本願は、先行する日本国出願である特願2017-59384(出願日:2017年3月24日)の優先権の利益を享受するものであり、その開示内容全体は引用することにより本明細書の一部とされる。
以下、本発明の実施形態に係る導電性フィルム、タッチパネル、および画像表示装置について、図面を参照しながら説明する。本明細書における「光透過性」とは、光を透過させる性質を意味する。また「光透過性」とは、必ずしも透明である必要はなく、半透明であってもよい。図1は本実施形態に係る導電性フィルムの概略構成図であり、図2は本実施形態に係る導電性フィルムの模式的な平面図であり、図3は図1に示される導電性フィルムの一部の拡大図である。図4は、電気抵抗値を測定する際のサンプルの平面図であり、図5は、折り畳み試験の様子を模式的に示した図である。図6~図8は本実施形態に係る導電性フィルムの製造工程を模式的に示した図である。
<<<導電性フィルム>>>
図1に示される導電性フィルム10は、光透過性基材11と、光透過性基材11の一方の面11A側に設けられた複数の光透過性の導電部12と、光透過性基材11の一方の面11A側に設けられ、かつ導電部12間に位置する光透過性の非導電部13と、光透過性基材11における導電部12および非導電部13側の面とは反対側の面である他方の面11B側に設けられた光透過性機能層14とを備えている。ただし、導電性フィルム10は、光透過性基材11と、導電部12と、非導電部13とを備えていればよく、光透過性機能層14を備えていなくともよい。光透過性機能層14は、他方の面11B側に設けられているが、光透過性機能層は、光透過性基材11と導電部12および非導電部13との間に設けられていてもよく、また光透過性機能層は、光透過性基材11における他方の面11B側のみならず、導電部12および非導電部13との間にも設けられていてもよい。また、図1に示される導電性フィルム10においては、片面側のみに導電部12および非導電部13が設けられているが、導電性フィルムの両面側に導電部が設けられていてもよい。導電性フィルム10の表面10Aは、導電部12の表面12Aおよび非導電部13の表面13Aから構成されている。
導電性フィルム10は、ヘイズ値(全ヘイズ値)が5%以下となっていることが好ましい。導電性フィルム10のヘイズ値が5%を超えると、光学的性能が不充分となるおそれがある。ヘイズ値は、JIS K7136:2000に準拠して、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、村上色彩技術研究所製)を用いて、求めることができる。ヘイズ値は、導電性フィルム全体で測定したときの値であり、また50mm×100mmの大きさに切り出した後、カールや皺がなく、かつ指紋や埃等がない状態で導電部側が非光源側となるように設置し(両面に導電部が形成されている場合はこの限りではない)、導電性フィルム1枚に対して3回測定して得られた値の算術平均値とする。本明細書における「3回測定する」とは、同じ場所を3回測定するのではなく、異なる3箇所を測定することを意味するものとする。導電性フィルム10は、目視した表面10Aは平坦であり、かつ導電部12等の積層する層も平坦であり、また膜厚のばらつきも±10%の範囲内に収まる。したがって、切り出した導電性フィルムの異なる3箇所でヘイズ値を測定することで、おおよその導電性フィルムの面内全体のヘイズ値の平均値が得られると考えられる。なお、導電性フィルムを上記大きさに切り出せない場合には、例えば、HM-150は測定する際の入口開口が20mmφであるので、直径21mm以上となるような大きさのサンプルが必要になる。このため、22mm×22mm以上の大きさに導電性フィルムを適宜切り出してもよい。導電性フィルムの大きさが小さい場合は、光源スポットが外れない範囲で少しずつずらす、または角度を変えるなどして測定点を3箇所にする。導電性フィルム10のヘイズ値は、3%以下、2%以下、1.5%以下、1.2%以下、1.1%以下の順に好ましい(数値が小さいほど好ましい)。得られるヘイズ値のばらつきは、測定対象が1m×3000mと長尺であっても、5インチのスマートフォン程度の大きさであっても、±10%以内であり、上記好ましい範囲になる場合には、低ヘイズおよび低抵抗値がより得られやすい。
導電性フィルム10は、全光線透過率が80%以上であることが好ましい。導電性フィルムの全光線透過率が80%未満であると、光学的性能が不充分となるおそれがある。全光線透過率は、JIS K7361-1:1997に準拠して、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、村上色彩技術研究所製)を用いて、求めることができる。全光線透過率は、導電性フィルム全体で測定したときの値であり、また50mm×100mmの大きさに切り出した後、カールや皺がなく、かつ指紋や埃等がない状態で導電部側が非光源側となるように設置し(両面に導電部が形成されている場合はこの限りではない)、導電性フィルム1枚に対して3回測定して得られた値の算術平均値とする。導電性フィルム10は、目視した表面10Aは平坦であり、かつ導電部12等の積層する層も平坦であり、また膜厚のばらつきも±10%の範囲内に収まる。したがって、切り出した導電性フィルムの異なる3箇所の全光線透過率を測定することで、おおよその導電性フィルムの面内全体の全光線透過率の平均値が得られると考えられる。なお、導電性フィルムを上記大きさに切り出せない場合には、例えば、HM-150は測定する際の入口開口が20mmφであるので、直径21mm以上となるような大きさのサンプルが必要になる。このため、22mm×22mm以上の大きさに導電性フィルムを適宜切り出してもよい。導電性フィルムの大きさが小さい場合は、光源スポットが外れない範囲で少しずつずらす、または角度を変えるなどして測定点を3箇所にする。導電性フィルム10の全光線透過率は、85%以上、88%以上、89%以上の順にさらに好ましい(数値が大きいほど好ましい)。得られる全光線透過率のばらつきは、測定対象が1m×3000mと長尺であっても、5インチのスマートフォン程度の大きさであっても、±10%以内であり、上記好ましい範囲になる場合には、低ヘイズおよび低抵抗値がより得られやすい。なお、導電性フィルムを搭載したタッチパネルセンサーなどの複数層が重なった積層体全体においても、上記と同じの全光線透過率であることが好ましい。
導電性フィルム10は、フレキシブル性を有していることが好ましい。具体的には、導電性フィルム10に対し導電性フィルム10の対向する辺部の間隔が6mmとなるように180°折り畳む試験(折り畳み試験)を2万回繰り返し行った場合であっても、折り畳み試験前後の導電性フィルム10の導電部12の表面12Aにおける後述する電気抵抗値比が3以下であることが好ましい。導電性フィルムに対し折り畳み試験を2万回繰り返し行った場合に、折り畳み試験前後の導電性フィルムの導電部の表面における電気抵抗値比が3を超えていると、導電性フィルムに割れ等が生じているおそれがあるので、導電性フィルムのフレキシブル性が不充分となる。ここで、折り畳み試験によって、導電性フィルムに割れ等が発生すると、導電性が低下してしまうので、折り畳み試験後の導電性フィルムの導電部の表面における電気抵抗値が折り畳み試験前の導電性フィルムの導電部の表面における電気抵抗値よりも上昇してしまう。このため、折り畳み試験前後の導電性フィルムの導電部の表面における電気抵抗値比を求めることにより、導電性フィルムに割れ等が生じているか否かが判断できる。折り畳み試験を上記回数繰り返し行う場合、いずれの場合であっても、折り畳み試験前後の導電性フィルム10の導電部12の表面12Aにおける電気抵抗値比は、1.5以下であることがより好ましい。折り畳み試験は、導電部12が内側となるように導電性フィルム10を折り畳むように行われてもよく、また導電部12が外側となるように導電性フィルム10を折り畳むように行われてもよいが、いずれの場合であっても、折り畳み試験前後の導電性フィルム10の導電部12の表面12Aにおける電気抵抗値比が3以下であることが好ましい。
折り畳み試験を行う際には、まず、折り畳み試験前の導電性フィルム10の任意の箇所から、導電部12を含むように所定の大きさ(例えば、縦125mm×横50mmの長方形形状)のサンプルS(図4参照)を切り出す。なお、125mm×50mmの大きさにサンプルを切り出せない場合には、例えば、110mm×50mmの大きさにサンプルを切り出してもよい。折り畳み試験前の導電性フィルムからサンプルSを切り出した後、折り畳み試験前の各サンプルSにおいて、導電部12の表面12Aの電気抵抗値を測定する。具体的には、図4に示されるようにサンプルSの長手方向の両端部(例えば、各縦10mm×横50mmの部分)上に、電気抵抗値の測定距離が変動するのを防ぐために、銀ペースト(製品名「DW-520H-14」、東洋紡社製)を塗布し、130℃で30分加熱して、各サンプル上の両端部に硬化した銀ペースト20を設け、その状態で、サンプルSの電気抵抗値をテスター(製品名「Digital MΩ Hitester 3454-11」、日置電機社製)を用いて、測定する。なお、銀ペースト20間の距離(銀ペースト20が設けられていない部分の距離)が、サンプルSにおける電気抵抗値の測定距離(例えば、100mm)となる。電気抵抗値の測定の際には、テスターのプローブ端子は、両端部に設けられた硬化した銀ペースト20のそれぞれに接触させる。折り畳み試験前のサンプルSにおいて、導電部12の表面12Aの電気抵抗値を測定した後、サンプルSに対し、折り畳み試験を行う。
折り畳み試験は、以下のようにして行われる。図5(A)に示すように折り畳み試験においては、まず、選択されたサンプルSの辺部S1と、辺部S1と対向する辺部S2とを、平行に配置された固定部25でそれぞれ固定する。また、図5(A)に示すように、固定部25は水平方向にスライド移動可能になっている。
次に、図5(B)に示すように、固定部25を互いに近接するように移動させることで、サンプルSの中央部S3を折り畳むように変形させ、更に、図5(C)に示すように、サンプルSの固定部25で固定された対向する2つの辺部S1、S2の間隔が6mmとなる位置まで固定部25を移動させた後、固定部25を逆方向に移動させてサンプルSが変形を解消させる。
図5(A)~(C)に示すように固定部25を移動させることで、サンプルSを中央部S3で180°折り畳むことができる。また、サンプルSの屈曲部S4が固定部25の下端からはみ出さないように折り畳み試験を行い、かつ固定部25が最も接近したときの間隔を6mmに制御することで、サンプルSの対向する2つの辺部S1、S2の間隔を6mmにできる。この場合、屈曲部S4の外径を6mmとみなす。なお、サンプルSの厚みは、固定部25の間隔(6mm)と比較して充分に小さな値であるため、サンプルSの折り畳み試験の結果は、サンプルSの厚みの違いによる影響は受けないとみなすことができる。
折り畳み試験を行った後、折り畳み試験後のサンプルSにおいて、折り畳み試験前のサンプルSと同様にして、導電部の表面の電気抵抗値を測定する。そして、選択された折り畳み試験前のサンプルSの電気抵抗値に対する折り畳み試験後のサンプルSの電気抵抗値の比(選択された折り畳み試験後のサンプルの電気抵抗値/折り畳み試験前のサンプルの電気抵抗値)を求める。なお、電気抵抗値比は、3回測定して得られた値の算術平均値とする。
導電性フィルム10を含む本発明の導電性フィルムの用途は、特に限定されず、例えば、透明導電膜が用いられる様々な用途で用いてもよい。また、本発明の導電性フィルムは、画像表示装置(スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末、パーソナルコンピュータ、テレビジョン、デジタルサイネージ、パブリックインフォメーションディスプレイ(PID)、車載ディスプレイ等を含む)関連製品以外に、住宅や車(電車や車両建設用機械等、あらゆる車を含む)で用いられる電化製品や窓に用いてもよい。特に、本発明の導電性フィルムは、透明性を重視される部分に好適に用いることができる。また、本発明の導電性フィルムは、透明性等の技術的観点のみならず、意匠性やデザイン性が求められる電化製品にも好適に用いることができる。本発明の導電性フィルムの具体的な用途としては、例えば、デフロスター、アンテナ、太陽電池、オーディオシステム、スピーカー、扇風機、電子黒板や半導体用のキャリアフィルム等が挙げられる。
本発明の導電性フィルムは、所望の大きさにカットされていてもよいが、ロール状であってもよい。本発明の導電性フィルムが所望の大きさにカットされている場合、導電性フィルムの大きさは、特に制限されず、画像表示装置の表示面の大きさに応じて適宜決定される。具体的には、導電性フィルムの大きさは、例えば、5インチ以上500インチ以下となっていてもよい。本明細書における「インチ」とは、導電性フィルムが四角形状である場合には対角線の長さを意味し、円形状である場合には直径を意味し、楕円形状である場合には、短径と長径の和の平均値を意味するものとする。ここで、導電性フィルムが四角形状である場合、上記インチを求める際の導電性フィルムの縦横比は、画像表示装置の表示画面として問題がなければ特に限定されない。例えば、縦:横=1:1、4:3、16:10、16:9、2:1等が挙げられる。ただし、特に、デザイン性に富む車載用途やデジタルサイネージにおいては、このような縦横比に限定されない。また、導電性フィルム10の大きさが大きい場合には、任意の位置からA4サイズ(210mm×297mm)やA5サイズ(148mm×210mm)など適宜扱いやすい大きさに切り出した後、各測定項目の大きさに切り出すものとする。
<<光透過性基材>>
光透過性基材11としては、光透過性を有する樹脂からなる基材が挙げられる。このような樹脂としては、光透過性を有すれば特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリエステル系樹脂、芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、アセチルセルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはこれらの樹脂を2種以上混合した混合物等が挙げられる。
導電性フィルムとして、折り畳み可能な導電性フィルムを得る場合には、光透過性基材を構成する樹脂としては、折り畳み性が良好であることから、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、またはこれらの混合物を用いることが好ましい。また、これらの中でも、優れた折り畳み性を有するだけでなく、優れた硬度及び透明性をも有し、また、耐熱性にも優れ、焼成することにより、更に優れた硬度及び透明性を付与することもできることから、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはこれらの混合物が好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン基材等が挙げられる。環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えばノルボルネン骨格を有するものが挙げられる。
ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、ビスフェノール類(ビスフェノールA等)をベースとする芳香族ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等の脂肪族ポリカーボネート等が挙げられる。
ポリアクリレート系樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)の少なくとも1種が挙げられる。
芳香族ポリエーテルケトン系樹脂としては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。
アセチルセルロース系樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロースが挙げられる。トリアセチルセルロースは、可視光域380~780nmにおいて、平均光透過率を50%以上とすることが可能な樹脂である。トリアセチルセルロースの平均光透過率は70%以上、更に85%以上であることが好ましい。
なお、トリアセチルセルロースとしては、純粋なトリアセチルセルロース以外に、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートの如くセルロースとエステルを形成する脂肪酸として酢酸以外の成分も併用した物であってもよい。また、これらトリアセチルセルロース系樹脂には、必要に応じて、ジアセチルセルロース等の他のセルロース低級脂肪酸エステル、或いは可塑剤、紫外線吸收剤、易滑剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。
ポリイミド系樹脂は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させて得られるものである。ポリイミド系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、優れた光透過性および優れた剛性を有する点から、下記一般式(1)および下記一般式(3)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を有することが好ましい。
上記一般式(1)において、R1はテトラカルボン酸残基である4価の基、R2は、trans-シクロヘキサンジアミン残基、trans-1,4-ビスメチレンシクロヘキサンジアミン残基、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン残基、および下記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基を表す。nは繰り返し単位数を表し、1以上である。本明細書において、「テトラカルボン酸残基」とは、テトラカルボン酸から、4つのカルボキシル基を除いた残基をいい、テトラカルボン酸二無水物から酸二無水物構造を除いた残基と同じ構造を表す。また、「ジアミン残基」とは、ジアミンから2つのアミノ基を除いた残基をいう。
上記一般式(2)において、R
3およびR
4はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、またはパーフルオロアルキル基を表す。
上記一般式(3)において、R5はシクロヘキサンテトラカルボン酸残基、シクロペンタンテトラカルボン酸残基、ジシクロヘキサン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸残基、および4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基、R6は、ジアミン残基である2価の基を表す。n’は繰り返し単位数を表し、1以上である。
上記一般式(1)における、R1はテトラカルボン酸残基であり、前記例示されたようなテトラカルボン酸二無水物から酸二無水物構造を除いた残基とすることができる。上記一般式(1)におけるR1としては、中でも、光透過性を向上し、かつ剛性を向上する点から、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸残基、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸残基、ピロメリット酸残基、2,3’,3,4’-ビフェニルテトラカルボン酸残基、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸残基、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸残基、4,4'-オキシジフタル酸残基、シクロヘキサンテトラカルボン酸残基、およびシクロペンタンテトラカルボン酸残基からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、さらに、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸残基、4,4’-オキシジフタル酸残基、および3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸残基からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
R1において、これらの好適な残基を合計で、50モル%以上含むことが好ましく、更に70モル%以上含むことが好ましく、より更に90モル%以上含むことが好ましい。
また、R1として、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸残基、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸残基、およびピロメリット酸残基からなる群から選択される少なくとも1種のような剛直性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループA)と、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸残基、2,3’,3,4’-ビフェニルテトラカルボン酸残基、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸残基、4,4'-オキシジフタル酸残基、シクロヘキサンテトラカルボン酸残基、およびシクロペンタンテトラカルボン酸残基からなる群から選択される少なくとも1種のような透明性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループB)とを混合して用いることも好ましい。
この場合、前記剛直性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループA)と、透明性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループB)との含有比率は、透明性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループB)1モルに対して、前記剛直性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループA)が0.05モル以上9モル以下であることが好ましく、更に0.1モル以上5モル以下であることが好ましく、より更に0.3モル以上4モル以下であることが好ましい。
上記一般式(1)におけるR2としては、中でも、光透過性を向上し、かつ剛性を向上する点から、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン残基、および上記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基であることが好ましく、更に、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン残基、ならびに、R3およびR4がパーフルオロアルキル基である上記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基であることが好ましい。
上記一般式(3)におけるR5としては、中でも、光透過性を向上し、かつ剛性を向上する点から、4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸残基、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸残基、及びオキシジフタル酸残基を含むことが好ましい。
R5において、これらの好適な残基を、50モル%以上含むことが好ましく、更に70モル%以上含むことが好ましく、より更に90モル%以上含むことが好ましい。
上記一般式(3)におけるR6はジアミン残基であり、前記例示されたようなジアミンから2つのアミノ基を除いた残基とすることができる。上記一般式(3)におけるR6としては、中でも、光透過性を向上し、かつ剛性を向上する点から、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン残基、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン残基、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン残基、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン残基、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン残基、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ジフェニルエーテル残基、1,4-ビス[4-アミノ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ]ベンゼン残基、2,2-ビス[4-(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン残基、4,4’-ジアミノ-2-(トリフルオロメチル)ジフェニルエーテル残基、4,4’-ジアミノベンズアニリド残基、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミド残基、及び9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基を含むことが好ましく、更に、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン残基、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン残基、及び4,4’-ジアミノジフェニルスルホン残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基を含むことが好ましい。
R6において、これらの好適な残基を合計で、50モル%以上含むことが好ましく、更に70モル%以上含むことが好ましく、より更に90モル%以上含むことが好ましい。
また、R6として、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン残基、4,4’-ジアミノベンズアニリド残基、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミド残基、パラフェニレンジアミン残基、メタフェニレンジアミン残基、および4,4’-ジアミノジフェニルメタン残基からなる群から選択される少なくとも1種のような剛直性を向上するのに適したジアミン残基群(グループC)と、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン残基、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン残基、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン残基、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン残基、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ジフェニルエーテル残基、1,4-ビス[4-アミノ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ]ベンゼン残基、2,2-ビス[4-(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン残基、4,4’-ジアミノ-2-(トリフルオロメチル)ジフェニルエーテル残基、及び9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン残基からなる群から選択される少なくとも1種のような透明性を向上するのに適したジアミン残基群(グループD)とを混合して用いることも好ましい。
この場合、前記剛直性を向上するのに適したジアミン残基群(グループC)と、透明性を向上するのに適したジアミン残基群(グループD)との含有比率は、透明性を向上するのに適したジアミン残基群(グループD)1モルに対して、前記剛直性を向上するのに適したジアミン残基群(グループC)が0.05モル以上9モル以下であることが好ましく、更に0.1モル以上5モル以下であることが好ましく、0.3モル以上4モル以下であることがより好ましい。
上記一般式(1)および上記一般式(3)で表される構造において、nおよびn’はそれぞれ独立に、繰り返し単位数を表し、1以上である。ポリイミドにおける繰り返し単位数nは、後述する好ましいガラス転移温度を示すように、構造に応じて適宜選択されれば良く、特に限定されない。平均繰り返し単位数は、通常10~2000であり、更に15~1000であることが好ましい。
また、ポリイミド系樹脂は、その一部にポリアミド構造を含んでいても良い。含んでいても良いポリアミド構造としては、例えば、トリメリット酸無水物のようなトリカルボン酸残基を含むポリアミドイミド構造や、テレフタル酸のようなジカルボン酸残基を含むポリアミド構造が挙げられる。
ポリイミド系樹脂は、耐熱性の点から、ガラス転移温度が250℃以上であることが好ましく、更に、270℃以上であることが好ましい。一方、延伸の容易さやベーク温度低減の点から、ガラス転移温度が400℃以下であることが好ましく、更に、380℃以下であることが好ましい。
ポリアミド系樹脂は、脂肪族ポリアミドのみならず、芳香族ポリアミド(アラミド)を含む概念である。ポリイミド系樹脂またはポリアミド系樹脂の重量平均分子量は、3000以上50万以下の範囲であることが好ましく、5000~30万の範囲であることがより好ましく、1万以上20万以下の範囲であることが更に好ましい。重量平均分子量が3000未満であると、充分な強度が得られないことがあり、50万を超えると粘度が上昇し、溶解性が低下するため、表面が平滑で膜厚が均一な基材が得られないことがある。本明細書における「重量平均分子量」は、テトラヒドロフラン(THF)等の溶媒に溶解して、従来公知のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算により得られる値である。
ポリイミド系樹脂およびポリアミド系樹脂のなかでも、優れた透明性を有することから、分子内又は分子間の電荷移動が起こりにくい構造を有するポリイミド系樹脂またはポリアミド系樹脂が好ましく、具体的には、フッ素化ポリイミド系樹脂、脂環構造を有するポリイミド系樹脂、ハロゲン基を有するポリアミド系樹脂が挙げられる。
また、フッ素化ポリイミド系樹脂では、フッ素化された構造を有するため、高い耐熱性を有しており、ポリイミド系樹脂からなる基材の製造時の熱によって着色されることもないので、優れた透明性を有する。
ポリイミド系樹脂からなる基材およびポリアミド系樹脂からなる基材は、市販のものを用いても良い。ポリイミド系樹脂からなる基材の市販品としては、例えば、三菱ガス化学社製のネオプリム等が挙げられ、ポリアミド系樹脂からなる基材の市販品としては、例えば、東レ社製のミクトロン等が挙げられる。
光透過性基材11の厚みは、特に限定されないが、3μm以上500μm以下とすることが可能であり、光透過性基材11の厚みの下限はハンドリング性等の観点から10μm以上、20μm以上の順に好ましい(数値が大きいほど好ましい)。光透過性基材11の厚みの上限は薄膜化の観点から250μm以下、100μm以下、80μm以下、60μm以下、40μm以下の順に好ましい(数値が小さいほど好ましい)。光透過性基材の厚みは、後述する導電部の膜厚の測定方法と同様の方法により測定することができる。
光透過性基材11の表面には、接着性向上のために、コロナ放電処理、酸化処理等の物理的な処理が表面に施されたものであってもよい。また、光透過性基材11は、少なくとも一方の面側に、他の層との接着性を向上させるため、巻き取り時の貼り付きを防止するため、および/または他の層を形成する塗布液のはじきを抑制するための下地層を有するものであってもよい。ただし、本明細書においては、光透過性基材の少なくとも一方の面側に存在し、かつ光透過性基材に接する下地層は、光透過性基材の一部をなすものとし、光透過性機能層には含まれないものとする。
下地層は、例えば、アンカー剤やプライマー剤を含んでいる。アンカー剤やプライマー剤としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレンと酢酸ビニルまたはアクリル酸などとの共重合体、エチレンとスチレンおよび/またはブタジエンなどとの共重合体、オレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂および/またはその変性樹脂、電離放射線重合性化合物の重合体、および熱重合性化合物の重合体等の少なくともいずれかを用いることが可能である。
下地層は、上記したように巻き取り時の貼り付き防止のために、易滑剤等の粒子を含んでいてもよい。粒子としては、シリカ粒子等が挙げられる。
<<光透過性機能層>>
光透過性機能層14は、光透過性基材11における他方の面11B側に配置されている。本明細書における「光透過性機能層」とは、光透過性を有し、かつ導電性フィルムにおいて、何らかの機能を発揮することを意図された層である。具体的には、光透過性機能層としては、例えば、ハードコート機能、屈折率調整機能、溶出抑制機能および/または色味調整機能を発揮するための層が挙げられる。光透過性機能層は、単層のみならず、2層以上積層されたものであってもよい。光透過性機能層が2層以上積層されたものである場合、それぞれの層が有する機能は同じであってもよいが、異なっていてもよい。本実施形態においては、光透過性機能層14が、ハードコート機能を発揮する層、すなわちハードコート層である場合について説明する。
光透過性機能層14は、上記したようにハードコート層として機能するので、光透過性機能層14は、JIS K5600-5-4:1999で規定される鉛筆硬度試験(4.9N荷重)で「H」以上の硬度を有する層となっている。鉛筆硬度を「H」以上とすることにより、導電性フィルム10が硬くなり、耐久性を向上させることができる。なお、光透過性機能層の靱性およびカールの防止の観点から、光透過性機能層14の表面の鉛筆硬度の上限は4H程度程とすることが好ましい。
光透過性機能層14の膜厚は0.5μm以上15μm以下であることが好ましい。光透過性機能層14の膜厚がこの範囲であれば、所望の硬度を得ることができる。光透過性機能層の膜厚は、後述する導電部の膜厚の測定方法と同様の方法により測定することができる。光透過性機能層14の膜厚の下限は、カールの発生を抑制する観点から、1μm以上、1.5μm以上、2μm以上の順にさらに好ましい(数値が大きいほど好ましい)。また、光透過性機能層14の膜厚の上限は、光透過性機能層の割れを抑制する観点から、12μm以下、10μm以下、7μm以下、5μm以下の順にさらに好ましい(数値が小さいほど好ましい)。また、光透過性機能層の薄膜化を図る一方で、カールの発生を抑制する観点から、光透過性機能層14の膜厚は0.5μm以上10μm以下であることがさらに好ましい。
光透過性機能層14は、ハードコート層として機能するので、光透過性機能層14の膜厚としては、上記範囲が好ましいが、光透過性機能層が光透過性基材からのオリゴマー等の溶出を抑制する溶出抑制層として機能する場合には、光透過性機能層の膜厚は、10nm以上400nm以下が好ましく、50nm以上150nm以下がより好ましい。
光透過性機能層14は、少なくとも光透過性樹脂から構成することが可能である。なお、光透過性機能層14は、樹脂の他に、無機粒子、有機粒子およびレベリング剤を含んでいてもよい。
<光透過性樹脂>
光透過性機能層14における光透過性樹脂としては、重合性化合物の重合体(硬化物、架橋物)を含むものが挙げられる。光透過性樹脂は、重合性化合物の重合体の他、溶剤乾燥型樹脂を含んでいてもよい。重合性化合物としては、電離放射線重合性化合物および/または熱重合性化合物が挙げられる。
電離放射線重合性化合物は、1分子中に電離放射線重合性官能基を少なくとも1つ有する化合物である。本明細書における「電離放射線重合性官能基」とは、電離放射線照射により重合反応し得る官能基である。電離放射線重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和基が挙げられる。なお、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」および「メタクリロイル基」の両方を含む意味である。また、電離放射線重合性化合物を重合する際に照射される電離放射線としては、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、およびγ線が挙げられる。
電離放射線重合性化合物としては、電離放射線重合性モノマー、電離放射線重合性オリゴマー、または電離放射線重合性プレポリマーが挙げられ、これらを適宜調整して、用いることができる。電離放射線重合性化合物としては、電離放射線重合性モノマーと、電離放射線重合性オリゴマーまたは電離放射線重合性プレポリマーとの組み合わせが好ましい。
電離放射線重合性モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を含むモノマーや、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
電離放射線重合性オリゴマーとしては、2官能以上の多官能オリゴマーが好ましく、電離放射線重合性官能基が3つ(3官能)以上の多官能オリゴマーが好ましい。上記多官能オリゴマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル-ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
電離放射線重合性プレポリマーは、例えば、1万の重量平均分子量を有していてもよい。電離放射線重合性プレポリマーの重量平均分子量としては1万以上8万以下が好ましく、1万以上4万以下がより好ましい。重量平均分子量が8万を超える場合は、粘度が高いため塗工適性が低下してしまい、得られる光透過性機能層の外観が悪化するおそれがある。多官能プレポリマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、ポリエステル-ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
熱重合性化合物は、1分子中に熱重合性官能基を少なくとも1つ有するものである。本明細書における「熱重合性官能基」とは、加熱により同じ官能基同士または他の官能基との間で重合反応し得る官能基である。熱重合性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、アミノ基、環状エーテル基、メルカプト基等が挙げられる。
熱重合性化合物としては、特に限定されず、例えば、エポキシ化合物、ポリオール化合物、イソシアネート化合物、メラミン化合物、ウレア化合物、フェノール化合物等が挙げられる。
溶剤乾燥型樹脂は、熱可塑性樹脂等、塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂である。溶剤乾燥型樹脂を添加した場合、光透過性機能層14を形成する際に、塗液の塗布面の被膜欠陥を有効に防止することができる。溶剤乾燥型樹脂としては特に限定されず、一般に、熱可塑性樹脂を使用することができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂及びゴム又はエラストマー等を挙げることができる。
熱可塑性樹脂は、非結晶性で、かつ有機溶媒(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶媒)に可溶であることが好ましい。特に、透明性や耐候性という観点から、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類等)等が好ましい。
<無機粒子>
無機粒子は、光透過性機能層14の機械的強度や鉛筆強度を向上させるための成分であり、無機粒子としては、例えば、シリカ(SiO2)粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、酸化スズ粒子、アンチモンドープ酸化スズ(略称:ATO)粒子、酸化亜鉛粒子等の無機酸化物粒子が挙げられる。これらの中でも、硬度をより高める観点からシリカ粒子が好ましい。シリカ粒子としては、球形シリカ粒子や異形シリカ粒子が挙げられるが、これらの中でも、異形シリカ粒子が好ましい。本明細書における「球形粒子」とは、例えば、真球状、楕円球状等の粒子を意味し、「異形粒子」とは、ジャガイモ状のランダムな凹凸を表面に有する形状の粒子を意味する。上記異形粒子は、その表面積が球状粒子と比較して大きいため、このような異形粒子を含有することで、上記重合性化合物等との接触面積が大きくなり、光透過性機能層14の鉛筆硬度をより優れたものとすることができる。光透過性機能層14に含まれているシリカ粒子が異形シリカ粒子であるか否かは、光透過性機能層14の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)で観察することによって確認することができる。球形シリカ粒子を用いる場合、球形シリカ粒子の粒子径が小さいほど、光透過性機能層の硬度が高くなる。これに対し、異形シリカ粒子は、市販されている最も小さい粒子径の球形シリカ粒子ほど小さくなくとも、この球形シリカと同等の硬度を達成することができる。
異形シリカ粒子の平均一次粒子径は、1nm以上100nm以下であることが好ましい。異形シリカ粒子の平均一次粒子径がこの範囲であっても、平均一次粒子径が1nm以上45nm以下の球形シリカと同等の硬度を達成することができる。異形シリカ粒子の平均一次粒子径は、光透過性機能層の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影した光透過性機能層の断面の画像から粒子の外周の2点間距離の最大値(長径)と最小値(短径)とを測定し、平均して粒子径を求め、20個の粒子の粒子径の算術平均値とする。また、球形シリカ粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影した粒子の断面の画像から20個の粒子の粒子径を測定し、20個の粒子の粒子径の算術平均値とする。走査透過型電子顕微鏡(STEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、断面写真の撮影を行う際には、検出器(選択信号)を「TE」、加速電圧を「30kV」、エミッションを「10μA」にして観察を行う。その他のSTEMによる断面写真の撮影条件は、後述の条件を参照できる。なお、平均一次粒子径測定には、後述するような画像データを2値化処理して算出することもできる。
光透過性機能層14中の無機粒子の含有量は、20質量%以上70質量%以下であることが好ましい。無機粒子の含有量が20質量%未満であると、十分な硬度を担保することが難しくなり、また無機粒子の含有量が70質量%を超えると、充填率が上がりすぎてしまい、無機粒子と樹脂成分との密着性が悪化し、かえって光透過性機能層の硬度を低下させてしまう。
無機粒子としては、表面に電離放射線重合性官能基を有する無機粒子(反応性無機粒子)を用いることが好ましい。このような表面に電離放射線重合性官能基を有する無機粒子は、シランカップリング剤等によって無機粒子を表面処理することによって作成することができる。無機粒子の表面をシランカップリング剤で処理する方法としては、無機粒子にシランカップリング剤をスプレーする乾式法や、無機粒子を溶剤に分散させてからシランカップリング剤を加えて反応させる湿式法等が挙げられる。
<有機粒子>
有機粒子も、光透過性機能層14の機械的強度や鉛筆強度を向上させるための成分であり、有機粒子としては、例えば、プラスチックビーズを挙げることができる。プラスチックビーズとしては、具体例としては、ポリスチレンビーズ、メラミン樹脂ビーズ、アクリルビーズ、アクリル-スチレンビーズ、シリコーンビーズ、ベンゾグアナミンビーズ、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合ビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ等が挙げられる。
<<導電部>>
導電部12は、図3に示されるように、光透過性樹脂15と、光透過性樹脂15中に配置された導電性繊維16とを含んでいる。本明細書における「導電部」とは、走査透過型電子顕微鏡(STEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、断面を観察したときに、導電性繊維を含む層を意味する。導電部の界面が確認しにくい場合には、導電部の表面にスパッタ法によりPt-PdやAu等の金属層を形成する等の電子顕微鏡観察で一般的に用いられる前処理を行うとよい。また、四酸化オスミウム、四酸化ルテニウム、リンタングステン酸など染色処理を施すと、有機層間の界面が見やすくなるので、導電性フィルム全体を樹脂にて包埋した後、染色処理を行ってもよい。また、「導電部」とは、光透過性樹脂と、光透過性樹脂中に配置された導電性繊維を含み、かつ表面から導通可能な部分を意味し、層状のものおよび層状以外のものの両方を含む概念である。また、本明細書における「導電性繊維」とは、導電性を有し、かつ長さが太さ(例えば直径)に比べて十分に長い形状を持つものであり、例えば、概ね長さが太さの5倍以上のものは導電性繊維に含まれるものとする。また、図3に示されるように、導電部12の光透過性樹脂15は、非導電部13の光透過性樹脂15と繋がっていてもよい。導電部12は、光透過性樹脂15中に存在する反応抑制剤をさらに含むことが好ましい。
導電部12は、導電部12の表面12Aから電気的に導通可能となっている。導電部が、導電部の表面から電気的に導通可能であるか否かは、導電部の表面抵抗値を測定することによって判断することが可能である。導電部の表面抵抗値の測定方法は、後述するので、ここでは説明を省略するものとする。導電部の表面抵抗値の算術平均値が1×106Ω/□未満であれば、導電部の表面から電気的な導通が得られていると判断できる。なお、後述するように、大部分の導電性繊維16は導電部12の膜厚の半分の位置HLより光透過性基材11側に存在しているが、その他の導電性繊維16は光透過性基材11側に存在している導電性繊維16上に積み重なることにより、導電部12の膜厚の半分の位置HLから表面12A側にも存在し、また導電部12の表面12Aにも存在しているので、導電部12は、表面12Aから電気的に導通可能となっている。
導電部12においては、図3に示されるように導電性繊維16が導電部12(光透過性樹脂15)の膜厚の半分の位置HLより光透過性基材11側に偏在していることが好ましい。導電性繊維16が導電部12の膜厚の半分の位置HLより光透過性基材11側に偏在しているか否かは、以下のようにして判断することができる。まず、導電性フィルムから断面観察用のサンプルを作製する。詳細には、2mm×5mmに切り出した導電性フィルムをシリコーン系の包埋板に入れ、エポキシ系樹脂を流し込み、導電性フィルム全体を樹脂にて包埋する。その後、包埋樹脂を65℃で12時間以上放置して、硬化させる。その後、ウルトラミクロトーム(製品名「ウルトラミクロトーム EM UC7」、ライカ マイクロシステムズ社製)を用いて、送り出し厚み100nmに設定し、超薄切片を作製する。作製した超薄切片をコロジオン膜付メッシュ(150)にて採取し、STEM用サンプルとする。なお、このサンプルにおいて導通が得られないとSTEMによる観察像が見えにくい場合があるため、Pt-Pdを20秒程度スパッタすることが好ましい。スパッタ時間は、適宜調整できるが、10秒では少なく、100秒では多すぎるためスパッタした金属が粒子状の異物像になるため注意する必要がある。その後、走査透過型電子顕微鏡(STEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、STEM用サンプルの導電部の断面写真を撮影する。この断面写真の撮影の際には、検出器(選択信号)を「TE」、加速電圧を30kV、エミッションを「10μA」にしてSTEM観察を行う倍率については5000倍~20万倍でフォーカスを調節し、コントラストおよび明るさを各層が見分けられるよう適宜調節する。好ましい倍率は、1万倍~10万倍、更に好ましい倍率は1万倍~5万倍であり、最も好ましい倍率2.5万倍~5万倍である。なお、断面写真の撮影の際には、さらに、アパーチャーをビームモニタ絞り3、対物レンズ絞りを3にし、またW.D.を8mmにしてもよい。そして、このように撮影した10箇所の上記断面写真を用意する。導電部の断面写真を撮影した後、各断面写真において導電部の膜厚の半分の位置を求める。そして、断面写真に現れている導電性繊維がこの半分の位置よりも光透過性基材側に存在するか否かを判断する。具体的には、まず、上記電子顕微鏡における導電部の断面写真においては、導電性繊維は、光透過性樹脂よりも濃色(例えば、黒色)で写るので、導電部の断面写真において、導電性繊維を確認することができる。一方で、この断面写真を拡大していくと、画素が現れる。画素は、同じ大きさで、しかも方眼状(格子状)となっているので、各断面写真において、上記半分の位置より光透過性基材側に位置する導電性繊維が表示されている画素の個数および上記半分の位置より導電部の表面側に位置する導電性繊維が表示されている画素の個数を数え、導電性繊維が表示されている画素の全個数に対する上記半分の位置より光透過性基材側に位置する導電性繊維が表示されている画素の個数の割合を求める。ここで、導電性繊維が表示されている画素が上記半分の位置に跨っている場合には、各画素において、上記半分の位置から光透過性基材側に存在している部分と、この位置から導電部の表面側に存在している部分とに分けて、分けた部分の面積比に基づいて1画素を分けるものとする。そして、この断面写真から求めた上記割合を、導電部の膜厚の半分の位置より光透過性基材側に位置する導電性繊維の存在割合とし、この存在割合が55%以上である場合を、導電性繊維が導電部の膜厚の半分の位置より光透過性基材側に偏在していると判断する。この存在割合は、各断面写真から求めた存在割合の算術平均値とする。なお、表面抵抗値が低い場合には、導電部中に導電性繊維が一様に存在するので、導電部の一部の断面写真を用いて導電性繊維の存在割合を求めたとしても、導電部全体における導電性繊維の存在割合を表しているものと考えられる。上記断面写真から求めた導電部の膜厚の半分の位置より光透過性基材側に位置する導電性繊維の存在割合は70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。
導電性繊維16が導電部12の膜厚の半分の位置HLより光透過性基材11側に偏在しているか否かは、以下のようにして判断することもできる。まず、導電性フィルムの導電部の表面にスパッタ法によりPt-Pd、PtやAu等の金属層を形成した第1のサンプルと、導電性フィルムの表面に金属層を形成していない第2のサンプルとを用意する。そして、第1のサンプルを用いて、後述する測定方法で、導電部12の膜厚を測定する。また、第2のサンプルを用いて、上述した方法で、導電部の断面写真を撮影し、断面写真データを画像解析・計測ソフトウェア(製品名「WinROOF Version7.4」、三谷商事株式会社製)で読み込み、2値化処理を行う。STEM観察は電子線の透過の違いによってコントラストをつけるため密度の高い金属は電子線を透過させにくいため黒色系、金属よりも密度の低い有機物は白色系になるため、データの黒色部分を導電性繊維とし、黒色部分でない白色から灰色の部分を光透過性樹脂と判断することができる。したがって、導電部の膜厚の半分の位置より光透過性基材側の領域において黒色部分が占める割合が、上記半分の位置より導電部の表面側の領域において黒色部分が占める割合よりも多い場合には、導電性繊維16が導電部12の膜厚の半分の位置HLより光透過性基材11側に偏在していると判断することができる。なお、黒色部分の抽出は、輝度により行うことができる。また、面積の計測は金属と有機物ではコントラストがはっきりと異なることから自動面積計測のみで行うことができる。
上記2値化処理による面積計測は、以下の手順によって行う。まず、上記ソフトウェアで断面写真の画像を読み込み、ソフトウェアの画像ウインドウへ呼び出す。そして、画像ウインドウ内で、画像処理対象とする領域ROI(処理範囲)で、膜厚の半分から下、上をそれぞれ選択し、それぞれで2値化して導電性繊維の部分の総面積を算出する。処理範囲の設定は、画像ツールバーから描画する長方形ROIボタンを選択し、画像ウインドウ内に長方形のROIを設定することにより行う。上記ソフトウェアでは計測値は画素単位で出力されるが、キャリブレーションにより計測値を実際の長さに換算し出力できる。面積割合で計算する場合、導電性繊維が光透過性基材側に偏在しているか否かを判断するためには実際の長さへの換算は必要ないが、導電性フィルムにおいて表面抵抗値やヘイズと、繊維の存在状態をイメージするためにキャリブレーションする。STEM画像には、スケール表示があるので、それを利用してROI領域内のキャリブレーションを実施できる。具体的には、画像ツールバーから、ラインROIボタンを使用し、STEM画像のスケールの長さ分のラインを引き、キャリブレーションダイアログを表示し、設定されたラインをチェックし、STEM画像のスケールに相当する長さと単位を設定する。2値化処理では、計測したい導電性繊維の部分の領域と、その他の領域を分離する。具体的には、2値化処理メニューから、2つの閾値による2値化を選択する。導電性繊維は、濃度が濃く、黒色に見え、その他の部分は白色~灰色に見えるため、その2つの濃度(明るさ)閾値を適宜入力(例えば0と80など)して2つの閾値で2値化処理を実行する。実際のSTEM画像の導電性繊維と、閾値によって2色表示(導電性繊維が緑色になるなど)になった2値化処理画像の導電性繊維が一致していなかった場合には、閾値の数値を適宜変更し、最もSTEM画像に近くなるまで修正する。例えば、STEM画像と2値化処理画像との差は、2値化処理メニューより、穴埋めや削除を選択して適宜補正する。導電性繊維と比較して2値化の導電性繊維の着色が不足していれば穴埋め、逆に余分な着色部分は削除する。なお、穴埋めや削除は、面積の閾値設定で抽出領域を埋めることができ、または削除できる。削除したい部分をクリックすると、そこを削除するための閾値が得られる。その他、必要に応じて2値化処理メニュー内の項目で、STEM画像と、2値化処理画像を可能な限り修正、一致させる。また、消しゴムツールボタンを用いて、手動で2値化処理画像の不必要な部分を選択削除することも可能である。また、ペンツールボタンを用いて、手動でウインドウにペイントし、着色修正することも可能である。この作業が終了したら、計測メニューの形状特徴を選択し、測定したい項目の面積を選択する。導電性繊維毎の面積が計測され、合計値なども計測できる。上記作業によって、導電層膜厚の半分より下の総合面積、上の総合面積をそれぞれ計測し、更に、膜厚の半分から下領域ROIと、上領域ROIの面積を、それぞれ、手動で計測し、割合を算出する。手動計測は、計測メニューから手動計測の中のライン長計測を選択、ライン長の測定項目を全て選択すると可能になる。ライン長ツールパレット内のツールを適宜用い、始点、終点をマウスでドラッグするとライン測定でき、ROI面積が算出できる。なお、上記作業内容は、WinROOF Version7.4ユーザーズマニュアルに従うものとする。
導電部12の表面12Aにおける抵抗値(表面抵抗値)は1000Ω/□以下となっていることが好ましい。導電部12の表面12Aにおける表面抵抗値が1000Ω/□を超えると、特にタッチパネル用途では、応答速度が遅くなる等の不具合が発生するおそれがある。表面抵抗値は、JIS K7194:1994(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)に準拠した接触式の抵抗率計(製品名「ロレスタAX MCP-T370型」、三菱化学アナリテック社製、端子形状:ASPプローブ)および非破壊式(渦電流法)の抵抗率計(製品名「EC-80P」、ナプソン社製、<URL:https://www.napson.co.jp/wp/wp-content/uploads/2016/08/Napson_EC80P_リーフレット_160614.pdf>)のいずれを用いて測定できるが、導電部の膜厚に因らずに正確に測定できる点から、非破壊式の抵抗率計を用いて測定することが好ましい。非破壊式の抵抗率計のプローブは、サンプルに簡易接触させるだけで測定できるものであり、サンプルにダメージを与えず、任意の場所の測定が可能である。その意味で、非接触式と呼ぶ場合もある。非破壊式の抵抗率計による導電部の表面抵抗値の測定は、80mm×50mmの大きさに切り出した導電性フィルムを平らなガラス板上に導電部側が上面となるように配置して、プローブを導電部に接触させて行うものとする。EC-80Pを用いて表面抵抗値を測定する場合には、SW2を選択し、モードM-Hのシート抵抗測定Ω/□を選択する。また、測定レンジによってプローブタイプを容易に付け替えることができ、本実施形態においては測定レンジが10~1000Ω/□レンジのプローブ、0.5~10Ω/□レンジのプローブを用いる。なお、EC-80Pの代わりにEC-80P-PN(ナプソン社製)でも同様に測定できるが、この機種の場合には、P/NはPを選択するとよい。また、接触式の抵抗率計による導電部の表面抵抗値の測定は、80mm×50mmの大きさに切り出した導電性フィルムを平らなガラス板上に導電部側が上面となるように配置して、ASPプローブを導電部の中心に配置し、全ての電極ピンを導電部に均一に押し当てることによって行うものとする。接触式の抵抗率計で表面抵抗値を測定する際には、シート抵抗を測定するモードであるΩ/□を選択する。その後は、スタートボタンを押し、ホールドすると、測定結果が表示される。表面抵抗値の測定は、抵抗率計の種類に関わらず、23℃および相対湿度55%の環境下で行うものとする。また、表面抵抗値を測定する際には、抵抗率計の種類に関わらず、水平な机の上に導電性フィルムを配置し、均一な平面状態で測定を行うが、導電性フィルムがカールする等平面状態を維持できない場合には、導電性フィルムをテープ等でガラス板に貼り付けた状態で行うものとする。測定箇所は、導電性フィルムの中心部の3箇所とし、表面抵抗値は、3箇所の表面抵抗値の算術平均値とする。ここで、JIS K7194:1994に全て従うと、測定点は1点、5点、または9点であるが、実際に80mm×50mmの大きさに導電性フィルムを切り出し、JIS K7194:1994の図5の通り測定すると、測定値が不安定になる場合がある。このため、測定点については、JIS K7194:1994とは異なり、導電部の中央部3箇所で測定するものとする。例えば、JIS K7194:1994の図5の1番の位置、1番および7番の間の位置(好ましくは1番に近い位置)、および1番と9番に間の位置(好ましくは1番に近い位置)で測定する。表面抵抗値をサンプルの中心付近で測定することが望ましいことは、井坂 大智、他1名、“四探針法による導電性薄膜の抵抗率測定” 平成20年度電子情報通信学会東京支部学生研究発表会<URL:https://www.ieice.org/tokyo/gakusei/kenkyuu/14/pdf/120.pdf>)でも報告されている。導電性フィルム10の表面抵抗値の下限は、1Ω/□以上、5Ω/□以上、10Ω/□以上の順に好ましく(数値が大きいほど好ましい)、また導電性フィルム10の表面抵抗値の上限は、200Ω/□以下、100Ω/□以下、70Ω/□以下、60Ω/□以下、50Ω/□以下の順にさらに好ましい(数値が小さいほど好ましい)。
導電部12の膜厚は、300nm未満とすることが好ましい。導電部の膜厚が300nm以上であると、その分、光透過性樹脂の膜厚が厚すぎることになるので、全ての導電性繊維が光透過性樹脂に埋もれてしまうことによって、一部の導電性繊維が導電部の表面に露出しなくなってしまい、導電部の表面から電気的な導通が得られないおそれがある。導電部の膜厚が大きくなればなるほど、導電性繊維同士が重なる部分が増えるために、1Ω/□以上10Ω/□以下の低表面抵抗値も達成することが可能であるが、導電性繊維が重なり過ぎると低ヘイズ値の維持が困難になる場合もある。このため、膜厚は300nm以下が好ましい。なお、低表面抵抗値が維持できる限り導電部は薄膜である方が光学特性、薄膜化の観点から好ましい。導電部12の膜厚の上限は、薄型化を図る観点および低ヘイズ値等良好な光学特性を得る観点から、145nm、140nm以下、120nm以下、110nm以下、80nm以下、50nm以下の順にさらに好ましい(数値が小さいほど好ましい)。また、導電部12の膜厚の下限は、10nm以上であることが好ましい。導電部の膜厚が10nm未満であると、その分、光透過性樹脂15の膜厚が薄すぎることになるので、導電部からの導電性繊維の脱離、導電部の耐久性の悪化、耐擦傷性の低下が生ずるおそれがある。また、導電性繊維が切れやすいなど不安定性がないようにするためには、導電性繊維の繊維径がある程度大きいことが好ましい。導電性繊維が安定して形態を維持できる繊維径としては、10nm以上または15nm以上であると考えられる。一方で、安定な電気的導通を得るためには、導電性繊維が2本以上重なって接触していることが望ましいため、導電部12の膜厚の下限は、20nm以上または30nm以上であることがより好ましい。
導電部12の膜厚は、走査透過型電子顕微鏡(STEM)、または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影された導電部の断面写真からランダムに10箇所厚みを測定し、測定された10箇所の厚みの算術平均値とする。具体的な断面写真の撮影方法を以下に記載する。まず、上記と同様の方法にて導電性フィルムから断面観察用のサンプルを作製する。なお、このサンプルにおいて導通が得られないとSTEMによる観察像が見えにくい場合があるため、Pt-Pdを20秒程度スパッタすることが好ましい。スパッタ時間は、適宜調整できるが、10秒では少なく、100秒では多すぎるためスパッタした金属が粒子状の異物像になるため注意する必要がある。その後、走査透過型電子顕微鏡(STEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、STEM用サンプルの断面写真を撮影する。この断面写真の撮影の際には、検出器(選択信号)を「TE」、加速電圧を「30kV」、エミッションを「10μA」にしてSTEM観察を行う。倍率については、フォーカスを調節しコントラストおよび明るさを各層が見分けられるか観察しながら5000倍~20万倍で適宜調節する。好ましい倍率は、1万倍~10万倍、更に好ましい倍率は1万倍~5万倍であり、最も好ましい倍率2.5万倍~5万倍である。なお、断面写真の撮影の際には、さらに、アパーチャーをビームモニタ絞り3、対物レンズ絞りを3にし、またW.D.を8mmにしてもよい。導電部の膜厚を測定する際には、断面観察した折に、導電部と他の層(光透過性機能層や包埋樹脂等)との界面コントラストが可能な限り明確に観察できることが重要となる。仮に、コントラスト不足でこの界面が見え難い場合には、導電部の表面にスパッタ法によりPt-Pd、PtやAu等の金属層を形成する等の電子顕微鏡観察で一般的に用いられる前処理を行ってもよい。また、四酸化オスミウム、四酸化ルテニウム、リンタングステン酸など染色処理を施すと、有機層間の界面が見やすくなるので、染色処理を行ってもよい。また、界面のコントラストは高倍率である方が分かりにくい場合がある。その場合には、低倍率も同時に観察する。例えば、2.5万倍と5万倍や、5万倍と10万倍など、高低の2つの倍率で観察し、両倍率で上記した算術平均値を求め、更にその平均値を導電部の膜厚の値とする。
導電部12は、光透過性樹脂15の膜厚を越える粒径を有する無機粒子等の粒子を含まないことが好ましい。導電部がこのような粒子を含むと、光透過性樹脂の表面から粒子が突出してしまい、導電部の膜厚が大きくなってしまう。ここで、光透過性樹脂の表面から粒子が突出している場合には、導電部の膜厚は、導電部の光透過性基材側の面から粒子の頂点までの距離とする。また、導電部12は、粒径に因らず、無機粒子等の粒子自体を含まないことがより好ましい。ただし、例えば導電性繊維16を形成するための中間工程で得られる金属系核粒子の残渣や、導電性繊維自身に何らかの物質が修飾されている場合は、それは導電性繊維の一部分とみなせるため、これらは粒子に含まれないものとする。なお、導電部12は、導電性繊維14とは異なる材質の無機繊維を含んでいてもよい。
製品から導電部12の表面抵抗値を測定する場合には、導電性能はどの部分でも均一であり、製品の中央部と端部で表面抵抗値は同じであるとみなすことができるので、表面抵抗値の測定箇所は製品の中央部に限らず、端部であってもよい。また、製品から導電部12の表面抵抗値を測定する場合には、適宜以下の前処理を実施してもよい。測定可能な状態になればよいので、以下の方法に限らないが、導電性繊維に影響を与えないことが重要である。すなわち、導電部が既に明確に見えて、粘着層が極めて薄膜と推測できる場合はそのままでも測定可能なので、無理に全てを剥離しない方がよい。ただし、なるべく薄くする前処理をした方が好ましい。例えば、導電性フィルムがタッチパネルのセンサーとして使用されている場合には、導電性フィルム上には、粘着層を介してカバーフィルムやガラスが存在する。このため、まず、端にカッターの刃を入れてカバーフィルムまたはカバーガラスを剥離する。容易に剥離しない場合は、無理に剥離せずに、次工程に移る。次いで、40℃の温水に10秒浸し取り出すことを3回繰り返す。その後にカッターなどで粘着層の剥がれ具合を確認し、場合によっては、40℃の温水に10秒浸し、取り出すことを更に3回繰り返す。その後、粘着層を、ゆっくりと導電部に傷つけないようなツール(薄く平らだが刃のないもの)で粘着層を剥いでいく。なお、全面剥離できなくとも、測定したい部位で剥離できればよい。なお、この前処理は表面抵抗値以外の他の測定の際にも用いることができる。
導電部12は、例えば、投影型静電容量方式のタッチパネルにおけるX方向の電極として機能するものであり、図2に示されるようにX方向に延びた複数のセンサ部12Bと、各センサ部12Bに連結した端子部(図示せず)とを備えている。各センサ部12Bは、タッチ位置を検出され得る領域である矩形状のアクティブエリア内に設けられており、端子部は、アクティブエリアに隣接し、アクティブエリアを四方から周状に取り囲む領域である非アクティブエリア内に設けられている。
各センサ部12Bは、直線状に延びるライン部12Cと、ライン部12Cから膨出した膨出部12Dとを有している。図2においては、ライン部12Cは、センサ部12Bの配列方向と交差する方向に沿って直線状に延びている。膨出部12Dは光透過性基材11の表面に沿ってライン部12Cから膨らみ出ている部分である。したがって、各センサ部12Bの幅は、膨出部12Dが設けられている部分においては太くなっている。本実施形態においては、膨出部12Dは平面視略正方形状の外輪郭を有している。なお、膨出部12Dは平面視略正方形状に限らず、菱形状、またはストライプ状であってもよい。
<光透過性樹脂>
光透過性樹脂15は、導電部12からの導電性繊維16の脱離を防ぎ、かつ導電部12の耐久性や耐擦傷性を向上させるために、導電性繊維16を覆うものであるが、導電部12の表面12Aから電気的な導通が得られる程度に導電性繊維16を覆うものである。具体的には、上記したように一部の導電性繊維が、導電部の表面に露出していないと、導電部の表面から電気的な導通が得られないおそれがあるので、光透過性樹脂15は、一部の導電性繊維16が導電部12の表面12Aから露出するように導電性繊維16を覆っていることが好ましい。一部の導電性繊維16が導電部12の表面12Aに露出するように導電性繊維16を光透過性樹脂15で覆うためには、例えば、光透過性樹脂15の膜厚を調整すればよい。すなわち、光透過性樹脂の膜厚が厚すぎると、全ての導電性繊維が光透過性樹脂に埋もれてしまうことによって、一部の導電性繊維が導電部の表面に露出しなくなってしまい、導電部の表面から電気的な導通が得られないおそれがある。また、光透過性樹脂の膜厚が薄すぎると、導電部からの導電性繊維の脱離、導電部の耐久性の悪化、耐擦傷性の低下が生ずるおそれがあり、さらに導電性繊維が、全体として、導電部中において導電部の膜厚の半分の位置より光透過性基材側に偏在しなくなるおそれがある。このため、光透過性樹脂の膜厚を適度な厚みに調節する必要がある。
上記の観点から、光透過性樹脂15の膜厚は、300nm未満とすることが好ましい。光透過性樹脂15の膜厚は、導電部12の膜厚の測定方法と同様の方法にて測定することができる。光透過性樹脂15の膜厚の上限は、145nm以下、140nm以下、120nmnm、110nm以下、80nm以下、50nm以下の順にさらに好ましい(数値が小さいほど好ましい)。また、光透過性樹脂15の膜厚の下限は、10nm以上であることが好ましい。
光透過性樹脂15は、光透過性を有する樹脂であれば、特に限定されないが、光透過性樹脂としては、重合性化合物の重合体や熱可塑性樹脂等が挙げられる。重合性化合物としては、光透過性機能層14の欄で説明した重合性化合物と同様のものが挙げられるので、ここでは説明を省略するものとする。
<反応抑制剤>
反応抑制剤は、光透過性樹脂用組成物の塗布後に、導電性繊維16と雰囲気下の物質との反応による導電性低下を抑制するためのものである。反応抑制剤としては、例えば、ベンゾアゾール系化合物、トリアゾール系化合物、テトラゾール系化合物、イソシアヌル酸系化合物、アニリン系化合物等の窒素含有化合物等が挙げられる。反応抑制剤として用いられる窒素含有化合物としては、例えば、1-アミノベンゾアゾール、5-メチルベンゾトリアゾール、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-メチル-1H-テトラゾール-5-アミン、DL-α-トコフェロール、1-オクタデカンチオール、2-メルカプト-5-(トリフルオロメチル)ピリジン、イソシアヌル酸ジアリル、イソシアヌル酸ジアリルプロピル、6-アニリノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、チオシアヌル酸、3,5-ジメチル-1H-1,2,4-トリアゾール、4-(1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)アニリン、6-(ジブチルアミノ)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、4-(1,2,4-トリアゾール-1-イル)アニリン、2-メチルチオ-ベンゾチアゾール、1-フェニル-5-メルカプト-1H-テトラゾール、5-メルカプト-1-メチルテトラゾール、5-(メチルチオ)-1H-テトラゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール、1-(2-ジメチルアミノエチル)-5-メルカプトテトラゾール、1-(2-ジメチルアミノエチル)-5-メルカプトテトラゾール、1-(4-ヒドロキシフェニル)-5-メルカプト-1H-テトラゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾールが挙げられる。
導電部12中の反応抑制剤の含有量は、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましい。反応抑制剤の含有量が、0.01質量%未満であると、導電性繊維が雰囲気下の物質との反応してしまい、導電性が低下するおそれがある。また反応抑制剤は、導電性繊維の表面と反応することによって導電性繊維の表面を失活させて、導電性繊維が雰囲気下の物質と反応し難い状態を作り出すものであるが、反応抑制剤の含有量が、10質量%を超えると、導電性繊維における反応抑制剤との反応が導電性繊維の表面のみならず内部まで進行してしまい、導電性が低下するおそれがある。
<導電性繊維>
導電性繊維16は導電部12中に複数本存在していることが好ましい。導電性繊維16は、導電部12の表面12Aから電気的に導通可能となっているので、導電部12の厚み方向において導電性繊維16同士が接触している。
導電部12の膜厚の半分の位置HLより光透過性基材11側においては、導電性繊維16同士が接触することによって導電部12の平面方向(2次元方向)にネットワーク構造(網目構造)を形成していることが好ましい。導電性繊維16がネットワーク構造を形成することによって、少量の導電性繊維16であっても、効率良く導電経路を形成することができる。
一部の導電性繊維16は導電部12の表面12Aに露出していることが好ましい。なお、本明細書における「一部の導電性繊維が導電部の表面に露出している」とは、導電性繊維が導電部に固定される程度に導電性繊維の一部が露出していればよく、導電性繊維が導電部の表面から突出している場合も含まれるものとする。一部の導電性繊維が、導電部の表面に露出していないと、導電部の表面から電気的な導通が得られないおそれがあるので、上記の測定方法によって、導電部12の表面12Aから電気的な導通が得られれば、一部の導電性繊維16が、導電部12の表面12Aに露出していると判断できる。
導電性繊維16の繊維径は200nm以下であることが好ましい。導電性繊維の繊維径が200nmを超えると、導電性フィルムのヘイズ値が高くなり、または光透過性能が不充分となるおそれがある。導電性繊維16の繊維径のより好ましい下限は導電部12の導電性の観点から10nm以上であり、導電性繊維16の繊維径のより好ましい範囲は15nm以上50nm以下である。導電性繊維16の繊維径は、30nm以下であることが最も好ましい。
導電性繊維16の繊維径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)(製品名「H-7650」、日立ハイテクノロジーズ社製)を用い、10万倍~20万倍にて50枚撮像し、TEM付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の導電性繊維の繊維径を実測し、その算術平均値として求めるものとする。上記H-7650を用いて、繊維径を測定する際には、加速電圧を「100kV」、エミッション電流を「10μA」、集束レンズ絞りを「1」、対物レンズ絞りを「0」、観察モードを「HC」、Spotを「2」にする。また、走査透過型電子顕微鏡(STEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、日立ハイテクノロジーズ社製)によっても導電性繊維の繊維径を測定することが可能である。STEMを用いる場合には、10万倍~20万倍にて50枚撮像し、STEM付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の導電性繊維の繊維径を実測し、その算術平均値として導電性繊維の繊維径を求めるものとする。上記S-4800(TYPE2)を用いて、繊維径を測定する際には、信号選択を「TE」、加速電圧を「30kV」、エミッション電流を「10μA」、プローブ電流を「Norm」、焦点モードを「UHR」、コンデンサレンズ1を「5.0」、W.D.を「8mm」、Tiltを「0°」にする。
導電性繊維16の繊維径を測定する際には、以下の方法によって作製された測定用サンプルを用いる。ここで、TEM測定は高倍率のため、導電性繊維ができる限り重ならないように導電性繊維含有組成物の濃度をできる限り低下させることが重要である。具体的には、導電性繊維含有組成物を、組成物の分散媒に合わせて水またはアルコールで導電性繊維の濃度を0.05質量%以下に希釈し、または固形分が0.2質量%以下に希釈することが好ましい。さらに、この希釈した導電性繊維含有組成物をTEMまたはSTEM観察用のカーボン支持膜付きグリッドメッシュ上に1滴滴下し、室温で乾燥させて、上記条件で観察し、観察画像データとする。これを元に算術平均値を求める。カーボン支持膜付きグリッドメッシュとしては、Cuグリッド型番「♯10-1012 エラスチックカーボンELS-C10 STEM Cu100Pグリッド仕様」が好ましく、また電子線照射量に強く、電子線透過率がプラスチック支持膜より良いため高倍率に適し、有機溶媒に強いものが好ましい。また、滴下の際には、グリッドメッシュだけであると微小すぎ滴下しにくいため、スライドガラス上にグリッドメッシュを載せて滴下するとよい。
上記繊維径は、写真を元に実測して求めることができ、また画像データを元に2値化処理して算出してもよい。実測する場合、写真を印刷し適宜拡大してもよい。その際、導電性繊維は他の成分よりも黒さの濃度が濃く写り込む。測定点は、輪郭外側を起点、終点として測定する。導電性繊維の濃度は、導電性繊維含有組成物の全質量に対する導電性繊維の質量の割合で求めるものとし、また固形分は、導電性繊維含有組成物の全質量に対する分散媒以外の成分(導電性繊維、樹脂成分、その他の添加剤)の質量の割合によって求めるものとする。
導電性繊維16の繊維長は1μm以上であることが好ましい。導電性繊維16の繊維長が1μm未満であると、充分な導電性能を有する導電部を形成できないことがあり、凝集が発生してヘイズ値の上昇や光透過性能の低下を招くおそれがある。導電性繊維16の繊維長の上限は500μm以下、300μm以下、30μm以下、または20μm以下としてもよく、また導電性繊維16の繊維長の下限は3μm以上、または10μm以上としてもよい。
導電性繊維16の繊維長は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、日立ハイテクノロジーズ社製)のSEM機能を用い、500~2000万倍にて10枚撮像し、付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の導電性繊維の繊維長を測定し、その100本の導電性繊維の繊維長の算術平均値として求めるものとする。上記S-4800(TYPE2)を用いて、繊維長を測定する際には、45°傾斜の試料台を使用して、信号選択を「SE」、加速電圧を「3kV」、エミッション電流を「10μA~20μA」、SE検出器を「混合」、プローブ電流を「Norm」、焦点モードを「UHR」、コンデンサレンズ1を「5.0」、W.D.を「8mm」、Tiltを「30°」にする。なお、SEM観察時には、TE検出器は使わないので、SEM観察前にTE検出器は必ず抜いておく。上記S-4800は、STEM機能とSEM機能を選択できるが、上記繊維長の測定する際には、SEM機能を用いるものとする。
導電性繊維16の繊維長を測定する際には、以下の方法によって作製された測定用サンプルを用いる。まず、導電性繊維含有組成物をB5サイズの厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの未処理面に塗布量10mg/m2となるように塗布し、分散媒を乾燥させて、PETフィルム表面に導電性繊維を配置させて、導電性フィルムを作製する。この導電性フィルムの中央部から10mm×10mmの大きさに切り出す。そして、この切り出した導電性フィルムを、45°傾斜を有するSEM試料台(型番「728-45」、日新EM社製、傾斜型試料台45°、φ15mm×10mm M4アルミニウム製)に、銀ペーストを用いて台の面に対し平坦に貼り付ける。さらに、Pt-Pdを20秒~30秒スパッタし、導通を得る。適度なスパッタ膜がないと像が見えにくい場合があるので、その場合は適宜調整する。
上記繊維長は、写真を元に実測して求めることができ、また画像データを元に2値化処理して算出してもよい。写真を元に実測する場合、上記と同様の方法によって行うものとする。
導電性繊維16としては、導電性炭素繊維、金属ナノワイヤ等の金属繊維、金属被覆有機繊維、金属被覆無機繊維、およびカーボンナノチューブからなる群より選択される少なくとも1種の繊維であることが好ましい。
上記導電性炭素繊維としては、例えば、気相成長法炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ、ワイヤーカップ、ワイヤーウォール等が挙げられる。これらの導電性炭素繊維は、1種又は2種以上を使用することができる。
上記金属繊維としては、例えば、ステンレススチール、鉄、金、銀、銅、アルミニウム、コバルト、ニッケル、チタン、またはこれらの合金等を細く、長く伸ばす伸線法または切削法により作製された繊維が使用できる。このような金属繊維は、1種又は2種以上を使用することができる。金属繊維は、繊維径が200nm以下、好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下および繊維長が1μm以上、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上の金属ナノワイヤであることが好ましい。
上記金属被覆有機繊維としては、例えば、アクリル繊維に金、銀、アルミニウム、ニッケル、チタン等をコーティングした繊維等が挙げられる。このような金属被覆合成繊維は、1種又は2種以上を使用することができる。
<<非導電部>>
非導電部13は、導電部12間に位置し、かつ導電性を示さない部分である。本明細書においては、非導電部の表面における抵抗値(表面抵抗値)が、1500Ω/□以上であれば、非導電部は導電性を示さないと判断する。図3に示されるように、非導電部13は、光透過性樹脂を含み、実質的に導電性繊維16を含んでいない。本明細書における「非導電部が、実質的に導電性繊維を含んでいない」とは、導電部からの金属イオンのマイグレーションによって金属イオンが非導電部側に析出した場合であっても、導電部間の電気的な短絡が生じない程度であれば導電性繊維を若干含んでいてもよいことを意味する。非導電部13は、導電性繊維16を全く含んでいないことが好ましい。なお、後述するようにレーザー光で導電性繊維16を昇華させることによって、非導電部13から導電性繊維16を除去する際に、導電性繊維16を構成する導電性材料が残存するおそれがあるが、この導電性材料は繊維状ではないので、導電性繊維とはみなさない。本明細書においては、レーザー光によるエッチングを、ドライエッチングと称する。
非導電部13の表面13Aにおける三次元算術平均粗さSRaは、3nm以上となっている。非導電部13の表面13AにおけるSRaが3nm以上であれば、導電性繊維16が非導電部13中に残存していない、または導電性繊維16が非導電部13中に残存していても若干しか残存していないため、導電部12からの金属イオンのマイグレーションによって金属イオンが非導電部13側に析出した場合に、導電部12間の電気的な短絡を生ずることを抑制できる。三次元算術平均粗さSRaは、JIS B0601:1994に記載されている2次元粗さパラメータである算術平均粗さRaを三次元に拡張したものである。上記SRaは、接触式表面粗さ計や非接触式の表面粗さ計(例えば、干渉顕微鏡、共焦点顕微鏡、原子間力顕微鏡等)の測定により得られた三次元粗さ曲面から算出できる。上記三次元粗さ曲面のデータは、基準面(横方向をx軸、縦方向をy軸とする)において、間隔dで格子状に配置した点と、その点の位置における高さとで表される。すなわち、x軸方向にi番目、y軸方向にj番目の点の位置(以降(i,j)と表記する)における高さをZ
i,jとすると、上記SRaは、下記式で算出される。
式中、Nは全点数である。
上記三次元粗さ曲面は、簡便性から干渉顕微鏡を用いて測定することが好ましい。このような干渉顕微鏡としては、例えば、Zygo社製の「New View」シリーズ等の白色干渉顕微鏡が挙げられる。
また、SRaは、基準面に直交座標軸X、Y軸を置き、粗さ曲面をZ(x,y)、基準面の大きさをLx、Lyとすると、下記式でも算出される。
式中、A=Lx×Lyである。
白色干渉顕微鏡(製品名「New View7300」、Zygo社製)を用いて、非導電部の表面における上記SRaを求める場合には、まず、導電性フィルムから、非導電部を含む大きさ218μm角以上の1以上のサンプルを得る。各サンプルの大きさは、ハンドリング性を考慮すると、1cm角程度あれば充分であり、また各サンプルは、導電性フィルムにおける汚れや指紋等が付着していない任意の箇所から切り出すものとする。そして、以下の測定条件および解析条件で、非導電部の表面においてSRaを各サンプルにつき5箇所測定し、計5点以上のSRaの算術平均値をSRaとする。上記New View7300においては、SRaは「Ra」と表示されるが、New View7300で測定されるRaは三次元算術平均粗さであり、JIS B0601:2013で規定される二次元算術平均粗さRaとは異なる。なお、測定・解析ソフトにはMetroPro ver9.0.10のMicroscope Applicationを用いて行う。また、下記のLow wavelengthは、粗さパラメータにおけるカットオフ値λcに相当するものである。
(測定条件)
・対物レンズ:50倍
・Zoom:1倍
・測定領域:218μm×218μm
・解像度(1点当たりの間隔):0.22μm
・scan Length:5μm
・min mod:0.001%
(解析条件)
・Removed:Plane
・Filter:High Pass
・FilterType:GaussSpline
・Low wavelength:250μm
・High wavelength:3μm
・Remove spikes: on
・Spike Height(xRMS):2.5
・解析範囲:非導電部幅(μm)×218μm
具体的には、上記New View7300を用いて、例えば、非導電部の幅が30μmであり、この非導電部に隣接している2つ導電部の幅がそれぞれ3mm以上である導電性フィルムの非導電部の表面における上記SRaを求める場合には、まず、導電部の幅が3mmとなり、かつ導電部および非導電部の長さが45mmとなるように、導電性フィルムを切り出し、幅3mmの導電部によって挟まれた幅30μmの非導電部を有する1~3つのサンプルを得る。そして、以下の測定条件および解析条件で、非導電部の表面においてSRaを各サンプルにつき5箇所において測定し、計5点~15点のSRaの算術平均値をSRaとする。
(測定条件)
・対物レンズ:50倍
・Zoom:1倍
・測定領域:218μm×218μm
・解像度(1点当たりの間隔):0.22μm
・scan Length:5μm
・min mod:0.001%
(解析条件)
・Removed:Plane
・Filter:High Pass
・FilterType:GaussSpline
・Low wavelength:250μm
・High wavelength:3μm
・Remove spikes: on
・Spike Height(xRMS):2.5
・解析範囲:30μm×218μm
非導電部13の表面13AにおけるSRaの下限は、4nm以上となっていることが好ましく、5nm以上となっていることがより好ましい。また非導電部13の表面13AにおけるSRaの上限は、導電部や非導電部のパターン形状が視認されること(いわゆる、骨見え現象)を抑制する点からは、ある程度SRaが大きい方がよいが、SRaが大きすぎると白濁感が生じる原因となるので、80nm以下となっていることが好ましい。上記SRaの上限は、50nm以下であることがより好ましく、35nm以下であることがさらに好ましい。
非導電部13の膜厚は、導電部12と一体的に形成されるので、300nm未満であることが好ましい。非導電部13の膜厚の上限は、145nm以下、140nm以下、120nm以下、110nm以下、80nm以下、50nm以下、30nm以下、10nm以下の順にさらに好ましい(数値が小さいほど好ましい)。また、非導電部13の膜厚の下限は、10nm以上であることが好ましい。非導電部13の膜厚は、導電部12の膜厚と同様の方法によって測定するものとする。
図3に示されるように、非導電部13は、光透過性樹脂15から構成されている。なお、非導電部13は、ドライエッチングによって形成され、かつ導電性繊維16が存在しない空洞部13Bを有していてもよい。この場合、非導電部13を形成する際には導電性繊維16が昇華によって非導電部13とすべき領域を突き破って外に放出されるので、非導電部13の表面13Aは粗面化される。非導電部13の光透過性樹脂15は、導電部12の光透過性樹脂15と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
<<導電性フィルムの製造方法>>
導電性フィルム10は、例えば、以下のようにして作製することができる。まず、図6(A)に示されるように、光透過性基材11の他方の面11Bに光透過性機能層用組成物を塗布し、乾燥させて、光透過性機能層用組成物の塗膜31を形成する。
光透過性機能層用組成物は、重合性化合物を含むが、その他、必要に応じて、上記無機粒子、上記レベリング剤、溶剤、重合開始剤を添加してもよい。さらに、光透過性機能層用組成物には、光透過性機能層の硬度を高くする、硬化収縮を抑える、または屈折率を制御する等の目的に応じて、従来公知の分散剤、界面活性剤、シランカップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、難燃剤、紫外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、易滑剤等を添加していてもよい。
<溶剤>
溶剤としては、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、ベンジルアルコール、PGME、エチレングリコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、シクロヘプタノン、ジエチルケトン等)、エーテル類(1,4-ジオキサン、ジオキソラン、ジイソプロピルエーテルジオキサン、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン等)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタン等)、エステル類(蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸エチル等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、またはこれらの混合物が挙げられる。
<重合開始剤>
重合開始剤は、光または熱により分解されて、ラジカルやイオン種を発生させて重合性化合物の重合(架橋)を開始または進行させる成分である。光透過性機能層用組成物に用いられる重合開始剤は、光重合開始剤(例えば、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、光アニオン重合開始剤)や熱重合開始剤(例えば、熱ラジカル重合開始剤、熱カチオン重合開始剤、熱アニオン重合開始剤)、またはこれらの混合物が挙げられる。
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、チオキサントン等が挙げられる。
上記光ラジカル重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、IRGACURE184、IRGACURE369、IRGACURE379、IRGACURE651、IRGACURE819、IRGACURE907、IRGACURE2959、IRGACURE OXE01、ルシリンTPO(いずれもBASFジャパン社製)、NCI-930(ADEKA社製)、SPEEDCURE EMK(日本シーベルヘグナー社製)、ベンソインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル(いずれも東京化成工業社製)等が挙げられる。
上記光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等が挙げられる。上記光カチオン重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、アデカオプトマーSP-150、アデカオプトマーSP-170(いずれもADEKA社製)等が挙げられる。
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化物やアゾ化合物等が挙げられる。これらの中でも、高分子アゾ化合物からなる高分子アゾ開始剤が好ましい。高分子アゾ開始剤としては、例えば、アゾ基を介してポリアルキレンオキサイドやポリジメチルシロキサン等のユニットが複数結合した構造を有するものが挙げられる。
上記アゾ基を介してポリアルキレンオキサイド等のユニットが複数結合した構造を有する高分子アゾ開始剤としては、例えば、4,4'-アゾビス(4-シアノペンタン酸)とポリアルキレングリコールの重縮合物や、4,4'-アゾビス(4-シアノペンタン酸)と末端アミノ基を有するポリジメチルシロキサンの重縮合物等が挙げられる。
上記過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
上記熱ラジカル重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、パーブチルO、パーヘキシルO、パーブチルPV(いずれも日油社製)、V-30、V-501、V-601、VPE-0201、VPE-0401、VPE-0601(いずれも和光純薬工業社製)等が挙げられる。
上記熱カチオン重合開始剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩等の各種オニウム塩類等が挙げられる。上記熱カチオン重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、アデカオプトンCP-66、アデカオプトンCP-77(いずれもADEKA社製)、サンエイドSI-60L、サンエイドSI-80L、サンエイドSI-100L(いずれも三新化学工業社製)、CIシリーズ(日本曹達社製)等が挙げられる。
光透過性機能層用組成物における重合開始剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、0.5質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。重合開始剤の含有量をこの範囲内にすることにより、ハードコート性能が充分に保つことができ、かつ硬化阻害を抑制できる。
光透過性機能層用組成物を塗布する方法としては、スピンコート、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ダイコート法等の公知の塗布方法が挙げられる。
次いで、図6(B)に示されるように塗膜31に紫外線等の電離放射線を照射し、または加熱して、重合性化合物を重合(架橋)させることにより塗膜31を硬化させて、光透過性機能層14を形成する。
光透過性機能層用組成物を硬化させる際の電離放射線として、紫外線を用いる場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等から発せられる紫外線等が利用できる。また、紫外線の波長としては、190~380nmの波長域を使用することができる。電子線源の具体例としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が挙げられる。
光透過性基材11の他方の面11B上に光透過性機能層14を形成した後、光透過性基材11の一方の面11Aに、導電性繊維16および有機系分散媒を含む導電性繊維含有組成物を塗布し、乾燥させて、図7(A)に示されるように一方の面11Aに複数の導電性繊維16を配置させる。有機系分散媒は、10質量%未満の水を含んでいてもよい。なお、有機系分散媒の代わりに、水系分散媒を使用してもよい。水系分散媒は、10質量%以上の水を含むものである。また、導電性繊維含有組成物は、導電性繊維16および有機系分散媒の他、熱可塑性樹脂や重合性化合物からなる樹脂分を含ませてもよい。ただし、導電性繊維含有組成物中の樹脂分の含有量が多すぎると、導電性繊維間に樹脂分が入り込んでしまい、導電部の導通が悪化してしまうので、樹脂分の含有量を調節する必要がある。本明細書における「樹脂分」とは、樹脂(ただし、導電性繊維を覆う導電性繊維同士の自己溶着や雰囲気中の物質との反応から防ぐための等の、導電性繊維の合成時に導電性繊維周辺に形成された有機保護層を構成する樹脂(例えば、ポリビニルピロリドン等)は含まない)の他、重合性化合物のように重合して樹脂となり得る成分も含む概念である。また、導電性繊維含有組成物中の樹脂分は、導電部12を形成した後においては、光透過性樹脂15の一部を構成するものである。
有機系分散媒としては、特に限定されないが、親水性の有機系分散媒であることが好ましい。有機系分散媒としては、例えば、ヘキサン等の飽和炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;エチレンクロライド、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。これらの中でも、導電性繊維含有組成物の安定性の観点から、アルコール類が好ましい。
導電性繊維含有組成物に含まれていてもよい熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリビニルキシレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の芳香族系樹脂;ポリウレタン系樹脂;エポキシ系樹脂;ポリオレフィン系樹脂;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS);セルロース系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリアセテート系樹脂;ポリノルボルネン系樹脂;合成ゴム;フッ素系樹脂等が挙げられる。
導電性繊維含有組成物に含まれていてもよい重合性化合物としては、光透過性機能層14の欄で説明した重合性化合物と同様のものが挙げられるので、ここでは説明を省略するものとする。
光透過性基材11上に複数の導電性繊維16を配置させた後、重合性化合物および溶媒を含む光透過性樹脂用組成物を塗布し、乾燥させて、図7(B)に示されるように光透過性樹脂用組成物の塗膜32を形成する。光透過性樹脂用組成物は、重合性化合物および溶剤を含むが、その他、必要に応じて、重合開始剤や上記反応抑制剤を添加してもよい。ここで、反応抑制剤を、導電性繊維含有組成物に添加することも可能であるが、導電性繊維含有組成物に反応抑制剤を添加すると、導電性繊維がネットワーク構造を形成する前に導電性繊維の表面が反応抑制剤によって被覆されてしまい、導電性が悪化するおそれがあるので反応性抑制剤を光透過性樹脂用組成物に添加することが好ましい。
次いで、図8(A)に示されるように、塗膜32に紫外線等の電離放射線を照射して、重合性化合物を重合(架橋)させることにより塗膜32を硬化させて、光透過性樹脂15を形成して、導電層33を形成する。
導電層33を形成された後、図8(B)に示されるように、導電層33における非導電部となる領域にドライエッチング(例えば赤外線レーザー等のレーザー光の照射)によって、導電層33をパターニングする。非導電部となる領域にレーザー光を照射すると、レーザー光の熱によってこの領域に含まれる導電性繊維16が昇華する。昇華した導電性繊維16は、光透過性樹脂15を突き破って光透過性樹脂15外に放出される。このため、非導電部13の表面13A(本実施形態においては非導電部13に存在する光透過性樹脂15の表面)には孔や破片が形成されるので、非導電部13の表面13Aは粗面化される。また、レーザー光の出力を大きくすると、導電性繊維16のみならず、光透過性樹脂15も昇華するので、さらに非導電部13の表面13Aは粗面化される。これにより、図1に示される導電部12および非導電部13を有する導電性フィルム10を得ることができる。
本実施形態によれば、非導電部13の表面13Aにおける三次元算術平均粗さSRaが3nm以上となっているので、導電部12間の電気的な短絡を抑制することができる。すなわち、上記したように導電性繊維16が昇華すると、非導電部13の表面13Aは粗面化されるので、非導電部13の表面13Aにおける三次元算術平均粗さは大きくなる。ここで、昇華する導電性繊維16が多いほど、非導電部13の表面13Aに形成される孔や破片が多くなるので、非導電部13の表面13Aにおける三次元算術平均粗さは大きくなる傾向がある。非導電部13の表面13Aにおける三次元算術平均粗さSRaが3nm以上であると、非導電部13は実質的に導電性繊維16を含まなくなるので、非導電部13の表面13Aにおける算術平均粗さを3nm以上とすることにより、導電部12からの導電性材料のマイグレーションによって導電性材料が非導電部13側に析出した場合であっても、導電部12間の電気的な短絡を抑制できる。
非導電部の表面における三次元算術平均粗さSRaが3nm未満であると、導電部や非導電部のパターン形状が視認されること(いわゆる、骨見え現象)が生じることもあるが、非導電部13の表面13Aにおける三次元算術平均粗さSRaが3nm以上となっているので、導電部や非導電部のパターン形状が視認されることを抑制できる。
本実施形態において、導電部12中において導電性繊維16が導電性繊維16全体として導電部12の膜厚の半分の位置HLより光透過性基材11側に偏在している場合には、導電性繊維16同士の接点を増やすことができる。これにより、導電性繊維16の含有量が少ない場合であっても、導電部12の表面12Aからの電気的な導通を確保することができるので、より低表面抵抗値を実現することが可能である。また、導電性繊維16の含有量を少なくすることができるので、より低ヘイズ値を実現できる。さらに、導電性繊維16が導電部12中において導電部12の膜厚の半分の位置HLより光透過性基材11側に偏在している場合には、導電性繊維16の大部分は光透過性樹脂15によって覆われている。これにより、雰囲気である空気中の硫黄、酸素、および/またはハロゲンとの反応による導電性低下を抑制できる。
導電層をドライエッチング(レーザー光照射によるエッチング)する場合、レーザー光の幅は焦点で一番細くなる。このため、レーザー光の焦点を導電層と光透過性基材の界面付近に合わせると、導電層の表面付近に照射されるレーザー光の幅は焦点よりも太くなる。したがって、導電層中に導電性繊維が均一に存在している場合、レーザー光を照射すると、ファインピッチで非導電部を形成しようとしても、導電層の表面付近は導電部と光透過性基材の界面付近よりも非導電部の幅が大きくなってしまう。これに対し、本実施形態において、導電層33中において導電性繊維16が導電性繊維16全体として導電層33の膜厚の半分の位置HLより光透過性基材11側に偏在している場合には、レーザー光を照射すると、導電層33の表面付近は導電性繊維16が少ないので、導電層33と光透過性基材11の界面付近よりも非導電部13の幅が大きくなることを抑制でき、これによりファインピッチで非導電部13を形成できる。
従来の導電性フィルムであっても、導電部が、光透過性樹脂と、光透過性樹脂中に配置された導電性繊維とからなる導電性フィルムは存在するが、この導電性フィルムの導電部においては、導電性繊維と、樹脂分とを含む導電性繊維含有組成物を用いて導電部が形成されている。ここで、従来の導電部に用いられる導電性繊維含有組成物においては、分散媒として、主に、水系分散媒が用いられている。水系分散媒を用いる場合、保管安定性や塗布したときの塗膜の均一性の観点から、導電性繊維含有組成物中の樹脂分の含有量が多くなっている場合がある。この場合、導電性繊維含有組成物を用いて導電部を形成したとしても、導電性繊維を導電性繊維全体として導電部の膜厚の半分の位置より光透過性基材側に偏在させにくい。このため、この樹脂分が少なくなるように樹脂分の含有量を制御することで、導電部12中において導電性繊維16を導電部12の膜厚の半分の位置HLより光透過性基材11側に偏在させることができる。
本実施形態によれば、導電部12の光透過性樹脂15が反応抑制剤を含んでいるので、雰囲気である空気中の硫黄、酸素、および/またはハロゲンとの反応による導電性繊維16の導電性低下をより抑制できる。
導電性フィルムが画像表示装置に組み込まれる際には、導電部は光透過性粘着層に接することになるが、導電部に光透過性粘着層が接した状態で、例えば、60℃、相対湿度90%の環境下、85℃、相対湿度85%の環境下、またはそれら以上の高温高湿環境下に240時間放置する耐湿熱性試験を行うと、光透過性粘着層の種類によっては、導電性繊維が、光透過性粘着層中の成分(例えば、粘着層自体を構成する酸成分や粘着層中に添加された添加物)と反応し、導電部の表面抵抗値が上昇するおそれがある。これに対し、本実施形態によれば、導電部13中に反応抑制剤を含んでいるので、導電部12に光透過性粘着層が接した状態で、耐湿熱性試験を行った場合であっても、導電性繊維16と光透過性粘着層中の成分との反応を抑制することができる。これにより、光透過性粘着層の選択肢を広げることができる。
本実施形態によれば、導電性繊維16を用いているので、ITOとは異なり、屈曲させたとしても割れ難い導電性フィルム10を提供することができる。このため、導電性フィルム10を折り畳み可能(フォールダブル)な画像表示装置にも組み込んで使用することも可能である。
本実施形態に係る導電性フィルムの用途は特に限定されないが、本実施形態の導電性フィルム10は、例えば、画像表示装置に組み込んで使用することが可能である。なお、導電性フィルム10は、例えば、電磁波シールドとして使用してもよい。図9は本実施形態に係る画像表示装置の概略構成図であり、図10は本実施形態に係るタッチパネルの模式的な平面図である。なお、図9および図10において、図1と同じ符号が付されている部材は、図1で示した部材と同じものであるので、説明を省略するものとする。
<<<画像表示装置>>>
図9に示されるように、画像表示装置40は、主に、画像を表示するための表示パネル50と、表示パネル50の背面側に配置されたバックライト装置60と、表示パネル50よりも観察者側に配置されたタッチパネル70と、表示パネル50とタッチパネル70との間に介在した光透過性接着層90とを備えている。本実施形態においては、表示パネル50が液晶表示パネルであるので、画像表示装置40がバックライト装置60を備えているが、表示パネル(表示素子)の種類によってはバックライト装置60を備えていなくともよい。
<<表示パネル>>
表示パネル50は、図9に示されるように、バックライト装置60側から観察者側に向けて、トリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)やシクロオレフィンポリマーフィルム等の保護フィルム51、偏光子52、保護フィルム53、光透過性粘着層54、表示素子55、光透過性粘着層56、保護フィルム57、偏光子58、保護フィルム59の順に積層された構造を有している。表示パネル50は、表示素子55を備えていればよく、保護フィルム51等は備えていなくともよい。
表示素子55は液晶表示素子である。ただし、表示素子55は液晶表示素子に限られず、例えば、有機発光ダイオード(OLED)、無機発光ダイオード、および/または量子ドット発光ダイオード(QLED)を用いた表示素子であってもよい。液晶表示素子は、2枚のガラス基材間に、液晶層、配向膜、電極層、カラーフィルタ等を配置したものである。
<<バックライト装置>>
バックライト装置60は、表示パネル50の背面側から表示パネル50を照明するものである。バックライト装置60としては、公知のバックライト装置を用いることができ、またバックライト装置60はエッジライト型や直下型のバックライト装置のいずれであってもよい。
<<タッチパネル>>
タッチパネル70は、導電性フィルム80と、導電性フィルム80より観察者側に配置された導電性フィルム10と、導電性フィルム10より観察者側に配置されたカバーガラス等の光透過性カバー部材71と、導電性フィルム10と導電性フィルム80との間に介在した光透過性粘着層72と、導電性フィルム10と光透過性カバー部材71との間に介在した光透過性粘着層73とを備えている。
<導電性フィルム>
導電性フィルム80は、導電性フィルム10と同様の構造となっている。すなわち、導電性フィルム80は、図10に示されるように、光透過性基材81と、光透過性基材81の一方の面側に設けられた複数の光透過性の導電部82と、光透過性基材81の一方の面側に設けられ、かつ導電部82間に位置する光透過性の非導電部83と、光透過性基材81における導電部82および非導電部83側の面とは反対側の面側に設けられた光透過性機能層84とを備えている。光透過性基材81は光透過性基材11と同様のものであり、光透過性機能層84は光透過性機能層14と同様のものであるので、ここでは説明を省略するものとする。
(導電部および非導電部)
導電部82は、導電部12と同様の構造になっている。すなわち、導電部82は光透過性樹脂と、光透過性樹脂中に配置された導電性繊維とから構成されている。非導電部83は光透過性樹脂から構成されており、実質的に導電性繊維を含んでいない。
導電部82は、投影型静電容量方式のタッチパネルにおけるY方向の電極として機能するものであり、図10に示されるように、複数のセンサ部82Bと、各センサ部82Bに連結した端子部(図示せず)とを備えている。センサ部82Bは、センサ部12Bと同様の構造になっているが、Y方向に延びている。なお、導電部82は、導電部12と同様の構造になっているので、ここでは詳細な説明は省略するものとする。
非導電部83は、導電部82間に位置し、かつ導電性を示さない部分である。非導電部83は、非導電部13と同様に、非導電部83の表面における算術平均粗さが、3nm以上となっている。非導電部83は、非導電部13と同様の構造になっているので、ここでは詳細な説明は省略するものとする。
<光透過性粘着層>
光透過性粘着層72、73は、例えば、OCA(Optical Clear Adhesive)のような粘着シートが挙げられる。光透過性粘着層72、73の代わりに、光透過性接着層を用いてもよい。
<<光透過性接着層>>
光透過性接着層90は、表示パネル50とタッチパネル70との間に介在し、かつ表示パネル50とタッチパネル70の両方に接着されている。これにより、表示パネル50とタッチパネル70とが固定されている。光透過性接着層90は、例えば、OCR(Optically Clear Resin)のような重合性化合物を含む液状の硬化性接着層用組成物の硬化物から構成されている。
光透過性接着層90の膜厚は、10μm以上50μm以下であることが好ましい。光透過性接着層の膜厚が10μm未満であると、薄すぎることにより、異物の噛み込みや段差追従が不足するなどの不具合が発生しやすくなり、また光透過性接着層の膜厚が150μmを超えると、製造コストがかかりすぎてしまう。光透過性接着層の膜厚は、光学顕微鏡を用いて撮影された光透過性接着層の断面写真からランダムに10箇所膜厚を測定し、測定された10箇所の膜厚の算術平均値として求める。光透過性接着層90の代わりに、光透過性粘着層を用いてもよい。
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの記載に限定されない。
<ハードコート層用組成物の調整>
まず、下記に示す組成となるように各成分を配合して、ハードコート層用組成物1を得た。
(ハードコート層用組成物1)
・ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(製品名「KAYARAD-PET-30」、日本化薬社製):30質量部
・重合開始剤(製品名「イルガキュア184」、BASFジャパン社製):1.5質量部
・メチルエチルケトン(MEK):50質量部
・シクロヘキサノン:18.5質量部
<銀ナノワイヤ含有組成物の調整>
(銀ナノワイヤ含有組成物1)
還元剤としてエチレングリコール(EG)を、有機保護剤としてポリビニルピロリドン(PVP:平均分子量130万、アルドリッチ社製)を使用し、下記に示した核形成工程と粒子成長工程とを分離して粒子形成を行い、銀ナノワイヤ含有組成物を調製した。
1.核形成工程
反応容器内で160℃に保持したEG液100mLを攪拌しながら、硝酸銀のEG溶液(硝酸銀濃度:1.0モル/L)2.0mLを、一定の流量で1分間かけて添加した。その後、160℃で10分間保持しながら銀イオンを還元して銀の核粒子を形成した。反応液は、ナノサイズの銀微粒子の表面プラズモン吸収に由来する黄色を呈しており、銀イオンが還元されて銀の微粒子(核粒子)が形成されたことを確認した。続いて、PVPのEG溶液(PVP濃度:3.0×10-1モル/L)10.0mLを一定の流量で10分間かけて添加した。
2.粒子成長工程
上記核形成工程を終了した後の核粒子を含む反応液を、攪拌しながら160℃に保持し、硝酸銀のEG溶液(硝酸銀濃度:1.0×10-1モル/L)100mLと、PVPのEG溶液(PVP濃度:3.0×10-1モル/L)100mLを、ダブルジェット法を用いて一定の流量で120分間かけて添加した。この粒子成長工程において、30分毎に反応液を採取して電子顕微鏡で確認したところ、核形成工程で形成された核粒子が時間経過に伴ってワイヤ状の形態に成長しており、粒子成長工程における新たな微粒子の生成は認められなかった。最終的に得られた銀ナノワイヤの繊維径および繊維長を測定したところ、銀ナノワイヤの繊維径は30nmであり、繊維長は15μmであった。銀ナノワイヤの繊維径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、1000~50万倍にて50本の導電性繊維の繊維径を測定し、その50本の導電性繊維の繊維径の算術平均値として求めた。また、銀ナノワイヤの繊維長は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、1000~50万倍にて50本の導電性繊維の繊維長を測定し、その50本の導電性繊維の繊維長の算術平均値として求めた。なお、以下の銀ナノワイヤの繊維径および繊維長も同様にして求めた。
3.脱塩水洗工程
粒子成長工程を終了した反応液を室温まで冷却した後、分画分子量0.2μmの限外濾過膜を用いて脱塩水洗処理を施すとともに、溶媒をエタノールに置換した。最後に液量を100mLまで濃縮して、銀ナノワイヤ分散液を調製した。最後に、銀ナノワイヤ濃度が0.1質量%となるようにエタノールで希釈し、銀ナノワイヤ含有組成物1を得た。
<光透過性樹脂用組成物の調整>
下記に示す組成となるように各成分を配合して、光透過性樹脂用組成物1を得た。
(光透過性樹脂用組成物1)
・ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(製品名「KAYARAD-PET-30」、日本化薬社製):5質量部
・重合開始剤(製品名「イルガキュア184」、BASFジャパン社製):0.25質量部
・メチルエチルケトン(MEK):70質量部
・シクロヘキサノン:24.75質量部
<実施例1>
まず、光透過性基材としての片面に下地層を有する厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「コスモシャインA4100」、東洋紡社製)を準備し、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、ハードコート層組成物を塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより、光透過性機能層としての膜厚が2μmのハードコート層を形成した。
ハードコート層を形成した後、ポリエチレンテレフタレートフィルムにおけるハードコート層が形成された面と反対側の未処理面上に、銀ナノワイヤ含有組成物1を10mg/m2になるように塗布した。次いで、塗布した銀ナノワイヤ含有組成物1に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて銀ナノワイヤ含有組成物1中の分散媒を蒸発させることにより、ハードコート層の表面に、複数の銀ナノワイヤを配置させた。
次いで、銀ナノワイヤを覆うように上記光透過性樹脂用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚が100nmの光透過性樹脂を形成し、光透過性樹脂および光透過性樹脂中に配置された銀ナノワイヤからなる導電層を得た。
導電層を形成した後、非導電部となる領域に、以下の条件でレーザー光を照射して、この領域に存在する銀ナノワイヤを昇華させて除去することにより、導電層をパターニングした。これにより、導電部および導電部間に位置する幅30μmの線状の非導電部を有する導電性フィルムを得た。
(レーザー光照射条件)
・種類:YVO4
・波長:1064nm
・パルス幅:8~10ns
・周波数:100kHz
・スポット径:30μm
・パルスエネルギー:16μJ
・加工速度:1200mm/s
<実施例2>
実施例3においては、レーザー光のパルスエネルギーを10μJとしたこと以外は、実施例1と同様にして、導電性フィルムを得た。
<実施例3>
実施例3においては、レーザー光のパルスエネルギーを24μJとし、かつ加工速度を800mm/sとしたこと以外は、実施例1と同様にして、導電性フィルムを得た。
<実施例4>
実施例4においては、レーザー光のパルスエネルギーを24μJとし、かつ400mm/sとしたこと以外は、実施例1と同様にして、導電性フィルムを得た。
<比較例1>
比較例1においては、レーザー光のパルスエネルギーを10μJとし、かつ加工速度を1500mm/sとしたこと以外は、実施例1と同様にして、導電性フィルムを得た。
<非導電部表面の三次元算術平均粗さSRa測定>
実施例および比較例に係る導電性フィルムの非導電部の表面における三次元算術平均粗さSRaを、白色干渉顕微鏡(製品名「New View7300」、Zygo社製)を用いて、非導電部の表面における上記三次元算術平均粗さSRaを求めた。具体的には、まず、幅30μmの非導電部に隣接している2つ導電部の幅がそれぞれ3mmとなり、かつ長さが45mmとなるように、導電性フィルムを切り出し、幅3mmの導電部によって挟まれた幅30μmの非導電部を有する3つのサンプルを得た。各サンプルは、汚れや指紋等が付着していない任意の箇所から切り出した。そして、以下の測定条件および解析条件で、各サンプルの非導電部の表面においてSRaを5箇所において測定し、計15点のSRaの算術平均値をSRaとした。測定・解析ソフトにはMetroPro ver9.0.10のMicroscope Applicationを用いた。また、下記のLow wavelengthは、粗さパラメータにおけるカットオフ値λcに相当するものである。また、解析を行う際には、観察領域から非導電部のみのSRaを算出するために以下の手順に沿って非導電部にマスクをかけた状態で、非導電のみ解析を行った。
(測定条件)
・対物レンズ:50倍
・Zoom:1倍
・測定領域:218μm×218μm
・解像度(1点当たりの間隔):0.22μm
・scan Length:5μm
・min mod:0.001%
(解析条件)
・Removed:Plane
・Filter:High Pass
・FilterType:GaussSpline
・Low wavelength:250μm
・High wavelength:3μm
・Remove spikes: on
・Spike Height(xRMS):2.5
・解析範囲:30μm×218μm
(非導電のみ解析を行う手順)
まず、Microscope Applocation上のLoad Dataからマスクをかけたいサンプルのデータ(datファイル)を読み込んだ。次に、上記画面上のMask dataボタンを押し、Mask Editor画面を表示させた。Mask Editor画面上にAuto Inclボタンが表示されていることを確認し、表示されていない場合は、Auto Exclボタンをクリックし表示させた。同画面上のRectanceボタンをクリックし、width、heightに解析する領域のマスクサイズ(width 0.03mm、height 0.218mm)を入力しその左に表示されているApplyボタンをクリックした。Applyボタンをクリックすると、同画面上に表示されている観察画像上に指定したサイズの白い枠が表示された。Moveボタンを押してから、白い枠をドラックすると観察画像上の任意の位置に移動させることができるので非導電部上に移動させた。その後同画面上のBG Inclボタンを押し、Microscope Applocation画面上のAnalyzeボタンを押し、導電部を解析範囲から除外した。その状態で同画面上に「Ra」を表示させ、非導電部の表面における三次元算術平均粗さSRaとした。
<電気的短絡評価>
実施例および比較例に係る導電性フィルムの電気的短絡を評価した。具体的には、まず、幅30μmの非導電部に隣接している2つ導電部の幅がそれぞれ3mmとなり、かつ長さが45mmとなるように、導電性フィルムを切り出し、幅3mmの導電部によって挟まれた幅30μmの非導電部を有するサンプルを得た。次いで、テスター(製品名「Digital MΩ Hitester 3454-11」、日置電機社製)を用いて、一方の導電部と他方の導電部との間に電流が流れるか否か評価した。その後、65℃および相対湿度95%の環境下で、サンプルの一方の導電部に32Vの電圧を100時間印加する耐久性試験を行った。耐久性試験後、テスター(製品名「Digital MΩ Hitester 3454-11」、日置電機社製)を用いて、一方の導電部と他方の導電部との間に電流が流れるか否かを評価することによって電気的に短絡しているか否かを評価した。評価基準は以下の通りとした。
○:耐久性試験前のみならず、耐久性試験後も導電部間に電流が流れなかった。
×:耐久性試験前においては導電部間に電流が流れなかったが、耐久性試験後においては導電部間に電流が流れた。
<パターン形状視認評価>
実施例および比較例に係る導電性フィルムにおいて、導電性フィルムの表面を光で照らしたときに、導電部または非導電部のパターン形状が視認されるか否か評価を行った。具体的には、まず、水平な台の上に、黒色アクリル板を置き、その上に導電部側が上側となるように導電性フィルムを置いた。導電性フィルムは50mm×100mmの大きさに切り出したものであり、カールや皺がなく、かつ指紋や埃等がない状態で黒色アクリル板上に配置された。その後、導電性フィルムの4隅を、さらにテープ(製品名「セロテープ(登録商標)」、ニチバン社製)で固定した。そして、導電性フィルムの表面の照度が1000ルクスとなるように導電性フィルムの表面を3波長蛍光ランプ(製品名「あかりん棒」、日立アプライアンス社製)からの光で照らし、導電性フィルムの表面から30cmの距離(視認距離)においてあらゆる角度からも目視して、導電部および非導電部のパターン形状が視認されるか評価した。また、同様に、導電性フィルムの表面の照度が10000ルクスとなるように導電性フィルムの表面をLED光源(製品名「MG-286R」、GENTOS社製)からの光で照らし、導電性フィルムの表面から30cmの距離(視認距離)においてあらゆる角度からも目視して、導電部および非導電部のパターン形状が視認されるか評価した。評価基準は以下の通りとした。
○:照度10000ルクスでの観察で導電部および非導電部のパターン形状が視認されなかった。
△:照度1000ルクスでの観察で導電部および非導電部のパターン形状が視認されなかったが、照度10000ルクスでの観察で導電部または非導電部のパターン形状が視認されなかった。
×:照度1000ルクスでの観察で導電部および非導電部のパターン形状が視認された。
<白濁感評価>
実施例および比較例に係る導電性フィルムにおいて、導電性フィルムの表面を光で照らしたときに、非導電部に白濁感が観察されるか否か評価を行った。具体的には、まず、水平な台の上に、黒色アクリル板を置き、その上に導電部側が上側となるように導電性フィルムを置いた。導電性フィルムは50mm×100mmの大きさに切り出したものであり、カールや皺がなく、かつ指紋や埃等がない状態で黒色アクリル板上に配置された。その後、導電性フィルムの4隅を、さらにテープ(製品名「セロテープ(登録商標)」、ニチバン社製)で固定した。そして、導電性フィルムの表面の照度が1000ルクスとなるように導電性フィルムの表面を3波長蛍光ランプ(製品名「あかりん棒」、日立アプライアンス社製)からの光で照らし、導電性フィルムの表面から30cmの距離(視認距離)においてあらゆる角度からも目視して、非導電部に白濁感が観察されるか評価した。また、同様に、導電性フィルムの表面の照度が10000ルクスとなるように導電性フィルムの表面をLED光源(製品名「MG-286R」、GENTOS社製)からの光で照らし、導電性フィルムの表面から30cmの距離(視認距離)においてあらゆる角度からも目視して、非導電部に白濁感が観察されるか評価した。評価基準は以下の通りとした。
○:照度10000ルクスでの観察で非導電部に白濁感が観察されなかった。
△:照度1000ルクスでの観察で非導電部に白濁感が観察されなかったが、照度10000ルクスでの観察で非導電部に白濁感が観察された。
×:照度1000ルクスでの観察で非導電部に白濁感が観察された。
比較例1に係る導電性フィルムにおいては、非導電部の表面の三次元算術平均粗さSRaが3nm未満であったので、耐久性試験後に導電部間に電気的な短絡が生じていた。これは、非導電部に残存している銀ナノワイヤが多く、耐久性試験によって導電部の銀イオンがマイグレーションして、銀イオンが非導電部側に析出したためであると考えられる。これに対し、実施例1~4に係る導電性フィルムにおいては、非導電部の表面の三次元算術平均粗さSRaが3nm以上であったので、耐久性試験前後において導電部間に電気的な短絡が生じていなかった。これは、非導電部に銀ナノワイヤが実質的に残存していなかったので、耐久性試験によって導電部の銀イオンがマイグレーションして、銀イオンが非導電部側に析出した場合であっても、導電部間に電気的な短絡が生じなかったと考えられる。
実施例1~3に係る導電性フィルムにおいては、非導電部の表面の三次元算術平均粗さSRaが80nm以下であったので、導電部および非導電部のパターン形状が視認されず、かつ非導電部に白濁感も生じていなかった。これは、銀ナノワイヤが若干白みを帯びているので、非導電部の表面を若干荒らすことによって、非導電部も若干白みを帯びていたからであるが、白濁感が生じるレベルまでは白みを帯びてはいなかったからであると考えられる。これに対し、実施例4に係る導電性フィルムにおいては、非導電部の表面の三次元算術平均粗さSRaが80nmを超えていたので、導電部および非導電部のパターン形状が視認されなかったが、非導電部の表面を荒らし過ぎたので、非導電部に白濁感が生じていた。なお、比較例1に係る導電性フィルムにおいては、非導電部に銀ナノワイヤが残存しており、導電部と非導電部との色味の差があまりなかったために、導電部および非導電部のパターン形状が視認されなかったと考えられる。また、上記パターン形状や白濁感は、三次元算術平均粗さSRaと相関関係があったので、三次元算術平均粗さSRaを用いて評価しているが、表面粗さのパラメータの中でSRa以外の二次元算術平均粗さRa等のパラメータとは相関関係がなかったので、SRa以外のパラメータを用いて評価することはできなかった。
なお、実施例1~4に係る導電性フィルムにおいて、接触式の抵抗率計(製品名「ロレスタAX MCP-T370型」、三菱化学アナリテック社製、端子形状:ASPプローブ)を用いて、JIS K7194:1994(導電性プラスチックの4深針法による抵抗率試験方法)に従って、導電部の表面の抵抗値をそれぞれ測定したところ、いずれも、50Ω/□であった。接触式の抵抗率計による表面抵抗値の測定は、80mm×50mmの大きさに切り出した導電性フィルムを平らなガラス板上に導電部側が上面となり、かつ導電性フィルムが均一な平面状態となるように配置して、ASPプローブを導電部の中心に配置し、全ての電極ピンを導電部に均一に押し当てることによって行った。接触式の抵抗率計による測定の際には、シート抵抗を測定するモードであるΩ/□を選択した。その後は、スタートボタンを押し、ホールドして、測定結果を得た。表面抵抗値の測定箇所は、導電性フィルムの中心部の3箇所とし、表面抵抗値は、3箇所の表面抵抗値の算術平均値とした。表面抵抗値の測定は、23℃および相対湿度55%の環境下で行った。
また、実施例1~4に係る導電性フィルムにおいて、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、村上色彩技術研究所製)を用いて、JIS K7361に従って、全光線透過率をそれぞれ測定したところ、いずれも、91%であった。全光線透過率は、導電性フィルム全体で測定したときの値であり、また50mm×100mmの大きさに切り出した後、カールや皺がなく、かつ指紋や埃等がない状態で導電部側が非光源側となるように設置し、導電性フィルム1枚に対して3回測定して得られた値の算術平均値とした。
また、実施例1~4に係る導電性フィルムにおいて、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、村上色彩技術研究所製)を用いて、JIS K7136に従って、導電性フィルムのヘイズ値(全ヘイズ値)をそれぞれ測定したところ、いずれも、1.0%であった。ヘイズ値は、導電性フィルム全体で測定したときの値であり、また50mm×100mmの大きさに切り出した後、カールや皺がなく、かつ指紋や埃等がない状態で導電部側が非光源側となるように設置し、導電性フィルム1枚に対して3回測定して得られた値の算術平均値とした。
実施例1~4に係る導電性フィルムにおいて、銀ナノワイヤが、全体として、導電部中において導電部の膜厚の半分の位置よりポリエチレンタレフタレートフィルム側に偏在しているか否か調べたところ、全ての導電性フィルムにおいて銀ナノワイヤ偏在していた。
銀ナノワイヤが、全体として、導電部中において導電部の膜厚の半分の位置よりポリエチレンタレフタレートフィルム側に偏在しているか否かの判断は以下のようにして行った。具体的には、まず、導電性フィルムから断面観察用のサンプルを作製した。詳細には、2mm×5mmに切り出した導電性フィルムをシリコーン系の包埋板に入れ、エポキシ系樹脂を流し込み、導電性フィルム全体を樹脂にて包埋した。その後、包埋樹脂を65℃で12時間以上放置して、硬化させた。その後、ウルトラミクロトーム(製品名「ウルトラミクロトーム EM UC7」、ライカ マイクロシステムズ社製)を用いて、送り出し厚み100nmに設定し、超薄切片を作製した。作製した超薄切片をコロジオン膜付メッシュ(150メッシュ)にて採取し、STEM用サンプルとした。その後、走査透過型電子顕微鏡(STEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、STEM用サンプルの断面写真を撮影した。この断面写真の撮影の際には、検出器(選択信号)を「TE」、加速電圧を「30kV」、エミッション電流を「10μA」にしてSTEM観察を行う倍率については倍率2.5万倍~5万倍でフォーカスを調節し、コントラストおよび明るさを各層が見分けられるよう適宜調節した。また、断面写真の撮影の際には、さらに、アパーチャーを「ビームモニタ絞り3」、対物レンズ絞りを「3」にし、またW.D.を「8mm」にした。そして、このように撮影した10箇所の上記断面写真を用意した。次いで、各断面写真を画素レベルまで拡大し、各断面写真において、導電部の膜厚の半分の位置よりポリエチレンタレフタレートフィルム側に位置する銀ナノワイヤが表示されている画素の個数および導電部の膜厚の半分の位置より導電部の表面側に位置する銀ナノワイヤが表示されている画素の個数を数え、銀ナノワイヤが表示されている画素の全個数に対する上記半分の位置よりポリエチレンタレフタレートフィルム側に位置する銀ナノワイヤが表示されている画素の個数の割合を求めた。なお、銀ナノワイヤが表示されている画素が上記半分の位置に跨っている場合には、各画素において、上記半分の位置からポリエチレンタレフタレートフィルム側に存在している部分と、この位置から導電部の表面側に存在している部分とに分けて、分けた部分の面積比に基づいて1画素を分けるものとした。そして、各断面写真から求めた上記割合を、導電部の膜厚の半分の位置よりポリエチレンタレフタレートフィルム側に位置する導電性繊維の存在割合とし、各断面写真から求めた存在割合の算術平均値を求め、この算術平均値が55%以上のときをポリエチレンテレフタレートフィルム側に偏在しているとした。
実施例1~4に係る導電性フィルムにおいて、折り畳み試験を行い、フレキシブル性を評価したところ、後述するいずれの折り畳み試験においても、電気抵抗値比が1.5以下であった。具体的には、まず、導電部を含むように縦125mm×横50mmの長方形状のサンプルを導電性フィルムから1枚切り出した。導電性フィルムからサンプルを切り出した後、サンプルの長手方向の表面の両端部の縦10mm×横50mmの部分に銀ペースト(商品名「DW-520H-14」、東洋紡社製)を塗布し、130℃で30分加熱して、両端部に硬化した銀ペーストが設けられたサンプルを得た。そして、両端部に硬化した銀ペーストが設けられたサンプルの電気抵抗値をテスター(製品名「Digital MΩ Hitester 3454-11」、日置電機社製)を用いて、測定した。具体的には、Digital MΩ Hitester 3454-11は、2本のプローブ端子(赤色プローブ端子および黒色プローブ端子、両方ともピン形)を備えているので、赤色プローブ端子を一方の端部に設けられた硬化した銀ペーストに接触させ、かつ黒色プローブ端子を他方の端部に設けられた硬化した銀ペーストに接触させて電気抵抗値を測定した。その後、耐久試験機(製品名「DLDMLH-FS」、ユアサシステム機器社製)に、この選択されたサンプルの短辺(50mm)側を固定部でそれぞれ固定し、図5(C)に示したように対向する2つの辺部の最小の間隔が6mm(屈曲部の外径6mm)となるようにして取り付け、このサンプルの導電部側の面を180°折り畳む試験(導電部が内側となり、基材が外側となるように折り畳む試験)を2万回行った。折り畳み試験を行った後、折り畳み試験後のサンプルにおいて、折り畳み試験前のサンプルと同様にして、導電部の表面の電気抵抗値を測定した。そして、選択された折り畳み試験前のサンプルの電気抵抗値に対する折り畳み試験後のサンプルの電気抵抗値の比である電気抵抗値比(選択された折り畳み試験後のサンプルの電気抵抗値/折り畳み試験前のサンプルの電気抵抗値)を求めた。また、実施例1~4に係る導電性フィルムから上記同様にして切り取られ、同様に電気抵抗値を測定することによって選択された新しいサンプルを、上記の耐久試験機に、上記と同様に取り付け、サンプルの基材側の面を180°折り畳む試験(導電部が外側となり、基材が内側となるように折り畳む試験)を2万回行い、同様にして、折り畳み試験後のサンプルの導電部の表面の電気抵抗値を測定して、電気抵抗値比を求めた。なお、電気抵抗値比は、3回測定して得られた値の算術平均値とした。