図1~図4を参照して、本発明の非水液状物質の精製方法について説明する。図1は、本発明の非水液状物質の精製方法に用いられるイオン交換樹脂充填カートリッジの形態例を示す模式的な端面図であり、イオン交換樹脂充填工程を行った後のイオン交換樹脂充填カートリッジの様子を示す図である。図2は、図1中のイオン交換樹脂充填カートリッジ20aを構成する部材を示す斜視図である。図3は、初期ブロー工程を行っている様子を示す模式的な端面図である。図4は、精製工程を行っている様子を示す模式的な端面図である。
図1に示すイオン交換樹脂充填カートリッジ20aは、非水液状物質中の金属をイオン交換樹脂により除去するための金属除去カラムに、交換可能に取り付けられるカートリッジである。イオン交換樹脂充填カートリッジ20aは、水湿潤状態の粒状のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂(又はゲル型イオン交換樹脂)1aが充填されている筒部2と、被処理液(未精製の非水液状物質)の通過孔7が形成されており、筒部2の上端に設けられる上蓋3と、処理液(精製後の非水液状物質)の通過孔8が形成されており、筒部2の下端に設けられる下蓋4と、下蓋に繋がり、金属除去カラムの収納容器の底部に設けられている処理液排出管の内側に挿通するための挿通管5と、筒部2の内部に充填されている粒状のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂(又はゲル型イオン交換樹脂)1aと、を有する。金属除去カラムの処理液排出管の内壁とイオン交換樹脂充填カートリッジ20aの挿通管5の外側との間を密閉するために、挿通管5の外側には、Oリング付設用溝51が形成されている。Oリング6は、そのOリング付設用溝51に嵌め込まれて、付設されている。なお、図1に示す形態例では、下蓋4と挿通管5とは、一体成形されている。また、図1に示す形態例では、筒部2、上蓋3及び挿通管5が付設されている下蓋4が、カートリッジ容器である。また、筒部2の内側の上端側には、上端側管径縮小部11が形成されており、且つ、筒部2の内側の下端側には、下端側管径縮小部12が形成されている。そして、マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂(又はゲル型イオン交換樹脂)1aが筒部2から外に流出するのを防ぐために、イオン交換樹脂の充填領域の上端には、メッシュ9が、上端側管径縮小部11と上蓋3との間に、外縁部が挟み込まれることにより付設され、且つ、イオン交換樹脂の充填領域の下端には、メッシュ10が、下端側管径縮小部12と上蓋4との間に、外縁部が挟み込まれることにより付設されている。なお、メッシュ9及びメッシュ10は、被処理液を透過し且つ粒状のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂(又はゲル型イオン交換樹脂)1aを透過させない程度の大きさの隙間を有する。
図2に示すように、イオン交換樹脂充填カートリッジ20aの組み立てでは、先ず、メッシュ10を筒部2の下端内側に配置させた状態で、挿通管5と共に一体成形された下蓋4を、筒部2の下端側にねじ込み、嵌め込む。このとき、メッシュ10は、その外縁部が、下端側管径縮小部12と下蓋4との間に挟み込まれて、固定される。次いで、筒部2内に水湿潤状態の粒状のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂(又はゲル型イオン交換樹脂)1a(図示しない。)を充填する。次いで、メッシュ9を筒部2の上端内側に配置させた状態で、上蓋3を、筒部2の上端側にねじ込み、嵌め込む。このとき、メッシュ9は、その外縁部が、上端側管径縮小部11と上蓋3との間に挟み込まれて、固定される。次いで、Oリング6を、挿通管5に形成されているOリング付設用溝51に付設する。
そして、イオン交換樹脂充填工程を行うことにより、カートリッジ容器に、水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂(又はゲル型イオン交換樹脂)が充填されているイオン交換樹脂充填カートリッジを作製する。
次いで、イオン交換樹脂充填工程を行い得られたイオン交換樹脂充填カートリッジ20a、すなわち、カートリッジ容器に、水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂(又はゲル型イオン交換樹脂)1aが充填されているイオン交換樹脂充填カートリッジ20aを用いて、含水率低減工程を行う。先ず、カートリッジ容器に、水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂(又はゲル型イオン交換樹脂)1aが充填されているイオン交換樹脂充填カートリッジ20aを、減圧乾燥装置内に静置する。次いで、減圧乾燥装置内を減圧し、所定の減圧度に達した後、カートリッジ容器ごと、湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂(又はゲル型イオン交換樹脂)1aを加熱して、減圧乾燥する。このとき、水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂(又はゲル型イオン交換樹脂)1aの表面及びその近傍から内部に向かって水分の蒸発が進行し、水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂(又はゲル型イオン交換樹脂)1aの含水率が低減する。そして、水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂(又はゲル型イオン交換樹脂)1aの含水率が、所定の含水率となるまで、水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂(又はゲル型イオン交換樹脂)1aの減圧乾燥を行い、所定の含水率である含水率低減後のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂(又はゲル型イオン交換樹脂)1bに変換する。このようにして、含水率低減工程を行うことにより、カートリッジ容器に、含水率低減後のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂(又はゲル型イオン交換樹脂)1bが充填されているイオン交換樹脂充填カートリッジ20bにする。
次いで、図3に示すように、含水率低減工程を行い得られたイオン交換樹脂充填カートリッジ20bを、金属除去カラム30の収納容器21内に設置し、金属除去カラム30を組み立てる。金属除去カラム30は、収納容器21と、収納容器21に形成され、収納容器の内側に被処理液(未精製の非水液状物質)を供給するための被処理液供給口22と、収納容器21の底側に付設され、収納容器21の内側と連通し、処理液(精製後の非水液状物質)を排出するための処理液排出管23と、収納容器21内に収納されているイオン交換樹脂充填カートリッジ20bと、を有する。そして、処理液排出管23の内側に、イオン交換樹脂充填カートリッジ20bの挿通管5が挿通され、挿通管5の外側に付設されているOリング6が、処理液排出管23の内壁24とイオン交換樹脂充填カートリッジ20の挿通管5の外側とに密着することにより、処理液排出管23の内壁と挿通管5の外側との間が密閉されている。また、被処理液供給口22には、連結管28が付設されている。そして、連結管28には、被処理液(未精製の非水液状物質)31の輸液管26の管端がねじ込まれて、被処理液(精製後の非水液状物質)31の輸液管26が繋がれる。また、処理液排出管23には、処理液の輸液管25の管端がねじ込まれて、処理液の輸液管25が繋がれる。また、処理液の輸液管25には、初期ブロー廃液311を外に排出するために、処理液の輸液管25から分岐する初期ブロー廃液311の排出管(図示しない。)が付設されている。
次いで、被処理液(未精製の非水液状物質)31を、被処理液31の貯蔵タンク等から、金属除去カラム30に繋がれている被処理液の輸液管26を通して、金属除去カラム30まで運び、被処理液供給口22を経て、金属除去カラム30の収納容器21内に供給する。次いで、収納容器21内に供給した被処理液31で、先ず、イオン交換樹脂充填カートリッジ20bの筒部2と金属除去カラム30の収納容器21との間の空間27を充填させ、その後、イオン交換樹脂充填カートリッジ20bの上蓋3に形成されている被処理液の通過孔7を通って、イオン交換樹脂充填カートリッジ20bのカートリッジ容器内に流入させる。次いで、イオン交換樹脂充填カートリッジ20bのカートリッジ容器内に流入させた被処理液31を、カートリッジ容器内に充填されているマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂(又はゲル型イオン交換樹脂)1bと接触させながら、イオン交換樹脂の充填領域を通過させ、そして、筒部2の下蓋4に形成されている処理液の通過孔(図1中、符号8)を通して、イオン交換樹脂充填カートリッジ20bのカートリッジ容器の外に排出する。イオン交換樹脂充填カートリッジ20bのカートリッジ容器の外に排出した初期ブロー廃液311を、金属除去カラム30に繋がれている処理液の輸液管25から分岐する初期ブロー廃液排出管より排出する。このとき、初期ブロー廃液が、ユースポイント又は処理液の貯蔵タンクに流れ込まないように、処理液の輸液管25に付設されている切り替えバルブを操作して、初期ブロー廃液311の輸送経路を、初期ブロー廃液排出管側に切り替えておく。そして、初期ブロー廃液311中の水分濃度(mgH2O/g非水液状物質)が所定の濃度となるまで、あるいは、予め定めた初期ブロー量となるまで、含水率低減後のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂(又はゲル型イオン交換樹脂)1bと被処理液(未精製の非水液状物質)31の接触を続ける。非水液状物質中の水分濃度については、カールフィッシャー電量滴定方式で分析することが望ましい。
このようにして、初期ブロー工程を行うことにより、マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂(又はゲル型イオン交換樹脂)を、初期ブロー後のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂(又はゲル型イオン交換樹脂)1cに変換する。
次いで、処理液の輸液管25に付設されている切り替えバルブを操作して、処理液の輸送経路を、ユースポイント又は処理液の貯蔵タンク側に切り替えてから、図4に示すように、被処理液(未精製の非水液状物質)31を、被処理液31の貯蔵タンク等から、金属除去カラム30に繋がれている被処理液の輸液管26を通して、金属除去カラム30まで運び、被処理液供給口22を経て、金属除去カラム30の収納容器21内に供給する。次いで、収納容器21内に供給した被処理液31で、先ず、イオン交換樹脂充填カートリッジ20cの筒部2と金属除去カラム30の収納容器21との間の空間27を通過させ、その後、イオン交換樹脂充填カートリッジ20cの上蓋3に形成されている被処理液の通過孔7を通って、イオン交換樹脂充填カートリッジ20cのカートリッジ容器内に流入させる。次いで、イオン交換樹脂充填カートリッジ20cのカートリッジ容器内に流入させた被処理液31を、カートリッジ容器内に充填されているマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂(又はゲル型イオン交換樹脂)1cと接触させながら、イオン交換樹脂の充填領域を通過させ、そして、筒部2の下蓋4に形成されている処理液の通過孔(図1中、符号8)を通して、イオン交換樹脂充填カートリッジ20cのカートリッジ容器の外に排出する。イオン交換樹脂充填カートリッジ20cのカートリッジ容器の外に排出した処理液(精製後の非水液状物質)32を、金属除去カラム30に繋がれている処理液の輸液管25を介してユースポイント又は処理液の貯蔵タンクまで運ぶ。このようにして、精製工程を行うことにより、精製後の非水液状物質を得る。
本発明の第一の形態の非水液状物質の精製方法は、マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂に非水液状物質を接触させて、該非水液状物質から不純物を除去する非水液状物質の精製方法であって、
水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂をカートリッジ容器に充填し、含水率低減前の該マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂が充填されたイオン交換樹脂充填カートリッジを得るイオン交換樹脂充填工程と、
含水率低減後の前記マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の含水率(A)が、前記マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(B)の10.0~97.0%となるまで、前記カートリッジ容器内の前記マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の含水率を低減させる含水率低減工程と、
含水率低減後の前記マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂が充填されている前記カートリッジ容器内に、未精製の前記非水液状物質を通液し、前記カートリッジ容器内から初期ブロー廃液を排出する初期ブロー工程と、
前記カートリッジ容器内に、未精製の前記非水液状物質を通液することにより、前記カートリッジ容器内の前記マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂に未精製の前記非水液状物質を接触させて、前記非水液状物質の精製を行い、精製された前記非水液状物質を得る精製工程と、
を有することを特徴とする非水液状物質の精製方法である。
本発明の第一の形態の非水液状物質の精製方法は、イオン交換樹脂に、被処理液である未精製の非水液状物質を接触させて、未精製の非水液状物質から不純物を除去する非水液状物質の精製方法である。本発明の第一の形態の非水液状物質の精製方法において、精製対象は、未精製の非水液状物質である。未精製の非水液状物質、すなわち、被処理液としては、IPA(イソプロパノール)、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、PGEE(プロピレングリコールモノエチルエーテル)、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)等の有機溶媒が挙げられる。未精製の非水液状物質中の不純物として、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、As、Cd、Pb等の金属イオン、Cl、SO4、NO3、PO4、CO3、HCO3等のアニオン、ギ酸、酢酸、マレイン酸、プロプオン酸等の有機酸、プラスないしマイナスの荷電を持つ高分子化合物が挙げられる。
本発明の第一の形態の非水液状物質の精製方法において、非水液状物質を精製するために用いられるイオン交換樹脂は、粒状のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂である。マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂としては、マクロポーラス型又はポーラス型カチオン交換樹脂、マクロポーラス型又はポーラス型アニオン交換樹脂、マクロポーラス型又はポーラス型カチオン交換樹脂とマクロポーラス型又はポーラス型アニオン交換樹脂の組み合わせが挙げられる。マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂が、マクロポーラス型又はポーラス型カチオン交換樹脂とマクロポーラス型又はポーラス型アニオン交換樹脂の組み合わせの場合、マクロポーラス型又はポーラス型カチオン交換樹脂とマクロポーラス型又はポーラス型アニオン交換樹脂が均一に混合されている混床として用いる場合と、マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の充填領域の上流側に、マクロポーラス型又はポーラス型カチオン交換樹脂が充填され、且つ、マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の充填領域の下流側に、マクロポーラス型又はポーラス型アニオン交換樹脂が充填されているか、又はマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の充填領域の上流側に、マクロポーラス型又はポーラス型アニオン交換樹脂が充填され、且つ、マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の充填領域の下流側に、マクロポーラス型又はポーラス型カチオン交換樹脂が充填されている複床として用いる場合がある。
マクロポーラス型又はポーラス型カチオン交換樹脂は、マクロポーラス型又はポーラス型の強酸性カチオン交換樹脂であっても、マクロポーラス型又はポーラス型の弱酸性カチオン交換樹脂であっても、それらの併用であってもよい。マクロポーラス型又はポーラス型の強酸性カチオン交換樹脂としては、オルライトDS-4等が挙げられる。また、マクロポーラス型又はポーラス型の弱酸性カチオン交換樹脂としては、アンバーライトIRC76、アンバーライトIRC747、アンバーライトIRC748等が挙げられる。
マクロポーラス型又はポーラス型アニオン交換樹脂は、マクロポーラス型又はポーラス型の強塩基性アニオン交換樹脂であっても、マクロポーラス型又はポーラス型の弱塩基性アニオン交換樹脂であっても、それらの併用であってもよい。マクロポーラス型又はポーラス型の強塩基性アニオン交換樹脂としては、オルライトDS-5等が挙げられる。また、マクロポーラス型又はポーラス型の弱塩基性アニオン交換樹脂としては、オルライトDS-6等が挙げられる。
乾燥状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の平均粒径は、特に制限されないが、好ましくは200~1000μm、特に好ましくは400~800μmである。なお、乾燥状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定される値である。
マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂は、通常、水を含んだ状態で製造され、また、販売、流通、使用場所でのイオン交換樹脂の充填時等でも、水を含んだ状態で存在している。そして、本発明においては、水を含んだ状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂を、「水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂」と呼び、水湿潤状態のうち、25℃における相対湿度100%の状態において含水量が飽和したときの状態を「飽和平衡状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂」と呼ぶ。適宜の乾燥方法により、乾燥され、含水率が0質量%のときの状態を「乾燥状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂」と呼ぶ。
飽和平衡状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂は、25℃で相対湿度100%の大気に、30分以上接触させて、マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂を飽和状態にさせて得られる。乾燥状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂は水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂を恒温乾燥器で105℃、16時間乾燥させることで得られる。飽和平衡状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の含水率(%)(B)は、「((乾燥前の飽和平衡状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の重量-乾燥状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の重量)/乾燥前の飽和平衡状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の重量)×100」の式により求められる。なお、乾燥前の飽和平衡状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の採取量は、測定の正確さを高めるため、5g以上であることが好ましい。
含水率低減後のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の含水率(%)(A)も同様に、測定対象となる樹脂を5g以上量り取り、量り取った樹脂を恒温乾燥器で105℃、16時間乾燥させ、「((含水率低減後のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の重量-乾燥状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の重量)/含水率低減後のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の重量)×100」の式により求められる。
また、含水率低減前のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の含水率(%)(C)も同様に、測定対象となる樹脂を5g以上量り取り、量り取った樹脂を恒温乾燥器で105℃、16時間乾燥させ、「((含水率低減前のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の重量-乾燥状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の重量)/含水率低減前のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の重量)×100」の式により求められる。
本発明の第一の形態の非水液状物質の精製方法に係るイオン交換樹脂充填工程は、水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂をカートリッジ容器に充填し、含水率低減前のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂が充填されたイオン交換樹脂充填カートリッジを得る工程である。
本発明の第一の形態の非水液状物質の精製方法のイオン交換樹脂充填工程に係るカートリッジ容器は、水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂が内部に充填されるイオン交換樹脂の充填容器である。カートリッジ容器としては、特に制限されず、例えば、イオン交換樹脂充填カートリッジが設置される金属除去カラムの形状等により、適宜選択されるが、通常、円筒状の部材と、円筒状の部材の両端を塞ぐ蓋部材と、からなる。カートリッジ容器の一方の端部には、未精製の非水液状物質(被処理液)をカートリッジ容器内に供給するための被処理液供給口が形成され、また、カートリッジ容器の他方の端部には、精製後の非水液状物質(処理液)をカートリッジ容器内から排出するための被処理液排出口が形成されている。
カートリッジ容器の材質としては、特に制限されず、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等が挙げられる。カートリッジ容器の材質は、被処理液の種類、溶解物質の種類等により、適宜選択される。
本発明の第一の形態の非水液状物質の精製方法のイオン交換樹脂充填工程において、カートリッジ容器内に充填されるイオン交換樹脂は、水湿潤状態のイオン交換樹脂である。イオン交換樹脂充填工程において、カートリッジ容器内に充填される水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂、すなわち、含水率低減前のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の含水率(C)は、好ましくはマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(B)の95~100%、特に好ましくは98~100%である。通常、工業的に製造されるマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の含水率は、マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(B)の95~100%であり、また、市販されているマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の含水率は、マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(B)の95~100%である。そのため、イオン交換樹脂充填工程では、工業的に製造された水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂や、市販されている水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂が、好適に用いられる。なお、「水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の含水率(C)が、好ましくはマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(B)の95~100%、特に好ましくは98~100%である」とは、(「イオン交換樹脂充填工程において実際に充填される水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂、すなわち、含水率低減前のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の含水率(C)」/「マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(B)」)×100で計算される百分率が、好ましくは95~100%、特に好ましくは98~100%であることを指す。
本発明の第一の形態の非水液状物質の精製方法のイオン交換樹脂充填工程において、カートリッジ容器内に、水湿潤状態のイオン交換樹脂を充填する方法は、特に制限されず、充填時に異物が混入しない方法が適宜選択される。
本発明の第一の形態の非水液状物質の精製方法のイオン交換樹脂充填工程を行うことにより得られるイオン交換樹脂充填カートリッジは、カートリッジ容器に水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂が充填されているイオン交換樹脂充填カートリッジである。イオン交換樹脂充填工程を行うことにより得られるイオン交換樹脂充填カートリッジは、含水率低減工程を行う前のイオン交換樹脂充填カートリッジであるので、イオン交換樹脂充填工程を行うことにより得られるイオン交換樹脂充填カートリッジは、言い換えると、カートリッジ容器に含水率低減前のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂が充填されているイオン交換樹脂充填カートリッジである。
本発明の第一の形態の非水液状物質の精製方法に係る含水率低減工程は、含水率低減後のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の含水率(A)が、マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(B)の10.0~97.0%、好ましくは10.0%以上90.0%未満となるまで、カートリッジ容器内のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の含水率を低減させる工程である。なお、「含水率低減後のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の含水率(A)が、マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(B)の10.0~97.0%、好ましくは10.0%以上90.0%未満となるまで」とは、(「含水率低減工程において含水率低減後のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の含水率(A)」/「マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(B)」)×100で計算される百分率が、10.0~97.0%、好ましくは10.0%以上90.0%未満となるまでということを指す。
本発明の第一の形態の非水液状物質の精製方法では、カートリッジ容器内を、不活性ガスを通過させて、カートリッジ容器内のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂に不活性ガスを接触させことより、含水率低減工程(以下、このような形態を、含水率低減工程(A1)とも記載する。)を行うことができる。
含水率低減工程(A1)に係る不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等が挙げられる。不活性ガスの純度は、高いほど好ましいが、99.9体積%以上であればよい。不活性ガスの露点は、好ましくは-50℃以下、特に好ましくは-60℃以下である。
含水率低減工程(A1)において、カートリッジ容器に充填されているイオン交換樹脂が、カチオン交換樹脂のみの場合、カートリッジ容器内に不活性ガスを供給するときの不活性ガスの温度は、好ましくは0~120℃、特に好ましくは60~110℃である。また、含水率低減工程(A1)において、カートリッジ容器に充填されているイオン交換樹脂が、アニオン交換樹脂のみの場合又はカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂の組み合わせの場合、カートリッジ容器内に不活性ガスを供給するときの不活性ガスの温度は、好ましくは0~60℃、特に好ましくは30~50℃である。
含水率低減工程(A1)では、不活性ガスが、水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂に接触することにより、水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の水分が蒸発して不活性ガスに移行して、水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の含水率が低減する。このとき、水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の表面及びその近傍に存在している水分から内部に向かって水分の蒸発が進行する。
そして、含水率低減工程(A1)では、含水率低減後のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の含水率(A)が、マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(B)の10.0~97.0%、好ましくは10.0%以上90.0%未満となるまで、水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂への不活性ガスの接触を続け、水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂を、所定の含水率である含水率低減後のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂に変換させる。
含水率低減工程(A1)において、カートリッジ容器内に、不活性ガスを通過させて、カートリッジ容器内のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂に不活性ガスを接触させる方法としては、特に制限されず、カートリッジ容器の一端側から、不活性ガスが、カートリッジ容器内に供給されつつ、カートリッジ容器の他端側より、不活性ガスがカートリッジ容器内から排出される方法であればよい。
含水率低減工程(A1)に用いて、マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂中の水分を含んだ不活性ガスを、不活性ガスの脱水装置で処理して、不活性ガス中の含水量を低減させ、再び、含水率低減工程(A1)で、カートリッジ容器内に供給する不活性ガスとして使用することもできる。
また、本発明の第一の形態の非水液状物質の精製方法では、カートリッジ容器内を減圧して、マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂を減圧乾燥することにより、含水率低減工程(以下、このような形態を、含水率低減工程(A2)とも記載する。)を行うことができる。
含水率低減工程(A2)において、減圧乾燥するときの絶対圧力は、-0.05MPa以下が好ましい。含水率低減工程(A2)において、カートリッジ容器に充填されているイオン交換樹脂が、カチオン交換樹脂のみの場合、減圧乾燥するときの温度は、好ましくは0~120℃、特に好ましくは60~110℃である。また、含水率低減工程(A2)において、カートリッジ容器に充填されているイオン交換樹脂が、アニオン交換樹脂のみの場合又はカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂の組み合わせの場合、減圧乾燥するときの温度は、好ましくは0~60℃、特に好ましくは30~50℃である。被処理樹脂を上記加熱減圧乾燥条件におくには、公知の真空乾燥機を用いればよい。
含水率低減工程(A2)では、水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂を減圧乾燥することにより、水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の水分が蒸発して、水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の含水率が低減する。このとき、水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の表面及びその近傍に存在している水分から内部に向かって水分の蒸発が進行する。
そして、含水率低減工程(A2)では、含水率低減後のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の含水率(A)が、マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(B)の10.0~97.0%、好ましくは10.0%以上90.0%未満となるまで、水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の減圧乾燥を行い、水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂を、所定の含水率である含水率低減後のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂に変換させる。
含水率低減工程(A2)において、水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂を減圧乾燥する方法としては、特に制限されず、例えば、イオン交換樹脂充填カートリッジを、減圧乾燥装置に静置し、減圧乾燥装置内を減圧し、あるいは、減圧乾燥装置内を減圧すると共に加熱して、減圧乾燥を行う方法が挙げられる。なお、減圧乾燥後、減圧乾燥装置内を常圧に戻すときには、大気中の不純物が混入しないように、高純度の不活性ガスを減圧装置内に導入することによって、常圧にすることが好ましい。
また、本発明の第一の形態の非水液状物質の精製方法では、マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂が充填されたイオン交換樹脂充填カートリッジを、不活性ガス雰囲気の加熱装置内で加熱することにより、含水率低減工程(以下、このような形態を、含水率低減工程(A3)とも記載する。)を行うことができる。
含水率低減工程(A3)において、カートリッジ容器に充填されているイオン交換樹脂が、カチオン交換樹脂のみの場合、イオン交換樹脂充填カートリッジを加熱するときの加熱温度は、好ましくは0~120℃、特に好ましくは60~110℃である。また、含水率低減工程(A3)において、カートリッジ容器に充填されているイオン交換樹脂が、アニオン交換樹脂のみの場合又はカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂の組み合わせの場合、イオン交換樹脂充填カートリッジを加熱するときの加熱温度は、好ましくは0~60℃、特に好ましくは30~50℃である。
含水率低減工程(A3)では、水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂を加熱することにより、水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の水分が蒸発して、水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の含水率が低減する。このとき、水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の表面及びその近傍に存在している水分から内部に向かって水分の蒸発が進行する。
そして、含水率低減工程(A3)では、含水率低減後のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の含水率(A)が、マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(B)の10.0~97.0%、好ましくは10.0%以上90.0%未満となるまで、水湿潤状態のイオン交換樹脂の加熱を行い、水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂を、所定の含水率である含水率低減後のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂に変換させる。
含水率低減工程(A3)において、水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂を加熱する方法としては、特に制限されず、イオン交換樹脂充填カートリッジを、不活性ガス雰囲気の加熱装置内で加熱することができる方法であればよい。
このようにして、本発明の第一の形態の非水液状物質の精製方法に係る含水率低減工程を行うことにより、水湿潤状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂(含水率低減前のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂)が、含水率が所定の値であるマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂(含水率低減後のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂)へと変換し、カートリッジ容器に、含水率低減後のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂が充填されているイオン交換樹脂充填カートリッジが得られる。そして、含水率低減工程において、含水率の低減の度合いを、含水率低減後のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の含水率(A)が、マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(B)の10.0~97.0%、好ましくは10.0%以上90.0%未満となるまでとすることにより、含水率低減工程(A1)、含水率低減工程(A2)、含水率低減工程(A3)等の簡便な方法で含水率の低減が行え、且つ初期ブロー廃液の量を少なくすることができる。一方、マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(B)に対する含水率低減後のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の含水率(A)が、上記範囲を超えると、初期ブロー廃液の量が多くなってしまう。また、マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(B)に対する含水率低減後のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の含水率(A)が、上記範囲未満だと、初期ブロー廃液の量は減少するものの、マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の含水率低減にかかる時間が長くなり、あるいは、コストが高くなる。
本発明の第一の形態の非水液状物質の精製方法に係る初期ブロー工程は、含水率低減後のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂が充填されているカートリッジ容器内に、未精製の非水液状物質を通液し、カートリッジ容器内から初期ブロー廃液を排出する工程である。
本発明の第一の形態の非水液状物質の精製方法に係る初期ブロー工程は、非水液状物質を精製する前に行う前処理工程であり、主に、マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂が含有する水分を非水液状物質に置換することで含水率を低減し、マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂から非水液状物質に溶出する水分を低減することで正常な精製が行える状態にすることを目的として行われる。
そして、本発明の第一の形態の非水液状物質の精製方法に係る初期ブロー工程では、イオン交換充填カートリッジが所定の状態となるまで、含水率低減後のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂が充填されているカートリッジ容器内への未精製の非水液状物質の通液を続ける。このとき、初期ブロー廃液が生じる。
本発明の第一の形態の非水液状物質の精製方法に係る精製工程は、初期ブロー工程が施されたイオン交換樹脂充填カートリッジのカートリッジ容器内に、未精製の非水液状物質を通液することにより、カートリッジ容器内のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂に未精製の非水液状物質を接触させて、非水液状物質の精製を行い、精製された非水液状物質を得る工程である。
そして、本発明の第一の形態の非水液状物質の精製方法に係る精製工程を行うことにより、不純物が除去された高純度の非水液状物質が得られる。
本発明の第二の形態の非水液状物質の精製方法は、ゲル型イオン交換樹脂に非水液状物質を接触させて、該非水液状物質から不純物を除去する非水液状物質の精製方法であって、
水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂をカートリッジ容器に充填し、含水率低減前の該ゲル型イオン交換樹脂が充填されたイオン交換樹脂充填カートリッジを得るイオン交換樹脂充填工程と、
含水率低減後の前記ゲル型イオン交換樹脂の含水率(F)が、前記ゲル型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(G)の10.0~65.0%となるまで、前記カートリッジ容器内の前記ゲル型イオン交換樹脂の含水率を低減させる含水率低減工程と、
含水率低減後の前記ゲル型イオン交換樹脂が充填されている前記カートリッジ容器内に、未精製の前記非水液状物質を通液し、前記カートリッジ容器内から初期ブロー廃液を排出する初期ブロー工程と、
前記カートリッジ容器内に、未精製の前記非水液状物質を通液することにより、前記カートリッジ容器内の前記ゲル型イオン交換樹脂に未精製の前記非水液状物質を接触させて、前記非水液状物質の精製を行い、精製された前記非水液状物質を得る精製工程と、
を有することを特徴とする非水液状物質の精製方法である。
本発明の第二の形態の非水液状物質の精製方法は、イオン交換樹脂に、被処理液である未精製の非水液状物質を接触させて、未精製の非水液状物質から不純物を除去する非水液状物質の精製方法である。本発明の第二の形態の非水液状物質の精製方法において、精製対象は、未精製の非水液状物質である。本発明の第二の形態の非水液状物質の精製方法に係る未精製の非水液状物質(被処理液)及び未精製の非水液状物質中の不純物は、本発明の第一の形態の非水液状物質の精製方法に係る未精製の非水液状物質(被処理液)及び未精製の非水液状物質中の不純物と同様である。
本発明の第二の形態の非水液状物質の精製方法において、非水液状物質を精製するために用いられるイオン交換樹脂は、粒状のゲル型イオン交換樹脂である。ゲル型イオン交換樹脂としては、ゲル型カチオン交換樹脂、ゲル型アニオン交換樹脂、ゲル型カチオン交換樹脂とゲル型アニオン交換樹脂の組み合わせが挙げられる。ゲル型イオン交換樹脂が、ゲル型カチオン交換樹脂とゲル型アニオン交換樹脂の組み合わせの場合、ゲル型カチオン交換樹脂とゲル型アニオン交換樹脂が均一に混合されている混床として用いる場合と、ゲル型イオン交換樹脂の充填領域の上流側に、ゲル型カチオン交換樹脂が充填され、且つ、ゲル型イオン交換樹脂の充填領域の下流側に、ゲル型アニオン交換樹脂が充填されているか、又はゲル型イオン交換樹脂の充填領域の上流側に、ゲル型アニオン交換樹脂が充填され、且つ、ゲル型イオン交換樹脂の充填領域の下流側に、ゲル型カチオン交換樹脂が充填されている複床として用いる場合がある。
ゲル型カチオン交換樹脂は、ゲル型の強酸性カチオン交換樹脂であっても、ゲル型の弱酸性カチオン交換樹脂であっても、それらの併用であってもよい。ゲル型の強酸性カチオン交換樹脂としては、オルライトDS-1等が挙げられる。また、ゲル型の弱酸性カチオン交換樹脂としては、アンバーライトIRC84SPI H等が挙げられる。
ゲル型アニオン交換樹脂は、ゲル型の強塩基性アニオン交換樹脂であっても、ゲル型の弱塩基性アニオン交換樹脂であっても、それらの併用であってもよい。ゲル型の強塩基性アニオン交換樹脂としては、オルライトDS-2等が挙げられる。また、ゲル型の弱塩基性アニオン交換樹脂としては、アンバーライトIRA67、アンバーライトIRA70RF等が挙げられる。
乾燥状態のゲル型イオン交換樹脂の平均粒径は、特に制限されないが、好ましくは200~1000μm、特に好ましくは400~800μmである。なお、乾燥状態のゲル型イオン交換樹脂の平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定される値である。
ゲル型イオン交換樹脂は、通常、水を含んだ状態で製造され、また、販売、流通、使用場所でのイオン交換樹脂の充填時等でも、水を含んだ状態で存在している。そして、本発明においては、水を含んだ状態のゲル型イオン交換樹脂を、「水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂」と呼び、水湿潤状態のうち、25℃における相対湿度100%の状態において含水量が飽和したときの状態を「飽和平衡状態のゲル型イオン交換樹脂」と呼ぶ。適宜の乾燥方法により、乾燥され、含水率が0質量%のときの状態を「乾燥状態のゲル型イオン交換樹脂」と呼ぶ。
飽和平衡状態のゲル型イオン交換樹脂は、25℃で相対湿度100%の大気に、30分以上接触させて、ゲル型イオン交換樹脂を飽和状態にさせて得られる。乾燥状態のゲル型イオン交換樹脂は水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂を恒温乾燥器で105℃、16時間乾燥させることで得られる。飽和平衡状態のゲル型イオン交換樹脂の含水率(%)(G)は、「((乾燥前の飽和平衡状態のゲル型イオン交換樹脂の重量-乾燥状態のゲル型イオン交換樹脂の重量)/乾燥前の飽和平衡状態のゲル型イオン交換樹脂の重量)×100」の式により求められる。なお、乾燥前の飽和平衡状態のゲル型イオン交換樹脂の採取量は、測定の正確さを高めるため、5g以上であることが好ましい。
含水率低減後のゲル型イオン交換樹脂の含水率(%)(F)も同様に、測定対象となる樹脂を5g以上量り取り、量り取った樹脂を恒温乾燥器で105℃、16時間乾燥させ、「((含水率低減後のゲル型イオン交換樹脂の重量-乾燥状態のゲル型イオン交換樹脂の重量)/含水率低減後のゲル型イオン交換樹脂の重量)×100」の式により求められる。
また、含水率低減前のゲル型イオン交換樹脂の含水率(%)(H)も同様に、測定対象となる樹脂を5g以上量り取り、量り取った樹脂を恒温乾燥器で105℃、16時間乾燥させ、「((含水率低減前のゲル型イオン交換樹脂の重量-乾燥状態のゲル型イオン交換樹脂の重量)/含水率低減前のゲル型イオン交換樹脂の重量)×100」の式により求められる。
本発明の第二の形態の非水液状物質の精製方法に係るイオン交換樹脂充填工程は、水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂をカートリッジ容器に充填し、含水率低減前のゲル型イオン交換樹脂が充填されたイオン交換樹脂充填カートリッジを得る工程である。
本発明の第二の形態の非水液状物質の精製方法のイオン交換樹脂充填工程に係るカートリッジ容器及びカートリッジ容器の材質は、本発明の第一の形態の非水液状物質の精製方法のイオン交換樹脂充填工程に係るカートリッジ容器及びカートリッジ容器の材質と同様である。
本発明の第二の形態の非水液状物質の精製方法のイオン交換樹脂充填工程において、カートリッジ容器内に充填されるゲル型イオン交換樹脂は、水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂である。イオン交換樹脂充填工程において、カートリッジ容器内に充填される水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂、すなわち、含水率低減前のゲル型イオン交換樹脂の含水率(H)は、好ましくはゲル型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(G)の好ましくは95.0~100%、特に好ましくは98.0~100%である。通常、工業的に製造されるゲル型イオン交換樹脂の含水率は、ゲル型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(G)の95.0~100%であり、また、市販されているゲル型イオン交換樹脂の含水率は、ゲル型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(G)の95.0~100%である。そのため、イオン交換樹脂充填工程では、工業的に製造された水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂や、市販されている水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂が、好適に用いられる。なお、「水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂の含水率(H)が、好ましくはゲル型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(G)の好ましくは95.0~100%、特に好ましくは98.0~100%である」とは、(「イオン交換樹脂充填工程において実際に充填される水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂、すなわち、含水率低減前のゲル型イオン交換樹脂の含水率(H)」/「ゲル型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(G)」)×100で計算される百分率が、好ましくは95.0~100%、特に好ましくは98.0~100%であるであることを指す。
本発明の第二の形態の非水液状物質の精製方法のイオン交換樹脂充填工程において、カートリッジ容器内に、水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂を充填する方法は、特に制限されず、充填時に異物が混入しない方法が適宜選択される。
本発明の第二の形態の非水液状物質の精製方法のイオン交換樹脂充填工程を行うことにより得られるイオン交換樹脂充填カートリッジは、カートリッジ容器に水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂が充填されているイオン交換樹脂充填カートリッジである。イオン交換樹脂充填工程を行うことにより得られるイオン交換樹脂充填カートリッジは、含水率低減工程を行う前のイオン交換樹脂充填カートリッジであるので、イオン交換樹脂充填工程を行うことにより得られるイオン交換樹脂充填カートリッジは、言い換えると、カートリッジ容器に含水率低減前のゲル型イオン交換樹脂が充填されているイオン交換樹脂充填カートリッジである。
本発明の第二の形態の非水液状物質の精製方法に係る含水率低減工程は、含水率低減後のゲル型イオン交換樹脂の含水率(F)が、ゲル型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(G)の10.0~65.0%、好ましくは15.0~25.0%となるまで、カートリッジ容器内のイオン交換樹脂の含水率を低減させる工程である。なお、「含水率低減後のゲル型イオン交換樹脂の含水率(F)が、ゲル型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(G)の10.0~65.0%、好ましくは15.0~25.0%となるまで」とは、(「含水率低減工程において含水率低減後のゲル型イオン交換樹脂の含水率(F)」/「ゲル型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(G)」)×100で計算される百分率が、10.0~65.0%、好ましくは15.0~25.0%となるまでということを指す。
本発明の第二の形態の非水液状物質の精製方法では、カートリッジ容器内を、不活性ガスを通過させて、カートリッジ容器内のゲル型イオン交換樹脂に不活性ガスを接触させことより、含水率低減工程(以下、このような形態を、含水率低減工程(B1)とも記載する。)を行うことができる。
含水率低減工程(B1)に係る不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等が挙げられる。不活性ガスの純度は、高いほど好ましいが、99.9体積%以上であればよい。不活性ガスの露点は、好ましくは-50℃以下、特に好ましくは-60℃以下である。
含水率低減工程(B1)において、カートリッジ容器に充填されているイオン交換樹脂が、カチオン交換樹脂のみの場合、カートリッジ容器内に不活性ガスを供給するときの不活性ガスの温度は、好ましくは0~120℃、特に好ましくは60~110℃である。また、含水率低減工程(B1)において、カートリッジ容器に充填されているイオン交換樹脂が、アニオン交換樹脂のみの場合又はカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂の組み合わせの場合、カートリッジ容器内に不活性ガスを供給するときの不活性ガスの温度は、好ましくは0~60℃、特に好ましくは30~50℃である。
含水率低減工程(B1)では、不活性ガスが、水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂に接触することにより、水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂の水分が蒸発して不活性ガスに移行して、水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂の含水率が低減する。このとき、水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂の表面及びその近傍に存在している水分から内部に向かって水分の蒸発が進行する。
そして、含水率低減工程(B1)では、含水率低減後のゲル型イオン交換樹脂の含水率(F)が、マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(G)の10.0~65.0%、好ましくは15.0~25.0%となるまで、水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂への不活性ガスの接触を続け、水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂を、所定の含水率である含水率低減後のゲル型イオン交換樹脂に変換させる。
含水率低減工程(B1)において、カートリッジ容器内に、不活性ガスを通過させて、カートリッジ容器内のゲル型イオン交換樹脂に不活性ガスを接触させる方法としては、特に制限されず、カートリッジ容器の一端側から、不活性ガスが、カートリッジ容器内に供給されつつ、カートリッジ容器の他端側より、不活性ガスがカートリッジ容器内から排出される方法であればよい。
含水率低減工程(B1)に用いて、マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂中の水分を含んだ不活性ガスを、不活性ガスの脱水装置で処理して、不活性ガス中の含水量を低減させ、再び、含水率低減工程(B1)で、カートリッジ容器内に供給する不活性ガスとして使用することもできる。
本発明の第二の形態の非水液状物質の精製方法では、カートリッジ容器内を減圧して、ゲル型イオン交換樹脂を減圧乾燥することにより、含水率低減工程(以下、このような形態を、含水率低減工程(B2)とも記載する。)を行うことができる。
含水率低減工程(B2)において、減圧乾燥するときの絶対圧力は、-0.05MPa以下が好ましい。また、含水率低減工程(B2)において、カートリッジ容器に充填されているイオン交換樹脂が、カチオン交換樹脂のみの場合、減圧乾燥するときの温度は、好ましくは0~120℃、特に好ましくは60~110℃である。また、含水率低減工程(B2)において、カートリッジ容器に充填されているイオン交換樹脂が、アニオン交換樹脂のみの場合又はカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂の組み合わせの場合、減圧乾燥するときの温度は、好ましくは0~60℃、特に好ましくは30~50℃である。被処理樹脂を上記加熱減圧乾燥条件におくには、公知の真空乾燥機を用いればよい。
含水率低減工程(B2)では、水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂を減圧乾燥することにより、水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂の水分が蒸発して、水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂の含水率が低減する。このとき、水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂の表面及びその近傍に存在している水分から内部に向かって水分の蒸発が進行する。
そして、含水率低減工程(B2)では、含水率低減後のゲル型イオン交換樹脂の含水率(F)が、ゲル型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(G)の10.0~65.0%、好ましくは15.0~25.0%となるまで、水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂の減圧乾燥を行い、水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂を、所定の含水率である含水率低減後のゲル型イオン交換樹脂に変換させる。
含水率低減工程(B2)において、水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂を減圧乾燥する方法としては、特に制限されず、例えば、イオン交換樹脂充填カートリッジを、減圧乾燥装置に静置し、減圧乾燥装置内を減圧し、あるいは、減圧乾燥装置内を減圧すると共に加熱して、減圧乾燥を行う方法が挙げられる。なお、減圧乾燥後、減圧乾燥装置内を常圧に戻すときには、大気中の不純物が混入しないように、高純度の不活性ガスを減圧装置内に導入することによって、常圧にすることが好ましい。
また、本発明の非水液状物質の精製方法では、ゲル型イオン交換樹脂が充填されたイオン交換樹脂充填カートリッジを、不活性ガス雰囲気の加熱装置内で加熱することにより、含水率低減工程(以下、このような形態を、含水率低減工程(B3)とも記載する。)を行うことができる。
含水率低減工程(B3)において、カートリッジ容器に充填されているイオン交換樹脂が、カチオン交換樹脂のみの場合、イオン交換樹脂充填カートリッジを加熱するときの加熱温度は、好ましくは0~120℃、特に好ましくは60~110℃である。また、含水率低減工程(B3)において、カートリッジ容器に充填されているイオン交換樹脂が、アニオン交換樹脂のみの場合又はカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂の組み合わせの場合、イオン交換樹脂充填カートリッジを加熱するときの加熱温度は、好ましくは0~60℃、特に好ましくは30~50℃である。
含水率低減工程(B3)では、水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂を加熱することにより、水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂の水分が蒸発して、水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂の含水率が低減する。このとき、水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂の表面及びその近傍に存在している水分から内部に向かって水分の蒸発が進行する。
そして、含水率低減工程(B3)では、含水率低減後のゲル型イオン交換樹脂の含水率(F)が、ゲル型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(G)の10.0~65.0%、好ましくは15.0~25.0%となるまで、水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂の加熱を行い、水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂を、所定の含水率である含水率低減後のゲル型イオン交換樹脂に変換させる。
含水率低減工程(B3)において、水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂を加熱する方法としては、特に制限されず、イオン交換樹脂充填カートリッジを、不活性ガス雰囲気の加熱装置内で加熱することができる方法であればよい。
このようにして、本発明の第二の形態の非水液状物質の精製方法に係る含水率低減工程を行うことにより、水湿潤状態のゲル型イオン交換樹脂(含水率低減前のゲル型イオン交換樹脂)が、含水率が所定の値であるゲル型イオン交換樹脂(含水率低減後のゲル型イオン交換樹脂)へと変換し、カートリッジ容器に、含水率低減後のゲル型イオン交換樹脂が充填されているイオン交換樹脂充填カートリッジが得られる。そして、含水率低減工程において、含水率の低減の度合いを、含水率低減後のゲル型イオン交換樹脂の含水率(F)が、ゲル型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(G)の10.0~65.0%、好ましくは15.0~25.0%となるまでとすることにより、含水率低減工程(B2)、含水率低減工程(B3)等の簡便な方法で含水率の低減が行え、且つ初期ブロー廃液の量を少なくすることができる。一方、ゲル型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(G)に対する含水率低減後のゲル型イオン交換樹脂の含水率(F)が、上記範囲を超えると、初期ブロー廃液の量が多くなってしまう。また、ゲル型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(G)に対する含水率低減後のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の含水率(F)が、上記範囲未満だと、初期ブロー廃液の量は減少するものの、ゲル型イオン交換樹脂の含水率の低減にかかるコストが高くなる。
本発明の第二の形態の非水液状物質の精製方法に係る初期ブロー工程は、含水率低減後のゲル型イオン交換樹脂が充填されているカートリッジ容器内に、未精製の非水液状物質を通液し、カートリッジ容器内から初期ブロー廃液を排出する工程である。
本発明の第二の形態の非水液状物質の精製方法に係る初期ブロー工程は、非水液状物質を精製する前に行う前処理工程であり、主にゲル型イオン交換樹脂が含有する水分を非水液状物質に置換することで含水率を低減し、ゲル型イオン交換樹脂から非水液状物質に溶出する水分を低減することで正常な精製が行える状態にすることを目的として行われる。
そして、本発明の第二の形態の非水液状物質の精製方法に係る初期ブロー工程では、イオン交換充填カートリッジが所定の状態となるまで、含水率低減後のゲル型イオン交換樹脂が充填されているカートリッジ容器内への未精製の非水液状物質の通液を続ける。このとき、初期ブロー廃液が生じる。
本発明の第二の形態の非水液状物質の精製方法に係る精製工程は、初期ブロー工程が施されたイオン交換樹脂充填カートリッジのカートリッジ容器内に、未精製の非水液状物質を通液することにより、カートリッジ容器内のゲル型イオン交換樹脂に未精製の非水液状物質を接触させて、非水液状物質の精製を行い、精製された非水液状物質を得る工程である。
そして、本発明の第二の形態の非水液状物質の精製方法に係る精製工程を行うことにより、不純物が除去された高純度の非水液状物質が得られる。
本発明者らは、(1)初期ブローの際に、非水液状物質と接触することにより、イオン交換樹脂から流出する水分の多くは、ゲル型イオン交換樹脂の表面及び内部の細孔でイオン交換基と水和状態にない自由な水分子として存在する水分であり、ゲル型イオン交換樹脂はマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂に比べて比表面積や細孔容積が小さいため、内部の細孔に存在しイオン交換基と水和状態にある水分子は、非水液状物質と接触しても、殆どイオン交換樹脂から流出しないこと、(2)イオン交換樹脂に不活性ガスを連続して接触させること、イオン交換樹脂を減圧乾燥させること、イオン交換樹脂を加熱すること等により、水湿潤状態のイオン交換樹脂の含水率を低減させる場合、マクロポーラス型又はポーラス型のイオン交換樹脂では、含水率低減後のイオン交換樹脂の含水率(A)が、イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(B)の10.0~97.0%、好ましくは10.0%以上90.0%未満となるまで、含水率を低減させることにより、また、ゲル型のイオン交換樹脂では、含水率低減後のイオン交換樹脂の含水率(F)が、イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(G)の10.0~65.0%、好ましくは15.0~25.0%となるまで、含水率を低減させることにより、初期ブローの際にイオン交換樹脂からの流出し易い表面及び内部の細孔でイオン交換基と水和状態にない自由な水分子を、少なくすることができるので、初期ブロー廃液への水分の流出量が少なくなること、(3)これらのことにより、初期ブロー廃液の量を少なくすることができることを見出した。
一方、初期ブローの際のイオン交換樹脂中の水分の影響をなくすために、カートリッジ容器に充填する前のイオン交換樹脂を乾燥することが考えられるが、乾燥工程及び乾燥した後のイオン交換樹脂をカートリッジへ移し入れる工程で、金属に接触したり金属や微粒子を含む大気に接触することがイオン交換樹脂への不純物の混入の原因となってしまう。
本発明の非水液状物質の精製方法では、図1~図4に示す形態例のように、イオン交換樹脂充填工程及び含水率低減工程を行った後、イオン交換樹脂充填カートリッジを、金属除去カラム内に設置し、金属除去カラム内に未精製の非水液状物質を供給し、金属除去カラムの収納容器内を経て、イオン交換樹脂充填カートリッジのカートリッジ容器内に、未精製の非水液状物質を通液して、初期ブロー工程及び精製工程を行っているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の非水液状物質の精製方法の形態としては、イオン交換樹脂充填工程及び含水率低減工程を行った後、イオン交換樹脂充填カートリッジを、金属除去カラム内に設置し、金属除去カラム内に未精製の非水液状物質を供給し、金属除去カラムの収納容器内を経て、イオン交換樹脂充填カートリッジのカートリッジ容器内に、未精製の非水液状物質を通液して、初期ブロー工程及び精製工程を行う形態が挙げられる。また、本発明の非水液状物質の精製方法の他の形態としては、イオン交換樹脂充填工程及び含水率低減工程を行った後、イオン交換樹脂充填カートリッジのカートリッジ容器内に、直接、未精製の非水液状物質を通液して、初期ブロー工程及び精製工程を行う形態が挙げられる。つまり、この本発明の非水液状物質の精製方法の他の形態は、金属除去カラムを用いずに、直接、イオン交換樹脂充填カートリッジのカートリッジ容器内に、未精製の非水液状物質を供給する形態である。
本発明の非水液状物質の精製方法のうち、イオン交換樹脂充填工程及び含水率低減工程を行った後、イオン交換樹脂充填カートリッジのカートリッジ容器内に、直接、未精製の非水液状物質を通液して、初期ブロー工程及び精製工程を行う形態に用いられるイオン交換樹脂充填カートリッジとしては、例えば、図5に示すイオン交換樹脂カートリッジ120が挙げられる。イオン交換樹脂カートリッジ120は、水湿潤状態の粒状のイオン交換樹脂1aが充填されている筒部2と、被処理液(未精製の非水液状物質)の通過孔7が形成されており、且つ、被処理液(未精製の非水液状物質)の輸液管の管端にねじ込まれる連結部102が付設されている筒部2の上端に設けられる上蓋103と、処理液(精製後の非水液状物質)の通過孔8が形成されており、筒部2の下端に設けられる下蓋4と、下蓋に繋がり、処理液(精製後の非水液状物質)の輸液管の管端にねじ込まれる処理液排出管105と、筒部2の内部に充填されている粒状のイオン交換樹脂1aと、を有する。なお、図5に示す形態例では、下蓋4と処理液排出管105とは、一体成形されている。また、図5に示す形態例では、筒部2、上蓋3及び処理液排出管105が付設されている下蓋4が、カートリッジ容器である。また、筒部2の内側の上端側には、上端側管径縮小部11が形成されており、且つ、筒部2の内側の下端側には、下端側管径縮小部12が形成されている。そして、イオン交換樹脂1が筒部2から外に流出するのを防ぐために、イオン交換樹脂の充填領域の上端には、メッシュ9が、上端側管径縮小部11と上蓋3との間に、外縁部が挟み込まれることにより付設され、且つ、イオン交換樹脂の充填領域の下端には、メッシュ10が、下端側管径縮小部12と上蓋4との間に、外縁部が挟み込まれることにより付設されている。なお、メッシュ9及びメッシュ10は、被処理液を透過し且つ粒状のイオン交換樹脂1aを透過させない程度の大きさの隙間を有する。
また、本発明の非水液状物質の精製方法では、図1~図4に示す形態例のように、イオン交換樹脂充填工程及び含水率低減工程を行った後に、イオン交換樹脂充填カートリッジを、金属除去カラムに設置してから、初期ブロー工程及び精製工程を行っているが、含水率低減工程として、含水率低減工程(A1)を採用する場合は、これに限定されるものではない。本発明の非水液状物質の精製方法のうち、含水率低減工程として、含水率低減工程(A1)を採用する形態としては、イオン交換樹脂充填工程及び含水率低減工程を行った後に、イオン交換樹脂充填カートリッジを、金属除去カラムに設置してから、初期ブロー工程及び精製工程を行う形態が挙げられる。本発明の非水液状物質の精製方法のうち、含水率低減工程として、含水率低減工程(A1)を採用する他の形態としては、イオン交換樹脂充填工程を行った後、イオン交換樹脂充填カートリッジを、金属除去カラムに設置し、金属除去カラム、被処理液の輸液管等の適宜の位置に設けられている不活性ガスの導入管から、不活性ガスを導入し、且つ、金属除去カラム、処理液の輸液管等の適宜の位置に設けられている不活性ガスの排出管より、不活性ガスを排出することにより、含水率低減工程(A1)を行い、次いで、初期ブロー工程及び精製工程を行う形態が挙げられる。
本発明の第一の形態の外気遮断部材付きイオン交換樹脂充填カートリッジは、カートリッジ容器と、
前記カートリッジ容器内に非水液状物質を供給するための供給口と、
前記カートリッジ容器内から非水液状物質を排出するための排出口と、
前記カートリッジ容器内に充填され、含水率(D)が、飽和平衡状態の含水率(E)の10.0~97.0%であるマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂と、
を有するイオン交換樹脂充填カートリッジと、
前記カートリッジ内と外気との通気を遮断するため外気遮断部材と、
からなること、
を特徴とする外気遮断部材付きイオン交換樹脂充填カートリッジである。
本発明の第一の形態の外気遮断部材付きイオン交換樹脂充填カートリッジに係るカートリッジ容器は、本発明の第一の形態の非水液状物質の精製方法に係るカートリッジ容器と、同様である。また、本発明の第一の形態の外気遮断部材付きイオン交換樹脂充填カートリッジに係るマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂は、本発明の第一の形態の非水液状物質の精製方法に係るマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂と同様である。
本発明の第一の形態の外気遮断部材付きイオン交換樹脂充填カートリッジにおいて、カートリッジ容器内に充填されているマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂は、含水率(D)が、飽和平衡状態の含水率(E)の10.0~97.0%、好ましくは10.0%以上90.0%未満であるマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂である。なお、「カートリッジ容器内に充填されているマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の含水率(D)が、マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(E)の10.0~97.0%、好ましくは10.0%以上90.0%未満」とは、(「カートリッジ容器内に充填されているマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の含水率(D)」/「マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(E)」)×100で計算される百分率が、10.0~97.0%、好ましくは10.0%以上90.0%未満であることを指す。
本発明の第一の形態の外気遮断部材付きイオン交換樹脂充填カートリッジに係る外気遮断部材は、カートリッジ内と外気との通気を遮断するため部材である。
本発明の第一の形態の外気遮断部材付きイオン交換樹脂充填カートリッジに係る外気遮断部材としては、例えば、図6に示す形態例が挙げられる。図6中、外気遮断部材付きイオン交換樹脂充填カートリッジ40では、イオン交換樹脂充填カートリッジ20aの筒部の上端側に、筒部の上蓋に形成されている被処理液の通過孔を完全に覆うように、上側キャップ部材33aが取り付けられており、且つ、イオン交換樹脂充填カートリッジ20aの筒部の下端側に、筒部の下蓋に形成されている処理液の通過孔及び挿通管の口を完全に覆うように、下側キャップ部材33bが取り付けられている。そして、上側キャップ部材33aと筒部との間及び下側キャップ部材33bと筒部との間は、外気がカートリッジ容器内に入り込まない程度に、密閉されている。
キャップ部材の材質としては、特に制限されず、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等が挙げられる。
上側キャップ部材33a及び下側キャップ部材33bの内側には、Oリング、シールテープ等の密閉性を高めるため部材が付設されていてもよい。
本発明の第一の形態の外気遮断部材付きイオン交換樹脂カートリッジに係る外気遮断部材の他の形態例としては、例えば、イオン交換樹脂充填カートリッジの全体を包み込み、内側と外気との通気が遮断されている包囲袋が挙げられる。包囲袋の材質は、空気を透過しない材質である。
本発明の第一の形態の外気遮断部材付きイオン交換樹脂充填カートリッジは、カートリッジ容器内に充填されているマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の含水率(D)が、飽和平衡状態の含水率(E)の10.0~97.0%、好ましくは10.0%以上90.0%未満であるので、言い換えると、初期ブローの際にイオン交換樹脂から流出し易い水分が、少なくなっているマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂が、カートリッジ容器内に充填されているので、本発明の第一の形態の外気遮断部材付きイオン交換樹脂充填カートリッジを用いて、初期ブロー工程及び精製工程を行えば、初期ブロー廃液を少なくすることができる。
本発明の第二の形態の外気遮断部材付きイオン交換樹脂充填カートリッジは、カートリッジ容器と、
前記カートリッジ容器内に非水液状物質を供給するための供給口と、
前記カートリッジ容器内から非水液状物質を排出するための排出口と、
前記カートリッジ容器内に充填され、含水率(I)が、飽和平衡状態の含水率(J)の10.0~65.0%であるゲル型イオン交換樹脂と、
を有するイオン交換樹脂充填カートリッジと、
前記カートリッジ内と外気との通気を遮断するため外気遮断部材と、
からなること、
を特徴とする外気遮断部材付きイオン交換樹脂充填カートリッジである。
本発明の第二の形態の外気遮断部材付きイオン交換樹脂充填カートリッジに係るカートリッジ容器は、本発明の第二の形態の非水液状物質の精製方法に係るカートリッジ容器と、同様である。また、また、本発明の第二の形態の外気遮断部材付きイオン交換樹脂充填カートリッジに係るゲル型イオン交換樹脂は、本発明の第二の形態の非水液状物質の精製方法に係るゲル型イオン交換樹脂と同様である。
本発明の第二の形態の外気遮断部材付きイオン交換樹脂充填カートリッジにおいて、カートリッジ容器内に充填されているゲル型イオン交換樹脂は、含水率(I)が、飽和平衡状態の含水率(I)の10.0~65.0%、好ましくは15.0~25.0%であるゲル型イオン交換樹脂である。なお、「カートリッジ容器内に充填されているゲル型イオン交換樹脂の含水率(I)が、マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(J)の10.0~65.0%、好ましくは15.0~25.0%」とは、(「カートリッジ容器内に充填されているゲル型イオン交換樹脂の含水率(I)」/「マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(J)」)×100で計算される百分率が、10.0~65.0%、好ましくは15.0~25.0%であることを指す。
本発明の第二の形態の外気遮断部材付きイオン交換樹脂充填カートリッジに係る外気遮断部材は、本発明の第一の形態の外気遮断部材付きイオン交換樹脂充填カートリッジに係る外気遮断部材と、同様である。
本発明の第二の形態の外気遮断部材付きイオン交換樹脂充填カートリッジは、カートリッジ容器内に充填されているゲル型イオン交換樹脂の含水率(I)が、飽和平衡状態の含水率(J)の10.0~65.0%、好ましくは15.0~25.0%であるので、言い換えると、初期ブローの際にイオン交換樹脂から流出し易い水分が、少なくなっているゲル型イオン交換樹脂が、カートリッジ容器内に充填されているので、本発明の外気遮断部材付きイオン交換樹脂充填カートリッジを用いて、初期ブロー工程及び精製工程を行えば、初期ブロー廃液を少なくすることができる。
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に制限されるものではない。
(実施例1)
・含水率の低減試験
<イオン交換樹脂充填工程>
下記のイオン交換樹脂A(マクロポーラス型又はポーラス型)を、25℃で相対湿度100%の大気に、30分以上接触させて、飽和平衡状態のイオン交換樹脂A(含水率60.8%)を得た。
次いで、イオン交換樹脂として、飽和平衡状態のカチオン交換樹脂Aを、カートリッジ容器に充填して、図1に示すイオン交換樹脂充填カートリッジB1を作製した。充填されているイオン交換樹脂及びOリングの詳細を以下に、カートリッジ容器の詳細を表1に示す。
<含水率低減工程>
次いで、イオン交換樹脂充填カートリッジB1に、25℃の窒素ガス(純度99.99%以上)を、60L/時間の流量で、75分間供給して、イオン交換樹脂充填カートリッジB1内を、窒素ガスを通過させて、イオン交換樹脂の含水率を低減させ、含水率低減後のイオン交換樹脂が充填されたイオン交換樹脂充填カートリッジC1を得た。
<含水率の低減割合の算出>
次いで、窒素ガスの供給を止め、イオン交換樹脂充填カートリッジC1内のイオン交換樹脂を取り出し、含水率を測定した。その結果、含水率は58.0%であった。これらから、含水率低減後のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の含水率(A)は、マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(B)の95.4%と算出された。
・初期ブロー試験
上記と同様にして、イオン交換樹脂充填工程及び含水率低減工程を行い、イオン交換樹脂充填カートリッジC1を作製した。
<初期ブロー工程>
ポール社製脱メタルフィルター用PFAハウジングに、イオン交換樹脂充填カートリッジC1を設置して、金属除去カラムを組み立てた。
次いで、金属除去カラムに、被処理液として、イソプロピルアルコール(SEグレード、含水率50質量ppm以下)を、SV-4=樹脂体積(ml)×4・h-1で供給し、ベットボリューム(BV)が30となるまで、被処理液のイソプロピルアルコールの供給を続け、初期ブロー工程を行った。初期ブロー工程中に生じた初期ブロー廃液中の水分量の変化を測定した。その結果、BV=10.5の時の含水率は800質量ppmであり、BV=14の時の含水率は400ppmであった。また、初期ブロー廃液中の水分量の変化を図7に示す。
<精製工程>
金属除去カラムへの被処理液のイソプロピルアルコールの供給を続け、ベットボリューム(BV)が16.1の時点での処理液のイソプロピルアルコールを採取し、含水率を測定した。その結果、処理液のイソプロピルアルコールの含水率は300ppmであった。
(実施例2)
含水率低減工程において、含水率低減後のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の含水率(A)が、マクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(B)の10.5%となるまで含水率を低減させること以外は、実施例1と同様に行った。
その結果、初期ブロー工程において、BV=10.7の時の含水率は800質量ppmであり、BV=13.0の時の含水率は400質量ppmであった。また、初期ブロー廃液中の水分量の変化を図7に示す。
また、精製工程において、ベットボリューム(BV)が14.1の時点での処理液のイソプロピルアルコールの含水率は300ppmであった。
(実施例3)
・含水率の低減試験
<イオン交換樹脂充填工程>
下記のイオン交換樹脂B(ゲル型)を、25℃で相対湿度100%の大気に、30分以上接触させて、飽和平衡状態のイオン交換樹脂B(含水率56.4%)を得た。
次いで、イオン交換樹脂として、飽和平衡状態のカチオン交換樹脂Bを、カートリッジ容器に充填して、図1に示すイオン交換樹脂充填カートリッジB2を作製した。充填されているイオン交換樹脂及びOリングの詳細を以下に、カートリッジ容器の詳細を表1に示す。
<含水率低減工程>
次いで、イオン交換樹脂充填カートリッジB2を、減圧乾燥機内に静置した後、0kPaの圧力下、40℃で、21時間減圧乾燥を行い、イオン交換樹脂の含水率を低減させ、含水率低減後のイオン交換樹脂が充填されたイオン交換樹脂充填カートリッジC2を得た。
<含水率の低減割合の算出>
イオン交換樹脂充填カートリッジC2内のイオン交換樹脂を取り出し、含水率を測定した。その結果、含水率は13.8%であった。これらから、含水率低減後のゲル型イオン交換樹脂の含水率(F)は、ゲル型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(G)の24.5%と算出された。
・初期ブロー試験
上記と同様にして、イオン交換樹脂充填工程及び含水率低減工程を行い、イオン交換樹脂充填カートリッジC2を作製した。
<初期ブロー工程>
ポール社製脱メタルフィルター用PFAハウジングに、イオン交換樹脂充填カートリッジC2を設置して、金属除去カラムを組み立てた。
次いで、金属除去カラムに、被処理液として、イソプロピルアルコール(SEグレード、含水率50質量ppm以下)を、SV-4=樹脂体積(ml)×4・h-1で供給し、ベットボリューム(BV)が30となるまで、被処理液のイソプロピルアルコールの供給を続け、初期ブロー工程を行った。初期ブロー工程中に生じた初期ブロー廃液中の水分量の変化を測定した。その結果、BV=14.9の時の含水率は800質量ppmであり、BV=20.0の時の含水率は400質量ppmであった。また、初期ブロー廃液中の水分量の変化を図8に示す。
<精製工程>
金属除去カラムへの被処理液のイソプロピルアルコールの供給を続け、ベットボリューム(BV)が22.6の時点での処理液のイソプロピルアルコールを採取し、含水率を測定した。その結果、処理液のイソプロピルアルコールの含水率は300ppmであった。
(実施例4)
含水率低減工程において、含水率低減後のゲル型イオン交換樹脂の含水率(F)が、ゲル型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(G)の12.9%となるまで含水率を低減させること以外は、実施例3と同様に行った。
その結果、初期ブロー工程において、BV=8.2の時の含水率は800質量ppmであり、BV=9.6の時の含水率は400質量ppmであった。また、初期ブロー廃液中の水分量の変化を図8に示す。また、精製工程において、ベットボリューム(BV)が15.0の時点での処理液のイソプロピルアルコールの含水率は300ppmであった。
<イオン交換樹脂>
・イオン交換樹脂A:マクロポーラス型又はポーラス型の強酸性カチオン交換樹脂とマクロポーラス型又はポーラス型の強塩基性アニオン交換樹脂の混合品、オルガノ株式会社社製(オルライト DS-7)、樹脂の材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、イオン交換基の種類:スルホン酸基、トリメチルアンモニウム基、カチオン交換当量:1.7mg当量/ml湿潤樹脂、アニオン交換当量:0.8mg当量/ml湿潤樹脂、乾燥状態の平均粒径:80~400μm、飽和平衡状態の含水率60.8質量%。
・イオン交換樹脂B:ゲル型の強塩基性陰イオン交換樹脂、オルガノ株式会社社製(オルライト DS-3)、樹脂の材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、イオン交換基の種類:スルホン酸基、トリメチルアンモニウム基、カチオン交換当量:2.1mg当量/ml湿潤樹脂、アニオン交換当量:1.0mg当量/ml湿潤樹脂、乾燥状態の平均粒径:80~400μm、飽和平衡状態の含水率56.4質量%。
<Oリング>
フロン工業社製、商品名:PFA被覆Oリング、材質:バイトンをPFAで被覆、線径:3.53±0.10mm、内径:37.69±0.38mm、外径:44.75mm
<含水率の測定>
・イオン交換樹脂を、25℃で相対湿度100%の大気に、30分以上接触させて、イオン交換樹脂を飽和状態にさせることにより、飽和平衡状態のイオン交換樹脂を得た。また、飽和平衡状態のイオン交換樹脂を、恒温乾燥器で105℃、16時間乾燥させることで乾燥状態のイオン交換樹脂を得た。そして、飽和平衡状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の含水率(%)(B)を、「((乾燥前の飽和平衡状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の重量-乾燥状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の重量)/乾燥前の飽和平衡状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の重量)×100」の式により求めた。また、飽和平衡状態のゲル型イオン交換樹脂の含水率(%)(G)を、「((乾燥前の飽和平衡状態のゲル型イオン交換樹脂の重量-乾燥状態のゲル型イオン交換樹脂の重量)/乾燥前の飽和平衡状態のマクロポーラス型又はポーラス型イオン交換樹脂の重量)×100」の式により求めた。なお、測定の正確さを高めるため、乾燥前の飽和平衡状態のイオン交換樹脂を、5g以上採取して行った。
(比較例1)
実施例1と同様にして、イオン交換樹脂充填工程を行い、イオン交換樹脂充填カートリッジB1を作製した。
次いで、ポール社製脱メタルフィルター用PFAハウジングに、イオン交換樹脂充填カートリッジB1を設置して、金属除去カラムを組み立てた。
次いで、金属除去カラムに、被処理液として、イソプロピルアルコール(SEグレード、含水率50質量ppm以下)を、SV-4=樹脂体積(ml)×4・h-1で供給し、ベットボリューム(BV)が30となるまで、被処理液のイソプロピルアルコールの供給を続け、初期ブロー工程を行った。初期ブロー工程中に生じた初期ブロー廃液中の水分量の変化を測定した。その結果、BV=12.5の時の含水率は800質量ppmであり、BV=16の時の含水率は400質量ppmであった。また、初期ブロー廃液中の水分量の変化を図7に示す。
つまり、比較例1では、含水率低減工程を行っていないイオン交換樹脂を用いて、初期ブロー試験を行った。
(比較例2)
実施例3と同様にして、イオン交換樹脂充填工程を行い、イオン交換樹脂充填カートリッジB2を作製した。
次いで、ポール社製脱メタルフィルター用PFAハウジングに、イオン交換樹脂充填カートリッジB2を設置して、金属除去カラムを組み立てた。
次いで、金属除去カラムに、被処理液として、イソプロピルアルコール(SEグレード、含水率50質量ppm以下)を、SV-4=樹脂体積(ml)×4・h-1で供給し、ベットボリューム(BV)が30となるまで、被処理液のイソプロピルアルコールの供給を続け、初期ブロー工程を行った。初期ブロー工程中に生じた初期ブロー廃液中の水分量の変化を測定した。その結果、BV=15.6の時の含水率は800質量ppmであり、BV=20.8の時の含水率は400質量ppmであった。また、初期ブロー廃液中の水分量の変化を図8に示す。
つまり、比較例2では、含水率低減工程を行っていないイオン交換樹脂を用いて、初期ブロー試験を行った。
(実施例5)
実施例3と同様にして、イオン交換樹脂充填工程を行い、イオン交換樹脂充填カートリッジB2を作製した。
<含水率低減工程>
次いで、イオン交換樹脂充填カートリッジB2を、減圧乾燥機内に静置した後、ゲージ圧0kPaの圧力下、40℃で、21時間減圧乾燥を行い、イオン交換樹脂の含水率を低減させ、含水率低減後のイオン交換樹脂が充填されたイオン交換樹脂充填カートリッジC3を得た。
<含水率の低減割合の算出>
次いで、窒素ガスの供給を止め、イオン交換樹脂充填カートリッジC3内のイオン交換樹脂を取り出し、含水率を測定した。その結果、含水率は36.3%であった。これらから、含水率低減後のゲル型イオン交換樹脂の含水率(F)は、ゲル型イオン交換樹脂の飽和平衡状態の含水率(G)の64.4%と算出された。
<初期ブロー試験>
上記と同様にして、イオン交換樹脂充填工程及び含水率低減工程を行い、イオン交換樹脂充填カートリッジC3を作製した。
次いで、ポール社製脱メタルフィルター用PFAハウジングに、イオン交換樹脂充填カートリッジC3を設置して、金属除去カラムを組み立てた。
次いで、金属除去カラムに、被処理液として、イソプロピルアルコール(SEグレード、含水率50質量ppm以下)を、SV-4=樹脂体積(ml)×4・h-1で供給し、ベットボリューム(BV)が30となるまで、被処理液のイソプロピルアルコールの供給を続け、初期ブロー工程を行った。初期ブロー工程中に生じた初期ブロー廃液中の水分量の変化を測定した。その結果、BV=14.6の時の含水率は800質量ppmであり、BV=19.1の時の含水率は400質量ppmであった。また、初期ブロー廃液中の水分量の変化を図8に示す。