の意味について、図20(b)を用いて説明する。SP101及びSP102は光スポットの大きさを示している。説明のため、SP101からSP102に至る間の光走査軌跡は原点を中心とする円であるとする。SP101は差動信号D1の値が0.2になるときの光スポットであり、SP102は差動信号D1の値が-0.2になるときの光スポットである。移動時間計測部24で計測される移動時間は、光スポットがSP101の位置からSP102の位置まで移動する時間である。即ち、計測される移動時間は、図20(b)においてSector100で示す扇形の中心角の情報を含んでいる。何故なら、駆動信号の周波数fdrvは既知であるからである。
ここで、SP101からSP102に至る間の光走査軌跡の半径を100としたとき、半径50の軌跡の場合を考える。このとき計測される移動時間は、図20(b)においてSector50で示す扇形の中心角の情報となる。差動信号D1が0.2になるときに光スポットの中心が乗るz軸に平行な線分をL1とし、差動信号D1が-0.2になるときに光スポットの中心が乗るz軸に平行な線分をL2とする。実施例4の移動時間計測部24が計測する移動時間は、光スポットの中心がL1を通過してからL2を通過するまでの移動時間となる。ここでは説明のために、閾値を0.2と大きめの値で説明したが、閾値はより小さい値であってもよい。この移動時間は、光スポットがz軸を通過する近傍での移動時間を意味する。
言い換えれば、実施例4の移動時間計測部24が計測する移動時間の情報は、光スポットがz軸を通過する近傍での移動速度に換算も可能である。また、駆動信号の周波数fdrvが既知であるため、光スポットの中心がL1を通過してからL2を通過するまでの位相差に換算することも可能である。
図21は、円形の軌跡の半径を変えた場合の、差動信号D1(図21(a)参照)及び差動信号D2(図21(b)参照)の値を示している。光スポットを光検出器で検出しうる最大の半径を1としたとき、半径を0.75、0.5、0.25と変えた場合の差動信号である。差動信号D1が0.2から-0.2になるまでの移動時間は、半径が大きい方が短いことがわかる。これは半径が大きい方が、がz軸を通過する近傍での移動速度が速いためである。このように、実施例の移動時間計測部24が計測する移動時間は、光スポットがz軸を通過する近傍での移動時間を意味する。なお、説明のために光走査の軌跡が円形であるとしたが、楕円であっても同様の説明が成り立つことは明らかである。
実施例4では、コントローラ40が、位相差計測部23の計測する位相差計測値△θxz、及び移動時間計測部24が計測する移動時間△Tx及び△Tzの情報を元に、光の走査軌跡の形状を推定する。本発明者らは、位相差計測値△θxz、及び移動時間△Tx及び△Tzの3つの情報から、光の走査軌跡の形状を推定できることを見出した。
ここで、これら3つの値から軌跡を推定できる理由について説明する。位相差計測値△θxzは、光スポットがx軸を通過してからz軸を通過するまでの位相差である。光の走査軌跡が円であるとき、△θxzは90°となる。ここで図22(a)のように、軌跡がx軸またはz軸の方向に伸縮した楕円になった場合を考える。この場合にも△θxzは90°となってしまう。そのため、△θxzの情報だけでは、軌跡を推定することはできない。
次に、移動時間△Txは光スポットがx軸を通過する近傍での移動時間、移動時間△Tzは光スポットがz軸を通過する近傍での移動時間であった。光の走査軌跡が円であるとき、△Txと△Tzは同一の値となる。ここで図22(b)のように、軌跡が楕円であり、楕円の長軸がxz平面で45°傾いている場合を考える。楕円の長軸がxz平面で45°傾いているとき、△Txと△Tzは同一値となる。更に、楕円の長軸・短軸の長さによっては、円の場合の△Txと△Tzと同一値となる条件が存在する。即ち、移動時間△Tx及び△Tzの情報だけでは、軌跡を推定することはできない。
しかし、位相差計測値△θxz、及び移動時間△Tx及び△Tzの3つの情報を用いれば、光の走査軌跡の形状を推定できる。まず簡単のために、軌跡が円であることを判断することを考える。軌跡が円であるとき、位相差計測値△θxzが90°になる。このとき、軌跡はx軸及びz軸を長軸、短軸とする楕円になる。更に、軌跡が円であるとき、△Txと△Tzは同一値となる。このとき、軌跡はxz平面で45°傾いていた軸を長軸、短軸とする楕円になる。即ち、両者を満たすのはxz平面の原点を中心とする円に限定される。更に、△Txの情報と、既知である駆動信号の駆動周波数の情報から、x軸を通過する際の速度を算出可能であるため、円の半径も算出可能である。
次に、任意の楕円形状を推定することを考える。楕円の長軸の長さを2a、長軸の長さを2b、長軸の傾きをθとおいたとき、任意のa、b、θから決定される楕円形状を推定することを考える。一例として、a=1、b=0.6、θ=30°の楕円を考える。この楕円は図22(c)に示すような形状となる。
このとき、位相差計測値△θxzは楕円の形状が決まれば一意に決まる。また、移動時間△Txと△Tzについても、楕円の形状と閾値が決まれば一意に決まる、即ち、楕円の軌跡の形状と、(θxz、△Tx、△Tz)という3変数の組合せは一意に決まる。
即ち、(θxz、△Tx、△Tz)の3変数から、光走査軌跡の形状を算出することが可能である。なお、軌跡の形状を算出するにあたり、コントローラ40が3変数と形状の対応関係を記憶していてもよいし、コントローラ40が軌跡の形状を推定するアルゴリズムを有していてもよい。
実施例4の光走査装置1におけるコントローラ40のフローチャートを図23に示す。実施例1のフローチャートである図16と共通のステップについては同一の番号を付し、説明を省略する。
実施例1のフローチャートである図16との差異は、ステップS1007の代わりにステップS1016になるとともに、ステップS1010でYesの場合の後の処理が異なる。ここでは差異のあるステップに関して説明を行う。
ステップS1016においてコントローラ40は、表示フレームの切替りに同期して、位相差計測部23から位相差計測値△θ1、△θ2、△θxzを取得する。更に、移動時間計測部24から移動時間△Tx、△Tzを取得する(ステップS1016)。ステップS1016の後、コントローラ40は取得回数がN回になったか否かを判断する(ステップS1008)。
また、算出した位相差計測値の平均値△θavgと△θtgtの差の絶対値が所定の閾値△θth未満である場合(ステップS1010でYesの場合)には、共振状態にあると判断する。共振状態にあると判断した後、本実施例では引き続いて光走査軌跡の推定を行う。
ステップS1010でYesの場合、コントローラ40は(θxz、△Tx、△Tz)の3変数から、光走査軌跡の形状を推定する(ステップS1017)。このとき、(θxz、△Tx、△Tz)の3変数もN回計測しているので、それぞれの平均値を算出してから光走査軌跡の推定を行ってもよい。
続いて、コントローラ40は、光走査軌跡にずれがあるかを判断する(ステップS1018)。光走査軌跡にずれがある場合(ステップS1018でYesの場合)、コントローラ40はリマッピング制御部21に対して歪み補正関数の変更を指示する(ステップS1019)。
光走査軌跡にずれがない場合(ステップS1018でNoの場合)には、ステップS1012に進む。以降は、光走査装置1が動作を終了する際のフローであり、実施例1の場合と同様である。
次に、実施例4による効果について説明する。実施例4は実施例1の機能を含んでいるため、実施例1で得られる効果は実施例4においても得られる。ここではそれ以外の、実施例4に特有の効果について述べる。
実施例4では、共振状態を維持した上で、光の走査軌跡の推定を行い、必要に応じて歪み補正関数の変更を行っている。実施例4の効果は、投影画像の歪みを良好に補正できる点である。本発明者らは、温度や経時変化などの要因で共振周波数が大きく変わった場合に、それに合わせて駆動周波数を変更したとしても、投影画像の歪みが変化しうることを見出した。この理由は幾つかの要因の組合せであるが、一例をあげれば、温度によって導光路102の剛性など機械的な特性の変化が主要因となって共振周波数が変化した場合、増幅部40の周波数特性は変化しない。従って同じ共振状態にあっても、駆動信号から光スポットの変位までの伝達関数は同一とならない。この結果、特に共振周波数の変化が大きい場合において、実施例1では投影画像の歪みが生じうる。
これに対し、実施例4では、2つの差動信号D1及びD2を用いて、位相差計測値△θxz、移動時間△Tx及び△Tzを計測する。そしてこれら3つの計測結果から、光走査の軌跡を推定する。光走査の軌跡を推定することは、投影像の歪みを推定していることに他ならない。実施例4では、歪み補正関数を変更することで、投影像の歪みを補正している。駆動パラメータを変更せずに歪み補正関数で補正を行うことにより、投影像の歪みの補正を瞬時に反映させることができるメリットがある。
なお、実施例4では、投影像の歪みの補正を歪み補正関数で行う構成としたが、駆動信号の駆動パラメータで補正しても構わない。例えば、第一の可変ゲイン2005における倍率、第二の可変ゲイン2006における倍率、及び第二の正弦波の位相差△θdrvを変更しても構わない。
次に、実施例4の第一の変形例について述べる。実施例4の第一の変形例は、光検出器110に位置ずれがあった場合に対応するための実施の形態である。光走査部10の構造を小型化した場合に、光検出器110の位置ずれが生じうる。
光走査中に光検出器110で検出される光スポットを図25に示す。SP3は光スポットの大きさを示しており、SP3-0は光スポットの中心を示している。また、O’は軌跡の中心を示している。位置ずれが発生した場合、図25からわかるように、光スポットの一部が光検出器110の受光面の外部に出てしまう。
これを回避する一つの構成は、プリズム109と光検出器110を大きくして、位置ずれがあった場合でも光検出器110で光スポットを受光可能にする構成である。しかしこの場合には光走査部10が大きくなってしまうデメリットがある。また、光検出器110までの光路長が伸びるため、光検出器110上での光スポットのサイズが小さくなる。実施例1及び実施例2で採用している差動信号は、光スポットが面積を有することを利用しているため、光スポットのサイズは大きい方が好ましい。
そこで本変形例では、光検出器110に位置ずれがあった場合であっても実施例2の場合と同様の構成にて、コントローラ40からの指示内容の変更によって位置ずれに対応する。
ここで説明のため、以下の(数14)及び(数15)で定義される単純差動信号E1、E2を考える。
図26は実施例4の構成にて光検出器110に位置ずれがあった場合に、光走査の位相を変化させたときの単純差動信号、差動信号を示す図である(図4と同様に、光走査の軌跡は原点を中心とする円であるとする)。グラフの各系列は、軌跡の半径を変えた場合の信号の値である。図26(a-1)は第一の単純差動信号E1、(a-2)は第二の単純差動信号E2、(b-1)は第一の差動信号D1、(b-2)は第二の差動信号D2である。また(c-1)及び(c-2)は比較のために、プリズム109と光検出器110を大きくして、位置ずれがあった場合でも光検出器110で光スポットを受光可能にした場合の差動信号を示している。
図26を説明する上で、第一の単純差動信号E1、第一の差動信号D1を例に説明する。光検出器110に位置ずれがない場合、第一の差動信号D1は光走査の位相が0°と180°でゼロクロスする。一方、光検出器110に位置ずれがある場合、図26からわかるように、単純差動信号の場合には光走査の位相が0°と180°で異なる値を取るが、正規化を行っている差動信号D1やD2では、光走査の位相が0°と180°で同じ値を取る。そして(b-1)と(c-1)を見比べて分かるように、正規化を行っていることで、位置ずれにより光スポットの一部が光検出器110の受光面の外部に出てしまった場合でも、その影響を補正することができている。この結果、位相差の計測や移動時間の計測が可能になる。以下、本変形例における計測の詳細について説明する。
光検出器110に位置ずれがあった場合、図26(b-1)からわかるように、光走査の位相が0°と180°のときの差動信号D1の値は、ゼロではない。これは、光走査の位相が0°と180°のときに光スポットが分割軸によって2等分されるわけではないためである。しかし、位置ずれの方向と大きさがわかれば、光走査の位相が0°と180°のときの差動信号D1の値は決定できる。
即ち、光走査部10の組み立て時に光検出器110に位置ずれがあった場合、組み立て時に光走査の位相が0°と180°のときの差動信号D1の値D1-0をコントローラ40に記憶しておく。また、同様に、組み立て時に光走査の位相が90°と270°のときの差動信号D2の値D2-0をコントローラ40に記憶しておく。更に、本変形例の差動信号生成部32ではこれら4つの信号に関して、以下の(数16)及び(数17)の演算を行い、第一の差動信号D1’及び第二の差動信号D2’を出力する。
以上の構成により、実施例2の場合と同様に、位相差の計測や移動時間の計測が可能になる。本変形例の効果は、光走査部10の組み立て時に光検出器110に位置ずれがあった場合でも、位相差の計測や移動時間の計測が可能になり、画像の良好な表示が可能である点である。特に、差動信号を生成する際に正規化を行っていることで、光スポットの一部が光検出器110の受光面の外部に出てしまう場合にも対応できる。その結果、プリズム109と光検出器110を大きくする必要がなく、光走査部10を小型化できる。
4分割ディテクタである光検出器110の代わりに、位置を検出するデバイスPSDを用いる構成と比較して、本実施例は上述した観点での効果を有する。PSDは受光した光の重心を出力するデバイスであるため、光スポットの一部がPSDの受光面の外部に出てしまう場合には位置検出ができなくなる。
そのため、PSDを用いる場合には、位置ずれがあった場合でもPSD受光面上で光スポット全体が受光されるようにする必要があり、光走査部10が大型化してしまう。実施例4の光走査装置1の本来の特徴は光走査部10を小型にできる点であるので、本変形例によれば、その特徴を生かしたまま、位相差計測や移動時間計測を行って、適切な映像表示を行うことができる。
次に、実施例4の第二の変形例について述べる。実施例2では、光検出器110で受光する光の波長について特に限定しなかった。実施例2では例えば、可視光領域の光である赤、緑、青の各色の混ざった光を受光してもよい。しかしながらその場合、表示する映像が全領域で黒であった場合、位相差計測や移動時間計測ができなくなってしまう。本変形例はこの課題を解決するための実施の形態である。
第二の変形例では、光源部1101に設けられた赤外の波長のレーザを、常時(即ち映像を表示している最中)、点灯させる。また、光検出器110は、赤外の光のみを選択的に受光する。これは、光検出器110が赤外の光のみに感度を有してもよいし、光検出器110が赤外の光のみを通過する光学的なフィルタを有していてもよい。
これにより、人間の眼には視認できない波長の光を用いて、映像表示中の位相差計測や移動時間計測が可能である。表示する映像が全領域で黒である期間も、赤外の光は照射し続けているので、位相差計測や移動時間計測が可能である。そのため、表示する映像が全領域で黒である状態から、何らかの映像に切替ったタイミングでも、良好な映像表示が可能になる。
なお、以上の説明では赤外の波長のレーザを常時、点灯させるとしたが、差動信号で検出するのは光スポットが光検出器110の分割軸を通過するタイミングであるので、そのタイミングの前後でのみ点灯し、それ以外の期間は消灯していてもよい。
また、実施例4の第三の変形例について述べる。実施例4の第二の変形例は、赤外のレーザを用いる構成であったが、その場合には赤外のレーザを搭載する必要があり、コストアップにつながる。そこで本実施例では、赤外のレーザを用いることなく、表示する映像が全領域で黒であった場合であっても位相差計測や移動時間計測を可能にする。
第三の変形例では、光源部1101に設けられた青色のレーザを、光スポットが光検出器110の分割軸を通過するタイミングの前後でのみ点灯し、それ以外の期間は消灯する。本変形例の発光制御部22は、表示画像格納メモリ33から供給される階調データ(R、G、B)を受け取り、それに基づいてレーザの発光を制御する、更に、光スポットが光検出器110の分割軸を通過するタイミングの前後では、階調データ(R、G、B)の値によらずに必ず青色のレーザを発光させる。その際、青色のレーザの発光強度は、輝度が十分に低いものとする。
本変形例は、赤、緑、青の三色のうち、人間の眼の感度が青色に対して最も低いことを利用している。本変形例によれば、位相差計測や移動時間計測を行うのに最低限必要なタイミングのみ、青色レーザを低輝度で発光させる。これにより、人間の眼に視認させることなく、映像表示中の位相差計測や移動時間計測が可能である。表示する映像が全領域で黒である期間であっても、位相差計測や移動時間計測が可能である。そのため、赤外のレーザを用いることなく、実施例2の第二の変形例と同様の効果を実現できる。
実施例4の第四の変形例について述べる。本変形例は、光走査部の構成にのみ、実施例2と差異がある。本変形例における光走査部には符号13を付す。実施例2の光走査部10が光走査部13に置き換わる以外の構成は、実施例2と共通である。
本変形例の光走査部13の構造を図28に示す。実施例2の構成ではプリズム109が配置される位置はレンズ104の先であったが、本変形例ではレンズ104の前である。導光路102がファイバである場合、ファイバを出射した光は平行光でなく拡散光となる。そのため、光検出器110上の光スポットは、実施例2と同様に面積を持つ。そのため、本変形例の構成でも、実施例2と同様の位相差計測及び移動時間計測が可能である。
実施例4の第五の変形例について述べる。本変形例は、ヘッドマウントディスプレイに用いる場合に用いる場合の構成であり、実施例2とは光走査部の構成にのみ、差異がある。本変形例における光走査部には符号14を付す。実施例2の光走査部10が光走査部14に置き換わる以外の光走査装置の構成は、実施例2と共通である。また、本変形例の光走査装置は、導光板15と組み合わせて用いられる。なお、導光板15は光走査装置2に含まれると考えても構わない。
本変形例の光走査部14及び導光板15について、図28を用いて説明する。光走査部14は、プリズム109及び光検出器110を光走査部14から除外した以外は、実施例2の構成である図2と同様である。
導光板15は、導光板15に入射した光が導光板15の内部で全反射するように反射する第一の偏向部151と、導光板15の内部で全反射した光を観察者の瞳71に向かって出射する第二の偏向部152を含む。第一の偏向部151は例えば、光反射膜にて構成される。このような導光板においては、第一の偏向部151によって反射される光L1だけでなく、第一の偏向部151を通過する光L2も存在すること本発明者らは見出した。
本変形例においては、第一の偏向部151を通過する光L2を受光するように、光検出器110を導光板15の先に配置する。即ち、導光路102と前記導光板15の入射部の直線状に、光検出器110を配置する。本実施例2のプリズム109も、本変形例の第一の偏向部151も、入射光を映像表示用の光と、本発明のための検出用の光とに分岐している点は共通である。即ち、本変形例の構成でも、実施例2と同様の効果を実現できる。
次に、実施例4の第六の変形例について述べる。図31は、導光路102の出射端102aの変位の軌跡を示している。Aで示す範囲は所定の有効範囲であり、映像を表示する領域に対応する。実施例4の構成では、有効範囲Aの範囲外ではレーザを消灯する構成としたが、本変形例では図31においてB1、B2、B3及びB4で示す領域の前後においても、レーザを点灯する。この領域でのレーザ点灯の強度は、表示画像格納メモリ33が出力する階調データ(R、G、B)に依らず、高輝度で発光する。この光を検出光と呼ぶ。有効範囲Aの範囲外の光は、レンズ111を通過した後に機械的な構造(図示しない)により遮光されるものとする。
これらB1乃至B4の領域は、図30と比較して分かるように、走査軌跡が光検出器110の分割軸を通過する前後に対応していることがわかる。即ち、B1乃至B4の領域で検出光を発光することで、実施例1における位相差計測が可能である。これにより、共振状態であるか否かを検出することができる。差動信号は正規化を行っているとはいえ、発光輝度が高いほどS/Nは有利である。本変形例でのB1乃至B4の領域での発光強度は階調データ(R、G、B)に依存せずに高輝度であるため、実施例4と比較して、より正確な位相差計測が可能になる。
このように、画像の表示を行っている最中(即ちステップS1006の後、ステップS1012でYesとはならない状態)において、走査軌跡が所定の領域内である期間に画像の前記表示または前記撮像を行い、走査軌跡が所定の領域でない期間に発光制御部22は検出光の発光を行う。そして検出光に関して差動信号を生成し、位相差計測を行うことが可能である。これにより、より正確な位相差計測が可能になり、共振周波数の変化に対して駆動周波数を高精度に追従させることができる。なお、以上で説明した、実施例4の第二の変形例乃至第五の変形例は、実施例1にも同様に適用可能である。
このように実施例4によれば、映像を表示する機能を有する光走査装置において、適切に画像を表示することができる。
次に、実施例5の光走査装置の構成について説明する。
以上の実施例では4分割の光検出器を用いて、分割軸を通過するタイミングを検出する構成であったが、4分割の光検出器を用いない構成も可能である。実施例5は4分割の光検出器を用いない実施の形態である。
実施例5の光走査部17の構造を図32に示す。実施例1の構成図である図2と共通の構成要素については同一の番号を付し、説明を省略する。反射体112a及び反射体112bは、レンズ104に取り付けられ、映像を表示中の出射光の一部を反射する。検出用導波路113a及び検出用導波路113bは、反射体112a及び反射体112bで反射された光を取り込む。検出用導波路113は、例えばシングルモードやマルチモードの光ファイバである。
反射体及び検出用導光路は、紙面に垂直な方向にも配置される。図33(a)はレンズ104と反射体112a、112b、1112c、112dの位置関係を示している。また図33(b)は光走査部17の断面図であり、検出用導光路113a、113b、113c、113dの位置関係を示している。
図32から明らかなように、xy平面の原点を振動部101の中心に取った場合、x軸及びy軸上に反射体及び検出用導波路が配置されている。この結果、光の走査軌跡がx軸及びy軸を通過するタイミングで、検出用導光路で受光される光量は最大となる。
実施例5の光走査装置はピーク検出回路を有する(図示しない)。ピーク検出回路では、各々の検出用導光路に関して、受光光量が最大となるタイミングを検出する。検出用導光路113aの受光光量が最大となるタイミングと検出用導光路113bの受光光量が最大となるタイミングの論理和を取った信号を出力する。この信号は図16(b)の波形と同一となる。即ち、実施例1における位相差計測部23の論理和回路2306の出力信号と同等の信号となる。同様にピーク検出回路32は、検出用導光路113cの受光光量が最大となるタイミングと検出用導光路113dの受光光量が最大となるタイミングの論理和を取った信号も出力する。この信号は図16(d)の波形と同一となる。即ち、実施例1における位相差計測部23の論理和回路2313の出力信号と同等の信号となる。
このように、実施例5の構成によれば、4分割の光検出器を用いなくても、同様の信号を生成可能である。実施例5の位相差計測回路28は、実施例1の構成である図14に対して、ゼロクロス検出回路232及びゼロクロス検出回路234をなくし、代わりにピーク検出回路の2つの出力信号を接続すればよい。これにより、実施例1と同様の効果を得ることができる。
次に、実施例5の変形例について述べる。本変形例の光走査部18の構造を図34に示す。実施例5の構造である図32との差異は、検出用導光路114a、114b、114c、114dである。検出用導光路113c及び113dは図39の場合と同様に図示しないが、図33(a)と同様に4方向に配置されている。
検出用導光路114a、114b、114c、114dはテーパ付きの光ファイバであり、図34に示すようにテーパの断面が反射体112a、112b、112c、112dの方向を向くように配置されている。これにより、検出用導光路で受光する光量を向上することができる。この結果、S/Nが向上し、より正確な位相差計測が可能になる。
次に、実施例6の光走査装置の構成について説明する。
以上の実施例では、分割軸を通過するタイミングを検出する構成であったが、共振周波数のずれや光の走査軌跡のずれを検出する方法は、分割軸を通過するタイミングの検出に限定されない。
実施例6は、実施例4の構成をベースとして、別の方法で共振周波数のずれや光の走査軌跡のずれを検出する実施の形態である。図35は光走査部16を備えた光走査装置4を示すブロック図である。なお、実施例1のブロック図である図1と共通の構成要素については同一の番号を付し、説明を省略する。実施例1との構成上の差異は光走査部19と、差動信号生成部32と位相差計測部23が省略され、光走査部19内に設けられた光検出器115からの信号はコントローラ40に入力される。
本変形例の光走査部19の構造を図36に示す。実施例4との差異は、光検出器115及び集光レンズ116である。図37は光検出器115の構造を示している。図37の点線は、光検出器115上に投影される光の理想的な走査軌跡を図示したものである。またAで示す範囲は所定の有効範囲であり、映像を表示する領域に対応する。実施例6の光検出器115は、領域C1、C2、C3、C4のみに受光面がある。理想的な状態(即ち共振周波数などの駆動パラメータが適切に設定されている状態)において、光スポットの中心が領域C1、C2、C3、C4内に位置するタイミングにて、レーザを点灯する。以下、このタイミングのことを「走査軌跡上の所定のタイミング」と称する。
駆動周波数が共振周波数と一致しているとき、光検出器115上に投影される光の走査軌は図37の点線と一致するため、走査軌跡上の所定のタイミングにてレーザを発光すれば、4つの受光面すべてで光が検出される。
一方、駆動周波数が共振周波数と一致していないときには、例えば振幅が低下するため、走査軌跡上の前記所定のタイミングにてレーザを発光しても、4つの受光面すべてで光が検出されなくなる。また、光の走査軌跡にずれが生じた場合には、4つの受光面のいくつかでのみ光が検出されたり、光が検出されるタイミングが走査軌跡上の前記所定のタイミングからずれたりする。
即ち、実施例6の光検出器115のような構成でも、共振周波数のずれや光の走査軌跡のずれを検出することが可能である。例えば、共振周波数のずれを検出した場合には、映像表示を中断して、共振周波数を変更してもよい。また光の走査軌跡のずれを検出した場合には、第一の可変ゲイン2005における倍率、第二の可変ゲイン2006における倍率、及び第二の正弦波の位相差△θdrvを変更してもよい。これら駆動信号のパラメータの変更が完了し適切な映像表示が行われている状態では、4つの受光面すべてで光が検出される。従って適切な映像表示が行われているか否かの検出が可能である。
実施例6の場合であっても、画像の表示を行っている最中に(言い換えれば、画像の表示を中断することなく)、共振周波数のずれや光の走査軌跡のずれを監視することができる。
実施例6の場合、光検出器により共振周波数のずれを検出するタイミングは、画像の前記表示または前記撮像を行っている最中ではないが、画像の前記表示または前記撮像を行うための前記光走査を行っている期間中と言うことができる。
実施例6では光検出器115として図37に示す構成で説明したが、光検出器の構成には様々な変形例が考えられる。
例えば、光検出器115の受光面は図38に示すように、映像を表示する領域Aの辺に沿った領域C5及びC6であっても構わない。または、図39に示すように、光検出器115は領域D1、D2、D3、D4に受光面を有する構成であっても構わない。図39と図30を見比べてわかるように、領域D1、D2、D3、D4は実施例4の光検出器110の分割軸に沿っている。そのため、領域D1、D2、D3、D4を通過するタイミングや、領域D1、D2、D3、D4に幅があることを利用して通過する際の移動速度を検出することが可能である。即ち、実施例1や実施例2と同様に、共振周波数のずれや光の走査軌跡のずれを検出し、適切に補正することができる。
更に、光検出器115の受光面は、図38の領域D1と領域D3を合わせた、斜め45°の直線状のラインセンサであってもよい。その場合であっても前記ラインセンサを通過するタイミングを検出できるため、実施例1と同様に共振周波数のずれを検出し、適切に補正することができる。
あるいは、光検出器115はPSDであっても構わない。PSDの場合には、光の走査軌跡そのものを検出できるので、実施例1や実施例2と同様に、共振周波数のずれや光の走査軌跡のずれを検出し、適切に補正することができる。
実施例6及びその変形例における光検出器は、受光面の面積が小さい光検出器か、または、光スポットの一部が受光面の外部に出てしまう場合には位置検出ができなくなるPSDを使用している。これらの構成では、集光レンズ116を設けて光スポットを小さくすることで、より正確な検出が可能になる。従って、実施例6及びその変形例では、プリズム109にて偏向された光L2が光検出器115に到達するまでの間に、集光レンズ116を設けることが好ましい。
以上の実施例における光走査装置は、少なくとも映像を表示する機能を有する構成であった。本発明は、映像を撮影する機能を有する場合にも同様に適用可能である。その場合の効果は、映像撮像を中断することなく、導光路102の共振状態を維持して適切な映像撮像を継続することができる点である。本発明の効果のうち、映像表示特有の効果を除いて、映像撮像の場合にも同様の効果が得られることは明らかである。
また、ドットずれ補正処理を行う走査方式として、実施例1と実施例2の場合で説明したが、光走査の軌跡はこれらに限らない。また、位相差計測による共振状態の維持や移動速度計測による光走査の軌跡の推定についても、光走査の軌跡はこれらに限らない。これらに共通する特徴としては、X軸、Y軸ともに共振を用いていることが挙げられる。そのため、両軸の駆動信号は共通の周波数成分を有している。
また、角度補正部2101と座標計算部2102は説明のためにブロックを分けて説明したが、同一であってもよい。これは(数7)乃至(数10)をまとめた演算を1つのブロックで行うことも可能であることから、明らかである。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、また上述した変形例の他にも様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。