JP7084207B2 - 構造物の保護方法 - Google Patents
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また下記特許文献2には、コンクリート構造物の表層に、粘度が20~5000mPa・sの範囲にあり、硬化時の引張強度が1N/mm2以上のエポキシ樹脂プライマーを塗布し、その上に、硬化時の引張強度が7N/mm2以上、引張破断伸びが50~800%であるポリウレタン又はポリウレアの硬化性組成物を吹きつけ、厚みが0.8~4mmのポリウレタン又はポリウレア層を形成させることを特徴とするコンクリート表面構造体の構築方法が提案されている。
その一方上記特許文献2記載のコンクリート表面構造体の構築方法では、スプレー塗装によりコンクリート構造体に広範囲に効率よく塗装することができるが、スプレー塗装に用いられる被覆材は硬化時間が短いことから、吐出時に巻き込んだ気泡が抜ける前に塗膜が硬化してしまい、気泡により塗膜が不透明になってしまうという問題があった。
1.前記A液及び前記B液のそれぞれが、シランカップリング剤を含有しない、もしくは1重量%未満の量で含有すること、
2.前記構造物が、コンクリート構造物、自然石構造物、組積構造物、金属構造物又は木構造物であること、
3.前記被覆材を、構造物表面に直接吹付け被覆すること、
4.前記被覆材により形成された被膜の1mm厚みにおける隠蔽率が30%未満であること、
が好適な態様である。
本発明の構造物の保護方法によれば、コンクリート構造物、自然石構造物、組積構造物、金属構造物又は木構造物等の構造物表面を保護可能であり、被膜の透明性に優れているため被膜を通して構造物表面を長期にわたって目視可能であると共に、構造物に欠陥が生じた場合でも表面剥落を有効に防止することができる。
本発明の構造物の保護方法においては、イソシアネート基を2個以上有するウレタンプレポリマーを主成分とするA液と、水酸基及び/又はアミノ基を2個以上有する硬化剤を主成分とするB液とを、組み合わせて成るポリウレア又はポリウレタンから成る被覆材を用いる。
A液を構成するウレタンプレポリマーとしては、イソシアネート基を1分子中に2個以上有するポリイソシアネート化合物と、イソシアネート基と反応する活性水素を1分子中に2個以上有する化合物とを反応させることによって得ることができる。特に活性水素化合物として、アルコール性水酸基を1分子中に2個以上有するポリオール化合物、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールあるいはその他のポリオール等を1種又は2種以上組み合わせて形成させたウレタンプレポリマーが好適である。
ウレタンプレポリマーを硬化させる、水酸基及び/又はアミノ基を2個以上有する化合物としては、分子量が18~10000、好ましくは30~5000である化合物が好ましく、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1、6-へキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,4-トリヒドロキシブタン、1,2,3,4-テトラヒドロキシブタン、1,2,6-トリヒドロキシヘキサン、1,1,1-トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、ポリカプロラクトン、フラクトース、キシリトール、アラビトール、ソルビトール及びマンニトールなどの多価アルコール;エタノールアミンのような低分子アミノアルコール;アンモニア、ヒドラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレエンヘキサミン、m-フェニレンジアミン、2,4-トリレンジアミン、2,6-トリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、3,3′-ジクロロ-4、4′-ジアミノ-ジフェニルメタンなどの低分子ポリアミン化合物、また先に挙げたウレタンプレポリマーの調製の際に使用できる、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールなどのポリオール;エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド又はその混合物を反応させて得られるポリエーテル末端に有するヒドロキシル基をアンモニアと反応させてアミノ基に置換することによって得られるポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシブチレンジアミンなどのポリエーテルポリアミンを挙げることができる。これら硬化剤の中では、ポリエーテルポリオール又はポリエーテルポリアミンを使用することが好ましいが、ポリエーテルポリオール又はポリエーテルポリアミンに他の1種類以上の低分子ポリオール又は低分子ポリアミンを組み合わせて使用することもできる。
これら硬化剤として、ウレタンプレポリマーに含まれるイソシアネート基1モルに対して、低分子化合物中の活性水素が、約0.8モル以上の割合、好ましくは約0.95~1.2モルとなるように硬化剤が添加される。
シランカップリング剤を、硬化性組成物中に1重量%未満で含有する場合、シランカップリング剤としては、イソシアネート基含有シラン類、アミノ基含有シラン類、メルカプト基含有シラン類、エポキシ基含有シラン類、ビニル型不飽和基含有シラン類等を含有でき、エポキシ基含有シラン類を含有させる場合にはA液に、アミノ基含有シラン類を配合させる場合にはB液に含有させる。
本発明の構造物の保護方法においては、上述した被覆材が構造物との密着性に優れていることから、直接構造物表面に吹き付け被覆することが可能であるが、プライマー層を介して構造物表面に被覆材を被覆することもできる。構造物表面にプライマー層を形成することにより、プライマーが構造体の表層に浸透するため、被覆材を構造物により強固に接着することが可能になる。
プライマーとしては上述した被覆材(ポリウレア又はポリウレタン)から成る被膜との密着性に優れた、エポキシ樹脂プライマーを好適に使用できる。このようなエポキシ樹脂プライマーとしては、本出願人による特開2008-75033号公報等に記載されたものを好適に使用することができ、当該公報に記載された方法により形成することができる。
プライマー層を構造物表面に形成する場合には、その厚みは、0.02~0.4mm程度であることが好ましい。
本発明においては、上述したイソシアネート基を2個以上有するウレタンプレポリマーを主成分とするA液と、水酸基及び/又はアミノ基を2個以上有する硬化剤を主成分とするB液とを、2液混合衝突型スプレーを用いて構造物表面に吹付け被覆するが、その際、2液混合衝突させる際の前記A液及び前記B液のそれぞれの液圧力が500psi以上1200psi以下、好ましくは500psi以上1050psi以下の範囲に調整されていることが重要である。
すなわち上記範囲よりも液圧力が小さい場合には、塗工性に劣り、均一な膜を形成することができず、その一方上記範囲よりも液圧力が大きい場合には、気泡を抱き込んでしまい、透明性に劣るようになる。
またこの2液混合衝突型スプレーにおいては、上記範囲の液圧力でA液及びB液を混合衝突させるのに適したミックスチャンバーを選択することが好ましい。本発明においては、これに限定されないが、グラコ社製のミックスチャンバーで000番(オリフィス径0.020インチ)、00番(同0.029インチ)、01番(同0.042インチ)、02番(同0.052インチ)等に相当するチャンバーサイズのミックスチャンバーを備えた2液混合衝突型スプレーガンを好適に使用することができる。特に、低吐出用の01番(同0.042インチ)相当や更にオリフィス径の小さい00番(同0.029インチ)相当などミックスチャンバーを用いることが好適である。
また、A液とB液は、A液及びB液を混合衝突させた後の材料のJIS K-5600-1-1に記載の評価方法による指触乾燥時間が10秒~60分の範囲となるように調製されていることが好ましい。
被膜は、0.5~3mm、特に0.7~2.5mmの厚みを有していることが好適である。上記範囲よりも被膜の厚みが薄いと、保護被覆として充分な機能を発揮できないおそれがあり、一方上記範囲よりも厚いと透明性が低下すると共に経済性にも劣るようになる。
被覆材をスプレーで吹き付ける際、スプレーガン1回往復の塗工量は、液圧力や液粘度及びミックスチャンバーのオリフィス径などにより変化するため、スプレーされた被覆材の状態を確認しながら塗工量を調整することが望ましい。特に硬化の遅い材料では、スプレーの際に巻き込まれた気泡が抜けやすくなる点では有利であるが、一度に多量に吹き付けると液ダレが生じて目標とする被膜の厚みが得られない場合があり、少量ずつを数回に分けてスプレーする必要がある。
また本発明の構造物の保護方法により形成された被膜は、引張強度が2.3N/mm2以上、引張破断伸びが200%以上であり、構造物の変位に追随し、相応の応力に耐える被膜として形成することができる。
次の方法でポリウレア樹脂のA液及びB液を調製した。
ノルボルネンジイソシアネート(商品名:コスモネートNBDI、三井化学SKCポリウレタン社製)48.0重量部と数平均分子量2000のポリオキシプロピレングリコール(商品名:アクトコールD-2000、三井化学SKCポリウレタン社製)26.0重量部及び数平均分子量3000のポリオキシプロピレングリコール(商品名:アクトコールD-3000、三井化学SKCポリウレタン社製)26.0重量部を、イソシアネート基とヒドロキシル基の化学当量比(NCO/OH)が2.7の割合で、100℃において4時間反応させ、NCO基含有率17重量%のA液を得た。
一方、数平均分子量2000のポリエーテルジアミン(商品名:ジェファーミンD-2000、ハンツマン社製)77.4重量部、ジエチルトルエンジアミン(商品名:エタキュアー100、アルベマール社製)22.1重量部、老化防止剤として3種混合液状安定剤(商品名:チヌビンB75、BASF社製)0.5重量部を混合し、B液を得た。
上記4種のポリウレアシートのそれぞれについて任意の3点の厚みを測定した。次いで、この4種のポリウレアシートをJIS K5600 4-1 B法に準拠した隠蔽率試験紙に乗せ、厚みを測定した3点の位置について、三刺激値Yを白色部(YW)と黒色部(YB)において各々測定し、隠蔽率YB/YWを百分率で得た。また、ポリウレアシートを乗せずに測定をしたものをブランクとした。各シートにおける厚みと隠蔽率を表1に示す。
上記4種のポリウレアシートのうち、1回往復で吹付けることにより得られたポリウレアシートの塗布パターンを、目視にて、以下の基準により評価した。結果を表2に示す。
大変良い:厚みのバラつきがほとんど無く外観が良い。
良い:厚みのバラつきはあるが許容範囲である。
悪い:厚みのバラつきが大きく均一な厚みでの製膜が困難である。
上記4種のポリウレアシートのうち、4回往復で吹付けることにより得られたポリウレアシートにつき、JIS K6251に準拠して引張特性を評価したところ、引張強度が18.3N/mm2、引張破断伸びが467%であった。
A液及びB液のそれぞれの液圧力が900psiとなるよう予め調整したこと以外は実施例1と同様にしてポリウレアシートを作成し、1mm厚みにおける隠蔽率および塗布パターンの評価を行った。結果を表2に示す。
A液及びB液のそれぞれの液圧力が900psiとなるよう予め調整したこと、並びにA液およびB液をそれぞれ粘度150mPa・sになるように加温したこと以外は実施例1と同様にしてポリウレアシートを作成し、1mm厚みにおける隠蔽率および塗布パターンの評価を行った。結果を表2に示す。
A液及びB液のそれぞれの液圧力が1200psiとなるよう予め調整したこと、並びにA液およびB液をそれぞれ粘度150mPa・sになるように加温したこと以外は実施例1と同様にしてポリウレアシートを作成し、1mm厚みにおける隠蔽率および塗布パターンの評価を行った。結果を表2に示す。
グラス・クラフト社製プロブラーガンで使用するミックスチャンバーを同社製ミックスチャンバー01番と交換し、A液及びB液のそれぞれの液圧力が1500psiとなるよう予め調整したこと以外は実施例1と同様にしてポリウレアシートを作成し、1mm厚みにおける隠蔽率および塗布パターンの評価を行った。結果を表2に示す。
グラス・クラフト社製プロブラーガンで使用するミックスチャンバーを同社製ミックスチャンバー01番と交換し、A液及びB液のそれぞれの液圧力が1500psiとなるよう予め調整し、A液及びB液をそれぞれ粘度50mPa・sになるように加温したこと以外は実施例1と同様にして1mm厚みにおける隠蔽率および塗布パターンの評価を行った。結果を表2に示す。
グラス・クラフト社製プロブラーガンで使用するミックスチャンバーを同社製ミックスチャンバー01番と交換し、A液及びB液のそれぞれの液圧力が1300psiとなるよう予め調整し、A液及びB液をそれぞれ粘度50mPa・sになるように加温したこと以外は実施例1と同様にして1mm厚みにおける隠蔽率および塗布パターンの評価を行った。結果を表2に示す。
Claims (5)
- イソシアネート基を2個以上有するウレタンプレポリマーを主成分とするA液と、水酸基及び/又はアミノ基を2個以上有する硬化剤を主成分とするB液とを、組み合わせて成る被覆材を、オリフィス径が0.020~0.052インチのミックスチャンバーを備えた2液混合衝突型スプレーを用いて、スプレーの吐出口と構造物表面の距離が20~100cmの範囲で構造物表面に吹付け、前記被覆材を0.5mm以上2mm未満の厚みで被覆する構造物の保護方法であって、
2液混合衝突させる際の前記A液及び前記B液のそれぞれの粘度が500mPa・s以下の範囲に調整されていると共に、それぞれの液圧力が500psi以上1200psi以下であり、前記A液及び前記B液を混合衝突させた後の材料のJIS K-5600-1-1に記載の評価方法による指触乾燥時間が10秒~60分であることを特徴とする構造物の保護方法。 - 前記A液及び前記B液のそれぞれがシランカップリング剤を含有しない、もしくは1重量%未満含む請求項1記載の構造物の保護方法。
- 前記構造物が、コンクリート構造物、自然石構造物、組積構造物、金属構造物又は木構造物である請求項1又は2記載の構造物の保護方法。
- 前記被覆材を、構造物表面に直接吹付け被覆する請求項1~3の何れかに記載の構造物の保護方法。
- 前記被覆材により形成された被膜の1mm厚みにおける隠蔽率が30%未満である請求項1~4の何れかに記載の構造物の保護方法。
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