本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係るウェーハの加工方法を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係るウェーハの加工方法の加工対象のウェーハの一例を示す斜視図である。図2は、図1中のII-II線に沿う断面図である。図3は、図1に示すウェーハのデバイスを拡大して示す斜視図である。図4は、図3中のIV-IV線に沿う断面図である。図5は、実施形態1に係るウェーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。
実施形態1に係るウェーハの加工方法は、図1に示すウェーハ1の加工方法である。実施形態1では、ウェーハ1は、シリコン、サファイア、又はガリウムヒ素などを基板2とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハである。ウェーハ1は、図1及び図2に示すように、基板2の表面3に機能層4が積層され、かつ複数のデバイス5が形成されている。機能層4は、SiOF、BSG(SiOB)等の無機物系の膜やポリイミド系、パリレン系等のポリマー膜である有機物系の膜からなる低誘電率絶縁体被膜(Low-k膜)により構成されている。機能層4は、基板2の表面3に積層されている。
デバイス5は、表面3の交差する複数の分割予定ライン6で区画された各領域にそれぞれ形成されている。即ち、分割予定ライン6は、複数のデバイス5を区画するものである。デバイス5を構成する回路は、機能層4により支持されている。なお、実施形態1において、デバイス5は、切削加工によりウェーハ1から分割されるデバイスよりも小型であり、例えば、1mm×1mm程度の大きさである。また、ウェーハ1は、分割予定ライン6の少なくとも一部において、基板2の表面3側に図示しない金属膜とTEG(Test Element Group)とのうち少なくとも一方が形成されている。TEGは、デバイス5に発生する設計上や製造上の問題を見つけ出すための評価用の素子である。
また、デバイス5は、図3に示すように、電極8と、電極8に接続した電極ポスト9とを備える。電極8は、デバイス5の表面に少なくとも一つ(実施形態1では、複数)設けられている。電極ポスト9は、デバイス5がウェーハ1から個々に分割されると、デバイス5の基板2を貫通する貫通電極(TSV:Through-Silicon Via)となるものである。実施形態1では、電極ポスト9は、電極8と1対1で対応して設けられている。電極ポスト9は、一端が対応する電極8に接続し、対応する電極8からウェーハ1の基板2の裏面7に向って延びて、基板2内に埋設されている。
なお、実施形態1に係るウェーハの加工方法の加工前の状態では、電極ポスト9は、図4に示すように、他端9-1が裏面7側に露出せずに、基板2内に位置している。電極ポスト9は、銅などの金属で構成されかつ柱状の導体部9-2を備え、導体部9-2の外表面が絶縁膜9-3で覆われている。なお、実施形態1では、絶縁膜9-3は、SiO2により構成されているが、本発明では、SiO2に限定されない。実施形態1において、ウェーハ1は、デバイス5が前述した電極ポスト9を有しているので、個々に分割されたデバイス5が貫通電極を有する所謂TSVウェーハである。
実施形態1に係るウェーハの加工方法は、ウェーハ1を分割予定ライン6に沿って個々のデバイス5に分割するとともに、デバイス5の裏面7側に電極ポスト9の他端9-1を露出させる方法である。ウェーハの加工方法は、図5に示すように、保護部材配設ステップST1と、切削ステップST2と、プラズマエッチングステップST3と、歪み層形成ステップST4と、機能層切断ステップST5と、を備える。
(保護部材配設ステップ)
図6は、図5に示されたウェーハの加工方法の保護部材配設ステップ後のウェーハを示す斜視図である。保護部材配設ステップST1は、ウェーハ1の基板2の表面3の機能層4側に保護部材である粘着テープ200を配設するステップである。実施形態1において、保護部材配設ステップST1は、図6に示すように、ウェーハ1よりも大径な粘着テープ200を機能層4側に貼着し、粘着テープ200の外周縁に環状フレーム201を貼着する。実施形態1では、保護部材として粘着テープ200を用いるが、本発明では、保護部材は、粘着テープ200に限定されない。ウェーハの加工方法は、ウェーハ1の機能層4側に粘着テープ200を貼着すると、切削ステップST2に進む。
(切削ステップ)
図7は、図5に示されたウェーハの加工方法の切削ステップを一部断面で示す側面図である。図8は、図5に示されたウェーハの加工方法の切削ステップ後のウェーハの要部の断面図である。
切削ステップST2は、ウェーハ1の基板2の裏面7に図7に示す切削装置10の切削ブレード12を切り込ませ、機能層4に至らない深さの切削溝300を分割予定ライン6に沿って基板2に形成するステップである。実施形態1において、切削ステップST2では、図7に示すように、切削ユニット11を2つ備えた、即ち、2スピンドルのダイサ、いわゆるフェイシングデュアルタイプの切削装置10のチャックテーブル13の保持面14に粘着テープ200を介してウェーハ1の機能層4側を吸引保持する。切削ステップST2では、切削装置10の図示しない赤外線カメラがウェーハ1の裏面7を撮像して分割予定ライン6を検出し、ウェーハ1と各切削ユニット11の切削ブレード12との位置合わせを行なうアライメントを遂行する。
切削ステップST2では、ウェーハ1と各切削ユニット11の切削ブレード12とを分割予定ライン6に沿って相対的に移動させながら切削ブレード12を裏面7に切り込ませて、ウェーハ1の裏面7側に切削溝300を形成する。実施形態1で用いる切削装置10の一対の切削ユニット11のうちの一方の切削ユニット11(以下、符号11-1で記す)の切削ブレード12(以下、符号12-1で記す)の厚さは、他方の切削ユニット11(以下、符号11-2で記す)の切削ブレード12(以下、符号12-2で記す)の厚さよりも厚い。実施形態1の切削ステップST2では、一方の切削ユニット11-1の切削ブレード12-1を裏面7に切り込ませて、第1切削溝301をウェーハ1の裏面7に形成する。
切削ステップST2では、第1切削溝301を形成した後、他方の切削ユニット11-2の切削ブレード12-2を第1切削溝301の溝底303に切り込ませて、第1切削溝301より細い第2切削溝302を第1切削溝301の溝底303に形成する。切削ステップST2では、第1切削溝301と第2切削溝302とを形成して、ウェーハ1の裏面7に機能層4に至らない深さの切削溝300を形成して、プラズマエッチングステップST3でのプラズマ化したエッチングガスの切削溝300への侵入を促進させる。なお、実施形態1において、切削溝300は、第1切削溝301と第2切削溝302とで構成される。ウェーハの加工方法は、図8に示すように、ウェーハ1の全ての分割予定ライン6の裏面7側に第1切削溝301及び第2切削溝302を形成すると、プラズマエッチングステップST3に進む。なお、実施形態1において、切削ステップST2では、ウェーハ1を太い切削ブレード12-1で切削した後に、細い切削ブレード12-2で切削する所謂ステップカットを実施したが、本発明は、ウェーハ1を1枚の切削ブレードで切削する所謂シングルカットを実施しても良い。なお、図7及び図8は、デバイス5を省略している。
(プラズマエッチングステップ)
図9は、図5に示されたウェーハの加工方法のプラズマエッチングステップ及び歪み層形成ステップで用いられるエッチング装置の構成を示す断面図である。図10は、図5に示されたウェーハの加工方法のプラズマエッチングステップ後のウェーハの断面図である。図11は、図10中のXI部を示す断面図である。図12は、図10に示されたウェーハの要部の断面図である。
プラズマエッチングステップST3は、図9に示すエッチング装置20の真空チャンバー25内のチャックテーブル21で粘着テープ200側を保持したウェーハ1の裏面7側にプラズマ化したエッチングガスを供給し、切削溝300の底304(図8に示す)に残存する基板2をエッチングして除去し、基板2を分割予定ライン6に沿って分割するとともに、絶縁膜9-3で覆われた電極ポスト9の他端9-1を裏面7側で突出させるステップである。プラズマエッチングステップST3は、ウェーハ1の基板2をプラズマダイシングするステップである。
プラズマエッチングステップST3では、エッチング装置20の制御ユニット22が、ゲート作動ユニット23を作動してゲート24を図9中の下方に移動させ、真空チャンバー25の開口26を開ける。次に、図示しない搬出入手段によって切削ステップST2が実施されたウェーハ1を開口26を通して真空チャンバー25内の密閉空間27に搬送し、下部電極28を構成する被加工物保持部29のチャックテーブル21(静電チャック、ESC:Electrostatic chuck)上に粘着テープ200を介してウェーハ1の機能層4側を載置する。このとき、制御ユニット22は、昇降駆動ユニット30を作動して上部電極31を上昇させておく。制御ユニット22は、被加工物保持部29内に設けられた電極32,33に電力を印加してチャックテーブル21上にウェーハ1を吸着保持する。
制御ユニット22は、ゲート作動ユニット23を作動してゲート24を上方に移動させ、真空チャンバー25の開口26を閉じる。制御ユニット22は、昇降駆動ユニット30を作動して上部電極31を下降させ、上部電極31を構成するガス噴出部34の下面と下部電極28を構成するチャックテーブル21に保持されたウェーハ1との間の距離をプラズマエッチング処理に適した所定の電極間距離に位置付ける。
制御ユニット22は、ガス排出ユニット35を作動して真空チャンバー25内の密閉空間27を真空排気して、密閉空間27の圧力を所定の圧力に維持するとともに、冷媒供給ユニット36を作動させて下部電極28内に設けられた冷媒導入通路37、冷却通路38及び冷媒排出通路39に冷媒であるヘリウムガスを循環させて、下部電極28の異常昇温を抑制する。
次に、制御ユニット22は、ウェーハ1に対してプラズマ化したSF6ガスを供給してウェーハ1の裏面7全体をエッチングするとともに切削溝300を基板2の表面3に向かって進行させるエッチングステップと、エッチングステップに次いでプラズマ化したC4F8ガスをウェーハ1に供給してウェーハ1の裏面7、切削溝301,302の内面及び切削溝300の底304に被膜を堆積させる被膜堆積ステップとを交互に繰り返す。なお、被膜堆積ステップ後のエッチングステップは、切削溝300の底304の被膜を除去して切削溝300の底304をエッチングする。このように、プラズマエッチングステップST3は、所謂ボッシュ法でウェーハ1をプラズマエッチングする。
なお、エッチングステップでは、制御ユニット22は、SF6ガス供給ユニット40を作動しエッチングガスであるSF6ガスを上部電極31の複数の噴出口41から下部電極28のチャックテーブル21上に保持されたウェーハ1に向けて噴出する。そして、制御ユニット22は、プラズマ発生用のSF6ガスを供給した状態で、高周波電源42から上部電極31にプラズマを作り維持する高周波電力を印加し、高周波電源42から下部電極28にイオンを引き込むための高周波電力を印加する。これにより、下部電極28と上部電極31との間の空間にSF6ガスからなる等方性を有するプラズマ化したエッチングガスが発生し、このプラズマ化したエッチングガスがウェーハ1に引き込まれて、ウェーハ1の裏面7、切削溝301,302の内面及び切削溝300の底304をエッチングして、切削溝300を基板2の表面3に向かって進行させる。
また、被膜堆積ステップでは、制御ユニット22は、C4F8ガス供給ユニット43を作動しエッチングガスであるC4F8ガスを上部電極31の複数の噴出口41から下部電極28のチャックテーブル21上に保持されたウェーハ1に向けて噴出する。そして、制御ユニット22は、プラズマ発生用のC4F8ガスを供給した状態で、高周波電源42から上部電極31にプラズマを作り維持する高周波電力を印加し、高周波電源42から下部電極28にイオンを引き込むための高周波電力を印加する。これにより、下部電極28と上部電極31との間の空間にC4F8ガスからなるプラズマ化したエッチングガスが発生し、このプラズマ化したエッチングガスがウェーハ1に引き込まれて、ウェーハ1に被膜を堆積させる。
プラズマエッチングステップST3では、制御ユニット22は、切削溝300の深さ即ちウェーハ1の厚さに応じて、エッチングステップと被膜堆積ステップとを繰り返す回数が予め設定されている。プラズマエッチングステップST3において、エッチングステップと被膜堆積ステップとを予め設定された回数繰り返されたウェーハ1は、図10、図11及び図12に示すように、始めのエッチンングステップによって裏面7全体がエッチングされて、厚さ101分薄化されている。また、エッチングステップと被膜堆積ステップとを予め設定された回数繰り返されたウェーハ1は、図10及び図11に示すように、厚さ101分薄化されることにより、裏面7側に電極ポスト9の他端9-1が露出している。実施形態1では、エッチングステップと被膜堆積ステップとを予め設定された回数繰り返されたウェーハ1において、電極ポスト9の他端9-1は、裏面7から突出している。
また、エッチングステップと被膜堆積ステップとを予め設定された回数繰り返されたウェーハ1は、図12に示すように、エッチングステップにおいて切削溝300の底304に残存する基板2がエッチングされ除去され、切削溝300が機能層4に到達している。ウェーハ1は、基板2が切削溝300により分割され、切削溝300内に機能層4が露出して、切削溝300の底に機能層4が残っている。なお、図12は、デバイス5を省略している。ウェーハの加工方法は、プラズマエッチングステップST3を終了すると、歪み層形成ステップST4に進む。なお、図12は、プラズマエッチングステップST3後のウェーハ1が切削溝300の底の基板2を除去している例を示しているが、本発明では、切削溝300の底に僅かに基板2が残っていても良い。
(歪み層形成ステップ)
図13は、図5に示されたウェーハの加工方法の歪み層形成ステップ後のウェーハの断面図である。図14は、図13中のXIV部を示す断面図である。図15は、図13に示されたウェーハの要部の断面図である。歪み層形成ステップST4は、プラズマエッチングステップST3を実施したウェーハ1の裏面7側の基板2にプラズマ化した不活性ガスを供給し、基板2の裏面7に歪み層100を形成するステップである。
歪み層形成ステップST4では、エッチング装置20の制御ユニット22が、プラズマエッチングステップST3から続いてチャックテーブル21上にウェーハ1を吸着保持し、密閉空間27の圧力を所定の圧力に維持するとともに、下部電極28の異常昇温を抑制した状態を維持している。歪み層形成ステップST4では、エッチング装置20の制御ユニット22が、前述した状態を維持したまま不活性ガス供給ユニット44を作動し不活性ガスを上部電極31の複数の噴出口41から下部電極28のチャックテーブル21上に保持されたウェーハ1に向けて噴出する。そして、制御ユニット22は、不活性ガスを供給した状態で、高周波電源42から上部電極31にプラズマを作り維持する高周波電力を印加し、高周波電源42から下部電極28にイオンを引き込むための高周波電力を印加する。これにより、下部電極28と上部電極31との間の空間に等方性を有するプラズマ化した不活性ガスが発生し、このプラズマ化した不活性ガスがウェーハ1に衝突する。
歪み層形成ステップST4では、エッチング装置20は、プラズマ化した不活性ガスをウェーハ1の裏面7に衝突させて、裏面7の表層に結晶欠陥、歪みを付与して、図13、図14及び図15に示すように、歪み層100を形成する。即ち、歪み層100は、ウェーハ1の裏面7及び切削溝300の内面の表層に結晶欠陥、歪みが形成された層であり、ウェーハ1に含有される銅(Cu)などの金属を主とする不純物を捕捉して、デバイス5の不純物による金属汚染を抑制する所謂ゲッタリング層としての機能を発揮する層である。また、歪み層100は、機械的加工により形成される歪みより、プラズマゲッタリングで形成されるので、圧倒的に薄く、抗折強度への影響が小さい。なお、本発明は、歪み層形成ステップST4において、図15に示すように、切削溝300の内面の表層にも歪み層100を形成しても良い。ウェーハの加工方法は、ウェーハ1の基板2の裏面7側等に歪み層100を形成すると、機能層切断ステップST5に進む。なお、不活性ガス供給ユニット44から供給する不活性ガスは、アルゴンガス(Ar)、ヘリウムガス(He)等の希ガス、希ガスに窒素ガス(N2)又は水素ガス(H2)等を混合した混合ガス等で構成することができる。なお、図15は、デバイス5を省略している。
(機能層切断ステップ)
図16は、図5に示されたウェーハの加工方法の機能層切断ステップを示す断面図である。図17は、図5に示されたウェーハの加工方法の機能層切断ステップ後のウェーハの要部の断面図である。
機能層切断ステップST5は、プラズマエッチングステップST3及び歪み層形成ステップST4を実施した後、ウェーハ1の裏面7側から図16に示すレーザー加工装置50が機能層4に対して吸収性を有する波長のレーザー光線51の集光点51-1をエッチングした切削溝300の底の機能層4に位置づけて照射し、機能層4を切削溝300に沿って切断するステップである。
機能層切断ステップST5では、レーザー加工装置50が、チャックテーブルに粘着テープ200を介してウェーハ1の機能層4側を保持し、図16に示すように、レーザー光線照射ユニット52とチャックテーブルとを分割予定ライン6に沿って相対的に移動させながらレーザー光線照射ユニット52から機能層4に対して吸収性を有する波長(例えば、355nm)のレーザー光線51の集光点51-1を切削溝300の底に露出した機能層4に設定して、レーザー光線51を機能層4に照射する。機能層切断ステップST5では、各分割予定ライン6において、切削溝300の底で露出した機能層4にアブレーション加工を施して、切削溝300の底で露出した機能層4を切断して、ウェーハ1を個々のデバイス5に分割する。なお、機能層切断ステップST5では、図示しない分割予定ライン6に形成された金属膜やTEGも分割する。ウェーハの加工方法は、図17に示すように、全ての分割予定ライン6において切削溝300の底で露出した機能層4を分割すると、終了する。なお、その後、デバイス5は、図示しないピックアップにより粘着テープ200からピックアップされる。なお、図16及び図17は、デバイス5を省略している。
実施形態1に係るウェーハの加工方法は、切削ステップST2において裏面7から分割予定ライン6に沿って切削溝300を形成した後、プラズマエッチングステップST3において裏面7側からプラズマエッチングすることで、切削溝300を基板2の表面3に向かって進行させて、ウェーハ1を分割するため、マスクを不要としたプラズマダイシングを実現することができる。このために、ウェーハの加工方法は、切削加工により分割するデバイスよりも小型であるためにプラズマエッチングで分割するのに好適なデバイス5を備えるウェーハ1の加工方法において、高価なマスクが不要となる。その結果、ウェーハの加工方法は、コストを抑制しながらもウェーハ1にプラズマエッチングを行ってウェーハ1を個々のデバイス5に分割することができる。
また、ウェーハの加工方法は、プラズマエッチングステップST3後に、エッチング装置20のチャックテーブル21にウェーハ1を保持した状態で、歪み層形成ステップST4において、プラズマ化した不活性ガスを供給して、歪み層100を形成する。その結果、ウェーハの加工方法は、プラズマエッチングステップST3後、連続して、歪み層形成ステップST4において、ゲッタリング層としての機能を発揮する歪み層100を形成するので、デバイス5にゲッタリング効果を付与することが出来る。また、ウェーハの加工方法は、プラズマエッチングステップST3と歪み層形成ステップST4とを同一のエッチング装置20の真空チャンバー25内で連続的に実施出来るので、効率的な加工となる。
また、ウェーハの加工方法は、プラズマエッチングステップST3の前にウェーハ1の裏面7に切削溝300を形成して、プラズマエッチングステップST3では、電極ポスト9の他端9-1が裏面7側に露出するまでエッチングするとともに、切削溝300を基板2の表面3まで進行させる。その結果、ウェーハの加工方法は、プラズマエッチングステップST3では、電極ポスト9の露出と基板2の分割とを行うことができ、効率的なウェーハ1の加工が可能となる。
また、ウェーハの加工方法は、プラズマエッチングステップST3を実施した後、ウェーハ1を真空チャンバー25から取り出すことなく、歪み層形成ステップST4を実施することができるので、これらのステップの間の搬送工程が不要であるため、搬送中にデバイス5毎に分割された基板2同士がこすれて破損する等のリスクを抑制することができる。
また、ウェーハの加工方法は、切削ステップST2前の保護部材配設ステップST1において、機能層4側に粘着テープ200が貼着されている。このために、切削ステップST2及び仕上げ研削ステップST6時に発生するコンタミがデバイス5に付着することを抑制することができる。
また、ウェーハの加工方法は、機能層切断ステップST5において、切削溝300の溝底に残った機能層4にレーザー光線51を照射して分割するので、Low-k膜等の機能層4が積層されたウェーハ1を個々のデバイス5に分割することができる。また、ウェーハの加工方法は、機能層切断ステップST5前の保護部材配設ステップST1において、機能層4側に粘着テープ200が貼着され、機能層切断ステップST5において、裏面7側からレーザー光線51を切削溝300の底の機能層4に照射するので、アブレーション加工時に発生するデブリがデバイス5に付着することを抑制することができる。
また、ウェーハの加工方法は、切削ステップST2において、第1切削溝301を形成した後に第1切削溝301の溝底303に第1切削溝301よりも細い第2切削溝302を形成すると共に、プラズマエッチングステップST3においてボッシュ法でウェーハ1をプラズマエッチングする。このために、ウェーハの加工方法は、プラズマエッチングステップST3のエッチングステップにおいて、SF6ガスからなるプラズマ化したエッチングガスを切削溝300の底を通してウェーハ1に引き込むことができる。その結果、ウェーハの加工方法は、効率的にウェーハ1の基板2を分割することができる。
また、ウェーハの加工方法は、プラズマエッチングステップST3において、基板2を分割予定ライン6に沿って分割するために、個々に分割されたデバイス5の側面がプラズマエッチングによって除去された面である。このために、ウェーハの加工方法は、切削加工による欠けが個々に分割されたデバイス5の側面に残らず、抗折強度が高いデバイス5を製造できる、という効果も奏する。
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係るウェーハの加工方法を図面に基づいて説明する。図18は、実施形態2に係るウェーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。図19は、実施形態2に係るウェーハの加工方法の加工対象のウェーハの断面図である。図20は、図18に示されたウェーハの加工方法の予備研削ステップを示す側断面図である。なお、図18、図19及び図20は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
実施形態2に係るウェーハの加工方法は、図18に示すように、予備研削ステップST10を備えること以外、実施形態1と同じである。また、実施形態2に係るウェーハの加工方法の加工対象のウェーハ1は、図19に示すように、電極ポスト9の他端9-1における基板2の厚さ103がプラズマエッチングステップST3で実施するボッシュ法では、電極ポスト9の他端9-1を露出することが困難な厚みである。即ち、図19に断面を示すウェーハ1は、プラズマエッチングステップST3で実施するボッシュ法では、電極ポスト9の他端9-1を裏面7から突出させることが可能な厚さよりも基板2が厚いものである。なお、前述した厚さ103は、電極ポスト9の他端9-1と裏面7との距離である。
予備研削ステップST10は、プラズマエッチングステップST3の前に、ウェーハ1の裏面7を予め研削するステップである。実施形態2において、ウェーハの加工方法は、予備研削ステップST10を保護部材配設ステップST1の後でかつ切削ステップST2の前に実施するが、本発明では、プラズマエッチングステップST3の前であれば、保護部材配設ステップST1の前又は切削ステップST2の後に実施しても良い。
予備研削ステップST10では、研削装置80が、チャックテーブル81の保持面82に粘着テープ200を介してウェーハ1の機能層4側を吸引保持する。実施形態2において、予備研削ステップST10では、図20に示すように、スピンドル83により粗研削用の研削ホイール84を回転しかつチャックテーブル81を軸心回りに回転しながら研削水を供給するとともに、粗研削用砥石85をチャックテーブル81に所定の送り速度で近づけることによって、粗研削用砥石85でウェーハ1の裏面7を粗研削する。なお、図20は、デバイス5を省略している。
予備研削ステップST10では、前述した厚さ103がプラズマエッチングステップST3において電極ポスト9の他端9-1を裏面7側に突出可能な厚みになるまで、ウェーハ1を研削する。実施形態2において、ウェーハの加工方法は、厚さ103がプラズマエッチングステップST3において電極ポスト9の他端9-1を裏面7側に突出可能な厚みになるまでウェーハ1を研削すると切削ステップST2に進む。なお、実施形態2では、ウェーハ1の裏面7を粗研削用砥石85で粗研削したが、本発明は、予備研削ステップST10において、粗研削の後に、図示しない仕上げ研削用砥石を用いて、ウェーハ1の裏面7を仕上げ研削しても良く、粗研削することなく仕上げ研削用砥石を用いてウェーハ1の裏面7を仕上げ研削しても良い。
実施形態2に係るウェーハの加工方法は、切削ステップST2において裏面7から分割予定ライン6に沿って切削溝300を形成した後、プラズマエッチングステップST3において裏面7側からプラズマエッチングするので、マスクを不要としたプラズマダイシングを実現することができる。その結果、ウェーハの加工方法は、実施形態1と同様に、コストを抑制しながらもウェーハ1にプラズマエッチングを行ってウェーハ1を個々のデバイス5に分割することができる。
また、実施形態2に係るウェーハの加工方法は、プラズマエッチングステップST3の前に予備研削ステップST10を実施してウェーハ1を薄化するので、プラズマエッチングステップST3時のウェーハ1の基板2の除去量を抑制することができるとともに、プラズマエッチングステップST3後に電極ポスト9の他端9-1を裏面7側に露出させることができる。その結果、実施形態2に係るウェーハの加工方法は、プラズマエッチングステップST3において発生する所謂アウトガスの量を抑制することができるとともに、プラズマエッチングステップST3後に、電極ポスト9を露出させるために研削加工等を行う必要が生じない。
また、実施形態2に係るウェーハの加工方法は、切削ステップST2の前に予備研削ステップST10を実施してウェーハ1の裏面7を研削するので、予備研削ステップST10の前においてウェーハ1の裏面7が梨地面(細かい凹凸を有する面)であっても、切削ステップST2の前に裏面7を平坦化することができる。その結果、実施形態2に係るウェーハの加工方法は、切削ステップST2において、赤外線カメラが撮像した画像に基づいてアライメントを遂行した際の切削ブレード12-1,12-2と分割予定ライン6との位置ずれを抑制することができる。
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3に係るウェーハの加工方法を図面に基づいて説明する。図21は、実施形態3に係るウェーハの加工方法のプラズマエッチングステップ及び歪み層形成ステップで用いられるエッチング装置の構成を示す断面図である。なお、図21は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
実施形態3に係るウェーハの加工方法は、プラズマエッチングステップST3で用いられる図21に示すエッチング装置20-3の構成が、エッチング装置20と異なること以外、実施形態1と同じである。
エッチング装置20-3は、電極28,31に高周波電力を印加して密閉空間27内でエッチングガス及び不活性ガスをプラズマ化するものではなく、プラズマ化したエッチングガス及び不活性ガスを真空チャンバー25内の密閉空間27に導入するリモートプラズマ方式のプラズマエッチング装置である。エッチング装置20-3は、図21に示すように、図示しない不活性ガス供給ユニットから不活性ガスが供給される配管45が真空チャンバー25の外壁を貫通して接続している。なお、不活性ガス供給ユニットが供給する不活性ガスは、アルゴンガス(Ar)、ヘリウムガス(He)等の希ガスや、希ガスに窒素ガス(N2)、又は水素ガス(H2)等を混合した混合ガス等で構成することができる。
また、エッチング装置20-3は、図21に示すように、ガス供給ユニット40,43,44からのエッチングガス又は不活性ガスが供給される供給管46が真空チャンバー25の上壁に貫通して接続し、供給管46内を流れるガスに高周波電力を加えるための電極47が供給管46に設けられている。供給管46は、ガス供給ユニット40,43,44から供給されるガスを真空チャンバー25内の密閉空間27に導入する。電極47は、高周波電源42から高周波電力が印加されて、供給管46内を流れるガスをプラズマ化する。また、エッチング装置20-3は、供給管46から密閉空間27に供給されるプラズマ化されたガスを分散させる分散部材48を備える。
実施形態3に係るウェーハの加工方法は、実施形態1と同様に、プラズマエッチングステップST3において、エッチング装置20-3の制御ユニット22が、ウェーハ1を真空チャンバー25内の密閉空間27に収容した後、チャックテーブル21上に吸着保持する。実施形態3に係るウェーハの加工方法のプラズマエッチングステップST3では、制御ユニット22が、ガス排出ユニット35を作動して密閉空間27を真空排気するとともに、不活性ガス供給ユニットを作動して密閉空間27内に不活性ガスを供給し、密閉空間27の圧力を所定の圧力に維持するとともに、冷媒供給ユニット36を作動させてヘリウムガスを循環させて、下部電極28の異常昇温を抑制する。
実施形態3に係るウェーハの加工方法は、プラズマエッチングステップST3において、実施形態1と同様に、ボッシュ法でウェーハ1をプラズマエッチングする。なお、プラズマエッチングステップST3のエッチングステップでは、制御ユニット22は、SF6ガス供給ユニット40を作動するとともに高周波電源42から電極47にプラズマを作り維持する高周波電力を印加して、SF6ガスをプラズマ化して、供給管46から下部電極28のチャックテーブル21上に保持されたウェーハ1に向けて噴出する。そして、制御ユニット22は、高周波電源42から下部電極28にイオンを引き込むための高周波電力を印加して、ウェーハ1の裏面7、切削溝301,302の内面及び切削溝300の底304をエッチングする。
また、プラズマエッチングステップST3の被膜堆積ステップでは、制御ユニット22は、C4F8ガス供給ユニット43を作動しC4F8ガスを高周波電源42から電極47に印加する高周波電力でプラズマ化して、供給管46から下部電極28のチャックテーブル21上に保持されたウェーハ1に向けて噴出する。そして、制御ユニット22は、高周波電源42から下部電極28にイオンを引き込むための高周波電力を印加して、ウェーハ1に被膜を堆積させる。
実施形態3に係るウェーハの加工方法は、歪み層形成ステップST4では、エッチング装置20がプラズマエッチングステップST3から続いてチャックテーブル21上にウェーハ1を吸着保持し、密閉空間27の圧力を所定の圧力に維持するとともに、下部電極28の異常昇温を抑制したまま、不活性ガス供給ユニット44を作動する。実施形態3に係るウェーハの加工方法は、歪み層形成ステップST4では、エッチング装置20が不活性ガス供給ユニット44から供給された供給管46内の不活性ガスを高周波電源42から電極47に印加する高周波電力でプラズマ化して、供給管46から下部電極28のチャックテーブル21上に保持されたウェーハ1に向けて噴出する。そして、制御ユニット22は、高周波電源42から下部電極28にイオンを引き込むための高周波電力を印加して、ウェーハ1の裏面7及び切削溝300の内面にプラズマ化した不活性ガスを衝突させて、実施形態1と同様に、裏面7及び切削溝300の内面の表層に歪み層100を形成する。
実施形態3に係るウェーハの加工方法は、切削ステップST2において裏面7から分割予定ライン6に沿って切削溝300を形成した後、プラズマエッチングステップST3において裏面7側からプラズマエッチングするので、マスクを不要としたプラズマダイシングを実現することができる。その結果、ウェーハの加工方法は、実施形態1と同様に、コストを抑制しながらもウェーハ1にプラズマエッチングを行ってウェーハ1を個々のデバイス5に分割することができる。
また、実施形態3に係るウェーハの加工方法は、プラズマエッチングステップST3及び歪み層形成ステップST4において、リモートプラズマ方式のエッチング装置20-3を用いるので、エッチング装置20-3ではプラズマ化したガスに混入するイオンが供給管46の内面に衝突して真空チャンバー25内の密閉空間27に到達することを抑制できるので、より幅の狭い切削溝300であっても基板2をデバイス5毎に分割することができる。
なお、実施形態3に係るウェーハの加工方法は、実施形態2と同様に、予備研削ステップST10を実施しても良い。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、本発明では、分割予定ライン6に形成される機能層4、金属膜及びTEGを切削ステップST2の前に、表面からレーザー光線を照射して、アブレーションで除去しても良い。また、本発明では、プラズマエッチングステップST3において、プラズマエッチングガスに樹脂で構成される機能層4をエッチングするために酸素ガスを混入しても良い。この場合、機能層切断ステップST5を実施することなく、切削溝300の底に残った機能層4を除去することができる。若しくは、本発明は、酸素ガスによって機能層4を部分的に除去し、径方向に拡張する外力を加える事で(具体的には、粘着テープ200を拡張する事で)部分的に除去された部分を破断起点に機能層4を引きちぎって分割しても良い。また、本発明は、ウェーハ1の裏面7に予め酸化被膜が形成されている場合、プラズマエッチングステップST3において、この酸化被膜をマスクとしてプラズマエッチングを行っても良い。また、本発明は、デバイス5のサイズが上記実施形態に記載されたものに限定されない。