JP7082909B2 - Mrfデバイス - Google Patents

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Description

本発明は、MRF(Magneto Rheological Fluid)デバイスに関するものである。
磁性体の微粒子が分散した流体である磁気粘性流体(MRF)を封入したケース内に、MRFに接して回転部材を設け、MRFに印加する磁界の強度によって、回転部材の速度を制御したり制動したりできるMRFデバイスが存在する(例えば特許文献1参照)。
特許文献1に記載のMRFデバイスは制動装置として用いられている。ケースの内周面と回転部材の外周面との間にMRFが介在することで、ケースと回転部材との間で制動に係るトルクの伝達がなされるよう構成されている。
特開2015-203423号公報
特許文献1に記載のMRFデバイスにおける回転部材は、径方向断面形状が「L字形」となっている。しかしこの形状では、回転部材のうち径方向に延びる部分に対し、軸方向に延びる部分が片側にだけ延びる「片持ち構造」となる。回転部材の質量に比例し、かつ、半径の二乗に比例して慣性モーメントは増大する。よって、このような回転部材の形状では、加減速の応答性が良好でないという問題があった。
そこで本発明は、加減速の応答性を向上したMRFデバイスを提供することを課題とする。
本発明は、磁気粘性流体が封入されたケースと、少なくとも径方向外側の領域が磁性体から形成されており、前記ケースの内部において前記磁気粘性流体に接しつつ回転するディスクと、前記ディスクの径方向中央に固定された回転軸と、前記磁気粘性流体及び前記ディスクに磁路が通るように磁場を発生させる磁場発生部と、を備え、前記ディスクは、径方向断面において径方向に延びる第1部分と、当該第1部分の外縁から軸方向の二方に延びる第2部分とを備えるMRFデバイスである。
この構成によれば、ディスクが第1部分と第2部分を備えることにより、慣性モーメントの増大を抑制できる。よって、磁場発生部による磁場の印加に対する応答性の良いMRFデバイスとできる。
そして、前記ディスクは、厚さ方向に貫通する複数の貫通穴を備えることができる。
この構成によれば、ケースの内部においてMRFを円滑に循環させることで、流れを形成できる。
そして、前記回転軸は、前記ディスクに対して軽圧入により固定されることができる。
この構成によれば、圧入に伴うディスクの変形を抑制しつつ、ディスクに対する回転軸の空転を有効に防止できる。
そして、前記回転軸を回転可能に支持する複数のすべり軸受を備え、前記複数のすべり軸受のうち少なくとも一部は、前記ケースの内部において前記磁気粘性流体に接して設けられることができる。
この構成によれば、すべり軸受によって耐ラジアル荷重性の向上を果たすことができ、また、転がり軸受のような転動体が存在しないことから、磁気粘性流体による軸受性能の低下も最低限に抑えることができる。
そして、前記回転軸と前記すべり軸受との間に、前記回転軸と共に回転する筒状のスリーブを備え、前記スリーブは、前記磁気粘性流体が通過する通路を軸方向に沿うように備えることができる。
この構成によれば、スリーブにおける通路を介してケースの端部まで磁気粘性流体を通すことができる。
本発明では、磁場の印加に対する応答性の良いMRFデバイスとできる。よって、加減速の応答性を向上できる。
本発明の一実施形態に係るMRFデバイスを示す、平面側の斜視図である。 前記MRFデバイスの径方向断面の形状を示す、図1におけるII-II矢視の断面図である。 前記MRFデバイスにおける回転体を示す、平面側の斜視図である。 前記MRFデバイスにおける回転体を示す、底面側の斜視図である。 前記MRFデバイスにおける回転体であって、回転軸にスリーブが取り付けられた状態を示す斜視図である。 下部ヨークの底面図である。
本発明につき、一実施形態を取り上げて、図面とともに以下説明を行う。なお、以下の説明における上下方向は、図2に示した状態における方向に対応している。
本実施形態のMRFデバイス1は、例えば図1に示すような形状とされている。また、径方向断面の形状を図2に示す。このMRFデバイス1は主に、ケース2、ディスク3、回転軸4、磁場発生部5を備える。
ケース2は、上部ヨーク21、下部ヨーク22、ダイアフラム押さえ部23を備える。ディスク3を挟んで上下方向で対向する上部ヨーク21と下部ヨーク22が組み合わされることにより、磁気粘性流体(以下、「MRF」と記載)6が封入され、また、磁場発生部5等の内部部品が配置される空間が形成される。なお、本実施形態で用いられるMRF6は公知のものである。ダイアフラム押さえ部23は、下部ヨーク22の下部中央におけるダイアフラム収納凹部221に設けられた、ゴム等の弾性(軟質)材料からなるダイアフラム7の下方に位置している。ダイアフラム7は、板状の円形部7Aと円形部7Aの外周縁に一体形成され径方向外側に突出する鍔部7Bと、を備えている。そのダイアフラム7の鍔部7Bをダイアフラム押さえ部23で下部ヨーク22の底面(下面)に押し付けることにより、ダイアフラム7がダイアフラム押さえ部23と下部ヨーク22との間に挟んだ状態で固定されるとともに、後述するスリット孔2a,2aが円形部7Aの表面(上面)で閉じられている。ダイアフラム押さえ部23の上部中央には、スリット孔2a,2aに近い手前側のダイアフラム収納凹部221と、スリット孔2a,2aから遠い奥側に位置しかつスリット孔2a,2aの貫通方向(図2では上下方向)で連通する凹部231とが形成されている。これは、MRF6の圧力上昇時に、ダイアフラム収納凹部221に位置しているダイアフラム7の円形部7Aが下方の凹部231へ移動することによって、MRF6の一部を逃がして保持するための収容部220がダイアフラム収納凹部221と凹部231の一部とで形成される。なお、ダイアフラム押さえ部23に外部と連通する孔を形成して実施してもよい。この場合、ダイアフラム7が変形しやすくなり、ダイアフラム7の凹部231への移動がスムーズに行える。
MRF6には、気体である空気が混入されており、次のような効果がある。後述するコイル51への通電によりコイル51が発熱すると、MRF6の温度が上昇し、MRF6に圧力上昇が発生する。この圧力上昇をMRF6よりも圧力上昇が低い気体(ここでは空気)により下げることができる。しかし、MRF6の本来の機能を発揮させるためには、MRF6に含有させる気体(ここでは空気)の量には限界がある。そのため、ケース2の内部の圧力上昇(混入している気体の収縮だけでは抑えることができない所定圧以上の圧力上昇)時に、MRF6の一部を逃がして保持する前述した収容部220で圧力上昇を抑制している。なお、所定圧は、MRF6の注入量及び混入される気体の量及びコイル51の発熱による熱量等により変動する。ここでは、MRF6の温度上昇によりMRF6に圧力上昇が発生する場合を説明しているが、外部環境による圧力変動の影響を受けて、MRF6に圧力上昇が発生する場合や、MRF6の温度上昇及び外部環境による圧力変動の影響の両方を受けて、MRF6に圧力上昇が発生する場合がある。
したがって、MRF6の温度上昇によるケース2の内部の圧力上昇時に、ダイアフラム7が収容部220の貫通孔(スリット孔2a,2a)に近い手前側であるダイアフラム収納凹部221から貫通孔から遠い奥側の凹部231側に移動(変形)してケース2の内部のMRF6の一部が貫通孔2aを通して収容空間であるダイアフラム収納凹部221へ移動して保持される。これにより、ケース2の内部の圧力を下げることができる。ケース2の内部圧力が所定圧未満になると、ダイアフラム7の弾性復元力により収容部220の貫通孔から遠い奥側の凹部231から貫通孔に近い手前側のダイアフラム収納凹部221にダイアフラム7が移動して、ケース2の内部に移動したMRF6を戻すとともに貫通孔(スリット孔2a,2a)を閉じる。
貫通孔は、下部ヨーク22の中心部よりも径方向外側部に形成された一対の円弧状のスリット孔2a,2a(図6参照)から構成され、下部ヨーク22の中心部が、回転軸4の軸端となる後述する基端部42を当接させる当接部222として構成されている。このように、一対のスリット孔2a,2aから構成することによって、MRF6の温度上昇による圧力上昇時に、スリット孔2a,2aを通してMRF6を収容部220側に迅速に移動させることができる。しかも、下部ヨーク22の中心部を回転軸4の基端部42を当接させる当接部222として構成することによって、回転軸4にかかるスラスト方向の荷重を当接部222で良好に受けることができる。ここでは、貫通孔を、一対の円弧状のスリット孔2a,2aから構成しているが、円に近い1つの円弧状のスリット孔や3つ以上の円弧状のスリット孔であってもよいし、直線状のスリット孔であってもよい。要するに、円形の孔を多数形成するよりも長さのある(直線状又は曲線状の)スリット孔から構成することによって、MRF6の移動をスムーズに行える。
また、本実施形態では、上部ヨーク21の上面に取付板24が取り付けられている。本実施形態では、図1に示すように、上部ヨーク21にねじ止めにより取付板24が取り付けられているが、これに限定されず、種々の手段で取り付けが可能である。取付板24は、例えば図1に示すようにボルト等が貫通する穴241が設けられており、この取付板24を介して固定対象物にMRFデバイス1を固定できる。
ディスク3は、本実施形態ではケース2の内部においてMRF6に接しつつ回転する。このディスク3は、径方向断面において径方向に延びる第1部分としての円板部31と、円板部31の外縁から軸方向の上下二方に延びる第2部分としての外周部32とを備えており、径方向断面形状が「H字形」(半径側だけで見ると、横倒しの「T」字形)となっている。なお、前記「軸方向の上下二方」とは、軸方向に対して完全に平行な方向に限定されず、軸方向に対して傾きのある方向であってもよい。つまり、本実施形態では図2に示すように円板部31に対して外周部32が直交しているが、斜めに交わっていてもよい。MRF6は、ディスク3の円板部31及び外周部32の表面に接するよう、ケース2の内部に封入されている。本実施形態では、MRF6が、回転軸4の一部の表面及び円板部31の全ての表面並びに外周部32の全ての表面のうちの回転軸4と円板部31とが接している面を除いた表面に接している。本実施形態の外周部32は、円板部31の外縁との接続部分を基準として上下対称形とされている。つまり、円板部31の外縁との接続部分よりも上部と下部とが同じ大きさ(軸方向長さ)とされている。また、円板部31の厚みよりも外周部32の厚みの方が小さい。これにより、外周部32の重量が小さく、ディスク3が回転する際における慣性モーメントを小さくできる。なお、円板部31または外周部32の各々については、部位によって厚みが異なっていてもよいし、径方向断面形状で湾曲していてもよい。
ディスク3が「H字形」とされたことにより、ディスク3において最もトルクに影響する外周部32の、MRF6に接する面積を増大させることができる。また、従来のような径方向断面形状が「L字形」とされた「片持ち構造」のディスクに比べると、円板部31から延びる外周部32の大きさ(軸方向長さ)を小さくできる。このため、慣性モーメントの増大により加減速トルクが大きくなってしまうこと(つまり、回転しにくく、かつ、停止しにくいこと)を抑制でき、コイル51による磁場の印加に対する応答性の良い(高応答の)MRFデバイス1とできる。また、例えば平板状のディスクを多層に設けた形態に比べると、本実施形態のMRFデバイス1は、構成部品点数が少なくて全体をコンパクトに形成できる点で有利である。また、外周部32が上下対称形であることにより、ディスク3の回転バランスが良好である。
前記「H字形」とされたディスク3は、円板部31に対して別体の外周部32を接合して形成することもできるし、例えば1枚の板状体を厚み方向にプレス加工することで形成することもでき、製法は限定されない。
ディスク3は、厚さ方向に貫通する複数の貫通穴33を備える。本実施形態の貫通穴33は円形であって、図3及び図4に示すように、円板部31に4箇所、外周部32の上方に4箇所、外周部32の下方に4箇所で、合計12箇所に設けられている。ただし、貫通穴33の形状や数量はこれに限定されない。また、円板部31または外周部32の一方にのみ貫通穴33が設けられていてもよい。ディスク3の回転中には、これらの貫通穴33をMRF6が通過する。これにより、ケース2の内部でMRF6が存在する空間においてMRF6を円滑に循環させて、流れを形成できる。この流れにより、MRF6に含まれる磁性粒子の偏在を防止することができる。よって、ディスク3に対する駆動トルクや制動トルクの伝達につき部分的な偏りを抑制でき、均一なトルク伝達が可能である。更に、この流れにより、MRF6に溶け込んでいる空気等の気体を撹拌することができたり、MRF6にマクロバブルを発生させたりできる。
回転軸4は、ディスク3の径方向中央に固定されており、一部がケース2から突出している。これにより、ディスク3に生じたトルクをケース2の外部に取り出すことができる。つまり、回転軸4のうちケース2から突出した部分41は入出力軸として機能する。なお、回転軸4のうち基端部42はケース2の内部に位置している。なお、基端部42をケース2から突出させることもできる。回転軸4の延びる方向(軸方向)は、ディスク3における円板部31の延びる方向に対して直交する関係にある。この突出した部分41に、回転力を伝達する他のデバイス(被回転体等)や、レバーや、つまみ等を物理的に接続できる。本実施形態の回転軸4は非磁性材(例えば、SUS303やSUS304)によって形成されている。回転軸4は、ディスク3に対して軽圧入により固定されている。これにより、図5に示すように、ディスク3、回転軸4、スリーブ9が組み合わされた回転体が構成される。前記「軽圧入」とは、JIS B 0401-1:2016の規定にて、嵌め合いの種類として「中間ばめ」に相当し、穴と軸との関係ではH6/m5またはH7/m6に相当する圧入状態である。このような圧入状態とすることで、回転精度に悪影響を及ぼす可能性がある、圧入に伴うディスク3の変形を抑制しつつ、ガタなく固定できることで回転軸4の空転を有効に防止できる。
ここで、MRFデバイス1では、MRF6のせん断力により大きな回転抵抗を受けるディスク3に対して、回転軸4が強固に連結されること、そして、ディスク3の受ける回転抵抗により、ディスク3に対して空転しない構造が必要である。このため、ディスク3及び回転軸4における相互の結合箇所34,43が、図4に示すように、例えば、軸方向視にて、対向する直線部分と当該直線部分に隣り合って対向する円弧部分からなる略小判形状に形成されており、かつ、軽圧入の嵌め合いとすることにより、ディスク3に対する回転軸4の空転を防いでいる。また、ディスク3及び回転軸4における相互の結合箇所34,43はいわゆる「インロー(印籠)構造」となっている。このため、結合箇所34,43において、挿入側である回転軸4と受容側であるディスク3とが軸方向に平行な面で面接触するので、ディスク3と回転軸4が直交した関係を保つことができる。
回転軸4は、複数のすべり軸受8により回転可能に支持されている。本実施形態では、上下で2個のすべり軸受8が用いられている。回転軸4が上下で支持されるため、ラジアル荷重に対抗し、ディスク3及び回転軸4を安定して回転させることができる。以下では、ディスク3よりも上方に位置するものを入出力側すべり軸受81、ディスク3よりも下方に位置するものを内部側すべり軸受82とする。複数のすべり軸受8のうち少なくとも一部(本実施形態で下方に位置する内部側すべり軸受82)は、ケース2の内部においてMRF6に接して設けられている。一方、本実施形態で上方に位置する入出力側すべり軸受81は、回転軸シール部材101によってMRF6が遮断されているため、MRF6に接しない。
また、回転軸4とすべり軸受8との間に、回転軸4と共に回転する筒状のスリーブ9を備える。このスリーブ9は、回転軸4の下端部に圧入されている(軽圧入であってもよい)。前述のように、ディスク3と回転軸4は軽圧入により結合されているが、これに加えてスリーブ9を設けたことにより、回転軸4がディスク3から抜けにくくなるので、ディスク3と回転軸4の結合がさらに強固になる。なお、このスリーブ9はすべり軸受8(内部側すべり軸受82)の内周面との接触部を兼ねる。
またスリーブ9は、図5に示すように、MRF6が通過する通路91を軸方向に沿うように備える。このため、通路91を介し、ケース2の端部(具体的には下部)までMRF6を通して、ケース2の下部に設けられているダイアフラム7にMRF6を接するようにできることから、MRF6の膨張及び収縮をダイアフラム7で吸収できる。本実施形態では、スリーブ9の外周面に上下方向に延びる直線状の溝として通路91が形成されており、周方向に間隔をあけて複数の通路91が形成されている。しかし、通路91の形状はこれに限定されず、種々の形状とできる。
ここで、従来のMRFデバイスの多くでは、ラジアル転がり軸受を使用するか、軸受自体を使用していない。一般的にラジアル転がり軸受は、ラジアル荷重が小さく高速回転する回転軸に適するとされている。ところが、MRFデバイスは比較的低回転域で使用されることが多い。一方、MRFデバイスの特徴の一つである高応答性を活かすため、回転軸からのトルク伝達には、いわゆるリジットタイプのカップリングを介して被回転体(図示しない)と連結されることが多い。このリジットタイプのカップリングは、MRFデバイスの出力トルクをリニアに伝達できる特徴を有するが、被回転体との軸芯の位置ずれ、角度ずれの影響を直接的に回転軸に伝達してしまう。そのため、転がり軸受の使用に適さない偏荷重が継続的に発生するおそれがあり、MRFデバイスの短寿命化を招く可能性がある。また、転がり軸受は、内輪、転動体、外輪より構成されるため、軸径に対して軸受外径が大きくなり、その結果、MRFデバイスが大型化してしまう。他方、軸受を使用しない形態においては回転軸のラジアル方向の保持がシール部材に依存することとなるため、シール部材の損傷を早め、ケース外部へのMRF漏出につながるおそれがある。
前記問題に対し、本実施形態のMRFデバイス1では、複数のすべり軸受8を用いることにより、耐ラジアル荷重性の向上を果たしている。また、内部側すべり軸受82は、MRF6に常時接するように配置されているが、転がり軸受のような転動体が存在しないことから、MRF6による軸受性能の低下も最低限に抑えることができる。また、入出力側すべり軸受81については、例えば、焼結合金にフッ素樹脂を含浸させたものを使用することで、給油等のメンテナンス作業をせずに使用し続けることが可能となっている。
また、回転軸4の基端部42は、前述したように下部ヨーク22の中心部の当接部222に接触している。これにより、下向きのスラスト方向押し付け荷重に対抗した状態で回転軸4がケース2によって支持される。更に、回転軸4の基端部42はテーパー形状とされて下部ヨーク22との接触面積が抑えられている。このため、回転軸4の下部ヨーク22に対する接触抵抗が軽減されている。
また、回転軸4においてディスク3に対する結合箇所43の上方には段差44が形成されており、この段差44が、ケース2の内部に設けられた環状のストッパー102に接触している。これにより、上向きのスラスト方向引っ張り荷重に対抗した状態で回転軸4が支持される。なお、ストッパー102は摺動性の高い材料(例えば、銅合金や樹脂材料)から形成されており、回転軸4との接触抵抗が軽減されている。
磁場発生部5はコイル51とコイル51を支持するボビン52を備える。コイル51は環状であって、上部ヨーク21と下部ヨーク22が組み合わされた状態における空間に配置される。図示していないが、コイル51にはケース2の外部から励磁のための電力が供給される。コイル51の上下側と径内側に接している部材はボビン52である。ボビン52と上部ヨーク21の間、ボビン52と下部ヨーク22の間の各々にはOリング等のパッキン103が嵌め込まれており、MRF6がパッキン103を越えて径外側に漏れないようにされている。コイル51に通電すると、コイル51の周囲に上部ヨーク21、下部ヨーク22、上部ヨーク21と下部ヨーク22の間に位置するMRF6、ディスク3を通って一周する磁路Mが形成される(図2に二点鎖線で示す)。この磁路Mにより、ディスク3にトルクを作用させることができる。
本実施形態で磁気回路を構成する部品は、上部ヨーク21、下部ヨーク22、ダイアフラム押さえ部23、ディスク3である。これらの部品に磁性体である軟磁性材料(例えば、パーマロイや純鉄)を使用することで効果的にトルクの向上を図ることができるが、材料自体が極めて高価であり、また加工の難しい難削材であることから、MRFデバイスの製造コストが高価になる傾向がある。このため、本実施形態で磁気回路を構成する部品には、機械構造用炭素綱(例えば、S10Cといった炭素量の少ない材料)が使用されている。これにより、製造コストの上昇を防ぎつつ、例えば、加工前の材料に磁気焼鈍を施すことにより、比較的安価に透磁率を上げることができる。
ここで、軟磁性材料と比較して、機械構造用炭素綱を使用した場合、コイルの通電を停止した後の磁性材料の残磁が問題となることが多い。この問題に対しては、消磁手段(例えば、本願の出願人による特開2018-35920号公報参照)を設けることによって、極めて短時間で残磁をなくすことができる。
また一般的に、上部ヨーク21、下部ヨーク22、ダイアフラム押さえ部23、取付板24といった外気に触れる部品においては、錆の発生を防ぎ、美観を向上する目的でメッキが施される。多くは膜厚管理の容易な無電解ニッケルメッキが使用されるが、無電解ニッケルメッキにおいてはメッキ後の熱処理により非磁性から強磁性へと磁気特性を変化させる必要がある。しかし、完成部品に対する熱処理は部品の歪みを生じさせることが多く、高い形状精度が求められるMRFデバイスへ無電解ニッケルメッキの部品を適用すると、歪みによってMRFの漏出等の不都合が発生するおそれがある。本実施形態においては、無電解ニッケルメッキを使用せず電気ニッケルメッキを使用することで、メッキ後の熱処理を必要とせずに、防錆性を有しかつ強磁性である表面状態を得ている。
以上、本実施形態のMRFデバイス1は、大型化することなく、かつ、構造を複雑化することなく入出力に係るトルクの増大を実現できる。本実施形態のMRFデバイス1は、ブレーキやクラッチを始めとして種々のデバイスに利用できる。
以上、本発明につき一実施形態を取り上げて説明してきたが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、前記実施形態で磁気回路を構成する部品は、上部ヨーク21、下部ヨーク22、ダイアフラム押さえ部23、ディスク3であった。しかし、磁路Mの設定によっては、前記部品からダイアフラム押さえ部23を除外することができる。この際、ダイアフラム押さえ部23を非磁性体からなるようにしてよい。例えば、ダイアフラム押さえ部23を、アルミニウム等の放熱性のよい材料で構成することで、上部ヨーク21、下部ヨーク22、MRF6等の温度を下げることができる。
また、ディスク3は、少なくとも径方向外側の領域が磁性体から形成されていればよく、非磁性体と磁性体が接合されて形成されていてもよい。
また、前記実施形態では、ディスク3の外周部32が、円板部31の外縁との接続部分を基準として上下対称形とされていた。しかしこれに限られず、上下非対称形であってもよい。
また、回転軸4の基端部形状はテーパー形状に限らず、半球状、円錐状等の形状とすることもできる。テーパー形状と同様、下方へのスラスト方向押し付け荷重が回転軸4にかかった際に回転抵抗の上昇を防ぐことができる。
また、前記実施形態では、回転軸4に非磁性のオーステナイト系ステンレス(例えばSUS303やSUS304)を使用していた。しかしこれに限らず、非磁性材料であれば目的に応じ、合成樹脂、アルミ合金、高強度オーステナイト系ステンレスといった材料を使用することもできる。
また、前記実施形態では、磁気粘性流体に空気を混入したが、混入する気体としては、窒素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。
また、前記実施形態では、ディスクをH字形としたが、円板形又はL字形等、どのような形状のディスクに構成してもよい。
また、前記実施形態では、貫通孔を閉じる弾性部材としてダイアフラム7を挙げたが、ゴム等でなる板状部材から構成してもよい。また、収容部220の形状に合わせて前記ダイアフラム7や前記板状部材が変形し易いように、ダイアフラム7の厚みや板状部材の厚みを部分的に変更してもよい。
1…MRFデバイス、2…ケース、2a…スリット孔(貫通孔)、3…ディスク、4…回転軸、5…磁場発生部、6…磁気粘性流体(MRF)、7…ダイアフラム、7A…円形部、7B…鍔部、8…すべり軸受、9…スリーブ、21…上部ヨーク、22…下部ヨーク、23…ダイアフラム押さえ部、24…取付板、31…第1部分(円板部)、32…第2部分(外周部)、33…貫通穴、34…結合箇所(ディスク)、41…突出部分、42…基端部(軸端)、43…結合箇所(回転軸)、44…段差、51…コイル、52…ボビン、81…入出力側すべり軸受、82…内部側すべり軸受、91…通路、101…回転軸シール部材、102…ストッパー、103…パッキン、220…収容部、221…ダイアフラム収納凹部、222…当接部、231…凹部、241…穴、M…磁路

Claims (4)

  1. 磁気粘性流体が封入されたケースと、
    少なくとも径方向外側の領域が磁性体から形成されており、前記ケースの内部において前記磁気粘性流体に接しつつ回転するディスクと、
    前記ディスクの径方向中央に固定された回転軸と、
    前記磁気粘性流体及び前記ディスクに磁路が通るように磁場を発生させる磁場発生部と、
    前記回転軸を回転可能に支持する複数のすべり軸受と、を備え、
    前記ディスクは、径方向断面において径方向に延びる第1部分と、当該第1部分の外縁から軸方向の二方に延びる第2部分とを備え
    前記複数のすべり軸受のうち少なくとも一部は、前記ケースの内部において前記磁気粘性流体に接して設けられるMRFデバイス。
  2. 前記ディスクは、厚さ方向に貫通する複数の貫通穴を備える、請求項1に記載のMRFデバイス。
  3. 前記回転軸は、前記ディスクに対して軽圧入により固定される、請求項1または2に記載のMRFデバイス。
  4. 前記回転軸と前記すべり軸受との間に、前記回転軸と共に回転する筒状のスリーブを備え、
    前記スリーブは、前記磁気粘性流体が通過する通路を軸方向に沿うように備える、請求項1~3のいずれかに記載のMRFデバイス。
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